以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態の説明では、本発明による静電誘導型変換装置の一例として、エレクトレット部材を備える静電誘導型発電装置について説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態による静電誘導型発電装置の構造を示した断面図である。図2〜図5は、図1に示した第1実施形態による静電誘導型発電装置を説明するための図である。まず、図1〜図5を参照して、本発明の第1実施形態による静電誘導型発電装置1の構造について説明する。
この第1実施形態による静電誘導型発電装置1は、図1に示すように、収納部10aが形成された下側筐体10と、収納部10aを塞ぐように下側筐体10の上面に取り付けられた上側筐体20と、ブリッジ整流回路30(図4参照)とを備えている。また、静電誘導型発電装置1には、静電誘導型発電装置1によって駆動される負荷2(図4参照)が接続されている。
静電誘導型発電装置1の下側筐体10の収納部10aには、図1および図2に示すように、一対のバネ部材11(図2参照)と、一対のバネ部材11によりX方向(図2参照)に移動可能に構成されたガラスまたはシリコン基板などからなる可動基板12と、可動基板12をガイドするためのガイド部13と、可動基板12の位置を規制するためのスペーサ14および15(図1参照)とが設けられている。バネ部材11は、それぞれ、収納部10aのX方向の内側面と可動基板12との間に配置されている。ガイド部13およびスペーサ14は、収納部10aの矢印Y方向の内側面に沿ってX方向に延びるように設けられている。また、ガイド部13は、収納部10aの底面に設けられている。また、スペーサ14は、可動基板12のY方向の位置を規制する機能を有するとともに、ガイド部13上に設けられている。スペーサ15は、可動基板12のZ方向(図1参照)の位置を規制する機能を有する。
静電誘導型発電装置1の上側筐体20は、図1に示すように、可動基板12と対向するように設けられたガラスまたはシリコン基板などからなる固定基板21と、可動基板12をガイドするためのガイド部22とを含んでいる。固定基板21には、スペーサ15と対応する領域に、可動基板12のZ方向の位置を規制する機能を有するスペーサ23が設けられている。これにより、可動基板12と固定基板21とが所定の間隔を隔てて配置されるように構成されている。また、ガイド部22は、ガイド部13と対向するように、収納部10aのY方向の内側面に沿ってX方向(図2参照)に延びるように設けられている。
ここで、第1実施形態では、下側筐体10に設けられた可動基板12の固定基板21側の主表面12aには、図2に示すように、AlまたはTiなどからなる平面的に見て櫛形状を有する電極121が形成されている。この電極121は、X方向に所定の間隔を隔てて、Y方向に延びるように形成された複数の電極部121aと、複数の電極部121aの一方端部を連結するとともに、X方向に延びるように形成された連結部121bとを有する。また、この電極部121aは、図4に示すように、約100μm〜約1000μmの幅と、約3μm〜約5μmの厚みとを有する。
また、第1実施形態では、電極121の電極部121a上には、図2および図4に示すように、電極部121aと対応する領域に、SiO2からなるエレクトレット部材122が形成されている。具体的には、エレクトレット部材122は、図2に示すように、X方向に所定の間隔を隔てて、Y方向に延びるように複数形成されている。また、このエレクトレット部材122は、図4に示すように、負電荷が蓄積されているとともに、約100μm〜約1000μmの幅と、約3μm〜約5μmの厚みとを有する。
また、第1実施形態では、下側筐体10に設けられた可動基板12の固定基板21側の主表面12aには、図2に示すように、AlまたはTiなどからなる平面的に見て櫛形状を有する集電電極123が形成されている。この集電電極123は、X方向に所定の間隔を隔てて、Y方向に延びるように形成された複数の集電部123aと、複数の集電部123aを電極121の連結部121b側と反対側の一方端部で連結するとともに、X方向に延びるように形成された連結部123bとを有する。また、この集電部123aは、図4に示すように、電極121の電極部121a間に設けられているとともに、約100μm〜約1000μmの幅と、約3μm〜約5μmの厚みとを有する。また、電極121の電極部121aと集電電極123の集電部123aとは、約10μm〜約100μmの間隔L1を隔てて設けられている。
また、第1実施形態では、上側筐体20に設けられた固定基板21の可動基板12側の主表面21aには、図3に示すように、AlまたはTiなどからなる平面的に見て櫛形状を有する電極211が形成されている。この電極211は、X方向に所定の間隔を隔てて、Y方向に延びるように形成された複数の電極部211aと、複数の電極部211aの一方端部を連結するとともに、X方向に延びるように形成された連結部211bとを有する。また、この電極部211aは、図4に示すように、約100μm〜約1000μmの幅と、約3μm〜約5μmの厚みとを有する。
また、第1実施形態では、電極211の電極部211a上には、図3および図4に示すように、電極部211aと対応する領域に、SiO2からなるエレクトレット部材212が形成されている。具体的には、エレクトレット部材212は、図3に示すように、X方向に所定の間隔を隔てて、Y方向に延びるように複数形成されている。また、このエレクトレット部材212は、図4に示すように、負電荷が蓄積されているとともに、約100μm〜約1000μmの幅と、約3μm〜約5μmの厚みとを有する。
また、第1実施形態では、上側筐体20に設けられた固定基板21の可動基板12側の主表面21aには、図3に示すように、AlまたはTiなどからなる平面的に見て櫛形状を有する集電電極213が形成されている。この集電電極213は、X方向に所定の間隔を隔てて、Y方向に延びるように形成された複数の集電部213aと、複数の集電部213aを電極211の連結部211b側と反対側の一方端部で連結するとともに、X方向に延びるように形成された連結部213bとを有する。また、この集電部213aは、図4に示すように、電極211の電極部211a間に設けられているとともに、約100μm〜約1000μmの幅と、約3μm〜約5μmの厚みとを有する。また、電極211の電極部211aと集電電極213の集電部213aとは、約10μm〜約100μmの間隔L2を隔てて設けられている。
また、第1実施形態では、図4に示すように、可動基板12のエレクトレット部材122が固定基板21のエレクトレット部材212と対向する領域に位置する場合には、可動基板12の集電部123aが固定基板21の集電部213aと対向する領域に位置するとともに、図5に示すように、可動基板12のエレクトレット部材122が固定基板21の集電部213aと対向する領域に位置する場合には、可動基板12の集電部123aが固定基板21のエレクトレット部材212と対向する領域に位置するように構成されている。
