JP2010053431A - 真空浸炭処理方法および真空浸炭処理装置 - Google Patents

真空浸炭処理方法および真空浸炭処理装置 Download PDF

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Abstract

【課題】被処理物の硬度や靱性を充分に向上させ得る真空浸炭処理方法および真空浸炭処理装置を提供する。
【解決手段】本発明の真空浸炭処理方法は、加熱室内の被処理物を所定の温度にまで昇温させる昇温工程と、被処理物の温度が前記所定の温度に到達した状態で、被処理物を収容した加熱室内を極低圧雰囲気まで減圧した状態から浸炭用ガスを加熱室内に供給することにより被処理物を浸炭させる浸炭工程と、浸炭工程の後、浸炭用ガスの供給を停止して浸炭用ガスの構成元素である炭素を被処理物の表面から内部へ拡散させる拡散工程と、拡散工程の後、被処理物を冷却する冷却工程と、を備え、浸炭工程と拡散工程とを交互に複数回繰り返すことを特徴とする。
【選択図】図4

Description

本発明は、真空浸炭処理方法および真空浸炭処理装置に関し、特に高合金鋼に用いて好適な真空浸炭処理方法および真空浸炭処理装置に関するものである。
高合金鋼の表面硬化法は、焼入れ、焼戻し等の調質が一般的である。また、それ以上の硬度が必要とされる場合には、窒化処理、PVDコーティング処理等の表面処理が行われることがある。ところが、これらの方法は、母材の組織に対して異質物を付着させる方法であるため、剥離等の問題があった。これに対して、真空浸炭処理は、母材自体を強化させる処理であるため、剥離の心配が少ない方法である。
真空浸炭処理は、金属製の被処理物の表層部に浸炭させて焼入れすることにより表層部の硬度を高める浸炭処理の一つである。真空浸炭処理には、下記の特許文献1や特許文献2に記載のものがある。
特許文献1に示す真空浸炭処理は、被処理物を加熱室において極低圧状態で所定温度に加熱し、加熱室内にアセチレン等の浸炭用ガスを装入して被処理物に浸炭させた後、浸炭用ガスの供給を停止し、再び加熱室内を極低圧状態にすることにより被処理物の表面近くの炭素を内部へ拡散させ、焼入れ温度まで降温させてから油冷するものである。
特許文献2に示す真空浸炭処理は、被処理物の表面(特に角部)の過剰な浸炭を改善するために、特許文献1のような真空浸炭処理における拡散の初期で、炉(特許文献1における加熱室と同等)内に脱炭性ガスを導入し、被処理物の表面のセメンタイトを減少又は除去するものである。
また、特許文献3には、プラズマ浸炭法の一つが開示されている。
特開平8−325701号公報 特開2004−115893号公報 特開平10−158780号公報
しかしながら、上記の特許文献1〜3に記載の方法では、母材への炭素の含有量が充分でなく、所望の硬度が得られない虞があった。また、表面硬化層が浅く、靱性の改善が不充分であるという問題があった。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、被処理物の硬度や靱性を充分に向上させ得る真空浸炭処理方法および真空浸炭処理装置を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明の真空浸炭処理方法は、加熱室内の被処理物を所定の温度にまで昇温させる昇温工程と、前記被処理物の温度が前記所定の温度に到達した状態で、前記被処理物を収容した前記加熱室内を極低圧雰囲気まで減圧した状態から浸炭用ガスを前記加熱室内に供給することにより前記被処理物を浸炭させる浸炭工程と、前記浸炭工程の後、前記浸炭用ガスの供給を停止して前記浸炭用ガスの構成元素である炭素を前記被処理物の表面から内部へ拡散させる拡散工程と、前記拡散工程の後、前記被処理物を冷却する冷却工程と、を備え、前記浸炭工程と前記拡散工程とを交互に複数回繰り返すことを特徴とする。
本発明の真空浸炭処理方法において、質量%で、C:0.31%〜0.6%、Si:0.1%〜0.6%、Mn:0.3%〜1.0%、Ni:0.05%〜0.6%、Cr:3.0%〜5.0%未満、MoまたはWのいずれか1種または2種をMo当量(Mo+1/2W):0.8%〜4.0%、VまたはNbのいずれか1種または2種をV当量(V+1/2Nb):0.5%〜1.5%、残部がFeおよび不可避的不純物からなる高合金鋼を前記被処理物とすることが望ましい。
あるいは、質量%で、C:0.8%〜1.6%、Si:0.4%以下、Mn:0.6%以下、P:0.03%以下、S:0.03%以下、Cr:8.0%〜13.0%、Mo:0.8%〜2.0%、V:0.2%〜0.5%、Cu:0.25%未満、Ni:0.5%以下の高炭素材鋼を前記被処理物とすることが望ましい。
本発明の真空浸炭処理方法において、複数回繰り返したうちの最後の前記拡散工程の全てもしくは一部において、窒素ガス雰囲気下で処理を行うようにしても良い。
また、前記浸炭工程と前記拡散工程とを交互に複数回繰り返し、冷却工程を経た後、前記被処理物を再度加熱する再加熱工程をさらに備えてもよい。
