JP2004073182A - インスリン抵抗性改善剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】インスリン抵抗性改善剤などの提供。
【解決手段】特定のアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質の活性を阻害する化合物又はその塩、上記タンパク質の細胞外ドメイン、抗体、アンチセンスポリヌクレオチドなどは、インスリン抵抗性の改善剤、糖尿病、肥満症、高脂血症、動脈硬化症、高血圧症、心疾患などの予防・治療剤として使用することができる。また、前記特定のアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質又はその部分ペプチド又はその塩に対する抗体を前記疾患の診断剤、さらには前記タンパク質又はその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドをインスリン抵抗剤のスクリーニングに用いる。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インスリン抵抗性の改善剤ならびにその診断薬、糖尿病の予防・治療剤ならびにその診断薬、およびこれらのスクリーニングなどに関する。
【0002】
【従来の技術】
インスリン抵抗性は、組織でのインスリンの感受性が低下する病態で、特にII型糖尿病では、インスリン分泌不全に加え、糖尿病の発症や進展に関わる主な病因となっている。一般的に肥満を伴う糖尿病患者の多くがインスリン抵抗性を呈していることから、インスリン抵抗性は肥満と深く関わっていると考えられている。さらに、糖尿病のみならず動脈硬化等の脂質代謝異常に起因する疾病にもインスリン抵抗性が見られることが知られている(Saltiel, A.R., Cell, 104巻, 517−529頁, 2001年)。
インスリン抵抗性の作用機序には未だ不明の点が多いが、ひとつの考え方として、動物実験または培養細胞系を用いた実験レベルでは炎症のメカニズムとの類似が示唆されている。例えば、妊娠ラットにリポ多糖 (LPS)を投与した場合、子が生育した後に肥満およびインスリン抵抗性を示すようになること(Nilsson et al, Endocrinol, 142巻, 2622−2630頁, 2001年)、また、炎症性サイトカインの一つであるTNF−αが肥満の脂肪細胞において、より多く産生・分泌され、インスリン作用を阻害すること(Hotamisligil G.S. et al., Science, 259巻, 87−91頁, 1993年)、さらに、インスリン抵抗性改善薬であるチアゾリジン誘導体が抗炎症作用を持つこと(Pasceri, V. et al., Circulation, 101巻, 235−238頁, 2000年)などが報告されている。また、肥満モデルマウスであるob/obマウスでもLPS−binding proteinをはじめとするいくつかの炎症反応に関与するタンパク質の発現変動が認められている (Soukas, A. et al, Genes Develop, 14巻, 963−980頁, 2000年)。
Triggering receptor expressed on myeloid cells 2(TREM−2)は、炎症反応に関与していると考えられているTREM−1のホモログタンパク質として見いだされた免疫グロブリンスーパーファミリーに属する一回膜貫通型膜タンパク質である(非特許文献1 Bauchon, A. et al., J. Immunol., 164巻, 4991−4995頁, 2000年、Daws M.R. et al, Eur J Immunol, 31巻, 783−791頁, 2001年)。TREM−1は、好中球、単球で多量に発現しており、その発現はリポ多糖で誘導されるTNF−αやインターロイキン−1βの分泌を促すことにより炎症の増幅作用を持つこと、さらに、これを阻害することによりマウスで急性炎症応答を抑えることができること(Bauchon, A. et al., Nature, 410巻, 1103−1107頁, 2001年)が知られている。TREM−2は、TREM−1と同様にDAP12と相互作用することによりシグナル伝達を行うこと(非特許文献2 Daws M.R. et al, Eur J Immunol, 31巻, 783−791頁, 2001年)、樹状細胞またはマクロファージではCC chemokine receptor 7(CCR7)の発現誘導を引き起こし樹状細胞の成熟に関与していること (非特許文献3 Bouchon, A. et al., J. Exp. Med. 194巻, 1111−1122頁, 2001年)、NOの産生に関与していること(Daws M.R. et al, Eur J Immunol, 31巻, 783−791頁, 2001年)が報告されている。
【非特許文献1】
J. Immunol., 164巻, 4991−4995頁, 2000年
【非特許文献2】
Eur J Immunol, 31巻, 783−791頁, 2001年
【非特許文献3】
J. Exp. Med. 194巻, 1111−1122頁, 2001年
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
インスリン抵抗性を改善する安全で優れた医薬が切望されている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、肥満およびインスリン抵抗性を呈するモデル動物であるKKAマウス (Nishimura, M., Exp. Animal, 18巻, 147−157頁, 1969年)の脂肪細胞において発現の亢進している遺伝子群の中から、TREM−2を見出し、この知見に基づいて、さらに検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち、本発明は、
(1) 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩の活性を阻害する化合物またはその塩を含有してなるインスリン抵抗性改善剤、
(2) 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質の遺伝子の発現を阻害する化合物またはその塩を含有してなるインスリン抵抗性改善剤、
(3) 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質の発現を阻害する化合物またはその塩を含有してなるインスリン抵抗性改善剤、
(4) 糖尿病、肥満症、高脂血症、動脈硬化症、高血圧症または心疾患の予防・治療剤である上記(1)〜(3)記載のインスリン抵抗性改善剤、
(4a) 糖尿病の予防・治療剤である上記(1)〜(3)記載のインスリン抵抗性改善剤、
(4b) 高脂血症の予防・治療剤である上記(1)〜(3)記載のインスリン抵抗性改善剤、
(4c) 動脈硬化症の予防・治療剤である上記(1)〜(3)記載のインスリン抵抗性改善剤、
(5) 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質の細胞外ドメインまたはその塩を含有してなるインスリン抵抗性改善剤、
(6) 細胞外ドメインが、配列番号:1で表されるアミノ酸配列の第14番目〜第167番目のアミノ酸配列を含有する部分ペプチドである上記(5)記載のインスリン抵抗性改善剤、
(7) 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質の細胞外ドメインまたはその塩を含有してなる糖尿病、肥満症、高脂血症、動脈硬化症、高血圧症または心疾患の予防・治療剤、
(8) 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその部分ペプチドコードするポリヌクレオチドの塩基配列に相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスポリヌクレオチド、
(9) 上記(8)記載のアンチセンスポリヌクレオチドを含有してなるインスリン抵抗性改善剤、
(10) 上記(8)記載のアンチセンスポリヌクレオチドを含有してなる糖尿病、肥満症、高脂血症、動脈硬化症、高血圧症または心疾患の予防・治療剤、
(11) 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその部分ペプチドまたはその塩に対する抗体を含有してなるインスリン抵抗性改善剤、
(12) 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその部分ペプチドまたはその塩に対する抗体を含有してなる糖尿病、肥満症、高脂血症、動脈硬化症、高血圧症または心疾患の予防・治療剤、
(13) 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその部分ペプチドまたはその塩に対する抗体を含有してなるインスリン抵抗性の診断薬、
(14) 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその部分ペプチドまたはその塩に対する抗体を含有してなる糖尿病、肥満症、高脂血症、動脈硬化症、高血圧症または心疾患の診断薬、
(15) 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有してなるインスリン抵抗性の診断薬、
(16) 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有してなる糖尿病、肥満症、高脂血症、動脈硬化症、高血圧症または心疾患の診断薬、
(17) 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩を用いることを特徴とするインスリン抵抗性改善剤のスクリーニング方法、
(18) (i)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩および(ii)該タンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩に対するリガンドを用いることを特徴とする、該タンパク質またはその塩のアンタゴニストのスクリーニング方法、
(19) (i)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩および(ii)該タンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩に対するリガンドを用いることを特徴とする、インスリン抵抗性改善剤のスクリーニング方法、
(20) 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩を含有することを特徴とする、インスリン抵抗性改善剤のスクリーニング用キット、
(21) 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを用いることを特徴とする、インスリン抵抗性改善剤のスクリーニング方法、
(22) 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有することを特徴とする、インスリン抵抗性改善剤のスクリーニング用キット、
(23) 上記(17)、(19)もしくは(21)記載のスクリーニング方法または上記(20)もしくは(22)記載のスクリーニング用キットを用いて得られうるインスリン抵抗性改善剤、
(24) 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列が、配列番号:2で表されるアミノ酸配列である上記(17)、(18)、(19)もしくは(21)記載のスクリーニング方法、
(24a) 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列が、配列番号:2で表されるアミノ酸配列である上記(20)もしくは(22)記載のスクリーニング用キット、
(25) 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩を用いることを特徴とする糖尿病、肥満症、高脂血症、動脈硬化症、高血圧症または心疾患の予防・治療剤のスクリーニング方法、
(25a) (i)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩および(ii)該タンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩に対するリガンドを用いることを特徴とする、糖尿病、肥満症、高脂血症、動脈硬化症、高血圧症または心疾患の予防・治療剤のスクリーニング方法、
(26) 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩を含有することを特徴とする糖尿病、肥満症、高脂血症、動脈硬化症、高血圧症または心疾患の予防・治療剤のスクリーニング用キット、
(27) 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを用いることを特徴とする糖尿病、肥満症、高脂血症、動脈硬化症、高血圧症または心疾患の予防・治療剤のスクリーニング方法、
(28) 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有することを特徴とする糖尿病、肥満症、高脂血症、動脈硬化症、高血圧症または心疾患の予防・治療剤のスクリーニング用キット、
(29) 上記(25)もしくは(27)記載のスクリーニング方法または上記(26)もしくは(28)記載のスクリーニング用キットを用いて得られうる糖尿病、肥満症、高脂血症、動脈硬化症、高血圧症または心疾患の予防・治療剤、
(29a) 上記(25)もしくは(27)記載のスクリーニング方法または上記(26)もしくは(28)記載のスクリーニング用キットを用いて得られうる糖尿病の予防・治療剤、
(29b) 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列が、配列番号:2で表されるアミノ酸配列である上記(25)または(27)記載のスクリーニング方法、
(29c) 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列が、配列番号:2で表されるアミノ酸配列である上記(26)または(28)記載のスクリーニング用キット、
(30) 哺乳動物に対して、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩の活性を阻害する化合物またはその塩、または該タンパク質の遺伝子の発現を阻害する化合物またはその塩の有効量を投与することを特徴とするインスリン抵抗性の改善方法、
(31) 哺乳動物に対して、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩の活性を阻害する化合物またはその塩、または該タンパク質の遺伝子の発現を阻害する化合物またはその塩の有効量を投与することを特徴とする糖尿病の予防・治療方法、
(32) インスリン抵抗性改善剤を製造するための、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩の活性を阻害する化合物またはその塩、または該タンパク質の遺伝子の発現を阻害する化合物またはその塩の使用、
(33) 糖尿病の予防・治療剤を製造するための、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩の活性を阻害する化合物またはその塩、または該タンパク質の遺伝子の発現を阻害する化合物またはその塩の使用などを提供する。
【0006】
【発明の実施の形態】
配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質(以下、本発明のタンパク質または本発明で用いられるタンパク質と称することもある)は、ヒトや温血動物(例えば、モルモット、ラット、マウス、ニワトリ、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、サルなど)の細胞(例えば、肝細胞、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、杯細胞、内皮細胞、平滑筋細胞、繊維芽細胞、繊維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例、マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞、肝細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくはガン細胞など)もしくはそれらの細胞が存在するあらゆる組織、例えば、脳、脳の各部位(例、嗅球、扁桃核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、大脳皮質、延髄、小脳)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆のう、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管(例、大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、前立腺、睾丸、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、骨格筋などに由来するタンパク質であってもよく、合成タンパク質であってもよい。
【0007】
配列番号:1で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と例えば約60%以上、好ましくは約70%以上、好ましくは約80%以上、好ましくは約90%以上、好ましくは約95%以上の相同性を有するアミノ酸配列などが挙げられる。
配列番号:1で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質としては、例えば、前記の配列番号:1で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、配列番号:1で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質と実質的に同質の活性を有するタンパク質などが好ましい。配列番号:1で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質としては、例えば、配列番号:2で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質などが挙げられる。
【0008】
実質的に同質の活性としては、例えば、シグナル伝達活性〔例、本発明のタンパク質(好ましくはTREM−2)の細胞内シグナル伝達活性など〕、リガンド結合活性〔例、本発明のタンパク質(好ましくはTREM−2)とリガンドまたは低分子との結合活性など〕などが挙げられる。実質的に同質とは、それらの性質が性質的に(例、生理学的に、または薬理学的に)同質であることを示す。したがって、シグナル伝達活性、リガンド結合活性などが同等(例、約0.01〜100倍、好ましくは約0.1〜10倍、より好ましくは0.5〜2倍)であることが好ましいが、これらの活性の程度、タンパク質の分子量などの量的要素は異なっていてもよい。
シグナル伝達活性およびリガンド結合活性の測定は、自体公知の方法、例えばJ. Exp. Med. 194巻, 1111−1122頁, 2001年に記載の方法またはそれに準じる方法に従って測定することができる。
本発明のタンパク質(好ましくはTREM−2)のシグナルは、例えばTREM−2にリン酸化を生じさせERK(extracellular signal−related protein)を活性化し、炎症性サイトカイン(例、TNF−α等)の分泌を促進する。従って、上記シグナル伝達活性は、例えば本発明のタンパク質発現細胞(例、TREM−2発現動物細胞)に対し、必要に応じ(a)微生物細胞破砕液、微生物培養上清、真核細胞破砕液、真核細胞培養上清などリガンドが含まれる液、(b)リガンド自身、(c)天然のリガンドと同等に本発明のタンパク質に結合活性を有する物質、または(d)本発明のタンパク質(例、TREM−2)を活性化する抗体を添加して、(1)リン酸化ERKの生成量、(2)細胞外に分泌生産されるTNF−αの生成量または(3)リン酸化TREM−2の生成量を測定する。
上記のリン酸化ERKまたはTNF−αの生成量は、抗リン酸化ERK抗体または抗TNF−α抗体を用いて、公知の方法(例、ウェスタンブロッティング法、EIA法など)により測定できる。リン酸化TREM−2の生成量は、抗TREM−2抗体および抗リン酸化チロシン抗体を用いて公知の方法(例、免疫沈降法、ウェスタンブロット法など)により測定できる。
リガンド結合活性は、本発明のタンパク質(好ましくはTREM−2)とリガンドを用いて、例えば、免疫沈降法、タンパク質アフィニティー精製法、酵母Two−hybrid法などにより測定できる。
【0009】
また、本発明で用いられるタンパク質としては、例えば、(1)(i)配列番号:1で表されるアミノ酸配列中の1または2個以上(例えば1〜100個程度、好ましくは1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(ii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列に1または2個以上(例えば1〜100個程度、好ましくは1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、(iii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列に1または2個以上(例えば1〜100個程度、好ましくは1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、(iv)配列番号:1で表されるアミノ酸配列中の1または2個以上(例えば1〜100個程度、好ましくは1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または(v)それらを組み合わせたアミノ酸配列を含有するタンパク質などのいわゆるムテイン、(2)(i)配列番号:2で表されるアミノ酸配列中の1または2個以上(例えば1〜100個程度、好ましくは1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(ii)配列番号:2で表されるアミノ酸配列に1または2個以上(例えば1〜100個程度、好ましくは1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、(iii)配列番号:2で表されるアミノ酸配列に1または2個以上(例えば1〜100個程度、好ましくは1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、(iv)配列番号:2で表されるアミノ酸配列中の1または2個以上(例えば1〜100個程度、好ましくは1〜30個程度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または(v)それらを組み合わせたアミノ酸配列を含有するタンパク質などのいわゆるムテインも含まれる。
上記のようにアミノ酸配列が挿入、欠失または置換されている場合、その挿入、欠失または置換の位置としては、とくに限定されない。
【0010】
本明細書におけるタンパク質は、ペプチド標記の慣例に従って左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)である。配列番号:1で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質をはじめとする、本発明で用いられるタンパク質は、C末端がカルボキシル基(−COOH)、カルボキシレート(−COO)、アミド(−CONH)またはエステル(−COOR)の何れであってもよい。
ここでエステルにおけるRとしては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチルなどのC1−6アルキル基、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC3−8シクロアルキル基、例えば、フェニル、α−ナフチルなどのC6−12アリール基、例えば、ベンジル、フェネチルなどのフェニル−C1−2アルキル基もしくはα−ナフチルメチルなどのα−ナフチル−C1−2アルキル基などのC7−14アラルキル基、ピバロイルオキシメチル基などが用いられる。
