JP4325771B2 - 空気入りラジアルタイヤ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ランフラット性を有する空気入りラジアルタイヤに関し、さらに詳しくは、パンク走行時の耐久性を向上するようにした空気入りラジアルタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ランフラット性を有する空気入りラジアルタイヤとして、サイドウォール部に断面三日月状のゴム補強層を埋設したものが提案されている。この空気入りラジアルタイヤは、図2に示すように、少なくとも2層のカーカス層11をトレッド部12から左右両側のサイドウォール部13を経てビード部14に至るように配置し、そのタイヤ幅方向の両端部11eをビードコア15の廻りにタイヤ内側から外側へ巻き上げたり、ビードコア15の外側を通して該ビードコア15の内周側まで延長させた構成になっている。そして、カーカス層11の層間や最内側に位置するカーカス層11の内面に、サイドウォール部13に沿って延在する断面三日月状のゴム補強層16を設けるようにしている。
【0003】
上述のように構成されるランフラット性を有する空気入りラジアルタイヤは、断面三日月状のゴム補強層の剛性に基づいてサイドウォール部の撓みを抑えるので、パンク状態であっても或る程度の速度で或る程度の距離を走行することができる。
【0004】
しかしながら、カーカス層の層間に断面三日月状のゴム補強層を挿入した場合、グリーンタイヤを加硫成形する際に発生するカーカス層の引っ張り度合いがカーカス層毎に大きく異なってしまう。即ち、左右両側のビード部がカーカス層を引っ張る度合いは、グリーンタイヤのペリフェリと加硫後のペリフェリとの差に起因するが、この加硫前後のペリフェリの差が断面三日月状のゴム補強層の存在によってカーカス層毎に大きく異なってしまうのである。このようにカーカス層の引っ張り度合いがカーカス層毎に大きく異なると、ノンインフレート時のカーカス層毎の張力が不均一となり、パンク走行時に特定のカーカス層に対して応力集中が発生し、ランフラットタイヤとしての耐久性が不十分になるという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、パンク走行時の耐久性を改善したランフラット性を有する空気入りラジアルタイヤを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を解決するための本発明の空気入りラジアルタイヤは、複数本の補強コードをタイヤ半径方向に配向してなる少なくとも2層のカーカス層本体を一方のビード部からトレッド部を経て他方のビード部に至るように配置し、そのタイヤ幅方向の両端部をビードコアの廻りに巻き上げることなく終端させると共に、各ビードコアの内周側から外周側へ折り返されてトレッド部まで延在することなく各ビード部に配置されたカーカスホールド層を設け、該カーカスホールド層で前記カーカス層本体の端部を挟み込むようにし、少なくとも前記カーカス層本体の層間にサイドウォール部に沿って延在する断面三日月状のゴム補強層を設けたことを特徴とするものである。
【0007】
このようにサイドウォール部に断面三日月状のゴム補強層を設けたランフラット性を有する空気入りラジアルタイヤにおいて、タイヤ幅方向の両端部をビードコアに巻き上げることなく終端させたカーカス層本体と、この終端部を挟み込むカーカスホールド層とを組み合わせることにより、加硫成形時にカーカス層本体に掛かる張力を該カーカス層本体とカーカスホールド層との剪断変位で吸収することができ、その結果としてノンインフレート時のカーカス層本体の張力が略均一となる。そのため、パンク走行時におけるカーカス層本体への応力集中を回避し、ランフラットタイヤとしての耐久性を向上することができる。
【0008】
本発明において、ランフラット性を十分に確保するために、カーカス層本体の層間のみならず最内側に位置するカーカス層本体の内面にもサイドウォール部に沿って延在する断面三日月状のゴム補強層を設けると良い。
【0009】
また、カーカス層本体とカーカスホールド層とのタイヤ半径方向のオーバーラップ長さは最大許容空気圧100kPa当たり10mm以上にすることが好ましい。このオーバーラップ長さを確保することにより、カーカス層本体とカーカスホールド層とから構成されるタイヤケーシングに十分な強度を与えることができる。
【0010】
更に、カーカス層本体のタイヤ周方向の両端部を互いに重ね合わせて接合する一方で、カーカスホールド層のタイヤ周方向の両端部は互いに突き合わせて接合することが好ましい。即ち、カーカスホールド層をバットスプライス化することにより、ビードコアの内周側にスプライス部によるコードの重なりが存在しなくなるので、タイヤのユニフォミティやリムに対する嵌合性を向上することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1は本発明の実施形態からなる空気入りラジアルタイヤを示すものである。図1において、空気入りラジアルタイヤの内部で骨格を形成するタイヤケーシング10は、複数本の補強コードを平行に引き揃えてなる3層のカーカス層本体1A〜1Cと、複数本の補強コードを平行に引き揃えてなるカーカスホールド層7とから構成されている。
