しかしながら、このリタードロールフィード方式の給送機構を用いる従来の給紙装置は、その給送機構を画像形成装置本体側の支持フレームに組み込むように取り付けるという構成が採られているため、次のような問題がある。
まず、その給送機構を画像形成装置本体内の制約された設置スペースに取り付けなければならず、その部品点検や交換等のメンテナンス作業が煩雑にならざるを得なかった。しかも、その給送機構に加えて、給紙される用紙が通過する用紙通路を構成する用紙搬送ガイド等も併せて配設する場合には、部品点数も増えて大掛かりな構造物となり、その取付作業がより煩雑になるうえコストアップにもなった。
また、給紙基準として用紙の給送方向における片側端面を基準とする、いわゆる端面基準(サイドレジ)を採用する場合には、トレイ上の用紙の積載状態や用紙間の摩擦状態などの違いにより、その給送機構によって給送される用紙が斜め送り(スキュー)になることがある。さらに、用紙の給送方向先端部にカールがある場合には、その用紙送り出しロールによる送り出し時において用紙の搬送姿勢が乱されて安定した給紙が行われないことがある。
本発明は、以上のような事情に鑑みなされたものであり、給紙方式がリタードロールフィード方式であってかつ給紙基準が端面基準であっても斜め送り等が発生しにくい良好な給紙を安定して行うことができ、しかも、その組み立て作業やメンテナンス作業を容易に行うことができる給紙装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための本発明は、複数枚の用紙を積載する積載面に、その用紙の給送方向における片側端面を給紙基準とするように当接して規制する基準ガイドが設けられたトレイと、このトレイをその給送方向下流側となるトレイ端部側において支持する支持構造体と、前記トレイの積載面上に積載された用紙の最上面に圧接して回転駆動する用紙送り出しロールと、この用紙送り出しロールの給送方向下流側に配されて回転駆動する搬送ロールと、この搬送ロールに圧接するように配されるとともにトルクリミッタより給送方向とは反対方向の制動トルクが与えられる重送阻止ロールを有する給送機構とを組み合わせた給紙装置において、前記給送機構を、前記用紙送り出しロール、搬送ロール及び重送阻止ロールが基礎フレームにすべて配設されたユニット構造として前記支持構造体に取り付けるとともに、前記支持構造体の前記基準ガイドによる給紙基準位置の近傍となる端部領域に設置したことを特徴とするものである。
このような給紙装置では、給送機構とトレイ上の基準ガイドとが、給送方向において給紙基準側となる同じ端部側に位置するとともに比較的近い場所に位置することになるため、その給送機構における用紙送り出しロールにより送り出されるトレイ上の用紙は、その給紙基準となる片側端部側において、その先端部側が用紙送り出しロールや搬送ロール及び用紙捌きロールのニップにより搬送されると同時に、その用紙後方部側が基準ガイドによって規制される状態におかれる。これにより、その用紙は用紙送り出しロールによって斜め状態で送り出されたとしても、その片側端面が基準ガイドに当接して規制されながら送られることになるため、その斜め状態が修正される。また、その給送機構が、ユニット構造となっているため取扱いやすく、また、この給紙装置を装着して使用する各種機器の装置本体側ではなくトレイを支持する支持構造体(すなわち給紙装置)側に取り付けられ、しかも支持構造体の一方の端部領域側に設置されるため、その給送機構の取り付けやメンテナンスなどの作業を給紙装置の組み立て時やメンテナンス時に併せて容易にかつ一体的に行うことができる。
また、前記給送機構については、前記用紙送り出しロール、搬送ロール及び重送阻止ロールがいずれも1つであって、その用紙送り出しロールと搬送ロール及び重送阻止ロールとをその各ロール幅の中心が互いに給送方向の同一線上に並ぶような状態で基礎フレームにすべて配設した(ユニット)構造となるように構成するとよい。
この場合には、給送機構が部品点数の少ない簡易なものになる。また、各ロールが同じ基礎フレームにすべて配設されることから、コンパクトにユニット化されて取り扱いやすいものにもなる。しかも、この場合においては各ロールをそのロール軸の片側端部で軸受支持材により支持する片持ち構造を適用すると、より一層のコンパクト化が可能である。
また、前記用紙送り出しロールについては、そのロール軸が隙間をもって支持されるように構成するとよい。
この場合には、用紙送り出しロールががたつくように少し変位可能な状態に支持されることになるため、たとえば用紙送り出しロールにより送り出される用紙先端部にカール等の変形個所があっても、その変形個所に追従するように用紙送り出しロールが変位するようになる。これにより、その用紙の変形個所を良好に保持して良好に送り出すようになる。
また、前記トルクリミッタについては、前記重送阻止ロールのロール軸に取り付けるとともに、そのトルクリミッタの少なくとも上部外周面をその重送阻止ロールの最上面(搬送ロールと圧接される部分:ニップ)の高さとほぼ同じ高さになるように形成するとよい。
この場合には、トルクリミッタにより与える制動トルクの作用が、同じロール軸を介して重送阻止ロールに効率よく伝えられるようになる。また、そのトルクリミッタの上部外周面が、用紙の通過に障害とならず、用紙通過支持面として機能するようになる。このため、トルクリミッタを用紙通路内に配置することが可能となり、給送機構のコンパクト化にも有利となる。しかも、その際、用紙の円滑な通過を確保することもできる。
また、前記重送阻止ロールのロール軸をその一端部側で軸受フレームにより支持する片持ち構造とした場合、前記支持構造体側に、その軸受フレームに当接してそのフレームの給送方向下流側斜め下方への変位を阻止する当接部材を設けるとよい。