また、第1実施形態では、ブリッジ整流回路30は、図4に示すように、発電された電力を整流するために設けられているとともに、配線40を介して可動基板12の集電電極123および固定基板21の集電電極213と電気的に接続されている。また、ブリッジ整流回路30は、配線41を介して、接地されているとともに、可動基板12の電極121および固定基板21の電極211と電気的に接続されている。これにより、可動基板12の電極121および固定基板21の電極211は、接地されている。また、ブリッジ整流回路30には、静電誘導型発電装置1によって発電された電力により駆動される負荷2が配線42および43を介して接続されている。また、負荷2は、接地されている。
ここで、ブリッジ整流回路30は、図4に示すように、4つのダイオード31〜34を含んでいる。具体的には、ダイオード31のアノードは、ダイオード34のカソードと接続されているとともに、配線41と接続されている。また、ダイオード31のカソードは、ダイオード33のカソードと接続されているとともに、配線42を介して負荷2と接続されている。また、ダイオード32のアノードは、ダイオード34のアノードと接続されているとともに、配線43を介して負荷2と接続されている。また、ダイオード32のカソードは、ダイオード33のアノードと接続されているとともに、配線40と接続されている。また、ダイオード33は、アノードが配線40と接続されているとともに、カソードが配線42を介して負荷2と接続されている。また、ダイオード34は、アノードが配線43を介して負荷2と接続されているとともに、カソードが配線41と接続されている。
図6は、本発明の第1実施形態による静電誘導型発電装置の発電動作を説明するための図である。次に、図4〜図6を参照して、本発明の第1実施形態による静電誘導型発電装置1の発電動作について説明する。
まず、図4に示すように、可動基板12のエレクトレット部材122と固定基板21のエレクトレット部材212とが対向するとともに、可動基板12の集電部123aと固定基板21の集電部213aとが対向しているので、可動基板12の集電部123aおよび固定基板21の集電部213aには、電荷が誘導されない。
次に、静電誘導型発電装置1にX方向の振動を加えることにより、図5に示すように、可動基板12のエレクトレット部材122と固定基板21の集電部213aとが対向するとともに、可動基板12の集電部123aと固定基板21のエレクトレット部材212とが対向する位置まで、可動基板12がX方向に移動する。このとき、エレクトレット部材212の負電荷により、可動基板12の集電部123aには、正電荷が誘導されるとともに、エレクトレット部材122の負電荷により、固定基板21の集電部213aには、正電荷が誘導される。この場合、可動基板12の集電部123aに誘導される正電荷は、配線40および連結部123bを介して供給されるとともに、固定基板21の集電部213aに誘導される正電荷は、配線40および連結部213bを介して供給される。これにより、ブリッジ整流回路30には、A方向の電流が流れることにより、整流が行われて負荷2にB方向の電流が出力される。具体的には、ダイオード31、配線42、負荷2、配線43およびダイオード32の順に電流が流れる。
その後、図6に示すように、可動基板12のエレクトレット部材122と固定基板21のエレクトレット部材212とが対向するとともに、可動基板12の集電部123aと固定基板21の集電部213aとが対向する位置まで、可動基板12がX方向に移動する。このとき、可動基板12の集電部123aと対向する領域に固定基板21のエレクトレット部材212が位置しないことにより、可動基板12の集電部123aに誘導されていた正電荷が開放されて連結部123bおよび配線40を介してブリッジ整流回路30に向かって移動するとともに、固定基板21の集電部213aと対向する領域に可動基板12のエレクトレット部材122が位置しないことにより、固定基板21の集電部213aに誘導されていた正電荷が開放されて連結部213bおよび配線40を介してブリッジ整流回路30に向かって移動する。これにより、ブリッジ整流回路30には、C方向の電流が流れることにより、整流が行われて負荷2にB方向の電流が出力される。具体的には、ダイオード33、配線42、負荷2、配線43およびダイオード34の順に電流が流れる。
また、上記動作が繰り返し行われることにより、発電が継続して行われる。
第1実施形態では、上記のように、集電部123aおよびエレクトレット部材122を含む可動基板12と、集電部213aおよびエレクトレット部材212を含む固定基板21とを設けることによって、振動により可動基板12をX方向に移動させることにより、可動基板12の集電部123aと対向する領域に位置する固定基板21のエレクトレット部材212の面積を増減させて発電することができるとともに、固定基板21の集電部213aと対向する領域に位置する可動基板12のエレクトレット部材122の面積を増減させて発電することができる。これにより、可動基板12の集電部123aが形成された領域および固定基板21のエレクトレット部材212が形成された領域と、可動基板12のエレクトレット部材122が形成された領域および固定基板21の集電部213aが形成された領域との両方において直接発電することができるので、静電誘導型発電装置1の発電効率を向上させることができる。
また、第1実施形態では、集電部123aおよび213aに誘導された正電荷を電流として出力するためのブリッジ整流回路30を設けるとともに、集電部123aと集電部213aとが電気的に接続された状態で、集電部123aおよび213aとブリッジ整流回路30とを配線40を介して電気的に接続することによって、負電荷が蓄積されたエレクトレット部材122および212により、集電部123aおよび213aに誘導された同じ極性の正電荷をブリッジ整流回路30を介して容易に電流として出力することができる。
(第2実施形態)
図7および図8は、本発明の第2実施形態による静電誘導型発電装置の構成を示した概略図である。この第2実施形態では、上記第1実施形態と異なり、正電荷が蓄積されたエレクトレット部材62が設けられた可動基板61を含む静電誘導型発電装置60の構成について説明する。
この第2実施形態による静電誘導型発電装置60では、図7に示すように、ガラスまたはシリコン基板などからなる可動基板61の主表面61aの上面上に、上記第1実施形態と同様に、櫛形状を有する電極121および集電電極123が形成されている。
また、第2実施形態では、電極121の電極部121a上には、電極部121aと対応する領域に、SiO2からなるエレクトレット部材62が形成されている。具体的には、エレクトレット部材62は、X方向に所定の間隔を隔てて複数形成されている。また、このエレクトレット部材62は、正電荷が蓄積されているとともに、約100μm〜約1000μmの幅と、約3μm〜約5μmの厚みとを有する。
