JP2018150628A - 窒化用鋼 - Google Patents
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また、適正量のC、TiやMoなどを含有させて、更にベイナイトを主体とする組織に粒径が10nm未満の微細析出物を分散させた「軟窒化用鋼」が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
更に、適正量のC、CrやMoなどを含有させた「疲労強度の優れた迅速窒化用鋼」が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
また、特許文献3の実施例に記載の鋼では、C含有量が0.24%以上のため、芯部硬さが高くなって、被削性が不十分な場合があった。
(b)窒化処理による表層部の硬さの増加、及び硬化層深さの向上のために、窒化前にTiはマトリックス中に固溶しているか、微細な炭化物、炭窒化物として析出しておく必要がある。このため、CおよびTiの含有量の上限は、窒化用鋼を製造する過程において鋳造後に行う、熱間圧延や熱間鍛造などの高温での加熱を伴う工程において溶解できる量とするとよい。具体的には、高温での加熱を伴う工程における一般的な加熱温度である1200〜1250℃で、溶解できるC量とTi量を上限にするとよい。
(c)V、Tiに、Moを組み合わせると硬化層深さが浅くなる。
(d)窒化処理による表層部硬さの増加と、硬化層深さの向上に最も適した組織は、ベイナイト組織である。ベイナイト組織において、窒化処理を施す前の硬さが過剰に高くならないように、C量をあまり高くしない。また、ベイナイト組織を得やすくするために、Mn含有量を高めるのはよい。
C:0.04〜0.14%、
Si:0.02〜0.50%、
Mn:1.0〜2.0%、
Cr:0.8〜2.0%、
V:0.10〜0.30%、
Ti:0.02〜0.20%、
Al:0.01〜0.05%、
S:0.005〜0.05%
を含有し、
更に、B:0.0012〜0.003%とNb:0.01〜0.10%の1種または2種を含有し、
Mo:0.04%以下、
P:0.03%以下、
N:0.010%以下、
O(酸素):0.002%以下
に制限し、残部はFe及び不純物からなることを特徴とする浸炭焼入れ処理を施すことなく用いられる窒化用鋼。
[2]表層部のHv硬さが730以上であって、Hv硬さ400以上である硬化層深さが0.30mm以上である窒化部品に用いられる[1]に記載の浸炭焼入れ処理を施すことなく用いられる窒化用鋼。
[3]質量%で、
C:0.04〜0.14%、
Si:0.02〜0.50%、
Mn:1.0〜2.0%、
Cr:0.8〜2.0%、
V:0.10〜0.30%、
Ti:0.02〜0.20%、
Al:0.01〜0.05%、
S:0.005〜0.05%
を含有し、
更に、B:0.0012〜0.003%とNb:0.01〜0.10%の1種または2種を含有し、
Mo:0.04%以下、
P:0.03%以下、
N:0.010%以下、
O(酸素):0.002%以下
に制限し、残部はFe及び不純物からなることを特徴とする浸炭処理または浸炭窒化処理を施すことなく用いられる窒化用鋼。
(A)化学組成
C:0.04〜0.14%
Cは、窒化処理前の硬さ確保のために、必須の元素である。また、Cは、窒化処理の温度域でV及びTiと結合して炭化物を形成して、部品芯部の硬さの向上によって、硬化層深さを増加させるために必須の元素である。しかし、その含有量が0.04%未満では、他の要件を満たしていても窒化処理後に所望の硬化層深さ(後述の方法で窒化処理した場合に、Hv硬さが400以上となる深さが0.30mm以上)が得られなくなる。一方、Cの含有量が0.14%を超えると、他の要件を満たしていても窒化処理前に所望の硬さ(270以下のHv硬さ)にすることが困難で、切削加工性が大きく低下する。したがって、Cの含有量を0.04〜0.14%とした。
なお、Cの含有量が0.11%以下であると、窒化処理前のHv硬さが240以下になりやすくなる。したがって、Cの含有量の上限は0.11%以下にすることが好ましい。
また、Cの含有量が0.06%以上であると、窒化処理による硬化層深さをより一層向上させることができる。したがって、Cの含有量は0.06%以上であることが好ましい。
