JP4338951B2 - 可溶性多官能ビニル芳香族共重合体及びその重合方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐熱性、耐熱分解性、溶剤可溶性及び加工性が改善された可溶性多官能ビニル芳香族共重合体及びその重合方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
反応活性のある不飽和結合を有する単量体の多くは、不飽和結合を開裂し連鎖反応を起こす触媒と適切な反応条件を選択することにより多量体を生成することができる。一般に不飽和結合を有する単量体の種類は極めて多岐にわたることから、得られる樹脂の種類の豊富さも著しい。しかし、一般に高分子化合物と称する分子量10,000以上の高分子量体を得ることができる単量体の種類は比較的少ない。例えば、エチレン、置換エチレン、プロピレン、置換プロピレン、スチレン、アルキルスチレン、アルコキシスチレン、ノルボルネン、各種アクリルエステル、ブタジエン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、イソプレン、マレイン酸無水物、マレイミド、フマル酸エステル、アリル化合物等を代表的な単量体として挙げることができる。これらの単量体を単独で又はこれらを共重合させることにより多種多様な樹脂が合成されている。
【0003】
これらの樹脂の用途は主に、比較的安価な民生機器の分野に限られており、電子基板関連等のハイテク分野への適用は殆どない。その理由としては、耐熱性、耐熱分解性、溶剤可溶性或いは加工性が同時に達成できていないことが挙げられる。
【0004】
この様なビニル系ポリマーの欠点を解決する方法として、芳香族ジビニル化合物及び芳香族トリビニル化合物といった芳香族多官能ビニル化合物を極少量、上記のビニル系単量体に添加することにより強度等の樹脂特性の改良が行われている。例えば、特開平2−170806号公報(特許文献1)には、芳香族多官能ビニル化合物とスチレン系単量体を熱や開始剤で共重合させ、広い分子量分布を有するスチレン系重合体を得ることと、この重合体が高い衝撃強度を示すことが開示されている。しかし、ここに開示されている技術に従って重合転化率を高めると、芳香族多官能ビニル化合物による架橋反応が急速に起こるので、芳香族多官能ビニル化合物の多い場合には、樹脂のゲル化が生じ、加工性と外観が著しく損なわれる。従って、従来行われてきた芳香族多官能ビニル化合物による樹脂の改質は芳香族多官能ビニル化合物の添加量が50〜250ppmと低く抑えられてしまうために、芳香族多官能ビニル化合物による改質効果がハイテク分野への応用には十分なものではないという欠点があった。
【0005】
更に、特開2000-128908号公報(特許文献2)には芳香族多官能ビニル重合体に多官能連鎖移動剤を併用した分岐度が制御されたスチレン系重合体及びその製造方法が開示されているが、芳香族多官能ビニル重合体のスチレン系単量体に対する添加量は1〜700ppmでしかなかった。また、芳香族多官能ビニル化合物を多量に配合して重合させることによって得られる重合体は通常高度に架橋構造が発達し、加工性のない不溶・不融のゲル状重合体となることが多い。
【0006】
一方、高度に枝分かれ(分岐)した重合鎖からなる多分岐ポリマーは分子鎖の絡み合いが少なく、同程度の分子量の線状ポリマーと比較して粘度が低く、かつ、分岐へ反応性基を多数導入できるなど、高機能材料として注目をされてきている。特表2001−512752号公報(特許文献3)には単官能ビニル単量体:50〜99.9重量部と芳香族多官能ビニル化合物:0.1〜50重量部をラジカル重合開始剤の存在下、250〜400℃で重合を行う多分岐重合体の製造方法が開示されている。しかしながら、この実施例に開示されている結果を見ると、重合時に架橋反応が起き易いために、芳香族多官能ビニル化合物の添加量を6〜25%使用した場合に得られた重合体の分子量分布値は60以上と極めて大きな値を示している。従って、ここに開示されている技術では多官能ビニル化合物の添加量を大きくすることができないために、芳香族多官能ビニル化合物による改質効果がハイテク分野への応用には十分なものとはいえない。
【0007】
更に、米国特許第5767211号明細書(特許文献4)には2〜3官能ビニル化合物をアゾ系ラジカル重合開始剤及びコバルト系連鎖移動触媒の存在下に重合を行い架橋構造のない多分岐重合体を合成する製造方法が開示されている。しかしながら、この重合方法では分岐構造を生成させるのに、β−水素脱離を促進させる連鎖移動触媒を使用しているために、生成した重合体中の分岐構造の近傍に2重結合を持つ構造を有することになる。このため、生成した重合体の耐熱性を高めるための熱硬化操作を行っても、重合体の反応性が低いために耐熱性の改善効果が小さく、先端技術分野での応用には向かないという欠点があった。更に、この製造方法では連鎖移動反応は専らコバルト系連鎖移動触媒の連鎖移動能に頼っているために、多量の連鎖移動触媒を重合系中に添加する必要があり、そのため重合速度が著しく遅くなる、更に、重合体を回収する際に触媒の除去が困難になるなどの実用化する上での問題点があった。
【0008】
Makromol.Chem.、1978年、179巻、2069〜2073頁(非特許文献1)にはジ−iso−プロピルアミンとブチルリチウムを触媒としてジビニルベンゼンをアニオン重合させることによって、溶剤可溶性のジビニルベンゼン重合体が得られることが開示されている。しかしながら、これに開示されているジビニルベンゼン重合体はその主鎖骨格中にインダン構造を有しないために、耐熱性が十分ではなく、ハイテク分野に使用される材料としては特性が十分ではないという欠点があった。また、重合方法も重合時のビニル基の選択性が十分でないないためにゲル化が起こりやすく、モノマー濃度を高くすることができない、重合温度を0℃より高くすることができないといった工業的に実施する場合に問題のある方法であった。また、Makromol.Chem.、1988年、189巻、723〜731頁(非特許文献2)にはリチウムジ−iso−プロピルアミドを触媒としてジビニルベンゼンとスチレンをアニオン重合させることによって、溶剤可溶性のジビニルベンゼン−スチレン共重合体が得られることが開示されている。しかしながら、この共重合体はその主鎖骨格中にインダン構造を有しないために、耐熱性が十分ではなく、ハイテク分野に使用される材料としては特性が十分ではないという欠点があった。また、この重合方法も重合時のビニル基の選択性が十分でないないためにゲル化が起こりやすく、低いモノマー濃度において、0℃以下という低い重合温度で重合を行う必要があり、工業的に実施する場合に問題のある方法であった。
【0009】
