JP4332908B2 - 常温硬化光触媒塗膜形成剤、これを用いた光触媒含有塗膜の形成方法及び光触媒含有塗膜 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、常温硬化可能な第1層用のプライマー組成物を第1層用塗料として使用し、光触媒用酸化チタンを含む塗料を第2層用塗料として使用した常温硬化可能な光触媒塗膜形成剤、これを用いた光触媒含有塗膜の形成方法及び光触媒含有塗膜に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガラス、金属、セラミックス、コンクリート、プラスチック等からなる建築物外壁材や橋梁等の表面の汚染や腐食を防止するために、従来より、フッ素樹脂系塗料やポリウレタン系塗料等が使用されている。
しかし、これらの塗料が使用された外壁等は、時間の経過に従って表面が汚染されるため、定期的にクリーニングを行ったり、塗り替える等の必要が生じ、メンテナンスのために費用がかかるという問題があった。また、例えば、ガラス窓のクリーニング等においては、危険を伴うという問題もあった。
【0003】
これらの問題を解決するために、最近、酸化チタンを含有し、セルフクリーニング機能を有する塗膜を形成することができる塗料が注目されている。
この塗料を使用して塗膜を形成すると、塗膜中のアナターゼ型酸化チタンが太陽光線に含まれる紫外線を吸収し、これにより電子と正孔とが生成する。生成した正孔は、強い酸化力を有するため、塗膜表面に付着した有機物等を分解し、これにより塗膜表面の有機物による汚染を防止することができる。
【0004】
しかし、酸化チタンはこのような強力な酸化作用を有するため、塗膜中にプラスチック等の有機物がバインダーとして含まれていると、この有機物は酸化チタンにより分解され易くなり、塗膜の劣化の原因となる。従って、プラスチック等の有機物をバインダーとして用いることは困難である。
【0005】
そこで、シリカゾルやアルミナゾル等の無機物をバインダーとして用いた塗料も検討されているが、これらの塗料は、プラスチック、金属、ガラス等との密着性に劣るという問題があり、現在は、シリコンを含有するオルガノシラン系化合物が主に検討されている。
【0006】
しかしながら、これらオルガノシラン系塗料は、塗膜を形成した後、熱を加えて硬化させる形式のものが大部分であるため、塩化ビニル樹脂等の熱に弱いプラスチック基材の場合には、加熱により塗膜を硬化させようとすると基材自身が熱により変形する等の問題がある。
【0007】
また、酸化チタンを含有する塗料をプラスチック等の基材に直接塗布すると、酸化チタンの強力な酸化作用のため、基材自身が酸化されて劣化する。そのため、第1層として、酸化チタンを含有しない塗膜を形成する必要があるが、基材との密着性に優れるとともに、上の層である酸化チタンを含有する層との密着性にも優れる第1層を常温で形成するのが困難であるという問題もある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記に鑑み、常温硬化が可能で、基材及び上の層である酸化チタンを含有する層に対する密着性に優れた塗膜を安価に形成することができるプライマー組成物からなる第1層用の塗料と第2層を形成するための酸化チタンを含有する塗料との2種からなる光触媒塗膜形成剤、該光触媒塗膜形成剤を用いた光触媒含有塗膜の形成方法、及び該光触媒含有塗膜の形成方法により形成された光触媒含有塗膜を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の光触媒塗膜形成剤は、プライマー組成物からなる第1層用塗料と、バインダーとして、メチル基を含むオルガノモノシラン及びメチル基を含むオルガノシランオリゴマーからなる群から選択される少なくとも1種を含有するとともに、硬化触媒として、酸、アルカリ、亜鉛化合物、チタン化合物及びジルコニウム化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含有し、さらに、光触媒用酸化チタンを含有する組成物からなる第2層用塗料との2つの塗料から構成されることを特徴とする常温硬化光触媒塗膜形成剤であって、
前記プライマー組成物は、光触媒用酸化チタンを含む塗膜を形成するために、第1層用として用いられる組成物であって、シリコーン変性ウレタン樹脂を含む常温硬化光触媒塗膜形成剤である。
以下に本発明を詳述する。
【0010】
上記プライマー組成物は、光触媒用酸化チタンを含む塗膜を形成するために、第1層用として用いられる組成物である。
このような第1層用の組成物を用いるのは、上記したように、基材上に酸化チタンを含む塗膜を直接形成すると、酸化チタンの強力な酸化作用のため、基材自身が酸化されて劣化する。そこで、まず、基材上に酸化チタンにより劣化しない第1層を形成し、この第1層の上に、光触媒用酸化チタンを含む塗膜を形成する必要があるからである。
