JP4332977B2 - バルブリフタ用シムおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、レシプロエンジンの動弁機構において、吸排気バルブの端部に取付けられたバルブリフタとカムシャフトのカムとの間に介在して、バルブリフタの摩耗を防止するのに用いられるバルブリフタ用シムに係わり、とくにカムとの間の摩擦を低減するのに有効な表面微細形状を備えたシム、およびこのようなシムの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
レシプロエンジンの動弁機構におけるカムとカムフォロアとの間の摩擦低減技術として、例えば、特開平4−321706号公報には、所定の形状に研削加工したカムシャフトのカム表面にクロスハッチ状の加工条痕を残すように仕上げ加工することが記載されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報に記載されたカムシャフトにおいては、加工条痕がクロスハッチ状、すなわち連続した溝形状となっていることから、突起部のミクロ的な凝着摩耗が避けられないことと、オイルが接触部から排出され易いことによって、摩擦係数の大幅な低減には限界があるという問題点があり、このような問題点の解決がカム周辺部の摩擦低減技術における従来の課題となっていた。
【0004】
【発明の目的】
本発明は、従来のカムあるいはカムフォロアにおける上記課題に着目してなされたものであって、カムとの間の摩擦を大幅に低減することができ、カムおよびシム自体の耐久性を大幅に向上させることができるバルブリフタ用シム、およびこのようなシムの製造方法を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係わるバルブリフタ用シムは、超仕上研磨により平滑化された平面部と、該平面部に互いに独立した状態に分散して形成された微細な凹部を摺動表面に備え、上記凹部は、開口面積が10〜100平方μm、最大深さが0.1〜1μm、摺動表面に対する合計面積率が5〜30%の範囲である構成としたことを特徴とし、バルブリフタ用シムにおけるこのような構成を前述した従来の課題を解決するための手段としている。
【0006】
本発明に係わるバルブリフタ用シム実施の一形態として請求項2に係わるシムにおいては、SF=(周囲長)2/(4π×開口面積)と定義される凹部の形状係数SFが1.5未満である構成、同じく実施形態として請求項3に係わるシムにおいては、摺動表面における平面部の表面粗さがRa0.1μm以下である構成、請求項4に係わるシムにおいては、表面硬度がHRC50以上の浸炭鋼もしくは調質鋼からなる構成としたことを特徴としている。また、請求項5に係わるシムにおいては、摺動表面に固体潤滑剤がコーティングしてある構成とし、さらに請求項6に係わるシムにおいては、前記固体潤滑剤が二硫化モリブデン,PTFEおよびグラファイトのうちの少なくとも1種を含んでいる構成とし、さらに請求項7に係わるシムにおいては、摺動表面に硬質炭素被膜がコーティングしてあり、該炭素被膜に凹部が形成されている構成としたことを特徴としている。
【0007】
本発明の請求項8に係わるバルブリフタ用シムの製造方法においては、超仕上研磨した平滑な摺動表面に、レーザ光により凹部を形成する構成とし、当該バルブリフタ用シムの製造方法の実施形態として請求項9に係わるシムの製造方法においては、レーザ光による凹部の形成に際して凹部周辺に生じる環状の微小凸部を超仕上研磨して除去する構成とし、バルブリフタ用シムの製造方法におけるこのような構成を前述した従来の課題を解決するための手段としたことを特徴としている。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明に係わるバルブリフタ用シムにおいては、摺動表面に、例えばラッピングテープなどによる超仕上研磨が施された平滑な平面部と、微細な凹部が分散して形成されており、微細凹部がオイル溜りとして機能すると共に、これら微細凹部が互いに独立しているので摺動表面からオイルが排出されにくく、摩擦係数が大幅に低減することになる。
【0009】