Macromolecules、1980年、13巻、1350〜1354頁(非特許文献3)及びMacromolecules、1982年、15巻、1221〜1225頁(非特許文献4)には過塩素酸アセチルを触媒としてジビニルベンゼンをカチオン重合させることによって、溶剤可溶性のジビニルベンゼン重合体が得られることが開示されている。しかしながら、このジビニルベンゼン重合体はその主鎖骨格中にインダン構造を含有せず、かつ、式(a2)で表される構造のみからなる重合体であるために、耐熱性が低く、ハイテク分野に使用される材料としては特性が十分ではないという欠点があった。
従って、これらの上記の従来技術からは芳香族2官能ビニル化合物に由来する構造単位を高濃度に含有する共重合体が上記の従来技術の種々の問題点を解決し、ハイテク分野で使用される材料が得られることは想像だにし得なかった。
【0010】
【特許文献1】
特開平2−170806号公報
【特許文献2】
特開2000‐128908号公報
【特許文献3】
特表2001−512752号公報
【特許文献4】
米国特許第5767211号明細書
【非特許文献1】
Makromol. Chem.、,1978年、179巻、2069〜2073頁
【非特許文献2】
Makromol.Chem.、1988年、189巻,723〜731頁
【非特許文献3】
Macromolecules、1980年、13巻、1350〜1354頁
【非特許文献4】
Macromolecules、1982年、15巻、1221〜1225頁
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、耐熱性、耐熱分解性、溶剤可溶性及び加工性が改善された可溶性多官能ビニル芳香族共重合体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ジビニル芳香族化合物(a)及びモノビニル芳香族化合物(b)からなる単量体由来の構造単位を有する多官能ビニル芳香族共重合体中に、ジビニル芳香族化合物(a)に由来する繰り返し単位を20モル%以上含有し、かつ、下記式(a1)及び(a2)
【化5】
(式中、R1は炭素数6〜30の芳香族炭化水素基を示す。)
【化6】
(式中、R2は炭素数6〜30の芳香族炭化水素基を示す。)で表されるジビニル芳香族化合物(a)由来のビニル基を含有する構造単位のモル分率が次式、(a1)/[(a1)+(a2)]≧0.5を満足し、かつ、その主鎖骨格中に下記一般式(1)
【化7】
(但し、Yは飽和若しくは不飽和の脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基又はベンゼン環に縮合した芳香族環若しくは置換芳香族環を示し、nは0〜4の整数である。)で表されるインダン構造を有することを特徴とする可溶性多官能ビニル芳香族共重合体である。
【0013】
また、本発明は、ジビニル芳香族化合物(a)を20〜99.5モル%及びモノビニル芳香族化合物(b)を0.5モル〜80モル%含有してなる単量体成分を重合する方法において、誘電率が2〜15である1種以上の有機溶媒中、ルイス酸触媒及び下記一般式(2)
【化8】
(式中、R3は水素原子又は炭素数1〜6の1価の炭化水素基を示し、R4はp価の芳香族炭化水素基又は脂肪族炭化水素基を示し、Zはハロゲン原子を示し、pは1〜6の整数を示す。一分子中に、複数のR3及びZがある場合、それぞれは同一であって、異なってもよい)で表される開始剤の存在下、20〜100℃の温度で重合させることを特徴とする前記の可溶性多官能ビニル芳香族共重合体の製造方法である。更に、本発明は、ジビニル芳香族化合物(a)及びモノビニル芳香族化合物(b)からなる単量体の合計容積Aと誘電率が2〜15である1種以上の有機溶媒の容積Bの合計容積に対するAの割合が10%以上、100%未満である前記の可溶性多官能ビニル芳香族共重合体の製造方法である。
【0014】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の可溶性多官能ビニル芳香族共重合体及びその製造方法について詳しく説明する。本発明の可溶性多官能ビニル芳香族共重合体は、(a)成分としてのジビニル芳香族化合物及び(b)成分としてのモノビニル芳香族化合物を必須の単量体成分としてこれを特定の条件で重合させることにより得られる。
【0015】
(a)成分としてのジビニル芳香族化合物としては、たとえば、m−ジビニルベンゼン、p−ジビニルベンゼン、1,2−ジイソプロペニルベンゼン、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、1,3−ジビニルナフタレン、1,8−ジビニルナフタレン、1,4−ジビニルナフタレン、1,5−ジビニルナフタレン、2,3−ジビニルナフタレン、2,7−ジビニルナフタレン、2,6−ジビニルナフタレン、4,4'−ジビニルビフェニル、4,3’−ジビニルビフェニル、4,2'−ジビニルビフェニル、3,2’−ジビニルビフェニル、3,3’−ジビニルビフェニル、2,2’−ジビニルビフェニル、2,4−ジビニルビフェニル、1,2−ジビニル−3,4−ジメチルベンゼン、1,3−ジビニル−4,5,8−トリブチルナフタレン、2,2′−ジビニル−4−エチル−4′−プロピルビフェニル等を用いることができるが、これらに制限されるものではない。これらは単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。
【0016】
ここで、(a)成分の好適な具体例としては、コスト及び得られたポリマーの耐熱性の点でジビニルベンゼン(m−及びp−異性体の両方)、ジビニルビフェニル(各異性体を含む)及びジビニルナフタレン(各異性体を含む)がある。より好ましくは、ジビニルベンゼン(m−及びp−異性体の両方)、ジビニルビフェニル(各異性体を含む)である。特に、ジビニルベンゼン(m−及びp−異性体の両方)が最も好ましく用いられる。特に高度の耐熱性が要求される分野ではジビニルビフェニル(各異性体を含む)及びジビニルナフタレン(各異性体を含む)が好適に使用される。
【0017】
(b)成分として使用されるモノビニル芳香族化合物としては、スチレン、核アルキル置換スチレン、核アルキル置換芳香族ビニル化合物、α−アルキル置換スチレン、α−アルキル置換芳香族ビニル化合物、β−アルキル置換スチレン、アルコキシ置換スチレン、インデン誘導体及びアセナフチレン誘導体等を挙げることができる。なお、本明細書でいう核アルキル置換芳香族ビニル化合物及びα−アルキル置換芳香族ビニル化合物は、α−アルキル置換スチレン及びα−アルキル置換芳香族ビニル化合物を含まない。
【0018】
