JP4321015B2 - 二次電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は二次電池に関するものであり、特にエネルギー密度が高く、高容量で安定性に優れた二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ノート型パソコン、携帯電話など小型あるいは携帯電子機器の急速な市場拡大に伴い、これらに用いられる電池に対して軽量化、高容量化に対する要求が高まっている。この要求に応えるために、リチウムイオン等のアルカリ金属イオンを荷電担体として、その電荷授受に伴う電気化学反応を利用した二次電池が盛んに開発されている。なかでも、リチウムイオン二次電池は安定性に優れたエネルギー密度の大きな高容量電池として種々の電子機器に利用されている。このようなリチウムイオン二次電池は活物質として正極にマンガン酸リチウムやコバルト酸リチウムといったリチウム含有遷移金属酸化物、負極に炭素を用いたものであり、これら活物質へのリチウムイオンの挿入、脱離反応を利用して充放電を行っている。
【0003】
しかしながら、このリチウムイオン二次電池は特に正極に比重の大きな金属酸化物を用いているため、単位質量当たりの電池容量には改善の余地があり、より軽量の電極材料を用いて高容量電池を開発しようとする試みが検討されてきた。例えば、米国特許第4,833,048号公報、および特許第2715778号公報にはジスルフィド結合を有する有機化合物を正極に用いた電池が開示されている。これはジスルフィド結合の生成、解離を伴う電気化学的酸化還元反応を電池の原理として利用したものである。この電池は硫黄や炭素といった比重の小さな元素を主成分とする電極材料から構成されているため、高エネルギー密度の大容量電池という点において一定の効果を奏している。しかし、解離した結合が再度結合する効率が小さいことや活物質の電解液への拡散のため、充放電サイクルを重ねると容量が低下しやすいという欠点がある。
【0004】
一方、同じく有機化合物を利用した電池として、導電性高分子を電極材料に用いた電池が提案されている。これは導電性高分子に対する電解質イオンのドープ、脱ドープ反応を原理とした電池である。ここで述べるドープ反応とは、導電性高分子の酸化もしくは還元によって生ずる荷電ソリトンやポーラロン等のエキシトンを、対イオンによって安定化させる反応のことである。一方、脱ドープ反応とはその逆反応に相当し、対イオンによって安定化されたエキシトンを電気化学的に酸化もしくは還元する反応のことを示している。米国特許第4,442,187号公報には、このような導電性高分子を正極もしくは負極の材料とする電池が開示されている。この電池は、炭素や窒素といった比重の小さな元素のみから構成されたものであり、高容量電池として開発が期待された。しかし、導電性高分子には、酸化還元によって生じるエキシトンがπ電子共役系の広い範囲に亘って非局在化し、それらが相互作用するという性質がある。これは発生するエキシトンの濃度に限界をもたらすものであり、電池の容量を制限するものである。このため、導電性高分子を電極材料とする電池では軽量化という点では一定の効果を奏しているものの、大容量化という点においては未だ改善の余地があった。
【0005】
以上述べてきたように、高容量電池を実現するために、遷移金属含有活物質を利用しない様々な電池の提案がなされている。しかし、エネルギー密度が高く、高容量で安定性に優れた電池は未だ得られていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記で述べたように、正極に遷移金属酸化物を用いるリチウムイオン電池では、元素の比重が大きいため、現状を上回る高容量電池の製造が原理的に困難であった。このため、高容量電池を実現するために、遷移金属含有活物質を利用しない様々な電池の提案がなされているが、エネルギー密度が高く、高容量で安定性に優れた電池は未だ得られていない。本発明は、エネルギー密度が高く、高容量で充放電サイクルの安定性に優れた新規な二次電池を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討した結果、低質量の原子のみから構成されているにもかかわらず、今までに電極の活物質として利用されなかった特定の有機化合物、すなわち式(1)で表される構造を有する化合物が電極の活物質として利用できることを見出した。本発明によれば、式(1)で表される構造を有する化合物、特には、式(A)、(B)および(C)のそれぞれで表される化合物ならびに式(D)、(E)、(F)、(G)および(H)のそれぞれで表される高分子化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を電極活物質として用いることにより高容量密度の電極を得ることができるため、高エネルギー密度かつ安定性に優れた新規な電池を提供することができる。
