JP2016036852A - 微小ディンプル形成方法及び該形成方法により形成された微小ディンプルを備えた部材 - Google Patents

微小ディンプル形成方法及び該形成方法により形成された微小ディンプルを備えた部材 Download PDF

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Abstract

【課題】 被加工物の表面(平面及び曲面)にパルスレーザを照射して微小ディンプル形状(凹形状)を形成するが、その際に生じる溶融バリや再付着原子等を効果的に除去することで、良好な耐摩耗性、潤滑特性を実現することができる微小ディンプル形状(凹形状)の形成方法を提供する。
【解決手段】 本発明に係る微小ディンプル形成方法は、被加工物の少なくとも一つの表面の少なくとも一部に対してピコ秒レーザ以上に短いパルス幅の短パルスレーザにより微小ディンプルを形成すると共に、該微小ディンプルが形成された一部を含む領域に対して三次元研磨を行うことを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、平面或いは曲面(三次元形状の表面)に短パルスレーザを照射して微小ディンプル(凹形状)を形成する技術に関する。
<表面形状と摩擦・摩耗特性>
(1)一般的に、表面が平滑だと摩擦係数が低いと考えられているが、実際にはかえって鏡面状態では摩擦係数が高くなる、摩擦係数が不安定となるなどの現象があり、表面に微小(或いは微細)なディンプル形状(凹形状)を形成した方が安定的な低摩擦が得られることが知られている(例えば、特許文献1、特許文献2等参照)。
(2)表面形状の形態や形成方法には様々な手法が知られている。
微小なディンプル形状(凹形状)に関しては、ドット状(小径窪み状)、線状(溝状)などの形態があり,それぞれドット径(或いは線幅)ならびに間隔により、得られる効果(安定度合い、摩擦係数の低減度合いなど)が異なることが予想される。また、使用される材料(素材、硬度など)や使用条件(負荷荷重、滑り速度)により最適値が存在すると考えられる。
微小なディンプル形状(凹形状)の形成方法に関しては、例えば、機械加工(切削など)、ショット・ピーニング(WPCを含む)、レーザ加工等などが考えられる。
「しゅう動面におけるテクスチャリングによるトライボロジー効果」 <URL:http://www.juntsu.co.jp/texturing/texturing_top.html> 特開2012−202461号公報
ここで、加工に関しての必要な要件としては、
a)材料の選択性:硬度にかかわらずに加工できることが望ましい(金属材料からセラミックスまで)。
b)形状の選択性:微小なディンプル形状(凹形状)を形成する表面形状(基礎形状或いは母形状)が平面から自由曲面(金型、歯車など)まで複雑形状を加工できることが望ましい。
c)加工の制御性:微小なディンプル形状(凹形状)が形成される表面形状(基礎形状或いは母材形状)も含めて加工形状(ドット径、間隔など)を自由に制御可能かどうかが重要である。
d)加工速度:実用的には極めて重要な事項である。
以上のa)〜d)に関し、機械加工、ショット・ピーニング、レーザ加工について比較した結果を、図13に示す。
図13に示したように、それぞれ特長を有しているが、複雑な形状の表面に微小なディンプル形状(凹形状)を多数形成するためには、レーザ加工が現実的であると考えられる。
しかし、レーザ加工においては、加工部周辺のバリやエッジ形状等の問題に関しては余り検討されていないのが実情である。
(3)レーザ加工に関して
加工用レーザに関しては,高密度連続波(CW)とパルスレーザに大別される。
前者は溶接、溶断など熱的に材料を溶融させて加工を施す方法であり、後者は光エネルギーを圧縮化(パルス化)して加工を行う方法であり、これらは公知である。
ここでは、後者のパルスレーザを対象としている。パルスレーザによる加工では,パルス幅が加工状態に大きく影響する。一般的には,パルス幅によりナノ秒(nano)レーザ,ピコ(pico)秒レーザ,フェムト(femto:fm)秒レーザに分けられる。
パルス幅は同一エネルギーであれば、短パルスほどエネルギー密度が高いこと、パルス幅が短いほど照射エネルギーが照射部に伝わらないことから、パルス幅が長いほど熱影響が多くなり溶融・蒸発の加工に、短いほど溶融過程を経過せずに直接原子化される(アブレーション)加工となる。
また,装置価格もナノ(nano)秒レーザ,ピコ(pico)秒レーザ,フェムト(femto:fm)秒レーザの順に高額となる。
(4)歯車などの摺動部品,金型などの加工用治具の摺動性,耐久性の向上には表面への微小形状(ディンプル,微小溝等)が有効である(上記(1)参考)。
一般的に、パルスレーザによる材料加工では、光が化学結合の電子系(電子による結合)を励起し、該結合を切断することにより溶融過程を経ずに、直接に原子化・蒸発を行う(アブレーション)とされている。
しかし、金属材料の場合、金属結合であるため、自由電子の励起、励起された電子による溶融といった過程を経るために、パルスレーザ(ピコ秒レーザ)による加工であっても、溶融による加工痕周辺の盛り上がり(以下、溶融バリと称する)が生じる場合があることが分かってきた。