核アルキル置換スチレンとしては例えば、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレン、o-プロピルスチレン、m-プロピルスチレン、p-プロピルスチレン、o-n-ブチルスチレン、m-n-ブチルスチレン、p-n-ブチルスチレン、o-イソブチルスチレン、m-イソブチルスチレン、p-イソブチルスチレン、o- t-ブチルスチレン、m- t-ブチルスチレン、p- t-ブチルスチレン、o- n-ペンチルスチレン、m- n-ペンチルスチレン、p- n-ペンチルスチレン、o-2-メチルブチルスチレン、m- 2-メチルブチルスチレン、p- 2-メチルブチルスチレン、o-3-メチルブチル2スチレン、m- 3-メチルブチルスチレン、p- 3-メチルブチルスチレン、o- t-ブチルスチレン、m- t-ブチルスチレン、p- t-ブチルスチレン、o- t-ブチルスチレン、m- t-ブチルスチレン、p- t-ブチルスチレン、o- n-ペンチルスチレン、m- n-ペンチルスチレン、p- n-ペンチルスチレン、o- 2-メチルブチルスチレン、m- 2-メチルブチルスチレン、p- 2-メチルブチルスチレン、o- 3-メチルブチルスチレン、m- 3-メチルブチルスチレン、p- 3-メチルブチルスチレン、o- t-ペンチルスチレン、m- t-ペンチルスチレン、p- t-ペンチルスチレン、o- n-ヘキシルスチレン、m- n-ヘキシルスチレン、p- n-ヘキシルスチレン、o- 2-メチルペンチルスチレン、m- 2-メチルペンチルスチレン、p-2-メチルペンチルスチレン、o- 3-メチルペンチルスチレン、m- 3-メチルペンチルスチレン、p-3-メチルペンチルスチレン、o- 1-メチルペンチルスチレン、m-1-メチルペンチルスチレン、p-1-メチルペンチルスチレン、o-2,2-ジメチルブチルスチレン、m-2,2-ジメチルブチルスチレン、p-2,2-ジメチルブチルスチレン、o-2,3-ジメチルブチルスチレン、m-2,3-ジメチルブチルスチレン、p-2,3-ジメチルブチルスチレン、o-2,4-ジメチルブチルスチレン、m-2,4-ジメチルブチルスチレン、p-2,4-ジメチルブチルスチレン、o-3,3-ジメチルブチルスチレン、m-3,3-ジメチルブチルスチレン、p-3,3-ジメチルブチルスチレン、o-3,4-ジメチルブチルスチレン、m-3,4-ジメチルブチルスチレン、p-3,4-ジメチルブチルスチレン、o-4,4-ジメチルブチルスチレン、m-4,4-ジメチルブチルスチレン、p-4,4-ジメチルブチルスチレン、o-2-エチルブチルスチレン、m-2-エチルブチルスチレン、p-2-エチルブチルスチレン、o-1-エチルブチルスチレン、m-1-エチルブチルスチレン、p-1-エチルブチルスチレン、o-シクロヘキシルスチレン、m-シクロヘキシルスチレン、p-シクロヘキシルスチレン、o-シクロヘキシルスチレン、m-シクロヘキシルスチレン、p-シクロヘキシルスチレン、o-エトキシスチレン、m-エトキシスチレン、p-エトキシスチレン、o-プロポキシスチレン、m-プロポキシスチレン、p-プロポキシスチレン、o-n-ブトキシスチレン、m-n-ブトキシスチレン、p-n-ブトキシスチレン、o-イソブトキシスチレン、m-イソブトキシスチレン、p-イソブトキシスチレン、o-t-ブトキシスチレン、m-t-ブトキシスチレン、p-t-ブトキシスチレン、o-n-ペントキシスチレン、m-n-ペントキシスチレン、p-n-ペントキシスチレン、α-メチル-o-ブトキシスチレン、α-メチル-m-ブトキシスチレン、α-メチル-p-ブトキシスチレン、o-t-ペントキシスチレン、m-t-ペントキシスチレン、p-t-ペントキシスチレン、o-n-ヘキソキシスチレン、m-n-ヘキソキシスチレン、p-n-ヘキソキシスチレン、α-メチル-o-ペントキシスチレン、α-メチル-m-ペントキシスチレン、α-メチル-p-ペントキシスチレン、o-シクロヘキソキシスチレン、m-シクロヘキソキシスチレン、p-シクロヘキソキシスチレン、o-フェノキシスチレン、m-フェノキシスチレン、p-フェノキシスチレン等を用いることができるが、これらに制限されるものではない。これらは単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。
【0019】
核アルキル置換芳香族ビニル化合物としては、例えば、2-ビニルビフェニル、3-ビニルビフェニル、4-ビニルビフェニル、2-ビニル−2’−エチルビフェニル、2-ビニル−3’−エチルビフェニル、2-ビニル−4’−エチルビフェニル、3-ビニル−2’−エチルビフェニル、3-ビニル−3’−エチルビフェニル、3-ビニル−4’−エチルビフェニル、4-ビニル−2’−エチルビフェニル、4-ビニル−3’−エチルビフェニル、4-ビニル−4’−エチルビフェニル、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、1−ビニル−2−エチルナフタレン、1−ビニル−3−エチルナフタレン、1−ビニル−4−エチルナフタレン、1−ビニル−5−エチルナフタレン、1−ビニル−6−エチルナフタレン、1−ビニル−7−エチルナフタレン、1−ビニル−8−エチルナフタレン、2−ビニル−1−エチルナフタレン、2−ビニル−3−エチルナフタレン、2−ビニル−4−エチルナフタレン、2−ビニル−5−エチルナフタレン、2−ビニル−6−エチルナフタレン、2−ビニル−7−エチルナフタレン、2−ビニル−8−エチルナフタレン、m-フェニルスチレン、p-フェニルスチレン、等を用いることができる。また、α-アルキル置換スチレンとしては、例えば、α-メチルスチレン、α-エチルスチレン、α-プロピルスチレン、α-n-ブチルスチレン、α-イソブチルスチレン、α- t-ブチルスチレン、α- n-ペンチルスチレン、α-2-メチルブチルスチレン、α-3-メチルブチル2スチレン、α- t-ブチルスチレン、α- t-ブチルスチレン、α- n-ペンチルスチレン、α- 2-メチルブチルスチレン、α- 3-メチルブチルスチレン、α- t-ペンチルスチレン、α- n-ヘキシルスチレン、α- 2-メチルペンチルスチレン、α- 3-メチルペンチルスチレン、α- 1-メチルペンチルスチレン、α-2,2-ジメチルブチルスチレン、α-2,3-ジメチルブチルスチレン、α-2,4-ジメチルブチルスチレン、α-3,3-ジメチルブチルスチレン、α-3,4-ジメチルブチルスチレン、α-4,4-ジメチルブチルスチレン、α-2-エチルブチルスチレン、α-1-エチルブチルスチレン、α-シクロヘキシルスチレン、α-シクロヘキシルスチレン等を用いることができる。α−アルキル置換芳香族ビニル化合物としては、例えば、2-イソプロペニルビフェニル、3-イソプロペニルビフェニル、4-イソプロペニルビフェニル、2-イソプロペニル−2’−エチルビフェニル、2-イソプロペニル−3’−エチルビフェニル、2-イソプロペニル−4’−エチルビフェニル、3-イソプロペニル−2’−イソプロペニルビフェニル、3-イソプロペニル−3’−エチルビフェニル、3-イソプロペニル−4’−エチルビフェニル、4-イソプロペニル−2’−エチルビフェニル、4-ビニル−3’−エチルビフェニル、4-イソプロペニル−4’−エチルビフェニル、1−ビニルナフタレン、2−イソプロペニルナフタレン、1−イソプロペニル−2−エチルナフタレン、1−イソプロペニル−3−エチルナフタレン、1−イソプロペニル−4−エチルナフタレン、1−イソプロペニル−5−エチルナフタレン、1−イソプロペニル−6−エチルナフタレン、1−イソプロペニル−7−エチルナフタレン、1−イソプロペニル−8−エチルナフタレン、2−イソプロペニル−1−エチルナフタレン、2−イソプロペニル−3−エチルナフタレン、2−イソプロペニル−4−エチルナフタレン、2−イソプロペニル−5−エチルナフタレン、2−イソプロペニル−6−エチルナフタレン、2−イソプロペニル−7−エチルナフタレン、2−イソプロペニル−8−エチルナフタレン等を用いることができる。
