JP4342853B2 - 基板上への窒化物薄膜の成長方法及び窒化物薄膜装置 - Google Patents

基板上への窒化物薄膜の成長方法及び窒化物薄膜装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、窒化物薄膜の内部電界を制御する方法及びその窒化物薄膜装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来は、基板上への窒化物薄膜の成長において、窒化物薄膜の内部電界を制御するには、1000度以上の温度で制御する方法が主体であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した従来の方法では、1000度以上の高い温度を加えることになり、それまでに行った基板表面処理の効果を打ち消してしまうため、任意のマスクパターンで窒化物薄膜の極性を制御することは困難であった。
【0004】
本発明は、上記状況に鑑み、低温プロセスで窒化物薄膜の極性方向を制御することができる基板上への窒化物薄膜の成長方法及び窒化物薄膜装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕基板上への窒化物薄膜の成長方法において、サファイア基板上へ窒化物薄膜を成長させる場合に、前記サファイア基板の前処理としてH 2 クリーニングを行った前記サファイア基板を酸性溶液で低温処理することにより前記窒化物薄膜の極性方向を制御することを特徴とする。
【0006】
〕上記〔〕記載の基板上への窒化物薄膜の成長方法において、前記酸性溶液が硝酸であることを特徴とする。
【0007】
〕上記〔1〕記載の基板上への窒化物薄膜の成長方法において、前記サファイア基板をH2 クリーニングした後マスクを形成して酸性溶液処理することで、窒化物薄膜にパターニングされた極性方向が異なる領域を形成することを特徴とする。
【0008】
〕窒化物薄膜装置であって、上記〔1〕記載の基板上への窒化物薄膜の成長方法を用いて得られる。
【0009】
〕上記〔〕記載の窒化物薄膜装置が、c面サファイア(Al2 3 )基板上に+c面で成長するGa面と、−c面で成長するN面とを有する装置であることを特徴とする。
【0010】
〕上記〔〕記載の窒化物薄膜装置が、素子が分離された装置や表面が周期的にパターン化された装置であることを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0012】
図1は本発明の実施例を示すGaN極性構造の模式図、図2はその各部の極性を示す平面図(観察平面)である。
【0013】
図1において、1はc面サファイア(Al2 3 )基板、2はそのサファイア基板1上で+c面に成長するGa面、3はそのサファイア基板1上で−c面に成長するN面である。Ga面2はサファイア基板1のH2 クリーニングを行い、また、N面3はサファイア基板1のH2 クリーニングと窒化を行うことにより得られる。なお、N面3はアルカリ溶液でエッチングが可能である。
【0014】
このように、1つのサファイア基板上に両極性のGaN薄膜を成長させることができる。
【0015】
かかる両極性のGaN薄膜を成長させるためには、サファイア(Al2 3 )(0001)基板をH2 クリーニング処理した上で、部分的に硝酸処理を行うために、フォトレジストを用いてその基板上に任意のマスクを形成する。このような基板を硝酸溶液に浸漬する。
【0016】
因みに、本発明のサファイア基板のH2 クリーニング処理を行った上での硝酸溶液処理の条件としては、硝酸(HNO3 )濃度が6−63%、温度が40℃、時間が0〜10min(分)であり、従来の高温窒化処理の条件(比較例)としては、NH3 の割合(分圧)が50%、温度が750〜1100℃、時間が5min(分)である。
【0017】
図3は硝酸処理によるN面成長におけるサファイア基板のH2 クリーニングの有無の違いを示す図であり、図3(a)はかかるH2 クリーニングを行った場合(本発明の場合)を示す図、図3(b)はかかるH2 クリーニングを行わなかった場合(比較例)を示す図である。
【0018】
因みに、評価方法としては、界面や基板表面の観察には、XPS(X−ray photoelectron spectroscopy)、AFM(原子間力顕微鏡)、RHEED(Reflectance high energy electron diffraction)を用いる。また、バッファ層の熱処理による変化は、XRD(X−ray diffractometry)強度、AFM(原子間力顕微鏡)により観察する。更に、成長層の様子は、XRD(X−ray diffractometry)強度、XRC半値全幅により確認することができる。
【0019】
図3(a)に示すようにH2 クリーニングを行った場合には、窒化物薄膜の表面はN面極性特有の6角形のファセットが多数観察されるが、図3(b)に示すようにH2 クリーニングを行わなかった場合には、薄膜成長が不十分でその表面は非常に荒れていることが分かる。
【0020】
図4は硝酸処理後の基板表面元素比を比較する図であり、図4(a)は従来の高温窒化処理温度に対する基板表面元素比を示し、横軸は窒化温度(℃)、縦軸は原子濃度(atomic concentration)(%)、図4(b)は本発明の硝酸処理時間に対する基板表面元素比を示す図であり、横軸は硝酸処理時間(分)、縦軸は原子濃度(%)をそれぞれ示している。なお、図中、○は酸素、△はAl、□はN(窒素)を示している。
【0021】
図4(a)に示す高温窒化処理の場合、処理温度が高くなるにしたがって、サファイア基板表面の酸素濃度の割合が減少し、その代わりに窒素濃度の割合が増加している。これは、高温窒化処理によりサファイア基板表面に窒素原子が吸着して取り込まれ、基板表面の元素比が変化してしまっていることを示す。
【0022】
一方、図4(b)に示す硝酸処理の場合、処理時間が長くなっても窒素原子の吸着は観察されず、H2 クリーニング処理後のサファイア基板表面の元素比を維持していることが分かる。
【0023】
図5は基板表面を比較する図であり、図5(a)は基板の処理前の状態、図5(b)は、本発明の硝酸による処理を10秒間行った後の状態、図5(c)は硝酸処理を10分間行った後の状態、図5(d)は従来の高温窒化処理を5分間行った後の状態をそれぞれ示す図である。
【0024】
図面上白く見えるのが、基板の〔1−100〕と〔11−20〕方向から電子線を入射したときのRHEEDパターンである。従来の高温窒化処理後AlNが形成されていることを示すRHEEDパターンが得られる(同じ入射方向に対してパターンが逆転)が、図5(a)と図5(c)のRHEEDパターンを比較しても変化がないことから、硝酸処理によってサファイア基板表面にAlNが形成されていないことが分かる。
【0025】
図6は本発明にかかるフォトレジストによるマスクを用いて部分的に硝酸処理したサファイア基板上に両極性のGaNが形成されていることを示す図である。
【0026】
図6(a)から分かるように、Ga面領域12、N面領域11、Ga面領域13を1つの基板上に同時に成長させることができる。
【0027】
なお、図6(b)には、N面領域11とGa面領域13との境界部分の拡大図が示されており、フォトレジストによるマスクの通りにはっきりと境界領域が制御されていて、マスクの形状により任意の大きさでN面領域11とGa面領域13を成長できることが分かる。
【0028】
また、本発明の基板上への窒化物薄膜の成長方法を用いて得られる窒化物薄膜装置は、その極性方向を任意に制御できるので、素子が分離された装置(デバイス)や表面が周期的にパターン化された基板(装置:デバイス)として構成することができる。
【0029】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0030】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、低温プロセスで窒化物薄膜の極性方向を制御することができる基板上への窒化物薄膜の成長方法及び窒化物薄膜装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例を示すGaN極性構造の模式図である。
【図2】 本発明の実施例を示すGaN極性構造の各部の極性を示す平面図(観察平面)である。
【図3】 硝酸処理によるN面成長においてサファイア基板のH2 クリーニングの有無の違いを示す図である。
【図4】 硝酸処理後の表面元素比を比較する図である。
【図5】 基板表面を比較する図である。
【図6】 本発明にかかるフォトレジストによるマスクを用いて部分的に硝酸処理したサファイア基板上に両極性のGaNが形成されていることを示す図である。
【符号の説明】
1 c面サファイア(Al2 3 )基板
2 サファイア基板上の+c面に成長するGa面
3 サファイア基板上の−c面に成長するN面
11 N面領域
12,13 Ga面領域

