JP4325098B2 - ゲル組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゲル組成物に関する。更に詳しくは、リチウム塩を保持せしめることによりゲルポリマー電解質リチウムイオン二次電池を形成し得るゲル組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯電話やパーソナル・コンピュタの小型化や軽量化のために、高エネルギー密度の電池が要求され、こうした要求に対応する電池として、体積あるいは重量当りのエネルギー密度や電池容量の大きいリチウムイオン二次電池が注目されている。
【0003】
一般に製品化されているリチウムイオン二次電池は、正極であるリチウム複合酸化物と負極である導電性炭素質材料の両電極間に、微多孔性膜からなる高分子セパレータを配し、これらがイオン移動媒体であるリチウム塩含有有機溶媒(有機電解液)中に浸漬された状態となっている。また、有機電解液の漏出を防ぐため、必要個所に電気絶縁性のパッキンを用い、更に電池構造体全体を重厚な金属容器等の密閉容器中に封入した構造をとっている。
【0004】
このようにして構成されている汎用的なリチウムイオン二次電池は、金属リチウムを使用していないため安全性が高く、しかも高エネルギー密度で長寿命であるという特徴を有し、現在小型携帯電子機器用電源として、その需要を急速に拡大しつつある。
【0005】
しかしながら、電池内部に存在する有機電解液が、外部へ漏洩するのを確実に防止しようとすると容器構造が複雑化し、またそうした構造をとっても、落下したりあるいは過充電、過放電、外部短絡、内部短絡、過大電流、異常高温等の過酷な条件に遭遇すると、異常内圧などによる破裂が起り、有機電解液の外部への漏洩や発火などといった危険を避け難いという問題がみられる。こうしたことから、有機電解質リチウムイオン二次電池では、有機電解液の漏洩対策や着火性低減化対策などの安全性向上のための要求が高まってきている。
【0006】
こうした要求に対応して、液漏れがなくなることによる電池の信頼性や安全性を向上させると共に、薄膜化、積層体化、パッケージの簡略化、軽量化などが期待されている真性ポリマー電解質をイオン移動媒体として構成した真性ポリマー電解質リチウムイオン二次電池が開発されている。特に、イオン伝導性高分子を用いた真性ポリマーの電解質は、易加工性を有するため、電池との積層構造体の形成、電極のイオン吸蔵および放出による体積変化に対応した界面保持ができるなどの好ましい性質を発揮するものとして期待されている。
【0007】
このような真性ポリマー電解質としては、ポリエチレンオキシドのアルカリ金属塩複合体がBritish Polymer Jaurnal第7巻第319頁(1975)に報告されて以来、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレンエーテル系材料を始め、ポリアクリロニトリル、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン等を骨格とする真性ポリマー電解質材料が活発に研究されている。これらの真性ポリマー電解質は、通常高分子化合物中に電解質化合物が均一に固溶した形態をとっているが、そのイオン伝導度は有機電解質と比較して著しく低く、これを用いて構成した電池は、電池抵抗が高いなどの課題を有している。
【0008】
こうした有機電解質リチウムイオン二次電池および真性ポリマー電解質リチウムイオン二次電池にみられる問題を改善するために、汎用有機電解液リチウムイオン二次電池の多孔質高分子セパレータの位置に、有機電解質を含浸保持した高分子マトリックスからなるゲル状のポリマー電解質を配置することにより、重たい密閉金属容器の必要性をなくし、あるいは軽量化したタイプのリチウムイオン二次電池、つまりゲルポリマー電解質リチウムイオン二次電池が提案されている。
【0009】