この場合には、片持ち支持される重送阻止ロールが軸受フレームを介して当接部材により支持されるため、この重送阻止ロールは、圧接した状態で回転駆動する搬送ロールの回転力により給送方向下流側斜め下方へ捩れるように変位することが阻止される。これにより、かかる重送阻止ロールの変位により発生する用紙の搬送不良や捌き不良がなくなる。
さらに、前記支持構造体については、前記トレイから給紙される用紙が通過する用紙通路をほぼ境にして上下に分割される上部構造体及び下部構造体からなるものとし、かつ、その上部構造体側に前記給送機構を取り付けるように構成するとよい。
この場合には、支持構造体を必要時に上部構造体と下部構造体に容易に分割(分解)することができるようになる。また、その上部構造体を下部構造体から取り外すことにより、給送機構を上部構造体と共に簡易かつ一体的に取り外すことができるようになる。これにより、特に給送機構のメンテナンス作業等がし易くなる。
また、前記上部構造体及び下部構造体の用紙通路側となる部位には、給送方向に沿う複数の用紙搬送ガイドリブを形成するとともに、その用紙搬送ガイドリブのうち前記給送機構の近傍に位置する複数のガイドリブをその給送機構における用紙送り出しロール及び搬送ロールの用紙当接面の高さに近づく高さとなるように形成するとよい。
この場合には、給紙時の用紙が支持構造体を通過する際に、用紙搬送ガイドリブに誘導されながら良好に搬送されるようになる。また、給送機構の近傍に位置する複数のガイドリブとその給送機構におけるピックアップロール及び搬送ロールとの高さに違いがある場合でも、用紙が給送機構(各ロールとの当接部)と用紙搬送ガイドリブとの間でほぼ同じ高さに保持された状態で搬送されるようになるため、搬送抵抗となるように変形した姿勢で搬送されるおそれがなく、良好な給紙が確保される。
また、前記トレイの積載面に前記基準ガイドに対して接近又は離間する方向にスライドして用紙の前記給紙基準となる端面とは反対側の端面を揃えるように当接して規制する可動ガイドが設けられている場合には、前記基準ガイド及び可動ガイドの給送方向下流側端部に用紙の側端部上面を抑える用紙抑え突起を設けるとよい。
この場合には、用紙が給送機構(各ロールとの当接部)と用紙搬送ガイドリブとの間で保持されて給送される際に、その用紙の側端部が基準ガイド及び可動ガイドの双方から外れるように変形又は搬送されることがあっても、そのガイドから外れようとする用紙側端部が用紙抑え突起により抑えられる。これにより、給送時に用紙が基準ガイド及び可動ガイドから外れることが防止される。この結果、各ガイドにより規制された良好な給紙が確保される。
また、前記給送機構の近傍に位置する複数の用紙搬送ガイドリブの高さがその給送機構における用紙送り出しロールの用紙当接面の高さよりも高い関係にある場合には、前記可動ガイド側に設ける用紙抑え突起をその抑え面の高さが前記基準ガイド側に設ける用紙抑え突起の抑え面の高さよりも高くなるように形成するとよい。
この場合には、給送機構における用紙保持位置と用紙搬送ガイドリブによる用紙保持位置に高さ方向のずれがあっても、その各位置で保持される用紙が基準ガイド及び可動ガイドの双方から外れることが確実に防止される。
また更に、前記支持構造体に、前記トレイの積載面に積載した用紙の給送方向先端部側を、前記給送機構が設置される領域以外となる領域に形成される用紙先端部突き当て壁に沿って上昇して持ち上げるとともにその用紙の最上紙の表面がその給送機構における用紙送り出しロールに当接するまで持ち上げるリフト板が設けられている場合には、そのリフト板に、前記用紙先端部突き当て壁の給送機構側の端部と給送機構との隙間に介入する突出部を設けるとよい。
この場合には、リフト板の突出部の存在により、給送機構を支持構造体の一端部領域側に配置することによって発生し得る上記のごとき隙間に、用紙の先端部が潜り込んでしまうことが防止される。
そして、以上の給紙装置において、前記給送機構の給送方向下流側となる最初の位置にその給送方向と直交する方向に間隔をあけて配設される複数の用紙搬送ロール対がある場合には、その用紙搬送ロール対のうち前記給送機構のある側に位置する最端部の搬送ロール対を、前記給送機構における搬送ロールよりも前記基準ガイドによる給紙基準側に位置するように相対的にずらした状態で設置するとともに、その最端部の用紙搬送ロール対以外となる用紙搬送ロール対のニップ荷重を、その最端部の搬送ロール対のニップ荷重よりも小さい値に設定するとよい。
この場合には、用紙が基準ガイドを通りすぎてそのガイドによる規制から開放された後において、複数の用紙搬送ロール対と給送機構の各ロールにより保持されて搬送されることになり、その際、重送阻止ロールの捌き作用により給送方向とは逆方向の搬送抵抗を少し受けるようになるが、上記最端部の用紙搬送ロール対の配置と複数の用紙搬送ロール対の荷重配分とにより、それら各ロールによる用紙搬送力のバランスがとれ、直進安定性に優れた用紙搬送が可能となる。これにより、基準ガイドを通過した後においても、用紙は斜め送りされることなく良好に給送される。なお、この場合、上記用紙搬送ロール対は通常、給紙装置を装着して使用される各種機器の本体側に設けられるが、給紙装置側に設けるように構成しても構わない。
このような本発明の給紙装置は、トレイ上に積載する用紙(束)を1枚ずつ給送する必要のある機器であれば、特に制約されることなく適用可能である。また、その適用対象となる機器が前記したような複写機、プリンタ等の画像形成装置である場合、その手差しトレイと組み合わせた給紙装置として使用することができるほか、例えば、原稿読み取り装置に原稿を自動的に送る自動原稿送り装置における原稿送り出し部の給紙装置として使用することも可能である。