本発明において、摺動表面の平面部に形成する凹部のサイズとしては、その開口部の面積を10〜100平方μmの範囲とする。すなわち、開口面積が100平方μmを超えたときには、カムとの摺動時に発生するヘルツ接触面圧に十分耐えることができずに、凹部を起点とした微細クラックの形成によるピッチングと、これに伴うスカッフィングを生じることにより、摺動表面の粗さが悪化する結果、摩擦低減効果が減少することによる。一方、開口面積が10平方μmに満たないときには、オイル溜りとしての機能が得られず、摩擦低減効果が少なくなる。
【0010】
また、凹部のサイズとして、その最大深さを0.1〜1μmの範囲とする。これは、凹部の最大深さが1μmを超えると、カムとの摺動時に発生するヘルツ接触面圧の繰り返し負荷による疲労に十分に耐えることができずに、凹部を起点とした微細クラックの形成からピッチングを生じることがあり、最大深さが0.1μmを下まわると、十分なオイルを保持できなくなるので、十分な摩擦低減効果が得られなくなることによる。
【0011】
さらに、本発明に係わるバルブリフタ用シムの摺動表面における上記凹部の分布について、独立したそれぞれの凹部の開口面積の合計が、摺動表面の面積に対して5〜30%の範囲とする。すなわち凹部の合計面積率が5%に満たない場合には、オイル溜りとして実質的に機能せず、摩擦低減効果が十分に得られなくなり、合計面積率が30%を超えた場合には、カムとの摺動時に発生するヘルツ接触面圧に十分耐えることができずに、スカッフィングを生じることにより摺動表面の粗さが悪化する結果、これに伴って摩擦が急増する。
【0012】
本発明において、前記凹部のサイズとしては、請求項2に記載しているように、SF=(周囲長) 2 /(4π×開口面積)と定義される凹部の形状係数SFが1.5未満であることが望ましい。つまり、この形状係数SFは、凹部の開口形状が真円形から離れるほど大きくなり、1.5以上になると凹部の開口縁部にシャープなエッジが形成されることになり、上記同様にカムとの摺動時に発生するヘルツ接触面圧による疲労に十分に耐えることができず、凹部を起点とした微細クラックからピッチングを生じることがあることによる。
【0013】
一方、本発明に係わるシムの摺動表面における平面部については、請求項3に記載しているように、その表面粗さを中心線平均粗さRaで0.1μm以下とすることが望ましい。すなわち、表面粗さRaが0.1μmを超えると、カムとの摺動時に発生するヘルツ接触面圧に十分に耐えきれなくなって、スカッフィングが生じ、摺動表面の粗さが悪化することによって、同様に摩擦が急増してしまう傾向がある。
【0014】
本発明に係わるバルブリフタ用シムの材料としては、請求項4に記載しているように、表面硬度がHRC50以上の浸炭鋼もしくは調質鋼を用いることができ、これによって十分な耐摩耗性が確保されることになる。
【0015】
また、摩擦の低減を図るために、請求項5に記載しているように、摺動表面に固体潤滑剤、例えば、請求項6に記載されているような二硫化モリブデン,PTFE(ポリテトラフルオロエチレン),グラファイトなどをコーティングしてもよい。
【0016】
さらに、請求項7に記載しているように、摺動表面に硬質炭素被膜をコーティングし、該硬質炭素からなるコーティング被膜に凹部を形成することもできる。すなわち、硬質炭素被膜においては、微細硬質粒子を用いたショットピーニングやレーザによって凹部を形成するに際して凹部の周縁部に生じる微小な凸部(隆起)が、素材鋼に凹部を直接形成する場合に較べて生成されにくく、しかも硬質炭素被膜による平面部の耐摩耗性と摩擦特性が向上することから、摩擦がより一層低減することになる。
【0017】
そして、本発明に係わるこのようなバルブリフタ用シムは、請求項8に記載しているように、細く絞ったレーザ光を超仕上研磨した平滑な摺動表面に照射して凹部を形成することによって製造することができる。また、このとき、凹部の周縁部に、環状の微小凸部が生じるので、請求項9に記載しているように、この微小凸部を超仕上研磨して除去するようになすことにより、さらなる摩擦の低減と耐久性の向上を図ることができる。なお、本発明に係わるバルブリフタ用シムにおける微小凹部は、レーザ光のみならず、上記のように微細硬質粒子を用いたショットピーニングによっても形成することが可能である。
【0018】
【発明の効果】
本発明の請求項1に係わるバルブリフタ用シムは、その摺動表面に、超仕上研磨による平面部と、互いに独立した微小な凹部とを備え、その開口面積を10〜100平方μmの範囲、その最大深さを0.1〜1μmの範囲、摺動表面に対するこれら凹部の合計面積率を5〜30%の範囲としたものであるから、微細凹部がオイル溜りとして機能し、しかもオイルが摺動表面から容易に排出されないので、カムとの間の摩擦を大幅に低減することができ、カムおよび当該シムの耐久性を向上させることができるという極めて優れた効果をもたらすものである。
