JP4347502B2 - 車両用液圧マスタシリンダのリザーバ - Google Patents

車両用液圧マスタシリンダのリザーバ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両のブレーキ用またはクラッチ用の液圧マスタシリンダに作動液を補給するリザーバに係り、詳しくは、このリザーバが二系統用タンデム型液圧マスタシリンダ用であって、貯液室内にリザーバ液面の減少を検知する液面検知装置を備えたリザーバに関する。
【0002】
【従来の技術】
車両のブレーキやクラッチを液圧で作動する液圧マスタシリンダにあっては、例えば実開昭63−202560号公報や実開平3−73257号公報に示される如きリザーバが用いられている。
【0003】
これらのリザーバは、その底壁に液圧マスタシリンダのシリンダ孔と連通する第1ユニオン孔と第2ユニオン孔とを備えた二系統タンデム型の液圧マスタシリンダ用であって、リザーバをこの液圧マスタシリンダの上部に一体に組み付けて、乗員室との間をダッシュパネルで仕切ったエンジン室に配設している。
【0004】
リザーバ内部で作動液を貯留する貯液室には、液面検知装置が設けられるようになっている。検知装置の多くは、貯液室底部に配設されるリードスイッチと、該リードスイッチの上方で液面に浮くフロートとの組み合わせが用いられており、液面の減少に伴って下降するフロートがリードスイッチに近接した際に、リードスイッチの接点が閉じて警報器や警告灯を作動させることにより、貯液室内の作動液が所定の液量まで減少したことを運転者に報知するようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、近年のエンジン室内部は、収納部品のレイアウトが複雑化してきており、さらに液圧マスタシリンダとリザーバとが配設されるダッシュパネルの近傍では、乗員室内のインストルメントパネルやフロントガラスが上方に張り出してきていて、液圧マスタシリンダとリザーバの取り付け位置や形状を大きく制約するものとなっている。
【0006】
このため、液圧マスタシリンダの上部に位置するリザーバは、その高さが低く抑えられた扁平な形状となり、これによる容積の不足を車体前後方向に長さをとることによって補うと共に、ダッシュボードやフロントガラスの張り出しを外れた上面車体前部側に注液口を設定した構造となっている。この結果、貯液室内の作動液は、車体のわずかな挙動にも液面が波立ったり車体前後方向へ変動するようになり、これに液面上のフロートが敏感に反応して液面検知装置のリードスイッチに誤作動を招いたり、ユニオン孔が液面から露出してしまう虞を生じる。
【0007】
この対策として、貯液室内部を複数の小室に仕切ったものも提案されているが、注液口が開口する車体前部側室は第1ユニオン孔と第2ユニオン孔のいずれにも連通しておらず、ここに溜められた作動液を活用するものではなかった。
【0008】
本発明は、このような実情を背景にしてなされたもので、その目的とするところは、高さが低く抑えられるために車体前後方向に長いリザーバ形状であっても、貯液室内の作動液を活用して、液面検知装置の誤動作とユニオン孔の露出とを極力防止することのできる車両用液圧マスタシリンダのリザーバを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上述の目的に従って、リザーバの車体前部側上部に注液口を備え、該リザーバの底壁にタンデム型液圧マスタシリンダのシリンダ孔と連通する第1ユニオン孔と第2ユニオン孔とを備え、リザーバ内部の貯液室にリードスイッチとフロートとを用いた液面検知装置を有する車両用液圧マスタシリンダのリザーバにおいて、前記貯液室の内部に2枚の仕切壁を車体幅方向に配設して貯液室内部を三室に画成し、該三室を車体前部側から第1貯液室,第2貯液室,第3貯液室となして、前記注液口を第1貯液室に連通させ、該第1貯液室と前記第2貯液室とを仕切る車体前部側の仕切壁を前記第1ユニオン孔の上面に配設して、該第1ユニオン孔を第1貯液室及び第2貯液室の双方に連通させると共に、前記車体前部側の仕切壁の一側上部に開口を形成し、第1貯液室と第2貯液室とを前記開口及び第1ユニオン孔を通して連通させ、前記第2ユニオン孔を前記第3貯液室に連通させ、前記液面検知装置を前記第2貯液室又は第3貯液室のいずれか一方に配設すると共に、該第2貯液室と第3貯液室とを仕切る車体後部側の仕切壁の上部に開口を設けて、第2貯液室と第3貯液室とを連通せしめたことを特徴としている。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示の形態例に基づいて説明する。
図中、図1〜図4は本発明の第1形態例を示し、図1は液圧マスタシリンダの一部断面正面図、図2は図1のII−II断面図、図3は同じく図1のIII−III断面図、図4は同じく図1のIV−IV矢視図である。図5は本発明の第2形態例を示すリザーバの下ハーフの平面図である。
