JP4344961B2 - 2−(4−シアノフェニル)ピリジン誘導体の製造方法 - Google Patents

2−(4−シアノフェニル)ピリジン誘導体の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電気光学的液晶表示材料として有用な、2−(4−シアノフェニル)ピリジン誘導体である液晶性化合物の新規製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示素子は、時計、電卓をはじめとして、各種測定機器、自動車用パネル、ワープロ、電子手帳、プリンター、パソコン、テレビ等に用いられるようになっている。液晶表示方式としては、その代表的なものにTN(捩れネマチック)型、STN(超捩れネマチック)型、DS(動的光散乱)型、GH(ゲスト・ホスト)型あるいは高速応答が可能なFLC(強誘電性液晶)等を挙げることができるが現在のところTN型及びSTN型が主流である。また駆動方式としても従来のスタティック駆動からマルチプレックス駆動が一般的になり、単純マトリックス駆動からさらにアクティブマトリックス駆動が実用化されている。
【0003】
これら表示方式や駆動方式の発展に伴い液晶材料においてもよりすぐれた特性が要求されるようになっており、これまでに極めて多種の液晶化合物が合成されている。
【0004】
ところで上記TN型及びSTN型液晶表示方式は電界応答型であり、液晶材料としては通常誘電率異方性が正のいわゆるp型液晶が用いられる。p型液晶としては既に多くの化合物が開発されているが、そのなかで最もよく用いられているものは4−シアノベンゼンの誘導体である。
【0005】
この4−シアノベンゼン誘導体の中で例えば式(A)
【0006】
【化7】
Figure 0004344961
【0007】
(式中、R’はアルキル基を表す。)で表される2−(4−シアノフェニル)ピリジン誘導体が報告(M.F.Grebyonkin et. al., Mol. Cryst. Liq. Cryst., 129, 245(1985)に記載)されており、これは低粘性で液晶性に優れ、かつ閾値電圧の低減効果にも優れるといった特徴を有する有用な化合物である。
【0008】
しかしながら、この(A)の化合物は2−(4−シアノフェニル)ピリジン誘導体としては最も簡単な構造を有するにもかかわらず、その製造は決して容易ではなかった。その公知の製造方法を以下に示す。(製法A)
【0009】
【化8】
Figure 0004344961
【0010】
以上からわかるように、製法Aは出発原料の4−ブロモアセトフェノンから6工程、また第3工程で用いるエナミンも別途調製が必要であるなど、工程数が極めて多い。そのためその製造には長い日数を必要とし、非常にコストがかかるのが避けられない。また、製法Aではその最終工程で毒物のシアン化合物を使用しなければならないこと、第3工程で使用するエナミンの臭気が非常に強いこと、第4工程で急激な分解の危険性があるピリリウムの過塩素酸塩を単離しなければならない等、各工程における問題点も多い。従って、より短工程で、簡便かつ安全な製造法が必要とされている。
【0011】
フェニルピリジン類の製造方法としてはフェニルリチウム反応剤を用いる方法(製法B)も知られている。
【0012】
【化9】
Figure 0004344961
【0013】
ここでQはフェニルリチウム反応剤に対し不活性な基を表す。この製法Bでは極めて短工程でフェニルピリジン骨格を形成することができる。しかしながら、反応の収率は高々20%程度と非常に低い。また、この後工程でフェニルリチウム反応剤に対し不活性な基Qをシアノ基に変換しなければならないが、決して容易ではない。そのため、この製法Bは(A)のような2−(4−シアノフェニル)ピリジン誘導体の製造方法としてはあまり適したものとは言えなかった。
【0014】
以上から、2−(4−シアノフェニル)ピリジン誘導体のより簡便で安全な製造方法が望まれている。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、液晶材料として有用な2−(4−シアノフェニル)ピリジン誘導体の簡便かつ安全な製造方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するために、
1.一般式(II)
【0017】
【化10】
Figure 0004344961
【0018】
(式中、Rは炭素原子数1〜7のアルコキシル基により置換されていてもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、アルケニル基、アルコキシル基又はアルケニルオキシ基を表し、mは0又は1を表し、m=1の場合に環Aはトランス−1,4−シクロへキシレン基又はフッ素原子により置換されていてもよい1,4−フェニレン基を表し、Xa及びXbはそれぞれ独立的に水素原子又はフッ素原子を表し、Ra〜Rdはそれぞれ独立的に水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表す。)で表されるオキサゾリン誘導体を、酸性脱水剤と反応させることを特徴とする一般式(I)