【0019】
本発明の請求項2に係わるバルブリフタ用シムにおいては、上記凹部の形状係数SFを1.5未満としたものであるから、カムとの摺動時に発生するヘルツ接触面圧に十分に耐え、凹部を起点とするクラックやこれによるピッチングも生じることがなく、凹部による摩擦低減効果を確実なものとすることができる。
【0020】
本発明の請求項3に係わるバルブリフタ用シムにおいては、平面部の表面粗さをRa0.1μm以下としたものであるから、摺動時に発生するヘルツ接触面圧に十分に耐えることができ、スカッフィングによる表面粗さの劣化を防止して、摩擦係数を低く保持することができ、請求項4に係わるバルブリフタ用シムにおいては、素材鋼としてHRC50以上の浸炭鋼や調質鋼を用いているので、シムとしての硬さ、剛性を保持して耐摩耗性を確保することができる。
【0021】
さらに、請求項5に係わるバルブリフタ用シムにおいては、摺動表面に、例えば請求項6に記載しているような二硫化モリブデン,PTFE,グラファイトなど固体潤滑材がコーティングされているので、さらなる摩擦低減を図ることができ、請求項7に係わるバルブリフタ用シムにおいては、摺動表面に硬質炭素被膜がコーティングされており、この硬質炭素被膜層に微小凹部が形成されているので、炭素被膜自体の特性によって摩擦特性が改善されると同時に、凹部の形成に際して、凹部の周縁部に環状の微小凸部が形成されないことから、より一層の摩擦低減が可能になるというさらに優れた効果がもたらされる。
【0022】
そして、本発明の請求項8に係わるバルブリフタ用シムの製造方法においては、超仕上研磨した摺動表面にレーザ光を照射して凹部を形成するようにしているので、本発明に係わる上記バルブリフタ用シムを容易に得ることができ、請求項9に係わるバルブリフタ用シムの製造方法においては、レーザ光による凹部形成に際して凹部の周縁部に生じる環状の微小凸部を超仕上研磨によって除去するようにしているので、さらに優れた摩擦特性と耐久性を備えたシムを得ることができる。
【0023】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて、本発明をさらに具体的に説明する。
【0024】
実施例1〜6
まず、クロムモリブデン鋼SCM420(JIS G 4105該当)に浸炭焼入れ・焼戻しを施し、通常の研磨を施すことによって製造された量産品のシム(硬さ:HRC60,表面粗さRa:0.3μm)の摺動表面に、ラッピングテープを用いた超仕上研磨を施すことによって、非常に微細な研磨溝が交差状に形成されたRa:0.08μm前後という極めて平滑な平面部を得た。
【0025】
次に、この平面部に、エキシマレーザを用いて、ビーム径,出力密度,照射時間,照射回数および照射位置を各々変化させてパルス状のレーザ光線を照射し、表1に示すようなサイズおよび密度(面積率)の凹部を備えたバルブリフタ用シムを作成した。
【0026】
このようにして形成されたシムにおける摺動表面の凹部SEM(走査型電子顕微鏡)観察結果の一例を図1ないし図3に示す。なお、形成された凹部のディンプル形状については、図4に示す要領により、凹部Dの開口面積A,最大深さd,凹部周縁の環状微小凸部Pの高さhなどを測定した。また、凹部Dの合計面積率については、500倍のSEM像を用いた画像解析により求めた。
【0027】
このようなシムを仕様ごとにそれぞれ16個ずつ用意して、後述するエンジンモータリング試験を実施し、摩擦特性を評価した。
【0028】
実施例7〜8
上記実施例5と同様に作成したシムの摺動表面に、二硫化モリブデンとPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を主体とする固体潤滑剤をそれぞれコーティングし、同様のエンジンモータリング試験に供した。
【0029】
実施例9
上記実施例5と同様に作成したシムの摺動表面にガイヤモンドバフ研磨を施すことによって、レーザ照射により凹部を形成させた際に凹部の周囲に生じた環状の微小凸部を除去して、同様にエンジンモータリング試験に供した。この場合の摺動表面のSEM観察結果を図5および図6に示す。
【0030】
なお、この環状微小凸部を除去するための研磨方法としては、凹部の外周縁を削り落さない限り、他の種々のラッピング方法を適用することができる。
