JP5172198B2 - エレクトレット素子および静電動作装置 - Google Patents

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Description

本発明は、エレクトレット素子および静電動作装置に関し、特に、電荷を蓄積することが可能なエレクトレット素子およびそのエレクトレット素子を備える静電動作装置に関する。
従来、電荷を蓄積することが可能なエレクトレット層(エレクトレット素子)を備えるエレクトレットシリコンコンデンサマイクロホンが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
上記特許文献1には、電荷を蓄積することが可能なエレクトレット層が形成された振動板電極と固定電極とを備え、振動板電極と固定電極とが相対的に移動することにより、振動板電極と固定電極との間の静電容量が変化することによって、電圧変化を発生させることが可能なエレクトレットシリコンコンデンサマイクロホンが開示されている。上記特許文献1では、エレクトレット層は、塗布法によって振動板電極の底部の全面に形成されている。
特開2003−163996号公報
しかしながら、上記特許文献1に開示された従来のエレクトレットシリコンコンデンサマイクロホンでは、振動板電極の底部の全面にエレクトレット層が形成されているので、エレクトレット層の側端面から電荷が流出してしまうという不都合がある。これにより、エレクトレット層に蓄積される電荷が小さくなるという問題点がある。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、エレクトレット膜に蓄積される電荷が小さくなるのを抑制することが可能なエレクトレット素子およびそのエレクトレット素子を備える静電動作装置を提供することである。
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面におけるエレクトレット素子は、電荷を蓄積することが可能なエレクトレット膜と、エレクトレット膜の側端面の周囲を取り囲むように形成された保護膜とを備え、保護膜は、エレクトレット膜の側端面の周囲を所定の間隔を隔てて取り囲むように形成されたエレクトレット材料からなる膜を含む
この場合、好ましくは、保護膜は、基板上に形成されるとともに、基板の端部から所定の間隔を隔てて形成されている。
上記した保護膜が基板の端部から所定の間隔を隔てて形成されているエレクトレット素子において、好ましくは、保護膜と基板の端部との間には、保護膜に蓄積された電荷が流出するのを抑制することが可能な有機材料からなる第1電荷流出抑制膜が形成されている。
上記した保護膜がエレクトレット膜の側端面の周囲を所定の間隔を隔てて取り囲むように形成されているエレクトレット素子において、好ましくは、エレクトレット膜と保護膜との間には、エレクトレット膜に蓄積された電荷が流出するのを抑制することが可能な有機材料からなる第2電荷流出抑制膜が形成されている。
この発明の第2の局面における静電動作装置は、固定電極と、固定電極と所定の距離を隔てて対向するように設けられ、固定電極に対して移動可能な可動電極と、固定電極および可動電極のいずれか一方の上面上に形成され、電荷を蓄積することが可能なエレクトレット膜と、エレクトレット膜の側端面の周囲を取り囲むように形成され保護膜とを備え保護膜は、エレクトレット膜の側端面の周囲を所定の間隔を隔てて取り囲むように形成されたエレクトレット材料からなる膜を含むエレクトレット素子とを備える。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態によるエレクトレット素子の斜視図である。また、図2は、図1の200−200線に沿った断面図である。まず、図1および図2を参照して、本発明の第1実施形態によるエレクトレット素子100の構造について説明する。
この第1実施形態によるエレクトレット素子100は、図1および図2に示すように、約300μm〜約1000μmの厚みを有する基板1の上面上に約0.1μm〜約100μmの厚みを有するSiOからなる電荷が注入されたエレクトレット膜2が形成されている。ここで、第1実施形態では、エレクトレット膜2の側端面の周囲を約0.1mm〜約5mmの間隔D1を隔てて取り囲むように、約0.1mm〜約5mmの幅W1と約0.1μm〜約100μmの厚みとを有するSiOからなる保護膜3が形成されている。また、保護膜3には、エレクトレット膜2と同様に電荷が注入されているとともに、エレクトレット膜2に蓄積された電荷が流出するのを抑制する機能を有する。また、エレクトレット膜2および保護膜3の上面上には、それぞれ、電荷の流出を抑制するための約0.3μmの厚みを有するMSQ(Methyl Silses Quioxane:メチルシルセスキオキサン)からなるMSQ膜4および5が形成されている。