また、第2実施形態では、図7に示すように、可動基板61のエレクトレット部材62が固定基板21のエレクトレット部材212と対向する領域に位置する場合には、可動基板61の集電部123aが固定基板21の集電部213aと対向する領域に位置するとともに、図8に示すように、可動基板61のエレクトレット部材62が固定基板21の集電部213aと対向する領域に位置する場合には、可動基板61の集電部123aが固定基板21のエレクトレット部材212と対向する領域に位置するように構成されている。
また、第2実施形態では、ブリッジ整流回路30は、図7に示すように、配線63を介して固定基板21の集電電極213と電気的に接続されているとともに、配線64を介して可動基板61の集電電極123と電気的に接続されている。また、可動基板61の電極121および固定基板21の電極211は、接地されている。
ここで、ブリッジ整流回路30は、図7に示すように、4つのダイオード31〜34を含んでいる。具体的には、ダイオード31のアノードは、ダイオード34のカソードと接続されているとともに、配線64と接続されている。また、ダイオード31のカソードは、ダイオード33のカソードと接続されているとともに、配線42を介して負荷2と接続されている。また、ダイオード32のアノードは、ダイオード34のアノードと接続されているとともに、配線43を介して負荷2と接続されている。また、ダイオード32のカソードは、ダイオード33のアノードと接続されているとともに、配線63と接続されている。また、ダイオード33は、アノードが配線63と接続されているとともに、カソードが配線42を介して負荷2と接続されている。また、ダイオード34は、アノードが配線43を介して負荷2と接続されているとともに、カソードが配線64と接続されている。
なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
図9は、本発明の第2実施形態による静電誘導型発電装置の発電動作を説明するための図である。次に、図7〜図9を参照して、本発明の第2実施形態による静電誘導型発電装置60の発電動作について説明する。
まず、図7に示すように、可動基板61のエレクトレット部材62と固定基板21のエレクトレット部材212とが対向するとともに、可動基板61の集電部123aと固定基板21の集電部213aとが対向しているので、可動基板61の集電部123aおよび固定基板21の集電部213aには、電荷が誘導されない。
次に、静電誘導型発電装置60にX方向の振動を加えることにより、図8に示すように、可動基板61のエレクトレット部材62と固定基板21の集電部213aとが対向するとともに、可動基板61の集電部123aと固定基板21のエレクトレット部材212とが対向する位置まで、可動基板61がX方向に移動する。このとき、エレクトレット部材212の負電荷により、可動基板61の集電部123aには、正電荷が誘導されるとともに、エレクトレット部材62の正電荷により、固定基板21の集電部213aには、負電荷が誘導される。この場合、可動基板61の集電部123aに誘導される正電荷は、配線64および連結部123bを介して供給されるとともに、固定基板21の集電部213aに誘導される負電荷は、配線63および連結部213bを介して供給される。これにより、ブリッジ整流回路30には、C方向の電流が流れることにより、整流が行われて負荷2にB方向の電流が出力される。具体的には、ダイオード33、配線42、負荷2、配線43およびダイオード34の順に電流が流れる。
その後、図9に示すように、可動基板61のエレクトレット部材62と固定基板21のエレクトレット部材212とが対向するとともに、可動基板61の集電部123aと固定基板21の集電部213aとが対向する位置まで、可動基板61がX方向に移動する。このとき、可動基板61の集電部123aと対向する領域に固定基板21のエレクトレット部材212が位置しないことにより、可動基板61の集電部123aに誘導されていた正電荷が開放されて連結部123bおよび配線64を介してブリッジ整流回路30に向かって移動するとともに、固定基板21の集電部213aと対向する領域に可動基板61のエレクトレット部材62が位置しないことにより、固定基板21の集電部213aに誘導されていた負電荷が開放されて連結部213bおよび配線63を介してブリッジ整流回路30に向かって移動する。これにより、ブリッジ整流回路30には、A方向の電流が流れることにより、整流が行われて負荷2にB方向の電流が出力される。具体的には、ダイオード31、配線42、負荷2、配線43およびダイオード32の順に電流が流れる。
また、上記動作が繰り返し行われることにより、発電が継続して行われる。
第2実施形態では、上記のように、集電部123aに誘導された正電荷および集電部213aに誘導された負電荷を電流として出力するためのブリッジ整流回路30を設け、かつ、集電部123aと集電部213aとが電気的に分離された状態で、集電部123aとブリッジ整流回路30とを配線64を介して電気的に接続するとともに、集電部213aとブリッジ整流回路30とを配線63を介して電気的に接続することによって、正電荷が蓄積されたエレクトレット部材62により集電部213aに誘導された負電荷をブリッジ整流回路30を介して容易に電流として出力することができるとともに、負電荷が蓄積されたエレクトレット部材212により集電部123aに誘導された正電荷をブリッジ整流回路30を介して容易に電流として出力することができる。
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
(第3実施形態)
図10および図11は、本発明の第3実施形態による静電誘導型発電装置の構成を示した概略図である。この第3実施形態では、上記第1実施形態と異なり、電極部81aの幅よりも小さい幅を有するエレクトレット部材82が設けられた可動基板80と、電極部91aの幅よりも小さい幅を有するエレクトレット部材92が設けられた固定基板90とを含む静電誘導型発電装置70の構成について説明する。
この第3実施形態による静電誘導型発電装置70では、図10に示すように、ガラスまたはシリコン基板などからなる可動基板80の固定基板90側の主表面80aに、AlまたはTiなどからなる平面的に見て櫛形状を有する電極81が形成されている。この電極81は、X方向に所定の間隔を隔てて形成された複数の電極部81aと、複数の電極部81aを連結する連結部81bとを有する。また、この電極部81aは、約100μm〜約1000μmの幅と、約3μm〜約5μmの厚みとを有する。
また、第3実施形態では、電極81の電極部81a上には、電極部81aと対応する領域に、SiO2からなるエレクトレット部材82が形成されている。具体的には、エレクトレット部材82は、X方向に所定の間隔を隔てて複数形成されている。また、このエレクトレット部材82は、負電荷が蓄積されているとともに、電極81の電極部81aの幅よりも小さい幅と、約3μm〜約5μmの厚みとを有する。これにより、電極部81aのエレクトレット部材82の側面よりも側方に突出する部分により、ガード電極部811aが構成されている。このガード電極部811aは、エレクトレット部材82に蓄積された負電荷により、エレクトレット部材82の側方のガード電極部811aと対向する領域の電位が影響されるのを抑制する機能を有する。