【0031】
実施例10
上記SCM420鋼からなる量産品シムの摺動表面に超仕上研磨を施したのち、CVDコーティングにより、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)被膜を3μmの厚さに形成したうえで、レーザ照射を行い、摺動表面に形成された硬質炭素被膜に表1に示すようなサイズおよび密度の凹部を備えたバルブリフタ用シムを作成し、同様のエンジンモータリング試験に供した。なお、このバルブリフタ用シムの摺動表面のSEM観察結果を図7ないし図9に示す。
【0032】
実施例11
上記実施例10と同様に作成したシムの摺動表面に、さらにPTFEを主体とする固体潤滑剤をコーティングして、潤滑剤被膜を形成し、同様のエンジンモータリング試験を実施した。
【0033】
比較例1〜6
上記SCM420鋼からなる量産品シムの摺動表面に上記実施例および比較例8と同様の超仕上研磨を加えて得られた平面部に、ビーム径,出力密度,照射時間,照射回数および照射位置を変化させたパルス状のエキシマレーザ光線を照射して、表1に示すようなサイズおよび密度の異なる凹部をそれぞれ形成し、同様のエンジンモータリング試験に供した。
【0034】
比較例7
上記SCM420鋼からなる量産品シムを通常研磨のまま、しかも凹部を形成することなく、そのままバルブリフタ用シムとして、同様のエンジンモータリング試験に供した。
【0035】
比較例8
上記SCM420鋼からなる量産品シムの摺動表面に、上記各実施例と同様の超仕上研磨を施したのち、凹部を形成することなく、同様のエンジンモータリング試験に供した。
【0036】
比較例9
上記SCM420鋼からなる量産品シムにおける通常研磨のままの摺動表面に、エキシマレーザ光線を照射し、表1に示す形状の凹部を形成して、同様のエンジンモータリング試験を実施した。
【0037】
【表1】
【0038】
[エンジンモータリング試験要領]
上記実施例および比較例のバルブリフタ用シムを使用ごとに16個用意し、エンジンに組み込み、下記条件による試験を実施し、試験終了時(1時間経過後)の摩擦トルクの低減率、試験後のカムおよびシムの摺動表面の粗さを調査すると共に、シム摺動表面の摩耗状況を走査型電子顕微鏡によって観察した。
【0039】
これらの結果を表2に示す。なお、摩擦トルク低減率については、比較例2に係わるシムを組み込んだ場合の摩擦トルクを100としたときの低減率(%)で示した。
【0040】
使用エンジン:1.6L DOHCガソリンエンジン
駆動方式:外部モータ駆動
エンジンオイル:5W−30SG
オイル温度:80℃
エンジン回転数:600rpm
試験時間:1時間
カムシャフト:チルド鋳鉄製、表面粗さRa:0.1μm(超仕上研磨)
【0041】
【表2】
【0042】
表2から明らかなように、実施例1〜11においては、後述する比較例8に比べて、10%以上の摩擦低減効果が得られると共に、試験終了後のシムおよびカムの摺動面は非常に平滑であり、SEM観察でもシム表面にマイクロクラックやピットの形成もほとんど認めらないことから、耐久性も充分であると判断された。特に、固体潤滑剤被膜をコーティングした実施例7および実施例8、凹部形成時に生ずる凹部周囲の微小環状凸部を研磨して除去した実施例9、硬質炭素被膜をコーティングしたシムに凹部を形成した実施例10、さらにこれに固体潤滑剤被膜を付与した実施例11においては、さらに優れた摩擦低減効果が得られることが確認された。
【0043】
なお、実施例6においては、凹部の形状係数SF値が1.5を超えており、凹部の外周形状に多少の凹凸が生じていることから、凹部の外周に微細なクラックがSEM像に認められ、耐久性の観点からは必ずしも万全ではないものの、かなりの摩擦トルク低減効果が認められた。
【0044】
これら実施例に対し、凹部の開口面積Aが小さい比較例1においては、摩擦トルクの低減効果がわずかしか認められず、逆に開口面積Aが大きい比較例2においては、若干の摩擦トルク低減効果が認められたものの、試験終了後のSEM観察により、凹部の縁を起点とした微細なピットと、その周辺に深いスカッフィング痕が形成されていることが判明した。
【0045】
比較例3においては、凹部の深さdが浅いことから、摩擦トルク低減効果がほとんど認められず、逆に凹部の深さdが1μmを超える比較例4においては、若干の摩擦トルク低減効果が得られるものの、試験終了後のSEM観察の結果、凹部の縁を起点とした微細なクラックと、その周辺に深いスカッフィング痕が形成されていることが確認された。