上記第1層はプライマー層とも呼ばれ、一般的に、実際に形成したい塗膜の基材との密着性等を改善するために、その下塗り層として形成される。そこで、本発明では、上記第1層用の組成物をプライマー組成物としている。
【0011】
光触媒用酸化チタンを含む塗膜を形成するための塗料としては、塗布、乾燥させた後、光触媒として機能することが可能な酸化チタンを含有する塗料であれば特に限定されず、公知の種々の塗料等が挙げられるが、下記する本発明の常温硬化光触媒用塗膜形成剤において、第2層用として使用する塗料を用いることにより、プライマー層である上記第1層の上に良好な光触媒機能を有する塗膜を形成することができる。
【0012】
上記プライマー組成物に含まれるシリコーン変性ウレタン樹脂は、低分子量のシリコーン樹脂と低分子量のウレタン樹脂とのブロック共重合体であり、上記シリコーン樹脂と上記ウレタン樹脂とは、例えば、両樹脂の末端に存在するイソシアネート基とシラノール基との反応により形成された結合(−NHCOOSi−)で結合されている。
【0013】
上記シリコーン樹脂の種類は特に限定されず、例えば、末端に反応性基を有する低分子量のシリコーン樹脂であれば、いずれのものも使用が可能である。
また、ウレタン樹脂の種類も限定されず、例えば、通常、塗料用のウレタン樹脂として使用されている種類のもので、低分子量のものであればいずれのものも使用が可能である。
【0014】
上記プライマー組成物は、上記シリコーン変性ウレタン樹脂のほかに、溶剤を含んでいる。
上記溶剤としては特に限定されず、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール等のアルコール類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、ノナン、デカン等の脂肪族系炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族系炭化水素類、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のエーテル類、アセトン、メチルメソブチルケトン等のケトン類等が挙げられる。
これら溶剤のなかでは、塗膜を形成した後、塗膜中又は表面に溶剤が微量残留した場合でも、第2層の塗料組成物との親和性に優れる酢酸エステル類、芳香族系炭化水素類が好ましい。
これら溶剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
上記プライマー組成物中のシリコーン変性ウレタン樹脂の含有量は、固形分換算で10〜70重量%が好ましく、溶剤の含有量は、30〜90重量%が好ましい。
【0016】
上記プライマー組成物は、上記溶剤のほかに、例えば、オルガノモノシラン等のシランカップリング剤;オルガノシランオリゴマー;タルク、炭酸カルシウム等の体質顔料等を含んでいてもよい。また、上記プライマー組成物がオルガノモノシラン等を含む場合には、硬化触媒として、酸、アルカリ、亜鉛化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物等を含んでいてもよい。
【0017】
上記シランカップリング剤は、一般式(1):
R1 4-a Si(OR2 )a
(式中、R1 は、有機基を表し、R2 はメチル基又はエチル基を表し、aは1、2又は3である。)で表される。
【0018】
上記シランカップリング剤は、上記シリコーン変性ウレタン樹脂等の有機材料と反応可能な有機基を有するとともに、無機材料と反応可能なアルコキシル基(OR2 )を有するため、基材や上の層との密着性により優れる第1層塗膜を形成することができる。
【0019】
上記有機基としては、例えば、アミノ基、エポキシ基、メタクリロキシ基、アルキル基、フェニル基等が挙げられる。
上記オルガノシランオリゴマーは、上記シランカップリング剤が重合した重合体であって、Si原子同士は、酸素を介して、Si−O−Siの形で結合され、Si原子に、上記した有機基、アルコキシル基等が結合しているオリゴマーをいう。
【0020】
上記プライマー組成物を用いて基材表面に塗膜を形成する際には、上記プライマー組成物を、プラスチック板等からなる外壁材等に塗布して塗膜を形成した後、常温で数十分〜数時間乾燥させる。これにより、べたつきがなく、基材との密着性に優れた塗膜を形成することができる。
【0021】
上記塗料による塗膜の形成方法としては特に限定されず、例えば、スプレーコーティング法、ディップコーティング法、フローコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、刷毛塗り、スポンジ塗り等の方法が挙げられる。
塗膜形成後に、加熱処理を施すことにより、より早く乾燥、硬化させることができるが、このような加熱処理を施さなくても、優れた特性の塗膜を形成することができるところに本発明の特徴がある。
【0022】