【0019】
【化11】
Figure 0004344961
【0020】
(式中、R、m、環A、Xa及びXbは一般式(II)におけると同じ意味を表す。)で表される2−(4−シアノフェニル)ピリジン誘導体の製造方法。
2.酸性脱水剤がオキシ塩化リンであることを特徴とする上記1記載の製造方法。
3.一般式(II)のオキサゾリン誘導体が、一般式(III)
【0021】
【化12】
Figure 0004344961
【0022】
(式中、Xa、Xb及びRa〜Rdは一般式(II)におけると同じ意味を表し、Yは臭素、ヨウ素、塩素のハロゲン原子を表す。)で表される化合物に、一般式(IV)
【0023】
【化13】
Figure 0004344961
【0024】
(式中、R、m及び環Aは一般式(II)におけると同じ意味を表し、ZaはMgBr、MgI、MgCl又はLi等の金属原子又は金属原子を含む基を表す。)で表される有機金属反応剤を、遷移金属触媒存在下に反応させて得られることを特徴とする上記1又は2記載の製造方法。
4.一般式(II)の化合物を得るための反応で用いる遷移金属触媒がニッケル錯体であることを特徴とする上記3記載の製造方法。
5.一般式(III)で表される化合物が、一般式(V)
【0025】
【化14】
Figure 0004344961
【0026】
(式中、Y及びY’はそれぞれ独立的に臭素、ヨウ素、塩素のハロゲン原子を表す。)で表される2,5−ジハロゲノピリジンに、一般式(VI)
【0027】
【化15】
Figure 0004344961
【0028】
(式中、Xa、Xb及びRa〜Rdは一般式(II)におけると同じ意味を表し、ZbはMgBr、MgI、MgCl又はLi等の金属原子又は金属原子を含む基を表す。)で表される有機金属反応剤を、遷移金属触媒存在下に反応させて得られることを特徴とする上記3又は4記載の製造方法。
6.一般式(III)の化合物を得るための反応で用いる遷移金属触媒がパラジウム(0)錯体であることを特徴とする上記5記載の製造方法。
を前記課題を解決するための手段として見出した。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の一例について説明する。
上記課題を解決するために、本発明は対応するオキサゾリン誘導体を酸性脱水剤と反応させることを特徴とする一般式(I)
【0030】
【化16】
Figure 0004344961
【0031】
で表される2−(4−シアノフェニル)ピリジン誘導体の新規製造法を提供する。
一般式(I)において、Rは炭素原子数1〜7のアルコキシル基により置換されていてもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、アルケニル基、アルコキシル基又はアルケニルオキシ基を表すが、炭素原子数1〜12のアルキル基又はアルコキシル基が好ましく、炭素原子数1〜7の直鎖状アルキル基が特に好ましい。mは0又は1を表すが、m=0が好ましく、m=1の場合に環Aはトランス−1,4−シクロへキシレン基又はフッ素原子により置換されていてもよい1,4−フェニレン基を表すが、トランス−1,4−シクロへキシレン基又は1,4−フェニレン基が好ましい。Xa及びXbはそれぞれ独立的に水素原子又はフッ素原子を表すが、少なくとも一方は水素原子であることが好ましい。
【0032】
本発明の製造方法の第1は一般式(II)
【0033】
【化17】
Figure 0004344961
【0034】
(式中、Rは炭素原子数1〜7のアルコキシル基により置換されていてもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、アルケニル基、アルコキシル基又はアルケニルオキシ基を表し、mは0又は1を表し、m=1の場合に環Aはトランス−1,4−シクロへキシレン基又はフッ素原子により置換されていてもよい1,4−フェニレン基を表し、Xa及びXbはそれぞれ独立的に水素原子又はフッ素原子を表し、Ra〜Rdはそれぞれ独立的に水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表す。)で表される2−フェニル−1,3−オキサゾリン誘導体を酸性脱水剤と反応させることを特徴とするものである。
【0035】
一般式(II)においてRa〜Rdは水素原子又は低級アルキル基であれば特に制限はないが、1,3−オキサゾリン環の形成における原料のアミノアルコールの入手し易さの点から、Ra及びRbはメチル基が好ましく、Rc及びRdは水素原子が好ましい。酸性脱水剤としてはオキシ塩化リン、五塩化リン、三塩化リン等のリン系化合物、あるいは塩化チオニル、塩化スルフリル等のイオウ系化合物が使用できるが、特にオキシ塩化リンが好ましい。
