JP2004099490A - 新規スクリーニング方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】腎臓等の臓器形成因子、臓器形成調節因子およびそのスクリーニング法などの提供。
【解決手段】配列番号2で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有する蛋白質もしくはその塩または該蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有してなる臓器形成促進剤;該蛋白質またはその塩を用いることを特徴とする、該蛋白質またはその塩に対して特異的親和性を有する化合物またはその塩の決定方法;該蛋白質またはその塩と該化合物またはその塩とを用いることを特徴とする、両者の結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法などを提供する。
【選択図】 なし
【解決手段】配列番号2で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有する蛋白質もしくはその塩または該蛋白質をコードするポリヌクレオチドを含有してなる臓器形成促進剤;該蛋白質またはその塩を用いることを特徴とする、該蛋白質またはその塩に対して特異的親和性を有する化合物またはその塩の決定方法;該蛋白質またはその塩と該化合物またはその塩とを用いることを特徴とする、両者の結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法などを提供する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、腎臓をはじめ、種々の臓器形成因子として作用し得る蛋白質、該蛋白質をコードする核酸、該蛋白質に対する抗体およびそれらの用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
種々の臓器障害治療の中でも最終的な根治療法としての臓器再生の研究は、近年飛躍的な進歩を遂げ、特に、神経、皮膚、骨などでは、臨床での実用化を目前に控えるまでに至っている。一方、腎臓の分野においては、透析患者の着実な増加と腎臓移植における臓器提供者の絶対的な不足から、再生医療への期待は大きいものの、その実現には程遠いのが現状である。腎機能の再生には、その基となる細胞とともに、その細胞を腎臓特異的な細胞へと分化させる分化誘導因子が必要であると考えられるが、既知の物質では十分な効果を挙げるに至っていない。
【0003】
例えば、肝細胞増殖因子(HGF)は、尿細管上皮細胞に対して強力なマイトジェン作用(非特許文献1参照)、モルフォゲン作用(非特許文献2参照)、抗アポトーシス作用(非特許文献3参照)を示し、また、急性および慢性腎不全/腎線維症モデルに対するHGFの投与が上皮細胞死を防ぎ、損傷した腎組織の再生・再構築を促進することが知られている(例えば、非特許文献4参照)。しかしながら、HGFでは未分化細胞からネフロン(腎小体と尿細管からなる腎臓の機能的単位)の形態形成を誘導するには不十分である。
【0004】
他方、胎児腎の分化をインビトロで検討できる系として後腎の器官培養系が知られており(例えば、非特許文献5参照)、そのような後腎の器官培養系において、プロテインキナーゼC(PKC)抑制作用を有するセラミドが尿管芽の分枝、進展を抑制することが報告されている(非特許文献6参照)。
【0005】
【非特許文献1】
BioChem Biophys Res Commun (1991) 174: 831−838
【非特許文献2】
Cell (1991) 67: 901−908
【非特許文献3】
Kidney Int (1998) 54: 1128−1138
【非特許文献4】
Kidney Int (2001) 59(6): 2023−2038
【非特許文献5】
Exp Cell Res (1999) 248(2): 423−429
【非特許文献6】
Kidney Int (1997) 52(4): 901−910
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、HGFなどの既知の腎形成因子よりもさらに強力な腎形成誘導活性を示す新規腎形成因子を提供することであり、当該因子を用いて新規且つ有効な腎臓再生手段を提供することにより、腎臓障害治療としての再生医療の実用化の途を開くことである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、PKCの抑制が後腎組織の尿管芽分枝を抑制することに着目し、PKC活性化剤であるホルボールエステル(PMA)およびPKC阻害剤であるセラミドをそれぞれ作用させたマウス後腎組織から得たmRNAを用いてディファレンシャルディスプレイ法を実施し、PKC活性化(即ち、尿管芽分枝の誘導)により高発現する複数の遺伝子クローンを得た。シークエンスおよびホモロジー検索の結果、これまでに機能が全く知られていないヒト由来CGI−204[Biochim Biophys Acta (2001) 1517(3): 449−454;GenBank登録番号:AF285120]と高い相同性を示すクローンに着目し、マウス遺伝子情報データベースを利用してプライマーを設計し、マウス後腎由来cDNAライブラリーを鋳型とするPCRによりコード配列全体を含むcDNAを得た。これをプローブとしてマウスおよびヒト胎児における該遺伝子の発現分布を調べたところ、腎臓の他、脳、心臓、精巣、肝臓などでも発現が認められた。さらに、本発明者らは、無細胞蛋白質合成系を用いて合成された該遺伝子産物をマウス後腎培養の培地に添加することにより、尿管芽分枝が増加し、後腎組織全体が増大すること、他方、該遺伝子のアンチセンスオリゴヌクレオチドの添加は後腎組織の発達を抑制することを見出した。本発明者らは、これらの知見に基づいてさらに研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
[1] 配列番号2で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩を含有してなる医薬、
[2] 配列番号2で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質またはその部分ペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含有してなる医薬、
[3] 臓器形成促進剤である上記[1]または[2]記載の医薬、
[4] 臓器が腎臓、肝臓、心臓、脳、精巣または骨格筋である上記[3]記載の医薬、
[5] 配列番号2で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質またはその部分ペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含有してなる臓器形成異常の診断薬、
[6] 配列番号2で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩に対する抗体を含有してなる臓器形成異常の診断薬、
[7] 臓器が腎臓、肝臓、心臓、脳、精巣または骨格筋である上記[5]または[6]記載の診断薬、
[8] 配列番号2で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩に対する抗体を含有してなる医薬、
[9] 配列番号2で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質またはその部分ペプチドをコードする塩基配列と相補的な塩基配列またはその一部を含むポリヌクレオチドを含有してなる医薬、
[10] 臓器形成抑制剤である上記[8]または[9]記載の医薬、
[11] 臓器が腎臓、肝臓、心臓、脳、精巣または骨格筋である上記[10]記載の医薬、
[12] 配列番号2で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩を用いることにより得られうる、該蛋白質またはその塩に対して特異的親和性を有する化合物またはその塩、
[13] 上記[12]記載の化合物またはその塩を含有してなる医薬、
[14] 臓器形成調節剤である上記[13]記載の医薬、
[15] 臓器が腎臓、肝臓、心臓、脳、精巣または骨格筋である上記[14]記載の医薬、
[16] 配列番号2で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩を用いることを含む、該蛋白質またはその塩に対して特異的親和性を有する化合物またはその塩の決定方法、
[17] 配列番号2で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩を用いることを含む、該蛋白質またはその塩とそれに対して特異的親和性を有する化合物またはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、
[18] 配列番号2で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩を含有する、該蛋白質またはその塩とそれに対して特異的親和性を有する化合物またはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング用キット、
[19] 上記[17]記載のスクリーニング方法または上記[18]記載のスクリーニング用キットを用いて得られうる、配列番号2で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質またはその塩とそれに対して特異的親和性を有する化合物またはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩、
[20] 上記[17]記載のスクリーニング方法または上記[18]記載のスクリーニング用キットを用いて得られうる、配列番号2で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質またはその塩とそれに対して特異的親和性を有する化合物またはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩を含有してなる医薬、
[21] 臓器形成調節剤である上記[20]記載の医薬、
[22] 臓器が腎臓、肝臓、心臓、脳、精巣または骨格筋である上記[21]記載の医薬、
[23] 配列番号2で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質またはその部分ペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドまたは該蛋白質またはその塩に対する抗体を用いて、該蛋白質のmRNAまたは該蛋白質もしくはその塩を定量することを特徴とする臓器形成異常の診断方法、
[24] 臓器が腎臓、肝臓、心臓、脳、精巣または骨格筋である上記[23]記載の診断方法、
[25] 配列番号2で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質またはその部分ペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを用いて該蛋白質のmRNAを定量することを特徴とする、該蛋白質の発現量を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、
[26] 上記[25]記載のスクリーニング方法を用いて得られうる、配列番号2で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質の発現量を変化させる化合物またはその塩、
[27] 上記[26]記載の化合物またはその塩を含有してなる医薬、
[28] 臓器形成調節剤である上記[27]記載の医薬、
[29] 臓器が腎臓、肝臓、心臓、脳、精巣または骨格筋である上記[28]記載の医薬、
[30] 配列番号2で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対する抗体を用いて、細胞外液中の該蛋白質またはその塩を定量することを特徴とする、細胞外液中の該蛋白質またはその塩の量を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、
[31] 上記[30]記載のスクリーニング方法を用いて得られうる、細胞外液中の配列番号2で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質またはその塩の量を変化させる化合物またはその塩、
[32] 上記[31]記載の化合物またはその塩を含有してなる医薬、
[33] 臓器形成調節剤である上記[32]記載の医薬、および
[34] 臓器が腎臓、肝臓、心臓、脳、精巣または骨格筋である上記[33]記載の医薬等を提供する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の医薬に用いられる蛋白質は、配列番号2で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する。該蛋白質(以下、「本発明の蛋白質」という場合もある)は、例えば、ヒトや他の哺乳動物(例えば、モルモット、ラット、マウス、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、サルなど)のあらゆる細胞(例えば、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、内皮細胞、繊維芽細胞、繊維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例、マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞、肝細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくはガン細胞など)や血球系の細胞、またはそれらの細胞が存在するあらゆる組織、例えば、脳、脳の各部位(例、嗅球、扁頭核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、視床下核、大脳皮質、延髄、小脳、後頭葉、前頭葉、側頭葉、被殻、尾状核、脳染、黒質)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆のう、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管(例、大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、末梢血球、前立腺、睾丸、精巣、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、骨格筋などに由来する蛋白質であってもよく、また合成蛋白質であってもよい。
【0010】
配列番号2で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、例えば、配列番号2で表わされるアミノ酸配列と約70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するアミノ酸配列などが挙げられる。
本発明の、配列番号2で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質としては、例えば、配列番号2で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有し、配列番号2で表わされるアミノ酸配列と実質的に同質の活性を有する蛋白質などが好ましい。「実質的に同質の活性」としては、例えば、臓器形成促進活性、細胞増殖活性、レセプター結合活性、シグナル情報伝達作用などが挙げられる。「実質的に同質」とは、それらの活性が性質的に同質であることを示す。したがって、レセプター結合活性やシグナル情報伝達作用などの活性が同等(例、約0.01〜100倍、好ましくは約0.5〜20倍、より好ましくは約0.5〜2倍)であることが好ましいが、これらの活性の程度や蛋白質の分子量などの量的要素は異なっていてもよい。
臓器形成促進活性、細胞増殖活性、レセプター結合活性、シグナル情報伝達作用などの活性の測定は、自体公知の方法に準じて行なうことができるが、例えば、後に記載するスクリーニング方法に従って測定することができる。
【0011】
また、「本発明の蛋白質」としては、a)配列番号2で表わされるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1〜5個))のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、b)配列番号2で表わされるアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1〜5個))のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、c)配列番号2で表わされるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1〜5個))のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、またはd)それらを組み合わせたアミノ酸配列を含有する蛋白質なども用いられる。
【0012】
本明細書において、「本発明の蛋白質」は、ペプチド標記の慣例に従って、左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)で記載される。配列番号2で表わされるアミノ酸配列を含有するマウスclone#22をはじめとする「本発明の蛋白質」は、C末端がカルボキシル基(−COOH)、カルボキシレート(−COO−)、アミド(−CONH2)またはエステル(−COOR)の何れであってもよい。
ここでエステルにおけるRとしては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルもしくはn−ブチルなどのC1−6アルキル基、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC3−8シクロアルキル基、例えば、フェニル、α−ナフチルなどのC6−12アリール基、例えば、ベンジル、フェネチルなどのフェニル−C1−2アルキル基もしくはα−ナフチルメチルなどのα−ナフチル−C1−2アルキル基などのC7−14アラルキル基のほか、経口用エステルとして汎用されるピバロイルオキシメチル基などが用いられる。
「本発明の蛋白質」がC末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している場合、カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものも「本発明の蛋白質」に含まれる。この場合のエステルとしては、例えば上記したC末端のエステルなどが用いられる。
さらに、「本発明の蛋白質」には、上記した蛋白質において、N末端のメチオニン残基のアミノ基が保護基(例えば、ホルミル基、アセチルなどのC2−6アルカノイル基などのC1−6アシル基など)で保護されているもの、N端側が生体内で切断され生成したグルタミル基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基(例えば、−OH、−SH、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基など)が適当な保護基(例えば、ホルミル基、アセチルなどのC2−6アルカノイル基などのC1−6アシル基など)で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖蛋白質などの複合蛋白質なども含まれる。
「本発明の蛋白質」の具体例としては、例えば、配列番号2で表わされるアミノ酸配列を含有するマウス由来のclone#22蛋白質、あるいはヒトまたは他の哺乳動物由来のそのホモログなどが用いられる。マウスclone#22蛋白質は、GenBankにXM_130843の登録番号を付されて登録・公開されている塩基配列と同一の塩基配列(配列番号1)を有するマウス後腎由来cDNA clone#22にコードされる蛋白質である。
【0013】
「本発明の蛋白質」の部分ペプチド(以下、単に「本発明の部分ペプチド」と略記する場合がある)としては、上記した「本発明の蛋白質」の部分アミノ酸配列を有するペプチドであれば何れのものであってもよいが、例えば、本発明の蛋白質分子のうち、臓器形成促進活性または細胞増殖活性を保持する部分、該蛋白質と特異的親和性を有する生体物質(例えば、レセプター)との結合活性を有する部分などが用いられる。
「本発明の部分ペプチド」のアミノ酸の数としては、上記した「本発明の蛋白質」の構成アミノ酸配列のうち少なくとも20個以上、好ましくは50個以上、より好ましくは100個以上のアミノ酸配列を有するペプチドなどが例示される。
【0014】
また、「本発明の部分ペプチド」は、上記アミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1〜5個))のアミノ酸が欠失し、または、そのアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1〜5個))のアミノ酸が付加し、または、そのアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜10個程度、より好ましくは数個、さらに好ましくは1〜5個程度)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されていてもよい。
また、「本発明の部分ペプチド」は、C末端がカルボキシル基(−COOH)、カルボキシレート(−COO−)、アミド(−CONH2)またはエステル(−COOR)の何れであってもよい。本発明の部分ペプチドがC末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している場合、カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものも「本発明の部分ペプチド」に含まれる。この場合のエステルとしては、例えば上記したC末端のエステルなどが用いられる。
さらに、「本発明の部分ペプチド」には、上記した「本発明の蛋白質」と同様に、N末端のメチオニン残基のアミノ基が保護基で保護されているもの、N端側が生体内で切断され生成したGlnがピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基が適当な保護基で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖ペプチドなどの複合ペプチドなども含まれる。
「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドの塩としては、酸または塩基との生理学的に許容される塩が挙げられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩などが用いられる。
【0015】
「本発明の蛋白質」またはその塩は、上記したヒトや哺乳動物の細胞・組織(例えば、腎臓、脳、心臓、肝臓、精巣、骨格筋由来の細胞・組織等)または細胞外液から自体公知の蛋白質の精製方法によって製造することもできるし、後に記載する「本発明の蛋白質」をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによっても製造することができる。また、後に記載する蛋白質合成法またはこれに準ずる方法により製造することもできる。
ヒトや哺乳動物の組織または細胞から製造する場合、ヒトや哺乳動物の組織または細胞をホモジナイズした後、酸などで抽出を行ない、該抽出液を逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーを組み合わせることにより精製単離することができる。
【0016】
「本発明の蛋白質」もしくはその部分ペプチドまたはその塩またはそのアミド体の合成には、通常市販の蛋白質合成用樹脂を用いることができる。そのような樹脂としては、例えば、クロロメチル樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、ベンズヒドリルアミン樹脂、アミノメチル樹脂、4−ベンジルオキシベンジルアルコール樹脂、4−メチルベンズヒドリルアミン樹脂、PAM樹脂、4−ヒドロキシメチルメチルフェニルアセトアミドメチル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−ヒドロキシメチル)フェノキシ樹脂、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−Fmocアミノエチル)フェノキシ樹脂などを挙げることができる。このような樹脂を用い、α−アミノ基と側鎖官能基を適当に保護したアミノ酸を、目的とする蛋白質の配列通りに、自体公知の各種縮合方法に従い、樹脂上で縮合させる。反応の最後に樹脂から蛋白質を切り出すと同時に各種保護基を除去し、さらに高希釈溶液中で分子内ジスルフィド結合形成反応を実施し、目的の蛋白質またはそのアミド体を取得する。
上記した保護アミノ酸の縮合に関しては、蛋白質合成に使用できる各種活性化試薬を用いることができるが、特に、カルボジイミド類がよい。カルボジイミド類としては、DCC、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロリル)カルボジイミドなどが用いられる。これらによる活性化にはラセミ化抑制添加剤(例えば、HOBt、HOOBt)とともに保護アミノ酸を直接樹脂に添加するか、または、対称酸無水物またはHOBtエステルあるいはHOOBtエステルとしてあらかじめ保護アミノ酸の活性化を行なった後に樹脂に添加することができる。
【0017】
保護アミノ酸の活性化や樹脂との縮合に用いられる溶媒としては、蛋白質縮合反応に使用しうることが知られている溶媒から適宜選択されうる。例えば、N,N−ジメチルホルムアミド,N,N−ジメチルアセトアミド,N−メチルピロリドンなどの酸アミド類、塩化メチレン,クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類、トリフルオロエタノールなどのアルコール類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ピリジン,ジオキサン,テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトニトリル,プロピオニトリルなどのニトリル類、酢酸メチル,酢酸エチルなどのエステル類あるいはこれらの適宜の混合物などが用いられる。反応温度は蛋白質結合形成反応に使用され得ることが知られている範囲から適宜選択され、通常約−20℃〜50℃の範囲から適宜選択される。活性化されたアミノ酸誘導体は通常1.5〜4倍過剰で用いられる。ニンヒドリン反応を用いたテストの結果、縮合が不十分な場合には保護基の脱離を行うことなく縮合反応を繰り返すことにより十分な縮合を行なうことができる。反応を繰り返しても十分な縮合が得られないときには、無水酢酸またはアセチルイミダゾールを用いて未反応アミノ酸をアセチル化することができる。
【0018】
原料の反応に関与すべきでない官能基の保護ならびに保護基、およびその保護基の脱離、反応に関与する官能基の活性化などは公知の基または公知の手段から適宜選択しうる。
原料のアミノ基の保護基としては、例えば、Z、Boc、ターシャリーペンチルオキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、Cl−Z、Br−Z、アダマンチルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、フタロイル、ホルミル、2−ニトロフェニルスルフェニル、ジフェニルホスフィノチオイル、Fmocなどが用いられる。
カルボキシル基は、例えば、アルキルエステル化(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ターシャリーブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、2−アダマンチルなどの直鎖状、分枝状もしくは環状アルキルエステル化)、アラルキルエステル化(例えば、ベンジルエステル、4−ニトロベンジルエステル、4−メトキシベンジルエステル、4−クロロベンジルエステル、ベンズヒドリルエステル化)、フェナシルエステル化、ベンジルオキシカルボニルヒドラジド化、ターシャリーブトキシカルボニルヒドラジド化、トリチルヒドラジド化などによって保護することができる。
セリンの水酸基は、例えば、エステル化またはエーテル化によって保護することができる。このエステル化に適する基としては、例えば、アセチル基などの低級アルカノイル基、ベンゾイル基などのアロイル基、ベンジルオキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などの炭酸から誘導される基などが用いられる。また、エーテル化に適する基としては、例えば、ベンジル基、テトラヒドロピラニル基、t−ブチル基などである。
チロシンのフェノール性水酸基の保護基としては、例えば、Bzl、Cl2−Bzl、2−ニトロベンジル、Br−Z、ターシャリーブチルなどが用いられる。
ヒスチジンのイミダゾールの保護基としては、例えば、Tos、4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニル、DNP、ベンジルオキシメチル、Bum、Boc、Trt、Fmocなどが用いられる。
【0019】
原料のカルボキシル基の活性化されたものとしては、例えば、対応する酸無水物、アジド、活性エステル〔アルコール(例えば、ペンタクロロフェノール、2,4,5−トリクロロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、シアノメチルアルコール、パラニトロフェノール、HONB、N−ヒドロキシスクシミド、N−ヒドロキシフタルイミド、HOBt)とのエステル〕などが用いられる。原料のアミノ基の活性化されたものとしては、例えば、対応するリン酸アミドが用いられる。
保護基の除去(脱離)方法としては、例えば、Pd−黒あるいはPd−炭素などの触媒の存在下での水素気流中での接触還元や、また、無水フッ化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸あるいはこれらの混合液などによる酸処理や、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピペラジンなどによる塩基処理、また液体アンモニア中ナトリウムによる還元なども用いられる。上記酸処理による脱離反応は、一般に約−20℃〜40℃の温度で行なわれるが、酸処理においては、例えば、アニソール、フェノール、チオアニソール、メタクレゾール、パラクレゾール、ジメチルスルフィド、1,4−ブタンジチオール、1,2−エタンジチオールなどのようなカチオン捕捉剤の添加が有効である。また、ヒスチジンのイミダゾール保護基として用いられる2,4−ジニトロフェニル基はチオフェノール処理により除去され、トリプトファンのインドール保護基として用いられるホルミル基は上記の1,2−エタンジチオール、1,4−ブタンジチオールなどの存在下の酸処理による脱保護以外に、希水酸化ナトリウム溶液、希アンモニアなどによるアルカリ処理によっても除去される。
【0020】
蛋白質のアミド体を得る別の方法としては、例えば、まず、カルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基をアミド化して保護した後、アミノ基側にペプチド(蛋白質)鎖を所望の鎖長まで延ばした後、該ペプチド鎖のN末端のα−アミノ基の保護基のみを除いた蛋白質とC末端のカルボキシル基の保護基のみを除去した蛋白質とを製造し、この両蛋白質を上記したような混合溶媒中で縮合させる。縮合反応の詳細については上記と同様である。縮合により得られた保護蛋白質を精製した後、上記方法によりすべての保護基を除去し、所望の粗蛋白質を得ることができる。この粗蛋白質は既知の各種精製手段を駆使して精製し、主要画分を凍結乾燥することで所望の蛋白質のアミド体を得ることができる。
蛋白質のエステル体を得るには、例えば、カルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基を所望のアルコール類と縮合しアミノ酸エステルとした後、蛋白質のアミド体と同様にして、所望の蛋白質のエステル体を得ることができる。
【0021】
「本発明の蛋白質」の部分ペプチドまたはその塩は、自体公知のペプチドの合成法に従って、あるいは「本発明の蛋白質」を適当なペプチダーゼで切断することによって製造することができる。ペプチドの合成法としては、例えば、固相合成法、液相合成法のいずれによっても良い。すなわち、「本発明の蛋白質」を構成し得る部分ペプチドもしくはアミノ酸と残余部分とを縮合させ、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的のペプチドを製造することができる。公知の縮合方法や保護基の脱離としては、例えば、以下のa)〜e)に記載された方法が挙げられる。
a)M. Bodanszky および M.A. Ondetti、ペプチド シンセシス (Peptide Synthesis), Interscience Publishers, New York (1966年)
b)SchroederおよびLuebke、ザ ペプチド(The Peptide), Academic Press, New York (1965年)
c)泉屋信夫他、ペプチド合成の基礎と実験、 丸善(株) (1975年)
d)矢島治明 および榊原俊平、生化学実験講座 1、蛋白質の化学IV、 205、(1977年)
e)矢島治明監修、続医薬品の開発 第14巻 ペプチド合成 広川書店
また、反応後は通常の精製法、例えば、溶媒抽出・蒸留・カラムクロマトグラフィー・液体クロマトグラフィー・再結晶などを組み合わせて本発明の部分ペプチドを精製単離することができる。上記方法で得られる部分ペプチドが遊離体である場合は、公知の方法によって適当な塩に変換することができるし、逆に塩で得られた場合は、公知の方法によって遊離体に変換することができる。
【0022】
あるいは、「本発明の蛋白質」もしくはその部分ペプチドまたはその塩は、後述する「本発明の蛋白質」をコードするポリヌクレオチドまたはその部分ヌクレオチドを鋳型として、ウサギ網状赤血球ライセート、コムギ胚芽ライセート、大腸菌ライセートなどからなる無細胞蛋白質翻訳系を用いてインビトロ翻訳することによっても合成することができる。
【0023】
「本発明の蛋白質」をコードするポリヌクレオチド(以下、「本発明のポリヌクレオチド」ともいう)としては、上記した「本発明の蛋白質」をコードする塩基配列(DNA、RNAまたはDNA/RNAキメラ、好ましくはDNA)を含有するものであればいかなるものであってもよい。該ポリヌクレオチドとしては、「本発明の蛋白質」をコードするDNA、mRNA等のRNAであり、二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。二本鎖の場合は、二本鎖DNA、二本鎖RNAまたはDNA:RNAのハイブリッドでもよい。一本鎖の場合は、センス鎖(すなわち、コード鎖)であっても、アンチセンス鎖(すなわち、非コード鎖)であってもよい。本発明のDNAとしては、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、ヒトまたは他の哺乳動物(例えば、モルモット、ラット、マウス、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、サルなど)のあらゆる細胞(例えば、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、内皮細胞、繊維芽細胞、繊維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例、マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞、肝細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくはガン細胞など)や血球系の細胞、またはそれらの細胞が存在するあらゆる組織、例えば、脳、脳の各部位(例、嗅球、扁頭核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、視床下核、大脳皮質、延髄、小脳、後頭葉、前頭葉、側頭葉、被殻、尾状核、脳染、黒質)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆のう、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管(例、大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、末梢血球、前立腺、睾丸、精巣、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、骨格筋など(特に、脳や脳の各部位)由来のcDNA、前記した細胞・組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAのいずれでもよい。ライブラリーに使用するベクターは、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミド、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターなどいずれであってもよい。また、前記した細胞・組織よりtotalRNAまたはmRNA画分を調製したものを用いて直接Reverse Transcriptase Polymerase Chain Reaction(以下、RT−PCR法と略称する)によって増幅することもできる。
【0024】
具体的には、「本発明の蛋白質」をコードするDNAとしては、例えば、配列番号1で表わされる塩基配列を含有するDNA、または配列番号1で表わされる塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有し、「本発明の蛋白質」と実質的に同質の活性(例:臓器形成促進活性、細胞増殖活性、レセプター結合活性、シグナル情報伝達作用など)を有する蛋白質をコードするDNAであれば何れのものでもよい。
配列番号1で表わされる塩基配列とハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号1で表わされる塩基配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の同一性を有する塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
【0025】
ハイブリダイゼーションは、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)2nd ed.(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。より好ましくは、ハイストリンジェントな条件に従って行なうことができる。
該ハイストリンジェントな条件とは、例えば、ナトリウム濃度が約19〜40mM、好ましくは約19〜20mMで、温度が約50〜70℃、好ましくは約60〜65℃の条件を示す。特に、ナトリウム濃度が約19mMで温度が約65℃の場合が最も好ましい。
より具体的には、配列番号2で表わされるアミノ酸配列を含有するマウスclone#22蛋白質をコードするDNAとしては、配列番号1で表わされる塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
「本発明の蛋白質」をコードするDNAの塩基配列の一部、または該DNAと相補的な塩基配列の一部を含有してなるヌクレオチドとは、下記の「本発明の部分ペプチド」をコードするDNAを包含するだけではなく、RNAをも包含する意味で用いられる。
目的核酸の標的領域と相補的な塩基配列を含むヌクレオチド、即ち、目的核酸とハイブリダイズすることができるヌクレオチドは、該目的核酸に対して「アンチセンス」であるということができる。一方、目的核酸の標的領域と相同性を有する塩基配列を含むヌクレオチド(即ち、目的核酸が蛋白質をコードする場合、その蛋白質の部分ペプチドをコードするヌクレオチド)は、該目的核酸に対して「センス」であるということができる。本明細書で用いる用語「対応する」とは、遺伝子を含めたヌクレオチド、塩基配列または核酸の特定の配列に相同性を有するあるいは相補的であることを意味する。ここで「相同性を有する」または「相補的である」とは、塩基配列間で約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の同一性を有することをいう。また、ヌクレオチド、塩基配列または核酸とペプチド(蛋白質)との間で「対応する」とは、そのペプチド(蛋白質)がヌクレオチド(核酸)またはその相補体の配列から翻訳されるアミノ酸配列を有することを通常指している。
【0026】
「本発明のポリヌクレオチド」と相補的な塩基配列の一部を含有してなるヌクレオチド(以下、「本発明のアンチセンスヌクレオチド」ともいう)は、クローン化した、あるいは決定された「本発明のポリヌクレオチド」の塩基配列情報に基づき設計し、合成しうる。そうしたヌクレオチドは、「本発明のポリヌクレオチド」の塩基配列を含む遺伝子の複製または発現を阻害することができる。例えば、マウスclone#22のアンチセンスヌクレオチドは、clone#22に対応する遺伝子から転写されるRNAとハイブリダイズすることができ、mRNAの合成(プロセッシング)または機能(蛋白質への翻訳)を阻害することができるか、あるいはclone#22関連RNAとの相互作用を介してclone#22に対応する遺伝子の発現を調節・制御することができる。clone#22関連RNAの選択された配列に相補的なヌクレオチド、およびclone#22関連RNAと特異的にハイブリダイズすることができるヌクレオチドは、生体内および生体外でclone#22に対応する遺伝子の発現を調節・制御するのに有用であり、また病気などの治療または診断に有用である。
【0027】
「本発明のアンチセンスヌクレオチド」の標的領域は、アンチセンスヌクレオチドがハイブリダイズすることにより、結果として「本発明のポリヌクレオチド」に対応する蛋白質の翻訳が阻害されるものであればその長さに特に制限はなく、「本発明のポリヌクレオチド」に対応するmRNAの全配列であっても部分配列であってもよく、短いもので約15塩基程度、長いものでmRNAまたは初期転写産物の全配列が挙げられる。合成の容易さや抗原性の問題を考慮すれば、約15〜約30塩基からなるオリゴヌクレオチドが好ましいがそれに限定されない。具体的には、例えば、本発明のポリヌクレオチドの5’端ヘアピンループ、5’端6−ベースペア・リピート、5’端非翻訳領域、ポリペプチド翻訳開始コドン、蛋白質コード領域、ORF翻訳開始コドン、3’端非翻訳領域、3’端パリンドローム領域、および3’端ヘアピンループが標的領域として選択しうるが、本発明のポリヌクレオチドに対応する遺伝子内の如何なる領域も標的として選択しうる。例えば、該遺伝子のイントロン部分を標的領域とすることもまた好ましい。
さらに、「本発明のアンチセンスヌクレオチド」は、「本発明のポリヌクレオチド」に対応するmRNAもしくは初期転写産物とハイブリダイズして蛋白質への翻訳を阻害するだけでなく、二本鎖DNAである本発明のポリヌクレオチドに対応する遺伝子と結合して三重鎖(トリプレックス)を形成し、RNAの転写を阻害し得るものであってもよい。
【0028】
アンチセンスヌクレオチドは、2−デオキシ−D−リボースを含有しているデオキシヌクレオチド、D−リボースを含有しているデオキシヌクレオチド、プリンまたはピリミジン塩基のN−グリコシドであるその他のタイプのヌクレオチド、あるいは非ヌクレオチド骨格を有するその他のポリマー(例えば、市販の蛋白質核酸および合成配列特異的な核酸ポリマー)または特殊な結合を含有するその他のポリマー(但し、該ポリマーはDNAやRNA中に見出されるような塩基のペアリングや塩基の付着を許容する配置をもつヌクレオチドを含有する)などが挙げられる。それらは、2本鎖DNA、1本鎖DNA、2本鎖RNA、1本鎖RNA、さらにDNA:RNAハイブリッドであることができ、さらに非修飾ポリヌクレオチド(または非修飾オリゴヌクレオチド)、さらには公知の修飾の付加されたもの、例えば当該分野で知られた標識のあるもの、キャップの付いたもの、メチル化されたもの、1個以上の天然のヌクレオチドを類縁物で置換したもの、分子内ヌクレオチド修飾のされたもの、例えば非荷電結合(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホルアミデート、カルバメートなど)を持つもの、電荷を有する結合または硫黄含有結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)を持つもの、例えば蛋白質(ヌクレアーゼ、ヌクレアーゼ・インヒビター、トキシン、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L−リジンなど)や糖(例えば、モノサッカライドなど)などの側鎖基を有しているもの、インターカレント化合物(例えば、アクリジン、プソラレンなど)を持つもの、キレート化合物(例えば、金属、放射活性をもつ金属、ホウ素、酸化性の金属など)を含有するもの、アルキル化剤を含有するもの、修飾された結合を持つもの(例えば、αアノマー型の核酸など)であってもよい。ここで「ヌクレオシド」、「ヌクレオチド」および「核酸」とは、プリンおよびピリミジン塩基を含有するのみでなく、修飾されたその他の複素環型塩基をもつようなものを含んでいて良い。こうした修飾物は、メチル化されたプリンおよびピリミジン、アシル化されたプリンおよびピリミジン、あるいはその他の複素環を含むものであってよい。修飾されたヌクレオチドおよび修飾されたヌクレオチドはまた糖部分が修飾されていてよく、例えば、1個以上の水酸基がハロゲンとか、脂肪族基などで置換されていたり、あるいはエーテル、アミンなどの官能基に変換されていてよい。
【0029】
アンチセンスヌクレオチドは、RNA、DNA、あるいは修飾された核酸(RNA、DNA)である。修飾された核酸の具体例としては核酸の硫黄誘導体やチオホスフェート誘導体、そしてポリヌクレオシドアミドやオリゴヌクレオシドアミドの分解に抵抗性のものが挙げられるが、それに限定されるものではない。本発明のアンチセンス核酸は次のような方針で好ましく設計されうる。すなわち、細胞内でのアンチセンス核酸をより安定なものにする、アンチセンス核酸の細胞透過性をより高める、目標とするセンス鎖に対する親和性をより大きなものにする、そしてもし毒性があるならアンチセンス核酸の毒性をより小さなものにする。こうした修飾は当該分野で数多く知られており、例えば J. Kawakami et al.,Pharm Tech Japan, Vol. 8, pp.247, 1992; Vol. 8, pp.395, 1992; S. T. Crooke et al. ed., Antisense Research and Applications, CRC Press, 1993 などに開示がある。
【0030】
アンチセンスヌクレオチドは、変化せしめられたり、修飾された糖、塩基、結合を含有していて良く、リポゾーム、ミクロスフェアのような特殊な形態で供与されたり、遺伝子治療により適用されたり、付加された形態で与えられることができうる。こうして付加形態で用いられるものとしては、リン酸基骨格の電荷を中和するように働くポリリジンのようなポリカチオン体、細胞膜との相互作用を高めたり、核酸の取込みを増大せしめるような脂質(例えば、ホスホリピド、コレステロールなど)といった粗水性のものが挙げられる。付加するに好ましい脂質としては、コレステロールやその誘導体(例えば、コレステリルクロロホルメート、コール酸など)が挙げられる。こうしたものは、核酸の3’端あるいは5’端に付着させることができ、塩基、糖、分子内ヌクレオシド結合を介して付着させることができうる。その他の基としては、核酸の3’端あるいは5’端に特異的に配置されたキャップ用の基で、エキソヌクレアーゼ、RNaseなどのヌクレアーゼによる分解を阻止するためのものが挙げられる。こうしたキャップ用の基としては、ポリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのグリコールをはじめとした当該分野で知られた水酸基の保護基が挙げられるが、それに限定されるものではない。
【0031】
「本発明のポリヌクレオチド」に対応するmRNAもしくは遺伝子の初期転写産物を、コード領域の内部(初期転写産物の場合はイントロン部分を含む)で特異的に切断し得るリボザイムもまた、「本発明のアンチセンスヌクレオチド」に包含され得る。「リボザイム」とは核酸を切断する酵素活性を有するRNAをいうが、最近では当該酵素活性部位の塩基配列を有するオリゴDNAも同様に核酸切断活性を有することが明らかになっているので、本明細書では配列特異的な核酸切断活性を有する限りDNAをも包含する概念として用いるものとする。リボザイムとして最も汎用性の高いものとしては、ウイロイドやウイルソイド等の感染性RNAに見られるセルフスプライシングRNAがあり、ハンマーヘッド型やヘアピン型等が知られている。ハンマーヘッド型は約40塩基程度で酵素活性を発揮し、ハンマーヘッド構造をとる部分に隣接する両端の数塩基ずつ(合わせて約10塩基程度)をmRNAの所望の切断部位と相補的な配列にすることにより、標的mRNAのみを特異的に切断することが可能である。このタイプのリボザイムは、RNAのみを基質とするので、ゲノムDNAを攻撃することがないというさらなる利点を有する。「本発明のポリヌクレオチド」に対応するmRNAが自身で二本鎖構造をとる場合には、RNAヘリカーゼと特異的に結合し得るウイルス核酸由来のRNAモチーフを連結したハイブリッドリボザイムを用いることにより、標的配列を一本鎖にすることができる[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 98(10): 5572−5577 (2001)]。さらに、リボザイムを、それをコードするDNAを含む発現ベクターの形態で使用する場合には、転写産物の細胞質への移行を促進するために、tRNAを改変した配列をさらに連結したハイブリッドリボザイムとすることもできる[Nucleic Acids Res., 29(13): 2780−2788 (2001)]。