また、大気中の加工では、加工表面から一旦蒸発した原子が再付着して加工表面に存在する現象(以下、再付着した原子を再付着原子と称する)も確認されており、摺動特性の低下をもたらすおそれも想定される。また,形成した微小ディンプルの入口部周辺の丸め付けなども有効な効果をもたらすと考えられる。
本発明は、上述した実情に鑑みなされたもので、被加工物の表面(平面及び曲面(三次元形状の表面))にパルスレーザを照射して微小ディンプル形状(凹形状)を形成するが、その際に生じる溶融バリや再付着原子等を効果的に除去することで、良好な耐摩耗性、潤滑特性を実現することができる微小ディンプル形状(凹形状)の形成方法を提供すること、及び該形成方法により形成された微小ディンプル形状(凹形状)を備え良好な耐摩耗性、潤滑特性を備えた部材を提供することを目的とする。
このため、本発明に係る微小ディンプル形成方法は、
被加工物の少なくとも一つの表面の少なくとも一部に対してピコ秒レーザ以上に短いパルス幅の短パルスレーザ(パルス幅をピコ秒以上に短いパルス幅まで短パルス化したレーザ)により微小ディンプルを形成すると共に、
該微小ディンプルが形成された一部を含む領域に対して三次元研磨を行うことを特徴とする。
本発明において、微小ディンプルを形成した後、三次元研磨を行う前に、少なくとも前記領域にDLC皮膜を形成することを特徴とすることができる。
また、本発明において、微小ディンプルを形成した後三次元研磨を行った後に、少なくとも前記領域にDLC皮膜を形成することを特徴とすることができる。
本発明において、前記被加工物の少なくとも一つの表面にDLC皮膜が予め形成されていることを特徴とする請求項1に記載の微小ディンプル形成方法。
本発明において、三次元研磨は、前記領域に対して微小粒径の研磨砥粒を投射すること或いは微小粒径の研磨砥粒を用いてバレル研磨することによってなされることを特徴とすることができる。
本発明において、前記被加工物の少なくとも一つの表面が、三次元形状の表面であることを特徴とすることができる。
三次元形状の表面に対して微小ディンプルを形成する場合、ピコ秒レーザ以上に短いパルス幅の短パルスレーザ(パルス幅をピコ秒以上に短いパルス幅まで短パルス化したレーザ)により微小ディンプルを形成することが、切削などの機械的加工やショットピーニング等の他の加工方法により形成する場合に比べて、より高精度且つより効率良く精密に加工することができ有益であると共に、かかる三次元形状の表面に生成される溶融バリや再付着原子等を高精度且つ効率良く除去することは難しいが、三次元研磨によればこれらを高精度且つ効率良く除去することができる。
本発明に係る微小ディンプルを備えた部材は、上述した微小ディンプル形成方法によって形成された微小ディンプルを備えた部材であることを特徴とする。
本発明において、前記部材がバルブリフタであり、前記微小ディンプルが少なくともカム接触面に備えられることを特徴とすることができる。
本発明において、前記部材がカムとバルブリフタとの間に介装されるシムであり、該シムのカム接触面に前記微小ディンプルが備えられることを特徴とすることができる。
本発明において、前記部材がカムであり、前記微小ディンプルが少なくともフェース面に備えられることを特徴とすることができる。
本発明によれば、被加工物の表面(平面や曲面(球面等を含む三次元形状の表面))にパルスレーザを照射して微小ディンプル形状(凹形状)を形成するが、その際に生じる溶融バリや再付着原子等を効果的に除去することで、良好な耐摩耗性、潤滑特性を実現することができる微小ディンプル形状(凹形状)の形成方法を提供すること、及び該形成方法により形成された微小ディンプル形状(凹形状)を備え良好な耐摩耗性、潤滑特性を備えた部材を提供することができる。
本発明の一実施の形態に係る円盤状のテストピース(SUS304)の表面に対してピコ秒レーザにより微小ディンプル(凹部)を複数形成した後に、DLC処理を施し、三次元研磨を行った後の表面の拡大図である。 円盤状のテストピース(SUS304)の表面に対してピコ(pico)秒レーザにより微小ディンプル(凹部)を複数形成した後に、DLC処理を施した後の表面の拡大図である。 三次元研磨を行ったテストピースと三次元研磨を行っていないテストピースの表面の様子を拡大して示す図である。 (A)は本実施の形態に係る円盤状のテストピース(SUS304)の表面に対してピコ秒レーザにより微小ディンプル(凹部)を複数形成した後の加工表面の様子を示すSEM像(400倍)であり、(B)は5000倍のSEM像である。 本実施の形態において利用したレーザ加工装置(発振器)の一例の仕様を示した図である。 本実施の形態において実施したボールオンディスク摩擦摩耗試験の試験条件を示した図である。 ボールオンディスク摩擦摩耗試験(ドライ試験後)におけるテストピースA(微小ディンプル加工+DLC処理)及びテストピースB(微小ディンプル加工+DLC処理+三次元研磨)の摩擦係数と、ボールオンディスク摩擦摩耗試験(ウェット試験後)におけるテストピースC(微小ディンプル加工+DLC処理)及びテストピースD(微小ディンプル加工+DLC処理+三次元研磨)の摩擦係数を比較して示した図である。 