JP4321686B2 - 有機−無機複合体および多孔質ケイ素酸化物の製造方法 - Google Patents

有機−無機複合体および多孔質ケイ素酸化物の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機ポリマーとケイ素酸化物との複合材料である有機−無機複合体の製造方法、および大きな空隙率を有する多孔質ケイ素酸化物の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、機械的強度等の特性向上を目的として、ケイ素酸化物の中にさまざまな有機ポリマーを分散させた有機−無機複合体の研究が行われている。例えば、Journal of Macromolecular Science−Chemistry,A27,13−14 P.1603(1990)には、ポリオキサゾリン等のアミド結合を含むポリマーとケイ素酸化物との複合体が記載されている。その他にも、Reports on Progress in Polymer Physics in Japan,Vol.38 P.315(1995年)にはポリフッ化ビニリデン、高分子論文集,Vol.53,No.4,P.218(1996年)にはポリビニルアルコール、Macromolecules,26 P.3702(1993年)にはポリ酢酸ビニル、Polymer,33(7) P.1486(1992年)にはポリメタクリル酸メチルなど、種々の有機ポリマーを用いたケイ素酸化物との複合材料が検討されている。
【0003】
しかしながら、これらの複合体製造の原料として用いられている有機ポリマーは、いずれも限られた分子量をもつ線状ポリマーあるいは球形スターバーストデンドリマーであるため、得られた複合体の機械的強度が不十分であったほか、有機ポリマーが溶解するような溶媒に接触すると有機ポリマーが溶けだしてしまうので、複合体の耐溶剤性にも問題があった。またこれらの複合体から有機ポリマーを除去して多孔質ケイ素酸化物を得る場合、著しい収縮がおこり、空隙が潰れやすいという問題もあった。
【0004】
また、特開平8−157735号公報等には、重合性有機モノマーを出発原料としたケイ素酸化物と有機ポリマーとの複合体の製造方法が記載されている。この方法を用いた場合には、重合性有機モノマーとして2官能性モノマーを用いることによって、ケイ素酸化物の三次元網目構造と有機ポリマーの三次元網目構造とが互いに絡み合った構造をもつ複合体を得ることもできる。さらには、上記に挙げた種々の複合材料から有機ポリマーを除くことで多孔質のケイ素酸化物を得るという検討もなされている。しかしながら、重合性有機モノマーを出発原料とした場合には、混合液の粘性が低く、またゲル化の段階でモノマーの蒸発がおこるので、コーティング膜や繊維状などの賦形を行う際には困難を伴うという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、機械的強度および耐溶剤性に優れた、有機ポリマーとケイ素酸化物との複合材料の製造方法、および大きな空隙率を有する多孔質ケイ素酸化物の製造方法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の問題点を解決すべく、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、重合性官能基を分子内にもつ有機ポリマーとアルコキシシラン類を原料とし、アルコキシシランがゲル化してケイ素酸化物が生成する前後あるいは同時にポリマー中の重合性官能基を反応させることによって、均一透明かつ機械的強度と耐溶剤性に非常に優れた有機−無機複合体を得られ、またこの有機−無機複合体から有機ポリマーを除去することで、大きな表面積と空隙率をもつ多孔質ケイ素酸化物を得ることができることを見いだし、本発明に至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1) アルコキシシラン類と、脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリカーボネート、及び、脂肪族ポリアンハイドライドのいずれかから選ばれ、且つ、分子中に少なくともビニル基、ビニリデン基、ビニレン基、グリシジル基、アリル基、アクリレート基、メタクリレート基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基から選ばれる重合可能な官能基を有する有機ポリマーと、を混合して有機-無機複合体製造用の組成物とした後、該組成物中のアルコキシシラン類の加水分解・脱水縮合反応と、有機ポリマーに含まれる官能基を用いた重合反応を行なうことを特徴とする多孔質ケイ素酸化物用の有機−無機複合体の製造方法。
(2) 該有機-無機複合体製造用の組成物を構成する該有機ポリマーが有する重合可能な官能基がアクリレート基またはメタクリレート基のいずれかであることを特徴とする(1)に記載の多孔質ケイ素酸化物用の有機−無機複合体の製造方法。
(3) (1)又は(2)に記載の多孔質ケイ素酸化物用の有機―無機複合体の製造方法で得られた複合体から有機ポリマーを除去する工程を経て得られることを特徴とする多孔質ケイ素酸化物の製造方法。
