JP4321397B2 - ビニル重合体およびその製造方法ならびに樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、加水分解性シリル基を有するビニル重合体の製造方法に関するものである。
バッチ方式の重合において、反応液の増粘を抑えることを目的として、加水分解性エステル化合物の存在下に加水分解性シリル基を有する重合体を製造する方法が知られている(特許文献1参照)。しかし、得られる重合体の硬化物は、強度や伸びなどの機械的物性が充分ではなく使用が制限される。
管状反応器を使用して、高温連続重合により加水分解性シリル基を有するビニル重合体を製造するが知られている(特許文献2参照)。しかし、この方法は反応器内にゲル状物が生成しやすく、長時間の製造の際には、配管、バルブ等が閉塞し、運転不能となる場合があった。また、得られる重合体の硬化物は、強度や伸びなどの機械的物性が充分ではなく使用が制限される。
特開昭60−206802号公報 特開2001−172392号公報
製造時にゲルを生成することが少なく、得られる重合体の硬化物の強度や伸びが大きい加水分解性シリル基を有するビニル重合体の製造方法を提供する。また、該方法により得られる加水分解性シリル基を有するビニル重合体を含み、強度や伸びが大きい硬化物を与えるシーリング材組成物および接着剤組成物を提供する。
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明の加水分解性シリル基を有するビニル重合体の製造方法は、撹拌槽式連続反応器を使用して、反応器中の反応液は加水分解性エステル化合物からなる溶剤1〜30質量部を含む反応溶媒を1〜50質量部、加水分解性シリル基を有するビニル単量体およびシリル基含有ビニル単量体以外のビニル単量体、並びに該ビニル単量体の重合により生成した重合体の合計を100質量部の割合で含む条件で、120〜300℃の温度でビニル単量体を連続重合させることを特徴とする。
上記加水分解性エステル化合物は、オルトギ酸トリメチルまたはオルト酢酸トリメチルであることが好ましい。
上記加水分解性シリル基を有するビニル重合体の製造方法は、反応液から留去した未反応単量体および溶剤のうち、30〜98%を原料タンクまたは反応器に戻すリサイクル工程をさらに含むことが好ましい。

製造時にゲルを生成することなく、重合体を硬化させて得られる硬化物の強度や伸びが大きい加水分解性シリル基を有するビニル重合体が得られた。また、該ビニル重合体を含み、強度や伸びが大きい硬化物を与えるシーリング材組成物および接着剤組成物が得られた。
本明細書において、アクリルおよびメタクリルを合わせて(メタ)アクリルともいう。
加水分解性シリル基を有するビニル重合体の原料となるビニル単量体は、加水分解性シリル基を有するビニル単量体(以下、シリル基含有ビニル単量体ともいう。)およびシリル基含有ビニル単量体以外のビニル単量体(以下、その他のビニル単量体ともいう。)である。
シリル基含有ビニル単量体は、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基などのラジカル重合性不飽和結合を有する基および加水分解性シリル基を有する単量体である。シリル基含有ビニル単量体の具体例としては、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。特に、重合性、加水分解性シリル基の反応性から、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランが好ましい。
その他のビニル単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸イソボルニルなどの(メタ)アクリル酸エステル、アクリロニトリル、酢酸ビニル、スチレンなどが挙げられる。
加水分解性エステル化合物からなる溶剤(以下、単に加水分解性エステルともいう。)は、ビニル単量体の重合反応において、ゲルの生成を抑制する働きをする成分である。ゲル生成抑制機能は、加水分解性エステルが水と反応して水の濃度を低減させる脱水効果に起因すると考えられる。加水分解性エステルとしてはオルト有機酸エステルが好ましく、具体例としてはオルトギ酸トリメチル、オルトギ酸トリエチル、オルトギ酸トリ-n-ブチル、オルト酢酸トリメチル、オルト酢酸トリエチル、オルトプロピオン酸トリメチル、オルトプロピオン酸トリエチル、オルト-n-酪酸トリメチル、オルトイソ酪酸トリメチルが挙げられる。特に、オルトギ酸トリメチル、オルト酢酸トリメチルが脱水反応性の高さから好ましい。
ビニル重合体の製造に使用される反応溶媒は、上記加水分解性エステルを必須成分として含むほか、加水分解性エステル以外の溶剤をも含むものであってもよい。