本発明で用いられるタンパク質がC末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している場合、カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものも本発明で用いられるタンパク質に含まれる。この場合のエステルとしては、例えば上記したC末端のエステルなどが用いられる。
さらに、本発明で用いられるタンパク質には、N末端のアミノ酸残基(例、メチオニン残基)のアミノ基が保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1−6アルカノイルなどのC1−6アシル基など)で保護されているもの、生体内で切断されて生成するN末端のグルタミン残基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基(例えば−OH、−SH、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基など)が適当な保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1−6アルカノイル基などのC1−6アシル基など)で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖タンパク質などの複合タンパク質なども含まれる。
本発明で用いられるタンパク質の具体例としては、例えば、配列番号:1で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質(ヒト型TREM−2)、配列番号:2で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質(マウス型TREM−2)などがあげられる。
【0011】
本発明で用いられるタンパク質の部分ペプチドとしては、前記した本発明で用いられるタンパク質の部分ペプチドであって、好ましくは、前記した本発明で用いられるタンパク質と同様の性質を有するものであればいずれのものでもよい。
具体的には、後述する本発明の抗体を調製する目的には、配列番号:1で表されるアミノ酸配列において第133〜147番目のアミノ酸配列を有するペプチド、配列番号:2で表されるアミノ酸配列において第133〜147番目のアミノ酸配列を有するペプチドなどがあげられる。例えば、本発明で用いられるタンパク質の構成アミノ酸配列のうち少なくとも20個以上、好ましくは50個以上、さらに好ましくは70個以上、より好ましくは100個以上、最も好ましくは200個以上のアミノ酸配列を有するペプチドなどが用いられる。
また、本発明で用いられる部分ペプチドは、そのアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が欠失し、または、そのアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が付加し、または、そのアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が挿入され、または、そのアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜10個程度、より好ましくは数個、さらに好ましくは1〜5個程度)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されていてもよい。
また、本発明で用いられる部分ペプチドには、本発明で用いられるタンパク質の細胞外ドメインも含む。該細胞外ドメインとしては、例えば、配列番号:1で表されるアミノ酸配列の第14〜167番目または第19〜173番目のアミノ酸配列を有するペプチド、配列番号:2で表されるアミノ酸配列の第14〜170番目または第19〜170番目のアミノ酸配列を有するペプチドなどが挙げられる。
【0012】
また、本発明で用いられる部分ペプチドはC末端がカルボキシル基(−COOH)、カルボキシレート(−COO)、アミド(−CONH)またはエステル(−COOR)の何れであってもよい。
さらに、本発明で用いられる部分ペプチドには、前記した本発明で用いられるタンパク質と同様に、C末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有しているもの、N末端のアミノ酸残基(例、メチオニン残基)のアミノ基が保護基で保護されているもの、N端側が生体内で切断され生成したグルタミン残基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基が適当な保護基で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖ペプチドなどの複合ペプチドなども含まれる。
本発明で用いられる部分ペプチドは抗体作成のための抗原としても用いることができる。
【0013】
本発明で用いられるタンパク質または部分ペプチドの塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸、有機酸)や塩基(例、アルカリ金属塩)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩などが用いられる。
本発明で用いられるタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩は、前述したヒトや温血動物の細胞または組織から自体公知のタンパク質の精製方法によって製造することもできるし、タンパク質をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによっても製造することができる。また、後述のペプチド合成法に準じて製造することもできる。
ヒトや哺乳動物の組織または細胞から製造する場合、ヒトや哺乳動物の組織または細胞をホモジナイズした後、酸などで抽出を行ない、該抽出液を逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーを組み合わせることにより精製単離することができる。
【0014】
本発明で用いられるタンパク質もしくは部分ペプチドまたはその塩、またはそのアミド体の合成には、通常市販のタンパク質合成用樹脂を用いることができる。そのような樹脂としては、例えば、クロロメチル樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、ベンズヒドリルアミン樹脂、アミノメチル樹脂、4−ベンジルオキシベンジルアルコール樹脂、4−メチルベンズヒドリルアミン樹脂、PAM樹脂、4−ヒドロキシメチルメチルフェニルアセトアミドメチル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−ヒドロキシメチル)フェノキシ樹脂、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−Fmocアミノエチル)フェノキシ樹脂などを挙げることができる。このような樹脂を用い、α−アミノ基と側鎖官能基を適当に保護したアミノ酸を、目的とするタンパク質の配列通りに、自体公知の各種縮合方法に従い、樹脂上で縮合させる。反応の最後に樹脂からタンパク質または部分ペプチドを切り出すと同時に各種保護基を除去し、さらに高希釈溶液中で分子内ジスルフィド結合形成反応を実施し、目的のタンパク質もしくは部分ペプチドまたはそれらのアミド体を取得する。
上記した保護アミノ酸の縮合に関しては、タンパク質合成に使用できる各種活性化試薬を用いることができるが、特に、カルボジイミド類がよい。カルボジイミド類としては、DCC、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロリル)カルボジイミドなどが用いられる。これらによる活性化にはラセミ化抑制添加剤(例、HOBt,HOOBt)とともに保護アミノ酸を直接樹脂に添加するかまたは、対称酸無水物またはHOBtエステルあるいはHOOBtエステルとしてあらかじめ保護アミノ酸の活性化を行った後に樹脂に添加することができる。
【0015】
保護アミノ酸の活性化や樹脂との縮合に用いられる溶媒としては、タンパク質縮合反応に使用しうることが知られている溶媒から適宜選択されうる。例えば、N,N−ジメチルホルムアミド,N,N−ジメチルアセトアミド,N−メチルピロリドンなどの酸アミド類、塩化メチレン,クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類、トリフルオロエタノールなどのアルコール類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ピリジン,ジオキサン,テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトニトリル,プロピオニトリルなどのニトリル類、酢酸メチル,酢酸エチルなどのエステル類あるいはこれらの適宜の混合物などが用いられる。反応温度はタンパク質結合形成反応に使用され得ることが知られている範囲から適宜選択され、通常約−20℃〜50℃の範囲から適宜選択される。活性化されたアミノ酸誘導体は通常1.5〜4倍過剰で用いられる。ニンヒドリン反応を用いたテストの結果、縮合が不十分な場合には保護基の脱離を行なうことなく縮合反応を繰り返すことにより十分な縮合を行うことができる。反応を繰り返しても十分な縮合が得られないときには、無水酢酸またはアセチルイミダゾールを用いて未反応アミノ酸をアセチル化することによって、後の反応に影響を与えないようにすることができる。
【0016】
原料のアミノ基の保護基としては、例えば、Z、Boc、t−ペンチルオキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、Cl−Z、Br−Z、アダマンチルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、フタロイル、ホルミル、2−ニトロフェニルスルフェニル、ジフェニルホスフィノチオイル、Fmocなどが用いられる。
カルボキシル基は、例えば、アルキルエステル化(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、t−ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、2−アダマンチルなどの直鎖状、分枝状もしくは環状アルキルエステル化)、アラルキルエステル化(例えば、ベンジルエステル、4−ニトロベンジルエステル、4−メトキシベンジルエステル、4−クロロベンジルエステル、ベンズヒドリルエステル化)、フェナシルエステル化、ベンジルオキシカルボニルヒドラジド化、t−ブトキシカルボニルヒドラジド化、トリチルヒドラジド化などによって保護することができる。
セリンの水酸基は、例えば、エステル化またはエーテル化によって保護することができる。このエステル化に適する基としては、例えば、アセチル基などの低級(C1−6)アルカノイル基、ベンゾイル基などのアロイル基、ベンジルオキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などの炭酸から誘導される基などが用いられる。また、エーテル化に適する基としては、例えば、ベンジル基、テトラヒドロピラニル基、t−ブチル基などである。
チロシンのフェノール性水酸基の保護基としては、例えば、Bzl、Cl−Bzl、2−ニトロベンジル、Br−Z、t−ブチルなどが用いられる。
ヒスチジンのイミダゾールの保護基としては、例えば、Tos、4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニル、DNP、ベンジルオキシメチル、Bum、Boc、Trt、Fmocなどが用いられる。
【0017】
原料のカルボキシル基の活性化されたものとしては、例えば、対応する酸無水物、アジド、活性エステル〔アルコール(例えば、ペンタクロロフェノール、2,4,5−トリクロロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、シアノメチルアルコール、パラニトロフェノール、HONB、N−ヒドロキシスクシミド、N−ヒドロキシフタルイミド、HOBt)とのエステル〕などが用いられる。
原料のアミノ基の活性化されたものとしては、例えば、対応するリン酸アミドが用いられる。
保護基の除去(脱離)方法としては、例えば、Pd−黒あるいはPd−炭素などの触媒の存在下での水素気流中での接触還元や、また、無水フッ化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸あるいはこれらの混合液などによる酸処理や、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピペラジンなどによる塩基処理、また液体アンモニア中ナトリウムによる還元なども用いられる。上記酸処理による脱離反応は、一般に約−20℃〜40℃の温度で行なわれるが、酸処理においては、例えば、アニソール、フェノール、チオアニソール、メタクレゾール、パラクレゾール、ジメチルスルフィド、1,4−ブタンジチオール、1,2−エタンジチオールなどのようなカチオン捕捉剤の添加が有効である。また、ヒスチジンのイミダゾール保護基として用いられる2,4−ジニトロフェニル基はチオフェノール処理により除去され、トリプトファンのインドール保護基として用いられるホルミル基は上記の1,2−エタンジチオール、1,4−ブタンジチオールなどの存在下の酸処理による脱保護以外に、希水酸化ナトリウム溶液、希アンモニアなどによるアルカリ処理によっても除去される。
【0018】
原料の反応に関与すべきでない官能基の保護ならびに保護基、およびその保護基の脱離、反応に関与する官能基の活性化などは公知の基または公知の手段から適宜選択しうる。
タンパク質または部分ペプチドのアミド体を得る別の方法としては、例えば、まず、カルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基をアミド化して保護した後、アミノ基側にペプチド(タンパク質)鎖を所望の鎖長まで延ばした後、該ペプチド鎖のN末端のα−アミノ基の保護基のみを除いたタンパク質または部分ペプチドとC末端のカルボキシル基の保護基のみを除去したタンパク質または部分ペプチドとを製造し、これらのタンパク質またはペプチドを上記したような混合溶媒中で縮合させる。縮合反応の詳細については上記と同様である。縮合により得られた保護タンパク質またはペプチドを精製した後、上記方法によりすべての保護基を除去し、所望の粗タンパク質またはペプチドを得ることができる。この粗タンパク質またはペプチドは既知の各種精製手段を駆使して精製し、主要画分を凍結乾燥することで所望のタンパク質またはペプチドのアミド体を得ることができる。
タンパク質またはペプチドのエステル体を得るには、例えば、カルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基を所望のアルコール類と縮合しアミノ酸エステルとした後、タンパク質またはペプチドのアミド体と同様にして、所望のタンパク質またはペプチドのエステル体を得ることができる。
【0019】
本発明で用いられる部分ペプチドまたはそれらの塩は、自体公知のペプチドの合成法に従って、あるいは本発明で用いられるタンパク質を適当なペプチダーゼで切断することによって製造することができる。ペプチドの合成法としては、例えば、固相合成法、液相合成法のいずれによっても良い。すなわち、本発明で用いられる部分ペプチドを構成し得る部分ペプチドもしくはアミノ酸と残余部分とを縮合させ、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的のペプチドを製造することができる。公知の縮合方法や保護基の脱離としては、例えば、以下の(i)〜(v)に記載された方法が挙げられる。
(i)M. Bodanszky および M.A. Ondetti、ペプチド・シンセシス (Peptide Synthesis), Interscience Publishers, New York (1966年)
(ii)SchroederおよびLuebke、ザ・ペプチド(The Peptide), Academic Press, New York (1965年)
(iii)泉屋信夫他、ペプチド合成の基礎と実験、 丸善(株) (1975年)
(iv)矢島治明 および榊原俊平、生化学実験講座 1、 タンパク質の化学IV、 205、(1977年)
(v)矢島治明監修、続医薬品の開発、第14巻、ペプチド合成、広川書店
また、反応後は通常の精製法、例えば、溶媒抽出・蒸留・カラムクロマトグラフィー・液体クロマトグラフィー・再結晶などを組み合わせて本発明で用いられる部分ペプチドを精製単離することができる。上記方法で得られる部分ペプチドが遊離体である場合は、公知の方法あるいはそれに準じる方法によって適当な塩に変換することができるし、逆に塩で得られた場合は、公知の方法あるいはそれに準じる方法によって遊離体または他の塩に変換することができる。
【0020】
本発明で用いられるタンパク質をコードするポリヌクレオチドとしては、前述した本発明で用いられるタンパク質をコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものであってもよい。好ましくはDNAである。また、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、前記した細胞・組織由来のcDNA、前記した細胞・組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAのいずれでもよい。
ライブラリーに使用するベクターは、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。また、前記した細胞・組織よりtotal RNAまたはmRNA画分を調製したものを用いて直接 Reverse Transcriptase Polymerase Chain Reaction(以下、RT−PCR法と略称する)によって増幅することもできる。
本発明で用いられるタンパク質をコードするDNAとしては、例えば、配列番号:3で表される塩基配列を含有するDNA、または配列番号:3で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含有し、前記した配列番号:1で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質と実質的に同質の性質を有するタンパク質をコードするDNAであれば何れのものでもよい。
【0021】
配列番号:3で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号:3で表される塩基配列と例えば約60%以上、好ましくは約70%以上、好ましくは約80%以上、好ましくは約90%以上、好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。具体例としては、配列番号:4で表される塩基配列を含有するDNAなどである。
ハイブリダイゼーションは、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)2nd(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。より好ましくは、ハイストリンジェントな条件に従って行なうことができる。
ハイストリンジェントな条件とは、例えば、ナトリウム濃度が約19〜40mM、好ましくは約19〜20mMで、温度が約50〜70℃、好ましくは約60〜65℃の条件を示す。特に、ナトリウム濃度が約19mMで温度が約65℃の場合が最も好ましい。
より具体的には、配列番号:1で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードするDNAとしては、配列番号:3で表される塩基配列を含有するDNA、配列番号:2で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質をコードするDNAとしては、配列番号:4で表される塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
【0022】
本発明で用いられる部分ペプチドをコードするDNAとしては、前述した本発明で用いられる部分ペプチドをコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものであってもよい。また、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、前記した細胞・組織由来のcDNA、前記した細胞・組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAのいずれでもよい。
本発明で用いられる部分ペプチドをコードするDNAとしては、例えば、配列番号:3で表される塩基配列を含有するDNAの一部分を含有するDNA、または配列番号:3で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含有し、本発明のタンパク質と実質的に同質の活性を有するタンパク質をコードするDNAの一部分を含有するDNAなどが用いられる。
配列番号:3で表される塩基配列とハイブリダイズできるDNAは、前記と同意義を示す。
ハイブリダイゼーションの方法およびハイストリンジェントな条件は前記と同様のものが用いられる。
【0023】
本発明で用いられるタンパク質、部分ペプチド(以下、これらをコードするDNAのクローニングおよび発現の説明においては、これらを単に本発明のタンパク質と略記する場合がある)を完全にコードするDNAのクローニングの手段としては、本発明のタンパク質をコードする塩基配列の一部分を有する合成DNAプライマーを用いてPCR法によって増幅するか、または適当なベクターに組み込んだDNAを本発明のタンパク質の一部あるいは全領域をコードするDNA断片もしくは合成DNAを用いて標識したものとのハイブリダイゼーションによって選別することができる。ハイブリダイゼーションの方法は、例えば、Molecular Cloning 2nd(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。
DNAの塩基配列の変換は、PCR、公知のキット、例えば、MutanTM−super Express Km(宝酒造(株))、MutanTM−K(宝酒造(株))等を用いて、ODA−LA PCR法、Gapped duplex法、Kunkel法等の自体公知の方法あるいはそれらに準じる方法に従って行なうことができる。
クローン化されたタンパク質をコードするDNAは目的によりそのまま、または所望により制限酵素で消化したり、リンカーを付加したりして使用することができる。該DNAはその5’末端側に翻訳開始コドンとしてのATGを有し、また3’末端側には翻訳終止コドンとしてのTAA、TGAまたはTAGを有していてもよい。これらの翻訳開始コドンや翻訳終止コドンは、適当な合成DNAアダプターを用いて付加することもできる。
本発明のタンパク質の発現ベクターは、例えば、(イ)本発明のタンパク質をコードするDNAから目的とするDNA断片を切り出し、(ロ)該DNA断片を適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより製造することができる。
【0024】
ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド(例、pBR322,pBR325,pUC12,pUC13)、枯草菌由来のプラスミド(例、pUB110,pTP5,pC194)、酵母由来プラスミド(例、pSH19,pSH15)、λファージなどのバクテリオファージ、レトロウィルス,ワクシニアウィルス,バキュロウィルスなどの動物ウィルスなどの他、pA1−11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neoなどが用いられる。
本発明で用いられるプロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主に対応して適切なプロモーターであればいかなるものでもよい。例えば、動物細胞を宿主として用いる場合は、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMVプロモーター、HSV−TKプロモーターなどが挙げられる。
