JP4331909B2 - バイポーラ膜 - Google Patents

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Description

技術分野
本発明は、特に低電圧で水を解離しうるバイポーラ膜に関する。
背景技術
バイポーラ膜は、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜が貼合わさった構造をしており、水をプロトンと水酸イオンに解離することができるイオン交換膜である。その製造方法も種々提案されている。例えば、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜を、ポリエチレンイミン−エピクロルヒドリンの混合物で張り合わせ硬化接着する方法(特公昭32−3962号公報)、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜をイオン交換性接着剤で接着させる方法(特公昭34−3961号公報)、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜とを微粉のイオン交換樹脂、陰または陽イオン交換樹脂と熱可塑性物質とのペースト状混合物を塗布し圧着させる方法(特公昭35−14531号公報)、陽イオン交換膜の表面にビニルピリジンとエポキシ化合物からなる糊状物質を塗布し、これに放射線照射することによって製造する方法(特公昭38−16633号公報)、陰イオン交換膜の表面にスルホン酸型高分子電解質とアリルアミン類を付着させた後、電離性放射線を照射架橋させる方法(特公昭51−4113号公報)、イオン交換膜の表面に反対電荷を有するイオン交換樹脂の分散系と母体重合体との混合物を沈着させる方法(特開昭53−37190号公報、特表平1−502673号公報)、化学的に活性な部分を含有するノニオン層を形成し、該活性な部位をカチオンまたはアニオンの交換基に変換導入する方法(特開昭60−210638号公報)、ポリエチレンフィルムにスチレン、ジビニルベンゼンを含浸重合したシート状物をステンレス製の枠にはさみつけ、一方の側をスルホン化させた後、シートを取り外して残りの部分にクロルメチル化し、次いでアミノ化処理する方法(米国特許3562139号明細書)などが提案されている。
また、特定の金属イオンを、陰陽イオン交換膜の表面に塗り両イオン交換膜を重ね合わせてプレスすると水解離電圧の低いバイポーラ膜が出来ること(Electrochim.Acta,Vol.31 1175−1176(1986))も報告されている。しかし、こうして作ったバイポーラ膜は比較的早く水解離電圧が上昇してしまったり、陰陽イオン交換膜間に気泡水泡が発生するという欠点や、又バイポーラ膜自体も容易に陰陽イオン交換膜に分かれてしまうという問題があった。
また、無機イオン交換体を陰陽イオン交換膜の間に存在させるバイポーラ膜が提案されている(特開平6−172557号公報、特開平6−172558号公報、特開平6−263896号公報、特開平7−3051号公報、特開平7−11021号公報、特開平7−11022号公報)。しかし、このバイポーラ膜は安定性に欠けるという問題があった。
さらに、金属酸化物の微粒子を含む陰イオン交換体と陽イオン交換膜とが接合したバイポーラ膜(特開平8−269217号公報)、陰イオン交換膜と陽イオン交換膜の間に中間層を設け、中間層が金属酸化物の微粒子および陰イオン交換基からなるバイポーラ膜(特開平10−87853号公報)が提案されている。これらはかなり良好な性能を示すものの高電流密度下で水解離電圧が上昇するという問題があった。
本発明は、高電流密度下で長期間低い水解離電圧、高い電流効率を示し、しかもブリスター、膜剥がれ等を発生しない耐久性のよいバイポーラ膜を提案するものである。
発明の開示
本発明者らは、上記した問題に鑑み鋭意研究の結果、高電流密度下で水の解離電圧の上昇が小さく、かつ電流効率が高くしかも耐久性に優れたバイポーラ膜が容易に得られることを見いだして、本発明を提案するに至ったものである。
即ち、本発明は、陽イオン交換膜および陰イオン交換膜を接合したバイポーラ膜において、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜との接合界面に元素番号20〜90の金属のイオンまたは該金属の錯イオンを有するイオン交換樹脂粒子が存在することを特徴とするバイポーラ膜を提供するものである。
本発明は、また、陽イオン交換膜および陰イオン交換膜を接合したバイポーラ膜において、陽イオン交換膜および陰イオン交換膜の接合界面に面した少なくとも一方の表面に元素番号20〜90の金属のイオンまたは該金属の錯イオンを有するイオン交換基が存在し、且つ陽イオン交換膜と陰イオン交換膜との接合界面に元素番号20〜90の金属のイオンまたは該金属の錯イオンを有するイオン交換樹脂粒子が存在することを特徴とするバイポーラ膜をも提供するものである。