【0020】
インデン誘導体としては、インデン、メチルインデン、エチルインデン、プロピルインデン、ブチルインデン、t−ブチルインデン、sec−ブチルインデン、n−ペンチルインデン、2−メチル−ブチルインデン、3−メチル−ブチルインデン、n−ヘキシルインデン、2−メチル−ペンチルインデン、3−メチル−ペンチルインデン、4−メチル−ペンチルインデン等のアルキル置換インデン等を用いることができる。又、メトキシインデン、エトキシインデン、プトキシインデン、ブトキシインデン、t−ブトキシインデン、sec−ブトキシインデン、n−ペントキシインデン、2−メチル−ブトキシインデン、3−メチル−ブトキシインデン、n−ヘキトシインデン、2−メチル−ペントキシインデン、3−メチル−ペントキシインデン、4−メチル−ペントキシインデン等のアルキコシインデン等を用いることができる。
【0021】
アセナフチレン誘導体としては、例えば、アセナフチレン;1―メチルアセナフチレン、3―メチルアセナフチレン、4―メチルアセナフチレン、5―メチルアセナフチレン、1―エチルアセナフチレン、3―エチルアセナフチレン、4―エチルアセナフチレン、5―エチルアセナフチレン等のアルキルアセナフチレン類;1―クロロアセナフチレン、3―クロロアセナフチレン、4―クロロアセナフチレン、5―クロロアセナフチレン、1―ブロモアセナフチレン、3―ブロモアセナフチレン、4―ブロモアセナフチレン、5―ブロモアセナフチレン等のハロゲン化アセナフチレン類;1―フェニルアセナフチレン、3―フェニルアセナフチレン、4―フェニルアセナフチレン、5―フェニルアセナフチレン等のフェニルアセナフチレン類等が挙げられる。
【0022】
これらのモノビニル芳香族化合物はこれらに制限されるものではない。これらは単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。これらのモノビニル芳香族化合物の中で、重合時に共重合体の骨格中に於ける、インダン構造の生成量が大きいという点で、核アルキル置換スチレン、核アルキル置換芳香族ビニル化合物、α-アルキル置換スチレン、α−アルキル置換芳香族ビニル化合物が好ましい。最も好適な具体例としては、コスト及び得られたポリマーの耐熱性の点でエチルビニルベンゼン(m−及びp−異性体の両方)、エチルビニルビフェニル(各異性体を含む)及びエチルビニルナフタレン(各異性体を含む)が好適である。
【0023】
本発明の製造方法では、(a)成分としてのジビニル芳香族化合物は、(a)成分及び(b)成分からなる単量体の合計に対して20〜99.5モル%使用される。好ましくは30モル%以上である。更に好ましくは40モル%以上である。特に好ましくは50モル%以上である。ジビニル芳香族化合物(a)の含有量が20モル%未満であると、生成した可溶性多官能ビニル芳香族共重合体を硬化させた場合に耐熱性が低下する傾向があり好ましくない。
【0024】
本発明の多官能ビニル芳香族共重合体中では上記式(a1)及び(a2)で表されるジビニル芳香族化合物由来のビニル基を含有する構造単位のモル分率(a1)/[(a1)+(a2)]が≧0.5を満足することが必要である。好ましくはモル分率が0.7以上であり、特に好ましくは0.9以上である。0.5未満であると生成した重合体の耐熱性が低下する。
【0025】
また、本発明の多官能ビニル芳香族共重合体ではその主鎖骨格中に上記一般式(1)で表されるインダン構造を有することが必要である。一般式(1)において、Yはビニル基等の不飽和脂肪族炭化水素基、フェニル基等の芳香族炭化水素基、これらの炭化水素基置換体等があり、これらは0〜4個置換することができる。また、Yはインダン構造のベンゼン環と縮合環を形成してナフタレン環等を形成する2価の炭化水素基であることもでき、この2価の炭化水素基は置換基を有してもよい。
【0026】
一般式(1)で表されるインダン構造は本発明の製造方法により多官能ビニル芳香族共重合体を製造する際、本発明に記載の特定の溶媒、触媒、温度等の製造条件下で製造を行うことにより、成長ポリマー鎖末端の活性点がジビニル芳香族化合物及びモノビニル芳香族化合物由来の構造単位の芳香族環を攻撃することにより生成するものである。インダン構造は全ての単量体の構造単位に対して0.01モル%以上存在することが好ましく。より好ましくは0.1モル%以上であり、更に好ましくは1モル%以上である。特に好ましくは3モル%以上である。最も好ましくは5モル%以上である。本発明の多官能ビニル芳香族共重合体の主鎖骨格中に上記インダン構造が存在しないと、耐熱性と溶剤への可溶性が不足するので好ましくない。
【0027】
本発明の可溶性多官能ビニル芳香族共重合体は、本発明の製造方法によって得ることができる。本発明の製造方法によって得られた可溶性多官能ビニル芳香族共重合体は、本発明の可溶性多官能ビニル芳香族共重合体であるか、これを主として含むものであることが望ましい。したがって、本発明の可溶性多官能ビニル芳香族共重合体の説明と、本発明の製造方法によって得られた可溶性多官能ビニル芳香族共重合体の説明とを区別する必要がないときは、共通と理解される。
【0028】
本発明の可溶性多官能ビニル芳香族共重合体の数平均分子量(ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて得られる標準ポリスチレン換算による。以下、Mnという)は、300〜100000が好ましい。より好ましくは400〜50000である。最も好ましくは500〜20000である。Mnが300未満であると可溶性多官能ビニル芳香族共重合体の粘度が低すぎる為、加工性がよくないので好ましくない。また、Mnが100000以上であると、ゲルが生成しやすくなるので好ましくない。
【0029】
また、本発明の可溶性多官能ビニル芳香族共重合体はMnと重量平均分子量(Mwという)より求められる分子量分布(Mw/Mn)の値は20以下であることがよい。Mw/Mnが20を越えると、可溶性多官能ビニル芳香族共重合体の加工特性の悪化、ゲルの発生といった問題点を生ずるので好ましくない。
【0030】
更に、本発明の製造方法により得られる可溶性多官能ビニル芳香族共重合体の金属イオン含有量は各金属イオンについて1ppm以下であることが好ましい。より好ましくは、0.1ppm以下である。金属イオン含有量が1ppm以上であると、重合体の電気的特性が悪化するので好ましくない。
【0031】
