JP4321811B2 - 筆記具用筒状部材、射出成形用金型及び筆記具用筒状部材成形方法 - Google Patents
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Description
かかる円筒状の部材は、有底長孔状のキャビティ内にコアピンが挿入された金型を用いて、キャビティの底に設けられたゲートを通じて溶融樹脂の射出成形により形成されることが多い。ところが、このような円筒状の部材は、その外径に比して軸方向長が長いことが多い。ことに、軸筒やインク収容管のような部材については、軸方向長が外径の10倍以上であることも少なくない。したがって、溶融樹脂の射出圧力は極めて高いため、コアピンがその圧力によりぶれて、軸心に保持されないことがある。そうすると、コアピンとキャビティとの間隔が不均一となるため、成形された部材が偏肉したり、ときには側壁に孔が形成されてしまったりするという問題が生じていた。
また、下記の特許文献2には、キャビティとコアピンとの間隙を検知する検知手段と、この検知手段の検知に基づいて該間隙が一定になるように変位させる変位手段とを備えた装置が開示されている。すなわち、樹脂の充填中にコアピンの位置が変動すると検知手段がこれを検知し、この検知に基づいて変位手段がコアピンの位置を微調整してキャビティとコアピンとの間隙を一定に保つこととしている。
そこで、本発明は、特別な手段を設けることなく、金型の形状のみによって射出成形時のコアピンの傾きを防止し、偏肉や孔などの発生のない筆記具用筒状部材を提供することを第1の目的とする。
また、本発明は、前記第1の目的に加え、コアピンの傾き防止をより効率よく行うことを第2の目的とする。
また、本発明は、前記第1、第2又は第3の目的に加え、筆記具用筒状部材の底面に陥没構造を与えることを第4の目的とする。
さらに、本発明は、前記第1、第2又は第3の目的に加え、筆記具用筒状部材の底面に突出構造を与えることを第5の目的とする。
上記の課題に鑑み、本発明のうち第1の発明は、断面円形で底面を有する長孔状のキャビティ20内に同キャビティ20と軸心同一でかつ同キャビティ20より小径の円柱状のコアピン30を挿入してなる射出成形用金型10に、同キャビティ底面21の中心に設けられるゲート25より溶融樹脂を射出して成形されるとともに、同キャビティ底面21と同コアピン30の底面との間の空間により形成される底部51を有する円筒状の筆記具用筒状部材50であって、 前記キャビティ底面21は、
(a)ゲート25を中心とする円形の第1中心面22、
(b)前記第1中心面22の辺縁側に位置し同第1中心面22に対し段差を形成する第1辺縁面23、及び
(c)前記第1辺縁面23から前記第1中心面22までを縮径しつつ連結する第1テーパー面24
により構成され、前記コアピン底面31は、
(d)同コアピン30の軸心35を中心とする円形の第2中心面32、
(e)前記第2中心面32の辺縁側に位置し同第2中心面32に対し前記第1中心面22と前記第1辺縁面23との段差と同様の段差を形成する第2辺縁面33、及び
(f)前記第2中心面33から前記第2中心面32までを縮径しつつ連結する第2テーパー面34
により構成され、前記底部51は、
(g)前記第1中心面22と前記第2中心面32との間の空間により形成される中心部52、
(h)前記第1辺縁面23と前記第2辺縁面33との間の空間により形成される辺縁部53、及び
(i)前記第1テーパー面24と前記第2テーパー面34との間の空間により形成され前記辺縁部53から前記中心縁部52までを少なくとも縮径することなく連結するテーパー部54
により構成されるとともに、前記第1テーパー面及び前記第2テーパー面のうち凹面として形成されている方の最大径部は凸面として形成されている方の最大径部より大径であり、前記コアピン30が前記キャビティ20に挿入される方向を前方と定義し、かつ、同コアピン30が同キャビティ20から抜去される方向を後方と定義したとき、前記中心部52の前方側の面及び前記辺縁部53の前方側の面のうち後方側に位置する方の面は、前記中心部52の後方側の面及び前記辺縁部53の後方側の面のうち前方側に位置する方の面より、後方側に位置することを特徴とする。