本発明のバイポーラ膜は、陽イオン交換膜および陰イオン交換膜を接合してなる。上記の陽イオン交換膜は、特に限定されず、公知の陽イオン交換膜を用いることが出来る。例えば、スチレン−ジビニルベンゼン樹脂、ポリスルホン樹脂などにスルホン酸基、カルボン酸基等の陽イオン交換基を導入した膜を用いることが出来る。特に、バイポーラ膜の用途の点から酸性下にても交換基が解離しているスルホン酸基を有する陽イオン交換膜が望ましい。また、陽イオン交換膜は、重合型、均一型、不均一型、あるいは補強心材の有無や製造方法に由来する陽イオン交換膜の種類、形式など如何なるものであってもよい。さらに、陽イオン交換膜のなかに陰イオン交換基を若干有する様なイオン交換膜であっても陽イオンの輸率が90%以上であれば本発明の陽イオン交換膜として十分に使用しうる。
陽イオン交換膜の厚みは特に制限されないが、一般には10〜400μm、好ましくは30〜200μmである。イオン交換容量は、電圧降下や輸率の関係から0.5〜3.0meq/gであることが好ましく、さらに、0.7〜2.5meq/gであることがより好ましい。また、バイポーラ膜にブリスターが発生し難くするために、陽イオン交換膜の表面には細かい凹凸をサンドペーパーなどで予め付けておくのが望ましい。
次に、本発明における陰イオン交換膜は特に限定されず、公知の陰イオン交換膜を用いることが出来る。例えば、スチレン−ジビニルベンゼン樹脂、ポリスルホン樹脂などに4級アンモニウム基、ピリジニウム基、アミノ基等の陰イオン交換基を導入した膜を用いることが出来る。特に、バイポーラ膜の用途の点からアルカリ性下にても交換基が解離している4級アンモニウム基を有し、かつアルカリ耐久性の陰イオン交換膜が望ましい。また、陰イオン交換膜は、重合型、均一型、不均一型、あるいは補強心材の有無や製造方法に由来する陰イオン交換膜の種類、形式など如何なるものであってもよい。さらに、陰イオン交換膜のなかに陽イオン交換基を若干有する様なイオン交換膜であっても陰イオンの輸率が90%以上であれば本発明の陰イオン交換膜として十分に用いうる。
陰イオン交換膜の厚みは特に制限されないが、一般には10〜400μm、好ましくは30〜200μmである。イオン交換容量は、電圧降下や輸率の関係から0.4〜2.5meq/gであることが好ましく、さらに0.6〜2.0meq/gであることが好ましい。また、バイポーラ膜にブリスターが発生し難くするために、陰イオン交換膜の表面には細かい凹凸をサンドペーパーなどで予め付けておくのが望ましい。
本発明のバイポーラ膜は、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜との接合界面に、元素番号20〜90の金属のイオンまたは該金属の錯イオンを有するイオン交換樹脂粒子(以下、単にIER粒子ともいう)が存在することが最大の特徴点である。
本発明にいうIER粒子は有機イオン交換体の粒子ならどんなものでも良く、陽イオン交換樹脂、陰イオン交換樹脂、あるいは両性イオン交換樹脂、キレート形成能を持つ官能基を導入したキレートイオン交換樹脂等で、水に不溶性のものであれば、何ら制限なく使用できる。
上記のイオン交換樹脂としては、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル等とジビニルベンゼン等との共重合物や、セルロース等を素材樹脂とするものなどが挙げられ、スルフォン酸基、カルボキシル基、フェノール性水酸基等の陽イオン交換基の一種以上を有した陽イオン交換樹脂;アミノ基、置換アミノ基、4級アンモニウム基等の一種以上を有した陰イオン交換樹脂;および両性イオン交換樹脂;イミノジ酢酸基のようなキレートを形成しうる基を有するキレートイオン交換樹脂などを挙げることができる。
また、IER粒子は、一次粒子径が小さく比表面積が大きいものが有効である。このようなことから、IER粒子の平均一次粒子径は0.02〜10μmであることが好ましく、さらに0.05〜5μmであることがより好ましい。これらのIER粒子は、通常、凝集粒子を形成している。IER粒子は、取扱い時の利便性から凝集粒子の平均粒子径が0.5〜10μmであることが望ましい。
IER粒子は、元素番号20〜90の金属のイオンまたは該金属の錯イオン(以下、これらを単に金属イオン等ともいう)を有する。このような特定のイオンをIER粒子が有することにより、高電流密度下で長期間低い水解離電圧と高い電流効率を有し、しかもブリスターや膜剥がれ等を発生しない耐久性のよいバイポーラ膜とすることができる。元素番号が20未満の金属では、本発明の目的である高電流密度下での低い水解離電圧と高い電流効率を達成することができず、また、元素番号が90を越える場合は、金属の入手が困難となって実用的ではない。
金属イオン等は、通常のイオン交換により、また、キレート結合によるイオン交換によりIER粒子に結合している。
本発明においては、元素番号20〜90の金属である限り、何の制限もなく用いうるが、特に周期律表第IV族および第VIII族の金属を好適に用いうる。本発明において好適な金属を例示すれば、例えば、鉄(II、III)、チタン(IV)、スズ(II、IV)、ジルコニウム(IV)、ニッケル(II)、パラジウム(III)、ルテニウム(III)などを挙げることができる。
