JP4330265B2 - 多孔質架橋重合体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、油中水滴型高分散相エマルション(Water in Oil type High Internal Phase Emulsion;以下、単にHIPEとも略す)を重合して、表面も内部も連通孔の形成されている連続気泡(open cell;以下、オープンセルとも称す)を有する多孔質材料を製造するに際して、非常に短時間でHIPEを硬化させて当該多孔質材料を製造する方法に関するものである。より詳しくは、本発明は、(1)液体吸収材;例えば、▲1▼尿、血液などの体液の吸収材としておむつのコア材などに利用できるほか、▲2▼水、油、有機溶剤などの吸収材として廃水、廃油処理剤、廃溶剤処理剤などに、また(2)エネルギー吸収材;例えば、音、熱の吸収材として自動車、建築用の防音材、断熱材などに、さらに、(3)薬剤含浸基材;例えば、芳香剤、洗浄剤、つや出し剤、表面保護剤、難燃化剤などを含浸させた家庭用品などに幅広く利用できる連続気泡を有する多孔質重合体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
HIPEとは、分散相(内相)である水相と外相である油相の比率(W/O比)が約3/1以上のエマルションをいう。このHIPEを重合させて、多孔質重合体を製造することは公知である。そして、HIPE化することなく発泡剤を用いて製造される多孔質重合体(以下、単にフォームともいう)は、比較的独立気泡のフォームが得られやすいのに比べ、HIPEから多孔質重合体を製造する方法(以下、単にHIPE法ともいう)は、連続気泡の低密度のフォームの製法として優れている。
【0003】
HIPEから多孔質材料を製造する方法としては、例えば、特開昭57−98713号公報、特開昭62−50002号公報、US−A−5252619号公報及びUS−A−5189070号公報に記載されている。
特開昭57−98713号公報及び特開昭62−50002号公報には、水溶性および/または油溶性重合開始剤を含んだHIPEを作製し、これを50℃あるいは60℃で8時間から72時間加熱重合する方法が開示されている。また、US−A−5210104号公報には、HIPE作製後重合開始剤を添加する方法、さらにUS−A−5252619号公報には、重合開始剤を含んだHIPEを作製後、90℃以上の温度で重合する方法、及びUS−A−5189070号公報には、20〜65℃未満の温度でエマルションから所定の動的剪断弾性率を有するゲルを形成させ、その後に70℃以上の温度で重合させる方法が開示されている。US−A−5358974号公報では、油溶性開始剤である1位の炭素で枝別れしたアルキルパーオキシジカーボネートを用いてHIPEを重合する方法が開示されている。
【0004】
しかしながら、特開昭57−98713号公報、特開昭62−50002号公報及びUS−A−5358974号公報に開示されている方法は、重合時間が長く生産効率が良くない。また、US−A−5252619号公報やUS−A−5189070号公報のように、高温で重合すると比較的短時間で重合できるものの、なお数時間程度の重合時間を要し、しかも条件によってはHIPEの安定性が損なわれ多量の水分が遊離してくる傾向が見られ、所定の孔径の多孔質重合体が得られない場合があった。さらに、US−A−5210104号公報では、HIPEを作製後重合開始剤を添加しているので、HIPEの乳化安定性は改良されているが、重合時間は数時間必要であると記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らはHIPE法による非常に短時間での多孔質重合体の製造方法を開発すべく鋭意検討した結果、HIPEの重合時間に注目し、乳化したHIPEを特定の加熱昇温速度で昇温することにより、重合時間を短縮し例えば30分、好ましくは10分以内という非常に短時間に重合する手法を見出した。
しかしながら、この手法を用いて特定のHIPE例えば粘度が500mPa・sec以下であるような低粘度のHIPEを重合して平均孔径が80μm以上の大きな孔径の多孔質材料を製造しようとした場合、上記の手法を用いても重合時間は大きく短縮されず、逆にHIPEの安定性が損なわれて所定の孔径の多孔質材料が得られずにHIPEが相分離して崩壊する場合があることが明らかとなった。
【0006】
従って本発明の目的は上記技術課題を解決し、粘度が500mPa・sec以下の低粘度のHIPEを用いて、孔径の大きな多孔質材料を製造する際に、例えば30分、好ましくは10分以内という非常に短時間で製造することができる多孔質材料の製造方法を提供するものである。
HIPEの重合において水溶性重合開始剤を単独で使用した場合は、HIPEの水相で開始剤が分解してラジカルが発生するので、水相と油相の界面から重合反応が進行し、徐々に油相内部へと重合が進行する。そのため油相と水相の界面付近ほど重合率は高く、重合後の多孔質材料の孔の表面部分の強度が向上と、それに伴ない風合いが向上するという特性がある。
重合時間を短縮する手法として、重合系中のラジカル濃度を高くする手法が挙げられるが、500mPa・secよりも高粘度のHIPEを重合して数平均孔径が80μm未満の小さな孔径を有する多孔質材料を製造する場合では、一般に高粘度HIPEのエマルションの粒子径が小さいため、水溶性重合開始剤単独で使用した場合でも、油溶性重合開始剤単独で使用した場合でも、水溶性重合開始剤と油溶性重合開始剤と併用した場合でも、さほどの違いはなく、重合時間を短縮することができる。
しかし、500mPa・sec以下の低粘度のHIPEを重合して数平均孔径が80μm以上の大きな孔径を有する多孔質材料を製造する場合では、一般にエマルションの粒子径が大きくなるため、水相と油相との界面の面積が低下し、それにより、水溶性重合開始剤を単独で使用して該HIPEを重合すると、水相から油相へのラジカルの移動速度が制限される。そのため、発生したラジカルのうちで重合反応に使われる開始剤の効率が著しく低下し、重合速度が著しく低下することが明らかとなった。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、粘度が500mPa・sec以下のHIPEを用いて多孔質材料を製造する場合、および、数平均孔径が80μm以上の多孔質材料製造する場合に、非常に短時間で重合することで生産性の良い、かつフォームの強度が優れた製造方法を開発すべく鋭意検討した結果、油溶性重合開始剤を必須として使用して重合することで、短時間で重合することを見出した。
【0008】
すなわち、上記諸目的は下記[1]〜[8]によって達成される。
[1] 重合性単量体成分と界面活性剤とを含有する油相と、水を含有する水相とから得られる油中水滴型高分散相エマルションを、重合開始剤の存在下に重合する工程を含む多孔質材料の製造方法において、該油中水滴型高分散相エマルションは、形成温度での粘度が500mPa・sec以下であり、
該重合開始剤は、油溶性重合開始剤を必須に含むものであることを特徴とする多孔質材料の製造方法。
[2] 油中水滴型高分散相エマルションを重合開始剤の存在下で重合して数平均孔径が80μm以上である多孔質重合体を製造する方法であって、該重合開始剤は、油溶性重合開始剤を必須に含むものであることを特徴とする多孔質材料の製造方法。
[3] 該重合開始剤は、油溶性重合開始剤と水溶性重合開始剤を含むものである上記[1]または[2]に記載の多孔質材料の製造方法。
[4]前記油中水滴型高分散相エマルションの重合時間が、30分以下であることを特徴とする上記[1]から[3]のいずれかに記載の多孔質材料の製造方法。
[5]前記油中水滴型高分散相エマルションの重合性単量体成分に対し、油溶性重合開始剤を0.05モル%〜15モル%と水溶性重合開始剤を併用し、重合時間内に油溶性重合開始剤の分解し終わる開始剤量を重合性単量体に対して0.05モル%〜5モル%に制御することを特徴とする上記[3]または[4]記載の多孔質材料の製造方法。