さらに、前記再加熱工程が、前記被処理物を所定の温度まで昇温させる昇温工程と、前記被処理物を前記所定の温度に保持する保持工程と、を含み、前記保持工程の全てもしくは一部において、窒素ガス雰囲気下で処理を行うようにしても良い。
本発明の第1の真空浸炭処理装置は、加熱器を有する加熱室と、冷却器を有する冷却室と、前記加熱室内の被処理物が所定の温度に到達した状態で、前記被処理物を収容した前記加熱室内を極低圧雰囲気まで減圧した状態から浸炭用ガスを前記加熱室内に供給することにより前記被処理物を浸炭させ、前記浸炭用ガスの供給を停止して前記浸炭用ガスの構成元素である炭素を前記被処理物の表面から内部へ拡散させ、前記浸炭と前記拡散とを交互に複数回繰り返した後、前記冷却室内で前記被処理物を冷却するように、前記加熱室および前記冷却室を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
本発明の第2の真空浸炭処理装置は、加熱器および冷却器を有する加熱室と、前記加熱室内の被処理物が所定の温度に到達した状態で、前記被処理物を収容した前記加熱室内を極低圧雰囲気まで減圧した状態から浸炭用ガスを前記加熱室内に供給することにより前記被処理物を浸炭させ、前記浸炭用ガスの供給を停止して前記浸炭用ガスの構成元素である炭素を前記被処理物の表面から内部へ拡散させ、前記浸炭と前記拡散とを交互に複数回繰り返した後、前記加熱室内で前記被処理物を冷却するように、前記加熱室を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
一般に、単純に1回の浸炭処理のみを行った場合、被処理物の母材内に主たる構成元素である鉄(Fe)以外に炭素(C)等の親和力の強い元素が含まれるため、固溶化が生じやすく、表面のみに炭素が溜まりやすい傾向がある。これに対して、本発明の真空浸炭処理方法によれば、浸炭工程と拡散工程とを交互に複数回繰り返すことによって、第1回目の浸炭工程で被処理物の表面に浸入した炭素が次の拡散工程で被処理物内部に拡散し、第2回目の浸炭工程で再度表面から炭素が補給され、表面の炭素濃度が上昇した後、その炭素が次の拡散工程で被処理物内部に拡散する。このとき、第2回目の拡散工程において、第1回目の浸炭工程で被処理物中に浸入した炭素は2回の拡散処理を受けるため、さらに被処理物内部へと拡散していく。このような挙動が複数回繰り返される。
すなわち、本発明の真空浸炭処理方法によれば、浸炭工程と拡散工程のセットを複数回繰り返すことによって、各回の浸炭工程で被処理物の表面から炭素が補給されつつ、各回の拡散工程で炭素が被処理物の表面から内部へと移動する。これにより、被処理物中の炭素濃度プロファイルは全体的に濃度が上昇する方向に移動しながら、勾配がなだらかになっていく。その結果、被処理物の母材への炭素含有量のレベルを維持しながら、表面硬化層を深く形成できるため、表面剥離を生じさせることなく、硬度や靱性に優れた被処理物を得ることができる。
また、被処理物として上記組成を有する高合金鋼を用いた場合、炭素以外の添加元素により、炭素の拡散を阻害しない、焼入れ性、靱性が向上する、微細な炭化物を析出させる等の作用が得られるため、本発明の被処理物として好ましい。
また、最後の拡散工程や再加熱工程中の保持工程の全てもしくは一部において、窒素ガス雰囲気下で処理を行った場合、被処理物の表面に窒化クロム等の窒化物が形成されるため、表面硬度や耐摩耗性を向上させることができる。
また、浸炭工程と拡散工程とを交互に複数回繰り返し、冷却工程を経た後、被処理物の再加熱を行った場合には、被処理物中の炭素濃度勾配をよりなだらかにすることができ、被処理物の靱性を向上させることができる。
本発明の第1、第2の真空浸炭処理装置によれば、上記本発明の真空浸炭処理方法と同様、浸炭工程と拡散工程を交互に複数回繰り返すように加熱室や冷却室が制御されているため、母材への炭素含有量を充分に大きくできるとともに、表面硬化層が深く形成でき、硬度や靱性に優れた被処理物を得ることができる。
以下、図面を参照して、本発明に係る真空浸炭処理装置および真空浸炭処理方法の一実施形態について説明する。
なお、以下の各図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
図1は、本実施形態の真空浸炭処理装置の構成を示した断面図である。
本実施形態の真空浸炭処理装置は、図1に示すように、ケース1、加熱室2および冷却室3を備え、加熱と冷却とを別室で行う2室型の装置である。ケース1は、略円筒形であって、軸線を水平にして設置され、軸線方向略中央で区切った一方に加熱室2が収納され、他方は冷却室3とされている。また、ケース1の軸線方向略中央部には、冷却室3の入口3aを開閉する扉11を昇降させることにより、冷却室3を開放状態または密閉状態とする開閉機構12が設けられている。
加熱室2は、断熱隔壁21、加熱器22、電源部23(図3に示す)、冷却器24および載置台25を備えている。ここで、図2は、加熱器22の形状を示す斜視図である。図3は、断熱隔壁21に対する加熱器22の取付構造および加熱器22と電源部23との電気的接続を示す模式図である。
