JP2023073674A - 表面硬化処理装置及び表面硬化処理方法 - Google Patents

表面硬化処理装置及び表面硬化処理方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 加熱室とは別個に冷却室が設けられている場合において、より高い被処理品の性能を実現することができる表面硬化処装置及び表面硬化処理方法を提供すること。【解決手段】 本発明は、被処理品の表面硬化処理としてガス窒化処理またはガス軟窒化処理を行う表面硬化処理方法であって、所定温度に加熱された第1処理室内にて被処理品のガス窒化処理またはガス軟窒化処理を行う主処理工程と、前記第1処理室内でガス窒化処理またはガス軟窒化処理を施された前記被処理品を、前記第1処理室とは異なる第2処理室に移載する工程と、前記第2処理室内に前記被処理品が収容された状態で前記被処理品を冷却する冷却工程と、を備え、前記冷却工程の少なくとも前半工程において、前記第2処理室内にアンモニアと水素とが所定の一定の比率で導入されることを特徴とする表面硬化処理方法である。【選択図】 図3

Description

本発明は、例えば、窒化、軟窒化、浸窒焼入れ等、金属製の被処理品に対する表面硬化処理を行う表面硬化処理装置及び表面硬化処理方法に関する。
鋼等の金属製の被処理品の表面硬化処理の中で、低ひずみ処理である窒化処理のニーズは多い。窒化処理の方法として、ガス法、塩浴法、プラズマ法等がある。
これらの方法の中で、ガス法が、品質、環境性、量産性等を考慮した場合に、総合的に優れている。機械部品に対する焼入れを伴う浸炭や浸炭窒化処理または高周波焼入れによるひずみは、ガス法による窒化処理(ガス窒化処理)を用いることで改善される。浸炭を伴うガス法による軟窒化処理(ガス軟窒化処理)も、ガス窒化処理と同種の処理として知られている。
ガス窒化処理は、被処理品に対して窒素のみを浸透拡散させて、表面を硬化させるプロセスである。例えば、ガス窒化処理では、アンモニアガス単独、アンモニアガスと窒素ガスとの混合ガス、アンモニアガスとアンモニア分解ガス(75%の水素と25%の窒素からなり、AXガスとも呼ばれる)、または、アンモニアガスとアンモニア分解ガスと窒素ガスとの混合ガス、を処理炉内へ導入して、表面硬化処理を行う。
一方、ガス軟窒化処理は、被処理品に対して窒素とともに炭素を副次的に浸透拡散させて、表面を硬化させるプロセスである。例えば、ガス軟窒化処理では、アンモニアガスと窒素ガスと炭酸ガス(CO2)との混合ガス、あるいは、アンモニアガスと窒素ガスと炭酸ガスと一酸化炭素ガス(CO)との混合ガス等、複数種類の炉内導入ガスを処理炉内へ導入して、表面硬化処理を行う。
ガス窒化処理ないしガス軟窒化処理により得られる基本的な組織構成では、表面において鉄窒化物である化合物層が形成され、内部において拡散層と呼ばれる硬化層が形成される。当該硬化層は、通常、母材中に母材成分のSiやCrなどの合金窒化物が分散した組織からなる。
これらの2層の各々の厚さ(深さ)及び/または表面の鉄窒化物のタイプ等を制御するために、ガス窒化処理の温度と時間とに加えて、ガス窒化処理炉内の雰囲気も適宜に制御されている。具体的には、ガス窒化炉内の窒化ポテンシャル(KN)が適宜に制御されている。
そして、当該制御を介して、鋼材の表面に生成される化合物層中のγ’相(Fe4N)とε相(Fe2-3N)の体積分率(鉄窒化物のタイプ)が制御されている。
例えば、ε相よりもγ’相を形成することにより、耐疲労性が改善されることが知られている(非特許文献1)。
更に、γ’相の形成により曲げ疲労強度や面疲労を改善した窒化鋼部材も提供されている(特許文献1)。
あるいは、バネ等の耐疲労性を向上させるため、あるいは、ダイキャスト金型等のヒートチェック対策のため、化合物層の形成を抑制させたガス窒化処理法も提案されている(特許文献2及び特許文献3)。
WO2013/157579A1 特開2004-183099号公報 特開2005-230899号公報 「熱処理」、57巻、2号、64~72頁(平岡泰、石田暁丈) 「熱処理」、55巻、1号、7~11頁(平岡泰、渡邊陽一)
ガス窒化処理またはガス軟窒化処理を施された被処理品は、冷却されることが一般的である。当該冷却工程としては、N2ガスを用いたガス冷却工程か、油冷等を利用した急冷工程が採用されていた。これらの冷却工程の詳細は、被処理品(例えば鋼部材)の窒化処理後または軟窒化処理後のひずみ、硬化層の特性、タクトタイム、などを考慮して選定される。
本件発明者は、1室型の炉において、表面化合物層にγ’相を効果的に得るために、窒化処理後の冷却工程においても雰囲気制御を継続して行うことが好ましいことを知見していた(非特許文献2)。
しかしながら、一方で、加熱室とは別個に冷却室が設けられている炉の場合に、加熱室と同様に冷却室に対しても窒化ポテンシャル制御を伴う処理ガス導入装置を敷設することは、コスト的な問題があって現実的ではないと考えられていた。
更に、加熱室とは別個に冷却室が設けられている炉においては、冷却室の冷却開始時の温度が加熱室の温度ほどには高くないということがあり、本件発明者が非特許文献2に示した知見がそのまま適合するとは直ちに判断できない状況であった。
本件発明者は、従来のガス冷却工程においてN2ガスが用いられていた(冷却時の雰囲気の調整をそれ以上必要としなかった)のは、表面をε相主体の化合物層とする場合が多かったためではないか、と考えている。そして、被処理品に求められる性能(硬さ、疲労限、等)によっては、加熱室とは別個に冷却室が設けられている炉の場合であっても、冷却時の雰囲気の調整が有効であることを新たに知見した。
本発明は、以上の知見に基づいて創案されたものである。本発明の目的は、加熱室とは別個に冷却室が設けられている場合において、より高い被処理品の性能を実現することができる表面硬化処装置及び表面硬化処理方法を提供することである。
本発明は、
被処理品の表面硬化処理としてガス窒化処理またはガス軟窒化処理を行う表面硬化処理方法であって、
所定温度に加熱された第1処理室内にて被処理品のガス窒化処理またはガス軟窒化処理を行う主処理工程と、
前記第1処理室内でガス窒化処理またはガス軟窒化処理を施された前記被処理品を、前記第1処理室とは異なる第2処理室に移載する工程と、
前記第2処理室内に前記被処理品が収容された状態で前記被処理品を冷却する冷却工程と、
を備え、
前記冷却工程の少なくとも前半工程において、前記第2処理室内にアンモニアと水素とが所定の一定の比率で導入される
ことを特徴とする表面硬化処理方法
である。
本発明によれば、前記冷却工程の少なくとも前半工程において、前記第2処理室内にアンモニアと水素とが所定の一定の比率で導入されることにより、より高い被処理品の性能を実現することが確認された。
例えば、前記所定温度は、500℃を上回る温度である。この場合、前記冷却工程の少なくとも前半工程は、前記被処理品の温度が500℃以下となるまでの工程を含むことが好ましい。
また、前記所定の一定の比率は、第1処理室で実施されたガス窒化処理またはガス軟窒化処理において採用された窒化ポテンシャルの値に応じて設定されることが好ましい。
具体的には、前記冷却工程の少なくとも前半工程において、前記第2処理室内に導入されるアンモニアガス導入量をf(NH3)、水素ガス導入量をf(H2)、導入ガスの総流量をf(T)とし、P(NH3)=f(NH3)/f(T)、P(H2)=f(H2)/f(T)として定義されるKNV=P(NH3)/P(H23/2が、前記主処理工程の目標窒化ポテンシャルの値の±10%の範囲内の値とされることが好ましい。
あるいは、前記主処理工程が、時系列的に複数の目標窒化ポテンシャルに基づいて制御されるようになっている場合には、前記冷却工程の少なくとも前半工程において、前記第2処理室内に導入されるアンモニアガス導入量をf(NH3)、水素ガス導入量をf(H2)、導入ガスの総流量をf(T)とし、P(NH3)=f(NH3)/f(T)、P(H2)=f(H2)/f(T)として定義されるKNV=P(NH3)/P(H23/2が、前記主処理工程の最後の目標窒化ポテンシャルの値の±10%の範囲内の値とされることが好ましい。
