JP4348776B2 - 導電性ゴム組成物および事務機器用ゴム部材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、低硬度かつ低圧縮永久歪みであり、電子写真方式を用いたプリンターなどの帯電・現像・転写ロールなどの事務機器用ゴム部材の製造に好適な導電性ゴム組成物およびそれを用いて製造された事務機器用ゴム部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子写真技術の進歩に伴い乾式電子写真装置の転写材、トナーに対する接触帯電部材として半導電性弾性ロールが注目されており、現像ロール、転写ロール等に用いられている。このような用途に用いられる半導電性部材は所定の電気抵抗値であるのみならず、電気抵抗の位置ばらつきが少なく、かつ電気抵抗の印加電圧依存性が少なく、かつ連続して通電した際の電気抵抗の変動幅が少ないこと、更には低温・低湿から高温・高湿に至るまでの環境変化に対してもその電気抵抗値の変動幅が小さいことが要求される。
【0003】
これらの半導電性弾性ゴムロールには、感光体との安定した接触面積を確保する必要性から、低硬度でかつ低圧縮永久歪みのゴム材料が要求されている。また、これらゴムロール材料を低硬度にする目的で、可塑剤、軟化剤などのオイルを添加すると、これらのブリードにより感光体表面を損傷するという問題が生じるので、可塑剤、軟化剤などの添加の少ないあるいは、無添加のゴム材料がさらに要求されている。たとえば、従来のEPDMでは、無可塑で低硬度のゴム組成物を得ることが難しく、また発泡させて低硬度化すると、圧縮永久歪みが劣る。また、ウレタンゴムでは、比較的低硬度のものが得やすいが、吸湿により加水分解し易く、また耐摩耗性に劣る。さらにシリコーンゴムは、低硬度かつ低圧縮永久歪みのものが得られるが摩耗係数が低いという問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、所定の電気抵抗値であるのみならず、電気抵抗の位置ばらつきが少なく、しかも低温・低湿から高温・高湿に至るまでの環境変化に対してもその電気抵抗値の変動幅が小さい等の電気特性に優れ、圧縮永久歪特性に優れた低硬度の導電性ゴム部材を、加硫することにより得ることのできるゴム組成物を提供することにある。本発明の他の目的は、上記諸特性に優れた事務機器用ゴム部材を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、下記構成の導電性ゴム組成物および事務機器用部材が提供されて、本発明の上記目的が達成される。
(1) 〔I〕(A)水添ジエン系重合体98〜10重量部、(B)水添ジエン系重合体(A)とは異なるゴム2〜90重量部(ここで、(A)と(B)の合計量は100重量部とする)、および(C)導電付与物質を含有し、〔II〕水添ジエン系重合体(A)が島相を形成し、水添ジエン系重合体(A)とは異なるゴム(B)が海相を形成している海/島構造を有しており、そして〔III〕(C)導電付与物質が海相に偏在していることを特徴とする導電性ゴム組成物。
(2) (A)水添ジエン系重合体が、共役ジエン−芳香族ビニル化合物ランダム共重合体を主体とするジエン系重合体の共役ジエン部分の二重結合の80%以上が飽和された水素添加物であることを特徴とする上記(1)に記載の導電性ゴム組成物。
(3) (B)水添ジエン系重合体(A)とは異なるゴムが、下記[1]〜[3]の少なくとも1つの条件をみたすゴムである上記(1)又は(2)に記載の導電性ゴム組成物。
[1](A)水添ジエン系重合体に比べ、不飽和結合量が多い
[2](A)水添ジエン系重合体に比べ、極性が高い
[3](A)水添ジエン系重合体に比べ、ムーニー粘度が低い
(4) (B)水添ジエン系重合体(A)とは異なるゴムは、(A)水添ジエン系重合体に比べ、ムーニー粘度(ML1+4,100℃)が10以上低い上記(3)に記載の導電性ゴム組成物。
(5) (C)導電付与物質が、カーボンブラックである上記(1)〜(4)のいずれかに記載の導電性ゴム組成物。
(6) (C)導電付与物質の配合量が、(A)水添ジエン系重合体と(B)水添ジエン系重合体(A)とは異なるゴムとの合計量100重量部に対して、0.5〜200重量部である上記(1)〜(5)のいずれかに記載の導電性ゴム組成物。
(7) 上記導電性ゴム組成物は、加硫剤を含む上記(1)〜(6)のいずれかに記載の導電性ゴム組成物。
(8) 上記(1)〜(7)のいずれかに記載の導電性ゴム組成物を用いて製造された事務機器用ゴム部材。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下本発明について詳細に説明する。
本発明の導電性ゴム組成物は、水添ジエン系重合体(A)、水添ジエン系重合体(A)とは異なるゴム(B)、および導電付与物質(C)を含有する。本発明のゴム組成物は海/島構造を有しており、水添ジエン系重合体(A)が島相を形成し、水添ジエン系重合体(A)とは異なるゴム(B)が海相を形成している。そして、本発明のゴム組成物にあっては、導電付与物質(C)が海相に偏在している。ここで、海/島構造は当業者が良く知っている概念である。
【0007】
水添ジエン系重合体(A)は、共役ジエンを重合することにより、あるいは共役ジエンを主体とする単量体混合物を共重合することにより、ジエン系重合体を得、このジエン系重合体中の不飽和二重結合を水素添加により飽和させて得ることができる。
【0008】
(A)水添ジエン系重合体の前駆体であるジエン系重合体としては、
▲1▼共役ジエンの単独重合体、
▲2▼共役ジエンと芳香族ビニル化合物とのランダム共重合体、
