JP3721536B2 - 細穴、深穴の浸炭処理方法 - Google Patents

細穴、深穴の浸炭処理方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、鋼材よりなる、パイプ外面からパイプ内面に達する少なくとも1か所の貫通細穴を具備したパイプ状ワークの、パイプ外面、及びパイプ内面、あるいは貫通細穴内面でさえ、浸炭処理による均一な浸炭深さ、あるいは表面硬さを容易に得ることができる浸炭処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
産業界では、鋼材よりなる少なくとも1か所の貫通細穴を具備したパイプ状ワークの、外面ばかりか、パイプ外面からパイプ内面に達する貫通細穴内面、あるいはパイプ状ワーク内面への、浸炭処理による均一な浸炭深さや表面硬さを得ることが要望されている。
【0003】
従来、アセチレンやエチレンなどの不飽和炭化水素ガスを浸炭ガスとして使用する真空浸炭処理において、ワーク表面の炭素濃度むらが少なく、ワーク表面のセメンタイト析出を防止することができる浸炭処理方法を提供することを目的として、図1に示す特開2000−303160号が提案されている。
【0004】
特開2000−303160号に開示された浸炭処理方法は、加熱室11内のワークを窒素雰囲気中で所定の浸炭温度まで加熱したのち、加熱室11内を減圧した状態で、浸炭性ガスとしての鎖状不飽和炭化水素ガスを断続的に供給し、加熱室11内の圧力を比較的短いサイクルで変動させながら浸炭させるものであって、このとき使用する鎖状不飽和炭化水素ガスとしては、エチレンやプロピレン、アセチレン、メチルアセチレンなどが用いられている。
【0005】
このような浸炭処理方法により、図3に示す、鋼材よりなる貫通細穴28を具備したパイプ状ワーク23の浸炭処理を実施すると、
真空の加熱室11内に大気圧の浸炭性ガスを供給することにより、加熱室11内と、鋼材よりなる貫通細穴28を具備したパイプ状ワーク23の、パイプ部25の気圧が同時に上昇し、加熱室11内と、鋼材よりなるパイプ状ワーク23のパイプ部25の気圧差が発生しないため、浸炭性ガスがパイプ状ワーク23の内部にまで十分に浸透できない。
そのため、図3、及び図4、図5に示すように、細穴内面24、あるいはパイプ部25内面への、浸炭処理による均一な浸炭深さ、あるいは均一な表面硬さを得ることができないことを確認した。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明に係る請求項1は、鋼材よりなる、パイプ外面からパイプ内面に達する少なくとも1か所の貫通細穴を具備したパイプ状ワークの外面、貫通細穴内面、あるいはパイプ状ワークのパイプ内面への浸炭処理による均一な浸炭深さ、均一な表面硬さを容易に得ることができる、新規な方法を採用した浸炭処理方法を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る浸炭処理方法は、
加熱室内において、窒素ガス中の大気圧で炉内攪拌を利用し、鋼材ワークを浸炭温度まで加熱したのち、加熱室内を真空状態とすると共に、加熱室内の真空状態を保持しながら、鎖状不飽和炭化水素ガスを加熱室内へ断続的に直接添加し、鎖状不飽和炭化水素ガスを加熱室内へ直接添加したことにより上昇した加熱室内の気圧を、鎖状不飽和炭化水素ガスを加熱室内へ添加する以前の加熱室内の気圧に減圧すると共に、鎖状不飽和炭化水素ガスを加熱室外へ排気し、
この、鎖状不飽和炭化水素ガスの直接添加と、鎖状不飽和炭化水素ガスの添加後の加熱室内の減圧、及び鎖状不飽和炭化水素ガスの加熱室外への排気を繰り返すことにより、鋼製ワークの表面層のみの炭素量を増加させる浸炭処理方法において、
鋼材よりなる、パイプ外面からパイプ内面に達する少なくとも1か所の貫通細穴を具備したパイプ状ワークの、外面のみならず、貫通細穴内面、あるいはパイプ状ワークのパイプ内面への浸炭処理時に、パイプ状ワークの両端開放部を蓋などにより閉鎖することを特徴とするものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本実施形態に係る浸炭処理方法は、鋼材よりなるパイプ外面からパイプ内面に達する少なくとも1か所の、例えば1〜6mmの外径を有する貫通細穴を具備したパイプ状ワークの、外面ばかりか、パイプ状ワークのパイプ内面、あるいは貫通細穴内面でさえ、浸炭処理による均一な浸炭深さや表面硬さを得ることができる浸炭処理方法である。
