JP4676608B2 - 新規タヒキニン様ポリペプチドおよびその用途 - Google Patents

新規タヒキニン様ポリペプチドおよびその用途 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規タヒキニン様(ポリ)ペプチド(「ATT」、「ATTポリペプチド」とも称す)およびその前駆体ポリペプチド(「ATTα」または「ATTβ」または「ATT#21F」とも称す)、ならびにそれらをコードするポリヌクレオチドに関する。また、本発明は、かかるポリヌクレオチドを含有する組み換えベクター、該ベクターを含有する形質転換体、かかるポリヌクレオチドを含む遺伝子が導入されたヒト以外のDNA転移動物にも関する。さらに本発明は、かかるポリペプチドの製造方法、かかるポリペプチドに対する抗体、アゴニストまたはアンタゴニスト、ならびにそれらの同定方法にも関する。さらにまた、本発明は、かかるポリペプチド、ポリヌクレオチド、アゴニスト、アンタゴニスト、抗体を含有する医薬組成物、疾病の治療方法および予防方法等にも関する。
【0002】
【従来の技術】
生体は、細胞間または組織間で、互いに情報伝達をすることにより、発生、分化、増殖、恒常性の維持などの統合の取れた調節を行っている。多くの場合、タンパク性因子がそれらの仲立ちをしている。例えば、免疫系、造血系に関与する分泌性因子(液性因子)が数多く見いだされていて、それらはサイトカインと呼ばれている。リンホカイン、モノカイン、インターフェロン、コロニー刺激因子、腫瘍壊死因子などがこれらに含まれる。これらについて、疾病との関係や医薬としての利用方法について盛んに研究されている。
また、内分泌組織から生産されるペプチドホルモンや増殖因子などの液性因子も、恒常性の維持や成長に大変重要な機能を担っており、これらについても医薬への応用が精力的に研究されている。
例えば、タヒキニン(tachykinin)はそうした範疇に含まれる10個程度のアミノ酸からなり、カルボキシ末端配列モチーフ:
Phe−Xaa−Gly−Leu−Met−NH2
を共有する一群の生理活性ペプチドの総称である(なお、上記配列はC末端メチオニンのカルボキシル基がアミド化されている例である。また、Xaaは任意のアミノ酸を意味する)。哺乳類のタヒキニンとしてはサブスタンスP、ニューロキニンA、ニューロキニンBが知られており、中枢神経系と末梢神経系の両方に広く分布している。一般に、これらのペプチドは神経から放出され、多くの場合、生体内に存在するそれぞれの受容体(NK−1、NK−2、NK−3)に結合することによって、その活性化に応じて様々な生物活性を発揮することが知られている。特に、その薬理活性に関しては、上記カルボキシ末端構造を有するタンパク質に共通したものがあることが、ペロウら、ファーマコロ・レビュー(Pernow et al., Pharmacol. Rev.)、第35巻、85〜141頁、1983年をはじめとする種々の文献により当該分野において知られている。かかる活性としては平滑筋収縮、血圧降下、外分泌促進、血管透過性亢進など多岐にわたっており、その放出により気管支の収縮や気道の炎症などの気道病変、肥満細胞からのヒスタミンの遊離などを惹起することが知られている。特に、サブスタンスPは、片頭痛や関節炎に伴う痛みを含め、痛覚の神経伝達に関与すると考えられる。また、これらのペプチドは、炎症性腸疾患のような消化管の胃腸障害および疾患にも関係している他、多くの疾患に関与していると考えられている。過剰のタヒキニンが関与する莫大な数の臨床疾患から考えて、タヒキニン受容体拮抗物質の開発は、これらの臨床病態を抑制するのに役立つと考えられ、これまでにも様々なペプチド性あるいは非ペプチド性タヒキニン受容体拮抗物質が開発されている[日本臨床、48巻5号、98−104頁、1990年;ザ・ファセブ・ジャーナル(The FASEB Journal)、第4巻、1606−1615頁、1990年;カレント・メディカル・ケミストリー(Current Medical Chemistry)、第6巻、1375-1388頁、1999年]]。
【0003】
生体にとって重要なこれらのタンパク性およびペプチド性因子は、従来、その固有の生物活性を指標にして発見されてきた。また、既知の生理活性タンパク質に対するホモロジーを手がかりにしたクローニング技術により、相同性の高い類似遺伝子が追随的に発見されてきている。しかし、高等生物、とりわけ、哺乳類動物が健康体を維持し続けるために、公知の遺伝子群以外にも既存の手法で未だ同定されずにその存在が知られていない液性機能分子が重要な生理的役割を果たしている可能性は極めて高いと考えられる。
そこで、最近ではコンピュータを使った情報処理技術の助けを借り、DNAの配列情報から見出されてきた新規な遺伝子産物を、生物学、医学、獣医学などに役立てようとする試み、すなわち、バイオインフォマティクス(bioinformatics)からの各種研究が行われつつある[トレンズ・イン・バイオテクノロジー(Trends in Biotechnology)、第14巻、294−298頁、1996年]。近年、cDNAライブラリーの大規模シーケンシングが可能になったことで、EST(expresssed sequence tag)情報の蓄積などにより、膨大な数の新規遺伝子、あるいはその候補が見つかってきつつあるが、未だ配列情報が断片的で不正確なことも多く、また、現実問題として、現存するcDNA関連の各種公開データベースが各生物の全発現遺伝子を完全に網羅できていないのが現状である。したがって、これらの中からさらに全く新しい有用遺伝子産物を探索することは必ずしも容易ではない。他方、現在、一つの生物のもつ全DNA、つまりゲノムの構造解析が、細菌類、真菌類(酵母など)では既にそのいくつかが終了し、ヒトのそれも数年で完成の見通しが立っているが、その予想される遺伝子数はヒトにおいては十万とも言われている。確かにこれまで数多くの分泌タンパク質あるいは分泌ペプチドをコードする遺伝子が単離されてきているものの、その数は全ゲノムからみればとてもそのすべてを網羅したとはいえない。そして、新たな有用物質の発見が強く望まれているにもかかわらず、その遺伝子を解明していくためには、上述の単なる情報処理技術だけでは十分とは言えず、より詳細な生物学的あるいは化学的な解析と実験による実証が不可欠であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、生物学、医学、獣医学などに利用可能な新規タヒキニン様ポリペプチドおよびその前駆体ポリペプチド、ならびにそれらをコードするポリヌクレオチドを提供することである。本発明の他の目的は、かかるポリヌクレオチドを含有する組み換えベクター、該ベクターで形質転換された形質転換体、かかるポリヌクレオチドを含む遺伝子を導入されたDNA転移動物(トランスジェニック動物)も提供することである。また、かかるポリペプチドの製造方法、かかるポリペプチドに対する抗体、アゴニストまたはアンタゴニスト、ならびにそれらの同定方法も提供する。さらに本発明は、かかるポリペプチド、ポリヌクレオチド、アンタゴニスト、抗体を含有する医薬組成物、疾病の治療方法および予防方法等を提供することも目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ヒト胎児(骨格筋、肺、心臓など)あるいはヒト心臓、ヒト脂肪組織、ヒト下垂体などで発現している新規な塩基配列を有するcDNAを見出すことに成功し、それにコードされる新規ポリペプチドATT (Atypical Tachykinin)の前駆体であることを見出した。本発明者らは、これらの知見に基づいて、さらに検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、
(1)配列番号:17で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有することを特徴とするポリぺプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、またはその部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、
(2)配列番号:7で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有することを特徴とする上記(1)記載のポリぺプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、またはその部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、
(3)配列番号:3、配列番号:13または配列番号:20で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有することを特徴とする上記(1)記載のポリぺプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、またはその部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、
(4)配列番号:17で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列が配列番号:34、配列番号:35、配列番号:36、配列番号:37または配列番号:38で表されるアミノ酸配列を有する上記(1)記載のポリぺプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、またはその部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、
(5)配列番号:32で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有することを特徴とするポリぺプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、またはその部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、
(6)配列番号:22で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有することを特徴とする上記(5)記載のポリぺプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、またはその部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、
(7)配列番号:32で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列が配列番号:23、配列番号:24、配列番号:25、配列番号:26、配列番号:27または配列番号:39で表されるアミノ酸配列を有する上記(5)記載のポリぺプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、またはその部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、
(8)配列番号:17で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列および配列番号:32で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有することを特徴とする上記(1)または上記(5)記載のポリぺプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、またはその部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、
(9)上記(1)または上記(5)記載のポリペプチドもしくはその部分ペプチドのアミドまたはその塩、
(10)C末端のカルボキシル基がアミド化されている上記(1)または上記(5)記載のポリペプチドもしくはその部分ペプチドまたはその塩、
(11)上記(1)または上記(5)記載のポリペプチドもしくはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
【0007】
(12)DNAである上記(11)記載のポリヌクレオチド、
(13)配列番号:4、配列番号:14、配列番号:21、配列番号:29、配列番号:30、配列番号:31または配列番号:33で表される塩基配列を有する上記(11)記載のポリヌクレオチド、
(14)ストリンジェントな条件下において上記(11)記載のポリヌクレオチドにハイブリダイズするポリヌクレオチド、
(15)上記(11)記載のポリヌクレオチドを含有する組み換えベクター、
(16)上記(15)記載のベクターで形質転換された形質転換体、
(17)上記(16)記載の形質転換体を培養し、上記(1)または上記(5)記載のポリペプチドもしくはその部分ペプチドを生成、蓄積せしめ、これを採取することを特徴とする上記(1)または上記(5)記載のポリペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、またはその部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩の製造方法、
(18)上記(11)記載のポリヌクレオチドまたは上記(15)記載のベクターを導入された非ヒトトランスジェニック動物、
(19)上記(1)もしくは上記(5)記載のポリペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、またはその部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩に対する抗体、
(20)上記(19)記載の抗体を含有してなる診断薬、
(21)上記(19)記載の抗体を用いることを特徴とする上記(1)もしくは上記(5)記載のポリペプチドもしくはその部分ペプチドの定量方法、
(22)上記(1)もしくは上記(5)記載のポリペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、またはその部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩に対するアンタゴニスト、
(23)上記(1)もしくは上記(5)記載のポリペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、またはその部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩に対するアゴニスト、
(24)高血圧症予防・治療剤である上記(23)記載のアゴニスト、
(25)上記(1)もしくは上記(5)記載のポリペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、またはその部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩を用いることを特徴とする上記(22)記載のアンタゴニストまたは上記(23)記載のアゴニストのスクリーニング方法、
(26)上記(1)もしくは上記(5)記載のポリペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、またはその部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩を含有してなる上記(22)記載のアンタゴニストまたは上記(23)記載のアゴニストのスクリーニング用キット、
(27)上記(1)もしくは上記(5)記載のポリペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、またはその部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩を含有してなる医薬組成物、
(28)高血圧症の予防・治療剤である上記(27)記載の医薬組成物、
(29)上記(11)記載のポリヌクレオチドと相補的な塩基配列またはその一部を含有してなるポリヌクレオチド、
(30)上記(11)記載のポリヌクレオチドまたはその一部を用いることを特徴とする上記(1)もしくは上記(5)記載のポリペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、またはその部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩のmRNAの定量方法、
(31)上記(1)もしくは上記(5)記載のポリペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、またはその部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩を含有してなる医薬を製造するための上記(1)もしくは上記(5)記載のポリペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、またはその部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩の使用、
(32)上記(1)もしくは上記(5)記載のポリペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、またはその部分ペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩を哺乳動物に投与することを特徴とする高血圧症の予防・治療方法、
(33)上記(23)記載のアゴニストを含有してなる医薬を製造するための上記(23)記載のアゴニストの使用、および
(34)上記(23)記載のアゴニストを哺乳動物に投与することを特徴とする高血圧症の予防・治療方法などに関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の新規ATTポリペプチドの前駆体は少なくとも3種類存在し、本明細書にて「ATTα」と称する前駆体は配列番号:3で示される68個のアミノ酸からなる。また、本明細書にて「ATTβ」と称する前駆体は配列番号:13で示される76個のアミノ酸からなる。ATTαおよびATTβはアミノ酸配列のN末端から67番目のグリシンまでの配列が共通している。これらの前駆体は、後述する塩基配列の比較から、同一遺伝子からのスプライスバリアントであると考えられる。
さらに、本発明の新規ATTポリペプチドの前駆体として、本明細書にて「ATT#21F」と称する前駆体は配列番号:20で示される107個のアミノ酸からなる。ATT#21Fは上記のATTα、ATTβ同様、そのアミノ酸配列のN末端から67番目のグリシンまでの配列が共通している。
また、ATTα、ATTβまたはATT#21FのN末端から配列番号:6で示される16個のアミノ酸からなる分泌シグナル配列が除去されるなどされて本発明の新規成熟ATT(配列番号:7)(以下、場合により、「ATT」または「ATTポリペプチド」と称する)が生じる。この際、さらなる限定分解または修飾を受けることもあり、そのような修飾や限定分解を受けたポリペプチド(後述する「ATTshort1」(配列番号:17)、「ATTshort2」(配列番号:22)も含まれる)も本発明の範囲内である(やはり、以下、場合により、かかるポリペプチドおよび部分ペプチドを「ATT」または「ATTポリペプチド」と称する)。ATTα、ATTβまたはATT#21Fから生じる成熟ATTは、例えば、配列番号:7で示されるアミノ酸配列を有する。本発明の新規ATT配列(下表1においてATTと表示)と既知タヒキニンファミリーペプチド配列との比較を下表1に示す(いずれもC末端のカルボキシル基がアミド化されている例を示す)。
【0009】
【表1】
Figure 0004676608
本発明の新規ATTのカルボキシ末端には上記モチーフ(FFGLM−NH2)が存在し、かかる配列の相同性から、本発明のポリペプチドは、タヒキニン類に関連する生理作用を有すると判断でき、本発明のATTは、少なくともサブスタンスP、ニューロキニンAおよびニューロキニンBに関連する作用機能を有すると考えられる。
さらに、本発明のATT#21F(配列番号:20)はFFGLM−NH2で表される上記モチーフを有するのみならず、公知の自然界のタンパク質、ペプチドでは知られていないPhe−Xaa−Gly−Leu−Met−NH2(具体的にはPhe−Gln−Gly−Leu−Met−NH2;Xaaは任意のアミノ酸を意味する)で表されるカルボキシ末端配列モチーフを有しており、今までに全く知られていない機能を有する生理活性ペプチドの前駆体である。
【0010】
本明細書において、「本発明のポリペプチド」とは、上記のATTα、ATTβ、ATT、ATT#21、FATTshort1、ATTshort2を包含する意味で用いられる。また、「本発明のポリペプチド」は本発明のポリペプチドのアミド体、本発明のポリペプチドのエステル体、本発明のポリペプチドの塩を包含する意味で用いられる。
また、本発明のポリペプチド、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(DNA等)は、自体公知の方法で標識化されていてもよく、具体的にはラジオアイソトープラベル化されたもの、蛍光標識されたもの(例えば、フルオレセインなどによる蛍光標識)、ビオチン化されたものまたは酵素標識されたものなどがあげられる。
ここで、本発明のポリペプチドの塩としては、酸または塩基との生理学的に許容される塩があげられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩などが用いられる。
【0011】
以下に「本発明のポリペプチド」についてより具体的に説明する。
本発明のポリペプチドは、例えば、ヒトや哺乳動物(例えば、モルモット、ラット、マウス、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、サルなど)のあらゆる細胞(例えば、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、内皮細胞、繊維芽細胞、繊維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例、マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞、肝細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくはガン細胞など)や血球系の細胞、またはそれらの細胞が存在するあらゆる組織、例えば、脳、脳の各部位(例、嗅球、扁頭核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、視床下核、大脳皮質、延髄、小脳、後頭葉、前頭葉、側頭葉、被殻、尾状核、脳染、黒質)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆のう、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管(例、大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、末梢血球、前立腺、睾丸、精巣、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、骨格筋など(特に、脳や脳の各部位)に由来するポリペプチドであってもよく、また合成ポリペプチドであってもよい。
本発明のポリペプチドは、ペプチド標記の慣例に従って左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)である。配列番号:17または配列番号:32で表されるアミノ酸配列を含有するポリペプチドをはじめとする、本発明のポリペプチドは、C末端が通常カルボキシル基(−COOH)またはカルボキシレート(−COO-)であるが、C末端がアミド(−CONH2)またはエステル(−COOR)であってもよい。
ここでエステルにおけるRとしては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルもしくはn−ブチルなどのC1-6アルキル基、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC3-8シクロアルキル基、例えば、フェニル、α−ナフチルなどのC6-12アリール基、例えば、ベンジル、フェネチルなどのフェニル−C1-2アルキル基もしくはα−ナフチルメチルなどのα−ナフチル−C1-2アルキル基などのC7-14アラルキル基のほか、経口用エステルとして汎用されるピバロイルオキシメチル基などが用いられる。
【0012】
本発明のポリペプチドがC末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している場合、カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものも本発明のポリペプチドに含まれる。この場合のエステルとしては、例えば上記したC末端のエステルなどが用いられる。
さらに、本発明のポリペプチドには、上記したポリペプチドにおいて、N末端のメチオニン残基のアミノ基が保護基(例えば、ホルミル基、アセチルなどのC2-6アルカノイル基などのC1-6アシル基など)で保護されているもの、N端側が生体内で切断され生成したグルタミル基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基(例えば、−OH、−SH、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基など)が適当な保護基(例えば、ホルミル基、アセチルなどのC2-6アルカノイル基などのC1-6アシル基など)で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖タンパク質などの複合タンパク質なども含まれる。
【0013】
「本発明のポリペプチドの具体的説明1」
本発明のポリペプチドとしては、
(1)配列番号:17で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチド、
(2)配列番号:32で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチド等があげられる。
「本発明のポリぺプチドの具体的説明1−(1)」
配列番号:17で表されるアミノ酸配列は上記ATT(配列番号:7)のN末端から35番目(Thr)から45番目(Met)で表されるアミノ酸配列(Thr-Gly-Lys-Ala-Ser-Gln-Phe-Phe-Gly-Leu-Met)である(以下、該配列からなるペプチドを「ATTshort1」と称する場合がある)。
「配列番号:17で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチド」は配列番号:17で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有しておれば、その他のアミノ酸配列は如何なるものであっても構わないが、配列番号:17で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列がポリペプチドのC末端アミノ酸配列に該当する場合には、そのC末端のカルボキシル基がアミド化されているポリペプチド、より具体的には、C末端がThr-Gly-Lys-Ala-Ser-Gln-Phe-Phe-Gly-Leu-Met-NH2で示されるポリぺプチドであることが好ましい。
配列番号:17で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、例えば、配列番号:17で表されるアミノ酸配列と約80%以上、好ましくは約90%以上、より好ましくは約95%以上、さらに好ましくは約98%以上の相同性を有するアミノ酸配列などがあげられる。
本明細書において、相同性とは、2つのヌクレオチド配列間または2つのアミノ酸配列間の配列一致の度合をパーセントで表現したものをいう。一般的には、相同性の検索にはコンピューターが使用され、公知のSmith-Watermanアルゴリズム、FASTAまたはBLASTプログラム等が使用されている。
【0014】
配列番号:17で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、
▲1▼ 配列番号:17で表わされるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜5個程度、より好ましくは1〜3個程度、さらに好ましくは1〜2個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、
▲2▼ 配列番号:17で表わされるアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜5個程度、より好ましくは1〜3個程度、さらに好ましくは1〜2個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、
▲3▼ 配列番号:17で表わされるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜5個程度、より好ましくは1〜3個程度、さらに好ましくは1〜2個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、
▲4▼ 上記▲1▼〜▲3▼を組み合わせたアミノ酸配列、
▲5▼ 配列番号:17で表わされるアミノ酸配列のN末端から7番目(Phe)、9番目(Gly)、10番目(Leu)、11番目(Met)以外のアミノ酸(残基)中の1〜3個程度、好ましくは1〜2個のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、
▲6▼ 配列番号:17で表わされるアミノ酸配列のN末端から7番目(Phe)、9番目(Gly)、10番目(Leu)、11番目(Met)以外のアミノ酸(残基)中の1〜3個程度、好ましくは1〜2個のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、
▲7▼ 上記▲5▼〜▲6▼を組み合わせたアミノ酸配列などがあげられる。
【0015】
本発明の配列番号:17で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチドとしては、例えば、配列番号:17で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有し、配列番号:17で表わされるアミノ酸配列と実質的に同質の活性を有するタンパク質などが好ましい。
