JP4344408B2 - 新規タンパク質およびそのdna - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、レシチン:コレステロールアシルトランスフェラーゼ様活性などを示す新規タンパク質およびそのDNAに関する。
【0002】
【従来の技術】
コレステロールは、動物の細胞膜を構成してその性質を規定する重要な脂質であり、ステロイドホルモンの前駆物質としても欠くことができない、生命に必須の物質である。しかし、現在食生活や環境の変化などのために、動脈硬化症などのコレステロールの細胞内への病的蓄積が原因の成人病が大きな問題となっており、体内でのコレステロール代謝メカニズムの解明が望まれている。
細胞コレステロールの細胞からの搬出には、高密度リポタンパク質(以下、HDLと略記する場合がある)が中心的役割を演ずると考えられ、それは冠動脈疾患と血漿HDLの疫学的逆相関や培地中のHDLが培養細胞からのコレステロール流出と細胞内コレステロールの減少を起こす実験事実に裏付けられる(ジャーナル・オブ・リピッド・リサーチ、37巻、2473頁、1996年)。この末梢細胞からのコレステロールの逆転送には、レシチン:コレステロールアシルトランスフェラーゼ(以下、LCATと略記する場合がある)が大いに関与している。
【0003】
LCATは、レシチン(ホスファチジルコリン)のβ位のアシル基(脂肪酸)をコレステロールの3β−OH基に転移させ、その結果、等モルのレシチンと非エステル型コレステロールを消費し、同じモル数のコレステロールエステルとリゾレシチンを生成する(ジャーナル・オブ・リピッド・リサーチ、9巻、155頁、1968年)。LCATは、血中ではほとんどがHDLに存在して活性を示し、HDLで生成されたコレステロールエステルは、一部は肝臓に取り込まれて代謝され、他の一部はHDL粒子の内核に移動しコレステロールエステル含有量の多い成熟HDLに変化する。HDLで非エステル型コレステロールが消費される結果生じる濃度勾配により、HDLは他の細胞膜から持続的にコレステロールを吸収する。このようにLCATは、HDLとともに、コレステロールを末梢組織から肝臓へ輸送する逆転送を行ない、HDLの抗動脈硬化作用に寄与していると考えられている(バイオチム・バイオフィズ・アクタ、1084巻、205頁、1991年)。
遺伝性疾患である家族性LCAT欠損症では、コレステロール逆転送系が欠損するため、コレステロール沈着による特有の組織障害を起こし、角膜混濁、赤血球形態異常に伴う溶血性貧血、腎障害によるタンパク尿と腎不全が発生する(ランセット、388巻、778頁、1991年)。遺伝子異常の他にも、各種の血漿脂質異常を伴う病態でLCAT活性は変動する。例えば、LCAT活性は、高カロリー、肥満、高トリグリセリド血症に伴い上昇し(クリニカル・サイエンス、38巻、593頁、1970年)、低栄養、無βリポタンパク血症、Tangier病で低下することが報告されている。
LCATは、肝で合成される416アミノ酸残基からなるポリペプチドであり、分子量59〜68KDaの糖タンパクとして存在する(ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー、254巻、7456頁、1979年)。血中では、ほとんどHDLに存在し、活性の発現にはHDLの主要アポタンパクであるアポAIがコファクターとして働き、LCATを活性化する(フェブス・レター、15巻、355頁、1971年)。LCAT遺伝子には多種の変異が存在し、多様な家族性LCAT欠損症の酵素欠損、臨床像の変化と対応しており、血漿リポタンパク代謝において重要な役割を演じている。
現在のところ、LCATは1種類のみが報告されており、同様の活性を持つ類似タンパクの存在は予想されていない。
一方、粥状動脈硬化や血栓形成、PTCA後の再狭窄には、内皮細胞の障害を起因とする血管トーヌスの異常、炎症反応の亢進、凝固線溶系の異常等が深く関与し、その結果として血管平滑筋細胞の増殖や形質変換を主な病態とする血管リモデリングが起こる。こうした血管病変の形成過程に起こる分子レベルの変化は、個々の遺伝子の発現を制御する一群の転写因子のレベルで理解されつつある(倉林ら、最新医学、52巻、2340頁、1997年)。これら特異的に発現する遺伝子にはその時期にのみ作動する転写誘導系(プロモーター、エンハンサー、リプレッサー)があって、このプロモータ部分がタンパク合成を指令するmRNAの転写を制御している。
この様なプロモーターにはホルモン依存性や、増殖因子依存性を示すものも知られており、これらを利用した薬物スクリーニング系やトランスジェニック動物が既に作出されて、薬物のスクリーニングや、生体機能の解析に利用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、LCAT活性などを有する新規なタンパク質,その前駆体タンパク質、部分ペプチドまたはそれらの塩、シグナルペプチド、該タンパク質,前駆体タンパク質、部分タンパク質またはシグナルペプチドをコードするDNA、組換えベクター、形質転換体、該タンパク質の製造法、該タンパク質またはDNAを含有してなる医薬、該タンパク質に対する抗体、該タンパク質のLCAT活性を促進する化合物のスクリーニング方法/スクリーニング用キット、該スクリーニング方法で得られる化合物、該化合物を含有してなる医薬、LCAT活性などを有する新規なタンパク質のプロモーター、該プロモーター活性を促進する化合物のスクリーニング方法/スクリーニング用キット、該スクリーニング方法で得られる化合物、該化合物を含有してなる医薬、などを提供する。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ヒト心臓、ヒト腎臓およびマウス腎臓由来cDNAライブラリーから、それぞれ新規な塩基配列を有するcDNAをクローニングすることに成功し、それにコードされるタンパク質がレシチン:コレステロールアシルトランスフェラーゼ様タンパク質(以下、LCAT様タンパク質と表記する場合がある)であることを見いだした。さらに、該LCAT様タンパク質のゲノムDNAのクローニングを行い、プロモーター活性の検定を行うことにより、該LCATタンパク質のプロモーターを見出した。
本発明者らは、これらの知見に基づいて、さらに検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、
(1)配列番号:1、配列番号:2または配列番号:3で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパク質、その前駆体タンパク質またはそれらの塩、
(2)配列番号:4〜配列番号:8のいずれかの配列番号で表わされるアミノ酸配列を有する第(1)項記載のタンパク質またはその前駆体タンパク質、
(3)レシチン:コレステロールアシルトランスフェラーゼ様活性を有する第(1)項記載のタンパク質またはその前駆体タンパク質、
(4)第(1)項記載のタンパク質の部分ペプチドまたはその塩、
(5)配列番号:9、配列番号:10または配列番号:11で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するシグナルペプチド、
(6)第(1)項記載のタンパク質または前駆体タンパク質をコードする塩基配列を有するDNAを含有するDNA、
(7)配列番号:12〜配列番号:19のいずれかの配列番号で表わされる塩基配列を有する第(6)項記載のDNA、
(8)第(5)項記載のシグナルペプチドをコードするDNAを含有するDNA、
(9)配列番号:20〜配列番号:22で表わされる塩基配列を有する第(8)項記載のDNA、
(10)第(6)項記載のDNAを含有する組換えベクター、
(11)第(10)項記載の組換えベクターで形質転換された形質転換体、
(12)第(11)項記載の形質転換体を培養し、第(1)項記載のタンパク質または前駆体タンパク質を生成、蓄積せしめ、これを採取することを特徴とする第(1)項記載のタンパク質、その前駆体タンパク質またはそれらの塩の製造法、
【0007】
(13)第(1)項記載のタンパク質、その前駆体タンパク質またはそれらの塩を含有してなる医薬、
(14)第(6)項記載のDNAを含有してなる医薬、
(15)動脈硬化症、肥満症、老化、脳疾患、腎障害または高脂血症の治療・予防剤である第(13)項または第(14)項記載の医薬、
(16)第(1)項記載のタンパク質もしくはその前駆体タンパク質、第(4)項記載の部分ペプチドまたはそれらの塩に対する抗体、
(17)第(1)項記載のタンパク質、第(4)項記載の部分ペプチドまたはそれらの塩を用いることを特徴とする第(1)項記載のタンパク質、第(4)項記載の部分ペプチドまたはそれらの塩のレシチン:コレステロールアシルトランスフェラーゼ様活性を促進または阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法、
(18)第(1)項記載のタンパク質、第(4)項記載の部分ペプチドまたはそれらの塩を含有してなる第(1)項記載のタンパク質、第(4)項記載の部分ペプチドまたはそれらの塩のレシチン:コレステロールアシルトランスフェラーゼ様活性を促進または阻害する化合物またはその塩のスクリーニング用キット、
(19)第(17)項記載のスクリーニング方法または第(18)項記載のスクリーニング用キットを用いて得られる、第(1)項記載のタンパク質、第(4)項記載の部分ペプチドまたはそれらの塩のレシチン:コレステロールアシルトランスフェラーゼ様活性を促進または阻害する化合物またはその塩、および
(20)第(17)項記載のスクリーニング方法または第(18)項記載のスクリーニング用キットを用いて得られる第(1)項記載のタンパク質、第(4)項記載の部分ペプチドまたはそれらの塩のレシチン:コレステロールアシルトランスフェラーゼ様活性を促進または阻害する化合物またはその塩を含有してなる医薬、
(21)配列番号:38で表される塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列を有するプロモーターDNAまたはプロモーター活性を有するその部分DNAを含有する第(21)項記載のDNA、および
(22)第(21)項記載のDNAのプロモーター活性を促進または阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法などを提供する。
【0008】
さらには、本発明は、
(23)配列番号:1、配列番号:2または配列番号:3で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列が、配列番号:1、配列番号:2または配列番号:で表わされるアミノ酸配列と約50%以上(好ましくは約60%以上、さらに好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上)の相同性を有するアミノ酸配列である第(1)項記載のタンパク質またはその前駆体タンパク質、
(24)配列番号:1、配列番号:2または配列番号:3で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列が、▲1▼配列番号:1、配列番号:2または配列番号:3で表わされるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、▲2▼配列番号:1、配列番号:2または配列番号:3で表わされるアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、▲3▼配列番号:1、配列番号:2または配列番号:3で表わされるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または▲4▼それらを組み合わせたアミノ酸配列である第(1)項記載のタンパク質またはその前駆体タンパク質、
(25)配列番号:1で表わされるアミノ酸配列の第3〜25番目、第27〜36番目、第43〜66番目、第68〜86番目、第92〜98番目、第107〜153番目、第155〜168番目、第172〜180番目、第189〜240番目、第256〜262番目、第268〜275番目、第277〜287番目、第295〜306番目、第308〜332番目、第336〜347番目または(および)第351〜377番目のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含有する第(4)項記載のペプチド、
(26)配列番号:12〜配列番号:19のいずれかの配列番号で表わされる塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有するDNAを含有するDNA、
(27)第(26)項記載のDNAを含有する組換えベクター、
(28)第(27)項記載の組換えベクターで形質転換させた形質転換体、
(29)第(28)項記載の形質転換体を培養し、第(26)項記載のDNAにコードされるタンパク質またはその前駆体タンパク質を生成し、蓄積せしめ、これを採取することを特徴とする第(26)項記載のDNAでコードされるタンパク質、その前駆体タンパク質またはそれらの塩の製造法、
(30)第(29)項記載の製造法で製造される、第(26)項記載のDNAでコードされるタンパク質、その前駆体タンパク質またはそれらの塩、
【0009】
(31)(i)第(1)項記載のタンパク質、第(4)項記載の部分ペプチドまたはそれらの塩にレシチンおよび非エステル型コレステロールを接触させた場合と、(ii)第(1)項記載のタンパク質、第(4)項記載の部分ペプチドまたはそれらの塩にレシチン、非エステル型コレステロールおよび試験化合物を接触させた場合における、レシチン:コレステロールアシルトランスフェラーゼ様活性を測定し、比較することを特徴とする第(17)項記載のスクリーニング方法、
(32)第(17)項記載のスクリーニング方法または第(18)項記載のスクリーニング用キットを用いて得られる、第(1)項記載のタンパク質、第(4)項記載の部分ペプチドまたはそれらの塩のレシチン:コレステロールアシルトランスフェラーゼ様活性を促進する化合物またはその塩を含有してなる医薬、
(33)動脈硬化症、肥満症、老化、脳疾患、腎障害または高脂血症の治療・予防剤である第(32)項記載の医薬、
(34)高カロリー症、肥満または高トリグリセリド症の治療・予防剤である第(32)項記載の医薬、
(35)第(17)項記載のスクリーニング方法または第(18)項記載のスクリーニング用キットを用いて得られる、第(1)項記載のタンパク質、第(4)項記載の部分ペプチドまたはそれらの塩のレシチン:コレステロールアシルトランスフェラーゼ様活性を阻害する化合物またはその塩を含有してなる医薬、
(36)低栄養、無βリポ蛋白質血症またはTangier病の治療・予防剤である第(35)項記載の医薬、
【0010】
(37)第(16)項記載の抗体と、被検液および標識化された第(1)項記載のタンパク質、第(4)項記載の部分ペプチドまたはそれらの塩とを競合的に反応させ、該抗体に結合した標識化された第(1)項記載のタンパク質、第(4)項記載の部分ペプチドまたはそれらの塩の割合を測定することを特徴とする被検液中の第(1)項記載のタンパク質、第(4)項記載の部分ペプチドまたはそれらの塩の定量法、
(38)被検液と担体上に不溶化した第(16)項記載の抗体および標識化された第(16)項記載の抗体とを同時あるいは連続的に反応させたのち、不溶化担体上の標識剤の活性を測定することを特徴とする被検液中の第(1)項記載のタンパク質、第(4)項記載の部分ペプチドまたはそれらの塩の定量法、
(39)第(16)項記載の抗体を含有してなる医薬、
(40)低栄養、無βリポ蛋白質血症またはTangier病の治療・予防剤である第(39)項記載の医薬、
(41)第(6)項または第(26)項記載のDNAに相補的または実質的に相補的な塩基配列を有し、該DNAの発現を抑制し得る作用を有するアンチセンスDNA、
(42)第(6)項または第(26)項記載のDNAに実質的に相補的な塩基配列が、該DNAに相補的な塩基配列の全塩基配列あるいは部分塩基配列と約70%以上(好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上)の相同性を有する塩基配列である第(41)項記載のアンチセンスDNA、
(43)第(41)項記載のアンチセンスDNAを含有してなる医薬、および
(44)低栄養、無βリポ蛋白質血症またはTangier病の治療・予防剤である第(43)項記載の医薬を提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の配列番号:1、配列番号:2または配列番号:3で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパク質(以下、本発明のタンパク質と称する)は、ヒトや温血動物(例えば、モルモット、ラット、マウス、ニワトリ、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、サルなど)の細胞(例えば、肝細胞、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、内皮細胞、繊維芽細胞、繊維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例、マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞、肝細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくはガン細胞など)もしくはそれらの細胞が存在するあらゆる組織、例えば、脳、脳の各部位(例、嗅球、扁桃核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、大脳皮質、延髄、小脳)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆のう、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管(例、大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、前立腺、睾丸、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、骨格筋など、または血球系の細胞もしくはその培養細胞(例えば、MEL,M1,CTLL−2,HT−2,WEHI−3,HL−60,JOSK−1,K562,ML−1,MOLT−3,MOLT−4,MOLT−10,CCRF−CEM,TALL−1,Jurkat,CCRT−HSB−2,KE−37,SKW−3,HUT−78,HUT−102,H9,U937,THP−1,HEL,JK−1,CMK,KO−812,MEG−01など)に由来するタンパク質であってもよく、合成タンパク質であってもよい。
【0012】
配列番号:2で表わされるアミノ酸配列は、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列の第63番目(Leu)と64番目(Val)の間に、配列番号:2で表わされるアミノ酸配列の第64番目(Glu)〜95番目(Leu)の32アミノ酸残基が挿入されたものである。
配列番号:1、配列番号:2または配列番号:3で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、それぞれ配列番号:1、配列番号:2または配列番号:3で表わされるアミノ酸配列と約50%以上、好ましくは約60%以上、さらに好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するアミノ酸配列などが挙げられる。
特に、配列番号:1、配列番号:2または配列番号:3で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列の第3〜25番目、第27〜36番目、第43〜66番目、第68〜86番目、第92〜98番目、第107〜153番目、第155〜168番目、第172〜180番目、第189〜240番目、第256〜262番目、第268〜275番目、第277〜287番目、第295〜306番目、第308〜332番目、第336〜347番目または(および)第351〜377番目のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列などが挙げられる。
本発明の配列番号:1、配列番号:2または配列番号:3で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパク質としては、例えば、前記の配列番号:1、配列番号:2または配列番号:3で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有し、配列番号:1、配列番号:2または配列番号:3で表わされるアミノ酸配列を有するタンパク質と実質的に同質の活性を有するタンパク質などが好ましい。
本明細書中、レシチン:コレステロールアシルトランスフェラーゼ様活性(LCAT様活性と略する場合がある)とは、前述のLCATの有する活性(LCAT活性)、フォスフォリピッド:コレステロールアシルトランンスフェラーゼ活性、フォスフォリパーゼ活性、リゾフォスファチジルコリンのフォスファチジルコリンへのエステル化、リゾフォスファリパーゼ活性、PAFの加水分解やトランスエステル化、脂肪酸エステルの加水分解など、酸化リン脂質の加水分解や酸化コレステロールのエステル化、高密度リポタンパク(HDL)の代謝調節活性またはリパーゼ活性などを意味する。
実質的に同質の活性としては、例えば、LCAT様活性などが挙げられる。実質的に同質とは、それらの活性が性質的に(例、生理化学的に、または薬理学的に)同質であることを示す。したがって、LCAT様活性などの活性が同等(例、約0.1〜100倍、好ましくは約0.5〜10倍、より好ましくは0.5〜2倍)であることが好ましいが、これらの活性の程度、タンパク質の分子量などの量的要素は異なっていてもよい。
LCAT様活性などの活性の測定は、自体公知の方法に準じて行なうことができるが、例えば、後述するスクリーニング方法に従って測定することができる。
【0013】
また、本発明のタンパク質としては、例えば、▲1▼配列番号:1、配列番号:2または配列番号:3で表わされるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、▲2▼配列番号:1、配列番号:2または配列番号:3で表わされるアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、▲3▼配列番号:1、配列番号:2または配列番号:3で表わされるアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、▲4▼配列番号:1、配列番号:2または配列番号:3で表わされるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または▲5▼それらを組み合わせたアミノ酸配列を含有するタンパク質などのいわゆるムテインも含まれる。
上記のようにアミノ酸配列が挿入、欠失または置換されている場合、その挿入、欠失または置換の位置としては、特に限定されないが、配列番号:1、配列番号:2および配列番号:3のそれぞれの配列番号で表わされるアミノ酸配列に共通するアミノ酸配列以外の位置などが挙げられる。
該挿入、欠失または置換の具体的な位置としては、例えば、配列番号:1または配列番号:3で表わされるアミノ酸配列の第3〜25番目、第27〜36番目、第43〜66番目、第68〜86番目、第92〜98番目、第107〜153番目、第155〜168番目、第172〜180番目、第189〜240番目、第256〜262番目、第268〜275番目、第277〜287番目、第295〜306番目、第308〜332番目、第336〜347番目または第351〜377番目のアミノ酸配列以外の位置や、配列番号:2で表わされるアミノ酸配列の中の前記共通配列に対応するアミノ酸配列以外の位置などが挙げられる。また、挿入、欠失または置換の位置としては、▲1▼配列番号:1で表わされるアミノ酸配列のうち、第163番目のAla〜167番目のGly以外の位置、▲2▼配列番号:2で表わされるアミノ酸配列のうち、第195番目のAla〜199番目のGly以外の位置、▲3▼配列番号:2で表わされるアミノ酸配列のうち第96番目のVal〜第127番目のAspの位置、▲4▼配列番号:3で表わされるアミノ酸配列のうち、第163番目のAla〜167番目のGly以外の位置などが挙げられる。なお、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列のうち、第163番目のAla〜167番目のGlyまでのアミノ酸配列は本発明のタンパク質の活性中心のアミノ酸配列である。
【0014】
さらには、該挿入、欠失または置換の具体的な位置としては、例えば、配列番号:1または配列番号:3で表わされるアミノ酸配列の第2番目、第26番目、第37番目、第42番目、第67番目、第87番目、第91番目、第99〜100番目、第106番目、第154番目、第169番目、第171番目、第181番目、第188番目、第241番目、第245番目、251番目、第255番目、第263〜264番目、第267番目、第276番目、第288〜289番目、第294番目、第307番目、第333番目、第335番目、第348番目、第350番目または第378番目のアミノ酸の位置や、配列番号:2で表わされるアミノ酸配列の中の該アミノ酸配列の位置などが挙げられる。
一方、上記のようにアミノ酸配列が付加されている場合、具体的には、▲1▼配列番号:1で表わされるアミノ酸配列のN末端にさらに3個のアミノ酸が付加した、配列番号:4で表わされるアミノ酸配列または▲2▼配列番号:2で表わされるアミノ酸配列のN末端にさらに3個のアミノ酸が付加した、配列番号:5で表わされるアミノ酸配列などが用いられる。
したがって、本発明のタンパク質としては、配列番号:4または配列番号:5で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパク質であってもよい。「実質的に同一」とは、前記と同意義を示す。
配列番号:5で表わされるアミノ酸配列は、配列番号:4で表わされるアミノ酸配列の第66番目(Leu)と67番目(Val)の間に、配列番号:5で表わされるアミノ酸配列の第67番目(Glu)〜98番目(Leu)の32アミノ酸残基が挿入されたものである。
【0015】
本明細書におけるタンパク質は、ペプチド標記の慣例に従って左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)である。配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を含有するタンパク質をはじめとする、本発明のタンパク質は、C末端が通常カルボキシル基(−COOH)またはカルボキシレート(−COO-)であるが、C末端がアミド(−CONH2)またはエステル(−COOR)であってもよい。
ここでエステルにおけるRとしては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルもしくはn−ブチルなどのC1-6アルキル基、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC3-8シクロアルキル基、例えば、フェニル、α−ナフチルなどのC6-12アリール基、例えば、ベンジル、フェネチルなどのフェニル−C1-2アルキル基もしくはα−ナフチルメチルなどのα−ナフチル−C1-2アルキル基などのC7-14アラルキル基のほか、経口用エステルとして汎用されるピバロイルオキシメチル基などが用いられる。