[6]前記重合する工程が連続重合であることを特徴とする上記[1]〜[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7]前記HIPEの温度が80℃以上110℃以下の温度であることを特徴とする上記[1]〜[6]のいずれかに記載の製造方法。
前記HIPEを形成後に油溶性重合開始剤を添加して重合することを特徴とする上記[1]〜[7]いずれかに記載の製造方法。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明は500mPa・sec以下の低粘度のHIPEを重合開始剤の存在下に重合する工程を含む多孔質材料の製造方法および/または数平均孔径が80μm以上の多孔質材料の製造方法において、重合開始剤として油溶性重合開始剤を使用し、好ましくは水溶性重合開始剤と油溶性重合開始剤を組合わせて使用することを特徴とするものである。より詳しくは、本発明の多孔質材料の製造方法について以下工程順に説明する。
[I]HIPEの調製
(1)HIPEの使用原料
HIPEの使用原料は、(a)重合性単量体、(b)架橋性単量体および(c)界面活性剤を油相を構成する必須成分として含有し、(d)水を水相を構成する必須成分として含有するものであればよい。さらに、必要に応じて、(e)重合開始剤、(f)塩類、(g)その他の添加剤を油相および/または水相を構成する任意成分として含有するものであってもよい。
(a)重合性単量体
上記重合性単量体としては、分子内に1個の重合性不飽和基を有するものであればよく、分散または油中水滴型高分散相エマルション中で重合可能であって気泡を形成できれば特に制限されるものではない。好ましくは少なくとも1部は(メタ)アクリル酸エステルを含むものであり、より好ましくは(メタ)アクリル酸エステルを20質量%以上を含むものであり、特に好ましくは(メタ)アクリル酸エステルを35質量%以上を含むものである。重合性単量体として、(メタ)アクリル酸エステルを含有することにより、柔軟性や強靭性に富む多孔質材料を得ることができるため望ましい。
【0010】
重合性単量体としては、具体的には、スチレン等のアリレン単量体;スチレン、エチルスチレン、アルファメチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルエチルベンゼンなどのモノアルキレンアリレン単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジルなどの(メタ)アクリル酸エステル;塩化ビニル、塩化ビニリデン、クロロメチルスチレン等の塩素含有単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のアクリロニトリル化合物;その他、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N−オクタデシルアクリルアミド、エチレン、プロピレン、ブテン等が例示できる。これらは、1種を単独で使用する他、2種以上を併用してもよい。
【0011】
上記重合性単量体の使用量は、重合性単量体と下記架橋性単量体からなる単量体成分全体の重量に対し、好ましくは10〜99.9質量%の範囲で、より好ましくは30〜99質量%、特に好ましくは30〜70質量%の範囲である。重合性単量体の使用量が10質量%未満の場合には、得られる多孔質材料が脆くなったり吸水倍率が不充分となることがある。一方、重合性単量体の使用量が99.9質量%を超える場合には、得られる多孔質材料の強度、弾性回復力などが不足したり、充分な吸水量および吸水速度を確保できないことがある。
(b)架橋性単量体
上記架橋性単量体としては、分子内に少なくとも2個の重合性不飽和基を有するものであればよく、上記重合性単量体と同様に、分散または油中水滴型高分散相エマルション中で重合可能であって気泡を形成できれば特に制限されるものではない。
【0012】
架橋性単量体としては、具体的には、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、エチルジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルアルキルベンゼン類、ジビニルフェナンスレン、ジビニルビフェニル、ジビニルジフェニルメタン、ジビニルベンジル、ジビニルフェニルエーテル、ジビニルジフェニルスルフィド等の芳香族系単量体;ジビニルフラン等の酸素含有単量体;ジビニルスルフィド、ジビニルスルフォン等の硫黄含有単量体;ブタジエン、イソプレン、ペンタジエン等の脂肪族単量体;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、イソシアヌル酸トリアリル、トリアリルアミン、テトラアリロキシエタン、並びにヒドロキノン、カテコール、レゾルシノール、ソルビトールなどの多価アルコールとアクリル酸又はメタクリル酸とのエステル化合物などが例示できる。これらは、1種を単独で使用する他、2種以上を併用してもよい。
【0013】
上記架橋性単量体の使用量は、上記重合性単量体と架橋性単量体からなる単量体成分全体の重量に対し、0.1〜90質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは1〜70質量%、特に好ましは30〜70質量%の範囲である。上記架橋性単量体の使用量が0.1質量%未満では、得られる多孔質材料の強度、弾性回復力などが不足したり、単位体積当たりまたは単位重量当たりの吸収量が不十分となり、充分な吸水量および吸水速度を確保できないことがある一方、上記架橋性単量体の使用量が90質量%を越えると、多孔質材料が脆くなったり吸水倍率が不充分となることがある。
(c)界面活性剤
上記界面活性剤としては、HIPEを構成する油相中で水相を乳化し得るものであれば特に制限はなく、従来公知のノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等を使用することができる。
【0014】
このうち、ノニオン性界面活性剤としては、ノニルフェノールポリエチレンオキサイド付加物;エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのブロックポリマー;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノミリスチレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタンジステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル;グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレエート、ジグリセロールモノオレエート、自己乳化型グリセロールモノステアレート等のグリセリン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル; ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット等のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリエチレングリコールモノオレエート等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンアルキルアミン;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;アルキルアルカノールアミド等があり、特にHLBが10以下、好ましくは2〜6のものが好ましい。これらのうち2種以上のノニオン性界面活性剤を併用してもよく、併用によりHIPEの安定性が改良される場合がある。
【0015】