【0036】
溶媒としては、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチルピロリドン(NMP)、ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPA)等の非プロトン性極性溶媒、あるいはトリエチルアミン、ピリジン等のアミン類を用いることができ、これらは単独で用いてもあるいはその複数を混合して用いてもよいが、ピリジン等のアミン類が特に好ましい。
【0037】
反応は0℃付近から溶媒の沸点までの広い温度範囲で実施が可能ではあるが、反応を迅速に進行させるためには室温以上、特に加熱下で実施することが好ましい。反応終了後は水中に注ぎ、析出した結晶を濾取し、水洗を繰り返した後、減圧下乾燥させ、必要に応じカラムクロマトグラフィー、再結晶等により精製することにより目的物を得ることができる。
【0038】
ここで一般式(II)のオキサゾリン誘導体は、一般式(III)
【0039】
【化18】
Figure 0004344961
【0040】
(式中、Xa、Xb及びRa〜Rdは一般式(II)におけると同じ意味を表し、Yは臭素、ヨウ素、塩素のハロゲン原子を表すが、臭素原子が好ましい。)で表される化合物に、一般式(IV)
【0041】
【化19】
Figure 0004344961
【0042】
(式中、R、m及び環Aは一般式(II)におけると同じ意味を表し、ZaはMgBr、MgI、MgCl又はLi等の金属原子又は金属原子を含む基を表すが、MgBrが好ましい。)で表される有機金属反応剤を、遷移金属触媒存在下に反応させることにより得ることができる。
【0043】
本発明はその製造方法の第2として、(III)の化合物と(IV)の化合物を遷移金属触媒(好ましくはニッケル錯体)存在下にカップリング反応させることにより、一般式(II)のオキサゾリン誘導体を得て、これを酸性脱水剤と反応させることを特徴とする一般式(I)の化合物の製造方法を提供する。
【0044】
カップリングに際して、用いる遷移金属触媒としてはジクロロビス(ジフェニルホスフィノエタン)ニッケル(II)等のニッケル(II)錯体又はテトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(0)等のニッケル(0)錯体が特に好ましい。
【0045】
反応は溶媒中で行われるが、溶媒としてはヘキサン、トルエン等の炭化水素類、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類、エタノール、イソプロパノール、メチルセルソルブ等のアルコール類、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチルピロリドン(NMP)、ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPA)等の非プロトン性極性溶媒、あるいはトリエチルアミン、ピリジン等のアミン類を用いることができ、これらは単独で用いてもあるいはその複数を混合して用いてもよいが、THF等のエーテル類及びDMF等の非プロトン性極性溶媒が好ましく、特にZがMgBr、MgI、MgClあるいはLiの場合にはエーテル類が好ましい。
【0046】
反応は−80℃付近から200℃付近までの広い温度範囲で進行するが、通常は氷冷下から溶媒の沸点までの加熱下に実施することが好ましく、室温付近あるいは100℃までの加熱下で実施することが好ましい。反応終了後は必要に応じて中和して有機溶媒を加え、水洗を繰り返した後、溶媒を留去することにより目的物を得る。また、必要に応じカラムクロマトグラフィーや再結晶により精製することもできる。
【0047】
ここで、一般式(III)のオキサゾリン誘導体は、
【0048】
【化20】
Figure 0004344961
【0049】
(式中、Y及びY’はそれぞれ独立的に臭素、ヨウ素、塩素のハロゲン原子を表すが、ともに臭素原子であることが好ましい。)で表される2,5−ジハロゲノピリジンに、一般式(VI)
【0050】
【化21】
Figure 0004344961
【0051】
(式中、Xa、Xb及びRa〜Rdは一般式(II)におけると同じ意味を表し、ZbはMgBr、MgI、MgCl又はLi等の金属原子又は金属原子を含む基を表すが、MgBrが好ましい。)で表される有機金属反応剤を、遷移金属触媒存在下に反応させることにより得ることができる。
【0052】
