JP4337196B2 - 芳香族ポリアミドフィルム及びそれを用いた磁気記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気記録媒体として好適に用いることができる芳香族ポリアミドフィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、デジタル記録技術の進歩、コンピュ−タ−の外部メモリへの展開等により、薄膜化、高密度記録化、高耐久性の磁気記録媒体に適したフィルムの要求がより強くなってきている。芳香族ポリアミドフィルムは従来、磁気記録媒体のベ−スフィルムに用いられてきたポリエチレンテレフタレ−トやポリエチレンナフタレ−ト等のポリエステルフィルムに比べ、剛性が高いため薄膜化が可能であり、大容量の磁気記録媒体に適した素材である。しかし、芳香族ポリアミドフィルムは、使用するモノマーのコストが高く、かつ重合・製膜工程が複雑であるためにコストを低く押さえることが難しい。更に、芳香族ポリアミドは剛直で延伸性に乏しいために生産性も悪い。この様な問題を解決する方法として比較的安価なポリマーとのブレンドフィルムとする方法がある。
【0003】
例えば、特開平3−237135号公報には、芳香族ポリアミドと可溶性樹脂からなり、可溶性樹脂の重量分率が10重量%〜95重量%の耐熱性フィルムが開示されている。しかし、可溶性樹脂を芳香族ポリアミドに対して多く含むために、芳香族ポリアミドの特徴である高い機械特性、特に高ヤング率が失われている。例えば、該公報の実施例においては、最もヤング率の高いものでも、6.2GPa(実施例2)に過ぎない。この他同様な例として、特開平3−286680号公報、特開平3−227290号公報、特開平4−117433号公報、特開平4−27110号公報等があるが、いずれも同様である。
【0004】
また、特開平4−8763号公報には、芳香族ポリアミド/ポリエーテルスルホン組成物の製造方法において、芳香族ポリアミド重合完了前にポリエーテルスルホンを添加する方法が開示されているが、成形体(フィルムなど)の製造方法及び特性については一切記載されていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、低コスト化が可能で延伸性が良くて生産性が高く、かつ高延伸時に芳香族ポリアミドの特徴である高ヤング率を発現できる芳香族ポリアミドフィルムを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かかる目的は、芳香族ポリアミドと少なくとも一種の異種ポリマーを含有し、異種ポリマーの含有量が芳香族ポリアミドに対し10重量%以上100重量%未満であり、異種ポリマーが、式(2)に示す繰り返し単位のうちの少なくとも一つをmモル%、式(3)に示す繰り返し単位のうちの少なくとも一つをnモル%含有する共重合ポリマーであり、かつ、mとnが
0.5≦m/n≦2.0
であり、かつ、異種ポリマーの主鎖を構成する少なくとも一つの炭素の13C−NMRスペクトルのピーク強度の比S/S0(ここで、S0は異種ポリマー単独溶液状態で測定の13C−NMRスペクトルのピーク強度を、Sは芳香族ポリアミドと異種ポリマーをフィルム中と同じ割合で混合した溶液状態で測定の13C−NMRスペクトルのピーク強度を表す)が0 ≦ S/S0 ≦ 0.5を充たすことを特徴とする芳香族ポリアミドフィルムによって達成される。
式(2):
【化3】
式(3):
【化4】
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の芳香族ポリアミドとは、次の式(4)及び/又は式(5)で表される繰り返し単位を有するものである。
式(4):
【0008】
【化4】
式(5):
【0009】
【化5】
ここで、Ar1、Ar2、Ar3は 例えば、
【0010】
【化6】
等が挙げられ、X、Yは
−O−,−CH2−,−CO−,−CO2−,−S−,−SO2−,−C(CH3)2−
等から選ばれる。
【0011】
更に、これらの芳香環上の水素原子の一部が、フッ素,臭素,塩素等のハロゲン基(特に塩素)、ニトロ基、メチル,エチル,プロピル等のアルキル基(特にメチル基)、メトキシ,エトキシ,プロポキシ等のアルコキシ基等の置換基で置換されているものが、吸湿率を低下させるために湿度変化による寸法変化が小さくなるため好ましい。また、重合体を構成するアミド結合中の水素が他の置換基によって置換されていてもよい。本発明に用いられる芳香族ポリアミドは、上記の芳香環がパラ配向性を有しているものが、全芳香環の80%以上、より好ましくは90%以上をしめていることが好ましい。ここで言うパラ配向性とは、芳香核上主鎖を構成する2価の結合手が互いに同軸または平行にある状態を言う。このパラ配向性が80%未満の場合、フィルムの剛性および耐熱性が不十分となる場合がある。