また、第3実施形態では、可動基板80の固定基板90側の主表面80aには、AlまたはTiなどからなる平面的に見て櫛形状を有する集電電極83が形成されている。この集電電極83は、X方向に所定の間隔を隔てて形成された複数の集電部83aと、複数の集電部83aを連結する連結部83bとを有する。また、この集電部83aは、電極81の電極部81a間に設けられているとともに、後述するエレクトレット部材92の幅と実質的に同じ大きさの幅と、約3μm〜約5μmの厚みとを有する。また、電極81の電極部81aと集電電極83の集電部83aとは、約10μm〜約100μmの間隔L3を隔てて設けられている。
また、第3実施形態では、ガラスまたはシリコン基板などからなる固定基板90の可動基板80側の主表面90aに、図10に示すように、AlまたはTiなどからなる平面的に見て櫛形状を有する電極91が形成されている。この電極91は、X方向に所定の間隔を隔てて形成された複数の電極部91aと、複数の電極部91aを連結する連結部91bとを有する。また、この電極部91aは、約100μm〜約1000μmの幅と、約3μm〜約5μmの厚みとを有する。
また、第3実施形態では、電極91の電極部91a上には、電極部91aと対応する領域に、SiO2からなるエレクトレット部材92が形成されている。具体的には、エレクトレット部材92は、X方向に所定の間隔を隔てて複数形成されている。また、このエレクトレット部材92は、負電荷が蓄積されているとともに、電極91の電極部91aの幅よりも小さい幅と、約3μm〜約5μmの厚みとを有する。これにより、電極部91aのエレクトレット部材92の側面よりも側方に突出する部分により、ガード電極部911aが構成されている。このガード電極部911aは、エレクトレット部材92に蓄積された負電荷により、エレクトレット部材92の側方のガード電極部911aと対向する領域の電位が影響されるのを抑制する機能を有する。
また、第3実施形態では、固定基板90の可動基板80側の主表面90aには、AlまたはTiなどからなる平面的に見て櫛形状を有する集電電極93が形成されている。この集電電極93は、X方向に所定の間隔を隔てて形成された複数の集電部93aと、複数の集電部93aを連結する連結部93bとを有する。また、この集電部93aは、電極91の電極部91a間に設けられているとともに、エレクトレット部材82の幅と実質的に同じ大きさの幅と、約3μm〜約5μmの厚みとを有する。また、電極91の電極部91aと集電電極93の集電部93aとは、約10μm〜約100μmの間隔L4を隔てて設けられている。
また、第3実施形態では、ブリッジ整流回路30は、図10に示すように、発電された電力を整流するために設けられているとともに、配線40を介して可動基板80の集電電極83および固定基板90の集電電極93と電気的に接続されている。また、ブリッジ整流回路30は、配線41を介して、接地されているとともに、可動基板80の電極81および固定基板90の電極91と電気的に接続されている。これにより、可動基板80の電極81および固定基板90の電極91は、接地されている。
また、第3実施形態では、図10に示すように、可動基板80のエレクトレット部材82が固定基板90のエレクトレット部材92と対向する領域に位置する場合には、可動基板80の集電部83aが固定基板90の集電部93aと対向する領域に位置するとともに、図11に示すように、可動基板80のエレクトレット部材82が固定基板90の集電部93aと対向する領域に位置する場合には、可動基板80の集電部83aが固定基板90のエレクトレット部材92と対向する領域に位置するように構成されている。
なお、第3実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
また、第3実施形態の静電誘導型発電装置70の発電動作は、上記第1実施形態の発電動作と同様である。
第3実施形態では、上記のように、電極部81aのエレクトレット部材82の側面よりも側方に突出する部分にガード電極部811aを形成するとともに、電極部91aのエレクトレット部材92の側面よりも側方に突出する部分にガード電極部911aを形成することによって、ガード電極部811aにより、エレクトレット部材82の側方のガード電極部811aと対向する領域の電位がエレクトレット部材82の負電荷により影響されるのを抑制することができるので、エレクトレット部材82と対向する領域の電位と、エレクトレット部材82の側方のガード電極部811aと対向する領域の電位との差を大きくすることができる。これにより、集電部93aがエレクトレット部材82と対向する領域に位置する場合と、集電部93aがエレクトレット部材82の側方のガード電極部811aと対向する領域に位置する場合とにおいて、集電部93aに誘導される正電荷の量の差を大きくすることができる。また、ガード電極部911aにより、エレクトレット部材92の側方のガード電極部911aと対向する領域の電位がエレクトレット部材92の負電荷により影響されるのを抑制することができるので、エレクトレット部材92と対向する領域の電位と、エレクトレット部材92の側方のガード電極部911aと対向する領域の電位との差を大きくすることができる。これにより、集電部83aがエレクトレット部材92と対向する領域に位置する場合と、集電部83aがエレクトレット部材92の側方のガード電極部911aと対向する領域に位置する場合とにおいて、集電部83aに誘導される正電荷の量の差を大きくすることができる。これらによって、静電誘導型発電装置70の発電効率をより向上させることができる。
なお、第3実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
(第4実施形態)
図12〜図15は、本発明の第4実施形態による静電誘導型発電装置を示した図である。この第4実施形態では、上記第1実施形態と異なり、集電電極321および322が形成された固定基板320を含む静電誘導型発電装置300の構成について説明する。
この第4実施形態による静電誘導型発電装置300では、図12および図14に示すように、ガラスまたはシリコン基板などからなる可動基板310の固定基板320側の主表面310aに、AlまたはTiなどからなる平面的に見て櫛形状を有する電極311が形成されている。なお、可動基板310は、本発明の「第2基板」の一例である。この電極311は、図14に示すように、X方向に所定の間隔を隔てて、Y方向に延びるように形成された複数の電極部311aと、複数の電極部311aの一方端部を連結するとともに、X方向に延びるように形成された連結部311bとを有する。また、この電極部311aは、図12に示すように、約100μm〜約1000μmの幅と、約3μm〜約5μmの厚みとを有する。