本発明の常温硬化光触媒塗膜形成剤においては、上記プライマー組成物を第1層用の塗料として使用する。すなわち、本発明の常温硬化光触媒塗膜形成剤は、上記プライマー組成物からなる第1層用塗料と、バインダーとして、メチル基を含むオルガノモノシラン及びメチル基を含むオルガノシランオリゴマーからなる群から選択される少なくとも1種を含有するとともに、硬化触媒として、酸、アルカリ、亜鉛化合物、チタン化合物及びジルコニウム化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含有し、さらに、光触媒用酸化チタンを含有する組成物からなる第2層用塗料との2つの塗料から構成されている。
【0023】
プライマー組成物については、上記したので、ここではその説明を省略するが、上記プライマー組成物を使用することにより形成される塗膜は、上記したように、基材との密着性に優れるとともに、第2層との密着性にも優れる。
また、上記プライマー組成物からなる第1層用塗料を用いて、基材表面に第1層を形成することにより、光触媒作用を有する酸化チタンを含有する第2層が、直接、基材と接触しないため、塩化ビニルのようなプラスチック製基材であっても、酸化による基材の劣化が進行しない。
【0024】
また、ソーダガラスのようなアルカリを含有する基材に、塗膜を形成した場合であっても、上記第1層により、基材からのアルカリの溶出を抑えることができ、アルカリによる酸化チタンの光触媒機能の低下を防止することができる。
また、石膏や発泡コンクリート等の多孔性基材表面に第1層を形成することににより、第2層が基材中にしみこむのを防止することができる。
【0025】
上記第2層用塗料のバインダーとして使用されるメチル基を含むオルガノモノシランは、一般式(2):
(CH3 )4-b SiXb
(式中、Xは、アルコキシル基又はハロゲン原子であり、bは、2又は3である)で表される。
上記アルコキシル基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられ、上記ハロゲン原子としては、例えば、Cl、Br等が挙げられる。
【0026】
一般式(2)で表されるオルガノモノシランとしては特に限定されず、例えば、メチルトリクロルシラン、メチルトリブロムシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリt−ブトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、ジメチルジブロムシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0027】
上記バインダーとして使用されるメチル基を含むオルガノシランオリゴマーは、上記オルガノモノシラン等が重合した重合体であって、Si原子同士は、酸素を介して、Si−O−Siの形で結合され、Si原子に、メチル基、アルコキシル基等が結合しているオリゴマーをいう。
【0028】
上記オルガノシランオリゴマーは、通常、数百以下の重合度を有するものであるが、20以上の重合度を有し、分子量が1700以上のものが好ましい。
これらメチル基を含むオルガノモノシラン及びメチル基を含むオルガノシランオリゴマーは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
上記第2層用塗料の硬化触媒としては、例えば、塩酸、硫酸等の酸、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ、酸化亜鉛、塩化亜鉛等の亜鉛化合物、四塩化チタン、チタニウムテトラ−n−ブトキシド、チタニウムテトラ−i−プロポキシド、チタニル硫酸等のチタン化合物、四塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム等のジルコニウム化合物等が挙げられる。
これらのなかでは、チタン化合物が好ましく、四塩化チタンがより好ましい。これらの触媒は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
上記第2層用塗料の光触媒用酸化チタンとしては、アナターゼ型又はルチル型のものが好ましく、アナターゼ型のものがより好ましい。この光触媒用酸化チタンとしては、例えば、微粒子状の酸化チタンを含有するチタニアゾル、酸化チタンの粉末微粒子等が挙げられる。
【0031】
酸化チタンの粒径は特に限定されないが、この酸化チタンは、塗膜形成後の塗膜中に含まれるものであるため、数十μm程度以下のものが好ましい。
上記酸化チタンとしては、例えば、堺化学社製のCBS、CBS−M等のチタニアゾルが挙げられる。
【0032】
上記第2層用塗料は、通常、上記バインダー、上記硬化触媒及び上記酸化チタンのほかに溶剤を含む。
上記溶剤としては特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール等のアルコール類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、ノナン、デカン等の脂肪族系炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族系炭化水素類、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類、アセトン、メチルメソブチルケトン等のケトン類等が挙げられる。