ボールオンディスク摩擦摩耗試験(ドライ試験)におけるテストピースA(鏡面化+DLC処理)、テストピースB(WPC処理+DLC処理)、テストピースC(微小ディンプル加工+DLC処理)の摩擦係数と、ボールオンディスク摩擦摩耗試験(ウェット)におけるテストピースD(鏡面化+DLC処理)、テストピースE(WPC処理+DLC処理)、テストピースF(微小ディンプル加工+DLC処理)の摩擦係数を比較して示した図である。 テストピース(微小ディンプル加工+DLC処理)のボールオンディスク摩擦摩耗試験後(ドライ試験後)の表面の様子を拡大して示す図である。 テストピース(微小ディンプル加工+DLC処理)のボールオンディスク摩擦摩耗試験後(ウェット試験後)の表面の様子を拡大して示す図である。 テストピース(微小ディンプル加工+DLC処理+三次元研磨)のボールオンディスク摩擦摩耗試験後(ドライ試験後)の表面の様子を拡大して示す図である。 テストピース(微小ディンプル加工+DLC処理+三次元研磨)のボールオンディスク摩擦摩耗試験後(ウェット試験後)の表面の様子を拡大して示す図である。 機械加工、ショット・ピーニング、レーザ加工について特長等を比較した結果を示す図である。 本発明の一実施の形態に係る動弁機構(バルブ機構)の一部(カム、バルブリフタ、バルブ)を抜き出して示した正面図である。 同上動弁機構(バルブ機構)におけるカムとバルブリフトの接触部(当たり位置)の移動の様子を示すタイミングチャートである。 本発明の一実施の形態に係る他の動弁機構(バルブ機構)の一部(カム、バルブリフタ、アジャスティングシム、カム)を抜き出して示した正面図である。 本発明の一実施の形態に係る他の動弁機構(バルブ機構)の一部(カム、ロッカーアーム、バルブ)を抜き出して示した正面図である。
以下、本発明に係る一実施の形態を、添付の図面を参照しつつ説明する。なお、以下で説明する実施の形態により、本発明が限定されるものではない。
本発明は、摺動部品や金型などの被加工物(例えば、金属その他の部材など)の平面或いは三次元形状を有する表面(曲面)に対して、ピコ(pico)秒レーザ以上の短パルスレーザ(パルス幅をピコ秒以上に短いパルス幅まで短パルス化したレーザ)により前記表面に微小(或いは微細)なディンプル形状(凹形状)を形成するが、かかる短パルスレーザによる加工の際に生じる溶融バリや再付着原子等の除去ならびにディンプル(凹部)の入口部の周辺部の丸めを、三次元形状を研磨することができる三次元研磨(3Dラッピング「登録商標」)により実現する。
摺動部品や金型などの被加工物(部材)の表面の微小或いは微細なディンプル(凹部)は、例えば、ピコ(pico)秒レーザ以上の短パルスレーザを照射して微細加工を施すことにより形成することができる。なお、金型の加工表面は、プレス金型などのように素材が接触して滑る金型の素材接触表面、樹脂などを成形する際に離型性が問題となる金型の素材接触表面などが想定される。
なお、本実施の形態においては、レーザ加工により、摺動部品や金型(素材との接触部)に適用される被加工物(部材)1に形成される微小ディンプル(凹部)2は、図1、図3(A)、(B)等に示すように、被加工物1の表面(摺動面)に小径の窪みが多数形成された状態を想定している。なお、微小ディンプル(凹部)2は、細い溝を複数条形成することもできるし、複数条の細い溝を交差させて網目状に形成することなども可能である。
微小なディンプル(凹部)2のサイズについては、例えば入口径φ12μm(φ5〜50μm程度)、深さ0.4μm(0.1〜10μm程度)、ピッチ20μm(10〜100μm)程度が想定される。
微小ディンプル(凹部)の加工に使用するレーザとしては、例えば、パルス幅10ps以下の短パルスと最大250μJの高いパルスエネルギーを両立できるピコ秒レーザが好ましい。
ピコ秒レーザを被加工物の表面に照射することで、照射された部分がアブレーション(ablation:材料の表面が蒸発等によって剥ぎ取られる現象)されて、加工跡であるディンプル(凹部)が形成される。
なお、本実施の形態においては、ピコ秒レーザとして、例えば、トルンプ株式会社製の短パルスレーザー「TruMicro5000シリーズ」(仕様等については図5参照)を用い、円盤状のテストピース(SUS304 外径φ20×厚さ5mm)に対してパルスレーザ加工により微小ディンプルを形成した。
パルスレーザによる加工表面は、2次元形状に限らず、所定の曲率を有する内径部分や外径部分である場合や、金型などの複雑な三次元形状(曲面)に対して自由度高く高精度に加工できる点で、機械加工処理に対して有利である。
また、短パルスレーザの照射によれば、通常の機械的な表面加工処理では困難な微細加工を施すことができる。例えば、形成位置をナノメートルオーダーで制御しつつ微小(微細)なディンプル(凹部)を形成することができる。また、短パルスレーザを用いれば、レーザ波長と略同じかそれよりも短いピッチで周期的にディンプル(凹部)を形成するなどの微小(微細)加工を施すことができる。