すなわち、上記の筆記具用筒状部材50は、断面円形で底面を有する長孔状のキャビティ20内に同キャビティ20と軸心同一でかつ同キャビティ20より小径の円柱状のコアピン30を挿入してなるとともに、同キャビティ底面21の中心に設けられるゲート25より溶融樹脂を射出して成形されるとともに、同キャビティ底面21と同コアピン30の底面との間の空間により形成される底部51を有する円筒状の筆記具用筒状部材50を成形するための射出成形用金型10であって、前記キャビティ底面21は、
(a)ゲート25を中心とする円形の第1中心面22、
(b)前記第1中心面22の辺縁側に位置し同第1中心面22に対し段差を形成する第1辺縁面23、及び
(c)前記第1辺縁面23から前記第1中心面22までを縮径しつつ連結する第1テーパー面24
により構成され、前記コアピン底面31は、
(d)同コアピン30の軸心35を中心とする円形の第2中心面32、
(e)前記第2中心面32の辺縁側に位置し同第2中心面32に対し前記第1中心面22と前記第1辺縁面23との段差と同様の段差を形成する第2辺縁面33、及び
(f)前記第2辺縁面33から前記第2中心面32までを縮径しつつ連結する第2テーパー面34
により構成されるとともに、前記第1テーパー面及び前記第2テーパー面のうち凹面として形成されている方の最大径部は凸面として形成されている方の最大径部より大径であり、前記コアピン30が前記キャビティ20に挿入される方向を前方と定義し、かつ、同コアピン30が同キャビティ20から抜去される方向を後方と定義したとき、前記第1中心面22及び前記第1辺縁面23のうち後方側に位置する方の面は、前記第2中心面32及び前記第2辺縁面33のうち前方側に位置する方の面より、後方側に位置することを特徴とする。
また、「第2辺縁面33」が「第2中心面32」に対し、第1中心面22と第1辺縁面23との段差と「同様の段差」を形成するとは、第2中心面32と第2辺縁面33との間に、第1中心面22と第2辺縁面33との間の高低差と同様の高低差がある、ということを意味する。すなわち、第1中心面22が第1辺縁面23より前方側にある場合には、第2中心面32は第2辺縁面33より前方側にあり、第1中心面22が第1辺縁面23より後方側にある場合には、第2中心面32は第2辺縁面33より後方側にあることになる。ここで、「同様の」とは、第2中心面32と第2辺縁面33との前後関係のみが第1中心面22と第1辺縁面23との前後関係と同様であることを意味し、それ以上の、たとえば両者の距離、面積又は角度等までも同様であることは必ずしも要しない。
そして、上記射出成形用金型10に、前記ゲート25より溶融樹脂を射出することで、前記キャビティ底面21と前記コアピン底面31との間の空間により形成される底部51を有する円筒状の筆記具用筒状部材50が成形されることとなる。
すなわち、キャビティ底面21に設けられたゲート25を通じて溶融樹脂を射出する際に、射出された溶融樹脂は、まずキャビティ底面21の第1中心面22とコアピン底面31の第2中心面32との間の空間(以下、「中心空間42」と称する。)に溜まり、キャビティ底面21の第1テーパー面24とコアピン底面31の第2テーパー面34との間の空間(以下、「テーパー空間44」と称する。)を経て、キャビティ底面21の第1辺縁面23とコアピン底面31の第2辺縁面33との間の空間(以下、「辺縁空間43」と称する。)を通って円筒状空間の全体へ回ることになる。
すなわち、円筒状の筆記具用筒状部材50の底部51形状を、その中心部52の前方側の面及び前記辺縁部53の前方側の面のうち後方側に位置する方の面が、前記中心部52の後方側の面及び前記辺縁部53の後方側の面のうち前方側に位置する方の面より、後方側に位置するように設計することで、前記構成の射出成形用金型10を用いて形成することが可能となる。そして、特別な手段を設けることなく、金型の形状のみによって射出成形時のコアピン30の傾きを防止し、偏肉や孔などの発生のない筆記具用筒状部材50を提供することが可能となっている。