本発明の給紙装置によれば、給紙方式がリタードロールフィード方式であってかつ給紙基準が端面基準であっても、斜め送り等が発生しにくい良好な給紙を安定して行うことができる。しかも、その給紙装置の組み立て作業やメンテナンス作業を容易に行うこともできる。
[実施の形態1]
図1〜図3は本発明の一実施形態に係る給紙装置を示すものあり、図1はそれを画像形成装置に装着した状態を示す要部概要図、図2はその外観斜視図、図3はその概略側面図である。
この実施の形態1に係る給紙装置1は、図1に示すように、複写機、プリンタ等の画像形成装置2の手差しトレイ用の給紙装置であり、基本的に、その画像形成装置2の画像形成時における記録媒体として使用する所望の用紙Pを積載収容する(手差し)トレイ10と、このトレイ10を支持する支持フレーム(支持構造体)20と、トレイ10上の用紙を捌きながら1枚ずつ送り出すリタードロールフィード方式の給送機構30とを備えたものである。また、この給紙装置1は、画像形成装置2の本体2aに支持フレーム20を介して装着されるものであり、その際、トレイ10が装置本体2aの外側に突出しかつ給送機構30が装置本体2aの内側に位置するような状態で取り付けられている。
一方、画像形成装置2は、電子写真方方式等を利用して画像情報に応じたトナー像を形成するとともにそのトナー像を記録媒体としての用紙Pに直接又は中間転写体を介して転写する画像形成部3を少なくとも備えたものである。図1において、符号4は装置本体2aの内側に引き出し可能に装着され、画像形成部3に給紙する用紙Pを収容するカセット(又はトレイ)、このカセット4から画像形成部3まで伸びる一点鎖線R1は用紙Pが供給搬送される給紙路、5はカセット4から用紙Pを1枚ずつ送り出す送出ロール、6a,6bは給紙路R1に適宜配設される用紙搬送ロール対、7は給紙路R1の最下流側に配設される用紙搬送ロール対、8は給紙される用紙Pを一旦停止させて斜め送りを矯正した後に画像形成部に所定のタイミングで送り込むレジストロール対、9は画像形成部3で用紙Pに転写されたトナー像を定着する定着部をそれぞれ示す。給紙路R1は、用紙搬送ロール対7の上流側近傍位置においてトレイ1から給紙される用紙Pの搬送路と合流するようになっている。
そして、この画像形成装置2では、画像形成の開始指示を受けると、画像形成部3において所定のプロセスを経て画像情報に基づくトナー像を形成するとともに、その画像形成タイミングに合わせてカセット4又はトレイ1のいずれか一方から所要の用紙Pが1枚ずつ画像形成部3に対して給紙されるようになっている。すなわち、カセット4からの給紙は、カセット4内の用紙Pが送出ロール5により1枚ずつ給紙路R1に送り出された後、搬送ロール対6、7によりレジストロール対8まで搬送される。一方、給紙装置1のトレイ10からの給紙は、トレイ10上の用紙Pが給送機構30により1枚ずつ送り出された後、搬送ロール対7によりレジストロール対8まで搬送される。続いて、画像形成部3で形成されたトナー像をその給紙される用紙Pに対して転写した後、その用紙Pを定着部9に送り込んでトナー像の定着処理をすることにより、基本的な画像形成が行われるようになっている。
以下、上記給紙装置1について詳細に説明する。
まず、給紙装置1におけるトレイ10は、図2〜図4等に示すように、支持フレーム20に揺動自在に取り付けられる第1トレイ11と、この第1トレイ11の給送方向Aの上流側端部において出し入れ自在に取り付けられた第2トレイ12とでその主要部が構成されている。第1トレイ11と第2トレイ12は、そのいずれもその上面が給紙すべき用紙(束)Pを積載するための積載面11a,12aとして形成されている。そして、給送方向Aにおける用紙寸法が大きい(長い)用紙Pを積載する場合には、第2トレイ12を第1トレイ11から引き出してその双方の積載面11a,12aを併用するようになっている。また、第1トレイ11は、その両側端部において給送方向Aの下流側に突出するように形成された支持アーム13A,13Bを介して支持フレーム20に揺動自在に取り付けられている。すなわち、その各支持アーム部13A,13Bの先端部にはそれぞれ外側に突出する支軸が形成されており、その支軸を支持フレーム20側に形成された軸受部(23A,23B)に取り付けている。これにより、トレイ10(第1トレイ11)は矢印B,C方向に揺動する。ちなみに、トレイ10は、その使用時においては、図2、3に示すように用紙の積載面11a等が給送方向Aにむけて低くなるように少し傾斜した状態に保たれる仕組みになっている。
また、第1トレイ11の積載面11aには、給紙基準の端面基準(サイドレジ)Xを規定する標準紙用の基準ガイド板14と、この基準ガイド板14に対して接近又は離間するようにガイド溝15にそって矢印D,E方向にスライド移動して端面基準とは反対側の用紙端面を規制して揃える可動ガイド板16と、特大サイズの用紙(例えばA3ノビ用紙)を給紙する際の端面基準を規定する特大紙用基準ガイド壁17とが設けられている。また、基準ガイド板14については、特大紙用基準ガイド壁17を使用する際に、積載面11aに形成された凹部18内に倒して収容する可倒式の収容構造になっている。これにより、用紙Pは、トレイ10の積載面上に積載されると、その片側端面が基準ガイド板14(又は特大紙用基準ガイド壁17)に押し当てられて端面基準として規制され、その反端側端面が可動ガイド板16に当接して揃えられる。