また、第4実施形態では、電極311の電極部311a上には、図12および図14に示すように、電極部311aと対応する領域に、SiO2からなるエレクトレット部材312が形成されている。具体的には、エレクトレット部材312は、図14に示すように、X方向に所定の間隔を隔てて、Y方向に延びるように複数形成されている。また、このエレクトレット部材312は、図12に示すように、負電荷が蓄積されているとともに、約100μm〜約1000μmの幅と、約3μm〜約5μmの厚みとを有する。
また、第4実施形態では、可動基板310の固定基板320側の主表面310aには、図14に示すように、AlまたはTiなどからなる平面的に見て櫛形状を有するガード電極313が形成されている。このガード電極313は、X方向に所定の間隔を隔てて、Y方向に延びるように形成された複数のガード電極部313aと、複数のガード電極部313aを電極311の連結部311b側と反対側の一方端部で連結するとともに、X方向に延びるように形成された連結部313bとを有する。また、このガード電極部313aは、図12に示すように、電極311の電極部311a間に設けられているとともに、約100μm〜約1000μmの幅と、エレクトレット部材312の上面の高さよりも大きい高さとを有する。また、電極311の電極部311aとガード電極313のガード電極部313aとは、約10μm〜約100μmの間隔L5を隔てて設けられている。
また、第4実施形態では、固定基板320の可動基板310側の主表面320aには、図15に示すように、AlまたはTiなどからなる平面的に見て櫛形状を有する集電電極321および322が形成されている。なお、固定基板320は、本発明の「第1基板」の一例である。また、集電電極321は、X方向に所定の間隔を隔てて、Y方向に延びるように形成された複数の集電部321aと、複数の集電部321aの一方端部を連結するとともに、X方向に延びるように形成された連結部321bとを有する。なお、集電電極321は、本発明の「第1電極」の一例であり、集電部321aは、本発明の「第1電極部」の一例である。また、この集電部321aは、図12に示すように、約100μm〜約1000μmの幅W1と、約3μm〜約5μmの厚みとを有する。また、集電電極322は、図15に示すように、X方向に所定の間隔を隔てて、Y方向に延びるように形成された複数の集電部322aと、複数の集電部322aを集電電極321の連結部321b側と反対側の一方端部で連結するとともに、X方向に延びるように形成された連結部322bとを有する。なお、集電電極322は、本発明の「第2電極」の一例であり、集電部322aは、本発明の「第2電極部」の一例である。また、この集電部322aは、図12に示すように、約100μm〜約1000μmの幅W2と、約3μm〜約5μmの厚みとを有する。また、集電電極321の集電部321aと集電電極322の集電部322aとは、約10μm〜約100μmの間隔L6を隔てて交互に設けられている。
また、第4実施形態では、ブリッジ整流回路30は、図12に示すように、配線330を介して固定基板320の集電電極321と電気的に接続されているとともに、配線331を介して固定基板320の集電電極322と電気的に接続されている。また、ブリッジ整流回路30は、固定基板320に設けられている。また、可動基板310の電極311およびガード電極313は、接地されている。
ここで、ブリッジ整流回路30は、図12に示すように、4つのダイオード31〜34を含んでいる。具体的には、ダイオード31のアノードは、ダイオード34のカソードと接続されているとともに、配線330と接続されている。また、ダイオード31のカソードは、ダイオード33のカソードと接続されているとともに、配線42を介して負荷2と接続されている。また、ダイオード32のアノードは、ダイオード34のアノードと接続されているとともに、配線43を介して負荷2と接続されている。また、ダイオード32のカソードは、ダイオード33のアノードと接続されているとともに、配線331と接続されている。また、ダイオード33は、アノードが配線331と接続されているとともに、カソードが配線42を介して負荷2と接続されている。また、ダイオード34は、アノードが配線43を介して負荷2と接続されているとともに、カソードが配線330と接続されている。
また、第4実施形態では、図12に示すように、可動基板310のエレクトレット部材312が固定基板320の集電部321aと対向する領域に位置する場合には、可動基板310のガード電極部313aが固定基板320の集電部322aと対向する領域に位置するとともに、図13に示すように、可動基板310のエレクトレット部材312が固定基板320の集電部322aと対向する領域に位置する場合には、可動基板310のガード電極部313aが固定基板320の集電部321aと対向する領域に位置するように構成されている。
なお、第4実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
図16は、本発明の第4実施形態による静電誘導型発電装置の発電動作を説明するための図である。次に、図12、図13および図16を参照して、第4実施形態による静電誘導型発電装置300の発電動作について説明する。
まず、図12に示すように、可動基板310のエレクトレット部材312と固定基板320の集電部321aとが対向するとともに、可動基板310のガード電極部313aと固定基板320の集電部322aとが対向しているので、エレクトレット部材312の負電荷により、固定基板320の集電部321aには、正電荷が誘導されるとともに、固定基板320の集電部322aには正電荷が誘導されない。
次に、静電誘導型発電装置300にX方向の振動を加えることにより、図13に示すように、可動基板310のエレクトレット部材312と固定基板320の集電部322aとが対向するとともに、可動基板310のガード電極部313aと固定基板320の集電部321aとが対向する位置まで、可動基板310がX方向に移動する。このとき、ガード電極部313aにより、固定基板320の集電部321aに誘導されていた正電荷が開放されて連結部321bおよび配線330を介してブリッジ整流回路30に向かって移動するとともに、エレクトレット部材312の負電荷により、固定基板320の集電部322aには、配線331および連結部322bを介して正電荷が誘導される。これにより、ブリッジ整流回路30には、A方向の電流が流れることにより、整流が行われて負荷2にB方向の電流が出力される。具体的には、ダイオード31、配線42、負荷2、配線43およびダイオード32の順に電流が流れる。
