JP4322977B2 - 組換えグループ1ダニアレルゲンの製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なアレルゲン製造方法に係わり、さらに詳細にはダニ由来のアレルゲン、さらに具体的には組換えグループ1アレルゲンの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、アレルギー性疾患が増加しており、社会的に問題になっている。その代表的なものとして、花粉症、アトピー性皮膚炎およびアトピー性喘息を挙げることができる。このうち、特に、アトピー性喘息は、室内塵によって発症することが多い。室内塵の中には、ダニの虫体および排泄物、カビの胞子、ペットの体毛などが含まれる。このような室内塵の成分中でダニ由来のタンパク質が最も重要なアレルギー原因物質(アレルゲン)である。
アレルギーを引き起こすダニの種類としては、コナヒョウヒダニ(Dermatophagoides farinae(以下「Der f」と略す))とヤケヒョウヒダニ(Dermatophagodes pteronyssinus(以下「Der p]と略す))が知られている。ダニアレルゲンのうちで主要なものは、排泄物中に多く含まれる、分子量約25キロダルトン(以下、「KDa」と略す)のグループ1と、虫体中に多く含まれる、分子量約14KDaのグループ2と呼ばれるものである。グループ1アレルゲンはシステインプロテアーゼファミリーに属するプロテアーゼであり、虫体内ではまず80アミノ酸残基から成るプロ配列を持つ不活性型の前駆体として産生され、プロ配列が切断されることにより、プロテアーゼ活性を持つ活性型となる。グループ1、グループ2アレルゲンは、それぞれ由来するダニの種類によってDerf 1、Der p 1、Der f 2、Der p 2と称されている。これらのアレルゲンをコードする遺伝子はcDNAとしてすでにクローニングされており(Dilworth, R. J., et al.: Clinical and Experimental Allergy, 21, 25-32, 1991、Chua, K. Y., et al.: J.Exp.Med. 167, 175-182, 1988、Yuuki, T., et al.: Jpn. J. Allergol., 39, 557-561, 1990、Chua, K.Y., et al.: Int. Arch. Allergy Appl. Immunol., 91, 118-123, 1990)、その結果から、Der f 1とDer p 1、Der f 2とDer p 2にはそれぞれ高い相同性があることが明らかとなっている。この2つのグループのアレルゲンに対し、アトピー性喘息患者、アトピー性皮膚炎患者の過半数が反応することが報告されている(Heymann, P.W., et al.: J. Allergy Clin. Immunol., 83, 1055-1067,1989)。
【0003】
したがって、これらグループ1、グループ2アレルゲンは、診断試薬あるいは研究試薬として高い需要がある。さらに、最近、原因アレルゲンを体内に投与することによりそのアレルゲンに対する反応を抑止する減感作療法の有効性が認められつつあるが、これらのアレルゲンを用いて減感作治療を行うことにより、ダニアレルゲンに起因するアトピー性喘息を効果的に治療できる可能性がある。いずれの場合も、とりわけ減感作療法に用いる場合には、純度の高い、高品質のアレルゲンが大量に必要である。そこで、これらのアレルゲンの純品を大量にかつ安価に製造する方法の確立が望まれてきた。グループ1、グループ2アレルゲンは、それぞれ、ダニ排泄物および虫体からの単離に成功している(Yasueda, H. et al.: Int. Arch. Allergy Appl. Immunol., 88, 402-407, 1989)が、精製には手間がかかるうえ、収率が非常に低く、大量に調製することは実質的に不可能であった。そこで、遺伝子組換えの手法を用いてこれらのアレルゲンを製造する試みがなされており、グループ2アレルゲンに関しては、大腸菌を用いた製造方法が確立されている(Iwamoto. N, et al, Int. Arch. Allergy Immunol., 109, 356-361, 1996)。グループ1アレルゲンに関しては、バキュロウイルス系を使用して昆虫細胞においてDer f 1を発現させることに成功している(Shoji, H. et al.: Biosci. Biotech. Biochem., 60(4), 621-625, 1996)。しかし、用いる培地等が高価であり、コスト面で実用的ではない。さらに、虫体由来の天然のDer f 1と異なる糖鎖を有するため、この部分が新たな抗原性を持つ可能性があり、減感作に使用するには適していない。天然のグループ1アレルゲンと全く同じ糖鎖を持つ組換えアレルゲンを製造するには、ダニの細胞で製造する必要があるがそのような系は全く未開発であった。