この場合の遷移金属触媒としては塩化パラジウム(II)等のパラジウム(II)塩、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)等のパラジウム(II)錯体、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)等のパラジウム(0)錯体が好ましく、パラジウム(0)錯体が特に好ましい。反応は溶媒中で行われるが、溶媒としてはヘキサン、トルエン等の炭化水素類、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類が好ましく、特にエーテル類が好ましい。反応は、氷点下から溶媒の還流温度まで広い温度範囲で進行するが、特に氷冷下から40℃以下で行うことが好ましい。
【0053】
本発明はその製造方法の第3として、(V)の2,5−ジハロゲノピリジン化合物と(VI)の化合物を遷移金属触媒(好ましくはパラジウム錯体)の存在下に反応させて(III)の化合物を得て、これに(IV)で表される有機金属反応剤を遷移金属触媒(好ましくはニッケル錯体)存在下に反応させて一般式(II)で表されるオキサゾリン誘導体を得て、さらにこれを酸性脱水剤と反応させることを特徴とする一般式(I)の化合物の製造方法を提供するものである。
【0054】
本発明の第3の製造方法における一方の原料中間体であるオキサゾリン誘導体(VI)は対応するカルボン酸から容易に製造することができる。
即ち、一般式(VII)
【0055】
【化22】
Figure 0004344961
【0056】
(式中、Xa及びXbは一般式(II)におけると同じ意味を表し、Halは臭素、ヨウ素又は塩素のハロゲン原子を表す。)で表される4−ハロ安息香酸誘導体を酸クロリドとした後、一般式(VIII)
【0057】
【化23】
Figure 0004344961
【0058】
(式中、Ra〜Rdは一般式(II)におけると同じ意味を表す。)で表されるアミノアルコールと反応させてアミドとし、これを脱水剤存在下に閉環させることにより一般式(IX)
【0059】
【化24】
Figure 0004344961
【0060】
(式中、Xa、Xb及びRa〜Rdは一般式(II)におけると同じ意味を表し、Halは一般式(VII)におけると同じ意味を表す。)の化合物を得て、これをマグネシウムと反応させることにより一般式(VI)においてZbがMgBr、MgI、MgClを表すグリニヤール反応剤を、金属リチウムあるいはアルキルリチウムと反応させることにより一般式(VI)においてZbがLiを表すリチウム反応剤をそれぞれ得ることができる。
【0061】
一方、一般式(V)の2,5−ジハロゲノピリジンはY及びY’がともに臭素原子である化合物が市販されており、容易に入手することができる。
また、一般式(IV)の化合物は市販のハロゲン化アルキル、ハロゲン化アリール等の公知の化合物から容易に製造することができる。
【0062】
以上から明らかなように、本発明においてはオキサゾリン環をカップリング反応に際してのカルボキシル基の保護基として利用しているが、このオキサゾリン環を直接シアノ基に変換することにより脱保護とシアノ化を同時に実現できたことになり、製造工程の短縮化の達成が可能となったものである。
【0063】
前記のように一般式(I)は多種類の化合物を包含しており、本発明の製造方法はこれらすべてについて使用が可能であるが、特に以下の(Iaa)〜(Idb)の製造法として好ましいものである。
(以下、式中Rは一般式(II)におけると同じ意味を表す。)
【0064】
【化25】
Figure 0004344961
【0065】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示し、本発明を更に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0066】
なお、相転移温度の測定は温度調節ステージを備えた偏光顕微鏡および示差走査熱量計(DSC)を併用して行った。また化合物の構造は核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR,13C−NMR,19F−NMR)、赤外共鳴スペクトル(IR)、質量スペクトル(MS)等により確認した。
(実施例1) 2−(4−シアノフェニル)−5−エチルピリジンの合成
(1) 4,4−ジメチル−2−(4−ブロモフェニル)−2−オキサゾリンの合成
【0067】
【化26】
Figure 0004344961
【0068】
4−ブロモ安息香酸150gに1,2−ジクロロエタン450ml、ピリジン3g、塩化チオニル134gを加え6時間加熱還流させた。溶媒及び過剰の塩化チオニルを留去し、ジクロロメタン300mlを加え、氷冷下、10℃を越えない速度で2−アミノ−2−メチル−3−プロパノール146gのジクロロメタン300ml溶液を滴下し、室温でさらに2時間撹拌した。析出した結晶を濾過し、ジクロロメタン150mlで洗浄し、濾液を集め、溶媒を留去し、ジクロロメタン450mlを加えた。この溶液に、塩化チオニル107gを氷零下、10℃を越えない速度で滴下し、室温でさらに2時間撹拌した。溶媒を留去し、ジクロロメタン450mlを加え、900mlの20%水酸化ナトリウム水溶液に滴下し、1時間撹拌した。有機層を分離し、無水炭酸カリウムで乾燥した。溶媒を留去し、減圧下に蒸留(110〜125℃/0.7mmHg)して精製し、4,4−ジメチル−2−(4−ブロモフェニル)−2−オキサゾリン160gを得た。(2) 2−[4−[5−ブロモ(2−ピリジル)]フェニル]−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリンの合成
