JP4788443B2 - 摺動部材 - Google Patents

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本発明は、相手部材と潤滑油を介して摺接する摺動部材に関するものである。
従来、下記特許文献1に示されるように、内周面にホーニング処理により形成された研削痕を有するシリンダおよびシリンダライナおいて、上記研削痕が、円周方向に30°以下の角度をなして交差する第1の研削痕と、この第1の研削痕の間に設けられて、この第1の研削痕の交差角度より5°以上大なる交差角をなして形成された第2研削痕とでなり、かつ第1の研削痕の深さが第2の研削痕の深さより大に設定され、これらの研削痕が潤滑油を溜めるための油溜まりとして利用されるように構成されたものが知られている。
また、下記特許文献2に示されるように、鉄系合金の摺動材表面を、レーザ光等からなる収束集中した高密度エネルギー源を用いて急速加熱して溶融させるのと同時に、この溶融部に気体噴流を吹き付けることにより、油溜まりとなる微小深さの溝(凹部)を形成するとともに、上記急速加熱に伴い上記溝の周囲を焼き入れ硬化させることが行われている。
特開昭59−196954号公報 特開平2−294423号公報
上記特許文献1〜2に開示されているように、ピストンが摺動するシリンダライナ等からなる摺動部材の内周面に、油溜まりとなるホーニングの研削痕またはレーザ加工溝を形成した場合には、上記油溜まりから供給される潤滑油によって潤滑性が付与されるため、摩擦抵抗(摩擦係数)を低下させることによって燃費を改善できるという利点がある。
しかしながら、特定方向に延びる溝状の油溜まりを設けた上記特許文献1〜2の構成では、エンジン作動時のピストンの上下動に伴い上記油溜まりに沿って潤滑油(エンジンオイル)が掻き出され、排気行程で燃焼室の外部に導出されたり、エンジンの膨張行程で発生する燃焼ガスとともに燃焼したりすることに起因して、潤滑油の消費量が増大することが避けられないという問題がある。このため、シリンダライナ表面の油膜切れが生じ易く、このことが、上記研削痕等を設けたことによる接触面積の減少(すなわち面圧の増大)と相まって、シリンダライナの摩耗の進行を誘発するという問題があった。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、相手部材と潤滑油を介して摺接する摺動部材において、その摺接面の摩耗を抑制するとともに、潤滑油の消費を抑制しつつ摺動抵抗を低減することにより、エンジンの耐久性や燃費の改善も可能とする摺動部材を提供することを目的としている。
上記課題を解決するためのものとして、本発明は、相手部材と潤滑油を介して摺接する合金鋳鉄製の摺動部材であって、その摺接面の一部に、レーザ光の照射を受けて合金鋳鉄が溶融・凝固した部位に形成された急冷凝固組織の表層部からなる硬質面部と散点状に設けられた油溜まり用の凹部とが表面に混在した混在部が形成され、当該混在部は、互いに独立して千鳥状に複数配設されていることを特徴とするものである(請求項1)。
本発明によれば、合金鋳鉄の急冷凝固により焼入れ硬化された硬質面部と油溜まり用の凹部とが表面に混在した混在部を摺接面の一部に形成したため、相手部材との摺動による摩耗の発生を効果的に抑制しつつ、潤滑性を良好に維持して摩擦抵抗を効果的に低減できるという利点がある。しかも、上記油溜まり用の凹部を混在部の表面に散点状に設けるようにしたため、特定方向に延びる溝状の油溜まりを摺接面に設けた上記特許文献1〜2の構成と異なり、油溜まりに沿って潤滑油が掻き出されることを回避することができ、潤滑油の消費量を効果的に低減することができる。
さらに、合金鋳鉄へのレーザ光の照射により、焼入れ硬化された硬質面部と油溜まり用の凹部とを同時に形成できるため、容易かつ迅速に上記混在部を形成することができる。
また、凹部を有する複数の混在部を互いに独立する状態で(千鳥状に)配設したため、当該混在部を連続的に設けた場合と異なり、例えばエンジン気筒内の燃焼ガスのような被密閉体が上記混在部の設置部を通じて吹き抜けてしまうことを効果的に抑制しつつ、上記凹部に保持される潤滑油によって潤滑性を良好に維持できるという利点がある。
上記混在部に対する上記凹部の占有面積率は、5%以上95%以下に設定されていることが好ましい(請求項2)。
これにより、上記凹部と硬質面部とを適正な割合で混在させて耐摩耗性と潤滑性とを好適に両立させることができる。