(4) (1)に記載の多孔質ケイ素酸化物用の有機−無機複合体を製造するために用いる有機−無機複合体製造用の組成物であって、該組成物が、アルコキシシラン類と、脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリカーボネート、及び、脂肪族ポリアンハイドライドのいずれかから選ばれ、且つ、分子中に少なくともビニル基、ビニリデン基、ビニレン基、グリシジル基、アリル基、アクリレート基、メタクリレート基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基から選ばれる重合可能な官能基を有する有機ポリマーと、を混合して得られることを特徴とする有機-無機複合体製造用の組成物、である。
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の有機−無機複合体の製造方法は、アルコキシシラン類と、分子中に少なくとも1つの重合可能な官能基を有する有機ポリマーを混合し、アルコキシシラン類を加水分解、脱水縮合させる工程と、有機ポリマーに含まれる重合性官能基を重合させる工程とからなる。これらの工程を行うことによってアルコキシシラン類に含まれるアルコキシ基は水酸基となり、続いて脱水縮合反応を起こしてゲル化し、一方有機ポリマーは3次元網目構造および/またはグラフト構造となる。
【0009】
本発明において用いることができるアルコキシシラン類としてはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ(n−プロポキシ)シラン、テトラ(i−プロポキシ)シラン、テトラ(n−ブトキシ)シラン、テトラ(t−ブトキシ)シランなどのテトラアルコキシシランなどが挙げられる。またアルコキシシランのオリゴマーや、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,4−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼンなどに代表されるような、ケイ素原子上に1個の水素、アルキル基又はアリール基をもつアルコキシシランも本発明で用いられるアルコキシシラン類に含まれる。アルコキシシラン類の部分加水分解物を原料としてもよい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合しても差し支えない。
【0010】
さらに、得られる複合体や多孔質ケイ素酸化物を改質するために、ケイ素原子上に2〜3個の水素、アルキル基又はアリール基をもつアルコキシシランを上記のアルコキシシラン類に混合することも可能である。混合する量は、原料のシラン化合物の全モル数のうち80%以下となるようにする。80%を超えるとゲル化しない場合がある。
【0011】
本発明においては、分子内に少なくとも一つの重合可能な官能基を有する有機ポリマーを用いるのが大きな特徴である。有機ポリマーとしては分子鎖中に少なくとも1つの重合性官能基を有するものであれば、特別限定されることなく、具体例としてポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアンハイドライド、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル、ポリオレフィン、ポリジエン、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、ポリビニルアミド、ポリビニルアミン、ポリビニルエステル、ポリビニルアルコール、ポリハロゲン化ビニル、ポリハロゲン化ビニリデン、ポリスチレン、ポリシロキサン、ポリスルフィド、ポリスルホン、ポリイミン、ポリイミド、セルロース、およびこれらの誘導体を主なる構成成分とするポリマーが挙げられる。これらのポリマーの構成単位であるモノマーどうしの共重合体や、その他の任意のモノマーとの共重合体を用いてもよい。また有機ポリマーは1種類でも2種類以上を併用してもよい。ポリマーの重合度は8〜350000の中から選ばれる。
【0012】
上記のポリマーの中でも好適に用いられるものはポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアンハイドライド、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリビニルアミド、ポリビニルアミン、ポリビニルエステル、ポリビニルアルコール、ポリイミン、ポリイミドを主なる構成成分とするものである。さらに、後述するように加熱焼成によって多孔質ケイ素酸化物に変換する場合には、熱分解温度の低い脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリカーボネート、脂肪族ポリアンハイドライドを主なる構成成分とするものを用いるのが特に好ましい。
【0013】
重合可能な官能基としてはビニル基、ビニリデン基、ビニレン基、グリシジル基、アリル基、アクリレート基、メタクリレート基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、イソシアネート基、アミノ基、イミノ基、ハロゲン基などが挙げられる。これらの官能基はポリマーの主鎖中にあっても末端にあっても側鎖にあってもよい。またポリマー鎖に直接結合していてもよいし、アルキレン基やエーテル基などのスペーサーを介して結合していてもよい。同一のポリマー分子が1種類の官能基を有していても、2種類以上の官能基を有していてもよい。上に挙げた官能基の中でも、ビニル基、ビニリデン基、ビニレン基、グリシジル基、アリル基、アクリレート基、メタクリレート基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基が好適に用いられる。