【0032】
「本発明のポリヌクレオチド」に対応するmRNAもしくは遺伝子の初期転写産物のコード領域内の部分配列(初期転写産物の場合はイントロン部分を含む)に相補的な二本鎖オリゴRNAもまた、「本発明のアンチセンスヌクレオチド」に包含され得る。短い二本鎖RNAを細胞内に導入するとそのRNAに相補的なmRNAが分解される、いわゆるRNA干渉(RNAi)と呼ばれる現象は、以前から線虫、昆虫、植物等で知られていたが、最近、この現象が哺乳動物細胞でも起こることが確認されたことから[Nature, 411(6836): 494−498 (2001)]、リボザイムの代替技術として注目されている。
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド及びリボザイムは、「本発明のポリヌクレオチド」に対応するcDNA配列もしくはゲノミックDNA配列情報に基づいてmRNAもしくは初期転写産物の標的領域を決定し、市販のDNA/RNA自動合成機(アプライド・バイオシステムズ社、ベックマン社等)を用いて、これに相補的な配列を合成することにより調製することができる。RNAi活性を有する二本鎖オリゴRNAは、センス鎖及びアンチセンス鎖をDNA/RNA自動合成機でそれぞれ合成し、適当なアニーリング緩衝液中で、例えば、約90〜約95℃で約1分程度変性させた後、約30〜約70℃で約1〜約8時間アニーリングさせることにより調製することができる。また、相補的なオリゴヌクレオチド鎖を交互にオーバーラップするように合成して、これらをアニーリングさせた後リガーゼでライゲーションすることにより、より長い二本鎖ポリヌクレオチドを調製することもできる。
【0033】
「本発明のアンチセンスヌクレオチド」の遺伝子発現阻害活性は、「本発明のポリヌクレオチド」を含有する形質転換体、生体内や生体外の「本発明のポリヌクレオチド」発現系または「本発明のポリヌクレオチド」に対応する蛋白質の生体内や生体外の翻訳系を用いて調べることができる。該核酸は自体公知の各種の方法で細胞に適用できる。
【0034】
「本発明のポリヌクレオチド」の一部を含むヌクレオチドとしては、上記した「本発明の蛋白質」の部分ペプチド(即ち、「本発明の部分ペプチド」)をコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものであってもよい。また、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、上記した細胞・組織由来のcDNA、上記した細胞・組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAのいずれでもよい。ライブラリーに使用するベクターは、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。また、上記した細胞・組織よりmRNA画分を調製したものを用いて直接RT−PCR法によって増幅することもできる。
【0035】
具体的には、「本発明の部分ペプチド」をコードするヌクレオチドとしては、例えば、(1)配列番号1で表わされる塩基配列を有するポリヌクレオチドの部分塩基配列を有するヌクレオチド、または(2)配列番号1で表わされる塩基配列を有するポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有し、該ポリヌクレオチドにコードされるアミノ酸配列を含む蛋白質と実質的に同質の活性(例:臓器形成促進活性、細胞増殖活性、レセプター結合活性、シグナル伝達作用など)を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドの部分塩基配列を有するヌクレオチドなどが用いられる。
配列番号1で表わされる塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるポリヌクレオチドとしては、例えば、該塩基配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の同一性を有する塩基配列を含有するポリヌクレオチドなどが用いられる。
【0036】
「本発明のポリヌクレオチド」または「本発明の部分ペプチド」をコードするヌクレオチドのクローニングの手段としては、上記のようにして同定され、配列決定された「本発明のポリヌクレオチド」の部分塩基配列を有する合成DNAプライマーを用いてPCR法によって増幅するか、または適当なベクターに組み込んだDNAを「本発明のポリヌクレオチド」の一部あるいは全領域を含むDNA断片もしくは合成DNAを用いて標識したものとのハイブリダイゼーションによって選別することができる。ハイブリダイゼーションの方法は、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)2nd Edition(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。
【0037】
DNAの塩基配列の変換は、PCRや公知のキット、例えば、MutanTM−super Express KmG(宝酒造(株))、MutanTM−K(宝酒造(株))などを用いて、ODA−LA PCR法、Gupped duplex法、Kunkel法などの自体公知の方法あるいはそれらに準じる方法に従って行なうことができる。
クローン化された「本発明のポリヌクレオチド」は目的によりそのまま、または所望により制限酵素で消化したり、リンカーを付加したりして使用することができる。該ヌクレオチドはその5’末端側に翻訳開始コドンとしてのATGを有し、また3’末端側には翻訳終止コドンとしてのTAA、TGAまたはTAGを有していてもよい。これらの翻訳開始コドンや翻訳終止コドンは、適当な合成DNAアダプターを用いて付加することもできる。
【0038】
「本発明のポリヌクレオチド」の発現ベクターは、例えば、(イ)「本発明のポリヌクレオチド」を含む断片を切り出し、(ロ)ポリヌクレオチド断片を適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより製造することができる。
ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド(例、pBR322、pBR325、pUC12、pUC13)、枯草菌由来のプラスミド(例、pUB110、pTP5、pC194)、酵母由来プラスミド(例、pSH19、pSH15)、λファージなどのバクテリオファージ、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルスなどの動物ウイルスなどの他、pA1−11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neoなどが用いられる。
プロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主に対応して適切なプロモーターであればいかなるものでもよい。例えば、動物細胞を宿主として用いる場合は、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMVプロモーター、HSV−TKプロモーターなどが挙げられる。
これらのうち、CMVプロモーター、SRαプロモーターなどを用いるのが好ましい。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、trpプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、λPLプロモーター、lppプロモーターなどが、宿主がバチルス属菌である場合は、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーターなど、宿主が酵母である場合は、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーターなどが好ましい。宿主が昆虫細胞である場合は、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーターなどが好ましい。
発現ベクターには、以上の他に、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製オリジン(以下、SV40oriと略称する場合がある)などを含有しているものを用いることができる。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素(以下、dhfrと略称する場合がある)遺伝子〔メソトレキセート(MTX)耐性〕、アンピシリン耐性遺伝子(以下、Amprと略称する場合がある)、ネオマイシン耐性遺伝子(以下、Neorと略称する場合がある、G418耐性)等が挙げられる。特に、CHO(dhfr−)細胞を用いてdhfr遺伝子を選択マーカーとして使用する場合、目的遺伝子をチミジンを含まない培地によっても選択できる。
また、必要に応じて、宿主に合ったシグナル配列を、「本発明のポリヌクレオチド」にネイティヴなシグナル配列に代えてN末端側に付加することもできる。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、PhoA・シグナル配列、OmpA・シグナル配列などが、宿主がバチルス属菌である場合は、α−アミラーゼ・シグナル配列、サブチリシン・シグナル配列などが、宿主が酵母である場合は、MFα・シグナル配列、SUC2・シグナル配列など、宿主が動物細胞である場合には、インシュリン・シグナル配列、α−インターフェロン・シグナル配列、抗体分子・シグナル配列などがそれぞれ利用できる。
【0039】
このようにして構築された「本発明のポリヌクレオチド」を含有するベクターを用いて、形質転換体を製造することができる。
宿主としては、例えば、エシェリヒア属菌、バチルス属菌、酵母、昆虫細胞、昆虫、動物細胞などが用いられる。
エシェリヒア属菌の具体例としては、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)K12・DH1〔プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),60巻,160(1968)〕,JM103〔ヌクイレック・アシッズ・リサーチ,(Nucleic Acids Research),9巻,309(1981)〕,JA221〔ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(Journal of Molecular Biology)〕,120巻,517(1978)〕,HB101〔ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー,41巻,459(1969)〕,C600〔ジェネティックス(Genetics),39巻,440(1954)〕などが用いられる。
バチルス属菌としては、例えば、バチルス・ズブチルス(Bacillus subtilis)MI114〔ジーン(Gene),24巻,255(1983)〕,207−21〔ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(Journal of Biochemistry),95巻,87(1984)〕などが用いられる。
酵母としては、例えば、サッカロマイセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)AH22,AH22R−,NA87−11A,DKD−5D、20B−12、シゾサッカロマイセス ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)NCYC1913,NCYC2036、ピキア パストリス(Pichia pastoris)などが用いられる。
昆虫細胞としては、例えば、ウイルスがAcNPVの場合は、夜盗蛾の幼虫由来株化細胞(Spodoptera frugiperda cell;Sf細胞)、Trichoplusia niの中腸由来のMG1細胞、Trichoplusia niの卵由来のHigh FiveTM 細胞、Mamestra brassicae由来の細胞またはEstigmena acrea由来の細胞などが用いられる。ウイルスがBmNPVの場合は、蚕由来株化細胞(Bombyx mori N;BmN細胞)などが用いられる。該Sf細胞としては、例えば、Sf9細胞(ATCC CRL1711)、Sf21細胞(以上、Vaughn, J.L.ら、イン・ヴィボ(In Vivo),13, 213−217,(1977))などが用いられる。
昆虫としては、例えば、カイコの幼虫などが用いられる〔前田ら、ネイチャー(Nature),315巻,592(1985)〕。
動物細胞としては、例えば、サル細胞COS−7,Vero,チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO細胞と略記)、dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO(dhfr−)細胞と略記)、マウスL細胞,マウスAtT−20、マウスミエローマ細胞、ラットGH3、ヒトFL細胞などが用いられる。
エシェリヒア属菌を形質転換するには、例えば、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンジイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),69巻,2110(1972)やジーン(Gene),17巻,107(1982)などに記載の方法に従って行なうことができる。
バチルス属菌を形質転換するには、例えば、モレキュラー・アンド・ジェネラル・ジェネティックス(Molecular & General Genetics),168巻,111(1979)などに記載の方法に従って行なうことができる。
酵母を形質転換するには、例えば、メッソズ・イン・エンザイモロジー(Methods in Enzymology),194巻,182−187(1991)、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),75巻,1929(1978)などに記載の方法に従って行なうことができる。
昆虫細胞または昆虫を形質転換するには、例えば、バイオ/テクノロジー(Bio/Technology),6巻,47−55(1988)などに記載の方法に従って行なうことができる。
動物細胞を形質転換するには、例えば、細胞工学別冊8新細胞工学実験プロトコール.263−267(1995)(秀潤社発行)、ヴィロロジー(Virology),52巻,456(1973)に記載の方法に従って行なうことができる。
このようにして、「本発明のポリヌクレオチド」を含有する発現ベクターで形質転換された形質転換体が得られる。
【0040】
宿主がエシェリヒア属菌、バチルス属菌である形質転換体を培養する際、培養に使用される培地としては液体培地が適当であり、その中には該形質転換体の生育に必要な炭素源、窒素源、無機物その他が含有せしめられる。炭素源としては、例えば、グルコース、デキストリン、可溶性澱粉、ショ糖など、窒素源としては、例えば、アンモニウム塩類、硝酸塩類、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、大豆粕、バレイショ抽出液などの無機または有機物質、無機物としては、例えば、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウムなどが挙げられる。また、酵母エキス、ビタミン類、生長促進因子などを添加してもよい。培地のpHは約5〜8が望ましい。
エシェリヒア属菌を培養する際の培地としては、例えば、グルコース、カザミノ酸を含むM9培地〔ミラー(Miller),ジャーナル・オブ・エクスペリメンツ・イン・モレキュラー・ジェネティックス(Journal of Experiments in Molecular Genetics),431−433,Cold Spring Harbor Laboratory, New York 1972〕が好ましい。ここに必要によりプロモーターを効率よく働かせるために、例えば、3β−インドリル アクリル酸のような薬剤を加えることができる。
宿主がエシェリヒア属菌の場合、培養は通常約15〜43℃で約3〜24時間行ない、必要により、通気や撹拌を加えることもできる。
宿主がバチルス属菌の場合、培養は通常約30〜40℃で約6〜24時間行ない、必要により通気や撹拌を加えることもできる。
宿主が酵母である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、バークホールダー(Burkholder)最小培地〔Bostian, K. L. ら、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),77巻,4505(1980)〕や0.5%カザミノ酸を含有するSD培地〔Bitter, G. A. ら、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),81巻,5330(1984)〕が挙げられる。培地のpHは約5〜8に調整するのが好ましい。培養は通常約20〜35℃で約24〜72時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
宿主が昆虫細胞または昆虫である形質転換体を培養する際、培地としては、Grace’s Insect Medium(Grace, T.C.C., ネイチャー(Nature),195巻,788(1962))に非働化した10%ウシ血清等の添加物を適宜加えたものなどが用いられる。培地のpHは約6.2〜6.4に調整するのが好ましい。培養は通常約27℃で約3〜5日間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
宿主が動物細胞である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、約5〜20%の胎児牛血清を含むMEM培地〔サイエンス(Science),122巻,501(1952)〕,DMEM培地〔ヴィロロジー(Virology),8巻,396(1959)〕,RPMI 1640培地〔ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・メディカル・アソシエーション(The Journal of the American Medical Association)199巻,519(1967)〕,199培地〔プロシージング・オブ・ザ・ソサイエティ・フォー・ザ・バイオロジカル・メディスン(Proceeding of the Society for the Biological Medicine),73巻,1(1950)〕などが用いられる。pHは約6〜8であるのが好ましい。培養は通常約30〜40℃で約15〜60時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
以上のようにして、形質転換体の細胞内または細胞外に「本発明の蛋白質」を生成せしめることができる。
【0041】
上記培養物から生成した蛋白質を分離精製するには、例えば、下記の方法により行なうことができる。
該蛋白質が細胞質局在型である場合、培養後、公知の方法で菌体あるいは細胞を集め、これを適当な緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチームおよび/または凍結融解などによって菌体あるいは細胞を破壊したのち、遠心分離して上清を回収する。緩衝液の中に尿素や塩酸グアニジンなどの蛋白質変性剤が含まれていてもよい。該蛋白質が膜結合型である場合、培養後、公知の方法で菌体あるいは細胞を集め、これを適当な緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチームおよび/または凍結融解などによって菌体あるいは細胞を破壊したのち、遠心分離やろ過により膜画分を沈澱させる。次いで、膜画分をトリトンX−100TMなどの界面活性剤を用いて破壊し、遠心分離して上清を回収する。緩衝液の中に尿素や塩酸グアニジンなどの蛋白質変性剤が含まれていてもよい。該蛋白質が培養液中に分泌される場合には、培養終了後、それ自体公知の方法で菌体あるいは細胞と上清とを分離し、上清を集める。
このようにして得られた培養上清、細胞質画分または膜可溶化画分中に含まれる該蛋白質の精製は、自体公知の分離・精製法を適切に組み合わせて行なうことができる。これらの公知の分離、精製法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの主として分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法などが用いられる。
かくして得られる蛋白質が遊離体で得られた場合には、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法によって塩に変換することができ、逆に塩で得られた場合には自体公知の方法あるいはそれに準じる方法により、遊離体または他の塩に変換することができる。
なお、組換え体が産生する蛋白質を、精製前または精製後に適当な蛋白修飾酵素を作用させることにより、任意に修飾を加えたり、ポリペプチドを部分的に除去することもできる。蛋白修飾酵素としては、例えば、トリプシン、キモトリプシン、アルギニルエンドペプチダーゼ、プロテインキナーゼ、グリコシダーゼなどが用いられる。
かくして生成する蛋白質またはその塩の活性は、標識した該蛋白質と特異的親和性を有する物質(例:レセプター)との結合実験および特異的抗体を用いたエンザイムイムノアッセイなどにより測定することができる。
【0042】
本発明はまた、上記の「本発明の蛋白質」もしくはその部分ペプチドまたはその塩(以下、「本発明の蛋白質等」と略記する場合もある)に対する抗体を提供する。該抗体は、「本発明の蛋白質」もしくはその部分ペプチドまたはその塩に対して特異的親和性を有するものであれば、モノクローナル抗体であってもポリクローナル抗体であってもよい。「本発明の蛋白質等」に対する抗体は、「本発明の蛋白質等」を抗原として用い、自体公知の抗体または抗血清の製造法に従って製造することができる。
【0043】
〔モノクローナル抗体の作製〕
(a)モノクローナル抗体産生細胞の作製
「本発明の蛋白質等」は、哺乳動物に対して投与により抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は通常2〜6週毎に1回ずつ、計2〜10回程度行なわれる。用いられる哺乳動物としては、例えば、サル、ウサギ、イヌ、モルモット、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギが挙げられるが、マウスおよびラットが好ましく用いられる。
モノクローナル抗体産生細胞の作製に際しては、抗原を免疫された温血動物、例えば、マウスから抗体価の認められた個体を選択し最終免疫の2〜5日後に脾臓またはリンパ節を採取し、それらに含まれる抗体産生細胞を骨髄腫細胞と融合させることにより、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを調製することができる。抗血清中の抗体価の測定は、例えば、後記の標識化レセプター蛋白質と抗血清とを反応させたのち、抗体に結合した標識剤の活性を測定することにより行なうことができる。融合操作は既知の方法、例えば、ケーラーとミルスタインの方法〔ネイチャー(Nature)、256巻、495頁(1975年)〕に従い実施することができる。融合促進剤としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)やセンダイウィルスなどが挙げられるが、好ましくはPEGが用いられる。
骨髄腫細胞としては、例えば、NS−1、P3U1、SP2/0などが挙げられるが、P3U1が好ましく用いられる。用いられる抗体産生細胞(脾臓細胞)数と骨髄腫細胞数との好ましい比率は1:1〜20:1程度であり、PEG(好ましくは、PEG1000〜PEG6000)が10〜80%程度の濃度で添加され、約20〜40℃、好ましくは約30〜37℃で約1〜10分間インキュベートすることにより効率よく細胞融合を実施できる。
【0044】
モノクローナル抗体産生ハイブリドーマのスクリーニングには種々の方法が使用できるが、例えば、抗原蛋白質を直接あるいは担体とともに吸着させた固相(例:マイクロプレート)にハイブリドーマ培養上清を添加し、次に放射性物質や酵素などで標識した抗免疫グロブリン抗体(細胞融合に用いられる細胞がマウスの場合、抗マウス免疫グロブリン抗体が用いられる)またはプロテインAを加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法、抗免疫グロブリン抗体またはプロテインAを吸着させた固相にハイブリドーマ培養上清を添加し、放射性物質や酵素などで標識した抗原蛋白質を加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法などが挙げられる。
モノクローナル抗体の選別は、自体公知あるいはそれに準じる方法に従って行なうことができるが、通常はHAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)を添加した動物細胞用培地などで行なうことができる。選別および育種用培地としては、ハイブリドーマが生育できるものならばどのような培地を用いても良い。例えば、1〜20%、好ましくは10〜20%の牛胎児血清を含むRPMI 1640培地、1〜10%の牛胎児血清を含むGIT培地(和光純薬工業(株))またはハイブリドーマ培養用無血清培地(SFM−101、日水製薬(株))などを用いることができる。培養温度は、通常20〜40℃、好ましくは約37℃である。培養時間は、通常5日〜3週間、好ましくは1週間〜2週間である。培養は、通常5%炭酸ガス下で行なうことができる。ハイブリドーマ培養上清の抗体価は、上記の抗血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。
【0045】
(b)モノクローナル抗体の精製
モノクローナル抗体の分離精製は、通常のポリクローナル抗体の分離精製と同様に免疫グロブリンの分離精製法〔例、塩析法、アルコール沈殿法、等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換体(例、DEAE)による吸脱着法、超遠心法、ゲルろ過法、抗原結合固相またはプロテインAあるいはプロテインGなどの活性吸着剤により抗体のみを採取し、結合を解離させて抗体を得る特異的精製法〕に従って行なうことができる。
【0046】
〔ポリクローナル抗体の作製〕
本発明のポリクローナル抗体は、それ自体公知あるいはそれに準じる方法にしたがって製造することができる。例えば、免疫抗原(「本発明の蛋白質等」)とキャリアー蛋白質との複合体をつくり、上記のモノクローナル抗体の製造法と同様に哺乳動物に免疫を行ない、該免疫動物から「本発明の蛋白質等」に対する抗体含有物を採取して、抗体の分離精製を行なうことにより製造できる。
哺乳動物を免疫するために用いられる免疫抗原とキャリアー蛋白質との複合体に関し、キャリアー蛋白質の種類およびキャリアーとハプテンとの混合比は、キャリアーに架橋させて免疫したハプテンに対して抗体が効率良くできれば、どの様なものをどの様な比率で架橋させてもよいが、例えば、ウシ血清アルブミン、ウシサイログロブリン、キーホール・リンペット・ヘモシアニン等を重量比でハプテン1に対し、約0.1〜20、好ましくは約1〜5の割合でカプルさせる方法が用いられる。
また、ハプテンとキャリアーのカップリングには、種々の縮合剤を用いることができるが、グルタルアルデヒドやカルボジイミド、マレイミド活性エステル、チオール基、ジチオビリジル基を含有する活性エステル試薬等が用いられる。
縮合生成物は、温血動物に対して、抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は、通常約2〜6週毎に1回ずつ、計約3〜10回程度行なうことができる。
ポリクローナル抗体は、上記の方法で免疫された哺乳動物の血液、腹水など、好ましくは血液から採取することができる。
抗血清中のポリクローナル抗体価の測定は、上記の血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。ポリクローナル抗体の分離精製は、上記のモノクローナル抗体の分離精製と同様の免疫グロブリンの分離精製法に従って行なうことができる。
【0047】
「本発明の蛋白質」もしくはその部分ペプチドまたはその塩、該蛋白質またはその部分ペプチドをコードするヌクレオチド(アンチセンスを含む)、および該蛋白質またはその部分ペプチドに対する抗体は、(1)「本発明の蛋白質」に対して特異的親和性を有する化合物またはその塩(例えば、「本発明の蛋白質」が分泌蛋白質の場合はそれに対するレセプター)の決定、(2)「本発明の蛋白質」の機能不全に関連する疾患の予防および/または治療剤、(3)「本発明の蛋白質」の過剰発現に関連する疾患の予防および/または治療剤、(4)遺伝子診断剤、(5)「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドの発現量を変化させる化合物のスクリーニング方法、(6)「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドの発現量を変化させる化合物を含有する各種疾病の予防および/または治療剤、(7)「本発明の蛋白質」に対して特異的親和性を有する化合物の定量法、(8)「本発明の蛋白質」と該蛋白質に対して特異的親和性を有する化合物との結合性を変化させる化合物(アゴニスト、アンタゴニストなど)のスクリーニング方法、(9)「本発明の蛋白質」と該蛋白質に対して特異的親和性を有する化合物との結合性を変化させる化合物(アゴニスト、アンタゴニスト)を含有する各種疾病の予防および/または治療剤、(10)「本発明の蛋白質」もしくはその部分ペプチドまたはその塩の定量、(11)細胞外液中の「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドの量を変化させる化合物のスクリーニング方法、(12)細胞外液中の「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドの量を変化させる化合物を含有する各種疾病の予防および/または治療剤、(13)「本発明の蛋白質」をコードするDNAを有する非ヒト動物の作製、(14)「本発明の蛋白質」をコードする遺伝子が不活性化されたノックアウト非ヒト動物の作製などに用いることができる。
特に、本発明の組換え型蛋白質またはその部分ペプチドの発現系を用いたアフィニティーアッセイ系を用いることによって、「本発明の蛋白質」と該蛋白質に対して特異的親和性を有する化合物(例:レセプター)との結合性を変化させる化合物(例:アゴニスト、アンタゴニスト)をスクリーニングすることができ、該アゴニストまたはアンタゴニストを各種疾病の予防・治療剤などとして使用することができる。
「本発明の蛋白質等」、本発明の蛋白質等をコードするDNA(以下、「本発明のDNA」と略記する場合がある)、「本発明のアンチセンスヌクレオチド」および本発明の蛋白質等に対する抗体(以下、「本発明の抗体」と略記する場合がある)の用途について、以下に具体的に説明する。
【0048】
(1)「本発明の蛋白質」に対して特異的親和性を有する化合物の決定
「本発明の蛋白質」もしくはその塩または「本発明の部分ペプチド」もしくはその塩は、「本発明の蛋白質」またはその塩に対して特異的親和性を有する化合物を探索し、または決定するための試薬として有用である。
すなわち、本発明は、「本発明の蛋白質」もしくはその塩または「本発明の部分ペプチド」もしくはその塩と、試験化合物とを接触させることを特徴とする「本発明の蛋白質」またはその塩に対して特異的親和性を有する化合物の決定方法を提供する。
試験化合物としては、公知のリガンド(例えば、アンギオテンシン、ボンベシン、カナビノイド、コレシストキニン、グルタミン、セロトニン、メラトニン、ニューロペプチドY、オピオイド、プリン、バソプレッシン、オキシトシン、PACAP、セクレチン、グルカゴン、カルシトニン、アドレノメジュリン、ソマトスタチン、GHRH、CRF、ACTH、GRP、PTH、VIP(バソアクティブ インテスティナル アンド リレイテッド ポリペプチド)、ソマトスタチン、ドーパミン、モチリン、アミリン、ブラジキニン、CGRP(カルシトニンジーンリレーティッドペプチド)、ロイコトリエン、パンクレアスタチン、プロスタグランジン、トロンボキサン、アデノシン、アドレナリン、αおよびβ−ケモカイン(chemokine)(例えば、IL−8、GROα、GROβ、GROγ、NAP−2、ENA−78、PF4、IP10、GCP−2、MCP−1、HC14、MCP−3、I−309、MIP1α、MIP−1β、RANTESなど)、エンドセリン、エンテロガストリン、ヒスタミン、ニューロテンシン、TRH、パンクレアティックポリペプタイドまたはガラニンなど)等のレセプターの他に、例えば、ヒトまたは哺乳動物の組織抽出物、無傷細胞、細胞膜画分、細胞培養上清などが用いられる。例えば、該組織抽出物、無傷細胞、細胞膜画分、細胞培養上清などを「本発明の蛋白質」に添加し、細胞刺激活性などを測定しながら分画し、最終的に単一のレセプター等を得ることができる。
【0049】
具体的には、「本発明の蛋白質」またはその塩に対して特異的親和性を有する化合物の決定方法は、「本発明の蛋白質」もしくはその部分ペプチドまたはその塩を用いるか、または組換え型蛋白質もしくはその部分ペプチドの発現系を構築し、該発現系を用いたアフィニティーアッセイ系を用いることによって、「本発明の蛋白質」に結合して細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+遊離、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化または脱リン酸化、c−fos活性化、pHの低下などを促進する活性または抑制する活性)を有する化合物(例えば、ペプチド、蛋白質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物など)あるいはそれらの塩を決定する方法である。
「本発明の蛋白質」またはその塩に対して特異的親和性を有する化合物の決定方法においては、「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドと試験化合物とを接触させた場合の、例えば、該蛋白質または該部分ペプチドに対する試験化合物の結合量や、細胞刺激活性などを測定することを特徴とする。
【0050】
より具体的には、本発明は、
▲1▼標識した試験化合物を、(i)「本発明の蛋白質」もしくはその塩または「本発明の部分ペプチド」もしくはその塩、(ii)「本発明の蛋白質」を含有する細胞外液または細胞培養上清、あるいは(iii)「本発明の蛋白質」をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することにより得られる「本発明の蛋白質」含有画分[(i)〜(iii)において、通常「本発明の蛋白質」は、例えば、上記の「本発明の抗体」を固定化した固相(例:細胞培養プレート等)を用いて固相化されている]に接触させた場合における、該固相上の「本発明の蛋白質等」に対する標識した試験化合物の結合量を測定することを特徴とする、「本発明の蛋白質」またはその塩に対して特異的親和性を有する化合物の決定方法、
▲2▼試験化合物を含有する脂質二重層膜(試験化合物を含む合成脂質二重層膜(例:リポソーム)、試験化合物を細胞膜上に含有する細胞または該細胞から調製される膜画分など)に、標識した「本発明の蛋白質」もしくはその塩または「本発明の部分ペプチド」もしくはその塩を接触させた場合における、該脂質二重層膜に対する「本発明の蛋白質等」の結合量を測定することを特徴とする、「本発明の蛋白質」またはその塩に対するレセプターの決定方法、および
▲3▼試験化合物を細胞膜上に含有する細胞を、(i)「本発明の蛋白質」もしくはその塩または「本発明の部分ペプチド」もしくはその塩、(ii)「本発明の蛋白質」を含有する細胞外液または細胞培養上清、あるいは(iii)「本発明の蛋白質」をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することにより得られる「本発明の蛋白質」含有画分に接触させた場合における、試験化合物を介した細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+遊離、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化または脱リン酸化、c−fosの活性化、pHの低下などを促進する活性または抑制する活性など)を測定することを特徴とする「本発明の蛋白質」またはその塩に対するレセプターの決定方法を提供する。
特に、上記▲1▼または▲2▼の試験を行ない、試験化合物が「本発明の蛋白質」に結合することを確認した後に、上記▲3▼の試験を行なうことが好ましい。
【0051】
まず、「本発明の蛋白質」に特異的親和性を有する化合物(例:レセプター)の決定方法に用いる蛋白質としては、上記した「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドを含有するものであれば何れのものであってもよいが、動物細胞を用いて大量発現させた蛋白質が適している。
「本発明の蛋白質」を製造するには、前述の発現方法が用いられるが、該蛋白質をコードするDNAを哺乳動物細胞や昆虫細胞で発現させることにより行なうことが好ましい。目的とする蛋白質部分をコードするDNA断片には、通常、相補DNAが用いられるが、必ずしもこれに制約されるものではない。例えば、遺伝子断片や合成DNAを用いてもよい。「本発明の蛋白質」をコードするDNA断片を宿主動物細胞に導入し、それらを効率よく発現させるためには、該DNA断片を昆虫を宿主とするバキュロウイルスに属する核多角体病ウイルス(nuclear polyhedrosis virus;NPV)のポリヘドリンプロモーター、SV40由来のプロモーター、レトロウイルスのプロモーター、メタロチオネインプロモーター、ヒトヒートショックプロモーター、サイトメガロウイルスプロモーター、SRαプロモーターなどの下流に組み込むのが好ましい。発現した蛋白質の量と質の検査はそれ自体公知の方法で行なうことができる。例えば、文献〔Nambi,P.ら、ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J. Biol. Chem.),267巻,19555〜19559頁,1992年〕に記載の方法に従って行なうことができる。
【0052】
本発明の「本発明の蛋白質」に特異的親和性を有する化合物(例:レセプター)の決定方法において、「本発明の蛋白質」もしくはその部分ペプチドまたはその塩を含有するものとしては、それ自体公知の方法に従って精製した該蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩であってもよいし、該蛋白質を含有する細胞外液または細胞培養上清を用いてもよい。「本発明の蛋白質」を含有する細胞外液としては、腎臓、脳、心臓、肝臓、精巣、骨格筋などの「本発明の蛋白質」を発現する器官の細胞の間質液等が挙げられ、また、細胞培養上清としては、上記器官または該器官由来の組織もしくは細胞の培養系の培養上清、あるいは上記した「本発明のポリヌクレオチド」を含む発現ベクターで形質転換された形質転換体の培養上清などが挙げられる。
【0053】
標識した試験化合物としては、〔3H〕、〔125I〕、〔14C〕、〔35S〕などで標識した公知のレセプター蛋白質(例えば、アンギオテンシン、ボンベシン、カナビノイド、コレシストキニン、グルタミン、セロトニン、メラトニン、ニューロペプチドY、オピオイド、プリン、バソプレッシン、オキシトシン、PACAP、セクレチン、グルカゴン、カルシトニン、アドレノメジュリン、ソマトスタチン、GHRH、CRF、ACTH、GRP、PTH、VIP(バソアクティブ インテスティナル アンド リイテッド ポリペプチド)、ソマトスタチン、ドーパミン、モチリン、アミリン、ブラジキニン、CGRP(カルシトニンジーンリレーティッドペプチド)、ロイコトリエン、パンクレアスタチン、プロスタグランジン、トロンボキサン、アデノシン、アドレナリン、αおよびβ−ケモカイン(chemokine)(例えば、IL−8、GROα、GROβ、GROγ、NAP−2、ENA−78、PF4、IP10、GCP−2、MCP−1、HC14、MCP−3、I−309、MIP1α、MIP−1β、RANTESなど)、エンドセリン、エンテロガストリン、ヒスタミン、ニューロテンシン、TRH、パンクレアティックポリペプタイドまたはガラニンなどの公知リガンドに対するレセプター)や未知の膜レセプター蛋白質もしくはペプチド(例えば、ゲノム情報から推定されるオーファンレセプターのcDNAを系統的にクローニングし、組換え生産したもの)、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物などが用いられる。
【0054】
具体的には、「本発明の蛋白質」またはその塩に対して特異的親和性を有する化合物(例:レセプター)の決定方法を行なうには、まず上記の「本発明の蛋白質」を含有する細胞外液もしくは細胞培養上清、またはそれらから自体公知の手法を用いて精製された該蛋白質を適当なバッファー(例えば、pH4〜10(望ましくはpH6〜8)のリン酸バッファー、トリス−塩酸バッファーなどのリガンドとレセプターとの結合を阻害しないバッファー等)に溶解した「本発明の蛋白質」溶液を調製する。該溶液には、非特異的結合を低減させる目的でCHAPS、Tween−80TM(花王−アトラス社)、ジギトニン、デオキシコレートなどの界面活性剤やウシ血清アルブミンやゼラチンなどの各種蛋白質を加えてもよく、さらに、プロテアーゼによるレセプターやリガンドの分解を抑える目的でPMSF、ロイペプチン、E−64(ペプチド研究所製)、ペプスタチンなどのプロテアーゼ阻害剤を添加してもよい。これらのいずれかの溶液を予め「本発明の抗体」を固定化した培養プレートと接触させて溶液中の「本発明の蛋白質」を固相化した後、一定量(5000cpm〜500000cpm)の〔3H〕、〔125I〕、〔14C〕、〔35S〕などで標識した試験化合物を固相と共存させる。非特異的結合量(NSB)を知るために大過剰の未標識の試験化合物を加えた反応チューブも用意する。反応は約0〜50℃、望ましくは約4〜37℃で、約20分〜24時間、望ましくは約30分〜3時間行なう。反応後、ガラス繊維濾紙等で濾過し、適量の同バッファーで洗浄した後、ガラス繊維濾紙に残存する放射活性を液体シンチレーションカウンターあるいはγ−カウンターで計測する。全結合量(B)から非特異的結合量(NSB)を引いたカウント(B−NSB)が0cpmを越える試験化合物を「本発明の蛋白質」またはその塩に対するレセプターとして選択することができる。
【0055】
本発明のレセプター決定方法において、試験化合物を含有する細胞を用いる場合、該細胞をグルタルアルデヒド、ホルマリンなどで固定化してもよい。固定化方法はそれ自体公知の方法に従って行なうことができる。
試験化合物を含有する細胞としては、例えば、試験化合物を発現した宿主細胞が挙げられるが、該宿主細胞としては、大腸菌、枯草菌、酵母、昆虫細胞、動物細胞などが用いられる。
細胞膜画分としては、細胞を破砕した後、それ自体公知の方法で得られる細胞膜が多く含まれる画分のことをいう。細胞の破砕方法としては、Potter−Elvehjem型ホモジナイザーで細胞を押し潰す方法、ワーリングブレンダーやポリトロン(Kinematica社製)による破砕、超音波による破砕、フレンチプレスなどで加圧しながら細胞を細いノズルから噴出させることによる破砕などが挙げられる。細胞膜の分画には、分画遠心分離法や密度勾配遠心分離法などの遠心力による分画法が主として用いられる。例えば、細胞破砕液を低速(500rpm〜3000rpm)で短時間(通常、約1〜10分)遠心し、上清をさらに高速(15000rpm〜30000rpm)で通常30分〜2時間遠心し、得られる沈澱を膜画分とする。該膜画分中には、発現した膜蛋白質と細胞由来のリン脂質や膜蛋白質などの膜成分が多く含まれる。
【0056】
試験化合物を含有する細胞やその膜画分中の試験化合物(膜蛋白質)の量は、1細胞当たり103〜108分子であるのが好ましく、105〜107分子であるのがより好適である。なお、発現量が多いほど膜画分当たりの「本発明の蛋白質」結合活性(比活性)が高くなり、高感度なスクリーニング系の構築が可能になるばかりでなく、同一ロットで大量の試料を測定できるようになる。
【0057】
「本発明の蛋白質」またはその塩に対して特異的親和性を有する化合物(例:レセプター)を決定する上記▲3▼の方法を実施するためには、該蛋白質と該化合物の相互作用を介する細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+遊離、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化または脱リン酸化、c−fosの活性化、pHの低下などを促進する活性または抑制する活性など)を公知の方法または市販の測定用キットを用いて測定することができる。具体的には、まず、試験化合物を細胞膜上に含有する細胞をマルチウェルプレート等にて培養する。「本発明の蛋白質」との結合性を決定するにあたっては、前もって新鮮な培地あるいは細胞に毒性を示さない適当なバッファーに交換し、「本発明の蛋白質」などを添加して一定時間インキュベートした後、細胞を抽出あるいは上清液を回収して、生成した産物をそれぞれの方法に従って定量する。細胞刺激活性の指標とする物質(例えば、アラキドン酸など)の生成が、細胞が含有する分解酵素によって検定困難な場合は、該分解酵素に対する阻害剤を添加してアッセイを行なってもよい。また、cAMP産生抑制などの活性については、フォルスコリンなどで細胞の基礎的産生量を増大させておいた細胞に対する産生抑制作用として検出することができる。
【0058】
「本発明の蛋白質」またはその塩に対して特異的親和性を有する化合物の決定用キットは、本発明の蛋白質もしくはその塩、本発明の部分ペプチドもしくはその塩、「本発明の蛋白質」を分泌する細胞の培養上清などを含有するものである。
本発明のレセプター決定用キットの例としては、次のものが挙げられる。
1.レセプター決定用試薬
▲1▼測定用緩衝液および洗浄用緩衝液
Hanks’ Balanced Salt Solution(ギブコ社製)に、0.05%のウシ血清アルブミン(シグマ社製)を加えたもの。
孔径0.45μmのフィルターで濾過滅菌し、4℃で保存するか、あるいは用時調製しても良い。
▲2▼蛋白質標品
「本発明の蛋白質」を発現させたCHO細胞を、12穴プレートに5×105個/穴で継代し、37℃、5%CO2、95%airで2日間培養したもの(該プレートは該蛋白質に対する抗体でコーティングされている)。
▲3▼標識試験化合物
市販の〔3H〕、〔125I〕、〔14C〕、〔35S〕などで標識した化合物、または適当な方法で標識化したもの。
水溶液の状態のものを4℃あるいは−20℃にて保存し、用時に測定用緩衝液にて1μMに希釈する。水に難溶性を示す試験化合物については、ジメチルホルムアミド、DMSO、メタノール等に溶解する。
▲4▼非標識試験化合物
標識化合物と同じものを100〜1000倍濃い濃度に調製する。
【0059】
2.測定法
▲1▼12穴組織培養用プレートにて培養した「本発明の蛋白質」発現CHO細胞および培養上清を除去後プレートを測定用緩衝液で同様に洗浄した後、490μlの測定用緩衝液を各穴に加える。
▲2▼標識試験化合物を5μl加え、室温にて1時間反応させる。非特異的結合量を知るためには非標識試験化合物を5μl加えておく。
▲3▼反応液を除去し、1mlの洗浄用緩衝液で3回洗浄する。プレートに結合した標識試験化合物を0.2N NaOH−1%SDSで溶解し、4mlの液体シンチレーターA(和光純薬製)と混合する。
▲4▼液体シンチレーションカウンター(ベックマン社製)を用いて放射活性を測定する。
【0060】
(2)「本発明の蛋白質」の機能不全に関連する疾患の予防・治療剤
上記(1)の方法において、「本発明の蛋白質」に対して特異的親和性を有する化合物が明らかになれば、該化合物が有する作用に応じて、▲1▼「本発明の蛋白質等」または▲2▼該蛋白質等をコードするDNAを、「本発明の蛋白質」の機能不全に関連する疾患の予防・治療剤などの医薬として使用することができる。
例えば、生体内において本発明の蛋白質が減少しているためにレセプターの生理作用が期待できない(該蛋白質の欠乏症)患者がいる場合に、▲1▼「本発明の蛋白質」を該患者に投与して該蛋白質の量を補充したり、▲2▼(イ)「本発明の蛋白質等」をコードするDNAを該患者に投与して発現させることによって、あるいは(ロ)対象となる細胞に「本発明の蛋白質等」をコードするDNAを導入して発現させた後に、該細胞を該患者に移植することなどによって、患者の体内における「本発明の蛋白質等」の量を増加させ、レセプターの作用を充分に発揮させることができる。即ち、「本発明の蛋白質等」およびそれらをコードするDNAは、安全で低毒性な、「本発明の蛋白質」の機能不全に関連する疾患の予防・治療剤として有用である。
特に「本発明の蛋白質」は、後腎組織培養の培地に添加することにより、あるいは培養後腎組織で強制発現させることにより、尿管芽の分枝・進展を促進することから、腎機能障害を伴う疾患(例:急性腎不全、慢性腎不全、尿毒症、急性腎炎、腎臓癌、急速進行性腎炎症候群、慢性腎炎、ネフローゼ症候群、慢性腎症、IgA腎症、ループス腎炎、腎硬化症、糖尿病性腎症、アミロイド症など)の予防および/または治療に有用である。また、「本発明の蛋白質」は、腎臓の他、脳、心臓、肝臓、精巣、骨格筋でも発現が認められ、これらの臓器でも臓器形成および細胞増殖因子として作用すると考えられるので、これらの臓器の機能障害を伴う疾患の予防・治療にも有用である。
「本発明の蛋白質等」を上記予防・治療剤として使用する場合は、常套手段に従って製剤化することができる。
一方、「本発明の蛋白質等」をコードするDNA(以下、「本発明のDNA」と略記する場合がある)を上記予防・治療剤として使用する場合は、「本発明のDNA」を単独あるいはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターなどの適当な発現ベクター中に挿入した後、常套手段に従って実施することができる。「本発明のDNA」は、そのままで、あるいは摂取促進のための補助剤とともに、遺伝子銃やハイドロゲルカテーテルのようなカテーテルによって投与できる。
