JP2020007603A - 浸炭焼入れ装置および浸炭焼入れ方法 - Google Patents
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Description
このため、例えば、加熱源に近い部品と加熱源から遠い部品との間では、加熱速度に差が生じるため、結晶粒の成長時間にも差が生じ、得られる複数の部品間で、変形量が大きくばらついた。
また例えば、1つの部品においても、加熱源に近い面と加熱源から遠い面との間では、加熱速度に差が生じ、結晶粒の成長時間にも差が生じ、変形量が異なるため、結果として、得られる部品の中で、発生する熱処理ひずみが大きくなり変形量が大きくなった。
鋼鉄からなる部品の浸炭焼入れ装置であって、
前記浸炭焼入れ装置は複数の前記部品を載置および搬送するためのトレイを含み、
前記トレイは、前記複数の部品と加熱源との間に、前記加熱源からの輻射熱を遮蔽する遮蔽板を有する、浸炭焼入れ装置に関する。
鋼鉄からなる部品の浸炭焼入れ方法であって、
複数の前記部品を載置および搬送するためのトレイを用い、
前記トレイは、前記複数の部品と加熱源との間に、前記加熱源からの輻射熱を遮蔽する遮蔽板を有する、浸炭焼入れ方法に関する。
本発明の浸炭焼入れ装置および浸炭焼入れ方法では、浸炭炉を利用して量産化を行っても、同時に処理される複数の部品間および個々の部品における加熱源に近い面と遠い面との間で、熱処理変形量の差が大きくなることを、より十分に防止できる。その結果として、得られる複数の部品間における寸法精度の低下を、より十分に防止することができる。
本発明の浸炭焼入れ装置および浸炭焼入れ方法では、浸炭焼入れに必要不可欠な既存の設備を利用して量産化を行うため、コスト性能により十分に優れている。
以下の組成の肌焼き鋼(SCR420相当材)からなる同一形状の複数のギヤシャフト(ギヤが一体的に設けられたシャフト;鍛造品)(以下、単に「部品」という)に浸炭焼入れを行った。この素材のオーステナイト化温度Tosは800℃であった。部品の積載高さhは280mmであった。
組成:
C:0.13〜0.18%,Si:0.15〜0.35%,Mn:0.6〜0.85%,P:0.03%以下,S:0.03%以下,Cr:0.9〜1.2%。
トレイ1による複数の部品の搬送は、図3Aに示すように、1つのトレイ1あたり20個の部品2を載置した3つのトレイを連続的に進行させることにより行った。遮蔽板10は、板厚5mmのオーステナイト系ステンレス板を用いた。遮蔽板10の高さHは、トレイにおける部品の積載高さhに対して1.1×hの高さであった。トレイ1は平面視において矩形格子形状を有しており、当該格子形状を構成する材料の平面視厚みt1は15mm、側面視厚みt2は40mmであった。トレイ1の構成する材料はオーステナイト系耐熱鋼であった。
連続ガス浸炭炉は、第3工程に対応する部分(ゾーン)において、トレイの搬送方向の両側に加熱源を有していた。加熱源は、電気ヒーターであり、図3Dに示すように配置されていた。図3Dは、連続炉の輪切り断面であって、トレイ1の搬送方向Cの真正面から連続炉内部を見たときの模式的断面図であり、加熱源3、遮蔽板10およびトレイ1との配置関係を示す。
部品の表面温度をオーステナイト化温度以上の温度(950℃)に加熱して浸炭を行った。
第2工程(S2):
再オーステナイト化のため、部品温度を250℃程度まで冷却した。冷却は浸炭炉から抽出したトレイに窒素ガスを噴射することで実施し、その冷却時間は15分間であった。
第3工程(S3):