【0012】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムは少なくとも一種の異種ポリマーを含有し、異種ポリマーの含有量は芳香族ポリアミドに対して10重量%以上100重量%未満である。異種ポリマーの含有量が10重量%未満の場合は、コスト低減及び延伸性向上の効果を充分に得られないことがあり、異種ポリマーの含有量が100重量%以上の場合は、延伸性は向上するが、高延伸時にもヤング率が充分に上昇せず、芳香族ポリアミドフィルムの特徴である高い剛性を保てなくなることがある。延伸性向上と高ヤング率化のバランスが良いことから異種ポリマーの含有量は20〜90重量%であることがより好ましく、30〜80重量%であることが更に好ましい。
【0013】
更に、上記異種ポリマーは、主鎖を構成する少なくとも一つの炭素の13C−NMRスペクトルのピーク強度の比S/S0(ここで、S0は異種ポリマー単独溶液状態で測定の13C−NMRスペクトルのピーク強度を、Sは芳香族ポリアミドと異種ポリマーをフィルム中と同じ割合で混合した溶液状態で測定の13C−NMRスペクトルのピーク強度を表す)が
0 ≦ S/S0 ≦ 0.5
を充たす必要がある。
【0014】
S/S0が上記の範囲にあることは異種ポリマーと芳香族ポリアミドが強く相互作用を及ぼしあうことにより、芳香族ポリアミドと異種ポリマーをフィルム中と同じ割合で混合した溶液中において13C−NMRスペクトルのピークが検出されにくくなっているためであり、異種ポリマーと芳香族ポリアミドの相溶性が良いことを表している。S/S0が0.5を越える場合は、異種ポリマーと芳香族ポリアミドの相溶性が悪いために製膜時に相分離を起こし、フィルムの延伸性が不十分であったり、失透して伸度の低い脆いフィルムになったり、フィルムの表面に凹凸ができる場合がある。更に、相溶性が非常に悪い場合は、溶液状態で相分離を起こしフィルム化が不可能になったりすることがある。延伸性がより向上することから、より好ましくはS/S0が0〜0.3、更に0〜0.2であることが特に好ましい。
【0015】
13C−NMRスペクトル測定に用いる溶媒としては、芳香族ポリアミド及び異種ポリマーが可溶な溶媒の中から選ばれるが、製膜に用いられる溶媒と同じ溶媒が好ましく用いられる。この様な溶媒として、濃硫酸、メタンスルホン酸、ポリリン酸等の強酸、あるいはN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性有機極性溶媒等が挙げられるが、取り扱いが容易なことから非プロトン性有機極性溶媒が好ましく用いられる。
【0016】
上記異種ポリマーは、製膜原液の溶媒に可溶なポリマーの中から選ばれるが、特に主鎖や側鎖に極性の高い官能基を持つポリマーが芳香族ポリアミドのアミド基と水素結合を形成すること等により相溶性が良くなるために好ましい。更に、上記異種ポリマーが式(6)に示す繰り返し単位のうち、少なくとも一つの繰り返し単位を50モル%以上含有する場合、芳香族ポリアミドと相溶性が極めて良くなるためにより好ましい。
式(6):
【0017】
【化5】
更に、上記異種ポリマーが式(7)に示す繰り返し単位のうちの少なくとも一つをmモル%、式(8)に示す繰り返し単位のうちの少なくとも一つをnモル%含有する共重合ポリマーであり、かつmとnが0.5≦m/n≦2.0であると、芳香族ポリアミドとの相溶性を保ちつつ、異種ポリマーによる湿度特性の悪化を抑制できるので特に好ましい。
式(7):
【0018】
【化6】
式(8):
【0019】
【化9】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムは、少なくとも一方向において引張りヤング率が9.8GPa以上であり、かつ伸度が5%以上であることが好ましい。ヤング率が9.8GPa未満の場合、加工時やテープに成形され使用される際の巻き取り時の高張力、張力変動に対抗することができないことがある。また、伸度が5%未満の場合、フィルムが脆くなり切れやすくなることがある。本発明の芳香族ポリアミドフィルムの少なくとも一方向のヤング率はより好ましくは11.7GPa以上、更に好ましくは12.7GPa以上であるとフィルムの薄膜化に好適であるので好ましい。ヤング率は特に上限はないが、通常は30GPa程度とするのがヤング率と伸度のバランスが良いことから好ましい。更に、全ての方向のヤング率が9.8GPa以上であるとより好ましい。また、本発明の芳香族ポリアミドフィルムの伸度は、より好ましくは10%以上、更に好ましくは20%以上であるとテ−プに加工した際に適度な柔軟性を持つので好ましい。伸度は特に上限はないが、通常は70%程度とするのがヤング率と伸度のバランスが良いことから好ましい。
【0020】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムの吸湿率は、3%以下、より好ましくは2%以下であると湿度変化による寸法変化を抑制することができるので好ましい。
【0021】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムの200℃、10分間での熱収縮率は0.0〜0.5%が好ましく、より好ましくは0.0〜0.3%であると温度変化によるテ−プの寸法変化が小さく良好な電磁変換特性を保てるので好ましい。