【0008】
すなわち本発明は、少なくとも正極、負極および電解質を有する二次電池において、当該正極および負極の両方またはいずれか一方の電極の活物質が、式(A)、(B)および(C)のそれぞれで表される化合物ならびに式(D)、(E)、(F)、(G)および(H)のそれぞれで表される高分子化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を含むことを特徴とする二次電池に関する。
【0009】
【化117】
【化118】
【化119】
【化120】
【化121】
【化122】
【化123】
【化124】
【0017】
二次電池において電極活物質は電極反応により酸化もしくは還元されるため、電極活物質は出発状態と酸化もしくは還元状態の二つの状態を取る。本発明において、前記活物質は出発状態と酸化もしくは還元された状態の何れかの状態で、その構造中に式(1)で表される部分構造を有する化合物、特には式(A)、(B)および(C)のそれぞれで表される化合物ならびに式(D)、(E)、(F)、(G)および(H)のそれぞれで表される高分子化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物である。
【0018】
本発明は、活物質の電極反応を利用する二次電池において、
正極および負極の少なくとも一方の電極反応が、式(A)、(B)および(C)のそれぞれで表される化合物ならびに式(D)、(E)、(F)、(G)および(H)のそれぞれで表される高分子化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物を反応物もしくは生成物とする電極反応であることを特徴とする二次電池に関する。
【0019】
また本発明は、前記活物質を正極として用いることを特徴とする前記いずれかの二次電池に関する。
【0020】
また本発明は、前記二次電池がリチウム二次電池であることを特徴とする前記いずれかの二次電池に関する。
【0021】
本発明は、上記の化合物が電極活物質として優れていることを見出したことに基づいてなされたものである。これは、式(1)で表される構造が、副反応をほとんどおこさない、ほぼ100%の割合で可逆に安定した酸化還元反応を起こすことによる。すなわち、式(1)で表される部分構造に有する化合物を活物質として用いた二次電池は、充放電を安定して行うことができ、サイクル特性に優れた二次電池となる。また、式(1)で表される構造を有するこれら化合物は、炭素、窒素、水素、酸素という質量の小さい元素のみから構成することができる。このため、活物質の質量を小さくでき、これを用いて製造した電極の単位質量あたりの容量密度はおおきくなり、その結果、この活物質を用い電池を作製した場合、質量当たりのエネルギー密度が大きな電池となる。
【0022】
また、本発明では、正極、もしくは負極での電極反応に、前記式(1)で表される部分構造を有する化合物、特には式(A)、(B)および(C)のそれぞれで表される化合物ならびに式(D)、(E)、(F)、(G)および(H)のそれぞれで表される高分子化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物が直接寄与しており、これらを活物質材料として用いる電極は正極もしくは負極のいずれかに限定されるものではない。ただし、エネルギー密度の観点から、特に正極の電極活物質としてこの化合物を用いることが好ましい。また、本発明の二次電池は、高容量が得られるという点から特にリチウム二次電池であることが好ましい。
【0023】
【発明の実施の形態】
図1に本発明の電池の一実施形態の構成を示す。図1に示された電池は、正極5と負極集電体1上に配置した負極3とを電解質を含むセパレーター4を介して対向するように重ね合わせ、さらに正極5上に正極集電体6を重ね合わせた構成を有している。負極集電体1と正極集電体6との間には、両者の電気的接触を防ぐ目的で、プラスティック樹脂等の絶縁性材料からなる絶縁パッキン2が配置される。なお、固体電解質やゲル電解質を用いる場合は、セパレータに代えてこれら電解質を電極間に介在させる形態にすることもできる。
【0024】
本実施形態では、このような構成において、負極3もしくは正極5または両電極に用いられる活物質が、前記式(1)で表される構造を有する化合物であることを特徴とする。
【0025】
本発明の電池は、電池容量の点から、正極活物質として前記式(1)で表される構造を有する化合物を含有する正極を有するリチウム二次電池とすることが好ましい。