【0069】
【化27】
Figure 0004344961
【0070】
マグネシウム13.0gをTHF26mlに懸濁させ、上記(1)で得た4,4−ジメチル−2−(4−ブロモフェニル)−2−オキサゾリン123gのTHF490ml溶液をTHFが穏やかに還流する速さで滴下し、さらに1時間撹拌した。過剰のマグネシウムを濾別し、2,5−ジブロモピリジン100g及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)4.9gのTHF400ml溶液に氷冷下、10℃以下を保つ速度で滴下した。室温に戻し、さらに15時間撹拌し、10%塩化アンモニウム水溶液1lを加え、トルエン1000mlで抽出し、飽和食塩水で洗浄し、無水炭酸カリウムで乾燥した。溶媒を留去し、アルミナカラムクロマトグラフィー(溶媒:トルエン)で精製し、2−[4−(5−ブロモピリジン−2−イル)フェニル]−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリン115gを得た。
(3) 2−[4−(5−エチルピリジン−2−イル)フェニル]−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリンの合成
【0071】
【化28】
Figure 0004344961
【0072】
上記(2)で得た2−[4−(5−ブロモピリジン−2−イル)フェニル]−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリン115g及びジクロロ[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ニッケル(II)0.9gをTHF460mlに溶解し、臭化エチルマグネシウム(マグネシウム11.3g及びブロモエタン46.0gから調製した)のTHF溶液を室温で滴下した。さらに1時間撹拌し、10%塩化アンモニウム水溶液450mlをゆっくり加え、トルエン450mlで抽出し、飽和食塩水で洗浄し、無水炭酸カリウムで乾燥した。溶媒を留去し、2−[4−(5−エチルピリジン−2−イル)フェニル]−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリン95gを得た。
(4) 2−(4−シアノフェニル)−5−エチルピリジンの合成
【0073】
【化29】
Figure 0004344961
【0074】
上記(3)で得た2−[4−(5−エチルピリジン−2−イル)フェニル]−4,4−ジメチル−1,3−オキサゾリン95gをピリジン290mlに溶解し、オキシ塩化リン68gを滴下した後、1時間加熱還流させた。室温まで放冷し、水600mlに注ぎ、析出した結晶を濾過し、水で洗滌した。減圧下で乾燥した後、アルミナカラムクロマトグラフィー(溶媒:トルエン)で精製し、さらにメタノールから再結晶して2−(4−シアノフェニル)−5−エチルピリジン40gを得た。
【0075】
同様にして以下の化合物を合成する。
2−(4−シアノフェニル)−5−プロピルピリジン
2−(4−シアノフェニル)−5−ブチルピリジン
2−(4−シアノフェニル)−5−ペンチルピリジン
2−(3−フルオロ−4−シアノフェニル)−5−エチルピリジン
2−(3−フルオロ−4−シアノフェニル)−5−プロピルピリジン
2−(3−フルオロ−4−シアノフェニル)−5−ブチルピリジン
2−(3−フルオロ−4−シアノフェニル)−5−ペンチルピリジン
2−(4−シアノフェニル)−5−(4−エチルシクロヘキシル)ピリジン
2−(4−シアノフェニル)−5−(4−プロピルシクロヘキシル)ピリジン
2−(4−シアノフェニル)−5−(4−ブチルシクロヘキシル)ピリジン
2−(4−シアノフェニル)−5−(4−ペンチルシクロヘキシル)ピリジン
2−(3−フルオロ−4−シアノフェニル)−5−(4−エチルシクロヘキシル)ピリジン
2−(3−フルオロ−4−シアノフェニル)−5−(4−プロピルシクロヘキシル)ピリジン
2−(3−フルオロ−4−シアノフェニル)−5−(4−ブチルシクロヘキシル)ピリジン
2−(3−フルオロ−4−シアノフェニル)−5−(4−ペンチルシクロヘキシル)ピリジン
2−(4−シアノフェニル)−5−(4−エチルフェニル)ピリジン
2−(4−シアノフェニル)−5−(4−プロピルフェニル)ピリジン
2−(4−シアノフェニル)−5−(4−ブチルフェニル)ピリジン