図3〜図6は、電荷流出抑制膜の効果を説明するための図である。図3〜図6を参照して、本発明の第1実施形態による保護膜3の効果について説明する。
図3に示すように、エレクトレット膜2の周囲に保護膜3(図1参照)が形成されないエレクトレット素子100bの場合、エレクトレット膜2の端部では先にエレクトレット膜2に注入された電荷による反発力によって、注入される電荷がエレクトレット膜2の外に反れてしまう。これにより、電荷が注入されにくくなる。
これに対して、図4に示すように、エレクトレット膜2の周囲に保護膜3が形成されている場合、エレクトレット膜2に注入される電荷は、先に保護膜3に注入された電荷の反発力により、注入される電荷がエレクトレット膜2の外に反れてしまうことが抑制される。これにより、電荷が注入しやすくなる。
また、図5に示すように、エレクトレット膜2の周囲に保護膜3(図1参照)が形成されない場合、エレクトレット膜2に注入された電荷による電界は、エレクトレット膜2の中心近傍ではエレクトレット膜2の法線方向に沿うように発生する。一方、エレクトレット膜2の中心近傍から外れた位置では、電界が基板方向に曲がってしまう。これにより、電界の強さが小さくなってしまう。
これに対して、図6に示すように、エレクトレット膜2の周囲に保護膜3が形成されている場合、保護膜3に蓄積された電荷による電界により、エレクトレット膜2に注入された電荷による電界は、エレクトレット膜2の法線方向に沿うように発生する。
図7〜図9は、エレクトレット膜から電荷が流出する様子を説明するための図である。図7〜図9を参照して、本発明の第1実施形態による保護膜3の効果について説明する。
まず、図7に示すように、エレクトレット膜2と保護膜3とは、電荷が注入された状態となっている。なお、図7の白丸は、エレクトレット膜2と保護膜3とに保持されている電荷を示す。
次に、図8に示すように、保護膜3を劈開によって切断した場合、保護膜3の側端面では絶縁破壊が起こることにより、保持されていた電荷が流出する。つまり、保護膜3の側端面に電荷のリークパスが形成される。なお、図8の黒丸は、保護膜3から流出する電荷を示す。
次に、図9に示すように、時間の経過とともに保護膜3の側端面から次々に電荷が流出することにより、保護膜3に蓄積される電荷の量が小さくなる。一方、エレクトレット膜2では、保護膜3に蓄積された電荷による反発力のために、エレクトレット膜2の側端面から電荷が流出するのが抑制される。
図10〜図14は、エレクトレット膜の側端面から流出する電荷を測定した実験を説明するための図である。図10〜図14を参照して、エレクトレット膜12の側端面から流出する電荷を測定した実験について説明する。
まず、図10および図11に示すように、円形の基板11の上面上に、約1μmの厚みを有するSiOからなるエレクトレット膜12を形成した。また、エレクトレット膜12の上面上に、約0.3μmの厚みを有するMSQからなるMSQ膜13を形成した。
次に、図11に示すように、MSQ膜13の上面上からコロナ放電により電荷を注入した。この後、図12に示すように、基板11、エレクトレット膜12およびMSQ膜13を1/4に劈開したサンプルを形成した。
次に、温度65℃、湿度75%および1時間の条件で、湿度における加速試験を行った。この後、エレクトレット膜12の表面電位の測定を約15mmの間隔ごとに行った。なお、測定範囲は、図12に示す1点鎖線に囲まれた範囲である。また、図12に示す、点線で囲まれた範囲は、劈開面近傍を示している。
まず、図13に示すように、劈開の直後では、点線で示される劈開面近傍の電位は、劈開面方向に徐々に電位が小さくなっていることが判明した。また、劈開面近傍の電位の平均値(約−940V)は、劈開面近傍以外の部分の電位の平均値(約−1007V)よりも小さくなっていることが判明した。
また、図14に示すように、湿度における加速試験の後では、劈開面近傍の電位は、図13と同様に、劈開面方向に徐々に電位が小さくなっていることが判明した。また、劈開面近傍の電位の平均値(約−845V)は、劈開面近傍以外の部分の電位の平均値(約−968V)よりも小さくなっていることが判明した。ここで、劈開の直後と、加速試験の後との表面電位の変化率を、劈開面近傍と劈開面近傍以外とで比較すると、劈開面近傍では、表面電位が約10.1%減少していたのに対して、劈開面近傍以外では、表面電位は、約3.8%減少していた。これにより、劈開面近傍では、劈開面近傍以外よりも電荷の流出が大きくなっていることが確認された。