例えば、▲1▼「本発明の蛋白質等」または▲2▼該蛋白質等をコードするDNAは、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤などとして経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤などの注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、▲1▼「本発明の蛋白質等」または▲2▼該蛋白質等をコードするDNAを含有する医薬は、例えば、これらを生理学的に認められる公知の担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な容量が得られるようにするものである。
【0061】
錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えばゼラチン、コーンスターチ、トラガント、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、上記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油などのような天然産出植物油などを溶解または懸濁させるなどの通常の製剤実施に従って処方することができる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)などが用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(例、ポリソルベート80TM、HCO−50)などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられ、溶解補助剤である安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。
【0062】
また、上記予防・治療剤は、例えば、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調整された注射液は通常、適当なアンプルに充填される。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトや哺乳動物(例えば、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
「本発明の蛋白質等」の投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に例えば、腎不全患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、腎不全患者(60kgとして)においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
「本発明のDNA」の投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に例えば、腎不全患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、腎不全患者(60kgとして)においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0063】
(3)「本発明の蛋白質」の過剰発現に関連する疾患の予防・治療剤
「本発明の蛋白質」もしくはその部分ペプチドまたはその塩に対する抗体は、「本発明の蛋白質」の関与するシグナル伝達機能、例えば、該蛋白質を介する細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+遊離、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化または脱リン酸化、c−fosの活性化、pHの低下などを促進する活性または抑制する活性など)を不活性化(すなわち中和)することができる。一方、「本発明の蛋白質」もしくはその部分ペプチドのアンチセンスヌクレオチド(リボザイムやRNAi活性を有する二本鎖オリゴRNAを含む)は、「本発明の蛋白質」をコードする遺伝子の転写、転写産物のプロセッシングおよび/またはmRNAからの翻訳をブロックすることにより、該蛋白質の発現を阻害することができる。従って、▲1▼「本発明の蛋白質等」に対する抗体または▲2▼該蛋白質等のアンチセンスヌクレオチドを、「本発明の蛋白質」の過剰発現に関連する疾患の予防・治療剤などの医薬として使用することができる。
「本発明の蛋白質」の発現をPKC阻害剤等により阻害したり、「本発明のアンチセンスヌクレオチド」を培養後腎組織に作用させたりすると、後腎組織の尿管芽分枝が抑制されることから、「本発明の抗体」および「本発明のアンチセンスヌクレオチド」は、腎形成の異常亢進を伴う疾患(例:腎臓癌、多発性嚢胞腎等)の予防および/または治療に有用である。また、「本発明の蛋白質」は、腎臓の他、脳、心臓、肝臓、精巣、骨格筋でも発現が認められ、これらの臓器でも臓器形成および細胞増殖因子として作用すると考えられるので、「本発明の抗体」および「本発明のアンチセンスヌクレオチド」は、これらの臓器の形成異常亢進を伴う疾患の予防・治療にも有用である。
「本発明の抗体」を上記予防・治療剤として使用する場合は、常套手段に従って製剤化することができる。例えば、「本発明の蛋白質等」を含有する医薬について上述したのと同様の方法により製剤化することができる。
「本発明のアンチセンスヌクレオチド」を上記予防・治療剤として使用する場合は、該アンチセンスヌクレオチドを単独で、あるいはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターなどの適当な発現ベクター中に挿入した後、常套手段に従って製剤化することができる。該アンチセンスヌクレオチドは、そのままで、あるいは摂取促進のための補助剤などの生理学的に認められる担体とともに製剤化し、遺伝子銃やハイドロゲルカテーテルのようなカテーテルによって投与できる。
「本発明の抗体」の投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に例えば、腎臓癌患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、腎臓癌患者(60kgとして)においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
「本発明のアンチセンスヌクレオチド」の投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に例えば、腎臓癌患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、腎臓癌患者(60kgとして)においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0064】
(4)遺伝子診断剤
「本発明のDNA」またはアンチセンスDNAは、プローブとして使用することにより、ヒトまたは哺乳動物(例えば、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)における「本発明の蛋白質」をコードするDNAまたはmRNAの異常(遺伝子異常)を検出することができるので、例えば、該DNAまたはmRNAの損傷、突然変異あるいは発現低下や、該DNAまたはmRNAの増加あるいは発現過多などの遺伝子診断剤として有用である。
「本発明のDNA」またはアンチセンスDNAを用いる上記の遺伝子診断は、例えば、自体公知のノーザンハイブリダイゼーションやPCR−SSCP法(ゲノミックス(Genomics),第5巻,874〜879頁(1989年)、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ユーエスエー(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America),第86巻,2766〜2770頁(1989年))などにより実施することができる。
例えば、ノーザンハイブリダイゼーションにより「本発明の蛋白質」の発現低下が検出された場合は、例えば、該蛋白質の機能不全に関連する疾患に罹患している、もしくは将来罹患する可能性が高いと診断することができる。また逆に、例えば、ノーザンハイブリダイゼーションにより「本発明の蛋白質」の発現過多が検出された場合は、例えば、該蛋白質の機能亢進に関連する疾患に罹患している、もしくは将来罹患する可能性が高いと診断することができる。
上述の通り、「本発明の蛋白質」は腎臓および他の臓器(例:脳、心臓、肝臓、精巣、骨格筋など)形成促進作用を有することから、「本発明のDNA」またはアンチセンスDNAは、これらの臓器形成異常の診断に有用である。
【0065】
(5)「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドの発現量を変化させる化合物のスクリーニング方法
「本発明のDNA」は、プローブとして用いることにより、「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドの発現量を変化させる化合物のスクリーニングに用いることができる。
すなわち本発明は、例えば、(i)非ヒト哺乳動物の▲1▼血液、▲2▼特定の臓器(例:腎臓、脳、心臓、肝臓、精巣、骨格筋など)、▲3▼臓器から単離した組織もしくは細胞のまたは(ii)形質転換体等に含まれる「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドのmRNA量を測定することによる、「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドの発現量を変化させる化合物のスクリーニング方法を提供する。
【0066】
「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドのmRNA量の測定は具体的には以下のようにして行なう。
(i)正常あるいは疾患モデル非ヒト哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど、より具体的には、肥満マウス、糖尿病マウス、腎不全マウス、高血圧ラット、動脈硬化ウサギ、担癌マウスなど)に対して、薬剤(例えば、抗肥満薬、抗糖尿病薬、抗腎不全薬、降圧薬、血管作用薬、抗癌剤など)あるいは物理的ストレス(例えば、浸水ストレス、電気ショック、明暗、低温など)などを与え、一定時間経過した後に、血液、あるいは特定の臓器(例えば、腎臓、脳、心臓、肝臓、精巣、骨格筋など)、または臓器から単離した組織(後腎組織など)あるいは細胞(尿細管上皮細胞など)を得る。
得られた細胞に含まれる「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドのmRNAは、例えば、通常の方法により細胞等からmRNAを抽出し、例えばTaqMan PCRなどの手法を用いることにより定量することができ、自体公知の手段によりノーザンブロットを行なうことにより解析することもできる。
(ii)「本発明の蛋白質」もしくはその部分ペプチドを発現する形質転換体を前述の方法に従い作製し、該形質転換体に含まれる「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドのmRNAを同様にして定量、解析することができる。
【0067】
「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドの発現量を変化させる化合物のスクリーニングは、
(i)正常あるいは疾患モデル非ヒト哺乳動物に対して、薬剤あるいは物理的ストレスなどを与える一定時間前(30分前ないし24時間前、好ましくは30分前ないし12時間前、より好ましくは1時間前ないし6時間前)もしくは一定時間後(30分後ないし3日後、好ましくは1時間後ないし2日後、より好ましくは1時間後ないし24時間後)、または薬剤あるいは物理的ストレスと同時に被検化合物を投与し、投与後一定時間経過後(30分後ないし3日後、好ましくは1時間後ないし2日後、より好ましくは1時間後ないし24時間後)、細胞に含まれる「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドのmRNA量を定量、解析することにより行なうことができ、
(ii)形質転換体を常法に従い培養する際に被検化合物を培地中に混合させ、一定時間培養後(1日後ないし7日後、好ましくは1日後ないし3日後、より好ましくは2日後ないし3日後)、該形質転換体に含まれる「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドのmRNA量を定量、解析することにより行なうことができる。
【0068】
本発明のスクリーニング方法を用いて得られる化合物またはその塩は、「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドの発現量を変化させる作用を有する化合物であり、具体的には、(イ)「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドの発現量を増加させることにより、リガンド−レセプター相互作用を介する細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+遊離、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化または脱リン酸化、c−fosの活性化、pHの低下などを促進する活性または抑制する活性など)を増強させる化合物、(ロ)「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドの発現量を減少させることにより、該細胞刺激活性を減弱させる化合物である。
該化合物としては、ペプチド、蛋白質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物などが挙げられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
該細胞刺激活性を増強させる化合物は、「本発明の蛋白質等」の生理活性を増強するための安全で低毒性な医薬として有用である。
該細胞刺激活性を減弱させる化合物は、「本発明の蛋白質等」の生理活性を減少させるための安全で低毒性な医薬として有用である。
【0069】
本発明のスクリーニング方法を用いて得られる化合物またはその塩を医薬組成物として使用する場合、常套手段に従って実施することができる。例えば、上記した本発明の蛋白質を含有する医薬と同様にして、錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤、無菌性溶液、懸濁液剤などとすることができる。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトや哺乳動物(例えば、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に例えば、腎不全患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、腎不全患者(60kgとして)においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0070】
(6)「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドの発現量を変化させる化合物を含有する各種疾病の予防・治療剤
「本発明の蛋白質」は前述のとおり、腎臓および他の臓器(例:脳、心臓、肝臓、精巣、骨格筋など)形成促進作用を有することから、これらの臓器の形態形成に重要な役割を果たしていると考えられる。従って、「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドの発現量を変化させる化合物は、腎臓および他の臓器(例:脳、心臓、肝臓、精巣、骨格筋など)の形成異常の予防・治療剤として用いることができる。
該化合物を「本発明の蛋白質」の臓器形成異常の予防・治療剤として使用する場合は、常套手段に従って製剤化することができる。
例えば、該化合物は、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤などとして経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤などの注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、該化合物を生理学的に認められる公知の担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な容量が得られるようにするものである。
【0071】
錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えばゼラチン、コーンスターチ、トラガント、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、上記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油などのような天然産出植物油などを溶解または懸濁させるなどの通常の製剤実施に従って処方することができる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)などが用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(例、ポリソルベート80TM、HCO−50)などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられ、溶解補助剤である安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。
【0072】
また、上記予防・治療剤は、例えば、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調整された注射液は通常、適当なアンプルに充填される。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトや哺乳動物(例えば、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に例えば、腎不全患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、腎不全患者(60kgとして)においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0073】
(7)「本発明の蛋白質」に対するレセプターの定量法
「本発明の蛋白質等」はレセプターに対して結合性を有しているので、生体内におけるレセプター濃度を感度良く定量することができる。
本発明の定量法は、例えば、競合法と組み合わせることによって用いることができる。すなわち、被検体を「本発明の蛋白質等」と接触させることによって被検体中のレセプター濃度を測定することができる。具体的には、例えば、以下の▲1▼または▲2▼などに記載の方法あるいはそれに準じる方法に従って用いることができる。
▲1▼入江寛編「ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和49年発行)
▲2▼入江寛編「続ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和54年発行)
【0074】
(8)「本発明の蛋白質」とレセプターとの結合性を変化させる化合物(アゴニスト、アンタゴニストなど)のスクリーニング方法
「本発明の蛋白質等」を用いるか、または組換え型蛋白質等の発現系を構築し、該発現系を用いたアフィニティーアッセイ系を用いることによって、「本発明の蛋白質等」とレセプターの結合性を変化させる化合物(例えば、ペプチド、蛋白質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物など)またはその塩を効率よくスクリーニングすることができる。
このような化合物には、(イ)レセプターを介して細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+遊離、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化または脱リン酸化、c−fosの活性化、pHの低下などを促進する活性または抑制する活性など)を有する化合物(いわゆる、「本発明の蛋白質」のレセプターに対するアゴニスト)、(ロ)該細胞刺激活性を有しない化合物(いわゆる、「本発明の蛋白質」のレセプターに対するアンタゴニスト)、(ハ)「本発明の蛋白質」とレセプターとの結合力を増強する化合物、あるいは(ニ)「本発明の蛋白質」とレセプターとの結合力を減少させる化合物などが含まれる(なお、上記(イ)の化合物は、上記したリガンド決定方法によってスクリーニングすることが好ましい)。
すなわち、本発明は、(i)「本発明の蛋白質」もしくはその部分ペプチドまたはその塩と、レセプターとを接触させた場合と(ii)「本発明の蛋白質」もしくはその部分ペプチドまたはその塩と、レセプターおよび試験化合物とを接触させた場合との比較を行なうことを特徴とするレセプターと「本発明の蛋白質」もしくはその部分ペプチドまたはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
本発明のスクリーニング方法においては、(i)と(ii)の場合における、例えば、該蛋白質等に対するレセプターの結合量、細胞刺激活性などを測定して、比較することを特徴とする。
【0075】
より具体的には、本発明は、
▲1▼標識したレセプターを、(i)「本発明の蛋白質等」、(ii)「本発明の蛋白質等」を含有する細胞外液または細胞培養上清あるいは(iii)「本発明のDNA」を含有する形質転換体を培養することによって得られる「本発明の蛋白質等」を含有する画分[(i)〜(iii)において、通常「本発明の蛋白質等」は、例えば、上記の「本発明の抗体」を固定化した固相(例:細胞培養プレート等)を用いて固相化されている]に接触させた場合と、標識したレセプターおよび試験化合物を上記(i)〜(iii)のいずれかに接触させた場合における、該固相上の「本発明の蛋白質等」に対する標識したレセプターの結合量を測定し、比較することを特徴とするレセプターと「本発明の蛋白質等」との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、
▲2▼レセプターを含有する脂質二重層膜(レセプターを含む合成脂質二重層膜(例:リポソーム)、レセプターを細胞膜上に含有する細胞または該細胞から調製される膜画分など)に、標識した「本発明の蛋白質等」を接触させた場合と、レセプターを含有する脂質二重層膜に、標識した「本発明の蛋白質等」および試験化合物を接触させた場合における、該脂質二重層膜に対する「本発明の蛋白質等」の結合量を測定し、比較するすることを特徴とするレセプターと「本発明の蛋白質等」との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、および
▲3▼レセプターを細胞膜上に含有する細胞を、(i)「本発明の蛋白質等」、(ii)「本発明の蛋白質等」を含有する細胞外液または細胞培養上清、あるいは(iii)「本発明のDNA」を含有する形質転換体を培養することによって得られる「本発明の蛋白質等」を含有する画分に接触させた場合と、レセプターを細胞膜上に含有する細胞を、試験化合物および上記(i)〜(iii)のいずれかに接触させた場合における、レセプターを介した細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+遊離、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化または脱リン酸化、c−fosの活性化、pHの低下などを促進する活性または抑制する活性など)を測定することを特徴とする「本発明の蛋白質」またはその塩に対するレセプターの決定方法を提供する。
【0076】
本発明のスクリーニング方法およびスクリーニング用キットの具体的な態様は、上記の「本発明の蛋白質」と特異的親和性を有する化合物(例:レセプター)の決定方法において詳述したものに準じて、適宜実施することができる。
【0077】
本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる化合物またはその塩は、「本発明の蛋白質等」とそれに対して特異的親和性を有する化合物(例:レセプター)との結合性を変化させる作用を有する化合物であり、具体的には、(イ)リガンド−レセプター相互作用を介して細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+遊離、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化または脱リン酸化、c−fosの活性化、pHの低下などを促進する活性または抑制する活性など)を有する化合物(いわゆる、「本発明の蛋白質」のレセプターに対するアゴニスト)、(ロ)該細胞刺激活性を有しない化合物(いわゆる、「本発明の蛋白質」のレセプターに対するアンタゴニスト)、(ハ)「本発明の蛋白質」とレセプターとの結合力を増強する化合物、あるいは(ニ)「本発明の蛋白質」とレセプターとの結合力を減少させる化合物である。
該化合物としては、ペプチド、蛋白質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物などが挙げられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
「本発明の蛋白質」のレセプターに対するアゴニストは、レセプターに対して「本発明の蛋白質」が有する生理活性と同様の作用を有しているので、該リガンド活性に応じて安全で低毒性な医薬として有用である。
「本発明の蛋白質」のレセプターに対するアンタゴニストは、レセプターに対して「本発明の蛋白質」が有する生理活性を抑制することができるので、該リガンド活性を抑制する安全で低毒性な医薬として有用である。
「本発明の蛋白質」とレセプターとの結合力を増強する化合物は、レセプターに対して「本発明の蛋白質」が有する生理活性を増強するための安全で低毒性な医薬として有用である。
「本発明の蛋白質」とレセプターとの結合力を減少させる化合物は、レセプターに対して「本発明の蛋白質」が有する生理活性を減少させるための安全で低毒性な医薬として有用である。
【0078】
本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる化合物またはその塩を上述の医薬組成物として使用する場合、常套手段に従って実施することができる。例えば、上記した「本発明の蛋白質」を含有する医薬と同様にして、錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤、無菌性溶液、懸濁液剤などとすることができる。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトや哺乳動物(例えば、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に例えば、腎不全患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、腎不全患者(60kgとして)においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0079】
(9)「本発明の蛋白質」とレセプターとの結合性を変化させる化合物(アゴニスト、アンタゴニスト)を含有する各種疾病の予防・治療剤
「本発明の蛋白質」は前述のとおり、腎臓および他の臓器(例:脳、心臓、肝臓、精巣、骨格筋など)形成促進作用を有することから、これらの臓器の形態形成に重要な役割を果たしていると考えられる。従って、上記の化合物は、腎臓および他の臓器(例:脳、心臓、肝臓、精巣、骨格筋など)の形成異常の予防・治療剤として用いることができる。
該化合物を「本発明の蛋白質」の臓器形成異常の予防・治療剤として使用する場合は、常套手段に従って製剤化することができる。
例えば、該化合物は、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤などとして経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤などの注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、該化合物を生理学的に認められる公知の担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な容量が得られるようにするものである。
【0080】
錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えばゼラチン、コーンスターチ、トラガント、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、上記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油などのような天然産出植物油などを溶解または懸濁させるなどの通常の製剤実施に従って処方することができる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)などが用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(例、ポリソルベート80TM、HCO−50)などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられ、溶解補助剤である安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。
【0081】
また、上記予防・治療剤は、例えば、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調整された注射液は通常、適当なアンプルに充填される。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトや哺乳動物(例えば、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に例えば、腎不全患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、腎不全患者(60kgとして)においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0082】
(10)「本発明の蛋白質」もしくはその部分ペプチドまたはその塩の定量
「本発明の抗体」は、「本発明の蛋白質等」を特異的に認識することができるので、被検液中の「本発明の蛋白質等」の定量、特にサンドイッチ免疫測定法による定量などに使用することができる。すなわち、本発明は、例えば、(i)「本発明の抗体」と、被検液および標識化蛋白質等とを競合的に反応させ、該抗体に結合した標識化蛋白質等の割合を測定することを特徴とする被検液中の「本発明の蛋白質等」の定量法、
(ii)被検液と担体上に不溶化した「本発明の抗体」および標識化された「本発明の抗体」とを同時あるいは連続的に反応させたのち、不溶化担体上の標識剤の活性を測定することを特徴とする被検液中の「本発明の蛋白質等」の定量法を提供する。
上記(ii)においては、不溶化抗体と標識化抗体とが互いに「本発明の蛋白質等」との結合を妨害しないような抗原認識部位を有することが好ましい(例えば、一方の抗体が「本発明の蛋白質等」のN端部を認識し、他方の抗体が該蛋白質等のC端部に反応する等)。
【0083】
「本発明の蛋白質等」に対するモノクローナル抗体(以下、本発明のモノクローナル抗体と称する場合がある)を用いて「本発明の蛋白質等」の測定を行なえるほか、組織染色等による検出を行なうこともできる。これらの目的には、抗体分子そのものを用いてもよく、また、抗体分子のF(ab’)2 、Fab’、あるいはFab画分を用いてもよい。「本発明の蛋白質等」に対する抗体を用いる測定法は、特に制限されるべきものではなく、被測定液中の抗原量(例えば、「本発明の蛋白質」量)に対応した抗体、抗原もしくは抗体−抗原複合体の量を化学的または物理的手段により検出し、これを既知量の抗原を含む標準液を用いて作製した標準曲線より算出する測定法であれば、いずれの測定法を用いてもよい。例えば、ネフロメトリー、競合法、イムノメトリック法およびサンドイッチ法が好適に用いられるが、感度、特異性の点で、後述するサンドイッチ法を用いるのが特に好ましい。
標識物質を用いる測定法に用いられる標識剤としては、例えば、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質などが用いられる。放射性同位元素としては、例えば、〔125I〕、〔131I〕、〔3H〕、〔14C〕などが用いられる。上記酵素としては、安定で比活性の大きなものが好ましく、例えば、β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素などが用いられる。蛍光物質としては、例えば、フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネートなどが用いられる。発光物質としては、例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなどが用いられる。さらに、抗体あるいは抗原と標識剤との結合にビオチン−アビジン系を用いることもできる。
【0084】
抗原あるいは抗体の不溶化に当っては、物理吸着を用いてもよく、また通常、蛋白質あるいは酵素等を不溶化、固定化するのに用いられる化学結合を用いる方法でもよい。担体としては、例えば、アガロース、デキストラン、セルロースなどの不溶性多糖類、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、シリコン等の合成樹脂、あるいはガラス等が用いられる。
サンドイッチ法においては不溶化した本発明のモノクローナル抗体に被検液を反応させ(1次反応)、さらに標識化した本発明のモノクローナル抗体を反応させ(2次反応)たのち、不溶化担体上の標識剤の活性を測定することにより被検液中の「本発明の蛋白質」量を定量することができる。1次反応と2次反応は逆の順序に行なっても、また、同時に行なってもよいし時間をずらして行なってもよい。標識化剤および不溶化の方法は上記のそれらに準じることができる。
また、サンドイッチ法による免疫測定法において、固相用抗体あるいは標識用抗体に用いられる抗体は必ずしも1種類である必要はなく、測定感度を向上させる等の目的で2種類以上の抗体の混合物を用いてもよい。
本発明のサンドイッチ法による蛋白質等の測定法においては、1次反応と2次反応に用いられる本発明のモノクローナル抗体は蛋白質等の結合する部位が相異なる抗体が好ましく用いられる。即ち、1次反応および2次反応に用いられる抗体は、例えば、2次反応で用いられる抗体が、「本発明の蛋白質」のC端部を認識する場合、1次反応で用いられる抗体は、好ましくはC端部以外、例えばN端部を認識する抗体が用いられる。
【0085】
本発明のモノクローナル抗体をサンドイッチ法以外の測定システム、例えば、競合法、イムノメトリック法あるいはネフロメトリーなどに用いることができる。競合法では、被検液中の抗原と標識抗原とを抗体に対して競合的に反応させたのち、未反応の標識抗原と(F)と抗体と結合した標識抗原(B)とを分離し(B/F分離)、B,Fいずれかの標識量を測定し、被検液中の抗原量を定量する。本反応法には、抗体として可溶性抗体を用い、B/F分離をポリエチレングリコール、上記抗体に対する第2抗体などを用いる液相法、および、第1抗体として固相化抗体を用いるか、あるいは、第1抗体は可溶性のものを用い第2抗体として固相化抗体を用いる固相化法とが用いられる。
イムノメトリック法では、被検液中の抗原と固相化抗原とを一定量の標識化抗体に対して競合反応させた後固相と液相を分離するか、あるいは、被検液中の抗原と過剰量の標識化抗体とを反応させ、次に固相化抗原を加え未反応の標識化抗体を固相に結合させたのち、固相と液相を分離する。次に、いずれかの相の標識量を測定し被検液中の抗原量を定量する。
また、ネフロメトリーでは、ゲル内あるいは溶液中で抗原抗体反応の結果、生じた不溶性の沈降物の量を測定する。被検液中の抗原量が僅かであり、少量の沈降物しか得られない場合にもレーザーの散乱を利用するレーザーネフロメトリーなどが好適に用いられる。
【0086】
これら個々の免疫学的測定法を本発明の測定方法に適用するにあたっては、特別の条件、操作等の設定は必要とされない。それぞれの方法における通常の条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えて「本発明の蛋白質」またはその塩の測定系を構築すればよい。これらの一般的な技術手段の詳細については、総説、成書などを参照することができる〔例えば、入江 寛編「ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和49年発行)、入江 寛編「続ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和54年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(医学書院、昭和53年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第2版)(医学書院、昭和57年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第3版)(医学書院、昭和62年発行)、「メソッズ・イン・エンジモノジー(Methods in ENZYMOLOGY)」 Vol.70 (Immunochemical Techniques (Part A))、同書 Vol. 73 (Immunochemical Techniques (Part B))、同書 Vol. 74 (Immunochemical Techniques (Part C))、同書 Vol. 84 (Immunochemical Techniques (Part D: Selected Immunoassays))、同書 Vol. 92 (Immunochemical Techniques (Part E: Monoclonal Antibodiesand General Immunoassay Methods))、同書 Vol. 121 (Immunochemical Techniques (Part I: Hybridoma Technology and Monoclonal Antibodies))(以上、アカデミックプレス社発行)など参照〕。
以上のように、「本発明の抗体」を用いることによって、「本発明の蛋白質」またはその塩を感度良く定量することができる。
さらに、「本発明の抗体」を用いて、生体内での「本発明の蛋白質」またはその塩を定量することによって、「本発明の蛋白質」の機能不全もしくは亢進に関連する各種疾患の診断をすることができる。
また、「本発明の抗体」は、体液や組織などの被検体中に存在する「本発明の蛋白質等」を特異的に検出するために使用することができる。また、「本発明の蛋白質等」を精製するために使用する抗体カラムの作製、精製時の各分画中の「本発明の蛋白質等」の検出、被検細胞内における「本発明の蛋白質」の挙動の分析などのために使用することができる。
【0087】
(11)細胞外における「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドの量を変化させる化合物のスクリーニング方法
「本発明の抗体」は、「本発明の蛋白質」もしくはその部分ペプチドまたはその塩を特異的に認識することができるので、細胞外における「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドの量を変化させる化合物のスクリーニングに用いることができる。
すなわち本発明は、例えば、
(i)非ヒト哺乳動物の血漿、尿、腎臓その他の臓器(例:脳、心臓、肝臓、精巣、骨格筋など)の間質液等の細胞外液を分離し、それに含まれる「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドを定量することによる、細胞外における「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドの量を変化させる化合物のスクリーニング方法、
(ii)「本発明の蛋白質」もしくはその部分ペプチドを発現する形質転換体の培養上清を分離し、該培養上清に含まれる「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドを定量することによる、細胞外における「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドの量を変化させる化合物のスクリーニング方法を提供する。
【0088】
細胞外液に含まれる「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドの定量は具体的には以下のようにして行なう。
(i)正常あるいは疾患モデル非ヒト哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど、より具体的には、肥満マウス、糖尿病マウス、腎不全マウス、高血圧ラット、動脈硬化ウサギ、担癌マウスなど)に対して、薬剤(例えば、抗肥満薬、抗糖尿病薬、抗腎不全薬、降圧剤、血管作用薬、抗癌剤など)あるいは物理的ストレス(例えば、浸水ストレス、電気ショック、明暗、低温など)などを与え、一定時間経過した後に、血液、あるいは血漿、尿、特定の臓器(例えば、腎臓、脳、心臓、肝臓、精巣、骨格筋など)の間質液等の細胞外液を得る。得られた細胞外液は、必要に応じてさらに遠心分離や濾過、カラム分画などの手法を用いて分画することもできる。
【0089】
細胞外液に含まれる「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドは、例えば、「本発明の抗体」を用いたサンドイッチ免疫測定法、ウエスタンブロット解析などにより定量することができる。
かかるサンドイッチ免疫測定法は前述の方法と同様にして行なうことができ、ウエスタンブロットは自体公知の手段により行なうことができる。
【0090】
(ii)「本発明の蛋白質」もしくはその部分ペプチドを発現する形質転換体を前述の方法に従い作製し、細胞培養上清に含まれる「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドを定量することができる。
【0091】
細胞外液における「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドの量を変化させる化合物のスクリーニングは、
(i)正常あるいは疾患モデル非ヒト哺乳動物に対して、薬剤あるいは物理的ストレスなどを与える一定時間前(30分前ないし24時間前、好ましくは30分前ないし12時間前、より好ましくは1時間前ないし6時間前)もしくは一定時間後(30分後ないし3日後、好ましくは1時間後ないし2日後、より好ましくは1時間後ないし24時間後)、または薬剤あるいは物理的ストレスと同時に被検化合物を投与し、投与後一定時間経過後(30分後ないし3日後、好ましくは1時間後ないし2日後、より好ましくは1時間後ないし24時間後)、細胞外液における「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドの量を定量することにより行なうことができ、
(ii)形質転換体を常法に従い培養する際に被検化合物を培地中に混合させ、一定時間培養後(1日後ないし7日後、好ましくは1日後ないし3日後、より好ましくは2日後ないし3日後)、細胞培養上清における「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドの量を定量することにより行なうことができる。
【0092】
本発明のスクリーニング方法を用いて得られる化合物またはその塩は、細胞外における「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドの量を変化させる作用を有する化合物であり、具体的には、(イ)細胞外における「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドの量を増加させることにより、リガンド−レセプター相互作用を介する細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+遊離、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化または脱リン酸化、c−fosの活性化、pHの低下などを促進する活性または抑制する活性など)を増強させる化合物、(ロ)細胞外における「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドの量を減少させることにより、該細胞刺激活性を減弱させる化合物である。
該化合物としては、ペプチド、蛋白質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物などが挙げられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
該細胞刺激活性を増強させる化合物は、「本発明の蛋白質等」の生理活性を増強するための安全で低毒性な医薬として有用である。
該細胞刺激活性を減弱させる化合物は、「本発明の蛋白質等」の生理活性を減少させるための安全で低毒性な医薬として有用である。
【0093】
本発明のスクリーニング方法を用いて得られる化合物またはその塩を医薬組成物として使用する場合、常套手段に従って実施することができる。例えば、上記した本発明のレセプター蛋白質を含有する医薬と同様にして、錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤、無菌性溶液、懸濁液剤などとすることができる。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトや哺乳動物(例えば、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に例えば、腎不全患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、腎不全患者(60kgとして)においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0094】
(12)細胞外における「本発明の蛋白質等」またはその部分ペプチドの量を変化させる化合物を含有する各種疾病の予防・治療剤
「本発明の蛋白質」は前述のとおり、腎臓および他の臓器(例:脳、心臓、肝臓、精巣、骨格筋など)形成促進作用を有することから、これらの臓器の形態形成に重要な役割を果たしていると考えられる。従って、上記の化合物は、腎臓および他の臓器(例:脳、心臓、肝臓、精巣、骨格筋など)の形成異常の予防・治療剤として用いることができる。
該化合物を「本発明の蛋白質」の臓器形成異常の予防・治療剤として使用する場合は、常套手段に従って製剤化することができる。
例えば、該化合物は、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤などとして経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤などの注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、該化合物を生理学的に認められる公知の担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な容量が得られるようにするものである。
【0095】
錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えばゼラチン、コーンスターチ、トラガント、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、上記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油などのような天然産出植物油などを溶解または懸濁させるなどの通常の製剤実施に従って処方することができる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)などが用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(例、ポリソルベート80TM、HCO−50)などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられ、溶解補助剤である安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。
【0096】
また、上記予防・治療剤は、例えば、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調整された注射液は通常、適当なアンプルに充填される。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトや哺乳動物(例えば、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に例えば、腎不全患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、腎不全患者(60kgとして)においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0097】
(13)「本発明の蛋白質」をコードするDNAを有する非ヒト動物の作製
本発明は、外来性の「本発明の蛋白質」をコードするDNA(以下、「本発明の外来性DNA」と略記する)またはその変異DNA(「本発明の外来性変異DNA」と略記する場合がある)を有する非ヒト哺乳動物を提供する。
すなわち、本発明は、
〔1〕「本発明の外来性DNA」またはその変異DNAを有する非ヒト哺乳動物、
〔2〕非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である第〔1〕記載の動物、