断熱隔壁21は、図3に示すように、金属製の外郭21aとグラファイト製の内郭21bとの間に断熱材21cが介在されて形成されている。また、図1に示すように、断熱隔壁21の上面および下面には、それぞれ扉21d、21eが設けられている。
加熱器22は、図2に示すように、同型の3つのヒータH1〜H3から構成されている。各ヒータH1〜H3は、中空細軸部g1、中実細軸部g2、中実太軸部g3、コネクタc1〜c3、給電軸部mから構成されている。中空細軸部g1、中実細軸部g2および中実太軸部g3は、グラファイト製である。給電軸部mは、金属製である。
コネクタc1は、直方体状の形状をしており、長手方向に2等分したそれぞれの領域に1つずつ互いに逆向きの接続部a1、b1を備えており、中空細軸部g1と中実細軸部g2とを通電可能に接続する。コネクタc2は、2つの接続部a2、b2が互いに直交方向を向くようにL字型の形状をしており、中空細軸部g1同士を通電可能に接続する。コネクタc3は、2つの同方向を向く接続部a3、b3を離間させて連結したものであって、中空細軸部g1同士を通電可能に接続する。
中空細軸部g1は、4本で矩形を作るように配され、矩形の3つの角がコネクタc2により接続されている。上記矩形の残る1つの角を形成する2本の中空細軸部g1の各端部のうちの一方には、コネクタc1によって中実細軸部g2が接続され、他方はコネクタc3の接続部a3、b3の一方に取り付けられている。中実細軸部g2のコネクタc1に取り付けられた端部と逆側の端部は、中実太軸部g3の一端部に接続されており、中実太軸部g3の他端部には、給電軸部mが取り付けられている。
上記のような4本の中空細軸部g1、中実細軸部g2、中実太軸部g3、コネクタc1、3個のコネクタc2および給電軸部mからなる構成が、対をなし、コネクタc3によって接続されることにより、各ヒータH1〜H3が構成されている。
なお、中空細軸部g1、中実細軸部g2及び中実太軸部g3は、各々の断面積の差異によって発熱し易さを変えたものであって、中空細軸部g1、中実細軸部g2、中実太軸部g3の順に発熱し易く、中実太軸部g3は発熱しにくい。
図3に示すように、給電軸部mは中空であり、内部に冷却管tが収納されている。冷却管tには、通電による温度上昇を抑える冷却水が循環される。
ヒータH1〜H3は、断熱隔壁21の一部に設けられたヒータ支持部26によって支持されている。ヒータ支持部26は、セラミックス製であって、内径が中実太軸部g3の径よりも大きい略円筒形に形成されており、円筒の軸方向を断熱隔壁21の厚さ方向に平行に、各端部を断熱隔壁21の内側と外側とにそれぞれ位置させるように固定されている。断熱隔壁21の外側に位置する端部には、円筒の内径よりも小径である中実太軸部g3の径と同径の開口26aが設けられており、この開口26aに中実太軸部g3が嵌合されることにより、各ヒータH1〜H3が支持されている。
また、給電軸部mは、ケース1に設けられた開口1aからケース1外へ導出されている。開口1aと給電軸部mとの隙間は、シール材1bで塞がれることにより密閉されている。給電軸部mには、電源部23が接続されている。
電源部23は、電源23a、ブレーカ23b、サイリスタ23c、温度調節計23d、変圧器23e、抵抗器23fおよび電流計23gを有している。
電源23aは、ブレーカ23b、サイリスタ23cおよび変圧器23eを介して給電軸部mに接続されており、給電軸部mに電力を供給する。ブレーカ23bは、回路への負荷が許容範囲を超えたときに電力を遮断し、回路に過負荷がかかることを防止するものである。
サイリスタ23cは、温度調節計23dと協働して、ヒータH1〜H3の温度が所定温度に達するまで回路を導通状態にし、ヒータH1〜H3の温度が所定温度に達すると導通を解除する。変圧器23eは、電源23aから給電される電力の電圧を所定の値に変換する。
抵抗器23fおよび電流計23gは、変圧器23eと給電軸部mとの間の回路から分岐してアースされる回路の途中に配設されている。電流計23gは、地絡電流を測定する。
冷却器24は、図1に示すように、断熱隔壁21の上部に設けられており、熱交換器24aおよびファン24bを有している。熱交換器24aは、加熱室2で加熱された気体から熱を排除するものである。ファン24bは、加熱室2内およびケース1内の気体を循環させるものである。加熱室2内を冷却する際には、断熱隔壁21の扉21d、21eを開放して、加熱室2内およびケース1内の気体をファン24bで循環させながら熱交換器24aで冷却することにより、加熱室2内の温度及び加熱室2内の被処理物Wの温度を低下させる。
載置台25は、矩形のフレームと、複数本のローラとを有して構成されており、各ローラは、回転軸線をフレームの対向する2辺に平行に並列されて、フレームの他の2辺に両端を回転自在に支持されている。このような載置台25は、各ローラの回転軸線が搬送方向に直交するように設置されて、被処理物Wの移送を円滑にする。被処理物Wは、載置台25に載置されることにより、下面側からも均一に加熱される。