実質的に同質の活性としては、例えば、レセプター結合活性、シグナル情報伝達活性、後述の実験例1に記載の血圧低下活性、後述の実験例2に記載の平滑筋収縮活性などがあげられる。実質的に同質とは、それらの活性が性質的に同質であることを示す。したがって、レセプター結合活性やシグナル情報伝達作用などの活性が同等(例、約0.01〜100倍、好ましくは約0.5〜20倍、より好ましくは約0.5〜2倍)であることが好ましいが、これらの活性の程度やポリペプチドの分子量などの量的要素は異なっていてもよい。
レセプター結合活性やシグナル情報伝達作用などの活性の測定は、自体公知の方法に準じて行なうことができるが、例えば、後述するスクリーニング方法に従って測定することができる。
【0016】
配列番号:17で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチドの具体例としては、後述の「本発明のポリペプチドの具体的説明2」、「本発明のポリペプチドの具体的説明5」に記載するポリペプチド等があげられるが、
▲1▼ 配列番号:17で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
▲2▼ 配列番号:34で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
▲3▼ 配列番号:35で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
▲4▼ 配列番号:36で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
▲5▼ 配列番号:37で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
▲6▼ 配列番号:38で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、および
▲7▼ 上記▲1▼〜▲6▼のポリぺプチドのC末端のカルボキシル基がアミド化されているポリペプチドなどが好ましい具体例としてあげられる。
【0017】
「本発明のポリぺプチドの具体的説明1−(2)」
配列番号:32で表されるアミノ酸配列は上記ATT#21F(配列番号:20)のN末端から85番目(Phe)から89番目(Leu)で表されるアミノ酸配列(Phe-Gln-Gly-Leu-Leu;配列番号:39)を包含するPhe−Xaa−Gly−Leu−Leu(Xaaは任意のアミノ酸を意味する)で表されるアミノ酸配列である。
Xaaで表される任意のアミノ酸としては、例えば、グリシン,アラニン,バリン,ロイシン,イソロイシン,セリン,スレオニン,システイン,メチオニン,アスパラギン酸,グルタミン酸,リジン,アルギニン,フェニルアラニン,チロシン,ヒスチジン,トリプトファン,アスパラギン,グルタミン,プロリンがあげられる(以下同じ)。
「配列番号:32で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチド」は配列番号:32で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有しておれば、その他のアミノ酸配列は如何なるものであっても構わないが、配列番号:32で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列がポリペプチドのC末端アミノ酸配列に該当する場合には、そのC末端のカルボキシル基がアミド化されているポリペプチド、すなわち、C末端がPhe-Xaa-Gly-Leu-Leu-NH2(Xaaは任意のアミノ酸を意味する)で示されるポリぺプチドであることが好ましい。
本発明の配列番号:32で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチドとしては、例えば、配列番号:32で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有し、配列番号:32で表わされるアミノ酸配列と実質的に同質の活性を有するポリペプチドなどが好ましい。
実質的に同質の活性としては、例えば、レセプター結合活性、シグナル情報伝達活性、後述の実験例1に記載の血圧低下活性、後述の実験例2に記載の平滑筋収縮活性などがあげられる。実質的に同質とは、それらの活性が性質的に同質であることを示す。したがって、レセプター結合活性やシグナル情報伝達作用などの活性が同等(例、約0.01〜100倍、好ましくは約0.5〜20倍、より好ましくは約0.5〜2倍)であることが好ましいが、これらの活性の程度やタンパク質の分子量などの量的要素は異なっていてもよい。
レセプター結合活性やシグナル情報伝達作用などの活性の測定は、自体公知の方法に準じて行なうことができるが、例えば、後述するスクリーニング方法に従って測定することができる。
配列番号:32で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチドの具体例としては、後述の「本発明のポリペプチドの具体的説明3」、「本発明のポリペプチドの具体的説明4」、「本発明のポリペプチドの具体的説明5」に記載するポリペプチド等があげられるが、
▲1▼ 配列番号:32で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
▲2▼ 配列番号:39で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、および
▲3▼ 上記▲1▼〜▲2▼のポリぺプチドのC末端のカルボキシル基がアミド化されているポリペプチドなどが好ましい具体例としてあげられる。
【0018】
「本発明のポリペプチドの具体的説明2」
さらに、上述の「配列番号:17で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチド」の具体例としては、
(3)配列番号:7で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチド、
(4)配列番号:3、配列番号:13または配列番号:20で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチド等があげられる。
【0019】
「本発明のポリペプチドの具体的説明2−(1)」
配列番号:7で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは上記ATTを意味する。
「配列番号:7で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチド」は配列番号:7で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有しておれば、その他のアミノ酸配列は如何なるものであっても構わないが、配列番号:7で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列がポリペプチドのC末端アミノ酸配列に該当する場合には、そのC末端のカルボキシル基がアミド化されているポリペプチド、より具体的には、C末端がPhe-Xaa-Gly-Leu-Met-NH2(Xaaは任意のアミノ酸を意味する)で示されるポリぺプチドであることが好ましい。
配列番号:7で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、例えば、配列番号:17で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、配列番号:7で表わされるアミノ酸配列と約80%以上、好ましくは約90%以上、より好ましくは約95%以上、さらに好ましくは約98%以上の相同性を有するアミノ酸配列などがあげられる。
配列番号:7で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、
▲1▼ 配列番号:17で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、配列番号:7で表わされるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、
▲2▼ 配列番号:17で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、配列番号:7で表わされるアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、
▲3▼ 配列番号:17で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、配列番号:7で表わされるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、
▲4▼ 上記▲1▼〜▲3▼を組み合わせたアミノ酸配列、
▲5▼ 配列番号:17で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、配列番号:7で表わされるアミノ酸配列のN末端から41番目(Phe)、43番目(Gly)、44番目(Leu)、45番目(Met)以外のアミノ酸(残基)中の1〜2個以上(好ましくは、1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、
▲6▼ 配列番号:17で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、配列番号:7で表わされるアミノ酸配列のN末端から41番目(Phe)、43番目(Gly)、44番目(Leu)、45番目(Met)以外のアミノ酸(残基)中の1〜2個以上(好ましくは、1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、
▲7▼ 上記▲5▼〜▲6▼を組み合わせたアミノ酸配列などがあげられる。
本発明の配列番号:7で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチドとしては、例えば、配列番号:7で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有し、配列番号:7で表わされるアミノ酸配列と実質的に同質の活性を有するポリペプチドなどが好ましい。
実質的に同質の活性としては、例えば、レセプター結合活性、シグナル情報伝達活性、後述の実験例1に記載の血圧低下活性、後述の実験例2に記載の平滑筋収縮活性などがあげられる。実質的に同質とは、それらの活性が性質的に同質であることを示す。したがって、レセプター結合活性やシグナル情報伝達作用などの活性が同等(例、約0.01〜100倍、好ましくは約0.5〜20倍、より好ましくは約0.5〜2倍)であることが好ましいが、これらの活性の程度やタンパク質の分子量などの量的要素は異なっていてもよい。
レセプター結合活性やシグナル情報伝達作用などの活性の測定は、自体公知の方法に準じて行なうことができるが、例えば、後述するスクリーニング方法に従って測定することができる。
配列番号:7で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチドの具体例としては、後述の「本発明のポリペプチドの具体的説明2−(2)」、に記載するポリペプチド等があげられるが、
▲1▼ 配列番号:7で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
▲2▼ 配列番号:7で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドのC末端のカルボキシル基がアミド化されているポリペプチドなどが好ましい具体例としてあげられる。
【0020】
「本発明のポリペプチドの具体的説明2−(2)」
配列番号:3で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは上記ATTαを意味し、配列番号:13で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは上記ATTβを意味し、配列番号:20で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは上記ATT#21Fを意味する。
「配列番号:3、配列番号:13または配列番号:20で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチド」は配列番号:3、配列番号:13または配列番号:20で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有しておれば、その他のアミノ酸配列は如何なるものであっても構わない。
配列番号:3、配列番号:13または配列番号:20で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、例えば、配列番号:17で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、配列番号:3、配列番号:13または配列番号:20で表わされるアミノ酸配列と約60%以上、好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、さらに好ましくは約90%以上の相同性を有するアミノ酸配列などがあげられる。
配列番号:3、配列番号:13または配列番号:20で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、
▲1▼ 配列番号:17で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、配列番号:3、配列番号:13または配列番号:20で表わされるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、
▲2▼ 配列番号:17で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、配列番号:3、配列番号:13または配列番号:20で表わされるアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、
▲3▼ 配列番号:17で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、配列番号:3、配列番号:13または配列番号:20で表わされるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、
▲4▼ 上記▲1▼〜▲3▼を組み合わせたアミノ酸配列、
▲5▼ 配列番号:17で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、配列番号:3、配列番号:13または配列番号:20で表わされるアミノ酸配列のN末端から57番目(Phe)、59番目(Gly)、60番目(Leu)、61番目(Met)以外のアミノ酸(残基)中の1〜2個以上(好ましくは、1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、
▲6▼ 配列番号:17で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、配列番号:3、配列番号:13または配列番号:20で表わされるアミノ酸配列のN末端から57番目(Phe)、59番目(Gly)、60番目(Leu)、61番目(Met)以外のアミノ酸(残基)中の1〜2個以上(好ましくは、1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、
▲7▼ 上記▲5▼〜▲6▼を組み合わせたアミノ酸配列などがあげられる。
本発明の配列番号:3、配列番号:13または配列番号:20で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチドは、例えば、配列番号:3、配列番号:13または配列番号:20で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有し、配列番号:3、配列番号:13または配列番号:20で表わされるアミノ酸配列と実質的に同質の活性を有するポリペプチドなどが好ましい。
実質的に同質の活性としては、例えば、レセプター結合活性、シグナル情報伝達活性などがあげられる。実質的に同質とは、それらの活性が性質的に同質であることを示す。しかし、本発明の配列番号:3、配列番号:13または配列番号:20で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチドは、ATT、ATTshort1、ATTshort2の前駆体ポリペプチドとしても捉えられるため、必ずしも、ATT、ATTshort1、ATTshort2等が有する生理活性(例えば、後述の実験例1に記載の血圧低下活性、後述の実験例2に記載の平滑筋収縮活性など)を有している必要はない。
配列番号:3、配列番号:13または配列番号:20で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチドの具体例としては、
▲1▼ 配列番号:3で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
▲2▼ 配列番号:13で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
▲3▼ 配列番号:20で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドなどが好ましい具体例としてあげられる。
【0021】
「本発明のポリペプチドの具体的説明3」
さらに、上述の「配列番号:32で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチド」の具体例としては、
(5)配列番号:22で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチド等があげられる。
配列番号:22で表されるアミノ酸配列は上記ATT#21F(配列番号:20)のN末端から76番目(Lys)から89番目(Leu)で表されるアミノ酸配列(Lys-Lys-Ala-Tyr-Gln-Leu-Glu-His-Thr-Phe-Gln-Gly-Leu-Leu)である(以下、該配列からなるペプチドを「ATTshort2」と称する場合がある)。
「配列番号:22で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチド」は配列番号:22で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有しておれば、その他のアミノ酸配列は如何なるものであっても構わないが、配列番号:22で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列がポリペプチドのC末端アミノ酸配列に該当する場合には、そのC末端のカルボキシル基がアミド化されているポリペプチドであることが好ましい。
配列番号:22で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、例えば、配列番号:22で表わされるアミノ酸配列と約80%以上、好ましくは約90%以上、より好ましくは約95%以上、さらに好ましくは約98%以上の相同性を有するアミノ酸配列などがあげられる。
配列番号:22で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、
▲1▼ 配列番号:32で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、配列番号:22で表わされるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜5個程度、より好ましくは1〜3個程度、さらに好ましくは1〜2個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、
▲2▼ 配列番号:32で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、配列番号:22で表わされるアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜5個程度、より好ましくは1〜3個程度、さらに好ましくは1〜2個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、
▲3▼ 配列番号:32で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、配列番号:22で表わされるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜5個程度、より好ましくは1〜3個程度、さらに好ましくは1〜2個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、
▲4▼ 上記▲1▼〜▲3▼を組み合わせたアミノ酸配列、
▲5▼ 配列番号:32で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、配列番号:22で表わされるアミノ酸配列のN末端から10番目(Phe)、12番目(Gly)、13番目(Leu)、14番目(Leu)以外のアミノ酸(残基)中の1〜3個程度、好ましくは1〜2個のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、
▲6▼ 配列番号:32で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、配列番号:22で表わされるアミノ酸配列のN末端から10番目(Phe)、12番目(Gly)、13番目(Leu)、14番目(Leu)以外のアミノ酸(残基)中の1〜3個程度、好ましくは1〜2個のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、
▲7▼ 上記▲5▼〜▲6▼を組み合わせたアミノ酸配列などがあげられる。
本発明の配列番号:22で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチドとしては、例えば、配列番号:22で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有し、配列番号:22で表わされるアミノ酸配列と実質的に同質の活性を有するポリペプチドなどが好ましい。
実質的に同質の活性としては、例えば、レセプター結合活性、シグナル情報伝達活性、後述の実験例1に記載の血圧低下活性、後述の実験例2に記載の平滑筋収縮活性などがあげられる。実質的に同質とは、それらの活性が性質的に同質であることを示す。したがって、レセプター結合活性やシグナル情報伝達作用などの活性が同等(例、約0.01〜100倍、好ましくは約0.5〜20倍、より好ましくは約0.5〜2倍)であることが好ましいが、これらの活性の程度やポリペプチドの分子量などの量的要素は異なっていてもよい。
レセプター結合活性やシグナル情報伝達作用などの活性の測定は、自体公知の方法に準じて行なうことができるが、例えば、後述するスクリーニング方法に従って測定することができる。
配列番号:22で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチドの具体例としては、後述の「本発明のポリペプチドの具体的説明4」、「本発明のポリペプチドの具体的説明5」に記載するポリペプチド等があげられるが、
▲1▼ 配列番号:22で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
▲2▼ 配列番号:23で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
▲3▼ 配列番号:24で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
▲4▼ 配列番号:25で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
▲5▼ 配列番号:26で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
▲6▼ 配列番号:27で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、
▲7▼ 配列番号:28で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、および
▲8▼ 上記▲1▼〜▲7▼のポリぺプチドのC末端のカルボキシル基がアミド化されているポリペプチドなどが好ましい具体例としてあげられる。
【0022】
「本発明のポリペプチドの具体的説明4」
さらに、上述の「配列番号:22で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチド」の具体例としては、
(6)配列番号:20で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチド等があげられる。
配列番号:20で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは上記ATT#21Fを意味する。
「配列番号: 20で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチド」は配列番号:20で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有しておれば、その他のアミノ酸配列は如何なるものであっても構わない。
配列番号:20で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、例えば、配列番号:22で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、配列番号:20で表わされるアミノ酸配列と約60%以上、好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、さらに好ましくは約90%以上の相同性を有するアミノ酸配列などがあげられる。
配列番号:20で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、
▲1▼ 配列番号:22で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、配列番号:20で表わされるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、
▲2▼ 配列番号:22で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、配列番号:20で表わされるアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、
▲3▼ 配列番号:22で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、配列番号:20で表わされるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、
▲4▼ 上記▲1▼〜▲3▼を組み合わせたアミノ酸配列、
▲5▼ 配列番号:22で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、配列番号:20で表わされるアミノ酸配列のN末端から85番目(Phe)、87番目(Gly)、88番目(Leu)、89番目(Leu)以外のアミノ酸(残基)中の1〜2個以上(好ましくは、1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、
▲6▼ 配列番号:22で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、配列番号:20で表わされるアミノ酸配列のN末端から85番目(Phe)、87番目(Gly)、88番目(Leu)、89番目(Leu)以外のアミノ酸(残基)中の1〜2個以上(好ましくは、1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、
▲7▼ 上記▲5▼〜▲6▼を組み合わせたアミノ酸配列などがあげられる。
本発明の配列番号:20で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチドは、例えば、配列番号:22で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有し、配列番号:20で表わされるアミノ酸配列と実質的に同質の活性を有するタンパク質などが好ましい。
実質的に同質の活性としては、例えば、レセプター結合活性、シグナル情報伝達活性などがあげられる。実質的に同質とは、それらの活性が性質的に同質であることを示す。しかし、本発明の配列番号:20で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチドは、ATT、ATTshort1のみならず、ATTshort2の前駆体ポリペプチドとしても捉えられるため、必ずしも、ATT、ATTshort1、ATTshort2等が有する生理活性(例えば、後述の実験例1に記載の血圧低下活性、後述の実験例2に記載の平滑筋収縮活性など)を有している必要はない。
配列番号:20で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチドの具体例としては、配列番号:20で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドなどが好ましい具体例としてあげられる。
「本発明のポリペプチドの具体的説明5」
さらに、上述の「配列番号:17で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチド」、「配列番号:32で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチド」の具体例としては、
(7)配列番号:17で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列および配列番号:32で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチド等があげられる。
「配列番号:17で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列」、「配列番号:32で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列」、およびそれぞれのアミノ酸配列を含有するポリペプチドは、上述のとおりである。