その後、図16に示すように、可動基板310のエレクトレット部材312と固定基板320の集電部321aとが対向するとともに、可動基板310のガード電極部313aと固定基板320の集電部322aとが対向する位置まで、可動基板310がX方向に移動する。このとき、エレクトレット部材312の負電荷により、固定基板320の集電部321aには、配線330および連結部321bを介して正電荷が誘導されるとともに、ガード電極部313aにより、固定基板320の集電部322aに誘導されていた正電荷が開放されて連結部322bおよび配線331を介してブリッジ整流回路30に向かって移動する。これにより、ブリッジ整流回路30には、C方向の電流が流れることにより、整流が行われて負荷2にB方向の電流が出力される。具体的には、ダイオード33、配線42、負荷2、配線43およびダイオード34の順に電流が流れる。
また、上記動作が繰り返し行われることにより、発電が継続して行われる。
第4実施形態では、上記のように、エレクトレット部材312を有する可動基板310と、集電電極321および322を有する固定基板320とを設けることによって、振動により、固定基板320の集電部321aと対向する領域に位置する可動基板310のエレクトレット部材312の面積を増減させて発電することができるとともに、固定基板320の集電部322aと対向する領域に位置する可動基板310のエレクトレット部材312の面積を増減させて発電することができる。これにより、固定基板320の集電部321aが形成された領域と、固定基板320の集電部322aが形成された領域との両方において直接発電することができるので、静電誘導型発電装置300の発電効率を向上させることができる。
また、第4実施形態では、集電電極321および322を櫛形状に形成するとともに、集電部321aおよび322aを交互に配置することによって、容易に、固定基板320の集電部321aと対向する領域に位置する可動基板310のエレクトレット部材312の面積を増加(減少)させながら、固定基板320の集電部322aと対向する領域に位置する可動基板310のエレクトレット部材312の面積を減少(増加)させることができる。
また、第4実施形態では、集電電極321および322が接続されたブリッジ整流回路30を固定基板320に設けることによって、可動基板310および固定基板320を電気的に接続することなく、発電を行うことができるので、静電誘導型発電装置300の構造を簡素化することができるとともに、耐久性の向上を図ることができる。
また、第4実施形態では、エレクトレット部材312間にガード電極部313aを設けることによって、エレクトレット部材312と対向する領域とガード電極部313aと対向する領域との電位差を大きくすることができるので、可動基板310が振動した場合に、固定基板320の集電部321aまたは322aに誘導される電荷の量を大きくすることができる。これによっても、静電誘導型発電装置300の発電効率を向上させることができる。
また、第4実施形態では、ガード電極部313aの高さをエレクトレット部材312の上面の高さよりも大きくすることによって、エレクトレット部材312と対向する領域とガード電極部313aと対向する領域との電位差をより大きくすることができる。
(第5実施形態)
図17〜図19は、本発明の第5実施形態による静電誘導型発電装置を示した図である。この第5実施形態では、上記第4実施形態と異なり、負電荷が蓄積されたエレクトレット部材312および正電荷が蓄積されたエレクトレット部材362が形成された可動基板360を含む静電誘導型発電装置350の構成について説明する。
この第5実施形態による静電誘導型発電装置350では、図17および図19に示すように、ガラスまたはシリコン基板などからなる可動基板360の固定基板320側の主表面360aに、櫛形状を有する電極311が形成されている。なお、可動基板360は、本発明の「第2基板」の一例である。また、電極311の電極部311a上には、電極部311aと対応する領域に、エレクトレット部材312が形成されている。
また、第5実施形態では、可動基板360の固定基板320側の主表面360aには、AlまたはTiなどからなる平面的に見て櫛形状を有する電極361が形成されている。この電極361は、X方向に所定の間隔を隔てて、Y方向に延びるように形成された複数の電極部361aと、複数の電極部361aを電極311の連結部311b側と反対側の一方端部で連結するとともに、X方向に延びるように形成された連結部361bとを有する。また、この電極部361aは、図17に示すように、電極311の電極部311a間に設けられているとともに、約100μm〜約1000μmの幅と、約3μm〜約5μmの厚みとを有する。また、電極311の電極部311aと電極361の電極部361aとは、約10μm〜約100μmの間隔L7を隔てて設けられている。
また、第5実施形態では、電極361の電極部361a上には、図17および図19に示すように、電極部361aと対応する領域に、SiO2からなるエレクトレット部材362が形成されている。具体的には、エレクトレット部材362は、図19に示すように、X方向に所定の間隔を隔てて、Y方向に延びるように複数形成されている。また、このエレクトレット部材362は、図17に示すように、正電荷が蓄積されているとともに、約100μm〜約1000μmの幅と、約3μm〜約5μmの厚みとを有する。
また、第5実施形態では、図17に示すように、可動基板360のエレクトレット部材312が固定基板320の集電部321aと対向する領域に位置する場合には、可動基板360のエレクトレット部材362が固定基板320の集電部322aと対向する領域に位置するとともに、図18に示すように、可動基板360のエレクトレット部材312が固定基板320の集電部322aと対向する領域に位置する場合には、可動基板360のエレクトレット部材362が固定基板320の集電部321aと対向する領域に位置するように構成されている。
なお、第5実施形態のその他の構成は、上記第4実施形態と同様である。
図20は、本発明の第5実施形態による静電誘導型発電装置の発電動作を説明するための図である。次に、図17、図18および図20を参照して、第5実施形態による静電誘導型発電装置350の発電動作について説明する。
まず、図17に示すように、可動基板360のエレクトレット部材312と固定基板320の集電部321aとが対向するとともに、可動基板360のエレクトレット部材362と固定基板320の集電部322aとが対向しているので、エレクトレット部材312の負電荷により、固定基板320の集電部321aには、正電荷が誘導されるとともに、エレクトレット部材362の正電荷により、固定基板320の集電部322aには、負電荷が誘導される。
次に、静電誘導型発電装置350にX方向の振動を加えることにより、図18に示すように、可動基板360のエレクトレット部材312と固定基板320の集電部322aとが対向するとともに、可動基板360のエレクトレット部材362と固定基板320の集電部321aとが対向する位置まで、可動基板360がX方向に移動する。このとき、エレクトレット部材362の正電荷により、固定基板320の集電部321aには、配線330および連結部321bを介して負電荷が誘導されるとともに、エレクトレット部材312の負電荷により、固定基板320の集電部322aには、配線331および連結部322bを介して正電荷が誘導される。これにより、ブリッジ整流回路30には、A方向の電流が流れることにより、整流が行われて負荷2にB方向の電流が出力される。具体的には、ダイオード31、配線42、負荷2、配線43およびダイオード32の順に電流が流れる。
