JP4766812B2 - 多孔質架橋ポリマー材料の製造方法 - Google Patents

多孔質架橋ポリマー材料の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
技術分野
本発明は、油中水滴型高分散相エマルション(Water in Oil type High Internal Phase Emulsion;以下、単にHIPEとも略す)を重合して、表面も内部も連通孔の形成されている連続気泡(open cell;以下、オープンセルとも称す)を有する多孔質架橋ポリマー材料を製造するに際して、非常に短時間でHIPEを後重合させて当該多孔質架橋ポリマー材料を製造する方法に関するものである。より詳しくは、本発明は、(1)液体吸収材;例えば、▲1▼尿、血液などの体液の吸収材としておむつのコア材などに利用できるほか、▲2▼水、油、有機溶剤などの吸収材として廃水、廃油処理剤、廃溶剤処理剤などに、また(2)エネルギー吸収材;例えば、音、熱の吸収材として自動車、建築用の防音材、断熱材などに、さらに、(3)薬剤含浸基材;例えば、芳香剤、洗浄剤、つや出し剤、表面保護剤、難燃化剤などを含浸させた家庭用品などに幅広く利用できる連続気泡を有する多孔質架橋ポリマー材料の製造方法に関するものである。
【0002】
背景技術
HIPEとは、分散相(内相)である水相と外相である油相の比率(W/O比)が約3/1以上のエマルションをいう。このHIPEを重合させて、多孔質架橋ポリマー材料を製造することは公知である。そして、HIPE化することなく発泡剤を用いて製造される多孔質架橋ポリマー材料(以下、単にフォームともいう)は、比較的大孔径の独立気泡のフォームが得られやすいのに比べ、HIPEから多孔質架橋ポリマー材料を製造する方法(以下、単にHIPE法ともいう)は、孔径の微細な連続気泡の低密度のフォームの製法として優れている。
【0003】
HIPEから多孔質架橋ポリマー材料を製造する方法としては、例えば、米国特許第4,522,953号、WO93/24,535号公報及び米国特許第5,290,820号に記載されている。
【0004】
米国特許第4,522,953号には、水溶性および/または油溶性重合開始剤を含んだHIPEを作製し、これを50℃あるいは60℃で8時間から72時間加熱重合する方法が開示されている。また、WO93/24,535号公報には、65℃未満の温度でエマルションから所定の動的剪断弾性率を有するゲルを形成させ、その後に70℃以上の温度で重合させる方法、さらに、米国特許第5,290,820号には、ブタジエンなどのガス状モノマーは、HIPEの調製中にも揮発性に依存してガス状で存在し、HIPE中に導入することが困難であるため、予め一部重合したモノマーを用いて乳化して重合を行う方法が開示されている。
【0005】
しかしながら、米国特許第4,522,953号に開示されている方法は、重合時間が長く生産効率が良くない。また、米国特許第5,290,820号は、ブタジエンのようなガス状モノマーを容易に取り扱うためにモノマーを一部重合した後に、これを用いて乳化してHIPEを作る方法を開示している。この方法によれば、HIPEを重合するに要する時間は、重合せずに残っているモノマーを重合する時間に該当し、HIPEの重合時間を短縮することが期待できる。しかしながら、一部重合したモノマーを乳化してHIPEを作ろうとすると、乳化に長時間を要したり、HIPEの孔径が大きくなったり、水相/油相の比率に限界があるなど乳化が困難となり、生成したHIPEも経時的に油/水の分離が進むなどHIPEの安定性が十分でないなどの欠点があることが判明した。
【0006】
また、WO93/24,535号公報には、上記のごとく、低密度フォームをHIPEを重合させて製造する場合に、予め20〜65℃でHIPEに500パスカルのレオメトリー動的剪断弾性率を有するゲルを形成させた後に、少なくとも70℃の温度で加熱してモノマーを重合および架橋させて多孔質架橋ポリマー材料を製造する方法である。HIPEの重合には60℃で16時間も必要となる一方、高温で重合するとHIPEの安定性を欠く原因となる。このため、予めHIPEを20〜65℃に加熱して所定の弾性率のゲルを形成させてモノマーをある程度重合させ、ついでより高温の70℃で少なくともモノマーの85%以上を重合させ、結果として全体の重合時間を短縮するのである。
【0007】
しかしながら、同公報に開示された方法は、実施例においてHIPEをブロック状に硬化させていることから明らかなように、HIPEをブロック状に硬化する場合を対象にしている。ブロック状に硬化する場合には、硬化槽の中を温度20〜65℃に調製してゲル形成を行い、その後この状態を維持したままで70℃以上に加温して残存モノマーの重合を行うことができるため、操作も簡便であり重合時間も短縮することができるからである。
【0008】
これに対し、同公報に記載された方法でシート状の多孔質架橋ポリマー材料を得ようとすると、平面の重合台にHIPEを供給してシート状に賦形し、温度20〜65℃でゲルを形成させ、ついで70℃以上で残存モノマーを重合させることになる。シート状の多孔質架橋ポリマー材料は、連続的に重合台にHIPEを供給し、連続的に硬化させて製造することが効率がよいが、重合が終了するまでシート状に賦形したHIPEを重合台に載せ、かつ硬化が終了するまでその形状を維持する必要があり、長い重合台が必要となり実用的ではない。
【0009】
したがって、本発明の目的は、上記技術的課題を解決し、HIPEの安定性を損なわずかつ非常に短時間で多孔質架橋ポリマー材料を重合することができ、シート状の多孔質架橋ポリマー材料を得るにも重合台を短縮でき、特に連続重合法に適した製造方法を提供するものである。
【0010】
図面の簡単な説明
図1は、本発明の多孔質架橋ポリマー材料の製造方法における、好適な連続重合装置の代表的な一実施態様を表す概略側面図である。
発明の開示
本発明者は、HIPE法による非常に短時間での多孔質架橋ポリマー材料の連続製造方法を開発すべく鋭意検討した結果、油中水型エマルションを一部重合させた後に重合槽または重合台上などで賦形し、次いで重合を完結することにより、十分な機械的強度を有する多孔質架橋ポリマー材料を短時間で調製でき、これが連続的に製造されるシート状の多孔質架橋ポリマー材料の場合には重合台を短縮することができ、しかも得られた多孔質架橋ポリマー材料の吸収特性も優れることを見出し、本発明を完成させるに至ったものである。
【0011】