次に、給紙装置1における支持フレーム20は、図2〜図7等に示すように、トレイ10から給送される用紙Pが通過する用紙通路S(図3)をほぼ境にして上下に分割される上部フレーム21と下部フレーム22とで構成されている。この上部フレーム21及び下部フレーム22は、そのいずれもトレイ10の幅(給送方向Aと直交する方向の寸法)よりも少し大きめの幅を有する構造体である。また、上部フレーム21及び下部フレーム22は、大別すると、画像形成装置本体2aから露出した状態で装着されて外装カバーの一部になるとともにトレイ10(第1トレイ11)の支持部にもなるトレイ支持構造部21a,22aと、装置本体2aの内部側に位置する状態で配置されて給紙機能部となる給紙系構造部21b,22bという2つの構造部分からなっている。
下部フレーム22におけるトレイ支持構造部22aは、その全体が細長い容器のごとき形状からなるものであり、その中央部領域には後述するリフトプレート(29)の基部側を取り付けるための設置スペースが形成され、その両端部には前記した第1トレイ11における支持アーム部13A,13Bの支軸を支持する軸受23A,23Bが形成された構造になっている。また、上部フレーム21におけるトレイ支持構造部21bは、トレイ10の取付口及び給紙口となる切欠部24aが形成されかつ装置本体2aの外装壁面の一部になるように形成された垂直板24と、その垂直板24の両端部において給送方向Aの上流側に突出して上記軸受23A,23Bを覆い隠すような上蓋のごとき形状からなり上記トレイ支持構造部22aの両端部に接合される突出部25とを組み合わせたような構造になっている。
一方、上部フレーム21における給紙系構造部21bは、その用紙通路側となる内面であって端面基準Xとなる端部側に給送機構30を取り付けるための取付スペースが形成されており、その内面であって取付スペース以外の用紙通路部となる領域に給送方向Aに沿う多数の用紙搬送ガイドリブ26が間隔をあけて形成された構造になっている。また、下部フレーム22における給紙系構造部22bは、その用紙通路側となる内面側に前記リフトプレート(29)の先端部側が位置する設置スペースが形成され、その設置スペースの給送方向Aの下流側の領域において隆起して一段高くなった段部とその段部上面に前記上部フレーム21側の用紙搬送ガイドリブ26と対応するような多数の用紙搬送ガイドリブ27とが形成された構造になっている。また、そのリフトプレート用設置スペースと用紙搬送ガイドリブ27の間に位置する段部傾斜面28は、トレイ10に積載した用紙Pの先端部が突き当てられて揃えられる用紙先端突き当て面28として形成されている。さらに、給紙系構造部22bの端面基準X側の端部には、上部フレーム側に取り付けられた給紙機構30の一部が位置する設置スペースが形成されている(図7)。図7や図8において符号22eは、上記設置スペース内における用紙搬送ガイドリブの一部に形成した、後述する給紙機構30のリタードロールのロール軸(32a)との接触を避けるためのロール軸回避溝であり、符号22fは後述する給送機構30の電磁クラッチ(53)との接触を避けるための回避溝である。
この他、上部フレーム21における給紙系構造部21bの端面基準X側となる部位には、トレイ10上に積載される用紙Pの有無を検知する用紙検知センサ21cが設置されており、その検知センサ21cとともに揺動自在に垂下された状態で設けられるアクチュエータ21dがトレイ10上に積載される用紙Pの先端部により給送方向Aに押されて揺動変位することを検知センサ21cで検知することにより用紙Pの存在が確認されるようになっている(図2)。また、下部フレーム22における給紙系構造部22bの給送方向A下流側となる外壁面22cは、前記画像形成装置本体2a側に配設される給紙路R1の一部(用紙搬送路の合流点直前の搬送ガイド面)を構成する用紙搬送面(シュート)として形成されている(図3)。さらに、用紙先端突き当て面28には、用紙搬送ガイドリブ27が延長された状態で形成されている(図4、図7)。
さらに図2、図4等において、符号29はトレイ10上に積載されたときの用紙Pの先端部を給送機構30の所定位置まで持ち上げるためのリフトプレート(リフト板)である。このリフトプレート29は、その給送方向A上流側となるプレート基部が前記した下部フレーム22におけるトレイ支持構造部22aの設置スペースにおいて揺動自在に軸支されており、その揺動によりプレート先端部が前記用紙先端突き当て面28にそって上昇又は下降するようになっている。図4や図6において符号29aは、リフトプレート29を昇降させるための動力を発する電動モータであり、この電動モータ29aの動力がリフトプレート29の図示しない昇降機構に伝えられるようになっている。また、図7において符号29bは、トレイ10上に積載された用紙Pの最下紙の前進を阻止するためのコルク材等からなる前進阻止部材(フリクションパッド)であり、給送機構30における後述のピックアップロール(31)と対向するプレート位置に設けられている。同じく符号29cは、前記用紙検知センサ21cに係るアクチュエータ21dがトレイ10上に積載される用紙先端部に当たりかつその給送時に揺動するように介在できるスペースとして使用されるスリットである。
次に、給紙装置1における給送機構30は、図4〜図11に示すように、まずトレイ10の積載面11a,12a上に積載された用紙Pの最上面に圧接して回転駆動するピックアップロール(用紙送り出しロール)31と、このピックアップロール31の給送方向Aの下流側に配されて回転駆動するフィードロール(搬送ロール)32と、このフィードロール32に圧接するように配されるとともにトルクリミッタ34より給送方向Aとは反対方向の制動トルクが与えられるリタードロール(重送阻止ロール)33を有するものであり、支持フレーム20のうち前記基準ガイド板14で規定される給紙基準(端面基準X)位置の近傍となる端部領域に設置している。実際には、その支持フレーム20の上部フレーム21側(の前記した取付スペース)に取り付けられている。