【0026】
[1]活物質
本発明における電極の活物質とは、充電反応および放電反応等の電極反応に直接寄与する物質のことであり、電池システムの中心的役割を果たすものである。
【0027】
[1−1]式(1)で表される部分構造を有する化合物
本発明では活物質として式(1)で表される構造を有する化合物を用いることができる。
【0028】
【化8】
【0029】
式(1)においてR1、R2、R3およびR4は水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアルケニル基、置換もしくは非置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは非置換の芳香族複素環基、置換もしくは非置換のアラルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、カルボキシル基、置換もしくは非置換のアミノ基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のアリールオキシ基、置換もしくは非置換のアルコキシカルボニル基、置換もしくは非置換のアリールオキシカルボニル基、置換もしくは非置換のアシル基、または、置換もしくは非置換のアシルオキシ基を表す。
【0030】
本発明において活物質として用いられる式(1)で表される構造を有する化合物は、低分子化合物でも高分子化合物でもよい。高分子化合物の形状は鎖状、分岐状、網目状であってよい。また、高分子化合物である場合、その分子量は特に限定されないが、1000以上であることが好ましい。これは、1000以上であると、電池用電解液に不溶となり、充放電サイクルの安定性が高くなるためである。
【0031】
式(1)で表される部分構造を有する化合物が高分子化合物の場合、その好適な例として、下記式(2)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物、および式(3)で表される繰り返し単位を有する高分子化合物が挙げられる。
【0032】
【化9】
【0033】
式(2)においてR1〜R8は、同一であっても異なっていてもよく、水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアルケニル基、置換もしくは非置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは非置換の芳香族複素環基、置換もしくは非置換のアラルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、カルボキシル基、置換もしくは非置換のアミノ基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のアリールオキシ基、置換もしくは非置換のアルコキシカルボニル基、置換もしくは非置換のアリールオキシカルボニル基、置換もしくは非置換のアシル基、または、置換もしくは非置換のアシルオキシ基を表す。
【0034】
【化10】
【0035】
式(3)式においてR1〜R4およびR9〜R12は、同一であっても異なっていてもよく、水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアルケニル基、置換もしくは非置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは非置換の芳香族複素環基、置換もしくは非置換のアラルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、カルボキシル基、置換もしくは非置換のアミノ基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のアリールオキシ基、置換もしくは非置換のアルコキシカルボニル基、置換もしくは非置換のアリールオキシカルボニル基、置換もしくは非置換のアシル基、置換もしくは非置換のアシルオキシ基を表す。
【0036】