すなわち、上記諸目的は、下記によって達成される。
【0012】
油中水滴型高分散相エマルションから多孔質架橋ポリマー材料を製造する方法において、単量体成分を含む油相と水を含む水相とを混合および乳化して油中水滴型高分散相エマルションを得て、該得られたエマルションを一部重合させた後に所定の形状に賦形し、次いで重合を完結させる、多孔質架橋ポリマー材料の製造方法である。
【0013】
本発明によれば、油中水型エマルションを一部重合(以下、予備重合ともいう。)させた後に、例えば平面状の重合台にシート上にキャストすることにより非常な短時間で、吸収特性および機械的強度に優れた多孔質架橋ポリマー材料を効率よく製造できる。
【0014】
本発明の方法は、連続重合に応用することが特に有利であり、予備重合のない場合に比較して短時間で所定の性能のものが得られるため、例えば、ベルトコンベア式の連続重合装置で製造する場合にはベルトコンベア部を短くすることができ、装置を小型化しおよび製造スペースを縮小することができる。
【0015】
発明を実施するための最良の形態
本発明は、油中水滴型高分散相エマルションから多孔質架橋ポリマー材料を製造する方法において、単量体成分を含む油相と水を含む水相とを混合および乳化して油中水滴型高分散相エマルションを得て、該得られたエマルションを一部重合させた後に所定の形状に賦形し、次いで重合を完結させることを特徴とするものである。従来は、賦形の容易性の観点から、HIPEの賦形は液状のHIPEを用いて行われ、HIPEを一部重合した後に賦形することは行われていなかった。しかしながら、本発明では、HIPEを一部重合した後でも、賦形を行うことができ、かつこれによって賦形後の重合時間を短縮することができることを見出したのである。一般的に、HIPEを用いた多孔質架橋ポリマー材料は、乳化器におけるHIPEの調製、HIPEへの重合開始剤の添加、HIPEの重合機での賦形および重合の各工程を経て重合される。
【0016】
次いで、HIPEを重合させて多孔質架橋ポリマー材料を連続的に製造する態様の一例を、図1のフローを用いて説明する。図1に示すように、HIPE101をHIPE供給部119から連続的にシート材203上に供給し、回転ローラー209の設定高さ調整により所定厚みのシート状に成形する。シート材203はコンベアベルト201と同期できるように巻出・巻取ローラーに208,212の回転速度が制御される。シート材205はHIPE101の厚さが一定になるようにテンションをかけながら回転ローラー209,211と巻出・巻取ローラー207,213により回転速度を制御する。該コンベアベルト201の下部から温水シャワーからなる加熱昇温手段219とコンベアベルト上方から熱風循環装置からなる加熱昇温手段217によって、重合炉215内でHIPE101を重合させて多孔質架橋ポリマー材料102を得る。次いで、上下のシート材203、205をはがした後、該多孔質架橋ポリマー材料102を脱水装置303の回転ロールによる搬送用コンベア302によって回転するベルト上に載せ、ベルトの上下に設けた圧縮ロール301の間に挟んでロールを回転しつつ脱水する。なお、脱水した多孔質架橋ポリマー材料102は連続して設けたエンドレスバンドナイフ式スライサー401に移送させ回転するバンドナイフ402により厚み方向にスライスすることもできる。
【0017】
以下、本発明における製造方法をこの工程にしたがって詳しく説明する。
【0018】
[I]HIPEの調製
(1)HIPEの使用原料
HIPEの使用原料は、(a)重合性単量体、(b)架橋性単量体および(c)界面活性剤を油相を構成する必須成分として含有し、(d)水を水相を構成する必須成分として含有するものであればよい。さらに、必要に応じて、(e)重合開始剤、(f)塩類、(g)その他の添加剤を油相および/または水相を構成する任意成分として含有するものであってもよい。
【0019】
(a)重合性単量体
上記重合性単量体としては、分子内に1個の重合性不飽和基を有するものであればよく、分散または油中水滴型高分散相エマルション中で重合可能であって気泡を形成できれば特に制限されるものではない。好ましくは少なくとも一部は(メタ)アクリル酸エステルを含むものであり、より好ましくは(メタ)アクリル酸エステルを20質量%以上を含むものであり、特に好ましくは(メタ)アクリル酸エステルを35質量%以上を含むものである。重合性単量体として、(メタ)アクリル酸エステルを含有することにより、柔軟性や強靭性に富む多孔質架橋ポリマー材料を得ることができるため望ましい。
【0020】
重合性単量体としては、具体的には、スチレン等のアリレン単量体;スチレン、エチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルエチルベンゼンなどのモノアルキレンアリレン単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジルなどの(メタ)アクリル酸エステル;塩化ビニル、塩化ビニリデン、クロロメチルスチレン等の塩素含有単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のアクリロニトリル化合物;その他、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N−オクタデシルアクリルアミド、エチレン、プロピレン、ブテン等が例示できる。これらは、1種を単独で使用する他、2種以上を併用してもよい。
【0021】
上記重合性単量体の使用量は、該重合性単量体と下記架橋性単量体からなる単量体成分全体の質量に対し、10〜99.9質量%の範囲であることが好ましい。この範囲で、微細な孔径の多孔質架橋ポリマー材料が得られるからである。より好ましくは30〜99質量%、特に好ましくは30〜70質量%の範囲である。重合性単量体の使用量が10質量%未満の場合には、得られる多孔質架橋ポリマー材料が脆くなったり吸水倍率が不充分となることがある。一方、重合性単量体の使用量が99.9質量%を超える場合には、得られる多孔質架橋ポリマー材料の強度、弾性回復力などが不足したり、充分な吸水量および吸水速度を確保できないことがある。
【0022】
(b)架橋性単量体
上記架橋性単量体としては、分子内に少なくとも2個の重合性不飽和基を有するものであればよく、上記重合性単量体と同様に、分散または油中水滴型高分散相エマルション中で重合可能であって気泡を形成できれば特に制限されるものではない。
【0023】