その後、図20に示すように、可動基板360のエレクトレット部材312と固定基板320の集電部321aとが対向するとともに、可動基板360のエレクトレット部材362と固定基板320の集電部322aとが対向する位置まで、可動基板360がX方向に移動する。このとき、エレクトレット部材312の負電荷により、固定基板320の集電部321aには、配線330および連結部321bを介して正電荷が誘導されるとともに、エレクトレット部材362の正電荷により、固定基板320の集電部322aには、配線331および連結部322bを介して負電荷が誘導される。これにより、ブリッジ整流回路30には、C方向の電流が流れることにより、整流が行われて負荷2にB方向の電流が出力される。具体的には、ダイオード33、配線42、負荷2、配線43およびダイオード34の順に電流が流れる。
また、上記動作が繰り返し行われることにより、発電が継続して行われる。
第5実施形態では、上記のように、負電荷が蓄積されたエレクトレット部材312間に正電荷が蓄積されたエレクトレット部材362を設けることによって、エレクトレット部材312と対向する領域とエレクトレット部材362と対向する領域との電位差をより大きくすることができるので、可動基板360が振動した場合に、固定基板320の集電部321aまたは322aに誘導される電荷の量をより大きくすることができるので、静電誘導型発電装置350の発電効率をより向上させることができる。
なお、第5実施形態のその他の効果は、上記第4実施形態と同様である。
(第6実施形態)
図21および図22は、本発明の第6実施形態による静電誘導型発電装置を示した図である。この第6実施形態では、上記第4実施形態と異なり、可動基板410の主表面の全面にエレクトレット部材411が形成された静電誘導型発電装置400の構成について説明する。
この第6実施形態による静電誘導型発電装置400では、図21に示すように、可動基板410の固定基板320側の主表面に、全面にわたってエレクトレット部材411が形成されている。可動基板410は、約600μmの厚みを有するシリコン基板などからなる。なお、可動基板410は、本発明の「第2基板」の一例である。エレクトレット部材411は、約2.4μmの厚みを有するとともに、熱酸化法により形成されたSiO2からなる。また、エレクトレット部材411は、後述する絶縁膜412が形成されていない領域と対応する部分411aに負電荷が蓄積されている。
エレクトレット部材411の主表面上には、X方向に所定の間隔(たとえば、約1mm)を隔てて複数の絶縁膜412が形成されている。この絶縁膜412は、HDP−CVD(High Density Plasma Chemical Vapor Deposition)法により形成されたSiO2からなる。また、絶縁膜412は、約1mmの幅と、約2μmの厚みとを有する。また、絶縁膜412は、後述する導電層413をエレクトレット部材411と離間させるために設けられており、エレクトレット部材411に蓄積された負電荷が導電層413に流出するのを抑制する機能を有する。
また、絶縁膜412上には、Alなどからなる導電層413が形成されている。この導電層413は、約0.3μmの厚みを有するとともに、接地されている。また、エレクトレット部材411の主表面上には、絶縁膜412および導電層413を覆うように電荷流出抑制膜414が形成されている。この電荷流出抑制膜414は、約0.3μmの厚みを有するとともに、MSQ(Methyl Silses Quioxane:メチルシルセスキオキサン)などからなる。また、電荷流出抑制膜414は、エレクトレット部材411に蓄積された負電荷が表面から流出するのを抑制するために設けられている。また、電荷流出抑制膜414は、集電電極321および322の表面(下面)から距離D(たとえば、約30μm)を隔てて配置されている。
また、第6実施形態では、静電誘導型発電装置400は、図21に示すように、固定基板320の集電部321aが可動基板410の導電層413と対応する領域に位置する場合には、固定基板320の集電部322aが可動基板410の導電層413が形成されていない領域(エレクトレット部材411の部分411a)と対応する領域に位置するように構成されている。また、静電誘導型発電装置400は、図22に示すように、固定基板320の集電部321aが可動基板410の導電層413が形成されていない領域(エレクトレット部材411の部分411a)と対応する領域に位置する場合には、固定基板320の集電部322aが可動基板410の導電層413と対応する領域に位置するように構成されている。
なお、第6実施形態のその他の構成は、上記第4実施形態と同様である。
図23は、本発明の第6実施形態による静電誘導型発電装置の発電動作を説明するための図である。次に、図21〜図23を参照して、第6実施形態による静電誘導型発電装置400の発電動作について説明する。
まず、図21に示すように、固定基板320の集電部322aが可動基板410のエレクトレット部材411の部分411aと対応する領域に位置するので、エレクトレット部材411の負電荷により、集電部322aには正電荷が誘導される。また、固定基板320の集電部321aが可動基板410の導電層413と対応する領域に位置するので、集電部321aには正電荷が誘導されない。
次に、図22に示すように、静電誘導型発電装置400にX方向の振動を加えることにより、可動基板410がX方向に移動する。このとき、固定基板320の集電部322aが可動基板410の導電層413と対応する領域に位置するので、集電部322aに誘導されていた正電荷が開放されて連結部322bおよび配線331を介してブリッジ整流回路30に向かって移動する。また、固定基板320の集電部321aが可動基板410のエレクトレット部材411の部分411aと対応する領域に位置するので、エレクトレット部材411の負電荷により、集電部321aには、配線330および連結部321bを介して正電荷が誘導される。これにより、ブリッジ整流回路30には、C方向の電流が流れることにより、整流が行われて負荷2にB方向の電流が出力される。具体的には、ダイオード33、配線42、負荷2、配線43およびダイオード34の順に電流が流れる。
その後、図23に示すように、可動基板410がX方向に移動する。このとき、固定基板320の集電部322aが可動基板410のエレクトレット部材411の部分411aと対応する領域に位置するので、エレクトレット部材411の負電荷により、集電部322aには、配線331および連結部322bを介して正電荷が誘導される。また、固定基板320の集電部321aが可動基板410の導電層413と対応する領域に位置するので、集電部321aに誘導されていた正電荷が開放されて連結部321bおよび配線330を介してブリッジ整流回路30に向かって移動する。これにより、ブリッジ整流回路30には、A方向の電流が流れることにより、整流が行われて負荷2にB方向の電流が出力される。具体的には、ダイオード31、配線42、負荷2、配線43およびダイオード32の順に電流が流れる。