【0011】
図1〜図4に示す第1形態例では、乗員室とダッシュパネルにて仕切られた(いずれも図示しない)車体前部側のエンジン室1に、ブレーキ用の液圧マスタシリンダ2がダッシュパネルに近接して設けられている。液圧マスタシリンダ2は、シリンダボディ3の内部で昇圧した作動液を二つのブレーキ系統に供給するタンデム型で、シリンダボディ3の上部には貯液室4内に作動液を貯留するリザーバ5が一体に取り付けられている。
【0012】
上記リザーバ5は、剛性樹脂製の下ハーフ6aと上ハーフ6bとを融着面6cで熱融着して、その内部を上述の貯液室4としており、液圧マスタシリンダ2のシリンダボディ3とは、双方のボス部6d,6e,3a,3bを内外に嵌合し、さらにこれらの間で重ね合わせされる双方のフランジ6f,3cにねじ7を螺着することによって一体に連結されている。リザーバ5の車体後部側は、その上方に乗員室のインストルメントパネル8が張り出していることから、高さを低く抑えた比較的扁平な形状であるのに対し、リザーバ5の車体前部側をインストルメントパネル8の前方へ延長して立ち上がる形状としており、このようにリザーバ5を車体前後方向に長く形成することによって、車体後部側で制約された貯液室4の容積を車体前部側で補うようにしている。
【0013】
リザーバ5の車体前部側上面には注液口10が設けられ、該注液口10にリザーバキャップ11とストレーナ12とが装着されている。車体後部側の傾斜底壁6gの下面に突出する前述のボス部6d,6eには、第1ユニオン孔13と第2ユニオン孔14とが穿設されており、貯液室4内の作動液をユニオン孔13,14より液圧マスタシリンダ2内のシリンダ孔へ供給するようにしている。
【0014】
下ハーフ6aと上ハーフ6bには長短多数のリブが縦横に設けられていて、双方のハーフ6a,6bを接合した際に融着面6cで突き合わせされるようになっており、このうち短いリブをリザーバ5の補強用と作動液の波立ち防止用との兼用リブ6hとなしている。
【0015】
また、車体幅方向に横切る2つの長いリブは、貯液室4内を三室に仕切る仕切壁6i,6jであって、貯液室4を車体前部側の第1貯液室4aと中間部の第2貯液室4bと車体後部側の第3貯液室4cとに画成している。注液口10は第1貯液室4aに配設され、該第1貯液室4aと第2貯液室4bとに第1ユニオン孔13が跨って配設されると共に、第3貯液室4cには第2ユニオン孔14と液面検知装置15とが配設されている。
【0016】
車体前部側の仕切壁6iは、クランク形に折れ曲がっていて第1ユニオン孔13の中心軸上を車体前後方向へ横切っており、第1ユニオン孔13を第1貯液室4aと第2貯液室4bとの双方に開口させている。仕切壁6iの一側部上側には開口17が形成されており、第1貯液室4aと第2貯液室4bとは、この開口17と第1ユニオン孔13を通して連通している。
【0017】
車体後部側の仕切壁6jには、第3貯液室4c側にスリット16を切り込んだC字状の筒体6kとなっていて、傾斜底壁6gから融着面6cよりもやや低い高さで設けられており、この筒体6k内を液面検知装置15のフロート室18となすと共に、フロート室18を第3貯液室4cの一部としている。筒体6kの上部と仕切壁6jの一側部筒体側には連続した開口19があって、第2貯液室4bと第3貯液室4cとはこの開口19を通して連通している。
【0018】
傾斜底壁6gには、リードスイッチ20が仕切壁6jに略沿って埋設され、該リードスイッチ20とフロート室18内に配設される円盤状のフロート21とで前述の液面検知装置15が構成されており、フロート21に埋設したマグネット22がリードスイッチ20に所定距離まで近接した際に、マグネット22がリードスイッチ20の接点を励磁してこれを閉じるようにしている。
【0019】
貯液室4には、注液口10に被着したリザーバキャップ11の直下まで作動液が充填され、フロート室18内部のフロート21は、この状態において上ハーフ6bの天板と当接する上限位置にあり(図1参照)、リードスイッチ20の接点は開している。また、第3貯液室4c内の作動液が減少するとフロート21も液面を下降して行き、第3貯液室4c内の作動液が所定の最低液量まで減少した際には、フロート21のマグネット22がリードスイッチ20に近接して該スイッチ20の接点を閉じ、運転席近傍に設けられた警報器や警告灯を作動してこれを報知する(図2)。
【0020】
本形態例は以上のように、リザーバ5内の貯液室4に充填した作動液は、仕切壁6i,6j上部の開口17,19と、第1,第2貯液室4a,4bに連通する第1ユニオン孔13とを通して第1〜第3貯液室4a〜4cに万遍なく供給されて行き、作動液の液面が開口17,19よりも低下した場合には、仕切壁6i,6jによってそれぞれの貯液室4a〜4cに所要の液量が確保される。
【0021】