上記のIER粒子は、通常は、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜の接合界面に層を形成して存在する。層の厚みは一定でなくても良い。IER粒子の層の平均厚さは、一般には0.02〜100μmであることが、水解離電圧を低くし、また、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜との接着強度を保持するために好ましい。水解離電圧と剥がれやすさを勘案すると、IER粒子層の平均厚さは、0.05〜50μmであることがより好ましい。
IER粒子は、陽イオン交換膜および陰イオン交換膜の接合界面に一定厚みで存在させることもできるが、陽イオン交換膜および陰イオン交換膜の少なくとも一方の表面に微細な凹凸を形成させ、これらを接合したときに凹部によって形成される間隙により多くのIER粒子を偏在させることが好ましい。
本発明においては、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜との接合界面全体の面積に占めるIER粒子層の面積の割合は、水解離電圧の上昇を抑え、且つ、陰陽イオン交換膜間の接着強度を維持するために、1〜99%、さらに2〜98%であることが好ましい。陽イオン交換膜と陰イオン交換膜との接合界面全体に占めるIER粒子層の面積の割合は、膜面に平行な平面に投影される接合界面とIER粒子層のそれぞれの面積の割合として表わされる。
IER粒子のイオン交換容量は特に制限されないが、一般には、0.5〜5.0meq/gであることが好ましく、さらに、1.0〜3.0meq/gであることがより好ましい。金属イオン等は、その内、0.1〜100%、好ましくは0.2〜95%の範囲でイオン交換していることが、本発明の効果が顕著であるために好適である。
本発明は、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜の接合界面に金属イオン等を有するイオン交換樹脂粒子を存在させ、さらに、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜の接合界面に面した少なくとも一方の表面に金属イオン等を有するイオン交換基を存在させたバイポーラ膜をも提供する。
陽イオン交換膜と陰イオン交換膜の接合界面に面した少なくとも一方の表面に存在させたイオン交換基の金属イオン等は、IER粒子の有する金属イオン等についての説明がそのまま適用される。
このような金属イオン等を有する陰陽イオン交換膜を得る方法は公知のイオン交換法が採用でき、一般の陰陽イオン交換膜を元素番号20〜90の金属の塩溶液または該金属の錯塩溶液に浸漬する方法、陰陽イオン交換膜に上記金属塩溶液または金属錯塩溶液を塗布、噴霧する方法などによって達成される。このような陰陽イオン交換膜における金属イオン等は、該膜の厚み方向に均一に分布している必要はなく、少なくとも相手側のイオン交換膜を接着する表面に存在させれば良い。また該イオン交換する金属イオン等の割合は一般に全イオン交換容量の0.001〜100%とくに0.01〜50%が好ましい。
本発明のバイポーラ膜はどのような方法で製造しても良いが、一般には次に述べるような方法で製造される。
(1)陽(又は陰)イオン交換膜の一面上にIER粒子層を存在させ、その上に溶媒に溶解した陰(陽)イオン交換基を有する高分子体溶液もしくは該高分子体の前駆体溶液を流延、塗布又は噴霧し、陰(又は陽)イオン交換膜を形成する方法。
(2)陽(又は陰)イオン交換膜の一面上にIER粒子層を存在させ、その上に陰(又は陽)イオン交換膜を熱圧着または接着により積層する方法。
以下に、本発明のバイポーラ膜の好適な製造方法を説明する。即ち、陽イオン交換膜の表面のイオン交換基を金属イオン等にイオン交換し、その後乾燥させ、陽イオン交換膜の一方の表面に、金属イオン等をイオン交換したIER粒子を存在させ、これを押圧することにより前記陽イオン交換膜の表面にIER粒子層を形成させた後、陰イオン交換基を有する高分子体溶液もしくは該高分子体の前駆体溶液を流延し、これを固化させて陰イオン交換膜層を形成させる方法を具体的に説明する。
まず、陽イオン交換膜としては、前記したようなスチレン−ジビニルベンゼン樹脂、ポリスルホン樹脂などをスルホン化した陽イオン交換膜が好ましい。陽イオン交換膜を元素番号20〜90の金属の塩溶液中に浸漬し、表面のイオン交換基を元素番号20〜90の金属イオンによってイオン交換させた陽イオン交換膜を得る。陽イオン交換膜は水洗した後、乾燥させたものを用いることが陽イオン交換膜と陰イオン交換膜の接着強度向上の点から好ましい。また、陽イオン交換膜のIER粒子層を形成する側の面は、陰陽イオン交換膜の接合強度を向上させる点からサンドペーパー、サンドブラスト等により粗面化されていることが好ましい。粗面化の程度は凹部が0.1〜60μmの深さを有する程度で良い。また粗面化の程度は、粗面化により形成された凹部(もとの膜表面ではない部分)の膜面に平行な平面への投影面積の全膜面積に対する割合は、1〜99%であることが好ましい。
IER粒子を陽イオン交換膜の表面に存在させる方法としては、
(1)IER粒子の懸濁溶液に陽イオン交換膜を浸漬する方法
(2)IER粒子を塗布、噴霧、スクリーン印刷、熱転写などを用いて陽イオン交換膜面上に付着させる方法
(3)陽イオン交換膜の一方の表面にIER粒子を存在させ、これを押圧することにより陽イオン交換膜の表面にIER粒子の層を形成させる方法