架橋性単量体としては、具体的には、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、p−エチル−ビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルアルキルベンゼン類、ジビニルフェナンスレン、ジビニルビフェニル、ジビニルジフェニルメタン、ジビニルベンジル、ジビニルフェニルエーテル、ジビニルジフェニルスルフィド等の芳香族系単量体;ジビニルフラン等の酸素含有単量体;ジビニルスルフィド、ジビニルスルフォン等の硫黄含有単量体;ブタジエン、イソプレン、ペンタジエン等の脂肪族単量体;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、イソシアヌル酸トリアリル、トリアリルアミン、テトラアリロキシエタン、並びにヒドロキノン、カテコール、レゾルシノール、ソルビトールなどの多価アルコールとアクリル酸又はメタクリル酸とのエステル化合物などが例示できる。これらは、1種を単独で使用する他、2種以上を併用してもよい。
【0024】
上記架橋性単量体の使用量は、上記重合性単量体と該架橋性単量体からなる単量体成分全体の質量に対し、0.1〜90質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは1〜70質量%、特に好ましくは30〜70質量%の範囲である。上記架橋性単量体の使用量が0.1質量%未満では、得られる多孔質架橋ポリマー材料の強度、弾性回復力などが不足したり、単位体積当たりまたは単位質量当たりの吸収量が不十分となり、充分な吸水量および吸水速度を確保できないことがある一方、上記架橋性単量体の使用量が90質量%を越えると、多孔質架橋ポリマー材料が脆くなったり吸水倍率が不充分となることがある。
【0025】
(c)界面活性剤
上記界面活性剤としては、HIPEを構成する油相中で水相を乳化し得るものであれば特に制限はなく、従来公知のノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等を使用することができる。
【0026】
このうち、ノニオン性界面活性剤としては、ノニルフェノールポリエチレンオキサイド付加物;エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのブロックポリマー;ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノミリスチレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタンジステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル;グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレエート、ジグリセロールモノオレエート、自己乳化型グリセロールモノステアレート等のグリセリン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル; ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット等のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリエチレングリコールモノオレエート等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンアルキルアミン;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;アルキルアルカノールアミド等があり、特にHLBが10以下、好ましくは2〜6のものが好ましい。これらのうち2種以上のノニオン性界面活性剤を併用してもよく、併用によりHIPEの安定性が改良される場合がある。
【0027】
カチオン性界面活性剤としては、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジタロウジメチルアンモニウムメチルサルフェート、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩;ココナットアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩;ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ラウリルベタイン、ステアリルベタイン、ラウリルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等のアルキルベタイン;ラウリルジメチルアミンオキサイド等のアミンオキサイドがある。カチオン性界面活性剤を用いることにより、得られる多孔質架橋ポリマー材料を吸水材等に利用する場合に優れた抗菌性等を付与することもできる。
【0028】
アニオン界面活性剤としては、アニオン部と油溶性部とを有するものが好ましく使用でき、例えば、ナトリウムドデシルサルフェート、カリウムドデシルサルフェート、アンモニウムアルキルサルフェート等の如きアルキルサルフェート塩;ナトリウムドデシルポリグリコールエーテルサルフェート;ナトリウムスルホリシノエート;スルホン化パラフィン塩等の如きアルキルスルホネート;ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート、アルカリフェノールヒドロキシエチレンのアルカリ金属サルフェート等の如きアルキルスルホネート;高アルキルナフタレンスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ナトリウムラウレート、トリエタノールアミンオレエート、トリエタノールアミンアヒエート等の如き脂肪酸塩;ポリオキシアルキルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンカルボン酸エステル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンフェニルエーテル硫酸エステル塩;コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩等の如き二重結合を持った反応性アニオン乳化剤等が使用できる。アニオン性界面活性剤にカチオン性界面活性剤を併用してHIPEを調製することができる。