第1実施形態では、上記のように、保護膜3をエレクトレット膜2の側端面の周囲を取り囲むように形成することにより、エレクトレット膜2の側端面がエレクトレット素子100の側端面に露出しないので、エレクトレット素子100をダイシングや劈開などの切断によりチップ化する際にエレクトレット膜2の側端面にダメージが入るのを抑制することができる。これにより、エレクトレット膜2の側端面から電荷が流出するのを抑制することができるので、エレクトレット膜2に蓄積される電荷が小さくなるのを抑制することができる。なお、エレクトレット膜2の側端面は、たとえばエッチングなどによりパターニングされているが、劈開による側端面のダメージよりも、エッチングによるダメージのほうが小さいので、エレクトレット膜2を劈開する場合に比べて、エレクトレット膜2の側端面からの電荷の流出を抑制することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、保護膜3をエレクトレット膜2の側端面の周囲を間隔D1を隔てて取り囲むように形成するとともに、電荷が蓄積されたSiOから形成することによって、保護膜3がエレクトレット膜2の側端面の周囲を所定の間隔を隔てて取り囲むように形成されているので、保護膜3に蓄積された電荷による電界により、電荷の注入の際に注入される電荷がエレクトレット膜2の外部に反れてしまうのを抑制することができる。また、保護膜3を電荷が蓄積されたSiOから形成することによって、保護膜3に蓄積された電荷による反発力により、エレクトレット膜2に蓄積された電荷がエレクトレット膜2の側端面から流出するのを抑制することができる。これにより、エレクトレット膜2に蓄積される電荷が小さくなるのをより抑制することができる。また、保護膜3に蓄積された電荷による電界により、エレクトレット膜2に蓄積された電荷による電界の方向がエレクトレット膜2の法線方向から反れてしまうのを抑制することができるので、エレクトレット膜2に蓄積された電荷による電界の密度が小さくなるのを抑制することができる。
(第2実施形態)
図15は、本発明の第2実施形態によるエレクトレット素子の斜視図である。また、図6は、図15の210−210線に沿った断面図である。図15および図16を参照して、この第2実施形態では、上記第1実施形態と異なり、保護膜23が基板1の端部から間隔D2を隔てて形成されているエレクトレット素子101の構造について説明する。
この第2実施形態によるエレクトレット素子101は、図15および図16に示すように、基板1の端部から所定の間隔D2を隔てるとともに、エレクトレット膜2の周囲を約0.1mm〜約5mmの間隔D1を隔ててエレクトレット膜2の側端面の周囲を取り囲むように保護膜23が形成されている。また、保護膜23の上面上には、電荷の流出を抑制するための約0.3μmの厚みを有するMSQ膜25が形成されている。なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
第2実施形態では、上記のように、保護膜23を基板1上に形成するとともに、基板1の端部から間隔D2を隔てて形成することによって、保護膜23と基板1の端部との間には間隔D2が空いているので、エレクトレット素子101をダイシングや劈開などの切断によりチップ化する際に、保護膜23が劈開によるダメージを受けるのを抑制することができる。なお、保護膜23の側端面は、たとえばエッチングなどによりパターニングされているが、劈開による側端面のダメージよりも、エッチングによるダメージのほうが小さいので、保護膜23を劈開する場合に比べて、保護膜23の側端面からの電荷の流出を抑制することができる。
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
(第3実施形態)
図17は、本発明の第3実施形態によるエレクトレット素子の斜視図である。また、図18は、図17の220−220線に沿った断面図である。図17および図18を参照して、この第3実施形態では、上記第2実施形態と異なり、保護膜23と基板1の端部との間に電荷流出抑制膜36が形成されているエレクトレット素子102の構造について説明する。
この第3実施形態によるエレクトレット素子102は、図17および図18に示すように、保護膜23と基板1の端部との間には、保護膜23に蓄積された電荷が流出するのを抑制することが可能なMSQからなる電荷流出抑制膜36が形成されている。なお、電荷流出抑制膜36は、本発明の「第1電荷流出抑制膜」の一例である。また、MSQは、本発明の「電荷が流出するのを抑制することが可能な有機材料」の一例である。なお、第3実施形態のその他の構成は、上記第2実施形態と同様である。
