JP4340849B2 - トンネル状連続炉における冷却方法と冷却室 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、金属製物品を加熱する加熱室とこの加熱室につながり該物品を冷却する冷却室を含むトンネル状の連続加熱処理炉に関するものであり、より詳細には、この冷却室における冷却方法と、この冷却方法を実施するために好適な冷却室を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
在来のトンネル状加熱炉において、種々の熱処理を受ける金属製物品は、図1と図2とで示されるように、炉1の加熱室2内へ、ローラー群7によって循環駆動されるコンベヤベルト6上に載って搬入され、室内を前方へ移動しながら所定の温度に加熱される。該物品は続いて一連の冷却室3を通って、冷却される。
【0003】
水冷または空冷された冷却室は、長尺な金属製の筒管からなり、この内で殆ど静止した状態の中性雰囲気に触れて、図2のグラフにて示される如くに物品は徐冷される。この種の炉によって熱処理を受ける殆どの金属物品のAc1は600℃以上であるので、Ar1以下の550℃程度まで該物品を冷却室内で急冷し、その後は放冷すればよい。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、冷却室における金属物品の冷却は、上述した如く、該物品を長尺な筒管を通して、時間をかけた徐冷によっている。かかる従来からの徐冷は、種々な面で経済的または能率的なものとは言い得なかったが、これがより経済的で能率的な急冷に変えられることがなかった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
先ず本発明者は、冷却室内の雰囲気を攪拌すれば、雰囲気の冷却能H(cm-1)が静止した雰囲気に比べて約2.5倍になることに注目した。しかし、酸化物を含む金属製または耐火煉瓦製の冷却室内で雰囲気を徒に攪拌すれば、加熱された金属物品や冷却室の内壁からの酸素の室内への遊離を招き、且つ室外から室内への大気の侵入をも招き、雰囲気の中性が損なわれ兼ねない。この結果、金属物品が酸化したり、光輝を失うことになる。
【0006】
そこで、この発明では、冷却室を加熱室と同様にその内壁をグラファイト等の炭素質とした。雰囲気中に外乱としてもたらされる酸素は、冷却室の炭素質の内壁の炭素と反応して内壁に吸着され、雰囲気は中性に保たれる。
この発明では、(1)冷却室内の雰囲気に中性ガスを選択、採用し、(2)このガスを攪拌して冷却能を高め、(3)しかもこの攪拌によって、このガスを冷却される金属物品に対しては勿論のこと、炭素質の冷却室の内壁に対しても更に積極的に接触させることにより、加熱室で加熱された金属物品を冷却室内で急冷することに、成功した。即ち、今までタブー視されていた冷却室内での雰囲気ガスの攪拌を敢えて採用し、これによってガスの冷却能を高めると共に、ガスの中性を促進して、経済的且つ効率的で金属物品の物性を損なわない金属物品の急冷が保証された。
【0007】
【発明の実施の形態】
この発明の方法を実施するのに好適なトンネル状連続炉の一例を、図3〜図8にて図示する。
【0008】
なお、上述した通り、図1は従来の冷却室を含むトンネル状連続炉を例示するもので、符号4と5はそれぞれ炉の前室と後室とを指す。図2は、後記するこの発明の実施例と同様に、図1の従来のトンネル状連続炉を用いて、材質がSCR420の自動車用ウオームギヤ(寸法:27φ×160mm、約720g)を、浸炭前の組織調整と加工性向上のために、加熱、冷却したときの該金属物品の温度カーブを示すものである。
先ず図3を参照して、この発明の実施に好適なトンネル状連続炉1において、冷却室3を除いてその他の構成と構造は、図1にて図示されたところと同様である。
【0009】
ローラー群7によって循環駆動されるコンベヤベルト6は、図中の矢符の方向に進んで、金属物品を搬送する。その搬送方向で、この炉1は前室4,それに続く加熱室6,この加熱室に続く冷却室3,この冷却室に続く後室5からなる。加熱室の内壁は炭素質材であるグラファイトで作られ、この室内へは中性ガスの窒素が送られ、このガスは室内に設けられた複数の加熱用ラヂアント・チューブで所定の温度下に加熱されている。
【0010】
冷却室3には加熱室と同様に窒素ガスが送られ、この加熱室内の冷却用雰囲気ガスを攪拌し、室内の上方から下方に向かって循環する流れを作るように、導管9が冷却室の上方と下方につながる。
この導管9内の上部にシロッコフアンが設けられ、モーター18にて回転される。導管9の途中には冷却器8が設けられ、冷却室内を循環する雰囲気ガスを所望の温度にする。この雰囲気ガスの温度を所望の値に保持するために、時として該ガスを加熱する必要がある。この様な場合に対処するために、導管9の途中に、図6で示すように冷却器8と並列して加熱器13を取り付けてもよい。この図6中にて符号14と15は、それぞれ導管9中を流れるガスを冷却器もしくは加熱器へ選択的に調節し送るための弁のコントロール具を示す。
【0011】
この発明になる冷却室3の室内は、特に図5にて明らかな通りである。二重構造になる外殻10内にこれと接して、上部と下部にガスの通路をなす多数の開口をもつグラファイト製のバッフルケース11が設けられ、このバッフルケースが実質的には冷却室3の内壁をなす。符号12は温度センサーを指す。このような構造と構成になる冷却室3内では、所定の温度に保たれた窒素ガスが攪拌され、図中の矢符の如くに流れ、循環して金属物品を万遍なく均一に急冷却する。