これらのうち、CMV(サイトメガロウィルス)プロモーター、SRαプロモーターなどを用いるのが好ましい。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、trpプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、λPプロモーター、lppプロモーター、T7プロモーターなどが、宿主がバチルス属菌である場合は、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーターなど、宿主が酵母である場合は、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーターなどが好ましい。宿主が昆虫細胞である場合は、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーターなどが好ましい。
【0025】
発現ベクターには、以上の他に、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製オリジン(以下、SV40oriと略称する場合がある)などを含有しているものを用いることができる。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素(以下、dhfrと略称する場合がある)遺伝子〔メソトレキセート(MTX)耐性〕、アンピシリン耐性遺伝子(以下、Ampと略称する場合がある)、ネオマイシン耐性遺伝子(以下、Neoと略称する場合がある、G418耐性)等が挙げられる。特に、dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞を用いてdhfr遺伝子を選択マーカーとして使用する場合、目的遺伝子をチミジンを含まない培地によっても選択できる。
また、必要に応じて、宿主に合ったシグナル配列を、本発明のタンパク質のN端側に付加する。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、PhoA・シグナル配列、OmpA・シグナル配列などが、宿主がバチルス属菌である場合は、α−アミラーゼ・シグナル配列、サブチリシン・シグナル配列などが、宿主が酵母である場合は、MFα・シグナル配列、SUC2・シグナル配列など、宿主が動物細胞である場合には、インシュリン・シグナル配列、α−インターフェロン・シグナル配列、抗体分子・シグナル配列などがそれぞれ利用できる。
このようにして構築された本発明のタンパク質をコードするDNAを含有するベクターを用いて、形質転換体を製造することができる。
【0026】
宿主としては、例えば、エシェリヒア属菌、バチルス属菌、酵母、昆虫細胞、昆虫、動物細胞などが用いられる。
エシェリヒア属菌の具体例としては、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)K12・DH1〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA,60巻,160(1968)〕,JM103〔Nucleic Acids Research,9巻,309(1981)〕,JA221〔Journal of Molecular Biology, 120巻,517(1978)〕,HB101〔Journal of Molecular Biology,41巻,459(1969)〕,C600〔Genetics,39巻,440(1954)〕などが用いられる。
バチルス属菌としては、例えば、バチルス・サブチルス(Bacillus subtilis)MI114〔Gene,24巻,255(1983)〕,207−21〔Journal of Biochemistry,95巻,87(1984)〕などが用いられる。
酵母としては、例えば、サッカロマイセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)AH22,AH22R,NA87−11A,DKD−5D,20B−12、シゾサッカロマイセス ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)NCYC1913,NCYC2036、ピキア パストリス(Pichia pastoris)KM71などが用いられる。
【0027】
昆虫細胞としては、例えば、ウィルスがAcNPVの場合は、夜盗蛾の幼虫由来株化細胞(Spodoptera frugiperda cell;Sf細胞)、Trichoplusia niの中腸由来のMG1細胞、Trichoplusia niの卵由来のHigh FiveTM細胞、Mamestra brassicae由来の細胞またはEstigmena acrea由来の細胞などが用いられる。ウィルスがBmNPVの場合は、蚕由来株化細胞(Bombyx mori N 細胞;BmN細胞)などが用いられる。該Sf細胞としては、例えば、Sf9細胞(ATCC CRL1711)、Sf21細胞(以上、In Vivo,13, 213−217(1977))などが用いられる。
昆虫としては、例えば、カイコの幼虫などが用いられる〔Nature, 315巻, 592(1985)〕。
動物細胞としては、例えば、サル細胞COS−7、Vero、チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO細胞と略記)、dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO(dhfr)細胞と略記)、マウスL細胞、マウスAtT−20、マウスミエローマ細胞、マウスATDC5細胞、ラットGH3、ヒトFL細胞、3T3−L1細胞、L6細胞、C2C12細胞などが用いられる。
エシェリヒア属菌を形質転換するには、例えば、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,69巻,2110(1972)やGene,17巻,107(1982)などに記載の方法に従って行なうことができる。
【0028】
バチルス属菌を形質転換するには、例えば、Molecular & General Genetics,168巻,111(1979)などに記載の方法に従って行なうことができる。
酵母を形質転換するには、例えば、Methods in Enzymology,194巻,182−187(1991)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,75巻,1929(1978)などに記載の方法に従って行なうことができる。
昆虫細胞または昆虫を形質転換するには、例えば、Bio/Technology,6, 47−55(1988)などに記載の方法に従って行なうことができる。
動物細胞を形質転換するには、例えば、細胞工学別冊8 新細胞工学実験プロトコール.263−267(1995)(秀潤社発行)、Virology,52巻,456(1973)に記載の方法に従って行なうことができる。
このようにして、タンパク質をコードするDNAを含有する発現ベクターで形質転換された形質転換体を得ることができる。
宿主がエシェリヒア属菌、バチルス属菌である形質転換体を培養する際、培養に使用される培地としては液体培地が適当であり、その中には該形質転換体の生育に必要な炭素源、窒素源、無機物その他が含有せしめられる。炭素源としては、例えば、グルコース、デキストリン、可溶性澱粉、ショ糖など、窒素源としては、例えば、アンモニウム塩類、硝酸塩類、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、大豆粕、バレイショ抽出液などの無機または有機物質、無機物としては、例えば、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウムなどが挙げられる。また、酵母エキス、ビタミン類、成長促進因子などを添加してもよい。培地のpHは約5〜8が望ましい。
【0029】
エシェリヒア属菌を培養する際の培地としては、例えば、グルコース、カザミノ酸を含むM9培地〔Journal of Experiments in Molecular Genetics,431−433,Cold Spring Harbor Laboratory, New York 1972〕が好ましい。ここに必要によりプロモーターを効率よく働かせるために、例えば、3β−インドリルアクリル酸のような薬剤を加えることができる。
宿主がエシェリヒア属菌の場合、培養は通常約15〜43℃で約3〜24時間行ない、必要により、通気や撹拌を加えることもできる。
宿主がバチルス属菌の場合、培養は通常約30〜40℃で約6〜24時間行ない、必要により通気や撹拌を加えることもできる。
宿主が酵母である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、バークホールダー(Burkholder)最小培地〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA,77巻,4505(1980)〕や0.5%カザミノ酸を含有するSD培地〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA,81巻,5330(1984)〕が挙げられる。培地のpHは約5〜8に調整するのが好ましい。培養は通常約20〜35℃で約24〜72時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
宿主が昆虫細胞または昆虫である形質転換体を培養する際、培地としては、Grace’s Insect Medium(Nature,195,788(1962))に非動化した10%ウシ血清等の添加物を適宜加えたものなどが用いられる。培地のpHは約6.2〜6.4に調整するのが好ましい。培養は通常約27℃で約3〜5日間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
宿主が動物細胞である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、約5〜20%の胎児牛血清を含むMEM培地〔Science,122巻,501(1952)〕,DMEM培地〔Virology,8巻,396(1959)〕,RPMI 1640培地〔The Journal of the American Medical Association 199巻,519(1967)〕,199培地〔Proceeding of the Society for the Biological Medicine,73巻,1(1950)〕などが用いられる。pHは約6〜8であるのが好ましい。培養は通常約30〜40℃で約15〜60時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
以上のようにして、形質転換体の細胞内、細胞膜または細胞外に本発明のタンパク質を生成せしめることができる。
【0030】
上記培養物から本発明のタンパク質を分離精製するには、例えば、下記の方法により行なうことができる。
本発明のタンパク質を培養菌体あるいは細胞から抽出するに際しては、培養後、公知の方法で菌体あるいは細胞を集め、これを適当な緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチームおよび/または凍結融解などによって菌体あるいは細胞を破壊したのち、遠心分離やろ過によりタンパク質の粗抽出液を得る方法などが適宜用いられる。緩衝液の中に尿素や塩酸グアニジンなどのタンパク質変性剤や、トリトンX−100TMなどの界面活性剤が含まれていてもよい。培養液中にタンパク質が分泌される場合には、培養終了後、それ自体公知の方法で菌体あるいは細胞と上清とを分離し、上清を集める。
このようにして得られた培養上清、あるいは抽出液中に含まれるタンパク質の精製は、自体公知の分離・精製法を適切に組み合わせて行なうことができる。これらの公知の分離、精製法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの主として分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法などが用いられる。
【0031】
かくして得られるタンパク質が遊離体で得られた場合には、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法によって塩に変換することができ、逆に塩で得られた場合には自体公知の方法あるいはそれに準じる方法により、遊離体または他の塩に変換することができる。
なお、組換え体が産生するタンパク質を、精製前または精製後に適当なタンパク修飾酵素を作用させることにより、任意に修飾を加えたり、ポリペプチドを部分的に除去することもできる。タンパク修飾酵素としては、例えば、トリプシン、キモトリプシン、アルギニルエンドペプチダーゼ、プロテインキナーゼ、グリコシダーゼなどが用いられる。
かくして生成する本発明のタンパク質の存在は、特異抗体を用いたエンザイムイムノアッセイやウェスタンブロッティングなどにより測定することができる。
【0032】
本発明で用いられるタンパク質もしくは部分ペプチドまたはその塩に対する抗体は、本発明で用いられるタンパク質もしくは部分ペプチドまたはその塩を認識し得る抗体であれば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体の何れであってもよい。
本発明で用いられるタンパク質もしくは部分ペプチドまたはその塩(以下、抗体の説明においては、これらを単に本発明のタンパク質と略記する場合がある)に対する抗体は、本発明のタンパク質を抗原として用い、自体公知の抗体または抗血清の製造法に従って製造することができる。
〔モノクローナル抗体の作製〕
(a)モノクローナル抗体産生細胞の作製
本発明のタンパク質は、温血動物に対して投与により抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は通常2〜6週毎に1回ずつ、計2〜10回程度行われる。用いられる温血動物としては、例えば、サル、ウサギ、イヌ、モルモット、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ニワトリが挙げられるが、マウスおよびラットが好ましく用いられる。
モノクローナル抗体産生細胞の作製に際しては、抗原で免疫された温血動物、例えばマウスから抗体価の認められた個体を選択し最終免疫の2〜5日後に脾臓またはリンパ節を採取し、それらに含まれる抗体産生細胞を同種または異種動物の骨髄腫細胞と融合させることにより、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを調製することができる。抗血清中の抗体価の測定は、例えば、後記の標識化タンパク質と抗血清とを反応させたのち、抗体に結合した標識剤の活性を測定することにより行なうことができる。融合操作は既知の方法、例えば、ケーラーとミルスタインの方法〔Nature、256、495 (1975)〕に従い実施することができる。融合促進剤としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)やセンダイウィルスなどが挙げられるが、好ましくはPEGが用いられる。
【0033】
骨髄腫細胞としては、例えば、NS−1、P3U1、SP2/0、AP−1などの温血動物の骨髄腫細胞が挙げられるが、P3U1が好ましく用いられる。用いられる抗体産生細胞(脾臓細胞)数と骨髄腫細胞数との好ましい比率は1:1〜20:1程度であり、PEG(好ましくはPEG1000〜PEG6000)が10〜80%程度の濃度で添加され、20〜40℃、好ましくは30〜37℃で1〜10分間インキュベートすることにより効率よく細胞融合を実施できる。
モノクローナル抗体産生ハイブリドーマのスクリーニングには種々の方法が使用できるが、例えば、タンパク質抗原を直接あるいは担体とともに吸着させた固相(例、マイクロプレート)にハイブリドーマ培養上清を添加し、次に放射性物質や酵素などで標識した抗免疫グロブリン抗体(細胞融合に用いられる細胞がマウスの場合、抗マウス免疫グロブリン抗体が用いられる)またはプロテインAを加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法、抗免疫グロブリン抗体またはプロテインAを吸着させた固相にハイブリドーマ培養上清を添加し、放射性物質や酵素などで標識したタンパク質を加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法などが挙げられる。
モノクローナル抗体の選別は、自体公知あるいはそれに準じる方法に従って行なうことができる。通常HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)を添加した動物細胞用培地で行なうことができる。選別および育種用培地としては、ハイブリドーマが生育できるものならばどのような培地を用いても良い。例えば、1〜20%、好ましくは10〜20%の牛胎児血清を含むRPMI 1640培地、1〜10%の牛胎児血清を含むGIT培地(和光純薬工業(株))あるいはハイブリドーマ培養用無血清培地(SFM−101、日水製薬(株))などを用いることができる。培養温度は、通常20〜40℃、好ましくは約37℃である。培養時間は、通常5日〜3週間、好ましくは1週間〜2週間である。培養は、通常5%炭酸ガス下で行なうことができる。ハイブリドーマ培養上清の抗体価は、上記の抗血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。
【0034】
(b)モノクローナル抗体の精製
モノクローナル抗体の分離精製は、自体公知の方法、例えば、免疫グロブリンの分離精製法〔例、塩析法、アルコール沈殿法、等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換体(例、DEAE)による吸脱着法、超遠心法、ゲルろ過法、抗原結合固相あるいはプロテインAあるいはプロテインGなどの活性吸着剤により抗体のみを採取し、結合を解離させて抗体を得る特異的精製法〕に従って行なうことができる。
〔ポリクローナル抗体の作製〕
本発明のポリクローナル抗体は、それ自体公知あるいはそれに準じる方法に従って製造することができる。例えば、免疫抗原(タンパク質抗原)自体、あるいはそれとキャリアータンパク質との複合体をつくり、上記のモノクローナル抗体の製造法と同様に温血動物に免疫を行ない、該免疫動物から本発明のタンパク質に対する抗体含有物を採取して、抗体の分離精製を行なうことにより製造することができる。
温血動物を免疫するために用いられる免疫抗原とキャリアータンパク質との複合体に関し、キャリアータンパク質の種類およびキャリアーとハプテンとの混合比は、キャリアーに架橋させて免疫したハプテンに対して抗体が効率良くできれば、どのようなものをどのような比率で架橋させてもよいが、例えば、ウシ血清アルブミンやウシサイログロブリン、ヘモシアニン等を重量比でハプテン1に対し、約0.1〜20、好ましくは約1〜5の割合でカプルさせる方法が用いられる。
また、ハプテンとキャリアーのカプリングには、種々の縮合剤を用いることができるが、グルタルアルデヒドやカルボジイミド、マレイミド活性エステル、チオール基、ジチオビリジル基を含有する活性エステル試薬等が用いられる。
縮合生成物は、温血動物に対して、抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は、通常約2〜6週毎に1回ずつ、計約3〜10回程度行なわれる。
ポリクローナル抗体は、上記の方法で免疫された温血動物の血液、腹水など、好ましくは血液から採取することができる。
抗血清中のポリクローナル抗体価の測定は、上記の抗血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。ポリクローナル抗体の分離精製は、上記のモノクローナル抗体の分離精製と同様の免疫グロブリンの分離精製法に従って行なうことができる。
【0035】
本発明で用いられるタンパク質または部分ペプチドをコードするDNA(以下、アンチセンスポリヌクレオチドの説明においては、これらのDNAを本発明のDNAと略記する場合がある)の塩基配列に相補的な、または実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスポリヌクレオチドとしては、本発明のDNAの塩基配列に相補的な、または実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含有し、該DNAの発現を抑制し得る作用を有するものであれば、いずれのアンチセンスポリヌクレオチドであってもよいが、アンチセンスDNAが好ましい。
本発明のDNAに実質的に相補的な塩基配列とは、例えば、本発明のDNAに相補的な塩基配列(すなわち、本発明のDNAの相補鎖)の全塩基配列あるいは部分塩基配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列などが挙げられる。特に、本発明のDNAの相補鎖の全塩基配列うち、(イ)翻訳阻害を指向したアンチセンスポリヌクレオチドの場合は、本発明のタンパク質のN末端部位をコードする部分の塩基配列(例えば、開始コドン付近の塩基配列など)の相補鎖と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するアンチセンスポリヌクレオチドが、(ロ)RNaseHによるRNA分解を指向するアンチセンスポリヌクレオチドの場合は、イントロンを含む本発明のDNAの全塩基配列の相補鎖と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するアンチセンスポリヌクレオチドがそれぞれ好適である。
具体的には、配列番号:3または配列番号:4で表される塩基配列を含有するDNAの塩基配列に相補的な、もしくは実質的に相補的な塩基配列、またはその一部分を含有するアンチセンスポリヌクレオチド、好ましくは例えば、配列番号:3または配列番号:4で表される塩基配列を含有するDNAの塩基配列に相補的な塩基配列、またはその一部分を含有するアンチセンスポリヌクレオチド(より好ましくは、配列番号:3で表される塩基配列を含有するDNAの塩基配列に相補的な塩基配列、またはその一部分を含有するアンチセンスポリヌクレオチド、配列番号:4で表される塩基配列を含有するDNAの塩基配列に相補的な塩基配列、またはその一部分を含有するアンチセンスポリヌクレオチド)が挙げられる。
アンチセンスポリヌクレオチドは通常、10〜40個程度、好ましくは15〜30個程度の塩基から構成される。
ヌクレアーゼなどの加水分解酵素による分解を防ぐために、アンチセンスDNAを構成する各ヌクレオチドのリン酸残基(ホスフェート)は、例えば、ホスホロチオエート、メチルホスホネート、ホスホロジチオネートなどの化学修飾リン酸残基に置換されていてもよい。また、各ヌクレオチドの糖(デオキシリボース)は、2’−O−メチル化などの化学修飾糖構造に置換されていてもよいし、塩基部分(ピリミジン、プリン)も化学修飾を受けたものであってもよく、配列番号:2で表される塩基配列を含有するDNAにハイブリダイズするものであればいずれのものでもよい。これらのアンチセンスポリヌクレオチドは、公知のDNA合成装置などを用いて製造することができる。
【0036】
本発明に従えば、本発明のタンパク質遺伝子の複製または発現を阻害することのできるアンチセンスポリヌクレオチド(核酸)を、クローン化した、あるいは決定されたタンパク質をコードするDNAの塩基配列情報に基づき設計し、合成しうる。かかるポリヌクレオチド(核酸)は、本発明のタンパク質遺伝子のRNAとハイブリダイズすることができ、該RNAの合成または機能を阻害することができるか、あるいは本発明のタンパク質関連RNAとの相互作用を介して本発明のタンパク質遺伝子の発現を調節・制御することができる。本発明のタンパク質関連RNAの選択された配列に相補的なポリヌクレオチド、および本発明のタンパク質関連RNAと特異的にハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドは、生体内および生体外で本発明のタンパク質遺伝子の発現を調節・制御するのに有用であり、また病気などの治療または診断に有用である。用語「対応する」とは、遺伝子を含めたヌクレオチド、塩基配列または核酸の特定の配列に相同性を有するあるいは相補的であることを意味する。ヌクレオチド、塩基配列または核酸とペプチド(蛋白質)との間で「対応する」とは、ヌクレオチド(核酸)の配列またはその相補体から誘導される指令にあるペプチド(タンパク質)のアミノ酸を通常指している。タンパク質遺伝子の5’端ヘアピンループ、5’端6−ベースペア・リピート、5’端非翻訳領域、ポリペプチド翻訳開始コドン、タンパク質コード領域、ORF翻訳終止コドン、3’端非翻訳領域、3’端パリンドローム領域、および3’端ヘアピンループは好ましい対象領域として選択しうるが、タンパク質遺伝子内の如何なる領域も対象として選択しうる。