また、上記動作が繰り返し行われることにより、発電が継続して行われる。
第6実施形態では、上記のように、所定の間隔を隔てて導電層413を形成することによって、エレクトレット部材411の部分411aに蓄積された負電荷がエレクトレット部材411の導電層413と対応する部分に移動する場合にも、その移動した負電荷により導電層413と対応する領域(集電部321aまたは322aが位置する領域)が影響を受けるのを抑制することができる。これにより、導電層413が形成された領域と対応する領域と、導電層413が形成されていない領域(エレクトレット部材411の部分411a)と対応する領域との間に容易に電位差を発生させることができる。
また、第6実施形態では、エレクトレット部材411の主表面上に電荷流出抑制膜414を設けることによって、エレクトレット部材411の電位が低下するのを抑制することができるので、静電誘導型発電装置400の発電効率が低下するのを抑制することができる。
なお、第6実施形態のその他の効果は、上記第4実施形態と同様である。
次に、上記第6実施形態の固定基板320に集電電極321および322を形成した効果を確認するために行った実験について説明する。この実験では、上記第6実施形態に対応する実施例による静電誘導型発電装置と、比較例による静電誘導型発電装置とを作製した。実施例による静電誘導型発電装置では、集電部321aの幅W1および集電部322aの幅W2を1mmにするとともに、集電部321aおよび322aの間隔L6を30μmにした。また、比較例による静電誘導型発電装置では、固定基板320に集電電極321のみを形成したこと以外は、上記実施例による静電誘導型発電装置と同様である。そして、振幅(X方向の移動量):1mm、周波数:30Hz、測定面積:4cm2、エレクトレット部材411の表面電位:−272Vの条件下で、実施例による静電誘導型発電装置および比較例による静電誘導型発電装置の単位面積当たりの発電量を測定した。
上記測定を4回行い、その平均は、実施例による静電誘導型発電装置では、5.25μW/cm2であり、比較例による静電誘導型発電装置では、2.51μW/cm2であった。上記測定結果から、固定基板320に集電電極321および322を形成した実施例による静電誘導型発電装置は、固定基板320に集電電極321のみを形成した比較例による静電誘導型発電装置に比べて、発電量が約2.1倍になることが判明した。
次に、固定基板320に形成した集電部321aおよび322aの間隔L6の影響を確認するために行ったシミュレーションについて説明する。このシミュレーションでは、集電部321aの幅W1および322aの幅W2を1mmに設定するとともに、集電部321aおよび322aの全体の幅を10mmに設定した。また、導電層413の幅を1mmに設定するとともに、導電層413の間隔を1mmに設定した。そして、集電部321aおよび322aの間隔L6と、発電量との関係を計算した。その結果を図24に示す。
図24に示したシミュレーション結果より、間隔L6が50μmのときに発電量が最大であった。すなわち、間隔L6が集電部321aの幅W1および集電部322aの幅W2の1/20(=50μm/1mm)のときに発電量が最大になることが判明した。また、発電量のピーク値の75%以上の発電量を確保するために、間隔L6は、10μm〜100μmが好ましいと考えられる。つまり、間隔L6が集電部321aの幅W1および集電部322aの幅W2に対して1/100(=10μm/1mm)〜1/10(=100μm/1mm)であることが好ましいことが判明した。
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
たとえば、上記第1〜第6実施形態では、SiO2からなるエレクトレット部材を用いる例を示したが、本発明はこれに限らず、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリプロピレン(PP)およびポリエチレン(PE)などの有機高分子化合物またはSiNなどのシリコン化合物からなるエレクトレット部材を用いてもよい。なお、ポリテトラフルオロエチレンとしては、テフロン(登録商標)およびサイトップ(登録商標)などがある。
また、上記第1〜第6実施形態では、静電誘導型変換装置の一例として静電誘導型発電装置を示したが、本発明はこれに限らず、エレクトレット部材を含む静電誘導型変換装置であれば、静電誘導型アクチュエータなどのその他の静電誘導型変換装置にも適用可能である。
また、上記第1〜第6実施形態では、集電電極を櫛状に形成するとともに、エレクトレット部材を電極の電極部上に形成する例を示したが、本発明はこれに限らず、集電電極の集電部とエレクトレット部材とを、振動により対向する面積が変化する形状であれば他の形状に形成してもよい。
また、上記第1〜第6実施形態では、本発明の回路部としてブリッジ整流回路30設ける例を示したが、本発明はこれに限らず、ブリッジ整流回路とDC−DCコンバータとからなる回路部を設けてもよいし、DC−DCコンバータのみからなる回路部を設けてもよい。
また、上記第1〜第3実施形態では、可動基板および固定基板の電極の電極部上に複数のエレクトレット部材を形成する例を示したが、本発明はこれに限らず、可動基板および固定基板の電極の電極部および連結部上に櫛形状のエレクトレット部材を1つ形成してもよい。
また、上記第1および第3実施形態では、可動基板および固定基板に負電荷が蓄積されたエレクトレット部材を形成する例を示したが、本発明はこれに限らず、可動基板および固定基板に正電荷が蓄積されたエレクトレット部材を形成してもよい。
また、上記第2実施形態では、可動基板61に正電荷が蓄積されたエレクトレット部材62を形成するとともに、固定基板21に負電荷が蓄積されたエレクトレット部材212を形成する例を示したが、本発明はこれに限らず、可動基板に負電荷が蓄積されたエレクトレット部材を形成するとともに、固定基板に正電荷が蓄積されたエレクトレット部材を形成してもよい。
また、上記第3実施形態では、エレクトレット部材82の上面よりも小さい高さを有するガード電極部811aを可動基板80に形成するとともに、エレクトレット部材92の上面よりも小さい高さを有するガード電極部911aを固定基板90に形成する例を示したが、本発明はこれに限らず、エレクトレット部材の上面よりも大きい高さを有するガード電極部を可動基板および固定基板に形成してもよい。
また、上記第4〜第6実施形態では、可動基板にエレクトレット部材を形成するとともに、固定基板に集電電極を形成する例を示したが、本発明はこれに限らず、固定基板にエレクトレット部材を形成するとともに、可動基板に集電電極を形成してもよい。