本発明のタンパク質がC末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している場合、カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものも本発明のタンパク質に含まれる。この場合のエステルとしては、例えば上記したC末端のエステルなどが用いられる。
さらに、本発明のタンパク質には、N末端のアミノ酸残基(例、メチオニン残基)のアミノ基が保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1-6アルカノイルなどのC1-6アシル基など)で保護されているもの、生体内で切断されて生成するN末端のグルタミン残基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基(例えば−OH、−SH、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基など)が適当な保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1-6アルカノイル基などのC1-6アシル基など)で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖タンパク質などの複合タンパク質なども含まれる。
本発明のタンパク質の具体例としては、例えば、配列番号:1または配列番号:4で表わされるアミノ酸配列を有するヒト心臓由来のタンパク質〔図1〕、配列番号:2または配列番号:5で表わされるアミノ酸配列を有するヒト腎臓由来のタンパク質〔図2〕、配列番号:3で表わされるアミノ酸配列を有するマウス腎臓由来のタンパク質などが用いられる〔図3〕。
【0016】
本発明の前駆体タンパク質は、例えば、前記した本発明のタンパク質のN末端または(および)C末端に1個または2個以上、好ましくは1〜10個程度、より好ましくは1〜100個程度、さらに好ましくは1〜200個程度のアミノ酸が結合したタンパク質である。
具体的には、本発明の前駆体タンパク質は、配列番号:6、配列番号:7または配列番号:8で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパク質などが用いられる。
本発明の前駆体タンパク質は、例えば、上記したヒトや温血動物(例えば、モルモット、ラット、マウス、ニワトリ、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、サルなど)の細胞またはそれらの細胞が存在するあらゆる組織などに由来するタンパク質であってもよく、合成タンパク質であってもよい。
配列番号:6、配列番号:7または配列番号:8と実質的に同一のアミノ酸配列とは、配列番号:6、配列番号:7または配列番号:8で表わされるアミノ酸配列と約50%以上、好ましくは約60%以上、さらに好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するアミノ酸配列を示す。より具体的には、配列番号:6、配列番号:7または配列番号:8で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有し、前記した本発明のタンパク質を生成し得るタンパク質であれば何れのものであってもよい。したがって、タンパク質の分子量などの量的要素は異なっていてもよい。
【0017】
また、本発明の前駆体タンパク質としては、例えば、▲1▼配列番号:6、配列番号:7または配列番号:8で表わされるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、▲2▼配列番号:6、配列番号:7または配列番号:8で表わされるアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、▲3▼配列番号:6、配列番号:7または配列番号:8で表わされるアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、▲4▼配列番号:6、配列番号:7または配列番号:8で表わされるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または▲5▼それらを組み合わせたアミノ酸配列を含有するタンパク質なども含まれる。
上記のようにアミノ酸配列が挿入、欠失または置換されている場合、その挿入、欠失または置換の位置としては、特に限定されないが、例えば、▲1▼配列番号:6で表わされるアミノ酸配列のうち、第196番目のAla〜200番目のGly以外の位置、▲2▼配列番号:7で表わされるアミノ酸配列のうち、第228番目のAla〜232番目のGly以外の位置、▲3▼配列番号:7で表わされるアミノ酸配列のうち第129番目のVal〜第160番目のAspの位置、▲4▼配列番号:8で表わされるアミノ酸配列のうち、第196番目のAla〜200番目のGly以外の位置などが挙げられる。
また、本発明の前駆体タンパク質はC末端が通常カルボキシル基(−COOH)またはカルボキシレート(−COO-)であるが、前記した本発明のタンパク質のごとく、C末端がアミド(−CONH2)またはエステル(−COOR)であってもよい。
【0018】
さらに、本発明の前駆体タンパク質には、前記した本発明のタンパク質と同様に、N末端のアミノ酸残基(例、メチオニン残基)のアミノ基が保護基で保護されているもの、N端側が生体内で切断され生成したグルタミン残基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基が適当な保護基で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖タンパク質などの複合タンパク質なども含まれる。
本発明の前駆体タンパク質の具体例としては、例えば、▲1▼配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を含有する本発明のタンパク質のN末端に、後述する配列番号:10で表わされるアミノ酸配列を有する本発明のシグナルペプチドが結合したタンパク質(すなわち、配列番号:6で表わされるアミノ酸配列を有するタンパク質)、▲2▼配列番号:2で表わされるアミノ酸配列を含有する本発明のタンパク質のN末端に、後述する配列番号:10で表わされるアミノ酸配列を有する本発明のシグナルペプチドが結合したタンパク質(すなわち、配列番号:7で表わされるアミノ酸配列を有するタンパク質)などが用いられる。
配列番号:7で表わされるアミノ酸配列は、配列番号:6で表わされるアミノ酸配列の第96番目(Leu)と97番目(Val)の間に、配列番号:7で表わされるアミノ酸配列の第97番目(Glu)〜128番目(Leu)の32アミノ酸残基が挿入されたものである。
本発明の前駆体タンパク質は、例えば、後述するシグナルペプチドを有しているので、本発明のタンパク質を効率よく細胞外に分泌させることができる。また、本発明のタンパク質を製造するための中間体として有用である。
さらに、本発明の前駆体タンパク質は、本発明のタンパク質と同様の機能を発揮し得るので、本発明のタンパク質と同様の有用性を有している。
【0019】
本発明のタンパク質の部分ペプチドとしては、前記した本発明のタンパク質の部分ペプチドであって、好ましくは、前記した本発明のタンパク質と同様の活性(例、LCAT様活性)を有するものであればいずれのものでもよい。例えば、本発明のタンパク質の構成アミノ酸配列のうち少なくとも20個以上、好ましくは50個以上、さらに好ましくは70個以上、より好ましくは100個以上、最も好ましくは200個以上のアミノ酸配列を有し、LCAT様活性を有するペプチドなどが用いられる。
これらペプチドの中でも、例えば、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列の第3〜25番目、第27〜36番目、第43〜66番目、第68〜86番目、第92〜98番目、第107〜153番目、第155〜168番目、第172〜180番目、第189〜240番目、第256〜262番目、第268〜275番目、第277〜287番目、第295〜306番目、第308〜332番目、第336〜347番目または(および)第351〜377番目のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含有するペプチドなどが用いられる。
また、▲1▼配列番号:1で表わされるアミノ酸配列の第163番目のAla〜167番目のGlyからなるアミノ酸配列(配列番号:2で表わされるアミノ酸配列の第195番目のAla〜199番目のGlyからなるアミノ酸配列、配列番号:3で表わされるアミノ酸配列の第163番目のAla〜167番目のGlyからなるアミノ酸配列)を有するペプチドなども好適である。
また、本発明の部分ペプチドは、そのアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が欠失し、または、そのアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が付加し、または、そのアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が挿入され、または、そのアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜10個程度、より好ましくは数個、さらに好ましくは1〜5個程度)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されていてもよい。
【0020】
また、本発明の部分ペプチドはC末端が通常カルボキシル基(−COOH)またはカルボキシレート(−COO-)であるが、前記した本発明のタンパク質のごとく、C末端がアミド(−CONH2)またはエステル(−COOR)であってもよい。
さらに、本発明の部分ペプチドには、前記した本発明のタンパク質と同様に、N末端のアミノ酸残基(例、メチオニン残基)のアミノ基が保護基で保護されているもの、N端側が生体内で切断され生成したグルタミン残基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基が適当な保護基で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖ペプチドなどの複合ペプチドなども含まれる。
本発明の部分ペプチドは抗体作成のための抗原として用いることができるので、必ずしもLCAT様活性を有する必要はない。
【0021】
本発明のシグナルペプチドは、例えば、配列番号:9、配列番号:10または配列番号:11で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドなどが用いられる。
本発明のシグナルペプチドは、例えば、上記したヒトや温血動物(例えば、モルモット、ラット、マウス、ニワトリ、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、サルなど)の細胞またはそれらの細胞が存在するあらゆる組織などに由来するペプチドであってもよく、合成ペプチドであってもよい。
配列番号:9、配列番号:10または配列番号:11で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列とは、配列番号:9、配列番号:10または配列番号:11で表わされるアミノ酸配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するアミノ酸配列を示す。より具体的には、配列番号:9、配列番号:10または配列番号:11で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有し、シグナルペプチドとしての機能を発揮し得るペプチドであれば何れのものであってもよい。したがって、タンパク質の分子量などの量的要素は異なっていてもよい。
【0022】
また、本発明のシグナルペプチドは、そのアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜10個程度、好ましくは1〜5個、さらに好ましくは1〜3個)のアミノ酸が欠失し、または、そのアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜10個程度、好ましくは1〜5個程度、さらに好ましくは1〜3個)のアミノ酸が付加し、または、そのアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜10個程度、好ましくは1〜5個程度、さらに好ましくは1〜3個)のアミノ酸が挿入され、または、そのアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜10個程度、好ましくは1〜5個程度、さらに好ましくは1〜3個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されていてもよい。
また、本発明のシグナルペプチドはC末端が通常カルボキシル基(−COOH)またはカルボキシレート(−COO-)であるが、前記した本発明のタンパク質のごとく、C末端がアミド(−CONH2)またはエステル(−COOR)であってもよい。
さらに、本発明のシグナルペプチドには、前記した本発明のタンパク質と同様に、N末端のアミノ酸残基(例、メチオニン残基)のアミノ基が保護基で保護されているもの、N端側が生体内で切断され生成したグルタミン残基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基が適当な保護基で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖ペプチドなどの複合ペプチドなども含まれる。
本発明のシグナルペプチドの具体例としては、例えば、▲1▼配列番号:6で表わされるアミノ酸配列を有する本発明の前駆体タンパク質から、配列番号:4で表わされるアミノ酸配列を有する本発明のタンパク質を取り除いた、配列番号:9で表わされるアミノ酸配列を含有するペプチド、▲2▼配列番号:6で表わされるアミノ酸配列を有する本発明の前駆体タンパク質から、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を有する本発明のタンパク質を取り除いた、配列番号:10で表わされるアミノ酸配列を含有するペプチド、▲3▼配列番号:8で表わされるアミノ酸配列を有する本発明の前駆体タンパク質から、配列番号:3で表わされるアミノ酸配列を有する本発明のタンパク質を取り除いた、配列番号:11で表わされるアミノ酸配列を含有するペプチドなどが用いられる。
本発明のシグナルペプチドは、本発明のタンパク質をはじめとする、種々の細胞外分泌タンパク質を効率よく細胞外に分泌させることができる。
【0023】
本発明のタンパク質、前駆体タンパク質、部分ペプチドまたはシグナルペプチドの塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸、有機酸)や塩基(例、アルカリ金属塩)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩などが用いられる。
本発明のタンパク質、その前駆体またはそれらの塩は、前述したヒトや温血動物の細胞または組織から自体公知のタンパク質の精製方法によって製造することもできるし、後述するタンパク質をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによっても製造することができる。また、後述のペプチド合成法に準じて製造することもできる。
ヒトや哺乳動物の組織または細胞から製造する場合、ヒトや哺乳動物の組織または細胞をホモジナイズした後、酸などで抽出を行ない、該抽出液を逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーを組み合わせることにより精製単離することができる。
【0024】
本発明のタンパク質、前駆体タンパク質、部分ペプチド、シグナルペプチドもしくはそれらの塩、またはそれらのアミド体の合成には、通常市販のタンパク質合成用樹脂を用いることができる。そのような樹脂としては、例えば、クロロメチル樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、ベンズヒドリルアミン樹脂、アミノメチル樹脂、4−ベンジルオキシベンジルアルコール樹脂、4−メチルベンズヒドリルアミン樹脂、PAM樹脂、4−ヒドロキシメチルメチルフェニルアセトアミドメチル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、4−(2',4'-ジメトキシフェニル−ヒドロキシメチル)フェノキシ樹脂、4−(2',4'-ジメトキシフェニル−Fmocアミノエチル)フェノキシ樹脂などを挙げることができる。このような樹脂を用い、α−アミノ基と側鎖官能基を適当に保護したアミノ酸を、目的とするタンパク質の配列通りに、自体公知の各種縮合方法に従い、樹脂上で縮合させる。反応の最後に樹脂からタンパク質を切り出すと同時に各種保護基を除去し、さらに高希釈溶液中で分子内ジスルフィド結合形成反応を実施し、目的のタンパク質またはそれらのアミド体を取得する。
上記した保護アミノ酸の縮合に関しては、タンパク質合成に使用できる各種活性化試薬を用いることができるが、特に、カルボジイミド類がよい。カルボジイミド類としては、DCC、N,N'-ジイソプロピルカルボジイミド、N-エチル-N'-(3-ジメチルアミノプロリル)カルボジイミドなどが用いられる。これらによる活性化にはラセミ化抑制添加剤(例えば、HOBt, HOOBt)とともに保護アミノ酸を直接樹脂に添加するかまたは、対称酸無水物またはHOBtエステルあるいはHOOBtエステルとしてあらかじめ保護アミノ酸の活性化を行なった後に樹脂に添加することができる。
【0025】
保護アミノ酸の活性化や樹脂との縮合に用いられる溶媒としては、タンパク質縮合反応に使用しうることが知られている溶媒から適宜選択されうる。例えば、N,N−ジメチルホルムアミド,N,N−ジメチルアセトアミド,N−メチルピロリドンなどの酸アミド類、塩化メチレン,クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類、トリフルオロエタノールなどのアルコール類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ピリジン,ジオキサン,テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトニトリル,プロピオニトリルなどのニトリル類、酢酸メチル,酢酸エチルなどのエステル類あるいはこれらの適宜の混合物などが用いられる。反応温度はタンパク質結合形成反応に使用され得ることが知られている範囲から適宜選択され、通常約−20℃〜50℃の範囲から適宜選択される。活性化されたアミノ酸誘導体は通常1.5〜4倍過剰で用いられる。ニンヒドリン反応を用いたテストの結果、縮合が不十分な場合には保護基の脱離を行なうことなく縮合反応を繰り返すことにより十分な縮合を行なうことができる。反応を繰り返しても十分な縮合が得られないときには、無水酢酸またはアセチルイミダゾールを用いて未反応アミノ酸をアセチル化することによって、後の反応に影響を与えないようにすることができる。
【0026】
原料のアミノ基の保護基としては、例えば、Z、Boc、t−ペンチルオキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、Cl-Z、Br-Z、アダマンチルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、フタロイル、ホルミル、2−ニトロフェニルスルフェニル、ジフェニルホスフィノチオイル、Fmocなどが用いられる。
カルボキシル基は、例えば、アルキルエステル化(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、t−ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、2−アダマンチルなどの直鎖状、分枝状もしくは環状アルキルエステル化)、アラルキルエステル化(例えば、ベンジルエステル、4−ニトロベンジルエステル、4−メトキシベンジルエステル、4−クロロベンジルエステル、ベンズヒドリルエステル化)、フェナシルエステル化、ベンジルオキシカルボニルヒドラジド化、t−ブトキシカルボニルヒドラジド化、トリチルヒドラジド化などによって保護することができる。
セリンの水酸基は、例えば、エステル化またはエーテル化によって保護することができる。このエステル化に適する基としては、例えば、アセチル基などの低級(C1-6)アルカノイル基、ベンゾイル基などのアロイル基、ベンジルオキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などの炭酸から誘導される基などが用いられる。また、エーテル化に適する基としては、例えば、ベンジル基、テトラヒドロピラニル基、t-ブチル基などである。
チロシンのフェノール性水酸基の保護基としては、例えば、Bzl、Cl2-Bzl、2−ニトロベンジル、Br-Z、t−ブチルなどが用いられる。
ヒスチジンのイミダゾールの保護基としては、例えば、Tos、4-メトキシ-2,3,6-トリメチルベンゼンスルホニル、DNP、ベンジルオキシメチル、Bum、Boc、Trt、Fmocなどが用いられる。
【0027】
原料のカルボキシル基の活性化されたものとしては、例えば、対応する酸無水物、アジド、活性エステル〔アルコール(例えば、ペンタクロロフェノール、2,4,5-トリクロロフェノール、2,4-ジニトロフェノール、シアノメチルアルコール、パラニトロフェノール、HONB、N-ヒドロキシスクシミド、N-ヒドロキシフタルイミド、HOBt)とのエステル〕などが用いられる。原料のアミノ基の活性化されたものとしては、例えば、対応するリン酸アミドが用いられる。
保護基の除去(脱離)方法としては、例えば、Pd−黒あるいはPd-炭素などの触媒の存在下での水素気流中での接触還元や、また、無水フッ化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸あるいはこれらの混合液などによる酸処理や、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピペラジンなどによる塩基処理、また液体アンモニア中ナトリウムによる還元なども用いられる。上記酸処理による脱離反応は、一般に約−20℃〜40℃の温度で行なわれるが、酸処理においては、例えば、アニソール、フェノール、チオアニソール、メタクレゾール、パラクレゾール、ジメチルスルフィド、1,4-ブタンジチオール、1,2-エタンジチオールなどのようなカチオン捕捉剤の添加が有効である。また、ヒスチジンのイミダゾール保護基として用いられる2,4-ジニトロフェニル基はチオフェノール処理により除去され、トリプトファンのインドール保護基として用いられるホルミル基は上記の1,2-エタンジチオール、1,4-ブタンジチオールなどの存在下の酸処理による脱保護以外に、希水酸化ナトリウム溶液、希アンモニアなどによるアルカリ処理によっても除去される。
【0028】
原料の反応に関与すべきでない官能基の保護ならびに保護基、およびその保護基の脱離、反応に関与する官能基の活性化などは公知の基または公知の手段から適宜選択しうる。
タンパク質のアミド体を得る別の方法としては、例えば、まず、カルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基をアミド化して保護した後、アミノ基側にペプチド(タンパク質)鎖を所望の鎖長まで延ばした後、該ペプチド鎖のN末端のα−アミノ基の保護基のみを除いたタンパク質とC末端のカルボキシル基の保護基のみを除去したタンパク質とを製造し、この両タンパク質を上記したような混合溶媒中で縮合させる。縮合反応の詳細については上記と同様である。縮合により得られた保護タンパク質を精製した後、上記方法によりすべての保護基を除去し、所望の粗タンパク質を得ることができる。この粗タンパク質は既知の各種精製手段を駆使して精製し、主要画分を凍結乾燥することで所望のタンパク質のアミド体を得ることができる。
タンパク質のエステル体を得るには、例えば、カルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基を所望のアルコール類と縮合しアミノ酸エステルとした後、タンパク質のアミド体と同様にして、所望のタンパク質のエステル体を得ることができる。
【0029】
本発明の部分ペプチド、シグナルペプチドまたはそれらの塩は、自体公知のペプチドの合成法に従って、あるいは本発明のタンパク質またはその前駆体タンパク質を適当なペプチダーゼで切断することによって製造することができる。ペプチドの合成法としては、例えば、固相合成法、液相合成法のいずれによっても良い。すなわち、本発明の部分ペプチドまたはシグナルペプチドを構成し得る部分ペプチドもしくはアミノ酸と残余部分とを縮合させ、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的のペプチドを製造することができる。公知の縮合方法や保護基の脱離としては、例えば、以下の▲1▼〜▲5▼に記載された方法が挙げられる。
▲1▼M. Bodanszky および M.A. Ondetti、ペプチド・シンセシス (Peptide Synthesis), Interscience Publishers, New York (1966年)
▲2▼SchroederおよびLuebke、ザ・ペプチド(The Peptide), Academic Press, New York (1965年)
▲3▼泉屋信夫他、ペプチド合成の基礎と実験、 丸善(株) (1975年)
▲4▼矢島治明 および榊原俊平、生化学実験講座 1、 タンパク質の化学IV、 205、(1977年)
▲5▼矢島治明監修、続医薬品の開発、第14巻、ペプチド合成、広川書店
また、反応後は通常の精製法、例えば、溶媒抽出・蒸留・カラムクロマトグラフィー・液体クロマトグラフィー・再結晶などを組み合わせて本発明の部分ペプチドを精製単離することができる。上記方法で得られる部分ペプチドまたはシグナルペプチドが遊離体である場合は、公知の方法あるいはそれに準じる方法によって適当な塩に変換することができるし、逆に塩で得られた場合は、公知の方法あるいはそれに準じる方法によって遊離体または他の塩に変換することができる。
【0030】
本発明のタンパク質をコードするDNAとしては、前述した本発明のタンパク質をコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものであってもよい。また、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、前記した細胞・組織由来のcDNA、前記した細胞・組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAのいずれでもよい。