【0022】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムは、少なくとも一方の表面において表面粗さRaが1nm以上10nm以下であると磁気記録媒体とした時の電磁変換特性が良好となるので好ましい。一般に相溶性の悪いポリマー同士をブレンドフィルムとすると、製膜時に相分離が起こりフィルム表面に凹凸ができることが多い。これに対し、本発明の芳香族ポリアミドフィルムは相溶性の良い異種ポリマーとのブレンドフィルムであることから、高延伸可能で高ヤング率を保持できるばかりでなく、上記のような凹凸がなくフィルム表面が平滑であることから磁気記録媒体のベースフィルムとして好適である。Raが10nmを越えると磁気記録媒体とした時の電磁変換特性が悪化する場合があり、Raが1nm未満の場合は表面が平滑すぎて摩擦が大きくなりテープ加工時等のハンドリングが悪化することがある。
【0023】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムは、テープに加工した際の走行性を改善する目的で無機粒子や有機粒子を含有することが好ましい。好ましい無機粒子としては、例えば、SiO2、TiO2、Al2O3、CaSO4、BaSO4、CaCO3、カ−ボンブラック、ゼオライト、その他の金属微粉末等が挙げられる。また、好ましい有機粒子としては、例えば、架橋ポリビニルベンゼン、架橋アクリル、架橋ポリスチレン、ポリエステル粒子、ポリイミド粒子、ポリアミド粒子、フッ素樹脂粒子等の有機高分子からなる粒子、あるいは、表面に上記有機高分子で被覆等の処理を施した無機粒子が挙げられる。
【0024】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムは、フレキシブルプリント基板、コンデンサー、プリンターリボン、音響振動板、太陽電池のベースフィルム等種々の用途に好ましく用いられるが、少なくとも片面に磁性層を設けた磁気記録媒体として用いられると高ヤング率と平滑な表面を兼ね備えた本発明の芳香族ポリアミドフィルムの効果が充分に発揮されるため、特に好ましい。
【0025】
磁気記録媒体の形態は、ディスク状、カード状、テープ状など特に限定されないが、本発明の芳香族ポリアミドフィルムの優れた高ヤング率・表面性を活かした薄膜化に対応するため、芳香族ポリアミドフィルムからなるベ−スフィルムの厚みが6.5μm以下、幅が2.3〜13.0mm、長さが100m/巻以上、磁気記録媒体としての記録密度(非圧縮時)が8キロバイト/mm2以上の長尺、高密度の磁気テ−プとしたときに本発明の特徴である過酷な条件下でのしわの発生及び巻きずれを抑制する効果をより一層奏することができるので特に好ましい。なお、ここでいう記録密度は下式により算出される。
【0026】
記録密度 = 記録容量/(テ−プ幅×テ−プ長さ)
ベ−スフィルムの厚みはより好ましくは、5.0μm以下であることがより好ましく、4.0μm以下であることが更に好ましい。厚みは特に下限はないが、通常は2μm程度とするのがフィルムの取り扱いが良いことから好ましい。また、磁気記録媒体としての記録密度は、より好ましくは25キロバイト/mm2以上、更に好ましくは34キロバイト/mm2以上である。記録密度は特に上限はないが、通常は100キロバイト/mm2程度とするのが粗大突起等によるドロップアウトの影響を受けにくいことから好ましい。
【0027】
また、本発明は磁気記録媒体として、民生用、プロ用、D−1,D−2,D−3等の放送局用デジタルビデオカセット用途、DDS−2,3,4、データ8mm、QIC等のデータストレージ用途に好適に用いることができるが、データ欠落等の信頼性が最も重視されるデータストレージ用途が最適である。
【0028】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムが適用される高密度記録媒体の磁性層は、特に限定されないが、公知の強磁性金属薄膜層が例示される。強磁性金属薄膜層の形成手段としては、従来公知の方法が用いられ、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレ−ティング法や塗布法等が挙げられる。強磁性金属材料としては、Co、Ni、Cr、Fe等の金属やこれらを主成分とする合金等を用いることができる。
【0029】
磁性層を形成後、ダイヤモンドライクコ−ティングの付与あるいは潤滑保護層の付与を施したり、または両者を併用することは磁気記録媒体の耐久性向上の点で好ましい。更に、磁性層と反対側の面により走行性を向上させるために、公知の方法によりバックコ−ト層を設けてもよい。
【0030】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムは、コア等に巻き上げていきフィルムロールとすることができる。コアの材質は特に限定されず、紙、プラスチック等公知のものを使用できる。また、外径が1〜10インチ、特に2〜8インチのものが好ましく用いられる。コア長は150〜2000mm、特に500〜1500mmのものが好ましく用いられる。
【0031】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムは、例えば、次のような方法で製造できるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0032】