なお、真空状態では、温度が高いほど、蒸気圧が低い物質から順に蒸発するので、加熱室2内で高温に晒される上記各部は、1300℃程度まで加熱室2の温度を昇温させても蒸発しない物質で製作したものを用いる。
冷却室3は、被処理物Wを冷却するための部屋であって、冷却器31、整流板32および載置台33を備えている。
冷却器31は、熱交換器31aおよびファン31bを有している。熱交換器31aは、冷却室3内の気体から熱を排除するものである。ファン31bは、冷却室3内で気体を高圧で循環させるものである。
整流板32は、格子状に間仕切りされた格子箱とパンチングメタルとを組み合わせたものであって、冷却室3内の被処理物Wが載置される位置の上下に配設されて、冷却室3内の気体の流れ方向を整えるものである。載置台33は、加熱室2内に設置された載置台25と略同構造であって、かつ、載置台25と同じ高さに配置されている。
本実施形態の真空浸炭処理装置は、その他、図示を省略するが、加熱室2内、冷却室3内の温度、圧力、昇温速度、冷却速度、各工程の処理時間、各種ガス流量等の各種処理条件を制御する制御部(制御手段)を備えている。
次に、上記構成の真空浸炭処理装置で行う真空浸炭処理方法について、図4を参照して説明する。
図4は、各工程毎の処理時間と処理温度および圧力のプロファイルを示す図である。
ここでは、アルミダイカスト用金型に用いられる熱間金型用鋼(SKD61)もしくは高強度熱間金型用鋼を被処理物とした場合の一例を示す。
特に被処理物としては、質量%で、C:0.31%〜0.6%、Si:0.1%〜0.6%、Mn:0.3%〜1.0%、Ni:0.05%〜0.6%、Cr:3.0%〜5.0%未満、MoまたはWのいずれか1種または2種をMo当量(Mo+1/2W):0.8%〜4.0%、VまたはNbのいずれか1種または2種をV当量(V+1/2Nb):0.5%〜1.5%、残部がFeおよび不可避的不純物からなる高合金鋼を用いることが望ましい。
Cは、焼入れ焼戻しにより、十分なマトリックス硬度を付与するとともに、Cr、Mo、V、Nbなどと結合して炭化物を形成し、硬度、強度の向上に必要な元素である。ところが、0.31%未満ではその効果が十分に得られず、0.6%を超えると靱性や熱間加工性が低下して好ましくない。
Siは、製鋼時の脱酸剤として必要な元素である。ところが、0.1%未満ではその効果が十分に得られず、0.6%を超えると靱性を低下させ、浸炭時のCの拡散を阻害するため、好ましくない。
Niは、焼入れ性や靱性の向上に寄与する元素である。ところが、0.05%未満ではその効果が十分に得られず、0.6%を超えると被削性を低下させるため、好ましくない。
Crは、硬度や焼入れ性の向上に寄与する元素である。ところが、3.0%未満ではその効果が十分に得られず、5.0%以上であると凝固時に粗大炭化物が生成しやすくなるとともに、浸炭時に粒界炭化物を析出、成長しやすくなり、靱性を低下させるため、好ましくない。
MoおよびWは、単独または複合で添加することができ、焼戻し時に微細な炭化物を析出して軟化抵抗性、硬度、高温強度を向上させる元素である。また、浸炭時に微細炭化物を析出させ、耐摩耗性、耐溶損性を向上させ、微細炭化物が浸炭中の結晶粒の粗大化を抑制し、靱性の確保に寄与する。ところが、0.8%未満ではその効果が十分に得られず、4.0%を超えると焼戻し時に析出する微細炭化物が多くなり、靱性、熱間加工性を低下させるため、好ましくない。
VおよびNbは、単独または複合で添加することができ、焼入れ加熱時に基地に固溶し、焼戻し時に微細な凝集しにくい炭化物を析出し、高温域における軟化抵抗を大きくし、大きな高温強度を付与するとともに、結晶粒の粗大化を抑制し、靱性を確保する作用を有するものである。ところが、0.5%未満ではその効果が十分に得られず、1.5%を超えると靱性、熱間加工性を低下させるため、好ましくない。
本実施形態の真空浸炭処理は、図4に示すように、A:第1昇温工程、B:昇温間保持工程、C:第2昇温工程、D:浸炭前保持工程、E:第1浸炭工程、F:第1拡散工程、G:第2浸炭工程、H:第2拡散工程、I:冷却工程、の順に行う。
昇温、浸炭、拡散工程では、まず、被処理物Wを、加熱室2内のヒータH1〜H3で囲まれる位置に載置する。続いて、加熱室2から排気し、加熱室2内を減圧して真空状態(極低圧雰囲気)とする。ここで、一般的な真空浸炭処理において、「真空」とは大気圧の1/10程度の10kPa以下程度を指すが、本実施形態では1Pa以下を「真空」とした。
次いで、加熱器22に通電して、加熱室2内の温度を昇温させる(第1昇温工程)。1回の昇温工程で一気に目標とする温度(本実施形態では1030℃)まで昇温しても良いが、本実施形態では昇温工程を2回に分け、まずは一旦850℃まで加熱室2内を昇温する。昇温速度は10℃/分とする。