配列番号:17で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列および配列番号:32で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するポリペプチドの具体例としては、配列番号:20で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドなどが好ましい具体例としてあげられる。
【0023】
本発明のポリペプチドの製造方法
本発明のポリペプチドは、前述したヒトや哺乳動物の細胞または組織から自体公知のポリペプチドの精製方法によって製造することもできるし、後述する本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(DNA)で形質転換された形質転換体を培養することによっても製造することができる。また、後述のタンパク質(ポリペプチド)合成法またはこれに準じた方法により製造することもできる。
ヒトや哺乳動物の組織または細胞から製造する場合、ヒトや哺乳動物の組織または細胞をホモジナイズした後、酸などで抽出を行ない、該抽出液を逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーを組み合わせることにより精製単離することができる。
本発明のポリペプチドのアミド体(上述のとおり、本発明のポリペプチドのアミド体も本明細書において便宜上「本発明のポリペプチド」と称する場合がある)の合成には、通常市販のタンパク質合成用樹脂を用いることができる。そのような樹脂としては、例えば、クロロメチル樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、ベンズヒドリルアミン樹脂、アミノメチル樹脂、4−ベンジルオキシベンジルアルコール樹脂、4−メチルベンズヒドリルアミン樹脂、PAM樹脂、4−ヒドロキシメチルメチルフェニルアセトアミドメチル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、4−(2',4'-ジメトキシフェニル−ヒドロキシメチル)フェノキシ樹脂、4−(2',4'-ジメトキシフェニル−Fmocアミノエチル)フェノキシ樹脂などをあげることができる。このような樹脂を用い、α−アミノ基と側鎖官能基を適当に保護したアミノ酸を、目的とするポリペプチドの配列通りに、自体公知の各種縮合方法に従い、樹脂上で縮合させる。反応の最後に樹脂からポリペプチドを切り出すと同時に各種保護基を除去し、さらに高希釈溶液中で分子内ジスルフィド結合形成反応を実施し、目的のポリペプチドまたはそのアミド体を取得する。
上記した保護アミノ酸の縮合に関しては、タンパク質合成に使用できる各種活性化試薬を用いることができるが、特に、カルボジイミド類がよい。カルボジイミド類としては、DCC、N,N'-ジイソプロピルカルボジイミド、N-エチル-N'-(3-ジメチルアミノプロリル)カルボジイミドなどが用いられる。これらによる活性化にはラセミ化抑制添加剤(例えば、HOBt, HOOBt)とともに保護アミノ酸を直接樹脂に添加するかまたは、対称酸無水物またはHOBtエステルあるいはHOOBtエステルとしてあらかじめ保護アミノ酸の活性化を行なった後に樹脂に添加することができる。
保護アミノ酸の活性化や樹脂との縮合に用いられる溶媒としては、タンパク質縮合反応に使用しうることが知られている溶媒から適宜選択されうる。例えば、N,N−ジメチルホルムアミド,N,N−ジメチルアセトアミド,N−メチルピロリドンなどの酸アミド類、塩化メチレン,クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類、トリフルオロエタノールなどのアルコール類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ピリジン,ジオキサン,テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトニトリル,プロピオニトリルなどのニトリル類、酢酸メチル,酢酸エチルなどのエステル類あるいはこれらの適宜の混合物などが用いられる。反応温度はタンパク質結合形成反応に使用され得ることが知られている範囲から適宜選択され、通常約−20℃〜50℃の範囲から適宜選択される。活性化されたアミノ酸誘導体は通常1.5〜4倍過剰で用いられる。ニンヒドリン反応を用いたテストの結果、縮合が不十分な場合には保護基の脱離を行うことなく縮合反応を繰り返すことにより十分な縮合を行なうことができる。反応を繰り返しても十分な縮合が得られないときには、無水酢酸またはアセチルイミダゾールを用いて未反応アミノ酸をアセチル化することができる。
原料のアミノ基の保護基としては、例えば、Z、Boc、ターシャリーペンチルオキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、Cl-Z、Br-Z、アダマンチルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、フタロイル、ホルミル、2−ニトロフェニルスルフェニル、ジフェニルホスフィノチオイル、Fmocなどが用いられる。
カルボキシル基は、例えば、アルキルエステル化(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ターシャリーブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、2−アダマンチルなどの直鎖状、分枝状もしくは環状アルキルエステル化)、アラルキルエステル化(例えば、ベンジルエステル、4−ニトロベンジルエステル、4−メトキシベンジルエステル、4−クロロベンジルエステル、ベンズヒドリルエステル化)、フェナシルエステル化、ベンジルオキシカルボニルヒドラジド化、ターシャリーブトキシカルボニルヒドラジド化、トリチルヒドラジド化などによって保護することができる。
セリンの水酸基は、例えば、エステル化またはエーテル化によって保護することができる。このエステル化に適する基としては、例えば、アセチル基などの低級アルカノイル基、ベンゾイル基などのアロイル基、ベンジルオキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などの炭酸から誘導される基などが用いられる。また、エーテル化に適する基としては、例えば、ベンジル基、テトラヒドロピラニル基、t-ブチル基などである。
チロシンのフェノール性水酸基の保護基としては、例えば、Bzl、Cl2-Bzl、2−ニトロベンジル、Br-Z、ターシャリーブチルなどが用いられる。
ヒスチジンのイミダゾールの保護基としては、例えば、Tos、4-メトキシ-2,3,6-トリメチルベンゼンスルホニル、DNP、ベンジルオキシメチル、Bum、Boc、Trt、Fmocなどが用いられる。
原料のカルボキシル基の活性化されたものとしては、例えば、対応する酸無水物、アジド、活性エステル〔アルコール(例えば、ペンタクロロフェノール、2,4,5-トリクロロフェノール、2,4-ジニトロフェノール、シアノメチルアルコール、パラニトロフェノール、HONB、N-ヒドロキシスクシミド、N-ヒドロキシフタルイミド、HOBt)とのエステル〕などが用いられる。原料のアミノ基の活性化されたものとしては、例えば、対応するリン酸アミドが用いられる。
保護基の除去(脱離)方法としては、例えば、Pd-黒あるいはPd-炭素などの触媒の存在下での水素気流中での接触還元や、また、無水フッ化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸あるいはこれらの混合液などによる酸処理や、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピペラジンなどによる塩基処理、また液体アンモニア中ナトリウムによる還元なども用いられる。上記酸処理による脱離反応は、一般に約−20℃〜40℃の温度で行なわれるが、酸処理においては、例えば、アニソール、フェノール、チオアニソール、メタクレゾール、パラクレゾール、ジメチルスルフィド、1,4-ブタンジチオール、1,2-エタンジチオールなどのようなカチオン捕捉剤の添加が有効である。また、ヒスチジンのイミダゾール保護基として用いられる2,4-ジニトロフェニル基はチオフェノール処理により除去され、トリプトファンのインドール保護基として用いられるホルミル基は上記の1,2-エタンジチオール、1,4-ブタンジチオールなどの存在下の酸処理による脱保護以外に、希水酸化ナトリウム溶液、希アンモニアなどによるアルカリ処理によっても除去される。
【0024】
原料の反応に関与すべきでない官能基の保護ならびに保護基、およびその保護基の脱離、反応に関与する官能基の活性化などは公知の基または公知の手段から適宜選択しうる。
ポリペプチドのアミド体を得る別の方法としては、例えば、まず、カルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基をアミド化して保護した後、アミノ基側にペプチド(タンパク質)鎖を所望の鎖長まで延ばした後、該ペプチド鎖のN末端のα−アミノ基の保護基のみを除いたタンパク質とC末端のカルボキシル基の保護基のみを除去したポリペプチドとを製造し、この両タンパク質を上記したような混合溶媒中で縮合させる。縮合反応の詳細については上記と同様である。縮合により得られた保護ポリペプチドを精製した後、上記方法によりすべての保護基を除去し、所望の粗ポリペプチドを得ることができる。この粗ポリペプチドは既知の各種精製手段を駆使して精製し、主要画分を凍結乾燥することで所望のポリペプチドのアミド体を得ることができる。
ポリペプチドのエステル体(上述のとおり、本発明のポリペプチドのエステル体も本明細書において便宜上「本発明のポリペプチド」と称する場合がある)を得るには、例えば、カルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基を所望のアルコール類と縮合しアミノ酸エステルとした後、ポリペプチドのアミド体と同様にして、所望のポリペプチドのエステル体を得ることができる。
本発明のポリペプチドは、自体公知のペプチドの合成法に従って製造することができる。ペプチドの合成法としては、例えば、固相合成法、液相合成法のいずれによっても良い。すなわち、本発明のポリペプチドを構成し得る部分ペプチドもしくはアミノ酸と残余部分とを縮合させ、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的のペプチドを製造することができる。公知の縮合方法や保護基の脱離としては、例えば、以下の▲1▼〜▲5▼に記載された方法があげられる。
▲1▼M. Bodanszky および M.A. Ondetti、ペプチド シンセシス (Peptide Synthesis), Interscience Publishers, New York (1966年)
▲2▼SchroederおよびLuebke、ザ ペプチド(The Peptide), Academic Press, New York (1965年)
▲3▼泉屋信夫他、ペプチド合成の基礎と実験、 丸善(株) (1975年)
▲4▼矢島治明 および榊原俊平、生化学実験講座 1、 タンパク質の化学IV、 205、(1977年)
▲5▼矢島治明監修、続医薬品の開発 第14巻 ペプチド合成 広川書店
また、反応後は通常の精製法、たとえば、溶媒抽出・蒸留・カラムクロマトグラフィー・液体クロマトグラフィー・再結晶などを組み合わせて本発明の部分ペプチドを精製単離することができる。上記方法で得られる本発明のポリペプチドが遊離体である場合は、公知の方法によって適当な塩に変換することができるし、逆に塩で得られた場合は、公知の方法によって遊離体に変換することができる。
【0025】
本発明のポリヌクレオチドの説明
本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとしては、前述した本発明のポリペプチドをコードする塩基配列(DNAまたはRNA、好ましくはDNA)を含有するものであればいかなるものであってもよい。該ポリヌクレオチドとしては、本発明のポリペプチドをコードするDNA、mRNA等のRNAであり、二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。二本鎖の場合は、二本鎖DNA、二本鎖RNAまたはDNA:RNAのハイブリッドでもよい。一本鎖の場合は、センス鎖(即ち、コード鎖)であっても、アンチセンス鎖(即ち、非コード鎖)であってもよい。
本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドまたはその一部を用いて、例えば、公知の実験医学増刊「新PCRとその応用」15(7)、1997記載の方法またはそれに準じた方法により、本発明のポリペプチドのmRNAを定量することができる。
本発明のポリペプチドをコードするDNAとしては、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、前記した細胞・組織由来のcDNA、前記した細胞・組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAのいずれでもよい。ライブラリーに使用するベクターは、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。また、前記した細胞・組織よりtotalRNAまたはmRNA画分を調製したものを用いて直接Reverse Transcriptase Polymerase Chain Reaction(以下、RT-PCR法と略称する)によって増幅することもできる。
具体的には、本発明のポリペプチドをコードするDNAとしては、例えば、配列番号:30または配列番号:33で表わされる塩基配列を含有するDNA、または配列番号:30または配列番号:33で表わされる塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有し、本発明のポリペプチドと実質的に同質の活性(例、レセプター結合活性、シグナル情報伝達作用、後述の実験例1に記載の血圧低下活性、後述の実験例2に記載の平滑筋収縮活性など)を有するレセプター蛋白質をコードするDNAであれば何れのものでもよい。
配列番号:30または配列番号:33で表わされる塩基配列とハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号:30または配列番号:33で表わされる塩基配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
ハイブリダイゼーションは、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)2nd(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。より好ましくは、ストリンジェントな条件に従って行なうことができる。
該ストリンジェントな条件とは、例えば、ナトリウム濃度が約19〜40mM、好ましくは約19〜20mMで、温度が約50〜70℃、好ましくは約60〜65℃の条件を示す。特に、ナトリウム濃度が約19mMで温度が約65℃の場合が最も好ましい。
【0026】
本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(DNA)として、より具体的には、
(1)配列番号:17で表わされるアミノ酸配列を有する本発明のポリペプチドをコードするDNAとしては、配列番号:30で表わされる塩基配列を有するDNAなどが用いられ、
(2)配列番号:32で表わされるアミノ酸配列を有する本発明のポリペプチドをコードするDNAとしては、配列番号:33で表わされる塩基配列を有するDNAなどが用いられ、
(3)配列番号:7で表わされるアミノ酸配列を有する本発明のポリペプチドをコードするDNAとしては、配列番号:29で表わされる塩基配列を有するDNAなどが用いられ、
(4)配列番号:3で表わされるアミノ酸配列を有する本発明のポリペプチドをコードするDNAとしては、配列番号:4で表わされる塩基配列を有するDNAなどが用いられ、
(5)配列番号:13で表わされるアミノ酸配列を有する本発明のポリペプチドをコードするDNAとしては、配列番号:14で表わされる塩基配列を有するDNAなどが用いられ、
(6)配列番号:20で表わされるアミノ酸配列を有する本発明のポリペプチドをコードするDNAとしては、配列番号:21で表わされる塩基配列を有するDNAなどが用いられ、
(7)配列番号:22で表わされるアミノ酸配列を有する本発明のポリペプチドをコードするDNAとしては、配列番号:31で表わされる塩基配列を有するDNAなどが用いられ、
(8)配列番号:23で表わされるアミノ酸配列を有する本発明のポリペプチドをコードするDNAとしては、配列番号:40で表わされる塩基配列を有するDNAなどが用いられ、
(9)配列番号:24で表わされるアミノ酸配列を有する本発明のポリペプチドをコードするDNAとしては、配列番号:41で表わされる塩基配列を有するDNAなどが用いられ、
(10)配列番号:25で表わされるアミノ酸配列を有する本発明のポリペプチドをコードするDNAとしては、配列番号:42で表わされる塩基配列を有するDNAなどが用いられ、
(11)配列番号:26で表わされるアミノ酸配列を有する本発明のポリペプチドをコードするDNAとしては、配列番号:43で表わされる塩基配列を有するDNAなどが用いられ、
(12)配列番号:27で表わされるアミノ酸配列を有する本発明のポリペプチドをコードするDNAとしては、配列番号:44で表わされる塩基配列を有するDNAなどが用いられ、
(13)配列番号:28で表わされるアミノ酸配列を有する本発明のポリペプチドをコードするDNAとしては、配列番号:45で表わされる塩基配列を有するDNAなどが用いられ、
(14)配列番号:34で表わされるアミノ酸配列を有する本発明のポリペプチドをコードするDNAとしては、配列番号:46で表わされる塩基配列を有するDNAなどが用いられ、
(15)配列番号:35で表わされるアミノ酸配列を有する本発明のポリペプチドをコードするDNAとしては、配列番号:47で表わされる塩基配列を有するDNAなどが用いられ、
(16)配列番号:36で表わされるアミノ酸配列を有する本発明のポリペプチドをコードするDNAとしては、配列番号:48で表わされる塩基配列を有するDNAなどが用いられ、
(17)配列番号:37で表わされるアミノ酸配列を有する本発明のポリペプチドをコードするDNAとしては、配列番号:49で表わされる塩基配列を有するDNAなどが用いられ、
(18)配列番号:38で表わされるアミノ酸配列を有する本発明のポリペプチドをコードするDNAとしては、配列番号:50で表わされる塩基配列を有するDNAなどが用いられ、
(19)配列番号:39で表わされるアミノ酸配列を有する本発明のポリペプチドをコードするDNAとしては、配列番号:51で表わされる塩基配列を有するDNAなどが用いられる。
本発明のポリペプチドをコードするDNAの塩基配列の一部、または該DNAと相補的な塩基配列の一部を含有してなるポリヌクレオチドとは、本発明のポリペプチドの部分ペプチドをコードするDNAを意味するだけではなく、RNAをも包含する意味で用いられる。
【0027】
本発明に従えば、本発明のポリペプチド遺伝子の複製又は発現を阻害することのできるアンチセンス・ポリヌクレオチド(核酸)を、クローン化したあるいは決定された本発明のポリペプチドをコードするDNAの塩基配列情報に基づき設計し、合成しうる。そうしたポリヌクレオチド(核酸)は、本発明のポリペプチド遺伝子のRNAとハイブリダイズすることができ、該RNAの合成又は機能を阻害することができるか、あるいは本発明のポリペプチド関連RNAとの相互作用を介して本発明のポリペプチド遺伝子の発現を調節・制御することができる。本発明のポリペプチド関連RNAの選択された配列に相補的なポリヌクレオチド、及び本発明のポリペプチド関連RNAと特異的にハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドは、生体内及び生体外で本発明のポリペプチド遺伝子の発現を調節・制御するのに有用であり、また病気などの治療又は診断に有用である。用語「対応する」とは、遺伝子を含めたヌクレオチド、塩基配列又は核酸の特定の配列に相同性を有するあるいは相補的であることを意味する。ヌクレオチド、塩基配列又は核酸とペプチド(蛋白質)との間で「対応する」とは、ヌクレオチド(核酸)の配列又はその相補体から誘導される指令にあるペプチド(蛋白質)のアミノ酸を通常指している。本発明のポリペプチド遺伝子の5’端ヘアピンループ、5’端6−ベースペア・リピート、5’端非翻訳領域、ポリペプチド翻訳開始コドン、蛋白質コード領域、ORF翻訳開始コドン、3’端非翻訳領域、3’端パリンドローム領域、及び3’端ヘアピンループは好ましい対象領域として選択しうるが、本発明のポリペプチド遺伝子内の如何なる領域も対象として選択しうる。
目的核酸と、対象領域の少なくとも一部に相補的なポリヌクレオチドとの関係は、対象物とハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドとの関係は、「アンチセンス」であるということができる。アンチセンス・ポリヌクレオチドは、2−デオキシ−D−リボースを含有しているポリデオキシヌクレオチド、D−リボースを含有しているポリデオキシヌクレオチド、プリン又はピリミジン塩基のN−グリコシドであるその他のタイプのポリヌクレオチド、あるいは非ヌクレオチド骨格を有するその他のポリマー(例えば、市販の蛋白質核酸及び合成配列特異的な核酸ポリマー)又は特殊な結合を含有するその他のポリマー(但し、該ポリマーはDNAやRNA中に見出されるような塩基のペアリナグや塩基の付着を許容する配置をもつヌクレオチドを含有する)などがあげられる。それらは、2本鎖DNA、1本鎖DNA、2本鎖RNA、1本鎖RNA、さらにDNA:RNAハイブリッドであることができ、さらに非修飾ポリヌクレオチド(又は非修飾オリゴヌクレオチド)、さらには公知の修飾の付加されたもの、例えば当該分野で知られた標識のあるもの、キャップの付いたもの、メチル化されたもの、1個以上の天然のヌクレオチドを類縁物で置換したもの、分子内ヌクレオチド修飾のされたもの、例えば非荷電結合(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホルアミデート、カルバメートなど)を持つもの、電荷を有する結合又は硫黄含有結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)を持つもの、例えば蛋白質(ヌクレアーゼ、ヌクレアーゼ・インヒビター、トキシン、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L−リジンなど)や糖(例えば、モノサッカライドなど)などの側鎖基を有しているもの、インターカレント化合物(例えば、アクリジン、プソラレンなど)を持つもの、キレート化合物(例えば、金属、放射活性をもつ金属、ホウ素、酸化性の金属など)を含有するもの、アルキル化剤を含有するもの、修飾された結合を持つもの(例えば、αアノマー型の核酸など)であってもよい。ここで「ヌクレオシド」、「ヌクレオチド」及び「核酸」とは、プリン及びピリミジン塩基を含有するのみでなく、修飾されたその他の複素環型塩基をもつようなものを含んでいて良い。こうした修飾物は、メチル化されたプリン及びピリミジン、アシル化されたプリン及びピリミジン、あるいはその他の複素環を含むものであってよい。修飾されたヌクレオチド及び修飾されたヌクレオチドはまた糖部分が修飾されていてよく、例えば1個以上の水酸基がハロゲンとか、脂肪族基などで置換されていたり、あるいはエーテル、アミンなどの官能基に変換されていてよい。
本発明のアンチセンス・ポリヌクレオチド(核酸)は、RNA、DNA、あるいは修飾された核酸(RNA、DNA)である。修飾された核酸の具体例としては核酸の硫黄誘導体やチオホスフェート誘導体、そしてポリヌクレオシドアミドやオリゴヌクレオシドアミドの分解に抵抗性のものがあげられるが、それに限定されるものではない。本発明のアンチセンス核酸は次のような方針で好ましく設計されうる。すなわち、細胞内でのアンチセンス核酸をより安定なものにする、アンチセンス核酸の細胞透過性をより高める、目標とするセンス鎖に対する親和性をより大きなものにする、そしてもし毒性があるならアンチセンス核酸の毒性をより小さなものにする。
こうした修飾は当該分野で数多く知られており。例えば J. Kawakami et al., Pharm Tech Japan, Vol. 8, pp.247, 1992; Vol. 8, pp.395, 1992; S. T. Crooke et al. ed., Antisense Research and Applications, CRC Press, 1993 などに開示がある。
本発明のアンチセンス核酸は、変化せしめられたり、修飾された糖、塩基、結合を含有していて良く、リポゾーム、ミクロスフェアのような特殊な形態で供与されたり、遺伝子治療により適用されたり、付加された形態で与えられることができうる。こうして付加形態で用いられるものとしては、リン酸基骨格の電荷を中和するように働くポリリジンのようなポリカチオン体、細胞膜との相互作用を高めたり、核酸の取込みを増大せしめるような脂質(例えば、ホスホリピド、コレステロールなど)といった疎水性のものがあげられる。付加するに好ましい脂質としては、コレステロールやその誘導体(例えば、コレステリルクロロホルメート、コール酸など)があげられる。こうしたものは、核酸の3’端あるいは5’端に付着させることができ、塩基、糖、分子内ヌクレオシド結合を介して付着させることができうる。その他の基としては、核酸の3’端あるいは5’端に特異的に配置されたキャップ用の基で、エキソヌクレアーゼ、RNaseなどのヌクレアーゼによる分解を阻止するためのものがあげられる。こうしたキャップ用の基としては、ポリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのグリコールをはじめとした当該分野で知られた水酸基の保護基があげられるが、それに限定されるものではない。
アンチセンス核酸の阻害活性は、本発明の形質転換体、本発明の生体内や生体外の遺伝子発現系、あるいは本発明のポリペプチドの生体内や生体外の翻訳系を用いて調べることができる。該核酸それ自体公知の各種の方法で細胞に適
用できる。
また、上記アンチセンス核酸は、本発明のポリペプチド遺伝子のDNAやRNAとハイブリダイズするのみならず、本発明のポリペプチドの非翻訳領域(例えば、配列番号:5で示される塩基配列の5’端から1〜135番目または364〜720番目の塩基配列で表されるポリヌクレオチドなど)とハイブリダイズして、該DNAやRNAの合成又は機能を阻害するものも含まれる。
【0028】
DNAのクローニング
本発明のポリペプチドをコードするDNAのクローニングの手段としては、本発明のポリペプチドの部分塩基配列を有する合成DNAプライマーを用いてPCR法によって増幅するか、または適当なベクターに組み込んだDNAを本発明のポリペプチドの一部あるいは全領域をコードするDNA断片もしくは合成DNAを用いて標識したものとのハイブリダイゼーションによって選別することができる。ハイブリダイゼーションの方法は、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)2nd(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。
DNAの塩基配列の変換は、公知のキット、例えば、MutanTM-super Express Km(宝酒造(株))、MutanTM-K(宝酒造(株))等を用いて、ODA-LA PCR法やGapped duplex法やKunkel法等の自体公知の方法あるいはそれらに準じる方法に従って行なうことができる。
クローン化された本発明のポリペプチドをコードするDNAは目的によりそのまま、または所望により制限酵素で消化したり、リンカーを付加したりして使用することができる。該DNAはその5’末端側に翻訳開始コドンとしてのATGを有し、また3’末端側には翻訳終止コドンとしてのTAA、TGAまたはTAGを有していてもよい。これらの翻訳開始コドンや翻訳終止コドンは、適当な合成DNAアダプターを用いて付加することもできる。
本発明のポリペプチドの発現ベクターは、例えば、(イ)本発明のポリペプチドをコードするDNAから目的とするDNA断片を切り出し、(ロ)該DNA断片を適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより製造することができる。
ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド(例、pBR322,pBR325,pUC12,pUC13)、枯草菌由来のプラスミド(例、pUB110,pTP5,pC194)、酵母由来プラスミド(例、pSH19,pSH15)、λファージなどのバクテリオファージ、レトロウイルス,ワクシニアウイルス,バキュロウイルスなどの動物ウイルスなどの他、pA1−11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neoなどが用いられる。
本発明で用いられるプロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主に対応して適切なプロモーターであればいかなるものでもよい。例えば、動物細胞を宿主として用いる場合は、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMVプロモーター、HSV-TKプロモーターなどがあげられる。
これらのうち、CMVプロモーター、SRαプロモーターなどを用いるのが好ましい。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、trpプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、λPLプロモーター、lppプロモーターなどが、宿主がバチルス属菌である場合は、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーターなど、宿主が酵母である場合は、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーターなどが好ましい。宿主が昆虫細胞である場合は、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーターなどが好ましい。