ここで、ピコ(pico)秒レーザによりディンプル(凹部)を形成する場合、溶融過程を経ずに、直接に原子化・蒸発が行われることから、熱影響が小さく高精度に加工ができるとされてきた。
しかしながら、本発明者等の実験・研究によると、金属材料の場合、金属結合であるため、自由電子の励起、励起された電子による溶融といった過程を経るために、パルスレーザ(ピコ秒レーザ)による加工であっても、溶融による加工痕周辺の盛り上がり(以下、溶融バリと称する)が生じる場合があることが確認された(図2、図3、図4等参照)。
図2において表面形状(表面形状測定装置により計測した測定結果)を拡大して示す図から解るように、パルスレーザ(ピコ秒レーザ)加工の際に、ディンプルのサイズが例えばφ12μm、深さ0.4μm程度の場合に、0.25μm程度の隆起(溶融バリ)が生じることが確認された。
かかる溶融バリが摺動面に存在すると、摺動特性の低下をもたらすことになる。
また、金属材料や金属材料以外の材料であっても、大気中の加工では、加工表面から一旦蒸発した原子が再付着して加工表面に再付着原子が存在する場合があり、摺動特性の低下をもたらすことになる。
更に、ディンプルの入口周辺部の角を丸めることは、摺動特性の改善に貢献するものと考えられる。
このため、本発明者等は、かかる溶融バリ、再付着原子の除去、更にはディンプルの入口周辺部の丸めを行う方法として、加工表面に対してラッピング(研磨)を行うことを試みた。なお、加工表面は2次元形状に限らず、所定の曲率を有する内径部分や外径部分である場合や、金型などの複雑な三次元形状(曲面)であることが想定されるため、複雑な形状の研磨に適した三次元研磨(3Dラッピング)によりこれを実行した。
例えば、砥石等の回転体を用いて或いは研磨砥粒を間に介在させて被加工物を研磨するような方法では、摺動部品や金型など複雑な三次元形状(曲面など)を有する部材表面に対して、溶融バリ、再付着原子の除去ならびに周辺部の丸めを行うことが難しいが、3Dラッピング(砥粒研磨)を用いることにより、比較的容易にかつ精度良く溶融バリ、再付着原子の除去ならびにディンプル入口周辺部の丸めを行うこと可能である。
ここで、本実施の形態において行った三次元研磨(3Dラッピング)処理について説明する。
(1)研磨砥粒:微小粒径(例えば粒径5μm以下)のダイヤモンドその他の研磨剤(炭化ケイ素、コランダム:アルミナなど)を単独もしくは樹脂等に担持させて研磨に用いる。
(2)複雑形状部材の研磨のために、上記の研磨砥粒を、部材に投射 (投射処理) 或いはバレル容器内で部材と共に運動させる(バレル処理)
(3)投射処理
以下の2通りが想定される。
(a)研磨砥粒を空気あるいは各種気体と混合し、ノズルから圧送し、被加工部材に投射する。
(b)研磨砥粒を回転羽根等により機械的に速度を付加し,被加工部材に投射する。
(4)バレル処理
通常のバレル処理と同様(研磨砥粒を、バレル容器内で部材と共に運動させる)
なお、3Dラッピングの具体的な例として、不二製作所のシリウス加工(URL:http://www.fujimfg.co.jp/ApplicationSirius.htm)、噴射式ラップマシン「SMAP」東洋研磨材工業株式会社製(URL:http://www.toyo−kenmazai−kogyo.jp/smap.html)などを利用することができる。
図1に、円盤状のテストピース(SUS304 外径φ20×厚さ5mm)の表面に対して、ピコ(pico)秒レーザにより微小ディンプル(凹部)を複数形成した後に、DLC処理を施し三次元研磨(3Dラッピング)を行った後の表面の拡大図を示す。
図1において表面形状(表面形状測定装置により計測した測定結果)を拡大して示す図から、良好に、図2においてディンプル(凹部)の周囲に生じていた溶融バリ(隆起物)が除去され、ディンプル(凹部)の入口付近が滑らか丸められていることが解る。
図3に、三次元研磨(3Dラッピング)を行ったテストピースと、行う前のテストピースの表面の様子を拡大して示しておく。
図1、図2において、微小ディンプル(凹部)は、入口径φ12μm程度、深さ0.4μm程度、ピッチ20μm程度で形成されている。
図7に、ボール(SUJ2 φ6mm)を表面加工処理の異なる円盤状のテストピース(SUS304 外径φ20×厚さ5mm)に対して所定荷重をかけながら摺動させた摩擦試験の結果を比較して示す。実験条件等については、図6に示す。
なお、表面形状による摩擦特性や摩耗特性の比較が目的であるため、基材SUS304の摩耗や変形等の影響を少なくするために、レーザ加工後及び3Dラッピング後の各テストピースの表面に、DLC(Diamond−Like Carbon)皮膜を形成する処理(DLC処理)を施した。具体的には、DLCコートXPC(aC:H:Si)を1μm成膜した。
ここで、DLC皮膜は、イオンを利用した気相合成法により合成されるダイヤモンドに類似した高硬度・電気絶縁性・赤外線透過性などを持つ炭化物系皮膜で、主として炭化水素、あるいは、炭素の同素体から成る非晶質(アモルファス)の硬質膜である。DLC皮膜は、薄膜にもかかわらず、非常に固い膜を作ることができ、一般的に、窒化処理の3〜7倍、TiNに対しても2〜4倍以上の硬度を有する(但し、硬度は、DLCの成膜法によって変化する)。