〔3〕ゲッ歯動物がマウスまたはラットである第〔2〕記載の動物、および
〔4〕「本発明の外来性DNA」またはその変異DNAを含有し、哺乳動物において発現しうる組換えベクターを提供するものである。
「本発明の外来性DNA」またはその変異DNAを有する非ヒト哺乳動物(以下、「本発明のDNA転移動物」と略記する)は、未受精卵、受精卵、精子およびその始原細胞を含む胚芽細胞などに対して、好ましくは、非ヒト哺乳動物の発生における胚発生の段階(さらに好ましくは、単細胞または受精卵細胞の段階でかつ一般に8細胞期以前)に、リン酸カルシウム法、電気パルス法、リポフェクション法、凝集法、マイクロインジェクション法、パーティクルガン法、DEAE−デキストラン法などにより目的とするDNAを転移することによって作出することができる。また、該DNA転移方法により、体細胞、生体の臓器、組織細胞などに目的とする本発明の外来性DNAを転移し、細胞培養、組織培養などに利用することもでき、さらに、これら細胞を上述の胚芽細胞と自体公知の細胞融合法により融合させることにより「本発明のDNA転移動物」を作出することもできる。
非ヒト哺乳動物としては、例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、マウス、ラットなどが用いられる。なかでも、病体動物モデル系の作成の面から個体発生および生物サイクルが比較的短く、また、繁殖が容易なゲッ歯動物、とりわけマウス(例えば、純系として、C57BL/6系統,DBA2系統など、交雑系として、B6C3F1系統,BDF1系統,B6D2F1系統,BALB/c系統,ICR系統など)またはラット(例えば、Wistar,SDなど)などが好ましい。
哺乳動物において発現しうる組換えベクターにおける「哺乳動物」としては、上記の非ヒト哺乳動物の他にヒトなどがあげられる。
【0098】
「本発明の外来性DNA」とは、非ヒト哺乳動物が本来有している「本発明のDNA」ではなく、いったん哺乳動物から単離・抽出された「本発明のDNA」をいう。
「本発明の変異DNA」としては、元の「本発明のDNA」の塩基配列に変異(例えば、突然変異など)が生じたもの、具体的には、塩基の付加、欠失、他の塩基への置換などが生じたDNAなどが用いられ、また、異常DNAも含まれる。
該異常DNAとしては、異常な本発明の蛋白質等を発現させるDNAを意味し、例えば、正常な「本発明の蛋白質」の機能を抑制する蛋白質等を発現させるDNAなどが用いられる。
「本発明の外来性DNA」は、対象とする動物と同種あるいは異種のどちらの哺乳動物由来のものであってもよい。「本発明のDNA」を対象動物に転移させるにあたっては、該DNAを動物細胞で発現させうるプロモーターの下流に結合したDNAコンストラクトとして用いるのが一般に有利である。例えば、本発明のヒトDNAを転移させる場合、これと相同性が高い「本発明のDNA」を有する各種哺乳動物(例えば、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウスなど)由来のDNAを発現させうる各種プロモーターの下流に、本発明のヒトDNAを結合したDNAコンストラクト(例、ベクターなど)を対象哺乳動物の受精卵、例えば、マウス受精卵へマイクロインジェクションすることによって「本発明のDNA」を高発現するDNA転移哺乳動物を作出することができる。
【0099】
「本発明のDNA」を担持させる発現ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド、枯草菌由来のプラスミド、酵母由来のプラスミド、λファージなどのバクテリオファージ、モロニー白血病ウィルスなどのレトロウィルス、ワクシニアウィルスまたはバキュロウィルスなどの動物ウイルスなどが用いられる。なかでも、大腸菌由来のプラスミド、枯草菌由来のプラスミドまたは酵母由来のプラスミドなどが好ましく用いられる。
上記のDNA発現調節を行なうプロモーターとしては、例えば、▲1▼ウイルス(例、シミアンウイルス、サイトメガロウイルス、モロニーマウス白血病ウイルス、JCウイルス、乳癌ウイルス、ポリオウイルスなど)に由来するDNAのプロモーター、▲2▼各種哺乳動物(ヒト、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウスなど)由来のプロモーター、例えば、アルブミン、インスリンII、ウロプラキンII、エラスターゼ、エリスロポエチン、エンドセリン、筋クレアチンキナーゼ、グリア線維性酸性蛋白質、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、血小板由来成長因子β、ケラチンK1,K10およびK14、コラーゲンI型およびII型、サイクリックAMP依存蛋白質キナーゼβIサブユニット、ジストロフィン、酒石酸抵抗性アルカリフォスファターゼ、心房ナトリウム利尿性因子、内皮レセプターチロシンキナーゼ(一般にTie2と略される)、ナトリウムカリウムアデノシン3リン酸化酵素(Na,K−ATPase)、ニューロフィラメント軽鎖、メタロチオネインIおよびIIA、メタロプロティナーゼ1組織インヒビター、MHCクラスI抗原(H−2L)、H−ras、レニン、ドーパミンβ−水酸化酵素、甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)、ペプチド鎖延長因子1α(EF−1α)、βアクチン、αおよびβミオシン重鎖、ミオシン軽鎖1および2、ミエリン基礎蛋白質、チログロブリン、Thy−1、免疫グロブリン、H鎖可変部(VNP)、血清アミロイドPコンポーネント、ミオグロビン、トロポニンC、平滑筋αアクチン、プレプロエンケファリンA、バソプレシンなどのプロモーターなどが用いられる。なかでも、全身で高発現することが可能なサイトメガロウイルスプロモーター、ヒトペプチド鎖延長因子1α(EF−1α)のプロモーター、ヒトおよびニワトリβアクチンプロモーターなどが好適である。
上記ベクターは、DNA転移哺乳動物において目的とするメッセンジャーRNAの転写を終結する配列(一般にターミネターと呼ばれる)を有していることが好ましく、例えば、ウイルス由来および各種哺乳動物由来の各DNAの配列を用いることができ、好ましくは、シミアンウイルスのSV40ターミネターなどが用いられる。
【0100】
その他、目的とする外来性DNAをさらに高発現させる目的で各DNAのスプライシングシグナル、エンハンサー領域、真核DNAのイントロンの一部などをプロモーター領域の5’上流、プロモーター領域と翻訳領域間あるいは翻訳領域の3’下流 に連結することも目的により可能である。
正常な「本発明の蛋白質等」の翻訳領域は、ヒトまたは各種哺乳動物(例えば、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウスなど)由来の肝臓、腎臓、甲状腺細胞、線維芽細胞由来DNAおよび市販の各種ゲノムDNAライブラリーよりゲノムDNAの全てあるいは一部として、または肝臓、腎臓、甲状腺細胞、線維芽細胞由来RNAより公知の方法により調製された相補DNAを原料として取得することが出来る。また、外来性の異常DNAは、上記の細胞または組織より得られた正常な本発明の蛋白質等の翻訳領域を点突然変異誘発法により変異させた翻訳領域を作製することによって得ることができる。
該翻訳領域は転移動物において発現しうるDNAコンストラクトとして、前記のプロモーターの下流(および所望により転写終結部位の上流)に連結させる通常のDNA工学的手法により作製することができる。
受精卵細胞段階における「本発明の外来性DNA」の転移は、対象哺乳動物の胚芽細胞および体細胞のすべてに存在するように確保される。DNA転移後の作出動物の胚芽細胞において、「本発明の外来性DNA」が存在することは、作出動物の後代がすべて、その胚芽細胞および体細胞のすべてに「本発明の外来性DNA」を保持することを意味する。「本発明の外来性DNA」を受け継いだこの種の動物の子孫はその胚芽細胞および体細胞のすべてに「本発明の外来性DNA」を有する。
本発明の外来性正常DNAを転移させた非ヒト哺乳動物は、交配により外来性DNAを安定に保持することを確認して、該DNA保有動物として通常の飼育環境で継代飼育することが出来る。
受精卵細胞段階における「本発明の外来性DNA」の転移は、対象哺乳動物の胚芽細胞および体細胞の全てに過剰に存在するように確保される。DNA転移後の作出動物の胚芽細胞において本発明の外来性DNAが過剰に存在することは、作出動物の子孫が全てその胚芽細胞および体細胞の全てに「本発明の外来性DNA」を過剰に有することを意味する。「本発明の外来性DNA」を受け継いだこの種の動物の子孫はその胚芽細胞および体細胞の全てに「本発明の外来性DNA」を過剰に有する。
導入DNAを相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得し、この雌雄の動物を交配することによりすべての子孫が該DNAを過剰に有するように繁殖継代することができる。
【0101】
本発明の正常DNAを有する非ヒト哺乳動物は、本発明の正常DNAが高発現させられており、内在性の正常DNAの機能を増強することにより最終的に本発明の蛋白質の機能亢進症を発症することがあり、その病態モデル動物として利用することができる。例えば、本発明の正常DNA転移動物を用いて、本発明の蛋白質の機能亢進症や、該蛋白質が関連する疾患の病態機序の解明およびこれらの疾患の治療方法の検討を行なうことが可能である。
また、本発明の外来性正常DNAを転移させた哺乳動物は、遊離した本発明の蛋白質の増加症状を有することから、該蛋白質に関連する疾患に対する治療薬のスクリーニング試験にも利用可能である。
一方、本発明の外来性異常DNAを有する非ヒト哺乳動物は、交配により外来性DNAを安定に保持することを確認して該DNA保有動物として通常の飼育環境で継代飼育することが出来る。さらに、目的とする外来DNAを前述のプラスミドに組み込んで原科として用いることができる。プロモーターとのDNAコンストラク卜は、通常のDNA工学的手法によって作製することができる。受精卵細胞段階における本発明の異常DNAの転移は、対象哺乳動物の胚芽細胞および体細胞の全てに存在するように確保される。DNA転移後の作出動物の胚芽細胞において本発明の異常DNAが存在することは、作出動物の子孫が全てその胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の異常DNAを有することを意味する。「本発明の外来性DNA」を受け継いだこの種の動物の子孫は、その胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の異常DNAを有する。導入DNAを相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得し、この雌雄の動物を交配することによりすべての子孫が該DNAを有するように繁殖継代することができる。
【0102】
本発明の異常DNAを有する非ヒト哺乳動物は、本発明の異常DNAが高発現させられており、内在性の正常DNAの機能を阻害することにより最終的に「本発明の蛋白質」の機能不活性型不応症となることがあり、その病態モデル動物として利用することができる。例えば、本発明の異常DNA転移動物を用いて、「本発明の蛋白質」の機能不活性型不応症の病態機序の解明およびこの疾患を治療方法の検討を行なうことが可能である。
また、具体的な利用可能性としては、本発明の異常DNA高発現動物は、「本発明の蛋白質」の機能不活性型不応症における本発明の異常蛋白質による正常蛋白質の機能阻害(dominant negative作用)を解明するモデルとなる。
また、本発明の外来異常DNAを転移させた哺乳動物は、遊離した本発明の異常蛋白質の増加症状を有することから、「本発明の蛋白質」の機能不活性型不応症に対する治療薬スクリーニング試験にも利用可能である。
また、上記2種類の「本発明のDNA転移動物」のその他の利用可能性として、例えば、
▲1▼組織培養のための細胞源としての使用、
▲2▼「本発明のDNA転移動物」の組織中のDNAもしくはRNAを直接分析するか、またはDNAにより発現された蛋白質を分析することによる、「本発明の蛋白質」により特異的に発現あるいは活性化する蛋白質等との関連性についての解析、
▲3▼DNAを有する組織の細胞を標準組織培養技術により培養し、これらを使用しての、一般に培養困難な組織からの細胞の機能の研究、
▲4▼上記▲3▼記載の細胞を用いることによる細胞の機能を高めるような薬剤のスクリーニング、および
▲5▼本発明の変異蛋白質の単離精製およびその抗体作製などが考えられる。
さらに、「本発明のDNA転移動物」を用いて、「本発明の蛋白質」の機能不活性型不応症などを含む、該蛋白質に関連する疾患の臨床症状を調べることができ、また、「本発明の蛋白質」に関連する疾患モデルの各臓器におけるより詳細な病理学的所見が得られ、新しい治療方法の開発、さらには、該疾患による二次的疾患の研究および治療に貢献することができる。
また、「本発明のDNA転移動物」から各臓器を取り出し、細切後、トリプシンなどの蛋白質分解酵素により、遊離したDNA転移細胞の取得、その培養またはその培養細胞の系統化を行なうことが可能である。さらに、「本発明の蛋白質」産生細胞の特定化、アポトーシス、分化あるいは増殖との関連性、またはそれらにおけるシグナル伝達機構を調べ、それらの異常を調べることなどができ、「本発明の蛋白質」およびその作用解明のための有効な研究材料となる。
さらに、「本発明のDNA転移動物」を用いて、「本発明の蛋白質」の機能不活性型不応症を含む、該蛋白質に関連する疾患の治療薬の開発を行なうために、上述の検査法および定量法などを用いて、有効で迅速な該疾患治療薬のスクリーニング法を提供することが可能となる。また、「本発明のDNA転移動物」または「本発明の外来性DNA」発現ベクターを用いて、「本発明の蛋白質」が関連する疾患のDNA治療法を検討、開発することが可能である。
【0103】
(14)「本発明の蛋白質」をコードする遺伝子が不活性化されたノックアウト非ヒト動物の作製
本発明は、「本発明のDNA」が不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞および本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物を提供する。
すなわち、本発明は、
〔1〕「本発明のDNA」が不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞、
〔2〕該DNAがレポーター遺伝子(例、大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子)を導入することにより不活性化された第〔1〕項記載の胚幹細胞、
〔3〕ネオマイシン耐性である第〔1〕項記載の胚幹細胞、
〔4〕非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である第〔1〕項記載の胚幹細胞、
〔5〕ゲッ歯動物がマウスである第〔4〕項記載の胚幹細胞、
〔6〕「本発明のDNA」が不活性化された該DNA発現不全非ヒト哺乳動物、
〔7〕該DNAがレポーター遺伝子(例、大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子)を導入することにより不活性化され、該レポーター遺伝子が「本発明のDNA」に対するプロモーターの制御下で発現しうる第〔6〕項記載の非ヒト哺乳動物、
〔8〕非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である第〔6〕項記載の非ヒト哺乳動物、
〔9〕ゲッ歯動物がマウスである第〔8〕項記載の非ヒト哺乳動物、および
〔10〕第〔7〕項記載の動物に、試験化合物を投与し、レポーター遺伝子の発現を検出することを特徴とする「本発明のDNA」に対するプロモーター活性を促進または阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
「本発明のDNA」が不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞とは、該非ヒト哺乳動物が有する「本発明のDNA」に人為的に変異を加えることにより、DNAの発現能を抑制するか、もしくは該DNAがコードしている「本発明の蛋白質」の活性を実質的に喪失させることにより、DNAが実質的に「本発明の蛋白質」の発現能を有さない(以下、本発明のノックアウトDNAと称することがある)非ヒト哺乳動物の胚幹細胞(以下、ES細胞と略記する)をいう。
非ヒト哺乳動物としては、前記と同様のものが用いられる。
「本発明のDNA」に人為的に変異を加える方法としては、例えば、遺伝子工学的手法により該DNA配列の一部又は全部の削除、他DNAを挿入または置換させることによって行なうことができる。これらの変異により、例えば、コドンの読み取り枠をずらしたり、プロモーターあるいはエキソンの機能を破壊することにより本発明のノックアウトDNAを作製すればよい。
【0104】
「本発明のDNA」が不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞(以下、「本発明のDNA不活性化ES細胞」または「本発明のノックアウトES細胞」と略記する)の具体例としては、例えば、目的とする非ヒト哺乳動物が有する「本発明のDNA」を単離し、そのエキソン部分にネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子を代表とする薬剤耐性遺伝子、あるいはlacZ(β−ガラクトシダーゼ遺伝子)、cat(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子)を代表とするレポーター遺伝子等を挿入することによりエキソンの機能を破壊するか、あるいはエキソン間のイントロン部分に遺伝子の転写を終結させるDNA配列(例えば、poly A付加シグナルなど)を挿入し、完全なメッセンジャーRNAを合成できなくすることによって、結果的に遺伝子を破壊するように構築したDNA配列を有するDNA鎖(以下、ターゲッティングベクターと略記する)を、例えば相同組換え法により該動物の染色体に導入し、得られたES細胞について「本発明のDNA」上あるいはその近傍のDNA配列をプローブとしたサザンハイブリダイゼーション解析あるいはターゲッティングベクター上のDNA配列とターゲッティングベクター作製に使用した「本発明のDNA」以外の近傍領域のDNA配列をプライマーとしたPCR法により解析し、本発明のノックアウトES細胞を選別することにより得ることができる。
また、相同組換え法等により「本発明のDNA」を不活化させる元のES細胞としては、例えば、前述のような既に樹立されたものを用いてもよく、また公知のEvansとKaufmanの方法に準じて新しく樹立したものでもよい。例えば、マウスのES細胞の場合、現在、一般的には129系のES細胞が使用されているが、免疫学的背景がはっきりしていないので、これに代わる純系で免疫学的に遺伝的背景が明らかなES細胞を取得するなどの目的で例えば、C57BL/6マウスやC57BL/6の採卵数の少なさをDBA/2との交雑により改善したBDF1マウス(C57BL/6とDBA/2とのF1)を用いて樹立したものなども良好に用いうる。BDF1マウスは、採卵数が多く、かつ、卵が丈夫であるという利点に加えて、C57BL/6マウスを背景に持つので、これを用いて得られたES細胞は病態モデルマウスを作出したとき、C57BL/6マウスとバッククロスすることでその遺伝的背景をC57BL/6マウスに代えることが可能である点で有利に用い得る。
また、ES細胞を樹立する場合、一般には受精後3.5日目の胚盤胞を使用するが、これ以外に8細胞期胚を採卵し胚盤胞まで培養して用いることにより効率よく多数の初期胚を取得することができる。
また、雌雄いずれのES細胞を用いてもよいが、通常雄のES細胞の方が生殖系列キメラを作出するのに都合が良い。また、煩雑な培養の手間を削減するためにもできるだけ早く雌雄の判別を行なうことが望ましい。
【0105】
ES細胞の雌雄の判定方法としては、例えば、PCR法によりY染色体上の性決定領域の遺伝子を増幅、検出する方法が、その1例としてあげることができる。この方法を使用すれば、従来、核型分析をするのに約106個の細胞数を要していたのに対して、1コロニー程度のES細胞数(約50個)で済むので、培養初期におけるES細胞の第一次セレクションを雌雄の判別で行なうことが可能であり、早期に雄細胞の選定を可能にしたことにより培養初期の手間は大幅に削減できる。
また、第二次セレクションとしては、例えば、G−バンディング法による染色体数の確認等により行うことができる。得られるES細胞の染色体数は正常数の100%が望ましいが、樹立の際の物理的操作等の関係上困難な場合は、ES細胞の遺伝子をノックアウトした後、正常細胞(例えば、マウスでは染色体数が2n=40である細胞)に再びクローニングすることが望ましい。
このようにして得られた胚幹細胞株は、通常その増殖性は大変良いが、個体発生できる能力を失いやすいので、注意深く継代培養することが必要である。例えば、STO繊維芽細胞のような適当なフィーダー細胞上でLIF(1−10000U/ml)存在下に炭酸ガス培養器内(好ましくは、5%炭酸ガス、95%空気または5%酸素、5%炭酸ガス、90%空気)で約37℃で培養するなどの方法で培養し、継代時には、例えば、トリプシン/EDTA溶液(通常0.001−0.5%トリプシン/0.1−5mM EDTA、好ましくは約0.1%トリプシン/1mM EDTA)処理により単細胞化し、新たに用意したフィーダー細胞上に播種する方法などがとられる。このような継代は、通常1−3日毎に行なうが、この際に細胞の観察を行い、形態的に異常な細胞が見受けられた場合はその培養細胞は放棄することが望まれる。
ES細胞は、適当な条件により、高密度に至るまで単層培養するか、または細胞集塊を形成するまで浮遊培養することにより、頭頂筋、内臓筋、心筋などの種々のタイプの細胞に分化させることが可能であり〔M. J. Evans及びM. H. Kaufman, ネイチャー(Nature)第292巻、154頁、1981年;G. R. Martin,プロシーディングス・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.)第78巻、7634頁、1981年;T. C. Doetschman ら、ジャーナル・オブ・エンブリオロジー・アンド・エクスペリメンタル・モルフォロジー(J. Embryol. Exp. Morphol.)、第87巻、27頁、1985年〕、本発明のES細胞を分化させて得られる本発明のDNA発現不全細胞は、インビトロにおける「本発明の蛋白質」または該蛋白質の細胞生物学的検討において有用である。
【0106】
本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、該動物のmRNA量を公知方法を用いて測定して間接的にその発現量を比較することにより、正常動物と区別することが可能である。
該非ヒト哺乳動物としては、前記と同様のものが用いられる。
本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、例えば、前述のようにして作製したターゲッティングベクターをマウス胚幹細胞またはマウス卵細胞に導入し、導入されたターゲッティングベクター中の「本発明のDNA」が不活性化されたDNA配列が遺伝子相同組換えにより、マウス胚幹細胞またはマウス卵細胞の染色体上の本発明のDNAと入れ換わる相同組換えをさせることにより、「本発明のDNA」をノックアウトさせることができる。哺乳動物における組換えの多くは非相同的であるため、相同組換えを起こした細胞をスクリーニングする手段として、例えば、「本発明のDNA」の内部にネオマイシン耐性遺伝子などの薬剤耐性遺伝子を挿入するとともに、「本発明のDNA」の近傍にチミジンキナーゼ(tk)遺伝子を含むターゲッティングベクターを構築して胚幹細胞または卵細胞に導入し、挿入された薬剤耐性遺伝子に対応する薬剤(例えば、ネオマイシン耐性遺伝子であればG418等)およびガンシクロビル存在下で生存する細胞を選択する方法が挙げられる。即ち、相同組換えにより本発明の挿入変異DNAが染色体上に組み込まれた場合、tk遺伝子は排除されるのでガンシクロビル耐性であるが、非相同組換えで組み込まれた場合はtk遺伝子も同時に組み込まれるためガンシクロビル感受性となる。また、tk遺伝子の代わりにジフテリア毒素遺伝子などを用いれば、ランダム挿入された細胞は該毒素の産生により死滅するので、単一の薬剤での選択が可能となる。
「本発明のDNA」がノックアウトされた細胞の最終的な確認は、「本発明のDNA」上またはその近傍のDNA配列をプローブとしたサザンハイブリダイゼーション解析またはターゲッティングベクター上のDNA配列と、ターゲッティングベクターに使用したマウス由来の「本発明のDNA」以外の近傍領域のDNA配列とをプライマーとしたPCR法による解析を用いて行なうことができる。
非ヒト哺乳動物胚幹細胞を用いた場合は、遺伝子相同組換えにより、「本発明のDNA」が不活性化された細胞株をクローニングし、その細胞を適当な時期、例えば、8細胞期の非ヒト哺乳動物胚または胚盤胞に注入し、作製したキメラ胚を偽妊娠させた該非ヒト哺乳動物の子宮に移植する。作出された動物は正常な「本発明のDNA」座をもつ細胞と人為的に変異した「本発明のDNA」座をもつ細胞との両者から構成されるキメラ動物である。
該キメラ動物の生殖細胞の一部が変異した「本発明のDNA」座をもつ場合、このようなキメラ個体と正常個体を交配することにより得られた個体群より、全ての組織が人為的に変異を加えた「本発明のDNA」座をもつ細胞で構成された個体を、例えば、コートカラーの判定等により選別することにより得られる。このようにして得られた個体は、通常ヘテロ発現不全個体であるので、当該ヘテロ発現不全個体同志を交配し、それらの産仔から「本発明の蛋白質」のホモ発現不全個体を得ることができる。
【0107】
卵細胞を使用する場合は、例えば、卵細胞核内にマイクロインジェクション法でDNA溶液を注入することによりターゲッティングベクターを染色体内に導入したトランスジェニック非ヒト哺乳動物を得ることができ、これらのトランスジェニック非ヒト哺乳動物から、遺伝子相同組換えにより「本発明のDNA」座に変異のあるものを選択することにより得られる。
このようにして「本発明のDNA」がノックアウトされている個体は、交配により得られた動物個体も該DNAがノックアウトされていることを確認して通常の飼育環境で飼育継代を行なうことができる。
さらに、生殖系列の取得および保持についても常法に従えばよい。すなわち、該不活化DNAの保有する雌雄の動物を交配することにより、該不活化DNAを相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得しうる。得られたホモザイゴート動物は、母親動物に対して、正常個体1,ホモザイゴート複数になるような状態で飼育することにより効率的に得ることができる。ヘテロザイゴート動物の雌雄を交配することにより、該不活化DNAを有するホモザイゴートおよびヘテロザイゴート動物を繁殖継代する。
「本発明のDNA」が不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞は、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物を作出する上で、非常に有用である。
また、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、「本発明の蛋白質」により誘導され得る種々の生物活性を欠失するため、該蛋白質の生物活性の不活性化を原因とする疾病のモデルとなり得るので、これらの疾病の原因究明及び治療法の検討に有用である。
【0108】
(14a)「本発明のDNA」の欠損や損傷などに起因する疾病に対して治療・予防効果を有する化合物のスクリーニング方法
本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、「本発明のDNA」の欠損や損傷などに起因する疾病に対して治療・予防効果を有する化合物のスクリーニングに用いることができる。
すなわち、本発明は、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物に試験化合物を投与し、該動物の変化を観察・測定することを特徴とする、「本発明のDNA」の欠損や損傷などに起因する疾病に対して治療・予防効果を有する化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
該スクリーニング方法において用いられる本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物としては、前記と同様のものがあげられる。
試験化合物としては、例えば、ペプチド、蛋白質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などがあげられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
具体的には、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物を、試験化合物で処理し、無処理の対照動物と比較し、該動物の各器官、組織、疾病の症状などの変化を指標として試験化合物の治療・予防効果を試験することができる。
試験動物を試験化合物で処理する方法としては、例えば、経口投与、静脈注射などが用いられ、試験動物の症状、試験化合物の性質などにあわせて適宜選択することができる。また、試験化合物の投与量は、投与方法、試験化合物の性質などにあわせて適宜選択することができる。
【0109】
該スクリーニング方法を用いて得られる化合物は、上記した試験化合物から選ばれた化合物であり、「本発明の蛋白質」の欠損や損傷などによって引き起こされる疾患、例えば、腎臓および他の臓器(例:脳、心臓、肝臓、精巣、骨格筋など)の形態形成異常に対する安全で低毒性な治療・予防剤などの医薬として使用することができる。さらに、上記スクリーニングで得られた化合物から誘導される化合物も同様に用いることができる。
該スクリーニング方法で得られた化合物は塩を形成していてもよく、該化合物の塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸、有機酸など)や塩基(例、アルカリ金属など)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸など)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸など)との塩などが用いられる。
該スクリーニング方法で得られた化合物またはその塩を含有する医薬は、前記した「本発明の蛋白質」とレセプターとの結合性を変化させる化合物を含有する医薬と同様にして製造することができる。
このようにして得られる製剤は、安全で低毒性であるので、例えば、ヒトまたは哺乳動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、該化合物を経口投与する場合、一般的に例えば、腎不全患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、腎不全患者(60kgとして)においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0110】
(14b)「本発明のDNA」に対するプロモーターの活性を促進または阻害する化合物をスクリーニング方法
本発明は、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物に、試験化合物を投与し、レポーター遺伝子の発現を検出することを特徴とする「本発明のDNA」に対するプロモーターの活性を促進または阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
上記スクリーニング方法において、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物としては、前記した本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物の中でも、「本発明のDNA」がレポーター遺伝子を導入することにより不活性化され、該レポーター遺伝子が「本発明のDNA」に対するプロモーターの制御下で発現しうるものが用いられる。
試験化合物としては、前記と同様のものがあげられる。
レポーター遺伝子としては、前記と同様のものが用いられ、β−ガラクトシダーゼ遺伝子(lacZ)、可溶性アルカリフォスファターゼ遺伝子またはルシフェラーゼ遺伝子などが好適である。
「本発明のDNA」をレポーター遺伝子で置換された本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物では、レポーター遺伝子が「本発明のDNA」に対するプロモーターの支配下に存在するので、レポーター遺伝子がコードする物質の発現をトレースすることにより、プロモーターの活性を検出することができる。
例えば、「本発明の蛋白質」をコードするDNA領域の一部を大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子(lacZ)で置換している場合、本来、「本発明の蛋白質」の発現する組織で、該蛋白質の代わりにβ−ガラクトシダーゼが発現する。従って、例えば、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−ガラクトピラノシド(X−gal)のようなβ−ガラクトシダーゼの基質となる試薬を用いて染色することにより、簡便に「本発明の蛋白質」の動物生体内における発現状態を観察することができる。具体的には、「本発明の蛋白質」を欠損するマウスまたはその組織切片をグルタルアルデヒドなどで固定し、リン酸緩衝生理食塩液(PBS)で洗浄後、X−galを含む染色液で、室温または37℃付近で、約30分ないし1時間反応させた後、組織標本を1mM EDTA/PBS溶液で洗浄することによって、β−ガラクトシダーゼ反応を停止させ、呈色を観察すればよい。また、常法に従い、lacZをコードするmRNAを検出してもよい。
上記スクリーニング方法を用いて得られる化合物またはその塩は、上記した試験化合物から選ばれた化合物であり、「本発明のDNA」に対するプロモーター活性を促進または阻害する化合物である。
該スクリーニング方法で得られた化合物は塩を形成していてもよく、該化合物の塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸など)や塩基(例、有機酸など)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸など)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸など)との塩などが用いられる。
【0111】
「本発明のDNA」に対するプロモーター活性を促進する化合物またはその塩は、「本発明の蛋白質」の発現を促進し、該蛋白質の機能を促進することができるので、例えば、「本発明の蛋白質」の機能不全に関連する疾患などの予防・治療薬などの医薬として有用である。
「本発明のDNA」に対するプロモーター活性を阻害する化合物またはその塩は、「本発明の蛋白質」の発現を阻害し、該蛋白質の機能を阻害することができるので、例えば、該蛋白質の発現過多に関連する疾患などの予防・治療薬などの医薬として有用である。
「本発明の蛋白質」の機能不全もしくは発現過多に関連する疾患としては、例えば、腎臓および他の臓器(例:脳、心臓、肝臓、精巣、骨格筋など)の形態形成異常等が挙げられる。
さらに、上記スクリーニングで得られた化合物から誘導される化合物も同様に用いることができる。
【0112】
該スクリーニング方法で得られた化合物またはその塩を含有する医薬は、前記した「本発明の蛋白質」とレセプターとの結合性を変化させる化合物を含有する医薬と同様にして製造することができる。
このようにして得られる製剤は、安全で低毒性であるので、例えば、ヒトまたは哺乳動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進または阻害する化合物を経口投与する場合、一般的に例えば、腎不全患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、腎不全患者(60kgとして)においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
このように、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、「本発明のDNA」に対するプロモーターの活性を促進または阻害する化合物またはその塩をスクリーニングする上で極めて有用であり、本発明のDNA発現不全に起因する各種疾患の原因究明または予防・治療薬の開発に大きく貢献することができる。
また、「本発明の蛋白質」遺伝子のプロモーター領域を含有するDNAを使って、その下流に種々の蛋白質をコードする遺伝子を連結し、これを動物の卵細胞に注入していわゆるトランスジェニック動物(遺伝子移入動物)を作成すれば、特異的にその蛋白質を合成させ、その生体での作用を検討することも可能となる。さらに上記プロモーター部分に適当なレポーター遺伝子を結合させ、これが発現するような細胞株を樹立すれば、「本発明の蛋白質」そのものの体内での産生能力を特異的に促進もしくは抑制する作用を持つ低分子化合物の探索系として使用できる。
【0113】
本明細書および図面において、塩基やアミノ酸などを略号で表示する場合、IUPAC−IUB Commission on Biochemical Nomenclature による略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものであり、その例を下記する。またアミノ酸に関し光学異性体があり得る場合は、特に明示しなければL体を示すものとする。
DNA :デオキシリボ核酸
cDNA :相補的デオキシリボ核酸
A :アデニン
T :チミン
G :グアニン
C :シトシン
RNA :リボ核酸
mRNA :メッセンジャーリボ核酸
dATP :デオキシアデノシン三リン酸
dTTP :デオキシチミジン三リン酸
dGTP :デオキシグアノシン三リン酸
dCTP :デオキシシチジン三リン酸
ATP :アデノシン三リン酸
EDTA :エチレンジアミン四酢酸
SDS :ドデシル硫酸ナトリウム
【0114】
Gly :グリシン
Ala :アラニン
Val :バリン
Leu :ロイシン
Ile :イソロイシン
Ser :セリン
Thr :スレオニン
Cys :システイン
Met :メチオニン
Glu :グルタミン酸
Asp :アスパラギン酸
Lys :リジン
Arg :アルギニン
His :ヒスチジン
Phe :フェニルアラニン
Tyr :チロシン
Trp :トリプトファン
Pro :プロリン
Asn :アスパラギン
Gln :グルタミン
pGlu :ピログルタミン酸
Me :メチル基
Et :エチル基
Bu :ブチル基
Ph :フェニル基
TC :チアゾリジン−4(R)−カルボキサミド基
【0115】
また、本明細書中で繁用される置換基、保護基および試薬を下記の記号で表記する。
Tos :p−トルエンスルフォニル
CHO :ホルミル
Bzl :ベンジル
Cl2Bzl :2,6−ジクロロベンジル
Bom :ベンジルオキシメチル
Z :ベンジルオキシカルボニル
Cl−Z :2−クロロベンジルオキシカルボニル
Br−Z :2−ブロモベンジルオキシカルボニル
Boc :t−ブトキシカルボニル
DNP :ジニトロフェノール
Trt :トリチル
Bum :t−ブトキシメチル
Fmoc :N−9−フルオレニルメトキシカルボニル
HOBt :1−ヒドロキシベンズトリアゾール
HOOBt :3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−
1,2,3−ベンゾトリアジン
HONB :1−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド
DCC :N、N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド
【0116】
【実施例】
以下に実施例を示して、本発明をより詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0117】
参考例1 PKC活性化剤処理による尿管芽分枝・進展の促進
Serlachius E. et al., Kidney Int. 52(4): 901−910 (1997)記載の方法に従ってマウス胎生12日目の後腎組織を採取し、PKC活性化剤である酢酸ミリスチン酸ホルボール(PMA)およびPKC阻害剤であるセラミド(N−acetyl−D−Sphingosine)をそれぞれ添加して後腎の器官培養を行った。その結果、PMAの添加は尿管芽の分枝・進展を著明に促進するのに対し、セラミドの添加は尿管芽の分枝・進展を抑制することが示された。すなわち、PKCによりその発現が調節される、腎尿細管分枝・進展を促進する因子の存在が示唆された。
【0118】
実施例1 マウス由来clone#22 cDNAの単離
ディファレンシャルスクリーニング
参考例1と同様に、マウス胎生12日目の後腎組織を採取して器官培養を行った。培養開始時から5nmol/LのPMA(Sigma社)および100mmol/LのN−acetyl−D−Sphingosine (Sigma社)を添加し3日間培養した。それぞれの培養器官からTrizol(Invitrogen社)処理によりtotal RNAを抽出した後、2.5unitのDNAase(Takara社)処理を37℃で15分間行った。この鋳型RNA 2.5ngを用いて、mRNA Fingerprinting kit(ニッポンジーン社製)の添付プロトコールに従い、3’−Anchor Primer及びArbitrary PrimerによるPCRを行った結果、未変性ポリアクリルアミド電気泳動ゲル上にPMA処理とN−acetyl−D−Sphingosine処理とで差の認められたバンドが複数得られた。
【0119】
(2)ホモロジー検索によるclone#22の抽出とcDNAのクローニング
プロトコールに従って、上記(1)で得られたPMA処理で発現が上昇するそれそれのバンドから遺伝子断片を回収して塩基配列を決定し、それらのすべてをBLASTによりホモロジー検索を行った。その中で、過去に機能、発現等の全くわかっていないヒト由来CGI−204と相同性が高い配列を示す断片に注目し、対応するマウス遺伝子をESTを対象としたBLASTホモロジー検索により見出した。この遺伝子のcDNA配列はGenBankにXM_130843の登録番号を付され、登録・公開されている(また、N末の2アミノ酸のコード配列を欠くcDNA配列がBC029173で登録されている)。この配列を基にプライマー(5’−ATGGCTGCGACCAGTCTAGTGGGTATT−3’(配列番号3)および5’−GACACTACTTGATTTCCGTTCTTGAGA−3’(配列番号4))を作成し、マウス後腎よりrandom primerを用いて作成したcDNAライブラリーを鋳型としてExTaq(Takara社製)を用いたPCRを行い、目的のcDNA clone#22を得ることに成功した。
【0120】
実施例2 PMA処理によるclone#22の発現増強
得られたclone#22の遺伝子発現がPMA処理した後腎組織で実際に増大していることを確認するために、RT−PCRを実施した。PMA処理した培養後腎あるいはセラミド処理した培養後腎のサンプルから調製したtotal RNA 1μgをもとにcDNAをrandom primerで作製し、上記PCR primerを用いて95℃−58℃−72℃、それぞれ1分間のサイクルを30回行った。結果を図1に示す。PMA処理腎(レーン1)では、セラミド処理腎(レーン2)と比較して本遺伝子が高発現していることが確認された。
【0121】
実施例3 clone#22およびそのヒトホモログの臓器発現分布
得られたclone#22 cDNAを
プローブとしてMouse MTN blot(Clontech社製)を用いたノーザンブロッティングを行ったところ、マウス脳、精巣、心臓、腎臓などにおいても発現が認められた(図2)。ヒト成人組織由来RNAを用いたノーザンブロッティングの成績では心臓、肝臓、骨格筋で、ヒト胎児組織では脳、肝臓、腎臓に発現が認められた。
【0122】
実施例4 アンチセンスオリゴヌクレオチドによる尿細管分枝抑制
次に、20merのアンチセンスオリゴヌクレオチド(1st ATGから始まる20mer:ATGGCTGCGACCAGTCTAGT(配列番号5)に対するアンチセンスS−オリゴヌクレオチド)、および比較のスクランブルS−オリゴヌクレオチド(GGATTTACCTATTGCTGG(配列番号6))を作成し、後腎の器官培養に8mmol/Lの濃度で添加したところ、ケラチンによる尿管芽の染色(図3、方法は上述の非特許文献5に従った)において、アンチセンスオリゴヌクレオチド群では、尿細管の分枝・進展は対照群およびスクランブルS−オリゴヌクレオチド群に比べて抑制されることが明らかとなった。
【0123】
実施例5 培地へのclone#22蛋白質添加による培養後腎の分化促進
pCDNA3.1HisAベクター(Invitrogen社)のBamHIサイトに本遺伝子cDNAを挿入したプラスミドを鋳型とし、TNT Coupled Reticulocyte Lysate System(Promega社製)を用い、添付プロトコールに従って転写翻訳させ、タグ付きのリコンビナント蛋白を作成し、器官培養に200,000倍希釈および200倍希釈で添加したところ、レクチンによる尿細管様構造の染色(方法は上述の非特許文献5に従った)において、後腎の分化が促進されていることが認められた(図4)。その時のリコンビナント蛋白の効果の程度は、添加群のレクチンにより染色される構造物が53.7±9.5個であったのに対し、対照(pCDNA3.1HisAベクターを鋳型にしたReticulocyte Lysate反応物のみ添加)群のレクチンにより染色される構造物は37.3±3.1個であった。
これらの結果より、今回PKC活性化剤、阻害剤を添加した後腎より抽出したRNAを用いてdifferential displayを行い得られた遺伝子産物は、後腎において尿管芽の分枝・進展、ひいては尿細管前駆構造物の誘導に関与していることが示唆された。また、その発現は、腎臓に止まらず、心臓、肝臓、脳、精巣などの多臓器に認められ、これら組織の発生、分化にも重大な役割を果たすと考えられた。
【0124】
【発明の効果】
本発明によれば、従来よりも強力な腎形成因子が提供され、腎機能障害における再生医療への応用が期待できる。また、本発明の蛋白質を用いれば、新規の腎形成促進活性を有する化合物の探索が可能となる。
【0125】
【配列表フリーテキスト】
[配列番号3]
マウスclone#22 cDNAを増幅するためのプライマーとして機能すべく設計されたオリゴヌクレオチド。
[配列番号4]
マウスclone#22 cDNAを増幅するためのプライマーとして機能すべく設計されたオリゴヌクレオチド。
[配列番号5]
マウスclone#22 mRNAのN末端20mer配列。
[配列番号6]
対照のスクランブルS−オリゴヌクレオチドとして設計されたオリゴヌクレオチド。
【0126】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】clone#22 mRNAのマウス成体各臓器での発現を示すゲル電気泳動写真である。内部標準としてアクチンを用いた。
【図2】PMA処理およびセラミド処理(対照)におけるマウス培養後腎組織でのclone#22の発現を示すゲル電気泳動写真である。
【図3】アンチセンスS−オリゴヌクレオチド添加、スクランブルS−オリゴヌクレオチド添加およびオリゴヌクレオチド未添加における、後腎培養のケラチンによる尿管芽の染色写真である。
【図4】インビトロ翻訳系にて得られたclone#22蛋白質を低用量(200,000倍希釈)および高用量(200倍希釈)で添加した、あるいは未添加の培養後腎におけるレクチンによる尿細管様構造の染色写真である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、腎臓をはじめ、種々の臓器形成因子として作用し得る蛋白質、該蛋白質をコードする核酸、該蛋白質に対する抗体およびそれらの用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
種々の臓器障害治療の中でも最終的な根治療法としての臓器再生の研究は、近年飛躍的な進歩を遂げ、特に、神経、皮膚、骨などでは、臨床での実用化を目前に控えるまでに至っている。一方、腎臓の分野においては、透析患者の着実な増加と腎臓移植における臓器提供者の絶対的な不足から、再生医療への期待は大きいものの、その実現には程遠いのが現状である。腎機能の再生には、その基となる細胞とともに、その細胞を腎臓特異的な細胞へと分化させる分化誘導因子が必要であると考えられるが、既知の物質では十分な効果を挙げるに至っていない。
【0003】
例えば、肝細胞増殖因子(HGF)は、尿細管上皮細胞に対して強力なマイトジェン作用(非特許文献1参照)、モルフォゲン作用(非特許文献2参照)、抗アポトーシス作用(非特許文献3参照)を示し、また、急性および慢性腎不全/腎線維症モデルに対するHGFの投与が上皮細胞死を防ぎ、損傷した腎組織の再生・再構築を促進することが知られている(例えば、非特許文献4参照)。しかしながら、HGFでは未分化細胞からネフロン(腎小体と尿細管からなる腎臓の機能的単位)の形態形成を誘導するには不十分である。
【0004】
他方、胎児腎の分化をインビトロで検討できる系として後腎の器官培養系が知られており(例えば、非特許文献5参照)、そのような後腎の器官培養系において、プロテインキナーゼC(PKC)抑制作用を有するセラミドが尿管芽の分枝、進展を抑制することが報告されている(非特許文献6参照)。
【0005】
【非特許文献1】
BioChem Biophys Res Commun (1991) 174: 831−838
【非特許文献2】
Cell (1991) 67: 901−908
【非特許文献3】
Kidney Int (1998) 54: 1128−1138
【非特許文献4】
Kidney Int (2001) 59(6): 2023−2038
【非特許文献5】
Exp Cell Res (1999) 248(2): 423−429
【非特許文献6】
Kidney Int (1997) 52(4): 901−910