加水分解性エステル以外の溶剤としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、i-プロパノ−ル、n-ブタノール等のアルコール類、トルエン、キシレン等の炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル、2−エトキシプロピオン酸エチル等のエステル類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル類が挙げられる。
特に好ましくは、反応器内のゲル発生を抑える効果の高いi-プロパノ−ルである。
撹拌槽式連続反応器は、原料入り口、反応液出口、撹拌装置、温度制御装置を有するタンク型の連続反応器であり、原料を反応器に連続供給し、原料の供給量に相当する量の反応液を抜き出しながら連続的に反応させる設備である。このような反応器を使用したビニル単量体の連続重合は公知である(特表昭57−502171号公報、特開昭59−6207号公報、特開昭60−215007号公報など)。
本発明のビニル重合体の製造方法は、撹拌槽式連続反応器にビニル単量体および加水分解性エステルを含む反応溶媒を連続供給し、これら供給物の供給量に相当する量の反応液を抜き出しながら連続的にビニル単量体を重合させるものである。
ビニル単量体、加水分解性エステル、加水分解性エステル以外の溶剤は、反応器に供給される前に、モレキュラーシーブなどの脱水剤によって脱水処理されてもよい。
反応器中の反応液は、加水分解性エステル、ビニル単量体、ビニル単量体の重合により生成した重合体を含む。加水分解性エステル以外の溶剤を含む場合もある。
反応液は、ビニル単量体およびビニル単量体の重合により生成した重合体の合計量100質量部を基準として反応溶媒1〜50質量部を含有し、反応溶媒1〜50質量部のうち1〜30質量部は加水分解性エステルである。すなわち加水分解性エステル以外の溶剤は、加水分解性エステルの割合に応じて0〜49質量部の範囲で使用される。
加水分解性エステルの割合が1質量部未満であると脱水効果が充分発揮されず、反応器内のゲル生成を防ぐことができない。30質量部を超えると経済的に無駄であるほか、重合体に残留して重合体の硬化反応を妨げることもある。反応溶媒の使用割合が50質量部を超えると重合体の生産性が低くなる。好ましい反応溶媒の使用割合は5〜30質量部である。
重合温度は120〜300℃である。120℃未満であると、重合が遅くなり、重合体の生産性が低くなる。300℃以上であると、分解等の副反応がおきやすくなり、着色が激しくなったり、低分子量物を多く含むことにより重合体を硬化させて得られる硬化物の物性が低下する場合がある。重合反応を円滑にさせるために、公知のラジカル重合開始剤を使用してもよい。
反応器内の内容物の平均滞留時間は、7〜60分である。7分未満であると未反応単量体が多く回収され、重合体の生産性が低くなる。60分以上であっても、製造時間が長いため生産性は低くなる。
反応器から抜き出された重合体、未反応単量体および溶剤を含む反応液は、蒸留等により、未反応単量体および溶剤などの揮発性成分を留去することによって重合体を単離することができる。
反応液から留去した未反応単量体および溶剤などの揮発性成分のうちの一部を原料タンクに戻すかまたは直接反応器に戻し、再度重合反応に利用することもできる。このように未反応単量体および溶剤をリサイクルする方法は経済性の面から好ましい方法である。
留出液のうち、原料タンクまたは反応器に戻す割合は、好ましくは、30〜98%であり、さらに好ましくは、50〜95%である。98%を超える場合は、重合時に反応器内にゲルが発生しやすい。30%未満の場合は、経済性の効果が低い。
上記のようにして得られる加水分解性シリル基を有するビニル重合体は、シーリング材組成物または接着剤組成物の成分として好適に利用できる。
シーリング材組成物は、上記加水分解性シリル基を有するビニル重合体のほか、加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレンを含むものであってもよい。シーリング材組成物は、エポキシ樹脂などの架橋性樹脂、可塑剤、充填剤、硬化触媒、脱水剤、安定剤などを含有するものであってもよい。
接着剤組成物は、上記加水分解性シリル基を有するビニル重合体のほか、加水分解性シリル基を有するポリオキシアルキレンを含むものであってもよい。接着剤組成物は、エポキシ樹脂などの架橋性樹脂、可塑剤、充填剤、硬化触媒、脱水剤、安定剤などを含有するものであってもよい。
(実施例1)
オイルジャケットを備えた容量1リットルの攪拌槽式連続反応器のオイルジャケットの温度を226℃に保った。