【0029】
なお、ノニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤を併用するとHIPEの安定性が改良される場合がある。
【0030】
上記界面活性剤の使用量は、重合性単量体と架橋性単量体からなる単量体成分全体の質量100質量部に対し、1〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは3〜15質量部である。界面活性剤の使用量が1質量部未満の場合には、HIPEの高分散性が不安定化することがあったり、界面活性剤本来の作用効果が充分に発現できないことがある。一方、上記界面活性剤の使用量が30質量部を超える場合には、得られる多孔質架橋ポリマー材料が脆くなり過ぎることがあり、これを超える添加に見合うさらなる効果が期待できず、不経済である。
【0031】
(d)水
上記水は、水道水、純水、イオン交換水の他、廃水の再利用を図るべく、多孔質架橋ポリマー材料を製造して得た廃水をそのまま、または所定の処理を行ったものを使用することができる。
【0032】
上記水の使用量は、連続気泡を有する多孔質架橋ポリマー材料の使用目的(例えば、吸水材、吸油材、防音材、フィルターなど)等によって適宜選択することができる。すなわち、水の使用量は、HIPEの水相/油相(W/O)比を変化させることによって多孔質架橋ポリマー材料の空孔比率が決定されることから、用途、目的に合致する空孔比率になるようにW/O比を選択すれば、自ずと決定される。
【0033】
(e)重合開始剤
本発明の目的である非常に短時間でのHIPEの重合を達成するためには、重合開始剤を用いることが好ましい。該重合開始剤としては、逆相乳化重合で使用できるものであればよく、水溶性、油溶性の何れも使用することができる。
【0034】
このうち、水溶性重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等のアゾ化合物;過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩;過酢酸カリウム、過酢酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過炭酸ナトリウム等の過酸化物等が挙げられる。
【0035】
油溶性重合開始剤としては、例えば、クメンヒドロパーオキサイド、t−ブチルヒドロペルオキシド、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、p−メンタンヒドロペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロペルオキシド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシドなどの過酸化物などが挙げられる。これら重合開始剤は、単独で用いてもよく、また、2種類以上を併用してもよい。10時間で濃度が半分になるときの温度である10時間半減期温度の異なる2種以上の重合開始剤を併用する事が好ましい。当然のことながら、水溶性重合開始剤と油溶性重合開始剤とを併用してもよいことはいうまでもない。
【0036】
上記逆相乳化重合で使用できる重合開始剤の使用量は、上記単量体成分および重合開始剤の組み合わせにもよるが、重合性単量体と架橋性単量体からなる単量体成分全体の質量100質量部に対し、0.05〜25質量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは1.0〜10質量部である。上記重合開始剤の使用量が0.05質量部未満の場合には、未反応の単量体成分が多くなり、従って、得られる多孔質架橋ポリマー材料中の残存単量体量が増加するので好ましくない。一方、上記重合開始剤の使用量が25質量部を超える場合には、重合の制御が困難となったり、得られる多孔質架橋ポリマー材料中の機械的性質が劣化するので好ましくない。
【0037】
さらに、上記重合開始剤と還元剤とを組み合わせてなるレドックス重合開始剤系を使用しても良い。この場合、重合開始剤としては、水溶性、油溶性の何れも使用することができ、水溶性レドックス重合開始剤系と油溶性レドックス重合開始剤系とを併用してもよい。
【0038】
上記還元剤のうち、水溶性還元剤としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カリウム、L−アスコルビン酸、第1鉄塩、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシレート、グルコース、デキストロース、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン等が挙げられる。また、油溶性還元剤としては、例えば、ジメチルアニリン、オクチル酸スズ、ナフテン酸コバルト等が挙げられる。これらレドックス重合開始剤系の還元剤は、単独で用いてもよく、また、2種類以上を併用してもよい。
【0039】
上記レドックス重合開始剤系の場合の還元剤の含有比率(質量比)は、重合開始剤(酸化剤)/還元剤=1/0.01〜1/10、好ましくは1/0.2〜1/5程度である。
【0040】
なお、上記重合開始剤(レドックス重合開始剤系を含む)は、少なくともHIPEの重合時に存在していればよく、後述するように、▲1▼油相および/または水相中に予め添加してHIPEを形成しても良いほか、▲2▼HIPEを形成させると同時に、または▲3▼形成させた後に、添加しても良い。また、レドックス重合開始剤系の場合には、重合開始剤(酸化剤)と還元剤を別々のタイミングで添加させても良い。
【0041】
(f)塩類
上記塩類としては、HIPEの安定性を改良するために必要であれば使用してもよい。
【0042】
上記塩類としては、具体的には、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウムなどのアルカリ金属、アルカリ土類金属のハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩などの水溶性塩が挙げられる。これらの塩類は、単独で用いてもよく、また、2種類以上を併用してもよい。これらの塩類は、水相中に添加することが好ましい。なかでも、重合時のHIPEの安定性の観点から多価金属塩が好ましい。
【0043】
