JP2016036852A - 微小ディンプル形成方法及び該形成方法により形成された微小ディンプルを備えた部材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 本発明に係る微小ディンプル形成方法は、被加工物の少なくとも一つの表面の少なくとも一部に対してピコ秒レーザ以上に短いパルス幅の短パルスレーザにより微小ディンプルを形成すると共に、該微小ディンプルが形成された一部を含む領域に対して三次元研磨を行うことを特徴とする。
【選択図】図1
Description
(1)一般的に、表面が平滑だと摩擦係数が低いと考えられているが、実際にはかえって鏡面状態では摩擦係数が高くなる、摩擦係数が不安定となるなどの現象があり、表面に微小(或いは微細)なディンプル形状(凹形状)を形成した方が安定的な低摩擦が得られることが知られている(例えば、特許文献1、特許文献2等参照)。
微小なディンプル形状(凹形状)に関しては、ドット状(小径窪み状)、線状(溝状)などの形態があり,それぞれドット径(或いは線幅)ならびに間隔により、得られる効果(安定度合い、摩擦係数の低減度合いなど)が異なることが予想される。また、使用される材料(素材、硬度など)や使用条件(負荷荷重、滑り速度)により最適値が存在すると考えられる。
微小なディンプル形状(凹形状)の形成方法に関しては、例えば、機械加工(切削など)、ショット・ピーニング(WPCを含む)、レーザ加工等などが考えられる。
a)材料の選択性:硬度にかかわらずに加工できることが望ましい(金属材料からセラミックスまで)。
b)形状の選択性:微小なディンプル形状(凹形状)を形成する表面形状(基礎形状或いは母形状)が平面から自由曲面(金型、歯車など)まで複雑形状を加工できることが望ましい。
c)加工の制御性:微小なディンプル形状(凹形状)が形成される表面形状(基礎形状或いは母材形状)も含めて加工形状(ドット径、間隔など)を自由に制御可能かどうかが重要である。
d)加工速度:実用的には極めて重要な事項である。
図13に示したように、それぞれ特長を有しているが、複雑な形状の表面に微小なディンプル形状(凹形状)を多数形成するためには、レーザ加工が現実的であると考えられる。
加工用レーザに関しては,高密度連続波(CW)とパルスレーザに大別される。
前者は溶接、溶断など熱的に材料を溶融させて加工を施す方法であり、後者は光エネルギーを圧縮化(パルス化)して加工を行う方法であり、これらは公知である。
パルス幅は同一エネルギーであれば、短パルスほどエネルギー密度が高いこと、パルス幅が短いほど照射エネルギーが照射部に伝わらないことから、パルス幅が長いほど熱影響が多くなり溶融・蒸発の加工に、短いほど溶融過程を経過せずに直接原子化される(アブレーション)加工となる。
また,装置価格もナノ(nano)秒レーザ,ピコ(pico)秒レーザ,フェムト(femto:fm)秒レーザの順に高額となる。
一般的に、パルスレーザによる材料加工では、光が化学結合の電子系(電子による結合)を励起し、該結合を切断することにより溶融過程を経ずに、直接に原子化・蒸発を行う(アブレーション)とされている。
被加工物の少なくとも一つの表面の少なくとも一部に対してピコ秒レーザ以上に短いパルス幅の短パルスレーザ(パルス幅をピコ秒以上に短いパルス幅まで短パルス化したレーザ)により微小ディンプルを形成すると共に、
該微小ディンプルが形成された一部を含む領域に対して三次元研磨を行うことを特徴とする。
三次元形状の表面に対して微小ディンプルを形成する場合、ピコ秒レーザ以上に短いパルス幅の短パルスレーザ(パルス幅をピコ秒以上に短いパルス幅まで短パルス化したレーザ)により微小ディンプルを形成することが、切削などの機械的加工やショットピーニング等の他の加工方法により形成する場合に比べて、より高精度且つより効率良く精密に加工することができ有益であると共に、かかる三次元形状の表面に生成される溶融バリや再付着原子等を高精度且つ効率良く除去することは難しいが、三次元研磨によればこれらを高精度且つ効率良く除去することができる。
ピコ秒レーザを被加工物の表面に照射することで、照射された部分がアブレーション(ablation:材料の表面が蒸発等によって剥ぎ取られる現象)されて、加工跡であるディンプル(凹部)が形成される。
かかる溶融バリが摺動面に存在すると、摺動特性の低下をもたらすことになる。
更に、ディンプルの入口周辺部の角を丸めることは、摺動特性の改善に貢献するものと考えられる。
(1)研磨砥粒:微小粒径(例えば粒径5μm以下)のダイヤモンドその他の研磨剤(炭化ケイ素、コランダム:アルミナなど)を単独もしくは樹脂等に担持させて研磨に用いる。
(2)複雑形状部材の研磨のために、上記の研磨砥粒を、部材に投射 (投射処理) 或いはバレル容器内で部材と共に運動させる(バレル処理)
(3)投射処理
以下の2通りが想定される。
(a)研磨砥粒を空気あるいは各種気体と混合し、ノズルから圧送し、被加工部材に投射する。
(b)研磨砥粒を回転羽根等により機械的に速度を付加し,被加工部材に投射する。
(4)バレル処理
通常のバレル処理と同様(研磨砥粒を、バレル容器内で部材と共に運動させる)