第3実施形態では、上記のように、保護膜23と基板1の端部との間に保護膜23に蓄積された電荷が流出するのを抑制することが可能なMSQからなる電荷流出抑制膜36を形成することによって、保護膜23の側端面に電荷流出抑制膜36が形成されているので、保護膜23の側端面から電荷が流出するのを抑制することができる。これにより、保護膜23に蓄積される電荷が小さくなるのを抑制することができるので、エレクトレット膜2に蓄積された電荷に対する反発力を大きくすることができる。その結果、エレクトレット膜2に蓄積される電荷が小さくなるのを抑制することができる。
なお、第3実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
(第4実施形態)
図19は、本発明の第4実施形態によるエレクトレット素子の斜視図である。また、図20は、図19の230−230線に沿った断面図である。図19および図20を参照して、この第4実施形態では、上記第2実施形態と異なり、エレクトレット膜2と保護膜23との間に電荷流出抑制膜46が形成されているエレクトレット素子103の構造について説明する。
この第4実施形態によるエレクトレット素子103は、図19および図20に示すように、エレクトレット膜2と保護膜23との間には、エレクトレット膜2に蓄積された電荷が流出するのを抑制することが可能なMSQからなる電荷流出抑制膜46が形成されている。なお、電荷流出抑制膜46は、本発明の「第2電荷流出抑制膜」の一例である。また、MSQは、本発明の「電荷が流出するのを抑制することが可能な有機材料」の一例である。なお、第4実施形態のその他の構成は、上記第2実施形態と同様である。
第4実施形態では、上記のように、エレクトレット膜2と保護膜23との間にエレクトレット膜2に蓄積された電荷が流出するのを抑制することが可能なMSQからなる電荷流出抑制膜46を形成することによって、エレクトレット膜2の側端面に電荷流出抑制膜46が形成されているので、エレクトレット膜2の側端面から電荷が流出するのを抑制することができる。これにより、エレクトレット膜2に蓄積される電荷が小さくなるのを抑制することができる。
なお、第4実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
(第5実施形態)
図21は、本発明の第5実施形態によるエレクトレット素子の斜視図である。また、図22は、図21の240−240線に沿った断面図である。図21および図22を参照して、この第5実施形態では、上記第1実施形態と異なり、エレクトレット膜52の側端面の周囲を取り囲むように電荷流出抑制膜54が形成されているエレクトレット素子104の構造について説明する。
この第5実施形態によるエレクトレット素子104は、図21および図22に示すように、約300μm〜約1000μmの厚みを有する基板51の上面上に約0.1μm〜約100μmの厚みを有するSiOからなる電荷が注入されたエレクトレット膜52が形成されている。また、エレクトレット膜52の上面上には、電荷の流出を抑制するための約0.3μmの厚みを有するMSQ膜53が形成されている。また、エレクトレット膜52およびMSQ膜53の側端面の周囲を取り囲むようにMSQからなる電荷流出抑制膜54が形成されている。
第5実施形態では、上記のように、エレクトレット膜52の側端面の周囲を取り囲むように電荷流出抑制膜54を形成することにより、エレクトレット素子104を劈開によりチップ化する際に、エレクトレット膜52の側端面にダメージが入るのを抑制することができるので、エレクトレット膜52の側端面から電荷が流出するのを抑制することができる。これにより、エレクトレット膜52に蓄積される電荷が小さくなるのを抑制することができる。また、エレクトレット膜52の周囲には、エレクトレット膜52に蓄積された電荷が流出するのを抑制する電荷流出抑制膜54が形成されているので、エレクトレット膜52の側端面から電荷が流出するのをより抑制することができる。
(第6実施形態)
図23は、本発明の第6実施形態によるエレクトレット素子の斜視図である。また、図24は、図23の250−250線に沿った断面図である。図23および図24を参照して、この第6実施形態では、上記第5実施形態と異なり、エレクトレット膜62の表面上を取り囲むように電荷流出抑制膜63が形成されているエレクトレット素子105の構造について説明する。
この第6実施形態によるエレクトレット素子105は、図23および図24に示すように、エレクトレット膜62の表面上を覆うように、MSQからなる電荷流出抑制膜63が形成されている。なお、第6実施形態のその他の構成は、上記第5実施形態と同様である。