図7から、パルスレーザによりディンプル加工を施した後3Dラッピング(三次元研磨)を施したテストピースが、パルスレーザによりディンプル加工を施しただけのテストピースに対して、ドライ条件(潤滑油不存在下)、ウェット条件(潤滑油存在下)の両条件において、摩擦係数が小さいことが確認できる。
なお、図8に、SUS304の基材表面を鏡面化した後にDLCコートXPC1μmを成膜したテストピース、SUS304の基材表面にWPC処理を施した後にDLCコートXPC1μmを成膜したテストピース、SUS304の基材表面にパルスレーザによりディンプル加工を施した後にDLCコートXPC1μmを成膜したテストピースについての同様の摩擦試験結果を示しておく。この結果から、表面にWPC処理或いはパルスレーザ加工により微小ディンプル(凹部)を形成することにより、摩擦係数の低減効果があることが確認できる。
なお、WPC処理とは、「微粒子ピーニング」、「精密ショットピーニング」、「FPB(Fine Particle Bombarding)」などと称される表面処理で、金属製品の表面に、目的に応じた材質の微粒子を圧縮性の気体に混合して高速衝突させる表面改質処理である。かかるWPC処理においては、処理対象物の最表面で急熱・急冷が繰り返される一方で、材料表面の局所領域に多方向・多段・非同期の強加工が導入されることにより、微細で靭性に富む緻密な組織が形成され、高硬度化して表面を強化すると同時に、表面性状を微小ディンプルへ変化させることによって摩擦摩耗特性を向上させることができる。
上記の摩擦試験に供した後のテストピースの様子を、図9、図10、図11、図12に示す。
図9は、SUS304の基材表面にパルスレーザ加工により微小ディンプル(凹部)を形成した後DLCコートを施したテストピース(3Dラッピング処理なし)のドライ試験後(潤滑油不存在下での摺動試験後)の様子を拡大して示しており、SUJ2ボールの摩耗分が著しく付着しており、SUJ2ボールへの攻撃性が高いことが確認できた。
図10は、SUS304の基材表面にパルスレーザ加工により微小ディンプル(凹部)を形成した後DLCコートを施したテストピース(3Dラッピング処理なし)のウェット試験後(潤滑油存在下での摺動試験後)の様子を拡大して示しており、下地(基材)の変形が見られないことが確認できた。
図11は、SUS304の基材表面にパルスレーザ加工により微小ディンプル(凹部)を形成した後DLCコートを施し更に3Dラッピングを施したテストピースのドライ試験後(潤滑油不存在下での摺動試験後)の様子を拡大して示しており、SUJ2ボールの摩耗分が付着することもなく、下地の変形などもなく良好な状態であることが確認できた。
図12は、SUS304の基材表面にパルスレーザ加工により微小ディンプル(凹部)を形成した後DLCコートを施し更に3Dラッピングを施したテストピースのウェット試験後(潤滑油存在下での摺動試験後)の様子を拡大して示しており、下地(基材)の座屈が見られるが、形成したディンプルが磨滅せずDLCは摩耗していないことが確認できた。
以上の摩擦試験結果より、以下の事項が確認された。
(1)パルスレーザ加工により被加工物(部材)の表面に微小ディンプル(凹部)を多数形成することにより、摩擦係数の低減効果があることが確認された。
(2)ドライ摺動試験と油中摺動試験で、両試験ともに鏡面に対して有効なトライボ特性(潤滑特性)を示した。
(3)パルスレーザ加工後に発生する隆起物を除去することにより、微小テクスチャー本来の低摩擦面の性能が発揮されることが確認できた。
(4)パルスレーザ加工によるトライボ特性(潤滑特性)を十二分に発揮させるためには、3Dラッピング加工が有効である。
(5)ボールオン試験でのテストピースのSUS304基材変形を考察すると(特に、図9において下地(基材)の変形が見られないことから)、レーザ加工後の隆起物は溶融時の酸化により高度が非常に高くなっていると思われる。
(6)テストピースの基材(SUS304)へのWPC処理は、基材変形が起こらず表面硬度が改善していることが油中のボールオン試験で確認できる。
(7)微小ディンプル形状(凹形状)のレーザ加工と、DLCコーティングと、を組み合わせることにより、従来のトライボ特性を大きく向上できる可能性が高いことが確認できた。
なお、当社の実験結果では、ナノ(nano)秒レーザでは照射部が酸化するのみで有効な微小ディンプル形状(凹形状)の加工が実現できなかった。従って,ピコ(pico)秒レーザ以上の短パルスが必要であると考えられる。
本実施の形態に係る微小ディンプル形状(凹形状)の形成方法においては、
(a)ピコ秒レーザ以上(実効的にはピコ秒レーザ:パルス幅=1ピコ秒〜30ピコ秒程度)により表面形状(微小凹形状)を形成する。
(b)表面形状(微小凹形状)に関しては、ドット(ディンプル形状)で入口径φ12μm(φ5〜50μm程度)、深さ0.4μm(0.1〜10μm程度)、ピッチ20μm(10〜100μm)程度が想定される。