次いで、加熱室2内を850℃にした状態で40分間保持する(昇温間保持工程)。被処理物Wがある程度の熱容量を持っていても、この保持工程を設けることにより、被処理物Wの温度が加熱室2内の温度に十分に追従しやすくなる。その結果、次の浸炭前保持工程へ移行する際の温度が正確に制御できる。
次いで、加熱器22に通電して、加熱室2内の温度を850℃から目標とする1030℃まで昇温させる(第2昇温工程)。第2昇温工程も第1昇温工程と同様、昇温速度は10℃/分とする。
加熱室2内の温度が1030℃に到達したら、浸炭前保持工程へ移行する。
浸炭前保持工程では、加熱室2内の温度を第2昇温工程終了時の温度である1030℃で40分間保持する。この浸炭前保持工程を経ることにより、被処理物Wの温度が表面から内部まで1030℃に均一化される。
次いで、第1浸炭工程では、加熱室2内に例えばアセチレン等の浸炭用ガスを供給する。浸炭用ガスを供給する際のガス流量は例えば5L(リットル)/分とし、浸炭用ガスを加熱室2の両側面および下面から吹き込む。このとき、加熱室内の圧力は浸炭前保持工程での圧力から所定の圧力にまで上昇する。この第1浸炭工程において、被処理物Wは、加熱室2内の1030℃という高温の浸炭用ガス雰囲気に20分間晒されることにより、浸炭処理される。
次いで、第1拡散工程では、加熱室2内から浸炭用ガスを排気して、浸炭前保持工程までの圧力と同等の真空状態となるように制御する。そして、加熱室2内の温度を第1浸炭工程と同じ1030℃とし、200分間保持する。この第1拡散工程を経ることにより、被処理物Wの表面近傍に浸入した炭素が被処理物Wの表面から内部へと拡散される。
次いで、前の2工程と同様、加熱室2内に浸炭用ガスを供給して第2浸炭工程を行い、加熱室2内から浸炭用ガスを排気して第2拡散工程を行う。この間、加熱室2内の温度は1030℃に保持したままとする。加熱室2内の圧力は、第2浸炭工程は第1浸炭工程と同一、第2拡散工程は第1拡散工程と同一とする。第2浸炭工程での浸炭用ガス流量は第1浸炭工程と同一とする。また、処理時間は、第2浸炭工程は7分、第2拡散工程は85分とし、ともに第1浸炭工程、第1拡散工程よりも短くする。なお、他の処理条件が同じであれば、第1、第2浸炭工程の処理時間と第1、第2拡散工程の処理時間とによって表面炭素濃度、有効浸炭深さ、有効浸炭深さにおける炭素濃度が決まるため、各浸炭工程の処理時間と各拡散工程の処理時間は、所望の炭素濃度プロファイルに応じて適宜設定すればよい。
また、浸炭工程と拡散工程を複数回繰り返す場合、最後の拡散工程(本例で言えば第2拡散工程)の全てもしくは一部において、加熱室2内に窒素ガスを導入し、窒素ガス雰囲気下で拡散処理を行うようにしても良い。この場合、その拡散工程において被処理物Wが窒化処理される。被処理物Wの表面に窒化クロム層が生成されることによって、表面硬度および耐摩耗性が向上するという効果が得られる。
仮に浸炭工程と拡散工程を1回ずつしか行わない場合に上記の窒化処理を行うと、被処理物Wの表面に生成された窒化クロム層が高温処理/真空処理下に長時間置かれることとなり、窒化クロム層が変質してしまう虞がある。これに対して、浸炭工程と拡散工程を複数回繰り返す場合にその最後の工程で窒化処理を行えば、被処理物W表面の窒化クロム層が高温処理/真空処理下に長時間置かれるのを回避することができ、窒化クロム層の変質を防止することができる。
最後に、被処理物Wを冷却室3へ移送して、被処理物Wを1030℃の高温から常温まで冷却する(冷却工程)。本実施形態では、冷却室3内に不活性ガスである窒素ガスを上方から供給するとともに、冷却器31のファン31bにより例えば3bar程度の高圧で窒素ガスを循環させ、被処理物Wを強制冷却する。
以上の工程で本実施形態の真空浸炭処理は完了する。ただし、上記の冷却工程の後、図5に示すように、被処理物Wを再度加熱する再加熱工程を行っても良い。この例では、再加熱工程は、被処理物Wを昇温速度10℃/分で常温から850℃まで昇温した後(第1昇温工程)、850℃で40分間保持し(昇温間保持工程)、その後、昇温速度10℃/分で850℃から1030℃まで昇温(第2昇温工程)した後、1030℃で40分間保持する(保持工程)。このように、再加熱工程を追加することにより被処理物W中の炭素濃度勾配をなだらかにすることができ、被処理物Wの靱性をより向上させることができる。
(追加)
また、上記の再加熱工程を追加した場合には、最後の保持工程の全てもしくは一部において、上記と同様、窒素ガス雰囲気下で処理を行うようにしても良い。この場合、その保持工程において被処理物Wが窒化処理されるため、表面硬度や耐摩耗性が向上する、といった上記と同様の効果が得られる。
本実施形態の真空浸炭処理装置を用いた真空浸炭処理によれば、浸炭工程と拡散工程を交互に2回繰り返すことによって、各回の浸炭工程で被処理物Wの表面から炭素が補給されつつ、各回の拡散工程で炭素が被処理物Wの表面から内部へと移動する。これにより、被処理物W中の炭素濃度プロファイルは全体的に濃度が上昇する方向に移動しながら、勾配がなだらかになっていく。その結果、被処理物Wの母材への炭素含有量のレベルを全体的に維持しながら、表面硬化層を深く形成できるため、表面剥離を生じさせることなく、硬度や靱性に優れた被処理物を得ることができる。