更に、前記冷却工程の少なくとも前半工程において、前記第2処理室内に導入されるガス種は、第1処理室で実施されたガス窒化処理またはガス軟窒化処理において使用されたガス種と同一であることが好ましい(但し、N2ガスは除く)。例えば、第1処理室で実施されたガス窒化処理においてアンモニアガスとAXガスと(N2ガスと)が用いられる場合には、第2処理室内に導入されるガス種も、アンモニアガスとAXガスとであることが好ましい。あるいは、第1処理室で実施されたガス軟窒化処理においてアンモニアガスとAXガスとN2ガスとCO2ガスが用いられる場合には、第2処理室内に導入されるガス種も、アンモニアガスとAXガスとN2ガスとCO2ガスとであることが好ましい。後者の場合、更に、第2処理室内にアンモニア(アンモニアガス+AXガス中のアンモニア)と水素(AXガス中の水素)と他のガス(N2ガスとCO2ガスの各々)とが所定の一定の比率で導入されることが好ましい。
あるいは、本発明は、
被処理品の表面硬化処理としてガス窒化処理またはガス軟窒化処理を行う表面硬化処理装置であって、
被処理品のガス窒化処理またはガス軟窒化処理を行うべく所定温度に加熱されるようになっている第1処理室と、
前記第1処理室内でガス窒化処理またはガス軟窒化処理を施された前記被処理品を冷却するようになっている、前記第1処理室とは別個に設けられた第2処理室と、
を備え、
前記第2処理室内に、アンモニアと水素とが所定の一定の比率で導入されるようになっている
ことを特徴とする表面硬化処理装置
である。
本発明によれば、例えば冷却工程の少なくとも前半工程において、前記第2処理室内にアンモニアと水素とが所定の一定の比率で導入されることにより、より高い被処理品の性能を実現することが確認された。
例えば、前記所定温度は、500℃を上回る温度である。この場合、少なくとも前記被処理品の冷却が開始されてから前記被処理品の温度が500℃以下となるまでの期間、前記第2処理室内にアンモニアと水素とが所定の一定の比率で導入されるようになっていることが好ましい。
また、前記所定の一定の比率は、第1処理室で実施されたガス窒化処理またはガス軟窒化処理において採用された窒化ポテンシャルの値に応じて設定されることが好ましい。
具体的には、前記第2処理室内に導入されるアンモニアガス導入量をf(NH3)、水素ガス導入量をf(H2)、導入ガスの総流量をf(T)とし、P(NH3)=f(NH3)/f(T)、P(H2)=f(H2)/f(T)として定義されるKNV=P(NH3)/P(H23/2が、前記第1処理室内におけるガス窒化処理またはガス軟窒化処理の目標窒化ポテンシャルの値の±10%の範囲内の値とされることが好ましい。
あるいは、前記第1処理室内におけるガス窒化処理またはガス軟窒化処理が、時系列的に複数の目標窒化ポテンシャルに基づいて制御されるようになっている場合、前記第2処理室内に導入されるアンモニアガス導入量をf(NH3)、水素ガス導入量をf(H2)、導入ガスの総流量をf(T)とし、P(NH3)=f(NH3)/f(T)、P(H2)=f(H2)/f(T)として定義されるKNV=P(NH3)/P(H23/2が、前記第1処理室内におけるガス窒化処理またはガス軟窒化処理の最後の目標窒化ポテンシャルの値の±10%の範囲内の値とされることが好ましい。
更に、例えば冷却工程の少なくとも前半工程において、前記第2処理室内に導入されるガス種は、第1処理室で実施されたガス窒化処理またはガス軟窒化処理において使用されたガス種と同一であることが好ましい(但し、N2ガスは除く)。例えば、第1処理室で実施されたガス窒化処理においてアンモニアガスとAXガスと(N2ガスと)が用いられる場合には、第2処理室内に導入されるガス種も、アンモニアガスとAXガスとであることが好ましい。あるいは、第1処理室で実施されたガス軟窒化処理においてアンモニアガスとAXガスとN2ガスとCO2ガスが用いられる場合には、第2処理室内に導入されるガス種も、アンモニアガスとAXガスとN2ガスとCO2ガスとであることが好ましい。後者の場合、更に、第2処理室内にアンモニア(アンモニアガス+AXガス中のアンモニア)と水素(AXガス中の水素)と他のガス(N2ガスとCO2ガスの各々)とが所定の一定の比率で導入されることが好ましい。
本発明の表面硬化処理方法によれば、前記冷却工程の少なくとも前半工程において、前記第2処理室内にアンモニアと水素とが所定の一定の比率で導入されることにより、より高い被処理品の性能を実現することが確認された。
本発明の表面硬化処理装置によれば、例えば冷却工程の少なくとも前半工程において、前記第2処理室内にアンモニアと水素とが所定の一定の比率で導入されることにより、より高い被処理品の性能を実現することが確認された。
本発明の一実施形態による窒化鋼部材の製造方法に用いられるバッチ型の窒化処理装置の構成概略図である。 図1の窒化処理装置において採用され得るガス導入路の一例を示す概略図である。 図1の窒化処理装置を用いて実施され得る本発明の一実施形態による窒化鋼部材の製造方法を示す工程図である。 図1の窒化処理装置を用いて実施され得る本発明の他の実施形態による窒化鋼部材の製造方法を示す工程図である。 図1の窒化処理装置において採用され得るガス導入路の他の一例を示す概略図である。 図1の窒化処理装置を用いて実施され得る本発明の更に他の実施形態による窒化鋼部材の製造方法を示す工程図である。 小野式回転曲げ疲労試験片の形態を示す概略図である。
以下、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
[被処理体(ワーク)]
被処理体(ワーク)は、JIS-S45C鋼からなる。窒化処理後の窒化鋼部材は、様々な用途、例えば、自動車用のギアや、AL押出し用の金型などに用いられることが想定されているが、本実施形態では、耐疲労性や耐摩耗性の評価が容易なS45C鋼を用いて行われた。具体的には、市販のφ14の棒鋼を焼入・焼戻し処理した後、疲労限の評価試験のため、図7に示す形態の棒材とされた。さらに、市販のφ28の棒鋼を焼入・焼戻し処理した後、後述する別の実施形態の耐摩耗性の評価試験のため、φ25×6.9mmの円形材(ディスク)とされた。
被処理体(ワーク)は、窒化処理の前に、汚れや油を除去するための前洗浄が実施されることが好ましい。前洗浄は、例えば、炭化水素系の洗浄液で油などを溶解置換させて蒸発させることで脱脂乾燥させる真空洗浄、アルカリ系の洗浄液で脱脂処理するアルカリ洗浄、などが好ましい。
[バッチ型の窒化処理装置の構成例]
図1は、本発明の窒化鋼部材の製造方法に用いられるバッチ型の窒化処理装置1の構成概略図である。
図1に示すように、バッチ型の窒化処理装置1は、搬入部11、加熱窒化室12、中間室13、冷却窒化室14、及び、搬出部15を備えている。搬入部11には、ケース20が置かれるようになっており、当該ケース20内に、被処理体(ワーク)としての鋼部材が収納されるようになっている。本実験形態においては、疲労試験に必要な12本の回転曲げ疲労試験片(図7参照)とともに、ダミー材として同じS45C鋼で表面積が約4m2となるようなダミー試験材が同挿された。
加熱窒化室12の入口側(図1において左側)には、開閉自在な扉21を有する入口フード22が取り付けられている。加熱窒化室12は、レトルト構造となっており、レトルト外周部がヒータ(不図示)で加熱されることで、炉内温度が所定の温度に制御されるようになっている。そして、加熱窒化室12内に、窒化処理のための複数種のガスが、後述するように制御されながら導入されるようになっている。
また、加熱窒化室12の天井には、加熱窒化室12内に導入されたガスを攪拌して鋼部材の加熱温度を均一化させるファン23が装着されている。そして、加熱窒化室12の出口側(図1において右側)には、開閉自在な中間扉24が取り付けられている。
中間扉24を介して、加熱窒化室12と中間室13とが連結されている。また、中間扉25を介して、中間室13と冷却窒化室14とが連結されている。