そして、この給送機構30は、トレイ10の支持フレーム20(21)でかつそのフレームの上記したような端部領域に配置することを可能にするため、上記ピックアップロール31、フィードロール32及びリタードロール33として各1つずつ使用するのみとし、しかも、これら各ロール31〜33や他の構成部品を1つの基礎フレーム40にすべて配設したユニット構造としている。特に、この実施形態では、図8〜図11等に示すように、ピックアップロール31、フィードロール32及びリタードロール33をいずれもその各ロール軸31a,32a,33aの片側端部側において所定の支持フレームにより支持する片持ち構造を採用している。
まず、ピックアップロール31については、トレイ10上に積載される用紙Pの最上面に当接しかつその用紙先端部側が前記リフトプレート29に持ち上げられるときの上昇移動に対処し得るように、そのロール軸31aが矢印方向G,Hに揺動(変位)可能な第1揺動ブラケット41によって回転自在に支持されている。第1揺動ブラケット41は、その基端部側がフィードロールのロール軸32aに揺動可能に軸支されている一方、その先端部(自由端)が基礎フレーム40側に立設されたガイドシャフト42に沿って上下方向に揺動し得るようになっている。つまり、揺動ブラケット41の先端部は、前記ガイドシャフト42に沿わせるために形成したU字状のガイドスリット44aをそのガイドシャフト42の下端にあるリング状ストッパー42aと基礎フレーム40の内面との間でガイドされつつ変位可能とし、しかも基礎フレーム40と揺動ブラケット41の間に介在させたスプリング43により矢印H方向に所定の圧力で弾性的に付勢されるようなっている。このような第1揺動ブラケット41により、ピックアップロール31は、矢印H方向に弾性的に付勢された状態で矢印方向G,Hに任意に変位し得るようになっている。
また、このピックアップロール31は、上記したようにリフトプレート29の上昇により持ち上げられる用紙先端部と共に矢印G方向に上昇するように持ち上げられるが、その上昇した位置(高さ)が給送時の設定位置になったことを検知してリフトプレート29の上昇動作を停止させるため、第1揺動ブラケット41の基端部側に被検知突片41bを形成し、ピックアップロール31の上昇に伴って揺動するときの第1揺動ブラケット41の上記被検知突片61bを基礎フレーム40に装着した光学検知センサ55によって検知するようになっている(図9、図10)。図10において符号55aはセンサ55の検知部を示す。
フィードロール32については、ピックアップロール31よりも給送方向A下流側に位置し、しかも、そのロール軸32aが基礎フレーム40に立設された一対の軸受フレーム44によって固定された状態で回転自在となるように支持されている。リタードロール33については、フィードロール32の下方側に位置し、しかも、フィードロール32に弾性的に圧接してニップを形成するように、そのロール軸33aが矢印方向J,Kに揺動(変位)し得る第2揺動ブラケット(軸受フレーム)45によって回転自在となるように支持されている。第2揺動ブラケット45は、その基端部側が基礎フレーム40に形成された支持部40aに揺動可能に軸支されており、その先端部(自由端)が基礎フレーム40の端部との間に取り付けられたスプリング46により所定の張力で矢印J方向に弾性的に引っ張られるようになっている。このような第2揺動ブラケット45により、リタードロール33は、矢印J方向に弾性的に付勢されつつフィードロール32に圧接した状態に保持されるようになっている。
また、ピックアップロール31とフィードロール32は、その各ロール軸31a,32aに一方向にのみ回転可能となるワンウェイクラッチ50,51が取り付けられており、これにより、用紙Pを給送方向Aに搬送できる回転方向、すなわち矢印M方向にのみ回転するようになっている。さらに、このピックアップロール31とフィードロール32は、回転伝達ギア列52により画像形成装置本体2a側から所定の回転駆動力(本例では搬送ロール対7の回転駆動力)を得て、電磁クラッチ53を介してフィードロール32のロール軸32aに伝えるとともに、そのロール軸32aからギア列54を介してピックアップロール31のロール軸31aに伝えるようになっている。そして、電磁クラッチ53のON,OFF動作によりその回転駆動力の伝達を制御しており、これにより、ピックアップロール31とフィードロール32が同時に矢印M方向に駆動回転したり停止したりするようになっている。
さらに、この給送機構30においては、図11や図13に示すように、ピックアップロール31とフィードロール32及びリタードロール33を、その各ロール幅の中心が互いに給送方向Aに沿う同一線(図中の点線OL)上に並ぶような状態となるように配置している。しかも、図13に示すように、そのピックアップロール31とフィードロール32及びリタードロール33は、その端面基準Xからの離間距離wが40mm程度となるように取り付けられている。これにより、給送方向Aにおける用紙幅が40mm程度の用紙であっても、給紙することができるようになっている。
図4及び図6では、給紙装置1に加えて、前記した画像形成装置本体2aの内部に形成される給紙路R1を構成する用紙搬送ロール対7及びレジストロール8が配された搬送路ユニット60についても併せて図示している。
図4、6中において、符号61は搬送路下部フレームである。この搬送路下部フレーム61の給送方向上流側端部には4つの用紙搬送ロール対7における下ロール71a,72a,73a,74aが給送方向Aと直交する方向に間隔をあけて配設されており、その給送方向下流側端部にはレジストロール対8(80,81)が配設されている。ちなみに、この下ロール71a,72a,73a,74aと対向し合う上ロール71b,72b,73b,74bは、支持フレーム20の上部フレーム21側に配設されている(図3、図5)。また、搬送路下部フレーム61の用紙搬送ロール対7とレジストロール対8の間となる表面領域等には、複数本の用紙搬送ガイドリブ62が形成されている。さらに、搬送路下部フレーム61の搬送ロール対7が配設された端部側には、トレイ10から給紙される用紙Pの用紙通路と前記装置本体2a側の給紙路R1とが合流する合流口63が形成されている。