カチオン性界面活性剤としては、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジタウロジメチルアンモニウムメチルサルフェート、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、等の第四級アンモニウム塩;ココナットアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩;ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、ラウリルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等のアルキルベタイン;ラウリルジメチルアミンオキサイド等のアミンオキサイドがある。カチオン性界面活性剤を用いることにより、得られる多孔質材料を吸水材等に利用する場合に優れた抗菌性等を付与することもできる。なお、ノニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤を併用するとHIPEの安定性が改良される場合がある。
上記界面活性剤の使用量は、重合性単量体と架橋性単量体からなる単量体成分全体の質量100質量部に対し、1〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは3〜15質量部である。界面活性剤の使用量が1質量部未満の場合には、HIPEの高分散性が不安定化することがあったり、界面活性剤本来の作用効果が充分に発現できないことがある。一方、上記界面活性剤の使用量が30質量部を超える場合には、得られる多孔質材料が脆くなり過ぎることがあり、これを超える添加に見合うさらなる効果が期待できず、不経済である。
(d)水
上記水は、水道水、純水、イオン交換水の他、廃水の再利用を図るべく、多孔質材料を製造して得た廃水をそのまままたは所定の処理を行ったものを使用することができる。
【0016】
上記水の使用量は、連続気泡を有する多孔質材料の使用目的(例えば、吸水材、吸油材、防音材、フィルターなど)等によって適宜選択することができる。すなわち、水の使用量は、HIPEの水相/油相(W/O)比を変化させることによって多孔質材料の空孔比率が決定されることから、用途、目的に合致する空孔比率になるようにW/O比を選択すれば、自ずと決定される。
(e)重合開始剤
本発明の目的である非常に短時間で、500mPa・sec以下の低粘度HIPEの重合および/または80μm以上の多孔質材料の製造を達成するためには、重合開始剤に油溶性重合開始剤を必須成分として使用することが特徴であり、本発明の重要な構成用件である。本発明においての使用する重合開始剤は油溶性重合開始剤を単独で使用しても良いが、水溶性重合開始剤を使用より好ましくは油溶性重合開始剤と水溶性重合開始剤とを併用して使用する。
これらの重合開始剤としては乳化重合で一般に使用できるものであれば特に制限はしない。
本発明に用いることのできる水溶性重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等のアゾ化合物;過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩;過酢酸カリウム、過酢酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過炭酸ナトリウム等の過酸化物等が挙げられる。これら水溶性重合開始剤は、単独で用いてもよく、また、2種類以上を併用してもよい。その場合、10時間で濃度が半分になるときの温度である10時間半減期温度の異なる2種以上の水溶性重合開始剤を併用する。
水溶性重合開始剤の使用量は重合性単量体と架橋性単量体からなる重合性単量体成分全体のモル数に対して、0.01モル%〜10モル%の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.1モル%〜5.0モル%である。また上記水溶性重合開始剤の使用量に対し、所望の重合時間内に分解しおわる開始剤量を0.05モル%〜2.0モル%に制御することが、重合を短時間に終え、多孔質材料の物性を得るために好ましい。
本発明に用いることができる油溶性重合開始剤としては、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシド、p−メンタンヒドロパーオキシド、1,1,3,3−テトラブチルヒドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド類;ジ−t−ブチルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキシド等のジアルキルパーオキシド類;ジ−イソプパーオキシジカーボネート、ジシクロヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ(s−ブチル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート類;アセチルパーオキシド、プロピオニルパーオキシド、デカノイルパーオキシドイソブチリルパーオキシド、オクタノイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ステアリロイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド等のジアシルパーオキシド類;1,1‘−ジ−(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1‘−ジ−(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等のパーオキシケタール類;シクロヘキサノンパーオキシド、メチルシクロヘキサノンパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド、アセチルアセトンパーオキシド等のケトンパーオキシド類;クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−1−メチルエチルパーオキシネオデカネート、t−ヘキシルパーオキシネオデカネノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3,−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−1−メチルエチルパーオキシ−2−ヘキサノエート、t−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート等のパーオキシエステル等が挙げられる。
【0017】
これらの油溶性重合開始剤は、単独で用いてもよく、また、2種類以上を併用してもよい。その場合は10時間で濃度が半分になるときの温度である10時間半減期温度の異なる2種以上の油溶性重合開始剤を併用する事が好ましい。
【0018】
油溶性重合開始剤の使用量は、重合性単量体と架橋性単量体からなる重合性単量体成分全体のモル数に対し、0.05モル%〜15モル%の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.1モル%〜10モル%である。また、上記油溶性重合開始剤の使用量に対し、所望の重合時間内に分解しおわる開始剤量を好ましくは0.05〜5.00モル%の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.50〜3.00モル%に油溶性重合開始剤量を制御することが、重合を短時間に終え、多孔質材料の物性を得るために好ましい。
上記油溶性開始剤の使用量を、0.05モル%以上とすることによって、未反応の単量体成分が少なくなり、従って、得られる多孔質材料中の残存単量体量を減らすことができ好ましい。
また、油溶性重合開始剤の使用量が0.05モル%以上にして、かつ油溶性重合開始剤の重合時間内に分解しおわる開始剤量が0.05モル%以上とすることで未反応の単量体成分を減らすだけでなく、未反応の油溶性重合開始剤を減らすことができ、得られる多孔質材料中の残存単量体とともに、残存開始剤量を減らすことができる。
また、上記油溶性重合開始剤の使用量を15モル%以上とし、油溶性重合開始剤の重合時間内に分解し終わる開始剤量を5.0モル%以上にすることによって、重合の制御を容易にし、得られる多孔質材料中の機械的性質を所望の特性の特性とすることができるため好ましい。
【0019】