【0013】
カーカス層本体1A〜1Cは、トレッド部2から左右のサイドウォール部3を経てビード部4に至るように配置され、そのタイヤ幅方向の端部1eがビードコア5に巻き上げられることなくビードコア5の外周側の位置で終端となっている。このように構成されるカーカス層本体1A〜1Cは、タイヤ周方向の両端部を互いに重ね合わせることでスプライスされている。
【0014】
一方、カーカスホールド層7は、カーカス層本体1A〜1Cの端部1eを挟み込むようにビードコア5の内周側から外周側へ折り返されている。このように構成されるカーカスホールド層7は、タイヤ周方向の両端部を互いに重ね合わせることなく突き合わせることでスプライスされている。
【0015】
最外側のカーカス層本体1Aと中間のカーカス層本体1Bとの間には、サイドウォール部3に沿って延在する断面三日月状のゴム補強層6Aが挿入されている。このゴム補強層6Aは通常の空気入りラジアルタイヤにおけるビードフィラーに相当するものであるが、ランフラット性を発揮するようにトレッド側まで延在している。中間のカーカス層本体1Bと最内側のカーカス層本体1Cとの間には、サイドウォール部3に沿って延在する断面三日月状のゴム補強層6Bが挿入されている。更に、最内側のカーカス層本体1Cの内面にも、サイドウォール部3に沿って延在する断面三日月状のゴム補強層6Cが設けられている。
【0016】
これらゴム補強層6A〜6Cは、サイドウォール外表面のゴム組成物よりも硬いゴム組成物から構成され、タイヤ最大幅位置付近からトレッド側に向けて徐々に薄くなっている。各ゴム補強層6A〜6Cの硬さは、JIS−A硬度で70〜90の範囲にすると良い。更に、各ゴム補強層6A〜6Cのタイヤ最大幅位置での厚さは2.5〜4.5mmの範囲にすると良い。
【0017】
また、タイヤ内面にはインナーライナー層8が設けられている。一方、トレッド部2におけるカーカス層本体1A〜1Cの外周側には、複数本の補強コードを平行に引き揃えてなる2層のベルト層9A,9Aが設けられている。これらベルト層9A,9Aは補強コードがタイヤ周方向に対して傾斜し、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。更に、ベルト層9A,9Aの外周側には、補強コードをタイヤ周方向に配向させてなるベルトカバー層9Bが設けられている。
【0018】
上述した空気入りラジアルタイヤは、サイドウォール部3に断面三日月状のゴム補強層6A〜6Cを備えており、これらゴム補強層6A〜6Cの剛性に基づいてサイドウォール部3の撓みを抑えるので、パンク状態であっても或る程度の速度で或る程度の距離を走行することができる。即ち、ランフラット性を備えている。
【0019】
また、グリーンタイヤの加硫成形時のリフトによりカーカス層本体1A〜1Cの端部1eがトレッド側に引っ張られるが、その張力がカーカス層本体1A〜1Cとカーカスホールド層7との剪断変位で吸収されるため、ノンインフレート時のカーカス層本体1A〜1Cの張力が略均一となる。そのため、パンク走行時にカーカス層本体1A〜1Cのいずれかに応力が集中することを回避し、ランフラットタイヤとしての耐久性を向上することができる。なお、加硫成形時におけるカーカス層本体1A〜1Cへの張力をカーカス層本体1A〜1Cとカーカスホールド層7との剪断変位で吸収すると、ビード部4に歪みを生じにくくなるので、タイヤのユニフォミティやリムに対する嵌合性が向上するという利点もある。
【0020】
更に、カーカス層本体1A〜1Cのタイヤ周方向のスプライス部は重ね合わせ接合であるが、その端部1eがビードコア5に巻き上げられていないため、ビードコア5の内周側にコードの重なりを形成することがない。しかも、カーカスホールド層7はタイヤ周方向の両端部を重ね合わせることなく突き合わせているため、同様にビードコア5の内周側にコードの重なりを形成することがない。そのため、コードの重なりに起因する不均一性を排除し、タイヤユニフォミティを更に向上することができる。なお、カーカス層本体1A〜1Cとカーカスホールド層7とは加硫成形時に剪断変位を生じることが可能であるので、たとえカーカスホールド層7のスプライス部を突き合わせ接合としても、カーカスホールド層7に対するリフトの影響が少なく、その突き合わせ部分が開くなどの故障を生じる恐れはない。
【0021】
本発明において、カーカス層本体1A〜1Cのうち少なくとも1層とカーカスホールド層7とのタイヤ半径方向のオーバーラップ長さは最大許容空気圧100kPa当たり10mm以上にすると良い。このような構成により、カーカス層本体1A〜1Cの端部1eをビードコア廻りに巻き上げなくても、タイヤケーシングを十分な強度に維持することができる。