【0012】
冷却室3の一改変例が図7と8で示される。外殻10の内壁にグラファイト製のマッフルケース11'が固定される。室内の上方に位置するシロッコフアン17はその回転軸16につながるモーター18によって回転し、室内の雰囲気ガスを図8中の矢符の如くに攪拌、循環させる。図8中で、符号8(13)は冷却/加熱体である。
【0013】
実施例:
図3と図5にて図示される、上述したトンネル状連続炉を用いて、この発明になる方法を実施した。
上記したのと同一の自動車用ウオームギヤを、その浸炭前の組織の調整と加工性の向上の熱処理のために、この発明になるトンネル状連続炉1中を通した。
【0014】
このときの熱処理条件は以下の通りであった。
(1)コンベヤベルト6の搬送速度:300mm/min
(2)加熱室2内の雰囲気窒素ガスの流速:0.2m/sec
同室内のガスの(平均)温度:800℃
(3)冷却室3内の雰囲気窒素ガスの
(攪拌・循環を行わない時の)流速:0.2m/sec
同室内のガスの保持温度:450℃
(図5の構成で攪拌・循環した時の)ガスの流速:4m/sec
【0015】
この金属物品は、従来法によるときと比べて、硬度が上昇し(HRB=76から90まで上昇)、加工時のむしれが改善され、組織上でも焼きならし硬化が確認された。勿論、この金属物品の仕上がり時の光輝度は失われることがなかった。因みに、該金属物品の加熱・冷却温度カーブは図4のグラフにて示される通りであり、上記の熱処理時の冷却室内の雰囲気の酸素は5ppmで、窒素ガスの中性は完全に守られていた。
【0016】
上記の実施例では、肌焼き鋼の焼きならし熱処理について、この発明を実施したが、その他の金属物品、例えば、オーステナイト系ステンレス鋼等の固溶化熱処理、空気焼き入れ工具鋼等の焼き入れ処理等々にもこの発明が適応できるは、当業者にとって明らかである。なお、本発明の冷却室に連続して保持炉を設置すれば、良好な恒温処理も可能になる。また、上記実施例では、雰囲気ガスとして窒素を用いたが、アルゴン、ヘリウムも使用できることは勿論のところである。
【0017】
【発明の効果】
上述したところから明らかな通り、この発明は優れた種々の効果を有するが、上記の実施例において冷却に要した時間は、従来の対応する冷却時間の約1/4に過ぎず、冷却時間の短縮による作業能率の著しい向上はもとよりのこととして、冷却器も短尺化できる等の経済的効果も見逃せないところである。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の一般的なトンネル状連続炉全体の説明的な(図3よりも大きな縮尺の)側面図である。
【図2】図1の連続炉による熱処理の一例の被熱処理金属物品の温度カーブを示すグラフである。
【図3】この発明の方法を実施するのに好適なトンネル状連続炉全体の一例を示す説明的な(図1よりも小さな縮尺の)側面図である。
【図4】図3に示される連続炉を用いて本発明を実施した、図2と同一の熱処理の一例における被加熱処理金属物品の加熱/冷却温度カーブを示すグラフである。
【図5】図3で示される連続炉の冷却室の説明的な縦断面図である。
【図6】冷却室の雰囲気ガスを攪拌、循環するために、冷却室の外部に設けられる導管の図3で示されるものとは異なる一改変例を示す正面図である。
【図7】冷却室の一改変例を示す側面図である。
【図8】図7で示される冷却室の説明的な縦断面図である。
【符号の説明】
1−炉
2−加熱室
3−冷却室
4−前室
5−後室
6−コンベヤベルト
7−ローラー群
8−冷却器
9−導管
10−外殻
11−バッフルケース
12−温度センサー
13−加熱器
14−弁コントロール具
15−−弁コントロール具
16−回転軸
17−ファン
18−モーター

Claims (4)

  1. 熱処理を受ける金属製物品がコンベアベルトにより搬送されて加熱室内及びこれに続く冷却室内を連続的に移動するトンネル状の連続炉において、炭素質材料で囲まれた中性雰囲気ガス下のトンネル状の加熱室内で加熱された金属製物品を、この加熱室に続き且つ加熱室と同様に炭素質材料で囲まれた中性雰囲気ガス下のトンネル状の冷却室内で攪拌された該ガスに曝して該物品のAr1点以下の温度まで急冷し、次いで放冷することを特徴とするトンネル状連続炉における冷却方法。
  2. 前記冷却室内で攪拌される中性雰囲気ガスが、該物品をAr1点以下の温度まで急冷しうる温度に保持されていることを特徴とする請求項1記載のトンネル状連続炉における冷却方法。
  3. 熱処理を受ける金属製物品がコンベアベルトにより搬送されて加熱室内及びこれに続く冷却室内を連続的に移動するトンネル状の連続炉において、中性ガスを雰囲気とし且つこの雰囲気ガスを囲む室内の構造材を炭素質とする加熱室につながって、トンネル状連続炉の一部をなし且つ加熱室と同一の雰囲気ガスが送られる冷却室の該ガスと触れる構造材を炭素質とし、且つ該ガスを攪拌する手段を冷却室に設けたことを特徴とするトンネル状連続炉における冷却室。
  4. 前記冷却室の雰囲気ガスを所望の温度に保持するための手段を冷却室に設けたことを特徴とする請求項3記載のトンネル状連続炉における冷却室。
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