目的核酸と、対象領域の少なくとも一部に相補的なポリヌクレオチドとの関係は、対象物とハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドとの関係は、「アンチセンス」であるということができる。アンチセンスポリヌクレオチドは、2−デオキシ−D−リボースを含有しているポリヌクレオチド、D−リボースを含有しているポリヌクレオチド、プリンまたはピリミジン塩基のN−グリコシドであるその他のタイプのポリヌクレオチド、あるいは非ヌクレオチド骨格を有するその他のポリマー(例えば、市販のタンパク質核酸および合成配列特異的な核酸ポリマー)または特殊な結合を含有するその他のポリマー(但し、該ポリマーはDNAやRNA中に見出されるような塩基のペアリングや塩基の付着を許容する配置をもつヌクレオチドを含有する)などが挙げられる。それらは、2本鎖DNA、1本鎖DNA、2本鎖RNA、1本鎖RNA、さらにDNA:RNAハイブリッドであることができ、さらに非修飾ポリヌクレオチド(または非修飾オリゴヌクレオチド)、さらには公知の修飾の付加されたもの、例えば当該分野で知られた標識のあるもの、キャップの付いたもの、メチル化されたもの、1個以上の天然のヌクレオチドを類縁物で置換したもの、分子内ヌクレオチド修飾のされたもの、例えば非荷電結合(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホルアミデート、カルバメートなど)を持つもの、電荷を有する結合または硫黄含有結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)を持つもの、例えばタンパク質(ヌクレアーゼ、ヌクレアーゼ・インヒビター、トキシン、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L−リジンなど)や糖(例えば、モノサッカライドなど)などの側鎖基を有しているもの、インターカレント化合物(例えば、アクリジン、ソラレンなど)を持つもの、キレート化合物(例えば、金属、放射活性をもつ金属、ホウ素、酸化性の金属など)を含有するもの、アルキル化剤を含有するもの、修飾された結合を持つもの(例えば、αアノマー型の核酸など)であってもよい。ここで「ヌクレオシド」、「ヌクレオチド」および「核酸」とは、プリンおよびピリミジン塩基を含有するのみでなく、修飾されたその他の複素環型塩基をもつようなものを含んでいて良い。こうした修飾物は、メチル化されたプリンおよびピリミジン、アシル化されたプリンおよびピリミジン、あるいはその他の複素環を含むものであってよい。修飾されたヌクレオチドおよび修飾されたヌクレオチドはまた糖部分が修飾されていてよく、例えば、1個以上の水酸基がハロゲンとか、脂肪族基などで置換されていたり、あるいはエーテル、アミンなどの官能基に変換されていてよい。
本発明のアンチセンスポリヌクレオチド(核酸)は、RNA、DNA、あるいは修飾された核酸(RNA、DNA)である。修飾された核酸の具体例としては核酸の硫黄誘導体やチオホスフェート誘導体、そしてポリヌクレオシドアミドやオリゴヌクレオシドアミドの分解に抵抗性のものが挙げられるが、それに限定されるものではない。本発明のアンチセンス核酸は次のような方針で好ましく設計されうる。すなわち、細胞内でのアンチセンス核酸をより安定なものにする、アンチセンス核酸の細胞透過性をより高める、目標とするセンス鎖に対する親和性をより大きなものにする、そしてもし毒性があるならアンチセンス核酸の毒性をより小さなものにする。
こうして修飾は当該分野で数多く知られており、例えば J. Kawakami et al.,Pharm Tech Japan, Vol. 8, pp.247, 1992; Vol. 8, pp.395, 1992; S. T. Crooke et al. ed., Antisense Research and Applications, CRC Press, 1993 などに開示がある。
本発明のアンチセンス核酸は、変化せしめられたり、修飾された糖、塩基、結合を含有していて良く、リポゾーム、ミクロスフェアのような特殊な形態で供与されたり、遺伝子治療により適用されたり、付加された形態で与えられることができうる。こうして付加形態で用いられるものとしては、リン酸基骨格の電荷を中和するように働くポリリジンのようなポリカチオン体、細胞膜との相互作用を高めたり、核酸の取込みを増大せしめるような脂質(例えば、ホスホリピド、コレステロールなど)といった疎水性のものが挙げられる。付加するに好ましい脂質としては、コレステロールやその誘導体(例えば、コレステリルクロロホルメート、コール酸など)が挙げられる。こうしたものは、核酸の3’端あるいは5’端に付着させることができ、塩基、糖、分子内ヌクレオシド結合を介して付着させることができうる。その他の基としては、核酸の3’端あるいは5’端に特異的に配置されたキャップ用の基で、エキソヌクレアーゼ、RNaseなどのヌクレアーゼによる分解を阻止するためのものが挙げられる。こうしたキャップ用の基としては、ポリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのグリコールをはじめとした当該分野で知られた水酸基の保護基が挙げられるが、それに限定されるものではない。
アンチセンス核酸の阻害活性は、本発明の形質転換体、本発明の生体内や生体外の遺伝子発現系、あるいは本発明のタンパク質の生体内や生体外の翻訳系を用いて調べることができる。該核酸それ自体公知の各種の方法で細胞に適用できる。
【0037】
以下に、本発明のタンパク質もしくは部分ペプチドまたはその塩(以下、本発明のタンパク質と略記する場合がある)、本発明のタンパク質または部分ペプチドをコードするDNA(以下、本発明のDNAと略記する場合がある)、本発明のタンパク質もしくは部分ペプチドまたはその塩に対する抗体(以下、本発明の抗体と略記する場合がある)、および本発明のDNAのアンチセンスポリヌクレオチド(以下、本発明のアンチセンスポリヌクレオチドと略記する場合がある)の用途を説明する。
【0038】
本発明のタンパク質は、脂肪組織で発現が増加するので、疾患マーカーとして利用することが出来る。すなわち、インスリン抵抗性における早期診断、症状の重症度の判定、疾患進行の予測のためのマーカーとして有用である。さらに、本発明のタンパク質は、インスリン抵抗性惹起ならびに増悪作用を有し、血糖値および血中脂質量を増加させる。よって、本発明のアンチセンスポリヌクレオチド、本発明のタンパク質の活性を阻害する化合物もしくはその塩、本発明のタンパク質遺伝子の発現を阻害する化合物もしくはその塩、本発明の抗体を含有する医薬は、例えば、インスリン抵抗性改善剤として、さらには糖尿病、肥満症、高脂血症、動脈硬化症、高血圧症または心疾患の予防・治療剤として使用することができる。
【0039】
(1)疾病に対する医薬候補化合物のスクリーニング
本発明のタンパク質は脂肪組織で発現が増加し、インスリン抵抗性惹起ならびに増悪作用を有し、血糖値および血中脂質量を増加させる。よって、本発明のタンパク質の活性を阻害する化合物またはその塩は、例えばインスリン抵抗性改善剤として、糖尿病、肥満症、高脂血症、動脈硬化症、高血圧症または心疾患の予防・治療剤などの医薬として使用することができる。
したがって、本発明のタンパク質は、本発明のタンパク質の活性を阻害する化合物またはその塩のスクリーニングのための試薬として有用である。
すなわち、本発明は、本発明のタンパク質を用いることを特徴とする本発明のタンパク質の活性(例えば、リガンド結合活性、シグナル伝達活性など)を阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
より具体的には、例えば、(i)本発明のタンパク質を産生する能力を有する細胞のリガンド結合活性またはシグナル伝達活性と、(ii)試験化合物の存在下の、本発明のタンパク質を産生する能力を有する細胞のリガンド結合活性またはシグナル伝達活性とを比較することを特徴する、本発明のタンパク質の活性を阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法が用いられる。
上記スクリーニング方法においては、例えば(i)と(ii)の場合において、リガンド結合活性またはシグナル伝達活性を自体公知の方法、例えばJ. Exp. Med. 194巻, 1111−1122頁, 2001年に記載の方法またはそれに準じる方法に従って測定し、比較する。
具体例としては、(i)本発明のタンパク質発現ベクターを導入した本発明のタンパク質過剰発現細胞(例、動物細胞)に対し、必要に応じ、(a)微生物細胞破砕液、微生物培養上清、真核細胞破砕液、真核細胞培養上清などリガンドが含まれる液、(b)リガンド自身、(c)天然のリガンドと同等に結合活性を有する物質、または (d) 本発明のタンパク質を活性化する抗体を添加して培養した場合と、(ii)試験化合物の存在下、本発明のタンパク質発現ベクターを導入した本発明のタンパク質過剰発現細胞(例、動物細胞)に対し、必要に応じ、(a)微生物細胞破砕液、微生物培養上清、真核細胞破砕液、真核細胞培養上清などリガンドが含まれる液、(b)リガンド自身、(c)天然のリガンドと同等に結合活性を有する物質、または (d) 本タンパク質を活性化する抗体を添加して培養した場合の、(1)リン酸化ERKの生成量、(2)細胞外に分泌生産されるTNF−αの生成量または(3)リン酸化された本発明のタンパク質(好ましくはリン酸化TREM−2)の生成量をそれぞれ測定し、比較する。
上記のリン酸化ERKまたはTNF−αの生成量は、抗リン酸化ERK抗体または抗TNF−α抗体を用いて、公知の方法(例、ウェスタンブロッティング法、EIA法など)により測定できる。リン酸化TREM−2の生成量は、抗TREM−2抗体および抗リン酸化チロシン抗体を用いて公知の方法(例、免疫沈降法、ウェスタンブロット法など)により測定できる。
本発明のタンパク質を産生する能力を有する細胞としては、例えば、前述した本発明のタンパク質をコードするDNAを含有するベクターで形質転換された宿主(形質転換体)が用いられる。宿主としては、例えば、COS7細胞、CHO細胞、HEK293細胞、3T3−L1細胞、L6細胞、C2C12細胞などの動物細胞が好ましく用いられる。該スクリーニングには、例えば、前述の方法で培養することによって、本発明のタンパク質を細胞膜上に発現させた形質転換体が好ましく用いられる。本発明のタンパク質を発現し得る細胞の培養方法は、前記した本発明の形質変換体の培養法と同様である。
試験化合物としては、例えばペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液などがあげられる。
例えば、上記(i)の場合におけるリガンド結合活性またはシグナル伝達活性が上記(ii)の場合に比べて、約20%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは約50%以上減少させる試験化合物を本発明のタンパク質の活性を阻害する化合物として選択することができる。
【0040】
本発明のタンパク質の活性を阻害する活性を有する化合物は、本発明のタンパク質の生理活性を抑制するための安全で低毒性な医薬として有用である。
本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる化合物またはその塩は、例えば、ペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などから選ばれた化合物である。該化合物の塩としては、前記した本発明のペプチドの塩と同様のものが用いられる。
【0041】
さらに、本発明のタンパク質をコードする遺伝子も、脂肪組織において発現が増加するので、本発明のタンパク質をコードする遺伝子の発現を阻害する化合物またはその塩も、例えばインスリン抵抗性の改善剤、糖尿病、肥満症、高脂血症、動脈硬化、高血圧症または心疾患の予防・治療剤などとして使用することができる。
したがって、本発明のDNAは、本発明のタンパク質をコードする遺伝子の発現を阻害する化合物またはその塩のスクリーニングのための試薬として有用である。
スクリーニング方法としては、(iii)本発明のタンパク質を産生する能力を有する細胞を培養した場合と、(iv)試験化合物の存在下、本発明で用いられるタンパク質を産生する能力を有する細胞を培養した場合との比較を行うことを特徴とするスクリーニング方法が挙げられる。
上記方法において、(iii)と(iv)の場合における、前記遺伝子の発現量(具体的には、本発明のタンパク質量または前記タンパク質をコードするmRNA量)を測定して、比較する。
試験化合物および本発明のタンパク質を産生する能力を有する細胞としては、上記と同様のものが挙げられる。
タンパク質量の測定は、公知の方法、例えば、本発明のタンパク質を認識する抗体を用いて、細胞抽出液中などに存在する前記タンパク質を、ウェスタンブロッティング法、EIA法などの方法またはそれに準じる方法に従い測定することができる。
mRNA量の測定は、公知の方法、例えばノーザンハイブリダイゼーション、RT−PCR法またはそれに準じる方法に従い測定することができる。または、本発明のタンパク質の遺伝子のプロモーターにレポーター遺伝子(例、β−ガラクトシダーゼ等)を連結したベクターを、細胞(例、動物細胞等)に導入し、該レポーター遺伝子の発現量を測定してもよい。
例えば、上記(iv)の場合における遺伝子発現量を、上記(iii)の場合に比べて、約20%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは約50%以上阻害する試験化合物を、本発明のタンパク質をコードする遺伝子の発現を抑制する化合物として選択することができる。
【0042】
本発明のスクリーニング用キットは、本発明で用いられるタンパク質もしくは部分ペプチドまたはその塩、または本発明で用いられるタンパク質もしくは部分ペプチドを産生する能力を有する細胞を含有するものである。
本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる化合物またはその塩は、上記した試験化合物、例えば、ペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などから選ばれた化合物またはその塩であり、本発明のタンパク質の活性(例、リガンド結合活性またはシグナル伝達活性など)を調節する化合物またはその塩である。
該化合物の塩としては、前記した本発明のタンパク質の塩と同様のものが用いられる。
本発明のタンパク質の活性を阻害する化合物またはその塩、および本発明のタンパク質をコードする遺伝子の発現を阻害する化合物またはその塩はそれぞれ、例えばインスリン抵抗性の改善剤、糖尿病、肥満症、高脂血症、動脈硬化、高血圧症または心疾患の予防・治療剤などの医薬として有用である。
本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる化合物またはその塩を上述の予防・治療剤として使用する場合、常套手段に従って製剤化することができる。
【0043】
例えば、経口投与のための組成物としては、固体または液体の剤形、具体的には錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳剤、懸濁剤などがあげられる。かかる組成物は自体公知の方法によって製造され、製剤分野において通常用いられる担体、希釈剤もしくは賦形剤を含有するものである。例えば、錠剤用の担体、賦形剤としては、乳糖、でんぷん、蔗糖、ステアリン酸マグネシウムなどが用いられる。
非経口投与のための組成物としては、例えば、注射剤、坐剤などが用いられ、注射剤は静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤、関節内注射剤などの剤形を包含する。かかる注射剤は、自体公知の方法に従って、例えば、上記化合物またはその塩を通常注射剤に用いられる無菌の水性もしくは油性液に溶解、懸濁または乳化することによって調製する。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液などが用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン界面活性剤〔例、ポリソルベート80、HCO−50(polyoxyethylene(50mol)adduct of hydrogenated castor oil)〕などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどを併用してもよい。調製された注射液は、通常、適当なアンプルに充填される。直腸投与に用いられる坐剤は、上記化合物またはその塩を通常の坐薬用基剤に混合することによって調製される。
【0044】
上記の経口用または非経口用医薬組成物は、活性成分の投与量に適合するような投薬単位の剤形に調製されることが好都合である。かかる投薬単位の剤形としては、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプル)、坐剤などが例示され、それぞれの投薬単位剤形当たり通常1〜500mg、注射剤では0.5〜100mg程度の上記化合物が含有されていることが好ましい。
前記した各組成物は、上記化合物との配合により好ましくない相互作用を生じない限り他の活性成分を含有してもよい。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトまたは温血動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、トリ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジーなど)に対して経口的にまたは非経口的に投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、その作用、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、インスリン抵抗性の改善の目的で本発明のタンパク質の活性を阻害する化合物またはその塩を経口投与する場合、一般的に成人(体重60kgとして)においては、一日につき該化合物またはその塩を約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。非経口的に投与する場合は、該化合物またはその塩の1回投与量は投与対象、対象疾患などによっても異なるが、例えば、インスリン抵抗性の改善の目的で本発明のタンパク質の活性を阻害する化合物またはその塩を注射剤の形で通常成人(体重60kgとして)に投与する場合、一日につき該化合物またはその塩を約0.01〜30mg、好ましくは約0.1〜20mg、より好ましくは約0.1〜10mgを静脈に注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0045】
(2)本発明のタンパク質、その部分ペプチドまたはその塩の定量
本発明のタンパク質に対する抗体(以下、本発明の抗体と略記する場合がある)は、本発明のタンパク質を特異的に認識することができるので、被検液中の本発明のタンパク質の定量、特にサンドイッチ免疫測定法による定量などに使用することができる。
すなわち、本発明は、
(i)本発明の抗体と、被検液および標識化された本発明のタンパク質とを競合的に反応させ、該抗体に結合した標識化された本発明のタンパク質の割合を測定することを特徴とする被検液中の本発明のタンパク質の定量法、および
(ii)被検液と担体上に不溶化した本発明の抗体および標識化された本発明の別の抗体とを同時あるいは連続的に反応させたのち、不溶化担体上の標識剤の活性を測定することを特徴とする被検液中の本発明のタンパク質の定量法を提供する。
上記(ii)の定量法においては、一方の抗体が本発明のタンパク質のN端部を認識する抗体で、他方の抗体が本発明のタンパク質のC端部に反応する抗体であることが望ましい。
【0046】
また、本発明のタンパク質に対するモノクローナル抗体(以下、本発明のモノクローナル抗体と称する場合がある)を用いて本発明のタンパク質の定量を行なえるほか、組織染色等による検出を行なうこともできる。これらの目的には、抗体分子そのものを用いてもよく、また、抗体分子のF(ab’) 、Fab’、あるいはFab画分を用いてもよい。
本発明の抗体を用いる本発明のタンパク質の定量法は、特に制限されるべきものではなく、被測定液中の抗原量(例えば、タンパク質量)に対応した抗体、抗原もしくは抗体−抗原複合体の量を化学的または物理的手段により検出し、これを既知量の抗原を含む標準液を用いて作製した標準曲線より算出する測定法であれば、いずれの測定法を用いてもよい。例えば、ネフロメトリー、競合法、イムノメトリック法およびサンドイッチ法が好適に用いられるが、感度、特異性の点で、後述するサンドイッチ法を用いるのが特に好ましい。
標識物質を用いる測定法に用いられる標識剤としては、例えば、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質などが用いられる。放射性同位元素としては、例えば、〔125I〕、〔131I〕、〔H〕、〔14C〕などが用いられる。上記酵素としては、安定で比活性の大きなものが好ましく、例えば、β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素などが用いられる。蛍光物質としては、例えば、フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネートなどが用いられる。発光物質としては、例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなどが用いられる。さらに、抗体あるいは抗原と標識剤との結合にビオチン−アビジン系を用いることもできる。
【0047】
抗原あるいは抗体の不溶化に当っては、物理吸着を用いてもよく、また通常タンパク質あるいは酵素等を不溶化、固定化するのに用いられる化学結合を用いる方法でもよい。担体としては、アガロース、デキストラン、セルロースなどの不溶性多糖類、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、シリコン等の合成樹脂、あるいはガラス等が挙げられる。
サンドイッチ法においては不溶化した本発明のモノクローナル抗体に被検液を反応させ(1次反応)、さらに標識化した別の本発明のモノクローナル抗体を反応させ(2次反応)たのち、不溶化担体上の標識剤の活性を測定することにより被検液中の本発明のタンパク質量を定量することができる。1次反応と2次反応は逆の順序に行っても、また、同時に行なってもよいし時間をずらして行なってもよい。標識化剤および不溶化の方法は前記のそれらに準じることができる。また、サンドイッチ法による免疫測定法において、固相用抗体あるいは標識用抗体に用いられる抗体は必ずしも1種類である必要はなく、測定感度を向上させる等の目的で2種類以上の抗体の混合物を用いてもよい。
本発明のサンドイッチ法による本発明のタンパク質の測定法においては、1次反応と2次反応に用いられる本発明のモノクローナル抗体は、本発明のタンパク質の結合する部位が相異なる抗体が好ましく用いられる。すなわち、1次反応および2次反応に用いられる抗体は、例えば、2次反応で用いられる抗体が、本発明のタンパク質のC端部を認識する場合、1次反応で用いられる抗体は、好ましくはC端部以外、例えばN端部を認識する抗体が用いられる。
【0048】
本発明のモノクローナル抗体をサンドイッチ法以外の測定システム、例えば、競合法、イムノメトリック法あるいはネフロメトリーなどに用いることができる。
競合法では、被検液中の抗原と標識抗原とを抗体に対して競合的に反応させたのち、未反応の標識抗原(F)と、抗体と結合した標識抗原(B)とを分離し(B/F分離)、B,Fいずれかの標識量を測定し、被検液中の抗原量を定量する。本反応法には、抗体として可溶性抗体を用い、B/F分離をポリエチレングリコール、前記抗体に対する第2抗体などを用いる液相法、および、第1抗体として固相化抗体を用いるか、あるいは、第1抗体は可溶性のものを用い第2抗体として固相化抗体を用いる固相化法とが用いられる。
イムノメトリック法では、被検液中の抗原と固相化抗原とを一定量の標識化抗体に対して競合反応させた後固相と液相を分離するか、あるいは、被検液中の抗原と過剰量の標識化抗体とを反応させ、次に固相化抗原を加え未反応の標識化抗体を固相に結合させたのち、固相と液相を分離する。次に、いずれかの相の標識量を測定し被検液中の抗原量を定量する。