等を挙げることができる。この内(3)の方法が特に好ましい。この方法によれば、陽イオン交換膜の伸縮がないので後処理工程がスムーズに進み、またいまだ理由は不明であるが、得られるバイポーラ膜が性能の優れたものとなる。
具体的には、粗面化した陽イオン交換膜の上にIER粒子を直接ふりかけ広げる等してIER粒子を存在させた後、指、スキージなどで塗り込む等の方法でIER粒子を押圧することにより陽イオン交換膜の表面にIER粒子を一部埋め込むようにしてIER粒子の層を形成させる。押圧の圧力は1〜1000kPaであることが好ましく、さらに好ましくは5〜100kPaである。圧力が小さすぎるとIER粒子と陽イオン交換膜との密着性が不十分となり、強すぎると押圧し難くなる。このときIER粒子層の膜面占有面積が1〜99%、層の厚みが0.02〜100μmになるようにすると好適である。
次いで、この上に陰イオン交換膜を形成させる。陽イオン交換膜の表面に形成させる陰イオン交換基を有する高分子体は次のようなものが使用される。
(1)陰イオン交換基を有する高分子体は主たるイオン交換基が強塩基性のものであってしかも耐アルカリ性を有するものが望ましい。そのような陰イオン交換基としては4級塩基を挙げることができる。4級塩基を主たるイオン交換基とする高分子体を用いることは、水の分解効率を高く保つためにも好ましい。4級塩基としては、ピリジニウム基、4級アンモニウム基等を挙げることができるが、イオン交換基を有する高分子体が耐アルカリ性に優れるため、4級アンモニウム基が望ましい。
(2)表面にIER粒子層が形成された、凹凸のある陽イオン交換膜に密着するためには、皮膜を形成する陰イオン交換基を有する高分子体又は該高分子体の前駆体は、溶媒に可溶であるものが望ましい。溶媒が除去され、あるいは、化学反応が進行することにより陰イオン交換膜が形成される。このとき形成された陰イオン交換膜は、バイポーラ膜が使用中に陰陽イオン交換膜に分離することのないように、陽イオン交換膜と適度の強度で接着している。
(3)使用上適度の柔軟性を有するものが望ましい。これは、バイポーラ膜が取扱中に割れて、性能低下を起こさないために重要である。
(4)水に不溶でなければならない。これは、ひとたび陽イオン交換膜上に皮膜を形成させてバイポーラ膜とした後、使用時に溶け出してはならないからである。
IER粒子を存在させた陽イオン交換膜の表面に、溶媒に溶解した陰イオン交換基を有する高分子体又は該高分子体の前駆体の溶液を流延して陰イオン交換膜を作る方法として、大別して2方法がある。1つは、線状ポリマーを用いて皮膜を作る方法、他の1つは、架橋体の皮膜を作る方法である。
線状ポリマーを用いる方法は、溶媒に陰イオン交換基を有する高分子体として陰イオン交換性線状ポリマーを溶解させ、この溶液を陽イオン交換膜の上に流延した後、乾燥して陰イオン交換膜を形成する方法である。
陰イオン交換性線状ポリマーとして、
a.トリアルキルビニルベンジルアンモニウム塩と水に不溶性のビニル化合物(例えば、スチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル等)の共重合体、
b.ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリエーテルエーテルケトンなどのポリマーをクロルメチル化し、次いでトリアルキルアミンで4級アンモニウム基化した4級アンモニウム化ポリスルホンなどの線状アミノ化ポリマー、
c.ポリスルホンとポリトリアルキルビニルベンジルアンモニウム塩のブレンド混合物
などを挙げることができる。
これら陰イオン交換性線状ポリマーの交換容量は、水の中での溶解や膨潤により水解離の電流効率の低下を避け、また、電気抵抗の増大による水解離電圧の上昇を避けるために、0.4〜2.5meq/gであることが好ましく、特に0.6〜2.0meq/gであることが好ましい。
これら線状ポリマーをエチレンジクロライド、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、メチルアルコール等の有機溶媒(必要により混合溶媒も可である)に溶かしておき、この溶液を陽イオン交換膜の上に流延した後、乾燥させて陰イオン交換膜を生成させる。
膜の厚みは、水電解電圧の上昇や電流効率の低下を防止するために、10〜400μmであることが好ましく、30〜200μmであることがより好ましい。
また、架橋体の皮膜を作る方法は、一般的には、陰イオン交換基を有する高分子体の前駆体を有機溶媒に溶かしておき、この溶液を陽イオン交換膜上に流延した後、乾燥及び架橋反応させ陰イオン交換膜を形成する方法である。用いる前駆体に応じて必要であればさらに陰イオン交換基を導入すればよい。
陰イオン交換基を有する高分子体の前駆体としては、陰イオン交換基に変換できる官能基及び架橋に関与する2個以上の官能基を有する化合物、架橋反応時に架橋と4級アンモニウム化が同時に進行する官能基を2個以上有する化合物等を挙げることができる。
陰イオン交換基に変換できる官能基及び架橋に関与する2個以上の官能基を有する化合物を用いた場合には、架橋後に該陰イオン交換基に変換できる官能基を陰イオン交換基に変換すればよい。
