JP4338168B2 - 冷凍食品の解凍方法及びこの解凍方法に用いられる解凍装置 - Google Patents

冷凍食品の解凍方法及びこの解凍方法に用いられる解凍装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は冷凍食品の解凍方法及びこの解凍方法に用いられる解凍装置に関し、特に、冷凍食品を解凍する際に発生する結露及び乾燥を防止するための方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、冷凍食品、特に、中食と呼ばれる弁当、すし類、惣菜、菓子類、及びパン類等、解凍後に加工又は加熱調理等を要しない調理済冷凍食品を解凍する際には、解凍中における温度及び相対湿度を的確に制御することが難しく、これら温度及び相対湿度の時系列的変化を適切に制御しないと、非包装冷凍食品である所謂裸の冷凍食品においては、解凍中に乾燥又は結露に起因して食品表層部に変色、退色、パサツキ、及び膨潤(ふやけ)等の不良が発生することが多い。このような不良が発生すると、食品としての外観、食味、及び食感等が著しく劣化してしまい、商品価値が低下する。甚だしい場合には、商品価値が滅失してしまうことになる。
【0003】
一方、包装された冷凍食品(容器入り冷凍食品を含む)において、解凍の際、包装(容器)内壁に水分の他、含有物質である酢酸、アルコール、及び香料等の揮発性物質が凝縮ことがある。そして、解凍中又は解凍終了後に解凍装置から解凍済食品を取り出す際、前述のように、凝縮した水分及び他の揮発性物質が食品表層部に落下するか又は浸透して、食品に変色、退色、トッピングの流れ、及び膨潤(ふやけ)が発生することがある。
【0004】
また、解凍の際、冷凍食品から発生する水分及びその他の揮発性成分が凝縮するばかりでなく、解凍装置内に存在する空気中の水蒸気が結露して、包装(容器入りを含む)の全部又は一部が吸湿性の材質であると、吸湿によって包材又は容器が変形するばかりでなく、包材又は容器上の印刷に所謂流れが発生し、この流れによって商品価値が低下してしまうことがある。そして、甚だしい場合には、商品価値が滅失してしまう。
【0005】
例えば、コンビニエンスストアー及び弁当店等で販売されている包装されたおにぎりを電子レンジで解凍すると、のり及び飯の表層部がべたべたとなって、おにぎりとしての価値が甚だしく低下してしまうことになる。一方、容器に入った弁当を電子レンジで解凍すると、容器に接する食品、特に食品の上面には、凝縮した水分及びその他の揮発性物質が食品表層部に浸透して、食品に変色、ソース等のトッピングの流れ、及び退色が発生してしまう。
【0006】
そして、一般的に使用されている熱媒体として空気を用いた解凍方法では、解凍了後、解凍食品を装置から取り出す際、取り出す場所の空気温度及び湿度(空気露点温度)が不適切なため、包装内に結露が発生するばかりでなく、包装外表面にも結露が生じて、電子レンジ解凍と同様に食品及び包材にダメージが発生する。このようなダメージを受けて変性又は変形すると、元の食品の性質を喪失した別の食品となってしまい、商品価値が失われてしまう。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このため、近年、中食を消費者へ提供する際には、所謂チルド又は常温流通が用いられている。このため、中食等の食品を製造して、食品が消費者の手に渡るまで長時間が経過してしまい、食味が低下するばかりでなく、常温流通であることを考慮すると、微生物が繁殖してしまうことがある。このような不具合を防止するため、食品改良材や静菌剤等を使用して、一日3便〜4便の配送を行っている。このような配送システムを取ると、製造者、配送者、及び店舗では、365日24時間体制を取らねばならず、しかも、売れ残り等が発生すると、常温流通であるため、当然食品を破棄しなければならず、食品破棄によるロスが不可避的に発生してしまう。
【0008】
このようなチルド又は常温流通における不具合を防止するため、中食の冷凍化が試みられているが、前述のような解凍に起因する不具合によって、商品価値の劣化・減少が発生するため、現時点では、カレー及びピラフ等の解凍と同時に再加熱される極めて限られた商品が冷凍化されているにすぎない。
【0009】
本発明の目的は、冷凍食品を解凍する際に生じる水分、その他の揮発性物質の蒸発及び凝縮を防止するとともに、食品の乾燥を防止して、冷凍食品を冷凍前の品質に再現することのできる冷凍食品の解凍方法を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は安全で作りたての品質を保持することのできる冷凍食品の解凍方法を提供することにある。
【0011】
本発明のさらに他の目的は冷凍食品を冷凍前の品質に再現することのできる解凍装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、冷凍食品(以下被解凍食品という)を解凍するための解凍装置を用いて前記冷凍食品を解凍する際に用いられる解凍方法において、
断熱板で構成されている解凍装置筐体と、被解凍食品を収納する収納棚と、解凍装置筐体内の循環空気(以下解凍装置内空気という)を加熱する加熱手段と、前記装置筐体に設けた開閉可能な開口部とを具えた前記解凍装置を用意し、
前記解凍装置の収納棚内に前記被解凍食品を収納した後、前記開口部を閉塞して解凍装置内と前記解凍装置が設置されている室内との空気の流通を阻止した状態で、
前記解凍装置内空気温度を被解凍食品表面温度より高く且つ前記解凍装置が設置されている室内空気(以下外部空気という)温度より高くなるように加熱制御して前記被解凍食品を解凍する加熱解凍ステップと、
前記被解凍食品を解凍後、前記開口部を開き、前記外部空気を前記解凍装置内に流入させるとともに、前記加熱解凍ステップで加熱された解凍装置内空気、水分、その他の揮発性成分を解凍装置外の室内に排出して、解凍装置内空気温度と解凍装置筐体外の室内温度とを略平衡にさせる平衡ステップと、
その後に前記解凍された冷凍品を前記解凍装置から取り出すステップとを有することを特徴とする。
【0013】