本発明者は、浸炭工程と拡散工程を1回ずつのみ行う従来の方法と、本実施形態の方法とで被処理物中の炭素濃度プロファイルがどれ位異なるかをシミュレーションにより求めた。図6は、そのシミュレーション結果を示すグラフである。図6の横軸は被処理物の表面からの深さ(mm)、縦軸は炭素濃度(質量%)である。符号A1、A2で示す曲線は浸炭、拡散をそれぞれ1回ずつ行った従来の方法の炭素濃度プロファイルを示しており、符号A1は浸炭:40分、拡散:45分のサンプル、符号A2は浸炭:60分、拡散:300分のサンプルを示している。符号B1、B2で示す曲線は浸炭、拡散のセットを2回行った本実施形態の方法の炭素濃度プロファイルを示しており、符号B1は第1浸炭:20分、第1拡散:200分、第2浸炭:7分、第2拡散:85分のサンプル、符号B2はB1のサンプルの熱処理に再加熱工程を追加したサンプルを示している。上述した以外の条件は上記実施形態で示した通りとする。
図6に示すように、浸炭、拡散をそれぞれ1回ずつ行った従来のサンプルA1では、表面濃度こそ0.85%以上と高いものの、表面からの深さが深くなるに従って濃度が急激に低下し、深さ2mmの位置では0.4%以下にまで低下していることが判る。このため、この条件で処理した被処理物では、硬度や靱性の改善が十分でなく、炭素濃度が急激に変化している箇所で剥離が生じる虞がある。これに対して、浸炭、拡散を交互に2回行った本実施形態のサンプルB1では、表面濃度がサンプルA1より低いものの、0.7%程度のレベルを確保できていることに加え、濃度勾配がサンプルA1に比べて十分になだらかになっていることが判る。これにより、硬度や靱性が向上し、剥離の発生を抑えることができる。また、再加熱を追加したサンプルB2では、濃度勾配がサンプルB1に比べて更になだらかになっており、同等の効果を得ることができる。一方、従来のサンプルA2でも、サンプルB1、B2と同様のなだらかな濃度勾配が得られるが、浸炭:60分、拡散:300分という多大な処理時間が必要であり、生産性に劣るという欠点がある。
上記実施形態では、被処理物Wの材料として熱間金型用鋼(SKD61)や高強度熱間金型用鋼の例を挙げたが、その他、高炭素熱間金型用鋼であるSKD11を用いることもできる。SKD11は、質量%で、C:0.8%〜1.6%、Si:0.4%以下、Mn:0.6%以下、P:0.03%以下、S:0.03%以下、Cr:8.0%〜13.0%、Mo:0.8%〜2.0%、V:0.2%〜0.5%、Cu:0.25%未満、Ni:0.5%以下の各種元素から構成される。
このSKD11を用いる場合、効果を上げるために、通常の焼入れ温度(一般的に1025℃〜1050℃)よりも+50℃程度高い温度で処理することが望ましい。ところが、そのような温度で処理すると、Acm点(炭素固溶限界値)が大きくなり、表面の炭素濃度が上昇する一方、結晶粒度の肥大化が生じてしまう。この場合、再加熱工程が必須となる。すなわち、焼入れ後に一旦冷却し、再加熱後に一般的な焼入れ温度に保持し、急冷することによって、過昇温による結晶粒の肥大化は解消され、焼入れ組織が得られる。
SKD11のような高炭素材に浸炭処理を行う場合、表面付近の炭素濃度がすぐに飽和状態となり、一定量以上の炭素を浸炭させることができなくなってしまう。そこで、以下の手順を繰り返すことにより浸炭させる炭素の量を増やすことが可能となる。
(1)高炭素材に対して浸炭処理を行う(表面付近の炭素濃度が飽和状態となる)。
(2)拡散処理を行い、表面付近に浸炭した炭素を被処理材の内部まで拡散させる。これにより、被処理材表面の炭素濃度が飽和状態ではなくなる。
(3)被処理材表面の炭素濃度が飽和状態でなくなるため、もう一度浸炭処理を行うことにより、表面付近への浸炭が可能となる。
(4)以上の(1)〜(3)の工程を繰り返すことにより所望の量の炭素を浸炭させることができる。
なお、SKD61の場合は、「炭素の含有量が0.6%を超えると靱性や熱間加工性が低下して好ましくない」ことを述べた(段落[0032]参照)。これに対し、SKD11では、浸炭した炭素がCr、Mo、Vなどと結合して炭化物を形成し、硬度や強度が向上する。特にCrの含有量がSKD61よりも多いため、炭素の含有量が0.6%を超えていても問題はない。すなわち、「炭素の含有量が0.6%を超えると靱性や熱間加工性が低下して好ましくない」との記載は、SKD61特有の事情を述べたものである。
上記実施形態では、図1に示す2室型の真空浸炭処理装置を用いて説明したが、他の形態の真空浸炭処理装置を用いて、上記実施形態のように浸炭工程、拡散工程を交互に繰り返す真空浸炭処理を行うことも可能である。
図7は、真空浸炭処理装置の形態の例を示す模式図である。図7に示すように、真空浸炭処理装置の形態には、上記実施形態の2室型の他、単室型、連続型、搬送装置別体型等がある。