上記式(1)〜(3)において、置換もしくは非置換のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状の置換もしくは非置換のアルキル基が挙げられ、これらの炭素数は1から10が好ましい。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシイソブチル基、1,2−ジヒドロキシエチル基、1,3−ジヒドロキシイソプロピル基、2,3−ジヒドロキシ−t−ブチル基、1,2,3−トリヒドロキシプロピル基、クロロメチル基、1−クロロエチル基、2−クロロエチル基、2−クロロイソブチル基、1,2−ジクロロエチル基、1,3−ジクロロイソプロピル基、2,3−ジクロロ−t−ブチル基、1,2,3−トリクロロプロピル基、ブロモメチル基、1−ブロモエチル基、2−ブロモエチル基、2−ブロモイソブチル基、1,2−ジブロモエチル基、1,3−ジブロモイソプロピル基、2,3−ジブロモ−t−ブチル基、1,2,3−トリブロモプロピル基、ヨードメチル基、1−ヨードエチル基、2−ヨードエチル基、2−ヨードイソブチル基、1,2−ジヨードエチル基、1,3−ジヨードイソプロピル基、2,3−ジヨード−t−ブチル基、1,2,3−トリヨードプロピル基、アミノメチル基、1−アミノエチル基、2−アミノエチル基、2−アミノイソブチル基、1,2−ジアミノエチル基、1,3−ジアミノイソプロピル基、2,3−ジアミノ−t−ブチル基、1,2,3−トリアミノプロピル基、シアノメチル基、1−シアノエチル基、2−シアノエチル基、2−シアノイソブチル基、1,2−ジシアノエチル基、1,3−ジシアノイソプロピル基、2,3−ジシアノ−t−ブチル基、1,2,3−トリシアノプロピル基、ニトロメチル基、1−ニトロエチル基、2−ニトロエチル基、2−ニトロイソブチル基、1,2−ジニトロエチル基、1,3−ジニトロイソプロピル基、2,3−ジニトロ−t−ブチル基、1,2,3−トリニトロプロピル基等が挙げられ、一種単独または二種以上を組み合わせて有することができる。ここで、アルキル基はシクロアルキル基を含むものとする。
【0037】
置換もしくは非置換のアルケニル基としては、直鎖状、分岐状、環状の置換もしくは非置換のアルケニル基が挙げられ、これらの炭素数は1から18が特に好ましい。具体的には、例えば、ビニル基、アリル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1,3−ブタンジエニル基、1−メチルビニル基、スチリル基、2,2−ジフェニルビニル基、1,2−ジフェニルビニル基、1−メチルアリル基、1,1−ジメチルアリル基、2−メチルアリル基、1−フェニルアリル基、2−フェニルアリル基、3−フェニルアリル基、3,3−ジフェニルアリル基、1,2−ジメチルアリル基、1−フェニル−1−ブテニル基、3−フェニル−1−ブテニル基等が挙げられ、一種単独または二種以上を組み合わせて有することができる。
【0038】
置換もしくは非置換の芳香族炭化水素基としては、炭素数1から18のものが特に好ましい。具体的には、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−フルオレニル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基、1−ナフタセニル基、2−ナフタセニル基、9−ナフタセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、2−ビフェニルイル基、3−ビフェニルイル基、4−ビフェニルイル基、p−ターフェニル−4−イル基、p−ターフェニル−3−イル基、p−ターフェニル−2−イル基、m−ターフェニル−4−イル基、m−ターフェニル−3−イル基、m−ターフェニル−2−イル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、p−t−ブチルフェニル基、p−(2−フェニルプロピル)フェニル基、3−メチル−2−ナフチル基、4−メチル−1−ナフチル基、4−メチル−1−アントリル基、4'−メチルビフェニルイル基、4"−t−ブチル−p−ターフェニル−4−イル基、及びこれらの誘導体等が挙げられ、これらの一種単独または二種以上を組み合わせて有することができる。
【0039】
また置換または非置換の芳香族複素環基としては、炭素数1から18のものが特に好ましい。具体的には、1−ピロリル基、2−ピロリル基、3−ピロリル基、ピラジニル基、2−ピリジニル基、3−ピリジニル基、4−ピリジニル基、1−インドリル基、2−インドリル基、3−インドリル基、4−インドリル基、5−インドリル基、6−インドリル基、7−インドリル基、1−イソインドリル基、2−イソインドリル基、3−イソインドリル基、4−イソインドリル基、5−イソインドリル基、6−イソインドリル基、7−イソインドリル基、2−フリル基、3−フリル基、2−ベンゾフラニル基、3−ベンゾフラニル基、4−ベンゾフラニル基、5−ベンゾフラニル基、6−ベンゾフラニル基、7−ベンゾフラニル基、1−イソベンゾフラニル基、3−イソベンゾフラニル基、4−イソベンゾフラニル基、5−イソベンゾフラニル基、6−イソベンゾフラニル基、7−イソベンゾフラニル基、2−キノリル基、3−キノリル基、4−キノリル基、5−キノリル基、6−キノリル基、7−キノリル基、