上述のようにして、解凍中においては解凍装置内空気を循環させつつ解凍を行い、解凍品を解凍装置から取り出す前に、解凍装置内の空気温度を前記解凍装置が設置された室内の温度に略平衡状態とすれば、解凍品に結露及び乾燥等が生じることなく、解凍後の解凍品を冷凍前の品質に再現することができる(つまり、作りたての品質を保持できる)ばかりでなく、冷凍食品を解凍して解凍品を得るようにしたため、チルド又は常温流通に比べて、細菌の繁殖等について安全性を確保できることになる。そして、解凍品を解凍装置から取り出す前に、解凍装置内の湿度も合わせて解凍装置が設置された箇所の湿度に略平衡状態とすれば、より効果的に結露等が防止でき、さらに良好に解凍後の解凍品を冷凍前の品質に再現することができる。
【0014】
例えば、前記平衡ステップで、被解凍食品を解凍後、前記外部空気を前記解凍装置内に流入させる際に、解凍装置内の除湿を行うようにしてもよい。このようにすれば、容易に解凍装置内の空気温度を前記解凍装置が設置された箇所の温度に略平衡状態とすることができ、さらには、解凍装置内の空気温度及び湿度を解凍装置が設置された箇所の温度及び湿度に略平衡させることができることになる。
【0015】
さらに、包装材で包装されている被解凍食品を解凍するための解凍装置を用いて前記被解凍食品を解凍する際に用いられる解凍方法において、
前記解凍装置は、断熱板で構成されている解凍装置筐体と、被解凍食品を収納する収納棚と、解凍装置内空気を加熱する加熱手段と、前記装置筐体に設けた開閉可能な開口部とを具え、
前記解凍装置の収納棚内に前記被解凍食品を収納した後、前記開口部を閉塞して解凍装置内と前記解凍装置が設置されている室内との空気の流通を阻止した状態で、
前記解凍装置内空気温度を包材温度及び被解凍食品表面温度より高く且つ外部空気温度より高くなるように加熱制御して前記被解凍食品を解凍する加熱解凍ステップと、
前記被解凍食品を解凍後、前記開口部を開き、前記外部空気を前記解凍装置内に流入させるとともに、前記加熱解凍ステップで加熱された解凍装置内空気、水分、その他の揮発性成分を解凍装置外の室内に排出して、解凍装置内空気温度と解凍装置筐体外の室内温度とを略平衡にさせる平衡ステップと、
その後に前記解凍された冷凍品を前記解凍装置から取り出すステップとを有することを特徴とする。このように温度制御を行えば、包装材内外面に結露等が生じることがなく、包装された冷凍食品を解凍する際、品質が劣化することがない。そして、解凍後においても包装材内面に結露が生じることがない。しかも包装材が吸湿性である場合においては、印刷インキ等の流れ及び包装材の変形が生じることがない。
【0016】
なお、本発明では、例えば、解凍装置が大型で、解凍装置が設置された箇所(解凍終了後解凍品を取り出して箱詰め又は化粧包装する作業場)のスペースが小さい場合には、作業場の空気温度又は空気露点温度を解凍装置内空気温度又は空気露点温度に略平衡状態とするほうが、速やかに略平衡状態とすることができるばかりでなく、略平衡状態とするためのエネルギーコストを削減することができることになる。
【0017】
本発明によれば、被解凍食品を解凍する際に用いられる解凍装置であって、前記被解凍食品が収納される収納筐体と、前記収納筐体内を加熱する加熱手段と、前記収納筐体内を冷却する冷却手段と、前記収納筐体内空気を循環させる循環手段と、前記加熱手段、前記冷却手段、及び前記循環手段、並びに前記収納筺体に設けた開閉可能な開口部の開閉操作を制御する制御手段とを有し、
前記制御手段は前記収納筐体内に前記被解凍食品を収納した後、前記開口部を閉塞して解凍装置内と前記解凍装置が設置されている室内との空気の連通を阻止した状態で前記収納筐体内の空気温度を被解凍品表面温度より高く且つ前記収納筐体が設置されている室内空気温度より高くなるように加熱制御して前記被解凍食品を解凍し、その後に前記開口部を開き、前記室内空気を前記解凍装置内に流入させるとともに、前記解凍装置内空気、水分、その他の揮発性成分を解凍装置外の室内に排出して、解凍装置内空気温度と前記室内空気温度とを略平衡にさせるように制御したことを特徴とする解凍装置が得られる。
【0018】
上述のようにして、解凍品を解凍装置から取り出す際、収納筐体内の空気温度を収納筐体が設置された外部温度に制御するようにすれば、解凍品に結露及び乾燥等が生じることなく、解凍品を冷凍前の品質に再現することのできる(つまり、作りたての品質を保持できる)ばかりでなく、冷凍食品を解凍して解凍品を得るようにしたため、チルド又は常温流通に比べて、細菌の繁殖等について安全性を確保できることになる。
【0019】
例えば、前記冷却手段は前記収納筐体を外部に対して選択的に開放するためのダンパーであり、前記制御手段は前記ダンパーを駆動制御して前記外部空気を前記収納筐体内に取り込むとともに前記筐体内空気を前記外部に排気して前記収納筐体内温度を前記予め規定された温度に制御する。このようにすれば、容易に収納筐体内の空気温度を収納筐体が設置された外部温度に制御することができる。
【0020】
さらに、前記収納筐体内を除湿する除湿手段を備えて、前記制御手段は前記除湿手段を制御して前記収納筐体内の湿度を前記収納筐体が配置された外部の湿度に調整するようにしてもよい。このように、収納筐体内の湿度を制御すれば、より解凍品の品質を向上させることができる。
【0021】
また、前記冷凍食品が包装材で包装されている際には、前記制御手段は前記収納筐体内に前記被解凍食品を収納した後、前記開口部を閉塞して解凍装置内と前記解凍装置が設置されている室内との空気の連通を阻止した状態で前記収納筐体内の空気温度を被解凍品表面温度より高く且つ前記収納筐体が設置されている室内空気温度より高くなるように加熱制御して前記被解凍食品を解凍し、その後に前記開口部を開き、前記室内空気を前記解凍装置内に流入させるとともに、前記解凍装置内空気、水分、その他の揮発性成分を解凍装置外の室内に排出して、解凍装置内空気温度と前記室内空気温度とを略平衡にさせるように制御したことを特徴とする。このように温度制御を行えば、包装材内面に結露等が生じることがなく、包装された冷凍食品を解凍する際、品質が劣化することがない。そして、解凍後においても包装材内面に結露が生じることがない。しかも、包装材が吸湿性である場合においては、印刷インキ等の流れ及び包装材の変形が生じることがない。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下本発明について図面を参照して説明する。なお、図示の例に記載された構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に限定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0023】