【0014】
本発明の有機−無機複合体の製造に好適に用いることができる有機ポリマーの基本骨格の具体的な例を以下に挙げる。なお、以下アルキレンとはメチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、イソプロピリデン、1,2−ジメチルエチレン、2,2−ジメチルトリメチレンを指し、アルキルとはC1〜C8のアルキル基およびフェニル基、トリル基、アニシル基などのアリール基を指し、(メタ)アクリレートとはアクリレートとメタクリレートの両方を指し、二カルボン酸とは蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの有機酸を指す。
【0015】
▲1▼ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールビニルエーテル、ポリアルキレングリコールジビニルエーテル、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルビニルエーテル、ポリアルキレングリコールグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールアルキルエーテルグリシジルエーテルなどに代表される、末端にアクリレート基、メタクリレート基、ビニル基、グリシジル基などの重合可能な官能基をもつ脂肪族ポリエーテル。
【0016】
▲2▼ポリカプロラクトン(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトンビニルエーテル、ポリカプロラクトングリシジルエーテル、ポリカプロラクトンビニルエステル、ポリカプロラクトングリシジルエステル、ポリカプロラクトンビニルエステル(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトングリシジルエステル(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトンビニルエステルビニルエーテル、ポリカプロラクトングリシジルエステルビニルエーテル、ポリカプロラクトンビニルエステルグリシジルエーテル、ポリカプロラクトングリシジルエステルグリシジルエーテル、などに代表される、片末端あるいは両末端にアクリレート基、メタクリレート基、ビニル基、グリシジル基等の重合可能な官能基をもつポリカプロラクトン。
【0017】
▲3▼ポリカプロラクトントリオールの(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート、ビニルエーテル、ジビニルエーテル、トリビニルエーテル、グリシジルエーテル、ジグリシジルエーテル、トリグリシジルエーテル。
▲4▼二カルボン酸とアルキレングリコールとの重合体であり、片末端あるいは両末端にアクリレート基、メタクリレート基、ビニル基、グリシジル基などの重合可能な官能基をもつ脂肪族ポリエステル。
【0018】
▲5▼片末端あるいは両末端にアクリレート基、メタクリレート基、ビニル基、グリシジル基等の重合可能な官能基をもつ脂肪族ポリアルキレンカーボネート。
▲6▼二カルボン酸無水物の重合体であり、末端にアクリレート基、メタクリレート基、ビニル基、グリシジル基等の重合可能な官能基をもつ脂肪族ポリアンハイドライド。
【0019】
▲7▼ポリグリシジル(メタ)アクリレート、ポリアリル(メタ)アクリレート、ポリビニル(メタ)アクリレート等、側鎖にビニル基、グリシジル基、アリル基等の官能基を有するポリアクリル酸エステルやポリメタクリル酸エステル。
▲8▼ポリケイ皮酸ビニル、ポリビニルアジドベンザル、エポキシ樹脂等。
これらの中でも、透明均質な複合体が得られやすく、また後述するような加熱焼成による多孔質ケイ素酸化物への変換が容易である、上記▲1▼〜▲6▼に示した脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリカーボネート、脂肪族ポリアンハイドライドなどが特に好適に用いられる。
【0020】
本発明の有機−無機複合体の製造における有機ポリマーの添加量は、アルコキシシラン類1重量部に対し10-2〜100重量部、好ましくは10-1〜10重量部、さらに好ましくは10-1〜5重量部である。有機ポリマーの添加量が10-2重量部より少なくても、100重量部より多くても、複合体の特性が現れず実用性に乏しい。
【0021】
また、有機−無機複合体を改質するために、重合可能なモノマーあるいはそれらの重合体を添加することも可能である。用いることができるものとしてアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、エチレンビスアクリレート、エチレンビスメタクリレート、α−シアノアクリル酸、α−シアノアクリル酸エステルなどのアクリル酸およびメタクリル酸誘導体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、クロトン酸ビニル、安息香酸ビニル、クロロギ酸ビニル等の酸ビニルエステル類、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミド、N,N−ジアルキルメタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミドなどのアミド類、スチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、ジフェニルエチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキサン、5−ビニル−2−ノルボルネンなどのビニル基含有炭化水素類、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのアクリロニトリル誘導体、N−ビニルピリジン、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルイミダゾールなどのビニルアミン類、ビニルアルキルエーテル、ビニルアルキルケトン、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エポキシ樹脂、およびそれらの重合体などが挙げられる。
【0022】
本発明の有機−無機複合体の製造において溶媒の存在は必ずしも必須ではないが、一般にアルコキシシラン類と有機ポリマーは相溶しにくいので、その場合にはこの両者を溶解する溶媒を用いることが必要である。溶媒としてはアルコキシシラン類と有機ポリマーの両方を溶解するものであれば特に限定することなく用いることが可能である。また、原料のアルコキシシラン類が不溶であっても、加水分解された後に可溶となるものであれば同様に使用することができる。該溶媒の使用量は、アルコキシシラン、有機ポリマーおよび有機モノマーを合わせて、0.05重量%以上の濃度となるようにする。これより薄い濃度ではゲル化しなかったり、実用性のあるコーティング膜を得ることができない。
【0023】
用いられる溶媒の例として、C1〜C4の一価アルコール、C1〜C4の二価アルコール、グリセリンなどのアルコール類の他、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−ホルミルモルホリン、N−アセチルモルホリン、N−ホルミルピペリジン、N−アセチルピペリジン、N−ホルミルピロリジン、N−アセチルピロリジン、N,N’−ジホルミルピペラジン、N,N’−ジアセチルピペラジンなどのアミド類、テトラメチルウレア、N,N’−ジメチルイミダゾリジノンなどのウレア類、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジ(n−プロピル)エーテル、ジイソプロピルエーテル、ジグリム、1、4−ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、炭酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレンなどのエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチル(n−ブチル)ケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類、アセトニトリル、プロピオニトリル、n−ブチロニトリル、イソブチロニトリルなどのニトリル類、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホランなどが好適に用いられる。これらの溶媒を混合したり、他の任意の溶媒あるいは添加物を混合してもよい。
【0024】
上に挙げた溶媒の中でも、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−ホルミルモルホリン、N−アセチルモルホリン、N−ホルミルピペリジン、N−アセチルピペリジン、N−ホルミルピロリジン、N−アセチルピロリジン、N,N’−ジホルミルピペラジン、N,N’−ジアセチルピペラジンなどのアミド類、テトラメチルウレア、N,N’−ジメチルイミダゾリジノンなどのウレア類を用いるのが特に好ましい。
【0025】
本発明においてアルコキシシランの加水分解、脱水縮合反応には触媒は必ずしも必要ではないが、反応を促進するために触媒を添加してもよい。触媒の具体例としては塩酸、硝酸、硫酸、蟻酸、酢酸、蓚酸、マレイン酸などの酸類、アンモニア水、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、ピペリジン、コリンなどのアルカリ類などが挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。また、2種以上を段階的に用いることも可能である。ここでいう段階的というのは、例えば予め酸触媒で処理を施してから塩基触媒を加えることや、その逆を行うことを指す。
【0026】
これらの触媒の添加量はアルコキシシラン1モルに対し1モル以下、好ましくは10-1モル以下が適当である。1モルより多いと沈殿物が生成し、均一な多孔質体が得られない場合がある。
本発明においてアルコキシシラン類の加水分解は、これら触媒が水溶液である場合にはその溶媒である水によって起こるし、水を添加しなくても周囲に十分な水蒸気が存在していれば、それを利用することもできる。必要であれば別途水を添加してもよい。適当な水の量は原料のアルコキシシランに含まれているケイ素原子1モルに対し0.3〜104 モル、好ましくは1〜10モルである。104 モルより多いと得られる複合体の均質性が低下する場合がある。
【0027】