また、ネフロメトリーでは、ゲル内あるいは溶液中で抗原抗体反応の結果生じた不溶性の沈降物の量を測定する。被検液中の抗原量が僅かであり、少量の沈降物しか得られない場合にもレーザーの散乱を利用するレーザーネフロメトリーなどが好適に用いられる。
【0049】
これら個々の免疫学的測定法を本発明の定量方法に適用するにあたっては、特別の条件、操作等の設定は必要とされない。それぞれの方法における通常の条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えて本発明のタンパク質の測定系を構築すればよい。これらの一般的な技術手段の詳細については、総説、成書などを参照することができる。
例えば、入江 寛編「ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和49年発行)、入江 寛編「続ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和54年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(医学書院、昭和53年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第2版)(医学書院、昭和57年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第3版)(医学書院、昭和62年発行)、「Methods in ENZYMOLOGY」Vol. 70(Immunochemical Techniques(Part A))、 同書 Vol. 73(Immunochemical Techniques(Part B))、 同書 Vol. 74(Immunochemical Techniques(Part C))、 同書 Vol. 84(Immunochemical Techniques(Part D:Selected Immunoassays))、 同書 Vol. 92(Immunochemical Techniques(Part E:Monoclonal Antibodies and General Immunoassay Methods))、 同書 Vol. 121(Immunochemical Techniques(Part I:Hybridoma Technology and Monoclonal Antibodies))(以上、アカデミックプレス社発行)などを参照することができる。
以上のようにして、本発明の抗体を用いることによって、本発明のタンパク質を感度良く定量することができる。
さらには、本発明の抗体を用いて本発明のタンパク質の濃度を定量することによって、本発明のタンパク質の濃度の増加または減少が検出された場合、例えばインスリン抵抗性、糖尿病、肥満症、高脂血症、動脈硬化、高血圧症または心疾患などである、または将来罹患する可能性が高いと診断することができる。
また、本発明の抗体は、体液や組織などの被検体中に存在する本発明のタンパク質を検出するために使用することができる。また、本発明のタンパク質を精製するために使用する抗体カラムの作製、精製時の各分画中の本発明のタンパク質の検出、被検細胞内における本発明のタンパク質の挙動の分析などのために使用することができる。
【0050】
(3)遺伝子診断薬
本発明のDNAは、例えば、プローブとして使用することにより、ヒトまたは温血動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、トリ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジーなど)における本発明のタンパク質またはその部分ペプチドをコードするDNAまたはmRNAの異常(遺伝子異常)を検出することができるので、例えば、該DNAまたはmRNAの損傷、突然変異あるいは発現低下や、該DNAまたはmRNAの増加あるいは発現過多などの遺伝子診断薬として有用である。
本発明のDNAを用いる上記の遺伝子診断は、例えば、自体公知のノーザンハイブリダイゼーションやPCR−SSCP法(Genomics, 第5巻, 874〜879頁, 1989年、Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America,第86巻, 2766〜2770頁, 1989年)などにより実施することができる。
例えば、ノーザンハイブリダイゼーションにより発現過多または減少が検出された場合やPCR−SSCP法によりDNAの突然変異が検出された場合は、例えばインスリン抵抗性、糖尿病、肥満症、高脂血症、動脈硬化、高血圧症または心疾患などである可能性が高いと診断することができる。
【0051】
(4)本発明のタンパク質の細胞外ドメインまたはその塩を含有する医薬
本発明のタンパク質の細胞外ドメインまたはその塩は、本発明のタンパク質のリガンドに結合する活性を有するものの、シグナル伝達活性を持たないので、ドミナント・ネガティブタンパク質として、本発明のタンパク質のシグナル伝達を抑制することができる。本発明のタンパク質の細胞外ドメインまたはその塩は、インスリン抵抗性改善作用を有し、血糖値および血中脂質量を減少させる。
よって、本発明のタンパク質の細胞外ドメインまたはその塩は、例えばインスリン抵抗性の改善剤、さらには糖尿病、肥満症、高脂血症、動脈硬化、高血圧症または心疾患の予防・治療剤などの医薬として有用である。
本発明のタンパク質の細胞外ドメインは、それ自体または適当な医薬組成物として投与することができる。上記投与に用いられる医薬組成物は、上記細胞外ドメインまたはその塩と薬理学的に許容され得る担体、希釈剤もしくは賦形剤とを含むものである。かかる組成物は、経口または非経口投与(例、皮下投与)に適する剤形として提供される。
上記細胞外ドメインは、例えば、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤等として経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤等の注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、本発明のポリペプチドを生理学的に認められる担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤等とともに一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な容量が得られるようにするものである。
錠剤、カプセル剤等に混和することができる添加剤としては、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガント、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸等のような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤等が用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、前記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油等のような天然産出植物油等を溶解または懸濁させる等の通常の製剤実施に従って処方することができる。
注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウム等)等が挙げられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例えば、エタノール等)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート80TM、HCO−50等)等と併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油等が挙げられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等と併用してもよい。また、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液等)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカイン等)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコール等)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノール等)、酸化防止剤等と配合してもよい。調製された注射液は、通常、適当なアンプルに充填される。
上記医薬は低毒性であり、そのまま液剤として、または適当な剤型の医薬組成物として、ヒトまたは哺乳動物(例、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して経口的または非経口的(例、皮下投与)に投与することができる。投与量は、投与対象、対象疾患、症状、投与ルートなどによっても異なるが、例えば、成人のインスリン抵抗性の改善のために使用する場合には、上記ドメインを1回量として、通常0.01〜20mg/kg体重程度、好ましくは0.1〜10mg/kg体重程度、さらに好ましくは0.1〜5mg/kg体重程度を、1日1〜5回程度、好ましくは1日1〜3回程度、注射剤により投与するのが好都合である。他の非経口投与および経口投与の場合もこれに準ずる量を投与することができる。症状が特に重い場合には、その症状に応じて増量してもよい。
【0052】
(5)アンチセンスポリヌクレオチドを含有する医薬
本発明のDNAに相補的に結合し、該DNAの発現を抑制することができる本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは低毒性であり、生体内における本発明のタンパク質または本発明のDNAの機能(例、リガンド結合活性またはシグナル伝達活性)を抑制することができる。本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは、インスリン抵抗性改善作用を有し、血糖値および血中脂質量を減少させる。
よって、本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは、例えばインスリン抵抗性の改善剤として、さらには糖尿病、肥満症、高脂血症、動脈硬化、高血圧症または心疾患などの予防・治療剤として使用することができる。
上記アンチセンスポリヌクレオチドを上記の予防・治療剤として使用する場合、自体公知の方法に従って製剤化し、投与することができる。
また、例えば、前記のアンチセンスポリヌクレオチドを単独あるいはレトロウィルスベクター、アデノウィルスベクター、アデノウィルスアソシエーテッドウィルスベクターなどの適当なベクターに挿入した後、常套手段に従って、ヒトまたは哺乳動物(例、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して経口的または非経口的に投与することができる。該アンチセンスポリヌクレオチドは、そのままで、あるいは摂取促進のために補助剤などの生理学的に認められる担体とともに製剤化し、遺伝子銃やハイドロゲルカテーテルのようなカテーテルによって投与できる。あるいは、エアロゾル化して吸入剤として気管内に局所投与することもできる。
さらに、体内動態の改良、半減期の長期化、細胞内取り込み効率の改善を目的に、前記のアンチセンスポリヌクレオチドを単独またはリポゾームなどの担体とともに製剤(注射剤)化し、静脈、皮下、関節腔内等に投与してもよい。
該アンチセンスポリヌクレオチドの投与量は、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、インスリン抵抗性の改善の目的で本発明のアンチセンスポリヌクレオチドを投与する場合、一般的に成人(体重60kg)においては、一日につき該アンチセンスポリヌクレオチドを約0.1〜100mg投与する。
さらに、該アンチセンスポリヌクレオチドは、組織や細胞における本発明のDNAの存在やその発現状況を調べるための診断用オリゴヌクレオチドプローブとして使用することもできる。
上記アンチセンスポリヌクレオチドと同様に、本発明のタンパク質をコードするRNAの一部を含有する二重鎖RNA、本発明のタンパク質をコードするRNAの一部を含有するリボザイムなども、本発明の遺伝子の発現を抑制することができ、生体内における本発明で用いられるタンパク質または本発明で用いられるDNAの機能を抑制することができるので、例えば、例えばインスリン抵抗性の改善剤、糖尿病、肥満症、高脂血症、動脈硬化、高血圧症または心疾患の予防・治療剤などとして使用することができる。
二重鎖RNAは、公知の方法(例、Nature, 411巻, 494頁, 2001年)に準じて、本発明のポリヌクレオチドの配列を基に設計して製造することができる。
リボザイムは、公知の方法(例、TRENDS in Molecular Medicine, 7巻, 221頁, 2001年)に準じて、本発明のポリヌクレオチドの配列を基に設計して製造することができる。例えば、本発明のタンパク質をコードするRNAの一部に公知のリボザイムを連結することによって製造することができる。本発明のタンパク質をコードするRNAの一部としては、公知のリボザイムによって切断され得る本発明のRNA上の切断部位に近接した部分(RNA断片)が挙げられる。
上記の二重鎖RNAまたはリボザイムを上記予防・治療剤として使用する場合、アンチセンスポリヌクレオチドと同様にして製剤化し、投与することができる。
【0053】
(6)本発明の抗体を含有する医薬
本発明のタンパク質の活性を中和する作用を有する抗体は、インスリン抵抗性改善作用を有し、血糖値および血中脂質量を減少させる。
よって、本発明の抗体(好ましくは中和抗体)は、例えばインスリン抵抗性の改善剤として、さらには糖尿病、肥満症、高脂血症、動脈硬化、高血圧症または心疾患の予防・治療剤などの医薬として使用することができる。
本発明の抗体を含有する上記医薬は低毒性であり、そのまま液剤として、または適当な剤型の医薬組成物として、ヒトまたは哺乳動物(例、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して経口的または非経口的(例、静脈投与)に投与することができる。投与量は、投与対象、対象疾患、症状、投与ルートなどによっても異なるが、例えば、成人のインスリン抵抗性の改善のために使用する場合には、本発明の抗体を1回量として、通常0.01〜20mg/kg体重程度、好ましくは0.1〜10mg/kg体重程度、さらに好ましくは0.1〜5mg/kg体重程度を、1日1〜5回程度、好ましくは1日1〜3回程度、注射剤により投与するのが好都合である。他の非経口投与および経口投与の場合もこれに準ずる量を投与することができる。症状が特に重い場合には、その症状に応じて増量してもよい。
本発明の抗体は、それ自体または適当な医薬組成物として投与することができる。上記投与に用いられる医薬組成物は、上記抗体またはその塩と薬理学的に許容され得る担体、希釈剤もしくは賦形剤とを含むものである。かかる組成物は、経口または非経口投与(例、静脈内投与)に適する剤形として提供される。
なお前記した各組成物は、上記抗体との配合により好ましくない相互作用を生じない限り他の活性成分を含有してもよい。
【0054】
(7)DNA転移動物
本発明は、外来性の本発明のタンパク質をコードするDNA(以下、本発明の外来性DNAと略記する)またはその変異DNA(本発明の外来性変異DNAと略記する場合がある)を有する非ヒト哺乳動物を提供する。
すなわち、本発明は、
(1)本発明の外来性DNAまたはその変異DNAを有する非ヒト哺乳動物、
(2)非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である第(1)記載の動物、
(3)ゲッ歯動物がマウスまたはラットである第(2)記載の動物、および
(4)本発明の外来性DNAまたはその変異DNAを含有し、哺乳動物において発現しうる組換えベクターを提供するものである。
本発明の外来性DNAまたはその変異DNAを有する非ヒト哺乳動物(以下、本発明のDNA転移動物と略記する)は、未受精卵、受精卵、精子およびその始原細胞を含む胚芽細胞などに対して、好ましくは、非ヒト哺乳動物の発生における胚発生の段階(さらに好ましくは、単細胞または受精卵細胞の段階でかつ一般に8細胞期以前)に、リン酸カルシウム法、電気パルス法、リポフェクション法、凝集法、マイクロインジェクション法、パーティクルガン法、DEAE−デキストラン法などにより目的とするDNAを転移することによって作出することができる。また、該DNA転移方法により、体細胞、生体の臓器、組織細胞などに目的とする本発明の外来性DNAを転移し、細胞培養、組織培養などに利用することもでき、さらに、これら細胞を上述の胚芽細胞と自体公知の細胞融合法により融合させることにより本発明のDNA転移動物を作出することもできる。
非ヒト哺乳動物としては、例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、マウス、ラットなどが用いられる。なかでも、病体動物モデル系の作成の面から個体発生および生物サイクルが比較的短く、また、繁殖が容易なゲッ歯動物、とりわけマウス(例えば、純系として、C57BL/6系統,DBA2系統など、交雑系として、B6C3F系統,BDF系統,B6D2F系統,BALB/c系統,ICR系統など)またはラット(例えば、Wistar,SDなど)などが好ましい。
哺乳動物において発現しうる組換えベクターにおける「哺乳動物」としては、上記の非ヒト哺乳動物の他にヒトなどがあげられる。
【0055】
本発明の外来性DNAとは、非ヒト哺乳動物が本来有している本発明のDNAではなく、いったん哺乳動物から単離・抽出された本発明のDNAをいう。
本発明の変異DNAとしては、元の本発明のDNAの塩基配列に変異(例えば、突然変異など)が生じたもの、具体的には、塩基の付加、欠損、他の塩基への置換などが生じたDNAなどが用いられ、また、異常DNAも含まれる。
該異常DNAとしては、異常な本発明のタンパク質を発現させるDNAを意味し、例えば、正常な本発明のタンパク質の機能を抑制するタンパク質を発現させるDNAなどが用いられる。
本発明の外来性DNAは、対象とする動物と同種あるいは異種のどちらの哺乳動物由来のものであってもよい。本発明のDNAを対象動物に転移させるにあたっては、該DNAを動物細胞で発現させうるプロモーターの下流に結合したDNAコンストラクトとして用いるのが一般に有利である。例えば、本発明のヒトDNAを転移させる場合、これと相同性が高い本発明のDNAを有する各種哺乳動物(例えば、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウスなど)由来のDNAを発現させうる各種プロモーターの下流に、本発明のヒトDNAを結合したDNAコンストラクト(例、ベクターなど)を対象哺乳動物の受精卵、例えば、マウス受精卵へマイクロインジェクションすることによって本発明のDNAを高発現するDNA転移哺乳動物を作出することができる。
【0056】
本発明のタンパク質の発現ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド、枯草菌由来のプラスミド、酵母由来のプラスミド、λファージなどのバクテリオファージ、モロニー白血病ウィルスなどのレトロウィルス、ワクシニアウィルスまたはバキュロウィルスなどの動物ウィルスなどが用いられる。なかでも、大腸菌由来のプラスミド、枯草菌由来のプラスミドまたは酵母由来のプラスミドなどが好ましく用いられる。
上記のDNA発現調節を行なうプロモーターとしては、例えば、▲1▼ウィルス(例、シミアンウィルス、サイトメガロウィルス、モロニー白血病ウィルス、JCウィルス、乳がんウィルス、ポリオウィルスなど)に由来するDNAのプロモーター、▲2▼各種哺乳動物(ヒト、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウスなど)由来のプロモーター、例えば、アルブミン、インスリンII、ウロプラキンII、エラスターゼ、エリスロポエチン、エンドセリン、筋クレアチンキナーゼ、グリア線維性酸性タンパク質、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、血小板由来成長因子β、ケラチンK1,K10およびK14、コラーゲンI型およびII型、サイクリックAMP依存タンパク質キナーゼβIサブユニット、ジストロフィン、酒石酸抵抗性アルカリフォスファターゼ、心房ナトリウム利尿性因子、内皮レセプターチロシンキナーゼ(一般にTie2と略される)、ナトリウムカリウムアデノシン3リン酸化酵素(Na,K−ATPase)、ニューロフィラメント軽鎖、メタロチオネインIおよびIIA、メタロプロティナーゼ1組織インヒビター、MHCクラスI抗原(H−2L)、H−ras、レニン、ドーパミンβ−水酸化酵素、甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)、ペプチド鎖延長因子1α(EF−1α)、βアクチン、αおよびβミオシン重鎖、ミオシン軽鎖1および2、ミエリン基礎タンパク質、チログロブリン、Thy−1、免疫グロブリン、H鎖可変部(VNP)、血清アミロイドPコンポーネント、ミオグロビン、トロポニンC、平滑筋αアクチン、プレプロエンケファリンA、バソプレシンなどのプロモーターなどが用いられる。なかでも、全身で高発現することが可能なサイトメガロウィルスプロモーター、ヒトペプチド鎖延長因子1α(EF−1α)のプロモーター、ヒトおよびニワトリβアクチンプロモーターなどが好適である。
上記ベクターは、DNA転移哺乳動物において目的とするメッセンジャーRNAの転写を終結する配列(一般にターミネターと呼ばれる)を有していることが好ましく、例えば、ウィルス由来および各種哺乳動物由来の各DNAの配列を用いることができ、好ましくは、シミアンウィルスのSV40ターミネターなどが用いられる。
【0057】
その他、目的とする外来性DNAをさらに高発現させる目的で各DNAのスプライシングシグナル、エンハンサー領域、真核DNAのイントロンの一部などをプロモーター領域の5’上流、プロモーター領域と翻訳領域間あるいは翻訳領域の3’下流 に連結することも目的により可能である。
正常な本発明のタンパク質の翻訳領域は、ヒトまたは各種哺乳動物(例えば、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウスなど)由来の肝臓、腎臓、甲状腺細胞、線維芽細胞由来DNAおよび市販の各種ゲノムDNAライブラリーよりゲノムDNAの全てあるいは一部として、または肝臓、腎臓、甲状腺細胞、線維芽細胞由来RNAより公知の方法により調製された相補DNAを原料として取得することが出来る。また、外来性の異常DNAは、上記の細胞または組織より得られた正常なタンパク質の翻訳領域を点突然変異誘発法により変異した翻訳領域を作製することができる。
該翻訳領域は転移動物において発現しうるDNAコンストラクトとして、前記のプロモーターの下流および所望により転写終結部位の上流に連結させる通常のDNA工学的手法により作製することができる。
受精卵細胞段階における本発明の外来性DNAの転移は、対象哺乳動物の胚芽細胞および体細胞のすべてに存在するように確保される。DNA転移後の作出動物の胚芽細胞において、本発明の外来性DNAが存在することは、作出動物の後代がすべて、その胚芽細胞および体細胞のすべてに本発明の外来性DNAを保持することを意味する。本発明の外来性DNAを受け継いだこの種の動物の子孫はその胚芽細胞および体細胞のすべてに本発明の外来性DNAを有する。
本発明の外来性正常DNAを転移させた非ヒト哺乳動物は、交配により外来性DNAを安定に保持することを確認して、該DNA保有動物として通常の飼育環境で継代飼育することが出来る。
受精卵細胞段階における本発明の外来性DNAの転移は、対象哺乳動物の胚芽細胞および体細胞の全てに過剰に存在するように確保される。DNA転移後の作出動物の胚芽細胞において本発明の外来性DNAが過剰に存在することは、作出動物の子孫が全てその胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の外来性DNAを過剰に有することを意味する。本発明の外来性DNAを受け継いだこの種の動物の子孫はその胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の外来性DNAを過剰に有する。