【0004】
一方、糖鎖を結合させなくするため、遺伝子操作によりアミノ酸配列を変え糖鎖結合部位を消失させることも可能であるが、アミノ酸配列のうえから天然アレルゲンとは異なってしまい、タンパク質としての性質に影響を与える恐れがあった。したがって天然のグループ1アレルゲンと全く同じアミノ酸配列を持ち、糖鎖以外はタンパク質として天然グループ1アレルゲンと同じ組換えグループ1アレルゲンを製造する方法の確立が必要であった。
大腸菌は糖鎖付加能力がなく、取り扱いも容易で短期間で安価に培養できるので、グループ1組換えアレルゲンを発現させる宿主として最も好ましい。しかし、大腸菌においては、Der f 1のプレプロ体をグルタチオントランスフェラーゼ分子(以下、「GST」と略す)との融合タンパク質として発現させた例、Der p 1を同じくGSTとの融合タンパク質として発現させた例があるのみである(公表特許公報 平6-500993、公表特許公報 平3-501920)。したがって、これまで、天然アレルゲンと同等の活性を保持した、成熟型の組換えグループ1アレルゲンを得た成功例はなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記現状より、大腸菌を宿主として用い、糖鎖を持たない成熟型グループ1アレルゲンを効率よく製造する方法の確立が望まれている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、大腸菌において封入体として発現させた組換えグループ1アレルゲンのプロ体を特定のpHと塩濃度で2回のゲルろ過に供し、精製と再生を同時に行った後、プロ配列を除去することにより、活性型グループ1アレルゲンを効率よく製造することが可能であることをを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、グループ1アレルゲンのうち、Der f 1の製造方法について述べるが、Der f 1とDer p 1のアミノ酸配列の相同性は80%と非常に高く、全体的な立体構造、タンパク質としての機能は保存されていることから、本方法はDer p 1に応用することが可能である。
【0008】
大腸菌において、異種タンパク質を発現させるためには、大腸菌で効率よく働く任意の転写プロモーターの支配下に当該遺伝子を導入する必要がある。大腸菌用の発現ベクターは、既に多数開示されており、任意のものが使用できるが、一例として、強力な転写プロモーターであるT7プロモーターを利用した、pGEMEX(登録商標)-1ベクター(Promega社)を用いた場合について述べる。また、Der f 1遺伝子には多型が存在することが知られているが、そのうち任意の遺伝子を導入することが可能である。プロDer f 1をコードするcDNAをpGEMEX(登録商標)-1のT7プロモーターの下流に挿入した。作製したプラスミドを用いて、lacプロモーター支配下にT7 RNA polymerase遺伝子をコードする大腸菌BL21株を形質転換した。形質転換株を培養し、IPTG (isopropyl-β-D-thiogalactopyranoside)を添加することにより、プロDer f 1の発現を誘導した。発現産物は、不溶性の封入体として菌体内に蓄積された。封入体は、菌体を任意の方法で破砕後、遠心分離した沈殿として回収することができる。菌体を超音波破砕後、遠心分離して、封入体を回収した。回収した封入体は、適当な変性剤を添加することにより、可溶化が可能であるが、この条件により後の再生効率が左右されるため、最適な変性条件で行わねばならない。この場合、8M 尿素、1%ジチオスレイトール(以下、DTTと略す。)を添加して、封入体を可溶化するのが最適であった。可逆的に変性したタンパク質は、適切な条件で変性剤を除くことにより、再生が可能である。しかし、再生のしやすさとその条件は、個々のタンパク質によって全く異なり、共通したルールは存在しない。したがって、そのタンパク質ごとに適した再生条件を見いださねばならない。
【0009】
変性剤を除去する最も一般的な方法は、透析あるいは希釈であるが、Der f 1の場合、これらの方法により現実的な収率で活性型を得ることは不可能であった。様々な再生条件を検討した結果、封入体として発現させた組換えプロDer f 1を8M 尿素、1% DTTを用いて可溶化後、特定のpHと塩濃度で2回のゲルろ過を行い、精製と再生を同時に行うことにより、最終的に活性型グループ1アレルゲンを効率よく製造することが可能であることが明らかとなった。
【0010】