本発明の重合時間内に分解しおわる重合開始剤量(モル%)について説明する。本発明の重合時間内に分解しおわる重合開始剤量(モル%)は、まず重合開始剤分解量(モル)を求め、それを使用した単量体成分のモルに対する百分率(モル%)に換算することで求められる。
【0020】
上記の重合開始剤分解量は、重合時間内に分解する開始剤量のことで▲1▼文献等に記載の重合開始剤の分解速度式を用いる方法や、▲2▼文献等に記載の重合開始剤の活性化エネルギーと1分間、ないしは1時間、ないしは10時間、ないしは100時間で開始剤濃度が半分になる温度である1分間半減温度、1時間半減温度、10時間半減温度、100時間半減温度等の半減温度を用いて算出する方法等によって求めることができる。本発明では重合開始剤として過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムを用いる場合は▲1▼から、その他の重合開始剤を用いる場合は▲2▼から計算するものとする。
【0021】
まず、重合開始剤が過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムの場合について説明する。過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムの場合は下式1を用い、過硫酸アンモニウムの場合では下式2を用いて重合温度(K)を式に代入して重合温度での開始剤分解速度定数kを求める。
【0022】
【数1】
【0023】
【数2】
【0024】
なお、重合温度(K)とは重合初期から重合終了時までの間の平均の重合温度(℃)を絶対温度(K)に換算したものであり、昇温工程を含めた全重合時間の平均温度を意味し、例えば以下のように求められる。重合開始温度が60℃で昇温速度が20℃/分で100℃まで昇温し、その後、100℃で10分間重合(合計12分)重合した場合、
重合温度(K)=273+{60×2+(100-60)×2/2+100×10}/12=369.7Kとなる。
【0025】
続いて、重合温度(K)での開始剤分解速度定数kが上記で求まれば、式3の開始剤分解速度定数、重合時間と重合開始剤仕込み量の関係式から重合開始剤分解量が計算される。
【0026】
【数3】
【0027】
本発明での分解し終わる重合開始剤量(モル%)は、まず重合開始剤分解量(モル)を求め、それを使用した重合性および架橋性単量体成分のモルに対する百分率(モル%)に換算する。
【0028】
例えば、過硫酸カリウムを0.1モル使用して65℃で形成されたHIPEを1.5分(昇温速度20℃/分)で95℃まで昇温し、95℃で8.5分保持した状態で、昇温時間を含み10分間重合した場合、重合温度は365.75Kとなり式1よりこの温度での開始剤分解速度定数kは0.0123(分-1)となる。続いて上記式3を用いることで、この重合温度、重合時間での重合開始剤分解量は0.0116モルと算出される。よって、本発明の重合時間内に分解しおわる重合開始剤量はこの様にして求められた重合開始剤分解量(モル)を使用した単量体成分のモルに対する百分率(モル%)に換算すれば良い。
【0029】
次に、その他の重合開始剤の場合について説明する。この場合は、カタログや技術資料、文献等記載の重合開始剤の活性化エネルギーおよび1分間半減温度、ないしは1時間半減温度、ないしは10時間半減温度、ないしは100時間半減温度等の関係式、下式4、5を用いて計算することにより、下式6に相当する重合温度(K)と開始剤分解速度定数k(分-1)の関係式を各々の開始剤で求め、先の式3に基づいて重合時間内に分解しおわる重合開始剤量を算出する。
【0030】
【数4】
【0031】
【数5】
【0032】
Rは気体定数で8.3184( J/mol)。Lnは自然対数。Aは、重合開始剤によって異なる定数である。
【0033】
式4は例えば1分間の半減温度が100℃(373K)である場合、
1(分)={1/[100℃での開始剤分解速度定数k373(分-1)]}×Ln2という関係式である。まず、式4を用いて所定温度での開始剤分解速度定数kを計算した後、式5によりその重合開始剤の定数Aを計算する。
【0034】
例えば、(株)日本油脂製のt-butylperoxy ( 2-ethylhexanoate)(商品名パーブチルO)は、10時間の半減温度72.5℃(345.5K)、またその活性化エネルギーは28.8kcal/mol(120.56J/mol)と記載されている。よってこの場合、式4の関係式を用いて計算すると、
600(分)=1/[345.5Kでの開始剤分解速度定数k346.5K(分-1)×Ln2となり、
k346.5K=1.1552×10-3(分-1)と計算される。
【0035】
345.5Kでの開始剤分解速度定数k346.5K(分-1)を式5に代入することで、 Ln(1.1552×10-3)=LnA−{12560/(8.3184×345.5)}の関係式が得られるのでt-butylperoxy ( 2-ethylhexanoate)の場合の定数A=1.91×1015が計算される。
【0036】
次に、算出された定数Aと式5の関係式を用いてt-butylperoxy ( 2-ethylhexanoate)の場合の重合温度(K)と重合開始剤速度定数k(分-1)の関係式6が誘導される。
【0037】
【数6】
【0038】
重合温度T(K)から上記式6によりその重合温度での開始剤分解速度定数kが決まり、これを前述した式3に代入することでt-butylperoxy ( 2-ethylhexanoate)の場合の重合開始剤分解量を算出することができる。
【0039】
例えば、t-butylperoxy ( 2-ethylhexanoate)を2モル使用して、65℃で形成されたHIPEを1.5分間(昇温速度20℃/分)で95℃まで昇温し、95℃で8.5分間保持した状態で、昇温時間を含む10分間重合した場合、重合絶対温度は365.75°Kとなり、365.75°Kでの開始剤分解速度定数kは0.0118(分-1)となる。続いて、上記式3を用いることで、この場合の開始剤分解量は0.223モルと算出される。よって本発明の重合時間内に分解しおわる重合開始剤量(モル%)は、この重合開始剤分解量を使用した単量体成分のモルに対する百分率(モル%)に換算すれば良い。
【0040】
また、重合開始剤分解量の制御手段としては、例えば、重合開始剤の使用量や硬化温度、加熱昇温速度の最適化、適量のラジカル補足剤の投入等が挙げられるが、特に制限されるものではない。
【0041】
また、重合時間内に分解しおわる重合開始剤量を算出するに当たり、その系に上記方法の適応が困難な場合には、その都度それに応じた測定方法、計算法を用いても差し支えない。
【0042】
さらに、上記重合開始剤と還元剤とを組み合わせてなるレドックス重合開始剤系を使用しても良い。上記還元剤のうち、水溶性還元剤としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム、L−アスコルビン酸、第1鉄塩、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシレート、グルコース、デキストロース、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン等が挙げられる。また、油溶性還元剤としては、例えば、ジメチルアニリン、オクチル酸スズ、ナフテン酸コバルト等が挙げられる。これらレドックス重合開始剤系の還元剤は、単独で用いてもよく、また、2種類以上を併用してもよい。
【0043】
上記レドックス重合開始剤系の場合の還元剤の含有比率(質量比)は、重合開始剤(酸化剤)/還元剤=1/0.01〜1/10、好ましくは1/0.2〜1/5程度である。
(f)塩類
上記塩類としては、HIPEの安定性を改良するために必要であれば使用してもよい。
【0044】
上記塩類としては、具体的には、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウムなどのアルカリ金属、アルカリ土類金属のハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩などの水溶性塩が挙げられる。これらの塩類は、単独で用いてもよく、また、2種類以上を併用してもよい。これらの塩類は、水相中に添加することが好ましい。なかでも、重合時のHIPEの安定性の観点から多価金属塩が好ましい。