発現ベクターには、以上の他に、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製オリジン(以下、SV40oriと略称する場合がある)などを含有しているものを用いることができる。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素(以下、dhfrと略称する場合がある)遺伝子〔メソトレキセート(MTX)耐性〕、アンピシリン耐性遺伝子(以下、Amprと略称する場合がある)、ネオマイシン耐性遺伝子(以下、Neorと略称する場合がある、G418耐性)等があげられる。特に、CHO(dhfr-)細胞を用いてdhfr遺伝子を選択マーカーとして使用する場合、目的遺伝子をチミジンを含まない培地によっても選択できる。
また、必要に応じて、宿主に合ったシグナル配列を、本発明のポリペプチドのN端末側に付加する。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、PhoA・シグナル配列、OmpA・シグナル配列などが、宿主がバチルス属菌である場合は、α−アミラーゼ・シグナル配列、サブチリシン・シグナル配列などが、宿主が酵母である場合は、MFα・シグナル配列、SUC2・シグナル配列など、宿主が動物細胞である場合には、インシュリン・シグナル配列、α−インターフェロン・シグナル配列、抗体分子・シグナル配列などがそれぞれ利用できる。
このようにして構築された本発明のポリペプチドをコードするDNAを含有するベクターを用いて、形質転換体を製造することができる。
【0029】
宿主としては、例えば、エシェリヒア属菌、バチルス属菌、酵母、昆虫細胞、昆虫、動物細胞などが用いられる。
エシェリヒア属菌の具体例としては、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)K12・DH1〔プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),60巻,160(1968)〕,JM103〔ヌクイレック・アシッズ・リサーチ,(Nucleic Acids Research),9巻,309(1981)〕,JA221〔ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー(Journal of Molecular Biology)〕,120巻,517(1978)〕,HB101〔ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー,41巻,459(1969)〕,C600〔ジェネティックス(Genetics),39巻,440(1954)〕などが用いられる。
バチルス属菌としては、例えば、バチルス・ズブチルス(Bacillus subtilis)MI114〔ジーン,24巻,255(1983)〕,207−21〔ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(Journal of Biochemistry),95巻,87(1984)〕などが用いられる。
酵母としては、例えば、サッカロマイセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)AH22,AH22R-,NA87−11A,DKD−5D,20B−12、シゾサッカロマイセス ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)NCYC1913,NCYC2036、ピキア パストリス(Pichia pastoris)などが用いられる。
昆虫細胞としては、例えば、ウイルスがAcNPVの場合は、夜盗蛾の幼虫由来株化細胞(Spodoptera frugiperda cell;Sf細胞)、Trichoplusia niの中腸由来のMG1細胞、Trichoplusia niの卵由来のHigh FiveTM 細胞、Mamestra brassicae由来の細胞またはEstigmena acrea由来の細胞などが用いられる。ウイルスがBmNPVの場合は、蚕由来株化細胞(Bombyx mori N;BmN細胞)などが用いられる。該Sf細胞としては、例えば、Sf9細胞(ATCC CRL1711)、Sf21細胞(以上、Vaughn, J.L.ら、イン・ヴィボ(In Vivo),13, 213-217,(1977))などが用いられる。
昆虫としては、例えば、カイコの幼虫などが用いられる〔前田ら、ネイチャー(Nature),315巻,592(1985)〕。
動物細胞としては、例えば、サル細胞COS−7,Vero,チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO細胞と略記),dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞CHO(以下、CHO(dhfr-)細胞と略記),マウスL細胞,マウスAtT−20,マウスミエローマ細胞,ラットGH3,ヒトFL細胞などが用いられる。
エシェリヒア属菌を形質転換するには、例えば、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンジイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),69巻,2110(1972)やジーン(Gene),17巻,107(1982)などに記載の方法に従って行なうことができる。 バチルス属菌を形質転換するには、例えば、モレキュラー・アンド・ジェネラル・ジェネティックス(Molecular & General Genetics),168巻,111(1979)などに記載の方法に従って行なうことができる。
酵母を形質転換するには、例えば、メッソズ・イン・エンザイモロジー(Methods in Enzymology),194巻,182−187(1991)、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),75巻,1929(1978)などに記載の方法に従って行なうことができる。
昆虫細胞または昆虫を形質転換するには、例えば、バイオ/テクノロジー(Bio/Technology),6, 47-55(1988))などに記載の方法に従って行なうことができる。
動物細胞を形質転換するには、例えば、細胞工学別冊8新細胞工学実験プロトコール.263−267(1995)(秀潤社発行)、ヴィロロジー(Virology),52巻,456(1973)に記載の方法に従って行なうことができる。
このようにして、本発明のポリペプチドをコードするDNAを含有する発現ベクターで形質転換された形質転換体が得られる。
宿主がエシェリヒア属菌、バチルス属菌である形質転換体を培養する際、培養に使用される培地としては液体培地が適当であり、その中には該形質転換体の生育に必要な炭素源、窒素源、無機物その他が含有せしめられる。炭素源としては、例えば、グルコース、デキストリン、可溶性澱粉、ショ糖など、窒素源としては、例えば、アンモニウム塩類、硝酸塩類、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、大豆粕、バレイショ抽出液などの無機または有機物質、無機物としては、例えば、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウムなどがあげられる。また、酵母エキス、ビタミン類、生長促進因子などを添加してもよい。培地のpHは約5〜8が望ましい。
エシェリヒア属菌を培養する際の培地としては、例えば、グルコース、カザミノ酸を含むM9培地〔ミラー(Miller),ジャーナル・オブ・エクスペリメンツ・イン・モレキュラー・ジェネティックス(Journal of Experiments in Molecular Genetics),431−433,Cold Spring Harbor Laboratory, New York 1972〕が好ましい。ここに必要によりプロモーターを効率よく働かせるために、例えば、3β−インドリル アクリル酸のような薬剤を加えることができる。宿主がエシェリヒア属菌の場合、培養は通常約15〜43℃で約3〜24時間行ない、必要により、通気や撹拌を加えることもできる。
宿主がバチルス属菌の場合、培養は通常約30〜40℃で約6〜24時間行ない、必要により通気や撹拌を加えることもできる。
宿主が酵母である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、バークホールダー(Burkholder)最小培地〔Bostian, K. L. ら、「プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),77巻,4505(1980)〕や0.5%カザミノ酸を含有するSD培地〔Bitter, G. A. ら、「プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),81巻,5330(1984)〕があげられる。培地のpHは約5〜8に調整するのが好ましい。培養は通常約20℃〜35℃で約24〜72時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
【0030】
宿主が昆虫細胞または昆虫である形質転換体を培養する際、培地としては、Grace's Insect Medium(Grace, T.C.C.,ネイチャー(Nature),195,788(1962))に非動化した10%ウシ血清等の添加物を適宜加えたものなどが用いられる。培地のpHは約6.2〜6.4に調整するのが好ましい。培養は通常約27℃で約3〜5日間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
宿主が動物細胞である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、約5〜20%の胎児牛血清を含むMEM培地〔サイエンス(Science),122巻,501(1952)〕,DMEM培地〔ヴィロロジー(Virology),8巻,396(1959)〕,RPMI 1640培地〔ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・メディカル・アソシエーション(The Journal of the American Medical Association)199巻,519(1967)〕,199培地〔プロシージング・オブ・ザ・ソサイエティ・フォー・ザ・バイオロジカル・メディスン(Proceeding of the Society for the Biological Medicine),73巻,1(1950)〕などが用いられる。pHは約6〜8であるのが好ましい。培養は通常約30℃〜40℃で約15〜60時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
以上のようにして、形質転換体の細胞内、細胞膜または細胞外に本発明の本発明のポリペプチドを生成せしめることができる。
なお、動物細胞を用いて、本発明のポリペプチドを安定に発現させる方法としては、上記の動物細胞に導入された発現ベクターが染色体に組み込まれた細胞をクローン選択によって選択する方法がある。具体的には、上記の選択マーカーを指標にして形質転換体を選択する。さらに、このように選択マーカーを用いて得られた動物細胞に対して、繰り返しクローン選択を行なうことにより本発明のポリペプチドの高発現能を有する安定な動物細胞株を得ることができる。また、dhfr遺伝子を選択マーカーとして用いた場合、MTX濃度を徐々に上げて培養し、耐性株を選択することにより、dhfr遺伝子とともに、本発明のポリペプチドをコードするDNAを細胞内で増幅させて、さらに高発現の動物細胞株を得ることもできる。
上記培養物から本発明のポリペプチドを分離精製するには、例えば、下記の方法により行なうことができる。
本発明のポリペプチドを培養菌体あるいは細胞から抽出するに際しては、培養後、公知の方法で菌体あるいは細胞を集め、これを適当な緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチームおよび/または凍結融解などによって菌体あるいは細胞を破壊したのち、遠心分離やろ過により本発明のポリペプチドの粗抽出液を得る方法などが適宜用いられる。緩衝液の中に尿素や塩酸グアニジンなどの蛋白質変性剤や、トリトンX−100TMなどの界面活性剤が含まれていてもよい。培養液中に本発明のポリペプチドが分泌される場合には、培養終了後、それ自体公知の方法で菌体あるいは細胞と上清とを分離し、上清を集める。
このようにして得られた培養上清、あるいは抽出液中に含まれる本発明のポリペプチドの精製は、自体公知の分離・精製法を適切に組み合わせて行なうことができる。これらの公知の分離、精製法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの主として分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法などが用いられる。
かくして得られる本発明のポリペプチドが遊離体で得られた場合には、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法によって塩に変換することができ、逆に塩で得られた場合には自体公知の方法あるいはそれに準じる方法により、遊離体または他の塩に変換することができる。
なお、組換え体が産生する本発明のポリペプチドを、精製前または精製後に適当な蛋白修飾酵素を作用させることにより、任意に修飾を加えたり、ポリペプチドを部分的に除去することもできる。蛋白修飾酵素としては、例えば、トリプシン、キモトリプシン、アルギニルエンドペプチダーゼ、プロテインキナーゼ、グリコシダーゼなどが用いられる。組み換え体が産生する本発明のポリペプチドは使用細胞により、そのC末端メチオニンのカルボキシル基がアミド化されている場合と、アミド化されていない場合がある。アミド化されていない場合には、当該分野で公知の方法によりアミド化を行うことができる。
かくして生成する本発明のポリペプチドまたはその塩の活性は、標識したレセプターとの結合実験および特異抗体を用いたエンザイムイムノアッセイなどにより測定することができる。
【0031】
本発明のポリペプチドに対する抗体
本発明のポリペプチドに対する抗体は、本発明のポリペプチドを認識し得る抗体であれば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体の何れであってもよい。
本発明のポリペプチドに対する抗体は、本発明のポリペプチドを抗原として用い、自体公知の抗体または抗血清の製造法に従って製造することができる。
〔モノクローナル抗体の作製〕
(a)モノクロナール抗体産生細胞の作製
本発明のポリペプチドは、哺乳動物に対して投与により抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は通常2〜6週毎に1回ずつ、計2〜10回程度行なわれる。用いられる哺乳動物としては、例えば、サル、ウサギ、イヌ、モルモット、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギがあげられるが、マウスおよびラットが好ましく用いられる。
モノクローナル抗体産生細胞の作製に際しては、抗原を免疫された温血動物、例えば、マウスから抗体価の認められた個体を選択し最終免疫の2〜5日後に脾臓またはリンパ節を採取し、それらに含まれる抗体産生細胞を骨髄腫細胞と融合させることにより、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを調製することができる。抗血清中の抗体価の測定は、例えば、後記の標識化されたポリペプチドと抗血清とを反応させたのち、抗体に結合した標識剤の活性を測定することにより行なうことができる。融合操作は既知の方法、例えば、ケーラーとミルスタインの方法〔ネイチャー(Nature)、256巻、495頁(1975年)〕に従い実施することができる。融合促進剤としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)やセンダイウィルスなどがあげられるが、好ましくはPEGが用いられる。
骨髄腫細胞としては、例えば、NS−1、P3U1、SP2/0などがあげられるが、P3U1が好ましく用いられる。用いられる抗体産生細胞(脾臓細胞)数と骨髄腫細胞数との好ましい比率は1:1〜20:1程度であり、PEG(好ましくは、PEG1000〜PEG6000)が10〜80%程度の濃度で添加され、約20〜40℃、好ましくは約30〜37℃で約1〜10分間インキュベートすることにより効率よく細胞融合を実施できる。
モノクローナル抗体産生ハイブリドーマのスクリーニングには種々の方法が使用できるが、例えば、本発明のポリペプチドの抗原を直接あるいは担体とともに吸着させた固相(例、マイクロプレート)にハイブリドーマ培養上清を添加し、次に放射性物質や酵素などで標識した抗免疫グロブリン抗体(細胞融合に用いられる細胞がマウスの場合、抗マウス免疫グロブリン抗体が用いられる)またはプロテインAを加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法、抗免疫グロブリン抗体またはプロテインAを吸着させた固相にハイブリドーマ培養上清を添加し、放射性物質や酵素などで標識したポリペプチドを加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法などがあげられる。
モノクローナル抗体の選別は、自体公知あるいはそれに準じる方法に従って行なうことができるが、通常はHAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)を添加した動物細胞用培地などで行なうことができる。選別および育種用培地としては、ハイブリドーマが生育できるものならばどのような培地を用いても良い。例えば、1〜20%、好ましくは10〜20%の牛胎児血清を含むRPMI 1640培地、1〜10%の牛胎児血清を含むGIT培地(和光純薬工業(株))またはハイブリドーマ培養用無血清培地(SFM−101、日水製薬(株))などを用いることができる。培養温度は、通常20〜40℃、好ましくは約37℃である。培養時間は、通常5日〜3週間、好ましくは1週間〜2週間である。培養は、通常5%炭酸ガス下で行なうことができる。ハイブリドーマ培養上清の抗体価は、上記の抗血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。
【0032】
(b)モノクロナール抗体の精製
モノクローナル抗体の分離精製は、通常のポリクローナル抗体の分離精製と同様に免疫グロブリンの分離精製法〔例、塩析法、アルコール沈殿法、等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換体(例、DEAE)による吸脱着法、超遠心法、ゲルろ過法、抗原結合固相またはプロテインAあるいはプロテインGなどの活性吸着剤により抗体のみを採取し、結合を解離させて抗体を得る特異的精製法〕に従って行なうことができる。
〔ポリクローナル抗体の作製〕
本発明のポリクローナル抗体(本発明のポリペプチドに対するポリクローナル抗体のことを意味する)は、それ自体公知あるいはそれに準じる方法にしたがって製造することができる。例えば、免疫抗原(本発明のポリペプチド抗原)とキャリアー蛋白質との複合体をつくり、上記のモノクローナル抗体の製造法と同様に哺乳動物に免疫を行ない、該免疫動物から本発明のポリペプチドに対する抗体含有物を採取して、抗体の分離精製を行なうことにより製造できる。
哺乳動物を免疫するために用いられる免疫抗原とキャリアー蛋白質との複合体に関し、キャリアー蛋白質の種類およびキャリアーとハプテンとの混合比は、キャリアーに架橋させて免疫したハプテンに対して抗体が効率良くできれば、どの様なものをどの様な比率で架橋させてもよいが、例えば、ウシ血清アルブミン、ウシサイログロブリン、キーホール・リンペット・ヘモシアニン等を重量比でハプテン1に対し、約0.1〜20、好ましくは約1〜5の割合でカプルさせる方法が用いられる。
また、ハプテンとキャリアーのカプリングには、種々の縮合剤を用いることができるが、グルタルアルデヒドやカルボジイミド、マレイミド活性エステル、チオール基、ジチオビリジル基を含有する活性エステル試薬等が用いられる。
縮合生成物は、温血動物に対して、抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は、通常約2〜6週毎に1回ずつ、計約3〜10回程度行なうことができる。
ポリクローナル抗体は、上記の方法で免疫された哺乳動物の血液、腹水など、好ましくは血液から採取することができる。
抗血清中のポリクローナル抗体価の測定は、上記の血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。ポリクローナル抗体の分離精製は、上記のモノクローナル抗体の分離精製と同様の免疫グロブリンの分離精製法に従って行なうことができる。
【0033】
本発明のポリペプチド等の用途
以下に、▲1▼本発明のポリペプチド、▲2▼本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(DNA)(以下、本発明のポリヌクレオチド(DNA)と略記する場合がある)、▲3▼本発明のポリペプチドに対する抗体(以下、本発明の抗体と略記する場合がある)、および▲4▼アンチセンスDNAの用途を説明する。
(1)本発明のポリペプチドが関与する各種疾病の治療・予防剤
本発明のポリペプチドは後述の実験例1および実験例2に示すとおり、血圧低下作用、平滑筋収縮作用などの生理活性を有している。
従って本発明のポリペプチドをコードするDNAに異常があったり、欠損している場合、または本発明のポリペプチドのレセプター蛋白質をコードするDNAに異常があったり、欠損している場合には、例えば、血圧異常(高血圧症等)、外分泌異常、心循環器系疾患等の種々の疾病が発症する可能性が高い。
従って、本発明のポリペプチド、本発明のポリヌクレオチド(DNA)は、例えば、上記の種々の疾病の治療・予防剤などの医薬として使用することができる。
本発明のポリペプチドおよび本発明のDNAは、例えば、生体内において本発明のポリペプチドが減少あるいは欠損している患者がいる場合に、(イ)本発明のDNAを該患者に投与し、生体内で本発明のポリペプチドを発現させることによって、(ロ)細胞に本発明のDNAを挿入し、本発明のポリペプチドを発現させた後に、該細胞を患者に移植することによって、または(ハ)本発明のポリペプチドを該患者に投与することなどによって、該患者における本発明のポリペプチドの役割を十分に、あるいは正常に発揮させることができる。
本発明のDNAを上記の治療・予防剤として使用する場合は、該DNAを単独あるいはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノウイルスアソシエーテッドウイルスベクターなどの適当なベクターに挿入した後、常套手段に従って、ヒトまたは温血動物に投与することができる。本発明のDNAは、そのままで、あるいは摂取促進のための補助剤などの生理学的に認められる担体とともに製剤化し、遺伝子銃やハイドロゲルカテーテルのようなカテーテルによって投与できる。
本発明のポリペプチドを上記の治療・予防剤として使用する場合は、少なくとも90%、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上に精製されたものを使用するのが好ましい。
本発明のポリペプチドは、例えば、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤などとして経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤などの注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、本発明のポリペプチドを生理学的に認められる担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な容量が得られるようにするものである。
錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガント、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、前記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油などのような天然産出植物油などを溶解または懸濁させるなどの通常の製剤実施に従って処方することができる。
注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)などがあげられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例えば、エタノールなど)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート80TM、HCO−50など)などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などがあげられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。また、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液など)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調製された注射液は、通常、適当なアンプルに充填される。
本発明のDNAが挿入されたベクターも上記と同様に製剤化され、通常、非経口的に使用される。
このようにして得られる製剤は、安全で低毒性であるので、例えば、ヒトまたは温血動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、トリ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、など)に対して投与することができる。
本発明のポリペプチドの投与量は、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、高血圧症の治療目的で本発明のポリペプチドを経口投与する場合、一般的に成人(60kgとして)においては、一日につき該ポリペプチドを約0.1mg〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。非経口的に投与する場合は、該ポリペプチドの1回投与量は投与対象、対象疾患などによっても異なるが、例えば、高血圧症の治療目的で本発明のポリペプチドを注射剤の形で成人(体重60kgとして)に投与する場合、一日につき該ポリペプチドを約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を患部に注射することにより投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0034】
(2)疾病に対する医薬候補化合物のスクリーニング
本発明のポリペプチドは後述の実験例1および実験例2に示すとおり、血圧低下作用、平滑筋収縮作用などの生理活性を有するため、本発明の機能を促進する化合物またはその塩(即ち、本発明のポリペプチドのアゴニスト)は、例えば、血圧異常(高血圧症等)、外分泌異常、心循環器系疾患等の疾病の治療・予防剤などの医薬として使用できる。
また、本発明の機能を阻害する化合物またはその塩(即ち、本発明のポリペプチドのアンタゴニスト)は、例えば、アレルギー性疾患、喘息、狭心症、動脈硬化、糖尿病、高脂血症、嘔吐、骨疾患、頻尿、エイズ、血圧異常等の疾病の治療・予防剤などの医薬として使用できる。
該アゴニスト、アンタゴニストのスクリーニングは、本発明のポリペプチドを用いるか、または組換え型本発明のポリペプチドの発現系を構築し、該発現系を用いた受容体または結合アッセイ系を用いることによって、本発明のポリペプチドとその受容体との結合性を変化させる化合物(本発明のポリペプチドの活性を促進または阻害する化合物)(例えば、ペプチド、蛋白質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物など)またはその塩をスクリーニングすることができる。このような化合物またはその塩には、本発明のポリペプチドの受容体を介して細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+の遊離、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化、c−fosの活性化、pHの低下などを促進する活性など)を有する化合物またはその塩(即ち本発明のポリペプチドのアゴニスト)と該細胞刺激活性を有しない化合物またはその塩(即ち本発明のポリペプチドのアンタゴニスト)などが含まれる。「レセプターとの結合性を変化させる」とは、レセプターとの結合を阻害する場合とレセプターとの結合を促進する場合の両方を包含するものである。
【0035】
すなわち、本発明は、
本発明のポリペプチドを用いることを特徴とする本発明のポリペプチドの活性を促進または阻害する化合物またはその塩(アゴニストまたはアンタゴニスト)のスクリーニング方法、具体的には、
(i)本発明のポリペプチドの受容体もしくはその塩または該本発明のポリペプチドの受容体の部分ペプチドもしくはその塩に、本発明のポリペプチドを接触させた場合と(ii)上記した本発明のポリペプチドの受容体もしくはその塩または該本発明のポリペプチドの受容体の部分ペプチドもしくはその塩に、本発明のポリペプチドおよび試験化合物を接触させた場合との比較を行なうことを特徴とする本発明のポリペプチドと本発明のポリペプチドの受容体の結合性を変化させる化合物(本発明のポリペプチドの活性を促進または阻害する化合物:本発明のポリペプチドに対するアゴニストまたはアンタゴニスト)またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
本発明のスクリーニング方法においては、(i)本発明のポリペプチドの受容体もしくはその塩または該本発明のポリペプチドの受容体の部分ペプチドもしくはその塩に、本発明のポリペプチドを接触させた場合と(ii)本発明のポリペプチドの受容体もしくはその塩または該本発明のポリペプチドの受容体の部分ペプチドもしくはその塩に、本発明のポリペプチドおよび試験化合物を接触させた場合における、例えば該本発明のポリペプチドの受容体もしくはその塩または該本発明のポリペプチドの受容体の部分ペプチドもしくはその塩に対する本発明のポリペプチドの結合量、細胞刺激活性などを測定して、比較する。