冷却窒化室14は、ヒータを有しておらず、加熱窒化室12で窒化された鋼部材を冷却しながら更に窒化するようになっている。すなわち、冷却窒化室14内に、更なる窒化処理のための複数種のガスが、後述するように制御されながら導入されるようになっている。冷却窒化室14の天井には、冷却窒化室14内に導入されたガスを攪拌して鋼部材の冷却窒化処理を均一化させるファン26が装着されている。また、冷却窒化室14の出口側(図1において右側)には、開閉自在な扉27を有する出口フード28が取り付けられている。
[ガスの導入例]
図2は、窒化処理装置1において採用され得るガス導入路の一例である。本例では、NH3ガス(アンモニアガス)と、AXガス(アンモニア分解ガス)と、N2ガス(窒素ガス)と、の3種類のガスが用いられる。
具体的には、NH3ガス供給源31から、マスフローコントローラ32及び開閉制御弁33を介して、加熱窒化室12にNH3ガスが供給されるようになっている。また、NH3ガス供給源31から、マスフローコントローラ34及び開閉制御弁35を介して、冷却窒化室14にNH3ガスが供給されるようになっている。
略同様に、AXガス供給源41から、マスフローコントローラ42及び開閉制御弁43を介して、加熱窒化室12にAXガスが供給されるようになっている。また、AXガス供給源41から、マスフローコントローラ44及び開閉制御弁45を介して、冷却窒化室14にAXガスが供給されるようになっている。
一方、本例では、N2ガスは、加熱窒化室12と冷却窒化室14とに同時に供給されることがない。従って、N2ガス供給源51に対してはマスフローコントローラ52は1つのみが設けられ、マスフローコントローラ52の下流側でガス導入路が分岐されて、開閉制御弁53を介して加熱窒化室12にN2ガスが供給されるようになっており、且つ、開閉制御弁55を介して冷却窒化室14にN2ガスが供給されるようになっている。
加熱窒化室12においては、NH3ガスの分圧P(NH3)またはH2ガスの分圧P(H2)が、雰囲気センサ12s(例えば熱伝導度式H2センサ(不図示))によって測定されるようになっている。そして、雰囲気センサ12sの測定値から演算される窒化ポテンシャルの値が目標とする窒化ポテンシャルの近傍範囲内となるように、ガス流量制御装置60によって、各ガスの導入量がフィードバック制御されるようになっている。具体的には、ガス流量制御装置60から出力される制御信号によって、マスフローコントローラ32及び開閉制御弁33並びにマスフローコントローラ42及び開閉制御弁43がフィードバック制御されるようになっている。
冷却窒化室14においては、雰囲気センサは設けられていない。ガス流量制御装置60は、予め定められた所定流量のガスを冷却窒化室14に供給するべく、マスフローコントローラ34及び開閉制御弁35並びにマスフローコントローラ44及び開閉制御弁45を制御するようになっている。
更に、ガス流量制御装置60は、加熱窒化室12または冷却窒化室14に対して所定流量のN2ガスを供給するべく、マスフローコントローラ52及び開閉制御弁53またはマスフローコントローラ52及び開閉制御弁55を制御するようになっている。
[バッチ型の窒化処理装置の動作例]
再び図1を参照して、以上のような構成の窒化処理装置1において、鋼部材が収納されたケース20が、プッシャー等により、搬入部11から加熱窒化室12内に搬入される。そして、鋼部材(が収納されたケース20)が加熱窒化室12内に搬入された後、加熱窒化室12内に処理ガスが導入され、当該処理ガスがヒータで所定の温度に加熱され、更にファン23(例えば1500rpmで回転する)で攪拌されながら、加熱窒化室12内に搬入された鋼部材の窒化処理が行われる。
図3は、図1の窒化処理装置1を用いた本発明の窒化鋼部材の製造方法の一実施形態の工程図である。
図3の例では、鋼部材(ワーク)が装入される前に、加熱窒化室12内が予め580℃に加熱される。また、この昇温工程時に、NH3ガスが160(L/min)の一定流量で導入される。
次いで、鋼部材(ワーク)が加熱窒化室12内に装入される。この時、扉21が開放されることにより、一時的に加熱窒化室12内の温度が低下する(図示は省略している)。その後、扉21が閉じられ、加熱窒化室12内の温度が再び580℃にまで加熱される。
このような鋼部材装入中においても、図3の例では、NH3ガスが160(L/min)の一定流量で導入される。
その後、図3の例では、2段階の加熱窒化処理が実施される。具体的には、まず、第1窒化ポテンシャルとして例えば5.0の値が採用され、580℃の温度下で第1の加熱窒化処理工程が実施される。
窒化ポテンシャルKNは、NH3ガスの分圧P(NH3)とH2ガスの分圧P(H2)とにより、以下の式で表されることが知られている。
N = P(NH3)/P(H23/2
第1の加熱窒化処理工程において、加熱窒化室12内のNH3ガスの分圧P(NH3)またはH2ガスの分圧P(H2)が雰囲気センサ12sによって測定され、当該測定値から演算される窒化ポテンシャルの値が目標とする第1窒化ポテンシャルの近傍範囲内となるように、NH3ガス及びAXガスの各々の導入量がフィードバック制御される。具体的には、N2ガスが定量で80(L/min)導入され、NH3ガス及びAXガスを合わせた合計流量160(L/min)という条件下で、各々増減される。
図3の例では、このような第1の加熱窒化処理工程は、120分間実施される。これにより、鋼部材に、ε相が主体の窒化化合物層が生成される。
引き続いて、第2窒化ポテンシャルとして例えば0.25の値が採用され、580℃の温度下で第2の加熱窒化処理工程が実施される。
第2の加熱窒化処理工程においても、加熱窒化室12内のNH3ガスの分圧P(NH3)またはH2ガスの分圧P(H2)が雰囲気センサ12sによって測定され、当該測定値から演算される窒化ポテンシャルの値が目標とする第2窒化ポテンシャルの近傍範囲内となるように、NH3ガス及びAXガスの各々の導入量がフィードバック制御される。具体的には、N2ガスは導入されないで、NH3ガス及びAXガスが、合計流量160(L/min)という条件下で、各々増減される。
図3の例では、このような第2の加熱窒化処理工程は、60分間実施される。これにより、窒化化合物層にγ’相が生成される。
第2の加熱窒化処理工程が終了すると、鋼部材(ワーク)が収納されたケース20が冷却窒化室14内に移送され、冷却窒化工程が行われる。図3の例では、冷却窒化工程は60分間行われる(自然冷却状態に曝され、400℃程度にまで冷却される。冷却窒化工程の時間は、被処理材の重量によって事前に決定される。)。この時、概ね第2窒化ポテンシャルに対応する流量比で、NH3ガス及びAXガスの導入が継続される。図3の例では、第2窒化ポテンシャルが0.25であるため、これに対応してNH3ガスの分圧P(NH3)=0.188、H2ガス(AXガス由来)の分圧P(H2)=0.813、が採用され、NH3ガスが30(L/min)でAXガスが130(L/min)という流量が採用される(この時、KNV=P(NH3)/P(H23/2は、第2窒化ポテンシャルの値(0.25)の±10%の範囲内の値となっている)。
冷却窒化工程が終了すると、単純冷却工程が120分間行われる。この時、N2ガスが160(L/min)の流量で供給される。ここで供給されるN2ガスは、冷却窒化室14と外部冷却装置(不図示)との間で循環されることで、N2ガス雰囲気下での冷却効率を高めるようになっている。
単純冷却工程が終了すると、鋼部材(ワーク)が収納されたケース20が搬出部15へと搬出される。
[実施例1~3及び比較例1~3]
母材として、JIS-S45Cの棒材(予め図7に示す形態に加工される)が採用され、加熱窒化処理(主処理工程)の窒化条件は、以下の表1の通り、2段階の窒化条件が採用された。いずれの窒化条件においても、加熱窒化室12内のNH3ガスの分圧P(NH3)またはH2ガスの分圧P(H2)が雰囲気センサ12sによって測定され、当該測定値から演算される窒化ポテンシャルの値が目標とする窒化ポテンシャルの近傍範囲内となるように、NH3ガス及びAXガスの各々の導入量がフィードバック制御された。
具体的には、第1工程では、N2ガスが定量で80(L/min)導入され、NH3ガス及びAXガスを合わせた合計流量160(L/min)という条件下で、各々増減され、第2工程では、N2ガスが導入されず、NH3ガス及びAXガスの合計流量160(L/min)という条件下で、各々増減された(図3参照)。