第6実施形態では、上記のように、エレクトレット膜62の表面上に電荷流出抑制膜63を形成することにより、エレクトレット素子105をダイシングや劈開などの切断によりチップ化する際に、エレクトレット膜62の側端面にダメージが入るのを抑制することができるので、エレクトレット膜62の側端面から電荷が流出するのを抑制することができる。これにより、エレクトレット膜62に蓄積される電荷が小さくなるのを抑制することができる。また、エレクトレット膜62の周囲には、エレクトレット膜62に蓄積された電荷が流出するのを抑制する電荷流出抑制膜63が形成されているので、エレクトレット膜62の側端面から電荷が流出するのをより抑制することができる。
(第7実施形態)
図25は、本発明の第7実施形態による静電誘導型発電装置の概略図である。図26は、本発明の第7実施形態によるエレクトレット素子の斜視図である。図25および図26を参照して、第7実施形態による静電誘導型発電装置110の構造について説明する。なお、この第7実施形態では、静電動作装置の一例である静電誘導型発電装置110に本発明を適用した場合について説明する。
この第7実施形態による静電誘導型発電装置110は、図25に示すように、固定基板120と、固定基板120に対して移動可能な可動基板130と、回路部140とを備えている。また、静電誘導型発電装置110には、静電誘導型発電装置110によって駆動される負荷150が接続されている。この負荷150は、接地されている。
図26に示すように、エレクトレット素子106の固定基板120は、約10mm〜約50mmの幅W3と約300μm〜約1000μmの厚みとを有する導電性の材料からなる。なお、固定基板120は、本発明の「固定電極」の一例である。この固定基板120には、回路部140が接続されている。
また、固定基板120の上面上には、約0.1μm〜約100μmの厚みを有するSiOからなる電荷が注入されたエレクトレット膜121が形成されている。ここで、第7実施形態では、エレクトレット膜121の側端面の周囲を約0.1mm〜約5mmの間隔D1を隔てて取り囲むように、約0.1mm〜約5mmの幅W4と約0.1μm〜約100μmの厚みとを有するSiOからなる保護膜122が形成されている。また、保護膜122には、エレクトレット膜121と同様に電荷が注入されているとともに、エレクトレット膜121に蓄積された電荷が流出するのを抑制する機能を有する。また、エレクトレット膜121および保護膜122の上面上には、それぞれ、電荷の流出を抑制するための約0.3μmの厚みを有するMSQ膜123および124が形成されている。また、MSQ膜123の上面上には、櫛歯状に形成されたAlまたはTiなどからなる約0.1μm〜約10μmの厚みを有する金属膜125が形成されている。なお、金属膜125の櫛歯の歯の幅W5と、歯と歯の間隔W6は、ぞれぞれ、約0.01mm〜約1mmである。
静電誘導型発電装置110の可動基板130は、約300μm〜約1000μmの厚みを有するガラスなどからなる。また、可動基板130の固定基板120側の上面上には、所定の間隔を隔てて可動電極131が形成されている。また、可動電極131は、約0.05μm〜約1μmの厚みを有するAlなどからなるとともに、幅W7を有する。また、可動電極131には、回路部140が接続されている。
また、回路部140は、発電された電力を整流するための整流回路141と、整流回路141により整流された直流電流の電圧値を変換するためのDC−DCコンバータ142とを含んでいる。整流回路141は、固定基板120および可動電極131に接続されているとともに、DC−DCコンバータ142に接続されている。また、DC−DCコンバータ142には、静電誘導型発電装置110によって発電された電力により駆動される負荷150が接続されている。また、DC−DCコンバータ142は、接地されている。
次に、図25を参照して、本発明の第7実施形態による静電誘導型発電装置110の発電動作について説明する。
まず、図25に示すように、静電誘導型発電装置110に振動が加わらない状態では、エレクトレット膜121の表面と可動電極131とが所定の間隔を隔てて対向するように配置されているので、可動電極131には、静電誘導によりエレクトレット膜121に蓄積される電荷と反対の電荷が蓄積される。
次に、静電誘導型発電装置110に水平方向(X方向)の振動が加わることに起因して、可動電極131がX方向に移動することにより、可動電極131は、櫛歯状の金属膜125の歯の部分と対向する位置に移動する。これにより、可動電極131と対向する領域の電位が変化するので、可動電極131に静電誘導により蓄積される電荷の量が変化する。この電荷の変化分が電流となり、整流回路141およびDC−DCコンバータ142を介して負荷150に出力される。そして、X方向の振動により、可動電極131が、上記動作を繰り返すことにより、発電が継続して行われる。