ライブラリーに使用するベクターは、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。また、前記した細胞・組織よりtotalRNAまたはmRNA画分を調製したものを用いて直接Reverse Transcriptase Polymerase Chain Reaction(以下、RT-PCR法と略称する)によって増幅することもできる。
本発明のタンパク質をコードするDNAとしては、例えば、▲1▼配列番号:12で表わされる塩基配列を含有するDNA、または配列番号:12で表わされる塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有し、本発明のタンパク質と実質的に同質の活性(例、LCAT様活性など)を有するタンパク質をコードするDNA、▲2▼配列番号:13で表わされる塩基配列を含有するDNA、または配列番号:13で表わされる塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有し、本発明のタンパク質と実質的に同質の活性を有るタンパク質をコードするDNA、▲3▼配列番号:14で表わされる塩基配列を含有するDNA、または配列番号:14で表わされる塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有し、本発明のタンパク質と実質的に同質の活性を有するタンパク質をコードするDNA、▲4▼配列番号:15で表わされる塩基配列を含有するDNA、または配列番号:15で表わされる塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有し、本発明のタンパク質と実質的に同質の活性を有するタンパク質をコードするDNA、▲5▼配列番号:16で表わされる塩基配列を含有するDNA、または配列番号:16で表わされる塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有し、本発明のタンパク質と実質的に同質の活性を有するタンパク質をコードするDNAであれば何れのものでもよい。
【0031】
配列番号:12〜配列番号:16のいずれかの配列番号で表わされる塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、それぞれ配列番号:12〜配列番号:16のいずれかの配列番号で表わされる塩基配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、さらに好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
ハイブリダイゼーションは、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)2nd(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。より好ましくは、ハイストリンジェントな条件に従って行なうことができる。
ハイストリンジェントな条件とは、例えば、ナトリウム濃度が約19〜40mM、好ましくは約19〜20mMで、温度が約50〜70℃、好ましくは約60〜65℃の条件を示す。特に、ナトリウム濃度が約19mMで温度が約65℃の場合が最も好ましい。
より具体的には、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNAとしては、配列番号:12で表わされる塩基配列を有するDNAなどが、配列番号:2で表わされるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNAとしては、配列番号:13で表わされる塩基配列を有するDNA、配列番号:3で表わされるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNAとしては、配列番号:14で表わされる塩基配列を有するDNAなどが、配列番号:4で表わされるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNAとしては、配列番号:15で表わされる塩基配列を有するDNAなどが、配列番号:5で表わされるアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNAとしては、配列番号:16で表わされる塩基配列を有するDNAなどが用いられる。
【0032】
本発明の前駆体タンパク質をコードするDNAとしては、前述した本発明の前駆体タンパク質をコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものであってもよい。また、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、前記した細胞・組織由来のcDNA、前記した細胞・組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAのいずれでもよい。
本発明の前駆体タンパク質をコードするDNAとしては、例えば、▲1▼配列番号:17で表わされる塩基配列を有するDNA、または配列番号:17で表わされる塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有し、前記した本発明の前駆体タンパク質を生成し得るタンパク質をコードするDNA、▲2▼配列番号:18で表わされる塩基配列を有するDNA、または配列番号:18で表わされる塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有し、前記した本発明の前駆体タンパク質を生成し得るタンパク質をコードするDNA、▲3▼配列番号:19で表わされる塩基配列を有するDNA、または配列番号:19で表わされる塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有し、前記した本発明の前駆体タンパク質を生成し得るタンパク質をコードするDNAなどが用いられる。
配列番号:17〜配列番号:19のいずれかの配列番号で表わされる塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号:17〜配列番号:19のいずれかの配列番号で表わされる塩基配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、さらに好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
ハイブリダイゼーションの方法およびハイストリンジェントな条件は前記と同様のものが用いられる。
より具体的には、▲1▼配列番号:6で表わされるアミノ酸配列を有する本発明の前駆体タンパク質をコードするDNAとしては、配列番号:17で表わされる塩基配列を有するDNAを含有するDNA、▲2▼配列番号:7で表わされるアミノ酸配列を有する本発明の前駆体タンパク質をコードするDNAとしては、配列番号:18で表わされる塩基配列を有するDNAを含有するDNA、▲3▼配列番号:8で表わされるアミノ酸配列を有する本発明の前駆体タンパク質をコードするDNAとしては、配列番号:19で表わされる塩基配列を有するDNAを含有するDNAなどが用いられる。
【0033】
本発明の部分ペプチドをコードするDNAとしては、前述した本発明の部分ペプチドをコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものであってもよい。また、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、前記した細胞・組織由来のcDNA、前記した細胞・組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAのいずれでもよい。
本発明の部分ペプチドをコードするDNAとしては、例えば、▲1▼配列番号:12で表わされる塩基配列を有するDNAの部分塩基配列を有するDNA、または配列番号:12で表わされる塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有し、本発明のタンパク質と実質的に同質の活性を有するタンパク質をコードするDNAの部分塩基配列を有するDNA、▲2▼配列番号:13で表わされる塩基配列を有するDNAの部分塩基配列を有するDNA、または配列番号:13で表わされる塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有し、本発明の実質的に同質の活性を有するタンパク質をコードするDNAの部分塩基配列を有するDNA、▲3▼配列番号:14で表わされる塩基配列を有するDNAの部分塩基配列を有するDNA、または配列番号:14で表わされる塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有し、本発明のタンパク質と実質的に同質の活性を有するタンパク質をコードするDNAの部分塩基配列を有するDNA、▲4▼配列番号:15で表わされる塩基配列を有するDNAの部分塩基配列を有するDNA、または配列番号:15で表わされる塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有し、本発明の実質的に同質の活性を有するタンパク質をコードするDNAの部分塩基配列を有するDNA、▲5▼配列番号:16で表わされる塩基配列を有するDNAの部分塩基配列を有するDNA、または配列番号:16で表わされる塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有し、本発明の実質的に同質の活性を有するタンパク質をコードするDNAの部分塩基配列を有するDNAなどが用いられる。
配列番号:12〜配列番号:16のいずれかの配列番号で表わされる塩基配列とハイブリダイズできるDNAは、前記と同意義を示す。
ハイブリダイゼーションの方法およびハイストリンジェントな条件は前記と同様のものが用いられる。
【0034】
より具体的には、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列の第3〜25番目、第27〜36番目、第43〜66番目、第68〜86番目、第92〜98番目、第107〜153番目、第155〜168番目、第172〜180番目、第189〜240番目、第256〜262番目、第268〜275番目、第277〜287番目、第295〜306番目、第308〜332番目、第336〜347番目または(および)第351〜377番目のアミノ酸配列を有するアミノ酸配列を含有するペプチドをコードするDNAとしては、例えば、配列番号:12で表わされる塩基配列の第7〜75番目、第79〜108番目、第127〜198番目、第202〜258番目、第274〜294番目、第319〜459番目、第463〜504番目、第514〜540番目、第565〜720番目、第766〜786番目、第802〜825番目、第829〜861目、第883〜918番目、第922〜996番目、第1006〜1041番目または(および)第1051〜1131番目の塩基配列を有するDNAなどが用いられる。
【0035】
本発明のシグナルペプチドをコードするDNAとしては、前述した本発明のシグナルペプチドをコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものであってもよい。また、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、前記した細胞・組織由来のcDNA、前記した細胞・組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAのいずれでもよい。
本発明のシグナルペプチドをコードするDNAとしては、例えば、▲1▼配列番号:20で表わされる塩基配列を有するDNA、または配列番号:20で表わされる塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有し、シグナルペプチドとしての機能を発揮し得るペプチドをコードするDNA、▲2▼配列番号:21で表わされる塩基配列を有するDNA、または配列番号:21で表わされる塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有し、シグナルペプチドとしての機能を発揮し得るペプチドをコードするDNA、▲3▼配列番号:22で表わされる塩基配列を有するDNA、または配列番号:22で表わされる塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有し、シグナルペプチドとしての機能を発揮し得るペプチドをコードするDNAなどが用いられる。
配列番号:20〜配列番号:22のいずれかの配列番号で表わされる塩基配列とハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号:20〜配列番号:22のいずれかので表わされる塩基配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、さらに好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
ハイブリダイゼーションの方法およびハイストリンジェントな条件は前記と同様のものが用いられる。
より具体的には、▲1▼配列番号:9で表わすアミノ酸配列を有する本発明のシグナルペプチドをコードするDNAとしては、配列番号:20で表わされる塩基配列を有するDNAを含有するDNA、▲2▼配列番号:10で表わすアミノ酸配列を有する本発明のシグナルペプチドをコードするDNAとしては、配列番号:21で表わされる塩基配列を有するDNAを含有するDNA、▲3▼配列番号:11で表わすアミノ酸配列を有する本発明のシグナルペプチドをコードするDNAとしては、配列番号:22で表わされる塩基配列を有するDNAを含有するDNAなどが用いられる。
【0036】
本発明のタンパク質、前駆体タンパク質、部分ペプチドまたはシグナルペプチド(以下、これらタンパク質等をコードするDNAのクローニングおよび発現の説明においては、これらタンパク質等を単に本発明のタンパク質と略記する)を完全にコードするDNAのクローニングの手段としては、本発明のタンパク質の部分塩基配列を有する合成DNAプライマーを用いてPCR法によって増幅するか、または適当なベクターに組み込んだDNAを本発明のタンパク質の一部あるいは全領域をコードするDNA断片もしくは合成DNAを用いて標識したものとのハイブリダイゼーションによって選別することができる。ハイブリダイゼーションの方法は、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)2nd(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。
DNAの塩基配列の変換は、公知のキット、例えば、MutantTM-G(宝酒造(株))、MutantTM-K(宝酒造(株))などを用いて、Gupped duplex法やKunkel法などの自体公知の方法あるいはそれらに準じる方法に従って行なうことができる。
クローン化されたタンパク質をコードするDNAは目的によりそのまま、または所望により制限酵素で消化したり、リンカーを付加したりして使用することができる。該DNAはその5’末端側に翻訳開始コドンとしてのATGを有し、また3’末端側には翻訳終止コドンとしてのTAA、TGAまたはTAGを有していてもよい。これらの翻訳開始コドンや翻訳終止コドンは、適当な合成DNAアダプターを用いて付加することもできる。
本発明のタンパク質の発現ベクターは、例えば、(イ)本発明のタンパク質をコードするDNAから目的とするDNA断片を切り出し、(ロ)該DNA断片を適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより製造することができる。
【0037】
ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド(例、pBR322,pBR325,pUC12,pUC13)、枯草菌由来のプラスミド(例、pUB110,pTP5,pC194)、酵母由来プラスミド(例、pSH19,pSH15)、λファージなどのバクテリオファージ、レトロウイルス,ワクシニアウイルス,バキュロウイルスなどの動物ウイルスなどの他、pA1−11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neoなどが用いられる。
本発明で用いられるプロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主に対応して適切なプロモーターであればいかなるものでもよい。例えば、動物細胞を宿主として用いる場合は、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMVプロモーター、HSV-TKプロモーターなどが挙げられる。
これらのうち、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、SRαプロモーターなどを用いるのが好ましい。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、trpプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、λPLプロモーター、lppプロモーター、T7プロモーターなどが、宿主がバチルス属菌である場合は、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーターなど、宿主が酵母である場合は、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーターなどが好ましい。宿主が昆虫細胞である場合は、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーターなどが好ましい。
【0038】
発現ベクターには、以上の他に、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製オリジン(以下、SV40oriと略称する場合がある)などを含有しているものを用いることができる。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素(以下、dhfrと略称する場合がある)遺伝子〔メソトレキセート(MTX)耐性〕、アンピシリン耐性遺伝子(以下、Amprと略称する場合がある)、ネオマイシン耐性遺伝子(以下、Neorと略称する場合がある、G418耐性)等が挙げられる。特に、dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞を用いてdhfr遺伝子を選択マーカーとして使用する場合、目的遺伝子をチミジンを含まない培地によっても選択できる。
また、必要に応じて、宿主に合ったシグナル配列を、本発明のタンパク質のN端末側に付加する。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、PhoA・シグナル配列、OmpA・シグナル配列などが、宿主がバチルス属菌である場合は、α−アミラーゼ・シグナル配列、サブチリシン・シグナル配列などが、宿主が酵母である場合は、MFα・シグナル配列、SUC2・シグナル配列など、宿主が動物細胞である場合には、インシュリン・シグナル配列、α−インターフェロン・シグナル配列、抗体分子・シグナル配列などがそれぞれ利用できる。
このようにして構築された本発明のタンパク質をコードするDNAを含有するベクターを用いて、形質転換体を製造することができる。
【0039】
宿主としては、例えば、エシェリヒア属菌、バチルス属菌、酵母、昆虫細胞、昆虫、動物細胞などが用いられる。
エシェリヒア属菌の具体例としては、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)K12・DH1〔プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),60巻,160(1968)〕,JM103〔ヌクイレック・アシッズ・リサーチ,(Nucleic Acids Research),9巻,309(1981)〕,JA221〔ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(Journal of Molecular Biology)〕,120巻,517(1978)〕,HB101〔ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー,41巻,459(1969)〕,C600〔ジェネティックス(Genetics),39巻,440(1954)〕などが用いられる。
バチルス属菌としては、例えば、バチルス・サブチルス(Bacillus subtilis)MI114〔ジーン,24巻,255(1983)〕,207−21〔ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(Journal of Biochemistry),95巻,87(1984)〕などが用いられる。
酵母としては、例えば、サッカロマイセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)AH22,AH22R-,NA87−11A,DKD−5D,20B−12、シゾサッカロマイセス ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)NCYC1913,NCYC2036、ピキア パストリス(Pichia pastoris)KM71などが用いられる。
【0040】
昆虫細胞としては、例えば、ウイルスがAcNPVの場合は、夜盗蛾の幼虫由来株化細胞(Spodoptera frugiperda cell;Sf細胞)、Trichoplusia niの中腸由来のMG1細胞、Trichoplusia niの卵由来のHigh FiveTM細胞、Mamestra brassicae由来の細胞またはEstigmena acrea由来の細胞などが用いられる。ウイルスがBmNPVの場合は、蚕由来株化細胞(Bombyx mori N 細胞;BmN細胞)などが用いられる。該Sf細胞としては、例えば、Sf9細胞(ATCC CRL1711)、Sf21細胞(以上、Vaughn, J.L.ら、イン・ヴィボ(In Vivo),13, 213-217,(1977))などが用いられる。
昆虫としては、例えば、カイコの幼虫などが用いられる〔前田ら、ネイチャー(Nature),315巻,592(1985)〕。
動物細胞としては、例えば、サル細胞COS−7,Vero,チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO細胞と略記),dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO(dhfr-)細胞と略記),マウスL細胞,マウスAtT−20,マウスミエローマ細胞,ラットGH3,ヒトFL細胞などが用いられる。
エシェリヒア属菌を形質転換するには、例えば、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンジイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),69巻,2110(1972)やジーン(Gene),17巻,107(1982)などに記載の方法に従って行なうことができる。
【0041】
バチルス属菌を形質転換するには、例えば、モレキュラー・アンド・ジェネラル・ジェネティックス(Molecular & General Genetics),168巻,111(1979)などに記載の方法に従って行なうことができる。
酵母を形質転換するには、例えば、メソッズ・イン・エンザイモロジー(Methods in Enzymology),194巻,182−187(1991)、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),75巻,1929(1978)などに記載の方法に従って行なうことができる。
昆虫細胞または昆虫を形質転換するには、例えば、バイオ/テクノロジー(Bio/Technology),6, 47-55(1988))などに記載の方法に従って行なうことができる。
動物細胞を形質転換するには、例えば、細胞工学別冊8 新細胞工学実験プロトコール.263−267(1995)(秀潤社発行)、ヴィロロジー(Virology),52巻,456(1973)に記載の方法に従って行なうことができる。このようにして、タンパク質をコードするDNAを含有する発現ベクターで形質転換された形質転換体を得ることができる。
宿主がエシェリヒア属菌、バチルス属菌である形質転換体を培養する際、培養に使用される培地としては液体培地が適当であり、その中には該形質転換体の生育に必要な炭素源、窒素源、無機物その他が含有せしめられる。炭素源としては、例えば、グルコース、デキストリン、可溶性澱粉、ショ糖など、窒素源としては、例えば、アンモニウム塩類、硝酸塩類、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、大豆粕、バレイショ抽出液などの無機または有機物質、無機物としては、例えば、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウムなどが挙げられる。また、酵母、ビタミン類、生長促進因子などを添加してもよい。培地のpHは約5〜8が望ましい。
【0042】
エシェリヒア属菌を培養する際の培地としては、例えば、グルコース、カザミノ酸を含むM9培地〔ミラー(Miller),ジャーナル・オブ・エクスペリメンツ・イン・モレキュラー・ジェネティックス(Journal of Experiments in Molecular Genetics),431−433,Cold Spring Harbor Laboratory, New York 1972〕が好ましい。ここに必要によりプロモーターを効率よく働かせるために、例えば、3β−インドリルアクリル酸のような薬剤を加えることができる。
宿主がエシェリヒア属菌の場合、培養は通常約15〜43℃で約3〜24時間行ない、必要により、通気や撹拌を加えることもできる。
宿主がバチルス属菌の場合、培養は通常約30〜40℃で約6〜24時間行ない、必要により通気や撹拌を加えることもできる。
宿主が酵母である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、バークホールダー(Burkholder)最小培地〔Bostian, K. L. ら、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),77巻,4505(1980)〕や0.5%カザミノ酸を含有するSD培地〔Bitter, G. A. ら、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),81巻,5330(1984)〕が挙げられる。培地のpHは約5〜8に調整するのが好ましい。培養は通常約20℃〜35℃で約24〜72時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
