JP6228403B2 - 炭素鋼の表面硬化方法及び表面硬化構造 - Google Patents

炭素鋼の表面硬化方法及び表面硬化構造 Download PDF

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本発明は、アンモニアガスで鉄または鉄合金の表面に窒素を供給して表面を硬化する表面硬化方法、当該方法に用いて好適な表面硬化装置、及び当該方法により得られる鉄または鉄合金の表面硬化構造に関するものである。
従来より、アンモニアガスにより鋼の表面を硬化する処理方法として、例えば、ガス窒化処理、ガス軟窒化処理及び浸窒焼入れ処理が知られている。
ガス窒化処理は、合金鋼の表面にAl、Cr、V、Ti、Nb等の合金成分と窒素との硬い化合物(窒化物)を生成させることにより、強度、耐摩耗性、耐摩擦性、耐かじり性の向上を図る表面硬化処理であって、アンモニアガス単体、アンモニアガスと窒素ガスや水素ガス等の混合ガスを炉内に供給することによって処理がなされる。
このガス窒化処理は変態を伴わないので、熱処理ひずみや寸法変化が小さく、最終形状に仕上げられた部品に施されることが多い。この処理方法は、後述するガス軟窒化処理に比べ硬化層が深く硬度も高くなるが、高価な合金鋼が必要でしかも処理時間が長いという課題を有する。
ガス軟窒化処理は、炭素鋼などの表面に鉄と窒素の化合物(窒化物)を生成することによって、耐摩耗性、耐摩擦性、耐かじり性の向上を図る処理であって、アンモニアガスとRXガスの混合ガス、アンモニアガスと窒素ガス及び炭酸ガスの混合ガス等を炉内に供給することによって処理がなされる。
このガス軟窒化処理も変態を伴わないので、熱処理ひずみや寸法変化が小さく、最終形状に仕上げられた部品に施されることが多い。この処理方法は、上述したガス窒化処理に比べ処理時間が短く炭素鋼等の安価な材料の処理に適しているが、硬化層が浅く(10μm前後)硬度も低いという課題を有する。
浸窒焼入れ処理は、Fe−N系状態図のオーステナイト領域で鋼に窒素を侵入・固溶し、その後焼入れして固い窒素マルテンサイトを生成することによって、強度、耐摩耗性、耐摩擦性、耐かじり性の向上を図る表面硬化処理であって、アンモニアガスと窒素ガスの混合ガスを炉内に供給することによって処理がなされる。
この浸窒焼入れ処理は、ガス浸炭処理と、上述したガス窒化処理やガス軟窒化処理との中間に位置する処理で、処理時間が短く炭素鋼等の安価な材料の処理に適しているが、ガス浸炭処理程の硬化深さは得られず、ガス窒化処理やガス軟窒化処理程の熱処理ひずみや寸法変化も得ることができない。
なお、先行技術として、例えば、特許文献1には、アンモニアガスで鋼表面に窒化物を生成する窒化処理であって、窒化効率を上げるために、処理温度を580〜700℃と通常の窒化処理よりも約100℃高くするようにした表面硬化処理が開示されている。
また、特許文献2には、アンモニアガスにより鋼のA変態点(約723℃)〜850℃の温度域で浸窒し、その後650℃〜A変態点(約723℃)の温度域まで徐冷し、一定時間保持後急冷(油冷)して表面に窒素マルテンサイトを生成する表面硬化処理が開示されている。
また、特許文献3には、アンモニアガスにより鋼を600〜800℃で浸窒し、表面に0.05−1.50%の窒素を固溶させ、その後急冷(油冷)して表面に硬い窒素マルテンサイトを生成する表面硬化処理が開示されている。
特開2003−286561号公報 特公昭59−17167号公報 特開2007−46088号公報