表1:実施例1~3及び比較例1~3で採用された加熱窒化処理の窒化条件
Figure 2023073674000002
実施例1の冷却窒化処理(冷却工程の前半工程)の窒化条件は、図3を用いて説明された通りの条件である。すなわち、窒化ポテンシャル0.25に対応させて、NH3ガスの分圧P(NH3)=0.188、H2ガス(AXガス由来)の分圧P(H2)=0.813、が採用され、NH3ガスが30(L/min)でAXガスが130(L/min)という流量が採用され、60分間の冷却窒化工程が実施された。そして、その後、単純冷却工程が120分間行われた。単純冷却工程時には、N2ガスが160(L/min)の流量で供給された。
実施例2の冷却窒化処理(冷却工程の前半工程)の窒化条件は、窒化ポテンシャル0.27に対応させて、NH3ガスの分圧P(NH3)=0.194、H2ガス(AXガス由来)の分圧P(H2)=0.806、が採用され、NH3ガスが31(L/min)でAXガスが129(L/min)という流量が採用され、60分間の冷却窒化工程が実施された。そして、その後、単純冷却工程が120分間行われた。単純冷却工程時には、N2ガスが160(L/min)の流量で供給された。
実施例3の冷却窒化処理(冷却工程の前半工程)の窒化条件は、窒化ポテンシャル0.4に対応させて、NH3ガスの分圧P(NH3)=0.256、H2ガス(AXガス由来)の分圧P(H2)=0.744、が採用され、NH3ガスが41(L/min)でAXガスが119(L/min)という流量が採用され、60分間の冷却窒化工程が実施された。そして、その後、単純冷却工程が120分間行われた。単純冷却工程時には、N2ガスが160(L/min)の流量で供給された。
一方、比較例1~3では、冷却窒化処理が実施されず、単純冷却工程のみが180分間行われ、N2ガスが160(L/min)の流量で供給された。
(XRD法による相の特定)
鋼材表面から、2θ-θ法によるX線回折測定(リガク製MiniFlex600、Co管、40kV-15mA)を行って得られたX線回折パターンに基づいて、相構造が同定された。実施例1~3では、γ’-Fe4Nのみ同定され、比較例1~3では、γ’-Fe4Nとα-Feとの2つの相が同定された。
(鋼材表面から0.05mmの深さ位置における断面硬さ)
マイクロビッカース硬さ試験機によって、鋼材表面から0.05mmの深さ位置における断面硬さが測定された。結果は、表2の通りであり、実施例1~3と比較例1~3とで優劣は認められなかった。