▲3▼芳香族ビニル化合物重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックとからなるブロック共重合体、
▲4▼芳香族ビニル化合物重合体ブロックと共役ジエン/芳香族ビニル化合物ランダム共重合体ブロックとからなるブロック共重合体、
▲5▼共役ジエン重合体ブロックと、共役ジエン/芳香族ビニル化合物ランダム共重合体ブロックとからなるブロック共重合体、
▲6▼共役ジエンとアクリロニトリルとのランダム共重合体、
▲7▼上記の(共)重合体の官能基変性(共)重合体
などを挙げることができる。
【0009】
水添ジエン重合体(A)の具体例としては、SEBS(商品名、シェル社製、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加物)、SEPS(商品名、シェル社製、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物)等を挙げることができるが、これらに制限されない。
水添ジエン重合体(A)のうち、特に好ましいものとして、下記に詳述する水添ジエン共重合体(A−1)を挙げることができる。
【0010】
水添ジエン共重合体(A−1)について詳述する。
水添ジエン共重合体(A−1)は、共役ジエン−芳香族ビニル化合物ランダム共重合体を主体とするジエン系重合体(以下「ジエン系重合体(a−1)」ともいう)を水素添加して得られるものである。ここで、「共役ジエン−芳香族ビニル化合物ランダム共重合体を主体とするジエン系重合体」は、共役ジエン−芳香族ビニル化合物ランダム共重合体のみならず該ランダム共重合体ブロックを50重量%以上の割合で含むブロック共重合体を包含する重合体である。
【0011】
ここで、水添共重合体(A−1)の前駆体であるジエン系重合体(a−1)の合成に供される共役ジエンとしては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン、クロロプレンなどを挙げることができ、これらのうち、工業的に利用でき、物性の優れた水添ジエン系重合体を得ることができる観点から、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエンが好ましく、1,3−ブタジエンおよびイソプレンが特に好ましい。
【0012】
また、ジエン系重合体(a−1)の合成に供される芳香族ビニル化合物としては、スチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルピリジンなどを挙げることができ、これらのうちスチレンおよびα−メチルスチレンが好ましい。
【0013】
ジエン系重合体(a−1)を構成する共役ジエンに由来する単位と芳香族ビニル化合物に由来する単位との重量比(共役ジエン/芳香族ビニル化合物)は、95/5〜40/60であることが好ましく、さらに好ましくは93/7〜50/50である。
また、ジエン系重合体(a−1)を構成するランダム共重合体あるいはそのブロックにおいて、不飽和二重結合全体に占める側鎖に存在する二重結合の割合は15%以上であることが好ましく、さらに好ましくは20%以上である。
【0014】
水添共重合体(A−1)の前駆体であるジエン系重合体(a−1)が、共役ジエン−芳香族ビニル化合物ランダム共重合体ブロックを含有するブロック共重合体である場合において、該ジエン系重合体(a−1)を構成する他の重合体ブロックとしては、芳香族ビニル化合物重合体ブロック、1,4−ポリブタジエンを主体とするポリブタジエンブロック、芳香族ビニル化合物が漸増する共役ジエン−芳香族ビニル化合物テーパー状ブロックなどを挙げることができる。
これらの重合体ブロックを有するジエン系重合体(a−1)および水添共重合体(A−1)は、耐ブロッキング性が向上して取り扱いが容易となるため、工業的に製造する上で有利である。
ジエン系重合体(a−1)が前記ブロック共重合体である場合において、「共役ジエン−芳香族ビニル化合物ランダム共重合体ブロック」がブロック共重合体中に占める割合は、通常50重量%以上、好ましくは60重量%以上である。
【0015】
ジエン系重合体(a−1)はカップリング剤残基を介して重合体分子鎖が延長または分岐されていてもよい。またその一部が部分的に3次元化していてもよい。
上記カップリング剤としては、例えばアジピン酸ジエステル、ジビニルベンゼン、メチルジクロロシラン、四塩化ケイ素、ブチルトリクロロケイ素、テトラクロロ錫、ブチルトリクロロ錫、ジメチルクロロケイ素、テトラクロロゲルマニウム、1,2−ジブロモエタン、1,4−クロロメチルベンゼン、ビス(トリクロロシリル)エタン、エポキシ化アマニ油、トリレンジイソシアネート、1,2,4−ベンゼントリイソシアネートなどを使用することができる。
【0016】
水添共重合体(A−1)における水素添加率、すなわちジエン系重合体(a−1)を構成するランダム共重合体(あるいはそのブロック)の共役ジエン部分における二重結合の飽和率は、80%以上であることが好ましく、さらに好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上である。飽和率が80%未満である場合には、これを含有する組成物を架橋して得られる架橋物(ゴム状弾性体)の耐熱性、圧縮永久歪特性が低下することがある。水添共重合体(A−1)の数平均分子量は50,000〜700,000の範囲にあることが好ましく、さらに好ましくは50,000〜600,000の範囲である。数平均分子量が50,000未満の場合には、最終的に得られる架橋物(ゴム状弾性体)が十分な機械的強度を有するものとならず、一方、数平均分子量が700,000を超える場合には、得られる組成物の流動性、加工性が低下し、表面の外観不良を招来する。