第7実施形態では、上記のように、エレクトレット膜121の側端面の周囲を取り囲むように形成され、エレクトレット膜121に蓄積された電荷が流出するのを抑制する保護膜122を含むエレクトレット素子106を備えることによって、保護膜122によりエレクトレット膜121に蓄積される電荷が小さくなるのを抑制するエレクトレット素子106を用いることができるので、静電誘導型発電装置110の発電効率を向上させることができる。
(第8実施形態)
図27は、本発明の第8実施形態による静電誘導型発電装置の概略図である。図28は、図27の260−260線に沿った断面図である。図27および図28を参照して、この第8実施形態では、上記第7実施形態と異なり、スペーサ部126が形成されたエレクトレット素子107の全体を取り囲むように可動電極132が形成されている静電誘導型発電装置111の構造について説明する。
この第8実施形態による静電誘導型発電装置111は、図27および図28に示すように、エレクトレット素子107の全体を取り囲むように約1mm〜約5mmの厚みを有するエポキシ樹脂などのパッケージ用樹脂からなる可動基板132が形成されている。また、可動基板132の表面上には、可動電極133が形成されている。また、MSQ膜124の上面上には、金属膜125と可動電極133とが接触するのを抑制するための約1μm〜約50μmの厚みを有するシリコン酸化膜などの誘電体からなるスペーサ部126が形成されている。なお、第8実施形態のその他の構成は、上記第7実施形態と同様である。また、第8実施形態の動作は、上記第7実施形態と同様である。
第8実施形態では、上記のように、エレクトレット素子107の全体を取り囲むように可動基板132が形成されていることによって、静電誘導型発電装置111の外気とエレクトレット膜121とが遮断されているので、エレクトレット膜121の周囲に塵や水分などが侵入するのを抑制することができる。これにより、エレクトレット膜121から電荷が流出するのを抑制することができる。
また、第8実施形態では、上記のように、MSQ膜124の上面上にスペーサ部126を形成することによって、金属膜125と可動電極133とが接触するのが抑制されるので、金属膜125と可動電極133とが破壊されるのを抑制することができる。
なお、第8実施形態のその他の効果は、上記第7実施形態と同様である。
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
たとえば、上記第1〜第8実施形態では、SiOからなるエレクトレット膜を用いる例を示したが、本発明はこれに限らず、シリコン窒化膜、テフロン(登録商標)に代表されるようなポリテトラフルオロエチレン(PTFE)およびテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)などからなる体積抵抗率が1×1015Ωcm以上のエレクトレット膜を用いるようにしてもよい。
また、上記第1〜第8実施形態では、エレクトレット膜の上面上にMSQからなるMSQ膜を用いる例を示したが、本発明はこれに限らず、たとえばSiOCのようなMSQ以外の電荷の流出を抑制することが可能な有機材料からなる膜を用いるようにしてもよい。
また、上記第3〜第6実施形態では、MSQからなる電荷流出抑制膜36、46、54および63を用いる例を示したが、本発明はこれに限らず、たとえばSiOCのようなMSQ以外の電荷の流出を抑制することが可能な有機材料からなる電荷流出抑制膜を用いるようにしてもよい。
また、上記第3実施形態では、保護膜33と基板31の端部との間に電荷流出抑制膜36を形成する例を示したが、本発明はこれに限らず、上記第4実施形態と同様に、エレクトレット膜32と保護膜33との間にも電荷流出抑制膜を形成してもよい。
また、上記第7実施形態および第8実施形態では、静電動作装置の一例として静電誘導型発電装置を示したが、本発明はこれに限らず、エレクトレット素子を含む静電動作装置であれば、静電誘導型アクチュエータなどのその他の静電動作装置にも適用可能である。
また、上記第7実施形態および第8実施形態では、エレクトレット膜121の上面上に櫛歯状の金属膜125を形成する例を示したが、本発明はこれに限らず、エレクトレット膜を櫛歯状に形成してもよい。
また、上記第7実施形態および第8実施形態では、固定電極にエレクトレット膜を形成する例を示したが、本発明はこれに限らず、可動電極にエレクトレット膜を形成するようにしてもよい。
また、上記第7実施形態および第8実施形態では、可動電極を移動させることにより静電誘導型発電装置が発電を行う例を示したが、本発明はこれに限らず、固定電極を移動させることにより発電を行ってもよい。