このとき上記前駆体として架橋反応時に、架橋と4級アンモニウム化が同時に進行する官能基を2個以上有する化合物を選べば、効率よく4級アンモニウム基を有する陰イオン交換膜が製造できるのでより好都合である。架橋と4級アンモニウム化の同時反応に使用できる化合物の組合せとして以下のものがある。
A:3級アミノ基を2個以上有する化合物(ポリマーを含む)とエポキシ基を2個以上有する化合物(ポリマーを含む)
B:3級アミノ基を2個以上有する化合物(ポリマーを含む)とハロメチル基を2個以上有する化合物(ポリマーを含む)
ここで、3級アミノ基を2個以上有する化合物(ポリマーを含む)として例えば、ポリジアルキルビニルベンジルアミン、ポリジアルキルアミノエチルスチレン、ポリジメチルアリールアミン、NNN’N’−テトラメチル−1,6−ヘキサメチレンジアミン、NNN’N’−テトラメチル−1,3−トリメチレンジアミン等を例示することができる。
エポキシ基を2個以上有する化合物(ポリマーを含む)として、ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、レゾルシン型ジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ノボラック型ポリグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンジオキシド、ジシクロペンタジエンジオキシド等を例示することができる。
ハロメチル基を2個以上有する化合物(ポリマーを含む)として、ポリクロルメチルスチレン、クロルメチル化ポリスルホン、クロルメチル化ポリフェニレンオキシド、クロルメチル化ポリエーテルエーテルケトンを例示することができる。
架橋と4級アンモニウム化の同時反応を行うにはこれらの化合物の中から組合せを適宜選べばよい。選択した化合物を、エチレンジクロライド、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、メチルアルコール等の有機溶媒(必要により混合溶媒でもよい)に溶かしておき、この溶液をIER粒子を存在させた陽イオン交換膜の上に流延し、架橋反応及び乾燥させて架橋陰イオン交換膜を生成させる。
これら架橋陰イオン交換膜の交換容量は、電気抵抗の上昇による水分解の電圧の上昇を防ぐためには、0.4〜2.5meq/gであることが好ましく、特に0.6〜2.0meq/gであることが好ましい。膜厚は10〜400μmであることが好ましく、特に30〜200μmであることが好ましい。
また架橋体の皮膜を作る方法としては、上記以外の方法として、次のような方法を採用することができる。陰イオン交換基を有する高分子体の前駆体としてクロルメチル化ポリスルホン、ポリクロルメチルスチレン、クロルメチル化ポリフェニレンオキシド、クロルメチル化ポリエーテルエーテルケトン等のクロルメチル化線状ポリマーと、必要に応じてポリスルホン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリルなどのアミノ化合物と反応しない不活性線状ポリマーとを加えた有機溶媒溶液を、IER粒子層を存在させた陽イオン交換膜上に、流延した後、溶媒を除去して皮膜とした後、トリアルキルアミン、ジアルキルアミン,NNN’N’−テトラメチル−1,6−ヘキサメチレンジアミンなどの3級アミンと反応させて、線状ポリマー間の架橋及び4級アンモニウム基の導入を行うことにより、陰イオン交換膜とすることが出来る。
これらの方法は陽イオン交換膜の表面に陽イオン交換膜と十分密着した陰イオン交換膜を形成させることが出来るので好適である。
IER粒子の層が存在する陽イオン交換膜には、予め粗面化により凹凸が形成されていることが好ましい。このような場合、流動性のある溶媒に溶解した陰イオン交換基を有する高分子体又は該高分子体の前駆体の溶液は、その凹凸に沿って一部はIER粒子の上へ、一部は陽イオン交換膜の上へ流れ込む。陰イオン交換基を有する高分子体又は該高分子体の前駆体の溶液が陽イオン交換膜上に流れ込んだ部分は、陽イオン交換膜と密着しており、陰陽イオン交換膜間の接着の強度及びバイポーラ膜の耐久性に貢献する。
また、陽イオン交換膜を陰イオン交換膜に、陰イオン交換基を有する高分子体又は該高分子の前駆体溶液を陽イオン交換基を有する高分子体又は該高分子の前駆体溶液に代えることにより、上記した方法と同様の方法で陰イオン交換膜面上にIER粒子を存在させ、次いで陽イオン交換膜層を形成させる方法で本発明のバイポーラ膜を得ることもできる。
本発明のバイポーラ膜が優れた性能を発揮する作用機構は、未だ十分に明らかでないが、陰陽イオン交換膜間のIER粒子がスペーサとなり、陰陽イオン交換膜のイオン交換基同士の直接接触によるポリマー間の塩の生成を妨げる役割を果たしていると考えられる。またIER粒子の存在しない箇所では、陰陽イオン交換膜が強固に接合され、両膜は剥離し難くなっている。さらにIER粒子は水の解離触媒として働き低電圧下で水を解離させることが出来るものと考えられる。
発明の効果
以上に説明したように、本発明のバイポーラ膜によれば、高電流密度下で長期間水解離電圧が低く、高い電流効率を示し、しかもブリスター、膜剥がれ等を発生しない耐久性のよいバイポーラ膜を容易に得ることが出来る。従って、かかる本発明のバイポーラ膜を用いた水の解離においては、電力原単位を大幅に低減できる。