しかしながら、上記先行技術を始めとする、従来のガス窒化処理、ガス軟窒化処理及び浸窒焼入れ処理においては、上述したように、それぞれ一長一短があり、何れの処理方法も、炭素鋼のような安価な鋼材から、十分に高い表面硬度を有し且つ熱処理ひずみや寸法変化が少ない部品(すなわち、硬度とひずみの両条件を同時に満足するような部品)を得ることは困難であった。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、炭素鋼のような安価な鋼材を使用しても、高合金鋼の窒化表面と同程度の表面硬度を得ることができ、かつ熱処理ひずみや寸法変化をガス窒化処理やガス軟窒化処理と同程度に抑えることができる鉄または鉄合金の表面硬化方法、当該方法に用いて好適な表面硬化装置、及び当該方法により得られる鉄または鉄合金の表面硬化構造を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、被処理品を鉄−窒素系平衡状態図のオーステナイト(γ)と鉄窒化物(FeN:γ’)の混相域温度で浸窒した後、被処理品を急冷及び再加熱して、被処理品表面にFe16(α”)と窒素マルテンサイトの2層構造を生成することによって、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は上記知見に基づくものであって、請求項1に記載の本発明に係る表面硬化方法は、炭素鋼にて構成される被処理品に窒素を侵入・拡散・固溶させた後、油冷及び再加熱により被処理品表面を硬化させる処理方法において、アンモニアガスが供給される加熱室内に被処理品を送入し、前記加熱室の温度を被処理品の鉄−窒素系平衡状態図のオーステナイト(γ)と鉄窒化物(FeN:γ’)の混相領域の所定温度に昇温して前記被処理品の表面窒素濃度がFe16(α”)の窒素濃度となるように浸窒した後、前記被処理品を油冷し再加熱することにより、被処理品表面にFe16(α”)と窒素マルテンサイトの2層構造を生成することを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の炭素鋼の表面硬化方法において、前記加熱室内を鉄−窒素系平衡状態図のオーステナイトと鉄窒化物(FeN)の混相域温度620℃〜650℃に保持して、浸窒することを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の炭素鋼の表面硬化方法において、前記加熱室内を鉄−窒素系平衡状態図のオーステナイトと鉄窒化物(FeN)の混相域温度620℃〜650℃に保持し、処理ガスとして、アンモニアガスと窒素ガスの混合ガス、アンモニアガスと水素ガスの混合ガス、またはアンモニアガスと窒素ガスと水素ガスの混合ガスを用いて、浸窒することを特徴とするものである。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の炭素鋼の表面硬化方法において、前記被処理品の表面窒素濃度が2.95±0.35質量%となるように浸窒することを特徴とするものである。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載の炭素鋼の表面硬化方法において、前記被処理品を油冷した後、前記被処理品を250℃〜350℃で再加熱することを特徴とするものである。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の炭素鋼の表面硬化方法において、前記被処理品の再加熱を250℃〜350℃で60分〜120分施すことを特徴とするものである。
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6の何れか一項に記載の炭素鋼の表面硬化方法において、被処理品を浸窒するために、真空気密構造で、且つ、加熱室に攪拌機を備えたホットウォール型真空熱処理炉を使用するとともに、加熱室の雰囲気を真空排気及び窒素復圧により窒素ガス100%の状態とした後に、加熱室に処理ガスを導入するようにしたことを特徴とするものである。
請求項に記載の発明は、炭素鋼の表面硬化構造において、Fe16と窒素マルテンサイトの2層構造を表面にもつことを特徴とするものである。
本発明によれば、炭素鋼のような安価な鋼材の表面に高合金鋼の窒化表面と同程度のFe16と窒素マルテンサイトの高硬度の2層構造を生成することができる。
また、本発明によれば、処理温度が620〜650℃と低く、処理時間も2時間以内と短くなるため、省資源、省エネルギー、低コストの処理が可能になる。