また、表面形状(微小凹形状)は、ドット(ディンプル形状)以外にも、例えば、複数状の溝形状とすることもできる。なお、溝を縦横方向に形成して溝を交差させた網目状の溝形状などとすることも可能である。
(c)3Dラッピング(砥粒研磨)により、表面の溶融バリ、再付着の除去ならびに周辺部の丸めを実現し低摺動部材を作製する。
(d)更に、形成した表面形状の保護ならびに低摺動,長寿命化のためDLC被覆を施すことが想定される。
以上説明したように、本実施の形態によれば、被加工物の表面(平面及び曲面(三次元形状の表面))にパルスレーザを照射して微小ディンプル形状(凹形状)を形成するが、その際に生じる溶融バリや再付着原子等を効果的に除去することで、良好な耐摩耗性、潤滑特性を実現することができる微小ディンプル形状(凹形状)の形成方法を提供すること、及び該形成方法により形成された微小ディンプル形状(凹形状)を有し良好な耐摩耗性、潤滑特性を備えた部材を提供することができる。
なお、本実施の形態では、円盤状のテストピース(被加工物或いは部材)のある特定表面(摺動面、金型の場合は素材との接触面など)に対して、ピコ秒レーザを照射して微小ディンプル形状(凹形状)を形成し、その後三次元研磨(3Dラッピング)処理を施したが、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、被加工物の少なくとも一つの表面の少なくとも一部に対してピコ(pico)秒レーザ以上の短パルスレーザ(パルス幅をピコ秒以上に短いパルス幅まで短パルス化したレーザ)により微小ディンプルを形成すると共に、該微小ディンプルが形成された一部を含む領域に対して三次元研磨を行うことができるものである。
本発明において、形成された表面形状にDLC皮膜を施すことにより、耐摩耗性が向上し、形状が長期間保存され、有用な特性が長期間維持される。
また、本発明において、DLC皮膜については、三次元研磨を行った後に形成(成膜)することが可能であるし、或いは、微小ディンプルを形成した後、三次元研磨を行う前に形成(成膜)することも可能である。
そして、本発明において、三次元研磨は、微小粒径の研磨砥粒を投射すること或いは微小粒径の研磨砥粒を用いてバレル研磨することによってなされることができるものである。
また、本発明では、短パルスレーザによる加工が被加工物を選ばないという特長に基づいて、被加工物の加工表面に対してDLC皮膜を先に形成し、その後に、ピコ秒レーザにより微小ディンプルを形成すると共に、該微小ディンプルが形成された領域に対して三次元研磨を行うことができるものである。かかる方法によれば、微小ディンプルのサイズ等をより高精度に調整することができると共に管理することができる。
なお、三次元形状の表面に対して微小ディンプルを形成する場合、ピコ秒レーザ以上に短いパルス幅の短パルスレーザにより微小ディンプルを形成することが、切削などの機械的加工やショットピーニング等の他の加工方法により形成する場合に比べて、より高精度且つより効率良く精密に加工することができ有益であると共に、かかる三次元形状の表面に生成される溶融バリや再付着原子等を高精度且つ効率良く除去することは難しいが、三次元研磨によればこれらを高精度且つ効率良く除去することができる。
本実施の形態では、SUS304を基材として説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、レーザ加工は材質を選ばないため、他の材料とすることができ、例えば超硬なども同様に加工可能であり、本発明の適用が可能であることが実験により確認されている。
ここで、本発明者等の各種の研究、実験、解析、検討等によれば、内燃機関の燃費低減のために潤滑油の粘度を例えば0W−20(低燃費オイル)まで下げて行くと、比較的潤滑条件の厳しい内燃機関の摺動部において、特に、カムとバルブリフタの間の摺動部が非常に厳しい潤滑状態になることが確認された。
具体的には、例えば、図14に示すような動弁機構では、回転駆動されるカムシャフト5の外周に備えられたカム10により、バルブリフタ20を上下動させることで、吸気バルブ(或いは排気バルブ)30を所定タイミングで開閉させるが、カム10とバルブリフタ20の間の摺動部は、バルブリフタ20のカム接触面21に対するカム10の接触部の移動の相対速度が比較的小さいため油膜形成に厳しいことに加え、カム10の接触部が線(幅方向に延びる線)に近いため面圧が高く油膜形成に厳しい状態となる。
更に、カム10がバルブリフタ20を最大まで押し下げてバルブ30を最大リフトした後、バルブリフトが下降して最小リフトとなるまでの間において、図15に示すように、カム10とバルブリフタ20の接触部(当たり位置)Xはバルブリフタ20のカム接触面21上を往復移動することになるが、移動方向が切り替るときにカム10とバルブリフタ20の相対的な移動速度が0となるため、流体潤滑理論に基づく油膜形成が非常に困難な状態となっているものと考えられる。