かかるゲルポリマー電解質形成用の高分子マトリックスとしては、難燃性という特徴を有するフッ素系樹脂が多く用いられ、特に結晶性と非晶性とのバランスの良いフッ化ビニリデン〔VdF〕とヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕との共重合体が特に好ましい例として挙げられている(米国特許第5,296,318号明細書、特許公表公報8-507407)。しかしながら、このVdF-HFP共重合体を高分子マトリックスとするゲルポリマー電解質リチウムイオン二次電池は、充・放電サイクル時の容量維持率が有機電解液を用いた電池よりも劣るため、放電容量の増加が望まれている。
【0010】
放電容量を増加させるためには、ゲル電解質の有機電解液の保持容量を高める必要がある。すなわち、有機電解液の保持量が少ないゲルポリマー電解質は、リチウムイオンの移動度が低くてイオン導電率が低くなり、また内部抵抗が高くなるため充・放電効率が低下し、充電容量およびサイクル時の容量維持率が低下する結果として、電池の放電容量を低下させることになる。
【0011】
前記VdF-HFP共重合体において、VdFは共重合体の骨格部で機械的強度の向上に寄与し、更に有機電解液を保持する。HFPは、共重合体中に非晶質の状態で取り込まれてリチウムイオンの透過部として機能し、更に有機電解液の保持に寄与する。こうしたことから、この共重合体の有機電解液保持容量を高めるためには、HFPの共重合比率を高めればよいことになる。
【0012】
しかるに、HFPの共重合比率の最大値は、通常約40モル%程度であり限界がみられるばかりではなく、HFPの共重合比率を高めると有機電解液の保持容量は高まるものの、ゲルポリマー電解質の強度は低下し、これをフィルム状として取扱う場合には破断したり、有機電解液が滲み出したりするなどの問題を生ずる。また、HFPを多く共重合させたものは、ゲルを形成しなくなるという問題をも生ずるようになる。従って、従来のゲルポリマー電解質においては、有機電解液の保持容量の増加、有機電解液の滲み出し防止、強度、耐熱性、製膜性の改善などが課題となっている。
【0013】
また、近年ではより高い機械特性や力学耐熱性を付与するために、樹脂単体そのもののみを用いるだけではなく、樹脂と耐熱性材料とを複合一体化した複合型ポリマー電解質ともいうべきゲル電解質の検討もなされており、複合一体化するに際し、耐熱性材料との相溶性や耐熱性材料に対する製膜性を改善した樹脂の開発も望まれている。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ゲルポリマー電解質リチウムイオン二次電池の特性として重要な高耐熱性要求に応える高融点のフッ化ビニリデン系共重合体であって、有機電解液の膨潤特性や有機電解液保持条件下での機械的強度を満足させ、かつ有機電解液による樹脂劣化の程度を軽減させ、その上製膜性にもすぐれたフッ化ビニリデン系共重合体を用いたゲル組成物を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
かかる本発明の目的は、フッ化ビニリデン92〜97モル%、ヘキサフルオロプロペン1〜4モル%およびクロロトリフルオロエチレン1〜7モル%の共重合組成を有し、融点が130〜160℃で、数平均分子量Mnが150,000〜300,000で、対数粘度が1.0〜1.4dl/gである3元共重合体およびリチウム塩可溶性有機溶媒を含有するゲル組成物によって達成される。
【0016】
【発明の実施の形態】
高分子マトリックスを形成する共重合体は、フッ化ビニリデン[VdF]を92〜97モル、好ましくは94〜96モル%、ヘキサフルオロプロピレン[HFP]を1〜4モル%、好ましくは1〜2モル%、そしてクロロトリフルオロエチレン[CTFE]を1〜7モル%、好ましくは2〜6モル%よりなる共重合組成を有していなければならない。
【0017】
共重合体中のVdF共重合割合がこれ以下であると、高膨潤度という点では満足されるものの融点が低下し、また樹脂劣化度の増加やその膨潤体の機械的強度が急激に低下するようになる。一方、これ以上の共重合割合では、高融点、高機械的強度を示すものの、低い膨潤度のものしか得られなくなり、さらにはキャスティング法によりフィルム作製する場合に、フィルムのカールや収縮などを生じて、良好な製膜性が得られなくなる。
【0018】