これら溶剤のなかでは、室温でも比較的大きな蒸気圧を有し、乾燥時に蒸発し易いものが好ましく、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、nーブタノール等が好ましい。
これら溶剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
上記第2層用塗料中には、例えば、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、マイカ、アルミナ等の体質顔料が含まれていてもよい。
また、着色された塗膜を形成したい場合には、カーボンブラック、酸化鉄、黄鉛、酸化クロム等の着色顔料を添加してもよい。塗膜中にこれらの体質顔料が含まれていると、第1層に対する密着性が増加するとともに、硬度が増加する。
これら体質顔料は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
上記第2層用塗料中のバインダー含有量は、バインダー中のSiをSiO2 に換算した値(以下、「SiO2 換算値」という)で5〜15重量%が好ましい。また、上記第2層用塗料におけるバインダーと硬化触媒(Ti化合物を使用した場合)との割合は、バインダーのSiO2 換算値100重量部に対し、硬化触媒中のTiをTiO2 に換算した値(以下、TiO2 換算値」という)で、0.3〜20重量部が好ましく、0.8〜5.0重量部がより好ましい。
【0035】
上記第2層用塗料中の酸化チタンの含有量は、TiO2 /(バインダーのSiO2 換算値)で、90/10〜10/90が好ましく、80/20〜20/80がより好ましい。
上記第2層用塗料が顔料を含有する場合の含有量は、顔料/(バインダーのSiO2 換算値)で、60/40〜10/90が好ましい。
【0036】
上記第2層用塗料を用いる第2層塗膜の形成方法は、第1層塗膜の形成方法とほぼ同様であり、第1層の塗膜を形成し、充分乾燥させた後、第2層の塗膜を形成する。
【0037】
上記プライマー組成物又は常温硬化光触媒塗膜形成剤が対象とする基材は特に限定されず、例えば、ガラス、金属、セラミックス、コンクリート、プラスチック等からなる建築物外壁材や橋梁等が挙げられる。上記常温硬化光触媒塗膜形成剤は、紫外線が照射される環境にある部材であれば、上記以外のものにも使用することができる。
【0038】
上記第2層用の塗料は、光触媒用酸化チタンを含有するため、形成された塗膜は強力な酸化作用を有し、塗膜表面に種々の有機物からなる汚物が付着した際には、上記酸化作用により有機物を分解し、塗膜表面が汚染されるのを防止することができる。
なお、形成された塗膜は、光が照射されると酸化チタンからなる光触媒が光励起し、その表面が親水性を呈するようになる。従って、通常、光照射の後、この塗膜に水を接触させると、その接触角は、通常、10°以下となる。
【0039】
また、本発明の常温硬化光触媒塗膜形成剤を使用することにより、第1層及び第2層とも、形成した塗膜を常温で乾燥、硬化させることができるので、加熱により変形し易いプラスチック等を基材に用いた場合でも、塗膜を形成することが可能であり、かつ、塗膜形成時に加熱処理用の設備を必要としないため、安価に塗膜を形成することができる。上記常温硬化光触媒塗膜形成剤を使用した塗膜で、第1層及び第2層からなり、第2層が光触媒を含有する塗膜の形成方法、及び、上記方法により形成された光触媒含有塗膜も本発明の一つである。
【0040】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0041】
実施例1
まず、チタニアゾル(堺化学社製CSB、アナターゼ型TiO2 の含有量:40重量%、硝酸酸性:pH1以下)100重量部に、純水600重量部とアルコール混合溶液(エタノール/i−プロパノール/n−ブタノール=45/45/10(重量比))280重量部を加えてよく攪拌した後、更にメチルトリメトキシシラン23重量部を加え、よく攪拌することにより第2層用の塗料組成物を調製した。この塗料組成物中のチタニアゾルのTiO2 換算値と、メチルトリメトキシシランのSiO2 換算値との割合(TiO2 /SiO2 )は、80/20であった。
【0042】
次に、基材として、表面を充分に洗浄したアクリル板(50×50×0.8mm)を用い、このアクリル板にシリコーン変性ウレタン樹脂溶液(東芝シリコーン社製 トスプライムC)をディップコーティング法を用いて塗布し、常温で30分乾燥させることにより第1層塗膜を形成した。
【0043】
次に、第1層が形成されたアクリル板に、第2層用の塗料組成物をディップコーティング法を用いて塗布し、その後常温で一晩乾燥させることにより、第2層塗膜を形成した。
【0044】
評価方法