【0045】
この様な塩類の使用量は、水100質量部に対し、0.1〜20質量部とすることが好ましく、より好ましくは0.5〜10質量部である。塩類の使用量が20質量部を超える場合には、HIPEから搾り出された廃水中に多量の塩類を含むことになり、廃水を処理するコストがかさみ、これを超える添加に見合うさらなる効果も期待できず不経済である。塩類の使用量が0.1質量部未満の場合には、塩類の添加による作用効果が十分に発現できないおそれがある。
(g)その他添加剤
さらに、他の各種添加剤をこれらが有する性能・機能を付加することにより、製造条件や得られるHIPE特性や多孔質架橋重合体の性能の向上につながるものであれば適当に使用しても良く、例えば、pH調整のために、塩基および/または緩衝剤を加えても良い。これらの他の添加剤の使用量については、それぞれの添加の目的に見合うだけの性能・機能、さらには経済性を十分に発揮できる範囲内で添加すればよい。このような添加剤としては、活性炭、無機粉末、有機粉末、金属粉末、消臭剤、抗菌剤、防かび剤、香料、各種高分子などが例示できる。
(2)HIPEの調製法
HIPEは、上記油相成分および水相成分を上に述べた質量比で組合わせることにより生成される。組合わせた油相および水相から組合わせた相を剪断攪拌に供することにより生成される。本発明の目的である、低粘度のHIPEを非常に短時間で重合を達成し、例えば数平均孔径が80μm以上の多孔質材料を製造するには、低剪断力でHIPEを得ることが望ましい。そのようなプロセスはバッチ式でまたは連続式で行なうことができるが、低剪断力で乳化することが好ましい。好ましくは500mPa・sec.以下、より好ましくは100mPa・sec.以下という低粘度のHIPEを生成する方法は特に制限されるものではなく、従来既知のHIPEの調製法と混合機や乳化装置、ラインミキサー等を適宜利用することができる。
【0046】
本発明においての多孔質材料の数平均孔径は、例えば自動ポロシメータ等の測定装置を用いて水銀圧入法により測定することにより求めることができる。
【0047】
以下にその代表的な調製法につき、具体的に説明する。
まず、それぞれ上記に規定する使用量にて、重合性単量体、架橋性単量体および界面活性剤、さらに必要に応じて添加し得る油溶性重合開始剤(油溶性レドックス重合開始剤系を含む)、その他の添加剤からなる油相を構成する成分を所定温度で撹拌し均一の油相を調製する。
【0048】
一方、それぞれ上記に規定する使用量にて、水に、さらに必要に応じて添加し得る水溶性重合開始剤(水溶性レドックス重合開始剤系を含む)、塩類、その他の添加剤からなる水相を構成する成分を加えながら撹拌し、所定温度に加温して均一の水相を調製する。
【0049】
次に、上記により調製された、単量体成分、界面活性剤などの混合物である油相と、水、水溶性塩などの混合物である水相とを合一し、以下に説明するHIPEの形成温度(乳化温度)にて、効率良く混合撹拌して、好ましくは1000秒-1以下、より好ましくは500秒-1以下の低い剪断力をかけて乳化することによって、該HIPEの形成温度での粘度が、好ましくは500mPa・sec.以下、より好ましくは100mPa・sec.以下であるHIPEを安定に調製することができる。
【0050】
このようにして形成したHIPEの粘度は重合開始までの誘導時間内に、例えばヘリパス型粘度計を用いて該HIPEの形成温度での粘度を測定すれば良い。また誘導時間内に測定するかわりに重合開始剤を添加せずに同様の諸条件で乳化したHIPEの粘度を上記手法で測定しても良い。
【0051】
HIPEを安定に調製するための水相と油相の撹拌・混合法としては、油相の撹拌下、油相に水相を数分ないし数十分に亘って連続的に添加する方法が好ましい。また、水相成分の1部と油相成分とを撹拌・混合してHIPEを形成し、その後に残りの水相成分を加えながら撹拌・混合して所望のHIPEを製造しても良い。
(3)水相/油相(W/O)比
こうして得られるHIPEの水相/油相(W/O)比(質量比)は、連続気泡を有する多孔質架橋重合体の使用目的(例えば、吸水材、吸油材、防音材、フィルターなど)等によって適宜選択することができるものであり、特に制限されるものではなく、先に規定したとおり3/1以上のものであればよいが、好ましくは10/1〜100/1、特には10/1〜50/1である。
【0052】
多孔質材料の空孔比率はW/O比を変化させることによって決定される。したがって、用途、目的に合致する空孔比率になるようにW/O比を選択することが望ましい。例えば、オムツや衛生材料等その他各種吸収材として使う場合、W/O比は10/1〜50/1程度とするのが好ましい。
(4)HIPEの製造装置
上記HIPEの製造装置としては、特に制限されるものではなく従来公知の製造装置を利用することができる。例えば、水相と油相とを混合撹拌するために使用する撹拌機(乳化機)としては、公知の撹拌機、混練機が使用できる。例えば、プロペラ型、櫂型、タービン型などの羽根の撹拌機、ホモミキサー類、ラインミキサー、ピンミルなどが例示でき、これらの何れでもよい。
(5)HIPEの形成温度(乳化温度)
油中水滴型高分散相エマルション(HIPE)を形成させる乳化工程でのHIPEの形成温度(乳化温度)は通常40℃〜110℃の範囲で、好ましくは80〜110℃である。形成温度が40℃未満の場合には、重合温度によっては、重合に長時間を有する場合があり、一方、形成温度が110℃を超える場合にはHIPEの均一性に劣る場合がある。なお、油相および/または水相の温度を予め所定の形成温度に調整しておいて乳化し、所望のHIPEを形成することが望ましい。ただし、HIPEの調製(形成)では水分量が多いため、少なくとも水相の温度を所定の形成温度(乳化温度)に調整することが好ましいと言える。
また、乳化中に重合性単量体成分の重合が開始され、重合体が生成されると、HIPEが不安定になることがあるので、重合開始剤を予め含むHIPEを調製する場合には、HIPEの形成温度は、重合開始剤の半減期が10時間である温度(10時間半減温度)を考慮すべきである。重合開始剤をHIPEを調製すると同時や、調整後に添加する場合については、重合開始剤がHIPEに対し十分均一に添加混合されるよう、混合方式・混合温度等を選択する必要がある。
[II] 多孔質架橋重合体の製造
(1)重合開始剤の添加工程
本発明では、HIPEへの水溶性開始剤と油溶性開始剤の添加方法として▲1▼HIPEを形成させる前の水相および/または油相に重合開始剤を予め添加、混合する方法、▲2▼HIPEを形成させると同時に重合開始剤を添加する方法、または▲3▼HIPEを形成させた後に重合開始剤を添加させる方法が例示でき、これらを組合せても良い。水溶性重合開始剤は、上記▲1▼〜▲3▼の任意の方法を選択することも出来るが、HIPEでの水相は不連続相であるので、水相中に予め添加しておく方法が好ましい。▲1▼の場合、油溶性重合開始剤は、油相に予め添加しておく方法が簡便であるが、水相に油溶性重合開始剤の乳化物を添加する方法も例示できる。また、重合開始剤は無希釈、または水や有機溶剤の溶液、あるいは分散体などの形態で使用することができる。
【0053】
本発明では、例えばHIPE形成温度(乳化温度)を80℃以上と高くした場合、重合開始剤の種類や添加方法によっては乳化中に重合性単量体成分の重合が開始され重合体が生成することがある。特に油溶性重合開始剤の場合にはこの傾向が顕著であり、これを避けるために上記▲2▼または▲3▼の方法で添加することが好ましい。
【0054】
また、重合開始剤がレドックス系開始剤である場合、重合開始剤(酸化剤)と還元剤を添加する場合にも上記▲1▼〜▲3▼の任意の方法を別々に選択することができる。
【0055】