導入DNAを相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得し、この雌雄の動物を交配することによりすべての子孫が該DNAを過剰に有するように繁殖継代することができる。
【0058】
本発明の正常DNAを有する非ヒト哺乳動物は、本発明の正常DNAが高発現させられており、内在性の正常DNAの機能を促進することにより最終的に本発明のタンパク質の機能亢進症を発症することがあり、その病態モデル動物として利用することができる。例えば、本発明の正常DNA転移動物を用いて、本発明のタンパク質の機能亢進症や、本発明のタンパク質が関連する疾患の病態機序の解明およびこれらの疾患の治療方法の検討を行なうことが可能である。
また、本発明の外来性正常DNAを転移させた哺乳動物は、遊離した本発明のタンパク質の増加症状を有することから、本発明のタンパク質に関連する疾患に対する改善剤または予防・治療剤、例えばインスリン抵抗性の改善剤、糖尿病、肥満症、高脂血症、動脈硬化、高血圧症または心疾患の予防・治療剤のスクリーニング試験にも利用可能である。
一方、本発明の外来性異常DNAを有する非ヒト哺乳動物は、交配により外来性DNAを安定に保持することを確認して該DNA保有動物として通常の飼育環境で継代飼育することが出来る。さらに、目的とする外来DNAを前述のプラスミドに組み込んで原料として用いることができる。プロモーターとのDNAコンストラク卜は、通常のDNA工学的手法によって作製することができる。受精卵細胞段階における本発明の異常DNAの転移は、対象哺乳動物の胚芽細胞および体細胞の全てに存在するように確保される。DNA転移後の作出動物の胚芽細胞において本発明の異常DNAが存在することは、作出動物の子孫が全てその胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の異常DNAを有することを意味する。本発明の外来性DNAを受け継いだこの種の動物の子孫は、その胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の異常DNAを有する。導入DNAを相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得し、この雌雄の動物を交配することによりすべての子孫が該DNAを有するように繁殖継代することができる。
【0059】
本発明の異常DNAを有する非ヒト哺乳動物は、本発明の異常DNAが高発現させられており、内在性の正常DNAの機能を阻害することにより最終的に本発明のタンパク質の機能不活性型不応症となることがあり、その病態モデル動物として利用することができる。例えば、本発明の異常DNA転移動物を用いて、本発明のタンパク質の機能不活性型不応症の病態機序の解明およびこの疾患を治療方法の検討を行なうことが可能である。
また、具体的な利用可能性としては、本発明の異常DNA高発現動物は、本発明のタンパク質の機能不活性型不応症における本発明の異常タンパク質による正常タンパク質の機能阻害(dominant negative作用)を解明するモデルとなる。
また、本発明の外来異常DNAを転移させた哺乳動物は、遊離した本発明のタンパク質の増加症状を有することから、本発明のタンパク質または機能不活性型不応症に対する改善剤または予防・治療剤、例えばインスリン抵抗性の改善剤、糖尿病、肥満症、高脂血症、動脈硬化、高血圧症または心疾患の予防・治療剤のスクリーニング試験にも利用可能である。
また、上記2種類の本発明のDNA転移動物のその他の利用可能性として、例えば、
▲1▼組織培養のための細胞源としての使用、
▲2▼本発明のDNA転移動物の組織中のDNAもしくはRNAを直接分析するか、またはDNAにより発現されたペプチド組織を分析することによる、本発明のタンパク質により特異的に発現あるいは活性化するペプチドとの関連性についての解析、
▲3▼DNAを有する組織の細胞を標準組織培養技術により培養し、これらを使用して、一般に培養困難な組織からの細胞の機能の研究、
▲4▼上記▲3▼記載の細胞を用いることによる細胞の機能を高めるような薬剤のスクリーニング、および
▲5▼本発明の変異タンパク質を単離精製およびその抗体作製などが考えられる。
【0060】
さらに、本発明のDNA転移動物を用いて、本発明のタンパク質の機能不活性型不応症などを含む、本発明のタンパク質に関連する疾患の臨床症状を調べることができ、また、本発明のタンパク質に関連する疾患モデルの各臓器におけるより詳細な病理学的所見が得られ、新しい治療方法の開発、さらには、該疾患による二次的疾患の研究および治療に貢献することができる。
また、本発明のDNA転移動物から各臓器を取り出し、細切後、トリプシンなどのタンパク質分解酵素により、遊離したDNA転移細胞の取得、その培養またはその培養細胞の系統化を行なうことが可能である。さらに、本発明のタンパク質産生細胞の特定化、アポトーシス、分化あるいは増殖との関連性、またはそれらにおけるシグナル伝達機構を調べ、それらの異常を調べることなどができ、本発明のタンパク質およびその作用解明のための有効な研究材料となる。
さらに、本発明のDNA転移動物を用いて、本発明のタンパク質の機能不活性型不応症を含む、本発明のタンパク質に関連する疾患の治療薬の開発を行なうために、上述の検査法および定量法などを用いて、有効で迅速な該疾患治療薬のスクリーニング法を提供することが可能となる。また、本発明のDNA転移動物または本発明の外来性DNA発現ベクターを用いて、本発明のタンパク質が関連する疾患のDNA治療法を検討、開発することが可能である。
【0061】
(8)ノックアウト動物
本発明は、本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞および本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物を提供する。
すなわち、本発明は、
(1)本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞、
(2)該DNAがレポーター遺伝子(例、大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子)を導入することにより不活性化された第(1)項記載の胚幹細胞、
(3)ネオマイシン耐性である第(1)項記載の胚幹細胞、
(4)非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である第(1)項記載の胚幹細胞、
(5)ゲッ歯動物がマウスである第(4)項記載の胚幹細胞、
(6)本発明のDNAが不活性化された該DNA発現不全非ヒト哺乳動物、
(7)該DNAがレポーター遺伝子(例、大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子)を導入することにより不活性化され、該レポーター遺伝子が本発明のDNAに対するプロモーターの制御下で発現しうる第(6)項記載の非ヒト哺乳動物、
(8)非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である第(6)項記載の非ヒト哺乳動物、
(9)ゲッ歯動物がマウスである第(8)項記載の非ヒト哺乳動物、および
(10)第(7)項記載の動物に、試験化合物を投与し、レポーター遺伝子の発現を検出することを特徴とする本発明のDNAに対するプロモーター活性を阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
【0062】
本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞とは、該非ヒト哺乳動物が有する本発明のDNAに人為的に変異を加えることにより、DNAの発現能を抑制するか、もしくは該DNAがコードしている本発明のタンパク質の活性を実質的に喪失させることにより、DNAが実質的に本発明のタンパク質の発現能を有さない(以下、本発明のノックアウトDNAと称することがある)非ヒト哺乳動物の胚幹細胞(以下、ES細胞と略記する)をいう。
非ヒト哺乳動物としては、前記と同様のものが用いられる。
本発明のDNAに人為的に変異を加える方法としては、例えば、遺伝子工学的手法により該DNA配列の一部又は全部の削除、他DNAを挿入または置換させることによって行なうことができる。これらの変異により、例えば、コドンの読み取り枠をずらしたり、プロモーターあるいはエキソンの機能を破壊することにより本発明のノックアウトDNAを作製すればよい。
【0063】
本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞(以下、本発明のDNA不活性化ES細胞または本発明のノックアウトES細胞と略記する)の具体例としては、例えば、目的とする非ヒト哺乳動物が有する本発明のDNAを単離し、そのエキソン部分にネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子を代表とする薬剤耐性遺伝子、あるいはlacZ(β−ガラクトシダーゼ遺伝子)、cat(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子)を代表とするレポーター遺伝子等を挿入することによりエキソンの機能を破壊するか、あるいはエキソン間のイントロン部分に遺伝子の転写を終結させるDNA配列(例えば、polyA付加シグナルなど)を挿入し、完全なメッセンジャーRNAを合成できなくすることによって、結果的に遺伝子を破壊するように構築したDNA配列を有するDNA鎖(以下、ターゲッティングベクターと略記する)を、例えば相同組換え法により該動物の染色体に導入し、得られたES細胞について本発明のDNA上あるいはその近傍のDNA配列をプローブとしたサザンハイブリダイゼーション解析あるいはターゲッティングベクター上のDNA配列とターゲッティングベクター作製に使用した本発明のDNA以外の近傍領域のDNA配列をプライマーとしたPCR法により解析し、本発明のノックアウトES細胞を選別することにより得ることができる。
また、相同組換え法等により本発明のDNAを不活化させる元のES細胞としては、例えば、前述のような既に樹立されたものを用いてもよく、また公知 EvansとKaufmaの方法に準じて新しく樹立したものでもよい。例えば、マウスのES細胞の場合、現在、一般的には129系のES細胞が使用されているが、免疫学的背景がはっきりしていないので、これに代わる純系で免疫学的に遺伝的背景が明らかなES細胞を取得するなどの目的で例えば、C57BL/6マウスやC57BL/6の採卵数の少なさをDBA/2との交雑により改善したBDFマウス(C57BL/6とDBA/2とのF)を用いて樹立したものなども良好に用いうる。BDFマウスは、採卵数が多く、かつ、卵が丈夫であるという利点に加えて、C57BL/6マウスを背景に持つので、これを用いて得られたES細胞は病態モデルマウスを作出したとき、C57BL/6マウスとバッククロスすることでその遺伝的背景をC57BL/6マウスに代えることが可能である点で有利に用い得る。
また、ES細胞を樹立する場合、一般には受精後3.5日目の胚盤胞を使用するが、これ以外に8細胞期胚を採卵し胚盤胞まで培養して用いることにより効率よく多数の初期胚を取得することができる。
また、雌雄いずれのES細胞を用いてもよいが、通常雄のES細胞の方が生殖系列キメラを作出するのに都合が良い。また、煩雑な培養の手間を削減するためにもできるだけ早く雌雄の判別を行なうことが望ましい。
【0064】
ES細胞の雌雄の判定方法としては、例えば、PCR法によりY染色体上の性決定領域の遺伝子を増幅、検出する方法が、その1例としてあげることができる。この方法を使用すれば、従来、核型分析をするのに約10個の細胞数を要していたのに対して、1コロニー程度のES細胞数(約50個)で済むので、培養初期におけるES細胞の第一次セレクションを雌雄の判別で行なうことが可能であり、早期に雄細胞の選定を可能にしたことにより培養初期の手間は大幅に削減できる。
また、第二次セレクションとしては、例えば、G−バンディング法による染色体数の確認等により行うことができる。得られるES細胞の染色体数は正常数の100%が望ましいが、樹立の際の物理的操作等の関係上困難な場合は、ES細胞の遺伝子をノックアウトした後、正常細胞(例えば、マウスでは染色体数が2n=40である細胞)に再びクローニングすることが望ましい。
このようにして得られた胚幹細胞株は、通常その増殖性は大変良いが、個体発生できる能力を失いやすいので、注意深く継代培養することが必要である。例えば、STO繊維芽細胞のような適当なフィーダー細胞上でLIF(1〜10000U/ml)存在下に炭酸ガス培養器内(好ましくは、5%炭酸ガス、95%空気または5%酸素、5%炭酸ガス、90%空気)で約37℃で培養するなどの方法で培養し、継代時には、例えば、トリプシン/EDTA溶液(通常0.001〜0.5%トリプシン/0.1〜5mM EDTA、好ましくは約0.1%トリプシン/1mM EDTA)処理により単細胞化し、新たに用意したフィーダー細胞上に播種する方法などがとられる。このような継代は、通常1〜3日毎に行なうが、この際に細胞の観察を行い、形態的に異常な細胞が見受けられた場合はその培養細胞は放棄することが望まれる。
ES細胞は、適当な条件により、高密度に至るまで単層培養するか、または細胞集塊を形成するまで浮遊培養することにより、頭頂筋、内臓筋、心筋などの種々のタイプの細胞に分化させることが可能であり〔Nature、第292巻、154頁、1981年; Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 第78巻、7634頁、1981年;ジャーナル・オブ・エンブリオロジー・アンド・エクスペリメンタル・モルフォロジー、第87巻、27頁、1985年〕、本発明のES細胞を分化させて得られる本発明のDNA発現不全細胞は、インビトロにおける本発明のタンパク質の細胞生物学的検討において有用である。
【0065】
本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、該動物のmRNA量を公知方法を用いて測定して間接的にその発現量を比較することにより、正常動物と区別することが可能である。
該非ヒト哺乳動物としては、前記と同様のものが用いられる。
本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、例えば、前述のようにして作製したターゲッティングベクターをマウス胚幹細胞またはマウス卵細胞に導入し、導入によりターゲッティングベクターの本発明のDNAが不活性化されたDNA配列が遺伝子相同組換えにより、マウス胚幹細胞またはマウス卵細胞の染色体上の本発明のDNAと入れ換わる相同組換えをさせることにより、本発明のDNAをノックアウトさせることができる。
本発明のDNAがノックアウトされた細胞は、本発明のDNA上またはその近傍のDNA配列をプローブとしたサザンハイブリダイゼーション解析またはターゲッティングベクター上のDNA配列と、ターゲッティングベクターに使用したマウス由来の本発明のDNA以外の近傍領域のDNA配列とをプライマーとしたPCR法による解析で判定することができる。非ヒト哺乳動物胚幹細胞を用いた場合は、遺伝子相同組換えにより、本発明のDNAが不活性化された細胞株をクローニングし、その細胞を適当な時期、例えば、8細胞期の非ヒト哺乳動物胚または胚盤胞に注入し、作製したキメラ胚を偽妊娠させた該非ヒト哺乳動物の子宮に移植する。作出された動物は正常な本発明のDNA座をもつ細胞と人為的に変異した本発明のDNA座をもつ細胞との両者から構成されるキメラ動物である。
該キメラ動物の生殖細胞の一部が変異した本発明のDNA座をもつ場合、このようなキメラ個体と正常個体を交配することにより得られた個体群より、全ての組織が人為的に変異を加えた本発明のDNA座をもつ細胞で構成された個体を、例えば、コートカラーの判定等により選別することにより得られる。このようにして得られた個体は、通常、本発明のタンパク質のヘテロ発現不全個体であり、本発明のタンパク質のヘテロ発現不全個体同志を交配し、それらの産仔から本発明のタンパク質のホモ発現不全個体を得ることができる。
【0066】
卵細胞を使用する場合は、例えば、卵細胞核内にマイクロインジェクション法でDNA溶液を注入することによりターゲッティングベクターを染色体内に導入したトランスジェニック非ヒト哺乳動物を得ることができ、これらのトランスジェニック非ヒト哺乳動物に比べて、遺伝子相同組換えにより本発明のDNA座に変異のあるものを選択することにより得られる。
このようにして本発明のDNAがノックアウトされている個体は、交配により得られた動物個体も該DNAがノックアウトされていることを確認して通常の飼育環境で飼育継代を行なうことができる。
さらに、生殖系列の取得および保持についても常法に従えばよい。すなわち、該不活化DNAの保有する雌雄の動物を交配することにより、該不活化DNAを相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得しうる。得られたホモザイゴート動物は、母親動物に対して、正常個体1,ホモザイゴート複数になるような状態で飼育することにより効率的に得ることができる。ヘテロザイゴート動物の雌雄を交配することにより、該不活化DNAを有するホモザイゴートおよびヘテロザイゴート動物を繁殖継代する。
本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞は、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物を作出する上で、非常に有用である。
また、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、本発明のタンパク質により誘導され得る種々の生物活性を欠失するため、本発明のタンパク質の生物活性の不活性化を原因とする疾病のモデルとなり得るので、これらの疾病の原因究明及び治療法の検討に有用である。
【0067】
(8a)本発明のDNAの欠損や損傷などに起因する疾病に対して治療・予防効果を有する化合物のスクリーニング方法
本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、本発明のDNAの欠損や損傷などに起因する疾病に対して治療・予防効果を有する化合物のスクリーニングに用いることができる。
すなわち、本発明は、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物に試験化合物を投与し、該動物の変化を観察・測定することを特徴とする、本発明のDNAの欠損や損傷などに起因する疾病、例えばインスリン抵抗性の改善効果、糖尿病、肥満症、高脂血症、動脈硬化、高血圧症または心疾患などに対して治療・予防効果を有する化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
該スクリーニング方法において用いられる本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物としては、前記と同様のものがあげられる。
試験化合物としては、例えば、ペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などがあげられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
具体的には、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物を、試験化合物で処理し、無処理の対照動物と比較し、該動物の各器官、組織、疾病の症状などの変化を指標として試験化合物の治療・予防効果を試験することができる。
試験動物を試験化合物で処理する方法としては、例えば、経口投与、静脈注射などが用いられ、試験動物の症状、試験化合物の性質などにあわせて適宜選択することができる。また、試験化合物の投与量は、投与方法、試験化合物の性質などにあわせて適宜選択することができる。
【0068】
例えばインスリン抵抗性に対して改善効果、または糖尿病、肥満症、高脂血症、動脈硬化、高血圧症または心疾患に対して治療・予防効果を有する化合物をスクリーニングする場合、上記の病態を呈している本発明のDNA発現亢進非ヒト哺乳動物に試験化合物を空腹時、食後またはインスリン投与前後に投与し、試験化合物非投与群と血液中に含有するインスリン、ブドウ糖または遊離脂肪酸量を上記動物で経時的に観察する。
該スクリーニング方法において、試験動物に試験化合物を投与した場合、該試験動物の上記疾患症状が約10%以上、好ましくは約30%以上、より好ましくは約50%以上改善した場合、該試験化合物を上記の疾患に対して治療・予防効果を有する化合物として選択することができる。
該スクリーニング方法を用いて得られる化合物は、上記した試験化合物から選ばれた化合物であり、本発明のタンパク質の欠損や損傷などによって引き起こされる疾患に対して治療・予防効果を有するので、該疾患に対する安全で低毒性な予防・治療剤などの医薬として使用することができる。さらに、上記スクリーニングで得られた化合物から誘導される化合物も同様に用いることができる。
該スクリーニング方法で得られた化合物は塩を形成していてもよく、該化合物の塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸、有機酸など)や塩基(例、アルカリ金属など)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸など)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸など)との塩などが用いられる。
該スクリーニング方法で得られた化合物またはその塩を含有する医薬は、前記した本発明のタンパク質を含有する医薬と同様にして製造することができる。
このようにして得られる製剤は、安全で低毒性であるので、例えば、ヒトまたは哺乳動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、該化合物を経口投与する場合、一般的に成人(体重60kgとして)のインスリン抵抗性患者においては、一日につき該化合物を約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。非経口的に投与する場合は、該化合物の1回投与量は投与対象、対象疾患などによっても異なるが、例えば、該化合物を注射剤の形で通常成人(体重60kgとして)のインスリン抵抗性患者に投与する場合、一日につき該化合物を約0.01〜30mg、好ましくは約0.1〜20mg、より好ましくは約0.1〜10mgを静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0069】
(8b)本発明のDNAに対するプロモーターの活性を阻害する化合物のスクリーニング方法
本発明は、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物に、試験化合物を投与し、レポーター遺伝子の発現を検出することを特徴とする本発明のDNAに対するプロモーターの活性を阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
上記スクリーニング方法において、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物としては、前記した本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物の中でも、本発明のDNAがレポーター遺伝子を導入することにより不活性化され、該レポーター遺伝子が本発明のDNAに対するプロモーターの制御下で発現しうるものが用いられる。
試験化合物としては、前記と同様のものがあげられる。
レポーター遺伝子としては、前記と同様のものが用いられ、β−ガラクトシダーゼ遺伝子(lacZ)、可溶性アルカリフォスファターゼ遺伝子またはルシフェラーゼ遺伝子などが好適である。
本発明のDNAをレポーター遺伝子で置換された本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物では、レポーター遺伝子が本発明のDNAに対するプロモーターの支配下に存在するので、レポーター遺伝子がコードする物質の発現をトレースすることにより、プロモーターの活性を検出することができる。