また、図4、6中において符号64は、用紙搬送ロール対7の回転駆動用の電動モータであり、1つの回転軸75を介して上記下ロール71a,72a,73a,74aを回転駆動させるようになっている。符号65は、レジストロール対8の回転駆動用の電動モータである。さらに、図4において、符号66は搬送ロール対7の回転軸75(厳密には電動モータ64)による回転駆動力を給送機構30の回転伝達ギア例52に伝達するためのギア列、67は用紙通路側の面(下面)に用紙搬送ガイドリブが形成されている開閉可能な上部用紙搬送ガイド板、67aは上部用紙搬送ガイド板67を支軸67bを支点として開閉させるときに把持して使用する取手部、68はカバーである。
さらに、この給紙装置1においては、給紙される用紙Pが基準ガイド14を通過して規制を受けなくなった後における給送機構30と用紙搬送ロール対7とによる用紙搬送がバランスのよい良好なものとなるようにするため、用紙搬送ロール対7について調整をしている。すなわち、図6や図13に示すように、複数ある用紙搬送ロール対7(71〜74)のうち給紙機構30のある側に位置する最端部の用紙搬送ロール対71を給送機構30のピックアップロール30よりも端面基準X側に位置するように相対的にずらした状態で配置している。例えば、その両者の各ロール中心の離間距離qが10mm程度となるようにする。しかも、この調整に加えて、その最端部の用紙搬送ロール対71以外である用紙搬送ロール対72〜74のニップ荷重(圧)が、その最端部の用紙搬送ロール対71のニップ荷重よりも小さい値になるように設定している。例えば、その最端部の用紙搬送ロール対71のニップ荷重を1kgf程度とし、それ以外の搬送ロール対72〜74のニップ荷重をいずれも400kgf程度とする。
次に、この給紙装置1について、その給紙動作内容などに触れながら更に説明する。
まず、図12に示すように、給紙すべき用紙Pをトレイ10(11,12)の積載面11a,12a上に積載する。
この際、用紙Pは、図13に示すように、その一端面が基準ガイド板14に当接して規制され、その他方の端面が可動ガイド板16と当接して揃えられる。また、この用紙積載(セット)時には、リフトプレート29は、図14aに示すように、下部フレーム22内の底面に近い待機位置に下がっており、用紙Pの積載が可能な状態になっている。このため、トレイ10に積載された用紙Pは、その給送方向A先端部が、トレイ10(積載面)が給送方向A下流側にむけて低くなるように傾斜していることと相俟って、リフトプレート29のある側に滑り込むような恰好となり、最終的に、その先端部面が用紙先端突き当て壁面28に突き当たって揃えられる。このとき最下紙の先端部は前進阻止パッド29aの上に位置した状態に置かれる一方で、その最上紙の先端部はピックアップロール31の下に位置した状態に置かれる。
続いて、画像形成動作が開始されて給紙要求時になると、図14bに示すように、初めにリフトプレート29が上昇して用紙Pの先端部側が所定の位置まで持ち上げられる。
すなわち、リフトプレート29が電動モータ29aの動力により上昇し始めることにより、用紙Pの先端部も用紙突き当て壁面28に沿うような状態で上昇する。そして、この用紙先端部の上昇に伴ってピックアップロール31も矢印G方向に揺動するようにして上昇するが、ピックアップロール31がその送り出し位置となる設定位置に達すると、その状態が、第1揺動ブラケット41の被検知突片41bが位置検知センサ55の検知面55aによる検知領域内から外れることによって検知される。この結果、電動モータ29aの駆動が止められ、リフトプレート29の上昇も停止する。これにより、ピックアップロール31がスプリング43によって矢印H方向に弾性的に付勢されつつ最上紙の表面に圧接して送り出し可能な状態になり、これとともに給送機構30も給送可能な状態になる。ちなみに、一連の画像形成動作が終了すると、リフトプレート29は下降して待機位置に戻るようになっている。
そして、給紙開始時点になると(給紙信号を受けると)、給送機構30のピックアップロール31及びフィードロール32が回転し始める。すなわち、電磁クラッチ53がON状態となり、用紙搬送ロール対7の駆動用電動モータ64による駆動力がその搬送ロール対のロール軸75、回転伝達ギア列65、54を経て伝えられることにより回転し始める。
これにより、まず、ピックアップロール31は、トレイ10上に積載された用紙Pの上層部のものをトレイ10から送り出してフィードロール32とリタードロール33とのニップに送り込む。
この際、図20に示すように、ピックアップロール31等により送り出される用紙Pは、その端面基準Xとなる端部側において、ピックアップロール31等により把持(拘束)されるとともにその後方部は基準ガイド板14等によっても把持される。このため、用紙Pは、ピックアップロール31等により斜め状態で送り出されたとしても、その片側端面が基準ガイド板14に当接して規制されながら送られることになるため、例えばその用紙後方部が基準ガイド板14側に振られるようになり、結果的にその斜め状態がある程度修正されるようになる。したがって、かかる用紙Pは正しい搬送姿勢で送り出されるようになる。
また、給送機構30では、ピックアップロール31等により送り出される用紙Pが複数枚であっても、リタードロール33による従来公知の捌き作用によって最上紙のみが1枚ずつ給送されるようになっている。しかも、この給送機構30におけるピックアップロール31やフィードロール32及びリタードロール33により給送される用紙Pは、その表裏両面側が、給送機構30以外の用紙通路領域にある用紙搬送ガイドリブ26,27によって保持されながら給送されるようになっている。