タンクAに、単量体として、n−ブチルアクリレート16362g、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン882g、溶剤として、メチルエチルケトン360g、オルト酢酸トリメチル216g、開始剤として、ジ-t-ブチルパーオキサイド180gの混合液を充填した。タンクBに、n−ブチルアクリレート200g、メチルエチルケトン1572g、オルト酢酸トリメチル228gの混合液を充填した。
タンクAの混合液を39g/分、タンクBの混合液を9g/分で、同時に反応器に供給を開始した。この時、反応器内の溶剤質量は、単量体および単量体が重合して生成する重合体の合計質量100部を基準として、メチルエチルケトン20.5部、オルト酢酸トリメチル3.9部となる。そして、反応器内の反応液の質量を約580gになるように保ちながら、単量体混合物の供給量に相当する反応液を反応器の出口から連続的に抜き出した。その時の内温は、222℃に保たれ、内圧は、約1.7MPaであった。反応器の出口から抜き出した反応液を、30kPaに減圧し、250℃に保った薄膜蒸発機で、連続的に未反応の単量体や溶剤などの揮発性成分を留去し、不揮発性成分である重合体1を回収した。留去した揮発性成分の90質量%を、連続的にタンクBに戻した。タンクBの内容物は撹拌により均一に保たれた。
単量体混合物の供給開始後に温度が安定してから36分後を反応液の回収開始点とし、これから444分間反応を継続して、38.2g/分の割合で重合体1を得た。尚、重合終了直前に、タンクB中の液をガスクロマトグラフにて分析したところ、液100部を基準として、n−ブチルアクリレート6.7部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.4部、メチルエチルケトン48.7部、オルト酢酸トリメチル14.0部であった。この結果より、反応器内の溶剤質量は、単量体および単量体が重合して生成する重合体の合計質量100部を基準として、メチルエチルケトン16.6部、オルト酢酸トリメチル5.6部であることが確認された。
溶媒としてテトラヒドロフランを使用し、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)より求めた分子量をポリスチレン換算した重合体1の重量平均分子量(Mw)は3500であった。また、1H−NMR(プロトン核磁気共鳴スペクトル)を測定した結果、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン単位を、5.0質量部含む重合体であることが確認された。
重合後、N−メチルピロリドンを48g/分の流速で36分間連続的に反応器に供給し、反応器の洗浄を行った。洗浄後、反応器を解体して反応器内を確認したところ、ゲル状物は認められなかった。
(比較例1)
タンクAに、n−ブチルアクリレート16362g、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン882g、メチルエチルケトン576g、ジ-t-ブチルパーオキサイド180gの混合液を充填し、タンクBに、n−ブチルアクリレート200g、メチルエチルケトン1800gの混合液を充填した以外は、実施例1と同様の方法で重合を行った。この時、反応器内の溶剤質量は、単量体および単量体が重合して生成する重合体の合計質量100部を基準として、メチルエチルケトン24.4部となる。
重合反応の結果、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン単位を5.0質量部含むMw3500の比較重合体1が得られた。
N−メチルピロリドンで洗浄した後、反応器を解体したところ、反応器壁面および攪拌軸に、ゲル状物の付着が認められた。
(実施例2)
オイルジャケットを備えた容量1リットルの攪拌槽式連続反応器のオイルジャケットの温度を169℃に保った。
2−エチルヘキシルアクリレート7434g、n−ブチルアクリレート7290g、メチルメタクリレート1782g、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン720g、i-プロパノ−ル360g、オルト酢酸トリメチル378g、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド36gの混合液を、タンクAに充填した。2−エチルヘキシルアクリレート258g、n−ブチルアクリレート294g、i-プロパノ−ル728g、オルト酢酸トリメチル720g、の混合液を、タンクBに充填した。