【0017】
水添共重合体(A−1)を得るための方法としては、例えば特開平3−72512号公報に記載の方法を挙げることができる。
なお、水添共重合体(A−1)は2種類以上の重合体を組み合わせて使用してもよい。
【0018】
本発明の導電性ゴム組成物に含有される水添ジエン系重合体(A)として、上記の水添共重合体(A−1)を官能基で変性した共重合体も好適に用いることができる。これらの官能基変性共重合体は、例えば一軸押出機、二軸押出機などの各種押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、連続式混練機など各種混練装置あるいはこれらの任意の組み合わせによる装置などを用い、水添共重合体(A−1)と、酸無水物基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、イソシアネート基およびエポキシ基から選ばれた少なくとも一種の官能基を有する不飽和化合物とを反応させることにより得ることができる。
【0019】
水添ジエン系重合体(A)のムーニー粘度(ML1+4、100℃)は、好ましくは30〜100である。
【0020】
次に本発明の導電性ゴム組成物に含有される水添ジエン系重合体(A)とは異なるゴム(B)(以下「他のゴム(B)」ともいう)は、上記水添ジエン系重合体(A)以外のゴム、例えば天然ゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン共重合体ゴム、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴム、エチレン−α−オレフィン−ポリエン共重合体ゴム、シリコーンゴム、ポリウレタンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム、エチレン−酢酸ビニルゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、エチレン−アクリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシドゴム、多硫化ゴム、フッ素ゴムなどを挙げることができる。これらは1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記他のゴム(B)のうち、好ましいゴムは、水添ジエン系重合体(A)に比し、(1)不飽和結合量の多いこと、(2)極性が高いこと、および(3)ムーニー粘度が低いことの3条件のうち少なくとも一つの条件を充足するゴムである。なかでも、他のゴム(B)のムーニー粘度(ML1+4,100℃)が水添ジエン系重合体(A)のそれよりも10以上、特には20以上低いゴムが他のゴム(B)としてとりわけ好ましい。この条件をはずれると、所望の海/島構造をとらず、下記する導電付与物質(C)が他のゴム(B)よりもむしろ水添ジエン系重合体(A)中に多く存在する場合があり、このような場合、加硫物が高硬度となるかあるいは導電性が劣る結果となり、好ましくない。
【0021】
条件(1)を満たすもの、すなわち、水添ジエン系重合体(A)に比し、不飽和結合量の多いゴムの好ましいものとしては、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム、ポリイソプレンゴムが挙げられる。
条件(2)を満たすもの、すなわち、水添ジエン系重合体(A)に比し、極性の高いゴムの好ましいものとしては、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、エチレン−アクリルゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキシドゴム、クロロプレンゴムが挙げられる
【0022】
上記水添ジエン系重合体(A)と他のゴム(B)とのブレンド方法としては、水添ジエン系重合体(A)と他のゴム(B)とを通常の方法でブレンドする方法、あるいは水添ジエン系重合体(A)、他のゴム(B)に加えて、水添ジエン系重合体(A)のみが架橋する架橋剤を添加して溶融混練し、水添ジエン系重合体(A)を架橋させるいわゆる動的架橋を行う方法を採ってもよい。
【0023】
水添ジエン系重合体(A)と他のゴム(B)の配合割合は、(A)98〜10重量部、(B)2〜90重量部、好ましくは(A)90〜20重量部、(B)10〜80重量部、さらに好ましくは(A)80〜30重量部、(B)20〜70重量部である。ここで水添ジエン系重合体(A)と他のゴム(B)の合計量は100重量部とする。水添ジエン系重合体(A)が98重量部を越えると、下記の導電性付与物質(C)の他のゴムからなる海相への偏在効果が少なくなり、一方、10重量部未満では加硫物が高硬度となり好ましくない。
【0024】
本発明における導電性付与剤(C)としては、これをポリマー中に分散させることにより、ポリマーの電気抵抗を低下させるものであり、一般に粒状をなしている。導電性付与剤(C)の具体例としては、EC(ExtraConductive)、ECF(Extra Conductive Furnace)、SCF(Super conductiveFurnace)、CF(Conductive Furace)、アセチレンブラック等(ケッチェンブラックEC(EC600JD)を含む。)、SAF(Super Abrasion Furnace)、ISAF(Intermediate SAF)、HAF(High Abrasion Furnace)、FEF(Fast Extruding Furnace)、GPF(General Purpose Furnace)、SAF(Semi Reinforcing Furnace)、FT(Fine Furnace)、MT(MediumThermal)などのカーボンブラック;AlドープZnO、SnO2(酸化アンチモンドープ)、被属、TiO2、SnO2(酸化アンチモンドープ)、被属SnO2、SnO2被属TiO2、K2O・nTiO2/SnO2SbO6、SnO2(酸化アンチモンドープ)被属複合酸化物などの金属酸化物;銅粉、銀粉、アルミニウム粉などの金属単体;ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレンなどの導電性ポリマー等を挙げることができる。