また、本発明の可溶性多官能ビニル芳香族共重合体の製造方法では本発明の効果を損なわない範囲でトリビニル芳香族化合物やその他のジビニル化合物及びモノビニル化合物を添加することができる。トリビニル芳香族化合物の具体例としてはたとえば、1,2,4−トリビニルベンゼン、1,3,5−トリビニルベンゼン、1,2,4−トリイソプロペニルベンゼン、1,3,5−トリイソプロペニルベンゼン、1,3,5−トリビニルナフタレン、3,5,4′−トリビニルビフェニル等を挙げることができる。また、その他のジビニル化合物としては、ブタジエン、イソプレンなどのジエン化合物を挙げることができる。その他のモノビニル化合物としてはアルキルビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル、イソブテン、ジイソブチレン等を挙げることができる。これらは単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。これらのその他の単量体は(a)成分のジビニル芳香族化合物及び(b)成分のモノビニル芳香族化合物を含む単量体の総量に対して30モル%未満の範囲内で使用される。
【0032】
本発明の可溶性多官能ビニル芳香族共重合体の製造方法では誘電率が2〜15である1種以上の有機溶媒が用いられる。有機溶剤としてはカチオン重合を本質的に阻害しない化合物であれば、特に制約なく使用することができ、誘電率が2〜15の範囲内となるように単独又は2種以上を組み合わせて重合溶媒として使用される。有機溶剤として使用可能な化合物としては、塩化メチル、ジクロロメタン、n−プロピルクロライド、n−ブチルクロライド、クロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン、クロロエタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロエチレン、ジクロロエチレン、クロロベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン等の芳香族炭化水素;エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の直鎖式脂肪族炭化水素類;2−メチルプロパン、2−メチルブタン、2,3,3−トリメチルペンタン、2,2,5−トリメチルヘキサン等の分岐式脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の環式脂肪族炭化水素類;石油留分を水添精製したパラフィン油等を挙げることができる。この中で、ジクロロエタン、トルエン、キシレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、2−メチルプロパン、2−メチルブタン、メチルシクロヘキサン及びエチルシクロヘキサンが好ましい。重合性、溶解性のバランスと入手の容易さの観点からジクロロエタン、トルエン、キシレン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、メチルシクロヘキサン及びエチルシクロヘキサンが更に好ましい。
【0033】
これらの化合物は、誘電率が2〜15となることを考慮して単独又は2種以上を組み合わせて使用される。溶剤の使用量は、得られる重合体溶液の粘度や除熱の容易さを考慮して、通常、重合体の濃度が1〜50wt%、好ましくは5〜35wt%となるように決定される。誘電率が2未満であると重合活性が低くなるので好ましくなく、誘電率が15を越えると重合時にゲル化が起こりやすくなるので好ましくない。
【0034】
本発明の製造方法ではルイス酸触媒が使用される。このようなルイス酸触媒の具体例を示すと、臭化ホウ素(III)、塩化ホウ素(III)、臭化アルミニウム(III)、フッ化アルミニウム(III)、塩化アルミニウム(III)、ヨウ化アルミニウム(III)、臭化ガリウム(III)、塩化ガリウム(III)、臭化インジウム(III)、塩化インジウム(III)、フッ化インジウム(III)、ヨウ化インジウム(III)、臭化タリウム(III)、フッ化タリウム(III)、臭化ケイ素(IV)、塩化ケイ素(IV)、フッ化ケイ素(IV)、ヨウ化ケイ素(IV)、臭化ゲルマニウム(IV)、塩化ゲルマニウム(IV)、ヨウ化ゲルマニウム(IV)、臭化スズ(IV)、塩化スズ(IV)、フッ化スズ(IV)、ヨウ化スズ(IV)、フッ化鉛(IV)、臭化アンチモン(III)、塩化アンチモン(III)、塩化アンチモン(V)、フッ化アンチモン(III)、フッ化アンチモン(V)、ヨウ化アンチモン(III)、臭化ビスマス(III)、塩化ビスマス(III)、フッ化ビスマス(III)、ヨウ化ビスマス(III)、塩化チタン(IV)、臭化チタン(IV)、BF3・OEt2、塩化タングステン(VI)、塩化バナジウム(V)、塩化鉄(III)、臭化亜鉛(II)等の金属ハロゲン化物;Et2AlCl、EtAlCl2等の有機金属ハロゲン化物などを挙げることができる。上記の触媒は、特に制限されるものではなく、単独又は2種以上を組合せて用いることができる。上記の触媒の内で臭化ホウ素(III)、塩化ホウ素(III)、塩化スズ(IV)、臭化スズ(IV)、塩化スズ(IV)、フッ化スズ(IV)、ヨウ化スズ(IV)、塩化アンチモン(V)、が分岐構造の制御、及び、重合活性の点で好ましい。より好ましくは塩化ホウ素(III)、塩化スズ(IV)が用いられる。特に好ましくは塩化スズ(IV)が用いられる。
【0035】
ルイス酸触媒の使用量は、通常下記の一般式(2)で表される化合物に対して0.1〜100倍モルの範囲で用いるが、好ましい使用量は0.3〜50倍モルの範囲である。
【0036】
本発明の製造方法では上記一般式(2)で示される化合物が使用される。本発明で用いられる一般式(2)の化合物の例としては、(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン〔C6 H5 C(CH3 )2 Cl〕、1,4−ビス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン〔1,4−Cl(CH3 )2 CC6 H4 C(CH3 )2 Cl〕、1,3−ビス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン〔1,3−Cl(CH3 )2 CC6 H4 C(CH3 )2 Cl〕、1,3,5−トリス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン〔1,3,5−(ClC(CH3 )2 )3 C6 H3 〕、1,3−ビス(1−クロル−1−メチルエチル)−5−(tert−ブチル)ベンゼン〔1,3−(C(CH3 )2Cl)2 −5−(C(CH3)3 )C6 H3 〕、1−クロロエチルベンゼン、1−ブロモエチルベンゼン等の化合物が挙げられる。
これらの中でも特に好ましいのはビス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン[C6 H4 (C(CH3 )2 Cl)2 ]、1−クロロエチルベンゼン及び1−ブロモエチルベンゼンである[なおビス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼンは、ビス(α−クロロイソプロピル)ベンゼン、ビス(2−クロロ−2−プロピル)ベンゼン、あるいはジクミルクロライドとも呼ばれる]。