Siは、焼入れ性及び疲労強度を高める作用を有する。この効果を得るためには、Siは0.02%以上の含有量とする必要がある。一方、Siの含有量が0.50%を上回ると、切削加工性の低下が顕著になる。したがって、Siの含有量を0.02〜0.50%とした。なお、切削加工性がより重視される場合には、Siの含有量の上限を0.25%以下にすることが好ましい。また、Siの含有量は、焼入れ性及び疲労強度をより一層高めるために、0.15%以上とすることが好ましい。
Mnは、焼入れ性を高めて、ベイナイト組織を得やすくする作用を有する。しかしながら、その含有量が1.0%未満では、一般的な冷却方法である大気中での放冷や、空気による風冷でベイナイトを主体とする組織を得ることが難しい。このため、窒化処理後に所望の硬化層深さが得られなくなる。一方、Mnの含有量が2.0%を超えると、切削加工性の低下が顕著になる。したがって、Mnの含有量を1.0〜2.0%とした。なお、切削加工性がより重視される場合には、Mnの含有量の上限を1.6%以下にすることが好ましい。また、Mnの含有量は、より一層ベイナイト組織を得やすくするために、1.2%以上とすることが好ましい。
Crは、焼入れ性を高めるとともに窒化処理による表層部の硬さを増加させる効果が大きい。しかし、Crの含有量が0.8%未満では、他の要件を満たしていても窒化処理後に所望の表層部硬さ(後述の方法で窒化処理した場合に、表面から50μmの位置のHv硬さが730以上)が得られなくなる。一方、Crの含有量が2.0%を超えると、硬化層深さの低下が顕著になる。したがって、Crの含有量を0.8〜2.0%とした。なお、硬化層深さがより重視される場合には、Crの含有量の上限を1.5%以下にすることが好ましい。また、Crの含有量が1.0%以上であると、窒化処理を行うことにより表層部の硬さを増加させる効果が、より一層向上する。したがって、Crの含有量は1.0%以上であることが好ましい。
Vは、窒化処理時に表層部ではNと結合して窒化物を形成し、内部ではCと結合して炭化物を形成し、表層部の硬さの増加と、硬化層深さの向上のために必須の元素である。特に同時にTiを含有する場合にその効果が大きくなる。しかし、その含有量が0.10%未満では他の要件を満たしていても、所望の表層部硬さや硬化層深さを確保できない。一方、Vの含有量が0.30%を超えると、窒化処理前に所望の硬さにすることが困難で、切削加工性が大きく低下する。したがって、Vの含有量を0.10〜0.30%とした。
なお、Vの含有量が0.15%以上であれば、窒化処理後に表層部硬さ(表面から50μmの位置のHv硬さ)が750以上となるので、Vの含有量の下限は0.15%以上が好ましい。一方、Vの含有量が0.25%以下であると、窒化処理前のHv硬さが240以下になりやすくなる。このため、Vの含有量の上限を0.25%以下にすることが好ましい。
Tiは、窒化処理時に表層部ではNと結合して窒化物を形成し、内部ではCと結合して炭化物を形成し、表層部の硬さの増加と、硬化層深さの向上のために必須の元素である。
特にTiと同時にVを含有する場合に、その効果が大きくなる。しかし、Tiの含有量が0.02%未満では、他の要件を満たしていても、所望の表層部硬さや硬化層深さを確保できない。一方、Tiの含有量が0.20%を超えると、窒化処理前に所望の硬さにすることが困難で、切削加工性が大きく低下する。したがって、Tiの含有量を0.02〜0.20%とした。なお、Tiの含有量が0.05%以上であれば、窒化処理後に表層部硬さ(表面から50μmの位置のHv硬さ)が750以上となるので、Tiの含有量の下限は0.05%以上が好ましい。一方、Tiの含有量が0.15%以下であると、窒化処理前のHv硬さが240以下になりやすくなる。このため、Tiの含有量の上限を0.15%以下にすることが好ましい。
Alは、脱酸作用を有する元素であり、鋼中の酸素量低減のために必要である。しかし、Al含有量が0.01%未満ではこの効果が得難い。一方で、Alは硬質な酸化物系介在物を形成しやすい。特に、Al含有量が0.05%を超えると、粗大な酸化物系介在物の形成が著しくなるので疲労強度の低下が顕著になる。したがって、Alの含有量を0.01〜0.05%とした。より好ましいAlの含有量の上限は0.04%以下である。また、Alの含有量は、鋼中の酸素量低減のために0.02%以上とすることが好ましい。