【0025】
このうち、好ましくは、カーボンブラックである。カーボンブラックの一次粒子径としては、10〜100nmのもの、好ましくは20〜80nm、更に好ましくは30〜60nmである。また、カーボンブラックのDBP吸油量としては、10〜2000mg/g、好ましくは50〜1000mg/g、更に好ましくは80〜500mg/gである。
これらの範囲を超えると、導電性と加工性のバランスがとれず、所望のものが得られない。
また、この範囲を超えると、環境依存性に劣ったり、また製造現場における計量の誤差に敏感に作用し、バラツキが大きくなり好ましくない。
【0026】
導電付与物質(C)は、所望の導電性の加硫物となるように適宜配合されるが、通常成分(A)と(B)の合計量100重量部に対して0.5〜200重量部、好ましくは1〜150重量部配合される。
【0027】
前述したように、本発明のゴム組成物は海/島構造を有しており、水添ジエン系重合体(A)が島相を形成し、水添ジエン系重合体(A)とは異なるゴム(B)が海相を形成している。そして、本発明のゴム組成物にあっては、導電付与物質(C)が海相に偏在している。ここで、「導電付与物質(C)が海相に偏在している」とは、導電付与物質(C)の濃度が島相よりも海相の方が高いことを意味し、好ましくはその濃度差が55重量%以上、より好ましくは60重量%以上である。
本発明の組成物をこのような構造とすることにより、本発明の目的が好ましく達成される。
このような相構造および導電付与物質(C)の偏在は、水添ジエン系重合体(A)とその他のゴム(B)と導電付与物質(C)とを混練りする際に、その他のゴム(B)として、上記した条件、即ち水添ジエン系重合体(A)に比し、(1)不飽和結合量の多いこと、(2)極性が高いこと、および(3)ムーニー粘度が低いことの3条件のうち少なくとも一つの条件を充足するその他のゴム(B)を用いることによって形成することができる。とりわけ、他のゴム(B)として、そのムーニー粘度(ML1+4、100℃)が水添ジエン系重合体(A)のそれよりも10以上、特には20以上低い他のゴム(B)を用いることが好ましい。
【0028】
本発明の導電性ゴム組成物においては、必要に応じてイオン性導電性付与剤、可塑剤、軟化剤、充填剤、加工助剤、老化防止剤、滑剤、スコーチ防止剤、シランカップリング剤等を添加してもよい。イオン性導電性付与剤としては、例えば、次の一般式(I)で表される過塩素酸の第四級アンモニウム塩および/または次の一般式(II)で表されるポリアルキレングリコールの脂肪族カルボン酸ジエステルの群から選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。
【0029】
【化1】
【0030】
(式中、R1は炭素数2〜20の脂肪族または芳香族カルボン酸から全てのカルボキシル基を除く基を示し、R 2 及びR 3 は、各々独立に、炭素数1〜20のアルキル基または炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基を示し、A1およびA2は、各々独立に、炭素数2〜4のアルキレン基を示し、mは0〜20の整数であり、nは1〜20の整数であり、R4は炭素数4〜22のアルキル基、炭素数7〜20のアラルキル基またはR'CONHR"−(但し、R'は炭素数1〜20のアルキル基またはアルケニル基、R"は炭素数1〜10のアルキレン基である。)を示し、R5は炭素数1〜20のアルキル基を示し、xは0〜3の整数で、yは1〜4の整数であり、(x+y)はR1の価数に等しい。)
【0031】
【化2】
【0032】
(式中、R6およびR8は各々独立に炭素数4〜18の脂肪族モノカルボン酸からカルボキシル基を除いた基を示し、R7は炭素原子数2〜4のアルキレン基を示し、kは2〜30の整数である。)
【0033】
本発明の導電性ゴム組成物は、加硫するための加硫剤や下記する各種の成分をロール、ニーダー、バンバリーミキサ、などの混練装置により均一に混合することによって得られる。得られた組成物は、例えば帯電部材に使用されるロール、ブレード、ベルト等に適用するために所望の形状に成形される。成形方法は特に限定されず、通常の方法を採用することができる。例えば、プレス成形、トランスファー成形、押し出し成形、インジェクション成形、などの方法が挙げられる。加硫は上記成形と同時に加熱することにより、あるいは成形物を電子線、高周波、空気加熱等の方法で加熱して行なうことができる。また、カレンダー成形、溶剤に溶かしてからのコーテイングやディップ成形などの成形方法により、加硫、成形することも可能である。
【0034】
加硫剤としては、用いるゴム種により異なり、硫黄系加硫剤、有機過酸化物、キノイド加硫剤、樹脂加硫剤、金属酸化物加硫剤、含硫黄有機化合物、アミン加硫剤、トリアジン系加硫剤、ポリオール加硫剤、金属石けん系加硫剤、マレイミド系加硫剤等を挙げることができる。
【0035】