実施例
以下、実施例および比較例により本発明を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、バイポーラ膜の性質は次の方法で測定した。即ち、2室セルにて電流効率、及び水解離電圧として5時間後のバイポーラ膜での電圧降下を測定した。有効膜面積10cm2であるバイポーラ膜の陽イオン交換膜側に1N−塩酸水溶液を100ml、陰イオン交換膜側に1N−水酸化ナトリウムを100ml置き、白金板電極の塩酸側を陰極とし水酸化ナトリウム側を陽極として、10A/dm2の電流密度で、10時間通電後、各部屋の酸、塩基及び塩の量を測定することにより、バイポーラ膜の水分離効率として水酸イオン、水素イオンの電流効率(ηH,ηOH)と塩素イオン、ナトリウムイオンの電流効率(ηCl,ηNa)を求めた。また、長期運転下の水解離電圧については、以下の構成を有する3室セルを使用した。
陽極(Pt板)/3モルNaOH溶液/バイポーラ膜/4モル硝酸溶液/隔膜(陽イオン交換膜ネオセプタCMX((株)トクヤマ製))/2モルHCl溶液/陰極(Pt板)
電流密度は15A/dm2とした。水解離電圧の測定は、2室および3室セルの何れにおいても、バイポーラ膜を挟んで設置した白金線電極によってバイポーラ膜による電圧降下を測定した。
IER粒子の膜面に平行な平面への投影面積の割合は、陽イオン交換膜上にIER粒子を存在させた後に真上から写真を撮り、その面積比率より求めた。
実施例1
サンドペーパー(CC 200 Cw) で予め表面に凹凸を形成した陽イオン交換膜ネオセプタCM−1((株)トクヤマ製)を2重量%の塩化第一鉄(FeCl2)水溶液中に25℃で1時間浸漬した後、イオン交換水でよく洗浄し、室温にて風乾した。この陽イオン交換膜の鉄イオンの含有量は全イオン交換容量の98%(2.2meq/g)であった。次に、多孔性の強酸性陽イオン交換樹脂を粉砕機を用いて粉砕して2000ppmの塩化第一鉄水溶液で処理した後、遠心分離後、乾燥して一次粒子径が1μmで、取り扱い時の凝集粒子の平均粒径が5μmのIER粒子を得た。樹脂中の鉄イオンの含有量は全イオン交換容量の50%(0.8meq/g)であった。これを膜面上に指で塗り込んで、該陽イオン交換膜上にIER粒子を存在させた。膜面上におけるIER粒子の投影面積の割合は80%であった。
この膜の上に4級アンモニウム基の交換容量0.92meq/gのアミノ化ポリスルホン(ポリスルホンをクロルメチル化次いでトリメチルアミンにて4級アンモニウム基化したもの)をメタノール/クロロホルム(1:1vol)の混合溶媒に15wt%に溶解したものを塗布し、室温で放置して乾燥した。アミノ化ポリスルホンの厚みは80μm、IER粒子層の厚みは1〜10μmであった。
この膜のバイポーラ膜特性を測定した。2室セルにおける水解離電圧は0.9ボルトで、電流効率は、ηH,ηOH=99.1%、ηCl=0.3%、ηNa=0.6%であった。3室セルにおける水解離電圧は、通電初期には1.0ボルトが3月後1.1ボルトであった。この間、バイポーラ膜の中に気泡水泡の発生は全く無かった。
比較例1
実施例1において、塩化第一鉄で処理したIER粒子を用いなかったこと以外は実施例1と全く同様にしてバイポーラ膜を得た。このバイポーラ膜の陰イオン交換膜の厚みは80μmであった。バイポーラ膜特性は、以下の通りであった。
2室セルにおける水解離電圧は0.9ボルトで、電流効率は、ηH,ηOH=99.1%、ηCl=0.3%、ηNa=0.6%であった。3室セルにおける水解離電圧は、通電初期には1.0ボルトが1ヶ月後に2.5ボルトであった。この間バイポーラ膜の中に気泡水泡の発生は全く無かった。
比較例2
実施例1において、Na型のIER粒子を使用した他は同様の操作をしてバイポーラ膜を作成した。この膜のバイポーラ膜特性を測定した。2室セルにおける水解離電圧は1.2ボルトで、電流効率は、ηH,ηOH=99.1%、ηCl=0.3%、ηNa=0.6%であった。3室セルにおける水解離電圧は、通電初期には1.3ボルトが1月後3.0ボルトであった。この間、バイポーラ膜の中に気泡水泡の発生は全く無かった。
実施例2
実施例1で用いた陽イオン交換膜と鉄イオン交換したIER粒子を用い、陽イオン交換膜の表面に、IER粒子を指で塗り込んだ。その上にポリジメチルビニルベンジルアミン:ビスフェノールA型ジエポキシ化合物:クロロホルム=1:1:10(重量比)の溶液を塗布し、室温にて10時間乾燥してエポキシ樹脂を硬化させると同時に4級アンモニウム基型の陰イオン交換体を生成させた。この膜の陰イオン交換膜の厚さは80μmであった。IER粒子層の厚みは1〜10μmであり、膜面上におけるIER粒子の投影面積の割合は90%であった。
2室セルにおけるバイポーラ膜特性は、初期の水解離電圧は0.9ボルトで、電流効率は、ηH,ηOH=99.5%、ηCl=0.3%、ηNa=0.2%であった。3室セルにおける水解離電圧は、通電初期には0.95ボルトであり、3ヶ月後にも0.95ボルトであった。この間、バイポーラ膜の中に気泡水泡の発生は全く無かった。
実施例3