本発明のポリペプチドに対する受容体としては、種々の受容体のうち、本発明のポリペプチドと結合活性を有し、本発明のポリプチドにより該受容体発現細胞の細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+の遊離、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化、c−fosの活性化、pHの低下などを促進する活性等)が観察されるものなどがあげられる。
具体的には、
▲1▼ NK−1、
▲2▼ NK−2、
▲3▼ NK−3、
▲4▼ NK−4などがあげられる。
【0036】
本発明のスクリーニング方法は具体的には、
▲1▼標識した本発明のポリペプチドを、上記した本発明のポリペプチドの受容体もしくはその塩または本発明のポリペプチドの受容体の部分ペプチドもしくはその塩に接触させた場合と、標識した本発明のポリペプチドおよび試験化合物を本発明のポリペプチドの受容体もしくはその塩または本発明のポリペプチドの受容体の部分ペプチドもしくはその塩に接触させた場合における、標識した本発明のポリペプチドの該本発明のポリペプチドの受容体もしくはその塩、または該部分ペプチドもしくはその塩に対する結合量を測定し、比較することを特徴とする本発明のポリペプチドと本発明のポリペプチドの受容体との結合性を変化させる化合物(本発明のポリペプチドの活性を促進または阻害する化合物:本発明のポリペプチドに対するアゴニストまたはアンタゴニスト)またはその塩のスクリーニング方法、
▲2▼標識した本発明のポリペプチドを、本発明のポリペプチドの受容体を含有する細胞または該細胞の膜画分に接触させた場合と、標識した本発明のポリペプチドおよび試験化合物を本発明のポリペプチドの受容体を含有する細胞または該細胞の膜画分に接触させた場合における、標識した本発明のポリペプチドの該細胞または該膜画分に対する結合量を測定し、比較することを特徴とする本発明のポリペプチドと本発明のポリペプチドの受容体との結合性を変化させる化合物(本発明のポリペプチドの活性を促進または阻害する化合物:本発明のポリペプチドに対するアゴニストまたはアンタゴニスト)またはその塩のスクリーニング方法、
▲3▼標識した本発明のポリペプチドを、本発明のポリペプチドの受容体をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによって細胞膜上に発現した本発明のポリペプチドの受容体に接触させた場合と、標識した本発明のポリペプチドおよび試験化合物を本発明のポリペプチドの受容体をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによって細胞膜上に発現した本発明のポリペプチドの受容体に接触させた場合における、標識した本発明のポリペプチドの本発明のポリペプチドの受容体に対する結合量を測定し、比較することを特徴とする本発明のポリペプチドと本発明のポリペプチドの受容体との結合性を変化させる化合物(本発明のポリペプチドの活性を促進または阻害する化合物:本発明のポリペプチドに対するアゴニストまたはアンタゴニスト)またはその塩のスクリーニング方法、
▲4▼本発明のポリペプチドの受容体を活性化する化合物(例えば、本発明のポリペプチド)を本発明のポリペプチドの受容体を含有する細胞に接触させた場合と、本発明のポリペプチドの受容体を活性化する化合物および試験化合物を本発明のポリペプチドの受容体を含有する細胞に接触させた場合における、本発明のポリペプチドの受容体を介した細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+の遊離、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化、c−fosの活性化、pHの低下などを促進する活性または抑制する活性など)を測定し、比較することを特徴とする本発明のポリペプチドと本発明のポリペプチドの受容体との結合性を変化させる化合物(本発明のポリペプチドの活性を促進または阻害する化合物:本発明のポリペプチドに対するアゴニストまたはアンタゴニスト)またはその塩のスクリーニング方法、および
▲5▼本発明のポリペプチドの受容体を活性化する化合物(例えば、本発明のポリペプチドなど)を本発明のポリペプチドの受容体をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによって細胞膜上に発現した本発明のポリペプチドの受容体に接触させた場合と、本発明のポリペプチドの受容体を活性化する化合物および試験化合物を、本発明のポリペプチドの受容体をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによって細胞膜上に発現した本発明のポリペプチドの受容体に接触させた場合における、本発明のポリペプチドの受容体を介する細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+の遊離、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化、c−fosの活性化、pHの低下などを促進する活性または抑制する活性など)を測定し、比較することを特徴とする本発明のポリペプチドと本発明のポリペプチドの受容体との結合性を変化させる化合物(本発明のポリペプチドの活性を促進または阻害する化合物:本発明のポリペプチドに対するアゴニストまたはアンタゴニスト)またはその塩のスクリーニング方法などである。
【0037】
本発明のスクリーニング方法の具体的な説明を以下にする。
まず、本発明のスクリーニング方法に用いる本発明のポリペプチドの受容体としては、本発明のポリペプチドをリガンドとして認識するものであれば何れのものであってもよいが、ヒトや温血動物の臓器の膜画分などが好適である。しかし、特にヒト由来の臓器は入手が極めて困難なことから、スクリーニングに用いられるものとしては、組換え体を用いて大量発現させた本発明のポリペプチドの受容体などが適している。
本発明のポリペプチドの受容体を製造するには、前述の本発明のポリペプチドの製造方法と同様の方法などが用いられる。
本発明のスクリーニング方法において、本発明のポリペプチドの受容体を含有する細胞あるいは該細胞膜画分などを用いる場合、後述の調製法に従えばよい。
本発明のポリペプチドの受容体を含有する細胞を用いる場合、該細胞をグルタルアルデヒド、ホルマリンなどで固定化してもよい。固定化方法はそれ自体公知の方法に従って行うことができる。
本発明のポリペプチドの受容体を含有する細胞としては、本発明のポリペプチドの受容体を発現した宿主細胞をいうが、該宿主細胞としては、前述の大腸菌、枯草菌、酵母、昆虫細胞、動物細胞などが挙げられる。また、本発明のポリペプチドの受容体を発現した宿主細胞は、前述の本発明のポリペプチドを含有する発現ベクターで形質転換された形質転換体の製造方法と同様の方法などがあげられる。
膜画分としては、細胞を破砕した後、それ自体公知の方法で得られる細胞膜が多く含まれる画分のことをいう。細胞の破砕方法としては、Potter−Elvehjem型ホモジナイザーで細胞を押し潰す方法、ワーリングブレンダーやポリトロン(Kinematica社製)による破砕、超音波による破砕、フレンチプレスなどで加圧しながら細胞を細いノズルから噴出させることによる破砕などが挙げられる。細胞膜の分画には、分画遠心分離法や密度勾配遠心分離法などの遠心力による分画法が主として用いられる。例えば、細胞破砕液を低速(500rpm〜3000rpm)で短時間(通常、約1分〜10分)遠心し、上清をさらに高速(15000rpm〜30000rpm)で通常30分〜2時間遠心し、得られる沈澱を膜画分とする。該膜画分中には、発現した本発明のポリペプチドの受容体と細胞由来のリン脂質や膜蛋白質などの膜成分が多く含まれる。
該本発明のポリペプチドの受容体を含有する細胞や膜画分中の本発明のポリペプチドの受容体の量は、1細胞当たり103〜108分子であるのが好ましく、105〜107分子であるのが好適である。なお、発現量が多いほど膜画分当たりのレセプター結合活性(比活性)が高くなり、高感度なスクリーニング系の構築が可能になるばかりでなく、同一ロットで大量の試料を測定できるようになる。
本発明のポリペプチドと本発明のポリペプチドの受容体との結合性を変化させる化合物(本発明のポリペプチドの活性を促進または阻害する化合物:本発明のポリペプチドに対するアゴニストまたはアンタゴニスト)をスクリーニングする前記の▲1▼〜▲3▼を実施するためには、適当な本発明のポリペプチドの受容体画分と、標識した本発明のポリペプチドなどが用いられる。本発明のポリペプチドの受容体画分としては、天然型の本発明のポリペプチドの受容体画分か、またはそれと同等の活性を有する組換え型本発明のポリペプチドの受容体画分などが望ましい。ここで、同等の活性とは、同等のレセプター結合活性などを示す。標識したリガンドとしては、標識したリガンド、標識したリガンドアナログ化合物などが用いられる。例えば〔3H〕、〔125I〕、〔14C〕、〔35S〕などで標識されたリガンドなどを利用することができる。
具体的には、本発明のポリペプチドと本発明のポリペプチドの受容体との結合性を変化させる化合物のスクリーニングを行うには、まず本発明のポリペプチドの受容体を含有する細胞または細胞の膜画分を、スクリーニングに適したバッファーに懸濁することによりレセプター標品を調製する。バッファーには、pH4〜10(望ましくはpH6〜8)のリン酸バッファー、トリス−塩酸バッファーなどのリガンドとレセプターとの結合を阻害しないバッファーであればいずれでもよい。また、非特異的結合を低減させる目的で、CHAPS、Tween−80TM(花王−アトラス社)、ジギトニン、デオキシコレートなどの界面活性剤をバッファーに加えることもできる。さらに、プロテアーゼによるレセプターや本発明のポリペプチドの分解を抑える目的でPMSF、ロイペプチン、E−64(ペプチド研究所製)、ペプスタチンなどのプロテアーゼ阻害剤を添加することもできる。0.01ml〜10mlの該レセプター溶液に、一定量(5000cpm〜500000cpm)の標識した本発明のポリペプチドを添加し、同時に10-10〜10-7Mの試験化合物を共存させる。非特異的結合量(NSB)を知るために大過剰の未標識の本発明のポリペプチドを加えた反応チューブも用意する。反応は0℃から50℃、望ましくは4℃から37℃で20分から24時間、望ましくは30分から3時間行う。反応後、ガラス繊維濾紙等で濾過し、適量の同バッファーで洗浄した後、ガラス繊維濾紙に残存する放射活性を液体シンチレーションカウンターまたはγ−カウンターで計測する。拮抗する物質がない場合のカウント(B0)から非特異的結合量(NSB)を引いたカウント(B0−NSB)を100%とした時、特異的結合量(B−NSB)が例えば50%以下になる試験化合物を拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
本発明のポリペプチドと本発明のポリペプチドの受容体との結合性を変化させる化合物(本発明のポリペプチドの活性を促進または阻害する化合物:本発明のポリペプチドに対するアゴニストまたはアンタゴニスト)をスクリーニングする前記の▲4▼〜▲5▼の方法を実施するためには、本発明のポリペプチドの受容体を介する細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+の遊離、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化、c−fosの活性化、pHの低下などを促進する活性または抑制する活性など)を公知の方法または市販の測定用キットを用いて測定することができる。具体的には、まず、本発明のポリペプチドの受容体を含有する細胞をマルチウェルプレート等に培養する。スクリーニングを行うにあたっては前もって新鮮な培地あるいは細胞に毒性を示さない適当なバッファーに交換し、試験化合物などを添加して一定時間インキュベートした後、細胞を抽出あるいは上清液を回収して、生成した産物をそれぞれの方法に従って定量する。細胞刺激活性の指標とする物質(例えば、アラキドン酸など)の生成が、細胞が含有する分解酵素によって検定困難な場合は、該分解酵素に対する阻害剤を添加してアッセイを行なってもよい。また、cAMP産生抑制などの活性については、フォルスコリンなどで細胞の基礎的産生量を増大させておいた細胞に対する産生抑制作用として検出することができる。
細胞刺激活性を測定してスクリーニングを行なうには、適当な本発明のポリペプチドの受容体を発現した細胞が必要である。本発明の本発明のポリペプチドの受容体を発現した細胞としては、前述の本発明のポリペプチドの受容体発現細胞株などが望ましい。
試験化合物としては、例えばペプチド、タンパク、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液などが挙げられる。
本発明のポリペプチドと本発明のポリペプチドの受容体との結合性を変化させる化合物(本発明のポリペプチドの活性を促進または阻害する化合物:本発明のポリペプチドに対するアゴニストまたはアンタゴニスト)またはその塩のスクリーニング用キットは、本発明のポリペプチドの受容体またはその塩、本発明のポリペプチドの受容体の部分ペプチドまたはその塩、本発明のポリペプチドの受容体を含有する細胞、あるいは本発明のポリペプチドの受容体を含有する細胞の膜画分、および本発明のポリペプチドを含有するものである。
【0038】
本発明のスクリーニング用キットの例としては、次のものが挙げられる。
1.スクリーニング用試薬
▲1▼測定用緩衝液および洗浄用緩衝液
Hanks' Balanced Salt Solution(ギブコ社製)に、0.05%のウシ血清アルブミン(シグマ社製)を加えたもの。
孔径0.45μmのフィルターで濾過滅菌し、4℃で保存するか、あるいは用時調製しても良い。
▲2▼本発明のポリペプチドの受容体標品
本発明のポリペプチドの受容体を発現させたCHO細胞を、12穴プレートに5×105個/穴で継代し、37℃、5%CO2、95%airで2日間培養したもの。
▲3▼標識リガンド
3H〕、〔125I〕、〔14C〕、〔35S〕などで標識した本発明のポリペプチド
適当な溶媒または緩衝液に溶解したものを4℃あるいは−20℃にて保存し、用時に測定用緩衝液にて1μMに希釈する。
▲4▼リガンド標準液
本発明のポリペプチドを0.1%ウシ血清アルブミン(シグマ社製)を含むPBSで1mMとなるように溶解し、−20℃で保存する。
2.測定法
▲1▼12穴組織培養用プレートにて培養した本発明のポリペプチドの受容体を発現させた細胞を、測定用緩衝液1mlで2回洗浄した後、490μlの測定用緩衝液を各穴に加える。
▲2▼10-3〜10-10Mの試験化合物溶液を5μl加えた後、標識した本発明のペプチドを5μl加え、室温にて1時間反応させる。非特異的結合量を知るためには試験化合物のかわりに10-3Mの本発明のポリペプチドを5μl加えておく。
▲3▼反応液を除去し、1mlの洗浄用緩衝液で3回洗浄する。細胞に結合した標識された本発明のポリペプチドを0.2N NaOH−1%SDSで溶解し、4mlの液体シンチレーターA(和光純薬製)と混合する。
▲4▼液体シンチレーションカウンター(ベックマン社製)を用いて放射活性を測定し、Percent Maximum Binding(PMB)を次の式〔数1〕で求める。
〔数1〕
PMB=[(B−NSB)/(B0−NSB)]×100
PMB:Percent Maximum Binding
B :検体を加えた時の値
NSB:Non-specific Binding(非特異的結合量)
0 :最大結合量
本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる化合物またはその塩は、本発明のポリペプチドと本発明のポリペプチドの受容体との結合を変化させる(結合を阻害あるいは促進する)化合物(本発明のポリペプチドの活性を促進または阻害する化合物:本発明のポリペプチドに対するアゴニストまたはアンタゴニスト)であり、具体的には本発明のポリペプチドの受容体を介して細胞刺激活性を有する化合物またはその塩(いわゆる本発明のポリペプチドのアゴニスト)、あるいは該刺激活性を有しない化合物(いわゆる本発明のポリペプチドのアンタゴニスト)である。該化合物としては、ペプチド、タンパク、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物などが挙げられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
【0039】
上記本発明のポリペプチドのアゴニストであるかアンタゴニストであるかの具体的な評価方法は以下の(i)または(ii)に従えばよい。
(i)前記▲1▼〜▲3▼のスクリーニング方法で示されるバインディング・アッセイを行い、本発明のポリペプチドと本発明のポリペプチドの受容体との結合性を変化させる(特に、結合を阻害する)化合物を得た後、該化合物が上記した本発明のポリペプチドの受容体を介する細胞刺激活性を有しているか否かを測定する。細胞刺激活性を有する化合物またはその塩は本発明のポリペプチドのアゴニストであり、該活性を有しない化合物またはその塩は本発明のポリペプチドのアンタゴニストである。
(ii)(a)試験化合物を本発明のポリペプチドの受容体を含有する細胞に接触させ、上記本発明のポリペプチドの受容体を介した細胞刺激活性を測定する。細胞刺激活性を有する化合物またはその塩は本発明のポリペプチドのアゴニストである。
(b) 本発明のポリペプチドの受容体を活性化する化合物(例えば、本発明のポリペプチドまたは本発明のポリペプチドのアゴニストなど)を本発明のポリペプチドの受容体を含有する細胞に接触させた場合と、本発明のポリペプチドの受容体を活性化する化合物および試験化合物を本発明のポリペプチドの受容体を含有する細胞に接触させた場合における、本発明のポリペプチドの受容体を介した細胞刺激活性を測定し、比較する。本発明のポリペプチドの受容体を活性化する化合物による細胞刺激活性を減少させ得る化合物またはその塩は本発明のポリペプチドのアンタゴニストである。
該本発明のポリペプチドのアゴニストは、本発明のポリペプチドの受容体に対する本発明のポリペプチドが有する生理活性と同様の作用を有しているので、本発明のポリペプチドと同様に安全で低毒性な医薬(例えば、血圧異常(高血圧症等)、外分泌異常、内分泌異常、脂質代謝異常、心循環器系疾患等の疾病の治療・予防剤などの医薬)として有用である。
逆に、本発明のポリペプチドのアンタゴニストは、本発明のポリペプチドの受容体に対する本発明のポリペプチドが有する生理活性を抑制することができるので、該レセプター活性を抑制する安全で低毒性な医薬(例えば、アレルギー性疾患、喘息、狭心症、動脈硬化、糖尿病、高脂血症、嘔吐、骨疾患、頻尿、エイズ、血圧異常等の疾病の治療・予防剤などの医薬)として有用である。
本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる化合物またはその塩は、例えば、ペプチド、タンパク、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などから選ばれた化合物であり、本発明のポリペプチドの機能を促進または阻害する化合物である。
該化合物の塩としては、前記した本発明のポリペプチドの塩と同様のものが用いられる。
【0040】
本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる化合物を上述の治療・予防剤として使用する場合、常套手段に従って実施することができる。例えば、前記した本発明のポリペプチド等を含有する医薬と同様にして、錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤、無菌性溶液、懸濁液剤などとすることができる。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトまたは温血動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、トリ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジーなど)に対して経口的または非経口的投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、その作用、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、高血圧症治療の目的で本発明のポリペプチドの機能を促進する化合物を経口投与する場合、一般的に成人(体重60kgとして)においては、一日につき該化合物を約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。非経口的に投与する場合は、該化合物の1回投与量は投与対象、対象疾患などによっても異なるが、例えば、高血圧症治療の目的で本発明のポリペプチドの機能を促進する化合物を注射剤の形で通常成人(60kgとして)に投与する場合、一日につき該化合物を約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0041】
(3)本発明のポリペプチドの定量
本発明のポリペプチドに対する抗体(以下、本発明の抗体と略記する場合がある)は、本発明のポリペプチドを特異的に認識することができるので、被検液中の本発明のポリペプチドの定量、特にサンドイッチ免疫測定法による定量などに使用することができる。
すなわち、本発明は、
(i)本発明の抗体と、被検液および標識化された本発明のポリペプチドとを競合的に反応させ、該抗体に結合した標識化された本発明のポリペプチドの割合を測定することを特徴とする被検液中の本発明のポリペプチドの定量法、および
(ii)被検液と担体上に不溶化した本発明の抗体および標識化された本発明の別の抗体とを同時あるいは連続的に反応させたのち、不溶化担体上の標識剤の活性を測定することを特徴とする被検液中の本発明のポリペプチドの定量法を提供する。
上記(ii)の定量法においては、一方の抗体が本発明のポリペプチドのN端部を認識する抗体で、他方の抗体が本発明のポリペプチドのC端部に反応する抗体であることが望ましい。
また、本発明のポリペプチドに対するモノクローナル抗体を用いて本発明のポリペプチドの定量を行うことができるほか、組織染色等による検出を行なうこともできる。これらの目的には、抗体分子そのものを用いてもよく、また、抗体分子のF(ab')2、Fab'、あるいはFab画分を用いてもよい。
本発明の抗体を用いる本発明のポリペプチドの定量法は、 特に制限されるべきものではなく、被測定液中の抗原量(例えば、ポリペプチド量)に対応した抗体、抗原もしくは抗体−抗原複合体の量を化学的または物理的手段により検出し、これを既知量の抗原を含む標準液を用いて作製した標準曲線より算出する測定法であれば、いずれの測定法を用いてもよい。例えば、ネフロメトリー、競合法、イムノメトリック法およびサンドイッチ法が好適に用いられるが、感度、特異性の点で、後述するサンドイッチ法を用いるのが特に好ましい。
標識物質を用いる測定法に用いられる標識剤としては、例えば、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質などが用いられる。放射性同位元素としては、例えば、〔125I〕、〔131I〕、〔3H〕、〔14C〕などが用いられる。上記酵素としては、安定で比活性の大きなものが好ましく、例えば、β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素などが用いられる。蛍光物質としては、例えば、フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネートなどが用いられる。発光物質としては、例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなどが用いられる。さらに、抗体あるいは抗原と標識剤との結合にビオチン−アビジン系を用いることもできる。
抗原あるいは抗体の不溶化に当っては、物理吸着を用いてもよく、また通常ポリペプチドあるいは酵素等を不溶化、固定化するのに用いられる化学結合を用いる方法でもよい。担体としては、アガロース、デキストラン、セルロースなどの不溶性多糖類、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、シリコン等の合成樹脂、あるいはガラス等があげられる。
サンドイッチ法においては不溶化した本発明のモノクローナル抗体に被検液を反応させ(1次反応)、さらに標識化した別の本発明のモノクローナル抗体を反応させ(2次反応)たのち、不溶化担体上の標識剤の活性を測定することにより被検液中の本発明のポリペプチド量を定量することができる。1次反応と2次反応は逆の順序に行っても、また、同時に行なってもよいし時間をずらして行なってもよい。標識化剤および不溶化の方法は前記のそれらに準じることができる。また、サンドイッチ法による免疫測定法において、固相用抗体あるいは標識用抗体に用いられる抗体は必ずしも1種類である必要はなく、測定感度を向上させる等の目的で2種類以上の抗体の混合物を用いてもよい。
本発明のサンドイッチ法による本発明のポリペプチドの測定法においては、1次反応と2次反応に用いられる本発明のモノクローナル抗体は、本発明のポリペプチドの結合する部位が相異なる抗体が好ましく用いられる。すなわち、1次反応および2次反応に用いられる抗体は、例えば、2次反応で用いられる抗体が、本発明のポリペプチドのC端部を認識する場合、1次反応で用いられる抗体は、好ましくはC端部以外、例えばN端部を認識する抗体が用いられる。
本発明のモノクローナル抗体をサンドイッチ法以外の測定システム、例えば、競合法、イムノメトリック法あるいはネフロメトリーなどに用いることができる。
競合法では、被検液中の抗原と標識抗原とを抗体に対して競合的に反応させたのち、未反応の標識抗原(F)と、抗体と結合した標識抗原(B)とを分離し(B/F分離)、B,Fいずれかの標識量を測定し、被検液中の抗原量を定量する。本反応法には、抗体として可溶性抗体を用い、B/F分離をポリエチレングリコール、前記抗体に対する第2抗体などを用いる液相法、および、第1抗体として固相化抗体を用いるか、あるいは、第1抗体は可溶性のものを用い第2抗体として固相化抗体を用いる固相化法とが用いられる。
イムノメトリック法では、被検液中の抗原と固相化抗原とを一定量の標識化抗体に対して競合反応させた後固相と液相を分離するか、あるいは、被検液中の抗原と過剰量の標識化抗体とを反応させ、次に固相化抗原を加え未反応の標識化抗体を固相に結合させたのち、固相と液相を分離する。次に、いずれかの相の標識量を測定し被検液中の抗原量を定量する。
また、ネフロメトリーでは、ゲル内あるいは溶液中で抗原抗体反応の結果生じた不溶性の沈降物の量を測定する。被検液中の抗原量が僅かであり、少量の沈降物しか得られない場合にもレーザーの散乱を利用するレーザーネフロメトリーなどが好適に用いられる。
【0042】
これら個々の免疫学的測定法を本発明の定量方法に適用するにあたっては、特別の条件、操作等の設定は必要とされない。それぞれの方法における通常の条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えて本発明のポリペプチドの測定系を構築すればよい。これらの一般的な技術手段の詳細については、総説、成書などを参照することができる。
例えば、入江 寛編「ラジオイムノアッセイ〕(講談社、昭和49年発行)、入江 寛編「続ラジオイムノアッセイ〕(講談社、昭和54年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(医学書院、昭和53年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第2版)(医学書院、昭和57年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第3版)(医学書院、昭和62年発行)、「Methods in ENZYMOLOGY」 Vol. 70(Immunochemical Techniques(Part A))、 同書 Vol. 73(Immunochemical Techniques(Part B))、 同書 Vol. 74(Immunochemical Techniques(Part C))、 同書 Vol. 84(Immunochemical Techniques(Part D:Selected Immunoassays))、 同書 Vol. 92(Immunochemical Techniques(Part E:Monoclonal Antibodies and General Immunoassay Methods))、 同書 Vol. 121(Immunochemical Techniques(Part I:Hybridoma Technology and Monoclonal Antibodies))(以上、アカデミックプレス社発行)などを参照することができる。
以上のようにして、本発明の抗体を用いることによって、本発明のポリペプチドを感度良く定量することができる。
さらには、本発明の抗体を用いて本発明のポリペプチドの濃度を定量することによって、本発明のポリペプチドの濃度の減少または増加が検出された場合、例えば、血圧異常(高血圧症等)、外分泌異常、心循環器系疾患等の疾病である、または将来罹患する可能性が高いと診断することができる。
また、本発明の抗体は、体液や組織などの被検体中に存在する本発明のポリペプチドを検出するために使用することができる。また、本発明のポリペプチドを精製するために使用する抗体カラムの作製、精製時の各分画中の本発明のポリペプチドの検出、被検細胞内における本発明のポリペプチドの挙動の分析などのために使用することができる。
【0043】
(4)遺伝子診断剤
本発明のポリヌクレオチド(DNA)は、例えば、プローブとして使用することにより、ヒトまたは温血動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、トリ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サル、など)における本発明のポリペプチドをコードするDNAまたはmRNAの異常(遺伝子異常)を検出することができるので、例えば、該DNAまたはmRNAの損傷、突然変異あるいは発現低下や、該DNAまたはmRNAの増加あるいは発現過多などの遺伝子診断剤として有用である。
本発明のDNAを用いる上記の遺伝子診断は、例えば、自体公知のノーザンハイブリダイゼーションやPCR−SSCP法(ゲノミックス(Genomics),第5巻,874〜879頁(1989年)、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ユーエスエー(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America),第86巻,2766〜2770頁(1989年))などにより実施することができる。