また、HFPとCTFEの共重合割合がこの範囲外になると、膨潤特性、機械的強度および融点のバランスが悪くなり、3元系共重合体の特徴が有効に発揮されなくなってしまう。さらに詳しく述べると、膨潤度、製膜性はHFP含有量が主に寄与し、機械的強度、融点にはCTFE含有量が主に寄与しており、この組成範囲外では膨潤特性、機械的強度、製膜性および融点のバランスが悪くなり、3元系共重合体の特徴が有効に発揮されなくなってしまう。特に、CTFEの共重合割合がこれ以上になると、高機械的強度とはなるが、キャスト用有機溶媒溶液もしくは有機電解質溶液が増粘して製膜性を悪化させる。特に、数平均分子量が約300,000以上でかつ対数粘度lnη/cが1.4以上になると、溶解させた時点で顕著な増粘を生じ、キャストフィルムを作製することができない。
【0019】
なお、VdF-HFP-CTFE3元共重合体中には、共重合体中3モル%をこえない割合で他の含フッ素単量体、例えばトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニル、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)等やオレフィン単量体、例えばエチレン、プロピレン、イソブチレン等を、更に共重合させていてもよい。
【0020】
含フッ素共重合体の製造は、乳化重合法、けん濁重合法等の不均一重合系で行われ、バッチ効率などの経済性を考慮して、乳化重合法で行われることが好ましい。乳化重合反応は、過硫酸アンモニウム等の水溶性無機過酸化物またはそれと還元剤とのレドックス系を触媒として、パーフルオロオクタン酸アンモニウム、パーフルオロヘプタン酸アンモニウム、パーフルオロノナン酸アンモニウム等またはこれらの混合物、好ましくはパーフルオロオクタン酸アンモニウムを乳化剤に用いて、一般に圧力約0〜10MPa・G、好ましくは約1〜5MPa・G、温度約50〜100℃、好ましくは約60〜80℃の条件下で行われるが、重合反応温度の設定は特に重要である。すなわち、同一共重合組成のVdF-HFP-CTFE3元共重合体であっても、重合反応温度を変えることによって融点を制御可能であり、特に好ましい重合反応温度は、約65〜75℃である。
【0021】
このような重合温度範囲で得られる3元共重合体の融点は、それの共重合組成比によっても変化するが、好ましくは約130〜160℃のものとして得ることができる。融点がこれ以上になると、高強度ではあるが膨潤度が低くなり、一方これ以下の融点では、高膨潤度ではあるが強度が低くなり、膨潤度と強度との両立が困難となる。
【0022】
原料モノマーの仕込み方法としては、CTFEの全量を予め一括して反応器に仕込むことにより、高融点、高機械的強度、低樹脂劣化度を達成することができ、耐熱性材料への製膜性も良好となる。CTFEの全量を予め一括して反応器に仕込まずに、CTFEの片分添を行なう重合方法では、トータルとしての樹脂組成中のCTFE含有量が同等ではあっても、融点が低くなり、また数平均分子量Mnに対する対数粘度の増加率が高くなり、このような高CTFE含有樹脂にあっては、有機電解液に溶解した時点で顕著な増粘を生じてしまうためキャスト用溶液が得られず、キャストフィルムの作製ができなくなる。なお、最初に仕込まれた初期仕込みモノマー混合物以外は、HFPは一括または分割して添加され、VdFは分添される。
【0023】
さらに、本発明で用いられる3元共重合体の数平均分子量Mn(GPC法による;ポリスチレン換算)は、約150,000〜300,000、好ましくは約150,000〜200,000であることが望ましい。数平均分子量Mnがこれ以上になると、有機電解液と混合したときの溶液粘度が著しく高くなって、リチウム塩との均一混合が困難となるばかりではなく、良好な製膜性が得られない。一方、数平均分子量Mnがこれ以下になると、高分子ゲル電解質の機械的強度が低下し、また樹脂劣化度が増加するようになる。
【0024】
このような数平均分子量Mnを有するVdF-HFP-CTFE3元共重合体を得るためには、共重合反応系内に連鎖移動剤を添加しておくことが好ましく、特に好ましい連鎖移動剤としては、例えばアセトン、メタノール、イソプロパノール、マロン酸エチル、酢酸エチル等が挙げられる。なお、共重合反応を行なう際、重合系内のpHを調節するために、Na2HPO4、NaH2PO4、KH2PO4等の緩衝能を有する電解質物質あるいは水酸化ナトリウムを添加して用いてもよい。