硫黄系加硫剤として粉末硫黄、硫黄華、高分散性硫黄、不溶性硫黄、沈降硫黄、表面処理硫黄、コロイド硫黄、塩化硫黄、一塩化硫黄、二塩化硫黄等を挙げることができる。
加硫剤として硫黄系加硫剤を使用する場合には、加硫促進剤を使用することができる。
【0036】
加硫促進剤の具体的な例としては、例えば、ヘキサメチレンテトラミン、アセトアルデヒドアンモニア等のアルデヒドアンモニア類:n−ブチルアルデヒド−アニリン縮合品、ブチルアルデヒド−モノブチルアミン縮合品、ヘプトアルデヒド−アニリン反応品、トリクロトニリデンテトラミン等のアルデヒドアミン類:ジフェニルグアニジン、ジ−o−トリルグアニジン、オルトトリルビグアニド、ジカテコールホウ酸のジオルトトリルグアニジン塩等のグアニジン塩類:2−メルカプトイミダゾリン等のイミダゾリン:2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトチアゾリン、ジベンゾチアジルジスルフィド、2−メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、2−メルカプトベンゾチアゾールのナトリウム塩、2−メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、2−(2,4−ジニトロフェニルチオ)ベンゾチアゾール、2−(N,N−ジエチルチオカルバモイルチオ)ベンゾチアゾール、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール、4−モルホニル−2−ベンゾチアジルジスルフィド等のチアゾール:N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N,N−ジイソプロピル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド等のスフェンアミド類:チオカルバニド、エチレンチオ尿素(2−メルカプトイミダゾリン)、ジエチルチオ尿素、ジブチルチオ尿素、混合アルキルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、ジラウリルチオ尿素等のチオ尿素類:ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジ−n−ブチルカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸鉛、ジアミルジチオカルバミン酸鉛、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジアミルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ−n−ブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、N−ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、ジエチルジチオカルバミン酸セレン、ジエチルジチオカルバミン酸テルル、ジエチルジチオカルバミン酸カドミウム、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジメチルジチオカルバミン酸鉄、ジメチルジチオカルバミン酸ビスマス、ジメチルジチオカルバミン酸ピペリジン、メチルペンタメチレンジチオカルバミン酸ピペコリン、活性化ジチオカルバメート等のジチオカルバミン酸塩類:テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、活性テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、N,N’−ジメチル−N,N’−ジフェニルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、混合アルキルチウラムジスルフィド等のチウラム類:イソプロピルキサントゲン酸ナトリウム、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛、ブチルキサントゲン酸亜鉛等のザンテート類:4,4’−ジチオジモルホリン、アミノジアルキルジチオホスフェート、亜鉛−o,o−n−ブチルホスホロジチオエート、3−メルカプトイミダゾリン−チオン−2、チオグリコール酸エステル等を挙げることができる。これらは一種類単独あるいは2種類以上混合して使用され得る。
【0037】
有機過酸化物としては、1,1−ジ−tert−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン、1,3−ビス−(tert−ブチルパーオキシ−イソプロピル)ベンゼン、tert−ブチルパーオキシ−イソプロピルカーボネート、アセチルシクロヘキシルスルフォニルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジアリルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、ジ(メトキシイソプロピル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、tert−ヘキシルパーオキシネオヘキサネート、ジ(3−メチル−3−メチロキシブチル)パーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシネオデカネート、tert−ヘキシルパーオキシネオデカネート、tert−ブチルパーオキシネオヘキサネート、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキシド、tert−ヘキシルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーヘキシピバレート、3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、クミルパーオキシオクテート、アセチルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサネート)、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、tert−ブチルパーオキシマレイックアシッド、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチルパーオキシ3,3,5−トリメチルヘキサネート、シクロヘキサノンパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシアリルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)オクタン、tert−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、ジ−tert−ブチルジパーオキシイソフタレート、メチルエチルケトンパーオキサイド、α,α’−ビス(tert−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ヘキサン、ジ−イソプロピルベンゼン−ヒドロパーオキサイド、p−メタンヒドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、tert−ブチルヒドロパーオキサイドなどを挙げることができる。これらは、一種類単独あるいは二種類以上混合して使用され得る。
【0038】
加硫剤として有機過酸化物を使用する場合には、有機過酸化物と併用して硫黄、p−キノンジオキシム、p−ベンゾキノンジオキシム、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシム、N−メチル−N−4−ジニトロソアニリン、N,N’−m−フェニレンジマレイミド、ジペンタメチレンチウラムペンタスルフィド、ジニトロソベンゼン、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアジンチオール、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、トリメトロールプロパントリアクリレート、エリスリトールテトラメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ジアリルメラミン、トリメタクリレート、ジメタクリレート、ジビニルアジペート、ビニルブチラート、ビニルステアレート、液状ポリブタジエンゴム、液状ポリイソプレンゴム、液状スチレン−ブタジエンゴム、液状アクリロニトリル−ブタジエンゴム、マグネシウムジアクリレート、カルシウムジアクリレート、アルミニウムアクリレート、亜鉛アクリレート、スタナスアクリレート、メタクリル酸亜鉛、メタクリル酸マグネシウムジメタクリル酸亜鉛等の共架橋剤を配合することができる。
【0039】
キノイド加硫剤としては、p−キノンジオキシム、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシム、テトラクロロ−p−ベンゾキノン、ポリ−p−ジニトロベンゼン等を挙げることができる。樹脂加硫剤としては、アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド縮合物、トリアジン−ホルムアルデヒド縮合物、オクチルフェノールホルムアルデヒド樹脂、アルキルフェノールスルフィド樹脂、ヘキサメトキシメチルメラミン樹脂等を挙げることができる。金属酸化物加硫剤としては、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、一酸化鉛等を挙げることができる。含硫黄有機加硫剤としては、モルホリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、N、N’−ジチオ−ビス(ヘキサヒドロ−2H−アゼピノン−2)、チウラムポリスルフィド、2−(4’−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール等を挙げることができる。
【0040】
ポリアミン系加硫剤としては、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、N,N’−1,6−ヘキサンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)カルバメート、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミン、アンモニウムベンゾエート等を挙げることができる。
【0041】
トリアジン系加硫剤としては、2,4,6−トリメルカプト−s−トリアジン、2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン等を挙げることができる。ポリオール系加硫剤としては、ビスフェノールA、ビスフェノールAF、ハイドロキノン、ペンタエリトリトール等を挙げることができる。金属石けん系加硫剤としては、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム等を挙げることができる。マレイミド系加硫剤としては、N,N’−m−フェニレンジマレイミド等を挙げることができる。