宿主が昆虫細胞または昆虫である形質転換体を培養する際、培地としては、Grace's Insect Medium(Grace, T.C.C.,ネイチャー(Nature),195,788(1962))に非動化した10%ウシ血清等の添加物を適宜加えたものなどが用いられる。培地のpHは約6.2〜6.4に調整するのが好ましい。培養は通常約27℃で約3〜5日間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
宿主が動物細胞である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、約5〜20%の胎児牛血清を含むMEM培地〔サイエンス(Seience),122巻,501(1952)〕,DMEM培地〔ヴィロロジー(Virology),8巻,396(1959)〕,RPMI 1640培地〔ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・メディカル・アソシエーション(The Jounal of the American Medical Association)199巻,519(1967)〕,199培地〔プロシージング・オブ・ザ・ソサイエティ・フォー・ザ・バイオロジカル・メディスン(Proceeding of the Society for the Biological Medicine),73巻,1(1950)〕などが用いられる。pHは約6〜8であるのが好ましい。培養は通常約30℃〜40℃で約15〜60時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
以上のようにして、形質転換体の細胞膜に本発明のタンパク質を生成せしめることができる。
【0043】
上記培養物から本発明のタンパク質を分離精製するには、例えば、下記の方法により行なうことができる。
本発明のタンパク質を培養菌体あるいは細胞から抽出するに際しては、培養後、公知の方法で菌体あるいは細胞を集め、これを適当な緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチームおよび/または凍結融解などによって菌体あるいは細胞を破壊したのち、遠心分離やろ過によりタンパク質の粗抽出液を得る方法などが適宜用いられる。緩衝液の中に尿素や塩酸グアニジンなどの蛋白質変性剤や、トリトンX−100TMなどの界面活性剤が含まれていてもよい。培養液中にタンパク質が分泌される場合には、培養終了後、それ自体公知の方法で菌体あるいは細胞と上清とを分離し、上清を集める。
このようにして得られた培養上清、あるいは抽出液中に含まれるタンパク質の精製は、自体公知の分離・精製法を適切に組み合わせて行なうことができる。これらの公知の分離、精製法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの主として分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法などが用いられる。
【0044】
かくして得られるタンパク質が遊離体で得られた場合には、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法によって塩に変換することができ、逆に塩で得られた場合には自体公知の方法あるいはそれに準じる方法により、遊離体または他の塩に変換することができる。
なお、組換え体が産生するタンパク質を、精製前または精製後に適当な蛋白修飾酵素を作用させることにより、任意に修飾を加えたり、ポリペプチドを部分的に除去することもできる。蛋白修飾酵素としては、例えば、トリプシン、キモトリプシン、アルギニルエンドペプチダーゼ、プロテインキナーゼ、グリコシダーゼなどが用いられる。
かくして生成する本発明のタンパク質またはその塩の存在または活性は、標識したリガンドとの結合実験および特異抗体を用いたエンザイムイムノアッセイなどにより測定することができる。
【0045】
本発明のタンパク質、前駆体タンパク質、部分ペプチドまたはそれらの塩に対する抗体は、本発明のタンパク質、前駆体タンパク質、部分ペプチドまたはそれらの塩を認識し得る抗体であれば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体の何れであってもよい。
本発明のタンパク質、前駆体タンパク質、部分ペプチドまたはそれらの塩(以下、抗体の説明においては、これらタンパク質等を単に本発明のタンパク質と略記する)に対する抗体は、本発明のタンパク質を抗原として用い、自体公知の抗体または抗血清の製造法に従って製造することができる。
〔モノクローナル抗体の作製〕
(a)モノクロナール抗体産生細胞の作製
本発明のタンパク質は、温血動物に対して投与により抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は通常2〜6週毎に1回ずつ、計2〜10回程度行われる。用いられる温血動物としては、例えば、サル、ウサギ、イヌ、モルモット、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ニワトリが挙げられるが、マウスおよびラットが好ましく用いられる。
モノクローナル抗体産生細胞の作製に際しては、抗原で免疫された温血動物、例えばマウスから抗体価の認められた個体を選択し最終免疫の2〜5日後に脾臓またはリンパ節を採取し、それらに含まれる抗体産生細胞を同種または異種動物の骨髄腫細胞と融合させることにより、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを調製することができる。抗血清中の抗体価の測定は、例えば、後記の標識化タンパク質と抗血清とを反応させたのち、抗体に結合した標識剤の活性を測定することにより行なうことができる。融合操作は既知の方法、例えば、ケーラーとミルスタインの方法〔ネイチャー(Nature)、256、495 (1975)〕に従い実施することができる。融合促進剤としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)やセンダイウィルスなどが挙げられるが、好ましくはPEGが用いられる。
【0046】
骨髄腫細胞としては、例えば、NS−1、P3U1、SP2/0、AP−1などの温血動物の骨髄腫細胞が挙げられるが、P3U1が好ましく用いられる。用いられる抗体産生細胞(脾臓細胞)数と骨髄腫細胞数との好ましい比率は1:1〜20:1程度であり、PEG(好ましくはPEG1000〜PEG6000)が10〜80%程度の濃度で添加され、20〜40℃、好ましくは30〜37℃で1〜10分間インキュベートすることにより効率よく細胞融合を実施できる。モノクローナル抗体産生ハイブリドーマのスクリーニングには種々の方法が使用できるが、例えば、タンパク質抗原を直接あるいは担体とともに吸着させた固相(例、マイクロプレート)にハイブリドーマ培養上清を添加し、次に放射性物質や酵素などで標識した抗免疫グロブリン抗体(細胞融合に用いられる細胞がマウスの場合、抗マウス免疫グロブリン抗体が用いられる)またはプロテインAを加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法、抗免疫グロブリン抗体またはプロテインAを吸着させた固相にハイブリドーマ培養上清を添加し、放射性物質や酵素などで標識したタンパク質を加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法などが挙げられる。
モノクローナル抗体の選別は、自体公知あるいはそれに準じる方法に従って行なうことができる。通常HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)を添加した動物細胞用培地で行なうことができる。選別および育種用培地としては、ハイブリドーマが生育できるものならばどのような培地を用いても良い。例えば、1〜20%、好ましくは10〜20%の牛胎児血清を含むRPMI 1640培地、1〜10%の牛胎児血清を含むGIT培地(和光純薬工業(株))あるいはハイブリドーマ培養用無血清培地(SFM−101、日水製薬(株))などを用いることができる。培養温度は、通常20〜40℃、好ましくは約37℃である。培養時間は、通常5日〜3週間、好ましくは1週間〜2週間である。培養は、通常5%炭酸ガス下で行なうことができる。ハイブリドーマ培養上清の抗体価は、上記の抗血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。
【0047】
(b)モノクロナール抗体の精製
モノクローナル抗体の分離精製は、自体公知の方法、例えば、免疫グロブリンの分離精製法〔例、塩析法、アルコール沈殿法、等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換体(例、DEAE)による吸脱着法、超遠心法、ゲルろ過法、抗原結合固相あるいはプロテインAあるいはプロテインGなどの活性吸着剤により抗体のみを採取し、結合を解離させて抗体を得る特異的精製法〕に従って行なうことができる。
【0048】
〔ポリクローナル抗体の作製〕
本発明のポリクローナル抗体は、それ自体公知あるいはそれに準じる方法に従って製造することができる。例えば、免疫抗原(タンパク質抗原)自体、あるいはそれとキャリアー蛋白質との複合体をつくり、上記のモノクローナル抗体の製造法と同様に温血動物に免疫を行ない、該免疫動物から本発明のタンパク質に対する抗体含有物を採取して、抗体の分離精製を行なうことにより製造することができる。
温血動物を免疫するために用いられる免疫抗原とキャリアー蛋白質との複合体に関し、キャリアー蛋白質の種類およびキャリアーとハプテンとの混合比は、キャリアーに架橋させて免疫したハプテンに対して抗体が効率良くできれば、どの様なものをどの様な比率で架橋させてもよいが、例えば、ウシ血清アルブミンやウシサイログロブリン、ヘモシアニン等を重量比でハプテン1に対し、約0.1〜20、好ましくは約1〜5の割合でカプルさせる方法が用いられる。
また、ハプテンとキャリアーのカプリングには、種々の縮合剤を用いることができるが、グルタルアルデヒドやカルボジイミド、マレイミド活性エステル、チオール基、ジチオビリジル基を含有する活性エステル試薬等が用いられる。
縮合生成物は、温血動物に対して、抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は、通常約2〜6週毎に1回ずつ、計約3〜10回程度行なわれる。
ポリクローナル抗体は、上記の方法で免疫された温血動物の血液、腹水など、好ましくは血液から採取することができる。
抗血清中のポリクローナル抗体価の測定は、上記の抗血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。ポリクローナル抗体の分離精製は、上記のモノクローナル抗体の分離精製と同様の免疫グロブリンの分離精製法に従って行なうことができる。
【0049】
本発明のタンパク質、前駆体タンパク質または部分ペプチドをコードするDNA(以下、アンチセンスDNAの説明においては、これらのDNAを本発明のDNAと略記する)に相補的な、または実質的に相補的な塩基配列を有するアンチセンスDNAとしては、本発明のDNAに相補的な、または実質的に相補的な塩基配列を有し、該DNAの発現を抑制し得る作用を有するものであれば、いずれのアンチセンスDNAであってもよい。
本発明のDNAに実質的に相補的な塩基配列とは、例えば、本発明のDNAに相補的な塩基配列(すなわち、本発明のDNAの相補鎖)の全塩基配列あるいは部分塩基配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列などが挙げられる。特に、本発明のDNAの相補鎖の全塩基配列うち、本発明のタンパク質のN末端部位をコードする部分の塩基配列(例えば、開始コドン付近の塩基配列など)の相補鎖と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するアンチセンスDNAが好適である。これらのアンチセンスDNAは、公知のDNA合成装置などを用いて製造することができる。
【0050】
本発明のタンパク質、前駆体タンパク質、部分ペプチドまたはそれらの塩は、LCAT様活性を有しており、レシチン(ホスファチジルコリン)のβ位のアシル基(脂肪酸)をコレステロールの3β−OH基に転移させ、等モルのレシチンと非エステル型コレステロールを消費し、同じモル数のコレステロールエステルとリゾレシチンを生成する。
以下に、本発明のタンパク質、前駆体タンパク質、部分ペプチドまたはそれらの塩(以下、本発明のタンパク質等と略記する場合がある)、本発明のタンパク質、前駆体タンパク質または部分ペプチドをコードするDNA(以下、本発明のDNAと略記する場合がある)、本発明のタンパク質、前駆体タンパク質、部分ペプチドまたはそれらの塩に対する抗体(以下、本発明の抗体と略記する場合がある)、およびアンチセンスDNAの用途を説明する。
【0051】
(1)本発明のタンパク質が関与する各種疾病の治療・予防剤
LCATはコレステロール代謝に寄与しているので、LCATをコードするDNAに異常があったり、欠損している場合あるいはLCATの発現量が減少している場合、例えば、動脈硬化症、高脂血症、高カロリー症、肥満症、老化、脳疾患、腎障害、高トリグリセリド血症などの種々の疾病が発症する。
したがって、本発明のタンパク質等および本発明のDNAは、例えば、動脈硬化症、高脂血症、高カロリー症、肥満症、老化、脳疾患、腎障害、高トリグリセリド血症などの種々の疾病の治療・予防剤などの医薬として使用することができる。
例えば、生体内においてLCATが減少あるいは欠損しているために、細胞におけるコレステロール代謝が十分に、あるいは正常に発揮されない患者がいる場合に、(イ)本発明のDNAを該患者に投与し、生体内で本発明のタンパク質等を発現させることによって、(ロ)細胞に本発明のDNAを挿入し、本発明のタンパク質等を発現させた後に、該細胞を患者に移植することによって、または(ハ)本発明のタンパク質等を該患者に投与することなどによって、該患者における本発明のタンパク質等の役割を十分に、あるいは正常に発揮させることができる。
本発明のDNAを上記の治療・予防剤として使用する場合は、該DNAを単独あるいはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノウイルスアソシエーテッドウイルスベクターなどの適当なベクターに挿入した後、常套手段に従って、ヒトまたは温血動物に投与することができる。本発明のDNAは、そのままで、あるいは摂取促進のための補助剤などの生理学的に認められる担体とともに製剤化し、遺伝子銃やハイドロゲルカテーテルのようなカテーテルによって投与できる。
本発明のタンパク質等を上記の治療・予防剤として使用する場合は、少なくとも90%、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上に精製されたものを使用するのが好ましい。
【0052】
本発明のタンパク質等は、例えば、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤などとして経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤などの注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、本発明のタンパク質等を生理学的に認められる担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な容量が得られるようにするものである。
錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガント、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、前記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油などのような天然産出植物油などを溶解または懸濁させるなどの通常の製剤実施に従って処方することができる。
注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)などが挙げられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例えば、エタノールなど)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート80TM、HCO−50など)などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが挙げられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。また、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液など)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調製された注射液は、通常、適当なアンプルに充填される。
本発明のDNAが挿入されたベクターも上記と同様に製剤化され、通常、非経口的に使用される。
【0053】
このようにして得られる製剤は、安全で低毒性であるので、例えば、ヒトまたは温血動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、トリ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジーなど)に対して投与することができる。
本発明のタンパク質等の投与量は、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、動脈硬化症の治療目的で本発明のタンパク質等を経口投与する場合、一般的に成人(60kgとして)においては、一日につき該タンパク質等を約0.1mg〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。非経口的に投与する場合は、該タンパク質等の1回投与量は投与対象、対象疾患などによっても異なるが、例えば、動脈硬化症の治療目的で本発明のタンパク質等を注射剤の形で成人(体重60kgとして)に投与する場合、一日につき該タンパク質等を約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を患部に注射することにより投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0054】
(2)疾病に対する医薬候補化合物のスクリーニング
本発明のタンパク質等はLCAT様活性を有するため、本発明のタンパク質等の機能(例、LCAT様活性など)を促進する化合物またはその塩は、動脈硬化症、高脂血症、高カロリー症、肥満症、老化、脳疾患、腎障害、高トリグリセリド症など疾病の治療・予防剤などの医薬として使用できる(好ましくは、動脈硬化症、高脂血症、肥満症、老化、脳疾患、腎障害の治療・予防剤などの医薬として使用できる)。
一方、本発明のタンパク質等の機能を阻害する化合物またはその塩は、低栄養、無βリポ蛋白質血症、炎症性疾患、Tangier病などの治療・予防剤などの医薬として使用できる。
したがって、本発明のタンパク質等は、本発明のタンパク質等の機能を促進または阻害する化合物またはその塩のスクリーニングのための試薬として有用である。
すなわち、本発明は、
(1)本発明のタンパク質、その部分ペプチドまたはそれらの塩を用いることを特徴とする本発明のタンパク質、その部分ペプチドまたはそれらの塩の機能(例えば、LCAT様活性など)を促進する化合物もしくはその塩(以下、促進剤と略記する場合がある)、または本発明のタンパク質、その部分ペプチドまたはそれらの塩の機能を阻害する化合物(以下、阻害剤と略記する場合がある)のスクリーニング方法を提供し、より具体的には、例えば、
(2)(i)本発明のタンパク質、その部分ペプチドまたはそれらの塩にレシチンおよび非エステル型コレステロールを接触させた場合と(ii)本発明のタンパク質、その部分ペプチドまたはそれらの塩にレシチン、非エステル型コレステロールおよび試験化合物を接触させた場合との比較を行なうことを特徴とする促進剤または阻害剤のスクリーニング方法を提供する。
具体的には、上記スクリーニング方法においては、例えば、(i)と(ii)の場合における、本発明のタンパク質等のLCAT様活性を測定して、比較することを特徴とするものである。
【0055】
レシチンとしては、例えば、市販の卵白レシチン(シグマ社)などが用いられる。
非エステル型コレステロールとしては、例えば、〔14C〕ラベル化コレステロール(アマシャム社)などが用いられる。
本発明のスクリーニング方法では、これらレシチンおよび非エステル型コレステロールを含むプロテオリポソーム溶液を用いるのが好ましい。該プロテオリボソーム溶液は、アポA−1、〔14C〕コレステロールおよび卵白レシチンをモル比で0.8:12.5:250の割合で含有している。
試験化合物としては、例えば、ペプチド、タンパク、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液などが挙げられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
上記のスクリーニング方法を実施するには、本発明のタンパク質等を、スクリーニングに適したバッファーに懸濁することにより本発明のタンパク質等の標品を調製する。バッファーには、pH約4〜10(望ましくは、pH約6〜8)のリン酸バッファー、トリス−塩酸バッファーなどの、本発明のタンパク質等とレシチンおよび非エステル型コレステロールとの反応を阻害しないバッファーであればいずれでもよい。
【0056】
本発明のタンパク質等のLCAT様活性は、自体公知の方法、例えば、リポプロテイン・アナリシス(Converse, C.A. and Skinner, R.E., eds., 1992年、IRL Press、オックスフォード)の187〜201頁(Gillett, M.P.T. and Owen, J.S.著)に記載の方法あるいはそれに準じる方法に従って測定することができる。
例えば、上記(ii)の場合におけるLCAT様活性が上記(i)の場合に比べて、約20%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは約50%以上上昇させる試験化合物を本発明のタンパク質等のLCAT様活性を促進する化合物として、一方、上記(ii)の場合におけるLCAT様活性等が上記(i)の場合に比べて、約20%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは約50%以上阻害する試験化合物を本発明のタンパク質等のLCAT様活性を阻害する化合物として選択することができる。
【0057】
本発明のスクリーニング用キットは、本発明のタンパク質、前駆体タンパク質、部分ペプチドまたはそれらの塩を含有するものである。本発明のスクリーニング用キットの例としては、次のものが挙げられる。
〔スクリーニング用試薬〕
▲1▼測定用緩衝液
pH7.4のトリス−塩酸バッファー、ヒト血清アルブミン
▲2▼タンパク質標品
本発明のタンパク質、前駆体タンパク質。部分ペプチドまたはそれらの塩
▲3▼プロテオリポソーム溶液
〔14C〕コレステロール(105cpm/ml)、
アポA−1/〔14C〕コレステロール/卵白レシチン
(モル比0.8:12.5:250)
▲4▼検出方法
薄層クロマトグラフィー
〔測定法〕
LCAT様活性は、本発明のタンパク質溶液とプロテオリポソーム溶液を使用することで測定できる。例えば、プロテオリポソーム溶液は、アポA−1と〔14C〕コレステロール、卵白レシチンをモル比で0.8:12.5:250で混ぜ、37℃、30分間インキュベーションすることで取得できる。
本発明のタンパク質溶液とプロテオリポソームおよび試験化合物を1時間、37℃でインキュベーションした後、生成したコレステロールエステルを展開液ヘキサン/ジエチルエーテル/酢酸(83:16:1)を用いて、薄層クロマトグラフィーで単離後、測定する。結果は、1時間当たりのエステル化されたフリーコレステロールのナノモルで表示できる。
【0058】
本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる化合物またはその塩は、上記した試験化合物、例えば、ペプチド、タンパク、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などから選ばれた化合物であり、本発明のタンパク質等の機能(例、LCAT様活性など)を促進または阻害する化合物である。
該化合物の塩としては、前記した本発明のタンパク質の塩と同様のものが用いられる。
本発明のタンパク質等の機能(例、LCAT様活性など)を促進する化合物は、例えば、動脈硬化症、高脂血症、高カロリー症、肥満症、老化、脳疾患、腎障害、トリグリセリド症など疾病に対する治療・予防剤などの医薬として使用できる。
一方、本発明のタンパク質等の機能を阻害する化合物は、例えば、低栄養、無βリポ蛋白質血症、炎症性疾患、Tangier病などの疾病に対する治療・予防剤などの医薬として有用である。
【0059】
本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる化合物を上述の治療・予防剤として使用する場合、常套手段に従って実施することができる。例えば、前記した本発明のタンパク質等を含有する医薬と同様にして、錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤、無菌性溶液、懸濁液剤などとすることができる。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトまたは温血動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、トリ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジーなど)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、その作用、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、高脂血症治療の目的で本発明のタンパク質等の機能を促進する化合物を経口投与する場合、一般的に成人(体重60kgとして)においては、一日につき該化合物を約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。非経口的に投与する場合は、該化合物の1回投与量は投与対象、対象疾患などによっても異なるが、例えば、高脂血症治療の目的で本発明のタンパク質等の機能を促進する化合物を注射剤の形で通常成人(60kgとして)に投与する場合、一日につき該化合物を約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
一方、無βリポ蛋白質血症の治療目的で本発明のタンパク質等の機能を阻害する化合物を経口投与する場合、一般的に成人(体重60kgとして)においては、一日につき該化合物を約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。非経口的に投与する場合は、該化合物の1回投与量は投与対象、対象疾患などによっても異なるが、例えば、無βリポ蛋白質血症の治療目的で本発明のタンパク質等の機能を阻害する化合物を注射剤の形で通常成人(60kgとして)に投与する場合、一日につき該化合物を約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0060】