【0025】
乳化重合反応で形成される水性ラテックスからの含フッ素共重合体の凝析は、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、カリミョウバン等の塩類水溶液中に、水性ラテックスを滴下することにより行われる。
【0026】
凝析後、乾燥されたVdF-HFP-CTFE3元共重合体からのフィルムの形成は、共重合体をその融点以上の温度で溶融させた後、押出しまたは圧縮する成形方法あるいは共重合体をアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等の可溶性溶媒に溶解させた溶液を、ガラス板、金属板、樹脂シート等の基質上にバーコータ、ドクターブレード等を用いる方法またはキャスト法、スピンコート法などによって塗布し、室温乃至約150℃で溶媒を乾燥除去させることなどによって行われる。
【0027】
このようにして得られるフィルム状含フッ素共重合体は、そこにリチウム塩の有機溶媒溶液を保持せしめることにより、リチウムイオン電池用ゲル電解質を形成せしめる。
【0028】
リチウム塩としては、例えばLiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiCl04、LiBF4、Li(CF3SO2)2N、LiCF3SO3、LiC4F9SO3等の少くとも一種が用いられる。これらのリチウム塩は、約0.1〜2モル濃度、好ましくは約0.25〜1.75モル濃度の有機溶媒溶液として用いられる。
【0029】
VdF-HFP-CTFE3元共重合体100重量部当り約10〜400重量部、好ましくは約30〜400重量部の割合で用いられる、電解質物質であるリチウム塩化合物を溶解させる有機溶媒としては、化学的に安定なものであれば任意のものを使用し得るが、好ましくは炭酸エステルが用いられる。また、この有機溶媒は電解液として用いられるため、誘電率の高いもの程リチウム塩の解離を促進するのに有効である。
【0030】
炭酸エステルとしては、環状、鎖状のいずれをも使用することができ、高誘導率炭酸エステルとしてはエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン等が例示される。また、比誘電率が高くかつ極性の強い溶媒は、一般に粘度が高くなるため、イオンの移動抵抗が大きくなるといった欠点がみられる。
【0031】
そのため、電解液として使用される炭酸エステルは、高誘電率溶媒に低粘度溶媒を加えて、電解液粘度を調整した上で用いられることが好ましい。高誘電率溶媒としては、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン等の比誘電率が約30以上、好ましくは約60以上のものが用いられ、また低粘度溶媒としては、例えばジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等の粘度が約1センチポイズ以下、好ましくは約0.7センチポイズ以下のものが用いられる。これら2種類の炭酸エステル類が併用される場合には、低粘度溶媒に対して高誘電率溶媒が約1/4〜4/1、好ましくは約1/2〜2/1の重量比で用いられる。なお、これらの炭酸エステルは、他の有機溶媒と混合して用いることもできる。
【0032】
リチウム塩可溶性有機溶媒を含有するゲル組成物の調製は、フィルム状VdF-HFP-CTFE3元共重合体を室温乃至用いられた炭酸エステル等の有機溶媒の沸点以下の温度のリチウム塩可溶性有機溶媒溶液中に数分間乃至数10時間程度浸せきし、その後浸せき液中から引き上げられたフィルムの表面に付着したリチウム塩可溶性有機溶媒をロ紙で吸収する等の方法で物理的に除去することによって行われる。また、リチウム塩を含有する有機電解液を用いることにより、同様の方法でゲルポリマー電解質の調製を行なうことができる。
【0033】
得られるゲル組成物の樹脂劣化度は、ゲル組成物を調製するときのリチウム塩可溶性有機溶媒の種類や浸せき時間、浸せき温度によっても変化するが、指標としてリチウム塩可溶性有機溶媒としてエチレンカーボネート-プロピレンカーボネート(重量比1:1)混合溶媒を用い、浸せき温度35℃で1時間浸せきしたときの樹脂劣化度が2重量%以下、好ましくは1重量%以下であることが望ましい。樹脂劣化度がこれ以上になると、ゲル組成物からの有機溶媒の滲み出しが起り、ゲルポリマー電池用のゲル組成物とするためには、発火などの危険が避け難くなってしまうようになる。