上記摺動部材は、レシプロ式エンジンのシリンダライナであり、上記混在部は、該シリンダライナの内周面のうち、ピストンが上死点にあるときのトップリング位置からピストンが下死点にあるときのオイルリング位置に至る領域の少なくとも一部に形成されていることが好ましい(請求項3)。
このようにすれば、シリンダライナの内周面のうちピストンと摺動する部分に対して耐摩耗性と潤滑性とを好適に付与することができる。この結果、ピストンとの摺動によってシリンダライナが摩耗するのを効果的に抑制できるとともに、潤滑油(エンジンオイル)の消費量が増大するのを防止しながらピストンとシリンダライナとの摺動抵抗を効果的に低減でき、もって燃費を改善できるという利点がある。
以上説明したように、本発明によれば、相手部材と潤滑油を介して摺接する摺動部材において、その摺接面の摩耗を抑制するとともに、潤滑油の消費を抑制しつつ摺動抵抗を低減することができる。したがって、例えばエンジンの耐久性や燃費を効果的に改善することができる。
図1は、本発明に係る摺動部材の一実施形態を示している。この摺動部材は、エンジンのシリンダブロック1に挿入されて保持されるシリンダライナ2により構成され、その内周面に沿ってピストン3が図1の仮想線で示す下死点位置から実線で示す上死点位置に昇降変位するようになっている。このシリンダライナ2は、合金鋳鉄により形成され、上記ピストン3の上死点位置から下死点位置に至る領域A、より具体的には、ピストン3が上死点にあるときのトップリング6aの位置からピストン3が下死点にあるときのオイルリング6bの位置に至る領域Aに、後述するレーザ加工によって形成された複数の混在部10を有している。
図2(a)は図1のα部の拡大断面図、図2(b)は当該部の平面図である。これら図2(a)(b)に示すように、上記混在部10は、レーザ光の照射を受けて溶融・凝固した部位に形成された急冷凝固組織11の表層部からなる硬質面部12と、平面視で散点状に設けられた複数の凹部13とが表面に混在した構造を有しており、このうちの凹部13が潤滑油(エンジンオイル)を溜めるための油溜まりとして利用されるようになっている。
上記シリンダライナ2を製造するには、まず図外の鋳造工程において、図3(a)に示すようなシリンダライナ用素材2aを成形した後、これを例えば不図示のアルミニウム合金製シリンダブロックに圧入するか、あるいは、当該アルミニウム合金製シリンダブロックに上記シリンダライナ用素材2aを鋳込んで一体化する。そして、図3(b)に示すように、シリンダライナ用素材2a内にホーニング砥石4を挿入して所定速度で回転させつつ昇降駆動することにより、上記シリンダライナ用素材2aの内周面を荒加工する。
次いで、図3(c)に示すように、パルス式YAGレーザ加工機5を使用して上記シリンダライナ用素材2aの内周面を部分的に溶融・凝固させることにより、当該レーザ加工部に上記急冷凝固組織11を形成する。その後、図3(d)に示すように、ホーニング砥石4を用いて上記シリンダライナ用素材2aの内周面を平滑に仕上げる仕上げ加工を施すことにより、図1に示すような複数の混在部10を有したシリンダライナ2を形成する。
上記パルス式YAGレーザ加工機5は、ネオジウムをドープしたYAG(イットリウム−アルミニウム−ガーネット)結晶を発振媒体として用いた従来周知の固定式レーザであって、加工性能が高いとともにピーク出力が高く、かつガラス中で減衰をほとんど生じないため、光ファイバーによるパワー伝送が可能である等の特徴を有している。このパルス式YAGレーザ加工機5のレーザ光照射部5aから上記シリンダライナ用素材2aの内周面に向けてレーザ光が照射されると、当該レーザ光の照射を受けた部分の金属(合金鋳鉄)が溶融して再凝固し、それによって図4(a)〜(c)の写真に示すように、複雑な凹凸形状を表面に有する(多数の凹部13を有する)急冷凝固組織11が形成されるようになっている。そして、図3(c)に示すように、上記パルス式YAGレーザ加工機5を、シリンダライナ用素材2a内に挿入した状態で、矢印Dに示すように一定速度で旋回させるとともに、矢印Eに示すように一定速度で下降させながら、上記シリンダライナ用素材2aの内周面にレーザ光を間欠的に照射することにより、上記急冷凝固組織11の形成部(後の混在部10)を、互いに独立した状態で(千鳥状に)複数形成する。