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、HGFなどの既知の腎形成因子よりもさらに強力な腎形成誘導活性を示す新規腎形成因子を提供することであり、当該因子を用いて新規且つ有効な腎臓再生手段を提供することにより、腎臓障害治療としての再生医療の実用化の途を開くことである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、PKCの抑制が後腎組織の尿管芽分枝を抑制することに着目し、PKC活性化剤であるホルボールエステル(PMA)およびPKC阻害剤であるセラミドをそれぞれ作用させたマウス後腎組織から得たmRNAを用いてディファレンシャルディスプレイ法を実施し、PKC活性化(即ち、尿管芽分枝の誘導)により高発現する複数の遺伝子クローンを得た。シークエンスおよびホモロジー検索の結果、これまでに機能が全く知られていないヒト由来CGI−204[Biochim Biophys Acta (2001) 1517(3): 449−454;GenBank登録番号:AF285120]と高い相同性を示すクローンに着目し、マウス遺伝子情報データベースを利用してプライマーを設計し、マウス後腎由来cDNAライブラリーを鋳型とするPCRによりコード配列全体を含むcDNAを得た。これをプローブとしてマウスおよびヒト胎児における該遺伝子の発現分布を調べたところ、腎臓の他、脳、心臓、精巣、肝臓などでも発現が認められた。さらに、本発明者らは、無細胞蛋白質合成系を用いて合成された該遺伝子産物をマウス後腎培養の培地に添加することにより、尿管芽分枝が増加し、後腎組織全体が増大すること、他方、該遺伝子のアンチセンスオリゴヌクレオチドの添加は後腎組織の発達を抑制することを見出した。本発明者らは、これらの知見に基づいてさらに研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
[1] 配列番号2で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩を含有してなる医薬、
[2] 配列番号2で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質またはその部分ペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含有してなる医薬、
[3] 臓器形成促進剤である上記[1]または[2]記載の医薬、
[4] 臓器が腎臓、肝臓、心臓、脳、精巣または骨格筋である上記[3]記載の医薬、
[5] 配列番号2で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質またはその部分ペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含有してなる臓器形成異常の診断薬、
[6] 配列番号2で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩に対する抗体を含有してなる臓器形成異常の診断薬、
[7] 臓器が腎臓、肝臓、心臓、脳、精巣または骨格筋である上記[5]または[6]記載の診断薬、
[8] 配列番号2で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩に対する抗体を含有してなる医薬、
[9] 配列番号2で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質またはその部分ペプチドをコードする塩基配列と相補的な塩基配列またはその一部を含むポリヌクレオチドを含有してなる医薬、
[10] 臓器形成抑制剤である上記[8]または[9]記載の医薬、
[11] 臓器が腎臓、肝臓、心臓、脳、精巣または骨格筋である上記[10]記載の医薬、
[12] 配列番号2で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩を用いることにより得られうる、該蛋白質またはその塩に対して特異的親和性を有する化合物またはその塩、
[13] 上記[12]記載の化合物またはその塩を含有してなる医薬、
[14] 臓器形成調節剤である上記[13]記載の医薬、
[15] 臓器が腎臓、肝臓、心臓、脳、精巣または骨格筋である上記[14]記載の医薬、
[16] 配列番号2で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩を用いることを含む、該蛋白質またはその塩に対して特異的親和性を有する化合物またはその塩の決定方法、
[17] 配列番号2で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩を用いることを含む、該蛋白質またはその塩とそれに対して特異的親和性を有する化合物またはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、
[18] 配列番号2で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩を含有する、該蛋白質またはその塩とそれに対して特異的親和性を有する化合物またはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング用キット、
[19] 上記[17]記載のスクリーニング方法または上記[18]記載のスクリーニング用キットを用いて得られうる、配列番号2で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質またはその塩とそれに対して特異的親和性を有する化合物またはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩、
[20] 上記[17]記載のスクリーニング方法または上記[18]記載のスクリーニング用キットを用いて得られうる、配列番号2で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質またはその塩とそれに対して特異的親和性を有する化合物またはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩を含有してなる医薬、
[21] 臓器形成調節剤である上記[20]記載の医薬、
[22] 臓器が腎臓、肝臓、心臓、脳、精巣または骨格筋である上記[21]記載の医薬、
[23] 配列番号2で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質またはその部分ペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドまたは該蛋白質またはその塩に対する抗体を用いて、該蛋白質のmRNAまたは該蛋白質もしくはその塩を定量することを特徴とする臓器形成異常の診断方法、
[24] 臓器が腎臓、肝臓、心臓、脳、精巣または骨格筋である上記[23]記載の診断方法、
[25] 配列番号2で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質またはその部分ペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを用いて該蛋白質のmRNAを定量することを特徴とする、該蛋白質の発現量を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、
[26] 上記[25]記載のスクリーニング方法を用いて得られうる、配列番号2で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質の発現量を変化させる化合物またはその塩、
[27] 上記[26]記載の化合物またはその塩を含有してなる医薬、
[28] 臓器形成調節剤である上記[27]記載の医薬、
[29] 臓器が腎臓、肝臓、心臓、脳、精巣または骨格筋である上記[28]記載の医薬、
[30] 配列番号2で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対する抗体を用いて、細胞外液中の該蛋白質またはその塩を定量することを特徴とする、細胞外液中の該蛋白質またはその塩の量を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、
[31] 上記[30]記載のスクリーニング方法を用いて得られうる、細胞外液中の配列番号2で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質またはその塩の量を変化させる化合物またはその塩、
[32] 上記[31]記載の化合物またはその塩を含有してなる医薬、
[33] 臓器形成調節剤である上記[32]記載の医薬、および
[34] 臓器が腎臓、肝臓、心臓、脳、精巣または骨格筋である上記[33]記載の医薬等を提供する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の医薬に用いられる蛋白質は、配列番号2で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する。該蛋白質(以下、「本発明の蛋白質」という場合もある)は、例えば、ヒトや他の哺乳動物(例えば、モルモット、ラット、マウス、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、サルなど)のあらゆる細胞(例えば、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、内皮細胞、繊維芽細胞、繊維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例、マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞、肝細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくはガン細胞など)や血球系の細胞、またはそれらの細胞が存在するあらゆる組織、例えば、脳、脳の各部位(例、嗅球、扁頭核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、視床下核、大脳皮質、延髄、小脳、後頭葉、前頭葉、側頭葉、被殻、尾状核、脳染、黒質)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆のう、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管(例、大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、末梢血球、前立腺、睾丸、精巣、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、骨格筋などに由来する蛋白質であってもよく、また合成蛋白質であってもよい。
【0010】
配列番号2で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、例えば、配列番号2で表わされるアミノ酸配列と約70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するアミノ酸配列などが挙げられる。
本発明の、配列番号2で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質としては、例えば、配列番号2で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有し、配列番号2で表わされるアミノ酸配列と実質的に同質の活性を有する蛋白質などが好ましい。「実質的に同質の活性」としては、例えば、臓器形成促進活性、細胞増殖活性、レセプター結合活性、シグナル情報伝達作用などが挙げられる。「実質的に同質」とは、それらの活性が性質的に同質であることを示す。したがって、レセプター結合活性やシグナル情報伝達作用などの活性が同等(例、約0.01〜100倍、好ましくは約0.5〜20倍、より好ましくは約0.5〜2倍)であることが好ましいが、これらの活性の程度や蛋白質の分子量などの量的要素は異なっていてもよい。
臓器形成促進活性、細胞増殖活性、レセプター結合活性、シグナル情報伝達作用などの活性の測定は、自体公知の方法に準じて行なうことができるが、例えば、後に記載するスクリーニング方法に従って測定することができる。
【0011】
また、「本発明の蛋白質」としては、a)配列番号2で表わされるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1〜5個))のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、b)配列番号2で表わされるアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1〜5個))のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、c)配列番号2で表わされるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1〜5個))のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、またはd)それらを組み合わせたアミノ酸配列を含有する蛋白質なども用いられる。
【0012】
本明細書において、「本発明の蛋白質」は、ペプチド標記の慣例に従って、左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)で記載される。配列番号2で表わされるアミノ酸配列を含有するマウスclone#22をはじめとする「本発明の蛋白質」は、C末端がカルボキシル基(−COOH)、カルボキシレート(−COO−)、アミド(−CONH2)またはエステル(−COOR)の何れであってもよい。
ここでエステルにおけるRとしては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルもしくはn−ブチルなどのC1−6アルキル基、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC3−8シクロアルキル基、例えば、フェニル、α−ナフチルなどのC6−12アリール基、例えば、ベンジル、フェネチルなどのフェニル−C1−2アルキル基もしくはα−ナフチルメチルなどのα−ナフチル−C1−2アルキル基などのC7−14アラルキル基のほか、経口用エステルとして汎用されるピバロイルオキシメチル基などが用いられる。
「本発明の蛋白質」がC末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している場合、カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものも「本発明の蛋白質」に含まれる。この場合のエステルとしては、例えば上記したC末端のエステルなどが用いられる。
さらに、「本発明の蛋白質」には、上記した蛋白質において、N末端のメチオニン残基のアミノ基が保護基(例えば、ホルミル基、アセチルなどのC2−6アルカノイル基などのC1−6アシル基など)で保護されているもの、N端側が生体内で切断され生成したグルタミル基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基(例えば、−OH、−SH、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基など)が適当な保護基(例えば、ホルミル基、アセチルなどのC2−6アルカノイル基などのC1−6アシル基など)で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖蛋白質などの複合蛋白質なども含まれる。
「本発明の蛋白質」の具体例としては、例えば、配列番号2で表わされるアミノ酸配列を含有するマウス由来のclone#22蛋白質、あるいはヒトまたは他の哺乳動物由来のそのホモログなどが用いられる。マウスclone#22蛋白質は、GenBankにXM_130843の登録番号を付されて登録・公開されている塩基配列と同一の塩基配列(配列番号1)を有するマウス後腎由来cDNA clone#22にコードされる蛋白質である。
【0013】
「本発明の蛋白質」の部分ペプチド(以下、単に「本発明の部分ペプチド」と略記する場合がある)としては、上記した「本発明の蛋白質」の部分アミノ酸配列を有するペプチドであれば何れのものであってもよいが、例えば、本発明の蛋白質分子のうち、臓器形成促進活性または細胞増殖活性を保持する部分、該蛋白質と特異的親和性を有する生体物質(例えば、レセプター)との結合活性を有する部分などが用いられる。
「本発明の部分ペプチド」のアミノ酸の数としては、上記した「本発明の蛋白質」の構成アミノ酸配列のうち少なくとも20個以上、好ましくは50個以上、より好ましくは100個以上のアミノ酸配列を有するペプチドなどが例示される。
【0014】
また、「本発明の部分ペプチド」は、上記アミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1〜5個))のアミノ酸が欠失し、または、そのアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1〜5個))のアミノ酸が付加し、または、そのアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜10個程度、より好ましくは数個、さらに好ましくは1〜5個程度)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されていてもよい。
また、「本発明の部分ペプチド」は、C末端がカルボキシル基(−COOH)、カルボキシレート(−COO−)、アミド(−CONH2)またはエステル(−COOR)の何れであってもよい。本発明の部分ペプチドがC末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している場合、カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものも「本発明の部分ペプチド」に含まれる。この場合のエステルとしては、例えば上記したC末端のエステルなどが用いられる。
さらに、「本発明の部分ペプチド」には、上記した「本発明の蛋白質」と同様に、N末端のメチオニン残基のアミノ基が保護基で保護されているもの、N端側が生体内で切断され生成したGlnがピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基が適当な保護基で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖ペプチドなどの複合ペプチドなども含まれる。
「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドの塩としては、酸または塩基との生理学的に許容される塩が挙げられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩などが用いられる。
【0015】
「本発明の蛋白質」またはその塩は、上記したヒトや哺乳動物の細胞・組織(例えば、腎臓、脳、心臓、肝臓、精巣、骨格筋由来の細胞・組織等)または細胞外液から自体公知の蛋白質の精製方法によって製造することもできるし、後に記載する「本発明の蛋白質」をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによっても製造することができる。また、後に記載する蛋白質合成法またはこれに準ずる方法により製造することもできる。
ヒトや哺乳動物の組織または細胞から製造する場合、ヒトや哺乳動物の組織または細胞をホモジナイズした後、酸などで抽出を行ない、該抽出液を逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーを組み合わせることにより精製単離することができる。
【0016】
「本発明の蛋白質」もしくはその部分ペプチドまたはその塩またはそのアミド体の合成には、通常市販の蛋白質合成用樹脂を用いることができる。そのような樹脂としては、例えば、クロロメチル樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、ベンズヒドリルアミン樹脂、アミノメチル樹脂、4−ベンジルオキシベンジルアルコール樹脂、4−メチルベンズヒドリルアミン樹脂、PAM樹脂、4−ヒドロキシメチルメチルフェニルアセトアミドメチル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−ヒドロキシメチル)フェノキシ樹脂、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−Fmocアミノエチル)フェノキシ樹脂などを挙げることができる。このような樹脂を用い、α−アミノ基と側鎖官能基を適当に保護したアミノ酸を、目的とする蛋白質の配列通りに、自体公知の各種縮合方法に従い、樹脂上で縮合させる。反応の最後に樹脂から蛋白質を切り出すと同時に各種保護基を除去し、さらに高希釈溶液中で分子内ジスルフィド結合形成反応を実施し、目的の蛋白質またはそのアミド体を取得する。
上記した保護アミノ酸の縮合に関しては、蛋白質合成に使用できる各種活性化試薬を用いることができるが、特に、カルボジイミド類がよい。カルボジイミド類としては、DCC、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロリル)カルボジイミドなどが用いられる。これらによる活性化にはラセミ化抑制添加剤(例えば、HOBt、HOOBt)とともに保護アミノ酸を直接樹脂に添加するか、または、対称酸無水物またはHOBtエステルあるいはHOOBtエステルとしてあらかじめ保護アミノ酸の活性化を行なった後に樹脂に添加することができる。
【0017】
保護アミノ酸の活性化や樹脂との縮合に用いられる溶媒としては、蛋白質縮合反応に使用しうることが知られている溶媒から適宜選択されうる。例えば、N,N−ジメチルホルムアミド,N,N−ジメチルアセトアミド,N−メチルピロリドンなどの酸アミド類、塩化メチレン,クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類、トリフルオロエタノールなどのアルコール類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ピリジン,ジオキサン,テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトニトリル,プロピオニトリルなどのニトリル類、酢酸メチル,酢酸エチルなどのエステル類あるいはこれらの適宜の混合物などが用いられる。反応温度は蛋白質結合形成反応に使用され得ることが知られている範囲から適宜選択され、通常約−20℃〜50℃の範囲から適宜選択される。活性化されたアミノ酸誘導体は通常1.5〜4倍過剰で用いられる。ニンヒドリン反応を用いたテストの結果、縮合が不十分な場合には保護基の脱離を行うことなく縮合反応を繰り返すことにより十分な縮合を行なうことができる。反応を繰り返しても十分な縮合が得られないときには、無水酢酸またはアセチルイミダゾールを用いて未反応アミノ酸をアセチル化することができる。
【0018】
原料の反応に関与すべきでない官能基の保護ならびに保護基、およびその保護基の脱離、反応に関与する官能基の活性化などは公知の基または公知の手段から適宜選択しうる。
原料のアミノ基の保護基としては、例えば、Z、Boc、ターシャリーペンチルオキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、Cl−Z、Br−Z、アダマンチルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、フタロイル、ホルミル、2−ニトロフェニルスルフェニル、ジフェニルホスフィノチオイル、Fmocなどが用いられる。
カルボキシル基は、例えば、アルキルエステル化(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ターシャリーブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、2−アダマンチルなどの直鎖状、分枝状もしくは環状アルキルエステル化)、アラルキルエステル化(例えば、ベンジルエステル、4−ニトロベンジルエステル、4−メトキシベンジルエステル、4−クロロベンジルエステル、ベンズヒドリルエステル化)、フェナシルエステル化、ベンジルオキシカルボニルヒドラジド化、ターシャリーブトキシカルボニルヒドラジド化、トリチルヒドラジド化などによって保護することができる。
セリンの水酸基は、例えば、エステル化またはエーテル化によって保護することができる。このエステル化に適する基としては、例えば、アセチル基などの低級アルカノイル基、ベンゾイル基などのアロイル基、ベンジルオキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などの炭酸から誘導される基などが用いられる。また、エーテル化に適する基としては、例えば、ベンジル基、テトラヒドロピラニル基、t−ブチル基などである。
チロシンのフェノール性水酸基の保護基としては、例えば、Bzl、Cl2−Bzl、2−ニトロベンジル、Br−Z、ターシャリーブチルなどが用いられる。
ヒスチジンのイミダゾールの保護基としては、例えば、Tos、4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニル、DNP、ベンジルオキシメチル、Bum、Boc、Trt、Fmocなどが用いられる。
【0019】
原料のカルボキシル基の活性化されたものとしては、例えば、対応する酸無水物、アジド、活性エステル〔アルコール(例えば、ペンタクロロフェノール、2,4,5−トリクロロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、シアノメチルアルコール、パラニトロフェノール、HONB、N−ヒドロキシスクシミド、N−ヒドロキシフタルイミド、HOBt)とのエステル〕などが用いられる。原料のアミノ基の活性化されたものとしては、例えば、対応するリン酸アミドが用いられる。
保護基の除去(脱離)方法としては、例えば、Pd−黒あるいはPd−炭素などの触媒の存在下での水素気流中での接触還元や、また、無水フッ化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸あるいはこれらの混合液などによる酸処理や、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピペラジンなどによる塩基処理、また液体アンモニア中ナトリウムによる還元なども用いられる。上記酸処理による脱離反応は、一般に約−20℃〜40℃の温度で行なわれるが、酸処理においては、例えば、アニソール、フェノール、チオアニソール、メタクレゾール、パラクレゾール、ジメチルスルフィド、1,4−ブタンジチオール、1,2−エタンジチオールなどのようなカチオン捕捉剤の添加が有効である。また、ヒスチジンのイミダゾール保護基として用いられる2,4−ジニトロフェニル基はチオフェノール処理により除去され、トリプトファンのインドール保護基として用いられるホルミル基は上記の1,2−エタンジチオール、1,4−ブタンジチオールなどの存在下の酸処理による脱保護以外に、希水酸化ナトリウム溶液、希アンモニアなどによるアルカリ処理によっても除去される。
【0020】
蛋白質のアミド体を得る別の方法としては、例えば、まず、カルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基をアミド化して保護した後、アミノ基側にペプチド(蛋白質)鎖を所望の鎖長まで延ばした後、該ペプチド鎖のN末端のα−アミノ基の保護基のみを除いた蛋白質とC末端のカルボキシル基の保護基のみを除去した蛋白質とを製造し、この両蛋白質を上記したような混合溶媒中で縮合させる。縮合反応の詳細については上記と同様である。縮合により得られた保護蛋白質を精製した後、上記方法によりすべての保護基を除去し、所望の粗蛋白質を得ることができる。この粗蛋白質は既知の各種精製手段を駆使して精製し、主要画分を凍結乾燥することで所望の蛋白質のアミド体を得ることができる。
蛋白質のエステル体を得るには、例えば、カルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基を所望のアルコール類と縮合しアミノ酸エステルとした後、蛋白質のアミド体と同様にして、所望の蛋白質のエステル体を得ることができる。
【0021】
「本発明の蛋白質」の部分ペプチドまたはその塩は、自体公知のペプチドの合成法に従って、あるいは「本発明の蛋白質」を適当なペプチダーゼで切断することによって製造することができる。ペプチドの合成法としては、例えば、固相合成法、液相合成法のいずれによっても良い。すなわち、「本発明の蛋白質」を構成し得る部分ペプチドもしくはアミノ酸と残余部分とを縮合させ、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的のペプチドを製造することができる。公知の縮合方法や保護基の脱離としては、例えば、以下のa)〜e)に記載された方法が挙げられる。
a)M. Bodanszky および M.A. Ondetti、ペプチド シンセシス (Peptide Synthesis), Interscience Publishers, New York (1966年)
b)SchroederおよびLuebke、ザ ペプチド(The Peptide), Academic Press, New York (1965年)
c)泉屋信夫他、ペプチド合成の基礎と実験、 丸善(株) (1975年)
d)矢島治明 および榊原俊平、生化学実験講座 1、蛋白質の化学IV、 205、(1977年)
e)矢島治明監修、続医薬品の開発 第14巻 ペプチド合成 広川書店
また、反応後は通常の精製法、例えば、溶媒抽出・蒸留・カラムクロマトグラフィー・液体クロマトグラフィー・再結晶などを組み合わせて本発明の部分ペプチドを精製単離することができる。上記方法で得られる部分ペプチドが遊離体である場合は、公知の方法によって適当な塩に変換することができるし、逆に塩で得られた場合は、公知の方法によって遊離体に変換することができる。
【0022】
あるいは、「本発明の蛋白質」もしくはその部分ペプチドまたはその塩は、後述する「本発明の蛋白質」をコードするポリヌクレオチドまたはその部分ヌクレオチドを鋳型として、ウサギ網状赤血球ライセート、コムギ胚芽ライセート、大腸菌ライセートなどからなる無細胞蛋白質翻訳系を用いてインビトロ翻訳することによっても合成することができる。
【0023】
「本発明の蛋白質」をコードするポリヌクレオチド(以下、「本発明のポリヌクレオチド」ともいう)としては、上記した「本発明の蛋白質」をコードする塩基配列(DNA、RNAまたはDNA/RNAキメラ、好ましくはDNA)を含有するものであればいかなるものであってもよい。該ポリヌクレオチドとしては、「本発明の蛋白質」をコードするDNA、mRNA等のRNAであり、二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。二本鎖の場合は、二本鎖DNA、二本鎖RNAまたはDNA:RNAのハイブリッドでもよい。一本鎖の場合は、センス鎖(すなわち、コード鎖)であっても、アンチセンス鎖(すなわち、非コード鎖)であってもよい。本発明のDNAとしては、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、ヒトまたは他の哺乳動物(例えば、モルモット、ラット、マウス、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、サルなど)のあらゆる細胞(例えば、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、内皮細胞、繊維芽細胞、繊維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例、マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞、肝細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくはガン細胞など)や血球系の細胞、またはそれらの細胞が存在するあらゆる組織、例えば、脳、脳の各部位(例、嗅球、扁頭核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、視床下核、大脳皮質、延髄、小脳、後頭葉、前頭葉、側頭葉、被殻、尾状核、脳染、黒質)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆のう、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管(例、大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、末梢血球、前立腺、睾丸、精巣、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、骨格筋など(特に、脳や脳の各部位)由来のcDNA、前記した細胞・組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAのいずれでもよい。ライブラリーに使用するベクターは、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミド、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターなどいずれであってもよい。また、前記した細胞・組織よりtotalRNAまたはmRNA画分を調製したものを用いて直接Reverse Transcriptase Polymerase Chain Reaction(以下、RT−PCR法と略称する)によって増幅することもできる。
【0024】
具体的には、「本発明の蛋白質」をコードするDNAとしては、例えば、配列番号1で表わされる塩基配列を含有するDNA、または配列番号1で表わされる塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有し、「本発明の蛋白質」と実質的に同質の活性(例:臓器形成促進活性、細胞増殖活性、レセプター結合活性、シグナル情報伝達作用など)を有する蛋白質をコードするDNAであれば何れのものでもよい。
配列番号1で表わされる塩基配列とハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号1で表わされる塩基配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の同一性を有する塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
【0025】
ハイブリダイゼーションは、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)2nd ed.(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。より好ましくは、ハイストリンジェントな条件に従って行なうことができる。
該ハイストリンジェントな条件とは、例えば、ナトリウム濃度が約19〜40mM、好ましくは約19〜20mMで、温度が約50〜70℃、好ましくは約60〜65℃の条件を示す。特に、ナトリウム濃度が約19mMで温度が約65℃の場合が最も好ましい。
より具体的には、配列番号2で表わされるアミノ酸配列を含有するマウスclone#22蛋白質をコードするDNAとしては、配列番号1で表わされる塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
「本発明の蛋白質」をコードするDNAの塩基配列の一部、または該DNAと相補的な塩基配列の一部を含有してなるヌクレオチドとは、下記の「本発明の部分ペプチド」をコードするDNAを包含するだけではなく、RNAをも包含する意味で用いられる。
目的核酸の標的領域と相補的な塩基配列を含むヌクレオチド、即ち、目的核酸とハイブリダイズすることができるヌクレオチドは、該目的核酸に対して「アンチセンス」であるということができる。一方、目的核酸の標的領域と相同性を有する塩基配列を含むヌクレオチド(即ち、目的核酸が蛋白質をコードする場合、その蛋白質の部分ペプチドをコードするヌクレオチド)は、該目的核酸に対して「センス」であるということができる。本明細書で用いる用語「対応する」とは、遺伝子を含めたヌクレオチド、塩基配列または核酸の特定の配列に相同性を有するあるいは相補的であることを意味する。ここで「相同性を有する」または「相補的である」とは、塩基配列間で約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の同一性を有することをいう。また、ヌクレオチド、塩基配列または核酸とペプチド(蛋白質)との間で「対応する」とは、そのペプチド(蛋白質)がヌクレオチド(核酸)またはその相補体の配列から翻訳されるアミノ酸配列を有することを通常指している。
【0026】
「本発明のポリヌクレオチド」と相補的な塩基配列の一部を含有してなるヌクレオチド(以下、「本発明のアンチセンスヌクレオチド」ともいう)は、クローン化した、あるいは決定された「本発明のポリヌクレオチド」の塩基配列情報に基づき設計し、合成しうる。そうしたヌクレオチドは、「本発明のポリヌクレオチド」の塩基配列を含む遺伝子の複製または発現を阻害することができる。例えば、マウスclone#22のアンチセンスヌクレオチドは、clone#22に対応する遺伝子から転写されるRNAとハイブリダイズすることができ、mRNAの合成(プロセッシング)または機能(蛋白質への翻訳)を阻害することができるか、あるいはclone#22関連RNAとの相互作用を介してclone#22に対応する遺伝子の発現を調節・制御することができる。clone#22関連RNAの選択された配列に相補的なヌクレオチド、およびclone#22関連RNAと特異的にハイブリダイズすることができるヌクレオチドは、生体内および生体外でclone#22に対応する遺伝子の発現を調節・制御するのに有用であり、また病気などの治療または診断に有用である。
【0027】
「本発明のアンチセンスヌクレオチド」の標的領域は、アンチセンスヌクレオチドがハイブリダイズすることにより、結果として「本発明のポリヌクレオチド」に対応する蛋白質の翻訳が阻害されるものであればその長さに特に制限はなく、「本発明のポリヌクレオチド」に対応するmRNAの全配列であっても部分配列であってもよく、短いもので約15塩基程度、長いものでmRNAまたは初期転写産物の全配列が挙げられる。合成の容易さや抗原性の問題を考慮すれば、約15〜約30塩基からなるオリゴヌクレオチドが好ましいがそれに限定されない。具体的には、例えば、本発明のポリヌクレオチドの5’端ヘアピンループ、5’端6−ベースペア・リピート、5’端非翻訳領域、ポリペプチド翻訳開始コドン、蛋白質コード領域、ORF翻訳開始コドン、3’端非翻訳領域、3’端パリンドローム領域、および3’端ヘアピンループが標的領域として選択しうるが、本発明のポリヌクレオチドに対応する遺伝子内の如何なる領域も標的として選択しうる。例えば、該遺伝子のイントロン部分を標的領域とすることもまた好ましい。
さらに、「本発明のアンチセンスヌクレオチド」は、「本発明のポリヌクレオチド」に対応するmRNAもしくは初期転写産物とハイブリダイズして蛋白質への翻訳を阻害するだけでなく、二本鎖DNAである本発明のポリヌクレオチドに対応する遺伝子と結合して三重鎖(トリプレックス)を形成し、RNAの転写を阻害し得るものであってもよい。
【0028】
アンチセンスヌクレオチドは、2−デオキシ−D−リボースを含有しているデオキシヌクレオチド、D−リボースを含有しているデオキシヌクレオチド、プリンまたはピリミジン塩基のN−グリコシドであるその他のタイプのヌクレオチド、あるいは非ヌクレオチド骨格を有するその他のポリマー(例えば、市販の蛋白質核酸および合成配列特異的な核酸ポリマー)または特殊な結合を含有するその他のポリマー(但し、該ポリマーはDNAやRNA中に見出されるような塩基のペアリングや塩基の付着を許容する配置をもつヌクレオチドを含有する)などが挙げられる。それらは、2本鎖DNA、1本鎖DNA、2本鎖RNA、1本鎖RNA、さらにDNA:RNAハイブリッドであることができ、さらに非修飾ポリヌクレオチド(または非修飾オリゴヌクレオチド)、さらには公知の修飾の付加されたもの、例えば当該分野で知られた標識のあるもの、キャップの付いたもの、メチル化されたもの、1個以上の天然のヌクレオチドを類縁物で置換したもの、分子内ヌクレオチド修飾のされたもの、例えば非荷電結合(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホルアミデート、カルバメートなど)を持つもの、電荷を有する結合または硫黄含有結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)を持つもの、例えば蛋白質(ヌクレアーゼ、ヌクレアーゼ・インヒビター、トキシン、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L−リジンなど)や糖(例えば、モノサッカライドなど)などの側鎖基を有しているもの、インターカレント化合物(例えば、アクリジン、プソラレンなど)を持つもの、キレート化合物(例えば、金属、放射活性をもつ金属、ホウ素、酸化性の金属など)を含有するもの、アルキル化剤を含有するもの、修飾された結合を持つもの(例えば、αアノマー型の核酸など)であってもよい。ここで「ヌクレオシド」、「ヌクレオチド」および「核酸」とは、プリンおよびピリミジン塩基を含有するのみでなく、修飾されたその他の複素環型塩基をもつようなものを含んでいて良い。こうした修飾物は、メチル化されたプリンおよびピリミジン、アシル化されたプリンおよびピリミジン、あるいはその他の複素環を含むものであってよい。修飾されたヌクレオチドおよび修飾されたヌクレオチドはまた糖部分が修飾されていてよく、例えば、1個以上の水酸基がハロゲンとか、脂肪族基などで置換されていたり、あるいはエーテル、アミンなどの官能基に変換されていてよい。
【0029】
アンチセンスヌクレオチドは、RNA、DNA、あるいは修飾された核酸(RNA、DNA)である。修飾された核酸の具体例としては核酸の硫黄誘導体やチオホスフェート誘導体、そしてポリヌクレオシドアミドやオリゴヌクレオシドアミドの分解に抵抗性のものが挙げられるが、それに限定されるものではない。本発明のアンチセンス核酸は次のような方針で好ましく設計されうる。すなわち、細胞内でのアンチセンス核酸をより安定なものにする、アンチセンス核酸の細胞透過性をより高める、目標とするセンス鎖に対する親和性をより大きなものにする、そしてもし毒性があるならアンチセンス核酸の毒性をより小さなものにする。こうした修飾は当該分野で数多く知られており、例えば J. Kawakami et al.,Pharm Tech Japan, Vol. 8, pp.247, 1992; Vol. 8, pp.395, 1992; S. T. Crooke et al. ed., Antisense Research and Applications, CRC Press, 1993 などに開示がある。
【0030】
アンチセンスヌクレオチドは、変化せしめられたり、修飾された糖、塩基、結合を含有していて良く、リポゾーム、ミクロスフェアのような特殊な形態で供与されたり、遺伝子治療により適用されたり、付加された形態で与えられることができうる。こうして付加形態で用いられるものとしては、リン酸基骨格の電荷を中和するように働くポリリジンのようなポリカチオン体、細胞膜との相互作用を高めたり、核酸の取込みを増大せしめるような脂質(例えば、ホスホリピド、コレステロールなど)といった粗水性のものが挙げられる。付加するに好ましい脂質としては、コレステロールやその誘導体(例えば、コレステリルクロロホルメート、コール酸など)が挙げられる。こうしたものは、核酸の3’端あるいは5’端に付着させることができ、塩基、糖、分子内ヌクレオシド結合を介して付着させることができうる。その他の基としては、核酸の3’端あるいは5’端に特異的に配置されたキャップ用の基で、エキソヌクレアーゼ、RNaseなどのヌクレアーゼによる分解を阻止するためのものが挙げられる。こうしたキャップ用の基としては、ポリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのグリコールをはじめとした当該分野で知られた水酸基の保護基が挙げられるが、それに限定されるものではない。
【0031】
「本発明のポリヌクレオチド」に対応するmRNAもしくは遺伝子の初期転写産物を、コード領域の内部(初期転写産物の場合はイントロン部分を含む)で特異的に切断し得るリボザイムもまた、「本発明のアンチセンスヌクレオチド」に包含され得る。「リボザイム」とは核酸を切断する酵素活性を有するRNAをいうが、最近では当該酵素活性部位の塩基配列を有するオリゴDNAも同様に核酸切断活性を有することが明らかになっているので、本明細書では配列特異的な核酸切断活性を有する限りDNAをも包含する概念として用いるものとする。リボザイムとして最も汎用性の高いものとしては、ウイロイドやウイルソイド等の感染性RNAに見られるセルフスプライシングRNAがあり、ハンマーヘッド型やヘアピン型等が知られている。ハンマーヘッド型は約40塩基程度で酵素活性を発揮し、ハンマーヘッド構造をとる部分に隣接する両端の数塩基ずつ(合わせて約10塩基程度)をmRNAの所望の切断部位と相補的な配列にすることにより、標的mRNAのみを特異的に切断することが可能である。このタイプのリボザイムは、RNAのみを基質とするので、ゲノムDNAを攻撃することがないというさらなる利点を有する。「本発明のポリヌクレオチド」に対応するmRNAが自身で二本鎖構造をとる場合には、RNAヘリカーゼと特異的に結合し得るウイルス核酸由来のRNAモチーフを連結したハイブリッドリボザイムを用いることにより、標的配列を一本鎖にすることができる[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 98(10): 5572−5577 (2001)]。さらに、リボザイムを、それをコードするDNAを含む発現ベクターの形態で使用する場合には、転写産物の細胞質への移行を促進するために、tRNAを改変した配列をさらに連結したハイブリッドリボザイムとすることもできる[Nucleic Acids Res., 29(13): 2780−2788 (2001)]。
【0032】
「本発明のポリヌクレオチド」に対応するmRNAもしくは遺伝子の初期転写産物のコード領域内の部分配列(初期転写産物の場合はイントロン部分を含む)に相補的な二本鎖オリゴRNAもまた、「本発明のアンチセンスヌクレオチド」に包含され得る。短い二本鎖RNAを細胞内に導入するとそのRNAに相補的なmRNAが分解される、いわゆるRNA干渉(RNAi)と呼ばれる現象は、以前から線虫、昆虫、植物等で知られていたが、最近、この現象が哺乳動物細胞でも起こることが確認されたことから[Nature, 411(6836): 494−498 (2001)]、リボザイムの代替技術として注目されている。
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド及びリボザイムは、「本発明のポリヌクレオチド」に対応するcDNA配列もしくはゲノミックDNA配列情報に基づいてmRNAもしくは初期転写産物の標的領域を決定し、市販のDNA/RNA自動合成機(アプライド・バイオシステムズ社、ベックマン社等)を用いて、これに相補的な配列を合成することにより調製することができる。RNAi活性を有する二本鎖オリゴRNAは、センス鎖及びアンチセンス鎖をDNA/RNA自動合成機でそれぞれ合成し、適当なアニーリング緩衝液中で、例えば、約90〜約95℃で約1分程度変性させた後、約30〜約70℃で約1〜約8時間アニーリングさせることにより調製することができる。また、相補的なオリゴヌクレオチド鎖を交互にオーバーラップするように合成して、これらをアニーリングさせた後リガーゼでライゲーションすることにより、より長い二本鎖ポリヌクレオチドを調製することもできる。
【0033】
「本発明のアンチセンスヌクレオチド」の遺伝子発現阻害活性は、「本発明のポリヌクレオチド」を含有する形質転換体、生体内や生体外の「本発明のポリヌクレオチド」発現系または「本発明のポリヌクレオチド」に対応する蛋白質の生体内や生体外の翻訳系を用いて調べることができる。該核酸は自体公知の各種の方法で細胞に適用できる。
【0034】
「本発明のポリヌクレオチド」の一部を含むヌクレオチドとしては、上記した「本発明の蛋白質」の部分ペプチド(即ち、「本発明の部分ペプチド」)をコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものであってもよい。また、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、上記した細胞・組織由来のcDNA、上記した細胞・組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAのいずれでもよい。ライブラリーに使用するベクターは、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。また、上記した細胞・組織よりmRNA画分を調製したものを用いて直接RT−PCR法によって増幅することもできる。
【0035】
具体的には、「本発明の部分ペプチド」をコードするヌクレオチドとしては、例えば、(1)配列番号1で表わされる塩基配列を有するポリヌクレオチドの部分塩基配列を有するヌクレオチド、または(2)配列番号1で表わされる塩基配列を有するポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有し、該ポリヌクレオチドにコードされるアミノ酸配列を含む蛋白質と実質的に同質の活性(例:臓器形成促進活性、細胞増殖活性、レセプター結合活性、シグナル伝達作用など)を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドの部分塩基配列を有するヌクレオチドなどが用いられる。
配列番号1で表わされる塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるポリヌクレオチドとしては、例えば、該塩基配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の同一性を有する塩基配列を含有するポリヌクレオチドなどが用いられる。