例えば、ノーザンハイブリダイゼーションにより発現低下が検出された場合は、血圧異常(高血圧症等)、外分泌異常、心循環器系疾患等の疾病である可能性が高いまたは将来罹患する可能性が高いと診断することができる。
逆に、ノーザンハイブリダイゼーションにより発現過多が検出された場合は、アレルギー性疾患、喘息、狭心症、動脈硬化、糖尿病、高脂血症、嘔吐、骨疾患、頻尿、エイズ、血圧異常等の疾病である可能性が高いまたは将来罹患する可能性が高いと診断することができる。
また、本発明のヌクレオチド(DNA)配列は生物の染色体の同定にも価値があり、対象生物の染色体上の特定の位置とハイブリダイゼーションした場合、本発明遺伝子に関連した染色体が同定され、マッピングが可能となる。このようなマッピングにより本発明のポリペプチド関連疾病に関与する遺伝子が同定される可能性がある。
本発明のポリペプチド関連疾病に関与する遺伝子を同定するためのツールとして、本発明のポリヌクレオチド(DNA)を用いる場合には、特に上記のATT、ATTshort1、ATTshort2をコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチド(DNA)が好ましく用いられるが、C端部のアミド化コンセンサス(Gly-Lys-Arg)を含めたアミノ酸配列(ATT-Gly-Lys-Arg、ATTshort1-Gly-Lys-Arg、ATTshort2-Gly-Lys-Arg)をコードする塩基配列を含有するポリヌクレオチド(DNA)がより好ましく用いられる。
本発明のポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチド中に変異または多型性(または対立遺伝子変異)を担持する生物由来の細胞を、例えば、セロタイピングを可能にするような種々の技術によりDNAレベルで検出できる。例えば、RT−PCRを用いてRNAにおける変異を検出することができる。RT−PCRを自動検出系、例えば、市販のイメージアナライザー等と組み合わせて用いるのが特に好ましい。RNA、cDNAまたはゲノムDNAもまた同じ目的でPCRまたはRT−PCRに用いることができる。一例として、本発明のポリペプチドをコードする核酸に相補的なPCRプライマーを用いて変異を同定および分析することができる。
【0044】
(5)アンチセンスDNAを含有する医薬
本発明のDNAに相補的に結合し、該DNAの発現を抑制することができるアンチセンスDNAは、例えば、アレルギー性疾患、喘息、狭心症、動脈硬化、糖尿病、高脂血症、嘔吐、骨疾患、頻尿、エイズ、血圧異常等の疾病の治療・予防剤として使用することができる。
例えば、該アンチセンスDNAを用いる場合、該アンチセンスDNAを単独あるいはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノウイルスアソシエーテッドウイルスベクターなどの適当なベクターに挿入した後、常套手段に従って実施することができる。該アンチセンスDNAは、そのままで、あるいは摂取促進のために補助剤などの生理学的に認められる担体とともに製剤化し、遺伝子銃やハイドロゲルカテーテルのようなカテーテルによって投与できる。
さらに、該アンチセンスDNAは、組織や細胞における本発明のDNAの存在やその発現状況を調べるための診断用オリゴヌクレオチドプローブとして使用することもできる。
【0045】
(6)本発明の抗体を含有する医薬
本発明のポリペプチドを中和する作用を有する本発明の抗体は、例えば、アレルギー性疾患、喘息、狭心症、動脈硬化、糖尿病、高脂血症、嘔吐、骨疾患、頻尿、エイズ、血圧異常等の疾病の治療・予防剤などの医薬として使用することができる。
本発明の抗体を含有する上記疾患の治療・予防剤は、そのまま液剤として、または適当な剤型の医薬組成物として、ヒトまたは哺乳動物(例、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して経口的または非経口的に投与することができる。投与量は、投与対象、対象疾患、症状、投与ルートなどによっても異なるが、例えば、成人のアレルギー性疾患患者の治療・予防のために使用する場合には、本発明の抗体を1回量として、通常0.01〜20mg/kg体重程度、好ましくは0.1〜10mg/kg体重程度、さらに好ましくは0.1〜5mg/kg体重程度を、1日1〜5回程度、好ましくは1日1〜3回程度、静脈注射により投与するのが好都合である。他の非経口投与および経口投与の場合もこれに準ずる量を投与することができる。症状が特に重い場合には、その症状に応じて増量してもよい。
本発明の抗体は、それ自体または適当な医薬組成物として投与することができる。上記投与に用いられる医薬組成物は、上記またはその塩と薬理学的に許容され得る担体、希釈剤もしくは賦形剤とを含むものである。かかる組成物は、経口または非経口投与に適する剤形として提供される。
すなわち、例えば、経口投与のための組成物としては、固体または液体の剤形、具体的には錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳剤、懸濁剤などがあげられる。かかる組成物は自体公知の方法によって製造され、製剤分野において通常用いられる担体、希釈剤もしくは賦形剤を含有するものである。例えば、錠剤用の担体、賦形剤としては、乳糖、でんぷん、蔗糖、ステアリン酸マグネシウムなどが用いられる。
非経口投与のための組成物としては、例えば、注射剤、坐剤などが用いられ、注射剤は静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤などの剤形を包含する。かかる注射剤は、自体公知の方法に従って、例えば、上記抗体またはその塩を通常注射剤に用いられる無菌の水性もしくは油性液に溶解、懸濁または乳化することによって調製する。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液などが用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン界面活性剤〔例、ポリソルベート80、HCO−50(polyoxyethylene(50mol)adduct of hydrogenated castor oil)〕などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどを併用してもよい。調製された注射液は、通常、適当なアンプルに充填される。直腸投与に用いられる坐剤は、上記抗体またはその塩を通常の坐薬用基剤に混合することによって調製される。
上記の経口用または非経口用医薬組成物は、活性成分の投与量に適合するような投薬単位の剤形に調製されることが好都合である。かかる投薬単位の剤形としては、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプル)、坐剤などが例示され、それぞれの投薬単位剤形当たり通常5〜500mg、とりわけ注射剤では5〜100mg、その他の剤形では10〜250mgの上記抗体が含有されていることが好ましい。
なお前記した各組成物は、上記抗体との配合により好ましくない相互作用を生じない限り他の活性成分を含有してもよい。
【0046】
(7)DNA転移動物
本発明は、外来性の本発明のポリペプチドをコードするDNA(以下、本発明の外来性DNAと略記する)またはその変異DNA(本発明の外来性変異DNAと略記する場合がある)を有する非ヒト哺乳動物を提供する。
すなわち、本発明は、
(1)本発明の外来性DNAまたはその変異DNAを有する非ヒト哺乳動物、
(2)非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である第(1)記載の動物、
(3)ゲッ歯動物がマウスまたはラットである第(2)記載の動物、および
(4)本発明の外来性DNAまたはその変異DNAを含有し、哺乳動物において発現しうる組換えベクターを提供するものである。
本発明の外来性DNAまたはその変異DNAを有する非ヒト哺乳動物(以下、本発明のDNA転移動物と略記する)は、未受精卵、受精卵、精子およびその始原細胞を含む胚芽細胞などに対して、好ましくは、非ヒト哺乳動物の発生における胚発生の段階(さらに好ましくは、単細胞または受精卵細胞の段階でかつ一般に8細胞期以前)に、リン酸カルシウム法、電気パルス法、リポフェクション法、凝集法、マイクロインジェクション法、パーティクルガン法、DEAE−デキストラン法などにより目的とするDNAを転移することによって作出することができる。また、該DNA転移方法により、体細胞、生体の臓器、組織細胞などに目的とする本発明の外来性DNAを転移し、細胞培養、組織培養などに利用することもでき、さらに、これら細胞を上述の胚芽細胞と自体公知の細胞融合法により融合させることにより本発明のDNA転移動物を作出することもできる。
非ヒト哺乳動物としては、例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、マウス、ラットなどが用いられる。なかでも、病体動物モデル系の作成の面から個体発生および生物サイクルが比較的短く、また、繁殖が容易なゲッ歯動物、とりわけマウス(例えば、純系として、C57BL/6系統,DBA2系統など、交雑系として、B6C3F1系統,BDF1系統,B6D2F1系統,BALB/c系統,ICR系統など)またはラット(例えば、Wistar,SDなど)などが好ましい。
哺乳動物において発現しうる組換えベクターにおける「哺乳動物」としては、上記の非ヒト哺乳動物の他にヒトなどがあげられる。
本発明の外来性DNAとは、非ヒト哺乳動物が本来有している本発明のDNAではなく、いったん哺乳動物から単離・抽出された本発明のDNAをいう。
本発明の変異DNAとしては、元の本発明のDNAの塩基配列に変異(例えば、突然変異など)が生じたもの、具体的には、塩基の付加、欠損、他の塩基への置換などが生じたDNAなどが用いられ、また、異常DNAも含まれる。
該異常DNAとしては、異常な本発明のポリペプチドを発現させるDNAを意味し、例えば、正常な本発明のポリペプチドの機能を抑制するポリペプチドを発現させるDNAなどが用いられる。
本発明の外来性DNAは、対象とする動物と同種あるいは異種のどちらの哺乳動物由来のものであってもよい。本発明のDNAを対象動物に転移させるにあたっては、該DNAを動物細胞で発現させうるプロモーターの下流に結合したDNAコンストラクトとして用いるのが一般に有利である。例えば、本発明のヒトDNAを転移させる場合、これと相同性が高い本発明のDNAを有する各種哺乳動物(例えば、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウスなど)由来のDNAを発現させうる各種プロモーターの下流に、本発明のヒトDNAを結合したDNAコンストラクト(例、ベクターなど)を対象哺乳動物の受精卵、例えば、マウス受精卵へマイクロインジェクションすることによって本発明のDNAを高発現するDNA転移哺乳動物を作出することができる。
本発明のポリペプチドの発現ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド、枯草菌由来のプラスミド、酵母由来のプラスミド、λファージなどのバクテリオファージ、モロニー白血病ウィルスなどのレトロウィルス、ワクシニアウィルスまたはバキュロウィルスなどの動物ウイルスなどが用いられる。なかでも、大腸菌由来のプラスミド、枯草菌由来のプラスミドまたは酵母由来のプラスミドなどが好ましく用いられる。
上記のDNA発現調節を行なうプロモーターとしては、例えば、▲1▼ウイルス(例、シミアンウイルス、サイトメガロウイルス、モロニー白血病ウイルス、JCウイルス、乳癌ウイルス、ポリオウイルスなど)に由来するDNAのプロモーター、▲2▼各種哺乳動物(ヒト、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウスなど)由来のプロモーター、例えば、アルブミン、インスリンII、ウロプラキンII、エラスターゼ、エリスロポエチン、エンドセリン、筋クレアチンキナーゼ、グリア線維性酸性タンパク質、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、血小板由来成長因子β、ケラチンK1,K10およびK14、コラーゲンI型およびII型、サイクリックAMP依存タンパク質キナーゼβIサブユニット、ジストロフィン、酒石酸抵抗性アルカリフォスファターゼ、心房ナトリウム利尿性因子、内皮レセプターチロシンキナーゼ(一般にTie2と略される)、ナトリウムカリウムアデノシン3リン酸化酵素(Na,K−ATPase)、ニューロフィラメント軽鎖、メタロチオネインIおよびIIA、メタロプロティナーゼ1組織インヒビター、MHCクラスI抗原(H−2L)、H−ras、レニン、ドーパミンβ−水酸化酵素、甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)、ポリペプチド鎖延長因子1α(EF−1α)、βアクチン、αおよびβミオシン重鎖、ミオシン軽鎖1および2、ミエリン基礎タンパク質、チログロブリン、Thy−1、免疫グロブリン、H鎖可変部(VNP)、血清アミロイドPコンポーネント、ミオグロビン、トロポニンC、平滑筋αアクチン、プレプロエンケファリンA、バソプレシンなどのプロモーターなどが用いられる。なかでも、全身で高発現することが可能なサイトメガロウイルスプロモーター、ヒトポリペプチド鎖延長因子1α(EF−1α)のプロモーター、ヒトおよびニワトリβアクチンプロモーターなどが好適である。
上記ベクターは、DNA転移哺乳動物において目的とするメッセンジャーRNAの転写を終結する配列(一般にターミネターと呼ばれる)を有していることが好ましく、例えば、ウイルス由来および各種哺乳動物由来の各DNAの配列を用いることができ、好ましくは、シミアンウイルスのSV40ターミネターなどが用いられる。
その他、目的とする外来性DNAをさらに高発現させる目的で各DNAのスプライシングシグナル、エンハンサー領域、真核DNAのイントロンの一部などをプロモーター領域の5´上流、プロモーター領域と翻訳領域間あるいは翻訳領域の3´下流 に連結することも目的により可能である。
正常な本発明のポリペプチドの翻訳領域は、ヒトまたは各種哺乳動物(例えば、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウスなど)由来の肝臓、腎臓、甲状腺細胞、線維芽細胞由来DNAおよび市販の各種ゲノムDNAライブラリーよりゲノムDNAの全てあるいは一部として、または肝臓、腎臓、甲状腺細胞、線維芽細胞由来RNAより公知の方法により調製された相補DNAを原料として取得することが出来る。また、外来性の異常DNAは、上記の細胞または組織より得られた正常なポリペプチドの翻訳領域を点突然変異誘発法により変異した翻訳領域を作製することができる。
該翻訳領域は転移動物において発現しうるDNAコンストラクトとして、前記のプロモーターの下流および所望により転写終結部位の上流に連結させる通常のDNA工学的手法により作製することができる。
受精卵細胞段階における本発明の外来性DNAの転移は、対象哺乳動物の胚芽細胞および体細胞のすべてに存在するように確保される。DNA転移後の作出動物の胚芽細胞において、本発明の外来性DNAが存在することは、作出動物の後代がすべて、その胚芽細胞および体細胞のすべてに本発明の外来性DNAを保持することを意味する。本発明の外来性DNAを受け継いだこの種の動物の子孫はその胚芽細胞および体細胞のすべてに本発明の外来性DNAを有する。
本発明の外来性正常DNAを転移させた非ヒト哺乳動物は、交配により外来性DNAを安定に保持することを確認して、該DNA保有動物として通常の飼育環境で継代飼育することが出来る。
受精卵細胞段階における本発明の外来性DNAの転移は、対象哺乳動物の胚芽細胞および体細胞の全てに過剰に存在するように確保される。DNA転移後の作出動物の胚芽細胞において本発明の外来性DNAが過剰に存在することは、作出動物の子孫が全てその胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の外来性DNAを過剰に有することを意味する。本発明の外来性DNAを受け継いだこの種の動物の子孫はその胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の外来性DNAを過剰に有する。
導入DNAを相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得し、この雌雄の動物を交配することによりすべての子孫が該DNAを過剰に有するように繁殖継代することができる。
本発明の正常DNAを有する非ヒト哺乳動物は、本発明の正常DNAが高発現させられており、内在性の正常DNAの機能を促進することにより最終的に本発明のポリペプチドの機能亢進症を発症することがあり、その病態モデル動物として利用することができる。例えば、本発明の正常DNA転移動物を用いて、本発明のポリペプチドの機能亢進症や、本発明のポリペプチドが関連する疾患の病態機序の解明およびこれらの疾患の治療方法の検討を行なうことが可能である。
また、本発明の外来性正常DNAを転移させた哺乳動物は、遊離した本発明のポリペプチドの増加症状を有することから、本発明のポリペプチドに関連する疾患に対する治療薬のスクリーニング試験にも利用可能である。
一方、本発明の外来性異常DNAを有する非ヒト哺乳動物は、交配により外来性DNAを安定に保持することを確認して該DNA保有動物として通常の飼育環境で継代飼育することが出来る。さらに、目的とする外来DNAを前述のプラスミドに組み込んで原科として用いることができる。プロモーターとのDNAコンストラク卜は、通常のDNA工学的手法によって作製することができる。受精卵細胞段階における本発明の異常DNAの転移は、対象哺乳動物の胚芽細胞および体細胞の全てに存在するように確保される。DNA転移後の作出動物の胚芽細胞において本発明の異常DNAが存在することは、作出動物の子孫が全てその胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の異常DNAを有することを意味する。本発明の外来性DNAを受け継いだこの種の動物の子孫は、その胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の異常DNAを有する。導入DNAを相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得し、この雌雄の動物を交配することによりすべての子孫が該DNAを有するように繁殖継代することができる。
【0047】
本発明の異常DNAを有する非ヒト哺乳動物は、本発明の異常DNAが高発現させられており、内在性の正常DNAの機能を阻害することにより最終的に本発明のポリペプチドの機能不活性型不応症となることがあり、その病態モデル動物として利用することができる。例えば、本発明の異常DNA転移動物を用いて、本発明のポリペプチドの機能不活性型不応症の病態機序の解明およびこの疾患を治療方法の検討を行なうことが可能である。
また、具体的な利用可能性としては、本発明の異常DNA高発現動物は、本発明のポリペプチドの機能不活性型不応症における本発明の異常ポリペプチドによる正常ポリペプチドの機能阻害(dominant negative作用)を解明するモデルとなる。
また、本発明の外来異常DNAを転移させた哺乳動物は、遊離した本発明のポリペプチドの増加症状を有することから、本発明のポリペプチドまたはの機能不活性型不応症に対する治療薬スクリーニング試験にも利用可能である。
また、上記2種類の本発明のDNA転移動物のその他の利用可能性として、例えば、
▲1▼組織培養のための細胞源としての使用、
▲2▼本発明のDNA転移動物の組織中のDNAもしくはRNAを直接分析するか、またはDNAにより発現されたポリペプチド組織を分析することによる、本発明のポリペプチドにより特異的に発現あるいは活性化するポリペプチドとの関連性についての解析、
▲3▼DNAを有する組織の細胞を標準組織培養技術により培養し、これらを使用して、一般に培養困難な組織からの細胞の機能の研究、
▲4▼上記▲3▼記載の細胞を用いることによる細胞の機能を高めるような薬剤のスクリーニング、および
▲5▼本発明の変異ポリペプチドを単離精製およびその抗体作製などが考えられる。
さらに、本発明のDNA転移動物を用いて、本発明のポリペプチドの機能不活性型不応症などを含む、本発明のポリペプチドに関連する疾患の臨床症状を調べることができ、また、本発明のポリペプチドに関連する疾患モデルの各臓器におけるより詳細な病理学的所見が得られ、新しい治療方法の開発、さらには、該疾患による二次的疾患の研究および治療に貢献することができる。
また、本発明のDNA転移動物から各臓器を取り出し、細切後、トリプシンなどのタンパク質分解酵素により、遊離したDNA転移細胞の取得、その培養またはその培養細胞の系統化を行なうことが可能である。さらに、本発明のポリペプチド産生細胞の特定化、アポトーシス、分化あるいは増殖との関連性、またはそれらにおけるシグナル伝達機構を調べ、それらの異常を調べることなどができ、本発明のポリペプチドおよびその作用解明のための有効な研究材料となる。
さらに、本発明のDNA転移動物を用いて、本発明のポリペプチドの機能不活性型不応症を含む、本発明のポリペプチドに関連する疾患の治療薬の開発を行なうために、上述の検査法および定量法などを用いて、有効で迅速な該疾患治療薬のスクリーニング法を提供することが可能となる。また、本発明のDNA転移動物または本発明の外来性DNA発現ベクターを用いて、本発明のポリペプチドが関連する疾患のDNA治療法を検討、開発することが可能である。
【0048】
(8)ノックアウト動物
本発明は、本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞および本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物を提供する。
すなわち、本発明は、
(1)本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞、
(2)該DNAがレポーター遺伝子(例、大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子)を導入することにより不活性化された第(1)項記載の胚幹細胞、
(3)ネオマイシン耐性である第(1)項記載の胚幹細胞、
(4)非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である第(1)項記載の胚幹細胞、
(5)ゲッ歯動物がマウスである第(4)項記載の胚幹細胞、
(6)本発明のDNAが不活性化された該DNA発現不全非ヒト哺乳動物、
(7)該DNAがレポーター遺伝子(例、大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子)を導入することにより不活性化され、該レポーター遺伝子が本発明のDNAに対するプロモーターの制御下で発現しうる第(6)項記載の非ヒト哺乳動物、
(8)非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である第(6)項記載の非ヒト哺乳動物、
(9)ゲッ歯動物がマウスである第(8)項記載の非ヒト哺乳動物、および
(10)第(7)項記載の動物に、試験化合物を投与し、レポーター遺伝子の発現を検出することを特徴とする本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進または阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞とは、該非ヒト哺乳動物が有する本発明のDNAに人為的に変異を加えることにより、DNAの発現能を抑制するか、もしくは該DNAがコードしている本発明のポリペプチドの活性を実質的に喪失させることにより、DNAが実質的に本発明のポリペプチドの発現能を有さない(以下、本発明のノックアウトDNAと称することがある)非ヒト哺乳動物の胚幹細胞(以下、ES細胞と略記する)をいう。
非ヒト哺乳動物としては、前記と同様のものが用いられる。
本発明のDNAに人為的に変異を加える方法としては、例えば、遺伝子工学的手法により該DNA配列の一部又は全部の削除、他DNAを挿入または置換させることによって行なうことができる。これらの変異により、例えば、コドンの読み取り枠をずらしたり、プロモーターあるいはエキソンの機能を破壊することにより本発明のノックアウトDNAを作製すればよい。
本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞(以下、本発明のDNA不活性化ES細胞または本発明のノックアウトES細胞と略記する)の具体例としては、例えば、目的とする非ヒト哺乳動物が有する本発明のDNAを単離し、そのエキソン部分にネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子を代表とする薬剤耐性遺伝子、あるいはlacZ(β−ガラクトシダーゼ遺伝子)、cat(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子)を代表とするレポーター遺伝子等を挿入することによりエキソンの機能を破壊するか、あるいはエキソン間のイントロン部分に遺伝子の転写を終結させるDNA配列(例えば、polyA付加シグナルなど)を挿入し、完全なメッセンジャーRNAを合成できなくすることによって、結果的に遺伝子を破壊するように構築したDNA配列を有するDNA鎖(以下、ターゲッティングベクターと略記する)を、例えば相同組換え法により該動物の染色体に導入し、得られたES細胞について本発明のDNA上あるいはその近傍のDNA配列をプローブとしたサザンハイブリダイゼーション解析あるいはターゲッティングベクター上のDNA配列とターゲッティングベクター作製に使用した本発明のDNA以外の近傍領域のDNA配列をプライマーとしたPCR法により解析し、本発明のノックアウトES細胞を選別することにより得ることができる。
また、相同組換え法等により本発明のDNAを不活化させる元のES細胞としては、例えば、前述のような既に樹立されたものを用いてもよく、また公知 EvansとKaufmaの方法に準じて新しく樹立したものでもよい。例えば、マウスのES細胞の場合、現在、一般的には129系のES細胞が使用されているが、免疫学的背景がはっきりしていないので、これに代わる純系で免疫学的に遺伝的背景が明らかなES細胞を取得するなどの目的で例えば、C57BL/6マウスやC57BL/6の採卵数の少なさをDBA/2との交雑により改善したBDF1マウス(C57BL/6とDBA/2とのF1)を用いて樹立したものなども良好に用いうる。BDF1マウスは、採卵数が多く、かつ、卵が丈夫であるという利点に加えて、C57BL/6マウスを背景に持つので、これを用いて得られたES細胞は病態モデルマウスを作出したとき、C57BL/6マウスとバッククロスすることでその遺伝的背景をC57BL/6マウスに代えることが可能である点で有利に用い得る。
また、ES細胞を樹立する場合、一般には受精後3.5日目の胚盤胞を使用するが、これ以外に8細胞期胚を採卵し胚盤胞まで培養して用いることにより効率よく多数の初期胚を取得することができる。
また、雌雄いずれのES細胞を用いてもよいが、通常雄のES細胞の方が生殖系列キメラを作出するのに都合が良い。また、煩雑な培養の手間を削減するためにもできるだけ早く雌雄の判別を行なうことが望ましい。
ES細胞の雌雄の判定方法としては、例えば、PCR法によりY染色体上の性決定領域の遺伝子を増幅、検出する方法が、その1例としてあげることができる。この方法を使用すれば、従来、核型分析をするのに約106個の細胞数を要していたのに対して、1コロニー程度のES細胞数(約50個)で済むので、培養初期におけるES細胞の第一次セレクションを雌雄の判別で行なうことが可能であり、早期に雄細胞の選定を可能にしたことにより培養初期の手間は大幅に削減できる。
また、第二次セレクションとしては、例えば、G−バンディング法による染色体数の確認等により行うことができる。得られるES細胞の染色体数は正常数の100%が望ましいが、樹立の際の物理的操作等の関係上困難な場合は、ES細胞の遺伝子をノックアウトした後、正常細胞(例えば、マウスでは染色体数が2n=40である細胞)に再びクローニングすることが望ましい。
このようにして得られた胚幹細胞株は、通常その増殖性は大変良いが、個体発生できる能力を失いやすいので、注意深く継代培養することが必要である。例えば、STO繊維芽細胞のような適当なフィーダー細胞上でLIF(1−10000U/ml)存在下に炭酸ガス培養器内(好ましくは、5%炭酸ガス、95%空気または5%酸素、5%炭酸ガス、90%空気)で約37℃で培養するなどの方法で培養し、継代時には、例えば、トリプシン/EDTA溶液(通常0.001−0.5%トリプシン/0.1−5mM EDTA、好ましくは約0.1%トリプシン/1mM EDTA)処理により単細胞化し、新たに用意したフィーダー細胞上に播種する方法などがとられる。このような継代は、通常1−3日毎に行なうが、この際に細胞の観察を行い、形態的に異常な細胞が見受けられた場合はその培養細胞は放棄することが望まれる。
ES細胞は、適当な条件により、高密度に至るまで単層培養するか、または細胞集塊を形成するまで浮遊培養することにより、頭頂筋、内臓筋、心筋などの種々のタイプの細胞に分化させることが可能であり〔M. J. Evans及びM. H. Kaufman, ネイチャー(Nature)第292巻、154頁、1981年;G. R. Martin プロシーディングス・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.)第78巻、7634頁、1981年;T. C. Doetschman ら、ジャーナル・オブ・エンブリオロジー・アンド・エクスペリメンタル・モルフォロジー、第87巻、27頁、1985年〕、本発明のES細胞を分化させて得られる本発明のDNA発現不全細胞は、インビトロにおける本発明のポリペプチドまたは本発明のレセプター蛋白質の細胞生物学的検討において有用である。
本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、該動物のmRNA量を公知方法を用いて測定して間接的にその発現量を比較することにより、正常動物と区別することが可能である。
該非ヒト哺乳動物としては、前記と同様のものが用いられる。
本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、例えば、前述のようにして作製したターゲッティングベクターをマウス胚幹細胞またはマウス卵細胞に導入し、導入によりターゲッティングベクターの本発明のDNAが不活性化されたDNA配列が遺伝子相同組換えにより、マウス胚幹細胞またはマウス卵細胞の染色体上の本発明のDNAと入れ換わる相同組換えをさせることにより、本発明のDNAをノックアウトさせることができる。