ここで、図15に基づいてより詳しく説明すると、カム10とバルブリフタ20の接触部(当たり位置)Xは、バルブ30のリフト開始(図15のA)からカム角(回転角)の進行に従い図15中左方向に徐々に移動し(図15のB)、カム10の最大リフトポイント11がバルブリフタ20の摺動面21と当接する手前で最も左側に到達し(図15のC)、そこで接触部(当たり位置)Xは移動の向きを図15中右側に変更して(折り返して)(図15のC)、最大リフト時に摺動面21の中央付近へと急速に移動することになる(図15のD)。
この後、カム角(回転角)の進行に従い、バルブ30を最大リフト状態から閉弁方向に移動させるが、接触部(当たり位置)Xは、図15中右方向に移動して、カム10の最大リフトポイント11がバルブリフタ20の摺動面21から離れる手前で最も右側に到達し(図15のE)、その後、接触部(当たり位置)Xは移動の向きを図15中左側に変更して(折り返して)(図15のF)、閉弁状態(リフト量0のベースサークル)にて摺動面21の中央付近へと移動することになる(図15のG)。その後は、図15のAへ移動して上記を繰り返す(図15のA〜G)を繰り返すようになっている。
ここで、バルブリフト開始時から最大リフトした後、カム10の先端11が摺動面21から離れ(カムプロフィールがリフト側から下降側に切り換り)、接触部(当たり位置)Xが最も右側に到達するまでの期間(すなわち、図15のA〜Eまでの期間)は、カム10はバルブリフタ20の摺動面21の潤滑油を高面圧で掻き取りながらではあるが、流体潤滑環境下にあってくさび作用により比較的良好に油膜が形成される状態にあり、摩耗は少なくフリクションも流体潤滑理論に基づいた大きさ(例えば潤滑油粘度に応じた大きさ)となる。
しかしながら、接触部(当たり位置)Xが、最も右側に到達した後の期間(図15のE〜Gの期間)は、図15のD〜Eにおいて高面圧にて摺動面21から油膜が既に掻き取られた状態となっており、かかる潤滑油の不足した状態で、カム10とバルブリフタ20の摺動面21との間の相対速度が0となって接触部(当たり位置)Xが折り返すことから、境界潤滑或いは金属接触が生じ易い状態であり、摩耗が大きくなり、フリクションも大きくなってしまうことになる。
そして、かかる状態では、例えば、0W−20程度の低粘度の低燃費オイルを外から接触部(当位置)Xに供給などしたとしても低粘度であることから良好な油膜形成は非常に困難であり、0W−20程度の低燃費オイルを使用する環境下でフリクションや摩耗の改善を図るためには、摺動面の表面改質などによる対策を行うことが必要であると考えられる。
このようなことから、カム10の周囲(摺動面、フェース面)とバルブリフタ20の摺動面21の少なくとも一方に、本発明に係る微小ディンプル形成方法により、上述してきた内容と同様の微小ディンプルを形成することが有益である。但し、加工の容易さなどの観点からは、バルブリフタ20の摺動面21に、本発明に係る微小ディンプル形成方法により微小ディンプルを形成することが好ましい。
すなわち、バルブリフタ20の摺動面21或いはカム10の周囲(摺動面、フェース面)の表面(平面及び曲面(三次元形状の表面))を本発明に係る被加工物として、パルスレーザを照射して微小ディンプル形状(凹形状)を形成するが、その際に生じる溶融バリや再付着原子等を三次元研磨により除去することで、バルブリフタ20の摺動面21或いはカム10の周囲(摺動面)の耐摩耗性、潤滑特性(摩擦特性)を効果的に改善することができる。
なお、バルブリフタ20の摺動面21に限らず、側面22(上下動の際に摺動面となる)に、本発明に係る微小ディンプル形成方法により微小ディンプルを形成することもできる。
また、図16に示すような、カム10と、バルブリフタ20と、の間に、アジャスティングシム(本発明に係るシム)40を介装する構成に対しても本発明を適用することができる。かかる場合には、カム10の周囲(摺動面)、バルブリフタ20のカム側表面22、アジャスティングシム40のカム接触面41、カム接触面の裏面42の少なくとも1つに本発明に係る微小ディンプル形成方法により微小ディンプルを形成することで(パルスレーザを照射して微小ディンプル形状(凹形状)を形成し、その際に生じる溶融バリや再付着原子等を三次元研磨により除去することで)、バルブリフタ20のカム側表面22、アジャスティングシム40のカム接触面41、カム接触面の裏面42、或いはカム10の周囲(摺動面)の耐摩耗性、潤滑特性(摩擦特性)を効果的に改善することができる。
更に、図17に示すようなロッカーアーム式の動弁機構のカム10やカム10との接触部に対しても本発明を適用することができる。
すなわち、カム10の周囲(摺動面)、ロッカーアーム50のカム接触面(スリッパ部)51の摺動面の少なくとも一方に本発明に係る微小ディンプル形成方法により微小ディンプルを形成することで(パルスレーザを照射して微小ディンプル形状(凹形状)を形成し、その際に生じる溶融バリや再付着原子等を三次元研磨により除去することで)、カム10の周囲(摺動面)、ロッカーアーム50のカム接触面(スリッパ部)51の摺動面の耐摩耗性、潤滑特性(摩擦特性)を効果的に改善することができる。