【0036】
「本発明のポリヌクレオチド」または「本発明の部分ペプチド」をコードするヌクレオチドのクローニングの手段としては、上記のようにして同定され、配列決定された「本発明のポリヌクレオチド」の部分塩基配列を有する合成DNAプライマーを用いてPCR法によって増幅するか、または適当なベクターに組み込んだDNAを「本発明のポリヌクレオチド」の一部あるいは全領域を含むDNA断片もしくは合成DNAを用いて標識したものとのハイブリダイゼーションによって選別することができる。ハイブリダイゼーションの方法は、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)2nd Edition(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。
【0037】
DNAの塩基配列の変換は、PCRや公知のキット、例えば、MutanTM−super Express KmG(宝酒造(株))、MutanTM−K(宝酒造(株))などを用いて、ODA−LA PCR法、Gupped duplex法、Kunkel法などの自体公知の方法あるいはそれらに準じる方法に従って行なうことができる。
クローン化された「本発明のポリヌクレオチド」は目的によりそのまま、または所望により制限酵素で消化したり、リンカーを付加したりして使用することができる。該ヌクレオチドはその5’末端側に翻訳開始コドンとしてのATGを有し、また3’末端側には翻訳終止コドンとしてのTAA、TGAまたはTAGを有していてもよい。これらの翻訳開始コドンや翻訳終止コドンは、適当な合成DNAアダプターを用いて付加することもできる。
【0038】
「本発明のポリヌクレオチド」の発現ベクターは、例えば、(イ)「本発明のポリヌクレオチド」を含む断片を切り出し、(ロ)ポリヌクレオチド断片を適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより製造することができる。
ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド(例、pBR322、pBR325、pUC12、pUC13)、枯草菌由来のプラスミド(例、pUB110、pTP5、pC194)、酵母由来プラスミド(例、pSH19、pSH15)、λファージなどのバクテリオファージ、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルスなどの動物ウイルスなどの他、pA1−11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neoなどが用いられる。
プロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主に対応して適切なプロモーターであればいかなるものでもよい。例えば、動物細胞を宿主として用いる場合は、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMVプロモーター、HSV−TKプロモーターなどが挙げられる。
これらのうち、CMVプロモーター、SRαプロモーターなどを用いるのが好ましい。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、trpプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、λPLプロモーター、lppプロモーターなどが、宿主がバチルス属菌である場合は、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーターなど、宿主が酵母である場合は、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーターなどが好ましい。宿主が昆虫細胞である場合は、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーターなどが好ましい。
発現ベクターには、以上の他に、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製オリジン(以下、SV40oriと略称する場合がある)などを含有しているものを用いることができる。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素(以下、dhfrと略称する場合がある)遺伝子〔メソトレキセート(MTX)耐性〕、アンピシリン耐性遺伝子(以下、Amprと略称する場合がある)、ネオマイシン耐性遺伝子(以下、Neorと略称する場合がある、G418耐性)等が挙げられる。特に、CHO(dhfr−)細胞を用いてdhfr遺伝子を選択マーカーとして使用する場合、目的遺伝子をチミジンを含まない培地によっても選択できる。
また、必要に応じて、宿主に合ったシグナル配列を、「本発明のポリヌクレオチド」にネイティヴなシグナル配列に代えてN末端側に付加することもできる。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、PhoA・シグナル配列、OmpA・シグナル配列などが、宿主がバチルス属菌である場合は、α−アミラーゼ・シグナル配列、サブチリシン・シグナル配列などが、宿主が酵母である場合は、MFα・シグナル配列、SUC2・シグナル配列など、宿主が動物細胞である場合には、インシュリン・シグナル配列、α−インターフェロン・シグナル配列、抗体分子・シグナル配列などがそれぞれ利用できる。
【0039】
このようにして構築された「本発明のポリヌクレオチド」を含有するベクターを用いて、形質転換体を製造することができる。
宿主としては、例えば、エシェリヒア属菌、バチルス属菌、酵母、昆虫細胞、昆虫、動物細胞などが用いられる。
エシェリヒア属菌の具体例としては、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)K12・DH1〔プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),60巻,160(1968)〕,JM103〔ヌクイレック・アシッズ・リサーチ,(Nucleic Acids Research),9巻,309(1981)〕,JA221〔ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(Journal of Molecular Biology)〕,120巻,517(1978)〕,HB101〔ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー,41巻,459(1969)〕,C600〔ジェネティックス(Genetics),39巻,440(1954)〕などが用いられる。
バチルス属菌としては、例えば、バチルス・ズブチルス(Bacillus subtilis)MI114〔ジーン(Gene),24巻,255(1983)〕,207−21〔ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(Journal of Biochemistry),95巻,87(1984)〕などが用いられる。
酵母としては、例えば、サッカロマイセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)AH22,AH22R−,NA87−11A,DKD−5D、20B−12、シゾサッカロマイセス ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)NCYC1913,NCYC2036、ピキア パストリス(Pichia pastoris)などが用いられる。
昆虫細胞としては、例えば、ウイルスがAcNPVの場合は、夜盗蛾の幼虫由来株化細胞(Spodoptera frugiperda cell;Sf細胞)、Trichoplusia niの中腸由来のMG1細胞、Trichoplusia niの卵由来のHigh FiveTM 細胞、Mamestra brassicae由来の細胞またはEstigmena acrea由来の細胞などが用いられる。ウイルスがBmNPVの場合は、蚕由来株化細胞(Bombyx mori N;BmN細胞)などが用いられる。該Sf細胞としては、例えば、Sf9細胞(ATCC CRL1711)、Sf21細胞(以上、Vaughn, J.L.ら、イン・ヴィボ(In Vivo),13, 213−217,(1977))などが用いられる。
昆虫としては、例えば、カイコの幼虫などが用いられる〔前田ら、ネイチャー(Nature),315巻,592(1985)〕。
動物細胞としては、例えば、サル細胞COS−7,Vero,チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO細胞と略記)、dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO(dhfr−)細胞と略記)、マウスL細胞,マウスAtT−20、マウスミエローマ細胞、ラットGH3、ヒトFL細胞などが用いられる。
エシェリヒア属菌を形質転換するには、例えば、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンジイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),69巻,2110(1972)やジーン(Gene),17巻,107(1982)などに記載の方法に従って行なうことができる。
バチルス属菌を形質転換するには、例えば、モレキュラー・アンド・ジェネラル・ジェネティックス(Molecular & General Genetics),168巻,111(1979)などに記載の方法に従って行なうことができる。
酵母を形質転換するには、例えば、メッソズ・イン・エンザイモロジー(Methods in Enzymology),194巻,182−187(1991)、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),75巻,1929(1978)などに記載の方法に従って行なうことができる。
昆虫細胞または昆虫を形質転換するには、例えば、バイオ/テクノロジー(Bio/Technology),6巻,47−55(1988)などに記載の方法に従って行なうことができる。
動物細胞を形質転換するには、例えば、細胞工学別冊8新細胞工学実験プロトコール.263−267(1995)(秀潤社発行)、ヴィロロジー(Virology),52巻,456(1973)に記載の方法に従って行なうことができる。
このようにして、「本発明のポリヌクレオチド」を含有する発現ベクターで形質転換された形質転換体が得られる。
【0040】
宿主がエシェリヒア属菌、バチルス属菌である形質転換体を培養する際、培養に使用される培地としては液体培地が適当であり、その中には該形質転換体の生育に必要な炭素源、窒素源、無機物その他が含有せしめられる。炭素源としては、例えば、グルコース、デキストリン、可溶性澱粉、ショ糖など、窒素源としては、例えば、アンモニウム塩類、硝酸塩類、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、大豆粕、バレイショ抽出液などの無機または有機物質、無機物としては、例えば、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウムなどが挙げられる。また、酵母エキス、ビタミン類、生長促進因子などを添加してもよい。培地のpHは約5〜8が望ましい。
エシェリヒア属菌を培養する際の培地としては、例えば、グルコース、カザミノ酸を含むM9培地〔ミラー(Miller),ジャーナル・オブ・エクスペリメンツ・イン・モレキュラー・ジェネティックス(Journal of Experiments in Molecular Genetics),431−433,Cold Spring Harbor Laboratory, New York 1972〕が好ましい。ここに必要によりプロモーターを効率よく働かせるために、例えば、3β−インドリル アクリル酸のような薬剤を加えることができる。
宿主がエシェリヒア属菌の場合、培養は通常約15〜43℃で約3〜24時間行ない、必要により、通気や撹拌を加えることもできる。
宿主がバチルス属菌の場合、培養は通常約30〜40℃で約6〜24時間行ない、必要により通気や撹拌を加えることもできる。
宿主が酵母である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、バークホールダー(Burkholder)最小培地〔Bostian, K. L. ら、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),77巻,4505(1980)〕や0.5%カザミノ酸を含有するSD培地〔Bitter, G. A. ら、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),81巻,5330(1984)〕が挙げられる。培地のpHは約5〜8に調整するのが好ましい。培養は通常約20〜35℃で約24〜72時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
宿主が昆虫細胞または昆虫である形質転換体を培養する際、培地としては、Grace’s Insect Medium(Grace, T.C.C., ネイチャー(Nature),195巻,788(1962))に非働化した10%ウシ血清等の添加物を適宜加えたものなどが用いられる。培地のpHは約6.2〜6.4に調整するのが好ましい。培養は通常約27℃で約3〜5日間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
宿主が動物細胞である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、約5〜20%の胎児牛血清を含むMEM培地〔サイエンス(Science),122巻,501(1952)〕,DMEM培地〔ヴィロロジー(Virology),8巻,396(1959)〕,RPMI 1640培地〔ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・メディカル・アソシエーション(The Journal of the American Medical Association)199巻,519(1967)〕,199培地〔プロシージング・オブ・ザ・ソサイエティ・フォー・ザ・バイオロジカル・メディスン(Proceeding of the Society for the Biological Medicine),73巻,1(1950)〕などが用いられる。pHは約6〜8であるのが好ましい。培養は通常約30〜40℃で約15〜60時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
以上のようにして、形質転換体の細胞内または細胞外に「本発明の蛋白質」を生成せしめることができる。
【0041】
上記培養物から生成した蛋白質を分離精製するには、例えば、下記の方法により行なうことができる。
該蛋白質が細胞質局在型である場合、培養後、公知の方法で菌体あるいは細胞を集め、これを適当な緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチームおよび/または凍結融解などによって菌体あるいは細胞を破壊したのち、遠心分離して上清を回収する。緩衝液の中に尿素や塩酸グアニジンなどの蛋白質変性剤が含まれていてもよい。該蛋白質が膜結合型である場合、培養後、公知の方法で菌体あるいは細胞を集め、これを適当な緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチームおよび/または凍結融解などによって菌体あるいは細胞を破壊したのち、遠心分離やろ過により膜画分を沈澱させる。次いで、膜画分をトリトンX−100TMなどの界面活性剤を用いて破壊し、遠心分離して上清を回収する。緩衝液の中に尿素や塩酸グアニジンなどの蛋白質変性剤が含まれていてもよい。該蛋白質が培養液中に分泌される場合には、培養終了後、それ自体公知の方法で菌体あるいは細胞と上清とを分離し、上清を集める。
このようにして得られた培養上清、細胞質画分または膜可溶化画分中に含まれる該蛋白質の精製は、自体公知の分離・精製法を適切に組み合わせて行なうことができる。これらの公知の分離、精製法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの主として分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法などが用いられる。
かくして得られる蛋白質が遊離体で得られた場合には、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法によって塩に変換することができ、逆に塩で得られた場合には自体公知の方法あるいはそれに準じる方法により、遊離体または他の塩に変換することができる。
なお、組換え体が産生する蛋白質を、精製前または精製後に適当な蛋白修飾酵素を作用させることにより、任意に修飾を加えたり、ポリペプチドを部分的に除去することもできる。蛋白修飾酵素としては、例えば、トリプシン、キモトリプシン、アルギニルエンドペプチダーゼ、プロテインキナーゼ、グリコシダーゼなどが用いられる。
かくして生成する蛋白質またはその塩の活性は、標識した該蛋白質と特異的親和性を有する物質(例:レセプター)との結合実験および特異的抗体を用いたエンザイムイムノアッセイなどにより測定することができる。
【0042】
本発明はまた、上記の「本発明の蛋白質」もしくはその部分ペプチドまたはその塩(以下、「本発明の蛋白質等」と略記する場合もある)に対する抗体を提供する。該抗体は、「本発明の蛋白質」もしくはその部分ペプチドまたはその塩に対して特異的親和性を有するものであれば、モノクローナル抗体であってもポリクローナル抗体であってもよい。「本発明の蛋白質等」に対する抗体は、「本発明の蛋白質等」を抗原として用い、自体公知の抗体または抗血清の製造法に従って製造することができる。
【0043】
〔モノクローナル抗体の作製〕
(a)モノクローナル抗体産生細胞の作製
「本発明の蛋白質等」は、哺乳動物に対して投与により抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は通常2〜6週毎に1回ずつ、計2〜10回程度行なわれる。用いられる哺乳動物としては、例えば、サル、ウサギ、イヌ、モルモット、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギが挙げられるが、マウスおよびラットが好ましく用いられる。
モノクローナル抗体産生細胞の作製に際しては、抗原を免疫された温血動物、例えば、マウスから抗体価の認められた個体を選択し最終免疫の2〜5日後に脾臓またはリンパ節を採取し、それらに含まれる抗体産生細胞を骨髄腫細胞と融合させることにより、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを調製することができる。抗血清中の抗体価の測定は、例えば、後記の標識化レセプター蛋白質と抗血清とを反応させたのち、抗体に結合した標識剤の活性を測定することにより行なうことができる。融合操作は既知の方法、例えば、ケーラーとミルスタインの方法〔ネイチャー(Nature)、256巻、495頁(1975年)〕に従い実施することができる。融合促進剤としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)やセンダイウィルスなどが挙げられるが、好ましくはPEGが用いられる。
骨髄腫細胞としては、例えば、NS−1、P3U1、SP2/0などが挙げられるが、P3U1が好ましく用いられる。用いられる抗体産生細胞(脾臓細胞)数と骨髄腫細胞数との好ましい比率は1:1〜20:1程度であり、PEG(好ましくは、PEG1000〜PEG6000)が10〜80%程度の濃度で添加され、約20〜40℃、好ましくは約30〜37℃で約1〜10分間インキュベートすることにより効率よく細胞融合を実施できる。
【0044】
モノクローナル抗体産生ハイブリドーマのスクリーニングには種々の方法が使用できるが、例えば、抗原蛋白質を直接あるいは担体とともに吸着させた固相(例:マイクロプレート)にハイブリドーマ培養上清を添加し、次に放射性物質や酵素などで標識した抗免疫グロブリン抗体(細胞融合に用いられる細胞がマウスの場合、抗マウス免疫グロブリン抗体が用いられる)またはプロテインAを加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法、抗免疫グロブリン抗体またはプロテインAを吸着させた固相にハイブリドーマ培養上清を添加し、放射性物質や酵素などで標識した抗原蛋白質を加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法などが挙げられる。
モノクローナル抗体の選別は、自体公知あるいはそれに準じる方法に従って行なうことができるが、通常はHAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)を添加した動物細胞用培地などで行なうことができる。選別および育種用培地としては、ハイブリドーマが生育できるものならばどのような培地を用いても良い。例えば、1〜20%、好ましくは10〜20%の牛胎児血清を含むRPMI 1640培地、1〜10%の牛胎児血清を含むGIT培地(和光純薬工業(株))またはハイブリドーマ培養用無血清培地(SFM−101、日水製薬(株))などを用いることができる。培養温度は、通常20〜40℃、好ましくは約37℃である。培養時間は、通常5日〜3週間、好ましくは1週間〜2週間である。培養は、通常5%炭酸ガス下で行なうことができる。ハイブリドーマ培養上清の抗体価は、上記の抗血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。
【0045】
(b)モノクローナル抗体の精製
モノクローナル抗体の分離精製は、通常のポリクローナル抗体の分離精製と同様に免疫グロブリンの分離精製法〔例、塩析法、アルコール沈殿法、等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換体(例、DEAE)による吸脱着法、超遠心法、ゲルろ過法、抗原結合固相またはプロテインAあるいはプロテインGなどの活性吸着剤により抗体のみを採取し、結合を解離させて抗体を得る特異的精製法〕に従って行なうことができる。
【0046】
〔ポリクローナル抗体の作製〕
本発明のポリクローナル抗体は、それ自体公知あるいはそれに準じる方法にしたがって製造することができる。例えば、免疫抗原(「本発明の蛋白質等」)とキャリアー蛋白質との複合体をつくり、上記のモノクローナル抗体の製造法と同様に哺乳動物に免疫を行ない、該免疫動物から「本発明の蛋白質等」に対する抗体含有物を採取して、抗体の分離精製を行なうことにより製造できる。
哺乳動物を免疫するために用いられる免疫抗原とキャリアー蛋白質との複合体に関し、キャリアー蛋白質の種類およびキャリアーとハプテンとの混合比は、キャリアーに架橋させて免疫したハプテンに対して抗体が効率良くできれば、どの様なものをどの様な比率で架橋させてもよいが、例えば、ウシ血清アルブミン、ウシサイログロブリン、キーホール・リンペット・ヘモシアニン等を重量比でハプテン1に対し、約0.1〜20、好ましくは約1〜5の割合でカプルさせる方法が用いられる。
また、ハプテンとキャリアーのカップリングには、種々の縮合剤を用いることができるが、グルタルアルデヒドやカルボジイミド、マレイミド活性エステル、チオール基、ジチオビリジル基を含有する活性エステル試薬等が用いられる。
縮合生成物は、温血動物に対して、抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は、通常約2〜6週毎に1回ずつ、計約3〜10回程度行なうことができる。
ポリクローナル抗体は、上記の方法で免疫された哺乳動物の血液、腹水など、好ましくは血液から採取することができる。
抗血清中のポリクローナル抗体価の測定は、上記の血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。ポリクローナル抗体の分離精製は、上記のモノクローナル抗体の分離精製と同様の免疫グロブリンの分離精製法に従って行なうことができる。
【0047】
「本発明の蛋白質」もしくはその部分ペプチドまたはその塩、該蛋白質またはその部分ペプチドをコードするヌクレオチド(アンチセンスを含む)、および該蛋白質またはその部分ペプチドに対する抗体は、(1)「本発明の蛋白質」に対して特異的親和性を有する化合物またはその塩(例えば、「本発明の蛋白質」が分泌蛋白質の場合はそれに対するレセプター)の決定、(2)「本発明の蛋白質」の機能不全に関連する疾患の予防および/または治療剤、(3)「本発明の蛋白質」の過剰発現に関連する疾患の予防および/または治療剤、(4)遺伝子診断剤、(5)「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドの発現量を変化させる化合物のスクリーニング方法、(6)「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドの発現量を変化させる化合物を含有する各種疾病の予防および/または治療剤、(7)「本発明の蛋白質」に対して特異的親和性を有する化合物の定量法、(8)「本発明の蛋白質」と該蛋白質に対して特異的親和性を有する化合物との結合性を変化させる化合物(アゴニスト、アンタゴニストなど)のスクリーニング方法、(9)「本発明の蛋白質」と該蛋白質に対して特異的親和性を有する化合物との結合性を変化させる化合物(アゴニスト、アンタゴニスト)を含有する各種疾病の予防および/または治療剤、(10)「本発明の蛋白質」もしくはその部分ペプチドまたはその塩の定量、(11)細胞外液中の「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドの量を変化させる化合物のスクリーニング方法、(12)細胞外液中の「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドの量を変化させる化合物を含有する各種疾病の予防および/または治療剤、(13)「本発明の蛋白質」をコードするDNAを有する非ヒト動物の作製、(14)「本発明の蛋白質」をコードする遺伝子が不活性化されたノックアウト非ヒト動物の作製などに用いることができる。
特に、本発明の組換え型蛋白質またはその部分ペプチドの発現系を用いたアフィニティーアッセイ系を用いることによって、「本発明の蛋白質」と該蛋白質に対して特異的親和性を有する化合物(例:レセプター)との結合性を変化させる化合物(例:アゴニスト、アンタゴニスト)をスクリーニングすることができ、該アゴニストまたはアンタゴニストを各種疾病の予防・治療剤などとして使用することができる。
「本発明の蛋白質等」、本発明の蛋白質等をコードするDNA(以下、「本発明のDNA」と略記する場合がある)、「本発明のアンチセンスヌクレオチド」および本発明の蛋白質等に対する抗体(以下、「本発明の抗体」と略記する場合がある)の用途について、以下に具体的に説明する。
【0048】
(1)「本発明の蛋白質」に対して特異的親和性を有する化合物の決定
「本発明の蛋白質」もしくはその塩または「本発明の部分ペプチド」もしくはその塩は、「本発明の蛋白質」またはその塩に対して特異的親和性を有する化合物を探索し、または決定するための試薬として有用である。
すなわち、本発明は、「本発明の蛋白質」もしくはその塩または「本発明の部分ペプチド」もしくはその塩と、試験化合物とを接触させることを特徴とする「本発明の蛋白質」またはその塩に対して特異的親和性を有する化合物の決定方法を提供する。
試験化合物としては、公知のリガンド(例えば、アンギオテンシン、ボンベシン、カナビノイド、コレシストキニン、グルタミン、セロトニン、メラトニン、ニューロペプチドY、オピオイド、プリン、バソプレッシン、オキシトシン、PACAP、セクレチン、グルカゴン、カルシトニン、アドレノメジュリン、ソマトスタチン、GHRH、CRF、ACTH、GRP、PTH、VIP(バソアクティブ インテスティナル アンド リレイテッド ポリペプチド)、ソマトスタチン、ドーパミン、モチリン、アミリン、ブラジキニン、CGRP(カルシトニンジーンリレーティッドペプチド)、ロイコトリエン、パンクレアスタチン、プロスタグランジン、トロンボキサン、アデノシン、アドレナリン、αおよびβ−ケモカイン(chemokine)(例えば、IL−8、GROα、GROβ、GROγ、NAP−2、ENA−78、PF4、IP10、GCP−2、MCP−1、HC14、MCP−3、I−309、MIP1α、MIP−1β、RANTESなど)、エンドセリン、エンテロガストリン、ヒスタミン、ニューロテンシン、TRH、パンクレアティックポリペプタイドまたはガラニンなど)等のレセプターの他に、例えば、ヒトまたは哺乳動物の組織抽出物、無傷細胞、細胞膜画分、細胞培養上清などが用いられる。例えば、該組織抽出物、無傷細胞、細胞膜画分、細胞培養上清などを「本発明の蛋白質」に添加し、細胞刺激活性などを測定しながら分画し、最終的に単一のレセプター等を得ることができる。
【0049】
具体的には、「本発明の蛋白質」またはその塩に対して特異的親和性を有する化合物の決定方法は、「本発明の蛋白質」もしくはその部分ペプチドまたはその塩を用いるか、または組換え型蛋白質もしくはその部分ペプチドの発現系を構築し、該発現系を用いたアフィニティーアッセイ系を用いることによって、「本発明の蛋白質」に結合して細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+遊離、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化または脱リン酸化、c−fos活性化、pHの低下などを促進する活性または抑制する活性)を有する化合物(例えば、ペプチド、蛋白質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物など)あるいはそれらの塩を決定する方法である。
「本発明の蛋白質」またはその塩に対して特異的親和性を有する化合物の決定方法においては、「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドと試験化合物とを接触させた場合の、例えば、該蛋白質または該部分ペプチドに対する試験化合物の結合量や、細胞刺激活性などを測定することを特徴とする。
【0050】
より具体的には、本発明は、
▲1▼標識した試験化合物を、(i)「本発明の蛋白質」もしくはその塩または「本発明の部分ペプチド」もしくはその塩、(ii)「本発明の蛋白質」を含有する細胞外液または細胞培養上清、あるいは(iii)「本発明の蛋白質」をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することにより得られる「本発明の蛋白質」含有画分[(i)〜(iii)において、通常「本発明の蛋白質」は、例えば、上記の「本発明の抗体」を固定化した固相(例:細胞培養プレート等)を用いて固相化されている]に接触させた場合における、該固相上の「本発明の蛋白質等」に対する標識した試験化合物の結合量を測定することを特徴とする、「本発明の蛋白質」またはその塩に対して特異的親和性を有する化合物の決定方法、
▲2▼試験化合物を含有する脂質二重層膜(試験化合物を含む合成脂質二重層膜(例:リポソーム)、試験化合物を細胞膜上に含有する細胞または該細胞から調製される膜画分など)に、標識した「本発明の蛋白質」もしくはその塩または「本発明の部分ペプチド」もしくはその塩を接触させた場合における、該脂質二重層膜に対する「本発明の蛋白質等」の結合量を測定することを特徴とする、「本発明の蛋白質」またはその塩に対するレセプターの決定方法、および
▲3▼試験化合物を細胞膜上に含有する細胞を、(i)「本発明の蛋白質」もしくはその塩または「本発明の部分ペプチド」もしくはその塩、(ii)「本発明の蛋白質」を含有する細胞外液または細胞培養上清、あるいは(iii)「本発明の蛋白質」をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することにより得られる「本発明の蛋白質」含有画分に接触させた場合における、試験化合物を介した細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+遊離、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化または脱リン酸化、c−fosの活性化、pHの低下などを促進する活性または抑制する活性など)を測定することを特徴とする「本発明の蛋白質」またはその塩に対するレセプターの決定方法を提供する。
特に、上記▲1▼または▲2▼の試験を行ない、試験化合物が「本発明の蛋白質」に結合することを確認した後に、上記▲3▼の試験を行なうことが好ましい。
【0051】
まず、「本発明の蛋白質」に特異的親和性を有する化合物(例:レセプター)の決定方法に用いる蛋白質としては、上記した「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドを含有するものであれば何れのものであってもよいが、動物細胞を用いて大量発現させた蛋白質が適している。
「本発明の蛋白質」を製造するには、前述の発現方法が用いられるが、該蛋白質をコードするDNAを哺乳動物細胞や昆虫細胞で発現させることにより行なうことが好ましい。目的とする蛋白質部分をコードするDNA断片には、通常、相補DNAが用いられるが、必ずしもこれに制約されるものではない。例えば、遺伝子断片や合成DNAを用いてもよい。「本発明の蛋白質」をコードするDNA断片を宿主動物細胞に導入し、それらを効率よく発現させるためには、該DNA断片を昆虫を宿主とするバキュロウイルスに属する核多角体病ウイルス(nuclear polyhedrosis virus;NPV)のポリヘドリンプロモーター、SV40由来のプロモーター、レトロウイルスのプロモーター、メタロチオネインプロモーター、ヒトヒートショックプロモーター、サイトメガロウイルスプロモーター、SRαプロモーターなどの下流に組み込むのが好ましい。発現した蛋白質の量と質の検査はそれ自体公知の方法で行なうことができる。例えば、文献〔Nambi,P.ら、ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J. Biol. Chem.),267巻,19555〜19559頁,1992年〕に記載の方法に従って行なうことができる。
【0052】
本発明の「本発明の蛋白質」に特異的親和性を有する化合物(例:レセプター)の決定方法において、「本発明の蛋白質」もしくはその部分ペプチドまたはその塩を含有するものとしては、それ自体公知の方法に従って精製した該蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩であってもよいし、該蛋白質を含有する細胞外液または細胞培養上清を用いてもよい。「本発明の蛋白質」を含有する細胞外液としては、腎臓、脳、心臓、肝臓、精巣、骨格筋などの「本発明の蛋白質」を発現する器官の細胞の間質液等が挙げられ、また、細胞培養上清としては、上記器官または該器官由来の組織もしくは細胞の培養系の培養上清、あるいは上記した「本発明のポリヌクレオチド」を含む発現ベクターで形質転換された形質転換体の培養上清などが挙げられる。
【0053】
標識した試験化合物としては、〔3H〕、〔125I〕、〔14C〕、〔35S〕などで標識した公知のレセプター蛋白質(例えば、アンギオテンシン、ボンベシン、カナビノイド、コレシストキニン、グルタミン、セロトニン、メラトニン、ニューロペプチドY、オピオイド、プリン、バソプレッシン、オキシトシン、PACAP、セクレチン、グルカゴン、カルシトニン、アドレノメジュリン、ソマトスタチン、GHRH、CRF、ACTH、GRP、PTH、VIP(バソアクティブ インテスティナル アンド リイテッド ポリペプチド)、ソマトスタチン、ドーパミン、モチリン、アミリン、ブラジキニン、CGRP(カルシトニンジーンリレーティッドペプチド)、ロイコトリエン、パンクレアスタチン、プロスタグランジン、トロンボキサン、アデノシン、アドレナリン、αおよびβ−ケモカイン(chemokine)(例えば、IL−8、GROα、GROβ、GROγ、NAP−2、ENA−78、PF4、IP10、GCP−2、MCP−1、HC14、MCP−3、I−309、MIP1α、MIP−1β、RANTESなど)、エンドセリン、エンテロガストリン、ヒスタミン、ニューロテンシン、TRH、パンクレアティックポリペプタイドまたはガラニンなどの公知リガンドに対するレセプター)や未知の膜レセプター蛋白質もしくはペプチド(例えば、ゲノム情報から推定されるオーファンレセプターのcDNAを系統的にクローニングし、組換え生産したもの)、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物などが用いられる。
【0054】
具体的には、「本発明の蛋白質」またはその塩に対して特異的親和性を有する化合物(例:レセプター)の決定方法を行なうには、まず上記の「本発明の蛋白質」を含有する細胞外液もしくは細胞培養上清、またはそれらから自体公知の手法を用いて精製された該蛋白質を適当なバッファー(例えば、pH4〜10(望ましくはpH6〜8)のリン酸バッファー、トリス−塩酸バッファーなどのリガンドとレセプターとの結合を阻害しないバッファー等)に溶解した「本発明の蛋白質」溶液を調製する。該溶液には、非特異的結合を低減させる目的でCHAPS、Tween−80TM(花王−アトラス社)、ジギトニン、デオキシコレートなどの界面活性剤やウシ血清アルブミンやゼラチンなどの各種蛋白質を加えてもよく、さらに、プロテアーゼによるレセプターやリガンドの分解を抑える目的でPMSF、ロイペプチン、E−64(ペプチド研究所製)、ペプスタチンなどのプロテアーゼ阻害剤を添加してもよい。これらのいずれかの溶液を予め「本発明の抗体」を固定化した培養プレートと接触させて溶液中の「本発明の蛋白質」を固相化した後、一定量(5000cpm〜500000cpm)の〔3H〕、〔125I〕、〔14C〕、〔35S〕などで標識した試験化合物を固相と共存させる。非特異的結合量(NSB)を知るために大過剰の未標識の試験化合物を加えた反応チューブも用意する。反応は約0〜50℃、望ましくは約4〜37℃で、約20分〜24時間、望ましくは約30分〜3時間行なう。反応後、ガラス繊維濾紙等で濾過し、適量の同バッファーで洗浄した後、ガラス繊維濾紙に残存する放射活性を液体シンチレーションカウンターあるいはγ−カウンターで計測する。全結合量(B)から非特異的結合量(NSB)を引いたカウント(B−NSB)が0cpmを越える試験化合物を「本発明の蛋白質」またはその塩に対するレセプターとして選択することができる。
【0055】
本発明のレセプター決定方法において、試験化合物を含有する細胞を用いる場合、該細胞をグルタルアルデヒド、ホルマリンなどで固定化してもよい。固定化方法はそれ自体公知の方法に従って行なうことができる。
試験化合物を含有する細胞としては、例えば、試験化合物を発現した宿主細胞が挙げられるが、該宿主細胞としては、大腸菌、枯草菌、酵母、昆虫細胞、動物細胞などが用いられる。
細胞膜画分としては、細胞を破砕した後、それ自体公知の方法で得られる細胞膜が多く含まれる画分のことをいう。細胞の破砕方法としては、Potter−Elvehjem型ホモジナイザーで細胞を押し潰す方法、ワーリングブレンダーやポリトロン(Kinematica社製)による破砕、超音波による破砕、フレンチプレスなどで加圧しながら細胞を細いノズルから噴出させることによる破砕などが挙げられる。細胞膜の分画には、分画遠心分離法や密度勾配遠心分離法などの遠心力による分画法が主として用いられる。例えば、細胞破砕液を低速(500rpm〜3000rpm)で短時間(通常、約1〜10分)遠心し、上清をさらに高速(15000rpm〜30000rpm)で通常30分〜2時間遠心し、得られる沈澱を膜画分とする。該膜画分中には、発現した膜蛋白質と細胞由来のリン脂質や膜蛋白質などの膜成分が多く含まれる。
【0056】
試験化合物を含有する細胞やその膜画分中の試験化合物(膜蛋白質)の量は、1細胞当たり103〜108分子であるのが好ましく、105〜107分子であるのがより好適である。なお、発現量が多いほど膜画分当たりの「本発明の蛋白質」結合活性(比活性)が高くなり、高感度なスクリーニング系の構築が可能になるばかりでなく、同一ロットで大量の試料を測定できるようになる。
【0057】
「本発明の蛋白質」またはその塩に対して特異的親和性を有する化合物(例:レセプター)を決定する上記▲3▼の方法を実施するためには、該蛋白質と該化合物の相互作用を介する細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+遊離、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化または脱リン酸化、c−fosの活性化、pHの低下などを促進する活性または抑制する活性など)を公知の方法または市販の測定用キットを用いて測定することができる。具体的には、まず、試験化合物を細胞膜上に含有する細胞をマルチウェルプレート等にて培養する。「本発明の蛋白質」との結合性を決定するにあたっては、前もって新鮮な培地あるいは細胞に毒性を示さない適当なバッファーに交換し、「本発明の蛋白質」などを添加して一定時間インキュベートした後、細胞を抽出あるいは上清液を回収して、生成した産物をそれぞれの方法に従って定量する。細胞刺激活性の指標とする物質(例えば、アラキドン酸など)の生成が、細胞が含有する分解酵素によって検定困難な場合は、該分解酵素に対する阻害剤を添加してアッセイを行なってもよい。また、cAMP産生抑制などの活性については、フォルスコリンなどで細胞の基礎的産生量を増大させておいた細胞に対する産生抑制作用として検出することができる。
【0058】
「本発明の蛋白質」またはその塩に対して特異的親和性を有する化合物の決定用キットは、本発明の蛋白質もしくはその塩、本発明の部分ペプチドもしくはその塩、「本発明の蛋白質」を分泌する細胞の培養上清などを含有するものである。
本発明のレセプター決定用キットの例としては、次のものが挙げられる。
1.レセプター決定用試薬
▲1▼測定用緩衝液および洗浄用緩衝液
Hanks’ Balanced Salt Solution(ギブコ社製)に、0.05%のウシ血清アルブミン(シグマ社製)を加えたもの。
孔径0.45μmのフィルターで濾過滅菌し、4℃で保存するか、あるいは用時調製しても良い。
▲2▼蛋白質標品
「本発明の蛋白質」を発現させたCHO細胞を、12穴プレートに5×105個/穴で継代し、37℃、5%CO2、95%airで2日間培養したもの(該プレートは該蛋白質に対する抗体でコーティングされている)。
▲3▼標識試験化合物
市販の〔3H〕、〔125I〕、〔14C〕、〔35S〕などで標識した化合物、または適当な方法で標識化したもの。
水溶液の状態のものを4℃あるいは−20℃にて保存し、用時に測定用緩衝液にて1μMに希釈する。水に難溶性を示す試験化合物については、ジメチルホルムアミド、DMSO、メタノール等に溶解する。
▲4▼非標識試験化合物
標識化合物と同じものを100〜1000倍濃い濃度に調製する。
【0059】
2.測定法
▲1▼12穴組織培養用プレートにて培養した「本発明の蛋白質」発現CHO細胞および培養上清を除去後プレートを測定用緩衝液で同様に洗浄した後、490μlの測定用緩衝液を各穴に加える。
▲2▼標識試験化合物を5μl加え、室温にて1時間反応させる。非特異的結合量を知るためには非標識試験化合物を5μl加えておく。
▲3▼反応液を除去し、1mlの洗浄用緩衝液で3回洗浄する。プレートに結合した標識試験化合物を0.2N NaOH−1%SDSで溶解し、4mlの液体シンチレーターA(和光純薬製)と混合する。
▲4▼液体シンチレーションカウンター(ベックマン社製)を用いて放射活性を測定する。
【0060】
(2)「本発明の蛋白質」の機能不全に関連する疾患の予防・治療剤
上記(1)の方法において、「本発明の蛋白質」に対して特異的親和性を有する化合物が明らかになれば、該化合物が有する作用に応じて、▲1▼「本発明の蛋白質等」または▲2▼該蛋白質等をコードするDNAを、「本発明の蛋白質」の機能不全に関連する疾患の予防・治療剤などの医薬として使用することができる。
例えば、生体内において本発明の蛋白質が減少しているためにレセプターの生理作用が期待できない(該蛋白質の欠乏症)患者がいる場合に、▲1▼「本発明の蛋白質」を該患者に投与して該蛋白質の量を補充したり、▲2▼(イ)「本発明の蛋白質等」をコードするDNAを該患者に投与して発現させることによって、あるいは(ロ)対象となる細胞に「本発明の蛋白質等」をコードするDNAを導入して発現させた後に、該細胞を該患者に移植することなどによって、患者の体内における「本発明の蛋白質等」の量を増加させ、レセプターの作用を充分に発揮させることができる。即ち、「本発明の蛋白質等」およびそれらをコードするDNAは、安全で低毒性な、「本発明の蛋白質」の機能不全に関連する疾患の予防・治療剤として有用である。
特に「本発明の蛋白質」は、後腎組織培養の培地に添加することにより、あるいは培養後腎組織で強制発現させることにより、尿管芽の分枝・進展を促進することから、腎機能障害を伴う疾患(例:急性腎不全、慢性腎不全、尿毒症、急性腎炎、腎臓癌、急速進行性腎炎症候群、慢性腎炎、ネフローゼ症候群、慢性腎症、IgA腎症、ループス腎炎、腎硬化症、糖尿病性腎症、アミロイド症など)の予防および/または治療に有用である。また、「本発明の蛋白質」は、腎臓の他、脳、心臓、肝臓、精巣、骨格筋でも発現が認められ、これらの臓器でも臓器形成および細胞増殖因子として作用すると考えられるので、これらの臓器の機能障害を伴う疾患の予防・治療にも有用である。
「本発明の蛋白質等」を上記予防・治療剤として使用する場合は、常套手段に従って製剤化することができる。
一方、「本発明の蛋白質等」をコードするDNA(以下、「本発明のDNA」と略記する場合がある)を上記予防・治療剤として使用する場合は、「本発明のDNA」を単独あるいはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターなどの適当な発現ベクター中に挿入した後、常套手段に従って実施することができる。「本発明のDNA」は、そのままで、あるいは摂取促進のための補助剤とともに、遺伝子銃やハイドロゲルカテーテルのようなカテーテルによって投与できる。
例えば、▲1▼「本発明の蛋白質等」または▲2▼該蛋白質等をコードするDNAは、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤などとして経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤などの注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、▲1▼「本発明の蛋白質等」または▲2▼該蛋白質等をコードするDNAを含有する医薬は、例えば、これらを生理学的に認められる公知の担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な容量が得られるようにするものである。
【0061】
錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えばゼラチン、コーンスターチ、トラガント、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、上記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油などのような天然産出植物油などを溶解または懸濁させるなどの通常の製剤実施に従って処方することができる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)などが用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(例、ポリソルベート80TM、HCO−50)などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられ、溶解補助剤である安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。
【0062】
また、上記予防・治療剤は、例えば、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調整された注射液は通常、適当なアンプルに充填される。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトや哺乳動物(例えば、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
「本発明の蛋白質等」の投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に例えば、腎不全患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、腎不全患者(60kgとして)においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
「本発明のDNA」の投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に例えば、腎不全患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、腎不全患者(60kgとして)においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0063】
(3)「本発明の蛋白質」の過剰発現に関連する疾患の予防・治療剤
「本発明の蛋白質」もしくはその部分ペプチドまたはその塩に対する抗体は、「本発明の蛋白質」の関与するシグナル伝達機能、例えば、該蛋白質を介する細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+遊離、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化または脱リン酸化、c−fosの活性化、pHの低下などを促進する活性または抑制する活性など)を不活性化(すなわち中和)することができる。一方、「本発明の蛋白質」もしくはその部分ペプチドのアンチセンスヌクレオチド(リボザイムやRNAi活性を有する二本鎖オリゴRNAを含む)は、「本発明の蛋白質」をコードする遺伝子の転写、転写産物のプロセッシングおよび/またはmRNAからの翻訳をブロックすることにより、該蛋白質の発現を阻害することができる。従って、▲1▼「本発明の蛋白質等」に対する抗体または▲2▼該蛋白質等のアンチセンスヌクレオチドを、「本発明の蛋白質」の過剰発現に関連する疾患の予防・治療剤などの医薬として使用することができる。