Sは、Mnと結合してMnSを形成し、切削加工性を向上させる作用を有する。しかし、その含有量が0.005%未満では、前記の効果が得難い。一方、Sの含有量が多くなると、粗大なMnSが生成しやすくなる。特に、S含有量が0.05%を超えると、疲労強度の低下が顕著になる。したがって、Sの含有量を0.005〜0.05%とした。Sの含有量は、切削加工性を向上させるために、0.015%以上とすることが好ましい。
また、Sの含有量は、粗大なMnSの生成による疲労強度の低下をより効果的に抑制するため0.03%以下とすることが好ましい。
Mo:0.04%以下
Vおよび/またはTiを、Moとともに含有すると、窒化処理時に表層部の硬さ増加量が小さくなってしまう。VおよびTiを含有する鋼にMoが含まれていることによる影響は、Mo含有量が0.04%を超えると顕著になる。したがって、Moの含有量を0.04%以下に制限する。Moの含有量は、VおよびTiによる表層部の硬さの増加効果を抑制しないように、0.03%未満とすることが好ましい。
Pは、粒界に偏析して粒界を脆化させやすい元素で、疲労強度を低下させてしまう。特に、Pの含有量が0.03%を超えると、疲労強度の低下が著しくなる。したがって、不純物中のPの含有量を0.03%以下とし、0.02%以下にすることが好ましい。なお、不純物中のPの含有量はできる限り少なくすることが望ましいが、製鋼でのコストが増大する。
Nは、Tiと結合してTiNを形成しやすく、凝固時には粗大なTiNが生成しやすい。粗大なTiNが存在すると、疲労強度を低下させてしまう。特に、Nの含有量が0.010%を超えると、粗大なTiNを形成しやすくなって、疲労強度の低下が顕著になる。
したがって、不純物中のNの含有量を0.010%以下とし、0.007%以下にすることが好ましい。なお不純物中のNの含有量はできるだけ少なくすることが望ましいが、製鋼でのコストが増大する。
Oは、Alなどと結合して硬質な酸化物系介在物を形成しやすく、Oの含有量が多くなると、疲労強度を低下させてしまう。特に、O含有量が0.002%を超えると、粗大な酸化物系介在物の形成が著しくなるので疲労強度の低下が顕著になる。したがって、Oの含有量を0.002%以下とし、0.001%以下にすることが好ましい。なお不純物中のOの含有量はできるだけ少なくすることが望ましいが、製鋼でのコストが増大する。
B:0.0003〜0.003%
Bの添加は任意である。添加すれば、鋼中にフリーな状態で存在して焼き入れ性を高める効果を有するため、MnやCrなどの合金元素の含有量を低減することができる。この効果を得るためには、Bは0.0003%以上の含有量とすることが好ましい。一方、Bを、0.003%を超えて含有しても前記の効果は飽和し、コストが嵩むだけである。したがって、Bの含有量を0.0003〜0.003%とした。Bの含有量は、より一層、焼き入れ性を向上させるために、0.0008%以上とすることがより好ましい。
Nbの添加は任意である。添加すれば、窒化処理時に表層部ではNと結合して窒化物を形成し、内部ではCと結合して炭化物を形成し、VとTiによる表層部硬さの増加と、硬化層深さの向上を補完できる。この効果を確実に得るには、Nbは0.01%以上の含有量にする必要がある。しかし、Nbの含有量が0.10%を超えてもその効果は飽和し、コストが嵩むだけである。したがって、Nbの含有量を0.01〜0.10%とした。Nbの含有量は、より一層の表層部の硬さの増加と硬化層深さの向上のために0.02%以上とすることがより好ましい。また、Nbの含有量は、0.07%以下であることがより好ましい。
本実施形態の窒化用鋼を製造するには、まず、上記の化学成分を有する溶鋼を鋳造して鋳片あるいはインゴットとする。次いで、鋳片あるいはインゴットに、熱間圧延および/または熱間鍛造を行なって窒化用鋼とする。その後、窒化用鋼を所定の形状に加工して粗成型品とする。そして、窒化用鋼からなる粗成型品を窒化処理して窒化部品とする。
得られた熱間圧延材を用いて、熱間鍛造、冷間鍛造、切削加工、研削加工によって部品形状に粗成型する。溶鋼を鋳造してインゴットとし、これを熱間鍛造して粗成型してもよい。必要に応じて、これらの工程の間に熱処理を行う場合がある。