以下に、その再生手順の詳細について述べる。まず、可溶化したプロDer f 1を20mMトリス塩酸緩衝液pH8.6にて平衡化した、適当な分画範囲をもつゲルろ過カラムに供する。一例として、SephacrylS-200カラム(Pharmacia社製)を用いた場合について述べる。このゲルろ過の溶出パターンを図2-aに示す。図中に示したフラクション(以下、「fr」と略す)A、BがプロDer f 1に相当するが、その後の操作で再生可能なのはBのみであり、Aは凝集体を形成していると考えられる。fr Bの保持時間は分子量から予想されるより長いが、カラムに試料を添加した直後は尿素による変性状態で見かけの分子量が大きいためと考えられる。fr AとBの割合は、塩濃度によって大きく変わり、fr Bの割合を大きくするには、塩濃度が100mM NaCl未満が好ましく、さらには0mM NaClが好ましい。塩濃度が高いとAのピークのみしか溶出しない(図2-b(20mMトリス塩酸緩衝液pH8.6、100mM NaCl))。
【0011】
次に、fr BをpH6.8から8.2、好ましくはpH7.0から7.6、さらに好ましくはpH7.4の適当な緩衝液、例えばリン酸緩衝塩溶液(8g NaCl, 0.2g KCl, 0.2g KH2PO4, 2.9g Na2HPO4.12H2O/ 1L H2O, pH7.4 ;以下「PBS」と略す)に対して透析後、PBSにて平衡化した、適当な分画範囲を持つゲルろ過カラムに供する。一例として、Sephacryl S-200カラム(Pharmacia社製)を用いた場合について述べる。2度目のゲルろ過の溶出パターンを図3に示す。図中のfr C、D、Eに含まれるのはすべてプロDer f 1であるが、最終的にプロ配列を除去して活性を保持した成熟型が得られるのはfr Dのみである。fr Cはモノマーではあるがプロ配列を除去して活性を保持した成熟型を得ることはできない。 Eは凝集体を形成していると考えられる。frDの割合はpHと塩濃度によって大きく異なり、frDの割合が最大になるのが、図3-c、dのpH7.4の条件であった。PBS透析と2度目のゲルろ過は、どちらも必要であり、どちらか一方のみでは、最終的に活性を保持した成熟型を得ることができなかった。
【0012】
このように、適当なpHと塩濃度におけるゲルろ過を組み合わせることにより、最終的に活性を保持した成熟型が得られるようなプロ体を再生することが可能であった。fr Dをさらに、100mM 酢酸緩衝液pH4.0に対して4℃透析した。この過程で、プロ配列が除去され、成熟型のDer f 1を得ることができる。なお、プロ配列を持たない成熟型Der f 1を封入体として発現させた場合、様々な可溶化、再生条件を試みたが、活性型を得ることは不可能であり、再生にはプロ配列が必要であると考えられた。
得られた成熟型Der f 1は、SDS-PAGEに供した際にシングルバンドであり、十分に精製されていた。さらに、非還元条件下のSDS-PAGEでの移動度が天然Der f 1と一致することから、分子内に3組存在すると予想されるジスルフィド結合が正しく形成されていると推定された。実際に、プロテアーゼ活性及びダニアレルギー患者末梢血中の免疫グロブリンE(以下、「IgE」と略す)との結合活性を測定したところ、本方法で得られた組換え成熟型Der f 1は、これらの活性を保持していた。
【0013】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1 組換えプロDer f 1発現用プラスミドの構築
発現ベクターpGEMEX(登録商標)-1(Promega社)をXba I消化し、T7プロモーター下流のNde Iを含むXba I断片を取り除いた後、自己閉環した。このベクターをNde I消化し、filling in反応を行い、f1 ori近傍のNde Iを潰した後、自己閉環した。このベクターを再度Xba I消化し、先のXba I断片を戻すことにより、T7プロモーター下流にユニークなNde I切断部位を持つベクターを構築した。この改変pGEMEX(登録商標)-1をNde IとBamH Iで消化し、合成オリゴヌクレオチド5'-TATGACAAGCGCTATCGATG-3'と5'-GATCCATCGATAGCGCTTGTCA-3'をアニーリングさせたアダプターを挿入した。作製したプラスミドをAor51H IとBamH Iで消化し、Der f 1 cDNAをクローニングしたpUC118(pUC118::prepro Der f 1)からAor51H IとBamH Iで切り出した断片を挿入した(pGEMEX(登録商標)-1::mature Der f 1)。pUC118::prepro Der f 1を鋳型として用いて、プライマー5'-CCCATATGCGTCCAGCTTCAATCAAACT-3'と5'-AATACTCGCAAGAGTAGTTG-3'を用いてPCR法により増幅後、塩基配列を確認した。この断片をNde IとAor51H Iで消化後、pGEMEX(登録商標)-1::mature Der f 1をNde IとAor51H Iで消化したものに挿入した(pGEMEX(登録商標)-1::pro Der f 1)(図1)。pGEMEX(登録商標)-1::pro Der f 1に含まれるpro Der f 1遺伝子のうち、アミノ酸をコードする部分の塩基配列を配列表1に示す。表中の4塩基目から243塩基目までがプロ配列をコードする部分である。