この様な塩類の使用量は、水100質量部に対し、0.1〜20質量部とすることが好ましく、より好ましくは0.5〜10質量部である。塩類の使用量が20質量部を超える場合には、HIPEから搾り出された廃水中に多量の塩類を含むことになり、廃水を処理するコストがかさみ、これを超える添加に見合うさらなる効果も期待できず不経済である。塩類の使用量が0.1質量部未満の場合には、塩類の添加による作用効果が十分に発現できないおそれがある。
【0044】
(g)その他添加剤
さらに、他の各種添加剤をこれらが有する性能・機能を付加することにより、製造条件や得られるHIPE特性や多孔質架橋ポリマー材料の性能の向上につながるものであれば適当に使用しても良く、例えば、pH調整のために、塩基および/または緩衝剤を加えても良い。これらの他の添加剤の使用量については、それぞれの添加の目的に見合うだけの性能・機能、さらには経済性を十分に発揮できる範囲内で添加すればよい。このような添加剤としては、活性炭、無機粉末、有機粉末、金属粉末、消臭剤、抗菌剤、防かび剤、香料、各種高分子などが例示できる。
【0045】
(2)HIPEの調製法
本発明に用いることのできるHIPEの調製法については、特に制限されるものではなく、従来既知のHIPEの調製法を適宜利用することができる。以下にその代表的な調製法につき、具体的に説明する。
【0046】
まず、それぞれ上記に規定する使用量にて、重合性単量体、架橋性単量体および界面活性剤、さらに必要に応じて添加し得る油溶性重合開始剤(油溶性レドックス重合開始剤系を含む)、その他の添加剤からなる油相を構成する成分を所定温度で撹拌し均一の油相を調製する。
【0047】
一方、それぞれ上記に規定する使用量にて、水に、さらに必要に応じて添加し得る水溶性重合開始剤(水溶性レドックス重合開始剤系を含む)、塩類、その他の添加剤からなる水相を構成する成分を加えながら撹拌し、30〜95℃の所定温度に加温して均一の水相を調製する。
【0048】
次に、上記により調製された、単量体成分、界面活性剤などの混合物である油相と、水、水溶性塩などの混合物である水相とを合一し、以下に説明するHIPEの形成温度(乳化温度)にて、効率良く混合撹拌して適度のせん断力をかけ、乳化することによってHIPEを安定に調製することができる。特に、HIPEを安定に調製するための水相と油相の撹拌・混合法としては、油相の撹拌下、油相に水相を数分ないし数十分に亘って連続的に添加する方法が好ましい。また、水相成分の一部と油相成分とを撹拌・混合してヨーグルト状のHIPEを形成し、その後に残りの水相成分を加えながら撹拌・混合して所望のHIPEを製造しても良い。
【0049】
(3)水相/油相(W/O)比
こうして得られるHIPEの水相/油相(W/O)比(質量比)は、連続気泡を有する多孔質架橋ポリマー材料の使用目的(例えば、吸水材、吸油材、防音材、フィルターなど)等によって適宜選択することができるものであり、特に制限されるものではなく、先に規定したとおり3/1以上のものであればよいが、好ましくは10/1〜250/1、特には10/1〜100/1である。なお、W/O比が3/1未満の場合には、多孔質架橋ポリマー材料の水やエネルギーを吸収する能力が不充分で、開口度も低くなり、得られる多孔質架橋ポリマー材料の表面の開口度が低くなり、十分な通液性能等が得られないおそれがある。但し、W/O比を変化させることによって多孔質架橋ポリマー材料の空孔比率が決定される。したがって、用途、目的に合致する空孔比率になるようにW/O比を選択することが望ましい。例えば、オムツや衛生材料等その他各種吸収材として使う場合、W/O比は10/1〜100/1程度とするのが好ましい。なお、水相と油相との撹拌・混合により得られるHIPEは、通常、白色、高粘度のエマルションである。
【0050】
(4)HIPEの製造装置
上記HIPEの製造装置としては、特に制限されるものではなく従来公知の製造装置を利用することができる。例えば、水相と油相とを混合撹拌するために使用する撹拌機(乳化器)としては、公知の撹拌機、混練機が使用できる。例えば、プロペラ型、櫂型、タービン型などの羽根の撹拌機、ホモミキサー類、ラインミキサー、ピンミルなどが例示でき、これらの何れでもよい。
【0051】
(5)HIPEの形成温度
HIPEの形成温度(以下、乳化温度ともいう。)は、通常20〜100℃の範囲であり、HIPEの安定性の点からは、好ましくは30〜95℃の範囲、より好ましくは40〜95℃、特に好ましくは40〜85℃、最も好ましくは55〜70℃の範囲である。HIPEの形成温度が20℃未満の場合には、硬化温度によっては加熱に長持間を有する場合があり、一方、HIPEの形成温度が100℃を超える場合には、形成したHIPEの安定性に劣る場合がある。なお、油相および/または水相の温度を予め所定の乳化温度に調整しておいて撹拌・混合して乳化し、所望のHIPEを形成することが望ましい。ただし、HIPEの調製では、水相の分量が多いため、少なくとも水相の温度を所定の乳化温度に調整しておくことが好ましいといえる。また、乳化中に重合性単量体や架橋性単量体の重合が開始され、重合体が生成するとHIPEが不安定になることがある。このためHIPE調製時に予め重合開始剤(レドックス重合開始剤系を含む)を含ませる場合は、HIPEの乳化温度は、重合開始剤(酸化剤)が実質的に熱分解を起こし、これによってHIPEの重合が開始されない温度とするのが好ましい。このため、乳化温度は、重合開始剤(酸化剤)の半減期が10時間である温度(10時間半減期温度)よりも低温とすることがより好ましい。
【0052】
[II] 多孔質架橋ポリマー材料の製造
(1)重合開始剤の添加
(a)重合開始剤の添加の時期
本発明では、▲1▼HIPEを形成させる前の水相および/または油相に重合開始剤を予め添加、混合するか、▲2▼HIPEを形成させると同時に、または▲3▼HIPEを形成させた後に重合開始剤を添加させる。▲2▼による場合にも、上記HIPEの形成法において説明した▲1▼と同様に、レドックス重合開始剤系を用いても良い。
【0053】
(b)重合開始剤の添加方法
重合開始剤または還元剤が油溶性の場合は油相に、水溶性の場合は水相に予め添加しておく方法が簡便である。また、水相に油溶性重合開始剤(酸化剤)または還元剤の乳化物を加える方法なども例示できる。
【0054】
(c)重合開始剤の使用形態