2−(4−シアノフェニル)−5−(4−ペンチルフェニル)ピリジン
2−(3−フルオロ−4−シアノフェニル)−5−(4−エチルシクロヘキシル)ピリジン
2−(3−フルオロ−4−シアノフェニル)−5−(4−プロピルシクロヘキシル)ピリジン
2−(3−フルオロ−4−シアノフェニル)−5−(4−ブチルシクロヘキシル)ピリジン
2−(3−フルオロ−4−シアノフェニル)−5−(4−ペンチルシクロヘキシル)ピリジン
2−(4−シアノフェニル)−5−(2−フルオロ−4−エチルフェニル)ピリジン
2−(4−シアノフェニル)−5−(2−フルオロ−4−プロピルフェニル)ピリジン
2−(4−シアノフェニル)−5−(2−フルオロ−4−ブチルフェニル)ピリジン
2−(4−シアノフェニル)−5−(2−フルオロ−4−ペンチルフェニル)ピリジン
2−(3−フルオロ−4−シアノフェニル)−5−(2−フルオロ−4−エチルフェニル)ピリジン
2−(3−フルオロ−4−シアノフェニル)−5−(2−フルオロ−4−プロピルフェニル)ピリジン
2−(3−フルオロ−4−シアノフェニル)−5−(2−フルオロ−4−ブチルフェニル)ピリジン
2−(3−フルオロ−4−シアノフェニル)−5−(2−フルオロ−4−ペンチルフェニル)ピリジン
【0076】
【発明の効果】
本発明の製造方法を用いることにより、p型液晶材料として液晶性と閾値電圧の低減に有用な2−(4−シアノフェニル)ピリジン誘導体である各種液晶化合物を、従来知られていた製造方法と比較して(i)入手可能な原料あるいは中間体から、(ii)短工程で簡便かつ安価に、(iii)さらに安全に製造することができる。従って本発明の製造方法は工業的に極めて有用である。

Claims (6)

  1. 一般式(III)
    Figure 0004344961
    (式中、X a 、X b 及びR a 〜R d は一般式(II)におけると同じ意味を表し、Yは臭素、ヨウ素、塩素のハロゲン原子を表す。)で表される化合物に、一般式(IV)
    Figure 0004344961
    (式中、R、m及び環Aは一般式(II)におけると同じ意味を表し、Z a はMgBr、MgI、MgCl又はLiの金属原子又は金属原子を含む基を表す。)で表される有機金属反応剤を、遷移金属触媒存在下に反応させて一般式(II)
    Figure 0004344961
    (式中、Rは炭素原子数1〜7のアルコキシル基により置換されていてもよい炭素原子数1〜20のアルキル基、アルケニル基、アルコキシル基又はアルケニルオキシ基を表し、mは0又は1を表し、m=1の場合に環Aはトランス−1,4−シクロへキシレン基又はフッ素原子により置換されていてもよい1,4−フェニレン基を表し、X a 及びX b はそれぞれ独立的に水素原子又はフッ素原子を表し、R a 〜R d はそれぞれ独立的に水素原子又は炭素原子数1〜5のアルキル基を表す。)のオキサゾリン誘導体を得た後、一般式(II)で表されるオキサゾリン誘導体を、酸性脱水剤と反応させることを特徴とする一般式(I)
    Figure 0004344961
    (式中、R、m、環A、X a 及びX b は一般式(II)におけると同じ意味を表す。)で表される2−(4−シアノフェニル)ピリジン誘導体の製造方法。
  2. 酸性脱水剤がオキシ塩化リンであることを特徴とする請求項記載の製造方法。
  3. 一般式(II)で表されるオキサゾリン誘導体を、酸性脱水剤と反応させる際の溶媒が非プロトン性溶媒あるいはアミン類を単独で用いても混合して用いても良いことを特徴とする請求項1又は2記載の製造方法。
  4. 一般式(II)の化合物を得るための反応で用いる遷移金属触媒がニッケル錯体であることを特徴とする請求項1、2又は3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 一般式(III)で表される化合物が、一般式(V)
    Figure 0004344961
    (式中、Y及びY’はそれぞれ独立的に臭素、ヨウ素、塩素のハロゲン原子を表す。)で表される2,5−ジハロゲノピリジンに、一般式(VI)
    Figure 0004344961
    (式中、Xa、Xb及びRa〜Rdは一般式(II)におけると同じ意味を表し、ZbはMgBr、MgI、MgCl又はLiの金属原子又は金属原子を含む基を表す。)で表される有機金属反応剤を、遷移金属触媒存在下に反応させて得られることを特徴とする請求項1、2、3又は4のいずれかに記載の製造方法。
  6. 一般式(III)の化合物を得るための反応で用いる遷移金属触媒がパラジウム(0)錯体であることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5のいずれかに記載の製造方法。
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