本発明のDNAがノックアウトされた細胞は、本発明のDNA上またはその近傍のDNA配列をプローブとしたサザンハイブリダイゼーション解析またはターゲッティングベクター上のDNA配列と、ターゲッティングベクターに使用したマウス由来の本発明のDNA以外の近傍領域のDNA配列とをプライマーとしたPCR法による解析で判定することができる。非ヒト哺乳動物胚幹細胞を用いた場合は、遺伝子相同組換えにより、本発明のDNAが不活性化された細胞株をクローニングし、その細胞を適当な時期、例えば、8細胞期の非ヒト哺乳動物胚または胚盤胞に注入し、作製したキメラ胚を偽妊娠させた該非ヒト哺乳動物の子宮に移植する。作出された動物は正常な本発明のDNA座をもつ細胞と人為的に変異した本発明のDNA座をもつ細胞との両者から構成されるキメラ動物である。
該キメラ動物の生殖細胞の一部が変異した本発明のDNA座をもつ場合、このようなキメラ個体と正常個体を交配することにより得られた個体群より、全ての組織が人為的に変異を加えた本発明のDNA座をもつ細胞で構成された個体を、例えば、コートカラーの判定等により選別することにより得られる。このようにして得られた個体は、通常、本発明のポリペプチドのヘテロ発現不全個体であり、本発明のポリペプチドまたは本発明のレセプター蛋白質のヘテロ発現不全個体同志を交配し、それらの産仔から本発明のポリペプチドまたは本発明のレセプター蛋白質のホモ発現不全個体を得ることができる。
卵細胞を使用する場合は、例えば、卵細胞核内にマイクロインジェクション法でDNA溶液を注入することによりターゲッティングベクターを染色体内に導入したトランスジェニック非ヒト哺乳動物を得ることができ、これらのトランスジェニック非ヒト哺乳動物に比べて、遺伝子相同組換えにより本発明のDNA座に変異のあるものを選択することにより得られる。
このようにして本発明のDNAがノックアウトされている個体は、交配により得られた動物個体も該DNAがノックアウトされていることを確認して通常の飼育環境で飼育継代を行なうことができる。
さらに、生殖系列の取得および保持についても常法に従えばよい。すなわち、該不活化DNAの保有する雌雄の動物を交配することにより、該不活化DNAを相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得しうる。得られたホモザイゴート動物は、母親動物に対して、正常個体1,ホモザイゴート複数になるような状態で飼育することにより効率的に得ることができる。ヘテロザイゴート動物の雌雄を交配することにより、該不活化DNAを有するホモザイゴートおよびヘテロザイゴート動物を繁殖継代する。
本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞は、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物を作出する上で、非常に有用である。
また、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、本発明のポリペプチドまたは本発明のレセプター蛋白質により誘導され得る種々の生物活性を欠失するため、本発明のポリペプチドまたは本発明のレセプター蛋白質の生物活性の不活性化を原因とする疾病のモデルとなり得るので、これらの疾病の原因究明及び治療法の検討に有用である。
【0049】
本明細書および図面において、塩基やアミノ酸などを略号で表示する場合、IUPAC−IUB Commission on Biochemical Nomenclatureによる略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものであり、その例を下記する。またアミノ酸に関し光学異性体があり得る場合は、特に明示しなければL体を示すものとする。
DNA :デオキシリボ核酸
cDNA :相補的デオキシリボ核酸
A :アデニン
T :チミン
G :グアニン
C :シトシン
I :イノシン
R :アデニン(A)またはグアニン(G)
Y :チミン(T)またはシトシン(C)
M :アデニン(A)またはシトシン(C)
K :グアニン(G)またはチミン(T)
S :グアニン(G)またはシトシン(C)
W :アデニン(A)またはチミン(T)
B :グアニン(G)、グアニン(G)またはチミン(T)
D :アデニン(A)、グアニン(G)またはチミン(T)
V :アデニン(A)、グアニン(G)またはシトシン(C)
N :アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)もしくはチミン(T)または不明もしくは他の塩基
RNA :リボ核酸
mRNA :メッセンジャーリボ核酸
dATP :デオキシアデノシン三リン酸
dTTP :デオキシチミジン三リン酸
dGTP :デオキシグアノシン三リン酸
dCTP :デオキシシチジン三リン酸
ATP :アデノシン三リン酸
EDTA :エチレンジアミン四酢酸
SDS :ドデシル硫酸ナトリウム
BHA :ベンズヒドリルアミン
pMBHA :p−メチルベンズヒドリルアミン
Tos :p−トルエンスルフォニル
Bzl :ベンジル
Bom :ベンジルオキシメチル
Boc :t−ブチルオキシカルボニル
DCM :ジクロロメタン
HOBt :1−ヒドロキシベンズトリアゾール
DCC :N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド
TFA :トリフルオロ酢酸
DIEA :ジイソプロピルエチルアミン
GlyまたはG :グリシン
AlaまたはA :アラニン
ValまたはV :バリン
LeuまたはL :ロイシン
IleまたはI :イソロイシン
SerまたはS :セリン
ThrまたはT :スレオニン
CysまたはC :システイン
MetまたはM :メチオニン
GluまたはE :グルタミン酸
AspまたはD :アスパラギン酸
LysまたはK :リジン
ArgまたはR :アルギニン
HisまたはH :ヒスチジン
PheまたはF :フェニルアラニン
TyrまたはY :チロシン
TrpまたはW :トリプトファン
ProまたはP :プロリン
AsnまたはN :アスパラギン
GlnまたはQ :グルタミン
pGlu :ピログルタミン酸
NMP :N−メチルピロリドン
Cl−Z :2−クロロ−ベンジルオキシカルボニル
Br−Z :2−ブロモ−ベンジルオキシカルボニル
OcHex :シクロヘキシルエステル
OBzl :ベンジルエステル
Tos :p−トルエンスルホニル
HOBt :1−ヒドロキシベンゾトリアゾール
MeBzl :4−メチルベンジル
Bom :ベンジルオキシメチル
DCC :N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド
BHA :ベンズヒドリルアミン
pMBHA :p−メチルベンズヒドリルアミン
CHO :ホルミル
【0050】
本願明細書の配列表の配列番号は、以下の配列を示す。
〔配列番号:1〕
ATTαをクローニングするために後述の実施例1で用いたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:2〕
ATTαをクローニングするために後述の実施例1で用いたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:3〕
ATTαをコードするアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:4〕
ATTαをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:5〕
実施例1でクローニングされたATTαをコードするDNAの塩基配列を含有するDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:6〕
ATTαの分泌シグナル配列のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:7〕
ATTをコードするアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:8〕
ATTβをクローニングするために後述の実施例2で用いたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:9〕
ATTβをクローニングするために後述の実施例2および実施例5で用いたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:10〕
ATTβをクローニングするために後述の実施例2で用いたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:11〕
ATTβをクローニングするために後述の実施例2および実施例5で用いたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:12〕
実施例2でクローニングされたATTβをコードするDNAの塩基配列を含有するDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:13〕
ATTβをコードするアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:14〕
ATTβをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:15〕
ATTβをクローニングするために後述の実施例2で用いたプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:16〕
実施例2でクローニングされたATTβをコードするDNAの塩基配列を含有するDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:17〕
ATTshort1をコードするアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:18〕
実施例5でクローニングされたATT#21FをコードするDNAの塩基配列を含有するDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:19〕
実施例5記載の挿入配列を示す。
〔配列番号:20〕
ATT#21Fをコードするアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:21〕
ATT#21FをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:22〕
ATTshort2をコードするアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:23〕
ATTshort2のN末端1アミノ酸欠失体をコードするアミノ酸配列を示す(実施例8でそのC末端アミド体が合成されている)。
〔配列番号:24〕
ATTshort2のN末端2アミノ酸欠失体をコードするアミノ酸配列を示す(実施例9でそのC末端アミド体が合成されている)。
〔配列番号:25〕
ATTshort2のN末端3アミノ酸欠失体をコードするアミノ酸配列を示す(実施例10でそのC末端アミド体が合成されている)。
〔配列番号:26〕
ATTshort2のN末端4アミノ酸欠失体をコードするアミノ酸配列を示す(実施例11でそのC末端アミド体が合成されている)。
〔配列番号:27〕
配列番号:26で表されるペプチドのN末端のGlnがピログルタミン酸化したペプチドをコードするアミノ酸配列を示す(実施例12でそのC末端アミド体が合成されている)。
〔配列番号:28〕
ATTshort2のN末端にArgが付加したペプチドをコードするアミノ酸配列を示す(実施例13でそのC末端アミド体が合成されている)。
〔配列番号:29〕
ATTをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:30〕
ATTshort1をコードするDNAの塩基配列を示す。
【0051】
〔配列番号:31〕
ATTshort2をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:32〕
ATTshort2のC末端に存在する新規モチーフのアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:33〕
ATTshort2のC末端に存在する新規モチーフをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:34〕
ATTshort1のN末端1アミノ酸欠失体をコードするアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:35〕
ATTshort1のN末端2アミノ酸欠失体をコードするアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:36〕
ATTshort1のN末端3アミノ酸欠失体をコードするアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:37〕
ATTshort1のN末端4アミノ酸欠失体をコードするアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:38〕
ATTshort1のN末端5アミノ酸欠失体をコードするアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:39〕
ATTshort2のC末端5アミノ酸のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:40〕
配列番号:23で表されるアミノ酸配列を有するペプチドをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:41〕
配列番号:24で表されるアミノ酸配列を有するペプチドをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:42〕
配列番号:25で表されるアミノ酸配列を有するペプチドをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:43〕
配列番号:26で表されるアミノ酸配列を有するペプチドをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:44〕
配列番号:27で表されるアミノ酸配列を有するペプチドをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:45〕
配列番号:28で表されるアミノ酸配列を有するペプチドをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:46〕
配列番号:34で表されるアミノ酸配列を有するペプチドをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:47〕
配列番号:35で表されるアミノ酸配列を有するペプチドをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:48〕
配列番号:36で表されるアミノ酸配列を有するペプチドをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:49〕
配列番号:37で表されるアミノ酸配列を有するペプチドをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:50〕
配列番号:38で表されるアミノ酸配列を有するペプチドをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:51〕
配列番号:39で表されるアミノ酸配列を有するペプチドをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:52〕
実施例6で特異的に増幅されたATTαをコードするDNAの部分塩基配列を示す。
〔配列番号:53〕
実施例14でヒトATTβを取得するために用いられたセンス鎖プライマ-の塩基配列を示す。
〔配列番号:54〕
実施例14でヒトATTβを取得するために用いられたアンチセンス鎖プライマ-の塩基配列を示す。
〔配列番号:55〕
実施例14で取得されたヒトATTβをコードするDNA配列を含有するDNA断片の塩基配列を示す。
〔配列番号:56〕
実施例14でヒトATT#21Fを取得するために用いられたセンス鎖プライマ-の塩基配列を示す。
〔配列番号:57〕
実施例14でヒトATT#21Fを取得するために用いられたアンチセンス鎖プライマ-の塩基配列を示す。
〔配列番号:58〕
実施例14で取得されたヒトATT#21をコードするDNA配列を含有するDNA断片の塩基配列を示す。
〔配列番号:59〕
実施例14でヒトPPT−Aを取得するために用いられたセンス鎖プライマ-の塩基配列を示す。
〔配列番号:60〕
実施例14でヒトPPT−Aを取得するために用いられたアンチセンス鎖プライマ-の塩基配列を示す。
〔配列番号:61〕
実施例14でヒトPPT−Aを取得するために用いられたセンス鎖プライマ-の塩基配列を示す。
〔配列番号:62〕
実施例14でヒトPPT−Aを取得するために用いられたアンチセンス鎖プライマ-の塩基配列を示す。
〔配列番号:63〕
実施例14で取得されたヒトPPT−Aをコードするアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:64〕
配列番号:63で表されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を示す。
【0052】
実施例1で得られた形質転換体エシェリヒア コリ(Escherichia coli)DH5α/pTBN1は、1999年12月6日から日本国茨城県つくば市東1−1−3、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(NIBH)に寄託番号FERMBP−6959として、日本国大阪府大阪市淀川区十三本町2−17−85、財団法人発酵研究所(IFO)に1999年11月16日から寄託番号IFO 16337として寄託されている。
実施例2で得られた形質転換体エシェリヒア コリ(Escherichia coli)DH5α/pTBN2は、1999年12月6日から日本国茨城県つくば市東1−1−3、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(NIBH)に寄託番号FERMBP−6960として、日本国大阪府大阪市淀川区十三本町2−17−85、財団法人発酵研究所(IFO)に1999年11月16日から寄託番号IFO 16338として寄託されている。
実施例5で得られた形質転換体エシェリヒア コリ(Escherichia coli)DH5α/pTBN6は、2000年3月16日から日本国茨城県つくば市東1−1−3、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(NIBH)に寄託番号FERMBP−7094として、日本国大阪府大阪市淀川区十三本町2−17−85、財団法人発酵研究所(IFO)に2000年2月24日から寄託番号IFO 16382として寄託されている。
【0053】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。なお、大腸菌を用いての遺伝子操作は、上記サムブルックらのモレキュラー・クローニング(Molecular cloning)に記載されている方法に従った。
【0054】
実施例1 ヒトATT前駆体タンパク質(ATTα)をコードする cDNA のクローニング
ATTαをコードするcDNAは以下のようなPCR法により取得した。すなわち、配列番号:1で示されるオリゴDNAをセンス鎖プライマーとして、配列番号:2で示されるオリゴDNAをアンチセンス鎖プライマーとして各々25pmol、Premix TaqTM (Ex TaqTM Version)(宝酒造(株)) 10μl、鋳型DNAとしてHuman fetal multiple tissue cDNA panel(クロンテック(株))の各組織別cDNA溶液 1μlを含む混合液20μlを調製し、サーマルサイクラー(GeneAmp(登録商標) PCR system model 9700(パーキンエルマー社))を用いて94℃、1分、続いて94℃、10秒→ 72℃、3分を5サイクル、続いて94℃、10秒→ 70℃、3分を5サイクル、続いて94℃、10秒→ 68℃、3分を25サイクル繰り返し、さらに68℃、5分で伸長反応させるプログラムでPCR反応を行った。反応終了液を2.0%アガロースゲルを用いて電気泳動後エチジウムブロマイド染色したところ、ヒト胎児骨格筋由来のcDNAを鋳型DNAに用いた反応系で分子量マーカー換算で0.4kb付近の位置にPCR反応で増幅されたDNAに対応するバンドを確認した。キアクィックゲルエキストラクションキット(キアゲン社)を用いて該DNA断片を回収し、塩基配列を決定する為にpCR(登録商標)2.1-TOPO(インビトロジェン社)を用いてTAクローニングし、該プラスミドを大腸菌DH5α株のコンピテントセルに導入した。アンピシリン含有LB寒天培地上で出現するアンピシリン耐性形質転換株のコロニーの中から外来DNA断片が挿入されていたプラスミドを保持していたクローンを選択し、該プラスミドDNA、pTBN1を調製した。挿入DNAの塩基配列を決定するため、 pTBN1を鋳型DNA、2種(PRM-007、PRM-008)の市販プライマーDNA(東洋紡績(株))をシーケンスプライマーとし、ABI PRISM(登録商標) BigDye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(パーキンエルマー社)を用いたシーケンス反応を添付資料の条件にしたがって、サーマルサイクラー(GeneAmp(登録商標) PCR system model 9700(パーキンエルマー社))で行った後、該反応試料をDNAシーケンサーABI PRISM(登録商標) 377(パーキンエルマー社)で分析した。
その結果、pTBN1には、 公知のタンパク質とは全く相同性がない配列番号:3で示される68個のアミノ酸からなる新規ポリペプチドをコードする配列番号:4で示される204塩基の塩基配列からなるオープンリーディングフレーム(Open reading frame)を含む配列番号:5で示される373塩基対のDNA断片が含まれていた(図1)。コードされる該ポリペプチドには、配列番号:6で示される16アミノ酸残基の典型的な分泌シグナル配列、さらに62番目から64番目のアミノ酸残基にかけてはプロセシング酵素(エンドプロテアーゼ)による限定切断とカルボキシペプチダーゼによるカルボキシ末端アミド化を受けるコンセンサス配列(Gly-Lys-Arg)が存在した。生体内ではこれら限定分解の結果、例えば配列番号:7で示されるアミド化カルボキシ末端配列を持った45アミノ酸残基の成熟ペプチドが生成する。該ペプチドは、タヒキニンファミリーに見られるアミド化カルボキシ末端配列:Phe-Xaa-Gly-Leu-Met-NH2モチーフを有しているものの、そのアミノ末端側の一次構造は公知のタヒキニンとは全く異なることから、ATT (Atypical tachykinin)と命名し、配列番号:3で示されるその前駆体タンパク質をATTαと呼ぶことにした。
本実施例で得られたヒトATT前駆体タンパク質ATTαをコードするDNAを保持するプラスミドpTBN1を大腸菌(Escherichia coli) DH5αに導入して、形質転換体:大腸菌(Escherichia coli) DH5α/ pTBN1を得た。
【0055】
実施例2 ヒトATT前駆体タンパク質(ATTβ)をコードする完全長 cDNA の解析
次に、以下の要領で 5' RACE (Rapid Amplification of cDNA End)、 3' RACE を行うことにより、ATTβをコードする 完全長cDNA の解析を行った。RACE PCRの鋳型DNAには、MarathonTM-Ready cDNA Human Heart(クロンテック社)、あるいはMarathonTM-Ready cDNA Human Fetal Lung(クロンテック社)を用いた。ATTαをコードするDNA配列を基に、一次PCR反応では、配列番号:8で示されるオリゴDNAをアンチセンス鎖プライマーとして5' RACE を、同じく配列番号:9で示されるオリゴDNAをセンス鎖プライマーとして3' RACE を行い、続くnested PCRでは、配列番号:10で示されるオリゴDNAをアンチセンス鎖プライマーとして5' RACE を、同じく配列番号:11で示されるオリゴDNAをセンス鎖プライマーとして3' RACE を行い、それぞれ各nested primerを起点とする 5’上流側の配列、3' 下流側の配列を得た。ここで得られた各2本鎖DNAの塩基配列を決定したところ、5’上流側、3' 下流側の両配列は用いた鋳型DNAに関係なく共通であった。その結果、poly(A)+ 鎖を含む配列番号:12で示される全長720塩基対がATT前駆体タンパク質の完全長cDNAの塩基配列として予想された。このDNAの塩基配列には公知のタンパク質とは全く相同性がない配列番号:13で示される76個のアミノ酸からなる新規ポリペプチドをコードする配列番号:14で示される228塩基の塩基配列からなるオープンリーディングフレーム(Open reading frame)が含まれていた(図2)。コードされるポリペプチドは、実施例1で得られたATTαとアミノ末端から67番目のGlyまで共通配列を有しており、ATTαと同じく生体内で成熟ペプチドATTを生成する前駆体構造を保持していることから、本タンパク質をATTβと呼ぶことにした。そこで、実際にATTβをコードするcDNA断片を取得するため、実施例1と同様な方法でPCRクローニングを行った。すなわち、配列番号:1で示されるオリゴDNAをセンス鎖プライマーとして、配列番号:15で示されるオリゴDNAをアンチセンス鎖プライマーとして各々25pmol、Premix TaqTM (Ex TaqTM Version)(宝酒造(株)) 12.5μl、鋳型DNAとしてHuman fetal multiple tissue cDNA panel(クロンテック(株)) Human multiple tissue cDNA panel(クロンテック(株))の各組織別cDNA溶液 1μlを含む混合液25μlを調製し、サーマルサイクラー(GeneAmp(登録商標) PCR system model 9700(パーキンエルマー社))を用いて94℃、3分、続いて94℃、10秒→ 72℃、3分を5サイクル、続いて94℃、10秒→ 70℃、3分を5サイクル、続いて94℃、10秒→ 68℃、3分を25サイクル繰り返し、さらに68℃、5分で伸長反応させるプログラムでPCR反応を行った。反応終了液を2.0%アガロースゲルを用いて電気泳動後エチジウムブロマイド染色し、分子量マーカー換算で0.4kb〜0.5kb付近の位置にかけてDNAのバンドが明瞭に検出された、ヒト胎児心臓由来のcDNAを鋳型DNAに用いた反応系のPCR産物を実施例1同様TAクローニングし、該DNA断片が挿入されたプラスミドを保持していたクローンを取得し、そのプラスミドDNA、pTBN2を調製した。実施例1に準じてpTBN2の挿入DNAの塩基配列を決定したところ、予想通り、ATTβをコードする配列番号:14で示される塩基配列を含む配列番号:16で示される469塩基対のDNA断片であった。 またATTβをコードする共通配列を有するcDNA断片は、同様な条件によるPCR法によりヒト心臓やヒト胎児骨格筋、並びにヒト胎児肺由来のcDNAからも増幅された。また、 ATTβのコード領域内の部分cDNA断片の増幅を目的としたPCR実験では、ヒト脂肪組織、ヒト下垂体由来のcDNAを鋳型として用いた場合でも該DNAの増幅が認められた。
上述のATTペプチド前駆体であるATTαとATTβは、各々をコードするcDNAが実在していること、またその互いの塩基配列の比較から、同一遺伝子からのスプライスバリアントであることが分かった。
本実施例で得られたヒトATT前駆体タンパク質ATTβをコードするDNAを保持するプラスミドpTBN2を大腸菌(Escherichia coli) DH5αに導入して、形質転換体:大腸菌(Escherichia coli) DH5α/ pTBN2を得た。
【0056】
実施例3 Thr-Gly-Lys-Ala-Ser-Gln-Phe-Phe-Gly-Leu-Met-NH2の製造
このATT(配列番号:17に示すもののC末端メチオニンのカルボキシル基がアミド化されたもの。「ATT(35−45)」と称す)を次の手順に従って合成した。
市販p−メチルBHA樹脂(0.57mmole/g−樹脂)0.5mmol分をペプチド合成機ABI 430Aの反応槽に入れ、Boc-strategy(NMP−HOBt)ペプチド合成方法でBoc-Met、Boc-Leu、Boc-Gly、Boc-Phe、Boc-Phe、Boc-Gln、Boc-Ser(Bzl)、Boc-Ala、Boc-Lys(Cl-Z)、Boc-Gly、Boc-Thr(Bzl)を順次導入し保護ペプチド樹脂を得た。この樹脂0.14gをp−クレゾール1.5mlとともに無水フッ化水素10ml中、0℃、60分撹拌した後、フッ化水素を減圧留去し、残留物にジエチルエーテルを加え濾過し、残渣を酢酸水で抽出した。抽出液を十分に濃縮し、50%酢酸水で充填したセファデックス(登録商標)G−25カラム(2.0x80cm)に付し、同溶媒で展開、主要画分を集め、これをLiChroprep(登録商標)RP-18を充填した逆相クロマトカラム(2.6x8.0cm)に付け、0.1% TFA水200mlで洗浄、0.1% TFA含有10%アセトニトリル水300mlと0.1% TFA含有40%アセトニトリル水300mlを用いた線型勾配溶出を行い、主要画分を集め凍結乾燥し、白色粉末26mgを得た。
質量分析による(M+H)+ 1185.6(計算値1185.6)
HPLC溶出時間 17.3分
カラム条件
カラム Wakosil 5C18T 4.6x100mm
溶離液:A液−0.1% TFA水、B液−0.1% TFA含有アセトニトリルを用い、A/B:95/5〜45/55へ直線型濃度勾配溶出(25分)
流速:1.0ml/分
【0057】
実施例4 Thr-Val-Ala-Gly-Asp-Gly-Gly-Glu-Glu-Gln-Thr-Leu-Ser-Thr-Glu-Ala-Glu-Thr-Trp-Glu-Gly-Ala-Gly-Pro-Ser-Ile-Gln-Leu-Gln-Leu-Gln-Glu-Val-Lys-Thr-Gly-Lys-Ala-Ser-Gln-Phe-Phe-Gly-Leu-Met-NH2の製造
