JP4832821B2 - 保温性と通気性を有する透湿防水防風性フィルム、及びこれを布帛に積層してなる複合材料 - Google Patents

保温性と通気性を有する透湿防水防風性フィルム、及びこれを布帛に積層してなる複合材料 Download PDF

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Description

本発明は、保温性を有し、且つ、透湿性、防水性、防風性、通気性を有するフィルム、及び、該フィルムを布帛と積層することにより得られる繊維布帛材料に関する物であり、主に衣料分野における快適衣料や、寝袋材、テント材等のアウトドア商品等に好適に用いられるシート状物に関する。
従来、保温材利用として発泡体の利用は、発泡ウレタンフォーム、発泡スチロール、発泡ゴムなどの利用がされてきた。
発泡ウレタンフォーム、発泡スチロール、発泡ゴムなどの利用において、独立気泡からなる発泡体は、透湿性、通気性が低く、連続気泡からなる発泡体の場合は、防水性、防風性が悪いという問題があり、衣料における快適繊維としての利用には問題があった。又、本発明と同様に加熱膨張型のマイクロカプセルをマトリクス材料中に添加し繊維布帛にコーティング、又は、プリントすることにより得られる製品も利用されてきた。
例えば特許文献1や、特許文献2に示される独立気泡層を有するシート材や布帛は、保温性や、防水性、フィルム形成性樹脂による透湿性には優れるが、通気性が不十分であり、快適性に問題があった。さらに非特許文献1には、テント材や寝袋材として「不通気防水布(通気性が無い布)」を使用した場合、酸素不足により人命に関わる問題が生じることが指摘されている。
また、加熱膨張型のマイクロカプセルを樹脂に添加したものを繊維布帛にコーティング或いはプリントすることにより得られる製品は、繊維布帛の影響を受けやすく樹脂皮膜が不均一になりやすく、目的とする性能を得るためには、使用する繊維布帛が限定されてしまうおそれがある。
特開平5−16234号公報 特公平6−61864号公報 繊維工学 vol.35 No.8 頁334−335
本発明は、従来の技術において達成が困難であった、保温性能を有する透湿防水防風通気性フィルムを提供し、又、それを様々な繊維布帛素材に積層させることにより保温性、透湿防水性、防風性、及び通気性を付与された複合材料及び、その製造方法を提供するものである。
本発明は、上記の課題に対しなされたもので、
(1)に、連続通気孔を有する透湿性発泡体層からなることを特徴とする通気性を有する透湿防水防風性フィルムである。
また(2)に、直径50μm以下の熱膨張性マイクロカプセルをフィルム構成樹脂に対し10〜60重量%添加し、フィルム構成樹脂を皮膜化させた後、該フィルムを該マイクロカプセルの最大膨張温度よりも高い温度で加熱し該マイクロカプセルを発泡、一部破泡させてなる(1)記載の保温性と通気性を有する透湿防水防風性フィルムである。
また、(3)に、空隙率が10〜70%であることを特徴とする(1)乃至(2)記載の通気性を有する透湿防水防風性フィルムである。
また、(4)に(1)乃至(3)記載の通気性を有する透湿防水防風性フィルムを積層してなる透湿防水防風性を有する布帛である。
従来の技術において達成が困難であった、保温性能を有する透湿防水防風通気性フィルムを提供し、又、それを様々な繊維布帛素材に積層させることにより保温性、透湿防水性、防風性、及び通気性を付与された複合材料及び、その製造方法を提供できる。
フィルム構成樹脂に熱膨張型マイクロカプセルを添加混合し、キャストフィルムを作成し、その後加熱することによりマイクロカプセルを加熱することにより膨張発泡、一部破泡させて得られる保温性能を有する透湿防水防風通気性フィルム、及び、それを繊維布帛に積層してなる、保温性と通気性を有する透湿防水防風性複合材料を提供するものである。
本発明に用いることの出来るフィルム形成性樹脂としては、添加する熱膨張型マイクロカプセルを溶かす等の悪影響を与えない溶媒にて溶解、分散されている合成樹脂であれば使用することができ、ポリウレタン系、ポリアミノ酸系、ポリアクリル酸系、ポリアミド系、ポリ塩化ビニリデン系、ポリエステル系、ポリ酢酸ビニル系、ポリビニルアルコール系などがあげられるが、特に透湿性、加工性の点からウレタン系樹脂が好ましく用いられる。
熱膨張型マイクロカプセルを溶解しない溶媒とは、水、ベンゼン、トルエン、キシレン、イソプロピルアルコール、ブタノール、エチレングリコール、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ターペン、パークロロエチレン、スチレン等があるが、これらを主体としてあれば特に限定されることなく使用できる。
添加する熱膨張型マイクロカプセルは、気化性物質を熱可塑性樹脂被膜で内包した微少球であり、用いられる熱可塑性樹脂としては、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリメタアクリル酸エステル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアクリルニトリル樹脂等を単独又は混合物、共重合体として用いることができる。