8−キノリル基、1−イソキノリル基、3−イソキノリル基、4−イソキノリル基、5−イソキノリル基、6−イソキノリル基、7−イソキノリル基、8−イソキノリル基、2−キノキサリニル基、5−キノキサリニル基、6−キノキサリニル基、1−カルバゾリル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基、4−カルバゾリル基、9−カルバゾリル基、1−フェナンスリジニル基、2−フェナンスリジニル基、3−フェナンスリジニル基、4−フェナンスリジニル基、6−フェナンスリジニル基、7−フェナンスリジニル基、8−フェナンスリジニル基、9−フェナンスリジニル基、10−フェナンスリジニル基、1−アクリジニル基、2−アクリジニル基、3−アクリジニル基、4−アクリジニル基、9−アクリジニル基、1,7−フェナンスロリン−2−イル基、1,7−フェナンスロリン−3−イル基、1,7−フェナンスロリン−4−イル基、1,7−フェナンスロリン−5−イル基、1,7−フェナンスロリン−6−イル基、1,7−フェナンスロリン−8−イル基、1,7−フェナンスロリン−9−イル基、1,7−フェナンスロリン−10−イル基、1,8−フェナンスロリン−2−イル基、1,8−フェナンスロリン−3−イル基、1,8−フェナンスロリン−4−イル基、1,8−フェナンスロリン−5−イル基、1,8−フェナンスロリン−6−イル基、1,8−フェナンスロリン−7−イル基、1,8−フェナンスロリン−9−イル基、1,8−フェナンスロリン−10−イル基、1,9−フェナンスロリン−2−イル基、1,9−フェナンスロリン−3−イル基、1,9−フェナンスロリン−4−イル基、1,9−フェナンスロリン−5−イル基、1,9−フェナンスロリン−6−イル基、1,9−フェナンスロリン−7−イル基、1,9−フェナンスロリン−8−イル基、1,9−フェナンスロリン−10−イル基、1,10−フェナンスロリン−2−イル基、1,10−フェナンスロリン−3−イル基、1,10−フェナンスロリン−4−イル基、1,10−フェナンスロリン−5−イル基、2,9−フェナンスロリン−1−イル基、2,9−フェナンスロリン−3−イル基、2,9−フェナンスロリン−4−イル基、2,9−フェナンスロリン−5−イル基、2,9−フェナンスロリン−6−イル基、2,9−フェナンスロリン−7−イル基、2,9−フェナンスロリン−8−イル基、2,9−フェナンスロリン−10−イル基、2,8−フェナンスロリン−1−イル基、2,8−フェナンスロリン−3−イル基、2,8−フェナンスロリン−4−イル基、2,8−フェナンスロリン−5−イル基、2,8−フェナンスロリン−6−イル基、2,8−フェナンスロリン−7−イル基、2,8−フェナンスロリン−9−イル基、2,8−フェナンスロリン−10−イル基、2,7−フェナンスロリン−1−イル基、2,7−フェナンスロリン−3−イル基、2,7−フェナンスロリン−4−イル基、2,7−フェナンスロリン−5−イル基、2,7−フェナンスロリン−6−イル基、2,7−フェナンスロリン−8−イル基、2,7−フェナンスロリン−9−イル基、2,7−フェナンスロリン−10−イル基、1−フェナジニル基、2−フェナジニル基、1−フェノチアジニル基、2−フェノチアジニル基、3−フェノチアジニル基、4−フェノチアジニル基、10−フェノチアジニル基、1−フェノキサジニル基、2−フェノキサジニル基、3−フェノキサジニル基、4−フェノキサジニル基、10−フェノキサジニル基、2−オキサゾリル基、4−オキサゾリル基、5−オキサゾリル基、2−オキサジアゾリル基、5−オキサジアゾリル基、3−フラザニル基、2−チエニル基、3−チエニル基、2−メチルピロール−1−イル基、2−メチルピロール−3−イル基、2−メチルピロール−4−イル基、2−メチルピロール−5−イル基、3−メチルピロール−1−イル基、3−メチルピロール−2−イル基、3−メチルピロール−4−イル基、3−メチルピロール−5−イル基、2−t−ブチルピロール−4−イル基、3−(2−フェニルプロピル)ピロール−1−イル基、2−メチル−1−インドリル基、4−メチル−1−インドリル基、2−メチル−3−インドリル基、4−メチル−3−インドリル基、2−t−ブチル−1−インドリル基、4−t−ブチル−1−インドリル基、2−t−ブチル−3−インドリル基、4−t−ブチル−3−インドリル基、及びこれらの誘導体等が挙げられ、これらの一種単独または二種以上を組み合わせて有することができる。
【0040】