(3)本発明のタンパク質、その部分ペプチドまたはそれらの塩の定量
本発明のタンパク質等に対する抗体(以下、本発明の抗体と略記する場合がある)は、本発明のタンパク質等を特異的に認識することができるので、被検液中の本発明のタンパク質等の定量、特にサンドイッチ免疫測定法による定量などに使用することができる。
すなわち、本発明は、
(i)本発明の抗体と、被検液および標識化された本発明のタンパク質等とを競合的に反応させ、該抗体に結合した標識化された本発明のタンパク質等の割合を測定することを特徴とする被検液中の本発明のタンパク質等の定量法、および
(ii)被検液と担体上に不溶化した本発明の抗体および標識化された本発明の別の抗体とを同時あるいは連続的に反応させたのち、不溶化担体上の標識剤の活性を測定することを特徴とする被検液中の本発明のタンパク質等の定量法を提供する。
上記(ii)の定量法においては、一方の抗体が本発明のタンパク質等のN端部を認識する抗体で、他方の抗体が本発明のタンパク質等のC端部に反応する抗体であることが望ましい。
【0061】
また、本発明のタンパク質等に対するモノクローナル抗体(以下、本発明のモノクローナル抗体と称する場合がある)を用いて本発明のタンパク質等の定量を行なえるほか、組織染色等による検出を行なうこともできる。これらの目的には、抗体分子そのものを用いてもよく、また、抗体分子のF(ab')2 、Fab'、あるいはFab画分を用いてもよい。
本発明の抗体を用いる本発明のタンパク質等の定量法は、 特に制限されるべきものではなく、被測定液中の抗原量(例えば、タンパク質量)に対応した抗体、抗原もしくは抗体−抗原複合体の量を化学的または物理的手段により検出し、これを既知量の抗原を含む標準液を用いて作製した標準曲線より算出する測定法であれば、いずれの測定法を用いてもよい。例えば、ネフロメトリー、競合法、イムノメトリック法およびサンドイッチ法が好適に用いられるが、感度、特異性の点で、後述するサンドイッチ法を用いるのが特に好ましい。
標識物質を用いる測定法に用いられる標識剤としては、例えば、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質などが用いられる。放射性同位元素としては、例えば、〔125I〕、〔131I〕、〔3H〕、〔14C〕などが用いられる。上記酵素としては、安定で比活性の大きなものが好ましく、例えば、β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素などが用いられる。蛍光物質としては、例えば、フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネートなどが用いられる。発光物質としては、例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなどが用いられる。さらに、抗体あるいは抗原と標識剤との結合にビオチン−アビジン系を用いることもできる。
【0062】
抗原あるいは抗体の不溶化に当っては、物理吸着を用いてもよく、また通常タンパク質あるいは酵素等を不溶化、固定化するのに用いられる化学結合を用いる方法でもよい。担体としては、アガロース、デキストラン、セルロースなどの不溶性多糖類、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、シリコン等の合成樹脂、あるいはガラス等が挙げられる。
サンドイッチ法においては不溶化した本発明のモノクローナル抗体に被検液を反応させ(1次反応)、さらに標識化した別の本発明のモノクローナル抗体を反応させ(2次反応)たのち、不溶化担体上の標識剤の活性を測定することにより被検液中の本発明のタンパク質量を定量することができる。1次反応と2次反応は逆の順序に行っても、また、同時に行なってもよいし時間をずらして行なってもよい。標識化剤および不溶化の方法は前記のそれらに準じることができる。また、サンドイッチ法による免疫測定法において、固相用抗体あるいは標識用抗体に用いられる抗体は必ずしも1種類である必要はなく、測定感度を向上させる等の目的で2種類以上の抗体の混合物を用いてもよい。
本発明のサンドイッチ法による本発明のタンパク質等の測定法においては、1次反応と2次反応に用いられる本発明のモノクローナル抗体は、本発明のタンパク質等の結合する部位が相異なる抗体が好ましく用いられる。すなわち、1次反応および2次反応に用いられる抗体は、例えば、2次反応で用いられる抗体が、本発明のタンパク質等のC端部を認識する場合、1次反応で用いられる抗体は、好ましくはC端部以外、例えばN端部を認識する抗体が用いられる。
【0063】
本発明のモノクローナル抗体をサンドイッチ法以外の測定システム、例えば、競合法、イムノメトリック法あるいはネフロメトリーなどに用いることができる。
競合法では、被検液中の抗原と標識抗原とを抗体に対して競合的に反応させたのち、未反応の標識抗原(F)と、抗体と結合した標識抗原(B)とを分離し(B/F分離)、B,Fいずれかの標識量を測定し、被検液中の抗原量を定量する。本反応法には、抗体として可溶性抗体を用い、B/F分離をポリエチレングリコール、前記抗体に対する第2抗体などを用いる液相法、および、第1抗体として固相化抗体を用いるか、あるいは、第1抗体は可溶性のものを用い第2抗体として固相化抗体を用いる固相化法とが用いられる。
イムノメトリック法では、被検液中の抗原と固相化抗原とを一定量の標識化抗体に対して競合反応させた後固相と液相を分離するか、あるいは、被検液中の抗原と過剰量の標識化抗体とを反応させ、次に固相化抗原を加え未反応の標識化抗体を固相に結合させたのち、固相と液相を分離する。次に、いずれかの相の標識量を測定し被検液中の抗原量を定量する。
また、ネフロメトリーでは、ゲル内あるいは溶液中で抗原抗体反応の結果生じた不溶性の沈降物の量を測定する。被検液中の抗原量が僅かであり、少量の沈降物しか得られない場合にもレーザーの散乱を利用するレーザーネフロメトリーなどが好適に用いられる。
【0064】
これら個々の免疫学的測定法を本発明の定量方法に適用するにあたっては、特別の条件、操作等の設定は必要とされない。それぞれの方法における通常の条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えて本発明のタンパク質等の測定系を構築すればよい。これらの一般的な技術手段の詳細については、総説、成書などを参照することができる。
例えば、入江 寛編「ラジオイムノアッセイ〕(講談社、昭和49年発行)、入江 寛編「続ラジオイムノアッセイ〕(講談社、昭和54年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(医学書院、昭和53年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第2版)(医学書院、昭和57年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第3版)(医学書院、昭和62年発行)、「Methods in ENZYMOLOGY」 Vol. 70(Immunochemical Techniques(Part A))、 同書 Vol. 73(Immunochemical Techniques(Part B))、 同書 Vol. 74(Immunochemical Techniques(Part C))、 同書 Vol. 84(Immunochemical Techniques(Part D:Selected Immunoassays))、 同書 Vol. 92(Immunochemical Techniques(Part E:Monoclonal Antibodies and General Immunoassay Methods))、 同書 Vol. 121(Immunochemical Techniques(Part I:Hybridoma Technology and Monoclonal Antibodies))(以上、アカデミックプレス社発行)などを参照することができる。
以上のようにして、本発明の抗体を用いることによって、本発明のタンパク質等を感度良く定量することができる。
さらには、本発明の抗体を用いて本発明のタンパク質等の濃度を定量することによって、(1)本発明のタンパク質等の濃度の減少が検出された場合、例えば、動脈硬化症、高脂血症、高カロリー症、肥満症、老化、脳疾患、腎障害、高トリグリセリド血症などの疾病である、または将来罹患する可能性が高いと、また(2)本発明のタンパク質等の濃度の増加が検出された場合、例えば、低栄養、無βリポ蛋白質血症、炎症性疾患、Tangier病などの疾病である、または将来罹患する可能性が高いと診断することができる。
また、本発明の抗体は、体液や組織などの被検体中に存在する本発明のタンパク質等を検出するために使用することができる。また、本発明のタンパク質等を精製するために使用する抗体カラムの作製、精製時の各分画中の本発明のタンパク質等の検出、被検細胞内における本発明のタンパク質の挙動の分析などのために使用することができる。
【0065】
(4)遺伝子診断剤
本発明のDNAは、例えば、プローブとして使用することにより、ヒトまたは温血動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、トリ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジーなど)における本発明のタンパク質またはその部分ペプチドをコードするDNAまたはmRNAの異常(遺伝子異常)を検出することができるので、例えば、該DNAまたはmRNAの損傷、突然変異あるいは発現低下や、該DNAまたはmRNAの増加あるいは発現過多などの遺伝子診断剤として有用である。
本発明のDNAを用いる上記の遺伝子診断は、例えば、自体公知のノーザンハイブリダイゼーションやPCR−SSCP法(ゲノミックス(Genomics),第5巻,874〜879頁(1989年)、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ユーエスエー(Proceedings of the Natinal Academy of Sciences of the United States of America),第86巻,2766〜2770頁(1989年))などにより実施することができる。
例えば、ノーザンハイブリダイゼーションにより発現低下が検出された場合やPCR−SSCP法によりDNAの突然変異が検出された場合は、例えば、動脈硬化症、高脂血症、高カロリー症、肥満症、老化、脳疾患、腎障害、高トリグリセリド血症などの疾病である可能性が高いと診断することができる。
一方、ノーザンハイブリダイゼーションにより発現過多が検出された場合は、例えば、低栄養、無βリポ蛋白質血症、炎症性疾患、Tangier病などの疾病である可能性が高いと診断することができる。
【0066】
(5)アンチセンスDNAを含有する医薬
本発明のDNAに相補的に結合し、該DNAの発現を抑制することができるアンチセンスDNAは、生体内における本発明のタンパク質等または本発明のDNAの機能を抑制することができるので、例えば、低栄養、無βリポ蛋白質血症、炎症性疾患、Tangier病などの治療・予防剤として使用することができる。
上記アンチセンスDNAを上記の治療・予防剤として使用する場合、前記した本発明のDNAを含有する各種疾病の治療・予防剤と同様にして実施することができる。
例えば、該アンチセンスDNAを用いる場合、該アンチセンスDNAを単独あるいはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノウイルスアソシエーテッドウイルスベクターなどの適当なベクターに挿入した後、常套手段に従って実施することができる。該アンチセンスDNAは、そのままで、あるいは摂取促進のために補助剤などの生理学的に認められる担体とともに製剤化し、遺伝子銃やハイドロゲルカテーテルのようなカテーテルによって投与できる。
さらに、該アンチセンスDNAは、組織や細胞における本発明のDNAの存在やその発現状況を調べるための診断用オリゴヌクレオチドプローブとして使用することもできる。
【0067】
(6)本発明の抗体を含有する医薬
本発明のタンパク質等の活性を中和する作用を有する本発明の抗体は、例えば、低栄養、無βリポ蛋白質血症、Tangier病などの種々の疾病の治療・予防剤などの医薬として使用することができる。
本発明の抗体を含有する上記疾患の治療・予防剤は、そのまま液剤として、または適当な剤型の医薬組成物として、ヒトまたは哺乳動物(例、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して経口的または非経口的に投与することができる。投与量は、投与対象、対象疾患、症状、投与ルートなどによっても異なるが、例えば、成人の無βリポ蛋白質血症の治療・予防のために使用する場合には、本発明の抗体を1回量として、通常0.01〜20mg/kg体重程度、好ましくは0.1〜10mg/kg体重程度、さらに好ましくは0.1〜5mg/kg体重程度を、1日1〜5回程度、好ましくは1日1〜3回程度、静脈注射により投与するのが好都合である。他の非経口投与および経口投与の場合もこれに準ずる量を投与することができる。症状が特に重い場合には、その症状に応じて増量してもよい。
本発明の抗体は、それ自体または適当な医薬組成物として投与することができる。上記投与に用いられる医薬組成物は、上記またはその塩と薬理学的に許容され得る担体、希釈剤もしくは賦形剤とを含むものである。かかる組成物は、経口または非経口投与に適する剤形として提供される。
すなわち、例えば、経口投与のための組成物としては、固体または液体の剤形、具体的には錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳剤、懸濁剤などがあげられる。かかる組成物は自体公知の方法によって製造され、製剤分野において通常用いられる担体、希釈剤もしくは賦形剤を含有するものである。例えば、錠剤用の担体、賦形剤としては、乳糖、でんぷん、蔗糖、ステアリン酸マグネシウムなどが用いられる。
【0068】
非経口投与のための組成物としては、例えば、注射剤、坐剤などが用いられ、注射剤は静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤などの剤形を包含する。かかる注射剤は、自体公知の方法に従って、例えば、上記抗体またはその塩を通常注射剤に用いられる無菌の水性もしくは油性液に溶解、懸濁または乳化することによって調製する。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液などが用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン界面活性剤〔例、ポリソルベート80、HCO−50(polyoxyethylene(50mol)adduct of hydrogenated castor oil)〕などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどを併用してもよい。調製された注射液は、通常、適当なアンプルに充填される。直腸投与に用いられる坐剤は、上記抗体またはその塩を通常の坐薬用基剤に混合することによって調製される。
上記の経口用または非経口用医薬組成物は、活性成分の投与量に適合するような投薬単位の剤形に調製されることが好都合である。かかる投薬単位の剤形としては、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプル)、坐剤などが例示され、それぞれの投薬単位剤形当たり通常5〜500mg、とりわけ注射剤では5〜100mg、その他の剤形では10〜250mgの上記抗体が含有されていることが好ましい。
なお前記した各組成物は、上記抗体との配合により好ましくない相互作用を生じない限り他の活性成分を含有してもよい。
【0069】
(7)DNA転移動物
本発明は、外来性の本発明のタンパク質等をコードするDNA(以下、本発明の外来性DNAと略記する)またはその変異DNA(本発明の外来性変異DNAと略記する場合がある)を有する非ヒト哺乳動物を提供する。
すなわち、本発明は、
(1)本発明の外来性DNAまたはその変異DNAを有する非ヒト哺乳動物、
(2)非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である第(1)記載の動物、
(3)ゲッ歯動物がマウスまたはラットである第(2)記載の動物、および
(4)本発明の外来性DNAまたはその変異DNAを含有し、哺乳動物において発現しうる組換えベクターを提供するものである。
本発明の外来性DNAまたはその変異DNAを有する非ヒト哺乳動物(以下、本発明のDNA転移動物と略記する)は、未受精卵、受精卵、精子およびその始原細胞を含む胚芽細胞などに対して、好ましくは、非ヒト哺乳動物の発生における胚発生の段階(さらに好ましくは、単細胞または受精卵細胞の段階でかつ一般に8細胞期以前)に、リン酸カルシウム法、電気パルス法、リポフェクション法、凝集法、マイクロインジェクション法、パーティクルガン法、DEAE−デキストラン法などにより目的とするDNAを転移することによって作出することができる。また、該DNA転移方法により、体細胞、生体の臓器、組織細胞などに目的とする本発明の外来性DNAを転移し、細胞培養、組織培養などに利用することもでき、さらに、これら細胞を上述の胚芽細胞と自体公知の細胞融合法により融合させることにより本発明のDNA転移動物を作出することもできる。
【0070】
非ヒト哺乳動物としては、例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、マウス、ラットなどが用いられる。なかでも、病体動物モデル系の作成の面から個体発生および生物サイクルが比較的短く、また、繁殖が容易なゲッ歯動物、とりわけマウス(例えば、純系として、C57BL/6系統,DBA2系統など、交雑系として、B6C3F1系統,BDF1系統,B6D2F1系統,BALB/c系統,ICR系統など)またはラット(例えば、Wistar,SDなど)などが好ましい。
哺乳動物において発現しうる組換えベクターにおける「哺乳動物」としては、上記の非ヒト哺乳動物の他にヒトなどが挙げられる。
本発明の外来性DNAとは、非ヒト哺乳動物が本来有している本発明のDNAではなく、いったん哺乳動物から単離・抽出された本発明のDNAをいう。
本発明の変異DNAとしては、元の本発明のDNAの塩基配列に変異(例えば、突然変異など)が生じたもの、具体的には、塩基の付加、欠損、他の塩基への置換などが生じたDNAなどが用いられ、また、異常DNAも含まれる。
該異常DNAとしては、異常な本発明のタンパク質を発現させるDNAを意味し、例えば、正常な本発明のタンパク質の機能を抑制するタンパク質を発現させるDNAなどが用いられる。
本発明の外来性DNAは、対象とする動物と同種あるいは異種のどちらの哺乳動物由来のものであってもよい。本発明のDNAを対象動物に転移させるにあたっては、該DNAを動物細胞で発現させうるプロモーターの下流に結合したDNAコンストラクトとして用いるのが一般に有利である。例えば、本発明のヒトDNAを転移させる場合、これと相同性が高い本発明のDNAを有する各種哺乳動物(例えば、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウスなど)由来のDNAを発現させうる各種プロモーターの下流に、本発明のヒトDNAを結合したDNAコンストラクト(例、ベクターなど)を対象哺乳動物の受精卵、例えば、マウス受精卵へマイクロインジェクションすることによって本発明のDNAを高発現するDNA転移哺乳動物を作出することができる。
【0071】
本発明のタンパク質の発現ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド、枯草菌由来のプラスミド、酵母由来のプラスミド、λファージなどのバクテリオファージ、モロニー白血病ウィルスなどのレトロウィルス、ワクシニアウィルスまたはバキュロウィルスなどの動物ウイルスなどが用いられる。なかでも、大腸菌由来のプラスミド、枯草菌由来のプラスミドまたは酵母由来のプラスミドなどが好ましく用いられる。
上記のDNA発現調節を行なうプロモーターとしては、例えば、▲1▼ウイルス(例、シミアンウイルス、サイトメガロウイルス、モロニー白血病ウイルス、JCウイルス、乳癌ウイルス、ポリオウイルスなど)に由来するDNAのプロモーター、▲2▼各種哺乳動物(ヒト、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウスなど)由来のプロモーター、例えば、アルブミン、インスリンII、ウロプラキンII、エラスターゼ、エリスロポエチン、エンドセリン、筋クレアチンキナーゼ、グリア線維性酸性タンパク質ク、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、血小板由来成長因子β、ケラチンK1,K10およびK14、コラーゲンI型およびII型、サイクリックAMP依存タンパク質キナーゼβIサブユニット、ジストロフィン、酒石酸抵抗性アルカリフォスファターゼ、心房ナトリウム利尿性因子、内皮レセプターチロシンキナーゼ(一般にTie2と略される)、ナトリウムカリウムアデノシン3リン酸化酵素(Na,K−ATPase)、ニューロフィラメント軽鎖、メタロチオネインIおよびIIA、メタロプロティナーゼ1組織インヒビター、MHCクラスI抗原(H−2L)、H−ras、レニン、ドーパミンβ−水酸化酵素、甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)、ポリペプチド鎖延長因子1α(EF−1α)、βアクチン、αおよびβミオシン重鎖、ミオシン軽鎖1および2、ミエリン基礎タンパク質、チログロブリン、Thy−1、免疫グロブリン、H鎖可変部(VNP)、血清アミロイドPコンポーネント、ミオグロビン、トロポニンC、平滑筋αアクチン、プレプロエンケファリンA、バソプレシンなどのプロモーターなどが用いられる。なかでも、全身で高発現することが可能なサイトメガロウイルスプロモーター、ヒトポリペプチド鎖延長因子1α(EF−1α)のプロモーター、ヒトおよびニワトリβアクチンプロモーターなどが好適である。
【0072】
上記ベクターは、DNA転移哺乳動物において目的とするメッセンジャーRNAの転写を終結する配列(一般にターミネターと呼ばれる)を有していることが好ましく、例えば、ウィルス由来および各種哺乳動物由来の各DNAの配列を用いることができ、好ましくは、シミアンウィルスのSV40ターミネターなどが用いられる。
その他、目的とする外来性DNAをさらに高発現させる目的で各DNAのスプライシングシグナル、エンハンサー領域、真核DNAのイントロンの一部などをプロモーター領域の5´上流、プロモーター領域と翻訳領域間あるいは翻訳領域の3´下流 に連結することも目的により可能である。
正常な本発明のタンパク質の翻訳領域は、ヒトまたは各種哺乳動物(例えば、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウスなど)由来の肝臓、腎臓、甲状腺細胞、線維芽細胞由来DNAおよび市販の各種ゲノムDNAライブラリーよりゲノムDNAの全てあるいは一部として、または肝臓、腎臓、甲状腺細胞、線維芽細胞由来RNAより公知の方法により調製された相補DNAを原料として取得することが出来る。また、外来性の異常DNAは、上記の細胞または組織より得られた正常なタンパク質の翻訳領域を点突然変異誘発法により変異した翻訳領域を作製することができる。
該翻訳領域は転移動物において発現しうるDNAコンストラクトとして、前記のプロモーターの下流および所望により転写終結部位の上流に連結させる通常のDNA工学的手法により作製することができる。
受精卵細胞段階における本発明の外来性DNAの転移は、対象哺乳動物の胚芽細胞および体細胞のすべてに存在するように確保される。DNA転移後の作出動物の胚芽細胞において、本発明の外来性DNAが存在することは、作出動物の後代がすべて、その胚芽細胞および体細胞のすべてに本発明の外来性DNAを保持することを意味する。本発明の外来性DNAを受け継いだこの種の動物の子孫はその胚芽細胞および体細胞のすべてに本発明の外来性DNAを有する。
【0073】
本発明の外来性正常DNAを転移させた非ヒト哺乳動物は、交配により外来性DNAを安定に保持することを確認して、該DNA保有動物として通常の飼育環境で継代飼育することが出来る。
受精卵細胞段階における本発明の外来性DNAの転移は、対象哺乳動物の胚芽細胞および体細胞の全てに過剰に存在するように確保される。DNA転移後の作出動物の胚芽細胞において本発明の外来性DNAが過剰に存在することは、作出動物の子孫が全てその胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の外来性DNAを過剰に有することを意味する。本発明の外来性DNAを受け継いだこの種の動物の子孫はその胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の外来性DNAを過剰に有する。
導入DNAを相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得し、この雌雄の動物を交配することによりすべての子孫が該DNAを過剰に有するように繁殖継代することができる。
本発明の正常DNAを有する非ヒト哺乳動物は、本発明の正常DNAが高発現させられており、内在性の正常DNAの機能を促進することにより最終的に本発明のタンパク質の機能亢進症を発症することがあり、その病態モデル動物として利用することができる。例えば、本発明の正常DNA転移動物を用いて、本発明のタンパク質の機能亢進症や、本発明のタンパク質が関連する疾患の病態機序の解明およびこれらの疾患の治療方法の検討を行なうことが可能である。
また、本発明の外来性正常DNAを転移させた哺乳動物は、遊離した本発明のタンパク質の増加症状を有することから、本発明のタンパク質に関連する疾患に対する治療薬のスクリーニング試験にも利用可能である。
【0074】
一方、本発明の外来性異常DNAを有する非ヒト哺乳動物は、交配により外来性DNAを安定に保持することを確認して該DNA保有動物として通常の飼育環境で継代飼育することが出来る。さらに、目的とする外来DNAを前述のプラスミドに組み込んで原科として用いることができる。プロモーターとのDNAコンストラク卜は、通常のDNA工学的手法によって作製することができる。受精卵細胞段階における本発明の異常DNAの転移は、対象哺乳動物の胚芽細胞および体細胞の全てに存在するように確保される。DNA転移後の作出動物の胚芽細胞において本発明の異常DNAが存在することは、作出動物の子孫が全てその胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の異常DNAを有することを意味する。本発明の外来性DNAを受け継いだこの種の動物の子孫は、その胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の異常DNAを有する。導入DNAを相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得し、この雌雄の動物を交配することによりすべての子孫が該DNAを有するように繁殖継代することができる。