そして、この給送機構30によって給送される用紙Pがその給送方向A下流側にある用紙搬送ロール対7(71〜74)に達すると、電磁クラッチ53がOFF状態となることにより、ピックアップロール31及びフィードロール32の回転が停止する。これにより、ピックアップロール31及びフィードロール32は、ワンウェイクラッチ50,51により用紙Pを送る給送方向Aに相当する矢印M方向にのみ自由回転するようになる。
この際、用紙Pの後方部端部は、フィードロール32とリタードロール33のニップにわずかながら拘束された状態で送られるようになるため、このような状態にある用紙Pにとっては1種の搬送抵抗となる。そして、このニップによる搬送抵抗と、このニップよりも給送方向A下流側にある複数の搬送ロール対71〜74による搬送力との関係(バランス)が悪いと、その後、用紙Pの後方部側が基準ガイド板14を通過して規制を受けない状態になった場合には、用紙がその搬送ロール対71〜74と上記ロールニップとに拘束された状態となって、その用紙の搬送状態がそれらの力学的バランスに支配されるため、斜め送り等が発生するおそれがある。
しかし、この給紙装置1では、前記したように端面基準Xに最も近い最端部の用紙搬送ロール対71をフィードロール32よりも端面基準側にずらして配置しているとともに、その最端部の搬送ロール対71以外となる搬送ロール対72〜74のニップ荷重を最端部の搬送ロール対71のニップ荷重よりも小さく設定しているため、基準ガイド板14による規制を解かれた後であっても、図21aに概念的に示すようにフィードロール32とリタードロール33とのニップによる搬送抵抗(矢印FBで示す方向の力)が、最端部の用紙搬送ロール対71の位置と他の搬送ロール対とのニップ荷重の調整により相殺されるような状態となり、4つの用紙搬送ロール対71〜74の搬送力がほぼ等しくなってバランスの採れた状態になる。図中のF1〜F3は各搬送ロール対の各ニップ荷重に相応して発生する搬送力(の方向及び大きさ)を示す。この結果、斜め搬送等も発生せず、良好な搬送が確保されるようになる。仮に、4つの用紙搬送ロール対71〜74のニップ荷重をすべて同じ値に設定した場合には、力のバランスにより、図21bに例示するように、用紙Pは上記ニップによる搬送抵抗の影響を受けて搬送姿勢がくずれ、斜め送りとなるおそれがある。
最後に、用紙Pは、給送機構30のフィードロール32とリタードロール33とのニップからも脱出して解かれ、用紙搬送ロール対71〜74の搬送力と用紙搬送ユニット60側の上下用紙搬送ガイドリブにより誘導により、レジストロール対8まで搬送される。以上のようにしてトレイ10上の用紙Pは、給送機構30等によって斜め送りも発生せず1枚ずつ良好に給送される。
また、この給紙装置1は、その組み立て及び画像形成装置本体2aへの取付けに際しても、特に給送機構30がユニット構造となっているため取り扱いやすく、しかも、支持フレーム20の上部フレーム21に取り付ける構成になっているため給紙装置1の組み立て及び取付け作業時に併せて行うことができる。さらに、そのメンテナンス作業に際しても、上部フレーム21を画像形成装置本体2aから取り外すことにより同時にかつ簡単に取り外すことができ便利であり、しかも作業が格段にしやすいものとなる。
そして、この給紙装置1においては、図15に示すように、ピックアップロール31は、そのロール軸31aが隙間をもって支持されている。この実施形態では、ロール軸31aを回転自在に支持する第1揺動ブラケット41におけるフィードロール32のロール軸32aとの軸受41eを、その軸受41eとロール軸32aとの間に少し隙間がある(多目のクリアランスをもたせる)ように形成し、これにより、ピックアップロールのロール軸31aが第1揺動ブラケット41を介して少し自由に動くような状態となり得るように構成した。
このことにより、たとえばピックアップロール31により送り出されるトレイ10上の用紙P先端部にカール等の変形個所があっても、図15cに例示するように、その変形個所に追従するようにピックアップロール31(実際にはロール軸31a)が上下方向にわずかながら変位する(揺れ動く)ようになる。この結果、かかる用紙Pの変形個所が原因で斜め送りや紙詰まりなどが発生することはなく、その変形個所をピックアップロール31が良好に保持しながら用紙Pをトレイ11から良好に送り出すことができる。
また、この給紙装置1は、図8や図16などに示すように、その給送機構30におけるトルクリミッタ34をリタードロール33のロール軸33aに直接取り付けている。これによって給送機構30の更なるコンパクト化を図っている。しかも、このように同軸状に取り付けることによって、トルクリミッタ34により与える制動トルクの作用をリタードロール33に効率よく伝えることができる。また、このようにトルクリミッタ34を軸上に取り付けることに加え、トルクリミッタ34の少なくとも上部外周面34aをそのリタードロール33の最上面(フィードロールとのニップ)の高さとほぼ同じ高さになるように形成している。この実施形態ではトルクリミッタ34の外形が円柱状であるため、その半径をリタードロール33の半径と同じ寸法に設定している。これによって、そのトルクリミッタの上部外周面34aが、給送される用紙Pの通過の障害とならず、一種の用紙通過ガイド面として機能するようになる。このため、トルクリミッタ34を用紙通路S内に配置することが可能となり、給送機構30のコンパクト化にも有利となるうえ、用紙Pの給紙機構30に対する円滑な通過が確保されるようになる。