貯液室4a〜4cのそれぞれは、車体前後方向に長い貯液室4を小さく仕切った小室であるため、作動液が開口17,19よりも減少した状態から、車体が前後左右に挙動するなどして作動液が偏ったり液面が波立つことがあっても、貯液室4a〜4c内部の作動液量を仕切壁6i,6jによって確保することができるばかりか、その変動を小さく抑えることが可能で、液面検知装置15の誤作動を極力防止できると共に、第1,第2ユニオン孔13,14が液面に露出する虞が少ないものとなる。
【0022】
さらに、第1ユニオン孔13を第1,第2貯液室4a,4bの双方に連通させているので、従来活用されていなかった第1貯液室の作動液を、第2貯液室4bの作動液と共に有効に活用することができるようになり、液圧マスタシリンダ2のシリンダ孔へ供給する作動液を充分に確保することができるようになる。
【0023】
また本形態例は、筒体6k内に専用のフロート室18を設けてフロート21を収容するようにしたから、フロート室18内に充分な作動液を確保しながら作動液の変動を一層小さく抑えることが可能で、液面検知装置15の誤作動をより確実に防止することができる。
【0024】
図5の第2形態例に示すリザーバ30では、第1貯液室4aと第2貯液室4bとを仕切る車体前部側の仕切壁6mが、第1ユニオン孔13の中心軸上を車体幅方向へ横切って直線状に設けられており、その他の構成については上述の第1形態例と略同様に構成されている。
【0025】
尚、上述の第1,第2形態例では、液面検知装置第3貯液室に設けて説明したが、液面検知装置は第2貯液室に設けてもよい。また液面検知装置のフロートは、形態例のように仕切壁の一部を変形した筒体内のフロート室に収容することが、フロート室内に作動液をより充分確保できて誤作動を防止するのに有益であるが、本発明は専用のフロート室を省略しても誤作動の防止を達成することが可能である。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の車両用液圧マスタシリンダのリザーバによれば、車体が前後左右に挙動するなどして作動液が偏ったり液面が波立つことがあっても、第1〜第3貯液室のそれぞれに作動液を確保してその変動を小さく抑えることが可能となり、液面検知装置の誤作動を極力防止できると共に、第1,第2ユニオン孔が液面に露出しにくくなる。さらに、第1,第2貯液室に連通する第1ユニオン孔によって、従来活用されていなかった第1貯液室の作動液を第2貯液室の作動液と共に有効に活用することが可能で、液圧マスタシリンダのシリンダ孔へ供給する作動液を充分に確保することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1形態例を示す液圧マスタシリンダの一部断面正面図
【図2】 本発明の第1形態例を示す図1のII−II断面図
【図3】 本発明の第1形態例を示す図1のIII−III断面図
【図4】 本発明の第1形態例を示す図1のIV−IV断面図
【図5】 本発明の第2形態例を示すリザーバの下ハーフの平面図
【符号の説明】
1…エンジン室、2…ブレーキ用の液圧マスタシリンダ、3…シリンダボディ、4…貯液室、4a…第1貯液室、4b…第2貯液室、4c…第3貯液室、5…リザーバ、6a…下ハーフ、6b…上ハーフ、6c…融着面、6h…補強用と作動液の波立ち防止用との兼用リブ、6i,6j,6m…仕切壁、6k…筒体、8…インストルメントパネル、10…注液口、13…第1ユニオン孔、14…第2ユニオン孔、15…液面検知装置、17,19…開口、18…フロート室、20…リートスイッチ、21…フロート、22…マグネット

Claims (1)

  1. リザーバの車体前部側上部に注液口を備え、該リザーバの底壁にタンデム型液圧マスタシリンダのシリンダ孔と連通する第1ユニオン孔と第2ユニオン孔とを備え、リザーバ内部の貯液室にリードスイッチとフロートとを用いた液面検知装置を有する車両用液圧マスタシリンダのリザーバにおいて、前記貯液室の内部に2枚の仕切壁を車体幅方向に配設して貯液室内部を三室に画成し、該三室を車体前部側から第1貯液室,第2貯液室,第3貯液室となして、前記注液口を第1貯液室に連通させ、該第1貯液室と前記第2貯液室とを仕切る車体前部側の仕切壁を前記第1ユニオン孔の上面に配設して、該第1ユニオン孔を第1貯液室及び第2貯液室の双方に連通させると共に、前記車体前部側の仕切壁の一側上部に開口を形成し、第1貯液室と第2貯液室とを前記開口及び第1ユニオン孔を通して連通させ、前記第2ユニオン孔を前記第3貯液室に連通させ、前記液面検知装置を前記第2貯液室又は第3貯液室のいずれか一方に配設すると共に、該第2貯液室と第3貯液室とを仕切る車体後部側の仕切壁の上部に開口を設けて、第2貯液室と第3貯液室とを連通せしめたことを特徴とする車両用液圧マスタシリンダのリザーバ。
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