続いて冷却完了したトレイを別の連続浸炭炉へ再投入し、部品温度で830℃〜850℃を目標に加熱を行った。昇温時間は30分間であった。この時、連続炉の設定炉温は部品温度の目標値よりも高い870℃を設定している。より短時間で加熱が完了することを目的とした連続炉の運転方法である。なお炉内温度と部品温度が平衡に達する前、つまり目標温度近傍で連続炉の温度設定を変更した次のゾーンに進行する。次のゾーンでは焼入れに適した830℃に炉温を設定し、急速に加熱したことによる部品の温度ばらつきを均一にするため30分以上この設定炉温に保持した。
第4工程(S4):
第3工程で十分に均熱された部品を、トレイと共に焼入れ漕に投入し、焼入れを行った。焼入れのための冷却剤は塩浴剤を用いて行い、その設定温度は230℃であった。そのため、塩浴漕浸漬後は空冷によって常温まで冷却し焼入れが完了した。
図4Aに示すように、トレイに遮蔽板を設けることなく、1つのトレイあたり20個の部品を載置したこと以外、実施例と同様の方法により、複数の部品の浸炭焼入れを行った。
詳しくは、本発明の効果を明確に確認するために、同一材料および同一形状の部品を用いた。また、トレイへの遮蔽版を設けない一方で、積載位置と数は実施例からは変更せずに、図4Aに示した載置方法で、実施例と同じ図3Bのヒートパターンにて浸炭焼入れを行った。比較例で得られた部品の、後で詳述する評価結果を図4Bに示す。
図4Aに示すように、トレイに遮蔽板を設けることなく、1つのトレイあたり20個の部品を載置したこと、および第1工程の後に第4工程を行う図5Aに示すヒートパターンで浸炭焼入れを行ったこと以外、実施例と同様の方法により、複数の部品の浸炭焼入れを行った。
詳しくは、実施例と同一材料および同一形状の部品を用いた。また、トレイへの遮蔽版を設けない一方で、積載位置と数は実施例から変更せずに、図4Aに示した載置方法で、第1工程の後に第4工程を行う図5Aに示すヒートパターンで浸炭焼入れを行った。これは通常の浸炭焼入れである。参考例で得られた部品の、後で詳述する評価結果を図5Bに示す。
評価は、本発明による積載治具(すなわち、遮蔽板)を使って、焼入れ前に冷却と再加熱を行う浸炭焼入れ(実施例)、積載治具を使わずに実施例と同条件で行う浸炭焼入れ(比較例)および通常の浸炭焼入れ(参考例)の3条件の熱処理変形の量を比較することで行った。
詳しくは、評価は、評価対象の寸法について部品の有するギヤ部の歯筋(形状)のばらつきに基づいて行った。「歯筋のばらつき」は、ギヤ噛合い歯当たりに影響するギヤ歯の歯筋方向の形状が1つのギヤ個体の中でどれほどばらついているかを示す値のことであり、値が大きいほど、トランスミッションノイズの官能評価に悪影響があることを意味する。ただし、全ての評価値は実施例の「歯筋ばらつき」の最大値を基準として、これを100とした際の割合で表示している(図3C(実施例)、図4B(比較例)および図5B(参考例)参照)。
図3Cおよび図4Bより、遮蔽版を配置した効果によって熱処理変形による寸法精度は大きく改善することが確認できる。
図3Cおよび図5Bより、通常の浸炭焼入れ(参考例)と実施例は同様の寸法精度が得られるため、本発明が第2工程および第3工程に原因を持つ寸法精度の悪化を明確に抑制できていることを証明している。
実施例、比較例および参考例について「歯筋のばらつき」の平均値(Ave)および最大値(Max)を算出し、結果を表1に示した。積載治具(すなわち、遮蔽板)なしに、焼入れ前に冷却と再加熱を行った浸炭焼入れ(比較例)では、通常の浸炭焼入れ(参考例)より、1トレイで処理される部品のなかで最も寸法精度の悪い個体(Max)で比較すると、60%程度の悪化が起こった。本発明(実施例)では、このような悪化を防ぐことが可能であるだけでなく、最大値(Max)で10%程度の改善も可能であること示している。