タンクAの混合液を32.8g/分、タンクBの混合液を15.2g/分で、同時に反応器に供給を開始した。この時、反応器内の溶剤質量は、単量体および単量体が重合して生成する重合体の合計質量100部を基準として、i-プロパノ−ル17.4部、オルト酢酸トリメチル17.3部となる。そして、反応器内の反応液の質量を580gになるように保ちながら、単量体混合物の供給量に相当する反応液を反応器の出口から連続的に抜き出した。その時の内温は、167℃に保たれ、内圧は、約0.8MPaであった。反応器の出口から抜き出した反応液を、30kPaに減圧し、250℃に保った薄膜蒸発機で、連続的に未反応の単量体や溶剤などの揮発性成分を留去し、不揮発性成分である重合体2を回収した。留去した揮発性成分の90質量%を、連続的にタンクBに戻した。タンクBの内容物は撹拌により均一に保たれた。
単量体混合物の供給開始後に温度が安定してから36分後を反応液の回収開始点とし、これから444分間反応を継続して、31.1g/分の割合で重合体2を得た。尚、重合終了直前に、タンクB中の液をガスクロマトグラフにて分析したところ、液100部を基準として、2−エチルヘキシルアクリレート12.8部、n−ブチルアクリレート15.9部、メチルメタクリレート2.3部、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン0.3部、i-プロパノ−ル26.3部、オルト酢酸トリメチル16.4部であることが確認された。この結果より、反応器内の溶剤質量は、単量体および単量体が重合して生成する重合体の合計質量100部を基準として、メチルエチルケトン21.2部、オルト酢酸トリメチル7.2部であることが確認された。
得られた重合体2は、Mw12200で、1H−NMRを測定した結果、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン単位を、4.0質量部含む重合体であることが確認された。
実施例1と同様の洗浄操作を実施後、反応器を解体したところ、反応器内にゲルの付着は認められなかった。
(比較例2)
実施例2におけるタンクAに入れたオルト酢酸トリメチル378gをメチルエチルケトンに置き換え、タンクBに入れたオルト酢酸トリメチル720gをメチルエチルケトンに置き換えた以外は、実施例2と同様の操作により、比較重合体2を得た。この時、反応器内の溶剤質量は、単量体および単量体が重合して生成する重合体の合計質量100部を基準として、i-プロパノ−ル17.4部、メチルエチルケトン17.3部となる。
得られた重合体2は、Mw12100で、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン単位を4.0質量部含む重合体であることが確認された。
実施例1と同様の洗浄操作を実施後、反応器を解体したところ、反応器内にゲルの付着が確認された。
(比較例3)
オイルジャケットを備えた容量1リットルの攪拌槽式連続反応器のオイルジャケットの温度を171℃に保った。
2−エチルヘキシルアクリレート7776g、n−ブチルアクリレート7542g、メチルメタクリレート1854g、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン792g、オルト酢酸トリメチル9g、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド36gの混合液を、タンクAに充填した。2−エチルヘキシルアクリレート820g、n−ブチルアクリレート1026g、メチルメタクリレート154gの混合液を、タンクBに充填した。
タンクAの混合液を39.1g/分、タンクBの混合液を8.9g/分で、同時に反応器に供給を開始した。この時、反応器内の溶剤質量は、単量体および単量体が重合して生成する重合体の合計質量100部を基準として、オルト酢酸トリメチル0.04部となる。そして、反応器内の反応液の質量を580gになるように保ちながら、単量体混合物の供給量に相当する反応物を反応器の出口から連続的に抜き出した。その時の内温は182℃に保たれ、内圧は約0.3MPaであった。反応器の出口から抜き出した反応液を、30kPaに減圧し、250℃に保った薄膜蒸発機で、連続的に未反応の単量体や溶剤などの揮発性成分を留去し、不揮発性成分である比較重合体3を回収した。留去した揮発性成分の90質量%を、連続的にタンクBに戻した。タンクBの内容物は撹拌により均一に保たれた。
単量体混合物の供給開始後に温度が安定してから36分後を反応液の回収開始点とし、これから444分間反応を継続して、38.1g/分の割合で比較重合体3を得た。尚、重合終了直前に、タンクB中の液をガスクロマトグラフにて分析したところ、液100部を基準として、2−エチルヘキシルアクリレート27.1部、n−ブチルアクリレート33.2部、メチルメタクリレート4.8部、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン0.7部、オルト酢酸トリメチル0.8部であることが確認された。この結果より、反応器内の溶剤質量は、単量体および単量体が重合して生成する重合体の合計質量100部を基準として、オルト酢酸トリメチル0.2部であることが確認された。