図1を参照して、図示の解凍装置は、解凍装置筐体11を備えており、この解凍筐体11は断熱外板で構成されている。解凍装置筐体11内には、被解凍食品(つまり、冷凍食品)を収納するための収納棚12が配置されている。収納棚12の周囲(側面)には整風板13が設置されており、この整風板13によって解凍装置筐体11内を循環する空気が整風される。収納棚12の上方には、加熱用熱交換器(加熱手段)14が配置されるとともに送風機(循環手段)15が配置されている。そして、送風機15によって太線矢印で示すように、解凍装置筐体11内の空気が循環される。
【0024】
解凍装置筐体11の断熱外板(上面)には開口部が形成されており、この開口部はダクト(図示せず)を介して解凍装置が設置された部屋に連通している。開口部にはダンパー16が設置され、ダンパー駆動装置(図示せず)によってダンパー16が駆動されて、開口部がダンパー16によって開閉される。なお、解凍装置筐体11内には温度センサ(図示せず)が配置されており、制御装置(図示せず)は温度センサによって検出された検出温度に応じて加熱用熱交換器14が接続された熱源媒体(電気・蒸気・温水・温ブライン等)回路を制御するとともに、後述するようにして、ダンパー駆動装置及び送風機15を制御する。
【0025】
上述の解凍装置を用いて冷凍食品を解凍する際には、まず、収納棚12に冷凍食品を収納した後、解凍開始スイッチを起動すると、冷凍食品の解凍が行われる。この際、制御装置はダンパー駆動装置を制御してダンパー16によって開口部を閉じるとともに、送風機15を駆動して解凍装置筐体11内の空気を循環させる。解凍装置筐体内の温度は予め冷凍食品の種類毎にその温度パターン(時間の経過と温度との関係を示すパターン)として設定されており、制御装置はこの温度パターンと検出温度とに基づいて加熱用熱交換器14による発熱量を制御する。つまり、制御装置は検出温度が温度パターンで示される温度となるように加熱用熱交換器14による発熱量を制御する。
【0026】
前述の温度パターンに応じて解凍装置筐体内温度を制御して、予め規定された時間が経過すると(つまり、解凍が終了すると)、制御装置は、加熱用熱交換器14による加熱を停止するとともに、ダンパー駆動装置を制御して、ダンパー16を駆動し、開口部を開く(送風機15は駆動されている)。これによって、開口部から外気が解凍装置筐体11に流入するとともに、解凍装置筐体11内空気、水分、その他の揮発性成分が解凍装置筐体11外に排出されて、解凍装置筐体11内温度と解凍装置筐体11外(室内)温度とが略平衡することになる。
【0027】
ここで、具体的に説明すると、いま、解凍時結露等によって食味、食感、外観、及び香り等食品の品質が変化し易い冷凍食品として、容器入りフィルム包装された江戸前寿司を選んで、解凍を行ったところ、図2に示す結果が得られた。図2において、▲1▼は解凍装置が設置された室内温度、▲2▼は解凍装置内温度、▲3▼は江戸前寿司魚の中心温度、▲4▼は江戸前寿司魚の表面温度、▲5▼は包装材の表面温度を表す。
【0028】
図2に示すように、室内温度▲1▼は約30℃であり、解凍装置内温度を約50℃に設定して、100分間解凍を行った。その後前述のようにして外気を導入するとともに解凍装置内空気等を排気した。解凍終了まで、魚中心温度▲3▼は徐々に上昇していくが、魚表面温度▲4▼及び包装材表面温度▲5▼は初期の段階で急激に上昇した後、緩やかに上昇する。そして、外気導入の後、約10分で、室内温度▲1▼、解凍装置内温度▲2▼、魚表面温度▲4▼、及び包装材表面温度▲5▼が略平衡状態となった。なお、包装材表面温度▲5▼は常に魚表面温度▲4▼よりも高かった。
【0029】
このようにして、江戸前寿司を解凍したところ、平衡ステップの段階で外気導入により、解凍装置内温度▲2▼と室内温度▲1▼とを平衡させるようにしたため、包装内に江戸前寿司由来の水分、その他揮発性物質の凝縮・結露の発生がなく、江戸前寿司の品質変化は認められなかった。
【0030】
さらに、プラスチック製トレイに収納されたおはぎを紙性(吸湿性)の容器(化粧箱)に入れた冷凍食品(以下吸湿性化粧箱入りおはぎという)について解凍を行った。その結果、図3に示す結果が得られた。図3において、▲1▼は解凍装置が設置された室内温度、▲2▼は解凍装置内温度、▲3▼はおはぎの中心温度、▲4▼は化粧箱の外底面表面温度を表す。
【0031】
図3に示すように、室内温度▲1▼は約20℃であり、解凍装置内温度▲2▼を約20℃から約70℃まで上昇させた後、一旦解凍装置内温度▲2▼を下げ(約45℃)、その後再び解凍装置内温度▲2▼を上げた(約55℃)。そして、解凍終了の後、前述のようにして、外気を導入するとともに解凍装置内空気等を排気した。解凍終了まで、おはぎ中心温度▲3▼及び外底面表面温度▲4▼ともに徐々に上昇していき、外気導入の後、約20分で、室内温度▲1▼、解凍装置内温度▲2▼、おはぎ中心温度▲3▼、及び外底面表面温度▲4▼が平衡状態となった。なお、外底面表面温度▲4▼は常におはぎ中心温度▲3▼よりも高かった。
【0032】
このようにして、おはぎを解凍したところ、平衡ステップにおいて、外気導入により、解凍装置内温度▲2▼と室内温度▲1▼とを平衡させるようにしたため、包装内面に解凍の際発生した水分、その他の揮発性物質等の凝縮・結露がなくおはぎの品質劣化がなかった。さらに、解凍装置内温度を一旦低下させた後再び上昇させる(図3においてAで示す部分)ようにしたため、紙製箱の外底面に付着した水分が結露して、箱の変形及び印刷インキが流れだすことがなかった。言い換えると、図3においてAで示す温度制御を行わないと、紙製箱の吸湿等によって箱が変形するばかりでなく、印刷インキの流れ現象が生じて、商品としての価値が著しく低下してしまった。さらに、図3においてBで示すように、温度制御(排気温度制御)を行っているため、解凍装置内の水分等が空気とともに排気され、箱を取り出した際、箱内部の結露を防止することができた。
【0033】
ところで、大量の冷凍食品を一時に解凍する際には、図1に示す解凍装置の代わりに図4に示す解凍装置が用いられる。図4に示す解凍装置は解凍庫21を有しており、この解凍庫21は断熱外板で構成されている。解凍庫21内には、整風板13が設置されており、この整風板13によって解凍庫21内を循環する空気が整風される。図示の例では、解凍庫21内の上部には所定の間隔をおいて2台の加熱用熱交換器22及び23が配置されるとともに、加熱用熱交換器22及び23の間には送風装置(送風機)24が配置されている。