表2:実施例1~3及び比較例1~3の0.05mm位置断面硬さ(HV)
Figure 2023073674000003
(疲労限界)
次に、小野式回転曲げ疲労試験機を用いて、最大応力振幅制御、応力比(最小応力/最大応力)R=-1、回転数:3600rpm、にて疲労破断寿命を評価した。当該試験は、107回を最大繰り返し数とし、未破断の場合は試験を中断した。また、107回疲労強度を疲労限とした。結果は、表3の通りであり、実施例1~3の方が比較例1~3よりも優れていることが確認された。

表3:実施例1~3及び比較例1~3の疲労限界(MPa)
Figure 2023073674000004
[実施例4~6及び比較例4~6]
母材として、JIS-S45Cの棒材(予め図7に示す形態に加工される)が採用され、加熱窒化処理(主処理工程)の窒化条件は、以下の表4の通り、1段階の窒化条件が採用された。いずれの窒化条件においても、加熱窒化室12内のNH3ガスの分圧P(NH3)またはH2ガスの分圧P(H2)が雰囲気センサ12sによって測定され、当該測定値から演算される窒化ポテンシャルの値が目標とする窒化ポテンシャルの近傍範囲内となるように、NH3ガス及びAXガスの各々の導入量がフィードバック制御された。
具体的には、N2ガスは導入されず、NH3ガス及びAXガスの合計流量160(L/min)という条件下で、各々増減された。