またこのように重合開始剤を▲2▼または▲3▼の方法で、HIPEを形成させると同時に、またはHIPEを形成させた後に添加させた場合、添加した重合性単量体成分の不均一な重合を回避するためにHIPEに素速く均一に混合することが重要である。かかる観点からHIPEの形成からその成形工程が終了するまでの経路に導入経路を設けてHIPEに添加しスタティックミキサー等のラインミキサーで連続混合するなどの方法が好ましく用いられる。なお、重合開始剤の使用量については上記HIPEの使用原料の重合開始剤の項で説明したのと同様であり変わるものではない。
(2)HIPEを所望の形態に成形する成形工程
(a)HIPEの成形温度・時間
重合開始剤を混合したHIPEは所望の形態に成形される。通常この温度は40〜110℃の範囲であるが、40℃以下では重合時間の短縮との観点から好ましくない。かかる観点からHIPEの形成からその成形工程までの搬送ライン、すなわち配管、ラインミキサー等の加熱・保温、成形容器の加熱・保温を十分に行なうことが好ましい。
【0056】
また、所望の形態に成形するまでの時間は好ましくは5分以内であることが好ましい。
(b)HIPEの成形形状
本発明の製造方法におけるHIPEの成形の形状は、特に制限されるものではなく、例えば所望の形態の容器にHIPEをフィードする方法や、HIPEを連続的にまたは間欠的にシート状もしくはフィルム状に走行するベルト上にフィードする方法等を用いて、所望の形態に成形することができ、使用用途に応じて従来公知のHIPEの成形形状を適宜利用することが出来る。
(3)重合工程
(a)重合方法
上記HIPEの重合工程は特に制限されるものではなく、従来公知のHIPEの重合方法を適宜利用することができる。通常はHIPE構造が破壊されない条件下静置重合法で加熱することで重合させる。この場合、HIPEをバッチごとに重合するバッチ重合でも、あるいは連続的に加熱ゾーン中にフィードしながらキャストして重合する連続重合でも良いが、生産性を高めるためにも重合法はバッチ重合よりも連続重合の方が好ましい。すなわちシート状もしくはフィルム状のHIPEを例えば走行するベルトの上に連続的にキャストして加熱し重合する連続重合法を例示することができる。この場合には例えばエマルションの外表面部に特定の酸素量低減手段を施す方法等を用いることが好ましい。
(b)重合(硬化)温度
本発明のHIPEの硬化温度は、通常、40〜110℃の範囲であるが、HIPEの安定性、重合速度から好ましくは60〜110℃、より好ましくは80〜105℃である。重合時間が40℃未満では重合に長時間を要し、工業的に好ましくない。HIPEを上記の温度で重合を行なうためには、成形工程から重合工程へHIPEを搬送する場合の保温、重合容器の加熱・保温等を十分に行なうことが好ましい。
(c)重合(硬化)時間
本発明の方法は、数十秒〜30分の範囲の短時間で重合を安定に実施する手段として非常に有効である。すなわち、重合硬化時間(単に重合時間とも略す)は、好ましくは30分以内、より好ましくは10分以内、特に好ましくは1〜10分の範囲である。重合時間が30分を超える場合には、生産性に劣り工業的に好ましくない場合がある。なお、1分未満の場合には、多孔質架橋重合体の強度が十分でない場合がある。勿論上記より長い重合硬化時間を採用することを排除するものではない。
【0057】
本発明における重合時間とは、重合開始剤を混合したHIPEを所望の形態に成形される上記「[II]多孔質架橋重合体の製造(2)HIPE成形工程」の項で記載した成形工程終了直後からHIPEが十分に重合硬化するまでの時間のことである。
また、本発明においては上記重合時間が30分以内であり、該重合時間内に分解しおわる油溶性重合開始剤量は好ましくは0.05モル%〜5モル%、より好ましくは0.5モル%〜3.00モル%となるように制御することが好ましい。この量に制御することで30分以内の短時間でフォーム物性に優れた多孔質架橋重合体が非常に高い生産性で製造できる。重合開始剤の使用量と分解しおわる重合開始剤量については、上記「[I]HIPEの使用原料(1)(e)」の重合開始剤の項での記載と同様変わるものではない。
(d)重合装置
本発明に用いることのできる重合装置としては、特に制限されるものではなく、従来公知の化学装置から、それぞれの重合法に適したものを利用ないし改良して使用することができる。例えば、バッチ重合では、使用目的に応じた形状の重合容器を、連続重合では圧縮用ローラを備えたベルトコンベアなどの連続重合機を利用することができ、さらにこれらには重合法に適した加熱昇温手段や制御手段等、例えば、放射エネルギー等を利用できるマイクロ波や近赤外線などの活性熱エネルギー線、あるいは熱水や熱風などの熱媒等により迅速に硬化温度まで加熱昇温し得るような加熱昇温手段が併設されてなるものであるが、これらに限定されるものではない。また、バッチ重合する場合に重合容器に注入されたHIPE表面や、連続重合する場合にコンベア等の駆動搬送体上に成形されたHIPEの表面(上面及び下面の両方)部は、重合開始時から完了時まで空気(詳しくは空気中の酸素分)と非接触状態にすることが、こうした表面部もきっちりとオープンセル構造にするのに最適であるため、HIPE表面を各種シール材でシールすることが望ましい。また、これら重合装置等の材質に関しては、特に限定されるものではなく、例えば、アルミニウム、鉄、ステンレス鋼などの金属(合金を含む)製、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、不飽和ポリエステル樹脂などの合成樹脂製、これらの合成樹脂をガラス繊維や炭素繊維などの繊維で補強した繊維強化樹脂製(FRP)などを使用できる。
(4)多孔質架橋重合体の後加工
上記重合工程によって得られる多孔質架橋重合体の形態は、特に制限されるものではなく、任意の形態をとりえる。すなわち、バッチ重合では、重合容器の形態と同じ形態の多孔質材料が得られるので、これに適した形状の重合容器を選択すればよい。更に、例えば、厚さ50mm以下のブロック(またはシート)状の形態に重合してから、例えば、厚さ各5mmのシートないしフィルム(板ないし薄板)状などに切断するなど任意の形態に加工することもできるし、肉厚(厚さ)50mmの円筒状の形態の多孔質架橋重合体を適用に裁断して断面円弧状の形態に加工してもよい。
【0058】
また、連続重合法による場合は、シート状ないしフィルム状のHIPEを水平搬送しながら重合して、シート状ないしフィルム状の所望の形態の多孔質架橋重合体を形成してもよい。この場合にも厚さ50mm以下のブロック(またはシート)状に重合してから、例えば、厚さ各5mmのシート状などに切断するなど任意の形態に加工することもできる。
(8)多孔質架橋重合体形成後の後処理(製品化)工程
(a)脱水
重合完結により形成された多孔質架橋重合体は、通常、圧縮、減圧吸引およびこれらの組み合わせによって脱水する。一般に、こうした脱水により、使用した水の50〜98%の水が脱水され、残りは多孔質架橋重合体に付着して残る。
【0059】
脱水率は、多孔質架橋重合体の用途などによって、適当に設定する。通常、完全に乾燥した状態での多孔質架橋重合体1g当たり、1〜10gの含水量、あるいは1〜5gの含水量となるように設定すればよい。
(b)圧縮
本発明の多孔質架橋重合体は、所望の使用形態によっては元の厚みの数分の1に圧縮した形態にしても良い。圧縮形態にするには、均一に多孔質架橋重合体全体に圧力が加わり、一様に圧縮し得るように、多孔質架橋重合体の形態に応じた圧縮手段を用いればよい。
【0060】
前工程の脱水およびこの圧縮工程で、多孔質架橋重合体を圧縮する時の温度は、多孔質架橋重合体のガラス転移温度より高い温度で行うのが好ましい。当該温度が重合体のガラス転移温度より低いと多孔質構造が破壊されたり、孔径が変化することがある。
(c)洗浄
多孔質架橋重合体の表面状態を改良するなどの目的で、多孔質架橋重合体を純水や任意の添加剤を含む水溶液、溶剤で洗浄してもよい。
(d)乾燥
以上の工程で得られた多孔質架橋重合体は、必要であれば、熱風、マイクロ波などで加熱乾燥してもよく、また加湿して水分を調整してもよい。
(e)切断
以上の工程で得られた多孔質架橋重合体は、必要であれば、所望の形状、サイズに切断して各種用途に応じた製品に加工してもよい。
(f)含浸加工
洗浄剤、芳香剤、消臭剤、抗菌剤などの添加剤を含浸加工して機能性を付与することもできる。