【0014】
実施例2 組換えプロDer f 1の大腸菌における封入体としての発現
作製した発現プラスミドを用いて大腸菌BL21株を形質転換した。形質転換した大腸菌を30℃で一晩前培養後、50μg/mLのアンピシリンを添加したLB培地に100分の1量植菌し、30℃で振とう培養した。OD600=0.4-0.5に達したところで、IPTG(isopropyl-β-D-thiogalactopyranoside)を最終濃度0.1mMとなるように添加し、さらに30℃で3〜6時間振とう培養して、プロDer f 1の発現を誘導した。培養液を遠心分離して得られた菌体をTEP(100mMトリス塩酸緩衝液pH8.5, 10mM EDTA, 1mM PMSF)で洗浄後、TEPに懸濁し、-80℃で凍結した。融解後、超音波処理により、菌体を破砕し、15000g、15分間遠心した。遠心分離した沈殿をTEPで洗浄し、封入体を得た。
【0015】
実施例3 組換えプロDer f 1封入体の可溶化
プロDer f 1封入体に、尿素を最終濃度8M、DTT(dithiothreitol)を最終濃度1%となるように添加したTEPを加え、室温で1-2時間ゆるやかに振とうした。
実施例4 組換えプロDer f 1の再生(精製と巻き戻し)
可溶化したプロDer f 1を20mM トリス塩酸緩衝液pH8.6にて平衡化したSephacryl S-200 16/60カラム(Pharmacia社)に供し、1回目のゲルろ過を行った。0mMおよび100mMNaClを含む緩衝液を用いた場合の溶出パターンを図2に示した。後の操作で活性型として得られるのはfr Bのみで、100mM NaClを含む緩衝液を用いた場合は、frBに相当するフラクションは溶出しなかった。次いで、frBをpH7.4リン酸緩衝塩溶液(8g NaCl, 0.2g KCl, 0.2g KH2PO4, 2.9g Na2HPO4.12H2O/ 1L H2O, pH7.4 ;以下「PBS」と略す)に対して透析後、PBSにて平衡化したSephacryl S-200 16/60カラム(Pharmacia社)に供し、2回目のゲルろ過を行った。この時の溶出パターンを図3−cに示す。条件検討の例として、0%あるいは0.8%のNaClを含む、pHが6.8、7.4、8.2の緩衝液を用いた場合の溶出パターンを図3に示した。図中のfr C、D、Eに含まれるのはすべてプロDer f 1であるが、最終的にプロ配列を除去して活性を保持した成熟型が得られるのはfr Dのみである。 frDの割合はpHと塩濃度によって大きく異なり、frDの割合が最大になるのが、図3-c、dのpH7.4の条件であった。図3に示したfr Dを以下の操作に用いた。 fr B、fr BをPBS透析したもの及びfr DのSDS-PAGEのパターンを図4、5に示す。fr BをPBSに対して透析することにより、プロDer f 1のバンドより低分子側にバンドが現れるが、N末のアミノ酸配列を決定した結果、プロ配列の22番目のValから始まるものであることが明らかになった。透析操作により構造変化が起きて、プロ配列の最初の21アミノ酸残基から成る領域が切断されたと考えられる。この方法により、大腸菌の培養液1mLあたり、30-100μgのプロDer f 1が正しく再生された。
【0016】
実施例5 酸性処理によるプロ配列の除去
図3のfrDを100mM 酢酸緩衝液 pH4.0に対して、4℃で一晩透析を行い、プロ配列を除去し、成熟型Der f 1を得た。この後、PBSに置換して以下の測定に用いた。
2度目のゲルろ過により得られたfr Dを酢酸緩衝液に対して透析することにより、図4に示すように、SDS-PAGEにおけるバンドの位置が成熟型Der f 1の分子量に相当する低分子量側に移動した。このバンドについて、PVDF膜にブロッティング後、473Aプロテインシーケンサ(Applied Biosystems社)を用いてN末端アミノ酸配列の確認を行った。その結果、成熟型Der f 1とプロ配列の最後の2残基が余分についたものとの混合物であることが明らかとなった。
【0017】
透析の際の経時変化を追うと、プロ配列の最初から始まるものより、N末の21アミノ酸残基から成る領域が切断されたもののほうが、速く成熟型になることが確認された。しかし、この領域を欠く変異体を封入体として発現させた場合、最終的に活性型を得ることが不可能であったことから、この領域は再生には必要であると考えらる。