Claims (6)

  1. サファイア基板上へ窒化物薄膜を成長させる場合に、前記サファイア基板の前処理としてH 2 クリーニングを行った前記サファイア基板を酸性溶液で低温処理することにより前記窒化物薄膜の極性方向を制御することを特徴とする基板上への窒化物薄膜の成長方法。
  2. 請求項記載の基板上への窒化物薄膜の成長方法において、前記酸性溶液が硝酸であることを特徴とする基板上への窒化物薄膜の成長方法。
  3. 請求項1記載の基板上への窒化物薄膜の成長方法において、前記サファイア基板をH2 クリーニングした後マスクを形成して酸性溶液処理することで、窒化物薄膜にパターニングされた極性方向が異なる領域を形成することを特徴とする基板上への窒化物薄膜の成長方法。
  4. 請求項1記載の基板上への窒化物薄膜の成長方法を用いて得られる窒化物薄膜装置。
  5. 請求項記載の窒化物薄膜装置が、c面サファイア(Al2 3 )基板上に+c面で成長するGa面と、−c面で成長するN面とを有する装置であることを特徴とする窒化物薄膜装置。
  6. 請求項記載の窒化物薄膜装置が、素子が分離された装置や表面が周期的にパターン化された装置であることを特徴とする窒化物薄膜装置。
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