【0034】
解凍庫21の断熱外板(上面)には、2箇所(図示の例では、上面の両端部)に開口部が形成されており、これら開口部は吸気ダクト25及び排気ダクト26が連結されている。各開口部にはダンパー27が設置され、ダンパー駆動装置(図示せず)によってダンパー27が駆動されて、開口部がダンパー27によって開閉される。なお、解凍庫21内には温度センサ(図示せず)が配置されており、制御装置(図示せず)は温度センサによって検出された検出温度に応じて加熱用熱交換器22及び23が接続された熱源媒体(電気・蒸気・温水・温ブライン等)回路を制御するとともに、後述するようにして、ダンパー駆動装置及び送風機24を制御する。図4に示す解凍装置で解凍を行う際には、解凍庫21内にキャスター付きの収納棚体28が収容される。これら収納棚体28には冷凍食品が収納されている。
【0035】
上述の解凍装置を用いて冷凍食品を解凍する際には、まず、冷凍食品が収納された収納棚体28を解凍庫21に収容した後、解凍開始スイッチを起動すると、冷凍食品の解凍が行われる。この際、制御装置はダンパー駆動装置を制御してダンパー27によって開口部を閉じるとともに、送風機24を駆動して解凍庫21内の空気を循環させることになる。この際には、図中太線白矢印で示すように空気が循環される。そして、図1で説明下ようにして、制御装置は検出温度が温度パターンで示される温度となるように加熱用熱交換器22及び23による発熱量を制御する。
【0036】
解凍が終了すると、制御装置は、加熱用熱交換器22及び23による加熱を停止するとともに、ダンパー駆動装置を制御して、ダンパー27を駆動し、開口部を開く。これによって、吸気ダクト25を介して室内空気(外気)が解凍庫21内に導入されるとともに、排気ダクト26を介して解凍庫21内空気、水分、その他の揮発性成分が庫外に排出されて、庫内温度と外気温度とが平衡することになる。なお、外気導入の際には、図中太線黒矢印で示すように、吸気及び排気が行われることになる。このような解凍装置を用いれば、一時に多量の冷凍食品をその品質を保って解凍することができることになる。なお、図4に示す例では、2台の加熱用熱交換器22及び23が配置されているが、加熱用熱交換器の台数は解凍庫21の容積に応じて適宜変更される。
【0037】
図5は本発明による解凍装置の他の例を示す図であり、図5において、図1に示す構成要素と同一の構成要素については同一の参照番号を付す。図5に示す例では、解凍装置筐体11に開口部及びダンパー16が設けられておらず、代わりに、冷却用熱交換器(冷却手段・除湿手段)31が解凍装置筐体11内に配置されている。そして、この冷却用熱交換器31は制御装置によって制御される。
【0038】
図1で説明したように、送風機15を駆動して解凍装置筐体11内の空気を循環させるとともに、加熱用熱交換器14によって加熱を行って、解凍装置筐体11内空気温度を上昇させる。そして、解凍が終了すると、制御装置は冷却用熱交換器31によって解凍装置筐体11内空気温度を低下させる(例えば、庫外温度まで筐体11内温度を低下させる)。この際、筐体11内の水分等は冷却用熱交換器31によって庫外に排出されることになる。つまり、冷却用熱交換器31によって解凍装置筐体11内湿度が調整されることになる。
【0039】
このようにして、解凍終了後において、冷却用熱交換器を用いて解凍装置筐体11内の温度及び湿度を制御するようにしても、冷凍食品の品質を害することなく解凍を行うことができ、さらには、解凍装置筐体11内の湿度を調整できる結果(除湿)、より効率的に結露の発生を防止できることになる。なお、冷却用熱交換器31を用いて解凍装置筐体11内を冷却して、解凍前の冷凍食品を解凍装置内に保管するようにしてもよい。このようにすれば、冷凍食品の保管から、解凍、及び解凍食品の保管まで、上述の解凍装置で行うことができる。
【0040】
図6は本発明による解凍装置のさらに他の例を示す図であり、図6において、図4に示す構成要素と同一の構成要素については同一の参照番号を付す。図6に示す例では、解凍装置筐体11に開口部及びダンパー27が設けられておらず、代わりに、冷却用熱交換器41及び42が解凍庫21内に配置されている。そして、この冷却用熱交換器41及び42は制御装置によって制御される。
【0041】
図4で説明したように、送風機24を駆動して解凍庫21内の空気を循環させるとともに、加熱用熱交換器22及び23によって加熱を行って、解凍庫21内空気温度を上昇させる。そして、解凍が終了すると、制御装置は冷却用熱交換器41及び42によって解凍庫21内空気温度を低下させる(例えば、庫外温度まで庫内温度を低下させる)。この際、解凍庫21内の水分等は冷却用熱交換器41及び42によって庫外に排出されることになる。つまり、冷却用熱交換器41及び42によって解凍庫21内湿度が調整されることになる。
【0042】
このようにして、解凍終了後において、冷却用熱交換器を用いて解凍庫21内の温度及び湿度を制御するようにしても、冷凍食品の品質を害することなく解凍を行うことができ、さらには、解凍庫21内の湿度を調整できる結果(除湿)、より効率的に結露の発生を防止できることになる。なお、冷却用熱交換器41及び42を用いて解凍庫21内を冷却して、解凍前の冷凍食品を解凍装置内に保管するようにしてもよい。また、図6に示す例では、2台の冷却用熱交換器41及び42が配置されているが、冷却用熱交換器の台数は解凍庫21の容積に応じて適宜変更される。
【0043】
ところで、図4又は図6に示す例においては、解凍品を解凍装置から取り出す前に解凍装置内の空気温度を、解凍装置が設置された箇所の温度に略平衡させるか若しくは解凍装置内の空気露点温度を、解凍装置が設置された箇所の空気露点温度に略平衡させるようにしたが、解凍品を解凍装置から取り出す前に解凍装置が設置された箇所の温度を、解凍装置内の空気温度に略平衡させるか若しくは解凍装置が設置された箇所の空気露点温度を、解凍装置内の空気露点温度に略平衡させるようにしてもよい。例えば、解凍装置が大型で、解凍装置が設置された箇所(解凍終了後解凍品を取り出して箱詰め又は化粧包装する作業場)のスペースが解凍装置の設置スペースよりも小さい場合には、解凍装置内空気温度又は空気露点温度を作業場の空気温度又は空気露点温度に略平衡状態とするよりも、作業場の空気温度又は空気露点温度を解凍装置内空気温度又は空気露点温度に略平衡状態とするほうが、速やかに略平衡状態とすることができるばかりでなく、略平衡状態とするためのエネルギーコストを削減することができる。