本発明の異常DNAを有する非ヒト哺乳動物は、本発明の異常DNAが高発現させられており、内在性の正常DNAの機能を阻害することにより最終的に本発明のタンパク質の機能不活性型不応症となることがあり、その病態モデル動物として利用することができる。例えば、本発明の異常DNA転移動物を用いて、本発明のタンパク質の機能不活性型不応症の病態機序の解明およびこの疾患を治療方法の検討を行なうことが可能である。
また、具体的な利用可能性としては、本発明の異常DNA高発現動物は、本発明のタンパク質の機能不活性型不応症における本発明の異常タンパク質による正常タンパク質の機能阻害(dominant negative作用)を解明するモデルとなる。また、本発明の外来異常DNAを転移させた哺乳動物は、遊離した本発明のタンパク質の増加症状を有することから、本発明のタンパク質の機能不活性型不応症に対する治療薬スクリーニング試験にも利用可能である。
【0075】
また、上記2種類の本発明のDNA転移動物のその他の利用可能性として、例えば、
▲1▼組織培養のための細胞源としての使用、
▲2▼本発明のDNA転移動物の組織中のDNAもしくはRNAを直接分析するか、またはDNAにより発現されたタンパク質組織を分析することによる、本発明のタンパク質により特異的に発現あるいは活性化するタンパク質との関連性についての解析、
▲3▼DNAを有する組織の細胞を標準組織培養技術により培養し、これらを使用して、一般に培養困難な組織からの細胞の機能の研究、
▲4▼上記▲3▼記載の細胞を用いることによる細胞の機能を高めるような薬剤のスクリーニング、および
▲5▼本発明の変異タンパク質を単離精製およびその抗体作製などが考えられる。
さらに、本発明のDNA転移動物を用いて、本発明のタンパク質の機能不活性型不応症などを含む、本発明のタンパク質に関連する疾患の臨床症状を調べることができ、また、本発明のタンパク質に関連する疾患モデルの各臓器におけるより詳細な病理学的所見が得られ、新しい治療方法の開発、さらには、該疾患による二次的疾患の研究および治療に貢献することができる。
また、本発明のDNA転移動物から各臓器を取り出し、細切後、トリプシンなどのタンパク質分解酵素により、遊離したDNA転移細胞の取得、その培養またはその培養細胞の系統化を行なうことが可能である。さらに、本発明のタンパク質産生細胞の特定化、アポトーシス、分化あるいは増殖との関連性、またはそれらにおけるシグナル伝達機構を調べ、それらの異常を調べることなどができ、本発明のタンパク質およびその作用解明のための有効な研究材料となる。
さらに、本発明のDNA転移動物を用いて、本発明のタンパク質の機能不活性型不応症を含む、本発明のタンパク質に関連する疾患の治療薬の開発を行なうために、上述の検査法および定量法などを用いて、有効で迅速な該疾患治療薬のスクリーニング法を提供することが可能となる。また、本発明のDNA転移動物または本発明の外来性DNA発現ベクターを用いて、本発明のタンパク質が関連する疾患のDNA治療法を検討、開発することが可能である。
【0076】
(8)ノックアウト動物
本発明は、本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞および本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物を提供する。
すなわち、本発明は、
(1)本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞、
(2)該DNAがレポーター遺伝子(例、大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子)を導入することにより不活性化された第(1)項記載の胚幹細胞、
(3)ネオマイシン耐性である第(1)項記載の胚幹細胞、
(4)非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である第(1)項記載の胚幹細胞、
(5)ゲッ歯動物がマウスである第(4)項記載の胚幹細胞、
(6)本発明のDNAが不活性化された該DNA発現不全非ヒト哺乳動物、
(7)該DNAがレポーター遺伝子(例、大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子)を導入することにより不活性化され、該レポーター遺伝子が本発明のDNAに対するプロモーターの制御下で発現しうる第(6)項記載の非ヒト哺乳動物、
(8)非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である第(6)項記載の非ヒト哺乳動物、
(9)ゲッ歯動物がマウスである第(8)項記載の非ヒト哺乳動物、および
(10)第(7)項記載の動物に、試験化合物を投与し、レポーター遺伝子の発現を検出することを特徴とする本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進または阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
【0077】
本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞とは、該非ヒト哺乳動物が有する本発明のDNAに人為的に変異を加えることにより、DNAの発現能を抑制するか、もしくは該DNAがコードしている本発明のタンパク質の活性を実質的に喪失させることにより、DNAが実質的に本発明のタンパク質の発現能を有さない(以下、本発明のノックアウトDNAと称することがある)非ヒト哺乳動物の胚幹細胞(以下、ES細胞と略記する)をいう。
非ヒト哺乳動物としては、前記と同様のものが用いられる。
本発明のDNAに人為的に変異を加える方法としては、例えば、遺伝子工学的手法により該DNA配列の一部又は全部の削除、他DNAを挿入または置換させることによって行なうことができる。これらの変異により、例えば、コドンの読み取り枠をずらしたり、プロモーターあるいはエキソンの機能を破壊することにより本発明のノックアウトDNAを作製すればよい。
本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞(以下、本発明のDNA不活性化ES細胞または本発明のノックアウトES細胞と略記する)の具体例としては、例えば、目的とする非ヒト哺乳動物が有する本発明のDNAを単離し、そのエキソン部分にネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子を代表とする薬剤耐性遺伝子、あるいはlacZ(β−ガラクトシダーゼ遺伝子)、cat(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子)を代表とするレポーター遺伝子等を挿入することによりエキソンの機能を破壊するか、あるいはエキソン間のイントロン部分に遺伝子の転写を終結させるDNA配列(例えば、polyA付加シグナルなど)を挿入し、完全なメッセンジャーRNAを合成できなくすることによって、結果的に遺伝子を破壊するように構築したDNA配列を有するDNA鎖(以下、ターゲッティングベクターと略記する)を、例えば相同組換え法により該動物の染色体に導入し、得られたES細胞について本発明のDNA上あるいはその近傍のDNA配列をプローブとしたサザンハイブリダイゼーション解析あるいはターゲッティングベクター上のDNA配列とターゲッティングベクター作製に使用した本発明のDNA以外の近傍領域のDNA配列をプライマーとしたPCR法により解析し、本発明のノックアウトES細胞を選別することにより得ることができる。
【0078】
また、相同組換え法等により本発明のDNAを不活化させる元のES細胞としては、例えば、前述のような既に樹立されたものを用いてもよく、また公知 EvansとKaufmaの方法に準じて新しく樹立したものでもよい。例えば、マウスのES細胞の場合、現在、一般的には129系のES細胞が使用されているが、免疫学的背景がはっきりしていないので、これに代わる純系で免疫学的に遺伝的背景が明らかなES細胞を取得するなどの目的で例えば、C57BL/6マウスやC57BL/6の採卵数の少なさをDBA/2との交雑により改善したBDF1マウス(C57BL/6とDBA/2とのF1)を用いて樹立したものなども良好に用いうる。BDF1マウスは、採卵数が多く、かつ、卵が丈夫であるという利点に加えて、C57BL/6マウスを背景に持つので、これを用いて得られたES細胞は病態モデルマウスを作出したとき、C57BL/6マウスとバッククロスすることでその遺伝的背景をC57BL/6マウスに代えることが可能である点で有利に用い得る。
また、ES細胞を樹立する場合、一般には受精後3.5日目の胚盤胞を使用するが、これ以外に8細胞期胚を採卵し胚盤胞まで培養して用いることにより効率よく多数の初期胚を取得することができる。
また、雌雄いずれのES細胞を用いてもよいが、通常雄のES細胞の方が生殖系列キメラを作出するのに都合が良い。また、煩雑な培養の手間を削減するためにもできるだけ早く雌雄の判別を行なうことが望ましい。
ES細胞の雌雄の判定方法としては、例えば、PCR法によりY染色体上の性決定領域の遺伝子を増幅、検出する方法が、その1例として挙げることができる。この方法を使用すれば、従来、核型分析をするのに約106個の細胞数を要していたのに対して、1コロニー程度のES細胞数(約50個)で済むので、培養初期におけるES細胞の第一次セレクションを雌雄の判別で行なうことが可能であり、早期に雄細胞の選定を可能にしたことにより培養初期の手間は大幅に削減できる。
【0079】
また、第二次セレクションとしては、例えば、G−バンディング法による染色体数の確認等により行うことができる。得られるES細胞の染色体数は正常数の100%が望ましいが、樹立の際の物理的操作等の関係上困難な場合は、ES細胞の遺伝子をノックアウトした後、正常細胞(例えば、マウスでは染色体数が2n=40である細胞)に再びクローニングすることが望ましい。
このようにして得られた胚幹細胞株は、通常その増殖性は大変良いが、個体発生できる能力を失いやすいので、注意深く継代培養することが必要である。例えば、STO繊維芽細胞のような適当なフィーダー細胞上でLIF(1−10000U/ml)存在下に炭酸ガス培養器内(好ましくは、5%炭酸ガス、95%空気または5%酸素、5%炭酸ガス、90%空気)で約37℃で培養するなどの方法で培養し、継代時には、例えば、トリプシン/EDTA溶液(通常0.001−0.5%トリプシン/0.1−5mM EDTA、好ましくは約0.1%トリプシン/1mM EDTA)処理により単細胞化し、新たに用意したフィーダー細胞上に播種する方法などがとられる。このような継代は、通常1−3日毎に行なうが、この際に細胞の観察を行い、形態的に異常な細胞が見受けられた場合はその培養細胞は放棄することが望まれる。
ES細胞は、適当な条件により、高密度に至るまで単層培養するか、または細胞集塊を形成するまで浮遊培養することにより、頭頂筋、内臓筋、心筋などの種々のタイプの細胞に分化させることが可能であり〔M. J. Evans及びM. H. Kaufman, ネイチャー(Nature)第292巻、154頁、1981年;G. R. Martin プロシーディングス・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.)第78巻、7634頁、1981年;T. C. Doetschman ら、ジャーナル・オブ・エンブリオロジー・アンド・エクスペリメンタル・モルフォロジー、第87巻、27頁、1985年〕、本発明のES細胞を分化させて得られる本発明のDNA発現不全細胞は、インビトロにおける本発明のタンパク質の細胞生物学的検討において有用である。
本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、該動物のmRNA量を公知方法を用いて測定して間接的にその発現量を比較することにより、正常動物と区別することが可能である。
該非ヒト哺乳動物としては、前記と同様のものが用いられる。
【0080】
本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、例えば、前述のようにして作製したターゲッティングベクターをマウス胚幹細胞またはマウス卵細胞に導入し、導入によりターゲッティングベクターの本発明のDNAが不活性化されたDNA配列が遺伝子相同組換えにより、マウス胚幹細胞またはマウス卵細胞の染色体上の本発明のDNAと入れ換わる相同組換えをさせることにより、本発明のDNAをノックアウトさせることができる。
本発明のDNAがノックアウトされた細胞は、本発明のDNA上またはその近傍のDNA配列をプローブとしたサザンハイブリダイゼーション解析またはターゲッティングベクター上のDNA配列と、ターゲッティングベクターに使用したマウス由来の本発明のDNA以外の近傍領域のDNA配列とをプライマーとしたPCR法による解析で判定することができる。非ヒト哺乳動物胚幹細胞を用いた場合は、遺伝子相同組換えにより、本発明のDNAが不活性化された細胞株をクローニングし、その細胞を適当な時期、例えば、8細胞期の非ヒト哺乳動物胚または胚盤胞に注入し、作製したキメラ胚を偽妊娠させた該非ヒト哺乳動物の子宮に移植する。作出された動物は正常な本発明のDNA座をもつ細胞と人為的に変異した本発明のDNA座をもつ細胞との両者から構成されるキメラ動物である。該キメラ動物の生殖細胞の一部が変異した本発明のDNA座をもつ場合、このようなキメラ個体と正常個体を交配することにより得られた個体群より、全ての組織が人為的に変異を加えた本発明のDNA座をもつ細胞で構成された個体を、例えば、コートカラーの判定等により選別することにより得られる。このようにして得られた個体は、通常、本発明のタンパク質のヘテロ発現不全個体であり、本発明のタンパク質のヘテロ発現不全個体同志を交配し、それらの産仔から本発明のタンパク質のホモ発現不全個体を得ることができる。
卵細胞を使用する場合は、例えば、卵細胞核内にマイクロインジェクション法でDNA溶液を注入することによりターゲッティングベクターを染色体内に導入したトランスジェニック非ヒト哺乳動物を得ることができ、これらのトランスジェニック非ヒト哺乳動物に比べて、遺伝子相同組換えにより本発明のDNA座に変異のあるものを選択することにより得られる。
【0081】
このようにして本発明のDNAがノックアウトされている個体は、交配により得られた動物個体も該DNAがノックアウトされていることを確認して通常の飼育環境で飼育継代を行なうことができる。
さらに、生殖系列の取得および保持についても常法に従えばよい。すなわち、該不活化DNAの保有する雌雄の動物を交配することにより、該不活化DNAを相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得しうる。得られたホモザイゴート動物は、母親動物に対して、正常個体1,ホモザイゴート複数になるような状態で飼育することにより効率的に得ることができる。ヘテロザイゴート動物の雌雄を交配することにより、該不活化DNAを有するホモザイゴートおよびヘテロザイゴート動物を繁殖継代する。
本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞は、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物を作出する上で、非常に有用である。
また、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、本発明のタンパク質により誘導され得る種々の生物活性を欠失するため、本発明のタンパク質の生物活性の不活性化を原因とする疾病のモデルとなり得るので、これらの疾病の原因究明及び治療法の検討に有用である。
【0082】
(8a)本発明のDNAの欠損や損傷などに起因する疾病に対して治療・予防効果を有する化合物のスクリーニング方法
本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、本発明のDNAの欠損や損傷などに起因する疾病(例、動脈硬化症、高脂血症、高カロリー症、肥満、高トリグリセリド血症など)に対して治療・予防効果を有する化合物のスクリーニングに用いることができる。
すなわち、本発明は、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物に試験化合物を投与し、該動物の変化を観察・測定することを特徴とする、本発明のDNAの欠損や損傷などに起因する疾病に対して治療・予防効果を有する化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
該スクリーニング方法において用いられる本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物としては、前記と同様のものが挙げられる。
試験化合物としては、例えば、ペプチド、タンパク、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などが挙げられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
具体的には、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物を、試験化合物で処理し、無処理の対照動物と比較し、該動物の各器官、組織、疾病の症状などの変化を指標として試験化合物の治療・予防効果を試験することができる。
試験動物を試験化合物で処理する方法としては、例えば、経口投与、静脈注射などが用いられ、試験動物の症状、試験化合物の性質などにあわせて適宜選択することができる。また、試験化合物の投与量は、投与方法、試験化合物の性質などにあわせて適宜選択することができる。
例えば、動脈硬化症に対して治療・予防効果を有する化合物をスクリーニングする場合、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物に糖負荷処置を行ない、糖負荷処置前または処置後に試験化合物を投与し、該動物の血糖値および体重変化などを経時的に測定する。
該スクリーニング方法において、試験動物に試験化合物を投与した場合、該試験動物の血糖値が約10%以上、好ましくは約30%以上、より好ましくは約50%以上低下した場合、該試験化合物を動脈硬化症に対して治療・予防効果を有する化合物として選択することができる。
【0083】
本発明のスクリーニング方法を用いて得られる化合物は、上記した試験化合物から選ばれた化合物であり、本発明のタンパク質等の欠損や損傷などによって引き起こされる疾患(例、動脈硬化症など)に対して治療・予防効果を有するので、該疾患に対する安全で低毒性な治療・予防剤などの医薬として使用することができる。さらに、上記スクリーニングで得られた化合物から誘導される化合物も同様に用いることができる。
該スクリーニング方法で得られた化合物は塩を形成していてもよく、該化合物の塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸、有機酸)や塩基(例アルカリ金属)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩などが用いられる。
該スクリーニング方法で得られた化合物またはその塩を含有する医薬は、前記した本発明のタンパク質を含有する医薬と同様にして製造することができる。 このようにして得られる製剤は、安全で低毒性であるので、例えば、ヒトまたは哺乳動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、動脈硬化症の治療目的で該化合物を経口投与する場合、一般的に成人(体重60kgとして)においては、一日につき該化合物を約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。非経口的に投与する場合は、該化合物の1回投与量は投与対象、対象疾患などによっても異なるが、例えば、動脈硬化症の治療目的で該化合物を注射剤の形で通常成人(60kgとして)に投与する場合、一日につき該化合物を約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0084】
(8b)本発明のDNAに対するプロモーターの活性を促進または阻害する化合物をスクリーニング方法
本発明は、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物に、試験化合物を投与し、レポーター遺伝子の発現を検出することを特徴とする本発明のDNAに対するプロモーターの活性を促進または阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
上記スクリーニング方法において、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物としては、前記した本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物の中でも、本発明のDNAがレポーター遺伝子を導入することにより不活性化され、該レポーター遺伝子が本発明のDNAに対するプロモーターの制御下で発現しうるものが用いられる。
試験化合物としては、前記と同様のものが挙げられる。
レポーター遺伝子としては、前記と同様のものが用いられ、β−ガラクトシダーゼ遺伝子(lacZ)、可溶性アルカリフォスファターゼ遺伝子またはルシフェラーゼ遺伝子などが好適である。
本発明のDNAをレポーター遺伝子で置換された本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物では、レポーター遺伝子が本発明のDNAに対するプロモーターの支配下に存在するので、レポーター遺伝子がコードする物質の発現をトレースすることにより、プロモーターの活性を検出することができる。
【0085】
例えば、本発明のタンパク質をコードするDNA領域の一部を大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子(lacZ)で置換している場合、本来、本発明のタンパク質の発現する組織で、本発明のタンパク質の代わりにβ−ガラクトシダーゼが発現する。従って、例えば、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−ガラクトピラノシド(X−gal)のようなβ−ガラクトシダーゼの基質となる試薬を用いて染色することにより、簡便に本発明のタンパク質の動物生体内における発現状態を観察することができる。具体的には、本発明のタンパク質欠損マウスまたはその組織切片をグルタルアルデヒドなどで固定し、リン酸緩衝生理食塩液(PBS)で洗浄後、X−galを含む染色液で、室温または37℃付近で、約30分ないし1時間反応させた後、組織標本を1mM EDTA/PBS溶液で洗浄することによって、β−ガラクトシダーゼ反応を停止させ、呈色を観察すればよい。また、常法に従い、lacZをコードするmRNAを検出してもよい。
【0086】
上記スクリーニング方法を用いて得られる化合物またはその塩は、上記した試験化合物から選ばれた化合物であり、本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進または阻害する化合物である。
該スクリーニング方法で得られた化合物は塩を形成していてもよく、該化合物の塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸)や塩基(例、有機酸)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩などが用いられる。
本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進する化合物またはその塩は、本発明のタンパク質の発現を促進し、該タンパク質の機能を促進することができるので、例えば、動脈硬化症、高脂血症、高カロリー症、肥満症、老化、脳疾患、腎障害、高トリグリセリド血症などの疾病に対する安全で低毒性な治療・予防剤などの医薬として有用である。
一方、本発明のDNAに対するプロモーター活性を阻害する化合物またはその塩は、本発明のタンパク質の発現を阻害し、該タンパク質の機能を阻害することができるので、例えば、低栄養、無βリポ蛋白質血症、炎症性疾患、Tangier病などの疾病に対する安全で低毒性な治療・予防剤などの医薬として有用である。さらに、上記スクリーニングで得られた化合物から誘導される化合物も同様に用いることができる。
【0087】
該スクリーニング方法で得られた化合物またはその塩を含有する医薬は、前記した本発明のタンパク質またはその塩を含有する医薬と同様にして製造することができる。
このようにして得られる製剤は、安全で低毒性であるので、例えば、ヒトまたは哺乳動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、動脈硬化症の治療目的で本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進する化合物を経口投与する場合、一般的に成人(体重60kgとして)においては、一日につき該化合物を約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。非経口的に投与する場合は、該化合物の1回投与量は投与対象、対象疾患などによっても異なるが、例えば、動脈硬化症の治療目的で本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進する化合物を注射剤の形で通常成人(60kgとして)に投与する場合、一日につき該化合物を約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
一方、例えば、無βリポ蛋白質血症の治療目的で本発明のDNAに対するプロモーター活性を阻害する化合物を経口投与する場合、一般的に成人(体重60kgとして)においては、一日につき該化合物を約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。非経口的に投与する場合は、該化合物の1回投与量は投与対象、対象疾患などによっても異なるが、例えば、無βリポ蛋白質血症の治療目的で本発明のDNAに対するプロモーター活性を阻害する化合物を注射剤の形で通常成人(60kgとして)に投与する場合、一日につき該化合物を約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
このように、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、本発明のDNAに対するプロモーターの活性を促進または阻害する化合物またはその塩をスクリーニングする上で極めて有用であり、本発明のDNA発現不全に起因する各種疾患の原因究明または予防・治療薬の開発に大きく貢献することができる。
また、本発明のLCAT様タンパク質のプロモーター領域を含有するDNA(例えば、配列番号:38で表される塩基配列と同一もしくは実質的に同一の塩基配列を有するDNAまたはその部分DNAを含有するDNAなど)を使って、その下流に種々のタンパクをコードする遺伝子を連結し、これを動物の卵細胞に注入していわゆるトランスジェニック動物(遺伝子移入動物)を作成すれば、特異的にそのタンパクを合成させ、その生体での作用を検討することも可能となる。さらに上記プロモーター部分に適当なレポータ遺伝子を結合させ、これが発現するような細胞株を樹立すれば、 LCAT様タンパクそのものの体内での産生能力を特異的に促進もしくは抑制する作用を持つ低分子化合物の探索系として使用できる。また該プロモーター部分を解析することにより新たなシスエレメントやそれに結合する転写因子を見つけることも可能である。