図5は、上記パルス式YAGレーザ加工機5から照射されたレーザ光を受けた部位に混在部10が形成される様子を示している。まず、シリンダライナ用素材2aが図5(a)の矢印で示されるレーザ光の照射を受けると、当該部分の金属が溶融温度まで急加熱されて溶融した後、上記レーザ光の照射が停止されるのに応じて当該溶融部の熱が周縁部に急激に吸収され、その結果図5(b)に示すように、表面が波打つような状態で金属が再凝固して凹凸状の急冷凝固組織11が形成される。そして、この状態で図3(d)に示したホーニング砥石4による仕上げ加工が施されることにより、図5(c)に示すように、上記凹凸部の山に対応する部分が除去されて当該部分に平坦面からなる硬質面部12が形成されるとともに、上記凹凸部の谷に対応する部分に凹部13が形成され、これら硬質面部12および凹部13が表面に混在した混在部10が形成されることになる。この凹部13の表面積(および深さ)は、上記パルス式YAGレーザ加工機5のレーザ出力を変更することによって調整することができる。例えば、レーザ出力を小さくすれば、金属が再凝固する際の凹凸量を少なくすることができ、その結果図6に示すように、相対的に小さな凹部13を有する混在部10を形成することができる。すなわち、上記レーザ出力を変化させることにより、混在部10に対する上記凹部13の占有面積率を調整できるようになっている。
上記のように、急冷凝固により焼入れ硬化された硬質面部12と油溜まり用の凹部13とが表面に混在した混在部10を、シリンダライナ2の内周面のうちピストン3の上死点位置から下死点位置に至る領域Aに形成したため、このシリンダライナ2の内周面がピストン3との摺動によって摩耗するのを効果的に抑制しつつ、当該内周面の潤滑性を良好に維持してピストン3との摩擦抵抗を効果的に低減できるという利点がある。
すなわち、上記ピストン3の上死点位置から下死点位置に至る領域Aは、エンジン作動時に高速で上下動するピストン3との摺接面であるため、耐摩耗性とともに潤滑性(低摩擦性)が要求される部位であるが、上記のように当該領域Aにレーザ光を照射して混在部10を設けるようにすれば、焼入れ硬化された硬質面部12の存在により上記領域Aの摩耗を効果的に抑制できるとともに、油溜まり用の凹部13から供給される潤滑油(エンジンオイル)によって上記領域Aの潤滑性を充分に確保することができる。そして、このように摩耗を抑制しかつ潤滑性(低摩擦性)を確保することで、エンジンの耐久性を向上させるとともに、ピストン3の摺動抵抗を下げて燃費の改善を効果的に図ることができる。
さらに、上記構成では、油溜まり用の凹部13が混在部10の表面に散点状に設けられているため、特定方向に延びる溝状の油溜まりを摺接面に設けた上記特許文献1〜2の構成と異なり、油溜まり(溝)に沿って潤滑油が掻き出されるという事態を生じることがない。したがって、上記領域Aの摩耗が抑制されることとの相乗効果で潤滑油の消費量を効果的に抑制できるという利点がある。
また、上記実施形態のように、レーザ加工機5を使用してシリンダライナ用素材2aの内周面を部分的に溶融・凝固させることによって急冷凝固組織11を形成するとともに、上記溶融・凝固の過程で生じた表面の凹凸形状を利用して上記凹部13を形成するようにした場合には、上記急冷凝固組織11の表層部からなる硬質面部12と上記油溜まり用の凹部13とを上記レーザ光の照射によって同時に形成できるため、容易かつ迅速に上記混在部10を形成できるという利点がある。
また、上記実施形態のように、凹部13を有する複数の混在部10を互いに独立する状態で(千鳥状に)配設した場合には、例えば当該混在部10をシリンダライナ2の周方向に沿って連続的に設けた場合と異なり、エンジン気筒内の燃焼ガスが上記混在部10の設置部を通じて吹き抜けてしまうことを効果的に抑制しつつ、上記凹部13から供給される潤滑油によって潤滑性を充分に確保できるという利点がある。
次に、上記のように硬質面部12と凹部13とが表面に混在した混在部10をシリンダライナ2からなる摺動部材に形成することによる効果を確認するために行った実験例について以下に説明する。