【0044】
言い換えると、解凍装置が設置されている箇所の空気を含む熱量が解凍装置内の解凍品、空気、及び解凍装置の熱容量に等しいか又は少ない場合には(具体的には、解凍装置の設置スペースが、解凍装置が配置された箇所(作業場)のスペースよりも大きい場合)、解凍装置が設置されている箇所の空気温度を解凍装置内の空気温度に略平衡させる。さらに、解凍装置が設置されている箇所の空気露点温度(空気温度及び湿度)を解凍装置内空気露点温度に略平衡状態とするようにしてもよい。
【0045】
例えば、解凍装置が設置された箇所(作業場)に冷却用熱交換器、加熱用熱交換器、及び送風機を設置して(一般的には作業場にはこれら冷却用熱交換器、加熱用熱交換器、及び送風機は配置されている)、解凍終了の後、これら冷却用熱交換器及び加熱用熱交換器を選択的に運転するとともに、送風機を駆動して、作業場の空気温度又は空気露点温度を解凍装置内の空気温度又は空気露点温度と略平衡状態とする。
【0046】
また、作業場に攪拌用送風機を設置して、解凍終了の後、攪拌用送風機を駆動して、前述したように、吸気ダクト(吸気口)及び排気ダクト(排気口)を介して解凍装置内空気と作業場空気とを循環させて、作業場の空気温度又は空気露点温度を解凍装置内の空気温度又は空気露点温度と略平衡状態とするようにしてもよい。
【0047】
ここで、図1で説明した解凍装置と放射伝熱を伴う解凍装置(以下単に放射伝熱解凍装置と呼ぶ)とを比較してみると、放射伝熱解凍装置においては、空気又は他の気体からの所謂表面伝熱と遠赤外線又は赤外線等の放射伝熱とによって解凍が行われることになるが、放射伝熱エネルギーの吸収率が包装材と食品とでは異なり、この吸収率が包装材のほうが食品自体よりも低いと、食品表層部が包装材よりもその温度が高くなってしまうことがある。この結果、食品から蒸発した水分、その他の揮発性成分が包装材で実質的に冷やされ、包装材内面に水分等が凝縮する(つまり、水分の場合には結露が発生する)。このような凝縮が生じると、包装材及び食品に好ましくない影響を与えることになる。
【0048】
一方、図1に示す解凍装置では、解凍雰囲気空気を食品表層部の温度以上に保持しているので、必然的に包装材内面に凝縮等が発生することがなく、しかも、解凍終了の後排気を行って、庫内温度を室外温度に略平衡させているので、食品に悪影響を与えることがない。解凍終了の後、庫内温度を室外温度に略平衡させる際には、庫内空気温度を包装材の温度及び解凍品の表面温度よりも高くする。
【0049】
ここで、図7及び図8を参照して、具体的に説明すると、いま、透明樹脂フィルムで包装された冷凍おにぎり51を放熱伝熱解凍装置52に収納して解凍を行った(図7)。図7に示すように、この放射伝熱解凍装置52は、筐体52a内に一対の放熱板52b及び52cが配置されており、放熱板52b及び52cの間に冷凍おにぎり51を配置して解凍を行った。この際、解凍装置52が置かれた室内の温度(室温)は23.6℃であり、放熱板52bの表面温度は77℃、放熱板52cの表面温度は82℃であった。このようにして、冷凍おにぎり51の解凍を行ったところ、解凍雰囲気空気温度がおにぎり51の表面温度よりも低いと、包装材内表面に結露が発生した。
【0050】
一方、図8に示すように、送風機(ファン)53を用いて解凍装置52内の空気を循環させて、解凍を行ったところ、放熱板52bの表面温度は75.4℃、放熱板52cの表面温度は80℃となった。さらに、解凍装置内内空気温度、包装材表面温度、及びおにぎり自体の表面温度を計測したところ、それぞれ47℃、39.5℃〜46℃、及び37.5℃〜39℃であった。このように、空気を循環させることによって、おにぎり表面温度が庫内空気温度、包材温度よりも低くなって、包装材内面に結露が生じることがなかった。
【0051】
さらに、所謂マイクロ波解凍(電子レンジ)を用いて冷凍食品の解凍を行った。いま、冷凍包装おにぎり61及び冷凍包装三角海苔おにぎり62(海苔が湿らないように2枚のフィルムで簡易気密包装されたもの)を電子レンジ63内に収納して、電子レンジ63の全解凍モードによってこれらおにぎりを解凍した(図9参照)。この際、包材温度、被解凍状態にある冷凍食品表面温度、電子レンジ内(解凍器内)空気温度、及び解凍器外空気温度を測定したところ、図10及び図11に示す結果が得られた。
【0052】
図10に示すように、おにぎり61及び62ともに、被解凍品表面温度>包材温度>解凍器内空気温度>解凍器外空気温度となっており、解凍中に包装材内面に水滴状の結露が発生した。そして、解凍器内空気温度を約20分間で解凍器外空気温度と平衡させておにぎり61及び62を電子レンジ63から取り出したところ、解凍中に発生した結露は消失しなかった。さらに、おにぎりの表面の一部に包装材内面に結露した水滴が付着して、米粒が膨潤していた。また、海苔にべたつきが生じて、食味及び食感ともに凍結前に比べて著しく劣化してしまった。
【0053】
同様に、図11においても、被解凍品表面温度>包材温度>解凍器内空気温度>解凍器外空気温度となっており、解凍中に包装材内面に水滴状の結露が発生した。そして、解凍器内空気温度を約20分間で解凍器外空気温度と平衡させておにぎり61及び62を電子レンジ63から取り出したところ、解凍中に発生した結露は消失しなかった。さらに、おにぎりの表面の一部に包装材内面に結露した水滴が付着して、米粒が膨潤していた。また、海苔にべたつきが生じて、食味及び食感ともに凍結前に比べて著しく劣化してしまった。
【0054】
一方、図12に示すように、電子レンジ63の筐体に互いに対向するスリット64a及び64bを形成して、一方のスリット64aを吸気口とし、他方のスリット64bを排気口とした。そして、吸気口64aから温風発生器(例えば、ヘアードライヤー)65を用いて電子レンジ63内に温風を送風した。一方、排気口64bには温度センサ66を配置して、温度センサ66を制御装置である温度コントローラ67に接続した。そして、温度コントローラ67によって温風発生器65を制御して温風温度を調節した。この際、温度コントローラ67は温度センサ66で検出された排気検出温度に応じて温風温度を制御する。例えば、排気検出温度≧被解凍品表面温度となるように、温風温度が制御される。