窒化処理は、ガス窒化、ガス軟窒化、プラズマ窒化、プラズマ軟窒化、塩浴窒化などの何れでもよい。また、窒化処理の温度、雰囲気、処理時間などの条件は、窒化部品において要求される表層部の硬さと硬化層深さなどに応じて適宜決定でき、特に限定されない。
例えば、窒化処理を行うことにより、表層部のHv硬さ730以上であって、Hv硬さ400以上である硬化層深さが0.30mm以上である窒化部品を製造する場合には、560〜590℃の温度、アンモニア、水素および窒素を含む雰囲気中で5〜6時間のガス窒化を行うことが好ましい。
なお、本発明の窒化用鋼を用いて、窒化部品を得る方法は、これに限られるものではない。
得られた直径15mmの棒鋼を、熱間鍛造方向に垂直な方向で長さ10mmに切断した後、その切断面を鏡面研磨して、試験力98.07Nで10点ずつHv硬さを測定した。
各10点の平均値をその試験片の窒化前のHv硬さ(窒化前硬さ)とした。
また硬化層深さは、横軸を表面からの距離、縦軸をHv硬さにして、各3点の測定データの平均値をプロットして、各プロットを直線で結んだ時に、Hvが400となる深さとした。
各試験片の窒化前硬さ、表層部硬さ、硬化層深さの結果を表1に示す。
(イ)窒化前のHv硬さが270以下、望ましくは240以下。
(ロ)窒化後の表層部のHv硬さが730以上、望ましくは750以上。
(ハ)硬化層深さは、590℃で5時間の窒化処理時間の場合で、0.30mm以上。
試験番号6は、C含有量が多いため、窒化前硬さが高すぎるものであった。
試験番号9は、Cr含有量が少ないため、表層部硬さが低いものであった。
試験番号10は、Cr含有量が多いため、硬化層深さが浅いものであった。
試験番号11は、V含有量が少ないため、表層部硬さが低く、硬化層深さが浅いものであった。
試験番号15は、V含有量が多いため、窒化前硬さが高すぎるものであった。
試験番号16は、Ti含有量が少ないため、表層部硬さが低く、硬化層深さが浅いものであった。
試験番号17は、Ti含有量が少ないため、硬化層深さが浅いものであった。
試験番号20は、Ti含有量が多いため、窒化前硬さが高すぎるものであった。
試験番号21は、V含有量が少ないため、硬化層深さが浅いものであった。
試験番号22は、Mo含有量が多く、V含有量が少ないため、表層部硬さが低く、硬化層深さが浅いものであった。
試験番号23〜25は、Mo含有量が多いため、表層部硬さが低いものであった。
試験番号26は、Mn含有量が少ないため、硬化層深さが浅いものであった。
それに対し、本発明で規定する条件をすべて満たす試験番号は、前記した(イ)〜(ハ)のすべての特性が目標とする値に達していることが明らかである。
Claims (3)
- 質量%で、
C:0.04〜0.14%、
Si:0.02〜0.50%、
Mn:1.0〜2.0%、
Cr:0.8〜2.0%、
V:0.10〜0.30%、
Ti:0.02〜0.20%、
Al:0.01〜0.05%、
S:0.005〜0.05%
を含有し、
更に、B:0.0012〜0.003%とNb:0.01〜0.10%の1種または2種を含有し、
Mo:0.04%以下、
P:0.03%以下、
N:0.010%以下、
O(酸素):0.002%以下
に制限し、残部はFe及び不純物からなることを特徴とする浸炭焼入れ処理を施すことなく用いられる窒化用鋼。 - 表層部のHv硬さが730以上であって、Hv硬さ400以上である硬化層深さが0.30mm以上である窒化部品に用いられる請求項1に記載の浸炭焼入れ処理を施すことなく用いられる窒化用鋼。
- 質量%で、
C:0.04〜0.14%、
Si:0.02〜0.50%、
Mn:1.0〜2.0%、
Cr:0.8〜2.0%、
V:0.10〜0.30%、
Ti:0.02〜0.20%、
Al:0.01〜0.05%、
S:0.005〜0.05%
を含有し、
更に、B:0.0012〜0.003%とNb:0.01〜0.10%の1種または2種を含有し、
Mo:0.04%以下、
P:0.03%以下、
N:0.010%以下、
O(酸素):0.002%以下
に制限し、残部はFe及び不純物からなることを特徴とする浸炭処理または浸炭窒化処理を施すことなく用いられる窒化用鋼。
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