本発明のうち第2の発明は、前記第1の発明の特徴に加え、前記中心部52の肉厚をA及び前記テーパー部54の肉厚をBとした場合、
A>B
なる関係を満たすことを特徴とする。
筆記具用筒状部材50において上記の関係を満たすためには、前記射出成形用金型10において、第1中心面22と第2中心面32との距離をAとし、かつ、第1テーパー面24と第2テーパー面34との距離をBとした場合に上記の関係を満たす必要がある。
また、ここで、前記AB間の関係を満たすとともに、Bを0.1mm以上0.4mm以下とすることが望ましい。このようにすれば、上記コアピン30の軸心保持効果がさらに高まることとなる。なお、Bが0.1mm未満の場合には、筆記具用筒状部材50としての強度に問題が生じる。また、Bが0.4mmを上回る場合には、前記テーパー空間44における溶融樹脂の圧力上昇が少なくなるため、上記の軸心保持効果の上昇はさほど期待できない。なお、筆記具用筒状部材50においてBの値を上記範囲内とするためには、前記射出成形用金型10において、第1テーパー面24と第2テーパー面34との距離を上記Bの範囲内とする必要がある。
C/B≧1.7
なる関係を満たすことが望ましい。なお、筆記具用筒状部材50においてこの関係を満たすためには、前記射出成形用金型において、キャビティ20内側面とコアピン30外側面との距離をCとして、かつ、第1テーパー面24と第2テーパー面34との距離をBとした場合に上記の関係を満たす必要がある。すなわち、CがBの1.7倍以上(望ましくは2倍以上)である場合には、前記テーパー空間で上昇した圧力が、キャビティ20内側面とコアピン30外側面との間の空間において急速に開放されるため、溶融樹脂が同空間内をスムーズに満たすこととなる。これとともに、万一コアピン30が傾いた場合であっても、スムーズに流れる溶融樹脂によってこの傾きは速やかに是正されることとなる。一方、CがBの1.7倍未満である場合には、キャビティ20内側面とコアピン30外側面との間の空間における溶融樹脂の流れが悪くなり、一端コアピン30が傾いた場合にはこれを是正する効果がさほど発揮されないこととなる。
本発明のうち第3の発明は、前記第1又は第2の発明の特徴に加え、前記円筒の軸心35方向と前記テーパー部54とがなす角をθとした場合、
1°≦θ≦45°
なる関係を満たすことを特徴とする。
筆記具用筒状部材50において上記の関係を満たすためには、前記射出成形用金型10において、コアピン30の軸心35方向と第1テーパー面24又は第2テーパー面34とがなす角が上記関係を満たす必要がある。ここで、筆記具用筒状部材50の離型性からは、θが1°以上であることが望ましい。なお、本発明においては、テーパー部は、中心部から辺縁部にかけて漸次大径となることから、このθが負の数となることはない。一方、θが45°を上回る場合には、溶融樹脂の流動方向のベクトル変化があまり顕著に表れないため、コアピン30の保持効果が発揮されない。
(4)第4の発明
本発明のうち第4の発明は、前記第1、第2又は第3の発明の特徴に加え、前記中心部52は、前記辺縁部53より後方側に位置することを特徴とする。
上記の筆記具用筒状部材50を形成するためには、射出成形用金型10において、キャビティ底面21の第1中心面22を第1辺縁面23より後方型に位置させるとともに、コアピン底面31の第2中心面32を第2辺縁面33より後方側に位置させる必要がある。
上記のように構成することで、筆記具用筒状部材50の底面に後方への陥没構造を形成することが可能となる。
本発明のうち第5の発明は、前記第1、第2又は第3の発明の特徴に加え、前記中心部52は、前記辺縁部53より前方側に位置することを特徴とする。