【0055】
上述のように温風を電子レンジ63に送りつつ、冷凍包装おにぎり61及び冷凍包装三角海苔おにぎり62を電子レンジ63内に収納して、電子レンジ63の全解凍モードによってこれらおにぎりを解凍した。この際、包材温度、被解凍品表面温度、解凍器内空気温度、及び解凍器外空気温度を測定したところ、図13及び図14に示す結果が得られた。図13に示すように、おにぎり61及び62ともに、解凍器内空気温度>包材温度及び被解凍品表面温度となっており、解凍中に曇りガラス状の微細な結露が包装材内面に発生したが、やがて消失した。そして、解凍終了の後、解凍器内空気温度を約15分間で解凍器外空気温度と平衡させておにぎり61及び62を電子レンジ63から取り出して、包装材を取り払ったところ、包装材内面及びおにぎり自体に結露は存在せず、外観、食味、及び食感ともに凍結前のおにぎりと同等であった。
【0056】
同様に、図14においても、解凍器内空気温度>包材温度及び被解凍品表面温度となっており、解凍終了の後、解凍器内空気温度を約15分間で解凍器外空気温度と平衡させておにぎり61及び62を電子レンジ63から取り出して、包装材を取り払ったところ、包装材内面及びおにぎり自体に結露は存在せず、外観、食味、及び食感ともに凍結前のおにぎりと同等であった。
【0057】
図15を参照すると、電子レンジ63にダクト部71を介して空気調和装置72を連結する。空気調和装置72には加熱・冷却・除湿用熱交換器(以下単に熱交換器と呼ぶ)72aが備えられるとともに、攪拌用送風機72bが備えられており、熱交換器72aによって電子レンジ63内を加熱・冷却・除湿するとともに、送風機72bで電子レンジ63内空気を攪拌する。
【0058】
電子レンジ63には、マイクロ波照射部63a及び被解凍品置き台(テーブル)63bが備えられており、冷凍食品を解凍する際には、冷凍食品をテーブル63bに配置して、電子レンジ63を動作させる(図示の例では、冷凍食品として包装材に収納された冷凍食品74が配置されている)。この際、送風機72bが駆動されて、電子レンジ内空気が実線矢印で示すように、ダクト部71を通って空気調和装置72と電子レンジ63との間を循環する。そして、電子レンジ63内空気は空気調和装置72で加熱されることになる。このようにして、電子レンジ内空気を加熱すると、前述したようにして、電子レンジ63内空気温度が被解凍品である冷凍食品74の表面温度よりも高くなる。
【0059】
解凍が終了すると、空気調和装置72によって電子レンジ63内温度が室内温度と平衡するまで、冷却・除湿される。このようにして、電子レンジ63内温度を室内温度と平衡させた後、解凍された食品を電子レンジ63から取り出して、包装材を取り払ったところ、包装材内面及び食品自体に結露は存在せず、外観、食味、及び食感ともに凍結前の食品と同等であった。
【0060】
なお、空気調和装置72には加熱用熱交換器のみを備えるようにしてもよく、この際には、電子レンジに開口部を形成して、この開口部にダンパー73を取り付ける。さらに、ダクト部71にダンパー71aを取り付けられ、ダンパー71aの開閉によってダクト部71は選択的に外部(室内)に開放する。そして、前述のようにして、解凍が終了すると、送風機72bは駆動した状態で、ダンパー73及び71aを開く。これによって、室内空気が電子レンジ63内に流入するとともに、電子レンジ63内空気が排気され、電子レンジ内を除湿するともににその温度を室内温度に平衡させる。このようにしても、包装材内面及び食品自体に結露は存在せず、外観、食味、及び食感ともに凍結前の食品と同等であった。
【0061】
図15に示すシステムは、電子レンジのようなマイクロ波加熱による解凍器のみではなく、他の高周波加熱、超音波、電磁波、遠赤外線、及び赤外線等エネルギー吸収率が包装材と冷凍食品自体で異なる場合(冷凍食品自体のエネルギー吸収率が包装材よりも大きい場合)に適用できる。
【0062】
上述の説明から明らかなように、マイクロ波加熱(マイクロ波解凍)の場合には、マイクロ波は空気に吸収されず、マイクロ波を反射する金属箔フィルム等特殊な包装材以外の樹脂フィルム及び紙製包装材の場合には、包装材におけるエネルギー吸収がほとんどなく、包装材の温度が上昇することがない。そのため、マイクロ波は冷凍食品の表層部でその殆どが吸収されて、熱エネルギーとなって冷凍食品が解凍されることになる。このため、表層部が加熱されると、冷凍食品中の水分、その他の揮発性成分が蒸発して、包装材の内部空間に溜まることになる。そして、包装材の温度は加熱された冷凍食品表層部の温度よりも低いため、包装材の内部空間に滞留した水分等は包装材内面に凝縮することになる。解凍終了の後、凝縮した水分等は食品表面に一部再吸収されてしまい、解凍品を凍結前の状態に再現することができない。
【0063】
裸の冷凍食品(包装材に収納されていない冷凍食品)を解凍する際には、空気等の気体中に含まれる揮発性物質(例えば、水、酢酸、アルコール類、及び香気性物質)と冷凍食品表層の揮発性物質(例えば、水、酢酸、アルコール類、及び香気性物質)との蒸気圧の差に応じて、冷凍食品から揮発性物質が蒸散して、凝縮することになり、これによって、食品の乾燥、凝縮成分の吸着及び結露が生じることになる。揮発性物質の蒸気圧は露点温度と相関関係にあり、露点温度は加えられるエネルギーと相関関係にある。そして、エネルギーは雰囲気気体からの伝熱(気体の温度、風速、風向)、遠赤外線又は赤外線等の輻射、超音波・マイクロ波・高周波・電磁波等の振動等によって与えられ、揮発性物質の蒸気圧と露点温度とは相関関係にあるので、上述のようにして、解凍後解凍品を取り出す際、解凍装置内の温度を上述のようにして制御すれば、凝縮を抑えることができる。
【0064】
一方、包装された冷凍食品の場合には、包装材内外面への揮発性物質の凝縮、吸着、結露、さらには、包装材の乾燥、冷凍食品の乾燥、そして、食品自体から発生した揮発性物質の食品表面への再凝縮及び吸着がある。包装材の外表面に対する解凍雰囲気気体中揮発性物質の凝縮・結露を防止するためには、包装材の温度を雰囲気気体中の揮発性物質の露点温度以上に保持すればよい。そして、包装材が吸湿性の素材(例えば、紙又はセロハン)である際には、乾燥によって包装材に変形・裂け等の不具合が発生することがあるため、包装材の温度を50℃以下に保持することが望ましい。
【0065】