得られた成熟型Der f 1と天然Der f 1を還元条件及び非還元条件でSDS-PAGEに供した結果を図5に示す。還元条件下においても非還元条件下においても、組換え成熟型Der f 1と天然Der f 1は、同じ移動度を示した。このことから、組換え成熟型Der f 1において、分子内に3組存在すると予想されるS-S結合が正しく形成され、天然Der f 1と同じ構造をとっている可能性が高いと考えられた。
【0018】
実施例6 プロテアーゼ活性の測定
組換えプロDer f 1、組換え成熟型Der f 1及び天然Der f 1それぞれ 1.6μgを0.01Mのシステインを添加した10mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)20mLに溶解した状態で37℃10分間静置した。次に、最終濃度0.1mMとなるように80mLの10mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)に溶解した3種の合成基質N-Suc-Leu-Leu-Val-Tyr-MCA(Sigma社)、 Boc-Val-Leu-Lys-MCA(Peptide社)、Suc-Ala-Pro-Ala-MCA(Peptide社)を添加して、37℃で30分間静置した。10%酢酸を3mL添加して反応を停止し、基質の消化により生じる遊離MCAの蛍光強度(excitation 380nm、emission 460nm)を測定した。
各合成基質を用いてプロテアーゼ活性を測定した結果を図6に示す。どの基質を用いた場合にも、組換えプロDer f 1はプロテアーゼ活性を持たず、組換え成熟型Der f 1と天然Der f 1にはプロテアーゼ活性が確認された。このことから、組換えDer f 1のプロ配列を除去することにより、プロテアーゼ活性を持つようになることが明らかとなった。また、組換え成熟型Der f 1も天然Der f 1も、 N-Suc-Leu-Leu-Val-Tyr-MCA 、Boc-Val-Leu-Lys-MCA に対しては強い活性を示し、 Suc-Ala-Pro-Ala-MCAに対しては弱い活性を示したことから、組換え成熟型Der f 1は天然Der f 1と同様の基質特異性を持つと考えられる。
【0019】
実施例7 IgE結合活性の測定
96穴マイクロタイタープレートに、PBSに溶解した10μg/mLの天然Der f 1を添加し、4℃で一晩静置した。PBSで2回洗浄後、PBSに溶解した3% BSAを添加し、室温で2時間静置した。PBST(0.05% Tween 20を添加したPBS)で洗浄後、PBSTに溶解した3% BSAで2倍希釈したダニアレルギー患者血清25μLと様々な濃度の組換え成熟型Der f 1あるいは天然Der f 1を25μL添加し、4℃で一晩静置した。PBSTで3回洗浄後、3%BSAを添加したPBSTで1000倍希釈した、ビオチン標識抗ヒトIgE抗体(Vector社)を添加し、室温で2時間静置した。PBSTで3回洗浄後、3%BSAを添加したPBSTで1000倍希釈したアビジン標識西洋ワサビパーオキシダーゼを添加し、室温で2時間静置した。PBSTで3回洗浄後、6×10-5%の過酸化水素及び0.4mg/mlのo-phenylenediamine dihydrochloride(Sigma社)を添加した0.1Mクエン酸緩衝液(pH5.0)を加えた。2N硫酸を加えて反応を停止させた後、492nmの吸光度を測定した。
競合ELISAの結果を図7に示す。組換え成熟型Der f 1は天然Der f 1と同等に患者血清中のIgEと天然Der f 1の結合を阻害した。
【0020】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1における組換えプロDerf1発現用プラスミドの構築の概略図。
【図2】実施例4におけるプロDer f 1の溶出パターンを示す図。
【図3】実施例4における条件を変えたプロDer f 1の溶出パターンを示す図。
【図4】実施例4におけるSDS−PAGEパターンを示す図。
【図5】実施例4におけるSDS−PAGEパターンを示す図。
【図6】実施例6における組換え成熟型Der f 1のプロテアーゼ活性を示す図。
【図7】実施例7における組換え成熟型Der f 1のIgE結合活性を示すグラフ。
Claims (2)
- 大腸菌において封入体として発現させたグループ1ダニアレルゲンプロ体を、特定のpHと塩濃度の緩衝液を用いて、100mM NaCl未満の緩衝液にて1回目のゲルろ過を行い、pHが6.8〜8.2の緩衝液を用いて2回目のゲルろ過を行い、プロ体の再生と精製を同時に行った後、プロ配列を除去することにより成熟体を得ることを特徴とするコナヒョウヒダニ(Dermatophagoides farinae)由来グループ1ダニアレルゲンの製造方法。
- 成熟体がダニアレルギー患者由来の免疫グロブリンEとの結合活性を有することを特徴とする請求項1記載の製造方法。
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