上記の筆記具用筒状部材50を形成するためには、射出成形用金型10において、キャビティ底面21の第1辺縁面23を第1中心面22より後方側に位置させるとともに、コアピン底面31の第2辺縁面33を第2中心面32より後方側に位置させる必要がある。
上記のように構成することで、筆記具用筒状部材50の底面に前方への突出構造を形成することが可能となる。
なお、前記第1から第5までの発明は、筆記具用筒状部材50の外径をD及び全長をLとした場合、
L≧10D
なる関係を満たすような長軸方向に細長い形状の筆記具用筒状部材50を形成する場合により効果的である。すなわち、かかる場合にはコアピン30も長くなるため、射出圧でより偏芯しやすいからである。このようにするためには、キャビティ20の全長を上記Lにし、また、内径を上記Dとするように射出成形用金型10を形成すればよい。
すなわち、本発明のうち第1の発明の説明によると、特別な手段を設けることなく、金型の形状のみによって射出成形時のコアピンの傾きを防止し、偏肉や孔などの発生のない筆記具用筒状部材を提供することが可能となる。
また、本発明のうち第2の発明の説明によると、前記第1の発明の効果に加え、コアピンの傾き防止をより効率よく行うことが可能となる。
さらに、本発明のうち第3の発明の説明によると、前記第1又は第2の発明の効果に加え、コアピンの傾き防止効果がより発揮されることとなる。
さらに、本発明のうち第5の発明の説明によると、前記第1、第2又は第3の発明の効果に加え、筆記具用筒状部材の底面に突出構造を与えることが可能となる。
(1)第1の実施の形態
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る射出成形用金型10を正面断面図で模式的に示したものである。
本実施の形態に係る射出成形用金型10は、キャビティプレート11と、コアピン30とを有する。以下、図1に従い、コアピン30がキャビティ20内に挿入される方向(図面では上方)を「前方」とし、キャビティ20内から抜去される方向(図面では下方)を「後方」とする。
コアピン30がキャビティ20内に挿入されている状態においては、キャビティ20とコアピン30との間にキャビティ空間40が形成される。このキャビティ空間40が、筆記具用筒状部材50を形成する部分となる。
図2は、図1のゲート25近傍の部分を拡大して示したものである。
キャビティ底面21は、ゲート25を中心とする円形の第1中心面22と、この第1中心面22の辺縁側に位置する第1辺縁面23と、この第1辺縁面23からこの第1中心面22までを縮径しつつ連結する第1テーパー面24とにより構成されている。この第1テーパー面24がコアピン30の軸心35方向となす角(θ)は、1°以上45°以下に形成されている。第1中心面22と第1辺縁面23とは、前者がより後方側に、また、後者がより前方側にそれぞれ位置することで、互いに段差を形成している。すなわち、キャビティ底面21においては、第1中心面22が後方へ突出するように形成されている。
充填された溶融樹脂が冷却して固化すると、ランナー溝13を満たす樹脂は、ランナー60を形成する。そして、キャビティ空間40を満たす樹脂は、筆記具用筒状部材50を形成する。この状態でコアプレート12を後退させると、筆記具用筒状部材50はコアピン30とともにキャビティ20から抜去される。しかる後に、突き出しプレート16を前進させると、筆記具用筒状部材50は前方に押し出され、コアピン30から取り外される。一方、ランナープレート14を前進させると、ランナー60はランナー保持ピン15とともに前進し、キャビティプレート11から取り外される。
この底部51は、前記の中心空間42(第1中心面22と第2中心面32との間の空間)に由来する中心部52と、前記のテーパー空間44(第1テーパー面24と第2テーパー面34との間の空間)に由来するテーパー部54と、前記の辺縁空間43(第1辺縁面23と第2辺縁面33との間の空間)に由来する辺縁部53とで構成されている。そして、中心部52は辺縁部53より後方へ陥没している。