単室型は、冷却専用室なしで加熱室のみで構成され、加熱室内に冷却器を備えた形態である。単室型は、冷却器が加熱室内にあるため、温度低下速度が遅いので、焼入れ性のよい鋼材が処理対象材料であるとき、利用可能である。
連続型は、多数の被処理物Wを連続的に真空浸炭処理する場合に用いる形態で、予熱室、第1加熱室、第2加熱室および冷却室を備えている。第2加熱室には、冷却器が備えられている。このような連続型では、例えば、予熱室で予熱(昇温)工程を行い、第1加熱室で浸炭前保持工程、浸炭工程および拡散工程を行い、第2加熱室で焼ならし工程、再加熱工程および焼入れ前保持工程を行い、冷却室で焼入れ工程を行うという手順で真空浸炭処理を行う。被処理物Wが工程の進行に伴って処理室を順次移動していくので、多数の被処理物Wの真空浸炭処理を次々と進めることができる。
搬送装置別体型は、上記実施形態の加熱室2と冷却室3とを同一のケース1内に設けず別体とし、更に両処理室間を移動する被処理物Wを搬送する搬送装置を設けたものである。真空浸炭処理の各工程は、上記実施形態と同様に、予熱工程〜焼入れ前保持工程までを加熱室で行い、焼入れ工程を冷却室で行う。
ここで、加熱室は、1台に限らず複数台設置してもよい。真空浸炭処理において、冷却室を要する時間よりも加熱室を要する時間の方が長いので、加熱室と冷却室との台数が1:1であると冷却室の空き時間が長くなる。ところが、加熱室を被処理物の数に応じて増設し、冷却室へ複数の加熱室から順次被処理物が搬送されるようにすることにより、冷却室の空き時間を減らし、冷却室を有効に活用できる。その場合、効率良く真空浸炭処理を行うことができる。なお、複数台の加熱室を設ける場合にはそのうち少なくとも1台を冷却器付きとし、その他の加熱器は冷却器無しとしてもよい。
搬送装置別体型の例としては、図示したものの他に、主容器および準備室を更に備えるものが考えられる。主容器は、例えば円筒形の密閉容器であって、この円筒形の主容器の外周面に放射状に、1乃至複数の加熱室、冷却室および準備室が連結され、主容器内に搬送装置が収納される。搬送装置は、加熱室、冷却室および準備室のいずれかと連結される位置の間で主容器内を回転する。
このような真空浸炭処理装置においては、準備室に被処理物を入れると、搬送装置が準備室から加熱室へ被処理物を搬送し、また、加熱室から冷却室へ被処理物を搬送し、冷却室から準備室へ被処理物を搬送する。そして、準備室から被処理物を取り出せばよい。
上記真空浸炭処理装置によれば、被処理物は各室間を搬送される際は常に主容器内を通るので、被処理物が準備室に入れられてから真空浸炭処理を施されて準備室から取り出されるまで確実に外気に触れないようにすることができる。また、被処理物が加熱室や冷却室内に装入されている間に、別の処理物を準備室から出し入れすることができるので、複数個の被処理物の真空浸炭処理にあたって、真空浸炭処理装置の各室を有効に活用することができる。
なお、上記主容器の形状は一例であって、主容器は、搬送装置を収納するとともに加熱室、冷却室および準備室が連結されたものであればよい。
さらに、搬送装置を加熱器及び/又は冷却器付きのものにすることにより、被処理物の温度を管理しながら加熱室と冷却室との間を搬送することができる。また、被処理物の搬送にあたって加熱室あるいは冷却室と搬送装置とを連通させる際、搬送装置の加熱器(あるいは冷却器)により、加熱室内の温度(あるいは冷却室内の温度)と搬送装置内の温度とを同程度に合わせることができる。そして、搬送装置の冷却器によって、真空浸炭処理後の被処理物を常温まで冷却することができる。
なお、図8に示すように、加熱器22の構成要素として、対流加熱用ファンFと対流加熱用ファンFを回転駆動するモータMとをさらに設けてもよい。対流加熱用ファンFおよびモータMは、ガス対流装置を構成する。
このような構成において、例えば昇温工程のように低温状態から昇温させる際に、加熱室2に不活性ガスを装入して被処理物Wを不活性雰囲気下におき、モータMにより対流加熱用ファンFを回転駆動させながらヒータH1〜H3に通電して発熱させることにより、被処理物Wを素早く均一に昇温させることができる。
また、上記実施形態では、高圧の気体を循環させて被処理物Wを冷却する冷却器31としたが、実施にあたっては、冷却器は、油冷により被処理物Wを冷却するものであってもよい。
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば上記実施形態では浸炭工程と拡散工程を交互に2回繰り返したが、3回以上繰り返しても良い。このとき、各浸炭工程、各拡散工程の処理時間は同じでも異なっていても良く、目標とする濃度プロファイルが得られるように適宜設定することができる。
本発明の一実施形態の真空浸炭処理装置の構成を示した断面図である。 同真空浸炭処理装置における加熱器の形状を示す斜視図である。 同真空浸炭処理装置における断熱隔壁に対する加熱器の取付構造及び加熱器と電源部との電気的接続を示す模式図である。 各工程毎の処理時間と処理温度及び圧力のプロファイルを示す図である。 再加熱工程の処理時間と処理温度及び圧力のプロファイルを示す図である。 被処理物中の炭素濃度プロファイルのシミュレーション結果を示す図である。 本発明の一実施形態における真空浸炭処理装置の他の形態の例を示す模式図である。 他の実施形態における真空浸炭処理装置の構成を示した断面図である。