さらに、本発明によれば、鉄−窒素系平衡状態図の620〜650℃から被処理品を急冷するようにしたので、被処理品表面には高硬度のFe16と窒素マルテンサイトの2層構造が生成されるが、内部はフェライトのままなので焼きが入らず硬化しない。そのため、ガス窒化処理やガス軟窒化処理と同程度の極めて変形、変寸の少ない処理が可能である。
また、本発明によれば、被処理品の最表面が、マルテンサイトに比べて加熱に対する軟化抵抗性に優れたFe16の生成により硬化されることとなるため、被処理品を、高面圧、高荷重、高回転など、過酷な用途に適用することができる。
なお、前述した従来のガス窒化処理、ガス軟窒化処理及び浸窒焼入れ処理においては、雰囲気及び鋼表面の窒素濃度を精度よく、且つ、再現性よく制御することが難しいという問題点があり、そのため、従来のガス窒化処理及びガス軟窒化処理では、積極的に窒化物を生成させるために、窒素濃度を高目にして処理する必要があり、一方、従来の浸窒焼入れ処理では、窒化物を生成させずに窒素マルテンサイトを生成させるために、窒素濃度を低目にして処理する必要があった。その結果、従来のガス窒化処理及びガス軟窒化処理にあっては、高目の、浸窒焼入れ処理にあっては、低目のいずれも広い窒素濃度域で処理せざるを得なかった。
これに対して、本発明によれば、真空気密構造で、且つ、加熱室に攪拌機を備えたホットウォール型真空熱処理炉を用い、真空パージ(真空排気・窒素ガス復圧)により、加熱室を窒素ガス100%にしてから処理ガス(アンモニアガス及び窒素ガス)を導入することにより、従来のガス窒化処理、ガス軟窒化処理及び浸窒焼入れ処理では困難とされていた雰囲気及び鋼表面の窒素濃度の制御を、精度よく、且つ、再現性をよく行うことができる。
図1は、Fe−N系平衡状態図であり、縦軸が温度、横軸が窒素濃度をそれぞれ示している。 図2は、本発明の実施例に用いたホットウォール型真空熱処理炉の構造を示す概略図である。 図3は、本発明の実施例におけるヒートサイクルを示す図である。 図4は、本発明の表面硬化方法によって処理した試験片の断面金属組織を示す光学顕微鏡写真である。 図5は、本発明の表面硬化方法によって処理した試験片の表面からの距離と硬度との関係を示す図である。 図6は、本発明の表面硬化方法によって処理した試験片の表面からの距離と窒素濃度との関係を示す図である。
本発明の鉄または鉄合金の表面硬化方法においては、例えば、後述するホットウォール型真空熱処理炉を用いて加熱室の被処理品を、窒素雰囲気下または真空下で620〜650℃の温度域(図1に示す鉄−窒素系平衡状態図のオーステナイトと鉄窒化物(FeN)の混相域温度)に加熱し、一定時間均熱後、加熱室内を真空排気・窒素ガス復圧する。
ここで、被処理品を620〜650℃の温度域に加熱するのは、オーステナイト(γ)にFeN(γ’)が固溶した組織を得るためである。650℃以上ではオーステナイト(γ)にFe2〜3N(ε)が固溶した組織になり、620℃以下ではフェライト(α)にFeN(γ’)が固溶した組織になるので、浸窒後急冷・再加熱してもFe16(α’’)を析出させることはできない。
その後、加熱室に一定量の処理ガスを流して、被処理品(ワーク)表面がFe16の窒素濃度2.95質量%になるように浸窒する。その際に、加熱室のアンモニアガス濃度または水素ガス濃度を測定し、雰囲気を自動制御することが望ましいが、ホットウォール型真空熱処理炉の場合、処理条件さえ決まれば、アンモニアガスと窒素ガスの流量管理でも十分処理できる。
なお、被処理品表面の窒素濃度は、2.95質量%よりも高くなると次第に窒化物が生成し、2.95質量%よりも低くなると次第に窒素マルテンサイトが生成し、いずれも表面硬度が低くなるため、経済性を考慮し実操業では2.95±0.35質量%になるように雰囲気を制御する。被処理品表面の窒素濃度を2.60%〜3.30%にすることによって、被処理品の表面を実用上有効なHV950以上に硬化することができる。