【0034】
このようにして得られたゲルポリマー電解質は、リチウムイオンを吸蔵および放出することが可能な物質であるリチウム複合酸化物からなる正極およびリチウムを吸蔵および放出可能な物質である導電性炭素質材料等からなる負極と共に、ゲルポリマー電解質リチウムイオン二次電池を形成する。
【0035】
【発明の効果】
本発明で用いられる特定の共重合組成を有するフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-クロロトリフルオロエチレン3元共重合体は、低粘度であるが高融点であり、製膜性も良好であって、有機電解液含浸保持用高分子マトリックスとして用いられたとき、実用的なゲルポリマー電解質リチウムイオン二次電池の特性として重要な有機電解液の膨潤特性を保ちつつ、有機電解液保持条件下での機械的強度が実用的レベルであって、しかも有機電解液による樹脂の劣化の程度を軽減させ得るゲル組成物を与える。
【0036】
【実施例】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0037】
参考例1
容量3LのSUS316製オートクレーブ内に、
フルオロオクタン酸アンモニウム 37.5g
Na2HPO4・12H20 2.0g
イオン交換水 1530ml
を仕込み、十分に脱気を行った後、メタノール0.06gおよび次の各成分からなる初期仕込みモノマー混合物
フッ化ビニリデン [VdF] 80g
ヘキサフルオロプロペン [HFP] 20g
クロロトリフルオロエチレン [CTFE] 50g
を仕込み、オートクレーブを70℃に加温すると、オートクレーブの内圧は2.5MPa・Gとなった。
【0038】
ここで、定量ポンプを用いてペルオキソ硫酸アンモニウム0.3gを導入し、重合反応を開始させた。重合反応の進行に伴って、オートクレーブの内圧が2.4MPa・G迄低下したら、VdFを添加して内圧が2.5MPa・G迄回復する操作を、VdFの分添量が420gになる迄くり返した。分添終了後、0.03MPa・G迄エージングを行ない、重合反応を完結させた。
【0039】
オートクレーブから取り出した乳濁液を、0.5重量%塩化カルシウム水溶液中に攪拌しながら滴下し、凝析した生成物をロ別し、イオン交換水で十分に攪拌洗浄し、ロ過、乾燥させて、白色粉末状の含フッ素共重合体粉末Aを554g(重合率97%)得た。得られた共重合体の組成は、VdF/HFP/CTFE=94/1/5モル%で、数平均分子量Mnは約160,000、融点は155℃、対数粘度は1.1dl/gであった。
共重合体組成:19F-NMRによる
数平均分子量Mn:GPC法によるスチレン換算値(溶出液10mM LiBr/ジメチルホルムアミド、温度50℃、溶出速度0.5ml/分)
融点(DSC法) :30℃から10℃/分の昇温速度で250℃迄加熱した後、10℃/分の降温速度で30℃迄冷却し、再度250℃迄10℃/分の昇温速度で昇温する際の吸熱ピーク頂点の温度を測定
対数粘度:4g/Lの濃度で共重合体をジメチルホルムアミドに溶解させた溶液のウベローデ粘度計での30℃における落下時間から、次式を用いて対数粘度を求める
対数粘度[η]=ln(ηred)/c (dl/g)
ηred:溶液の落下時間/溶媒の落下時間
c:試料溶液の濃度(0.4g/dl)
【0040】
参考例2
参考例1において、重合温度を60℃に変更し、初期モノマー混合物としてHFP20g、CTFE50gおよびVdF90gを用い、VdF分添量が合計410gになる迄分添量をくり返した。
【0041】
白色粉末状の含フッ素共重合体Bが547g(重合率96%)得られ、その共重合組成はVdF/HFP/CTFE=94/1/5モル%で、数平均分子量Mnは約150,000、融点は152℃、対数粘度は1.2dl/gであった。
【0042】
参考例3
参考例1において、重合温度を80℃に変更し、初期モノマー混合物としてHFP20g、CTFE50gおよびVdF80gを用い、VdF分添量が合計420gになる迄分添量をくり返した。