配列番号:38で表される塩基配列と実質的に同一の塩基配列を含有するDNAとしては、例えば、配列番号:38で表わされる塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有し、配列番号:38で表わされる塩基配列を含有するDNAと実質的に同質のプロモーター活性などを有するDNAであれば何れのものでもよい。
配列番号:38で表わされる塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号:38の配列番号で表わされる塩基配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、さらに好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
ハイブリダイゼーションは、前記の自体公知の方法あるいはそれに準じる方法などに従って行なうことができる。
【0088】
本明細書および図面において、塩基やアミノ酸などを略号で表示する場合、IUPAC−IUB Commision on Biochemical Nomenclature による略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものであり、その例を下記する。またアミノ酸に関し光学異性体があり得る場合は、特に明示しなければL体を示すものとする。
DNA :デオキシリボ核酸
cDNA :相補的デオキシリボ核酸
A :アデニン
T :チミン
G :グアニン
C :シトシン
RNA :リボ核酸
mRNA :メッセンジャーリボ核酸
dATP :デオキシアデノシン三リン酸
dTTP :デオキシチミジン三リン酸
dGTP :デオキシグアノシン三リン酸
dCTP :デオキシシチジン三リン酸
ATP :アデノシン三リン酸
EDTA :エチレンジアミン四酢酸
SDS :ドデシル硫酸ナトリウム
【0089】
Gly :グリシン
Ala :アラニン
Val :バリン
Leu :ロイシン
Ile :イソロイシン
Ser :セリン
Thr :スレオニン
Cys :システイン
Met :メチオニン
Glu :グルタミン酸
Asp :アスパラギン酸
Lys :リジン
Arg :アルギニン
His :ヒスチジン
Phe :フェニルアラニン
Tyr :チロシン
Trp :トリプトファン
Pro :プロリン
Asn :アスパラギン
Gln :グルタミン
pGlu :ピログルタミン酸
【0090】
また、本明細書中で繁用される置換基、保護基および試薬を下記の記号で表記する。
Me :メチル基
Et :エチル基
Bu :ブチル基
Ph :フェニル基
TC :チアゾリジン−4(R)−カルボキサミド基
Tos :p−トルエンスルフォニル
CHO :ホルミル
Bzl :ベンジル
Cl2Bzl :2,6−ジクロロベンジル
Bom :ベンジルオキシメチル
Z :ベンジルオキシカルボニル
Cl−Z :2−クロロベンジルオキシカルボニル
Br−Z :2−ブロモベンジルオキシカルボニル
Boc :t−ブトキシカルボニル
DNP :ジニトロフェニル
Trt :トリチル
Bum :t−ブトキシメチル
Fmoc :N−9−フルオレニルメトキシカルボニル
HOBt :1−ヒドロキシベンズトリアゾール
HOOBt :3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−
1,2,3−ベンゾトリアジン
HONB :1-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミド
DCC :N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド
【0091】
本願明細書の配列表の配列番号は、以下の配列を示す。
〔配列番号:1〕
本発明のヒト心臓由来タンパク質(成熟体)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:2〕
本発明のヒト腎臓由来タンパク質(成熟体)のアミノ酸配列を示す。配列番号:1で表わされるアミノ酸配列の第63番目(Leu)と第64番目(Val)の間に、配列番号:2で表わされるアミノ酸配列の第64番目(Glu)〜第95番目(Leu)の32アミノ酸残基が挿入されたものである。
〔配列番号:3〕
本発明のマウス腎臓由来タンパク質(成熟体)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:4〕
本発明のヒト心臓由来タンパク質(成熟体)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:5〕
本発明のヒト腎臓由来タンパク質(成熟体)のアミノ酸配列を示す。配列番号:4で表わされるアミノ酸配列の第66番目(Leu)と第67番目(Val)の間に、配列番号:5で表わされるアミノ酸配列の第67番目(Glu)〜第98番目(Leu)の32アミノ酸残基が挿入されたものである。
〔配列番号:6〕
本発明のヒト心臓由来タンパク質の前駆体タンパク質のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:7〕
本発明のヒト腎臓由来タンパク質の前駆体タンパク質のアミノ酸配列を示す。配列番号:6で表わされるアミノ酸配列の第96番目(Leu)と第97番目(Val)の間に、配列番号:7で表わされるアミノ酸配列の第97番目(Glu)〜第128番目(Leu)の32アミノ酸残基が挿入されたものである。
〔配列番号:8〕
本発明のマウス腎臓由来タンパク質の前駆体タンパク質のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:9〕
本発明のシグナルペプチドのアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:10〕
本発明のシグナルペプチドのアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:11〕
本発明のシグナルペプチドのアミノ酸配列を示す。
【0092】
〔配列番号:12〕
配列番号:1で表わされるアミノ酸配列を有する本発明のヒト心臓由来タンパク質(成熟体)をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:13〕
配列番号:2で表わされるアミノ酸配列を有する本発明のヒト腎臓由来タンパク質(成熟体)をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:14〕
配列番号:3で表わされるアミノ酸配列を有する本発明のマウス由来タンパク質(成熟体)をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:15〕
配列番号:4で表わされるアミノ酸配列を有する本発明のヒト心臓由来タンパク質(成熟体)をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:16〕
配列番号:5で表わされるアミノ酸配列を有する本発明のヒト腎臓由来タンパク質(成熟体)をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:17〕
配列番号:6で表わされるアミノ酸配列を有する本発明のヒト心臓由来タンパク質の前駆体タンパク質をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:18〕
配列番号:7で表わされるアミノ酸配列を有する本発明のヒト腎臓由来タンパク質の前駆体タンパク質をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:19〕
配列番号:8で表わされるアミノ酸配列を有する本発明のマウス腎臓由来タンパク質の前駆体タンパク質をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:20〕
配列番号:9で表わされるアミノ酸配列を有する本発明のシグナルペプチドをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:21〕
配列番号:10で表わされるアミノ酸配列を有する本発明のシグナルペプチドをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:22〕
配列番号:11で表わされるアミノ酸配列を有する本発明のシグナルペプチドをコードするDNAの塩基配列を示す。
【0093】
〔配列番号:23〕
実施例1において、本発明のヒト由来タンパク質をコードする全長DNAのクローニングに使用した、本発明のヒト由来タンパク質をコードするDNAの部分塩基配列を示す。
〔配列番号:24〕
実施例1において、本発明のヒト由来タンパク質をコードするDNAのクローニングに使用した合成プライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:25〕
実施例1において、本発明のヒト由来タンパク質をコードするDNAのクローニングに使用した合成プライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:26〕
実施例1において、本発明のヒト由来タンパク質をコードするDNAのクローニングに使用した合成プライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:27〕
実施例2において、本発明のマウス由来タンパク質をコードするDNAのクローニングに使用した合成プライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:28〕
実施例2において、本発明のマウス由来タンパク質をコードするDNAのクローニングに使用した合成プライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:29〕
実施例2において、本発明のマウス由来タンパク質をコードする全長DNAのクローニングに使用した、本発明のヒト由来タンパク質をコードするDNAの部分塩基配列を示す。
〔配列番号:30〕
実施例2において、本発明のマウス由来タンパク質をコードするDNAのクローニングに使用した合成プライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:31〕
実施例2において、本発明のマウス由来タンパク質をコードするDNAのクローニングに使用した合成プライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:32〕
実施例2において、本発明のマウス由来タンパク質をコードするDNAのクローニングに使用した合成プライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:33〕
実施例3において、本発明のヒト由来タンパク質をコードするゲノムDNAのクローニングに使用した合成プライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:34〕
実施例3において、本発明のヒト由来タンパク質をコードするゲノムDNAのクローニングに使用した合成プライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:35〕
実施例3において、本発明のヒト由来タンパク質をコードするゲノムDNAのクローニングに使用したアダプターの塩基配列を示す。
〔配列番号:36〕
実施例3において、本発明のヒト由来タンパク質をコードするゲノムDNAのクローニングに使用した合成プライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:37〕
実施例3において、本発明のヒト由来タンパク質をコードするゲノムDNAのクローニングに使用した合成プライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:38〕
本発明のヒト由来タンパク質をコードするcDNAの5'上流配列(プロモーター領域)示す。
〔配列番号:39〕
実施例5において、化学合成された本発明のヒトLCAT様タンパクの部分ペプチドのアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:40〕
実施例5において、化学合成された本発明のヒトLCAT様タンパクの部分ペプチドのアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:41〕
実施例7において作成されたFLAGペプチドを融合させた本発明のヒトLCAT様タンパクをコードするDNAのクローニングに使用した合成プライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:42〕
実施例7において作成されたFLAGペプチドを融合させた本発明のヒトLCAT様タンパクをコードするDNAのクローニングに使用した合成プライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:43〕
実施例11の部分ペプチドのアミノ酸配列を示す。
【0094】
後述の実施例1で得られた形質転換体エシェリヒア コリ(Escherichia coli)DH10B/pTB1972は、平成9年4月7日から通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(NIBH)に寄託番号FERM BP−5900として、平成9年4月9日から財団法人・発酵研究所(IFO)に寄託番号IFO 16072として寄託されている。
また、後述の実施例1で得られた形質転換体エシェリヒア コリ(Escherichia coli)DH10B/pTB1973は、平成9年4月7日から通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(NIBH)に寄託番号FERM BP−5901として、平成9年4月9日から財団法人・発酵研究所(IFO)に寄託番号IFO 16073として寄託されている。
また、後述の実施例2で得られた形質転換体エシェリヒア コリ(Escherichia coli)DH10B/pTB2010は、平成9年7月8日から通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(NIBH)に寄託番号FERM BP−6011として、平成9年7月9日から財団法人・発酵研究所(IFO)に寄託番号IFO 16111として寄託されている。
また、後述の実施例4で得られた形質転換体エシェリヒア コリ(Escherichia coli)DH5α/pTB2022は、平成10年1月20日から通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(NIBH)に寄託番号FERM BP−6227として、平成10年1月19日から財団法人・発酵研究所(IFO)に寄託番号IFO 16154として寄託されている。
【0095】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。なお、大腸菌を用いての遺伝子操作法は、モレキュラー・クローニング(Molecular cloning)に記載されている方法に従った。
【0096】
実施例1
本発明のヒト由来LCAT様タンパク質をコードする遺伝子のクローニング
(1)THP−1細胞から2種の方法でマクロファージ様にした後、泡沫化させた細胞間で発現量の異なるmRNAのサブトラクションによる濃縮
THP−1細胞(大日本製薬(株))の泡沫化は、主に、A. Rodriguezらの方法(ジャーナル・オブ・リピッド・リサーチ、35巻、1909頁、1994年)に従った。THP−1細胞をフォルボールミリステートアセテート(PMA),400ng/mlで3日間処理し、マクロファージ様にした後、β VLDL(very low density lipoprotein) 0.2mgTC(総コレステロール)/mlで1日コレステロール負荷し、これをTHP−1細胞由来の400ng処理泡沫化細胞のサンプルとした。同様にPMA,5ng/mlで5日間処理し、マクロファージ様にした後、β VLDL 0.2mgTC/mlで1日処理し、THP−1細胞由来の5ng処理泡沫化細胞のサンプルとした。
両サンプルとも、グアニジンイソチオシアネート(ファルマシア社製)を用いて、全RNAを抽出し、さらにオリゴ−dTセルロースカラム(ファルマシア社製)を通して、poly(A)+RNAを精製した。これらのpoly(A)+RNAそれぞれ2μgを出発材料にして、PCR−select cDNAサブトラクション・キット(クロンテック社製)を用いたサブトラクションにより、5ng処理泡沫化細胞に特異的に発現しているcDNA断片(cDNAの一部をPCRで増幅した断片)を収集した。
得られたPCR断片の両端に付加しているサブトラクションのためのアダプターの配列を制限酵素RsaIで消化することにより除去し、平滑末端のDNA断片にした後、この断片をpCR−Script(ストラタジーン社製)にサブクローニングした。サブクローニングされたcDNA断片のDNA塩基配列を解読し、明らかとなった塩基配列をもとに公のデータベースであるGenembleデータベースを用いてblastNによるホモロジー検索を行なった。その結果、得られたクローン4S−086(配列番号:23)は、公知のヒトLCAT(ビオシミカ・エ・ビオフィジカ・アクタ(Biochimica et Biophysica Acta)910巻、142−148頁、1987年)と約61%の相同性のある新規なDNA塩基配列を有していた。
【0097】
(2)4S−086cDNA断片の完全長cDNAの単離
得られたクローン4S−086をプローブに用い、市販品のMTN膜(クローンテック社)でノーザンブロット解析を行なった。その結果、この遺伝子は心臓、胎盤、骨格筋、腎臓、精巣で発現されていることが推定された。そこで、この完全長cDNAをヒト心臓由来およびヒト腎臓由来のcDNAライブラリーから取得することにした。
cDNAのクローニングは、ジーントラッパーポジティブ選択システム(ギブコビーアールエル社)を用いて行なった。
ヒト心臓およびヒト腎臓由来のcDNAライブラリー(ギブコビーアールエル社)の大腸菌DH12S株を各々 Terrific Broth(12g/l bacto-tryptone(ディフコ社),24g/l bacto-yeast extract(ディフコ社),2.3g/l リン酸一カリウム,12.5g/l リン酸二カリウム)で30℃で16時間培養し、キアジェンプラスミドキット(キアジェン社)を用いて、プラスミドcDNAライブラリーを精製抽出した。精製したプラスミドcDNAライブラリーをGeneII,ExoIII(いずれもギブコビーアールエル社)によって消化し、一本鎖cDNAライブラリーを作成した。
一方、プローブとして、合成オリゴヌクレオチド:
5'−GCTGCTGCCCTACAACTACACAT−3'
(配列番号:24)
をcDNAライブラリーのスクリーニングに用いた。プローブは、TdT,ビオチン−14−dCTP(ギブコビーアールエル社)を用いて、3'末端をビオチン化することで標識した。一本鎖cDNAライブラリーを95℃で1分間処理した後、氷中で急冷し、ビオチン化したプローブを加えて37℃で1時間、室温でハイブリダイゼーションを行なった。ハイブリダイゼーション後、ジーントラッパーポジティブ選択システム・マグネットビーズ(ギブコビーアールエル社)を加えて、室温で2分ごとに撹拌しながら30分間放置した。その後、ジーントラッパーポジティブ選択システム・マグネットラック(ギブコビーアールエル社)中に入れ、2分間放置した。上清を捨て、マグネットビーズをジーントラッパーポジティブ選択システム・ウオッシュバッファーで洗浄した。このウオッシュバッファーによる洗浄を3回行なった。その後、マグネットラックに入れて放置し、上清を捨て、ジーントラッパーポジティブ選択システム・溶出バッファーを加え、5分間室温で放置した。マグネットラックに入れて5分間放置した後、その上清のDNA溶液を回収した。
【0098】
取得したDNA溶液にプライマーとして合成オリゴヌクレオチド:
5'−GCTGCTGCCCTACAACTACACAT−3'
(配列番号:24)
を入れ、95℃で1分間処理した。ジーントラッパーポジティブ選択システム・修復酵素を加え、70℃で15分間放置して二本鎖DNAを合成した。合成した二本鎖DNAをエレクトロポレーション装置(バイオ・ラッド社)により、大腸菌DH10B株に導入した。
得られた形質転換株を用いて2本のオリゴヌクレオチド:
5'−TATCCGGGCCTTCGTGTCA−3' (配列番号:25)
および
5'−TCAAAGCCGATGTCCTGGAAGAACTTGC−3'
(配列番号:26)
をプライマーとしてコロニーPCRによるスクリーニングを行なった。
PCRにより約220bpの増幅断片が形成されたコロニーを陽性クローンとして、ヒト心臓由来およびヒト腎臓由来cDNAライブラリーより各2株ずつ計4株を選択した。
選択した大腸菌を各々培養後、DNAを抽出し、ABI PRISH Dye Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction Kit with AmpliTaq DNA polymerase, FS(パーキンエルマー社)を用いて反応を行ない、377 DNAシーケンサー(パーキンエルマー社)により、各cDNA断片の塩基配列を決定した。さらに、決定した各塩基配列をもとにアラインメントをとった。その結果、ヒト心臓由来の2株およびヒト腎臓由来のうち1株は、配列番号:17で表わされる塩基配列を含む1271個の塩基配列を有していた。また、ヒト腎臓由来の残りの1株は、上記ヒト心臓由来の2株が有する塩基配列に96塩基が挿入された、配列番号:18で表わされる塩基配列を含む1335個の塩基配列を有していた。
前者のcDNA断片には配列番号:6で表わされる412個のアミノ酸が、後者のcDNA断片には配列番号:7で表わされる444個のアミノ酸がコードされており、両者ともに新規LCAT様タンパク質がコードされていた。
本発明の2種類の新規LCAT様タンパク質をコードするDNAを保持する各プラスミドpTB1972およびpTB1973を大腸菌(Escherichia coli)DH10Bに導入して、形質転換体:大腸菌(Escherichia coli)DH10B/pTB1972およびDH10B/pTB1973を得た。
【0099】
実施例2
マウス由来新規LCAT様タンパク質をコードするcDNAのクローニング
マウス由来新規LCAT様タンパク質の部分配列のクローニングは、PCR法によって行なった。マウス腎臓由来のcDNAライブラリー(ギブコビーアールエル社)の大腸菌DH12S株をTerrific Broth(12g/l bacto−tryptone(ディフコ社),24g/l bacto−yeast extract(ディフコ社),2.3g/l リン酸一カリウム,12.5g/l リン酸二カリウム)で30℃で16時間培養し、キアジェンプラスミドキット(キアジェン社)を用いて、プラスミドcDNAライブラリーを調製し鋳型として用いた。
ヒト由来新規LCAT様タンパク質の配列情報から、次の2つの合成プライマーを作成し、プライマーとして用いた。
5'−GTGGTGCTGGTCCCTGGTGATTTG−3'
(配列番号:27)
5'−GGTGGCCCTGGATGTTTTGTTG−3'
(配列番号:28)
PCR反応は、TaKaRa Ex Taq(宝酒造(株))を含む系で、サーマルサイクラー(GeneAmp PCR System 2400,パーキンエルマー社)を用いて、94℃,30秒・55℃,30秒・72℃,1分を30サイクル、4℃放置の条件で行なった。
得られた増幅断片をpT7ブルーT−ベクター(ノバジェン社)にDNAライゲーションキットバージョン2(宝酒造(株))を用いて挿入し、大腸菌DH5α株に導入した。
得られた形質転換菌からプラスミドDNAを抽出し、ダイターミネーターサイクルシークエンスFSレディリアクションキット(パーキンエルマー社)を用いて反応を行い、377 DNAシーケンサー(パーキンエルマー社)により、cDNA断片の塩基配列を決定した。
取得したクローンは、配列番号:29で表される198個の塩基配列を有していた。そこで、この完全長cDNAをマウス腎臓由来のcDNAライブラリーから取得することにした。
cDNAのクローニングは、ジーントラッパーポジティブ選択システム(ギブコビーアールエル社)を用いて行なった。
【0100】
上記で使用したプラスミドcDNAライブラリーをGeneII,ExoIII(いずれもギブコビーアールエル社)によって消化し、一本鎖cDNAライブラリーを作成した。
一方、プローブとして、合成オリゴヌクレオチド:
5'−GGTTGTACACTACCTTTGCTCCAAG−3'
(配列番号:30)
をcDNAライブラリーのスクリーニングに用いた。プローブは、TdT,ビオチン−14−dCTP(ギブコビーアールエル社)を用いて、3'末端をビオチン化することで標識した。一本鎖cDNAライブラリーを95℃で1分間処理した後、氷中で急冷し、ビオチン化したプローブを加えて37℃で1時間、室温でハイブリダイゼーションを行なった。ハイブリダイゼーション後、ジーントラッパーポジティブ選択システム・マグネットビーズ(ギブコビーアールエル社)を加えて、室温で2分ごとに撹拌しながら30分間放置した。その後、ジーントラッパーポジティブ選択システム・マグネットラック(ギブコビーアールエル社)中に入れ、2分間放置した。上清を捨て、マグネットビーズをジーントラッパーポジティブ選択システム・ウオッシュバッファーで洗浄した。このウオッシュバッファーによる洗浄を3回行なった。その後、マグネットラックに入れて放置し、上清を捨て、ジーントラッパーポジティブ選択システム・溶出バッファーを加え、5分間室温で放置した。マグネットラックに入れて5分間放置した後、その上清のDNA溶液を回収した。
【0101】
取得したDNA溶液にプライマーとして合成オリゴヌクレオチド:
5'−GGTTGTACACTACCTTTGCTCCAAG−3'
(配列番号:30)
を入れ、95℃で1分間処理した。ジーントラッパーポジティブ選択システム・修復酵素を加え、70℃で15分間放置して二本鎖DNAを合成した。合成した二本鎖DNAをエレクトロポレーション装置(バイオ・ラッド社)により、大腸菌DH10B株に導入した。
得られた形質転換株を用いて2本のオリゴヌクレオチド:
5'−GGTAACCAGTTGGAAGCAAAG−3'(配列番号:31)
および
5'−ATCCAGCAGTCAATGATAACA−3'
(配列番号:32)
をプライマーとしてコロニーPCRによるスクリーニングを行なった。
PCRにより約130bpの増幅断片が形成されたコロニーを陽性クローンとして、マウス腎臓由来cDNAライブラリーより計3株を選択した。