具体的に、処理ガスとしては、例えば、アンモニアガスと窒素ガスの混合ガス、アンモニアガスと水素ガスの混合ガス、またはアンモニアガスと窒素ガスと水素ガスの混合ガスの何れかを用いることができる。
その後、処理温度620〜650℃温度域、表面窒素濃度2.95±0.35%の条件で浸窒された被処理品を、冷却油槽にて速やかに急冷(油冷)した後、250〜350℃の温度域で60分〜120分間再加熱して、被処理品表面に硬いFe16と窒素マルテンサイトの2層構造を生成する。
ここで、被処理品を250〜350℃の温度域で再加熱するのは、250℃未満ではFe16が十分析出せず、350℃以上では、Fe16が[αFe+FeN(γ’)]に変化していずれも硬度が下がるからである。そのため再加熱の温度域は、被処理品表面に十分な硬度を付与できる250〜350℃にするのが望ましい。
このような本発明の表面硬化方法には、例えば、ホットウォール型真空熱処理炉からなる表面硬化装置を好適に用いることができる。ホットウォール型真空熱処理炉は、被処理品を浸窒する加熱室と、被処理品を急冷(油冷)する真空パージ室兼油槽とを備える。
加熱室は、当該加熱室を真空にする真空排気手段と、加熱室の圧力を大気圧以上に保持する圧力制御手段と、加熱室を加熱する加熱手段と、加熱室を所定の温度に保持する温度制御手段と、加熱室を断熱する断熱手段と、加熱室の出入り口を断熱する断熱扉手段と、加熱室の雰囲気を攪拌する攪拌手段と、加熱室にアンモニアガスと窒素ガスを供給するガス供給手段と、加熱室雰囲気のアンモニアガス濃度を測定する測定手段または加熱室雰囲気の水素ガス濃度を測定する測定手段とを備えることができる。
一方、真空パージ室兼油槽(以下、前室と称する。)は、前室の出入口を密閉にするための密閉手段と、前室を真空排気するための真空排気手段と、前室の圧力を大気圧以上に保持する圧力制御手段と、被処理品を急冷(油冷)するための急冷手段と、前室油槽の油を加熱する加熱手段と、前室油槽の油を冷却する冷却手段と、前室油槽の油を攪拌する攪拌手段と、被処理品を炉内搬送する搬送手段とを備えることができる。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、このような実施例のみに限定されるものではない。
[ホットウォール型真空熱処理炉]
図2は、本発明の実施例に用いたホットウォール型真空熱処理炉1の構造を示すもので、このホットウォール型真空熱処理炉1は、炉本体となる加熱室2と、急冷用の油槽4を備えた前室3とから主に構成されており、前室3にはトレーに載置した被処理品を前室3と加熱室2の間で移動させるための炉内搬送装置5と、被処理品を油槽4中の冷却油に浸漬するための昇降装置(エレベータ)6とを備えている。さらに、前室3には、油槽4中の冷却油を加熱するためのパイプヒータ7と、冷却油を循環させるための油撹拌装置(アジタ)8が設けてあると共に、図外には冷却油を冷却するための水冷装置と、冷却油の温度を検出する熱電対などを備えている。
一方、加熱室2は、断熱材9によって内張された加熱室2の内部に加熱源としてのラジアントチューブヒータ10と、炉内温度を検出するための熱電対11と、炉内の雰囲気(窒素)を強制撹拌するための雰囲気攪拌装置12とを備えており、炉内の温度を均一にして被処理品の昇温を速やかなものとすることができるようになっている。また、加熱室2には、当該加熱室2の内部にアンモニアガス及び窒素ガスを供給する処理ガス供給手段が連結されていている。この処理ガス供給手段は、アンモニアガスを供給する第1供給管と、窒素ガスを供給する第2供給管と、それら供給管からのガスを受け入れて加熱室2に導く接続管と、それら管の各々に設けられたバルブとにより構成されている。
さらに、加熱室2及び前室3は、図外にそれぞれ真空排気装置を備え、それぞれ独立して気圧制御ができるようになっていると共に、図示しないガス制御装置を介して図外の窒素源(窒素ボンベ)に連結されている。
[実施例]
先ず、処理に先立ち、JIS G 3445に規程される機械構造炭素鋼鋼管STKM−13Cからなる試験片(20mm×20mm×5mm)を用意した。