置換または非置換のアラルキル基としては、炭素数1から18のものが特に好ましい。具体的には、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニルイソプロピル基、2−フェニルイソプロピル基、フェニル−t−ブチル基、α−ナフチルメチル基、1−α−ナフチルエチル基、2−α−ナフチルエチル基、1−α−ナフチルイソプロピル基、2−α−ナフチルイソプロピル基、β−ナフチルメチル基、1−β−ナフチルエチル基、2−β−ナフチルエチル基、1−β−ナフチルイソプロピル基、2−β−ナフチルイソプロピル基、1−ピロリルメチル基、2−(1−ピロリル)エチル基、p−メチルベンジル基、m−メチルベンジル基、o−メチルベンジル基、p−クロロベンジル基、m−クロロベンジル基、o−クロロベンジル基、p−ブロモベンジル基、m−ブロモベンジル基、o−ブロモベンジル基、p−ヨードベンジル基、m−ヨードベンジル基、o−ヨードベンジル基、p−ヒドロキシベンジル基、m−ヒドロキシベンジル基、o−ヒドロキシベンジル基、p−アミノベンジル基、m−アミノベンジル基、o−アミノベンジル基、p−ニトロベンジル基、m−ニトロベンジル基、o−ニトロベンジル基、p−シアノベンジル基、m−シアノベンジル基、o−シアノベンジル基、1−ヒドロキシ−2−フェニルイソプロピル基、1−クロロ−2−フェニルイソプロピル基等が挙げられ、これらの一種単独または二種以上を組み合わせて有することができる。
【0041】
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられ、一種単独または二種以上を組み合わせて有することができる。
【0042】
置換もしくは非置換のアミノ基は、−NX1X2で表される基であり、置換基X1およびX2は、それぞれ独立に、例えば、水素原子、上述の置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアルケニル基、置換または非置換の芳香族炭化水素基、置換または非置換の芳香族複素環基、置換または非置換のアラルキル基等が挙げられ、これらの一種単独または二種以上を組み合わせて有することができる。
【0043】
また置換または非置換のアルコキシ基および置換または非置換のアルコキシカルボニル基は、それぞれ−OX3および−COOX4で表される基であり、置換基X3およびX4としてはそれぞれ、例えば、上述の置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアラルキル基等が挙げられる。これらの炭素数としては1から18のものが特に好ましい。これらの一種単独または二種以上を組み合わせて有することができる。
【0044】
また置換または非置換のアリールオキシ基および置換または非置換のアリールオキシカルボニル基は、それぞれ−OX5および−COOX6で表される基であり、置換基X5およびX6としてはそれぞれ、例えば、上述の置換または非置換の芳香族炭化水素基、置換または非置換の芳香族複素環基等が挙げられる。これらの炭素数としては1から18のものが特に好ましい。これらの一種単独または二種以上を組み合わせて有することができる。
【0045】
また置換または非置換のアシル基および置換または非置換のアシルオキシ基は、−C(=O)X7および−OC(=O)X8で表される基であり、置換基X7およびX8としてはそれぞれ、例えば、水素原子、上述の置換または非置換のアルキル基、置換または非置換アルケニル基、置換または非置換の芳香族炭化水素基、置換または非置換の芳香族複素環基、置換または非置換アラルキル基等が挙げられる。これらの炭素数としては1から18のものが特に好ましい。これらの一種単独または二種以上を組み合わせて有することができる。
【0046】
式(1)で表される部分構造を有する化合物の具体的な化合物の例として式(4)から(16)に示す化合物が挙げられる。これらの式においてn、m、oがある場合、それぞれ2以上の整数を表す。
【0047】
【化11】
【0048】
【化12】
【0049】
【化13】
【0050】
【化14】
【0051】
【化15】
【0052】
【化16】
【0053】
【化17】
【0054】
【化18】
【0055】
【化19】
【0056】
【化20】
【0057】
【化21】
【0058】
【化22】
【0059】
【化23】
【0060】