【0061】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、本実施例において、多孔質架橋ポリマー材料の性能は以下のようにして測定・評価した。
<残存モノマー>
得られた多孔質架橋重合体1.0gを塩化メチレン200g中に加え、2時間攪拌した後、濾過し、濾液をエバポレーターで濃縮乾固させた後、アセトニトリル/水=80/20(容積比)に溶解し、各単量体濃度を液体クロマトグラフィーにて測定し、多孔質架橋重合体の残存モノマーを求めた。
<ゲル分率>
ソックスレー抽出機を用いてアセトンを溶媒として24時間抽出した。抽出されずに残った多孔質架橋重合体を100℃で1時間熱風乾燥して乾燥質量を求め、下記式7より算出した。
【0062】
【数7】
【0063】
<圧縮強度>
インストロン試験機(インストロン社製;商品名Instron1186−RE5500)を用いて、24℃において、一軸(厚さ方向の)圧縮強度を測定した。
<粘度測定>
ヘリパス型の粘度計(ブルックフィールド社製:商品名デジタルレオメーターDV−III、T字型スピンドルA型)を用いて、内径80mm、高さ100mmのポリプロピレンカップに乳化直後のHIPEを採取し100rpmの回転数で粘度を測定した。測定温度はHIPEの形成温度と同じ温度で測定した。
<数平均孔径>
HIPEの重合により得られた多孔質材料をイオン交換水で洗浄し、100℃で1時間減圧乾燥後、0.02g切り出した。切り出した試料を用いて、マイクロメリティックス社製の自動ポロシメータ(型番 オートポアIII9420)を用いて水銀圧入法により数平均孔径を測定した。
<実施例1>
攪拌器を備えた円筒形容器に、2−エチルヘキシルアクリレート3.0質量部(以下、単に「部」と称する)、55%ジビニルベンゼン(他成分はp−エチル−ビニルベンゼン)1.8部からなる単量体成分、油溶性界面活性剤としてのソルビタンモノオレエート0.25部を加え、均一に溶解して、油相混合物溶液(以下、「油相」と称する)を調製した。一方、塩化カルシウム9部をイオン交換水209部に溶解して、水相水溶液(以下、「水相」と称する)を調製し、85℃に加温した。油相を85℃で500秒-1で攪拌しながら、これに85℃に調温した水相を5分間かけて添加し、添加終了後、10分間攪拌し続けて、W/O比=45/1の安定な油中水滴型高分散エマルション(HIPE)を得た。
【0064】
これに、水溶性重合開始剤としての過硫酸カリウム0.128部を10部のイオン交換水に溶解して加え、油溶性重合開始剤としてt-butyl peroxy 2-ethylhexanonate(日本油脂社製商品名:パーブチルO)を0.213部添加し、さらに2分間500秒-1で攪拌した。HIPEの粘度は100mPa・sec.であった。
【0065】
得られたHIPEを、長さ1100mm、巾100mm、厚さ5mmのステンレス製角型重合容器に流し込み、熱電対をつけた(硬化前のHIPEはヨーグルト状であるため容器の中央部に熱電対が位置するように差し込んだ。以下、同様。)後、上ブタをし、97℃の水浴に浸した。約30秒でHIPEは95℃に達し、HIPEの硬化温度は95℃であった。
7分後に容器を引き上げ、氷浴につけて重合を停止させた後、硬化した多孔質架橋重合体(1)を得た(以下容器を水浴してから引き上げて氷浴するまでの時間を硬化時間とした。)。7分間に分解し終わる油溶性重合開始剤量は0.32モル%(対単量体成分)であった。この多孔質架橋重合体(1)を取り出し、残存モノマーや多孔質架橋重合体(1)の圧縮強度、ゲル分率、数平均孔径を測定した。結果を下記表1に示す。
<実施例2>
実施例1において、硬化時間を10分とした他は実施例1と同様の操作を行い、多孔質架橋重合体(2)を得た。
10分間に分解し終わる油溶性重合開始剤量は0.46モル%であった。この多孔質架橋重合体(2)を取り出し、残存モノマーや多孔質架橋重合体(2)の圧縮強度、ゲル分率、数平均孔径を測定した。結果を下記表1に示す。
<実施例3>
実施例1において、HIPE形成時の攪拌を1000秒-1で形成し、粘度が500mPas・secのHIPEを得た他は、実施例1と同じの操作を行い、多孔質架橋重合体(3)を得た。7分間で分解しおわる油溶性重合開始剤量は0.32モル%(対単量体成分)であった。この多孔質架橋重合体(3)を取り出し、残存モノマーや多孔質架橋重合体(3)の圧縮強度、ゲル分率、数平均孔径を測定した。結果を下記表1に示す。
<実施例4>
実施例1において、油溶性重合開始剤に1,1,3,3-tetramethyl butyl peroxy-2-ethyl hexanoate(日本油脂社製:商品名パーオクタO)を0.277部使用した他は実施例1と同じの操作を行い、多孔質架橋重合体(4)を得た。7分間で分解しおわる油溶性重合開始剤量は0.70モル%(対単量体成分)であった。この多孔質架橋重合体(4)を取り出し、残存モノマーや多孔質架橋重合体(4)の圧縮強度、ゲル分率、数平均孔径を測定した。結果を下記表1に示す。
<実施例5>
実施例4において油溶性重合開始剤として1,1,3,3-tetramethyl butyl peroxy-2-ethyl hexanoate(日本油脂社製:商品名パーオクタO)を0.554部使用し、硬化時間を5分とした他は実施例1と同じの操作を行い、多孔質架橋重合体(5)を得た。5分間で分解しおわる油溶性重合開始剤量は1.03モル%(対単量体成分)であった。この多孔質架橋重合体(5)を取り出し、残存モノマーや多孔質架橋重合体(5)の圧縮強度、ゲル分率、数平均孔径を測定した。結果を下記表1に示す。
<実施例6>
実施例1において、油溶性重合開始剤にt-butyl peroxy pivalate(日本油脂社製:商品名パーブチルPV)を0.177部使用した他は実施例1と同じの操作を行い、多孔質架橋重合体(6)を得た。7分間で分解しおわる油溶性開始剤量は1.95モル%(対単量体成分)であった。この多孔質架橋重合体(6)を取り出し、残存モノマーや多孔質架橋重合体(6)の圧縮強度、ゲル分率、数平均孔径を測定した。結果を下記表1に示す。
<実施例7>
攪拌器を備えた円筒形容器に、2−エチルヘキシルアクリレート3.0質量部、55%ジビニルベンゼン(他成分はp−エチル−ビニルベンゼン)1.8部からなる単量体成分、油溶性界面活性剤としてのソルビタンモノオレエート0.25部を加え、均一に溶解して、油相混合物溶液を調製した。一方、塩化カルシウム9部をイオン交換水209部に溶解して、水相水溶液を調製し、85℃に加温した。開始剤水相(以下、開始剤水相と称す)として、過硫酸カリウム0.128部とイオン交換水10部を溶解した。
【0066】
油相を85℃で500秒-1で攪拌しながら、これに85℃に調温した水相と開始剤水相を5分間かけて添加し、添加終了後、10分間攪拌し続けて、W/O比=45/1の安定な油中水滴型高分散エマルション(HIPE)を得た。これに、油溶性重合開始剤としてt-butyl peroxy 2-ethylhexanonate(日本油脂社製商品名:パーブチルO)を0.277部添加し、さらに2分間500秒-1で攪拌した。HIPEの粘度は100mPa・sec.であった。
【0067】
得られたHIPEを、長さ1100mm、巾100mm、厚さ5mmのステンレス製角型重合容器に流し込み、実施例1と同様に熱電対をつけた後、上ブタをし、97℃の水浴に浸した。約30秒でHIPEは95℃に達し、HIPEの硬化温度は95℃であった。7分後に容器を引き上げ、氷浴につけて重合を停止させた後、硬化した多孔質架橋重合体(7)を得た。7分間に分解し終わる油溶性重合開始剤量は0.32モル%(対単量体成分)であった。
【0068】
この多孔質架橋重合体(7)を取り出し、残存モノマーや多孔質架橋重合体(7)の圧縮強度、ゲル分率、数平均孔径を測定した。結果を下記表1に示す。
<実施例8>