また、重合開始剤は、無希釈、または水や有機溶剤の溶液、あるいは分散体などの形態で使用することができる。HIPEを形成させると同時に、またはHIPEを形成させた後に添加した場合、添加した重合開始剤は、単量体成分の不均一な重合を回避するためにHIPEにすばやく均一に混合することが重要である。さらに、重合開始剤を混合したHIPEは、速やかに重合装置である重合容器あるいは連続重合機に導入する。かかる観点から、HIPEを調製する乳化器から重合容器あるいは連続重合機への経路に還元剤または酸化剤その他の重合開始剤の導入経路を設けてHIPEに添加し、ラインミキサーで混合するなどの方法が推奨される。
【0055】
また、重合開始剤を含むHIPEでは、乳化温度と重合温度との温度差が小さいときには、乳化温度が重合温度に近いために乳化中に重合性単量体や架橋性単量体の重合が開始され、重合体が生成するとHIPEが不安定になることがあるので、還元剤または酸化剤その他の重合開始剤を重合直前にHIPEに加える方法、即ち上記▲2▼または▲3▼の方法が望ましい。
【0056】
なお、重合開始剤の使用量については、上記HIPEの調製法において説明した▲1▼と同様であり、変わるものではない。
【0057】
(2)HIPEの予備重合
(a)予備重合の方法
本発明におけるHIPEの一部を重合する操作、即ち予備重合の方法は特に限定なく、公知の槽、撹拌機つきの容器、スタティックミキサーなどを使用することができ、更にはHIPEを重合装置に導くパイプ、ホッパーやダイの中で所定時間滞留させて予備重合することもできる。これらの装置は温水ジャケットなどの加熱手段を備えていることが好ましい。
【0058】
本発明の予備重合において、HIPEの重合率の指標は「ゲル化率」とする。ここに本発明におけるゲル化率(%)は、実施例の項に記載するゲル化率の測定方法に従って算出するものとし、(乾燥後の試料の質量/洗浄前の試料の質量)×100で示す値である。また、HIPEは重合開始剤を添加した後は、重合に適する温度を維持する限り重合を継続する。このため、本発明におけるゲル化率は、HIPEを賦形する直前のHIPEにおけるゲル化率をいうものとする。本発明においては、予備重合は、通常ゲル化率が1〜40%の範囲である。後工程の重合時間の短縮の観点から、好ましくは5〜35%の範囲、より好ましくは10〜30%、特に好ましくは15〜25%の範囲である。ゲル化率が1%未満では、後工程の重合時間短縮効果が十分でなく、ゲル化率が40%を越える場合には、HIPEの流動性が劣化して所定の形状に賦形し難くなることがあるので好ましくない。
【0059】
なお、本発明ではHIPEを予備重合するものであり、HIPE調製前の油相に含まれるモノマーを重合するものではない。油相のモノマーのみを重合すると調製後のHIPEの安定性が損なわれる場合があるからである。HIPEの一部を賦形前に重合することで、賦形の際の流動性を確保しつつ後重合に要する時間を短縮し、これによって後重合に使用する重合装置の短縮化を図ることを目的とするからである。
【0060】
(b)予備重合の温度
本発明のHIPEの予備重合における温度は、使用する重合開始剤の種類や配合量によって適宜選択できるが、通常、常温〜100℃の範囲である。HIPEの安定性、重合速度の観点から、好ましくは50〜100℃の範囲、より好ましくは65〜95℃、特に好ましくは80〜95℃の範囲である。予備重合温度が常温未満では、予備重合に長時間を要し、工業的に好ましくない場合がある。他方、重合温度が100℃を越える場合には、得られる多孔質架橋ポリマー材料の孔径が不均一となったり、また多孔質架橋ポリマー材料の強度が低下するため好ましくない場合がある。また、予備重合温度は、予備重合中に2段階、さらには多段階に変更させてもよく、こうした予備重合の仕方を排除するものではない。
【0061】
(c)予備重合の時間
本発明のHIPEの予備重合の時間も、使用する重合開始剤の種類や配合量によって適宜選択できるが、通常は、5秒〜6時間の範囲である。好ましくは5秒〜1時間以内、より好ましくは10秒〜30分、特に好ましくは10秒〜15分の範囲である。予備重合の時間が6時間を超える場合には、生産性に劣り工業的に好ましくない場合がある。なお、5秒未満の場合には、ゲル化率が十分上がらない場合がある。
【0062】
(3)予備重合されたHIPEの後重合
(a)重合方法
予備重合されたHIPEは、所望の形に賦形した後に、HIPE中の残存モノマーを重合する。本発明では、予備重合した後のHIPEの重合を便宜上「後重合」と称して予備重合と区別する。後重合は、HIPEを賦形した後にバッチ法または連続法で行うことができる。ここに本明細書における「連続法」とは、少なくとも予備重合後のHIPEを連続的に賦形装置に供給し、次いでこれらを連続的に後記する後重合装置にて後重合する場合をいい、「バッチ法」とは、予備重合後のHIPEを所定の形状に賦形した後、賦形されたHIPEを適当な個数毎にまとめて重合器中で後重合させる操作を行うことをいう。
【0063】
HIPEを連続的に重合する連続重合法は、生産効率が高く、本発明のHIPEを予備重合することによる重合時間の短縮効果と重合台の短縮化とを最も有効に利用できるので好ましい方法である。具体的には、シート状の多孔質架橋ポリマーの連続重合法としては、例えば、加熱装置によってベルトコンベアーのベルト表面が加温される構造等の、走行するベルト上に予備重合したHIPEを連続的に供給し、ベルトの上で平滑なシート状にHIPEを賦形しつつ後重合する方法がある。該コンベアーのエマルション接触面が平滑であれば、予備重合したHIPEを所定厚みでベルト上に供給することで所望の厚みの連続したシート状物を得ることができる。
【0064】
また、三次元立体形状の多孔質架橋ポリマーを製造するには、HIPEを該形状のメス型に注入して重合する方法、即ち注型重合を行うこともできる。なお、注型重合は上記のごとくバッチ法でもよく、型を連続して走行させる連続法でもよい。
【0065】
(b)後重合温度
本発明のHIPEの後重合温度は、予備重合のゲル化率や配合した重合開始剤の種類および配合量によって適宜選択することができるが、通常、常温〜150℃の範囲である。HIPEの安定性、重合速度の観点から、好ましくは60〜110℃の範囲、より好ましくは80〜110℃、特に好ましくは90〜100℃の範囲である。後重合温度が常温未満では、後重合に長時間を要し、工業的生産に好ましくない場合がある。他方、後重合温度が150℃を越える場合には、得られる多孔質架橋ポリマー材料の孔径が不均一となったり、また多孔質架橋ポリマー材料の強度が低下するため好ましくない場合がある。また、後重合温度は、後重合中に2段階、さらには多段階に変更させてもよく、こうした重合の仕方を排除するものではない。