また、包装材に収納された冷凍食品自体については考察すると、解凍の際には、包装材の内部空間には冷凍食品由来の揮発性物質の蒸気が略飽和状態で存在する。解凍手法及び解凍工程の進行に応じて、これら揮発性物質が包装材内面に凝縮・結露して、一方、食品自体は揮発性物質の逸散によって、その組成が変化する(例えば、水が逸散すると乾燥する)。そして、一度逸散した揮発性物質はその一部が再度食品に吸収されることはあるものの、元の状態に戻ることはない。さらに、包装材内面に生じた結露が食品の表面に付着して、食品の表面に膨潤、退色、色素の流出、及び部分的な乾燥等、食品に好ましくない現象が生じる。
【0066】
さらに、超音波、マイクロ波、高周波、電磁波、等振動エネルギー又は遠赤外線、赤外線等の輻射と気体を熱媒体として冷凍食品の解凍を行う際、前述のように、包装材と冷凍食品とのエネルギー吸収率が異なるため、解凍雰囲気気体温度が被解凍食品(冷凍食品)の表面温度よりも低下すると冷凍食品の表層部が包装材よりもその温度が高くなる。その結果、包装材内面に食品由来の揮発性物質が凝縮・結露する。そして、このような現象は、解凍終了の後解凍装置から解凍品を取り出す際、解凍品を取り出した空間の温度が包装された解凍品の温度よりも低い場合にも発生する。
【0067】
一方、前述したようにして、気体の温度を解凍中の冷凍食品の表面温度よりも上げる。そして、解凍工程が進行して、解凍最終段階になると、気体に与える熱エネルギーを減少させて最終的に停止する。このようにすれば、上述のような不具合は防止できる。包装された冷凍食品を解凍する際には、雰囲気温度が30〜80℃である際には、5〜15分で15〜30℃まで低下させれば、良好な結果が得られることが分かった。なお上述の説明において、略平衡状態になるとは、解凍装置内の空気温度が外部空気温度に対して±5℃以内の状態になったことを意味する。
【0068】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、解凍中においては、解凍装置筐体内の空気を循環させつつ解凍を行い、解凍終了後、解凍品を解凍装置から取り出す前に、解凍装置内の空気温度を解凍装置が設置された箇所の温度に略平衡状態とするようにしたので、解凍品に結露及び乾燥等が生じることがなく、解凍品を冷凍前の品質に再現することができるという効果がある。さらに、冷凍食品を解凍して解凍品を得るようにしたので、チルド又は常温流通に比べて、細菌の繁殖等について安全性を確保できるという効果がある。さらに、解凍装置内の湿度も合わせて解凍装置が設置された箇所の湿度に略平衡状態とするようにすれば、より良好に結露等を防止することができ、解凍品の品質をより良好な状態とすることができるという効果がある。
【0069】
本発明によれば、解凍終了後、解凍品を解凍装置から取り出す前に、解凍装置内に解凍装置が設置された箇所の空気を取り込んで、解凍装置内の空気温度を解凍装置が設置された箇所の温度に略平衡させるようにしたので、容易に解凍装置内の空気温度を解凍装置が設置された箇所の温度に略平衡状態とすることができるという効果がある。また、解凍装置内に解凍装置が設置された箇所の空気を取り込めば、解凍装置内の空気温度及び湿度を解凍装置が設置された箇所の温度及び湿度に略平衡させることができ、容易に解凍品の結露及び乾燥等を防止して、解凍品を冷凍前の品質により良好に再現することができるという効果がある。
【0070】
本発明によれば、解凍終了後、解凍品を解凍装置から取り出す前に、解凍装置内空気を冷却して解凍装置内の空気温度を解凍装置が設置された箇所の温度に略平衡状態とするようにしたので、容易に解凍装置内の空気温度を解凍装置が設置された箇所の温度に略平衡状態とすることができるという効果がある。さらに、解凍装置内を除湿して解凍装置内湿度を解凍装置が設置された箇所の湿度に略平衡状態とするようにすれば、容易に解凍品の結露及び乾燥等を防止して、解凍品を冷凍前の品質により良好に再現することができるという効果がある。
【0071】
本発明によれば、冷凍食品が包装材で包装されている際には、解凍の際、解凍装置内空気温度を包装材の温度及び冷凍食品の表面温度よりも高く制御して、さらに、解凍終了後、解凍装置内空気温度を包装材の温度及び解凍品の表面温度よりも高くし、その後解凍装置内空気温度を解凍装置が設置された箇所の温度に略平衡となるようにしたので、包装材内面に結露等が生じることがなく、包装された冷凍食品を解凍する際、品質が劣化することがない。そして、解凍後においても包装材内面に結露が生じることがない。しかも包装材が吸湿性である場合においては、印刷インキ等の流れ及び包装材の変形が生じることがないという効果がある。
【0072】
本発明では、前記解凍品を前記解凍装置から取り出す前に前記解凍装置が設置された箇所の温度を前記解凍装置内の空気温度に略平衡させるか若しくは前記解凍装置が設置された箇所の空気露点温度を前記解凍装置内の空気露点温度に略平衡させるようにしたから、解凍装置が大型で、解凍装置が設置された箇所のスペースが小さい場合には、速やかに略平衡状態とすることができる。そして、解凍品に結露及び乾燥等が生じることがなく、解凍品を冷凍前の品質に再現することができるという効果がある。さらに、略平衡状態とするためのエネルギーコストを削減することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による解凍装置の一例を示す断面図である。
【図2】図1に示す解凍装置を用いて江戸前寿司を解凍した際の外部温度、解凍装置内気体温度、江戸前寿司の魚中心温度、江戸前寿司の魚表面温度、及び包材表面温度の関係を示す図である。
【図3】図1に示す解凍装置を用いて吸湿性化粧箱入りおはぎを解凍した際の外部温度、解凍装置内気体温度、おはぎ中心温度、及び化粧箱外底面表面温度の関係を示す図である。
【図4】本発明による解凍装置の他の例を示す断面図である。
【図5】本発明による解凍装置のさらに他の例を示す断面図である。
【図6】本発明による解凍装置のさらに他の例を示す断面図である。
【図7】放熱伝熱解凍装置を用いておにぎりを解凍する際の従来例を示す断面図である。
【図8】本発明による解凍方法の一例を用いて放熱伝熱解凍装置でおにぎりを解凍する際の一例を示す断面図である。
【図9】電子レンジを用いておにぎりを解凍する際の従来例を示す断面図である。