さらに、この実施形態のように給送機構30におけるリタードロール33を第2揺動ブラケット45により片持ち支持している場合、図17に示すように、そのリタードロール33が、このロールと圧接した状態で回転駆動するフィードロール32の回転力を受けて給送方向Aの下流側下方(図中の矢印Y)へ捩れるように変位するという不具合が発生する。このため、この給紙装置1では、図7や図17に示すように、そのリタードロール33を揺動自在に支持している第2ブラケット45に当接して上記給送方向下流側下方Yへの変位を阻止する形状の当接リブ90を、下部フレーム22の前記した設置スペース内に立設した。この実施形態では、第2揺動ブラケット45の給送方向下流側下方Y側に位置する角部45aに当接して変位を阻止する係止段差部を形成したリブ90とした。
この結果、上記リタードロール33はフィードロール32の回転力を受けても第2揺動ブラケット45が当接リブ90により給送方向下流側下方Yへの変位が阻止されるため、かかる変位によりリタードロール33が正規の(ニップ)位置からずれることにより発生する用紙Pの搬送不良や捌き不良を防止することができる。
また、この給紙装置1では、図5や図18等に示すように、支持フレーム20の上部フレーム21及び下部フレーム22に形成した複数の用紙搬送ガイドリブ26,27のうち給送機構30近傍に位置する複数のガイドリブ26A,27A(主に下部フレーム側のリブ27A)を、その給送機構30におけるピックアップロール31及びフィードロール32の用紙当接面(ニップ)Nの高さに緩やかに(徐々に)近づく高さとなるように形成している。つまり、上記用紙当接面Nの高さとガイドリブの高さの差をできるだけ少なくし、かつ緩やかに解消するようにガイドリブ26A,27Aの高さを給送機構30に接近するにつれて徐々に低い寸法にしている。
これにより、給紙時の用紙Pが支持フレーム20を通過する際に、用紙Pは給送機構30近傍にある用紙搬送ガイドリブ26A,27Aによって緩やかに誘導されながら良好に搬送されるようになる。また、図18に示すように、用紙Pが給送機構30(における各ロール31〜33との当接部)と用紙搬送ガイドリブ27Aとの間でほぼ同じ高さに保持された状態で搬送されるようになるため、搬送抵抗となるように変形した姿勢で搬送されるおそれがなく良好な給紙が確保されるようになる。
さらに、この給紙装置1では、トレイ10上の基準ガイド板14及び可動ガイド板16の給送方向A下流側端部に用紙Pの側端部上面を抑える用紙抑え突起14a、16aを設けている。この実施形態では、用紙抑え突起14a、16aとして各ガイド板のガイド面から内側に3mm程度(突出量α)水平に突出するような突片を設けた。これにより、用紙Pが給送機構30(における各ロール31〜33との当接部)と用紙搬送ガイドリブ26,27との間で保持されて給送される際に、その用紙Pの側端部が基準ガイド14及び可動ガイド16の双方から外れるように変形又は搬送されることがあっても、そのガイド14,16から外れようとする用紙側端部が用紙抑え突起14a、16aにより抑えられる。これにより、各ガイド14,16により確実に規制された良好な給紙が行われるようになる。これは、特に用紙Pとしてはがきや封筒のような厚みがあって撓むと比較的強く反り返るような物性の用紙を給紙する場合に有効となる。
しかも、この場合において、給送機構30の近傍に位置する複数の用紙搬送ガイドリブ26A,27A(主に27A)の高さがその給送機構30におけるピックアップロール31の用紙当接面の高さよりも高い関係にある場合には、図19に示すように、可動ガイド板16側に設ける用紙抑え突起16aをその抑え面の高さが基準ガイド板14側に設ける用紙抑え突起14aの抑え面の高さよりも高くなるように形成している。この実施形態では、その各用紙抑え突起における抑え面の高さの差βが5mm程度になるように設定している。このようにすることにより、給送機構30における用紙保持位置(特にピックアップロール31の用紙当接位置)と用紙搬送ガイドリブ27Aによる用紙保持位置に高さ方向のずれがあっても、その各位置で保持される用紙Pが基準ガイド14及び可動ガイド16の双方から外れることが確実に防止される。したがって、両ガイドに確実に規制されたより良好な給紙が保証される。
また更に、この給紙装置1では、図7や図13等に示すように、リフトプレート29に、用紙先端突き当て壁面28の給送機構30側の端部と給送機構30との隙間に介入する突出部29dを設けている。これにより、トレイ10上に積載した用紙(特に給送方向の幅の狭いもの)の先端部が上記隙間に潜り込むという不具合を解消することができ、この結果、かかる潜り込みにより給紙不良や用紙の損傷が発生することを防止することができる。
[他の実施の形態]
実施の形態1では、手差しトレイの給紙装置に適用した場合について例示したが、複写機等において使用される自動原稿送り装置における原稿供給装置として適用してもよい。
1…給紙装置、10…トレイ、11a,12a…積載面、14…基準ガイド板、14a…用紙抑え突起、16…可動ガイド板、16a…用紙抑え突起、20…支持フレーム(支持構造体)、21…上部フレーム(上部構造体)、22…下部フレーム(下部構造体)、26,27…用紙搬送ガイドリブ、28…用紙先端突き当て壁、29…リフトプレート、29d…突出部、30…給送機構、31…ピックアップロール(用紙送り出しロール)、32…フィードロール(搬送ロール)、33…リタードロール(重送阻止ロール)、34…トルクリミッタ、34a…上部外周面、40…基礎フレーム、45…第2揺動ブラケット(軸受フレーム)、71…最端部の用紙搬送ロール対、72〜74…ロール対71以外の用紙搬送ロール対、90…当接リブ(当接部材)、P…用紙、A…給送方向、X…端面基準(給紙基準)。