まず芳香族ポリアミドであるが、芳香族ジ酸クロリドと芳香族ジアミンから得る場合には、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等の非プロトン性有機極性溶媒中で溶液重合で合成される。
【0033】
この時、低分子量物の生成を抑制するため、反応を阻害するような水、その他の物質の混入は避けるべきであり、効率的な攪拌手段をとることが好ましい。また、溶解助剤として塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化リチウム、臭化リチウム、硝酸リチウム等を添加してもよい。
【0034】
単量体として芳香族ジ酸クロリドと芳香族ジアミンを用いると塩化水素が副生するが、これを中和する場合には周期律表I族かII族のカチオンと水酸化物イオン、炭酸イオン等のアニオンからなる塩に代表される無機の中和剤、またエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、アンモニア、トリエチルアミン、トリエタノ−ルアミン、ジエタノ−ルアミン等の有機の中和剤が使用される。また、基材フィルムの湿度特性を改善する目的で、塩化ベンゾイル、無水フタル酸、酢酸クロリド、アニリン等を重合の完了した系に添加し、ポリマ−の末端を封鎖してもよい。
【0035】
本発明のフィルムを得るためにはポリマ−の固有粘度(ポリマ−0.5gを硫酸中で100mlの溶液として30℃で測定した値)は、0.5〜5.0であることが好ましい。
【0036】
製膜原液としては、中和後のポリマ−溶液をそのまま用いても、一旦、ポリマ−を単離後、有機溶媒に再溶解したものを用いてもよい。
【0037】
異種重合体の添加は、重合前にモノマ−とともに溶媒に溶解させても、重合後のポリマ−溶液に混合させても、単離した芳香族ポリアミドとともに再溶解しても、製膜直前にスタティックミキサ−等を利用して混合させてもよい。また、粉末状やペレットとして添加しても、一旦、重合溶媒等の有機溶媒に溶解後、ポリマ−溶液と混合しても構わない。
【0038】
また、粒子を添加する場合は、フィルム中で均一な分散とするため、添加前に好ましくは10ポイズ、より好ましくは1ポイズ以下の溶媒に分散させておくことが好ましい。粒子を予め溶媒に分散させずにそのまま製膜用のポリマ−溶液に添加した場合、平均粒径が大きくなり、また、粒径分布も大きくなることがあり、その結果フィルムの表面が粗れることがある。用いる溶媒としては製膜原液と同じものが好ましいが、製膜性に特に悪影響を与えなければ他の溶媒を使用してもかまわない。分散方法としては、上記溶媒に粒子を入れ、撹拌式分散器、ボ−ルミル、サンドミル、超音波分散器等で分散する。この様に分散された粒子はポリマ−溶液中へ添加混合されるが、重合前の溶媒中へ添加あるいはポリマ−溶液の調製工程で添加してもよい。また、キャスト直前に添加してもよい。製膜原液中のポリマ−濃度は2〜40重量%程度が好ましい。
【0039】
上記のように調製された製膜原液は、乾式法、乾湿式法、湿式法、半乾半湿式法等によりフィルム化が行なわれるが、表面形態を制御しやすい点で、乾湿式法が好ましく、以下、乾湿式法を例にとって説明する。
【0040】
上記の原液を口金からドラム、エンドレスベルト等の支持体上に押し出して薄膜とし、次いでかかる薄膜層から溶媒を飛散させ、薄膜を乾燥する。乾燥温度は、100〜210℃が好ましく、120〜180℃がより好ましい。また、乾燥時間は、4〜12分が好ましく、5〜10分がより好ましい。次いで、乾式工程を終えたフィルムは支持体から剥離されて、湿式工程に導入され、脱塩、脱溶媒などが行なわれる。フィルムを支持体から剥離するときのポリマー濃度は30〜60重量%であることが好ましく、40〜50重量%であることがより好ましい。ポリマー濃度が30重量%未満の場合は、フィルムの自己支持性が不十分で破れやすくなることがあり、60重量%以上の場合は、延伸が十分に行えない場合がある。本発明の芳香族ポリアミドフィルムは、支持体から剥離されて湿式工程に導入される間に、ゲルフィルムの状態でフィルムの長手方向に好ましく延伸される。延伸倍率は延伸限界(フィルムが破れるまで延伸したときの延伸倍率)の60〜90%であることが好ましく、70〜85%であるとより好ましい。長手方向の延伸倍率が60%未満では長手方向のヤング率が不十分なことがあり、90%を越えると伸度の低い脆いフィルムとなることがある。また、湿式工程を通さずにそのまま剥離したゲルフィルムに延伸および熱処理を行うと、表面が大きくあれたり、カ−ルが発生することがあるため好ましくない。
【0041】
湿式工程を経たフィルムは水分を乾燥後、フィルムの幅方向に延伸が行われる。延伸温度は200〜300℃であることが好ましく、240〜280℃であることがより好ましい。延伸温度がこの範囲より低いと延伸時にフィルムが破れやすく、高すぎると分子が配向しにくくなりヤング率が不十分なことがある。幅方向の延伸倍率は長手方向の延伸倍率の70〜300%であることが好ましい。幅方向の延伸倍率が長手方向の70%未満では幅方向のヤング率が不十分なことがあり、300%を越えると伸度の低い脆いフィルムとなったり、長手方向のヤング率が大きく低下することがある。
【0042】