なお、産業界においても前述したように、鋼材よりなる貫通細穴を具備したパイプ状ワークの、貫通細穴内面でさえ、浸炭処理による均一な浸炭深さや表面硬さを容易に得ることができる浸炭処理方法が要望されている。
以下、本発明の代表的な実施形態を図面を参照して説明する。
ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、形状、材質、その相対位置などは、特に特定的な記載がないかぎりは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではなく、単なる説明例にすぎない。
【0009】
特開2000−303160号に開示された浸炭処理方法は、加熱室11内のワークを窒素雰囲気中で所定の浸炭温度まで加熱したのち、加熱室11内を減圧した状態で、浸炭性ガスとしての鎖状不飽和炭化水素ガスを断続的に供給し、加熱室11内の圧力を比較的短いサイクルで変動させながら浸炭させるものであって、このとき使用する鎖状不飽和炭化水素ガスとしては、エチレンやプロピレン、アセチレン、メチルアセチレンなどが用いられている。
【0010】
図1に、特開2000−303160号に係わる浸炭処理方法による炉の構造の一例を示す。
図1に示す浸炭炉12は、炉本体を形成する加熱室11と、焼入用の油槽13を備えた前室14から構成されており、前室14にはトレーに載置したワークを前室14と加熱室11の間で移動させる炉内搬送装置15と、浸炭を終えたワークを油槽13中の焼入油に浸漬するための昇降装置16を備えている。さらに、前室14には、油槽13中の焼入油を加熱するためのチューブヒータ17と、焼入油を循環させるための攪拌ファン18が設けてあると共に、焼入油を冷却するための水冷装置(図示なし)と、焼入油の温度を検出する熱伝対などを備えている。
【0011】
一方、加熱室11は、耐火物19によって内張された加熱室11の内部に加熱源としてのラジアントチューブヒータ20と、炉内温度を検出するための熱伝対21と、炉内の雰囲気を強制攪拌するためのファン22を備えており、炉内の温度むらをなくしてワークの昇温を速やかなものとすることができるようになっている。
さらに、加熱室11および前室14は、真空排気装置(図示なし)を備え、それぞれ独立して気圧制御ができるようになっていると共に、ガス制御装置(図示なし)を介して、窒素源、アセチレン源(共に図示なし)に連結されている。
【0012】
このような構造を備えた浸炭炉12を用いた浸炭処理方法により、図2に示す、鋼材よりなる貫通細穴28を具備したパイプ状ワーク23の浸炭処理を実施するにあたり、
本発明は、鋼材よりなる貫通細穴28を具備したパイプ状ワーク23の、細穴内面24などへの、均一な浸炭深さ、あるいは均一な浸炭硬さを得るための浸炭処理時に、鋼材よりなる貫通細穴28を具備したパイプ状ワーク23の両端開放部26をネジ棒29により連結された2か所の蓋27により閉鎖し密閉して浸炭処理を実施することにある。
このことにより、浸炭炉12の真空の加熱室11内への、大気圧である浸炭性ガスの供給時においても、鋼材よりなる貫通細穴28を具備したパイプ状ワーク23のパイプ部25の気圧が、従来のように同時に上昇することなく、加熱室11内とパイプ状ワーク23の内面との間に、気圧差を発生させることができ、
そのため、浸炭性ガスが貫通細穴28を経由し、加熱室11と比較すると気圧の低い、密封されたパイプ部25内面へと流入することにより、浸炭性ガスをワークの細部にまで十分に供給し浸透させることができ、図2に示すように、鋼材よりなるパイプ状ワーク23の、細穴内面24でさえ、均一な浸炭深さ、あるいは均一な表面硬さを得ることができる。
なお、図2に示す、鋼材よりなるパイプ状ワーク23の、細穴内面24への浸炭層が、均一な浸炭深さ、あるいは均一な表面硬さであることは確認済みであり、従来の浸炭方法と比較したその確認結果を、図4、及び図5に示す。