この実験では、まず、パルス式YAGレーザ加工機5を使用して平均出力7mJ、周波数5000Hzのレーザ光を、加工速度10m/minの加工速度で合金鋳鉄からなるシリンダライナ用素材2aに間欠的に照射することにより、上記シリンダライナ用素材2aの内周面に複数の混在部10を千鳥状に配設するとともに、これら各混在部10に対する凹部13の占有面積率、つまり凹部13の合計面積が各混在部10の表面積に対して占める割合が5%になるように形成する。一方、上記混在部10の占有面積率、つまり各混在部10の合計面積がシリンダライナ2の領域A(図1)の全表面積に対して占める割合は、20%に設定する。なお図4(a)は、このように混在部10の占有面積率が20%である場合の写真を示しており、このときの各混在部10の大きさは、長さ寸法(シリンダライナ2の周方向の寸法)が2mm、幅寸法(シリンダライナ2の軸方向の寸法)が0.1mmの大きさをなしている。上記加工条件によって形成した混在部10の硬質面部12(急冷凝固組織11の表面部)の硬さを測定したところ、レーザ加工前の硬度Hv230(ビッカース硬さ)からHv750に大幅に上昇していることが確認された。
そして、上記のような混在部10が形成されたシリンダライナ用素材2aを、図5に示すように、20mmの幅寸法と130mmの長さとを有する試験片7に切除し、摺動面にクロム(Cr)メッキを施した鋼製のピストンリング6を、147Nの荷重で上記試験片7に当接させつつ、かつ実験開始前に0.2ccのエンジンオイル(型番10W20)を滴下してこれを略均一に引き伸ばした状態で、60分間に亘り長さ方向に往復動させることにより、摩擦係数(μ)の変化状態を測定する実験を行ったところ、本発明の実施例1のデータとして図8に示すようなデータが得られた。なお、本実験における摺動速度は、ピストンリング6の往復動に応じて左右端で一旦0m/sとなり、中央部で最高速度が0.8m/sとなる場合の平均のものである。
上記実施例1の実験データから、油溜まり用の凹部13を有する混在部10をシリンダライナ2の内周面に形成することにより、シリンダライナ2とピストンリング6との摩擦係数を、上記混在部10に凹部13を設けなかった比較例1(すなわち、混在部10の表面部を全て硬質面部12で構成した場合)における実験データと比べて、0.01程度低減できることが確認された。すなわち、混在部10に凹部13を設けた実施例1によれば、凹部13を設けなかった比較例1に比べて約10%の摩擦低減効果が得られることが確認された。したがって、上記のように摺動部材の潤滑性が要求されるシリンダライナ2の領域Aに、油溜まり用の凹部13を有する複数の混在部10を互いに独立した状態で配設することにより、上記領域Aに沿ってピストンリング6が高速で摺動する際にその抵抗を効果的に低減できることが分かった。
次いで、上記各混在部10の合計面積が全表面積に対して占める割合(混在部10の占有面積率)を20%に固定した上で、これら各混在部10の表面部に設けられる凹部13の大きさを、上記パルス式YAGレーザ加工機5におけるレーザ出力の増減等に応じて種々に変化させることにより、上記混在部10に対する凹部13の占有面積率を変化させ、当該占有面積率の変化に伴う上記摩擦係数の変化状態を計測する実験を行ったところ、図9に示すようなデータが得られた。この図9の結果から、上記凹部13の占有面積率を5%,40%,95%に設定した実施例1〜3では、凹部13の占有面積率を0%に設定した(すなわち、凹部13を設けなかった)比較例1に比べて、いずれも摩擦係数を低減できることが確認された。一方、凹部13の占有面積率を100%に設定した比較例2(すなわち、混在部10を全て凹部13で構成したもの。なお、このような構成は、レーザ光の照射を受けて溶融した部位に窒素ガス等のアシストガスを吹付けて当該溶融部分を除去することによって得ることができる。)との比較においては、上記実施例1〜3における摩擦係数の値に大きな差は見られなかった。このことから、上記油溜まり用の凹部13の占有面積率を5%以上に設定すれば、この凹部13を最大限に設けた上記比較例2とほとんど変わらない充分な摩擦低減効果が得られることが確認された。
次に、上記実施例1〜3および比較例1〜2と同じ試験片7(すなわち、凹部13の占有面積率が0,5,40,95,100%にそれぞれ設定された試験片7)に対してピストンリング6を往復動させ、各試験片7における摩耗量を測定することにより、上記凹部13の占有面積率の変化に応じて摩耗量がどのように変化するかを調べる実験を行った。この実験では、試験片7の摩耗を促進するために無添加のベースエンジンオイルを使用するとともに、上記ピストンリング6の当接荷重を392Nに設定した。そして、当該条件下で60分間に亘りピストンリング6を往復動させ、それによって生じた試験片7の摩耗量を測定したところ、図10に示すようなデータが得られた。なお、図10における摩耗断面積とは、試験片7の表面に形成された摩耗消失部分の長さ方向の断面積を幅方向に亘って平均化した値である。