フィルムの延伸中あるいは延伸後に熱処理が行なわれるが、熱処理温度は200〜300℃の範囲にあることが好ましい。より好ましくは、240〜280℃である。熱処理温度が200℃未満の場合、フィルムのヤング率が低下することがあり、300℃を越えるとフィルムの結晶化が進みすぎて堅くてもろいフィルムとなる。また、延伸あるいは熱処理後のフィルムを徐冷する事が有効であり、50℃/秒以下の速度で冷却する事が有効である。
【0043】
なお本発明のフィルムは、積層フィルムであってもよい。例えば2層の場合には、重合した芳香族ポリアミド溶液を二分し、それぞれ異なる粒子を添加した後、積層する。さらに3層以上の場合も同様である。これら積層の方法としては、周知の方法たとえば、口金内での積層、複合管での積層や、一旦1層を形成しておいてその上に他の層を形成する方法などがある。
【0044】
【実施例】
本発明における物性の測定方法、効果の評価方法は次の方法に従って行った。
【0045】
(1)13C−NMRスペクトル
異種ポリマー単独、又は、異種ポリマーと芳香族ポリアミド(混合比はフィルム中と同じ割合)をN−メチル−2−ピロリドンにポリマー濃度が10重量%になるように溶解し、日本電子社製GX−270を用いて以下の条件で13C−NMRの測定を行った。
【0046】
温度:室温
観測周波数:67.9406MHz
測定法:T1測定(インバージョンリカバリー)
90°励起パルス幅:22.5μs
観測時間:1.091s
観測幅:15.015kHz
観測ポイント:16384
データポイント:16384
観測繰り返し時間:10s
溶媒のN−メチル−2−ピロリドンのピークと重ならない異種ポリマーの主鎖を構成する炭素の一つを選び、ピーク強度の比S/S0を下式から求めた。
【0047】
S/S0 =(A/C)/(A0/C0)
ここで、A:混合溶液状態で測定した異種ポリマーの主鎖炭素のピーク面積
C:混合溶液状態で測定した異種ポリマーのポリマー濃度
A0:単独溶液状態で測定した異種ポリマーの主鎖炭素のピーク面積
C0:単独溶液状態で測定した異種ポリマーのポリマー濃度
である。
【0048】
(2)延伸限界テスト
剥離したゲルフィルム(ポリマー濃度40〜50重量%)を3cm×15cmに切り取り、手動延伸機に固定後、フィルムが切れるまで延伸し、その時の倍率の平均値(5回測定)を求めた。
【0049】
(3)ヤング率、伸度
ロボットテンシロンRTA(オリエンテック社製)を用いて20℃、相対湿度60%において測定した。試験片は10mm幅で50mm長さ、引っ張り速度は300mm/分である。ただし、試験を開始してから加重が0.1kgfを通過した点を伸びの原点とした。
【0050】
(4)表面粗さRa
Digital Instruments社製原子間力顕微鏡NanoScopeIIIを用いて、以下の条件でガラス板またはベルトに接触しない表面について3ヶ所測定し、平均値を求めた。
【0051】
カンチレバ−:シリコン単結晶
走査モ−ド:タッピングモ−ド
走査範囲:30μm×30μm
走査速度:0.5Hz
測定環境:25℃、相対湿度65%
(5)吸湿率
フィルムを100mm×100mmに切り取り、200℃のオ−ブン中で1時間加熱脱湿後、乾燥窒素雰囲気下で降温し、完全脱湿時の重量を測定した。このフィルムを75%RH中で48時間放置後に取り出した吸湿後の重量を測定し、吸湿による重量の増加を測定した。
【0052】
(6)電磁変換特性
フィルムの製膜時の金属ベルトと接しない側の表面に、次の組成からなる磁性塗料を調製し、グラビアロ−ルで磁性層の厚みが2μmとなるように塗布し、硬化した後カレンダ−処理を行った。
【0053】
磁性粉(メタル粉) 80重量部
塩ビ系共重合体 10重量部
ポリウレタン 10重量部
硬化剤 5重量部
研磨剤 5重量部
トルエン 100重量部
メチルエチルケトン 100重量部
この磁性層を塗布したフィルムを1/2インチ幅にスリットし、VTRカセットに組み込みVTRテ−プとした。このテ−プにVHS方式の家庭用VTRを用いてテレビ試験波形発生器により100%クロマ信号からカラ−ビデオノイズ測定器で、100回繰り返し走行後のクロマS/Nを測定した。雰囲気は25℃、55%RHの条件で、市販のテ−プを基準とし以下の基準で評価した。
【0054】
○:標準テ−プとの差が+0.5dB以上
△:標準テ−プとの差が−0.5dB以上+0.5dB未満
×:標準テ−プとの差が−0.5dB未満
以下に実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものでないことは言うまでもない。
【0055】
参考例
脱水したN−メチルピロリドン(以下、NMPという)に90モル%に相当する2−クロルパラフェニレンジアミンと10モル%に相当する4、4’−ジアミノジフェニルエ−テルとを溶解させ、これに98.5モル%に相当する2−クロルテレフタル酸クロリドを添加し、2時間撹拌により重合後、炭酸リチウムで中和を行い、ポリマ−濃度が11重量%の芳香族ポリアミドの溶液を得た。
【0056】
この芳香族ポリアミド溶液をアプリケータを用いてガラス板上に均一に流延し、120℃のオーブン中で7分間乾燥し、ガラス板より剥離した。この時のポリマー濃度は43重量%であった。このゲルフィルムの延伸限界を上記の方法で測定したところ1.44倍であった。