表4:実施例4~6及び比較例4~6で採用された加熱窒化処理の窒化条件
Figure 2023073674000005
実施例4の冷却窒化処理(冷却工程の前半工程)の窒化条件は、窒化ポテンシャル0.12に対応させて、NH3ガスの分圧P(NH3)=0.1、H2ガス(AXガス由来)の分圧P(H2)=0.9、が採用され、NH3ガスが16(L/min)でAXガスが144(L/min)という流量が採用され、60分間の冷却窒化工程が実施された。そして、その後、単純冷却工程が120分間行われた。単純冷却工程時には、N2ガスが160(L/min)の流量で供給された。実施例4による窒化鋼部材の製造方法を図4に示す。
実施例5の冷却窒化処理(冷却工程の前半工程)の窒化条件は、窒化ポテンシャル0.13に対応させて、NH3ガスの分圧P(NH3)=0.113、H2ガス(AXガス由来)の分圧P(H2)=0.888、が採用され、NH3ガスが18(L/min)でAXガスが142(L/min)という流量が採用され、60分間の冷却窒化工程が実施された。そして、その後、単純冷却工程が120分間行われた。単純冷却工程時には、N2ガスが160(L/min)の流量で供給された。
実施例6の冷却窒化処理(冷却工程の前半工程)の窒化条件は、窒化ポテンシャル0.15に対応させて、NH3ガスの分圧P(NH3)=0.125、H2ガス(AXガス由来)の分圧P(H2)=0.875、が採用され、NH3ガスが20(L/min)でAXガスが140(L/min)という流量が採用され、60分間の冷却窒化工程が実施された。そして、その後、単純冷却工程が120分間行われた。単純冷却工程時には、N2ガスが160(L/min)の流量で供給された。
一方、比較例4~6では、冷却窒化処理が実施されず、単純冷却工程のみが180分間行われ、N2ガスが160(L/min)の流量で供給された。
(XRD法による相の特定)
鋼材表面から、2θ-θ法によるX線回折測定(リガク製MiniFlex600、Co管、40kV-15mA)を行って得られたX線回折パターンに基づいて、相構造が同定された。実施例4~6では、α-Feが同定され、比較例4~6でも、α-Feが同定された。
(鋼材表面から0.05mmの深さ位置における断面硬さ)
マイクロビッカース硬さ試験機によって、鋼材表面から0.05mmの深さ位置における断面硬さが測定された。結果は、表5の通りであり、実施例4~6の方が比較例4~6よりも優れていることが確認された。

表5:実施例4~6及び比較例4~6の0.05mm位置断面硬さ(HV)
Figure 2023073674000006
(疲労限界)
次に、小野式回転曲げ疲労試験機を用いて、最大応力振幅制御、応力比(最小応力/最大応力)R=-1、回転数:3600rpm、にて疲労破断寿命を評価した。当該試験は、107回を最大繰り返し数とし、未破断の場合は試験を中断した。また、107回疲労強度を疲労限とした。結果は、表6の通りであり、実施例4~6の方が比較例4~6よりも優れていることが確認された。

表6:実施例4~6及び比較例4~6の疲労限界(MPa)
Figure 2023073674000007
[ガスの他の導入例(軟窒化処理)]
図5は、窒化処理装置1を用いて軟窒化処理を実施する場合において採用され得るガス導入路の他の一例である。本例では、NH3ガス(アンモニアガス)と、AXガス(アンモニア分解ガス)と、N2ガス(窒素ガス)と、の3種類のガスに加えて、CO2ガス(炭酸ガス)が用いられる。
具体的には、図2に示したガス導入路に加えて、CO2ガス供給源71及びマスフローコントローラ72(1つのみ)が設けられ、マスフローコントローラ72の下流側でガス導入路が分岐されて、開閉制御弁73を介して加熱窒化室12にCO2ガスが供給されるようになっており、且つ、開閉制御弁75を介して冷却窒化室14にCO2ガスが供給されるようになっている。
ガス流量制御装置60は、加熱窒化室12または冷却窒化室14に対して所定流量のCO2ガスを供給するべく、マスフローコントローラ72及び開閉制御弁73またはマスフローコントローラ72及び開閉制御弁75をも制御するようになっている。
[軟窒化処理時のバッチ型の窒化処理装置の動作例]
軟窒化処理の場合も、図1に示す窒化処理装置1において、鋼部材が収納されたケース20が、プッシャー等により、搬入部11から加熱窒化室12内に搬入される。そして、鋼部材(が収納されたケース20)が加熱窒化室12内に搬入された後、加熱窒化室12内に処理ガスが導入され、当該処理ガスがヒータで所定の温度に加熱され、更にファン23(例えば1500rpmで回転する)で攪拌されながら、加熱窒化室12内に搬入された鋼部材の軟窒化処理が行われる。
図6は、図1の窒化処理装置1を用いた本発明の窒化鋼部材の製造方法の他の一実施形態の工程図である。
図6の例では、鋼部材(ワーク)が装入される前に、加熱窒化室12内が予め580℃に加熱される。また、この昇温工程時に、NH3ガスが160(L/min)の一定流量で導入される。
次いで、鋼部材(ワーク)が加熱窒化室12内に装入される。この時、扉21が開放されることにより、一時的に加熱窒化室12内の温度が低下する(図示は省略している)。その後、扉21が閉じられ、加熱窒化室12内の温度が再び580℃にまで加熱される。本実験形態においては、鋼部材(ワーク)として、摩耗試験に必要な5個のディスク型試験片(S45C、φ25×6.9mm)とともに、ダミー材として同じS45C鋼で表面積が約4m2となるようなダミー試験材が同挿された。
このような鋼部材装入中においても、図6の例では、NH3ガスが160(L/min)の一定流量で導入される。
その後、図6の例では、1段階の加熱軟窒化処理が実施される。具体的には、窒化ポテンシャルとして例えば5.0の値が採用され、580℃の温度下で加熱軟窒化処理工程が実施される。
加熱軟窒化処理工程において、加熱窒化室12内のNH3ガスの分圧P(NH3)またはH2ガスの分圧P(H2)が雰囲気センサ12sによって測定され、当該測定値から演算される窒化ポテンシャルの値が目標とする窒化ポテンシャルの近傍範囲内となるように、NH3ガス及びAXガスの各々の導入量がフィードバック制御される。具体的には、N2ガスが定量で72(L/min)導入され、CO2ガスが定量で8(L/min)導入され、NH3ガス及びAXガスを合わせた合計流量160(L/min)という条件下で、各々増減される。
図6の例では、このような加熱軟窒化処理工程は、120分間実施される。これにより、鋼部材に、ε相が主体の窒化化合物層が生成される。
加熱軟窒化処理工程(主処理工程)が終了すると、鋼部材(ワーク)が収納されたケース20が冷却窒化室14内に移送され、冷却軟窒化工程(冷却工程の前半工程)が行われる。図6の例では、冷却軟窒化工程は60分間行われる(自然冷却状態に曝され、400℃程度にまで冷却される)。この時、加熱軟窒化処理工程の目標窒化ポテンシャルに対応する流量比で、NH3ガス及びAXガスの導入が継続される。図6の例では、加熱軟窒化処理工程の目標窒化ポテンシャルが5.0であるため、これに対応してNH3ガスの分圧P(NH3)=0.338、H2ガス(AXガス由来)の分圧P(H2)=0.163、が採用され、N2ガスが72(L/min)でCO2ガスが8(L/min)であって、NH3ガスが54(L/min)でAXガスが26(L/min)という流量が採用される(この時、KNV=P(NH3)/P(H23/2は、加熱軟窒化処理工程の目標窒化ポテンシャルの値(5.0)の±10%の範囲内の値となっている)。
冷却軟窒化工程が終了すると、単純冷却工程が120分間行われる。この時、N2ガスが160(L/min)の流量で供給される。ここで供給されるN2ガスは、冷却窒化室14と外部冷却装置(不図示)との間で循環されることで、N2ガス雰囲気下での冷却効率を高めるようになっている。
単純冷却工程が終了すると、鋼部材(ワーク)が収納されたケース20が搬出部15へと搬出される。
[実施例7~9及び比較例7~9]
母材として、JIS-S45Cのφ25×6.9mmの円形材(ディスク)が採用され、加熱軟窒化処理(主処理工程)の窒化条件は、以下の表7の通り、1段階の窒化条件が採用された。いずれの窒化条件においても、加熱窒化室12内のNH3ガスの分圧P(NH3)またはH2ガスの分圧P(H2)が雰囲気センサ12sによって測定され、当該測定値から演算される窒化ポテンシャルの値が目標とする窒化ポテンシャルの近傍範囲内となるように、NH3ガス及びAXガスの各々の導入量がフィードバック制御された。
具体的には、N2ガスが定量で72(L/min)導入され、CO2ガスが定量で8(L/min)導入され、NH3ガス及びAXガスを合わせた合計流量160(L/min)という条件下で、各々増減された(図6参照)。