第1に、中心部52の前方面(図中では上方の面)及び辺縁部53の前方面のうち、後方寄りの方(すなわち、中心部52の前方面)は、中心部52の後方面(図中では下方の面)及び辺縁部53の後方面のうち、前方寄りの方(すなわち、辺縁部53の後方面)よりも後方側に位置することとなっている。これにより、中心部52と辺縁部53とがテーパー部54により明瞭に画されることとなっている。
第2に、中心部52の肉厚(A)は、テーパー部54の肉厚(B)より大きくなっている。
第4に、側面部の肉厚(C)は、テーパー部54の肉厚(B)の1.7倍以上となっている。
第5に、テーパー部54と軸心35方向とがなす角(θ)は1°以上45度以下となっている。
以上の関係が成立するため、筆記具用筒状部材50は、偏肉がなく、また、側面に孔が形成されるようなことがない。
(2)第2の実施の形態
図6は、本発明の第2の実施の形態に係る射出成形用金型10のうち、ゲート25近傍の部分を拡大して示したものである。なお、ゲート25近傍部分以外の金型構造は、前記図1に示す第1の実施の形態と同様であるので、記載は省略する。
一方、コアピン30前方端のコアピン底面31は、コアピン30の軸心35を中心とする円形の第2中心面32と、この第2中心面32の辺縁側に位置する第2辺縁面33と、この第2辺縁面33からこの第2中心面32までを縮径しつつ連結する第2テーパー面34とにより構成されている。この第2テーパー面34がコアピン30の軸心35方向となす角は、上記の第1テーパー面24と同様に形成されている。第2中心面32と第2辺縁面33とは、前者がより前方側に、また、後者がより後方側にそれぞれ位置することで、互いに段差を形成している。すなわち、コアピン底面31においては、第2中心面32が前方へ突出するように形成されている。
充填された溶融樹脂が冷却して固化した後、射出成形用金型10からの筆記具用筒状部材50の取り外しについては、前記第1の実施の形態(図3)と同様である。
この底部51は、前記の中心空間42(第1中心面22と第2中心面32との間の空間)に由来する中心部52と、前記のテーパー空間44(第1テーパー面24と第2テーパー面34との間の空間)に由来するテーパー部54と、前記の辺縁空間43(第1辺縁面23と第2辺縁面33との間の空間)に由来する辺縁部53とで構成されている。そして、中心部52は辺縁部53より前方へ突出している。
第1に、中心部52の前方面(図中では上方の面)及び辺縁部53の前方面のうち、後方寄りの方(すなわち、辺縁部53の前方面)は、中心部52の後方面(図中では下方の面)及び辺縁部53の後方面のうち、前方寄りの方(すなわち、中心部52の後方面)よりも後方側に位置することとなっている。これにより、中心部52と辺縁部53とがテーパー部54により明瞭に画されることとなっている。
第2に、中心部52の肉厚(A)は、テーパー部54の肉厚(B)より大きくなっている。
第4に、側面部の肉厚(C)は、テーパー部54の肉厚(B)の1.7倍以上となっている。
第5に、テーパー部54と軸心35方向とがなす角(θ)は1°以上45度以下となっている。
以上の関係が成立するため、筆記具用筒状部材50は、偏肉がなく、また、側面に孔が形成されるようなことがない。
なお、以下の実施例及び比較例においては、前記第1の実施の形態による射出成形用金型10によって、ポリプロピレンを溶融樹脂として用いた射出成形により形成された筆記具用筒状部材50により本発明の効果を検証している。ちなみに、前記第2の実施の形態による場合も、下記と同様の効果を奏することが判明している。
まず、前記θ(図2参照)を30°に固定し、前記L(図1参照)を81.6mmに、また、前記D(図1参照)を7.7mmとしてL/D=10.6とした条件で、下記表1のように前記A、B及びC(図2参照)の値を各々設定した実施例及び比較例に係る射出成形用金型10を製作し、これにより筆記具用筒状部材50を成形した。