【0043】
白色粉末状の含フッ素共重合体Cが558g(重合率98%)得られ、その共重合組成はVdF/HFP/CTFE=94/1/5モル%で、数平均分子量Mnは約160,000、融点は152℃、対数粘度は1.1dl/gであった。
【0044】
参考例4
参考例1において、初期仕込みモノマー混合物としてHFP80g、CTFE 10gおよびVdF80gを用い、VdF分添量が合計420gになる迄分添操作をくり返した。
【0045】
白色粉末状の含フッ素共重合体Dが188g(重合率93%)得られ、その共重合組成はVdF/HFP/CTFE=91/7/2モル%で、数平均分子量Mnは約270,000、融点は124℃、対数粘度は1.7dl/gであった。
【0046】
参考例5
参考例1において、初期仕込みモノマー混合物としてHFP15g、CTFE 10gおよびVdF80gを用い、VdF分添量が合計420gになる迄分添操作をくり返した。
【0047】
白色粉末状の含フッ素共重合体Eが504g(重合率96%)得られ、その共重合組成はVdF/HFP/CTFE=98/1/1モル%で、数平均分子量Mnは約250,000、融点は160℃、対数粘度は1.0 dl/gであった。
【0048】
参考例6
参考例1において、重合温度を30℃に変更し、初期仕込みモノマー混合物としてHFP20g、CTFE50gおよびVdF95gを用い、ペルオキソ硫酸アンモニウム0.5gおよび亜硫酸ナトリウム0.05gよりなるレドックス系触媒を用いて重合反応を進行させ、VdF分添量が合計405gになる迄分添操作をくり返した。
【0049】
白色粉末状の含フッ素共重合体Fが555g(重合率97%)得られ、その共重合組成はVdF/HFP/CTFE=94/1/5モル%で、数平均分子量Mnは約160,000、融点は146℃、対数粘度は1.6dl/gであった。
【0050】
参考例7
参考例1において、重合温度を50℃に変更し、初期仕込みモノマー混合物としてHFP20g、CTFE50gおよびVdF90gを用い、ペルオキソ硫酸アンモニウム0.4gおよび亜硫酸ナトリウム0.04gよりなるレドックス系触媒を用いて重合反応を進行させ、VdF分添量が合計410gになる迄分添操作をくり返した。
【0051】
白色粉末状の含フッ素共重合体Gが550g(重合率96%)得られ、その共重合組成はVdF/HFP/CTFE=94/1/5モル%で、数平均分子量Mnは約140,000、融点は150℃、対数粘度は1.5dl/gであった。
【0052】
参考例8
参考例1において、重合温度を100℃に変更し、初期モノマー混合物としてHFP20g、CTFE50gおよびVdF75gを用い、VdF分添量が合計425gになる迄分添操作をくり返した。
【0053】
白色粉末状の含フッ素共重合体Hが552g(重合率97%)得られ、その共重合組成はVdF/HFP/CTFE=94/1/5モル%で、数平均分子量Mnは約160,000、融点は144℃、対数粘度は0.9dl/gであった。
【0054】
参考例9
参考例8において、ペルオキソ硫酸アンモニウム量を0.1gに変更し、VdF分添量が合計425gになる迄分添操作をくり返した。
【0055】
白色粉末状の含フッ素共重合体Iが552g(重合率97%)得られ、その共重合組成はVdF/HFP/CTFE=94/1/5モル%で、数平均分子量Mnは約320,000、融点は145℃、対数粘度は1.3dl/gであった。
【0056】
参考例10
参考例1において、初期モノマー混合物としてHFP20g、CTFE5gおよびVdF 100gを用い、CTFE分添量が合計45gになる迄、またVdF分添量が合計400gになる迄、両モノマーの分添操作をくり返した。
【0057】
白色粉末状の含フッ素共重合体Jが550g(重合率97%)得られ、その共重合組成はVdF/HFP/CTFE=94/1/5モル%で、数平均分子量Mnは約130,000、融点は145℃、対数粘度は1.6dl/gであった。
【0058】
参考例11
参考例1において、ペルオキソ硫酸アンモニウム量を0.6gに変更し、初期モノマー混合物としてHFP20g、CTFE5gおよびVdF 100gを用い、CTFE分添量が合計45gになる迄、またVdF分添量が合計400gになる迄、両モノマーの分添操作をくり返した。