【0042】
上記充填材としては、例えば、重質炭酸カルシウム、胡粉、軽微性炭酸カルシウム、極微細活性化炭酸カルシウム、特殊炭酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、カオリンクレー、焼成クレー、パイロフライトクレー、シラン処理クレー、天然ケイ酸、合成無水ケイ酸、合成含水ケイ酸、合成ケイ酸カルシウム、合成ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、カオリン、セリサイト、タルク、微粉タルク、ウォラストナイト、ゼオライト、ゾーノトナイト、マイカ、アスベスト、PMF(Processed
Mineral Fiber、セピオライト、チタン酸カリウム、エレスタダイト、石膏繊維、ガラスバルーン、シリカバルーン、ハイドロタルサイト、フライアッシュバルーン、シラスバルーン、カーボン系バルーン、フェノール樹脂、尿素樹脂、スチレン系樹脂、サラン樹脂等の有機系バルーン、アルミナ、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、二硫化モリブデン、グラファイト、ガラス繊維(チョップドストランド、ローピング、ミルドガラス繊維、ガラスフレーク)、カットファイバー、ロックファイバー、ミクロファイバー、炭酸繊維、芳香族ポリアミド繊維、チタン酸カリウム繊維、再生ゴム、ゴム粉末、エボナイト粉末、セラック、木粉等を挙げることができる。
【0043】
着色剤としては、酸化チタン、酸化亜鉛、リトポン、バライト、沈降性硫酸バリウム、炭酸カルシウム、せっこう、カーボンブラック、鉛白、弁柄等の無機顔料、不溶性ジスアゾ系、縮合アゾ系、イソインドリノン系、ベンズイミダゾロン系、アニリンブラック等の有機顔料が挙げられる。
【0044】
滑剤としては、例えば、ステアリン酸、オレイン酸、ラウリル酸、ジブチルアンモニウムオレート、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム等を挙げることができる。
【0045】
金属酸化物としては、例えば、亜鉛華、活性亜鉛華、表面処理亜鉛華、炭酸亜鉛、複合亜鉛華、複合活性亜鉛華、表面処理酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、極微細水酸化カルシウム、一酸化鉛、鉛丹、鉛白等を挙げることができる。
【0046】
軟化剤としては石油系軟化剤、植物油系軟化剤、サブを挙げることができる。石油系軟化剤としては、アロマティック系、ナフテン系、パラフィン系軟化剤等を挙げることができる。植物系軟化剤としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、木ろう等を挙げることができる。サブとしては、黒サブ、白サブ、飴サブ等を挙げることができる。
【0047】
可塑剤としては、フタル酸系、イソフタル酸系、テトラヒドロフタル酸系、アジピン酸系、アゼライン酸系、セバシン酸系、ドデカン−2−酸系、マレイン酸系、フマル酸系、トリメリット酸系、クエン酸系、イタコン酸系、リシノール酸系、ステアリン酸系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリエーテルエステル系、ホスフェート系、グリコール系、エポキシ系等の可塑剤を挙げることができる。
【0048】
老化防止剤としてナフチルアミン系、ジフェニルアミン系、p−フェニレンジアミン系、キノリン系、ヒドロキノン誘導体系、モノ、ビス、トリス、ポリフェノール系、チオビスフェノール系、ヒンダートフェノール系、亜リン酸エステル系、イミダゾール系、ジチオカルバミン酸ニッケル塩系、リン酸系の老化防止剤等を挙げることができる。
【0049】
その他、必要に応じて、酸化防止剤、加工助剤、活性剤、紫外線吸収剤、粘着付与剤、奪水剤、ワックス、活性剤、光安定剤、カップリング剤、内部離型剤、スコーチ防止剤、発泡剤、発泡助剤、抗菌剤、難燃剤、素練り促進剤等を任意に添加することができる。
【0050】
本発明の導電性ゴム組成物の加硫物は、導電性を有し、特定の電気抵抗値に制御が容易であるので、自動車部品、ホース、ベルト、コピー、ファックス、プリンター等の各種ロール、履物、AV機器、OA機器、シール材等などの製造に使用することができる。
【0051】
【実施例】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の%および部は、特に断らない限り、重量基準である。また、実施例において、各種測定は、下記の方法に拠った。
【0052】
(1)結合スチレン量
699cm −1 のフェニル基の吸収に基づいた赤外法による検量線から求めた。
(2)ビニル結合量
赤外法(モレロ法)により測定した。
(3)重量平均分子量、分子量分布、カップリング率
ゲルパーメーションクロマトグラフィー(GPC)法により求めた。
(4)水添率
四塩化炭素を溶媒として用い、15%濃度の 1 H−NMRの不飽和結合部のスペクトルの減少より求めた。
(5)引張試験
JIS K6251に準拠して、JIS 3号形試験片を用いて25℃で測定した。
(6)硬度
JIS K6253に準拠して、硬度(デユロ A)を測定した。
(7)圧縮永久歪試験
JIS K6262に準拠して、70℃×22時間、圧縮率25%で測定した。
【0053】
(8)体積固有抵抗値
・環境依存性:加硫ゴムシートを用いJIS
K6723に従い測定した。環境条件としては、L/L(10℃、15%RH)、M/M(25℃、50%RH)、H/H(30℃、85%RH)の条件でそれぞれ測定した。