「本発明の蛋白質」の発現をPKC阻害剤等により阻害したり、「本発明のアンチセンスヌクレオチド」を培養後腎組織に作用させたりすると、後腎組織の尿管芽分枝が抑制されることから、「本発明の抗体」および「本発明のアンチセンスヌクレオチド」は、腎形成の異常亢進を伴う疾患(例:腎臓癌、多発性嚢胞腎等)の予防および/または治療に有用である。また、「本発明の蛋白質」は、腎臓の他、脳、心臓、肝臓、精巣、骨格筋でも発現が認められ、これらの臓器でも臓器形成および細胞増殖因子として作用すると考えられるので、「本発明の抗体」および「本発明のアンチセンスヌクレオチド」は、これらの臓器の形成異常亢進を伴う疾患の予防・治療にも有用である。
「本発明の抗体」を上記予防・治療剤として使用する場合は、常套手段に従って製剤化することができる。例えば、「本発明の蛋白質等」を含有する医薬について上述したのと同様の方法により製剤化することができる。
「本発明のアンチセンスヌクレオチド」を上記予防・治療剤として使用する場合は、該アンチセンスヌクレオチドを単独で、あるいはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターなどの適当な発現ベクター中に挿入した後、常套手段に従って製剤化することができる。該アンチセンスヌクレオチドは、そのままで、あるいは摂取促進のための補助剤などの生理学的に認められる担体とともに製剤化し、遺伝子銃やハイドロゲルカテーテルのようなカテーテルによって投与できる。
「本発明の抗体」の投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に例えば、腎臓癌患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、腎臓癌患者(60kgとして)においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
「本発明のアンチセンスヌクレオチド」の投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に例えば、腎臓癌患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、腎臓癌患者(60kgとして)においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0064】
(4)遺伝子診断剤
「本発明のDNA」またはアンチセンスDNAは、プローブとして使用することにより、ヒトまたは哺乳動物(例えば、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)における「本発明の蛋白質」をコードするDNAまたはmRNAの異常(遺伝子異常)を検出することができるので、例えば、該DNAまたはmRNAの損傷、突然変異あるいは発現低下や、該DNAまたはmRNAの増加あるいは発現過多などの遺伝子診断剤として有用である。
「本発明のDNA」またはアンチセンスDNAを用いる上記の遺伝子診断は、例えば、自体公知のノーザンハイブリダイゼーションやPCR−SSCP法(ゲノミックス(Genomics),第5巻,874〜879頁(1989年)、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ユーエスエー(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America),第86巻,2766〜2770頁(1989年))などにより実施することができる。
例えば、ノーザンハイブリダイゼーションにより「本発明の蛋白質」の発現低下が検出された場合は、例えば、該蛋白質の機能不全に関連する疾患に罹患している、もしくは将来罹患する可能性が高いと診断することができる。また逆に、例えば、ノーザンハイブリダイゼーションにより「本発明の蛋白質」の発現過多が検出された場合は、例えば、該蛋白質の機能亢進に関連する疾患に罹患している、もしくは将来罹患する可能性が高いと診断することができる。
上述の通り、「本発明の蛋白質」は腎臓および他の臓器(例:脳、心臓、肝臓、精巣、骨格筋など)形成促進作用を有することから、「本発明のDNA」またはアンチセンスDNAは、これらの臓器形成異常の診断に有用である。
【0065】
(5)「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドの発現量を変化させる化合物のスクリーニング方法
「本発明のDNA」は、プローブとして用いることにより、「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドの発現量を変化させる化合物のスクリーニングに用いることができる。
すなわち本発明は、例えば、(i)非ヒト哺乳動物の▲1▼血液、▲2▼特定の臓器(例:腎臓、脳、心臓、肝臓、精巣、骨格筋など)、▲3▼臓器から単離した組織もしくは細胞のまたは(ii)形質転換体等に含まれる「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドのmRNA量を測定することによる、「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドの発現量を変化させる化合物のスクリーニング方法を提供する。
【0066】
「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドのmRNA量の測定は具体的には以下のようにして行なう。
(i)正常あるいは疾患モデル非ヒト哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど、より具体的には、肥満マウス、糖尿病マウス、腎不全マウス、高血圧ラット、動脈硬化ウサギ、担癌マウスなど)に対して、薬剤(例えば、抗肥満薬、抗糖尿病薬、抗腎不全薬、降圧薬、血管作用薬、抗癌剤など)あるいは物理的ストレス(例えば、浸水ストレス、電気ショック、明暗、低温など)などを与え、一定時間経過した後に、血液、あるいは特定の臓器(例えば、腎臓、脳、心臓、肝臓、精巣、骨格筋など)、または臓器から単離した組織(後腎組織など)あるいは細胞(尿細管上皮細胞など)を得る。
得られた細胞に含まれる「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドのmRNAは、例えば、通常の方法により細胞等からmRNAを抽出し、例えばTaqMan PCRなどの手法を用いることにより定量することができ、自体公知の手段によりノーザンブロットを行なうことにより解析することもできる。
(ii)「本発明の蛋白質」もしくはその部分ペプチドを発現する形質転換体を前述の方法に従い作製し、該形質転換体に含まれる「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドのmRNAを同様にして定量、解析することができる。
【0067】
「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドの発現量を変化させる化合物のスクリーニングは、
(i)正常あるいは疾患モデル非ヒト哺乳動物に対して、薬剤あるいは物理的ストレスなどを与える一定時間前(30分前ないし24時間前、好ましくは30分前ないし12時間前、より好ましくは1時間前ないし6時間前)もしくは一定時間後(30分後ないし3日後、好ましくは1時間後ないし2日後、より好ましくは1時間後ないし24時間後)、または薬剤あるいは物理的ストレスと同時に被検化合物を投与し、投与後一定時間経過後(30分後ないし3日後、好ましくは1時間後ないし2日後、より好ましくは1時間後ないし24時間後)、細胞に含まれる「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドのmRNA量を定量、解析することにより行なうことができ、
(ii)形質転換体を常法に従い培養する際に被検化合物を培地中に混合させ、一定時間培養後(1日後ないし7日後、好ましくは1日後ないし3日後、より好ましくは2日後ないし3日後)、該形質転換体に含まれる「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドのmRNA量を定量、解析することにより行なうことができる。
【0068】
本発明のスクリーニング方法を用いて得られる化合物またはその塩は、「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドの発現量を変化させる作用を有する化合物であり、具体的には、(イ)「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドの発現量を増加させることにより、リガンド−レセプター相互作用を介する細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+遊離、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化または脱リン酸化、c−fosの活性化、pHの低下などを促進する活性または抑制する活性など)を増強させる化合物、(ロ)「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドの発現量を減少させることにより、該細胞刺激活性を減弱させる化合物である。
該化合物としては、ペプチド、蛋白質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物などが挙げられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
該細胞刺激活性を増強させる化合物は、「本発明の蛋白質等」の生理活性を増強するための安全で低毒性な医薬として有用である。
該細胞刺激活性を減弱させる化合物は、「本発明の蛋白質等」の生理活性を減少させるための安全で低毒性な医薬として有用である。
【0069】
本発明のスクリーニング方法を用いて得られる化合物またはその塩を医薬組成物として使用する場合、常套手段に従って実施することができる。例えば、上記した本発明の蛋白質を含有する医薬と同様にして、錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤、無菌性溶液、懸濁液剤などとすることができる。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトや哺乳動物(例えば、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に例えば、腎不全患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、腎不全患者(60kgとして)においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0070】
(6)「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドの発現量を変化させる化合物を含有する各種疾病の予防・治療剤
「本発明の蛋白質」は前述のとおり、腎臓および他の臓器(例:脳、心臓、肝臓、精巣、骨格筋など)形成促進作用を有することから、これらの臓器の形態形成に重要な役割を果たしていると考えられる。従って、「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドの発現量を変化させる化合物は、腎臓および他の臓器(例:脳、心臓、肝臓、精巣、骨格筋など)の形成異常の予防・治療剤として用いることができる。
該化合物を「本発明の蛋白質」の臓器形成異常の予防・治療剤として使用する場合は、常套手段に従って製剤化することができる。
例えば、該化合物は、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤などとして経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤などの注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、該化合物を生理学的に認められる公知の担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な容量が得られるようにするものである。
【0071】
錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えばゼラチン、コーンスターチ、トラガント、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、上記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油などのような天然産出植物油などを溶解または懸濁させるなどの通常の製剤実施に従って処方することができる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)などが用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(例、ポリソルベート80TM、HCO−50)などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられ、溶解補助剤である安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。
【0072】
また、上記予防・治療剤は、例えば、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調整された注射液は通常、適当なアンプルに充填される。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトや哺乳動物(例えば、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に例えば、腎不全患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、腎不全患者(60kgとして)においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0073】
(7)「本発明の蛋白質」に対するレセプターの定量法
「本発明の蛋白質等」はレセプターに対して結合性を有しているので、生体内におけるレセプター濃度を感度良く定量することができる。
本発明の定量法は、例えば、競合法と組み合わせることによって用いることができる。すなわち、被検体を「本発明の蛋白質等」と接触させることによって被検体中のレセプター濃度を測定することができる。具体的には、例えば、以下の▲1▼または▲2▼などに記載の方法あるいはそれに準じる方法に従って用いることができる。
▲1▼入江寛編「ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和49年発行)
▲2▼入江寛編「続ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和54年発行)
【0074】
(8)「本発明の蛋白質」とレセプターとの結合性を変化させる化合物(アゴニスト、アンタゴニストなど)のスクリーニング方法
「本発明の蛋白質等」を用いるか、または組換え型蛋白質等の発現系を構築し、該発現系を用いたアフィニティーアッセイ系を用いることによって、「本発明の蛋白質等」とレセプターの結合性を変化させる化合物(例えば、ペプチド、蛋白質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物など)またはその塩を効率よくスクリーニングすることができる。
このような化合物には、(イ)レセプターを介して細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+遊離、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化または脱リン酸化、c−fosの活性化、pHの低下などを促進する活性または抑制する活性など)を有する化合物(いわゆる、「本発明の蛋白質」のレセプターに対するアゴニスト)、(ロ)該細胞刺激活性を有しない化合物(いわゆる、「本発明の蛋白質」のレセプターに対するアンタゴニスト)、(ハ)「本発明の蛋白質」とレセプターとの結合力を増強する化合物、あるいは(ニ)「本発明の蛋白質」とレセプターとの結合力を減少させる化合物などが含まれる(なお、上記(イ)の化合物は、上記したリガンド決定方法によってスクリーニングすることが好ましい)。
すなわち、本発明は、(i)「本発明の蛋白質」もしくはその部分ペプチドまたはその塩と、レセプターとを接触させた場合と(ii)「本発明の蛋白質」もしくはその部分ペプチドまたはその塩と、レセプターおよび試験化合物とを接触させた場合との比較を行なうことを特徴とするレセプターと「本発明の蛋白質」もしくはその部分ペプチドまたはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
本発明のスクリーニング方法においては、(i)と(ii)の場合における、例えば、該蛋白質等に対するレセプターの結合量、細胞刺激活性などを測定して、比較することを特徴とする。
【0075】
より具体的には、本発明は、
▲1▼標識したレセプターを、(i)「本発明の蛋白質等」、(ii)「本発明の蛋白質等」を含有する細胞外液または細胞培養上清あるいは(iii)「本発明のDNA」を含有する形質転換体を培養することによって得られる「本発明の蛋白質等」を含有する画分[(i)〜(iii)において、通常「本発明の蛋白質等」は、例えば、上記の「本発明の抗体」を固定化した固相(例:細胞培養プレート等)を用いて固相化されている]に接触させた場合と、標識したレセプターおよび試験化合物を上記(i)〜(iii)のいずれかに接触させた場合における、該固相上の「本発明の蛋白質等」に対する標識したレセプターの結合量を測定し、比較することを特徴とするレセプターと「本発明の蛋白質等」との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、
▲2▼レセプターを含有する脂質二重層膜(レセプターを含む合成脂質二重層膜(例:リポソーム)、レセプターを細胞膜上に含有する細胞または該細胞から調製される膜画分など)に、標識した「本発明の蛋白質等」を接触させた場合と、レセプターを含有する脂質二重層膜に、標識した「本発明の蛋白質等」および試験化合物を接触させた場合における、該脂質二重層膜に対する「本発明の蛋白質等」の結合量を測定し、比較するすることを特徴とするレセプターと「本発明の蛋白質等」との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、および
▲3▼レセプターを細胞膜上に含有する細胞を、(i)「本発明の蛋白質等」、(ii)「本発明の蛋白質等」を含有する細胞外液または細胞培養上清、あるいは(iii)「本発明のDNA」を含有する形質転換体を培養することによって得られる「本発明の蛋白質等」を含有する画分に接触させた場合と、レセプターを細胞膜上に含有する細胞を、試験化合物および上記(i)〜(iii)のいずれかに接触させた場合における、レセプターを介した細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+遊離、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化または脱リン酸化、c−fosの活性化、pHの低下などを促進する活性または抑制する活性など)を測定することを特徴とする「本発明の蛋白質」またはその塩に対するレセプターの決定方法を提供する。
【0076】
本発明のスクリーニング方法およびスクリーニング用キットの具体的な態様は、上記の「本発明の蛋白質」と特異的親和性を有する化合物(例:レセプター)の決定方法において詳述したものに準じて、適宜実施することができる。
【0077】
本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる化合物またはその塩は、「本発明の蛋白質等」とそれに対して特異的親和性を有する化合物(例:レセプター)との結合性を変化させる作用を有する化合物であり、具体的には、(イ)リガンド−レセプター相互作用を介して細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+遊離、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化または脱リン酸化、c−fosの活性化、pHの低下などを促進する活性または抑制する活性など)を有する化合物(いわゆる、「本発明の蛋白質」のレセプターに対するアゴニスト)、(ロ)該細胞刺激活性を有しない化合物(いわゆる、「本発明の蛋白質」のレセプターに対するアンタゴニスト)、(ハ)「本発明の蛋白質」とレセプターとの結合力を増強する化合物、あるいは(ニ)「本発明の蛋白質」とレセプターとの結合力を減少させる化合物である。
該化合物としては、ペプチド、蛋白質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物などが挙げられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
「本発明の蛋白質」のレセプターに対するアゴニストは、レセプターに対して「本発明の蛋白質」が有する生理活性と同様の作用を有しているので、該リガンド活性に応じて安全で低毒性な医薬として有用である。
「本発明の蛋白質」のレセプターに対するアンタゴニストは、レセプターに対して「本発明の蛋白質」が有する生理活性を抑制することができるので、該リガンド活性を抑制する安全で低毒性な医薬として有用である。
「本発明の蛋白質」とレセプターとの結合力を増強する化合物は、レセプターに対して「本発明の蛋白質」が有する生理活性を増強するための安全で低毒性な医薬として有用である。
「本発明の蛋白質」とレセプターとの結合力を減少させる化合物は、レセプターに対して「本発明の蛋白質」が有する生理活性を減少させるための安全で低毒性な医薬として有用である。
【0078】
本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる化合物またはその塩を上述の医薬組成物として使用する場合、常套手段に従って実施することができる。例えば、上記した「本発明の蛋白質」を含有する医薬と同様にして、錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤、無菌性溶液、懸濁液剤などとすることができる。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトや哺乳動物(例えば、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に例えば、腎不全患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、腎不全患者(60kgとして)においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0079】
(9)「本発明の蛋白質」とレセプターとの結合性を変化させる化合物(アゴニスト、アンタゴニスト)を含有する各種疾病の予防・治療剤
「本発明の蛋白質」は前述のとおり、腎臓および他の臓器(例:脳、心臓、肝臓、精巣、骨格筋など)形成促進作用を有することから、これらの臓器の形態形成に重要な役割を果たしていると考えられる。従って、上記の化合物は、腎臓および他の臓器(例:脳、心臓、肝臓、精巣、骨格筋など)の形成異常の予防・治療剤として用いることができる。
該化合物を「本発明の蛋白質」の臓器形成異常の予防・治療剤として使用する場合は、常套手段に従って製剤化することができる。
例えば、該化合物は、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤などとして経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤などの注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、該化合物を生理学的に認められる公知の担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な容量が得られるようにするものである。
【0080】
錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えばゼラチン、コーンスターチ、トラガント、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、上記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油などのような天然産出植物油などを溶解または懸濁させるなどの通常の製剤実施に従って処方することができる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)などが用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(例、ポリソルベート80TM、HCO−50)などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられ、溶解補助剤である安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。
【0081】
また、上記予防・治療剤は、例えば、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調整された注射液は通常、適当なアンプルに充填される。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトや哺乳動物(例えば、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に例えば、腎不全患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、腎不全患者(60kgとして)においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0082】
(10)「本発明の蛋白質」もしくはその部分ペプチドまたはその塩の定量
「本発明の抗体」は、「本発明の蛋白質等」を特異的に認識することができるので、被検液中の「本発明の蛋白質等」の定量、特にサンドイッチ免疫測定法による定量などに使用することができる。すなわち、本発明は、例えば、(i)「本発明の抗体」と、被検液および標識化蛋白質等とを競合的に反応させ、該抗体に結合した標識化蛋白質等の割合を測定することを特徴とする被検液中の「本発明の蛋白質等」の定量法、
(ii)被検液と担体上に不溶化した「本発明の抗体」および標識化された「本発明の抗体」とを同時あるいは連続的に反応させたのち、不溶化担体上の標識剤の活性を測定することを特徴とする被検液中の「本発明の蛋白質等」の定量法を提供する。
上記(ii)においては、不溶化抗体と標識化抗体とが互いに「本発明の蛋白質等」との結合を妨害しないような抗原認識部位を有することが好ましい(例えば、一方の抗体が「本発明の蛋白質等」のN端部を認識し、他方の抗体が該蛋白質等のC端部に反応する等)。
【0083】
「本発明の蛋白質等」に対するモノクローナル抗体(以下、本発明のモノクローナル抗体と称する場合がある)を用いて「本発明の蛋白質等」の測定を行なえるほか、組織染色等による検出を行なうこともできる。これらの目的には、抗体分子そのものを用いてもよく、また、抗体分子のF(ab’)2 、Fab’、あるいはFab画分を用いてもよい。「本発明の蛋白質等」に対する抗体を用いる測定法は、特に制限されるべきものではなく、被測定液中の抗原量(例えば、「本発明の蛋白質」量)に対応した抗体、抗原もしくは抗体−抗原複合体の量を化学的または物理的手段により検出し、これを既知量の抗原を含む標準液を用いて作製した標準曲線より算出する測定法であれば、いずれの測定法を用いてもよい。例えば、ネフロメトリー、競合法、イムノメトリック法およびサンドイッチ法が好適に用いられるが、感度、特異性の点で、後述するサンドイッチ法を用いるのが特に好ましい。
標識物質を用いる測定法に用いられる標識剤としては、例えば、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質などが用いられる。放射性同位元素としては、例えば、〔125I〕、〔131I〕、〔3H〕、〔14C〕などが用いられる。上記酵素としては、安定で比活性の大きなものが好ましく、例えば、β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素などが用いられる。蛍光物質としては、例えば、フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネートなどが用いられる。発光物質としては、例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなどが用いられる。さらに、抗体あるいは抗原と標識剤との結合にビオチン−アビジン系を用いることもできる。
【0084】
抗原あるいは抗体の不溶化に当っては、物理吸着を用いてもよく、また通常、蛋白質あるいは酵素等を不溶化、固定化するのに用いられる化学結合を用いる方法でもよい。担体としては、例えば、アガロース、デキストラン、セルロースなどの不溶性多糖類、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、シリコン等の合成樹脂、あるいはガラス等が用いられる。
サンドイッチ法においては不溶化した本発明のモノクローナル抗体に被検液を反応させ(1次反応)、さらに標識化した本発明のモノクローナル抗体を反応させ(2次反応)たのち、不溶化担体上の標識剤の活性を測定することにより被検液中の「本発明の蛋白質」量を定量することができる。1次反応と2次反応は逆の順序に行なっても、また、同時に行なってもよいし時間をずらして行なってもよい。標識化剤および不溶化の方法は上記のそれらに準じることができる。
また、サンドイッチ法による免疫測定法において、固相用抗体あるいは標識用抗体に用いられる抗体は必ずしも1種類である必要はなく、測定感度を向上させる等の目的で2種類以上の抗体の混合物を用いてもよい。
本発明のサンドイッチ法による蛋白質等の測定法においては、1次反応と2次反応に用いられる本発明のモノクローナル抗体は蛋白質等の結合する部位が相異なる抗体が好ましく用いられる。即ち、1次反応および2次反応に用いられる抗体は、例えば、2次反応で用いられる抗体が、「本発明の蛋白質」のC端部を認識する場合、1次反応で用いられる抗体は、好ましくはC端部以外、例えばN端部を認識する抗体が用いられる。
【0085】
本発明のモノクローナル抗体をサンドイッチ法以外の測定システム、例えば、競合法、イムノメトリック法あるいはネフロメトリーなどに用いることができる。競合法では、被検液中の抗原と標識抗原とを抗体に対して競合的に反応させたのち、未反応の標識抗原と(F)と抗体と結合した標識抗原(B)とを分離し(B/F分離)、B,Fいずれかの標識量を測定し、被検液中の抗原量を定量する。本反応法には、抗体として可溶性抗体を用い、B/F分離をポリエチレングリコール、上記抗体に対する第2抗体などを用いる液相法、および、第1抗体として固相化抗体を用いるか、あるいは、第1抗体は可溶性のものを用い第2抗体として固相化抗体を用いる固相化法とが用いられる。
イムノメトリック法では、被検液中の抗原と固相化抗原とを一定量の標識化抗体に対して競合反応させた後固相と液相を分離するか、あるいは、被検液中の抗原と過剰量の標識化抗体とを反応させ、次に固相化抗原を加え未反応の標識化抗体を固相に結合させたのち、固相と液相を分離する。次に、いずれかの相の標識量を測定し被検液中の抗原量を定量する。
また、ネフロメトリーでは、ゲル内あるいは溶液中で抗原抗体反応の結果、生じた不溶性の沈降物の量を測定する。被検液中の抗原量が僅かであり、少量の沈降物しか得られない場合にもレーザーの散乱を利用するレーザーネフロメトリーなどが好適に用いられる。
【0086】
これら個々の免疫学的測定法を本発明の測定方法に適用するにあたっては、特別の条件、操作等の設定は必要とされない。それぞれの方法における通常の条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えて「本発明の蛋白質」またはその塩の測定系を構築すればよい。これらの一般的な技術手段の詳細については、総説、成書などを参照することができる〔例えば、入江 寛編「ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和49年発行)、入江 寛編「続ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和54年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(医学書院、昭和53年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第2版)(医学書院、昭和57年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第3版)(医学書院、昭和62年発行)、「メソッズ・イン・エンジモノジー(Methods in ENZYMOLOGY)」 Vol.70 (Immunochemical Techniques (Part A))、同書 Vol. 73 (Immunochemical Techniques (Part B))、同書 Vol. 74 (Immunochemical Techniques (Part C))、同書 Vol. 84 (Immunochemical Techniques (Part D: Selected Immunoassays))、同書 Vol. 92 (Immunochemical Techniques (Part E: Monoclonal Antibodiesand General Immunoassay Methods))、同書 Vol. 121 (Immunochemical Techniques (Part I: Hybridoma Technology and Monoclonal Antibodies))(以上、アカデミックプレス社発行)など参照〕。
以上のように、「本発明の抗体」を用いることによって、「本発明の蛋白質」またはその塩を感度良く定量することができる。
さらに、「本発明の抗体」を用いて、生体内での「本発明の蛋白質」またはその塩を定量することによって、「本発明の蛋白質」の機能不全もしくは亢進に関連する各種疾患の診断をすることができる。
また、「本発明の抗体」は、体液や組織などの被検体中に存在する「本発明の蛋白質等」を特異的に検出するために使用することができる。また、「本発明の蛋白質等」を精製するために使用する抗体カラムの作製、精製時の各分画中の「本発明の蛋白質等」の検出、被検細胞内における「本発明の蛋白質」の挙動の分析などのために使用することができる。
【0087】
(11)細胞外における「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドの量を変化させる化合物のスクリーニング方法
「本発明の抗体」は、「本発明の蛋白質」もしくはその部分ペプチドまたはその塩を特異的に認識することができるので、細胞外における「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドの量を変化させる化合物のスクリーニングに用いることができる。
すなわち本発明は、例えば、
(i)非ヒト哺乳動物の血漿、尿、腎臓その他の臓器(例:脳、心臓、肝臓、精巣、骨格筋など)の間質液等の細胞外液を分離し、それに含まれる「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドを定量することによる、細胞外における「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドの量を変化させる化合物のスクリーニング方法、
(ii)「本発明の蛋白質」もしくはその部分ペプチドを発現する形質転換体の培養上清を分離し、該培養上清に含まれる「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドを定量することによる、細胞外における「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドの量を変化させる化合物のスクリーニング方法を提供する。
【0088】
細胞外液に含まれる「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドの定量は具体的には以下のようにして行なう。
(i)正常あるいは疾患モデル非ヒト哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど、より具体的には、肥満マウス、糖尿病マウス、腎不全マウス、高血圧ラット、動脈硬化ウサギ、担癌マウスなど)に対して、薬剤(例えば、抗肥満薬、抗糖尿病薬、抗腎不全薬、降圧剤、血管作用薬、抗癌剤など)あるいは物理的ストレス(例えば、浸水ストレス、電気ショック、明暗、低温など)などを与え、一定時間経過した後に、血液、あるいは血漿、尿、特定の臓器(例えば、腎臓、脳、心臓、肝臓、精巣、骨格筋など)の間質液等の細胞外液を得る。得られた細胞外液は、必要に応じてさらに遠心分離や濾過、カラム分画などの手法を用いて分画することもできる。
【0089】
細胞外液に含まれる「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドは、例えば、「本発明の抗体」を用いたサンドイッチ免疫測定法、ウエスタンブロット解析などにより定量することができる。
かかるサンドイッチ免疫測定法は前述の方法と同様にして行なうことができ、ウエスタンブロットは自体公知の手段により行なうことができる。
【0090】
(ii)「本発明の蛋白質」もしくはその部分ペプチドを発現する形質転換体を前述の方法に従い作製し、細胞培養上清に含まれる「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドを定量することができる。
【0091】
細胞外液における「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドの量を変化させる化合物のスクリーニングは、
(i)正常あるいは疾患モデル非ヒト哺乳動物に対して、薬剤あるいは物理的ストレスなどを与える一定時間前(30分前ないし24時間前、好ましくは30分前ないし12時間前、より好ましくは1時間前ないし6時間前)もしくは一定時間後(30分後ないし3日後、好ましくは1時間後ないし2日後、より好ましくは1時間後ないし24時間後)、または薬剤あるいは物理的ストレスと同時に被検化合物を投与し、投与後一定時間経過後(30分後ないし3日後、好ましくは1時間後ないし2日後、より好ましくは1時間後ないし24時間後)、細胞外液における「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドの量を定量することにより行なうことができ、
(ii)形質転換体を常法に従い培養する際に被検化合物を培地中に混合させ、一定時間培養後(1日後ないし7日後、好ましくは1日後ないし3日後、より好ましくは2日後ないし3日後)、細胞培養上清における「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドの量を定量することにより行なうことができる。
【0092】
本発明のスクリーニング方法を用いて得られる化合物またはその塩は、細胞外における「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドの量を変化させる作用を有する化合物であり、具体的には、(イ)細胞外における「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドの量を増加させることにより、リガンド−レセプター相互作用を介する細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+遊離、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化または脱リン酸化、c−fosの活性化、pHの低下などを促進する活性または抑制する活性など)を増強させる化合物、(ロ)細胞外における「本発明の蛋白質」またはその部分ペプチドの量を減少させることにより、該細胞刺激活性を減弱させる化合物である。
該化合物としては、ペプチド、蛋白質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物などが挙げられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
該細胞刺激活性を増強させる化合物は、「本発明の蛋白質等」の生理活性を増強するための安全で低毒性な医薬として有用である。
該細胞刺激活性を減弱させる化合物は、「本発明の蛋白質等」の生理活性を減少させるための安全で低毒性な医薬として有用である。
【0093】
本発明のスクリーニング方法を用いて得られる化合物またはその塩を医薬組成物として使用する場合、常套手段に従って実施することができる。例えば、上記した本発明のレセプター蛋白質を含有する医薬と同様にして、錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤、無菌性溶液、懸濁液剤などとすることができる。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトや哺乳動物(例えば、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に例えば、腎不全患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、腎不全患者(60kgとして)においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0094】
(12)細胞外における「本発明の蛋白質等」またはその部分ペプチドの量を変化させる化合物を含有する各種疾病の予防・治療剤
「本発明の蛋白質」は前述のとおり、腎臓および他の臓器(例:脳、心臓、肝臓、精巣、骨格筋など)形成促進作用を有することから、これらの臓器の形態形成に重要な役割を果たしていると考えられる。従って、上記の化合物は、腎臓および他の臓器(例:脳、心臓、肝臓、精巣、骨格筋など)の形成異常の予防・治療剤として用いることができる。
該化合物を「本発明の蛋白質」の臓器形成異常の予防・治療剤として使用する場合は、常套手段に従って製剤化することができる。
例えば、該化合物は、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤などとして経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤などの注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、該化合物を生理学的に認められる公知の担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な容量が得られるようにするものである。
【0095】
錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えばゼラチン、コーンスターチ、トラガント、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、上記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油などのような天然産出植物油などを溶解または懸濁させるなどの通常の製剤実施に従って処方することができる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)などが用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(例、ポリソルベート80TM、HCO−50)などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられ、溶解補助剤である安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。
【0096】
また、上記予防・治療剤は、例えば、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調整された注射液は通常、適当なアンプルに充填される。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトや哺乳動物(例えば、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に例えば、腎不全患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、腎不全患者(60kgとして)においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0097】
(13)「本発明の蛋白質」をコードするDNAを有する非ヒト動物の作製
本発明は、外来性の「本発明の蛋白質」をコードするDNA(以下、「本発明の外来性DNA」と略記する)またはその変異DNA(「本発明の外来性変異DNA」と略記する場合がある)を有する非ヒト哺乳動物を提供する。
すなわち、本発明は、
〔1〕「本発明の外来性DNA」またはその変異DNAを有する非ヒト哺乳動物、
〔2〕非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である第〔1〕記載の動物、
〔3〕ゲッ歯動物がマウスまたはラットである第〔2〕記載の動物、および
〔4〕「本発明の外来性DNA」またはその変異DNAを含有し、哺乳動物において発現しうる組換えベクターを提供するものである。
「本発明の外来性DNA」またはその変異DNAを有する非ヒト哺乳動物(以下、「本発明のDNA転移動物」と略記する)は、未受精卵、受精卵、精子およびその始原細胞を含む胚芽細胞などに対して、好ましくは、非ヒト哺乳動物の発生における胚発生の段階(さらに好ましくは、単細胞または受精卵細胞の段階でかつ一般に8細胞期以前)に、リン酸カルシウム法、電気パルス法、リポフェクション法、凝集法、マイクロインジェクション法、パーティクルガン法、DEAE−デキストラン法などにより目的とするDNAを転移することによって作出することができる。また、該DNA転移方法により、体細胞、生体の臓器、組織細胞などに目的とする本発明の外来性DNAを転移し、細胞培養、組織培養などに利用することもでき、さらに、これら細胞を上述の胚芽細胞と自体公知の細胞融合法により融合させることにより「本発明のDNA転移動物」を作出することもできる。
非ヒト哺乳動物としては、例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、マウス、ラットなどが用いられる。なかでも、病体動物モデル系の作成の面から個体発生および生物サイクルが比較的短く、また、繁殖が容易なゲッ歯動物、とりわけマウス(例えば、純系として、C57BL/6系統,DBA2系統など、交雑系として、B6C3F1系統,BDF1系統,B6D2F1系統,BALB/c系統,ICR系統など)またはラット(例えば、Wistar,SDなど)などが好ましい。
哺乳動物において発現しうる組換えベクターにおける「哺乳動物」としては、上記の非ヒト哺乳動物の他にヒトなどがあげられる。
【0098】
「本発明の外来性DNA」とは、非ヒト哺乳動物が本来有している「本発明のDNA」ではなく、いったん哺乳動物から単離・抽出された「本発明のDNA」をいう。
「本発明の変異DNA」としては、元の「本発明のDNA」の塩基配列に変異(例えば、突然変異など)が生じたもの、具体的には、塩基の付加、欠失、他の塩基への置換などが生じたDNAなどが用いられ、また、異常DNAも含まれる。
該異常DNAとしては、異常な本発明の蛋白質等を発現させるDNAを意味し、例えば、正常な「本発明の蛋白質」の機能を抑制する蛋白質等を発現させるDNAなどが用いられる。
「本発明の外来性DNA」は、対象とする動物と同種あるいは異種のどちらの哺乳動物由来のものであってもよい。「本発明のDNA」を対象動物に転移させるにあたっては、該DNAを動物細胞で発現させうるプロモーターの下流に結合したDNAコンストラクトとして用いるのが一般に有利である。例えば、本発明のヒトDNAを転移させる場合、これと相同性が高い「本発明のDNA」を有する各種哺乳動物(例えば、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウスなど)由来のDNAを発現させうる各種プロモーターの下流に、本発明のヒトDNAを結合したDNAコンストラクト(例、ベクターなど)を対象哺乳動物の受精卵、例えば、マウス受精卵へマイクロインジェクションすることによって「本発明のDNA」を高発現するDNA転移哺乳動物を作出することができる。
【0099】
「本発明のDNA」を担持させる発現ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド、枯草菌由来のプラスミド、酵母由来のプラスミド、λファージなどのバクテリオファージ、モロニー白血病ウィルスなどのレトロウィルス、ワクシニアウィルスまたはバキュロウィルスなどの動物ウイルスなどが用いられる。なかでも、大腸菌由来のプラスミド、枯草菌由来のプラスミドまたは酵母由来のプラスミドなどが好ましく用いられる。