例えば、本発明のタンパク質をコードするDNA領域の一部を大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子(lacZ)で置換している場合、本来、本発明のタンパク質の発現する組織で、本発明のタンパク質の代わりにβ−ガラクトシダーゼが発現する。従って、例えば、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−ガラクトピラノシド(X−gal)のようなβ−ガラクトシダーゼの基質となる試薬を用いて染色することにより、簡便に本発明のタンパク質の動物生体内における発現状態を観察することができる。具体的には、本発明のタンパク質欠損マウスまたはその組織切片をグルタルアルデヒドなどで固定し、リン酸緩衝生理食塩液(PBS)で洗浄後、X−galを含む染色液で、室温または37℃付近で、約30分ないし1時間反応させた後、組織標本を1mM EDTA/PBS溶液で洗浄することによって、β−ガラクトシダーゼ反応を停止させ、呈色を観察すればよい。また、常法に従い、lacZをコードするmRNAを検出してもよい。
上記スクリーニング方法を用いて得られる化合物またはその塩は、上記した試験化合物から選ばれた化合物であり、本発明のDNAに対するプロモーター活性を阻害する化合物である。
該スクリーニング方法で得られた化合物は塩を形成していてもよく、該化合物の塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸など)や塩基(例、有機酸など)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸など)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸など)との塩などが用いられる。
【0070】
本発明のDNAに対するプロモーター活性を阻害する化合物またはその塩は、本発明のタンパク質の発現の調節、該タンパク質の機能を調節することができるので、例えばインスリン抵抗性の改善剤、または糖尿病、肥満症、高脂血症、動脈硬化、高血圧症または心疾患の予防・治療剤として有用である。
さらに、上記スクリーニングで得られた化合物から誘導される化合物も同様に用いることができる。
該スクリーニング方法で得られた化合物またはその塩を含有する医薬は、前記した本発明のタンパク質またはその塩を含有する医薬と同様にして製造することができる。
このようにして得られる製剤は、安全で低毒性であるので、例えば、ヒトまたは哺乳動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、本発明のDNAに対するプロモーター活性を阻害する化合物を経口投与する場合、一般的に成人(体重60kgとして)のインスリン抵抗性患者においては、一日につき該化合物を約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。非経口的に投与する場合は、該化合物の1回投与量は投与対象、対象疾患などによっても異なるが、例えば、本発明のDNAに対するプロモーター活性を阻害する化合物を注射剤の形で通常成人(体重60kgとして)のインスリン抵抗性患者に投与する場合、一日につき該化合物を約0.01〜30mg、好ましくは約0.1〜20mg、より好ましくは約0.1〜10mgを静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量を投与することができる。
このように、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、本発明のDNAに対するプロモーターの活性を阻害する化合物またはその塩をスクリーニングする上で極めて有用であり、本発明のDNA発現不全に起因する各種疾患の原因究明または予防・治療剤の開発に大きく貢献することができる。
また、本発明のタンパク質のプロモーター領域を含有するDNAを使って、その下流に種々のタンパク質をコードする遺伝子を連結し、これを動物の卵細胞に注入していわゆるトランスジェニック動物(遺伝子移入動物)を作成すれば、特異的にそのタンパク質を合成させ、その生体での作用を検討することも可能となる。さらに上記プロモーター部分に適当なレポーター遺伝子を結合させ、これが発現するような細胞株を樹立すれば、本発明のタンパク質そのものの体内での産生能力を特異的に抑制する作用を持つ低分子化合物の探索系として使用できる。
【0071】
(9)本発明のタンパク質に対するリガンドの決定
本発明のタンパク質もしくは部分ペプチドまたはその塩は、本発明のタンパク質またはその塩に対するリガンドを探索し、または決定するための試薬として有用である。
本発明のタンパク質もしくはその塩または本発明の部分ペプチドもしくはその塩と、試験化合物とを接触させることにより、本発明のタンパク質に対するリガンドを決定する。
試験化合物としては、例えば、哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、ブタ、ウシ、ヒツジ、サルなど)の組織抽出物、細胞培養上清、ランダムペプチドライブラリー、哺乳動物cDNAライブラリーにより組換え型として発現されるタンパク質または部分ペプチドなどが用いられる。例えば、該組織抽出物、細胞培養上清などを本発明のタンパク質に添加し、細胞刺激活性などを測定しながら分画し、最終的に単一のリガンドを得ることができる。ランダムペプチドもしくはcDNAライブラリーを発現する細菌またはバクテリオファージと本発明タンパク質との結合活性を指標にして結合タンパク質を同定し、あるいはランダムペプチドまたはcDNAライブラリーと本タンパク質を発現する酵母とを用いて酵母Two−Hybrid法にて結合タンパク質を同定し、これら結合タンパク質から細胞刺激活性などを測定することによりリガンドを得ることもできる。
具体的には、本発明のリガンド決定方法は、本発明のタンパク質もしくはその部分ペプチドもしくはその塩を用いるか、または組換え型タンパク質の発現系を構築し、該発現系を用いたレセプター結合アッセイ系を用いることによって、本発明のタンパク質に結合して細胞刺激活性(例えば、本発明のタンパク質のリン酸化、ERKのリン酸化、TNF−αの産生、細胞内Ca2+遊離、細胞膜電位変動、細胞内タンパク質のリン酸化、pHの低下などを促進する活性または抑制する活性)を有する化合物(例えば、ペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物など)またはその塩を決定する方法である。
本発明のリガンド決定方法においては、本発明のタンパク質またはその部分ペプチドと試験化合物とを接触させた場合の、例えば、該タンパク質または該部分ペプチドに対する試験化合物の結合量や、細胞刺激活性などを測定することを特徴とする。
より具体的には、本発明は、
▲1▼哺乳動物(例、ヒト、マウス、ラット、ブタ、ウシ、ヒツジ、サルなど)の組織抽出物、血清、細胞培養上清などを、本発明のタンパク質もしくはその塩または本発明の部分ペプチドもしくはその塩に接触させた場合における、該タンパク質もしくはその塩、または該部分ペプチドもしくはその塩に結合した試験化合物を精製することを特徴とする本発明のタンパク質またはその塩に対するリガンドの決定方法、
▲2▼哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、ブタ、ウシ、ヒツジ、サルなど)の組織抽出物、血清、細胞培養上清などを、本発明のタンパク質を含有する細胞または該細胞の膜画分に接触させた場合における、該タンパク質または該部分ペプチドに結合した試験化合物を精製することを特徴とする本発明のタンパク質またはその塩に対するリガンドの決定方法、
▲3▼哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、ブタ、ウシ、ヒツジ、サルなど)の組織抽出物、血清、細胞培養上清などを、本発明のタンパク質をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによって細胞膜上に発現したタンパク質に接触させた場合における、該タンパク質または該部分ペプチドに結合した試験化合物を精製することを特徴とする本発明のタンパク質に対するリガンドの決定方法、
▲4▼ランダムペプチドもしくはcDNAライブラリーを表面に発現する細菌またはバクテリオファージを本発明のタンパク質と接触させ、該タンパク質に結合するペプチドのアミノ酸配列を同定することを特徴とする本発明のタンパク質に対するリガンドの決定方法、
▲5▼ランダムペプチドまたはcDNAライブラリーと本発明のタンパク質を発現する酵母とを用いる酵母Two−Hybrid法により、該タンパク質に結合するペプチドのアミノ酸配列を同定することを特徴とする本発明のタンパク質に対するリガンドの決定方法、
▲6▼結合活性の見出された試験化合物を、本発明のタンパク質を含有する細胞に接触させた場合における、タンパク質を介した細胞刺激活性(例えば、本発明のタンパク質のリン酸化、ERKのリン酸化、TNF−αの産生、細胞内Ca2+遊離、細胞膜電位変動、細胞内タンパク質のリン酸化、pHの低下などを促進する活性または抑制する活性など)を測定することを特徴とする本発明のタンパク質またはその塩に対するリガンドの決定方法、および
▲7▼結合活性の見出された試験化合物を、本発明のタンパク質をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによって細胞膜上に発現したタンパク質に接触させた場合における、タンパク質を介する細胞刺激活性(例えば、本発明のタンパク質のリン酸化、ERKのリン酸化、TNF−αの産生、細胞内Ca2+遊離、細胞膜電位変動、細胞内タンパク質のリン酸化、pHの低下などを促進する活性または抑制する活性など)を測定することを特徴とする本発明のタンパク質またはその塩に対するリガンドの決定方法を提供する。
特に、上記▲1▼〜▲5▼の試験を行ない、試験化合物が本発明のタンパク質に結合することを確認した後に、上記▲6▼〜▲7▼の試験を行うことが好ましい。
まず、リガンド決定方法に用いるタンパク質としては、上記した本発明のタンパク質または本発明の部分ペプチドを含有するものであれば何れのものであってもよいが、動物細胞を用いて大量発現させたタンパク質が適している。
本発明のタンパク質を製造するには、上記の発現方法が用いられるが、該タンパク質をコードするDNAを哺乳動物細胞や昆虫細胞で発現することにより行うことが好ましい。目的とするタンパク質部分をコードするDNA断片には、通常、相補DNAが用いられるが、必ずしもこれに制約されるものではない。例えば、遺伝子断片や合成DNAを用いてもよい。本発明のタンパク質をコードするDNA断片を宿主動物細胞に導入し、それらを効率よく発現させるためには、該DNA断片を昆虫を宿主とするバキュロウィルスに属する核多角体病ウィルス(nuclear polyhedrosis virus;NPV)のポリヘドリンプロモーター、SV40由来のプロモーター、レトロウィルスのプロモーター、メタロチオネインプロモーター、ヒトヒートショックプロモーター、サイトメガロウィルスプロモーター、SRαプロモーターなどの下流に組み込むのが好ましい。発現したタンパク質の量と質の検査は公知の方法で行うことができる。例えば、文献(J. Biol. Chem., 267巻, 19555〜19559頁, 1992年)に記載の方法に従って行うことができる。
したがって、本発明のリガンド決定方法において、本発明のタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩を含有するものとしては、公知の方法に従って精製したタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩であってもよいし、該タンパク質を含有する細胞またはその細胞膜画分を用いてもよい。
本発明のリガンド決定方法において、本発明のタンパク質を含有する細胞を用いる場合、該細胞をグルタルアルデヒド、ホルマリンなどで固定化してもよい。固定化方法は公知の方法に従って行うことができる。
本発明のタンパク質を含有する細胞としては、本発明のタンパク質を発現した宿主細胞をいうが、該宿主細胞としては、大腸菌、枯草菌、酵母、昆虫細胞、動物細胞などが用いられる。
細胞膜画分としては、細胞を破砕した後、公知の方法で得られる細胞膜が多く含まれる画分のことをいう。細胞の破砕方法としては、Potter−Elvehjem型ホモジナイザーで細胞を押し潰す方法、ワーリングブレンダーやポリトロン(Kinematica社製)による破砕、超音波による破砕、フレンチプレスなどで加圧しながら細胞を細いノズルから噴出させることによる破砕などが挙げられる。細胞膜の分画には、分画遠心分離法や密度勾配遠心分離法などの遠心力による分画法が主として用いられる。例えば、細胞破砕液を低速(500〜3000rpm)で短時間(通常、約1〜10分)遠心し、上清をさらに高速(15000〜30000rpm)で通常30分〜2時間遠心し、得られる沈澱を膜画分とする。該膜画分中には、発現したタンパク質と細胞由来のリン脂質や膜タンパク質などの膜成分が多く含まれる。
該タンパク質を含有する細胞やその膜画分中のタンパク質の量は、1細胞当たり10〜10分子であるのが好ましく、10〜10分子であるのが好適である。なお、発現量が多いほど膜画分当たりのリガンド結合活性(比活性)が高くなり、高感度なスクリーニング系の構築が可能になるばかりでなく、同一ロットで大量の試料を測定できるようになる。
本発明のタンパク質またはその塩に対するリガンドの決定方法を行うには、まず本発明のタンパク質を含有する細胞または細胞の膜画分を、決定方法に適したバッファーに懸濁することにより本発明のタンパク質標品を調製する。バッファーには、pH4〜10(望ましくはpH6〜8)のリン酸バッファー、トリス−塩酸バッファーなどのリガンドとタンパク質との結合を阻害しないバッファーであればいずれでもよい。また、非特異的結合を低減させる目的で、CHAPS、Tween−80TM(花王−アトラス社)、ジギトニン、デオキシコレートなどの界面活性剤やウシ血清アルブミンやゼラチンなどの各種タンパク質をバッファーに加えることもできる。さらに、プロテアーゼによるレセプターやリガンドの分解を抑える目的でPMSF、ロイペプチン、E−64(ペプチド研究所製)、ペプスタチンなどのプロテアーゼ阻害剤を添加することもできる。0.01〜10mlの該タンパク質溶液に、一定量(5000〜500000cpm)の〔H〕、〔125I〕、〔14C〕、〔35S〕などで標識した試験化合物を共存させる。非特異的結合量(NSB)を知るために大過剰の未標識の試験化合物を加えた反応チューブも用意する。反応は約0〜50℃、望ましくは約4〜37℃で、約20分〜24時間、望ましくは約30分〜3時間行う。反応後、ガラス繊維濾紙等で濾過し、適量の同バッファーで洗浄した後、ガラス繊維濾紙に残存する放射活性を液体シンチレーションカウンターあるいはγ−カウンターで計測する。全結合量(B)から非特異的結合量(NSB)を引いたカウント(B−NSB)が0cpmを越える試験化合物を本発明のタンパク質またはその塩に対するリガンドとして選択することができる。
本発明のタンパク質またはその塩に対するリガンドを決定する上記の▲6▼〜▲7▼の方法を実施するためには、該タンパク質を介する細胞刺激活性(例えば、本発明のタンパク質のリン酸化、ERKのリン酸化、TNF−αの産生、細胞内Ca2+遊離、細胞膜電位変動、細胞内タンパク質のリン酸化、pHの低下などを促進する活性または抑制する活性など)を公知の方法または市販の測定用キットを用いて測定することができる。具体的には、まず、タンパク質を含有する細胞をマルチウェルプレート等に培養する。リガンド決定を行うにあたっては前もって新鮮な培地あるいは細胞に毒性を示さない適当なバッファーに交換し、試験化合物などを添加して一定時間インキュベートした後、細胞を抽出あるいは上清液を回収して、生成した産物をそれぞれの方法に従って定量する。細胞刺激活性の指標とする物質の生成が、細胞が含有する分解酵素によって検定困難な場合は、該分解酵素に対する阻害剤を添加してアッセイを行なってもよい。
本発明のタンパク質またはその塩に結合するリガンド決定用キットは、本発明のタンパク質もしくはその塩、本発明の部分ペプチドもしくはその塩、本発明のタンパク質を含有する細胞、または本発明のタンパク質を含有する細胞の膜画分などを含有するものである。
本発明のリガンド決定用キットの例としては、次のものが挙げられる。
1.リガンド決定用試薬
▲1▼測定用緩衝液および洗浄用緩衝液
Hanks’ Balanced Salt Solution(ギブコ社製)に、0.05%のウシ血清アルブミン(シグマ社製)を加えたもの。
孔径0.45μmのフィルターで濾過滅菌し、4℃で保存するか、あるいは用時調製しても良い。
▲2▼本発明のタンパク質標品
本発明のタンパク質を発現させたCHO細胞を、12穴フ゜レートに5×10個/穴で継代し、37℃、5%CO、95%airで2日間培養したもの。
▲3▼標識試験化合物
市販の〔H〕、〔125I〕、〔14C〕、〔35S〕などで標識した化合物、または適当な方法で標識化したもの
水溶液の状態のものを4℃または−20℃にて保存し、用時に測定用緩衝液にて1μMに希釈する。水に難溶性を示す試験化合物については、ジメチルホルムアミド、DMSO、メタノール等に溶解する。
▲4▼非標識試験化合物
標識化合物と同じものを100〜1000倍濃い濃度に調製する。
2.測定法
▲1▼12穴組織培養用プレートにて培養した本発明のタンパク質発現CHO細胞を、測定用緩衝液1mlで2回洗浄した後、490μlの測定用緩衝液を各穴に加える。
▲2▼標識試験化合物を5μl加え、室温にて1時間反応させる。非特異的結合量を知るためには非標識試験化合物を5μl加えておく。
▲3▼反応液を除去し、1mlの洗浄用緩衝液で3回洗浄する。細胞に結合した標識試験化合物を0.2N NaOH−1%SDSで溶解し、4mlの液体シンチレーターA(和光純薬製)と混合する。
▲4▼液体シンチレーションカウンター(ベックマン社製)を用いて放射活性を測定する。
【0072】
本明細書において、塩基やアミノ酸などを略号で表示する場合、IUPAC−IUB Commission on Biochemical Nomenclature による略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものであり、その例を下記する。またアミノ酸に関し光学異性体があり得る場合は、特に明示しなければL体を示すものとする。
DNA     :デオキシリボ核酸
cDNA    :相補的デオキシリボ核酸
A      :アデニン
T      :チミン
G      :グアニン
C      :シトシン
RNA     :リボ核酸
mRNA    :メッセンジャーリボ核酸
dATP    :デオキシアデノシン三リン酸
dTTP    :デオキシチミジン三リン酸
dGTP    :デオキシグアノシン三リン酸
dCTP    :デオキシシチジン三リン酸
ATP     :アデノシン三リン酸
EDTA    :エチレンジアミン四酢酸
SDS     :ドデシル硫酸ナトリウム
Gly      :グリシン
Ala         :アラニン
Val         :バリン
Leu         :ロイシン
Ile         :イソロイシン
Ser         :セリン
Thr         :スレオニン
Cys          :システイン
Met         :メチオニン
Glu         :グルタミン酸
Asp         :アスパラギン酸
Lys         :リジン
Arg         :アルギニン
His         :ヒスチジン
Phe         :フェニルアラニン
Tyr         :チロシン
Trp         :トリプトファン
Pro         :プロリン
Asn         :アスパラギン
Gln         :グルタミン
pGlu    :ピログルタミン酸
Sec     :セレノシステイン(selenocysteine)
また、本明細書中で繁用される置換基、保護基および試薬を下記の記号で表記する。
Me      :メチル基
Et      :エチル基
Bu      :ブチル基
Ph      :フェニル基
TC      :チアゾリジン−4(R)−カルボキサミド基
Tos     :p−トルエンスルフォニル
CHO     :ホルミル
Bzl     :ベンジル
Cl−Bzl     :2,6−ジクロロベンジル
Bom     :ベンジルオキシメチル
Z       :ベンジルオキシカルボニル
Cl−Z    :2−クロロベンジルオキシカルボニル
Br−Z    :2−ブロモベンジルオキシカルボニル
Boc     :t−ブトキシカルボニル
DNP     :ジニトロフェニル
Trt     :トリチル
Bum     :t−ブトキシメチル
Fmoc    :N−9−フルオレニルメトキシカルボニル
HOBt    :1−ヒドロキシベンズトリアゾール
HOOBt   :3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−1,2,3−
ベンゾトリアジン
HONB    :1−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド
DCC     :N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド
【0073】
本願明細書の配列表の配列番号は、以下の配列を示す。
〔配列番号:1〕
ヒト型TREM−2のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:2〕
マウス型TREM−2のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:3〕
配列番号:1で表されるアミノ酸配列を有するヒト型TREM−2をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:4〕
配列番号:2で表されるアミノ酸配列を有するマウス型TREM−2をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:5〕
実施例1で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:6〕
実施例1で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:7〕
実施例2で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:8〕
実施例2で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:9〕
実施例2および実施例3で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:10〕
実施例2および実施例3で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:11〕
実施例6で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:12〕
実施例6で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:13〕
実施例6で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:14〕
実施例6で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:15〕
実施例6で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:16〕
実施例6で用いられたプライマーの塩基配列を示す。
【0074】
以下において、実施例により本発明をより具体的にするが、この発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
発現変動遺伝子の検索