図4、あるいは図5は、浸炭焼入が最も困難だと思われる、細穴内面24の表面硬さ、及び焼入深さを複数個測定した結果である。
これらの結果からも、細穴内面24への均一な浸炭深さ、あるいは均一な表面硬さが得られていることは明らかである。
その他本発明装置は、前にも述べたように上記しかつ図面に示した実施例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更し得るものである。
【0013】
【発明の効果】
請求項1に係る、
鋼材よりなる貫通細穴を具備したパイプ状ワークの、外面をはじめ、貫通細穴内面、あるいはパイプ状ワーク内面への、浸炭処理による浸炭時に、パイプ状のワークの両端開放部を閉鎖しておこなう、
鎖状不飽和炭化水素ガスの直接添加と、鎖状不飽和炭化水素ガスの添加後の加熱室内の減圧、及び鎖状不飽和炭化水素ガスの加熱室外への排気を繰り返すことにより、鋼製ワークの表面層のみの炭素量を増加させる浸炭処理方法によれば、従来、非常に困難であった、鋼材よりなる貫通細穴を具備したパイプ状ワークの、貫通細穴内面、あるいはパイプ状ワーク内面への、浸炭処理を容易におこなうことができ、しかも、貫通細穴内面でさえ、浸炭処理による均一な浸炭深さ、あるいは均一な表面硬さを得ることができる、新規な浸炭処理方法を提供することができる。
また、上記の効果の他、エネルギーコストの低減、浸炭時間の短縮、などの効果が考えられ、全体的に稼働費用の低減にも寄与できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】特開2000−303160号に係る浸炭炉の説明図である。
【図2】本発明の浸炭方法による浸炭後のワークの浸炭層を示す説明図である。
【図3】従来の浸炭方法による浸炭後のワークの浸炭層を示す説明図である。
【図4】本発明の浸炭方法による浸炭後のワークの浸炭層と、従来の浸炭方法による浸炭後のワークの浸炭層の、細穴内面表面硬さのバラツキを比較した図。
【図5】本発明の浸炭方法による浸炭後のワークの浸炭層と、従来の浸炭方法による浸炭後のワークの浸炭層の、細穴内面浸炭深さのバラツキを比較した図。
【符号の説明】
11・・・加熱室 12・・・浸炭炉
13・・・油槽 14・・・前室
15・・・炉内搬送装置 16・・・昇降装置
17・・・チューブヒータ 18・・・攪拌ファン
19・・・耐火物 20・・・ラジアントチューブヒータ
21・・・熱伝対 22・・・ファン
23・・・パイプ状ワーク 24・・・細穴内面
25・・・パイプ部 26・・・両端開放部
27・・・蓋 28・・・貫通細穴
29・・・ネジ棒

Claims (1)

  1. 浸炭性ガスによって鋼製ワークの表面部に炭素を侵入させ、鋼製ワークの表面層のみの炭素量を増加させるため、前記ワークを浸炭性ガス中において適当な温度で適当な時間加熱した後冷却するガス浸炭処理方法であって、
    加熱室内において、窒素ガス中の大気圧で炉内攪拌を利用し、鋼製ワークを浸炭温度まで加熱したのち、加熱室内を真空状態とすると共に、加熱室内の真空状態を保持しながら、鎖状不飽和炭化水素ガスを加熱室内へ断続的に直接添加し、
    鎖状不飽和炭化水素ガスを加熱室内へ直接添加したことにより上昇した加熱室内の気圧を、鎖状不飽和炭化水素ガスを加熱室内へ添加する以前の加熱室内の気圧に減圧すると共に、鎖状不飽和炭化水素ガスを加熱室外へ排気し、
    この、鎖状不飽和炭化水素ガスの直接添加と、鎖状不飽和炭化水素ガスの添加後の加熱室内の減圧、及び鎖状不飽和炭化水素ガスの加熱室外への排気を繰り返すことにより、鋼製ワークの表面層のみの炭素量を増加させる浸炭処理方法において、
    鋼材よりなる、パイプ外面からパイプ内面に達する少なくとも1か所の貫通細穴を具備したパイプ状ワークの、前記外面のみならず、パイプ状ワークのパイプ内面、あるいは前記貫通細穴内面をも、前記浸炭処理方法により浸炭処理を実施するにあたり、パイプ状ワークのパイプ部両端開放部を閉鎖することを特徴とする浸炭処理方法。
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