【0057】
同様に製膜したゲルフィルムを延伸限界の80%にあたる1.15倍延伸し、金属製のフレームに枠張りした後、流水中で10分間洗浄を行った。この後、枠張りしたまま300℃のオーブンで1分間熱処理を行った。得られたフィルムは表1に示したように、延伸方向のヤング率13.2GPa、伸度16.5%、表面粗さRa1.2nm、吸湿率1.7%であった。
【0058】
比較例7
乾燥したポリビニルピロリドン(以下、PVPという)を脱水したNMPに20重量%になるように溶解した。このPVP溶液を、参考例で作成した芳香族ポリアミド溶液にPVPが芳香族ポリアミドに対し40重量%になるように添加した。主鎖のメチン基についてS/S0を測定したところ0.12であった。
【0059】
このブレンド溶液をアプリケータを用いてガラス板上に均一に流延し、120℃のオーブン中で6.5分間乾燥し、ガラス板より剥離した。この時のポリマー濃度は40重量%であった。このゲルフィルムの延伸限界を上記の方法で測定したところ1.82倍であり、芳香族ポリアミド単独の場合より延伸性が向上した。
【0060】
同様に製膜したゲルフィルムを延伸限界の80%にあたる1.46倍延伸し、金属製のフレームに枠張りした後、流水中で10分間洗浄を行った。この後、枠張りしたまま300℃のオーブンで1分間熱処理を行った。得られたフィルムは表1に示したように、延伸方向のヤング率13.5GPa、伸度10.1%、表面粗さRa1.2nm、吸湿率3.5%であった。
【0061】
比較例8
乾燥したPVPを脱水したNMPに20重量%になるように溶解した。このPVP溶液を、参考例で作成した芳香族ポリアミド溶液にPVPが芳香族ポリアミドに対し65重量%になるように添加した。主鎖のメチン基についてS/S0を測定したところ0.23であった。
【0062】
このブレンド溶液をアプリケータを用いてガラス板上に均一に流延し、120℃のオーブン中で7分間乾燥し、ガラス板より剥離した。この時のポリマー濃度は48重量%であった。このゲルフィルムの延伸限界を上記の方法で測定したところ2.06倍であり、芳香族ポリアミド単独の場合より延伸性が向上した。
【0063】
同様に製膜したゲルフィルムを延伸限界の80%にあたる1.65倍延伸し、金属製のフレームに枠張りした後、流水中で10分間洗浄を行った。この後、枠張りしたまま300℃のオーブンで1分間熱処理を行った。得られたフィルムは表1に示したように、延伸方向のヤング率11.5GPa、伸度13.5%、表面粗さRa1.0nm、吸湿率4.4%であった。
【0064】
比較例9
Dynamit Nobel社製非晶性ナイロンTrogamidを乾燥後、脱水したNMPに20重量%になるように溶解した。この非晶性ナイロン溶液を、参考例で作成した芳香族ポリアミド溶液に非晶性ナイロンが芳香族ポリアミドに対し40重量%になるように添加した。主鎖の4級炭素についてS/S0を測定したところ0.41であった。
【0065】
このブレンド溶液をアプリケータを用いてガラス板上に均一に流延し、120℃のオーブン中で6.5分間乾燥し、ガラス板より剥離した。この時のポリマー濃度は44重量%であった。このゲルフィルムの延伸限界を上記の方法で測定したところ1.55倍であり、芳香族ポリアミド単独の場合より延伸性が向上した。
【0066】
同様に製膜したゲルフィルムを延伸限界の90%にあたる1.40倍延伸し、金属製のフレームに枠張りした後、流水中で10分間洗浄を行った。この後、枠張りしたまま300℃のオーブンで1分間熱処理を行った。得られたフィルムは表1に示したように、延伸方向のヤング率12.3GPa、伸度4.6%、表面粗さRa1.7nm、吸湿率3.7%であった。
【0067】
実施例4
乾燥したPVPとポリスチレン(以下、PStという)の1対1のランダム共重合体を脱水したNMPに20重量%になるように溶解した。この共重合ポリマー溶液を、参考例で作成した芳香族ポリアミド溶液に共重合ポリマーが芳香族ポリアミドに対し40重量%になるように添加した。主鎖のメチン基についてS/S0を測定したところ0.11であった。
【0068】
このブレンド溶液をアプリケータを用いてガラス板上に均一に流延し、120℃のオーブン中で7分間乾燥し、ガラス板より剥離した。この時のポリマー濃度は48重量%であった。このゲルフィルムの延伸限界を上記の方法で測定したところ1.71倍であり、芳香族ポリアミド単独の場合より延伸性が向上した。
【0069】
同様に製膜したゲルフィルムを延伸限界の80%にあたる1.37倍延伸し、金属製のフレームに枠張りした後、流水中で10分間洗浄を行った。この後、枠張りしたまま300℃のオーブンで1分間熱処理を行った。得られたフィルムは表1に示したように、延伸方向のヤング率12.6GPa、伸度13.3%、表面粗さRa1.0nm、吸湿率2.2%であった。吸湿率はPVP単独の磁気記録媒体1より良くなった。
【0070】
実施例5
乾燥したポリ(n,n−ジメチル)アクリルアミド(以下、PDMAAという)とPStの1対1のランダム共重合体を脱水したNMPに20重量%になるように溶解した。この共重合ポリマー溶液を、参考例で作成した芳香族ポリアミド溶液に共重合ポリマーが芳香族ポリアミドに対し40重量%になるように添加した。主鎖のメチン基についてS/S0を測定したところ0.14であった。