符号の説明
1…ケース、11…扉、12…開閉機構、1a…開口、1b…シール材、2…加熱室、21…断熱隔壁、21a…外郭、21b…内郭、21c…断熱材、21d、21e…扉、22…加熱器、H1〜H3…ヒータ、g1…中空細軸部、g2…中実細軸部、g3…中実太軸部、m…給電軸部、t…冷却管、c1〜c3…コネクタ、a1、b1、a2、b2、a3、b3…接続部、23…電源部、23a…電源、23b…ブレーカ、23c…サイリスタ、23d…温度調節計、23e…変圧器、23f…抵抗器、23g…電流計、 24…冷却器、24a…熱交換器、24b…ファン、25…載置台、26…ヒータ支持部、26a…開口、3…冷却室、3a…入口、31…冷却器、31a…熱交換器、31b…ファン、32…整流板、33…載置台、W…被処理物、F…対流加熱用ファン、M…モータ。

Claims (8)

  1. 加熱室内の被処理物を所定の温度にまで昇温させる昇温工程と、
    前記被処理物の温度が前記所定の温度に到達した状態で、前記被処理物を収容した前記加熱室内を極低圧雰囲気まで減圧した状態から浸炭用ガスを前記加熱室内に供給することにより前記被処理物を浸炭させる浸炭工程と、
    前記浸炭工程の後、前記浸炭用ガスの供給を停止して前記浸炭用ガスの構成元素である炭素を前記被処理物の表面から内部へ拡散させる拡散工程と、
    前記拡散工程の後、前記被処理物を冷却する冷却工程と、を備え、
    前記浸炭工程と前記拡散工程とを交互に複数回繰り返すことを特徴とする真空浸炭処理方法。
  2. 質量%で、C:0.31%〜0.6%、Si:0.1%〜0.6%、Mn:0.3%〜1.0%、Ni:0.05%〜0.6%、Cr:3.0%〜5.0%未満、MoまたはWのいずれか1種または2種をMo当量(Mo+1/2W):0.8%〜4.0%、VまたはNbのいずれか1種または2種をV当量(V+1/2Nb):0.5%〜1.5%、残部がFeおよび不可避的不純物からなる高合金鋼を前記被処理物とすることを特徴とする請求項1に記載の真空浸炭処理方法。
  3. 質量%で、C:0.8%〜1.6%、Si:0.4%以下、Mn:0.6%以下、P:0.03%以下、S:0.03%以下、Cr:8.0%〜13.0%、Mo:0.8%〜2.0%、V:0.2%〜0.5%、Cu:0.25%未満、Ni:0.5%以下の高炭素材鋼を前記被処理物とすることを特徴とする請求項1に記載の真空浸炭処理方法。
  4. 複数回繰り返したうちの最後の前記拡散工程の全てもしくは一部において、窒素ガス雰囲気下で処理を行うことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の真空浸炭処理方法。
  5. 前記浸炭工程と前記拡散工程とを交互に複数回繰り返し、冷却工程を経た後、前記被処理物を再度加熱する再加熱工程をさらに備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の真空浸炭処理方法。
  6. 前記再加熱工程が、前記被処理物を所定の温度まで昇温させる昇温工程と、前記被処理物を前記所定の温度に保持する保持工程と、を含み、前記保持工程の全てもしくは一部において、窒素ガス雰囲気下で処理を行うことを特徴とする請求項5に記載の真空浸炭処理方法。
  7. 加熱器を有する加熱室と、
    冷却器を有する冷却室と、
    前記加熱室内の被処理物が所定の温度に到達した状態で、前記被処理物を収容した前記加熱室内を極低圧雰囲気まで減圧した状態から浸炭用ガスを前記加熱室内に供給することにより前記被処理物を浸炭させ、前記浸炭用ガスの供給を停止して前記浸炭用ガスの構成元素である炭素を前記被処理物の表面から内部へ拡散させ、前記浸炭と前記拡散とを交互に複数回繰り返した後、前記冷却室内で前記被処理物を冷却するように、前記加熱室および前記冷却室を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする真空浸炭処理装置。
  8. 加熱器および冷却器を有する加熱室と、
    前記加熱室内の被処理物が所定の温度に到達した状態で、前記被処理物を収容した前記加熱室内を極低圧雰囲気まで減圧した状態から浸炭用ガスを前記加熱室内に供給することにより前記被処理物を浸炭させ、前記浸炭用ガスの供給を停止して前記浸炭用ガスの構成元素である炭素を前記被処理物の表面から内部へ拡散させ、前記浸炭と前記拡散とを交互に複数回繰り返した後、前記加熱室内で前記被処理物を冷却するように、前記加熱室を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする真空浸炭処理装置。
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