本発明における前記の式(1)で表される部分構造を有する化合物は、式(17)で表されるp−フェニレンジアミン構造を部分構造として有する化合物を過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物、過酢酸、過安息香酸、m−クロロ過安息香酸等の有機過酸、ペルオキソ硫酸などの酸化剤で酸化することにより得ることができる。また、式(17)で表されるp−フェニレンジアミン構造を部分構造として有する化合物を酸化銀、酸化鉛、酢酸鉛、塩化鉄(III)、ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム等の酸化剤により酸化し、式(18)で表されるp−キノンジイミン構造を部分構造として有する化合物とし、さらにこれを過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物、過酢酸、過安息香酸、m−クロロ過安息香酸等の有機過酸、ペルオキソ硫酸などの酸化剤で酸化することにより得ることができる。また、式(18)で表されるp−キノンジイミン構造を部分構造として有する化合物を過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物、過酢酸、過安息香酸、m−クロロ過安息香酸等の有機過酸、ペルオキソ硫酸などの酸化剤で酸化することにより得ることができる。
【0061】
【化24】
【0062】
(式(17)においてR1〜R4はそれぞれ独立して水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアルケニル基、置換もしくは非置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは非置換の芳香族複素環基、置換もしくは非置換のアラルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、カルボキシル基、置換もしくは非置換のアミノ基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のアリールオキシ基、置換もしくは非置換のアルコキシカルボニル基、置換もしくは非置換のアリールオキシカルボニル基、置換もしくは非置換のアシル基、または、置換もしくは非置換のアシルオキシ基を表す)。
【0063】
【化25】
【0064】
(式(24)においてR1〜R4はそれぞれ独立して水素原子、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアルケニル基、置換もしくは非置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは非置換の芳香族複素環基、置換もしくは非置換のアラルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、カルボキシル基、置換もしくは非置換のアミノ基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のアリールオキシ基、置換もしくは非置換のアルコキシカルボニル基、置換もしくは非置換のアリールオキシカルボニル基、置換もしくは非置換のアシル基、または、置換もしくは非置換のアシルオキシ基を表す)。
【0065】
C.J.ペーダーセン(C.J.Pedersen)、ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー(Jornal of the American Chemical Society)、2295頁〜2299頁(1957年)には、N,N'−ジフェニル−p−キノンジイミン−N,N'−ジオキサイド(式(4)で表される化合物)、N,N'−ジシクロヘキシル−p−キノンジイミン−N,N'−ジオキサイド(式(6)で表される化合物)などの合成法が記載されている。これによれば、N,N'−ジフェニル−p−キノンジイミン−N,N'−ジオキサイドは、N,N'−ジフェニル−p−キノンジイミン−p−フェニレンジアミンを原料とし、これを過酸化ベンゾイルで酸化し、N,N'−ジフェニル−p−キノンジイミンとし、さらに、これを過安息香酸により酸化することにより得ることができる。また、N,N'−ジシクロヘキシル−p−キノンジイミン−N,N'−ジオキサイドは、N,N'−ジシクロヘキシル−p−フェニレンジアミンを原料とし、これを過安息香酸により酸化することにより得ることができる。
【0066】
本発明の二次電池において活物質は固体状態であっても、また、電解質へ溶解または分散した状態であってもよい。ただし、固体状態で用いる場合、電解液への溶解による容量低下が少ないため、電解液に対し不溶性または低溶解性のものが好ましい。また、本発明の電池の一つの極において、活物質である前記式(1)で表される部分構造を有する化合物は、単独で用いることができるが、二種類以上を組み合わせて用いても良い。また、他の活物質と組み合わせて用いても良い。
【0067】
本発明の電池は正極もしくは負極の一方の電極反応、または両方の電極反応における活物質として前記式(1)で表される部分構造を有する化合物を用いるが、このうち、一方の電極反応に活物質として用いる場合、もう一方の電極に電池の活物質として従来公知のものが利用できる。