【0071】
脱水したNMP中に一次粒径45nmのシリカを20重量%添加し、超音波分散器で10時間分散後濾過した。この粒子の溶液を上記のブレンド溶液に、無機粒子が芳香族ポリアミドに対し1.8重量%になるように添加した。
【0072】
この溶液を押し出し機で口金に供給し、表面が鏡面状のステンレス製ベルト上に流延した。この流延されたポリマ−溶液を最初160℃、次いで180℃の熱風でそれぞれ1分間ずつ加熱して溶媒を蒸発させ、剥離後、フィルムの長手方向に1.46倍延伸を行った。次に、水槽内へフィルムを2分間通して残存溶媒と中和で生じた無機塩の水抽出を行なった。この後、テンタ−中で、温度280℃、風速5m/秒の熱風下に、フィルムの幅方向に2.20倍延伸と熱処理を行った。こうして総厚み4.4μmの芳香族ポリアミドフィルムを得た。
【0073】
フィルム物性は表2に示したように、長手方向のヤング率11.7GPa、伸度19.6%、幅方向のヤング率16.4GPa、伸度14.9%、表面粗さRa6.3nm、吸湿率2.3%であった。更に、フィルムをスリットして磁気テ−プとし、上記の方法で評価したところ、標準テープに比べて+1.7dBであり、電磁変換特性は良好であった。
【0074】
比較例1
乾燥したPVPを脱水したNMPに20重量%になるように溶解した。このPVP溶液を、参考例で作成した芳香族ポリアミド溶液にPVPが芳香族ポリアミドに対し5重量%になるように添加した。主鎖のメチン基についてS/S0を測定したところほぼ0であった。
【0075】
このブレンド溶液をアプリケータを用いてガラス板上に均一に流延し、120℃のオーブン中で7分間乾燥し、ガラス板より剥離した。この時のポリマー濃度は42重量%であった。このゲルフィルムの延伸限界を上記の方法で測定したところ1.44倍であり、芳香族ポリアミド単独の場合と変化がなかった。
【0076】
同様に製膜したゲルフィルムを延伸限界の80%にあたる1.15倍延伸し、金属製のフレームに枠張りした後、流水中で10分間洗浄を行った。この後、枠張りしたまま300℃のオーブンで1分間熱処理を行った。得られたフィルムは表1に示したように、延伸方向のヤング率12.8GPa、伸度11.5%、表面粗さRa1.0nm、吸湿率1.8%であった。
【0077】
比較例2
乾燥したPVPを脱水したNMPに20重量%になるように溶解した。このPVP溶液を、参考例で作成した芳香族ポリアミド溶液にPVPが芳香族ポリアミドに対し110重量%になるように添加した。主鎖のメチレン基についてS/S0を測定したところ0.25であった。
【0078】
このブレンド溶液をアプリケータを用いてガラス板上に均一に流延し、120℃のオーブン中で7.5分間乾燥し、ガラス板より剥離した。この時のポリマー濃度は58重量%であった。このゲルフィルムの延伸限界を上記の方法で測定したところ2.51倍であり、芳香族ポリアミド単独の場合より延伸性が向上した。
【0079】
同様に製膜したゲルフィルムを延伸限界の90%にあたる2.26倍延伸し、金属製のフレームに枠張りした後、流水中で10分間洗浄を行った。この後、枠張りしたまま300℃のオーブンで1分間熱処理を行った。得られたフィルムは表1に示したように、延伸方向のヤング率8.9GPa、伸度4.5%、表面粗さRa1.1nm、吸湿率6.1%であり、高延伸してもヤング率が充分に上昇しなかった。
【0080】
比較例3
乾燥したポリエーテルイミド(以下、PEIという)を脱水したNMPに20重量%になるように溶解した。このPEI溶液を、参考例で作成した芳香族ポリアミド溶液にPEIが芳香族ポリアミドに対し40重量%になるように添加した。主鎖の4級炭素についてS/S0を測定したところ0.93であった。
【0081】
このブレンド溶液をアプリケータを用いてガラス板上に均一に流延し、120℃のオーブン中で6.5分間乾燥し、ガラス板より剥離した。この時のポリマー濃度は41重量%であった。このゲルフィルムの延伸限界を上記の方法で測定したところ1.45倍であり、芳香族ポリアミド単独の場合とほとんど変化がなかった。
【0082】
同様に製膜したゲルフィルムを延伸限界の80%にあたる1.16倍延伸し、金属製のフレームに枠張りした後、流水中で10分間洗浄を行った。この後、枠張りしたまま300℃のオーブンで1分間熱処理を行った。得られたフィルムは表1に示したように、延伸方向のヤング率8.5GPa、伸度5.2%、表面粗さRa11.7nm、吸湿率1.6%であり、ヤング率が芳香族ポリアミド単独の場合と比較して大きく低下し、表面粗さが大きくなった。
【0083】
比較例4
乾燥したポリカーボネート(以下、PCという)を脱水したNMPに20重量%になるように溶解した。このPC溶液を、参考例で作成した芳香族ポリアミド溶液にPCが芳香族ポリアミドに対し65重量%になるように添加した。主鎖の4級炭素についてS/S0を測定したところ0.87であった。
【0084】
このブレンド溶液をアプリケータを用いてガラス板上に均一に流延し、120℃のオーブン中で7分間乾燥し、ガラス板より剥離した。この時のポリマー濃度は43重量%であった。このゲルフィルムの延伸限界を上記の方法で測定したところ1.44倍であり、芳香族ポリアミド単独の場合と変化がなかった。