選択した大腸菌を各々培養後、DNAを抽出し、ABI PRISH Dye Terminator Cycle Sequencing Ready Reaction Kit with AmpliTaq DNA polymerase, FS(パーキンエルマー社)を用いて反応を行ない、377DNAシーケンサー(パーキンエルマー社)により、各cDNA断片の塩基配列を決定した。さらに、決定した各塩基配列をもとにアラインメントをとった。その結果、取得した3クローンは同一のDNA断片を含んでおり、配列番号:19で表わされる塩基配列を含む2734個の塩基配列を有していた。該cDNA断片には配列番号:8で表わされる412個のアミノ酸がコードされており、マウス由来の新規LCAT様タンパク質がコードされていた。
このマウス由来新規LCAT様タンパク質は実施例1で得られた配列番号:1で表されるアミノ酸配列を有するヒト由来新規LCAT様タンパク質とは、塩基レベルで85.0%、アミノ酸レベルで88.1%の相同性を有していた〔図4〕。 本発明のマウス由来新規LCATをコードするDNAを保持するプラスミドpTB2010を大腸菌(Escherichia coli)DH10Bに導入して、形質転換体:大腸菌(Escherichia coli)DH10B/pTB2010を得た。
【0102】
実施例3
ヒト由来新規LCAT様タンパクのゲノムDNAのクローニング
プロモーターファインダーDNAウォーキングキット(クローンテック社)を用いて、本発明のヒト由来タンパク質をコードするDNAの開始コドン付近の配列解析を行った。使用したヒトゲノムDNAは、予めSsp Iの制限酵素で消化され、その5’および3’末端にプライマーAP 1[5’-GTAATACGACTCACTATAGGGC-3’(配列番号:33)(クローンテック社)]やプライマーAP 2[5’-ACTATAGGGCACGCGTGGT-3’(配列番号:34)(クローンテック社)]が使用可能なアダプター配列[5’-GTAATACGACTCACTATAGGGCACGCGTGGTCGACGGCCCGGGCTGGT-3’(配列番号:35)]が連結されている。
まず、合成オリゴヌクレオチドGSP 1[5’-ATCCGGGAGCAGCCCCACACGGTAGG-3’(配列番号:36)]および合成オリゴヌクレオチド GSP 2[5’-GGTGTACGACGGTCGCCGCAGGTC-3’(配列番号:37)]を用いて、 PCR反応により、ヒト由来新規LCAT様タンパクをコードするcDNAの5’上流領域配列(図5)の塩基番号+45から+20までと塩基番号−1から−24までのオリゴヌクレオチドを参考のため合成した。
第1PCR反応は、このヒトゲノムDNA溶液とTaKaRa LA PCR キットバージョン2(宝酒造(株))、AP 1、合成オリゴヌクレオチド GSP 1を用い、サーマルサイクラー(GeneAmpR PCR System 2400,パーキンエルマー社)で、95℃ 10秒、65℃ 30秒、72℃ 5分を30サイクルの条件で行った。 次に、この反応液を滅菌水で50倍希釈し、第2PCR反応に用いた。 第2PCR反応は、この第1PCR反応液、TaKaRa LA PCR キットバージョン2(宝酒造(株))、AP 2、合成オリゴヌクレオチド GSP 2を用い、サーマルサイクラー(GeneAmpR PCR System 2400,パーキンエルマー社)で、95℃ 10秒、65℃ 30秒、72℃ 5分を25サイクルの条件で行った。
Ssp I で消化したゲノムDNA溶液から得られた約2.9kbp の増幅断片をpT7ブルーT- ベクター(ノバジェン社)にDNAライゲーションキットバージョン2(宝酒造(株))を用いて挿入し、大腸菌 DH 5 α株に導入し、形質転換株を得た。得られた形質転換株から、プラスミドDNAを抽出し、ダイターミネーターサイクルシークエンス FS レディリアクションキット(パーキンエルマー社)を用いて反応を行い、377DNA シーケンサー(パーキンエルマー社)により増幅断片の塩基配列を決定した。これを図6および7に示す。
取得したクローンには、ヒト由来新規LCAT様タンパクcDNAの5’上流領域配列の塩基番号−81から−25までと完全に一致する配列が図6および7に示される塩基配列の塩基番号2788から2843に存在していたことから、該配列はヒト由来新規LCAT様タンパク遺伝子の5’上流領域の配列であることが確認された。また、この上流領域のシスエレメントの解析は、GENETYX バイオデーターベースソフトウエア Ver.32.0(ソフトウエア開発)を用いて調べた。
【0103】
実施例4
ヒト由来新規LCAT様タンパク遺伝子のプロモーター活性の検定
実施例3でクローニングしたゲノムDNA断片がプロモーター活性をもつことを確認するために、プロモーター活性検査法の一つであるアルカリフォスファターゼ活性測定を行った。アルカリフォスファターゼをリポーター遺伝子とするプラスミドの構築方法を図8に示す。
まず、図6および7で示される塩基配列の塩基番号1から2867までの約2.9kbpがpT7ブルーT- ベクターにクローニングされたプラスミドより、Mlu I - Hind IIIを用いて2.9kbp断片を単離し、pSEAP-Basic(クローンテック社)のアルカリフォスファターゼ遺伝子の上流Mlu I - Hind III サイトに導入した。これを大腸菌 DH 5 α株に導入し、発現プラスミドpTB-2022 を製造した。 このときに、Hind III - EcoR Iを用いて2.9kbp断片を単離し、pSEAP-Basicのアルカリフォスファターゼ遺伝子の上流Hind III - EcoR Iサイトに導入することによって、逆向きに挿入された発現プラスミドも構築した。これを、陰性コントロールの一つとした。
WI38 VA13細胞へのプラスミドの導入は、Trans ITTM - LT1(Mirus社)を用いたリポフェクチン法にて行った。すなわち、1X105cells/962mm2(6穴プレート)の細胞濃度で加えた細胞を24時間培養したのち無血清培地におきかえ、各プラスミド3μg/wellとTrans IT-LTI 10μl /μg DNA の濃度で加え、4時間培養することによって導入した。形質転換後、10%FBS(牛胎じ血清)を含むDMEM培地で培養し、72時間後に細胞上清を集めた。その細胞上清液についてアルカリフォスファターゼ活性を測定した。
アルカリフォスファターゼ活性測定には、Great EscAPeTMSEAP Reporter System 2(クローンテック社)を用い、このマニュアルにしたがってn=3で実験を行った。すなわち、12000xg 10分間、遠心した細胞上清10μlを1xdilution buffer で20倍に希釈、65℃ 30分間処理した。そのサンプル60μlを96穴マイクロタイタープレートに入れ、60μlのAssay buffer及び60μl CSPD Chemiluminescent substrate を加え15分間反応後、ルミノスキャン/RS(ラボシステムズ)にてアルカリフォスファターゼ活性を測定した。次に、トランスフェクション効率により生ずる誤差を補正するために、pGV-C2(ニッポンジーン)を各発現プラスミドと同時にトランスフェクションし、72時間培養後にその細胞抽出液を軽く遠心し10倍希釈した後、その20μl にピッカジーン発光基質(ニッポンジーン)100μlを加え、ルミノスキャン/RS(ラボシステムズ)にてルシフェラーゼ活性を測定した。したがって、プロモーター活性はアルカリフォスファターゼ活性の値をルシフェラーゼ活性の値で割った比率(Luminescence,RLU)として表した。結果を図9に示す。図9に示したように、逆向きに導入された形質転換株およびpSEAP-Basicを導入された形質転換株ではプロモーター活性が見られなかったのに対し、pTB-2022を導入された形質転換株では有意な差でプロモーター活性が認められた。これらのことから、このゲノムDNA断片中に機能的なプロモーター活性をもつDNA断片が存在することが確認された。
【0104】
実施例5
ウサギポリクローナル抗体の作製
ヒトLCAT様タンパクの部分ペプチド[ペプチド−I、H−CEDVRGAPYDWRRAPNENGP−OH(配列番号:39)]および部分ペプチド[ペプチド-II、H−PVIGPLKIREQQRSAVSTC−NH2(配列番号:40)]を化学合成し、定法通りKLH(Keyhole Limpet Hemocyanin)と結合した。フロインドの完全アジュバント(FCA)と生理食塩水に溶解した上記ペプチド500μgを混合し、均一なエマルジョンにした後、それぞれ2羽ずつのウサギ(New Zealand White)の背部に皮下注射した。さらに2週間後追加免疫として、フロインドの不完全アジュバント(FIA)と生理食塩水に溶解した上記のペプチドとKLHのコンジュゲイトを混合し、均一なエマルジョンにした後ウサギ背部に皮下注射した。
抗体価の測定は以下のように行った。最終免疫の4週間後、ウサギ耳の静脈から採血し、血液を37℃で30分間保温後、4℃で1昼夜放置した後遠心し、抗血清を得た。抗血清を各濃度に希釈し、予め、ビオチン標識ペプチド-I,IIを付着したアビジン固定したポリスチレン製96穴マイクロプレートに100μlずつ加え、4℃で1昼夜インキュベートした。抗血清を除去し、洗浄後、HRP標識ヤギ抗ウサギIgG抗体を加え20℃で1時間インキュベートし、十分にウエルを洗浄した後、反応基質を加え、呈色反応を行った。酵素反応停止溶液100μlを加えて反応を停止させた後、マイクロプレート用比色計を用い450nmにおける吸光度を測定した。
抗体は以下のようにして調製した。抗ペプチド−Iの抗血清をペプチド−I−セファロース6Bカラムに、さらに抗ペプチド−IIの抗血清をペプチド−II−セファロース6Bカラムに負荷し、PBSバッファー(10mM、pH7.2)及び生理食塩水で洗浄後、グリシン塩酸バッファ−(100mM、pH2.5)でそれぞれ溶出した。溶出液には0.1Mの水酸化ナトリウム溶液を加えて中和した後、精製抗体として使用した。
【0105】
実施例6
ウサギポリクローナル抗LCAT様タンパク−ペプチド抗体によるヒトアポリポタンパク画分中のLCAT様タンパクの局在
実施例5の方法で調製した2種類のIgG抗体を用い、ヒトアポリポタンパク画分中のLCAT様タンパクの存在を検討した。すなわち、ヒト血漿をKBrにて比重調整後、超遠心分離を行い比重が1.063g/mlから1.21g/mlの画分を分取し、TBSバッファー(10mM TrisHCl,pH7.4, 150mM NaCl)にて透析した後、エタノール/エーテルで脱脂を行った。この試料をアポHDLタンパク(12.8mg/ml)とし、2種類のIgG抗体を用いたウエスタンブロッテイングによる解析の結果、それぞれの抗体で同様に認識される分子量約50000の産物を、検出した(図10)。さらに他のリポタンパク画分中での存在を調べるためにヒト血漿をKBrにて比重調整後、超遠心分離を行い比重が1.21g/ml以下の画分(リポタンパク画分)を分取し透析後、Superose6HR(ファルマシア社)を用いたFPLCにて精製を行った。その溶出パターンを図11に示す。この各フラクションをTCA(トリクロロ酢酸)沈殿し、アセトンで脱脂後、抗ペプチド-II抗体を用いたウエスタンブロッテイングによる解析の結果、図12に示す様にアポHDLタンパク画分にのみ分子量約50000の産物が検出され、その他のアポVLDLタンパクやアポLDLタンパク画分ではこの産物は検出されなかった。
【0106】
実施例7
ヒトLCAT様タンパク/FLAG融合遺伝子を昆虫細胞で発現させるための組換えDNAの作製
C末側にFLAGペプチドを融合させたタンパクを作成するために、5'末側にFLAG(配列:DYKDDDDK)ペプチドをコードした配列とXho Iのリンカー配列を付加した上側ストランドと相補的なプライマー[プライマーI、5’−CCGCTCGAGTCACTTGTCATC−GTCGTCGTCCTTGTAGTCGGGCCCAAGGAGCACACGTTTCAG−3’(配列番号41)]及びBamHIの上流で、上側ストランド側のプライマー[プライマーII、5’−GGAGACAACC−AACCGGATCCCAGTCATCGGG−3’(配列番号42)]を作成し、図13に示した様にプラスミドpTB1973をテンプレートとしてPCRを行い該タンパクのC末側をコードするDNA断片を取得し、その塩基配列を確認した。さらにpTB1973のEcoRIとBamHI消化で得られるN末側をコードするDNA断片を取得し、両断片をpFAST Bac1(ギブコBRL社)とライゲーションし目的とするドナープラスミドを取得した。
実施例8
ヒトLCAT様タンパク遺伝子を昆虫細胞で発現させるための組換えDNAの作製
プラスミドpTB1973をEcoRI及びXbaI消化して得られるヒトLCAT様タンパク遺伝子のフルレングスをコードしている約1.5KbのDNA断片を単離し、このフラグメントを同様のEcoRI及びXbaI消化したpFAST Bac1とライゲーションし目的とするドナープラスミドを取得した。
【0107】
実施例9
ヒトLCAT様タンパク/FLAG融合遺伝子の昆虫細胞における発現
実施例7記載のドナープラスミドを用いて、昆虫細胞Sf9から形質転換体ウイルスをBac-To-Bacバキュロウイルス発現系( Bac-To-Bac Baculovirus Expression System; GIBCO BRL社)添付の説明書に従い取得した。得られた組換え体ウイルスと昆虫細胞Sf9のm.o.i.(細胞1個当たりのウイルス数)を0.1にあわせて感染させ、3日間培養した。細胞上清を回収し、ウエスタンブロットに供したところ、分子量47000あたりのところに、実施例5で得られた抗ペプチド-II抗体と抗FLAG M2モノクローナル抗体(マウス、コスモバイオ)の両者と反応する特異的なバンドを確認した。
実施例10
ヒトLCAT様タンパク遺伝子の昆虫細胞における発現
実施例8記載のドナープラスミドを用いて、昆虫細胞Sf9から形質転換体ウイルスをBac-To-Bacバキュロウイルス発現系( Bac-To-Bac Baculovirus Expression System; GIBCO BRL社)添付の説明書に従い取得した。これによって得られた組換え体ウイルスと昆虫細胞Sf9のm.o.i.(細胞1個当たりのウイルス数)を0.1にあわせて感染させ、3日間培養した。細胞上清を回収し、ウエスタンブロットに供したところ、分子量45000あたりのところに、実施例5で得られた抗ペプチド-II抗体と反応する特異的なバンドを確認した。
【0108】
実施例11
ヒトLCAT様タンパク/FLAG融合タンパクの精製およびN末アミノ酸配列の決定
実施例10で得られたヒトLCAT様タンパク/FLAG融合タンパク産生組換え体ウイルス液1mlを、50mlのExcell 400 (JRH)培地で培養した昆虫細胞High Five(2.4x106細胞/ml)に加え感染させた。感染後培養は、27℃においてスピナーフラスコ中で3日間行った。培養上清を回収(以下の操作はすべて4℃で行った。)、0.22μmのフィルターで除菌後TBSバッファー(10mM Tris-HCl,150mM NaCl,pH7.5)に対して一晩透析した後、抗FLAG M2アフィニテイ−カラム(0.7x10cm)(コスモバイオ)にアプライした。30mlのTBSバッファーで洗浄後、FLAGペプチドのTBSバッファー溶液(25〜75μg/ml)で溶出し約170μgの目的タンパクを取得した。この溶液の一部をSDS-PAGEを行いCBB染色し、ほぼ分子量47000あたりのところにone bandであること、そして、その産物が抗FLAG M2モノクローナル抗体を用いたウエスタンブロットで検出されるバンドと一致することを確認した。またこの溶液の一部をSDS-PAGE後、IPVH膜に転写した産物のアミノ酸配列の決定を行った。ペプチドシークエンサー(HPG1005A)による分析の結果、配列番号:43(AGRHPPVVLV)が得られ、このタンパクのN末端は配列番号:6の前駆体タンパクの33番目と34番目の間で切断された配列と同じであることが分かった。
実施例12
ヒトLCAT様タンパクの粗精製
実施例10で得られたヒトLCAT様タンパク産生組換え体ウイルス液1mlを、50mlのExcell 400 (JRH)培地で培養した昆虫細胞High Five(2.0x106細胞/ml)に加え感染させた。感染後培養は、27℃においてスピナーフラスコ中で3日間行った。培養上清を回収(以下の操作はすべて4℃で行った。)、0.22μmのフィルターで除菌後、バッファー(4mM Sodiumphosphate,0.5M NaCl,pH7.4)に対して一晩透析した後、同バッファーで平衡化したフェニルセファロースHPカラム(1.5x10cm)(ファルマシア社製)にアプライした。100mlの同バッファーで洗浄後、約25mlの水で2mlづつ分画しながら目的のタンパクを溶出した。UV吸光度及び抗ペプチド−II抗体を用いたウエスタンブロットによる溶出パターンを図14に示す。分子量45000あたりのところに、実施例5で得られた抗体と反応する特異的なバンドが濃縮されていることを確認した。
【0109】
実施例13
脂肪酸エステルを用いたヒトLCAT様タンパク/FLAG融合タンパクおよびヒトLCAT様タンパクのエステラーゼ活性の測定
Bonelli,F.S.とJonas,A.の報告[ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem.)、第264巻、14723-14728頁(1989)]に従い行った。すなわち、反応バッファー(10mM Tris,pH7.4,150mM NaCl,0.01% EDTA,1mM NaN3)にパラニトロフェニルブチレート(p-nitrophenyl butyrate: PNPB)のアセトニトリル溶液(最終濃度:5mM〜50μM)を基質として加え、つぎに実施例9で得られたヒトLCAT様タンパク/FLAG融合タンパク(最終濃度:3.4μg/ml)を加え全量1mlとした。37℃で20分間インキュベートし、2分おきに400nmの吸光度を測定した。その結果を図15に示す。さらに各基質濃度における吸光度の変化率から初速度を求め、Lineweaver-Burkの方法に従って、VmaxおよびKmを算出した(図16)。得られた値は両者ともヒト血漿由来のLCATの値とほぼオーダー的に一致した。また、実施例12(図14)で得られたフラクション6と7からなる酵素の粗精製液4ml中50μlについても基質濃度を100μMで同様に活性を調べ、エステラーゼ活性を有することを確認した(図17)。
実施例14
DFPやDTNBのPNPBを用いたヒトLCAT様タンパク/FLAG融合タンパクのエステラーゼ活性に及ぼす影響
実施例13の基質添加の前にDFP[Diisopropylfluorophosphate]やDTNB[5,5'-Dithiobis-(2-nitrobenzoic acid)]の阻害剤を加え25℃で1時間インキュベートし、その活性が阻害されるかを検討した。基質濃度は500μMでヒトLCAT様タンパク/FLAG融合タンパクは最終濃度を3.4μg/mlとした。その結果、両者の阻害剤で活性が阻害されることから(図18)、このエステラーゼ活性にはセリンやシステインが関与していることが示唆された。
【0110】
【発明の効果】
本発明のタンパク質およびそれをコードするDNAは、例えば、動脈硬化症、高脂血症、高カロリー症、肥満、高トリグリセリド症などの疾病の治療・予防剤として使用することができる。また、本発明のタンパク質は、本発明のタンパク質のLCAT様活性を促進もしくは阻害する化合物またはその塩のスクリーニングのための試薬として有用である。さらに、本発明のタンパク質に対する抗体は、本発明のタンパク質を特異的に認識することができるので、被検液中の本発明のタンパク質の定量などに使用することができる。
【0111】
【配列表】
【配列番号:1】
【0112】
【配列番号:2】
【0113】
【配列番号:3】
【0114】
【配列番号:4】
【0115】
【配列番号:5】
【0116】
【配列番号:6】
【0117】
【配列番号:7】
【0118】
【配列番号:8】
【0119】
【配列番号:9】
【0120】
【配列番号:10】
【0121】
【配列番号:11】
【0122】
【配列番号:12】
【0123】
【配列番号:13】
【0124】
【配列番号:14】
【0125】
【配列番号:15】
【0126】
【配列番号:16】
【0127】
【配列番号:17】
【0128】
【配列番号:18】
【0129】
【配列番号:19】
【0130】
【配列番号:20】
【0131】
【配列番号:21】
【0132】
【配列番号:22】
【0133】
【配列番号:23】
【0134】
【配列番号:24】
【0135】
【配列番号:25】
【0136】
【配列番号:26】
【0137】
【配列番号:27】
【0138】
【配列番号:28】
【0139】
【配列番号:29】
【0140】
【配列番号:30】
【0141】
【配列番号:31】
【0142】
【配列番号:32】
【0143】
【配列番号:33】
【0144】
【配列番号:34】
【0145】
【配列番号:35】
【0146】
【配列番号:36】
【0147】
【配列番号:37】
【0148】
【配列番号:38】
【0149】
【配列番号:39】
【配列番号:40】
【配列番号:41】
【配列番号:42】
【配列番号:43】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のヒト心臓由来タンパク質をコードするDNAの塩基配列とそれにコードされるアミノ酸配列を示す。
【図2】本発明のヒト腎臓由来タンパク質をコードするDNAの塩基配列とそれにコードされるアミノ酸配列を示す。
【図3】本発明のマウス腎臓由来タンパク質をコードするDNAの塩基配列とそれにコードされるアミノ酸配列を示す。
【図4】本発明のヒト心臓由来タンパク質のアミノ酸配列とマウス腎臓由来タンパク質のアミノ酸配列を比較した図を示す。hCLPはヒト心臓由来タンパク質を、mCLPはマウス腎臓由来タンパク質を示す。黒塗り部分は、両アミノ酸配列のうち、アミノ酸残基が異なっている箇所を示す。
【図5】本発明のヒト由来LCAT様タンパク質をコードするcDNAの5'上流領域配列を示す。
【図6】本発明のヒト由来LCAT様タンパク質をコードするcDNAの5'上流領域配列(プロモーター領域)の第1番目から第1500番目の配列を示す(図7に続く)。
【図7】本発明のヒト由来LCAT様タンパク質をコードするcDNAの5'上流領域配列(プロモーター領域)の第1501番目から第2867番目の配列(開始コドンATGを第2868から第2870番目の配列として含む)を示す(図6の続き)。
【図8】実施例4で得られたpTB 2022およびアンチセンス(antisence)pTB 2022の構築図を示す。
【図9】pTB 2022を導入した形質転換体のプロモーター活性の測定結果を示す。
【図10】実施例6で行われたウエスタン ブロッティングの結果を示す(電気泳動図)。
図中、レーン1はヒトHDLタンパク(12.75μg)、レーン2はヒトHDLタンパク(25.5μg)、レーン3は昆虫細胞由来リコンビナントヒトLCAT様タンパクを示す。
【図11】実施例6で行われたFPLCによる精製の溶出パターンを示す。
【図12】実施例6で行われたウエスタン ブロッティングの結果を示す(電気泳動図)。
図中、レーン4、6は apo VLDL画分、レーン8、10、12、14は apo LDL画分、レーン16、18、20、22は apo HDL画分を示す。
【図13】実施例7で得られたドナープラスミドの構築方法を示す。
【図14】実施例12で行われたタンパク溶出におけるUV吸光度およびウエスタン ブロッティングの結果を示す(電気泳動図)。
【図15】実施例13で行われたPNPBアッセイの結果を示す。
図中で基質濃度は−◆−は5.0E−03M、−■−は2.0E−03M、−△−は1.0E−04M、+は5.0E−05Mを示す。
【図16】実施例13に記載の Lineweaver-Burk 法に基づき算出されたヒトLCAT様タンパク及びヒトLCATタンパクの Vmax(nmol/min)値、Km(M)値を示す。
【図17】実施例13で行われたPNPBアッセイの結果を示す。
図中、−◆−は1.0E−04を示す。
【図18】実施例14で行われたセリン及びシステイン残基の化学修飾後のヒトLCAT様タンパクのPNPBの比較を示す。
図中、−■−はDFP、−×−はDTNBを示す。
Claims (19)
- (a)配列番号:1で表わされるアミノ酸配列;または(b)配列番号:1で表されるアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸配列が欠失・置換もしくは付加したアミノ酸配列からなり、かつレシチン・コレステロールアシルトランスフェラーゼ様活性を有するタンパク質、その前駆体タンパク質またはそれらの塩。
- 配列番号:4〜配列番号:7のいずれかの配列番号で表わされるアミノ酸配列を有する請求項1記載のタンパク質またはその前駆体タンパク質。
- レシチン:コレステロールアシルトランスフェラーゼ様活性を有する請求項1記載のタンパク質またはその前駆体タンパク質。
- (a)配列番号:9もしくは配列番号:10で表わされるアミノ酸配列;または(b)配列番号:9もしくは配列番号:10で表わされるアミノ酸配列において1〜数個のアミノ酸が欠失・置換もしくは付加したアミノ酸配列からなり、かつシグナルペプチドとして機能するシグナルペプチド。
- 請求項1記載のタンパク質または前駆体タンパク質をコードする塩基配列を有するDNAを含有するDNA。
- 配列番号:12、配列番号13、配列番号15〜配列番号:18のいずれかの配列番号で表わされる塩基配列を有する請求項5記載のDNA。
- 請求項4記載のシグナルペプチドをコードするDNAを含有するDNA。
- 配列番号:20または配列番号:21で表わされる塩基配列を有する請求項7記載のDNA。
- 請求項5記載のDNAを含有する組換えベクター。
- 請求項9記載の組換えベクターで形質転換された形質転換体。
- 請求項10記載の形質転換体を培養し、請求項1記載のタンパク質または前駆体タンパク質を生成、蓄積せしめ、これを採取することを特徴とする請求項1記載のタンパク質、その前駆体タンパク質またはそれらの塩の製造法。
- 請求項1記載のタンパク質、その前駆体タンパク質またはそれらの塩を含有してなる医薬。
- 請求項5記載のDNAを含有してなる医薬。
- 動脈硬化症、肥満症、老化、脳疾患、腎疾患または高脂血症の治療・予防剤である請求項12または13記載の医薬。
- 請求項1記載のタンパク質もしくはその前駆体タンパク質またはそれらの塩に対する抗体。
- 請求項1記載のタンパク質またはその塩を用いることを特徴とする請求項1記載のタンパク質またはその塩のレシチン:コレステロールアシルトランスフェラーゼ様活性を促進または阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法。
- 請求項1記載のタンパク質またはその塩を含有してなる請求項1記載のタンパク質またはその塩のレシチン:コレステロールアシルトランスフェラーゼ様活性を促進または阻害する化合物またはその塩のスクリーニング用キット。
- (a)配列番号:38で表される塩基配列;または(b)配列番号:38で表される塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつプロモーター活性を有する塩基配列を有するDNA。
- 請求項18記載のDNAのプロモーター活性を促進または阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法。
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