図9は、SUS304の基材表面にパルスレーザ加工により微小ディンプル(凹部)を形成した後DLCコートを施したテストピース(3Dラッピング処理なし)のドライ試験後(潤滑油不存在下での摺動試験後)の様子を拡大して示しており、SUJ2ボールの摩耗分が著しく付着しており、SUJ2ボールへの攻撃性が高いことが確認できた。
(1)パルスレーザ加工により被加工物(部材)の表面に微小ディンプル(凹部)を多数形成することにより、摩擦係数の低減効果があることが確認された。
(2)ドライ摺動試験と油中摺動試験で、両試験ともに鏡面に対して有効なトライボ特性(潤滑特性)を示した。
(3)パルスレーザ加工後に発生する隆起物を除去することにより、微小テクスチャー本来の低摩擦面の性能が発揮されることが確認できた。
(4)パルスレーザ加工によるトライボ特性(潤滑特性)を十二分に発揮させるためには、3Dラッピング加工が有効である。
(5)ボールオン試験でのテストピースのSUS304基材変形を考察すると(特に、図9において下地(基材)の変形が見られないことから)、レーザ加工後の隆起物は溶融時の酸化により高度が非常に高くなっていると思われる。
(6)テストピースの基材(SUS304)へのWPC処理は、基材変形が起こらず表面硬度が改善していることが油中のボールオン試験で確認できる。
(7)微小ディンプル形状(凹形状)のレーザ加工と、DLCコーティングと、を組み合わせることにより、従来のトライボ特性を大きく向上できる可能性が高いことが確認できた。
(a)ピコ秒レーザ以上(実効的にはピコ秒レーザ:パルス幅=1ピコ秒〜30ピコ秒程度)により表面形状(微小凹形状)を形成する。
(b)表面形状(微小凹形状)に関しては、ドット(ディンプル形状)で入口径φ12μm(φ5〜50μm程度)、深さ0.4μm(0.1〜10μm程度)、ピッチ20μm(10〜100μm)程度が想定される。
また、表面形状(微小凹形状)は、ドット(ディンプル形状)以外にも、例えば、複数状の溝形状とすることもできる。なお、溝を縦横方向に形成して溝を交差させた網目状の溝形状などとすることも可能である。
(c)3Dラッピング(砥粒研磨)により、表面の溶融バリ、再付着の除去ならびに周辺部の丸めを実現し低摺動部材を作製する。
(d)更に、形成した表面形状の保護ならびに低摺動,長寿命化のためDLC被覆を施すことが想定される。
すなわち、カム10の周囲(摺動面)、ロッカーアーム50のカム接触面(スリッパ部)51の摺動面の少なくとも一方に本発明に係る微小ディンプル形成方法により微小ディンプルを形成することで(パルスレーザを照射して微小ディンプル形状(凹形状)を形成し、その際に生じる溶融バリや再付着原子等を三次元研磨により除去することで)、カム10の周囲(摺動面)、ロッカーアーム50のカム接触面(スリッパ部)51の摺動面の耐摩耗性、潤滑特性(摩擦特性)を効果的に改善することができる。
2 微小(微細)ディンプル(凹部)
10 カム
20 バルブリフタ
21 摺動面
40 アジャストシム(シム)
41 カム接触面
42 カム接触面の裏面
Claims (10)
- 被加工物の少なくとも一つの表面の少なくとも一部に対してピコ秒レーザ以上に短いパルス幅の短パルスレーザにより微小ディンプルを形成すると共に、
該微小ディンプルが形成された一部を含む領域に対して三次元研磨を行うことを特徴とする微小ディンプル形成方法。 - 微小ディンプルを形成した後三次元研磨を行う前に、少なくとも前記領域にDLC皮膜を形成することを特徴とする請求項1に記載の微小ディンプル形成方法。
- 微小ディンプルを形成した後三次元研磨を行った後に、少なくとも前記領域にDLC皮膜を形成することを特徴とする請求項1に記載の微小ディンプル形成方法。
- 前記被加工物の少なくとも一つの表面にDLC皮膜が予め形成されていることを特徴とする請求項1に記載の微小ディンプル形成方法。
- 三次元研磨は、前記領域に対して微小粒径の研磨砥粒を投射すること或いは微小粒径の研磨砥粒を用いてバレル研磨することによってなされることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1つに記載の微小ディンプル形成方法。
- 前記被加工物の少なくとも一つの表面が、三次元形状の表面であることを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか1つに記載の微小ディンプル形成方法。
- 請求項1〜請求項6の何れか1つに記載の微小ディンプル形成方法によって形成された微小ディンプルを備えた部材。
- 前記部材がバルブリフタであり、前記微小ディンプルが少なくともカム接触面に備えられることを特徴とする請求項7に記載の部材。
- 前記部材がカムとバルブリフタとの間に介装されるシムであり、該シムのカム接触面に前記微小ディンプルが備えられることを特徴とする請求項7に記載の部材。
- 前記部材がカムであり、前記微小ディンプルが少なくともフェース面に備えられることを特徴とする請求項7に記載の部材。
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