また、上記第7実施形態および第8実施形態に示した静電誘導型発電装置は、たとえば、腕時計、体温計、温度計、万歩計、リモコン、携帯オーディオ、キーレスエントリー、補聴器、ペースメーカ、レーザポインター、電動歯ブラシ、センサ、電子ブック、携帯電話、デジタルカメラ、ゲーム機、冷蔵庫、洗濯機、食器乾燥機、タイヤ空気圧センサなどに適用可能である。
本発明の第1実施形態によるエレクトレット素子の斜視図である。 図1の200−200線に沿った断面図である。 エレクトレット膜の周囲に電荷流出抑制膜が形成されない場合の電荷が注入される様子を示す図である。 エレクトレット膜の周囲に電荷流出抑制膜が形成される場合の電荷が注入される様子を示す図である。 エレクトレット膜の周囲に電荷流出抑制膜が形成されない場合の電荷の注入後の電界の向きを示す図である。 エレクトレット膜の周囲に電荷流出抑制膜が形成される場合の電荷の注入後の電界の向きを示す図である。 エレクトレット膜から電荷が流出する様子を説明するための図である。 エレクトレット膜から電荷が流出する様子を説明するための図である。 エレクトレット膜から電荷が流出する様子を説明するための図である。 エレクトレット膜の側端面から流出する電荷を測定した実験のサンプルの平面図である。 図10の205−205線に沿った断面図である。 図10のサンプルを1/4に劈開した平面図である。 劈開直後のエレクトレット膜の表面電位を表す図である。 湿度における加速試験後のエレクトレット膜の表面電位を表す図である。 本発明の第2実施形態によるエレクトレット素子の斜視図である。 図15の210−210線に沿った断面図である。 本発明の第3実施形態によるエレクトレット素子の斜視図である。 図17の220−220線に沿った断面図である。 本発明の第4実施形態によるエレクトレット素子の斜視図である。 図19の230−230線に沿った断面図である。 本発明の第5実施形態によるエレクトレット素子の斜視図である。 図21の240−240線に沿った断面図である。 本発明の第6実施形態によるエレクトレット素子の斜視図である。 図23の250−250線に沿った断面図である。 本発明の第7実施形態による静電誘導型発電装置の概略図である。 本発明の第7実施形態によるエレクトレット素子の斜視図である。 本発明の第8実施形態による静電誘導型発電装置の概略図である。 図27の260−260線に沿った断面図である。
符号の説明
1、21、31、41、51、61 基板
2、22、32、42、52、62、122 エレクトレット膜
3、23、33、43、123 保護膜
36 電荷流出抑制膜(第1電荷流出抑制膜)
46 電荷流出抑制膜(第2電荷流出抑制膜)
100、101、102、103、104、105、106 エレクトレット素子
110、111 静電誘導型発電装置(静電動作装置)
120 固定基板(固定電極)
131、133 可動電極

Claims (5)

  1. 電荷を蓄積することが可能なエレクトレット膜と、
    前記エレクトレット膜の側端面の周囲を取り囲むように形成された保護膜とを備え、
    前記保護膜は、前記エレクトレット膜の側端面の周囲を所定の間隔を隔てて取り囲むように形成されたエレクトレット材料からなる膜を含む、エレクトレット素子。
  2. 前記保護膜は、基板上に形成されるとともに、前記基板の端部から所定の間隔を隔てて形成されている、請求項1に記載のエレクトレット素子。
  3. 前記保護膜と前記基板の端部との間には、前記保護膜に蓄積された電荷が流出するのを抑制することが可能な有機材料からなる第1電荷流出抑制膜が形成されている、請求項2に記載のエレクトレット素子。
  4. 前記エレクトレット膜と前記保護膜との間には、前記エレクトレット膜に蓄積された電荷が流出するのを抑制することが可能な有機材料からなる第2電荷流出抑制膜が形成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のエレクトレット素子。
  5. 固定電極と、
    前記固定電極と所定の距離を隔てて対向するように設けられ、前記固定電極に対して移動可能な可動電極と、
    前記固定電極および前記可動電極のいずれか一方の上面上に形成され、電荷を蓄積することが可能なエレクトレット膜と、前記エレクトレット膜の側端面の周囲を取り囲むように形成された保護膜とを備え、
    前記保護膜は、前記エレクトレット膜の側端面の周囲を所定の間隔を隔てて取り囲むように形成されたエレクトレット材料からなる膜を含むエレクトレット素子とを備える、静電動作装置。
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