実施例1の陽イオン交換膜を使用した。多孔性の強塩基性陰イオン交換樹脂を粉砕機で粉砕後、2000ppmの塩化第一スズの塩酸水溶液で処理し、遠心分離してIER粒子を得、乾燥して一次粒子径0.5μm、平均凝集粒子径3μmのIER粒子を得た。この樹脂は、全イオン交換容量の10%(0.05meq/g)のスズイオンを含んでいた。これを指で塗り込んで陽イオン交換膜上にIER粒子層を存在させた。IER粒子層の投影面積の割合は85%であった。
この膜の上に4級アンモニウム基の交換容量0.92meq/gのアミノ化ポリスルホン(ポリスルホンをクロルメチル化、次いでトリメチルアミンにて4級アンモニウム基化したもの)をメタノール/クロロホルム(1:1vol)の混合溶媒に15wt%に溶解したものを塗布し、室温で放置して乾燥した。アミノ化ポリスルホンの厚みは80μであった。IER粒子層の厚みは0.5〜5μmであった。
この膜の2室セルでのバイポーラ膜特性を測定した。水解離電圧は1.2ボルトで、電流効率は、ηH,OH=99.3%、ηCl=0.3%、ηNa=0.4%であった。3室セルにおける水解離電圧は、通電初期には1.2ボルトが3ヶ月後1.3ボルトであった。この間、バイポーラ膜の中に気泡の発生は全く無かった。
実施例4
実施例1と同様の処理をした陽イオン交換膜CM−1((株)トクヤマ製)を、実施例3で使用したIER粒子を2000ppmの濃度にけん濁させた液中へ浸漬した。粗面化した面上にIER粒子を沈着させた後、乾燥し、IER粒子の層を形成させた。
IER粒子の投影面積の割合は80%であった。その後、実施例3と同様な操作で陰イオン交換膜を形成した。
アミノ化ポリスルホンの厚みは80μmであった。IER粒子層の厚みは0.5〜5μmであった。
この膜の2室セルでのバイポーラ膜特性を測定した。水解離電圧は1.5ボルトで、電流効率は、ηH,OH=99.3%、ηCl=0.3%、ηNa=0.4%であった。3室セルにおける水解離電圧は、通電初期には1.6ボルトが3ヶ月後2.0ボルトであった。この間、バイポーラ膜の中に気泡の発生は全く無かった。
実施例5
実施例1の陽イオン交換膜ネオセプタCM−1((株)トクヤマ製)を使用した。イミノジ酢酸型のキレート樹脂を粉砕機を用いて粉砕して2000ppmの塩化第一スズ水溶液で処理し、遠心分離後、乾燥して一次粒子径1μmで、平均凝集粒子径5μmのIER粒子を得た。この樹脂は、全イオン交換容量の20%(0.5meq/ml)のスズイオンを含んでいた。これを膜面上に指で塗り込んで、陽イオン交換膜上にIER粒子の層を存在させた。IER粒子の投影面積の割合は83%であった。
この膜の上に4級アンモニウム基の交換容量0.87meq/gの部分アミノ化ポリスチレン(スチレンとクロルメチルスチレンの10:1(mol比)モノマーをトルエン中で70℃、重合開始剤ベンゾイルパーオキシドの存在下に10時間重合し、次いで反応液をメタノール中に注ぎ、共重合体を得、この共重合体のクロルメチル基をトリメチルアミンにて4級アンモニウム基化したもの)をメタノール/クロロホルム(1:5vol)の混合溶媒に15wt%に溶解したものを塗布、室温で放置して乾燥した。このアミノ化ポリスチレンの厚みは85μmであった。IER粒子層の厚みは、0.1〜5μmであった。
この膜の2室セルでのバイポーラ膜特性を測定した。水解離電圧は0.9ボルトで、電流効率は、ηH,ηOH=99.2%、ηCl=0.3%、ηNa=0.5%であった。3室セルにおける水解離電圧は、通電初期には0.95ボルト、3ヶ月後0.95ボルトであった。この間、バイポーラ膜の中に気泡水泡の発生は全く無かった。
実施例6
実施例5で得たのと同様のIER粒子を塗り込んだ陽イオン交換膜の上に、塩素の含有量1.1meq/gのクロルメチル化ポリスルホンの15wt%テトラヒドロフラン溶液にNNN’N’−テトラメチル1−6ヘキサメチレンジアミン10gを混合した溶液を塗布し、室温にて5時間溶媒を蒸発乾燥させた。乾燥と同時に架橋4級アンモニウム基化が進み、陰イオン交換膜が生成しバイポーラ膜が出来た。陰イオン交換膜の厚みは90μm、IER粒子層の厚みは0.1〜5μmであった。
この膜のバイポーラ膜特性を測定した。2室セルにおける水解離電圧は0.9ボルトで、電流効率は、ηH,ηOH=99.4%、ηCl=0.3%、ηNa=0.3%であった。3室セルにおける水解離電圧は、通電初期には0.9ボルトが3ヶ月後0.92ボルトであった。この間、バイポーラ膜の中に気泡水泡の発生は全く無かった。
実施例7〜10
実施例1と同じ粉砕した陽イオン交換樹脂を、それぞれ2000ppmの塩化ルテニウム、1重量%の塩化ニッケル、1重量%の塩化パラジウム、1重量%の硝酸ジルコニウムの水溶液中で処理し、遠心分離後乾燥して、金属イオン型の陽イオン交換樹脂微粉末を得た。これらは一次粒子径1μmで、平均凝集粒子径5μmであった。樹脂中のルテニウム、ニッケル、パラジウム、ジルコニウムの含有率はそれぞれ交換容量の50%(0.8meq/g)であった。
これらの樹脂微粉末をサンドペーパで粗面化した陽イオン交換膜ネオセプタCM−1上に指で塗り込んで、該陽イオン交換膜上にIER粒子を存在させた。膜面上におけるIER粒子の投影面積の割合は80%であった。