得られた比較重合体3は、Mw12000で、1H−NMRを測定した結果、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン単位を、4.0質量部含む重合体であることが確認された。
実施例1と同様の洗浄操作を実施後、反応器を解体したところ、反応器内にゲルの付着が認められた。
(比較例4)
1リットルフラスコに、酢酸ブチル100部を入れ、90℃に昇温した。内温が90℃になった後、n−ブチルアクリレート43部、2−エチルヘキシルアクリレート43部、メチルメタクリレート10部、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン4部、n−ドデシルメルカプタン1.5部、オルト酢酸トリメチル1.0部、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)2.5部の混合物を、内温を90℃に保ちながら、1時間かけて滴下した。さらに、3時間、90℃で加熱し、重合反応を終了した。さらに、ロータリーエバポレーターで、90℃、1kPaで、揮発性成分を留去して、不揮発成分である比較重合体4を得た。
得られた比較重合体4は、Mw11800であり、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン単位を、4.0質量部含む重合体であることが確認された。
(重合体の硬化および硬化物物性の評価)
実施例2および比較例4で得られた重合体について、下記の方法により硬化させ、硬化物の引張物性(引張強度、伸び率)およびゲル分率を評価した。
・引張物性の評価
表1に示す配合(各質量部)により混合し、厚さ3mmのシートを作成した後、室温で1週間養生して硬化物を作製した。硬化物のシートから、3号ダンベルテストピースを打ち抜き、JIS K6301に基づいて引張試験を行い、破断時の強度および伸び率を測定した。結果を表2に示す。
表に記載の原料は以下のものである。
サイリルSAT−350:鐘淵化学工業株式会社製
A−171:日本ユニカー株式会社製 ビニルトリメトキシシラン
A−1120:日本ユニカー株式会社製 N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン
Figure 0004321397
Figure 0004321397
・ゲル分率の評価
表3に示す配合(各質量部)により混合し、厚さ3mmのシートを作成した後、シートを室温でアセトンに4日浸漬させた。シートを取り出し、80℃で3時間乾燥させた。浸漬前後のシートの質量より、ゲル分率を算出した。実施例2(重合体2)および比較例4(比較重合体4)のゲル分率はそれぞれ63%および42%であった。
Figure 0004321397
比較例4に示したように、バッチ方式の重合において得られる重合体は、得られる硬化物の強度や伸びなどの機械的物性およびゲル分率に代表される硬化性が充分ではなく使用が制限される。管状反応器を使用して連続重合によって製造される重合体も、得られる硬化物の強度や伸びなどの機械的物性が充分ではないものとなる。その理由は、バッチ方式の重合または管状反応器を使用した連続重合により得られる重合体は、重合体を構成する単量体単位の分布が不均一なものになりやすいためと推察している。
製造時にゲルを生成することなく、重合体を硬化させて得られる硬化物の強度や伸びが大きい加水分解性シリル基を有するビニル重合体が得られた。該ビニル重合体は、強度や伸びが大きい硬化物を与えるシーリング材組成物および接着剤組成物の原料として有用である。

Claims (3)

  1. 撹拌槽式連続反応器を使用して、反応器中の反応液は加水分解性エステル化合物からなる溶剤1〜30質量部を含む反応溶媒を1〜50質量部、加水分解性シリル基を有するビニル単量体およびシリル基含有ビニル単量体以外のビニル単量体、並びに該ビニル単量体の重合により生成した重合体の合計を100質量部の割合で含む条件で、120〜300℃の温度でビニル単量体を連続重合させる、加水分解性シリル基を有するビニル重合体の製造方法。
  2. 上記加水分解性エステル化合物が、オルトギ酸トリメチルまたはオルト酢酸トリメチルであることを特徴とする請求項1に記載の加水分解性シリル基を有するビニル重合体の製造方法。
  3. 反応液から留去した未反応単量体および溶剤のうち、30〜98%を原料タンクまたは反応器に戻すリサイクル工程をさらに含むことを特徴とする請求項1または2に記載の加水分解性シリル基を有するビニル重合体の製造方法。
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