表7:実施例7~9及び比較例7~9で採用された加熱窒化処理の窒化条件
Figure 2023073674000008
実施例7の冷却軟窒化処理(冷却工程の前半工程)の窒化条件は、図6を用いて説明された通りの条件である。すなわち、窒化ポテンシャル5.0に対応させて、NH3ガスの分圧P(NH3)=0.338、H2ガス(AXガス由来)の分圧P(H2)=0.163、が採用され、N2ガスが72(L/min)でCO2ガスが8(L/min)であって、NH3ガスが54(L/min)でAXガスが26(L/min)という流量が採用され、60分間の冷却窒化工程が実施された。そして、その後、単純冷却工程が120分間行われた。単純冷却工程時には、N2ガスが160(L/min)の流量で供給された。
実施例8の冷却軟窒化処理(冷却工程の前半工程)の窒化条件も、窒化ポテンシャル5.0に対応させて、H3ガスの分圧P(NH3)=0.338、H2ガス(AXガス由来)の分圧P(H2)=0.163、が採用され、N2ガスが72(L/min)でCO2ガスが8(L/min)であって、NH3ガスが54(L/min)でAXガスが26(L/min)という流量が採用され、60分間の冷却窒化工程が実施された。そして、その後、単純冷却工程が120分間行われた。単純冷却工程時には、N2ガスが160(L/min)の流量で供給された。
実施例6の冷却軟窒化処理(冷却工程の前半工程)の窒化条件は、窒化ポテンシャル6.0に対応させて、NH3ガスの分圧P(NH3)=0.35、H2ガス(AXガス由来)の分圧P(H2)=0.15、が採用され、N2ガスが72(L/min)でCO2ガスが8(L/min)であって、NH3ガスが56(L/min)でAXガスが24(L/min)という流量が採用され、60分間の冷却窒化工程が実施された。そして、その後、単純冷却工程が120分間行われた。単純冷却工程時には、N2ガスが160(L/min)の流量で供給された。
一方、比較例7~9では、冷却窒化処理が実施されず、単純冷却工程のみが180分間行われ、N2ガスが160(L/min)の流量で供給された。
(XRD法による相の特定)
鋼材表面から、2θ-θ法によるX線回折測定(リガク製MiniFlex600、Co管、40kV-15mA)を行って得られたX線回折パターンに基づいて、相構造が同定された。実施例7~9では、ε-Fe2-3Nのみ同定され、比較例7~9では、γ’-Fe4Nとε-Fe2-3Nとの2種類の相が同定された。すなわち、実施例7~9では、γ’相が形成されていることが確認された。これにより、実施例7~9では、耐疲労性が改善されていると考えられる。
(鋼材表面から0.05mmの深さ位置における断面硬さ)
マイクロビッカース硬さ試験機によって、鋼材表面から0.05mmの深さ位置における断面硬さが測定された。結果は、表8の通りであり、実施例7~9と比較例7~9とで優劣は認められなかった。

表8:実施例7~9及び比較例7~9の0.05mm位置断面硬さ(HV)
Figure 2023073674000009
(耐摩耗性)
「Optimol Instruments Prueftechnik GmbH」製の「5型SRV」試験機を用いて、ボールオンディスク型摩擦摩耗試験が実施された。当該試験の詳細条件は、以下の表9に示す通りである。