この膜の上に4級アンモニウム基の交換容量0.92meq/gのアミノ化ポリスルホン(ポリスルホンをクロルメチル化し、次いでトリメチルアミンにて4級アンモニウム基化したもの)をメタノール/クロロホルム(1:1vol)の混合溶媒に15wt%に溶解したものを塗布し、室温で放置して乾燥した。アミノ化ポリスルホンの厚みは80μm、IER粒子層の厚みは1〜10μmであった。
これらの膜のバイポーラ膜特性を測定した。2室セルにおける水解離電圧は、ルテニウム、ニッケル、パラジウム、ジルコニウムをイオン交換したIER粒子について、それぞれ0.88、0.90、0.95、0.90ボルトで、電流効率は、いずれもηH、ηOH=99.1%、ηCl=0.3%、ηNa=0.6%であった。3室セルにおける水解離電圧は、通電初期にはそれぞれのIER粒子について0.90、1.0、1.05、1.0ボルトであったのが、1月後にはそれぞれ1.0、1.10、1.20、1.10ボルトであった。この間、バイポーラ膜の中に気泡水泡の発生は全く無かった。
実施例11〜14
実施例7〜10で用いた陽イオン交換膜を、ルテニウム、ニッケル、パラジウム、ジルコニウム型にイオン交換したこと以外は同一の手順でバイポーラ膜を作成した。これらの各金属イオンによるイオン交換割合は、いずれの金属イオンについても陽イオン交換膜のイオン交換容量の40%であった。また、IER粒子の投影面積は80%であり、IER粒子層の厚みは1〜10μmであった。
これらの膜のバイポーラ膜特性を測定した。2室セルにおける水解離電圧は、ルテニウム、ニッケル、パラジウム、ジルコニウムについてそれぞれ0.85、0.88、0.92、0.88ボルトで、電流効率は、いずれもηH、ηOH=99.1%、ηCl=0.3%、ηNa=0.6%であった。3室セルにおける水解離電圧は、通電初期にはそれぞれのIER粒子について0.90、1.0、1.05、1.0ボルトであったが、3月後にはそれぞれ1.0、1.10、1.20、1.10ボルトであった。この間、バイポーラ膜の中に気泡水泡の発生は全く無かった。

Claims (13)

  1. 陽イオン交換膜および陰イオン交換膜を接合したバイポーラ膜において、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜との接合界面に元素番号20〜90の金属のイオンまたは該金属の錯イオンを有するイオン交換樹脂粒子が存在することを特徴とするバイポーラ膜。
  2. 元素番号20〜90の金属が、周期律表第IV族および第VIII族の金属である請求の範囲1記載のバイポーラ膜。
  3. 周期律表第IV族および第VIII族の金属が、鉄、チタン、スズ、ジルコニウム、ニッケル、パラジウムおよびルテニウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属である請求の範囲2記載のバイポーラ膜。
  4. 元素番号20〜90の金属のイオンまたは該金属の錯イオンを有するイオン交換樹脂粒子が、元素番号20〜90の金属のイオンまたは該金属の錯イオンをイオン交換して有するイオン交換樹脂粒子である請求の範囲1記載のバイポーラ膜。
  5. イオン交換樹脂粒子が、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜との接合界面で層を形成してなる請求の範囲1記載のバイポーラ膜。
  6. イオン交換樹脂粒子の層が平均厚み0.02〜100μmである請求の範囲5記載のバイポーラ膜。
  7. イオン交換樹脂粒子の層の面積と全接合面の面積との割合が、膜面に平行な平面への投影面積の比で1〜99%である請求の範囲5記載のバイポーラ膜。
  8. イオン交換樹脂粒子が、元素番号20〜90の金属のイオンまたは該金属の錯イオンにより全イオン交換容量の0.1〜100%の範囲でイオン交換されたものである請求の範囲1記載のバイポーラ膜。
  9. 陽イオン交換膜および陰イオン交換膜を接合したバイポーラ膜において、陽イオン交換膜および陰イオン交換膜の接合界面に面した少なくとも一方の表面に元素番号20〜90の金属のイオンまたは該金属の錯イオンを有するイオン交換基が存在し、且つ陽イオン交換膜と陰イオン交換膜との接合界面に元素番号20〜90の金属のイオンまたは該金属の錯イオンを有するイオン交換樹脂粒子が存在することを特徴とするバイポーラ膜。
  10. 元素番号20〜90の金属が、周期律表第IV族および第VIII族の金属である請求の範囲9記載のバイポーラ膜。
  11. 周期律表第IV族および第VIII族の金属が、鉄、チタン、スズ、ジルコニウム、ニッケル、パラジウムおよびルテニウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属である請求の範囲10記載のバイポーラ膜。
  12. イオン交換樹脂粒子が、元素番号20〜90の金属のイオンまたは該金属の錯イオンにより全イオン交換容量の0.1〜100%の範囲でイオン交換されたものである請求の範囲1記載のバイポーラ膜。
  13. 陽イオン交換膜および/または陰イオン交換膜が、元素番号20〜90の金属のイオンまたは該金属の錯イオンにより全イオン交換容量の0.001〜100%の範囲でイオン交換されたものである請求の範囲1記載のバイポーラ膜。
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