【0085】
同様に製膜したゲルフィルムを延伸限界の80%にあたる1.15倍延伸し、金属製のフレームに枠張りした後、流水中で10分間洗浄を行った。この後、枠張りしたまま300℃のオーブンで1分間熱処理を行った。得られたフィルムは表1に示したように、延伸方向のヤング率6.3GPa、伸度4.1%、表面粗さRa8.2nm、吸湿率1.4%であり、ヤング率が芳香族ポリアミド単独の場合と比較して大きく低下した。
【0086】
比較例5
乾燥したPVPとPStの1対3のランダム共重合体を脱水したNMPに20重量%になるように溶解した。この共重合ポリマー溶液を、参考例で作成した芳香族ポリアミド溶液に共重合ポリマーが芳香族ポリアミドに対し40重量%になるように添加した。主鎖の4級炭素についてS/S0を測定したところ0.71であった。
【0087】
このブレンド溶液をアプリケータを用いてガラス板上に均一に流延し、120℃のオーブン中で7分間乾燥し、ガラス板より剥離した。この時のポリマー濃度は43重量%であった。このゲルフィルムの延伸限界を上記の方法で測定したところ1.43倍であり、芳香族ポリアミド単独の場合と変化がなかった。
【0088】
同様に製膜したゲルフィルムを延伸限界の80%にあたる1.14倍延伸し、金属製のフレームに枠張りした後、流水中で10分間洗浄を行った。この後、枠張りしたまま300℃のオーブンで1分間熱処理を行った。得られたフィルムは表1に示したように、延伸方向のヤング率8.3GPa、伸度11.2%、表面粗さRa2.4nm、吸湿率1.9%であり、ヤング率が芳香族ポリアミド単独の場合と比較して大きく低下した。
【0089】
比較例6
脱水したNMP中に一次粒径45nmのシリカを20重量%添加し、超音波分散器で10時間分散後濾過した。この粒子の溶液を比較例3のブレンド溶液に、無機粒子が芳香族ポリアミドに対し1.8重量%になるように添加した。
【0090】
この溶液を押し出し機で口金に供給し、表面が鏡面状のステンレス製ベルト上に流延した。この流延されたポリマ−溶液を最初160℃、次いで180℃の熱風でそれぞれ1分間ずつ加熱して溶媒を蒸発させ、剥離後、フィルムの長手方向に1.16倍延伸を行った。次に、水槽内へフィルムを2分間通して残存溶媒と中和で生じた無機塩の水抽出を行なった。この後、テンタ−中で、温度280℃、風速5m/秒の熱風下に、フィルムの幅方向に1.75倍延伸と熱処理を行った。こうして総厚み4.4μmの芳香族ポリアミドフィルムを得た。
【0091】
フィルム物性は表2に示したように、長手方向のヤング率8.4GPa、伸度12.3%、幅方向のヤング率11.9GPa、伸度6.2%、表面粗さRa12.7nm、吸湿率1.6%であった。更に、フィルムをスリットして磁気テ−プとし、上記の方法で評価したところ、標準テープに比べて−2.4dBであり、電磁変換特性は不良であった。また、テープの剛性が低いために繰り返し走行後にテープの変形が見られた。
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】
【0094】
【発明の効果】
本発明の芳香族ポリアミドフィルムは、低コスト化が可能で、延伸性が良いことから生産性が高く、かつ高延伸時に芳香族ポリアミドの特徴である高ヤング率を発現できるブレンドフィルムであり、磁気記録媒体のベースフィルムとして特に有用である。
Claims (6)
- 芳香族ポリアミドと少なくとも一種の異種ポリマーを含有し、異種ポリマーの含有量が芳香族ポリアミドに対し10重量%以上100重量%未満であり、異種ポリマーが、式(2)に示す繰り返し単位のうちの少なくとも一つをmモル%、式(3)に示す繰り返し単位のうちの少なくとも一つをnモル%含有する共重合ポリマーであり、かつ、mとnが
0.5≦m/n≦2.0
であり、かつ、異種ポリマーの主鎖を構成する少なくとも一つの炭素の13C−NMRスペクトルのピーク強度の比S/S0(ここで、S0は異種ポリマー単独溶液状態で測定の13C−NMRスペクトルのピーク強度を、Sは芳香族ポリアミドと異種ポリマーをフィルム中と同じ割合で混合した溶液状態で測定の13C−NMRスペクトルのピーク強度を表す)が
0 ≦ S/S0 ≦ 5.5
を充たすことを特徴とする芳香族ポリアミドフィルム。
式(2):
- 少なくとも一方向においてヤング率が9.8GPa以上であり、かつ伸度が5%以上である請求項1に記載の芳香族ポリアミドフィルム。
- 少なくとも一方の表面において表面粗さRaが1nm ≦ Ra ≦ 10nmである請求項1または2に記載の芳香族ポリアミドフィルム。
- 吸湿率が3%以下である請求項1〜3のいずれかに記載の芳香族ポリアミドフィルム。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の芳香族ポリアミドフィルムの少なくとも一面に磁性層が設けられてなる磁気記録媒体。
- 幅が2.3〜13mm、支持体厚みが6.5μm以下、長さが100m/巻以上、磁気記録媒体としての記録密度が8キロバイト/mm 2 以上である請求項5に記載の磁気記録媒体からなる磁気テープ。
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