本発明の有機−無機複合体の製造に際し、加水分解・脱水縮合反応(ゲル化反応)と重合反応を、任意の形状の鋳型に入れて行えばその形状の有機−無機複合体を得ることができるし、基板上に塗布すれば有機−無機複合体薄膜を得ることができる。この膜状に塗布する方法としては流延、回転、浸漬などの周知の方法で行うことができる。有機−無機複合体材料からなる薄膜の厚さは0.1μm〜10μmの範囲にする。10μmより厚いとクラックが発生する場合がある。
【0028】
該基板の表面をあらかじめ密着向上剤で処理してもよい。この場合の密着向上剤としてはいわゆるシランカップリング剤として用いられるものやアルミニウムキレート化合物などを使用することができる。特に好適に用いられるものとして、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジクロロシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムビス(エチルアセトアセテート)モノアセチルアセトネート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)などが挙げられる。これらの密着向上剤を塗布するにあたっては必要に応じて他の添加物を加えたり、溶媒で希釈して用いてもよい。密着向上剤による処理は公知の方法で行う。
【0029】
ゲル化反応の温度は特に規定するものではないが、通常は0〜180℃、好ましくは30〜150℃の範囲で行う。低すぎると反応速度が小さく、十分に架橋させるのに長時間を要し、逆に高すぎるとボイドが生成しやすく、得られる有機−無機複合体の均質性が低下する。ゲル化に要する時間はゲル化の温度や触媒の量などによって異なるが、通常数分間〜数日間の範囲である。
【0030】
本発明の有機−無機複合体の製造においては、アルコキシシランのゲル化反応と有機ポリマーに含まれる官能基を用いた重合反応の両方ともおこるのが、本発明の最も特徴的なところである。これらの反応はどちらが先に進行してもよく、同時に起こってもよい。これらの反応の順序は、触媒の種類や量、反応条件によって異なる。ここでいう官能基を用いた重合反応は一般的な付加、重付加、付加縮合、開環、重縮合反応などを指し、可逆的な光二量化反応は含まれない。
【0031】
有機ポリマー中の官能基を用いた重合反応は加熱によって促進することができる。温度は有機ポリマーに含まれる官能基の種類に応じて、20〜200℃の範囲から選ばれる。また、用いている有機ポリマーが光架橋性のものであれば、光照射によって反応を進行させることもできる。重合反応を速やかに進行させるために重合開始剤を添加してもよい。重合開始剤はアゾ化合物や有機過酸化物などの熱ラジカル発生剤、ジアゾ化合物、アジド化合物、アセトフェノン誘導体などの光ラジカル開始剤の他に光酸発生剤、光塩基発生剤など、公知のものが使用できる。これらは単独でも複数を併用してもいい。開始剤を用いた熱重合、光重合は公知の方法で行う。重合開始剤の量は、有機ポリマー1重量部に対し10-3〜1重量部、好ましくは10-2〜10-1重量部用いられる。
【0032】
本発明の有機−無機複合体の製造において、アルコキシシランのゲル化反応と有機ポリマーの官能基を用いた重合反応を、溶媒の存在下で、かつ密閉系で行ったときは、溶媒を含有した複合体が得られるので、引き続き溶媒を除去し乾燥することが必要である。乾燥温度は当然溶媒の種類によって異なるが、通常30〜250℃の範囲で行う。また減圧下で乾燥を行うのも有効である。ボイドの発生を制御し、均質な乾燥ゲルを得るために、乾燥工程中に徐々に温度を上昇させる方法も好ましい。
【0033】
溶媒を用いて本発明を開放系で実施する場合、上記のアルコキシシランのゲル化反応、有機ポリマーの官能基を用いた重合反応を行う過程で溶媒の蒸発が並行して起こる。反応と溶媒除去の順序を制御することは、原料のシラン化合物の種類、有機ポリマーに含まれる官能基の種類、触媒の種類、量、溶媒の蒸気圧、密閉系か解放系かなどの雰囲気などを選定することにより可能である。本発明の複合体を薄膜で得る場合、通常の条件下ではアルコキシシランのゲル化反応、有機ポリマーの官能基の反応が終了した時点で溶媒は除去されている。
【0034】
本発明の方法で得られた複合体は機械的強度が高く、かつ用いた有機ポリマーが溶解してしまうような溶剤に接触してももはや有機ポリマーが溶け出すことはなく、従来の有機−無機複合体にはない優れた特性をもっている。これに加え、コーティング膜など任意の形状をもった複合体を容易に作成することも可能である。
【0035】
また、この複合体から有機ポリマーのみを除去することで、多孔質ケイ素酸化物に変換することができる。有機ポリマーを除去する方法としてもっとも簡便な方法は、有機ポリマーの熱分解温度以上で1分〜24時間程度加熱する方法である。その他、プラズマ処理で有機ポリマーを除去することも可能である。
得られた多孔質ケイ素酸化物をシリル化剤で処理して、吸水性を抑えたり、他の物質との接着性を向上させたりすることも有効である。用いることのできるシリル化剤の例としてトリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルビニルメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランなどのアルコキシシラン類、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、メチルビニルジクロロシラン、メチルクロロジシラン、トリフェニルクロロシラン、メチルジフェニルクロロシラン、ジフェニルジクロロシランなどのクロロシラン類、ヘキサメチルジシラザン、N,N’−ビス(トリメチルシリル)ウレア、N−トリメチルシリルアセトアミド、ジメチルトリメチルシリルアミン、ジエチルトリエチルシリルアミン、トリメチルシリルイミダゾールなどのシラザン類などが挙げられる。シリル化の方法は塗布、浸漬、蒸気暴露などの方法で行う。