そして、この試験片の表面に硬化層深さが30μm、表面硬さがマイクロビッカース硬さで930以上のFe16と窒素マルテンサイトの2層構造を生成することを目的として、600mm幅×900mm奥行×600mm高さの炉内有効寸法を有する上述した構造のホットウォール型真空熱処理炉により、図3に示すヒートサイクルの処理を施した。
図3に示すように、浸窒温度を640℃に設定し、処理ガス供給手段により窒素ガスの供給量とアンモニアガスの供給量を次のように調整した。
窒素ガス(N):1Nm/Hr
アンモニアガス(NH):0.48Nm/Hr(=8Nl/min)
ここで、窒素ガスとアンモニアガスの各流量は、事前の条件出しで決定した。すなわち、条件出しでは、窒素ガスの流量を1Nm/Hrで固定し、炉内の残留アンモニアガス濃度が1.4〜1.6%(例えば、1.5%)になるようにアンモニアガスの流量を調整し、最終的に0.48Nm/Hr(=8Nl/min)に決定した。
試験片の処理に際しては、先ず、ホットウォール型真空熱処理炉1の前室3の前室入口真空扉3aを開放し、試験片をトレーに載置した状態で前室3内に入れ、前室入口真空扉3aを閉じ、真空窒素パージ(真空排気・窒素復圧)を行った。すなわち、真空排気装置を作動させて前室3及び加熱室2内の空気をパージしたのち、図外のガス制御装置を介して窒素ガスを導入して大気圧に復圧し、前室3及び加熱室2内を窒素ガスに置換した。
次に、前室入口真空扉3aを閉じた状態で、前室3の前室出口真空扉3b及び加熱室2の断熱扉2aを開放すると共に、炉内搬送装置5を作動させて試験片をトレーと共に押し出し、加熱室2内に装入したのち、真空扉3b及び断熱扉2aを閉じ、加熱室2に窒素ガスを1Nm/Hr流しながら、加熱室2のラジアントチューブヒータ10に通電して昇温を開始した。なお、窒素ガスの供給は、真空窒素パージ工程を除き処理が終了するまで継続した。
その後、加熱室2を浸窒温度の640℃まで昇温させた後、この温度を30分間保持して、試験片の温度を640℃に均一化した。この30分間の均熱後、加熱室を30Paまで真空排気・窒素復圧して浸窒工程に備えた。
真空排気・窒素復圧後、加熱室2に1Nm/Hrの窒素ガスと、0.48Nm/Hr(=8Nl/min)のアンモニアガスを供給し、試験片を浸窒した。アンモニアガスは、浸窒工程の90分間連続供給した。
なお、浸窒の雰囲気管理は、窒素ガスとアンモニアガスの流量による条件管理で行ったが、確認のため赤外線アンモニア分析計により炉内のアンモニアガス濃度を測定した。測定の結果、浸窒工程における加熱室2のアンモニアガス濃度は、アンモニアガス供給15分後に1.4%、30分後に1.45%、40分後に1.5%であった。
浸窒工程終了後、真空扉3b及び断熱扉2aを開放して、試験片を炉内搬送装置5により加熱室2から前室3の昇降装置6上に搬出した後、昇降装置6の下降により65℃の油の中で急冷(油冷)した。
次いで、急冷した試験片を、600mm幅×900mm奥行×600mm高さの炉内有効寸法を有する流気式焼戻炉(図示省略)において280℃で90分間再加熱した。
このような処理が施された試験片を光学顕微鏡で撮影したところ、図4(b)に示すように、その表面に2つの層が形成されていることが確認された。そして、それぞれの層の組成を解析したところ、上側が主にFe16を含む層であり、下側が主にマルテンサイトを含む層であることが判明した。なお、浸窒後(再加熱を行う前)は図4(a)に示すように、その表面にはFe16と窒素マルテンサイトの2層構造は生成されていなかった。
また、マイクロビッカース硬度計で硬さ分布を測定したところ、図5に示すように、その表面硬さがマイクロビッカース硬さで930以上であることが確認された。また、試験片のひずみ量を測定したところ、±15μm以内であり、ガス窒化処理やガス軟窒化処理と同程度であることが確認された。
さらに、上記試験片について、表面からの断面の窒素濃度分布を測定したところ、図6に示すような結果が得られた。この図6によれば、窒素濃度分布は2段になっており、図4(b)の2層構造の組織に対応している。