(1)室温硬化性(第1層、第2層)
形成された塗膜について、以下のような方法で常温硬化性について、評価を行った。
乾燥性
形成された塗膜に指で触れることにより、べとつき具合を調べ、以下のように評価した。
○:塗料が指に全然付着しない
△:塗料が指に少し付着する
×:塗料が指にべっとりと付着する
【0045】
密着性
塗膜にセロハンテープを圧着した後、一気にセロハンテープを剥がし、セロハンテープへの塗膜の付着具合により、塗膜の密着性を評価した。
○:セロハンテープに塗膜がほとんど付着しない
△:セロハンテープに塗膜が少し付着する
×:セロハンテープに塗膜がほぼ全部付着する
【0046】
(2)光触媒性(第2層)
親水性
上記実施例で作製した試料の塗膜に、10Wのブラックライトブルー蛍光灯(東芝社製 FL15BLB)を用いて、1.2mW/cm2 の照度で8時間紫外線を照射した。次に、試料表面の水との接触角を測定し、以下のような基準で評価を行った。
○:水との接触角が10°以下である
△:水との接触角が11〜50°である
×:水との接触角が51°以上である
評価結果を表1に示した。
【0047】
実施例2〜12
基材として、表1に示した材料を用いた他は、実施例1と同様に、基材上に第1層及び第2層の塗膜を形成し、実施例1と同様の評価を行った。
評価結果を表1に示した。
【0048】
【表1】
【0049】
比較例1
アクリル板に、シラン系プライマー組成物(東芝シリコーン社製 トスプライムD)をディップコーティング法を用いて塗布し、常温で30分乾燥させることにより、第1層の塗膜を形成した。
次に、第1層が形成されたアクリル板に、実施例1で用いた第2層用の塗料組成物をディップコーティング法を用いて塗布しようとしたが、表面の撥水性が強いため、上記第2層用の塗料組成物を弾き、殆ど塗布層を形成することができなかった。
【0050】
比較例2
アクリル板に、別のシラン系プライマー組成物(東芝シリコーン社製 トスプライムE)をディップコーティング法を用いて塗布し、常温で30分乾燥させることにより、第1層の塗膜を形成した。
次に、第1層が形成されたアクリル板に、実施例1で用いた第2層用の塗料組成物をディップコーティング法を用いて塗布しようとしたが、やはり表面の撥水性が強いため、上記第2層用の塗料組成物を弾き、殆ど塗布層を形成することができなかった。
【0051】
表2に示した評価結果より明らかなように、本発明の常温硬化光触媒塗膜形成剤を用いることにより、塗膜を常温で乾燥、硬化させることができ、硬化塗膜は、光触媒機能を有し、基材に対する密着性に優れたものとなった。また、光触媒機能を有する第2層中の有機物は、酸化チタンにより分解されることはなかった。
【0052】
【発明の効果】
本発明の常温硬化光触媒塗膜形成剤は、上述の構成よりなるので、常温硬化が可能であるとともに、基材に対する密着性に優れた光触媒含有塗膜を安価に形成することができる。上記常温硬化光触媒塗膜形成剤を用いた光触媒含有塗膜の形成方法も、本発明の一つである。
また、上記方法により形成された本発明の光触媒含有塗膜は、上述の構成よりなるので、光触媒機能を有し、塗膜に付着した有機物を分解、除去することができる。
Claims (3)
- プライマー組成物からなる第1層用塗料と、バインダーとして、メチル基を含むオルガノモノシラン及びメチル基を含むオルガノシランオリゴマーからなる群から選択される少なくとも1種を含有するとともに、硬化触媒として、酸、アルカリ、亜鉛化合物、チタン化合物及びジルコニウム化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含有し、さらに、光触媒用酸化チタンを含有する組成物からなる第2層用塗料との2つの塗料から構成されることを特徴とする常温硬化光触媒塗膜形成剤であって、
前記プライマー組成物は、光触媒用酸化チタンを含む塗膜を形成するために、第1層用として用いられる組成物であって、シリコーン変性ウレタン樹脂を含む
常温硬化光触媒塗膜形成剤。 - 請求項1記載の常温硬化光触媒塗膜形成剤を用いた光触媒含有塗膜の形成方法であって、第1層用塗料を基材上に塗布し、常温で乾燥、硬化させて第1層を形成した後、前記第1層上に第2層用塗料を塗布し、常温で乾燥、硬化させ、前記第1層上に第2層を形成することを特徴とする光触媒含有塗膜の形成方法。
- 基材上に、シリコーン変性ウレタン樹脂を含む塗膜からなる第1層と、バインダーとして、メチル基を含むオルガノモノシラン及びメチル基を含むオルガノシランオリゴマーからなる群から選択される少なくとも1種を含有するとともに、硬化触媒として、酸、アルカリ、亜鉛化合物、チタン化合物及びジルコニウム化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含有し、さらに、光触媒用酸化チタンを含有する塗膜からなる第2層とが順次形成されたことを特徴する光触媒含有塗膜。
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