【0036】
従来から、限られた分子量をもつ線状有機ポリマーあるいは球形スターバーストデンドリマーとケイ素酸化物との複合材料を加熱焼成して有機ポリマーを分解除去し、多孔質のケイ素酸化物を得るという例は知られていた。しかし、加熱するとケイ素酸化物がさらに脱水縮合して収縮しようとし、そのときに溶融状態にある有機ポリマーが複合体から外へ容易に滲み出してしまうため、焼成による体積の収縮が著しく、大きな空隙率をもつ多孔質体を得ることは困難であった。
【0037】
本発明の有機−無機複合体は、加熱焼成しても有機ポリマーの滲み出しが少なく、その結果として最大で95体積%もの大きな空隙率をもつ多孔質ケイ素酸化物を容易に得ることができる。
本発明のケイ素酸化物と有機ポリマーとの複合体は、機械的強度と耐溶剤性に優れていることから、レンズなどの光学材料や、構造材料、フィルム、コーティング材としてLSI多層配線用基板や半導体素子などの幅広い用途に使用可能である。また、この複合体から得られた多孔質ケイ素酸化物は、従来のものよりも表面積と空隙率が大きいことから、触媒の担持体として用いることができ、コーティング膜とすることによって誘電率の低い絶縁膜としてLSI多層配線用基板や半導体素子に用いることも可能である。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施例を示す。なお、複合体および多孔質ケイ素酸化物の評価は下記の装置を用いて行った。
(1)表面積測定(N2BET):島津製作所製窒素吸着式表面積測定装置を用いた。
(2)膜厚測定:Sloan社製DEKTAK−IIA型表面粗さ測定装置を用いた。
(3)誘電率測定:ヒューレット・パッカード社製HP4280型C−V測定装置を用いた。
(4)透明性:複合体を厚さ1mmにスライスし、白地に3mm角の黒色の文字が書かれた文字盤上に置き、複合体を通して文字が判読できれば透明であると判断した。
【0039】
【実施例1】
テトラエトキシシラン1.2g、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(平均分子量360)0.68gをN−メチルピロリドン2.0g、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート1.0gの混合溶媒に溶解し、この溶液に水0.75gと0.1N硝酸0.15gを加え、室温で2時間撹拌した。この溶液にジクミルパーオキサイド0.03gを添加し、ポリテトラフルオロエチレン製時計皿に流延して120℃にて1時間放置したところ、溶液はゲル化した。さらに180℃にて1時間放置することによって、ガラス状の褐色透明な複合体を得た。この複合体にカッターナイフの刃を立て20グラム重の加重をかけたが、傷は付かなかった。
【0040】
【実施例2】
テトラエトキシシラン1.2g、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(平均分子量360)0.68g、ポリエチレングリコールジメタクリレート(平均分子量540)0.34gをN−メチルピロリドン2.0g、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート1.0gの混合溶媒に溶解し、この溶液に水0.75gと0.1N硝酸0.15gを加え、室温で2時間撹拌した。この溶液にジクミルパーオキサイド0.05gを添加し、ポリテトラフルオロエチレン製時計皿上に流延して120℃にて1時間放置したところ、溶液はゲル化した。さらに180℃にて1時間放置することによって、ガラス状の褐色透明な複合体を得た。この複合体に、実施例1と同様にカッターナイフの刃を立て20グラム重の加重をかけたが、傷は付かなかった。
【0041】
【実施例3】
メチルトリエトキシシラン0.92g、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(平均分子量360)0.68g、ポリエチレングリコールジメタクリレート(平均分子量540)0.34gをN−メチルピロリドン2.0g、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート1.0gの混合溶媒に溶解し、この溶液に水0.75gと0.1N硝酸0.15gを加え、室温にて2時間撹拌した。この溶液にジクミルパーオキサイド0.05gを添加し、ポリテトラフルオロエチレン製時計皿上に流延して120℃にて1時間放置したところ、溶液はゲル化した。さらに180℃にて1時間放置することによって、ガラス状の褐色透明な複合体を得た。この複合体に、実施例1と同様にカッターナイフの刃を立て20グラム重の加重をかけたが、傷は付かなかった。
【0042】
【実施例4】