各種条件で処理を行った結果を表1及び表2に示す。
Figure 0006228403
この表1は、浸窒温度を変化させたときの処理結果を示すもので、何れもアンモニア濃度を1.5%、再加熱温度を280℃、再加熱時間を90分としている。この表1に示すように、浸窒温度を640℃とした場合(試験No.4)に、被処理品表面に硬度1023(HV)のFe16と窒素マルテンサイトの2層構造を形成することができた。また、浸窒温度を620℃とした場合(試験No.3)には、試験No.4よりも硬度が落ちるが、822(HV)の表面硬度を得ることができた。
Figure 0006228403
この表2は、浸窒時間を変化させたときの処理結果を示すもので、何れもアンモニア濃度を1.5%、再加熱温度を280℃、再加熱時間を90分としている。この表2に示すように、浸窒時間を90分とした場合(試験No.3)に、被処理品表面に硬度1023(HV)のFe16と窒素マルテンサイトの2層構造を形成することができた。また、浸窒時間を70分とした場合(試験No.2)には、試験No.3よりも硬度が落ちるが、910(HV)の表面硬度を得ることができた。
1 ホットウォール型真空熱処理炉
2 加熱室
2a 加熱室断熱扉
3 前室
3a 前室入口真空扉
3b 前室出口真空扉
4 油槽
5 搬送装置
6 昇降装置
7 パイプヒータ
8 油攪拌装置
9 断熱材
10 ラジアントチューブヒータ
11 熱電対
12 雰囲気攪拌装置

Claims (8)

  1. 炭素鋼にて構成される被処理品に窒素を侵入・拡散・固溶させた後、油冷及び再加熱により被処理品表面を硬化させる処理方法であって、
    アンモニアガスが供給される加熱室内に被処理品を送入し、前記加熱室の温度を被処理品の鉄−窒素系平衡状態図のオーステナイトと鉄窒化物(FeN)の混相領域の所定温度に昇温して前記被処理品の表面窒素濃度がFe16の窒素濃度となるように浸窒した後、前記被処理品を油冷し再加熱することにより、被処理品表面にFe16と窒素マルテンサイトの2層構造を生成することを特徴とする炭素鋼の表面硬化方法。
  2. 前記加熱室内を鉄−窒素系平衡状態図のオーステナイトと鉄窒化物(FeN)の混相域温度620℃〜650℃に保持して、浸窒することを特徴とする請求項1に記載の炭素鋼の表面硬化方法。
  3. 前記加熱室内を鉄−窒素系平衡状態図のオーステナイトと鉄窒化物(FeN)の混相域温度620℃〜650℃に保持し、処理ガスとして、アンモニアガスと窒素ガスの混合ガス、アンモニアガスと水素ガスの混合ガス、またはアンモニアガスと窒素ガスと水素ガスの混合ガスを用いて、浸窒することを特徴とする請求項1または2に記載の炭素鋼の表面硬化方法。
  4. 前記被処理品の表面窒素濃度が2.95±0.35質量%となるように浸窒することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の炭素鋼の表面硬化方法。
  5. 前記被処理品を油冷した後、前記被処理品を250℃〜350℃で再加熱することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の炭素鋼の表面硬化方法。
  6. 前記被処理品の再加熱を250℃〜350℃で60分〜120分施すことを特徴とする請求項5に記載の炭素鋼の表面硬化方法。
  7. 被処理品を浸窒するために、真空気密構造で、且つ、加熱室に攪拌機を備えたホットウォール型真空熱処理炉を使用するとともに、加熱室の雰囲気を真空排気及び窒素復圧により窒素ガス100%の状態とした後に、加熱室に処理ガスを導入するようにしたことを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の炭素鋼の表面硬化方法。
  8. Fe16と窒素マルテンサイトの2層構造を表面にもつことを特徴とする炭素鋼の表面硬化構造。
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