上記のDNA発現調節を行なうプロモーターとしては、例えば、▲1▼ウイルス(例、シミアンウイルス、サイトメガロウイルス、モロニーマウス白血病ウイルス、JCウイルス、乳癌ウイルス、ポリオウイルスなど)に由来するDNAのプロモーター、▲2▼各種哺乳動物(ヒト、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウスなど)由来のプロモーター、例えば、アルブミン、インスリンII、ウロプラキンII、エラスターゼ、エリスロポエチン、エンドセリン、筋クレアチンキナーゼ、グリア線維性酸性蛋白質、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、血小板由来成長因子β、ケラチンK1,K10およびK14、コラーゲンI型およびII型、サイクリックAMP依存蛋白質キナーゼβIサブユニット、ジストロフィン、酒石酸抵抗性アルカリフォスファターゼ、心房ナトリウム利尿性因子、内皮レセプターチロシンキナーゼ(一般にTie2と略される)、ナトリウムカリウムアデノシン3リン酸化酵素(Na,K−ATPase)、ニューロフィラメント軽鎖、メタロチオネインIおよびIIA、メタロプロティナーゼ1組織インヒビター、MHCクラスI抗原(H−2L)、H−ras、レニン、ドーパミンβ−水酸化酵素、甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)、ペプチド鎖延長因子1α(EF−1α)、βアクチン、αおよびβミオシン重鎖、ミオシン軽鎖1および2、ミエリン基礎蛋白質、チログロブリン、Thy−1、免疫グロブリン、H鎖可変部(VNP)、血清アミロイドPコンポーネント、ミオグロビン、トロポニンC、平滑筋αアクチン、プレプロエンケファリンA、バソプレシンなどのプロモーターなどが用いられる。なかでも、全身で高発現することが可能なサイトメガロウイルスプロモーター、ヒトペプチド鎖延長因子1α(EF−1α)のプロモーター、ヒトおよびニワトリβアクチンプロモーターなどが好適である。
上記ベクターは、DNA転移哺乳動物において目的とするメッセンジャーRNAの転写を終結する配列(一般にターミネターと呼ばれる)を有していることが好ましく、例えば、ウイルス由来および各種哺乳動物由来の各DNAの配列を用いることができ、好ましくは、シミアンウイルスのSV40ターミネターなどが用いられる。
【0100】
その他、目的とする外来性DNAをさらに高発現させる目的で各DNAのスプライシングシグナル、エンハンサー領域、真核DNAのイントロンの一部などをプロモーター領域の5’上流、プロモーター領域と翻訳領域間あるいは翻訳領域の3’下流 に連結することも目的により可能である。
正常な「本発明の蛋白質等」の翻訳領域は、ヒトまたは各種哺乳動物(例えば、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウスなど)由来の肝臓、腎臓、甲状腺細胞、線維芽細胞由来DNAおよび市販の各種ゲノムDNAライブラリーよりゲノムDNAの全てあるいは一部として、または肝臓、腎臓、甲状腺細胞、線維芽細胞由来RNAより公知の方法により調製された相補DNAを原料として取得することが出来る。また、外来性の異常DNAは、上記の細胞または組織より得られた正常な本発明の蛋白質等の翻訳領域を点突然変異誘発法により変異させた翻訳領域を作製することによって得ることができる。
該翻訳領域は転移動物において発現しうるDNAコンストラクトとして、前記のプロモーターの下流(および所望により転写終結部位の上流)に連結させる通常のDNA工学的手法により作製することができる。
受精卵細胞段階における「本発明の外来性DNA」の転移は、対象哺乳動物の胚芽細胞および体細胞のすべてに存在するように確保される。DNA転移後の作出動物の胚芽細胞において、「本発明の外来性DNA」が存在することは、作出動物の後代がすべて、その胚芽細胞および体細胞のすべてに「本発明の外来性DNA」を保持することを意味する。「本発明の外来性DNA」を受け継いだこの種の動物の子孫はその胚芽細胞および体細胞のすべてに「本発明の外来性DNA」を有する。
本発明の外来性正常DNAを転移させた非ヒト哺乳動物は、交配により外来性DNAを安定に保持することを確認して、該DNA保有動物として通常の飼育環境で継代飼育することが出来る。
受精卵細胞段階における「本発明の外来性DNA」の転移は、対象哺乳動物の胚芽細胞および体細胞の全てに過剰に存在するように確保される。DNA転移後の作出動物の胚芽細胞において本発明の外来性DNAが過剰に存在することは、作出動物の子孫が全てその胚芽細胞および体細胞の全てに「本発明の外来性DNA」を過剰に有することを意味する。「本発明の外来性DNA」を受け継いだこの種の動物の子孫はその胚芽細胞および体細胞の全てに「本発明の外来性DNA」を過剰に有する。
導入DNAを相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得し、この雌雄の動物を交配することによりすべての子孫が該DNAを過剰に有するように繁殖継代することができる。
【0101】
本発明の正常DNAを有する非ヒト哺乳動物は、本発明の正常DNAが高発現させられており、内在性の正常DNAの機能を増強することにより最終的に本発明の蛋白質の機能亢進症を発症することがあり、その病態モデル動物として利用することができる。例えば、本発明の正常DNA転移動物を用いて、本発明の蛋白質の機能亢進症や、該蛋白質が関連する疾患の病態機序の解明およびこれらの疾患の治療方法の検討を行なうことが可能である。
また、本発明の外来性正常DNAを転移させた哺乳動物は、遊離した本発明の蛋白質の増加症状を有することから、該蛋白質に関連する疾患に対する治療薬のスクリーニング試験にも利用可能である。
一方、本発明の外来性異常DNAを有する非ヒト哺乳動物は、交配により外来性DNAを安定に保持することを確認して該DNA保有動物として通常の飼育環境で継代飼育することが出来る。さらに、目的とする外来DNAを前述のプラスミドに組み込んで原科として用いることができる。プロモーターとのDNAコンストラク卜は、通常のDNA工学的手法によって作製することができる。受精卵細胞段階における本発明の異常DNAの転移は、対象哺乳動物の胚芽細胞および体細胞の全てに存在するように確保される。DNA転移後の作出動物の胚芽細胞において本発明の異常DNAが存在することは、作出動物の子孫が全てその胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の異常DNAを有することを意味する。「本発明の外来性DNA」を受け継いだこの種の動物の子孫は、その胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の異常DNAを有する。導入DNAを相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得し、この雌雄の動物を交配することによりすべての子孫が該DNAを有するように繁殖継代することができる。
【0102】
本発明の異常DNAを有する非ヒト哺乳動物は、本発明の異常DNAが高発現させられており、内在性の正常DNAの機能を阻害することにより最終的に「本発明の蛋白質」の機能不活性型不応症となることがあり、その病態モデル動物として利用することができる。例えば、本発明の異常DNA転移動物を用いて、「本発明の蛋白質」の機能不活性型不応症の病態機序の解明およびこの疾患を治療方法の検討を行なうことが可能である。
また、具体的な利用可能性としては、本発明の異常DNA高発現動物は、「本発明の蛋白質」の機能不活性型不応症における本発明の異常蛋白質による正常蛋白質の機能阻害(dominant negative作用)を解明するモデルとなる。
また、本発明の外来異常DNAを転移させた哺乳動物は、遊離した本発明の異常蛋白質の増加症状を有することから、「本発明の蛋白質」の機能不活性型不応症に対する治療薬スクリーニング試験にも利用可能である。
また、上記2種類の「本発明のDNA転移動物」のその他の利用可能性として、例えば、
▲1▼組織培養のための細胞源としての使用、
▲2▼「本発明のDNA転移動物」の組織中のDNAもしくはRNAを直接分析するか、またはDNAにより発現された蛋白質を分析することによる、「本発明の蛋白質」により特異的に発現あるいは活性化する蛋白質等との関連性についての解析、
▲3▼DNAを有する組織の細胞を標準組織培養技術により培養し、これらを使用しての、一般に培養困難な組織からの細胞の機能の研究、
▲4▼上記▲3▼記載の細胞を用いることによる細胞の機能を高めるような薬剤のスクリーニング、および
▲5▼本発明の変異蛋白質の単離精製およびその抗体作製などが考えられる。
さらに、「本発明のDNA転移動物」を用いて、「本発明の蛋白質」の機能不活性型不応症などを含む、該蛋白質に関連する疾患の臨床症状を調べることができ、また、「本発明の蛋白質」に関連する疾患モデルの各臓器におけるより詳細な病理学的所見が得られ、新しい治療方法の開発、さらには、該疾患による二次的疾患の研究および治療に貢献することができる。
また、「本発明のDNA転移動物」から各臓器を取り出し、細切後、トリプシンなどの蛋白質分解酵素により、遊離したDNA転移細胞の取得、その培養またはその培養細胞の系統化を行なうことが可能である。さらに、「本発明の蛋白質」産生細胞の特定化、アポトーシス、分化あるいは増殖との関連性、またはそれらにおけるシグナル伝達機構を調べ、それらの異常を調べることなどができ、「本発明の蛋白質」およびその作用解明のための有効な研究材料となる。
さらに、「本発明のDNA転移動物」を用いて、「本発明の蛋白質」の機能不活性型不応症を含む、該蛋白質に関連する疾患の治療薬の開発を行なうために、上述の検査法および定量法などを用いて、有効で迅速な該疾患治療薬のスクリーニング法を提供することが可能となる。また、「本発明のDNA転移動物」または「本発明の外来性DNA」発現ベクターを用いて、「本発明の蛋白質」が関連する疾患のDNA治療法を検討、開発することが可能である。
【0103】
(14)「本発明の蛋白質」をコードする遺伝子が不活性化されたノックアウト非ヒト動物の作製
本発明は、「本発明のDNA」が不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞および本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物を提供する。
すなわち、本発明は、
〔1〕「本発明のDNA」が不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞、
〔2〕該DNAがレポーター遺伝子(例、大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子)を導入することにより不活性化された第〔1〕項記載の胚幹細胞、
〔3〕ネオマイシン耐性である第〔1〕項記載の胚幹細胞、
〔4〕非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である第〔1〕項記載の胚幹細胞、
〔5〕ゲッ歯動物がマウスである第〔4〕項記載の胚幹細胞、
〔6〕「本発明のDNA」が不活性化された該DNA発現不全非ヒト哺乳動物、
〔7〕該DNAがレポーター遺伝子(例、大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子)を導入することにより不活性化され、該レポーター遺伝子が「本発明のDNA」に対するプロモーターの制御下で発現しうる第〔6〕項記載の非ヒト哺乳動物、
〔8〕非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である第〔6〕項記載の非ヒト哺乳動物、
〔9〕ゲッ歯動物がマウスである第〔8〕項記載の非ヒト哺乳動物、および
〔10〕第〔7〕項記載の動物に、試験化合物を投与し、レポーター遺伝子の発現を検出することを特徴とする「本発明のDNA」に対するプロモーター活性を促進または阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
「本発明のDNA」が不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞とは、該非ヒト哺乳動物が有する「本発明のDNA」に人為的に変異を加えることにより、DNAの発現能を抑制するか、もしくは該DNAがコードしている「本発明の蛋白質」の活性を実質的に喪失させることにより、DNAが実質的に「本発明の蛋白質」の発現能を有さない(以下、本発明のノックアウトDNAと称することがある)非ヒト哺乳動物の胚幹細胞(以下、ES細胞と略記する)をいう。
非ヒト哺乳動物としては、前記と同様のものが用いられる。
「本発明のDNA」に人為的に変異を加える方法としては、例えば、遺伝子工学的手法により該DNA配列の一部又は全部の削除、他DNAを挿入または置換させることによって行なうことができる。これらの変異により、例えば、コドンの読み取り枠をずらしたり、プロモーターあるいはエキソンの機能を破壊することにより本発明のノックアウトDNAを作製すればよい。
【0104】
「本発明のDNA」が不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞(以下、「本発明のDNA不活性化ES細胞」または「本発明のノックアウトES細胞」と略記する)の具体例としては、例えば、目的とする非ヒト哺乳動物が有する「本発明のDNA」を単離し、そのエキソン部分にネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子を代表とする薬剤耐性遺伝子、あるいはlacZ(β−ガラクトシダーゼ遺伝子)、cat(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子)を代表とするレポーター遺伝子等を挿入することによりエキソンの機能を破壊するか、あるいはエキソン間のイントロン部分に遺伝子の転写を終結させるDNA配列(例えば、poly A付加シグナルなど)を挿入し、完全なメッセンジャーRNAを合成できなくすることによって、結果的に遺伝子を破壊するように構築したDNA配列を有するDNA鎖(以下、ターゲッティングベクターと略記する)を、例えば相同組換え法により該動物の染色体に導入し、得られたES細胞について「本発明のDNA」上あるいはその近傍のDNA配列をプローブとしたサザンハイブリダイゼーション解析あるいはターゲッティングベクター上のDNA配列とターゲッティングベクター作製に使用した「本発明のDNA」以外の近傍領域のDNA配列をプライマーとしたPCR法により解析し、本発明のノックアウトES細胞を選別することにより得ることができる。
また、相同組換え法等により「本発明のDNA」を不活化させる元のES細胞としては、例えば、前述のような既に樹立されたものを用いてもよく、また公知のEvansとKaufmanの方法に準じて新しく樹立したものでもよい。例えば、マウスのES細胞の場合、現在、一般的には129系のES細胞が使用されているが、免疫学的背景がはっきりしていないので、これに代わる純系で免疫学的に遺伝的背景が明らかなES細胞を取得するなどの目的で例えば、C57BL/6マウスやC57BL/6の採卵数の少なさをDBA/2との交雑により改善したBDF1マウス(C57BL/6とDBA/2とのF1)を用いて樹立したものなども良好に用いうる。BDF1マウスは、採卵数が多く、かつ、卵が丈夫であるという利点に加えて、C57BL/6マウスを背景に持つので、これを用いて得られたES細胞は病態モデルマウスを作出したとき、C57BL/6マウスとバッククロスすることでその遺伝的背景をC57BL/6マウスに代えることが可能である点で有利に用い得る。
また、ES細胞を樹立する場合、一般には受精後3.5日目の胚盤胞を使用するが、これ以外に8細胞期胚を採卵し胚盤胞まで培養して用いることにより効率よく多数の初期胚を取得することができる。
また、雌雄いずれのES細胞を用いてもよいが、通常雄のES細胞の方が生殖系列キメラを作出するのに都合が良い。また、煩雑な培養の手間を削減するためにもできるだけ早く雌雄の判別を行なうことが望ましい。
【0105】
ES細胞の雌雄の判定方法としては、例えば、PCR法によりY染色体上の性決定領域の遺伝子を増幅、検出する方法が、その1例としてあげることができる。この方法を使用すれば、従来、核型分析をするのに約106個の細胞数を要していたのに対して、1コロニー程度のES細胞数(約50個)で済むので、培養初期におけるES細胞の第一次セレクションを雌雄の判別で行なうことが可能であり、早期に雄細胞の選定を可能にしたことにより培養初期の手間は大幅に削減できる。
また、第二次セレクションとしては、例えば、G−バンディング法による染色体数の確認等により行うことができる。得られるES細胞の染色体数は正常数の100%が望ましいが、樹立の際の物理的操作等の関係上困難な場合は、ES細胞の遺伝子をノックアウトした後、正常細胞(例えば、マウスでは染色体数が2n=40である細胞)に再びクローニングすることが望ましい。
このようにして得られた胚幹細胞株は、通常その増殖性は大変良いが、個体発生できる能力を失いやすいので、注意深く継代培養することが必要である。例えば、STO繊維芽細胞のような適当なフィーダー細胞上でLIF(1−10000U/ml)存在下に炭酸ガス培養器内(好ましくは、5%炭酸ガス、95%空気または5%酸素、5%炭酸ガス、90%空気)で約37℃で培養するなどの方法で培養し、継代時には、例えば、トリプシン/EDTA溶液(通常0.001−0.5%トリプシン/0.1−5mM EDTA、好ましくは約0.1%トリプシン/1mM EDTA)処理により単細胞化し、新たに用意したフィーダー細胞上に播種する方法などがとられる。このような継代は、通常1−3日毎に行なうが、この際に細胞の観察を行い、形態的に異常な細胞が見受けられた場合はその培養細胞は放棄することが望まれる。
ES細胞は、適当な条件により、高密度に至るまで単層培養するか、または細胞集塊を形成するまで浮遊培養することにより、頭頂筋、内臓筋、心筋などの種々のタイプの細胞に分化させることが可能であり〔M. J. Evans及びM. H. Kaufman, ネイチャー(Nature)第292巻、154頁、1981年;G. R. Martin,プロシーディングス・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.)第78巻、7634頁、1981年;T. C. Doetschman ら、ジャーナル・オブ・エンブリオロジー・アンド・エクスペリメンタル・モルフォロジー(J. Embryol. Exp. Morphol.)、第87巻、27頁、1985年〕、本発明のES細胞を分化させて得られる本発明のDNA発現不全細胞は、インビトロにおける「本発明の蛋白質」または該蛋白質の細胞生物学的検討において有用である。
【0106】
本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、該動物のmRNA量を公知方法を用いて測定して間接的にその発現量を比較することにより、正常動物と区別することが可能である。
該非ヒト哺乳動物としては、前記と同様のものが用いられる。
本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、例えば、前述のようにして作製したターゲッティングベクターをマウス胚幹細胞またはマウス卵細胞に導入し、導入されたターゲッティングベクター中の「本発明のDNA」が不活性化されたDNA配列が遺伝子相同組換えにより、マウス胚幹細胞またはマウス卵細胞の染色体上の本発明のDNAと入れ換わる相同組換えをさせることにより、「本発明のDNA」をノックアウトさせることができる。哺乳動物における組換えの多くは非相同的であるため、相同組換えを起こした細胞をスクリーニングする手段として、例えば、「本発明のDNA」の内部にネオマイシン耐性遺伝子などの薬剤耐性遺伝子を挿入するとともに、「本発明のDNA」の近傍にチミジンキナーゼ(tk)遺伝子を含むターゲッティングベクターを構築して胚幹細胞または卵細胞に導入し、挿入された薬剤耐性遺伝子に対応する薬剤(例えば、ネオマイシン耐性遺伝子であればG418等)およびガンシクロビル存在下で生存する細胞を選択する方法が挙げられる。即ち、相同組換えにより本発明の挿入変異DNAが染色体上に組み込まれた場合、tk遺伝子は排除されるのでガンシクロビル耐性であるが、非相同組換えで組み込まれた場合はtk遺伝子も同時に組み込まれるためガンシクロビル感受性となる。また、tk遺伝子の代わりにジフテリア毒素遺伝子などを用いれば、ランダム挿入された細胞は該毒素の産生により死滅するので、単一の薬剤での選択が可能となる。
「本発明のDNA」がノックアウトされた細胞の最終的な確認は、「本発明のDNA」上またはその近傍のDNA配列をプローブとしたサザンハイブリダイゼーション解析またはターゲッティングベクター上のDNA配列と、ターゲッティングベクターに使用したマウス由来の「本発明のDNA」以外の近傍領域のDNA配列とをプライマーとしたPCR法による解析を用いて行なうことができる。
非ヒト哺乳動物胚幹細胞を用いた場合は、遺伝子相同組換えにより、「本発明のDNA」が不活性化された細胞株をクローニングし、その細胞を適当な時期、例えば、8細胞期の非ヒト哺乳動物胚または胚盤胞に注入し、作製したキメラ胚を偽妊娠させた該非ヒト哺乳動物の子宮に移植する。作出された動物は正常な「本発明のDNA」座をもつ細胞と人為的に変異した「本発明のDNA」座をもつ細胞との両者から構成されるキメラ動物である。
該キメラ動物の生殖細胞の一部が変異した「本発明のDNA」座をもつ場合、このようなキメラ個体と正常個体を交配することにより得られた個体群より、全ての組織が人為的に変異を加えた「本発明のDNA」座をもつ細胞で構成された個体を、例えば、コートカラーの判定等により選別することにより得られる。このようにして得られた個体は、通常ヘテロ発現不全個体であるので、当該ヘテロ発現不全個体同志を交配し、それらの産仔から「本発明の蛋白質」のホモ発現不全個体を得ることができる。
【0107】
卵細胞を使用する場合は、例えば、卵細胞核内にマイクロインジェクション法でDNA溶液を注入することによりターゲッティングベクターを染色体内に導入したトランスジェニック非ヒト哺乳動物を得ることができ、これらのトランスジェニック非ヒト哺乳動物から、遺伝子相同組換えにより「本発明のDNA」座に変異のあるものを選択することにより得られる。
このようにして「本発明のDNA」がノックアウトされている個体は、交配により得られた動物個体も該DNAがノックアウトされていることを確認して通常の飼育環境で飼育継代を行なうことができる。
さらに、生殖系列の取得および保持についても常法に従えばよい。すなわち、該不活化DNAの保有する雌雄の動物を交配することにより、該不活化DNAを相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得しうる。得られたホモザイゴート動物は、母親動物に対して、正常個体1,ホモザイゴート複数になるような状態で飼育することにより効率的に得ることができる。ヘテロザイゴート動物の雌雄を交配することにより、該不活化DNAを有するホモザイゴートおよびヘテロザイゴート動物を繁殖継代する。
「本発明のDNA」が不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞は、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物を作出する上で、非常に有用である。
また、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、「本発明の蛋白質」により誘導され得る種々の生物活性を欠失するため、該蛋白質の生物活性の不活性化を原因とする疾病のモデルとなり得るので、これらの疾病の原因究明及び治療法の検討に有用である。
【0108】
(14a)「本発明のDNA」の欠損や損傷などに起因する疾病に対して治療・予防効果を有する化合物のスクリーニング方法
本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、「本発明のDNA」の欠損や損傷などに起因する疾病に対して治療・予防効果を有する化合物のスクリーニングに用いることができる。
すなわち、本発明は、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物に試験化合物を投与し、該動物の変化を観察・測定することを特徴とする、「本発明のDNA」の欠損や損傷などに起因する疾病に対して治療・予防効果を有する化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
該スクリーニング方法において用いられる本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物としては、前記と同様のものがあげられる。
試験化合物としては、例えば、ペプチド、蛋白質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などがあげられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
具体的には、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物を、試験化合物で処理し、無処理の対照動物と比較し、該動物の各器官、組織、疾病の症状などの変化を指標として試験化合物の治療・予防効果を試験することができる。
試験動物を試験化合物で処理する方法としては、例えば、経口投与、静脈注射などが用いられ、試験動物の症状、試験化合物の性質などにあわせて適宜選択することができる。また、試験化合物の投与量は、投与方法、試験化合物の性質などにあわせて適宜選択することができる。
【0109】
該スクリーニング方法を用いて得られる化合物は、上記した試験化合物から選ばれた化合物であり、「本発明の蛋白質」の欠損や損傷などによって引き起こされる疾患、例えば、腎臓および他の臓器(例:脳、心臓、肝臓、精巣、骨格筋など)の形態形成異常に対する安全で低毒性な治療・予防剤などの医薬として使用することができる。さらに、上記スクリーニングで得られた化合物から誘導される化合物も同様に用いることができる。
該スクリーニング方法で得られた化合物は塩を形成していてもよく、該化合物の塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸、有機酸など)や塩基(例、アルカリ金属など)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸など)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸など)との塩などが用いられる。
該スクリーニング方法で得られた化合物またはその塩を含有する医薬は、前記した「本発明の蛋白質」とレセプターとの結合性を変化させる化合物を含有する医薬と同様にして製造することができる。
このようにして得られる製剤は、安全で低毒性であるので、例えば、ヒトまたは哺乳動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、該化合物を経口投与する場合、一般的に例えば、腎不全患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、腎不全患者(60kgとして)においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0110】
(14b)「本発明のDNA」に対するプロモーターの活性を促進または阻害する化合物をスクリーニング方法
本発明は、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物に、試験化合物を投与し、レポーター遺伝子の発現を検出することを特徴とする「本発明のDNA」に対するプロモーターの活性を促進または阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
上記スクリーニング方法において、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物としては、前記した本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物の中でも、「本発明のDNA」がレポーター遺伝子を導入することにより不活性化され、該レポーター遺伝子が「本発明のDNA」に対するプロモーターの制御下で発現しうるものが用いられる。
試験化合物としては、前記と同様のものがあげられる。
レポーター遺伝子としては、前記と同様のものが用いられ、β−ガラクトシダーゼ遺伝子(lacZ)、可溶性アルカリフォスファターゼ遺伝子またはルシフェラーゼ遺伝子などが好適である。
「本発明のDNA」をレポーター遺伝子で置換された本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物では、レポーター遺伝子が「本発明のDNA」に対するプロモーターの支配下に存在するので、レポーター遺伝子がコードする物質の発現をトレースすることにより、プロモーターの活性を検出することができる。
例えば、「本発明の蛋白質」をコードするDNA領域の一部を大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子(lacZ)で置換している場合、本来、「本発明の蛋白質」の発現する組織で、該蛋白質の代わりにβ−ガラクトシダーゼが発現する。従って、例えば、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−ガラクトピラノシド(X−gal)のようなβ−ガラクトシダーゼの基質となる試薬を用いて染色することにより、簡便に「本発明の蛋白質」の動物生体内における発現状態を観察することができる。具体的には、「本発明の蛋白質」を欠損するマウスまたはその組織切片をグルタルアルデヒドなどで固定し、リン酸緩衝生理食塩液(PBS)で洗浄後、X−galを含む染色液で、室温または37℃付近で、約30分ないし1時間反応させた後、組織標本を1mM EDTA/PBS溶液で洗浄することによって、β−ガラクトシダーゼ反応を停止させ、呈色を観察すればよい。また、常法に従い、lacZをコードするmRNAを検出してもよい。
上記スクリーニング方法を用いて得られる化合物またはその塩は、上記した試験化合物から選ばれた化合物であり、「本発明のDNA」に対するプロモーター活性を促進または阻害する化合物である。
該スクリーニング方法で得られた化合物は塩を形成していてもよく、該化合物の塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸など)や塩基(例、有機酸など)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸など)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸など)との塩などが用いられる。
【0111】
「本発明のDNA」に対するプロモーター活性を促進する化合物またはその塩は、「本発明の蛋白質」の発現を促進し、該蛋白質の機能を促進することができるので、例えば、「本発明の蛋白質」の機能不全に関連する疾患などの予防・治療薬などの医薬として有用である。
「本発明のDNA」に対するプロモーター活性を阻害する化合物またはその塩は、「本発明の蛋白質」の発現を阻害し、該蛋白質の機能を阻害することができるので、例えば、該蛋白質の発現過多に関連する疾患などの予防・治療薬などの医薬として有用である。
「本発明の蛋白質」の機能不全もしくは発現過多に関連する疾患としては、例えば、腎臓および他の臓器(例:脳、心臓、肝臓、精巣、骨格筋など)の形態形成異常等が挙げられる。
さらに、上記スクリーニングで得られた化合物から誘導される化合物も同様に用いることができる。
【0112】
該スクリーニング方法で得られた化合物またはその塩を含有する医薬は、前記した「本発明の蛋白質」とレセプターとの結合性を変化させる化合物を含有する医薬と同様にして製造することができる。
このようにして得られる製剤は、安全で低毒性であるので、例えば、ヒトまたは哺乳動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進または阻害する化合物を経口投与する場合、一般的に例えば、腎不全患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、腎不全患者(60kgとして)においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
このように、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、「本発明のDNA」に対するプロモーターの活性を促進または阻害する化合物またはその塩をスクリーニングする上で極めて有用であり、本発明のDNA発現不全に起因する各種疾患の原因究明または予防・治療薬の開発に大きく貢献することができる。
また、「本発明の蛋白質」遺伝子のプロモーター領域を含有するDNAを使って、その下流に種々の蛋白質をコードする遺伝子を連結し、これを動物の卵細胞に注入していわゆるトランスジェニック動物(遺伝子移入動物)を作成すれば、特異的にその蛋白質を合成させ、その生体での作用を検討することも可能となる。さらに上記プロモーター部分に適当なレポーター遺伝子を結合させ、これが発現するような細胞株を樹立すれば、「本発明の蛋白質」そのものの体内での産生能力を特異的に促進もしくは抑制する作用を持つ低分子化合物の探索系として使用できる。
【0113】
本明細書および図面において、塩基やアミノ酸などを略号で表示する場合、IUPAC−IUB Commission on Biochemical Nomenclature による略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものであり、その例を下記する。またアミノ酸に関し光学異性体があり得る場合は、特に明示しなければL体を示すものとする。
DNA :デオキシリボ核酸
cDNA :相補的デオキシリボ核酸
A :アデニン
T :チミン
G :グアニン
C :シトシン
RNA :リボ核酸
mRNA :メッセンジャーリボ核酸
dATP :デオキシアデノシン三リン酸
dTTP :デオキシチミジン三リン酸
dGTP :デオキシグアノシン三リン酸
dCTP :デオキシシチジン三リン酸
ATP :アデノシン三リン酸
EDTA :エチレンジアミン四酢酸
SDS :ドデシル硫酸ナトリウム
【0114】
Gly :グリシン
Ala :アラニン
Val :バリン
Leu :ロイシン
Ile :イソロイシン
Ser :セリン
Thr :スレオニン
Cys :システイン
Met :メチオニン
Glu :グルタミン酸
Asp :アスパラギン酸
Lys :リジン
Arg :アルギニン
His :ヒスチジン
Phe :フェニルアラニン
Tyr :チロシン
Trp :トリプトファン
Pro :プロリン
Asn :アスパラギン
Gln :グルタミン
pGlu :ピログルタミン酸
Me :メチル基
Et :エチル基
Bu :ブチル基
Ph :フェニル基
TC :チアゾリジン−4(R)−カルボキサミド基
【0115】
また、本明細書中で繁用される置換基、保護基および試薬を下記の記号で表記する。
Tos :p−トルエンスルフォニル
CHO :ホルミル
Bzl :ベンジル
Cl2Bzl :2,6−ジクロロベンジル
Bom :ベンジルオキシメチル
Z :ベンジルオキシカルボニル
Cl−Z :2−クロロベンジルオキシカルボニル
Br−Z :2−ブロモベンジルオキシカルボニル
Boc :t−ブトキシカルボニル
DNP :ジニトロフェノール
Trt :トリチル
Bum :t−ブトキシメチル
Fmoc :N−9−フルオレニルメトキシカルボニル
HOBt :1−ヒドロキシベンズトリアゾール
HOOBt :3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−
1,2,3−ベンゾトリアジン
HONB :1−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド
DCC :N、N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド
【0116】
【実施例】
以下に実施例を示して、本発明をより詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0117】
参考例1 PKC活性化剤処理による尿管芽分枝・進展の促進
Serlachius E. et al., Kidney Int. 52(4): 901−910 (1997)記載の方法に従ってマウス胎生12日目の後腎組織を採取し、PKC活性化剤である酢酸ミリスチン酸ホルボール(PMA)およびPKC阻害剤であるセラミド(N−acetyl−D−Sphingosine)をそれぞれ添加して後腎の器官培養を行った。その結果、PMAの添加は尿管芽の分枝・進展を著明に促進するのに対し、セラミドの添加は尿管芽の分枝・進展を抑制することが示された。すなわち、PKCによりその発現が調節される、腎尿細管分枝・進展を促進する因子の存在が示唆された。
【0118】
実施例1 マウス由来clone#22 cDNAの単離
ディファレンシャルスクリーニング
参考例1と同様に、マウス胎生12日目の後腎組織を採取して器官培養を行った。培養開始時から5nmol/LのPMA(Sigma社)および100mmol/LのN−acetyl−D−Sphingosine (Sigma社)を添加し3日間培養した。それぞれの培養器官からTrizol(Invitrogen社)処理によりtotal RNAを抽出した後、2.5unitのDNAase(Takara社)処理を37℃で15分間行った。この鋳型RNA 2.5ngを用いて、mRNA Fingerprinting kit(ニッポンジーン社製)の添付プロトコールに従い、3’−Anchor Primer及びArbitrary PrimerによるPCRを行った結果、未変性ポリアクリルアミド電気泳動ゲル上にPMA処理とN−acetyl−D−Sphingosine処理とで差の認められたバンドが複数得られた。
【0119】
(2)ホモロジー検索によるclone#22の抽出とcDNAのクローニング
プロトコールに従って、上記(1)で得られたPMA処理で発現が上昇するそれそれのバンドから遺伝子断片を回収して塩基配列を決定し、それらのすべてをBLASTによりホモロジー検索を行った。その中で、過去に機能、発現等の全くわかっていないヒト由来CGI−204と相同性が高い配列を示す断片に注目し、対応するマウス遺伝子をESTを対象としたBLASTホモロジー検索により見出した。この遺伝子のcDNA配列はGenBankにXM_130843の登録番号を付され、登録・公開されている(また、N末の2アミノ酸のコード配列を欠くcDNA配列がBC029173で登録されている)。この配列を基にプライマー(5’−ATGGCTGCGACCAGTCTAGTGGGTATT−3’(配列番号3)および5’−GACACTACTTGATTTCCGTTCTTGAGA−3’(配列番号4))を作成し、マウス後腎よりrandom primerを用いて作成したcDNAライブラリーを鋳型としてExTaq(Takara社製)を用いたPCRを行い、目的のcDNA clone#22を得ることに成功した。
【0120】
実施例2 PMA処理によるclone#22の発現増強
得られたclone#22の遺伝子発現がPMA処理した後腎組織で実際に増大していることを確認するために、RT−PCRを実施した。PMA処理した培養後腎あるいはセラミド処理した培養後腎のサンプルから調製したtotal RNA 1μgをもとにcDNAをrandom primerで作製し、上記PCR primerを用いて95℃−58℃−72℃、それぞれ1分間のサイクルを30回行った。結果を図1に示す。PMA処理腎(レーン1)では、セラミド処理腎(レーン2)と比較して本遺伝子が高発現していることが確認された。
【0121】
実施例3 clone#22およびそのヒトホモログの臓器発現分布
得られたclone#22 cDNAを
プローブとしてMouse MTN blot(Clontech社製)を用いたノーザンブロッティングを行ったところ、マウス脳、精巣、心臓、腎臓などにおいても発現が認められた(図2)。ヒト成人組織由来RNAを用いたノーザンブロッティングの成績では心臓、肝臓、骨格筋で、ヒト胎児組織では脳、肝臓、腎臓に発現が認められた。
【0122】
実施例4 アンチセンスオリゴヌクレオチドによる尿細管分枝抑制
次に、20merのアンチセンスオリゴヌクレオチド(1st ATGから始まる20mer:ATGGCTGCGACCAGTCTAGT(配列番号5)に対するアンチセンスS−オリゴヌクレオチド)、および比較のスクランブルS−オリゴヌクレオチド(GGATTTACCTATTGCTGG(配列番号6))を作成し、後腎の器官培養に8mmol/Lの濃度で添加したところ、ケラチンによる尿管芽の染色(図3、方法は上述の非特許文献5に従った)において、アンチセンスオリゴヌクレオチド群では、尿細管の分枝・進展は対照群およびスクランブルS−オリゴヌクレオチド群に比べて抑制されることが明らかとなった。
【0123】
実施例5 培地へのclone#22蛋白質添加による培養後腎の分化促進
pCDNA3.1HisAベクター(Invitrogen社)のBamHIサイトに本遺伝子cDNAを挿入したプラスミドを鋳型とし、TNT Coupled Reticulocyte Lysate System(Promega社製)を用い、添付プロトコールに従って転写翻訳させ、タグ付きのリコンビナント蛋白を作成し、器官培養に200,000倍希釈および200倍希釈で添加したところ、レクチンによる尿細管様構造の染色(方法は上述の非特許文献5に従った)において、後腎の分化が促進されていることが認められた(図4)。その時のリコンビナント蛋白の効果の程度は、添加群のレクチンにより染色される構造物が53.7±9.5個であったのに対し、対照(pCDNA3.1HisAベクターを鋳型にしたReticulocyte Lysate反応物のみ添加)群のレクチンにより染色される構造物は37.3±3.1個であった。
これらの結果より、今回PKC活性化剤、阻害剤を添加した後腎より抽出したRNAを用いてdifferential displayを行い得られた遺伝子産物は、後腎において尿管芽の分枝・進展、ひいては尿細管前駆構造物の誘導に関与していることが示唆された。また、その発現は、腎臓に止まらず、心臓、肝臓、脳、精巣などの多臓器に認められ、これら組織の発生、分化にも重大な役割を果たすと考えられた。
【0124】
【発明の効果】
本発明によれば、従来よりも強力な腎形成因子が提供され、腎機能障害における再生医療への応用が期待できる。また、本発明の蛋白質を用いれば、新規の腎形成促進活性を有する化合物の探索が可能となる。
【0125】
【配列表フリーテキスト】
[配列番号3]
マウスclone#22 cDNAを増幅するためのプライマーとして機能すべく設計されたオリゴヌクレオチド。
[配列番号4]
マウスclone#22 cDNAを増幅するためのプライマーとして機能すべく設計されたオリゴヌクレオチド。
[配列番号5]
マウスclone#22 mRNAのN末端20mer配列。
[配列番号6]
対照のスクランブルS−オリゴヌクレオチドとして設計されたオリゴヌクレオチド。
【0126】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】clone#22 mRNAのマウス成体各臓器での発現を示すゲル電気泳動写真である。内部標準としてアクチンを用いた。
【図2】PMA処理およびセラミド処理(対照)におけるマウス培養後腎組織でのclone#22の発現を示すゲル電気泳動写真である。
【図3】アンチセンスS−オリゴヌクレオチド添加、スクランブルS−オリゴヌクレオチド添加およびオリゴヌクレオチド未添加における、後腎培養のケラチンによる尿管芽の染色写真である。
【図4】インビトロ翻訳系にて得られたclone#22蛋白質を低用量(200,000倍希釈)および高用量(200倍希釈)で添加した、あるいは未添加の培養後腎におけるレクチンによる尿細管様構造の染色写真である。
Claims (34)
- 配列番号2で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩を含有してなる医薬。
- 配列番号2で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質またはその部分ペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含有してなる医薬。
- 臓器形成促進剤である請求項1または2記載の医薬。
- 臓器が腎臓、肝臓、心臓、脳、精巣または骨格筋である請求項3記載の医薬。
- 配列番号2で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質またはその部分ペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを含有してなる臓器形成異常の診断薬。
- 配列番号2で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩に対する抗体を含有してなる臓器形成異常の診断薬。
- 臓器が腎臓、肝臓、心臓、脳、精巣または骨格筋である請求項5または6記載の診断薬。
- 配列番号2で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質もしくはその部分ペプチドまたはその塩に対する抗体を含有してなる医薬。
- 配列番号2で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質またはその部分ペプチドをコードする塩基配列と相補的な塩基配列またはその一部を含むポリヌクレオチドを含有してなる医薬。
- 臓器形成抑制剤である請求項8または9記載の医薬。
- 臓器が腎臓、肝臓、心臓、脳、精巣または骨格筋である請求項10記載の医薬。
- 配列番号2で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩を用いることにより得られうる、該蛋白質またはその塩に対して特異的親和性を有する化合物またはその塩。
- 請求項12記載の化合物またはその塩を含有してなる医薬。
- 臓器形成調節剤である請求項13記載の医薬。
- 臓器が腎臓、肝臓、心臓、脳、精巣または骨格筋である請求項14記載の医薬。
- 配列番号2で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩を用いることを含む、該蛋白質またはその塩に対して特異的親和性を有する化合物またはその塩の決定方法。
- 配列番号2で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩を用いることを含む、該蛋白質またはその塩とそれに対して特異的親和性を有する化合物またはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法。
- 配列番号2で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩を含有する、該蛋白質またはその塩とそれに対して特異的親和性を有する化合物またはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング用キット。
- 請求項17記載のスクリーニング方法または請求項18記載のスクリーニング用キットを用いて得られうる、配列番号2で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質またはその塩とそれに対して特異的親和性を有する化合物またはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩。
- 請求項17記載のスクリーニング方法または請求項18記載のスクリーニング用キットを用いて得られうる、配列番号2で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質またはその塩とそれに対して特異的親和性を有する化合物またはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩を含有してなる医薬。
- 臓器形成調節剤である請求項20記載の医薬。
- 臓器が腎臓、肝臓、心臓、脳、精巣または骨格筋である請求項21記載の医薬。
- 配列番号2で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質またはその部分ペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドまたは該蛋白質またはその塩に対する抗体を用いて、該蛋白質のmRNAまたは該蛋白質もしくはその塩を定量することを特徴とする臓器形成異常の診断方法。
- 臓器が腎臓、肝臓、心臓、脳、精巣または骨格筋である請求項23記載の診断方法。
- 配列番号2で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質またはその部分ペプチドをコードする塩基配列を含むポリヌクレオチドを用いて該蛋白質のmRNAを定量することを特徴とする、該蛋白質の発現量を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法。
- 請求項25記載のスクリーニング方法を用いて得られうる、配列番号2で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質の発現量を変化させる化合物またはその塩。
- 請求項26記載の化合物またはその塩を含有してなる医薬。
- 臓器形成調節剤である請求項27記載の医薬。
- 臓器が腎臓、肝臓、心臓、脳、精巣または骨格筋である請求項28記載の医薬。
- 配列番号2で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対する抗体を用いて、細胞外液中の該蛋白質またはその塩を定量することを特徴とする、細胞外液中の該蛋白質またはその塩の量を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法。
- 請求項30記載のスクリーニング方法を用いて得られうる、細胞外液中の配列番号2で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質またはその塩の量を変化させる化合物またはその塩。
- 請求項31記載の化合物またはその塩を含有してなる医薬。
- 臓器形成調節剤である請求項32記載の医薬。
- 臓器が腎臓、肝臓、心臓、脳、精巣または骨格筋である請求項33記載の医薬。
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