また、気化性物質としては、マイクロカプセル化しやすく、加熱により気化膨張する液体ブタンやパラフィンなどの低分子量の炭化水素等を用いることができる。
また、マイクロカプセルのサイズは直径50μm以下のものが好ましく、更に、20〜40μmのものが好ましく用いられる。直径50μmを超えると、フィルム作成時に均一なフィルムが出来にくくなるおそれがある。
フィルム形成性樹脂、熱膨張型マイクロカプセル、希釈溶剤の配合方法は、特に限定される物ではないが、混合効率の点から、熱膨張型マイクロカプセルを希釈有機溶剤に分散した後、ウレタン加工剤に混入させ、均一になるまで攪拌する方が好ましい。
使用する熱膨張性マイクロカプセルの量は、樹脂固形分に対し10〜60重量%が好ましい。使用量が10%未満であると十分な微細孔を得られず、必要とする保温性や通気性が得られないおそれがある。また60重量%より多いとフィルムの強度が弱くなるおそれがある。
フィルム形成能樹脂中に熱膨張型マイクロカプセルを添加分散混合したものを、離型紙や、離型フイルム等の離型材上に、コーティング機械により塗布してコーティングフィルムを作成する。用いられるコーティング機械は一般に使用されているドクターナイフコーター、ロールコーター等を用いることが出来、特に限定されない。
塗布したフィルムは、乾燥機にて溶媒を揮発させることにより、熱膨張型マイクロカプセルを含んだフィルムを得られるが、ここで、乾燥機内の温度が、熱膨張型マイクロカプセルが、膨張する温度より高いと、フィルム加工中に発泡膨張を始めるため、乾燥温度は、膨張温度より低めに設定する方が好ましい。
このように、離型材上に塗布し、乾燥して得られた熱膨張型マイクロカプセルを含んだフィルムを熱膨張型マイクロカプセルの最大膨張温度より高い温度で加熱することにより、フィルム構成樹脂が、マイクロカプセルの膨張発泡に伴い、局部的に延伸され、更に、一部破裂することにより、独立気泡孔及び、連続通気孔が同時に形成され、保温性と通気性を有する透湿防水防風性フィルムが得られる。
ここでいう熱膨張型マイクロカプセルの最大膨張温度とは、特開平11−2615に記載されている温度をいう。
通気性は、熱膨張型マイクロカプセルとフィルム形成性樹脂との配合比率、フィルムの厚み、及び、熱膨張型マイクロカプセルを膨張させる温度にて調整することが出来る。通気性を高くするためには、熱膨張型マイクロカプセル配合比を多くし、フィルムの厚みを薄くし、熱膨張型マイクロカプセルを膨張させる温度を高くすることにより可能である。これは、熱膨張型マイクロカプセルがフィルム内にて破裂し、又、マイクロカプセルの膨張発泡に伴い、マイクロカプセルを被覆するフィルム剤の一部を破ることにより、部分的に連続気泡が出来るためと推測される。
また、このような構造のフィルムの空隙率は10〜70%であることが望ましい。空隙率が10%未満であると十分な保温性や通気性が得られないそれがあり、また、フィルムが硬くなるおそれがある。また空隙率が70%より大きくなるとフィルムの強度が低下するおそれがある。
また、本発明のフィルムを繊維布帛に積層することもできる。
本発明で使用できる繊維布帛としては、木綿などの天然繊維、ポリエステル系、ポリアミド系の合成繊維やガラス繊維などの無機繊維からなる織物、編物、不織布などを挙げることができ特に限定されない。
繊維布帛に、本発明の保温性と通気性を有する透湿防水防風フィルムを積層する方法は、熱融着による接着やバインダー樹脂による接着など特に限定されるものではない。
フィルムを繊維布帛に貼り合わせる場合の接着剤は、特に限定される物ではなく、溶剤に分散又は溶解された接着剤や、ホットメルト接着剤、水系接着剤、粘着剤等を用いることが出来る。溶剤に分散又は溶解された接着剤を塗布する場合、溶剤成分が熱膨張型マイクロカプセル成分を溶解する恐れがあり、接着剤は部分的に塗布するのが好ましい。
接着剤塗布方法についても特に限定される物ではなく、通常用いられている、グラビア塗布、コーティング塗布、スプレー塗布などが用いられる。
以下、実施例を用いて本発明のフィルム及び、フィルムを布帛に積層してなる複合材とその評価方法を具体的に説明する。
〔耐水圧〕
複合材において,JIS L−1092 高水圧法に準じて測定した。
〔透湿性〕
複合材において、JIS L−1099 酢酸カリウム法に準じて測定した。
〔通気度〕
複合材において、JIS L−1096.27.A法(フラジール法)に準じて測定した。
〔CLO値〕
複合材において、ASTM D1518に準じて保温性を測定した。CLO値とは熱抵抗を現す単位で、大きいほど保温性がよいことを示す。
[実施例1]
下記の樹脂処方1による保温透湿防水防風通気性フィルム作成用樹脂を粘度2000cpsで離型材(リンテック(株)製 130TPD)上に厚み90μmにてコーティングし、乾燥温度120℃にて2分間乾燥し、熱膨張型マイクロカプセルを含んだウレタンフィルムを得た。
このフィルムを、反応型ウレタンホットメルト接着剤をホットメルトグラビアコーターにて塗布したポリエステルニット素材に貼り合わせ、直後に離型材を剥離し、25℃の温度条件下でエージングを行い接着剤を十分に硬化させた後、180℃にて熱処理を行い、熱膨張型マイクロカプセルを熱膨張させ、断熱保温層を形成させ、保温透湿防水防風繊維複合材を作成した。評価結果を表1に示す。