上記図10のデータから、上記各混在部10に対する凹部13の占有面積率を5%,40%,95%に設定した実施例1〜3では、上記凹部13の占有面積率を100%に設定した(すなわち、混在部10が全て凹部13で構成されているために硬質面部12が存在しない)比較例2に比べて、シリンダライナ2の摩耗量(摩耗断面積)を顕著に減少させることができることが確認された。一方、凹部13の占有面積率を0%に設定した(すなわち、混在部10の表面部を全て硬質面部12で構成した)比較例1との比較においては、上記実施例1〜3における摩耗断面積の値に大きな差は見られなかった。このことから、上記凹部13の占有面積率を95%以下に設定すれば(換言すると、硬質面部12の占有面積率を5%以上に設定すれば)、耐摩耗性の硬質面部12を最大限に設けた上記比較例1とほとんど変わらない充分な摩耗低減効果が得られることが確認された。
図11は、上記図9および図10のデータをまとめて示したものである。この図11を参照すれば明らかなように、混在部10に対する凹部13の占有面積率を5%〜95%の範囲に設定すれば、摩擦係数と摩耗断面積との両方を低減できることが分かる。すなわち、凹部13の占有面積率を5%〜95%の範囲に設定することにより、混在部10の表面部において油溜まり用の凹部13と耐摩耗性の硬質面部12とを適正な割合で混在させて潤滑性と耐摩耗性とを好適に両立させることができることが分かった。
なお、上記実施形態では、混在部10の占有面積率、すなわち、各混在部10の合計面積がシリンダライナ2の領域A(図1)の全表面積に対して占める割合を20%に固定したが、この混在部10の占有面積率は20%に限らず、適宜の値に設定可能である。ただし、潤滑性と耐摩耗性とのバランスや、混在部10の面積率の増大(すなわち凹部13の面積率の増大)に伴い潤滑油の消費量が増大すること等を考慮すると、この混在部10の占有面積率は5%以上50%以下が好ましい。
本発明に係る摺動部材の一実施形態を示す説明図である。 上記摺動部材としてのシリンダライナの内周面に形成された混在部の詳細図であり、(a)は断面図、(b)は平面図である。 上記シリンダライナの製造方法を示す工程図である。 (a)は急冷凝固組織(混在部)が形成されたシリンダライナの内周面の写真、(b)は当該急冷凝固組織の詳細を示す平面写真、(c)はその断面写真である。 上記シリンダライナに混在部が形成される過程を説明するための図である。 レーザ出力を変えて混在部を形成した例を示す図である。 本発明に係る摺動部材の摩擦係数を測定するための実験装置の具体例を示す説明図である。 試験時間に応じて変化する摩擦係数の測定データを示すグラフである。 混在部の専有面積率と摩擦係数との対応関係を示す表である。 混在部の専有面積率と摩耗断面積との対応関係を示す表である。 図9および図10のデータをまとめて表示したグラフである。
2 シリンダライナ(摺動部材)
3 ピストン
5 レーザ加工機
6a トップリング
6b オイルリング
10 混在部
11 急冷凝固組織
12 硬質面部
13 凹部

Claims (3)

  1. 相手部材と潤滑油を介して摺接する合金鋳鉄製の摺動部材であって、
    その摺接面の一部に、レーザ光の照射を受けて合金鋳鉄が溶融・凝固した部位に形成された急冷凝固組織の表層部からなる硬質面部と散点状に設けられた油溜まり用の凹部とが表面に混在した混在部が形成され、当該混在部は、互いに独立して千鳥状に複数配設されていることを特徴とする摺動部材。
  2. 請求項1記載の摺動部材において、
    上記混在部に対する上記凹部の占有面積率が5%以上95%以下に設定されていることを特徴とする摺動部材。
  3. 請求項1または2記載の摺動部材において、
    上記摺動部材は、レシプロ式エンジンのシリンダライナであり、
    上記混在部は、該シリンダライナの内周面のうち、ピストンが上死点にあるときのトップリング位置からピストンが下死点にあるときのオイルリング位置に至る領域の少なくとも一部に形成されていることを特徴とする摺動部材。
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