また実施例では、比較例と同様に、第2工程において冷却した後、第3工程において再加熱を行っているので、実施例で得られる部品は、比較例で得られる部品と同程度の十分な強度を有していることが明らかである。
部品の形状変更および形質(材料)変更を行うことなく、部品の強度性能の向上の要望が生じた場合、本発明の浸炭焼入れ装置(方法)に基づいて、遮蔽板を備えたトレイの準備と、ヒートパターン設定の変更だけで、既存の浸炭焼入れ装置を利用して低コストで当該要望に応えることができる。
2:部品
3:加熱源
10:遮蔽板
Claims (14)
- 鋼鉄からなる部品の浸炭焼入れ装置であって、
前記浸炭焼入れ装置は複数の前記部品を載置および搬送するためのトレイを含み、
前記トレイは、前記複数の部品と加熱源との間に、前記加熱源からの輻射熱を遮蔽する遮蔽板を有する、浸炭焼入れ装置。 - 前記浸炭焼入れ装置は、前記複数の部品をオーステナイト化温度以上に加熱して浸炭処理を行う第1工程、オーステナイト化温度未満に冷却する第2工程、再度、オーステナイト化温度以上に加熱する第3工程、および焼入れ処理を行う第4工程を実施する装置であり、
前記トレイは少なくとも前記第3工程において前記複数の部品を載置および搬送するためのトレイである、請求項1に記載の浸炭焼入れ装置。 - 前記浸炭焼入れ装置は連続ガス浸炭炉を含み、
少なくとも前記第1工程、前記第2工程および前記第3工程は前記連続ガス浸炭炉内で実施される、請求項2に記載の浸炭焼入れ装置。 - 前記第3工程の加熱は電気ヒーター加熱炉による加熱である、請求項2または3に記載の浸炭焼入れ装置。
- 前記トレイは、該トレイに載置される前記複数の部品が平面視において前記遮蔽板により取り囲まれるように、前記遮蔽板を有している、請求項1〜4のいずれかに記載の浸炭焼入れ装置。
- 前記遮蔽板は、前記トレイに立設されており、かつ平面視において、閉じた形状または搬送方向とは反対方向に開いた形状を有している、請求項1〜5のいずれかに記載の浸炭焼入れ装置。
- 前記浸炭焼入れ装置は前記トレイを2つ以上含み、
前記浸炭焼入れ装置内において、前記2つ以上のトレイはそれぞれ、各トレイに載置された前記複数の部品を搬送する、請求項1〜6のいずれかに記載の浸炭焼入れ装置。 - 前記遮蔽板はオーステナイト系ステンレス材で構成されている、請求項1〜7のいずれかに記載の浸炭焼入れ装置。
- 前記鋼鉄は肌焼鋼である、請求項1〜8のいずれかに記載の浸炭焼入れ装置。
- 前記部品は自動車用部品である、請求項1〜9のいずれかに記載の浸炭焼入れ装置。
- 前記自動車用部品は動力伝達部品である、請求項10に記載の浸炭焼入れ装置。
- 前記動力伝達部品は手動変速機の最終減速駆動用ギヤシャフトである、請求項11に記載の浸炭焼入れ装置。
- 鋼鉄からなる部品の浸炭焼入れ方法であって、
複数の前記部品を載置および搬送するためのトレイを用い、
前記トレイは、前記複数の部品と加熱源との間に、前記加熱源からの輻射熱を遮蔽する遮蔽板を有する、浸炭焼入れ方法。 - 前記浸炭焼入れ方法は、前記複数の部品をオーステナイト化温度以上に加熱して浸炭処理を行う第1工程、オーステナイト化温度未満に冷却する第2工程、再度、オーステナイト化温度以上に加熱する第3工程、および焼入れ処理を行う第4工程を含み、
前記トレイは少なくとも前記第3工程において前記複数の部品を載置および搬送するためのトレイである、請求項13に記載の浸炭焼入れ方法。
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