【図10】図9に示す解凍において、包材温度、被解凍品表面温度、解凍器内空気温度、及び解凍器外空気温度の測定結果の一例を示す図である。
【図11】図9に示す解凍において、包材温度、被解凍品表面温度、解凍器内空気温度、及び解凍器外空気温度の測定結果の他の例を示す図である。
【図12】本発明による解凍方法の一例を用いて電子レンジでおにぎりを解凍する際の一例を示す断面図である。
【図13】図12に示す解凍において、包材温度、被解凍品表面温度、解凍器内空気温度、及び解凍器外空気温度の測定結果の一例を示す図である。
【図14】図12に示す解凍において、包材温度、被解凍品表面温度、解凍器内空気温度、及び解凍器外空気温度の測定結果の他の例を示す図である。
【図15】本発明による解凍方法の他の例を用いて電子レンジでおにぎりを解凍する際の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
11 解凍装置筐体
12 収納棚
13 整風板
14,22,23 加熱用熱交換器
15 送風機
16,27 ダンパー
21 解凍庫
24 送風装置(送風機)
25 吸気ダクト
26 排気ダクト
28 収納棚体
31,41,42 冷却用熱交換器

Claims (6)

  1. 冷凍食品(以下被解凍食品という)を解凍するための解凍装置を用いて前記冷凍食品を解凍する際に用いられる解凍方法において、
    断熱板で構成されている解凍装置筐体と、被解凍食品を収納する収納棚と、解凍装置筐体内の循環空気(以下解凍装置内空気という)を加熱する加熱手段と、前記装置筐体に設けた開閉可能な開口部とを具えた解凍装置を用意し、
    前記解凍装置の収納棚内に前記被解凍食品を収納した後、前記開口部を閉塞して解凍装置内と前記解凍装置が設置されている室内との空気の流通を阻止した状態で、
    前記解凍装置内空気温度を被解凍食品表面温度より高く且つ前記解凍装置が設置されている室内空気(以下外部空気という)温度より高くなるように加熱制御して前記被解凍食品を解凍する加熱解凍ステップと、
    前記被解凍食品を解凍後、前記開口部を開き、前記外部空気を前記解凍装置内に流入させるとともに、前記加熱解凍ステップで加熱された解凍装置内空気、水分、その他の揮発性成分を解凍装置外の室内に排出して、解凍装置内空気温度と解凍装置筐体外の室内温度とを略平衡にさせる平衡ステップと、
    その後に前記解凍された冷凍品を前記解凍装置から取り出すステップとを有することを特徴とする被解凍食品の解凍方法。
  2. 包装材で包装されている被解凍食品を解凍するための解凍装置を用いて前記被解凍食品を解凍する際に用いられる解凍方法において、
    断熱板で構成されている解凍装置筐体と、被解凍食品を収納する収納棚と、解凍装置内空気を加熱する加熱手段と、前記装置筐体に設けた開閉可能な開口部とを具えた前記解凍装置を用意し、
    前記解凍装置の収納棚内に前記被解凍食品を収納した後、前記開口部を閉塞して解凍装置内と前記解凍装置が設置されている室内との空気の流通を阻止した状態で、
    前記解凍装置内空気温度を包材温度及び被解凍食品表面温度より高く且つ外部空気温度より高くなるように加熱制御して前記被解凍食品を解凍する加熱解凍ステップと、
    前記被解凍食品を解凍後、前記開口部を開き、前記外部空気を前記解凍装置内に流入させるとともに、前記加熱解凍ステップで加熱された解凍装置内空気、水分、その他の揮発性成分を解凍装置外の室内に排出して、解凍装置内空気温度と解凍装置筐体外の室内温度とを略平衡にさせる平衡ステップと、
    その後に前記解凍された冷凍品を前記解凍装置から取り出すステップとを有することを特徴とする被解凍食品の解凍方法。
  3. 前記平衡ステップで、被解凍食品を解凍後、前記外部空気を前記解凍装置内に流入させる際に、解凍装置内の除湿を行うことを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の被解凍食品の解凍方法。
  4. 被解凍食品を解凍する際に用いられる解凍装置であって、前記被解凍食品が収納される収納筐体と、前記収納筐体内を加熱する加熱手段と、前記収納筐体内を冷却する冷却手段と、前記収納筐体内空気を循環させる循環手段と、前記加熱手段、前記冷却手段、及び前記循環手段、並びに前記収納筺体に設けた開閉可能な開口部の開閉操作を制御する制御手段とを有し、
    前記制御手段は前記収納筐体内に前記被解凍食品を収納した後、前記開口部を閉塞して解凍装置内と前記解凍装置が設置されている室内との空気の連通を阻止した状態で前記収納筐体内の空気温度を被解凍品表面温度より高く且つ前記収納筐体が設置されている室内空気温度より高くなるように加熱制御して前記被解凍食品を解凍し、その後に前記開口部を開き、前記室内空気を前記解凍装置内に流入させるとともに、前記解凍装置内空気、水分、その他の揮発性成分を解凍装置外の室内に排出して、解凍装置内空気温度と前記室内空気温度とを略平衡にさせるように制御したことを特徴とする解凍装置。
  5. 包装材で包装されている被解凍食品を解凍する際に用いられる解凍装置であって、前記被解凍食品が収納される収納筐体と、前記収納筐体内を加熱する加熱手段と、前記収納筐体内を冷却する冷却手段と、前記収納筐体内空気を循環させる循環手段と、前記加熱手段、前記冷却手段、及び前記循環手段、並びに前記収納筺体に設けた開閉可能な開口部の開閉操作を制御する制御手段とを有し、
    前記制御手段は前記収納筐体内に前記被解凍食品を収納した後、前記開口部を閉塞して解凍装置内と前記解凍装置が設置されている室内との空気の連通を阻止した状態で前記収納筐体内の空気温度を包材温度及び被解凍品表面温度より高く且つ前記収納筐体が設置されている室内空気温度より高くなるように加熱制御して前記被解凍食品を解凍し、その後に前記開口部を開き、前記室内空気を前記解凍装置内に流入させるとともに、解凍装置内空気、水分、その他の揮発性成分を解凍装置外の室内に排出して、解凍装置内空気温度と前記室内空気温度とを略平衡にさせるように制御したことを特徴とする解凍装置。
  6. 前記収納筐体内を除湿する除湿手段を有し、前記制御手段は前記除湿手段を制御して被解凍食品を解凍後、前記解凍装置内の空気温度を冷却若しくは前記室内空気を取り込んで冷却させる際に、解凍装置内の除湿を行うことを特徴とする請求項5に記載の解凍装置。
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