これらの中では、反応性と入手性の点で、1−クロロエチルベンゼン、1−ブロモエチルベンゼン及びビス(1−クロロ−1−メチルエチル)ベンゼンが特に好ましい。
【0037】
本発明の製造方法では、重合は20〜100℃の温度範囲で行う。20℃未満で重合反応を行うと、生成した共重合体の耐熱性が低くなるので好ましくなく、また100℃を超えると、反応速度が大きすぎるため、反応の制御が難しく、架橋による不溶性のゲルの生成がおこりやすくなるのでに好ましくない。
【0038】
この重合では、(a)成分のジビニル芳香族化合物及び(b)成分のモノビニル芳香族化合物からなる単量体成分の容積Aと誘電率が2〜15である1種以上の有機溶媒の容積Bが0.1≦A/(A+B)≦0.95を満足することが必要である。単量体成分の容積分率が0.1未満であると、共重合体の製造効率が低くなり、工業的実施の点でコストの上昇を招き、好ましくない。また、0.95を越えると、製造時にゲル化を起こし易くなるので好ましくない。
【0039】
重合反応停止後、共重合体を回収する方法は特に限定されず、例えば、スチームストリッピング法、貧溶媒での析出などの通常用いられる方法を用いればよい。
【0040】
本発明の可溶性多官能ビニル芳香族共重合体は、成形材、シート又はフィルムに加工することができ、低誘電率、低吸水率、高耐熱性等の特性を満足できる半導体関連材料又は光学用材料、更には、塗料、感光性材料、接着剤等への適用が可能である。
【0041】
更に光学用部品としては、CD用ピックアップレンズ、DVD用ピックアップレンズ、Fax用レンズ、LBP用レンズ、オリゴンミラー、プリズム等が挙げられる。
【0042】
【実施例】
次に実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらにより制限されるものではない。なお、各例中の部はいずれも重量部である。また、実施例中の軟化温度等の測定は以下に示す方法により試料調製及び測定を行った。
【0043】
1)ポリマーの分子量、及び分子量分布
可溶性多官能ビニル芳香族共重合体の分子量及び分子量分布測定はGPC(東ソー製、HLC−8120GPC)を使用し、溶媒:テトラヒドロフラン(THF)、流量:1.0ml/min、カラム温度:40℃で行った。共重合体の分子量は単分散ポリスチレンによる検量線を用い、ポリスチレン換算分子量として測定を行った。
【0044】
2)ポリマーの構造
日本電子製JNM-LA600型核磁気共鳴分光装置を用い、13C−NMR及び1H−NMR分析により決定した。溶媒としてテトラクロロエタン-d2を使用した。NMR測定溶媒であるテトラクロロエタン-d2の共鳴線を内部標準として使用した。
【0045】
3)ガラス転移温度(Tg)及び軟化温度測定の試料調製及び測定
重合体組成物溶液をガラス基板に乾燥後の厚さが、20μmになるように均一に塗布した後、ホットプレートを用いて、90℃で30分間加熱し、乾燥させた。得られたガラス基板上の樹脂膜はガラス基板と共に、TMA(熱機械分析装置)測定装置にセットし、窒素気流下、昇温速度10℃/分で220℃まで昇温し、更に、220℃で20分間加熱処理することにより、残存する溶媒を除去した。ガラス基板を室温まで放冷した後、TMA測定装置中の試料に分析用プローブを接触させ、窒素気流下、昇温速度10℃/分で30℃から360℃までスキャンさせることにより測定を行い、接線法により軟化温度を求めた。サンプルの耐熱性により、プローブが樹脂膜を貫通せず、膜厚よりも小さなプローブ侵入量を示さない場合には、軟化温度の他に、プローブが侵入した温度と膜厚に対する侵入量を百分率で表示した。
【0046】
4)熱分解温度及び炭化歩留りの測定
多分岐重合体及び多分岐ブロック共重合体の熱分解温度及び炭化歩留りの測定は、試料をTGA(熱天秤)測定装置にセットし、窒素気流下、昇温速度10℃/分で30℃から650℃までスキャンさせることにより測定を行い、接線法により熱分解温度を求めた。また、550℃における試料残量を炭化歩留りとして求めた。
【0047】
実施例1
ジビニルベンゼン0.144モル(21.3ml)、エチルビニルベンゼン0.006モル(0.86ml)、1−クロロエチルベンゼン(0.35mmol)のジクロロエタン溶液(濃度:0.063mmol/ml)5.5ml及びジクロロエタン(誘電率:10.3)350mlを500mlのフラスコ内に投入し、70℃で0.50mmolのSnCl4のジクロロエタン溶液(濃度:0.068mmol/ml)7.3mlを添加し、3時間反応させた。重合反応を窒素でバブリングを行った少量のメタノールで停止させた後、室温で反応混合液を大量のメタノールに投入し、重合体を析出させた。得られた重合体をメタノールで洗浄し、濾別、乾燥、秤量して、共重合体A14.49g(収率:54.8 wt%)を得た。重合活性は9.66(gポリマー/mmolSn・hr)であった。
【0048】
得られた共重合体AのMwは 34000、Mnは 6160、Mw/Mnは 5.5 であった。13C−NMR及び1H−NMR分析により、共重合体−1はジビニルベンゼン由来の構造単位を97モル%、エチルビニルベンゼン由来の構造単位を3モル%含有していた。また、共重合体Aにはインダン構造が存在していることがわかった。インダン構造は全ての単量体の構造単位に対して2.1モル%存在していた。更に、前記一般式(a1)及び(a2)で表される構造単位の総量に占める一般式(a1)で表される構造単位のモル分率は0.99であった。また、TMA測定の結果、Tgは291℃、軟化温度は300℃以上であった。TGA測定の結果、熱分解温度は418℃、炭化歩留りは29%であった。
共重合体Aはトルエン、キシレン、THF、ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルムに可溶であり、ゲルの生成は認められなかった。また、共重合体Aのキャストフィルムは曇りのない透明なフィルムであった。
本明細書において、可溶性多官能ビニル芳香族共重合体とは、トルエン、キシレン、THF、ジクロロエタン、ジクロロメタン及びクロロホルムに可溶であり、溶解した際にゲルの生成が認められないことをいう。
【0049】
実施例2
ジビニルベンゼン0.144モル(21.3ml)、エチルビニルベンゼン0.006モル(0.86ml)、1−クロロエチルベンゼン(0.35mmol)のジクロロエタン溶液(濃度:0.063mmol/ml)5.5ml及びジクロロエタン(誘電率:10.3)300ml及びトルエン(誘電率:2.35)50mlを500mlのフラスコ内に投入し、70℃で0.50mmolのSnCl4のジクロロエタン溶液(濃度:0.068mmol/ml)7.3mlを添加し、30分間反応させた。重合反応を窒素でバブリングを行った少量のメタノールで停止させた後、室温で反応混合液を大量のメタノールに投入し、重合体を析出させた。得られた重合体をメタノールで洗浄し、濾別、乾燥、秤量して、重合体B2 4.36g(収率:15.2 wt%)を得た。重合活性は17.4(gポリマー/mmolSn・hr)であった。