【0046】
さらに、比較例5においては、凹部の合計面積率が大きいことから、摩擦トルクの低減にわずかな効果が認められるものの、シム自身および相手カムの摺動面に深いスカッフィング痕を多数形成していた。逆に凹部の合計面積率が小さい実施例6においては、スカッフィング痕はさほど生じないものの、摩擦低減効果がほとんど得られないことが確認された。
【0047】
そして、通常研磨のみを施した量産品をそのまま使用した比較例7の場合には、表面粗さが大きいことから、摺動面に深いスカッフィング痕が形成されると共に、超仕上研磨を施した比較例8に比べて、高い摩擦トルクを示した。
【0048】
比較例8においては、超仕上研磨を施したことにより、試験後の摺動面に浅いスカッフィング痕が形成される程度であるものの、上記実施例に比べて高い摩擦トルクを示した。
【0049】
さらに、通常研磨のみを施した量産品に凹部を形成した比較例9においては、平面部の粗さが大きいままなので、摺動方向に深いスカッフィング痕が形成され、凹部を形成しても顕著な摩擦低減効果が得られないことが確認された。
【0050】
以上説明したように、本発明は、極めて厳しい潤滑状態にある環境下で摺動するエンジンカムフォロワーにおいて、トライボロジー的な取り組みを鋭意行ってきた結果、エンジンの燃費向上に直結する大きな効果が得られる技術を見出だしたものであって、工業的に極めて有益なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係わるバルブリフタ用シムにおける摺動表面のSEM観察結果の一例を示す凹凸像(500倍)である。
【図2】 図1に示した凹部の4000倍の凹凸像である。
【図3】 図2に示した凹部の4000倍の二次電子像である。
【図4】 本発明に係わるバルブリフタ用シムの摺動表面に形成された凹部形状の測定要領を示す概略図である。
【図5】 本発明の実施例8に係わるバルブリフタ用シムにおける摺動表面のSEM観察結果を示す凹凸像(500倍)である。
【図6】 図5に示した凹部の4000倍の凹凸像である。
【図7】 本発明の実施例9に係わるバルブリフタ用シムにおける摺動表面のSEM観察結果を示す凹凸像(500倍)である。
【図8】 図7に示した凹部の4000倍の凹凸像である。
【図9】 図8に示した凹部の4000倍の二次電子像である。
【符号の説明】
D 凹部
A 凹部の開口面積
d 凹部の最大深さ
P 微小凸部
Claims (9)
- 超仕上研磨により平滑化された平面部と、該平面部に互いに独立した状態に分散して形成された微細な凹部を摺動表面に備え、上記凹部は、開口面積が10〜100平方μm、最大深さが0.1〜1μm、摺動表面に対する合計面積率が5〜30%の範囲であることを特徴とするバルブリフタ用シム。
- SF=(周囲長)2/(4π×開口面積)と定義される凹部の形状係数SFが1.5未満であることを特徴とする請求項1記載のバルブリフタ用シム。
- 摺動表面における平面部の表面粗さがRa0.1μm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のバルブリフタ用シム。
- 表面硬度がHRC50以上の浸炭鋼もしくは調質鋼からなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のバルブリフタ用シム。
- 摺動表面に固体潤滑剤がコーティングしてあることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のバルブリフタ用シム。
- 固体潤滑剤が二硫化モリブデン,PTFEおよびグラファイトのうちの少なくとも1種を含んでいることを特徴とする請求項5記載のバルブリフタ用シム。
- 摺動表面に硬質炭素被膜がコーティングしてあり、該炭素被膜に凹部が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のバルブリフタ用シム。
- 超仕上研磨した平滑な摺動表面に、レーザ光により凹部を形成することを特徴とする請求項1ないし請求項6記載のバルブリフタ用シムの製造方法。
- レーザ光による凹部の形成に際して凹部周辺に生じる環状の微小凸部を超仕上研磨して除去することを特徴とする請求項8記載のバルブリフタ用シムの製造方法。
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