KKAマウス(14週齢、オス)およびコントロールとして用いたC57BL/6マウス(14週齢、オス)より副睾丸脂肪組織を摘出し、ISOGEN試薬(和光純薬)中でホモジナイゼーションした後、クロロホルム抽出、イソプロパノール沈殿によりそれぞれの組織よりTotal RNAを抽出し、さらにOligotex dT30(タカラバイオ)によりpoly (A) RNAを精製した。これらのpoly (A)RNAを2 μgを出発材料としてReverse Transcriptase (Superscript RTII; インビトロジェン)によりcDNAを合成し、PCR−Select cDNA Subtraction Kit (クロンテック)を用いて、KKAマウス脂肪組織で発現量の上昇あるいは低下しているcDNA群を選択的にPCR断片として増幅した。増幅されたcDNA群はクローニングベクターpT7Blue−Tにライゲーションした後、Escherichia coli DH5αを形質転換することによりクローニングした。それぞれの挿入配列をベクター配列であるM13 primer P7(配列番号:5)およびM13 primer P8(配列番号:6)(いずれも東洋紡)で増幅し、得られたPCR断片をガラススライド上にスポッティングしてマイクロアレイを作製した。検出プローブとしてそれぞれのマウス脂肪組織由来のpoly (A) RNAをランダムプライム法によりCy5またはCy3で蛍光ラベルしたものを作製し、これをマイクロアレイに対し15時間ハイブリダイズして発現量の差の顕著な遺伝子群を同定した。コントロールであるC57BL/6マウス発現遺伝子と比較してKKAにおいて4倍以上の発現上昇遺伝子として29遺伝子、一方で4倍以下の発現低下遺伝子として69遺伝子が同定された。マウス型TREM−2は発現上昇遺伝子群の中から5.32倍上昇する遺伝子として同定された。
【0075】
実施例2
TREM−2の脂肪細胞からのクローニング
TREM−2の発現変動の確認および機能解析のための実験材料獲得のためTREM−2の全長コード領域cDNAを、ヒト脂肪細胞およびマウス3T3−L1脂肪細胞cDNAライブラリーよりPCRでクローニングした。
ヒトTREM−2のクローニングには次の配列をプライマーとして用いた。
5’−ATGGAGCCTCTCCGGCTGCTCATC−3’(配列番号:7)
5’−TCACGTGTCTCTCAGCCCTGGCAG−3’ (配列番号:8)
反応はAdvantage−2 cDNA PCR Kit(クロンテック)を用い、98℃ 20秒、68℃ 1分30秒を35サイクルで行った。
マウスTREM−2のクローニングには次の配列をプライマーとして用いた。
5’−ATGGGACCTCTCCACCAGTTTCTCCTG−3’ (配列番号:9)
5’−TCACGTACCTCCGGGTCCAGTGAG−3’ (配列番号:10)
反応はPfu Turbo DNA polymerase(ストラタジーン)を用い、95℃ 20秒、65℃ 40秒、72℃ 1分を35サイクルで行った。
得られたcDNA断片はヒトTREM−2についてはそのまま、一方、マウスTREM−2についてはTAKARA Ex−Taq(タカラバイオ)で72℃、10分間反応してPCR断片の両側の3’−末端にAを付加した後、それぞれpCR2.1ベクター(インビトロジェン)にクローニングしてDNA sequencingを行った。ヒト脂肪細胞より単離したTREM−2は公知のヒトTREM−2(AF213457)と一致した。一方、マウスTREM−2は公知配列としてTREM−2a(AY024348)、TREM−2b(AY024349)およびTREM−2c(AF213458)の3種類のcDNAが存在するが、3T3−L1脂肪細胞より得られたTREM−2は6クローンのうちすべてがTREM−2aと一致した。
【0076】
実施例3
RT−PCRによる発現変動の確認
KKAマウス(14週齢、オス)およびC57BL/6マウス(14週齢、オス)の副睾丸脂肪組織より抽出したRNAに対してRT−PCRを行った。それぞれの組織より抽出した0.5 μgのTotal RNAについて、Oligo−dT−アダプタープライマー(タカラバイオ)を用いてAMV (Avian Myeloblastosis Virus)由来逆転写酵素(タカラバイオ)でcDNAを合成し、マウスTREM−2クローニングのためのプライマー(配列番号:9および配列番号:10)を用いてPCRを行った。反応はAdvantage−2 cDNA PCR Kit(クロンテック)を用い、98℃ 20秒、68℃ 1分30秒を25サイクルで行った。反応産物をアガロースゲル電気泳動で検出したところ、実施例1のマイクロアレイの結果と同様に、KKAマウス脂肪組織のTREM−2発現量は、C57BL/6マウスのTREM−2発現量と比較して、5倍以上の差が確認できた。
【0077】
実施例4
抗マウスTREM−2抗体の作製とマウス脂肪組織におけるタンパク質レベルでのTREM−2の発現解析
マウスTREM−2配列〔配列番号:2〕の133番目のLeu〜147番目のSerで構成されるペプチドを抗原としてウサギを免疫し、抗TREM−2ポリクローナル抗体を取得した。KKAマウスならびにC57BL/6マウスの副睾丸脂肪組織を摘出しホモジナイズしたもの各20μgをこの抗体を用いてウェスタンブロッティングで解析したところ、KKAマウス由来の組織からはTREM−2のバンドが検出されたが、C57BL/6マウス由来の組織からは検出されなかった。
【0078】
実施例5
TREM−2のマウスにおける発現組織分布
KKAマウスならびにC57BL/6マウスの副睾丸脂肪組織、腸間膜脂肪組織、骨格筋、肝臓、精巣、脾臓、脳、腎臓からそれぞれtotal RNAを抽出し、実施例3に記載のRT−PCR法でTREM−2の発現組織分布を検討したところKKAマウスの副睾丸脂肪組織ならびに腸間膜脂肪組織で顕著な発現が認められた。一方、これら脂肪組織以外の組織での発現はほとんど認められなかった。
【0079】
実施例6
TREM−2の糖尿病モデルマウスにおける発現の定量
(1)定量的RT−PCR法
Total RNA 1 ngあたりのTREM−2 mRNAのコピー数を定量的RT−PCR法で測定した。RT−PCRはSYBR Green RT−PCR試薬キット(アプライドバイオシステムズ)を用いて添付プロトコールに従って行い、PCRプロダクト自動検出・定量システムABI
PRISM 7700(アプライドバイオシステムズ)で定量した。
マウスTREM−2の定量的RT−PCRには、以下のプライマーを用いた。
5’−ACACCCTTGCTGGAACCGTCAC−3’(配列番号:11)
5’−GTCCTCCAGCACCTCCACCAGTA−3’(配列番号:12)
ヒトTREM−2の定量的RT−PCRには、以下のプライマーを用いた。
5’−GAGTCTGAGAGCTTCGAGGATG−3’(配列番号:13)
5’−CTGGCTGCTAGAATCTTGATGA−3’(配列番号:14)、
マウス TNF−αの定量的RT−PCRには、以下のプライマーを用いた。
5’−AAGGGATGAGAAGTTCCCAAA−3’(配列番号:15)
5’−CTCCACTTGGTGGTTTGCTAC−3’(配列番号:16)
(2)糖尿病動物モデルにおける糖尿病病態の進行とTREM−2の発現の関連
実施例6(1)に記載の定量的RT−PCR法でTREM−2 mRNAの発現量を定量したところ、KKAマウスの副睾丸脂肪組織および腸間膜脂肪組織ではC57BL/6マウスと比較して10倍以上の発現量亢進が認められた。さらに、7、14および28週齢のKKAマウス副睾丸脂肪組織のTREM−2 mRNA発現量を同様の方法で測定したところ、週齢に伴う血糖値の上昇と比例して発現量が増大した。このとき、インスリン抵抗性の指標であるTNF−αのmRNA発現量はTREM−2と同様に増大し、TREM−2とTNF−αの発現量の相関係数(R値)は0.8802であった。
一方、11、20、40週齢のdb/dbマウスの副睾丸脂肪組織でTREM−2 mRNAの発現を上記と同様の手法で定量した場合もKKAマウスと同様に、週齢に伴う血糖値の上昇と比例して発現が増大した。
【0080】
実施例7
インスリン抵抗性状態での3T3−L1脂肪細胞におけるTREM−2の発現解析
3T3−L1脂肪細胞に持続的にインスリンを作用させることにより実験的に組織培養レベルでのインスリン抵抗性状態を作り出すことができる (Diabetologia, 38巻, 1148−1156頁, 1995年;J. Biol. Chem., 272巻, 7759−7764頁, 1997年)。この手法でインスリン抵抗性状態にした3T3−L1細胞でのTREM−2発現量を実施例6(1)に記載の定量的RT−PCR法で測定した。
3T3−L1脂肪細胞にインスリンを100 nMで48時間添加した場合にTREM−2 mRNA発現量が3倍以上、またインスリンを2μMで48時間添加した場合はTREM−2 mRNA発現量が6倍以上増加した。
【0081】
実施例8
正常ヒト組織におけるTREM−2の発現解析
正常ヒト由来の脳、大腸、心臓、腎臓、白血球、肝臓、肺、卵巣、膵臓、前立腺、胎盤、骨格筋、小腸、脾臓、精巣および胸腺でTREM−2 mRNAの発現を実施例2に記載のcDNAクローニングに用いたプライマーで実施例3に記載の方法に準じてRT−PCRを行った。
いずれの組織でもTREM−2 mRNAの発現はほとんど確認できなかった。
【0082】
実施例9
ヒト糖尿病患者脂肪組織におけるTREM−2の発現解析
ヒト糖尿病患者由来皮下脂肪組織よりtotal RNAを抽出し、これに含まれるTREM−2 mRNA量を、非糖尿病患者由来のものと実施例6(1)記載の定量的RT−PCR法で比較した。
非糖尿病患者6例では、いずれもほとんどTREM−2の発現が認められなかったが、糖尿病患者では8例中3例で非糖尿病患者と比較して10倍以上の顕著なTREM−2の発現亢進が認められた。
【0083】
実施例10
TREM−2細胞外ドメインの糖尿病モデル動物における血糖低下作用の検討
TREM−2細胞外ドメイン(以下Sol TREM−2と略記)がTREM2リガンドを中和することによるTREM−2の機能抑制検討のため、KKAマウスへの投与実験を行った。
Sol TREM−2はマウスTREM−2配列(配列番号:2)のうち細胞外ドメインに相当する18番目のAla〜164番目のGluの147アミノ酸からなるポリペプチドのN−末端に、組換えタンパク質発現ベクター構築の際に付加された4アミノ酸(Gly−Ser−His−Met)を持つものを大腸菌組換え型タンパク質として調製した。KKAマウス(14週齢、オス)に対し、糖負荷試験の3日前、2日前、1日前および糖負荷試験当日の4回、それぞれ100μgずつ、合計400μgのSol TREM−2を腹腔内投与した。Sol TREM−2投与後、それぞれのマウスに1 g/kgのブドウ糖を腹腔内投与することにより糖負荷を行い、糖負荷後2時間までの血糖値を測定した。
Sol TREM−2投与マウスはコントロールマウスと比較して糖負荷後30分より顕著な血糖値低下が認められた。60分より120分にかけて約100 mg/dLの血糖値の低下が認められた。また、この実験で糖負荷直後から120分までの血糖値の変動曲線下面積(Area under glucose curve; AUC) 値を比較した場合、Sol TREM−2投与マウスはコントロールマウスと比較して約70%の有意なAUC値低下が認められた。
Sol TREM2投与後の副睾丸白色脂肪組織におけるTNF−αのmRNA発現量は実施例6(1)に記載の定量的RT−PCR法による測定の結果、50%以下に低下していた。
さらに、投与回数を、糖負荷試験の7日前から糖負荷試験当日までの8回に増加したことにより、血糖低下作用はさらに顕著になり、Sol TREM−2非投与群の空腹時血糖値が約250 mg/dLであったのに対し、Sol TREM−2投与群の空腹時血糖値は約140 mg/dLとほぼ正常レベルにまで低下した。
このとき、Sol TREM−2投与群の血中インスリン値は、Sol TREM−2非投与群の73%に低下した。
【0084】
実施例11
TREM−2細胞外ドメインの糖尿病モデル動物における血中脂質低下作用の検討
実施例10に記載の方法でKKAマウスにSol TREM2を8回投与した後、採血を行い、血中の脂質を測定した。
Sol TREM−2投与群のKKAマウスでは、Sol TREM−2非投与群と比較して、血中トリグリセリドが63%に、血中遊離脂肪酸が68%に低下した。
【0085】
実施例12
TREM−2阻害活性を指標としたインスリン抵抗性改善化合物のスクリーニング1
ヒトまたはマウスTREM−2遺伝子を3T3−L1細胞またはCOS7細胞に導入し、TREM−2安定発現細胞株を得る。この細胞に、TREM2を活性化する化合物、抗体、天然TREM−2リガンド、KKAマウス脂肪組織破砕液または血清を接触させ、TREM−2を活性化する。TREM−2の活性化の確認は、公知の方法、例えば、TREM−2のリン酸化、TREM−2の細胞内相互作用タンパク質であるDAP12のリン酸化、細胞内シグナル伝達分子(ERKなど)のリン酸化、またはTNF−αの発現などを測定することにより行う。
TREM−2が活性化された細胞に試験化合物を添加し、TREM−2の活性化を確認した上記手法と同様の手法を用いて、TREM−2シグナルを不活化する化合物を選択する。
選択化合物はMTTアッセイで細胞毒性がないことを確認し、その後、2次評価を行い、インスリン抵抗性の改善が認められた化合物を選択する。
2次評価は組織培養レベルでインスリン受容体、IRSタンパク質のチロシンリン酸化の亢進、またはIRSタンパク質のセリンリン酸化の抑制などを指標として、インスリン抵抗性を改善する化合物を選択する。
選択化合物を、さらにKKAマウスに投与し、耐糖能試験、インスリン耐性試験、TNF−αの発現を指標としたスクリーニングを行い、in vivoでインスリン抵抗性改善作用を持つ化合物を選択する。
【0086】
実施例13
TREM−2阻害活性を指標としたインスリン抵抗性改善化合物のスクリーニング2
ヒトTREM−2細胞外ドメイン(配列番号:1で表されるアミノ酸配列の14番目のGlu〜170番目のProを含むポリペプチド)を抗原としてマウスを免疫し、複数の抗TREM−2モノクローナル抗体を作製する。
ヒトまたはマウスTREM−2遺伝子を3T3−L1細胞またはCOS7細胞に導入し、TREM−2安定発現細株を得る。この細胞に、上記抗TREM−2モノクローナル抗体を反応させ、TREM−2を活性化せしめる抗体を選択する。TREM−2の活性化の確認は、公知の方法、例えば、TREM−2のリン酸化、TREM−2の細胞内相互作用タンパク質であるDAP12のリン酸化、細胞内シグナル伝達分子(ERKなど)のリン酸化、またはTNF−αの発現などを測定することにより行う。
TREM−2が活性化された細胞に試験化合物を添加し、TREM−2の活性化を確認した上記手法と同様の手法を用いて、TREM−2シグナルを不活化する化合物を選択する。
選択化合物は実施例12に記載と同様の方法で、毒性を持たないこと、および培養細胞レベルならびに動物レベルでのインスリン抵抗性改善作用の確認を行う。
【0087】
実施例14
TREM−2発現抑制を指標としたインスリン抵抗性改善化合物のスクリーニング
ヒトTREM−2プロモーター配列に緑色蛍光タンパク質またはβ−ガラクトシダーゼのcDNAをレポーター遺伝子としてつなぎ、これを3T3−L1またはCHO細胞に導入する。
実施例11記載の方法と同様の方法を用いて、TREM−2プロモーター活性を亢進し、これに試験化合物を添加し、TREM−2プロモーター活性を阻害する化合物を選択する。
選択化合物は実施例12に記載と同様の方法で、毒性を持たないこと、および培養細胞レベルならびに動物レベルでのインスリン抵抗性改善作用の確認を行う。
【0088】
【発明の効果】
本発明のタンパク質は脂肪組織で発現が増加し、インスリン抵抗性惹起ならびに増悪作用を有し、血糖値および血中脂質量を増加させる。
よって、本発明のタンパク質は、インスリン抵抗性、糖尿病、肥満症、高脂血症、動脈硬化、高血圧症または心疾患の診断マーカーである。
また、該タンパク質の活性を阻害する化合物またはその塩、該タンパク質遺伝子の発現を阻害する化合物またはその塩、該タンパク質の細胞外ドメイン、該タンパク質の活性を阻害する中和抗体、本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは、例えば、インスリン抵抗性改善作用を有し、血糖値および血中脂質量を減少させる。よって、例えばインスリン抵抗性の改善剤、糖尿病、肥満症、高脂血症、動脈硬化、高血圧症または心疾患予防・治療剤などの医薬として使用することができる。
本発明のタンパク質および該タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、優れたインスリン抵抗性の改善剤、糖尿病、肥満症、高脂血症、動脈硬化、高血圧症または心疾患の予防・治療剤などのスクリーニングなどに有用である。
【0089】
【配列表】
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Claims (33)

  1. 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩の活性を阻害する化合物またはその塩を含有してなるインスリン抵抗性改善剤。
  2. 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質の遺伝子の発現を阻害する化合物またはその塩を含有してなるインスリン抵抗性改善剤。
  3. 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質の発現を阻害する化合物またはその塩を含有してなるインスリン抵抗性改善剤。
  4. 糖尿病、肥満症、高脂血症、動脈硬化症、高血圧症または心疾患の予防・治療剤である請求項1〜3記載のインスリン抵抗性改善剤。
  5. 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質の細胞外ドメインまたはその塩を含有してなるインスリン抵抗性改善剤。
  6. 細胞外ドメインが、配列番号:1で表されるアミノ酸配列の第14番目〜第167番目のアミノ酸配列を含有する部分ペプチドである請求項5記載のインスリン抵抗性改善剤。
  7. 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質の細胞外ドメインまたはその塩を含有してなる糖尿病、肥満症、高脂血症、動脈硬化症、高血圧症または心疾患の予防・治療剤。
  8. 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその部分ペプチドコードするポリヌクレオチドの塩基配列に相補的もしくは実質的に相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスポリヌクレオチド。
  9. 請求項8記載のアンチセンスポリヌクレオチドを含有してなるインスリン抵抗性改善剤。
  10. 請求項8記載のアンチセンスポリヌクレオチドを含有してなる糖尿病、肥満症、高脂血症、動脈硬化症、高血圧症または心疾患の予防・治療剤。
  11. 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその部分ペプチドまたはその塩に対する抗体を含有してなるインスリン抵抗性改善剤。
  12. 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその部分ペプチドまたはその塩に対する抗体を含有してなる糖尿病、肥満症、高脂血症、動脈硬化症、高血圧症または心疾患の予防・治療剤。
  13. 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその部分ペプチドまたはその塩に対する抗体を含有してなるインスリン抵抗性の診断薬。
  14. 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその部分ペプチドまたはその塩に対する抗体を含有してなる糖尿病、肥満症、高脂血症、動脈硬化症、高血圧症または心疾患の診断薬。
  15. 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有してなるインスリン抵抗性の診断薬。
  16. 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有してなる糖尿病、肥満症、高脂血症、動脈硬化症、高血圧症または心疾患の診断薬。
  17. 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩を用いることを特徴とする、インスリン抵抗性改善剤のスクリーニング方法。
  18. (i)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩および(ii)該タンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩に対するリガンドを用いることを特徴とする、該タンパク質またはその塩のアンタゴニストのスクリーニング方法。
  19. (i)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩および(ii)該タンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩に対するリガンドを用いることを特徴とする、インスリン抵抗性改善剤のスクリーニング方法。
  20. 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩を含有することを特徴とする、インスリン抵抗性改善剤のスクリーニング用キット。
  21. 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを用いることを特徴とする、インスリン抵抗性改善剤のスクリーニング方法。
  22. 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有することを特徴とする、インスリン抵抗性改善剤のスクリーニング用キット。
  23. 請求項17、請求項19もしくは請求項21記載のスクリーニング方法または請求項20もしくは請求項22記載のスクリーニング用キットを用いて得られうるインスリン抵抗性改善剤。
  24. 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列が、配列番号:2で表されるアミノ酸配列である請求項17、請求項18、請求項19もしくは請求項21記載のスクリーニング方法または請求項20もしくは請求項22記載のスクリーニング用キット。
  25. 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩を用いることを特徴とする糖尿病、肥満症、高脂血症、動脈硬化症、高血圧症または心疾患の予防・治療剤のスクリーニング方法。
  26. 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩を含有することを特徴とする糖尿病、肥満症、高脂血症、動脈硬化症、高血圧症または心疾患の予防・治療剤のスクリーニング用キット。
  27. 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを用いることを特徴とする糖尿病、肥満症、高脂血症、動脈硬化症、高血圧症または心疾患の予防・治療剤のスクリーニング方法。
  28. 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有することを特徴とする糖尿病、肥満症、高脂血症、動脈硬化症、高血圧症または心疾患の予防・治療剤のスクリーニング用キット。
  29. 請求項25もしくは請求項27記載のスクリーニング方法または請求項26もしくは請求項28記載のスクリーニング用キットを用いて得られうる糖尿病、肥満症、高脂血症、動脈硬化症、高血圧症または心疾患の予防・治療剤。
  30. 哺乳動物に対して、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩の活性を阻害する化合物またはその塩、または該タンパク質の遺伝子の発現を阻害する化合物またはその塩の有効量を投与することを特徴とするインスリン抵抗性の改善方法。
  31. 哺乳動物に対して、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩の活性を阻害する化合物またはその塩、または該タンパク質の遺伝子の発現を阻害する化合物またはその塩の有効量を投与することを特徴とする糖尿病の予防・治療方法。
  32. インスリン抵抗性改善剤を製造するための、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩の活性を阻害する化合物またはその塩、または該タンパク質の遺伝子の発現を阻害する化合物またはその塩の使用。
  33. 糖尿病の予防・治療剤を製造するための、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩の活性を阻害する化合物またはその塩、または該タンパク質の遺伝子の発現を阻害する化合物またはその塩の使用。
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