【0050】
得られた重合体BのMwは 4630、Mnは 1850、Mw/Mnは 2.5 であった。13C−NMR及び1H−NMR分析により共重合体Bはジビニルベンゼン由来の構造単位を98モル%、エチルビニルベンゼン由来の構造単位を2モル%含有していた。また、共重合体Bにはインダン構造が存在していた。インダン構造は全ての単量体の構造単位に対して1.8モル%存在していた。更に、式(a1)と式(a2)の合計に対する(a1)で表される構造単位のモル分率は0.98であった。また、TMA測定の結果、Tg:287℃、軟化温度は300℃以上であった。TGA測定の結果、熱分解温度は415℃、炭化歩留りは28%であった。
共重合体Bはトルエン、キシレン、THF、ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルムに可溶であり、ゲルの生成は認められなかった。また、このキャストフィルムは曇りのない透明なフィルムであった。
【0051】
比較例1
ジビニルベンゼン0.144モル(21.3ml)、エチルビニルベンゼン0.006モル(0.86ml)、下記式(3)
【化9】
(式中、R5はイソプロピル基、Pyはピリジル基を示す)で表されるコバルト系連鎖移動触媒25.0mg及びテトラヒドロフラン350mlを500mlのフラスコ内に投入し、50℃で100.0mgの2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)を添加し、72時間反応させた。室温で反応混合液を大量のメタノールに投入し、重合体を析出させた。得られた重合体をメタノールで洗浄し、濾別、乾燥、秤量して、共重合体R 6.38g(収率:22.3 wt%)を得た。重合活性は0.022(gポリマー/mmolSn・hr)であった。
【0052】
得られた共重合体Rはゲルを含んでいたのでTHFに可溶成分のみのMwは 85600、Mnは 12300、Mw/Mnは 7.0 であった。13C−NMR及び1H−NMR分析により求められる共重合体Rはジビニルベンゼン由来の構造単位を95モル%、エチルビニルベンゼン由来の構造単位を5モル%含有していた。また、共重合体Rにはインダン構造は存在していなかった。更に、式(a1)と式(a2)の合計に対する(a1)で表される構造単位のモル分率は0.27であった。また、TMA測定の結果、Tg:278℃、軟化温度は300℃以上であった。TGA測定の結果、熱分解温度は382℃、炭化歩留りは14%であった。
共重合体Rはトルエン、キシレン、THF、ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルムで、ゲルの生成が認められ、溶剤に対して部分的な可溶性を示すに留まった。また、これのキャストフィルムはやや曇りのある透明なフィルムであった。
【0053】
実施例3
ジビニルベンゼン0.108モル(15.3ml)、エチルビニルベンゼン0.005モル(0.64ml)、アセナフチレン0.0375モル(5.63g)、1−クロロエチルベンゼン(0.35mmol)のジクロロエタン溶液(濃度:0.063mmol/ml)5.5ml及びジクロロエタン(誘電率:10.3)350mlを500mlのフラスコ内に投入し、70℃で0.50mmolのSnCl4のジクロロエタン溶液(濃度:0.068mmol/ml)7.3mlを添加し、3時間反応させた。重合反応を窒素でバブリングを行った少量のメタノールで停止させた後、室温で反応混合液を大量のメタノールに投入し、重合体を析出させた。得られた重合体をメタノールで洗浄し、濾別、乾燥、秤量して、共重合体C 20.93g(収率:91.7 wt%)を得た。重合活性は14.0(gポリマー/mmolSn・hr)であった。
【0054】
得られた重合体CのMwは 12000、Mnは 3700、Mw/Mnは 3.3 であった。13C−NMR及び1H−NMR分析により共重合体Cはジビニルベンゼン由来の構造単位を75.8モル%、エチルビニルベンゼン由来の構造単位を3.2モル%、アセナフチレン由来の構造単位を21.0モル%含有していた。また、共重合体Cにはインダン構造が存在していた。インダン構造は全ての単量体の構造単位に対して1.0モル%存在していた。更に、式(a1)と式(a2)の合計に対する(a1)で表される構造単位のモル分率は0.99であった。また、TMA測定の結果、Tg:286℃、軟化温度は300℃以上であった。TGA測定の結果、熱分解温度は402℃、炭化歩留りは25%であった。
共重合体Cはトルエン、キシレン、THF、ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルムに可溶であり、ゲルの生成は認められなかった。また、共重合体Cのキャストフィルムは曇りのない透明なフィルムであった。
【0055】
実施例4
ジビニルベンゼン0.072モル(10.3ml)、エチルビニルベンゼン0.003モル(0.43ml)、アセナフチレン0.075モル(11.27g)、1−クロロエチルベンゼン(0.35mmol)のジクロロエタン溶液(濃度:0.063mmol/ml)5.5ml及びジクロロエタン(誘電率:10.3)350mlを500mlのフラスコ内に投入し、70℃で0.50mmolのSnCl4のジクロロエタン溶液(濃度:0.068mmol/ml)7.3mlを添加し、3時間反応させた。重合反応を窒素でバブリングを行った少量のメタノールで停止させた後、室温で反応混合液を大量のメタノールに投入し、重合体を析出させた。得られた重合体をメタノールで洗浄し、濾別、乾燥、秤量して、重合体D 16.78g(収率:68.1 wt%)を得た。重合活性は11.2(gポリマー/mmolSn・hr)であった。
【0056】
得られた共重合体DのMwは 15500、Mnは 4400、分子量分布Mw/Mnは 3.5であった。13C−NMR及び1H−NMR分析により共重合体Dはジビニルベンゼン由来の構造単位を55.5モル%、エチルビニルベンゼン由来の構造単位を2.3モル%、アセナフチレン由来の構造単位を42.2モル%含有していた。また、共重合体Dにはインダン構造が存在していた。インダン構造は全ての単量体の構造単位に対して1.1モル%存在していた。更に、式(a1)と式(a2)の合計に対する(a1)で表される構造単位のモル分率は0.98であった。また、TMA測定の結果、Tg:281℃、軟化温度は300℃以上であった。TGA測定の結果、熱分解温度は395℃、炭化歩留りは23%であった。
この共重合体Dは、トルエン、キシレン、THF、ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルムに可溶であり、ゲルの生成は認められなかった。また、このキャストフィルムは曇りのない透明なフィルムであった。