表9:ボールオンディスク型摩擦摩耗試験の詳細条件
Figure 2023073674000010
ボールオンディスク型摩擦摩耗試験の後、摺動部中央について断面の最大摩耗深さを、レーザ顕微鏡を用いて正確に測定した。結果は、表10の通りであり、実施例7~9の方が比較例7~9よりも優れていることが確認された。

表10:実施例7~9及び比較例7~9の最大摩耗量(μm)
Figure 2023073674000011
1 窒化処理装置
11 搬入部
12 加熱窒化室
12s 雰囲気センサ
13 中間室
14 冷却窒化室
15 搬出部
20 ケース
21 扉
22 入口フード
23 ファン
24 中間扉
25 中間扉
26 ファン
27 扉
28 出口フード
31 NH3ガス供給源
32 マスフローコントローラ
33 開閉制御弁
34 マスフローコントローラ
35 開閉制御弁
41 AXガス供給源
42 マスフローコントローラ
43 開閉制御弁
44 マスフローコントローラ
45 開閉制御弁
51 N2ガス供給源
52 マスフローコントローラ
53 開閉制御弁
55 開閉制御弁
60 ガス流量制御装置
71 CO2ガス供給源
72 マスフローコントローラ
73 開閉制御弁
75 開閉制御弁

Claims (10)

  1. 被処理品の表面硬化処理としてガス窒化処理またはガス軟窒化処理を行う表面硬化処理方法であって、
    所定温度に加熱された第1処理室内にて被処理品のガス窒化処理またはガス軟窒化処理を行う主処理工程と、
    前記第1処理室内でガス窒化処理またはガス軟窒化処理を施された前記被処理品を、前記第1処理室とは異なる第2処理室に移載する工程と、
    前記第2処理室内に前記被処理品が収容された状態で前記被処理品を冷却する冷却工程と、
    を備え、
    前記冷却工程の少なくとも前半工程において、前記第2処理室内にアンモニアと水素とが所定の一定の比率で導入される
    ことを特徴とする表面硬化処理方法。
  2. 前記所定温度は、500℃を上回る温度であり、
    前記冷却工程の少なくとも前半工程は、前記被処理品の温度が500℃以下となるまでの工程を含む
    ことを特徴とする請求項1に記載の表面硬化処理方法。
  3. 前記冷却工程の少なくとも前半工程において、前記第2処理室内にアンモニアと水素と他のガスとが所定の一定の比率で導入される
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の表面硬化処理方法。
  4. 前記冷却工程の少なくとも前半工程において、前記第2処理室内に導入されるアンモニアガス導入量をf(NH3)、水素ガス導入量をf(H2)、導入ガスの総流量をf(T)とし、P(NH3)=f(NH3)/f(T)、P(H2)=f(H2)/f(T)として定義されるKNV=P(NH3)/P(H23/2が、前記主処理工程の目標窒化ポテンシャルの値の±10%の範囲内の値とされる
    ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の表面硬化処理方法。
  5. 前記主処理工程は、時系列的に複数の目標窒化ポテンシャルに基づいて制御されるようになっており、
    前記冷却工程の少なくとも前半工程において、前記第2処理室内に導入されるアンモニアガス導入量をf(NH3)、水素ガス導入量をf(H2)、導入ガスの総流量をf(T)とし、P(NH3)=f(NH3)/f(T)、P(H2)=f(H2)/f(T)として定義されるKNV=P(NH3)/P(H23/2が、前記主処理工程の最後の目標窒化ポテンシャルの値の±10%の範囲内の値とされる
    ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の表面硬化処理方法。
  6. 被処理品の表面硬化処理としてガス窒化処理またはガス軟窒化処理を行う表面硬化処理装置であって、
    被処理品のガス窒化処理またはガス軟窒化処理を行うべく所定温度に加熱されるようになっている第1処理室と、
    前記第1処理室内でガス窒化処理またはガス軟窒化処理を施された前記被処理品を冷却するようになっている、前記第1処理室とは別個に設けられた第2処理室と、
    を備え、
    前記第2処理室内に、アンモニアと水素とが所定の一定の比率で導入されるようになっている
    ことを特徴とする表面硬化処理装置。
  7. 前記所定温度は、500℃を上回る温度であり、
    少なくとも前記被処理品の冷却が開始されてから前記被処理品の温度が500℃以下となるまでの期間、前記第2処理室内にアンモニアと水素とが所定の一定の比率で導入されるようになっている
    ことを特徴とする請求項6に記載の表面硬化処理装置。
  8. 前記第2処理室内に、アンモニアと水素と他のガスとが所定の一定の比率で導入されるようになっている
    ことを特徴とする請求項6または7に記載の表面硬化処理装置。
  9. 前記第2処理室内に導入されるアンモニアガス導入量をf(NH3)、水素ガス導入量をf(H2)、導入ガスの総流量をf(T)とし、P(NH3)=f(NH3)/f(T)、P(H2)=f(H2)/f(T)として定義されるKNV=P(NH3)/P(H23/2が、前記第1処理室内におけるガス窒化処理またはガス軟窒化処理の目標窒化ポテンシャルの値の±10%の範囲内の値とされる
    ことを特徴とする請求項6乃至8のいずれかに記載の表面硬化処理装置。
  10. 前記第1処理室内におけるガス窒化処理またはガス軟窒化処理は、時系列的に複数の目標窒化ポテンシャルに基づいて制御されるようになっており、
    前記第2処理室内に導入されるアンモニアガス導入量をf(NH3)、水素ガス導入量をf(H2)、導入ガスの総流量をf(T)とし、P(NH3)=f(NH3)/f(T)、P(H2)=f(H2)/f(T)として定義されるKNV=P(NH3)/P(H23/2が、前記第1処理室内におけるガス窒化処理またはガス軟窒化処理の最後の目標窒化ポテンシャルの値の±10%の範囲内の値とされる
    ことを特徴とする請求項6乃至8のいずれかに記載の表面硬化処理装置。
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