テトラエトキシシラン0.60g、メチルトリエトキシシラン0.46g、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(平均分子量360)0.68g、ポリエチレングリコールジメタクリレート(平均分子量540)0.34gをN−メチルピロリドン2.0g、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート1.0gの混合溶媒に溶解して、この溶液に水0.75gと0.1N硝酸0.15gを加え、室温にて2時間撹拌した。この溶液にジクミルパーオキサイド0.05gを添加し、ポリテトラフルオロエチレン製時計皿上に流延して120℃にて1時間放置したところ、溶液はゲル化した。さらに180℃にて1時間放置することによって、ガラス状の褐色透明な複合体を得た。この複合体に、実施例1と同様にカッターナイフの刃を立て20グラム重の加重をかけたが、傷は付かなかった。
【0043】
【実施例5】
テトラエトキシシラン1.2g、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(平均分子量360)0.68g、ポリエチレングリコールジメタクリレート(平均分子量540)0.34gをエタノール3.0gに溶解し、この溶液に水0.75gと0.1N硝酸0.15gを加え、室温で2時間撹拌した。この溶液にジクミルパーオキサイド0.05gを添加し、PTFE製時計皿上に流延して120℃にて1時間放置したところ、溶液はゲル化した。さらに180℃にて1時間放置することによって、ガラス状の無色透明な複合体を得た。この複合体に、実施例1と同様にカッターナイフの刃を立て20グラム重の加重をかけたが、傷は付かなかった。
【0044】
【実施例6】
実施例5で得られた複合体を、空気中600℃にて1時間加熱焼成し、有機ポリマー分を焼失させ、多孔質ケイ素酸化物に変換した。この多孔質ケイ素酸化物の比表面積は874.9m2 /gであった。
【0045】
【実施例7】
実施例1〜5で得られた複合体を、水中に浸したまま1時間放置したが、いずれも重量減少はみられなかった。
【0046】
【実施例8】
実施例2で用いた溶液をシリコンウェハ上に毎分1500回転の速度で回転塗布し、120℃にて1時間、180℃にて1時間加熱して、厚さ0.41μmの複合体の薄膜を得た。この試料を窒素雰囲気下450℃にて1時間焼成し、有機ポリマー分を焼失させ、多孔質ケイ素酸化物に変換した。このときの膜厚は0.32μmであり、焼成前に比べた膜厚の減少は22%にとどまった。
【0047】
【実施例9】
実施例2で用いた溶液を、窒化チタン薄膜付きシリコンウェハ上に毎分1500回転の速度で回転塗布し、120℃にて1時間、180℃にて1時間加熱して、窒素雰囲気下450℃にて1時間焼成し、有機ポリマー分を焼失させ、多孔質ケイ素酸化物に変換した。膜厚は0.27μmであった。この試料を、ヘキサメチルジシラザンの10%トルエン溶液に1時間浸漬した後、120℃で真空乾燥することによって、空孔表面をトリメチルシリル基で修飾し疎水化した。この薄膜の上部にマスクを通してアルミニウムを蒸着し、直径1.7mmの電極を作製した。この試料を用いて多孔質ケイ素酸化物薄膜の1MHzにおける比誘電率を測定したところ2.17であった。
【0048】
【実施例10】
試料をヘキサメチルジシラザンの10%トルエン溶液に1時間浸漬する操作の代わりに、試料をヘキサメチルジシラザンの入ったシャーレとともに密封容器に入れ、室温で3時間放置してヘキサメチルジシラザンの蒸気に暴露させる操作を行うことを除いて、実施例9と同じ操作を行ったところ、この膜厚0.27μmの多孔質ケイ素酸化物薄膜の1MHzにおける比誘電率は1.84であった。
【0049】
【実施例11】
試料をヘキサメチルジシラザンの10%トルエン溶液に1時間浸漬する操作の代わりに、試料を耐圧容器に入れ減圧した後に室温にてヘキサメチルジシラザンの蒸気を導入する操作を行うことを除いて、実施例9と同じ操作を行ったところ、この膜厚0.27μmの多孔質ケイ素酸化物薄膜の1MHzにおける比誘電率は1.81であった。
【0050】
【実施例12】
テトラエトキシシラン1.2g、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均分子量575)0.68gをN−メチルピロリドン2.0g、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート1.0gの混合溶媒に溶解し、この溶液に水0.75gと0.1N硝酸0.15gを加え、室温にて2時間撹拌した。この溶液に2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン0.03gを添加し、シリコンウェハ上に2000rpm、10秒間回転塗布して、120℃にて1時間放置してゲル化、乾燥させた。こうして得られた複合体の薄膜(厚さ0.25μm)に、露光用マスクを通して45分間紫外線照射して、希薄水酸化カリウム水溶液中に3秒間浸漬したところ、未露光部が剥離したが露光部はシリコンウェハ上に残り、露光用マスクと同一の図形にパターン化することができた。
【0051】
【比較例1】
実施例2で用いたポリエチレングリコールモノメタクリレートとポリエチレングリコールジメタクリレートの代わりにポリエチレングリコール(平均分子量600)1.0gを用い、ジクミルパーオキサイドを添加しないことを除いて実施例2と同じ操作を行い、褐色透明で柔軟な複合体を得た。この複合体にカッターナイフの刃を立て20グラム重の加重をかけたところ、容易に断裂した。
【0052】
【比較例2】