・バッチ間バラツキ:同一配合系で5バッチを混練りおよび架橋したものの各バッチから加硫シートを作製し、M/M(25℃、50%RH)の環境下で、JIS
K6723に従い測定し、バラツキ範囲を求めた。
・位置バラツキ:加硫ゴムシートを用い、三菱化学(株)製
ハイレスタIPを用い、加硫ゴムシート(150×150×2mm)についてシート表面を5×5の25の格子に区分し、各ポイントにおける体積固有抵抗値を測定し、位置バラツキの範囲を求め、最大値と最小値の差を算出した。
(9)海島構造の確認加硫シートを透過型電子顕微鏡で観察し、連続相/非連続相(海相/島相)構造の形成を確認した。
(10)導電性付与物質の偏在加硫シートを透過型電子顕微鏡で観察することにより、連続相(海相)中にカーボンブラックが多く存在することを確認した。
【0054】
実施例1〜5、比較例1、2
表1に示す水添ジエン重合体(A−1〜A−4)を、表2に示す配合に従い、バンバリー型ミキサー(容量1700cc)を用い、設定温度100℃、回転数60rpmで5分間混練りした。得られた配合物を用い、圧力100kg/cm 2 、温度170℃で20分加硫したものを、2mm厚加硫ゴムシートおよび圧縮永久歪測定用試験片として、各種試験に供した。結果を表3に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
(A):水添ジエン系共重合体(A)
(B):その他のゴム(B)
【0058】
表2に記載される各成分は、下記の通りである。
(1)N230S:JSR(株)製 NBR(ムーニー粘度、ML1+4,100℃:56)
(2)エピクロマーCG102:ダイソー(株)製 CHC(ムーニー粘度、ML1+4,100℃:65)
(3)SBR 1502:JSR(株)製 SBR(ムーニー粘度、ML1+4,100℃:52)
(4)EP43:JSR(株)製 EPDM(ムーニー粘度、ML1+4,100℃:47)
(5)ケッチェンブラック:ライオン(株)製 カーボンブラック
(6)ダイヤブラック 3030B:三菱化成(株)製 カーボンブラック
(7)トーカブラック #5500:東海カーボン(株)製 カーボンブラック
(8)LV70:旭電化(株)製 導電性可塑剤
(9)LV808:旭電化(株)製 導電性可塑剤
(10)RS700:旭電化(株)製 可塑剤
(11)パーカドックス14/40:化薬アクゾ(株)製 架橋剤
(12)バルノックPM:大内新興化学工業(株)製 架橋助剤
(13)ノンスコーチN:精工化学(株)製 加硫遅延剤
【0059】
実施例1〜5は低硬度、低圧縮永久歪であり、優れた電気特性を示した。これに対し、水添ジエン系共重合体(A)が海相を形成している比較例1の場合、および海島構造をとらない比較例2の場合は上記いずれかの特性に問題があることがわかる。
【0060】
【発明の効果】
本発明の導電性ゴム組成物から得られた加硫ゴムは、加硫ゴム本来の特性を損なうことなく、103〜1010Ω・cmの範囲内の任意の体積固有抵抗値(V.R.)で、環境の変化に対し、1オーダー以内に制御することができ、また、バラツキも小さく、硬さ、圧縮永久歪においても良好な結果を得ることができる。したがって、本発明のゴム組成物は、特に、LCD関連分野、LSI関連分野、IC関連分野、OA機器、AV機器、家電機器等の導電性あるいは帯電防止性が要求される分野、特に電子写真技術を用いたプリンタ、複写機等の帯電・現像・転写ロール等に極めて好適に使用することができる。
Claims (8)
- 〔I〕(A)水添ジエン系重合体98〜10重量部、(B)水添ジエン系重合体(A)とは異なるゴム2〜90重量部(ここで、(A)と(B)の合計量は100重量部とする)、および(C)導電付与物質を含有し、〔II〕水添ジエン系重合体(A)が島相を形成し、水添ジエン系重合体(A)とは異なるゴム(B)が海相を形成している海/島構造を有しており、そして〔III〕(C)導電付与物質が海相に偏在していることを特徴とする導電性ゴム組成物。
- (A)水添ジエン系重合体が、共役ジエン−芳香族ビニル化合物ランダム共重合体を主体とするジエン系重合体の共役ジエン部分の二重結合の80%以上が飽和された水素添加物であることを特徴とする請求項1に記載の導電性ゴム組成物。
- (B)水添ジエン系重合体(A)とは異なるゴムが、下記[1]〜[3]の少なくとも1つの条件をみたすゴムである請求項1又は2に記載の導電性ゴム組成物。
[1](A)水添ジエン系重合体に比べ、不飽和結合量が多い
[2](A)水添ジエン系重合体に比べ、極性が高い
[3](A)水添ジエン系重合体に比べ、ムーニー粘度が低い - (B)水添ジエン系重合体(A)とは異なるゴムは、(A)水添ジエン系重合体に比べ、ムーニー粘度(ML1+4,100℃)が10以上低い請求項3に記載の導電性ゴム組成物。
- (C)導電付与物質が、カーボンブラックである請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性ゴム組成物。
- (C)導電付与物質の配合量が、(A)水添ジエン系重合体と(B)水添ジエン系重合体(A)とは異なるゴムとの合計量100重量部に対して、0.5〜200重量部である請求項1〜5のいずれか1項に記載の導電性ゴム組成物。
- 上記導電性ゴム組成物は、加硫剤を含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の導電性ゴム組成物。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の導電性ゴム組成物を用いて製造された事務機器用ゴム部材。
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