【0066】
(c)後重合時間
本発明の一部硬化したHIPEの後重合時間も、予備重合のゲル化率や配合した重合開始剤の種類および配合量によって適宜選択することができるが、1分〜20時間の範囲である。好ましくは1時間以内、より好ましくは30分以内、特に好ましくは1〜20分の範囲である。後重合時間が20時間を超える場合には、生産性に劣り工業的に好ましくない場合がある。なお、1分未満の場合には、多孔質架橋ポリマー材料の強度が十分でない場合がある。勿論上記より長い後重合時間を採用することを排除するものではない。本発明では、HIPEを予備重合した後に賦形するものであり、このプロセス自体の選択によって後重合に要する時間を短縮することができるものである。したがって、たとえ従来と同様の重合条件で後重合を行った場合でも、予備重合によって残存モノマー量が減少しているために後重合に要する時間を短縮することができるのである。特に、後重合は賦形後に行われることから、賦形後の重合槽の効率化をはかることができ、連続的なシート状物の製造においては重合台長さを短くすることができるのである。
【0067】
また、予備重合を行わずに重合を行うと、得られる多孔質架橋ポリマー材料の耐圧縮歪性などの物性が低下することが判明した。この理由については明確ではないが、重合時間が短縮される結果、HIPEの硬化が不十分となるために多孔質架橋ポリマーの骨格が形成されないものと考えられる。本発明では、予備重合を行うことで重合時間を短縮できるとともに、耐圧縮歪性などの多孔質架橋ポリマー材料本来の物性も維持できるのである。
【0068】
なお、後重合後は、所定の温度まで冷却ないし徐冷されるが、特に限定されず、後重合された多孔質架橋ポリマー材料を冷却することなく、後述する脱水や圧縮などの後処理工程に移行しても良い。
【0069】
(d)後重合装置
本発明に用いることのできる後重合装置は、特に制限されるものではなく、例えば、温度調整装置を備えたベルトコンベア方式の連続重合機、連続式注型重合機などを使用できる。連続重合機は、重合時間に応じた長さを必要とするが、本発明の方法によれば、HIPEを予備重合するので重合時間が短く、重合ラインが長大にならずコンパクトな装置とすることができる。もちろん、バッチ式重合槽やバッチ式注型重合機を用いることもできる。
【0070】
(4)多孔質架橋ポリマー材料形成後の後処理(製品化)工程
(a)脱水
重合完結により形成された多孔質架橋ポリマー材料は、通常、圧縮、減圧吸引およびこれらの組み合わせによって脱水する。一般に、こうした脱水により、使用した水の50〜98%の水が脱水され、残りは多孔質架橋ポリマー材料に付着して残る。
【0071】
脱水率は、多孔質架橋ポリマー材料の用途などによって、適当に設定する。通常、完全に乾燥した状態での多孔質架橋ポリマー材料1g当たり、1〜10gの含水量、あるいは1〜5gの含水量となるように設定すればよい。
【0072】
(b)圧縮
本発明の多孔質架橋ポリマー材料は、元の厚みの数分の1に圧縮した形態にすることができる。圧縮したシート状などの形態は、元の多孔質架橋ポリマー材料に比べて容積が小さく、輸送や貯蔵のコストを低減できる。圧縮形態の多孔質架橋ポリマー材料は、多量の水に接すると吸水して元の厚みに戻る性質があり、吸水速度は元の厚みのものより速くなる特徴がある。輸送や在庫スペースの節約、取り扱いやすさの点から、元の厚みの1/2以下に圧縮するのが効果的である。より好ましくは元の厚みの1/4以下に圧縮するのがよい。
【0073】
(c)洗浄
多孔質架橋ポリマー材料の表面状態を改良するなどの目的で、多孔質架橋ポリマー材料を純水や任意の添加剤を含む水溶液、溶剤で洗浄してもよい。
【0074】
(d)乾燥
以上の工程で得られた多孔質架橋ポリマー材料は、必要であれば、熱風、マイクロ波などで加熱乾燥してもよく、また加湿して水分を調整してもよい。
【0075】
(e)切断
以上の工程で得られた多孔質架橋ポリマー材料は、必要であれば、所望の形状、サイズに切断して各種用途に応じた製品に加工してもよい。
【0076】
(f)含浸加工
洗浄剤、芳香剤、消臭剤、抗菌剤などの添加剤を含浸加工して機能性を付与することもできる。
【0077】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、本実施例において、多孔質架橋ポリマー材料の性能は以下のようにして測定・評価した。
【0078】
<ゲル化率>
(1)試料約30gを精秤し1Lのプラスチック容器に入れ、500mLのアセトンで16時間攪拌し洗浄する。
【0079】
(2)アセトンで洗浄された試料を廬別し、1Lのプラスチック容器に入れ、500mLのイオン交換水で1.5時間攪拌洗浄を2回行う。
【0080】
(3)イオン交換水で洗浄された試料を廬別し、1Lのプラスチック容器に入れ、再度500mLのアセトンで3時間攪拌し、洗浄する。
【0081】
(4)アセトンで再度洗浄された試料を廬別し、減圧乾燥機(TABAI,VACUUM OVEN LHV-122)を用いて60℃で16時間減圧乾燥する。
【0082】
(5)乾燥後の試料の質量を精秤する。
【0083】
(6)以下に示した式1によりゲル化率(%)を計算する。
【0084】
式1:ゲル化率(%)={(乾燥後の試料の質量)/(洗浄前の試料の質量)}×100
<自由膨潤倍率>
1cm角に裁断した予め乾燥、秤量した試料を用い、十分な量の純水にこの試料を浸す。純水を吸収し膨張した試料を、直径120mm厚さ5mmのガラスフィルター(#0:Duran社製)の上に30秒間放置して液切りを行なった後、吸液した試料の質量を測定し、以下の式2で多孔質架橋ポリマー材料の自由膨潤倍率(g/g)を求める。
【0085】
式2:自由膨潤倍率=(吸液後の試料質量−吸液前の試料質量)/(吸液前の試料質量)
<耐圧縮歪み性(RTCD)>
試料を厚さ5mm、直径2.87cmの円形状にカットする。カットした試料を32℃の生理食塩水につけ、つけた状態で死荷重厚さ計(小野測器製造のデジタルリニヤゲージ、モデルEG−225)を用いて無加圧時の厚さを測定する。次に15分後試料に5.1kPaの荷重をかけ、厚さが平衡状態に達したときを加圧時の厚さとして測定する。耐圧縮歪み性(RTCD)(%)を以下に示した式3に従い算出する。
【0086】
式3:RTCD(%)=[(無加圧時の厚さ−加圧時の厚さ)/(無加圧時の厚さ)]×100
HIPEの調製例