比較例1で得られた複合体を水中に浸し、1時間放置したところ、9%の重量減少が認められた。
【0053】
【比較例3】
比較例1で用いた溶液をシリコンウェハ上に毎分1500回転の速度で回転塗布し、120℃にて1時間、180℃にて1時間加熱して、厚さ0.54μmの複合体の薄膜を得た。この試料を窒素雰囲気下450℃にて1時間焼成し、有機ポリマー分を焼失させ、多孔質ケイ素酸化物に変換した。このとき膜厚は0.24μmになっており、焼成前に比べて膜厚は56%も減少していた。
【0054】
【比較例4】
比較例1で用いた溶液を、窒化チタン薄膜付きシリコンウェハ上に毎分1500回転の速度で回転塗布し、120℃にて1時間、180℃にて1時間加熱して、窒素雰囲気下450℃にて1時間焼成し、有機ポリマー分を焼失させ、多孔質ケイ素酸化物に変換した。膜厚は0.22μmであった。この試料を、ヘキサメチルジシラザンの10%トルエン溶液に1時間浸漬した後、120℃で真空乾燥することによって、空孔表面をトリメチルシリル基で修飾し疎水化した。この薄膜の上部にマスクを通してアルミニウムを蒸着し、直径1.7mmの電極を作製した。この試料を用いて多孔質ケイ素酸化物薄膜の1MHzにおける比誘電率を測定したところ2.99であり、実施例9に比べて0.82高い値を示した。
【0055】
【比較例5】
テトラエトキシシラン5.2gと重合性官能基をもたないポリビニルピロリドン(平均分子量40000)4.5gをエタノール3.0gとジメチルホルムアミド3.5gの混合溶媒に溶解させ、この溶液に水3.5gと0.1N硝酸0.65gを加え、室温にて2時間撹拌した。この溶液をポリテトラフルオロエチレン製時計皿上に流延して120℃にて1時間放置したところ、溶液はゲル化した。さらに180℃にて1時間放置することによって、ガラス状の黄色透明な複合体を得た。これを空気中600℃にて1時間加熱焼成し、有機ポリマー分を焼失させ、多孔質ケイ素酸化物に変換した。この多孔質ケイ素酸化物の比表面積は616.6m2 /gであり、実施例6の場合に比べて約258m2 /g少ない結果となった。
【0056】
【比較例6】
テトラエトキシシラン1.2g、重合性官能基をもたないポリエチレングリコール(平均分子量2万)0.68gを、N−メチルピロリドン2.0g、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート1.0gの混合溶媒に溶解し、この溶液に水0.75gと0.1N硝酸0.15gを加え、室温にて2時間撹拌した。この溶液をシリコンウェハ上に2000rpm、10秒間回転塗布した後、120℃にて1時間放置してゲル化、乾燥させた。これを希薄水酸化カリウム水溶液中に3秒間浸漬したところ、膜は全て溶解剥離してしまった。
【0057】
【発明の効果】
本発明により、機械的強度と耐溶剤性に優れたケイ素酸化物と有機ポリマーとの複合体を提供することができる。また該複合体から得られた多孔質ケイ素酸化物は従来のものよりも表面積と空隙率が大きいので、触媒の担持体、誘電率の低いLSI多層配線用絶縁膜として用いることも可能であり、産業上、大いに有用である。

Claims (4)

  1. アルコキシシラン類と、脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリカーボネート、及び、脂肪族ポリアンハイドライドのいずれかから選ばれ、且つ、分子中に少なくともビニル基、ビニリデン基、ビニレン基、グリシジル基、アリル基、アクリレート基、メタクリレート基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基から選ばれる重合可能な官能基を有する有機ポリマーと、を混合して有機-無機複合体製造用の組成物とした後、該組成物中のアルコキシシラン類の加水分解・脱水縮合反応と、有機ポリマーに含まれる官能基を用いた重合反応を行なうことを特徴とする多孔質ケイ素酸化物用の有機−無機複合体の製造方法。
  2. 該有機-無機複合体製造用の組成物を構成する該有機ポリマーが有する重合可能な官能基がアクリレート基またはメタクリレート基のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の多孔質ケイ素酸化物用の有機−無機複合体の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の多孔質ケイ素酸化物用の有機―無機複合体の製造方法で得られた複合体から有機ポリマーを除去する工程を経て得られることを特徴とする多孔質ケイ素酸化物の製造方法。
  4. 請求項1に記載の多孔質ケイ素酸化物用の有機−無機複合体を製造するために用いる有機−無機複合体製造用の組成物であって、該組成物が、アルコキシシラン類と、脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリカーボネート、及び、脂肪族ポリアンハイドライドのいずれかから選ばれ、且つ、分子中に少なくともビニル基、ビニリデン基、ビニレン基、グリシジル基、アリル基、アクリレート基、メタクリレート基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基から選ばれる重合可能な官能基を有する有機ポリマーと、を混合して得られることを特徴とする有機-無機複合体製造用の組成物。
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