このATT(配列番号:7に示すもののC末端メチオニンのカルボキシル基がアミド化されたもの。「ATT(1−45)」と称する)を次の手順に従って合成した。
実施例1で調製のBoc-Thr(Blz)までを順次導入した保護ペプチド樹脂をさらにアミノ末端側に所望の配列通りにBocアミノ酸を順次導入し、ATT(1−45)のアミノ酸配列を保持した保護ペプチド樹脂を得た。この樹脂を実施例1と同様にフッ化水素処理とカラムクロマトグラフィー精製し、ATT(1−45)を得た。
質量分析による(M+H)+ 4727.6(計算値4728.2)
HPLC溶出時間 20.4分
カラム条件
カラム Wakosil 5C18T 4.6x100mm
溶離液:A液−0.1% TFA水、B液−0.1% TFA含有アセトニトリルを用い、A/B:95/5〜45/55へ直線型濃度勾配溶出(25分)
流速:1.0ml/分
【0058】
実施例5 ヒト胎児骨格筋由来cDNAを用いた3’-RACE解析
実施例2に続いて、ヒト胎児骨格筋由来のcDNAを用いた3’-RACE解析を行った。 RACE PCRの鋳型DNAには、MarathonTM-Ready cDNA Human Fetal Skeletal Muscle(クロンテック社)を用いた。実施例2と同様に、一次PCR反応では配列番号:9で表されるオリゴDNAをセンス鎖プライマーとして、続くnested PCRでは配列番号:11で表されるオリゴDNAをセンス鎖プライマーとして反応を行った。反応終了液を2.0%アガロースゲルを用いて電気泳動し、エチジウムブロマイド染色したところ、実施例2で得られた反応産物に相当する長さのDNA断片以外にそれよりも大きなサイズのRACE PCR産物が検出された。そこで、該PCR産物を実施例1の方法に準じて回収しTAクローニング後、該プラスミドを大腸菌DH5α株のコンピテントセルに導入した。アンピシリン含有LB寒天培地上で出現してきたアンピシリン耐性形質転換株のコロニーの中から外来DNA断片が挿入されていたプラスミドを保持していたクローンを複数選択し、各プラスミドDNAを調製後、挿入DNA断片の塩基配列を決定した。その結果、クローン#21にあたるプラスミドpTBN6には、配列番号:11で表されるnested primerを起点とする配列番号:18で表される539塩基の配列に続き、さらにその3’側にポリA配列が付加したDNA断片が挿入されていた。該塩基配列を実施例2で得られた3’-RACE PCR産物のそれと比較したところ、該塩基配列には、途中、配列番号:19で表される93塩基の挿入配列があったが、それ以外は3’末端のポリA配列の長さを除いて両者の塩基配列は完全に一致した。よって、実施例2の結果と併せて、ATT前駆体タンパク質の遺伝子には、配列番号:20で表される107個のアミノ酸からなる新規ポリペプチド(ATT#21F)をコードする配列番号:21で表される塩基配列を生じる新たなスプライスバリアントが存在することが考えられた。この新規ポリペプチドは、 前述のATTαやATTβから生成される成熟ペプチドATTと同一ペプチドを生成する前駆体構造を保持しているだけでなく、そのカルボキシ末端側にはさらに配列番号:20の90番目から92番目のアミノ酸残基にかけてプロセシング酵素(エンドプロテアーゼ)による限定切断とカルボキシペプチダーゼによるカルボキシ末端アミド化を受けるコンセンサス配列(Gly-Lys-Arg)が存在し、また配列番号:20の74番目から77番目の配列(Arg-Arg-Lys-Lys)もプロセシング酵素(エンドプロテアーゼ)による限定切断モチーフであった。生体内ではこれら限定分解の結果、例えば配列番号:22で表されるアミド化カルボキシ末端配列を持った14アミノ酸残基の新規な配列の成熟ペプチドが生成する。該ペプチドのアミド化カルボキシ末端モチーフはPhe-Xaa-Gly-Leu-Leu-NH2であり、従来のタヒキニンファミリーに保存されるPhe-Xaa-Gly-Leu-Met-NH2モチーフとは末端の1アミノ酸(Leu/Met)が異なっており、また公知の自然界のタンパク質、ペプチドにそのような構造は見当たらない。
本実施例で解析したプラスミドpTBN6を大腸菌(Escherichia coli) DH5αに導入して、形質転換体:大腸菌(Escherichia coli) DH5α/pTBN6を得た。
【0059】
実施例6 ヒトATT前駆体タンパク質をコードする遺伝子の染色体マッピング
以下のようなRadiation Hybrid解析法により、ヒトATT前駆体タンパク質をコードする遺伝子の染色体マッピングを行った。配列番号:11で表されるオリゴDNAをセンス鎖プライマー、配列番号:2で表されるオリゴDNAをアンチセンス鎖プライマーとしてヒト染色体DNAを鋳型にPCR反応を行うと、前述のATTαの塩基配列の一部にあたる配列番号:52で表される160塩基対のDNA断片が特異的に増幅された。そこで、Stanford G3 Radiation Hybrid Panel (Research Genetics社)の計83種の各クローンDNAに対しても同プライマーの組合わせでPCR反応を行い、各反応終了液を2%アガロースゲルを用いて電気泳動し、該ゲルをエチジウムブロマイド染色して、上述と同じ大きさのPCR反応増幅産物の有無を調べた。各クローン毎の該増幅産物の出現パターン結果をStanford Human Genome Center内SHGC RH Serverへ送り、連鎖するマーカーを検索した。その結果、近傍マーカーとしてヒットしてきたSHGC-52587、 SHGC-2255、 SHGC-828等の情報から、本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の座位は、ヒト17番染色体の長腕(17q21)であることが判った。
【0060】
実施例7 Lys-Lys-Ala-Tyr-Gln-Leu-Glu-His-Thr-Phe-Gln-Gly-Leu-Leu-NH2の製造
実施例5記載の配列番号:22に示すペプチドのC末端ロイシンのカルボキシル基がアミド化されたものを次の手順に従って合成した。
市販p−メチルBHA樹脂(0.57 m mole/g resin) 0.5 m mole 分をペプチド合成機ABI 430Aの反応曹に入れ、Boc-strategy (NMP-HOBt) ペプチド合成方法でBoc-Leu, Boc-Leu,,Boc-Gly, Boc-Gln, Boc-Phe, Boc-Thr(Bzl), Boc-His(Bom), Boc-Glu(OcHex), Boc-Leu, Boc-Gln, Boc-Tyr(Br-z), Boc-Ala, Boc-Lys(Cl-z), Boc-Lys(Cl-Z) を順次導入し保護ペプチド樹脂を得た。この樹脂をp-クレゾール、と共に無水弗化水素中、0℃・60分撹袢した後、弗化水素を減圧留去した。残留物にジエチルエーテルを加え濾過し、残渣を酢酸水で抽出し、抽出液を十分に濃縮して50%酢酸水で充填したセファデックスTMG-25カラム(2.0 x 80 cm)に付し、同溶媒で展開、主要画分を集め凍結乾燥した。 此れを0.1%TFA水に溶解し、LiChroprepTMRP-18を充填した逆相クロマトカラム(2.6 x 8.0 cm)に付け0.1%TFA水 200mlで洗浄、0.1%TFA含有10%アセトニトリル水300mlと0.1%TFA含有40%アセトニトリル水 300mlを用いた線型勾配溶出を行い、主要画分を集め凍結乾燥し、白色粉末を得た。
質量分析による(M+H)+ 測定値 1674.9 計算値 1674.9
HPLC溶出時間 17.0分
カラム条件
カラム Wakosil 5C18T 4.6 x 100mm
溶離液:A液−0.1% TFA水、B液−0.1%TFA含有アセトニトリルを用い A/B : 95/5〜45/55へ直線型濃度勾配溶出(25分)
流速:1.0 ml / 分
【0061】
実施例8 Lys-Ala-Tyr-Gln-Leu-Glu-His-Thr-Phe-Gln-Gly-Leu-Leu-NH2(配列番号:23で表されるアミノ酸配列からなるペプチドのアミド体)の製造
実施例7の最後のBoc-Lys(Cl-Z)を導入する前の樹脂を実施例7と同様に処理精製し、目的とする白色粉末を得た。
質量分析による(M+H)+ 計算値 1546.8
【0062】
実施例9 Ala-Tyr-Gln-Leu-Glu-His-Thr-Phe-Gln-Gly-Leu-Leu-NH2(配列番号:24で表されるアミノ酸配列からなるペプチドのアミド体)の製造
実施例8と同様に、実施例7のBoc-Alaまでを導入した樹脂を同様に処理精製し、目的とする白色粉末を得た。
質量分析による(M+H)+ 計算値 1418.7
【0063】
実施例10 Tyr-Gln-Leu-Glu-His-Thr-Phe-Gln-Gly-Leu-Leu-NH2(配列番号:25で表されるアミノ酸配列からなるペプチドのアミド体)の製造
実施例8と同様に、実施例7のBoc-Tyr(Br-Z)までを導入した樹脂を同様に処理精製し、目的とする白色粉末を得た。
質量分析による(M+H)+ 計算値 1347.7
【0064】
実施例11 Gln-Leu-Glu-His-Thr-Phe-Gln-Gly-Leu-Leu-NH2(配列番号:26で表されるアミノ酸配列からなるペプチドのアミド体)の製造
実施例8と同様に、実施例7のBoc-Tyr(Br-Z)導入前の樹脂を同様に処理精製し、目的とする白色粉末を得た。
質量分析による(M+H)+ 計算値 1184.6
HPLC溶出時間 16.3分
カラム条件
カラム Wakosil 5C18T 4.6 x 100mm
溶離液:A液−0.1% TFA水、B液−0.1%TFA含有アセトニトリルを用い A/B : 95/5〜45/55へ直線型濃度勾配溶出(25分)
流速:1.0 ml / 分
【0065】
実施例12 pGlu-Leu-Glu-His-Thr-Phe-Gln-Gly-Leu-Leu-NH2(配列番号:27で表されるアミノ酸配列からなるペプチドのアミド体)の製造
実施例11で用いられたものと同じ樹脂を無水弗化水素処理した後pH7.5で20時間置き、N末端GlnがpGluに変換した事をHPLCで確認した後、精製し目的とする白色粉末を得た。
質量分析による(M+H)+ 計算値 1167.6
HPLC溶出時間 18.1分
カラム条件
カラム Wakosil 5C18T 4.6 x 100mm
溶離液:A液−0.1% TFA水、B液−0.1%TFA含有アセトニトリルを用い A/B : 95/5〜45/55へ直線型濃度勾配溶出(25分)
流速:1.0 ml / 分
【0066】
実施例13 Arg-Lys-Lys-Ala-Tyr-Gln-Leu-Glu-His-Thr-Phe-Gln-Gly-Leu-Leu-NH2(配列番号:28で表されるアミノ酸配列からなるペプチドのアミド体)の製造
実施例7で調製した保護ペプチド樹脂に更にBoc-Arg(Tos)を導入した後、実施例7と同様に処理精製し目的とする白色粉末を得た。
質量分析による(M+H)+ 計算値 1831.0
【0067】
実験例1 麻酔ラットにおける血圧に対するATT(35-45)(配列番号:17で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドのC末端アミド体)の作用
麻酔ラットにおける血圧に対するATT(35-45)の作用を以下の方法により測定した。雄性Wistar系ラット (体重300-400g,日本クレア)をチオブタバルビタールナトリウム(100mg/kg i.p.)により麻酔し、トランスデューサーに接続した血圧測定用カテーテル(SP-55)を左頚動脈に、静脈投与用カテーテル(SP-35)を左大腿静脈にそれぞれ挿入した。ペプチドは0.05% BSAを含む生理的食塩水に溶解し、0.01, 0.1および1 nmol/kgの用量を左大腿静脈より投与した。血圧は連続してポリグラフ(NEC三栄社製)で記録した。
[結果] 麻酔ラットにおける血圧は、ATT(35-45) 0.01、0.1および1 nmol/kg静脈内投与により用量依存的に低下した。各用量の血圧低下はそれぞれ12.3±0.8 mmHg (n=4)、 21.5±1.8 mmHg (n=4) および 33.8±6.6 mmHg (n=4)であった (各値は平均値±平均誤差で示した)。
【0068】
実験例2 モルモット回腸標本に対するATT(35-45)の収縮作用
モルモット回腸標本に対するATT(35-45)の収縮作用を以下の方法により測定した。13-15週齢の雄性モルモット (std:Hartley)を失血死させ、回腸を摘出した。この回腸を1.5cmの長さに切り、標本として用いた。標本を混合ガス(95%O2-5%CO2)を通気し、37℃に保温したタイロード液(NaCl 137.9 mM、 KCl 2.7 mM、CaCl2 1.8 mM、MgCl2 0.5 mM 、NaH2PO4 1.1 mM、NaHCO3 11.9 mM、glucose 5.6 mM)中に懸垂し、0.5g負荷条件下で等張性収縮を記録した。ペプチドはオーガンバス内に累積的に投与した。
[結果] 10-10 Mから3×10-7 MのATT(35-45)投与により、モルモット回腸標本は濃度依存的に収縮した。最大収縮高はアセチルコリン10-6Mによる収縮の約90%に達した。ATT(35-45)のEC50値は3.5 nM (n=6)であった(図3)。
【0069】
実施例14 発現ベクターの構築
実施例2で取得したヒトATT前駆体タンパク質(ATTβ)をコードするDNA断片は以下のようなPCR法により取得した。すなわち、配列番号:53で示される合成オリゴDNAをセンス鎖プライマーとして、配列番号:54で示される合成オリゴDNAをアンチセンス鎖プライマーとして各々20 pmol、10 x Advantage(登録商標 ) 2xPCR Buffer (CLONTECH)5μl、50 x dNTP mix(CLONTECH)1 μl、50 x Advantage 2 Polymerase Mix(CLONTECH)1μl、鋳型DNAとして実施例2で取得したプラスミドpTBN2を1ngを含む混合液50μlを調製し、サーマルサイクラー( GeneAmp(登録商標 )) PCR system model 9700( Applied Biosystems ))を用いて95℃、1分、続いて95℃、10秒→ 74℃、1分を25サイクル繰り返し、さらに74℃、7分で伸長反応させるプログラムでPCR反応を行った。得られた0.25kbの断片をpCR2.1-TOPO( Invitrogen )ベクターにサブクローニングし、該プラスミドを大腸菌JM109株(宝酒造)のコンピテントセルに導入した。アンピシリン含有LB寒天培地上で出現するアンピシリン耐性形質転換株のコロニーの中から、外来DNA断片が挿入されていたプラスミドを保持していたクローンを選択し、該プラスミドDNA、pCR2.1-TOPO/ATTβを調製した。次にプラスミドを制限酵素EcoRI、SalI( 宝酒造 )で二重消化した後、ATTβを含む0.25kbの遺伝子断片をアガロースゲル電気泳動にて分離回収し、キアクィックゲルエキストラクションキット( QIAGEN )を用いて精製した。得られた断片をpCAN618ベクターにサブクローニングし、該プラスミドを大腸菌JM109株( 宝酒造 )のコンピテントセルに導入した。アンピシリン含有LB寒天培地上で出現するアンピシリン耐性形質転換株のコロニーの中から、外来DNA断片が挿入されていたプラスミドを保持していたクローンを選択し、該プラスミドDNA、pCAN-ATTβを調製した。pCAN-ATTβは、 配列番号:13で示される76個のアミノ酸からなるヒトATTβをコードする配列番号:55で示される250塩基対のDNA断片を含んでいる。
実施例5で判明したヒトATT #21FをコードするDNA断片は以下のようなPCR法により取得した。すなわち、配列番号:56で示される合成オリゴDNAをセンス鎖プライマーとして、配列番号:57で示される合成オリゴDNAをアンチセンス鎖プライマーとして各々20 pmol、10 x Advantage(登録商標) 2xPCR Buffer ( CLONTECH )5μl、50 x dNTP mix( CLONTECH )1 μl、50 x Advantage 2 Polymerase Mix( CLONTECH )1μl、鋳型DNAとして配列番号:21で表されるヒトATT #21Fをコードする配列を含有するDNA溶液 5μlを含む混合液50μlを調製し、サーマルサイクラー( GeneAmp(登録商標)) PCR system model 9700(Applied Biosystems)を用いて95℃、1分、続いて95℃、5秒→ 68℃、10秒を20サイクル繰り返し、さらに68℃、1分で伸長反応させるプログラムでPCR反応を行った。反応終了液を制限酵素EcoRI、SalI( 宝酒造 )で二重消化した後、キアクィックPCRピュリフィケイションキット( QIAGEN )を用いて未反応プライマー及び制限酵素消化により生じた短いDNA断片を除いた。得られた0.34kbの断片をpCAN618ベクターにサブクローニングし、該プラスミドを大腸菌Epicurian Coli( 登録商標 ) XL10-Gold( 登録商標 )株( STRATAGENE )のコンピテントセルに導入した。アンピシリン含有LB寒天培地上で出現するアンピシリン耐性形質転換株のコロニーの中から、外来DNA断片が挿入されていたプラスミドを保持していたクローンを選択し、該プラスミドDNA、pCAN- ATT #21Fを調製した。 pCAN-ATT #21Fは、 配列番号:20で示される107個のアミノ酸からなるヒトATT #21Fをコードする配列番号:58で示される340塩基対のDNA断片を含んでいる。
対照実験に用いるためのヒトPPT-A(サブスタンスP/ニューロキニンA前駆体)発現ベクターは以下の方法で構築した。はじめにヒトPPT-A cDNA断片の単離を行った。すなわち、配列番号:59で示されるオリゴDNAをセンス鎖プライマーとして、配列番号:60で示されるオリゴDNAをアンチセンス鎖プライマーとして各々20 pmol、10 x Advantage( 登録商標 ) 2xPCR Buffer ( CLONTECH )5μl、50 x dNTP mix( CLONTECH )1 μl、50 x Advantage 2 Polymerase Mix( CLONTECH )1μl、鋳型DNAとしてHuman MTC panel のBrain溶液 5μlを含む混合液50μlを調製し、サーマルサイクラー( GeneAmp( 登録商標 ) PCR system model 9700( Applied Biosystems ))を用いて96℃、1分、続いて96℃、10秒→ 54℃、5秒→ 72℃、30秒を25サイクル繰り返し、さらに72℃、2分で伸長反応させるプログラムでPCR反応を行った。反応終了液をキアクィックPCRピュリフィケイションキット( QIAGEN )を用いて未反応プライマー等を除いた。得られたDNA断片をpCR2.1-TOPO( Invitrogen )ベクターにサブクローニングし、該プラスミドを大腸菌Epicurian Coli( 登録商標 ) XL10-Gold( 登録商標 )株( STRATAGENE )のコンピテントセルに導入した。アンピシリン含有LB寒天培地上で出現するアンピシリン耐性形質転換株のコロニーの中から、外来DNA断片が挿入されていたプラスミドを保持していたクローンを選択し、該プラスミドDNA、pCR2.1-TOPO/PPT-Aを調製した。
次にヒトPPT-AをコードするDNA断片は以下のようなPCR法により取得した。すなわち、配列番号:61で示されるオリゴDNAをセンス鎖プライマーとして、配列番号:62で示されるオリゴDNAをアンチセンス鎖プライマーとして各々20 pmol、10 x Advantage( 登録商標 ) 2xPCR Buffer ( CLONTECH )5μl、50 x dNTP mix( CLONTECH )1 μl、50 x Advantage 2 Polymerase Mix( CLONTECH )1μl、鋳型DNAとしてpCR2.1-TOPO/PPT-A プラスミド1ngを含む混合液50μlを調製し、サーマルサイクラー( GeneAmp( 登録商標 ) PCR system model 9700( Applied Biosystems ))を用いて96℃、1分、続いて96℃、5秒→ 66℃、5秒→ 72℃、30秒を20サイクル繰り返し、さらに72℃、1分で伸長反応させるプログラムでPCR反応を行った。反応終了液を制限酵素EcoRI、SalI( 宝酒造 )で二重消化した後、キアクィックPCRピュリフィケイションキット( QIAGEN )を用いて未反応プライマー及び制限酵素消化により生じた短いDNA断片を除いた。得られた0.4kbの断片をpCAN618ベクターにサブクローニングし、該プラスミドを大腸菌Epicurian Coli( 登録商標 ) XL10-Gold( 登録商標 )株( STRATAGENE )のコンピテントセルに導入した。アンピシリン含有LB寒天培地上で出現するアンピシリン耐性形質転換株のコロニーの中から、外来DNA断片が挿入されていたプラスミドを保持していたクローンを選択し、該プラスミドDNA、pCAN-PPTAを調製した。pCAN-PPTAは、 配列番号:63で示される129個のアミノ酸からなるヒトPPT-Aをコードする配列番号:64で示される409塩基対のDNA断片を含んでいる。
【0070】
実施例15 AtT-20細胞への発現ベクターの導入と遺伝子産物の分泌発現
ATTポリペプチド前駆体からペプチドが生合成されることを確認するために、マウス下垂体由来AtT-20細胞を用いてATTポリペプチド前駆体を発現させ、培地中にポリペプチドが分泌されるかどうかを以下の方法で検証した。発現ベクターをトランスフェクションする前日にAtT-20細胞を6cm径シャーレに2.5 x 106 cells/シャーレになるようにまき、 10% FBS ( JRH )を含むDMEM培地( GibcoBRL )で24時間CO2インキュベータ中で培養した。ATTβ、ATT#21F、PPT-A を発現する発現ベクターpCAN-ATTβ、pCAN-ATT #21F、pCAN-PPTAをそれぞれ1μg/シャーレ とEffectene( QIAGEN )を用いてトランスフェクションを行った後、24時間後に500μg/ml のGeneticinを含む選択培地に培地交換を行い、さらにおよそ5日間隔で培地を交換し、3週間培養を継続して形質転換細胞を得た。さらに選択培地で培養を続けた後、細胞を無血清培地に交換し、さらに2日後に培養上清を回収した。得られた培養上清中のポリペプチドの検出は市販のEIAキットSubstance P Enzyme Immunoassay Kit (Cayman Cat#583751)を用いて検出した。事前に、Substance P Enzyme Immunoassay Kitを用いた場合、実施例3および実施例4で製造した各ペプチドをSubstance Pと同程度に高感度に検出できることを確認している。その結果、発現ベクターpCAN-ATTβ、pCAN-ATT #21F、pCAN-PPTAを導入したAtT-20細胞の培養上清中には、Substance P Enzyme Immunoassay Kitで検出可能なペプチドが分泌されていることが確認された。このことから、ATTポリペプチド前駆体からプロセシングを経て、ペプチドが生合成されることが確認された。
【0071】
実施例16 実施例5記載の配列番号:22に示すペプチドを含む免疫原の作製および免疫
実施例7で得られた新規ペプチドとヘモシアニン(KLH)との複合体を作製し免疫原とした。すなわち、KLH 10 mgと上記ペプチド4.5mgをリン酸緩衝液(pH6.5)に溶解・混合し、グルタルアルデヒド液を添加し、室温で1時間反応させた。反応後、PBSに対して4℃で2日間透析し、グルタルアルデヒドを除去したものを免疫原(抗原蛋白)として使用した。
抗原蛋白1mg/1羽をFCA(完全フロイントアジュバント)とエマルジョンにしたものをウサギ(日本白色種)に皮下注射し、一次免疫とした。以降2週間ごとに4回追加免疫を行った。2回目以降は、抗原蛋白の接種量を0.5mg/1羽をFICA(不完全フロイントアジュバント)とエマルジョンにしたものを皮下注射した。最終免疫の1週間後に耳静脈から採血し、公知の方法により血清画分を取得した。
【0072】
実施例17 西洋ワサビパーオキシダーゼ(HRP)標識化ペプチドの作製
実施例7で得られた新規ペプチドとHRP(酵素免疫測定法用、ベーリンガーマンハイム社製)とを架橋し、酵素免疫測定法(EIA)の標識体とした。すなわち、HRP 8 mgを0.95 mlの0.02 Mリン酸緩衝液、pH6.8に溶解させ、HRP の30倍モルのSPDPを含むDMF溶液0.05 m1と混合し、室温で60分間反応させたのち、40mMのDTTを含む0.1M酢酸緩衝液(pH4.5)を0.3ml加え、室温で更に30分間反応させた。2 mM EDTAを含む0.1 Mリン酸緩衝液、pH6.0で平衡化させたセファデックスG-25カラムで分画し、SH基の導入されたHRPを作製した。
一方、上記のペプチド 1.5 mgを0.5 mlの0.1 Mリン酸緩衝液、pH6.8に溶解させ、ペプチドと等モルのGMBSを含むDMF溶液0.05 m1と混合し、室温で60分間反応させたのち、0.1 Mリン酸緩衝液pH6.8で平衡化させたセファデックスG-25カラムで分画し、マレイミド基の導入されたペプチドを作製した。
続いて、SH基が導入されたHRPとマレイミド基が導入されたペプチドをモル比1:3で混合し4℃で一晩反応させたのち、0.1 Mリン酸緩衝液pH6.5で平衡化させたウルトロゲルAcA44カラムで分画し、HRPで標識されたペプチドを取得した。ここで得られた標識ペプチドを酵素免疫測定法(EIA)のための標識体とした。
【0073】
【発明の効果】
本発明によれば、新規タヒキニンポリペプチド(「ATT」、「ATTポリペプチド」、「ATTshort1」または「ATTshort2」とも称す)およびその前駆体タンパク質(ATTα、ATTβまたはATT#21Fとも称す)ならびにそれらをコードするポリヌクレオチドが提供される。また、かかるポリヌクレオチドを含有する組み換えベクター、該ベクターを含有する形質転換体、かかるポリヌクレオチドを含む遺伝子を導入されたトランスジェニック動物も提供される。さらに、かかるポリペプチドの製造方法、かかるポリペプチドに対する抗体、アゴニストまたはアンタゴニスト、ならびにそれらの同定方法も提供される。さらにまた、かかるポリペプチド、ポリヌクレオチド、アンタゴニスト、抗体、受容体を含有する医薬組成物、疾病の治療方法および予防方法等も提供される。
【0074】
【配列表フリーテキスト】
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【0075】
【配列表】
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【0076】
【図面の簡単な説明】
【図1】 ATTα前駆体タンパク質のオープンリーディングフレームの塩基配列およびアミノ酸配列を示す図である。
【図2】 ATTβ前駆体タンパク質のオープンリーディングフレームの塩基配列およびアミノ酸配列を示す図である。
【図3】 モルモット回腸標本におけるATT(35-45)の収縮作用を示す図である。図中、横軸はATT(35-45)の投与量(M)を示し、縦軸はアセチルコリン10-6Mによるモルモット回腸標本の収縮に対する収縮率を示す。

Claims (19)

  1. 配列番号:17で表されるアミノ酸配列を含有するポリペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩。
  2. C末端のカルボキシル基がアミド化されている請求項1記載のポリペプチドまたはその塩。
  3. 請求項1記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド。
  4. DNAである請求項記載のポリヌクレオチド。
  5. 配列番号:4で表される塩基配列を有する請求項記載のポリヌクレオチド。
  6. 列番号:4のポリヌクレオチド;または列番号:4のポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ配列番号:17のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
  7. 請求項記載のポリヌクレオチドを含有する組み換えベクター。
  8. 請求項記載のベクターで形質転換された形質転換体。
  9. 請求項記載の形質転換体を培養し、請求項1記載のポリペプチドを生成、蓄積せしめ、これを採取することを特徴とする請求項1記載のポリペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩の製造方法。
  10. 請求項記載のポリヌクレオチドまたは請求項記載のベクターを導入された非ヒトトランスジェニック動物。
  11. 請求項1記載のポリペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩に対する抗体。
  12. 請求項11記載の抗体を含有してなる診断薬。
  13. 請求項11記載の抗体を用いることを特徴とする請求項1記載のポリペプチドの定量方法。
  14. 請求項1記載のポリペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩を用いることを特徴とする請求項1記載のポリペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩に対するアンタゴニストまたはアゴニストのスクリーニング方法。
  15. 請求項1記載のポリペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩を含有してなる、請求項1記載のポリペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩に対するアンタゴニストまたはアゴニストのスクリーニング用キット。
  16. 請求項1記載のポリペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩を含有してなる医薬組成物。
  17. 高血圧症の予防・治療剤である請求項16記載の医薬組成物。
  18. 請求項記載のポリヌクレオチドと相補的な塩基配列を含有してなるポリヌクレオチド。
  19. 請求項記載のポリヌクレオチドを用いることを特徴とする請求項1記載のポリペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩のmRNAの定量方法。
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