攪拌器を備えた円筒形容器に、2−エチルヘキシルアクリレート3.0質量部、55%ジビニルベンゼン(他成分はp−エチル−ビニルベンゼン)1.8部からなる単量体成分、油溶性界面活性剤としてのソルビタンモノオレエート0.25部を加え、均一に溶解して、油相混合物溶液を調製した。一方、塩化カルシウム10部をイオン交換水90部に溶解して、水相水溶液を調製し、85℃に加温した。油相を85℃で500秒-1で攪拌しながら、これに85℃に調温した水相を5分間かけて添加し、添加終了後、10分間攪拌し続けて、W/O比=21/1の安定な油中水滴型高分散エマルション(HIPE)を得た。これに、水溶性重合開始剤としての過硫酸カリウム0.128部を10部のイオン交換水に溶解して加え、油溶性重合開始剤としてt-butyl peroxy 2-ethylhexanonate(日本油脂社製商品名:パーブチルO)を0.22部添加し、さらに2分間500秒-1で攪拌した。HIPEの粘度は100mPa・sec.であった。得られたHIPEを、長さ1100mm、巾100mm、厚さ5mmのステンレス製角型重合容器に流し込み、実施例1と同様に熱電対をつけた後、上ブタをし、97℃の水浴に浸した。約30秒でHIPEは95℃に達し、HIPEの硬化温度は95℃であった。
【0069】
7分後に容器を引き上げ、氷浴につけて重合を停止させた後、硬化した多孔質架橋重合体(8)を得た。7分間に分解し終わる油溶性重合開始剤量は0.32モル%(対単量体成分)であった。この多孔質架橋重合体(8)を取り出し、残存モノマーや多孔質架橋重合体(8)の圧縮強度、ゲル分率、数平均孔径を測定した。結果を下記表1に示す。
<実施例9>
2−エチルヘキシルアクリレート300部、55%ジビニルベンゼン(他成分はp−エチルビニルベンゼン)180部からなる重合性および架橋性単量体成分、油相界面活性剤としてソルビタンモノオレエート25部を加え、均一に溶解して、油相を調整した。一方、塩化カルシウム3部と水溶性開始剤としての過硫酸カリウム12.8部をイオン交換水21900部に溶解して水相を調整し85℃に加温した。W/O比=45/1の比率で攪拌機内に連続的に供給して85℃に調温しながら500秒-1で攪拌しながら、油溶性重合開始剤としてt-butyl peroxy 2-ethylhexanonate(日本油脂社製商品名:パーブチルO)22部を連続的に添加し、混合・乳化した。得られたHIPEの粘度は100mPa・sec.であった。
【0070】
上記の方法で形成した油中水滴型高分散エマルション(HIPE)を連続的に抜き出し、これを水平に設置された一定速度で走行するベルト上に幅50cm、厚み5mmに連続的に供給(成形)した。これを約95℃に制御された重合ゾーンに約10分間で通過させてHIPEを30秒で95℃まで昇温した後、95℃で重合し、多孔質材料(9)を得た。10分間に分解し終わる油溶性重合開始剤量は0.46モル%(対単量体成分)であった。
<比較例1>
攪拌器を備えた円筒形容器に、2−エチルヘキシルアクリレート3.0部、55%ジビニルベンゼン(他成分はp−エチル−ビニルベンゼン)1.8部からなる単量体成分、油溶性界面活性剤としてのソルビタンモノオレエート0.25部を加え、均一に溶解して、油相混合物溶液を調製した。一方、塩化カルシウム3部をイオン交換水209部に溶解して、水相水溶液を調製し、85℃に加温した。油相を85℃で500秒-1で攪拌しながら、これに85℃に調温した水相を5分間かけて添加し、添加終了後、10分間攪拌し続けて、W/O比=45/1の安定な油中水滴型高分散エマルション(HIPE)を得た。
【0071】
これに、水溶性重合開始剤としての過硫酸カリウム0.128部を10部のイオン交換水に溶解して加え、さらに2分間500秒-1で攪拌した。HIPEの粘度は100mPa・sec.であった。
【0072】
得られたHIPEを、長さ1100mm、巾100mm、厚さ5mmのステンレス製角型重合容器に流し込み熱電対をつけた後、上ブタをし、97℃の水浴に浸した。HIPEの硬化温度は95℃であった。
10分後に容器を引き上げ、容器から開けるとHIPEは崩壊していた。
<比較例2>
比較例1において、水溶性重合開始剤としての過硫酸ナトリウム0.451部を10部のイオン交換水に溶解して使用した他は比較例1と同じの操作を行ったところHIPEは崩壊した。
<比較例3>
比較例2において硬化時間を60分とした他は比較例1と同じの操作を行ったところHIPEは崩壊した。
<比較例4>
比較例2において、HIPE形成時の攪拌を1000秒-1で形成し、粘度が500mPa・secのHIPEを得た他は、比較例1と同じの操作を行い、比較多孔質架橋重合体(4)を得た。比較多孔質架橋重合体(4)を得た。この比較多孔質架橋重合体(4)を取り出し、残存モノマーや比較多孔質架橋重合体(4)の圧縮強度、ゲル分率、孔径分布を測定した。結果を下記表1に示す。
<比較例5>
攪拌器を備えた円筒形容器に、2−エチルヘキシルアクリレート3.0部、55%ジビニルベンゼン(他成分はp−エチル−ビニルベンゼン)1.8部からなる単量体成分、油溶性界面活性剤としてのソルビタンモノオレエート0.25部を加え、均一に溶解して、油相混合物溶液を調製した。一方、塩化カルシウム3部と過硫酸カリウム0.128部をイオン交換水219部に溶解して、水相水溶液を調製し、85℃に加温した。油相を85℃で500秒-1で攪拌しながら、これに85℃に調温した水相を5分間かけて添加し、添加終了後、10分間攪拌し続けて、W/O比=45/1の安定な油中水滴型高分散エマルション(HIPE)を得た。HIPEの粘度は100mPa・sec.であった。
【0073】
得られたHIPEを、長さ1100mm、巾100mm、厚さ5mmのステンレス製角型重合容器に流し込み熱電対をつけた後、上ブタをし、97℃の水浴に浸した。HIPEの硬化温度は95℃であった。30分後に容器を引き上げ比較多孔質材料(5)を得た。この比較多孔質架橋重合体(5)を取り出し、残存モノマーや比較多孔質架橋重合体(5)の圧縮強度、ゲル分率、孔径分布を測定した。結果を下記表1に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
【発明の効果】
本発明によれば、数平均孔径が80μm以上の均一なフォーム構造を有した、吸収特性、物理特性に非常に優れた多孔質架橋重合体30分以下、好ましくは10分以下という従来からは予想できないような非常に短時間で効率よく生産できる。また、本発明の製造方法は連続重合でも多孔質架橋重合体高い生産性で製造できるため、工業的にも非常に優れたものである。
Claims (6)
- 重合性単量体成分と界面活性剤とを含有する油相と、水を含有する水相とから得られる油中水滴型高分散相エマルションを、重合開始剤の存在下に重合する工程を含む多孔質材料の製造方法において、
該油中水滴型高分散相エマルションは、形成温度80〜110℃での粘度が500mPa・sec以下であり、
該重合開始剤は、油溶性重合開始剤と水溶性重合開始剤を含み、
前記油溶性重合開始剤を、該油中水滴型高分散相エマルションの形成と同時または後に添加することを含み、
重合時間30分以内で重合することを特徴とする、数平均孔径が80μm以上の連続気泡を有する多孔質材料の製造方法。 - 前記重合温度が、80〜110℃である、請求項1に記載の製造方法。
- 該油中水滴型高分散相エマルションが、単量体成分および界面活性剤の混合物である油相と、水および水溶性塩の混合物である水相とを、前記形成温度80〜110℃で、せん断力1000秒 −1 以下で攪拌混合して乳化させることで形成される、請求項1または2に記載の製造方法。
- 該油中水滴型高分散相エマルションを厚さ50mm以下のシート状で重合してなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記油中水滴型高分散相エマルションの重合性単量体成分に対し、油溶性重合開始剤を0.05モル%〜15モル%と水溶性重合開始剤を併用し、重合時間内に油溶性重合開始剤の分解し終わる開始剤量を重合性単量体に対して0.05モル%〜5モル%に制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の多孔質材料の製造方法。
- 前記重合する工程が連続重合であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
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