更に、内燃機関のピストンとコネクティングロッド小端とを連結するピストンピンへの潤滑油の供給が難しいことから、今後の低燃費のための潤滑油粘度の低粘度化に伴い、摩耗やフリクションに関する問題が大きくなるものと考えられる。
このため、ピストンピンの外周(少なくともピストンピン穴に挿入される部分或いはコネクティングロッド小端に挿入される部分)に本発明に係る微小ディンプル形成方法により微小ディンプルを形成することで(パルスレーザを照射して微小ディンプル形状(凹形状)を形成し、その際に生じる溶融バリや再付着原子等を三次元研磨により除去することで)、ピストンピンの摩耗、ピストンピン穴の摩耗、コネクティングロッド小端穴の耐摩耗性、潤滑特性(摩擦特性)を効果的に改善することができる。
更に、軽油を燃料とする直噴式ガソリンエンジンやディーゼルエンジンに採用されるコモンレール式燃料噴射装置(高圧燃料をコモンレール内に蓄えておいて燃料噴射弁からその高圧燃料を噴射供給する装置)において、コモンレールに高圧燃料を供給する燃料供給ポンプのプランジャの摺動面に、本発明に係る微小ディンプル形成方法により微小ディンプルを形成することも有益である。
すなわち、燃料供給ポンプのプランジャはシリンジ内を往復直線運動することにより燃料を高圧に昇圧してコモンレールへ送るが、近年の大気汚染防止の観点(排気中のサルフェートが核となって生成されるパティキュレートの排出量が増大するため、これを抑制する観点)から、燃料中の硫黄分が除去されているが、これにより、一層の燃料の高圧化と相俟って、プランジャとシリンジの摺動面(軽油が潤滑剤として機能している)の摩耗が厳しい状況となっている。
このため、燃料供給ポンプのプランジャの外周(摺動面)に本発明に係る微小ディンプル形成方法により微小ディンプルを形成することで(パルスレーザを照射して微小ディンプル形状(凹形状)を形成し、その際に生じる溶融バリや再付着原子等を三次元研磨により除去することで)、プランジャの外周(摺動面)やシリンジ内周面の耐摩耗性、潤滑特性(摩擦特性)を効果的に改善することができる。
なお、潤滑条件の厳しい内燃機関のピストンリングの上面と下面の少なくとも一方にも同様に、本発明に係る微小ディンプル形成方法により微小ディンプルを形成することが有益であり、本発明に係る微小ディンプル形成方法により微小ディンプルを形成することで(パルスレーザを照射して微小ディンプル形状(凹形状)を形成し、その際に生じる溶融バリや再付着原子等を三次元研磨により除去することで)、ピストンリング上下面、ピストンリング溝の耐摩耗性、潤滑特性(ピストン溝へのピストンリングの固着など)を効果的に改善することができる。
本発明は、上述した発明の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々変更を加え得ることは可能である。
1 被加工物(部材)
2 微小(微細)ディンプル(凹部)
10 カム
20 バルブリフタ
21 摺動面
40 アジャストシム(シム)
41 カム接触面
42 カム接触面の裏面

Claims (10)

  1. 被加工物の少なくとも一つの表面の少なくとも一部に対してピコ秒レーザ以上に短いパルス幅の短パルスレーザにより微小ディンプルを形成すると共に、
    該微小ディンプルが形成された一部を含む領域に対して三次元研磨を行うことを特徴とする微小ディンプル形成方法。
  2. 微小ディンプルを形成した後三次元研磨を行う前に、少なくとも前記領域にDLC皮膜を形成することを特徴とする請求項1に記載の微小ディンプル形成方法。
  3. 微小ディンプルを形成した後三次元研磨を行った後に、少なくとも前記領域にDLC皮膜を形成することを特徴とする請求項1に記載の微小ディンプル形成方法。
  4. 前記被加工物の少なくとも一つの表面にDLC皮膜が予め形成されていることを特徴とする請求項1に記載の微小ディンプル形成方法。
  5. 三次元研磨は、前記領域に対して微小粒径の研磨砥粒を投射すること或いは微小粒径の研磨砥粒を用いてバレル研磨することによってなされることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1つに記載の微小ディンプル形成方法。
  6. 前記被加工物の少なくとも一つの表面が、三次元形状の表面であることを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか1つに記載の微小ディンプル形成方法。
  7. 請求項1〜請求項6の何れか1つに記載の微小ディンプル形成方法によって形成された微小ディンプルを備えた部材。
  8. 前記部材がバルブリフタであり、前記微小ディンプルが少なくともカム接触面に備えられることを特徴とする請求項7に記載の部材。
  9. 前記部材がカムとバルブリフタとの間に介装されるシムであり、該シムのカム接触面に前記微小ディンプルが備えられることを特徴とする請求項7に記載の部材。
  10. 前記部材がカムであり、前記微小ディンプルが少なくともフェース面に備えられることを特徴とする請求項7に記載の部材。
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