HIPEを形成するための連続式乳化プロセスで使用する水相を、無水塩化カルシウム36.3kgと過硫酸カリウム568gを純水378Lに溶解して調製した。ついで、スチレン1600g、2−エチルヘキシルアクリレート4800g、55%ジビニルベンゼン1600gの混合物にジグリセリンモノオレエート960gを添加し油相とした。水相は温度75℃、流量56.5cm3/s、油相は温度22℃、流量1.13g/sでそれぞれ別々に動的混合装置に供給し、動的混合装置内で1800rpmで回転するピンインペラーによって完全に混合、一部再循環し57.6cm3/sでHIPEを得た。
【0087】
実施例1
HIPEの調製例で得られたこのHIPEを10分間75℃に保温されたホッパー内で滞留させゲル化率が15%の一部硬化させた油中水型エマルションを得た後、図1の装置の帯状プレート上にキャストし、内部温度120℃に設定された重合炉を移動速度20cm/minで通過させて20分間で重合させ硬化したHIPEを得た。
【0088】
ゲル化率が15%のHIPEは、帯状プレート上にキャストすると、適度な流動性によって容易にシート状に賦形することができた。
【0089】
また、得られた重合物、即ち多孔質架橋ポリマー材料の自由膨潤倍率は47g/g、RTCDは6%と低く加圧下でのひずみが小さく加圧下での性能が良い物であった。
【0090】
比較例1
HIPEの調製例で得られたHIPEを、予備重合をせずに、実施例1で使用したと同じ図1の装置の帯状プレート上にキャストし、内部温度120℃に設定された重合炉を移動速度20cm/minで通過させて20分間で硬化させて多孔質架橋ポリマー材料を得た。得られたポリマー材料の自由膨潤倍率は47g/g、RTCDは25%と高くものであった。このポリマー材料は更に10分間重合時間を延長すると、実施例1と同等性能のポリマー材料を得る事ができた。すなわち、予備重合せずに実施例1と同等性能のポリマー材料を得るには、重合時間の延長と、この重合時間の延長に伴って、重合炉の長さを50%長く必要とした。
【0091】
実施例2
HIPE調製の際の水相の温度を95℃とし、過硫酸カリウム568gに代えて過硫酸ナトリウム2270gを使用する他は、前記HIPEの調製例の操作を繰り返してHIPEを得て、これを95℃に保温されたスタティックミキサー中を20秒で通過させたゲル化率が6%の一部重合HIPEを得た。得られたHIPEを図1の装置の帯状プレート上にキャストし、内部温度120℃に設定された重合炉を移動速度30cm/minで通過させて6分間で重合させた。
【0092】
ゲル化率が6%のHIPEは、帯状プレート上にキャストすると、適度な流動性によって容易にシート状に賦形することができた。
【0093】
また、得られた多孔質架橋ポリマー材料の自由膨潤倍率は47g/g、RTCDは8%と低く、加圧下でのひずみが小さく加圧下での性能がよいものであった。
【0094】
比較例2
実施例2と同様に操作してHIPEを得た後、予備重合を行わずに実施例2と同じ図1の装置の帯状プレート上にキャストし、内部温度120℃に設定された重合炉を移動速度30cm/minで通過させて6分間で重合させた。得られた多孔質架橋ポリマー材料の自由膨潤倍率は47g/gであるが、RTCDは13%であって加圧下の性能が不十分であった。
【0095】
実施例3
実施例1と同様にしてゲル化率が15%の一部重合させたHIPEを、3×5×10cmの直方体形状のメス型に充填して内部温度を120℃に設定された恒温槽に20分間入れて重合した。
【0096】
ゲル化率が15%のHIPEは、適度な流動性によって容易にメス型に充填することができ、内部に亘り均一な多孔質なブロック状に硬化した。
【0097】
また、得られた多孔質架橋ポリマー材料の自由膨潤倍率は47g/g、RTCDは6%と低く、加圧下でのひずみが小さく加圧下での性能がよいものであった。
【0098】
比較例3
HIPEの調製例で得られたHIPEを、予備重合することなく、実施例3で使用した3×5×10cmの直方体形状のメス型に充填し、内部温度を120℃に設定された恒温槽に20分間入れて重合した。得られた多孔質架橋ポリマー材料の自由膨潤倍率は47g/g、RTCDは30%と高く、加圧下での性能が不十分であった。
【0099】
比較例4
前記HIPEの調製例に示した油相にメチルエチルケトンパーオキサイド80gを加え、60℃に加熱し、予めモノマーを一部重合させて重合物を含む(ゲル化率10%)油相を調製した。次いで、これを水相と共に混合した。次いで、得られたHIPEを予備重合しようとしたが、遊離水を含む不均一なHIPEしか得られず、予備重合を行うことはできなかった。
【0100】
産業上の利用可能性
本発明は、吸収特性および機械的強度に優れる多孔質架橋ポリマー材料を短時間で製造する方法であり、生産効率が向上し、工業的な生産において有用である。特に、連続生産の場合には、装置の重合部を小型化できるため、狭い製造スペースでも効率的な生産ができるため、極めて優れた産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明の多孔質架橋ポリマー材料の製造方法における、好適な連続重合装置の代表的な一実施態様を表す概略側面図である。

Claims (6)

  1. 油中水滴型高分散相エマルションから多孔質架橋ポリマー材料を製造する方法において、単量体成分を含む油相と水を含む水相とを混合および乳化して油中水滴型高分散相エマルションを得て、該得られたエマルションを一部重合させた後に所定の形状に賦形し、次いで後重合を完結させる、多孔質架橋ポリマー材料の製造方法。
  2. 該一部重合が、ゲル化率1〜40%の範囲である、請求項1記載の製造方法。
  3. 該一部重合したエマルションを、コンベアーに連続的に供給したのちに所定形状の賦形および後重合をするものである、請求項1または2記載の製造方法。
  4. 該コンベアーのエマルション接触面が平滑なシートであり、該一部重合したエマルションを所定厚みで供給しつつ後重合するものである、請求項3記載の製造方法。
  5. 該コンベアーのエマルション接触面が、モールドを有し、該モールドに一部重合したエマルションを供給し、次いで後重合するものである、請求項3記載の製造方法。
  6. 該一部重合後のエマルションを、モールドに供給し、次いで後重合するものである、請求項1または2記載の製造方法。
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