樹脂処方1
透湿防水性ウレタン樹脂 66.7重量%
(大日精化(株)製 ハイムレンY−301−3)
イソプロピルアルコール/トルエン混合溶剤(混合比1:1) 26.7重量%
熱膨張型マイクロカプセル 6.6重量%
(松本油脂製薬(株)製 マツモトマイクロスフェアーF85D 粒径20〜30μm、最大膨張温度160〜170℃)
[比較例1]
実施例1のフィルム作成用樹脂処方の中の、熱膨張型マイクロカプセルを入れない樹脂処方にて同じ複合材を作成した。評価結果を表1に示す。
[実施例2]
下記の樹脂処方2にて、離型紙上に厚み70μmにてコーティングし、190℃で熱処理したこと以外は実施例1と同様に作成した。評価結果を表1に示す。

樹脂処方2
透湿防水性ウレタン樹脂 58.8重量%
(大日精化(株)製 ハイムレンY−301−3)
イソプロピルアルコール/トルエン混合溶剤(混合比1:1) 23.5重量%
熱膨張型マイクロカプセル 17.7重量%
(松本油脂製薬(株)製 マツモトマイクロスフェアーF85D 粒径20〜30μm、最大膨張温度160〜170℃)
[実施例3]
160℃で熱処理したこと以外は実施例2と同様に作成した。評価結果を表1に示す。
[実施例4]
下記の樹脂処方3にて、離型紙上に厚み70μmにてコーティングし、190℃で熱処理したこと以外は実施例1と同様に作成した。評価結果を表1に示す。

樹脂処方3
透湿防水性ウレタン樹脂 64.5重量%
(大日精化(株)ハイムレンY−301−3)
イソプロピルアルコール/トルエン混合溶剤(混合比1:1) 25.8重量%
熱膨張型マイクロカプセル 9.7重量%
(松本油脂製薬(株)製 マツモトマイクロスフェアーF85D 粒径20〜30μm、最大膨張温度160〜170℃)
[比較例2]
150℃で熱処理したこと以外は実施例4と同様に作成した。評価結果を表1に示す。

Figure 0004832821


Claims (2)

  1. 連続通気孔を有する透湿性発泡体層からなることを特徴とする保温性と通気性を有するウレタン樹脂からなる透湿防水防風性フィルムであって、
    直径50μm以下の熱膨張性マイクロカプセルをフィルム構成樹脂に対し6〜60重量%添加し、フィルム構成樹脂を皮膜化させた後、該フィルムを該マイクロカプセルの最大膨張温度よりも高い温度で加熱し該マイクロカプセルを発泡、一部破泡させてなる、JIS L−1092高水圧法による耐水圧が1000〜5500mmHO、JIS L−1099酢酸カリウム法による透湿性が4000〜20000g/m24h、JIS L−1096.27.フラジール法による通気度が1.0〜42.0cc/mmin、ASTM D1518に準じて測定した保温性(CLO値)が0.1〜0.17である、保温性と通気性を有する透湿防水防風性フィルム。
  2. 請求項1記載の保温性と通気性を有する透湿防水防風性フィルムを布帛に積層してなる複合材料。
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