上記結果から、A>Bを満たし、かつ、Bの値が0.1mm以上0.4mm以下であれば(実施例1から24まで)、少なくとも側面に孔が形成されることのない筆記具用筒状部材50が得られることとなった。とりわけ、C/Bの値が1.7以上であれば(実施例1、2、4、5、7、8、10、11、13、14、16、17、19、20、22及び23)、偏肉は全くみられないか、みられたとしてもわずかであり、満足のいく結果となった。また、Bの値が0.4mmを超えていても、A>Bを満たしていれば、少なくとも側面に孔が形成されることのない筆記具用筒状部材50が得られることとなった。
なお、評価基準は、前記表1の場合と同様とした。
一方、θが45℃を超える比較例8は、偏肉がわずかに認められた。
よって、上記結果から、θの値は45°以下が望ましいことが認められた。
12 コアプレート 13 ランナー溝
14 ランナープレート 15 ランナー保持ピン
16 突き出しプレート
20 キャビティ 21 キャビティ底面
22 第1中心面 23 第1辺縁面
24 第1テーパー面 25 ゲート
30 コアピン 31 コアピン底面
32 第2中心面 33 第2辺縁面
34 第2テーパー面 35 軸心
40 キャビティ空間 42 中心空間
43 辺縁空間 44 テーパー空間
50 筆記具用筒状部材 51 底部
52 中心部 53 辺縁部
54 テーパー部
60 ランナー
70 加圧式ボールペン 71 外軸
72 リフィル 73 インク収容管
74 インク 75 ボールペンチップ
76 継ぎ手部材 77 内軸
78 カバー部材
Claims (9)
- 断面円形で底面を有する長孔状のキャビティ内に同キャビティと軸心同一でかつ同キャビティより小径の円柱状のコアピンを挿入してなる射出成形用金型に、同キャビティ底面の中心に設けられるゲートより溶融樹脂を射出して成形されるとともに、同キャビティ底面と同コアピンの底面との間の空間により形成される底部を有する円筒状の筆記具用筒状部材であって、
前記キャビティ底面は、
(a)ゲートを中心とする円形の第1中心面、
(b)前記第1中心面の辺縁側に位置し同第1中心面に対し段差を形成する第1辺縁面、及び
(c)前記第1辺縁面から前記第1中心面までを縮径しつつ連結する第1テーパー面
により構成され、
前記コアピン底面は、
(d)同コアピンの軸心を中心とする円形の第2中心面、
(e)前記第2中心面の辺縁側に位置し同第2中心面に対し前記第1中心面と前記第1辺縁面との段差と同様の段差を形成する第2辺縁面、及び
(f)前記第2辺縁面から前記第2中心面までを縮径しつつ連結する第2テーパー面
により構成され、
前記底部は、
(g)前記第1中心面と前記第2中心面との間の空間により形成される中心部、
(h)前記第1辺縁面と前記第2辺縁面との間の空間により形成される辺縁部、及び
(i)前記第1テーパー面と前記第2テーパー面との間の空間により形成され前記辺縁部から前記中心部までを縮径しつつ連結するテーパー部
により構成されるとともに、
前記第1テーパー面及び前記第2テーパー面のうち凹面として形成されている方の最大径部は凸面として形成されている方の最大径部より大径であり、
前記コアピンが前記キャビティに挿入される方向を前方と定義し、かつ、同コアピンが同キャビティから抜去される方向を後方と定義したとき、前記中心部の前方側の面及び前記辺縁部の前方側の面のうち後方側に位置する方の面は、前記中心部の後方側の面及び前記辺縁部の後方側の面のうち前方側に位置する方の面より、後方側に位置することを特徴とする筆記具用筒状部材。 - 前記中心部の肉厚をA及び前記テーパー部の肉厚をBとした場合、
A>B
なる関係を満たすことを特徴とする請求項1記載の筆記具用筒状部材。 - 前記Bは、0.1mm以上0.4mm以下であることを特徴とする請求項2記載の筆記具用筒状部材。
- 前記円筒の側面の肉厚をCとした場合、
C/B≧1.7
なる関係を満たすことを特徴とする請求項2又は3記載の筆記具用筒状部材。 - 前記円筒の軸心方向と前記テーパー部とがなす角をθとした場合、