【0059】
白色粉末状の含フッ素共重合体Kが550g(重合率97%)得られ、その共重合組成はVdF/HFP/CTFE=94/1/5モル%で、数平均分子量Mnは約80,000、融点は141℃、対数粘度は1.1dl/gであった。
【0060】
実施例1〜3、比較例1〜8
それぞれ参考例1〜3または参考例4〜11で得られた含フッ素共重合体A〜CまたはD〜Kを用い、これらを230℃で圧縮成形することにより、厚さ0.1mmのフィルムを得た。
【0061】
このフィルムから打ち抜いたダンベル型フィルム(厚さ0.1mm)を、エチレンカーボネート-プロピレンカーボネート(重量比1:1)混合溶媒中に、35℃で1時間浸せきした後フィルムを取り出し、表面の混合溶媒をロ紙に吸収させて除去し、膨潤度(フィルム重量に対する混合溶媒の比)および引張強さ(ASTM-D-412-83準拠;引張試験機を用いて100mm/分の定速で引張り、破断時の応力を測定)の測定を行った。また、この膨潤したフィルムを、重量変化がみられなくなる迄混合溶液を減圧下に約50〜140℃で留去し、乾燥させた後、10mM臭化リチウムジメチルホルムアミド溶液に溶かし、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)を行った結果、樹脂劣化度(総樹脂ピーク面積に対する、樹脂劣化により生じた低分子量共重合体よりなる劣化樹脂のピーク面積の割合)を測定した。得られた結果は、次の表に示される。なお、この表には、製膜性(キャスティングフィルム製造時に、10重量%ジメチルホルムアミド溶液がゲル化してしまう場合を×、キャスティング後カールや収縮などを生じ、一定の膜厚のフィルムが得られない場合を△、溶解液安定性、製膜性が共に良好なものを〇と評価)の評価結果も併記されている。
Claims (11)
- フッ化ビニリデン92〜97モル%、ヘキサフルオロプロペン1〜4モル%およびクロロトリフルオロエチレン1〜7モル%の共重合組成を有し、融点が130〜160℃で、数平均分子量Mnが150,000〜300,000で、対数粘度が1.0〜1.4dl/gである3元共重合体およびリチウム塩可溶性有機溶媒を含有してなるゲル組成物。
- リチウム塩可溶性有機溶媒が炭酸エステルである請求項1記載のゲル組成物。
- 炭酸エステルがエチレンカーボネート-プロピレンカーボネート混合溶媒である請求項2記載のゲル組成物。
- エチレンカーボネート-プロピレンカーボネート等重量混合溶媒に対する樹脂劣化度(35℃、1時間)が2重量%以下であるフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-クロロトリフルオロエチレン3元共重合体が用いられた請求項1記載のゲル組成物。
- 請求項1記載のゲル組成物にリチウム塩を添加したリチウムイオン二次電池用ゲルポリマー電解質。
- 正極および負極間に請求項5記載のゲルポリマー電解質を配置したリチウムイオン二次電池。
- フッ化ビニリデン92〜97モル%、ヘキサフルオロプロペン1〜4モル%およびクロロトリフルオロエチレン1〜7モル%の共重合組成を有し、融点が130〜160℃で、数平均分子量Mnが150,000〜300,000で、対数粘度が1.0〜1.4dl/gである3元共重合体よりなる含フッ素共重合体。
- クロロトリフルオロエチレンの全量を予め反応容器内に仕込んでおき、フッ化ビニリデンおよびヘキサフルオロプロペンと共重合反応させることを特徴とするフッ化ビニリデン92〜97モル%、ヘキサフルオロプロペン1〜4モル%およびクロロトリフルオロエチレン1〜7モル%の共重合組成を有し、融点が130〜160℃で、数平均分子量Mnが150,000〜300,000で、対数粘度が1.0〜1.4dl/gである3元共重合体の製造法。
- ヘキサフルオロプロペンは一括または分割して添加され、フッ化ビニリデンは分添される請求項8記載の3元共重合体の製造法。
- 水性媒体中で共重合反応させる請求項8記載の3元共重合体の製造法。
- 50〜100℃の反応温度で共重合反応させる請求項8記載の3元共重合体の製造法。
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