【0022】
ここで、最大許容空気圧とは、日本自動車タイヤ協会イヤーブック(1999年版)で規定された最大負荷能力に対応する空気圧である。
【0023】
カーカス層本体及びカーカスホールド層には、テキスタイルコード又はスチールコードを使用することができる。テキスタイルコードの繊度、撚り構造、エンド数(単位幅当たりの打ち込み本数)は、従来公知のカーカスコードとして使用されている範囲で差し支えない。また、テキスタイルコードの素材としては、ナイロン66、ナイロン64等のナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート等のポリエステル、レーヨン、ビニロン、アクリル、アラミド、ポリ−p−フェニレンベンズビスオキサゾール、脂肪族ポリケトンなどが挙げられる。一方、スチールコードの素線径、撚り構造、エンド数は、従来公知のタイヤ補強用スチールコードとして使用されている範囲で差し支えない。
【0024】
【実施例】
タイヤサイズ225/60R16のランフラット性を有する空気入りラジアルタイヤにおいて、図1のケーシング構造を持つ本発明タイヤと、図2のケーシング構造を持つ従来タイヤをそれぞれ製作した。
【0025】
これら試験タイヤについて、下記の条件でランフラット耐久性を評価したところ、表1の結果を得た。
【0026】
ランフラット耐久性:
各試験タイヤをリムサイズ16×71/2JJのリムに組み付けた後、空気を抜いた状態で排気量4000ccの後輪駆動車の前輪右側に装着して、楕円形の周回コースを80km/hの速度で反時計廻りに走行し、テストドライバーがタイヤ故障による異常振動を感じ、走行を中止するまでの距離を測定した。評価結果、従来タイヤを100とする指数にて示した。この指数値が大きいほどランフラット耐久性が優れている。
【0027】
【表1】
Figure 0004325771
【0028】
この表1から判るように、本発明タイヤは従来タイヤに比べてランフラット耐久性が優れていた。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、複数本の補強コードをタイヤ半径方向に配向してなる少なくとも2層のカーカス層本体を一方のビード部からトレッド部を経て他方のビード部に至るように配置し、そのタイヤ幅方向の両端部をビードコアの廻りに巻き上げることなく終端させると共に、各ビードコアの内周側から外周側へ折り返されてトレッド部まで延在することなく各ビード部に配置されたカーカスホールド層を設け、該カーカスホールド層でカーカス層本体の端部を挟み込むようにし、少なくともカーカス層本体の層間にサイドウォール部に沿って延在する断面三日月状のゴム補強層を設けたから、パンク走行時の耐久性を向上し、優れたランフラット性を発揮することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態からなる空気入りラジアルタイヤを示す半断面図である。
【図2】従来の空気入りラジアルタイヤを示す半断面図である。
【符号の説明】
1A〜1C カーカス層本体
1e カーカス層本体の端部
2 トレッド部
3 サイドウォール部
4 ビード部
5 ビードコア
6A〜6C ゴム補強層
7 カーカスホールド層

Claims (4)

  1. 複数本の補強コードをタイヤ半径方向に配向してなる少なくとも2層のカーカス層本体を一方のビード部からトレッド部を経て他方のビード部に至るように配置し、そのタイヤ幅方向の両端部をビードコアの廻りに巻き上げることなく終端させると共に、各ビードコアの内周側から外周側へ折り返されてトレッド部まで延在することなく各ビード部に配置されたカーカスホールド層を設け、該カーカスホールド層で前記カーカス層本体の端部を挟み込むようにし、少なくとも前記カーカス層本体の層間にサイドウォール部に沿って延在する断面三日月状のゴム補強層を設けた空気入りラジアルタイヤ。
  2. 前記カーカス層本体の層間及び最内側に位置するカーカス層本体の内面にサイドウォール部に沿って延在する断面三日月状のゴム補強層を設けた請求項1に記載の空気入りラジアルタイヤ。
  3. 前記カーカス層本体の少なくとも1層と前記カーカスホールド層とのタイヤ半径方向のオーバーラップ長さを最大許容空気圧100kPa当たり10mm以上にした請求項1又は請求項2に記載の空気入りラジアルタイヤ。
  4. 前記カーカス層本体のタイヤ周方向の両端部を互いに重ね合わせて接合する一方で、前記カーカスホールド層のタイヤ周方向の両端部を互いに突き合わせて接合した請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の空気入りラジアルタイヤ。
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