【0057】
実施例5
ジビニルベンゼン0.481モル(68.5ml)、エチルビニルベンゼン0.362モル(51.6ml)、1−クロロエチルベンゼン(1.05mmol)のジクロロエタン溶液(濃度:0.063mmol/ml)16.6ml及びジクロロエタン(誘電率:10.3)500mlを1000mlのフラスコ内に投入し、70℃で1.50mmolのSnCl4のジクロロエタン溶液(濃度:0.068mmol/ml)22.0mlを添加し、10分間反応させた。重合反応を窒素でバブリングを行った少量のメタノールで停止させた後、室温で反応混合液を大量のメタノールに投入し、重合体を析出させた。得られた重合体をメタノールで洗浄し、濾別、乾燥、秤量して、共重合体E 42.29g(収率:38.5 wt%)を得た。重合活性は188(gポリマー/mmolSn・hr)であった。
【0058】
得られた共重合体EのMwは 22800、Mnは 7090、Mw/Mnは 3.2 であった。13C−NMR及び1H−NMR分析により、共重合体Eはジビニルベンゼン由来の構造単位を59モル%、エチルビニルベンゼン由来の構造単位を41モル%含有していた。また、共重合体Eにはインダン構造が存在していることがわかった。インダン構造は全ての単量体の構造単位に対して3.5モル%存在していた。更に、式(a1)と式(a2)の合計に対する(a1)で表される構造単位のモル分率は0.99であった。また、TMA測定の結果、Tg:286℃、軟化温度は300℃以上であった。TGA測定の結果、熱分解温度は402℃、炭化歩留りは27%であった。
共重合体Eはトルエン、キシレン、THF、ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルムに可溶であり、ゲルの生成は認められなかった。共重合体Eのキャストフィルムは曇りのない透明なフィルムであった。
【0059】
実施例6
ジビニルビフェニル0.30モル(68.0ml)、エチルビニルビフェニル0.113モル(25.9ml)、1−クロロエチルベンゼン(1.05mmol)のジクロロエタン溶液(濃度:0.063mmol/ml)16.6ml及びジクロロエタン(誘電率:10.3)500mlを1000mlのフラスコ内に投入し、70℃で1.50mmolのSnCl4のジクロロエタン溶液(濃度:0.068mmol/ml)22.0mlを添加し、10分間反応させた。重合反応を窒素でバブリングを行った少量のメタノールで停止させた後、室温で反応混合液を大量のメタノールに投入し、重合体を析出させた。得られた重合体をメタノールで洗浄し、濾別、乾燥、秤量して、共重合体F 29.57g(収率:34.6 wt%)を得た。重合活性は132(gポリマー/mmolSn・hr)であった。
【0060】
得られた共重合体FのMwは 18400、Mn)は 5120、Mw/Mnは 3.6 であった。13C−NMR及び1H−NMR分析により、共重合体Fはジビニルビフェニル由来の構造単位を75.4モル%、エチルビニルビフェニル由来の構造単位を24.6モル%含有していた。また、共重合体Fにはインダン構造が存在していることがわかった。インダン構造は全ての単量体の構造単位に対して5.2モル%存在していた。更に、式(a1)と式(a2)の合計に対する(a1)で表される構造単位のモル分率は0.99であった。また、TMA測定の結果、Tg:291℃、軟化温度は300℃以上であった。TGA測定の結果、熱分解温度は421℃、炭化歩留りは32%であった。
共重合体Fはトルエン、キシレン、THF、ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルムに可溶であり、ゲルの生成は認められなかった。また、共重合体Fのキャストフィルムは曇りのない透明なフィルムであった。
【0061】
実施例7
ジビニルナフタレン0.30モル(54.1g)、エチルビニルナフタレン0.03モル(5.47g)、1−クロロエチルベンゼン(1.05mmol)のジクロロエタン溶液(濃度:0.063mmol/ml)16.6ml及びジクロロエタン(誘電率:10.3)500mlを1000mlのフラスコ内に投入し、70℃で1.50mmolのSnCl4のジクロロエタン溶液(濃度:0.068mmol/ml)22.0mlを添加し、10分間反応させた。重合反応を窒素でバブリングを行った少量のメタノールで停止させた後、室温で反応混合液を大量のメタノールに投入し、重合体を析出させた。得られた重合体をメタノールで洗浄し、濾別、乾燥、秤量して、共重合体G 20.1g(収率:33.8 wt%)を得た。重合活性は150(gポリマー/mmolSn・hr)であった。
【0062】
得られた共重合体GのMwは 15800、Mnは 3860、Mw/Mnは 4.1 であった。13C−NMR及び1H−NMR分析により、共重合体Gはジビニルナフタレン由来の構造単位を93.1モル%、エチルビニルナフタレン由来の構造単位を6.9モル%含有していた。また、共重合体Gにはインダン構造が存在していることがわかった。インダン構造は全ての単量体の構造単位に対して5.3モル%存在していた。更に、式(a1)と式(a2)の合計に対する(a1)で表される構造単位のモル分率は0.98であった。また、TMA測定の結果、Tg:267℃、軟化温度は300℃以上であった。TGA測定の結果、熱分解温度は417℃、炭化歩留りは30%であった。
共重合体Gはトルエン、キシレン、THF、ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルムに可溶であり、ゲルの生成は認められなかった。また、そのキャストフィルムは曇りのない透明なフィルムであった。
【0063】
【発明の効果】
本発明により、耐熱性、耐熱分解性、溶剤可溶性及び加工性が改善された可溶性多官能ビニル芳香族共重合体を得ることができる。
Claims (3)
- ジビニル芳香族化合物(a)及びモノビニル芳香族化合物(b)からなる単量体由来の構造単位を有する多官能ビニル芳香族共重合体中に、ジビニル芳香族化合物(a)に由来する繰り返し単位を20モル%以上含有し、かつ、下記式(a1)及び(a2)
で表されるジビニル芳香族化合物(a)由来のビニル基を含有する構造単位のモル分率が次式、(a1)/[(a1)+(a2)]≧0.5を満足し、かつ、その主鎖骨格中に下記一般式(1)
- ジビニル芳香族化合物(a)を20〜99.5モル%及びモノビニル芳香族化合物(b)を0.5モル〜80モル%含有してなる単量体成分を重合する方法において、誘電率が2〜15である1種以上の有機溶媒中、ルイス酸触媒及び下記一般式(2)
- ジビニル芳香族化合物(a)及びモノビニル芳香族化合物(b)からなる単量体の合計容積Aと誘電率が2〜15である1種以上の有機溶媒の容積Bの合計容積に対するAの割合が10%以上、100%未満である請求項2記載の可溶性多官能ビニル芳香族共重合体の製造方法。
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