1°≦θ≦45°
なる関係を満たすことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の筆記具用筒状部材。 - 前記中心部は、前記辺縁部より後方側に位置することを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の筆記具用筒状部材。
- 前記中心部は、前記辺縁部より前方側に位置することを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の筆記具用筒状部材。
- 断面円形で底面を有する長孔状のキャビティ内に同キャビティと軸心同一でかつ同キャビティより小径の円柱状のコアピンを挿入してなるとともに、同キャビティ底面の中心に設けられるゲートより溶融樹脂を射出して成形されるとともに、同キャビティ底面と同コアピンの底面との間の空間により形成される底部を有する円筒状の筆記具用筒状部材を成形するための射出成形用金型であって、
前記キャビティ底面は、
(a)ゲートを中心とする円形の第1中心面、
(b)前記第1中心面の辺縁側に位置し同第1中心面に対し段差を形成する第1辺縁面、及び
(c)前記第1辺縁面から前記第1中心面までを縮径しつつ連結する第1テーパー面
により構成され、
前記コアピン底面は、
(d)同コアピンの軸心を中心とする円形の第2中心面、
(e)前記第2中心面の辺縁側に位置し同第2中心面に対し前記第1中心面と前記第1辺縁面との段差と同様の段差を形成する第2辺縁面、及び
(f)前記第2辺縁面から前記第2中心面までを縮径しつつ連結する第2テーパー面
により構成されるとともに、
前記第1テーパー面及び前記第2テーパー面のうち凹面として形成されている方の最大径部は凸面として形成されている方の最大径部より大径であり、
前記コアピンが前記キャビティに挿入される方向を前方と定義し、かつ、同コアピンが同キャビティから抜去される方向を後方と定義したとき、前記第1中心面及び前記第1辺縁面のうち後方側に位置する方の面は、前記第2中心面及び前記第2辺縁面のうち前方側に位置する方の面より、後方側に位置することを特徴とする射出成形用金型。 - 断面円形で底面を有する長孔状のキャビティ内に同キャビティと軸心同一でかつ同キャビティより小径の円柱状のコアピンを挿入してなる射出成形用金型であって、
前記キャビティ底面は、
(a)同底面の中心に設けられるゲートを中心とする円形の第1中心面、
(b)前記第1中心面の辺縁側に位置し同第1中心面に対し段差を形成する第1辺縁面、及び
(c)前記第1辺縁面から前記第1中心面までを縮径しつつ連結する第1テーパー面
により構成され、
前記コアピンが前記キャビティ底面と対向するコアピン底面は、
(d)同コアピンの軸心を中心とする円形の第2中心面、
(e)前記第2中心面の辺縁側に位置し同第2中心面に対し前記第1中心面と前記第1辺縁面との段差と同様の段差を形成する第2辺縁面、及び
(f)前記第2辺縁面から前記第2中心面までを縮径しつつ連結する第2テーパー面
により構成されるとともに、
前記第1テーパー面及び前記第2テーパー面のうち凹面として形成されている方の最大径部は凸面として形成されている方の最大径部より大径であり、
前記コアピンが前記キャビティに挿入される方向を前方と定義し、かつ、同コアピンが同キャビティから抜去される方向を後方と定義したとき、前記第1中心面及び前記第1辺縁面のうち後方側に位置する方の面は、前記第2中心面及び前記第2辺縁面のうち前方側に位置する方の面より、後方側に位置する射出成形用金型に、
前記ゲートより溶融樹脂を射出して、前記キャビティ底面と前記コアピン底面との間の空間により形成される底部を有する円筒状の筆記具用筒状部材を成形することを特徴とする筆記具用筒状部材成形方法。
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