【0068】
例えば負極に前記式(1)で表される部分構造を有するニトロキシルラジカル化合物を用いる場合には、正極として金属酸化物粒子、ジスルフィド化合物、および導電性高分子等を用いることができる。ここで、金属酸化物としては例えばLiMnO2、LiXMn2O4(0<x<2)等のマンガン酸リチウムあるいはスピネル構造を有するマンガン酸リチウム、MnO2、LiCoO2、LiNiO2、あるいはLiXV2O5(0<x<2)等が、ジスルフィド化合物としてはジチオグリコール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、S−トリアジン−2,4,6−トリチオール等が、また、導電性高分子にはポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリアニリン、ポリピロール等が挙げられる。本発明ではこれらの正極材料を単独、もしくは組み合わせて使用することもできる。また、正極において従来公知の活物質であるLiMnO2、LiXMn2O4(0<x<2)等のマンガン酸リチウムあるいはスピネル構造を有するマンガン酸リチウム、MnO2、LiCoO2、LiNiO2、あるいはLiXV2O5(0<x<2)等の金属酸化物、ジチオグリコール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、S−トリアジン−2,4,6−トリチオール等のジスルフィド化合物、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリアニリン、ポリピロール等の導電性高分子と前記ニトロキシルラジカル化合物とを混合して複合活物質として用いてもよい。
【0069】
一方、前記式(1)で表される部分構造を有する化合物を正極に用いた場合には負極としてグラファイトや非晶質カーボン、リチウム金属やリチウム合金、リチウムイオン吸蔵炭素、導電性高分子等を用いることができる。これらの形状としては特に限定されず、例えばリチウム金属では薄膜状のものに限らず、バルク状のもの、粉末を固めたもの、繊維状のもの、フレーク状のもの等であっても良い。また、これらの負極活物質を単独、もしくは組み合わせて使用できる。また、負極において従来公知の活物質と前記ニトロキシルラジカル化合物を組み合わせて用いても良い。
【0070】
[2]補助導電材およびイオン伝導補助材
前記記式(1)で表される部分構造を有する化合物を用いて電極を形成する場合に、インピーダンスを低下させる目的で、補助導電材やイオン伝導補助材を混合させることもできる。これらの材料としては、補助導電材としては、グラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック等の炭素質微粒子、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリアセン等の導電性高分子が挙げられ、イオン伝導補助材としては高分子ゲル電解質、高分子固体電解質等が挙げられる。
【0071】
[3]結着剤
電極の各構成材料間の結びつきを強めるために、結着剤を用いることもできる。このような結着剤としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ビニリデンフロライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフロライド−テトラフルオロエチレン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合ゴム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、各種ポリウレタン等の樹脂バインダーが挙げられる。
【0072】
[4]触媒
電極反応をより潤滑に行うために、酸化還元反応を助ける触媒を用いることもできる。このような触媒としては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリアセン等の導電性高分子、ピリジン誘導体、ピロリドン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、アクリジン誘導体等の塩基性化合物、金属イオン錯体等が挙げられる。
【0073】
[5]集電体およびセパレータ
負極集電体、正極集電体として、ニッケルやアルミニウム、銅、金、銀、アルミニウム合金、ステンレス、炭素等からなる箔、金属平板、メッシュ状などの形状のものを用いることができる。また、集電体に触媒効果を持たせたり、活物質と集電体とを化学結合させたりしてもよい。一方、上記の正極、および負極が接触しないようにポリエチレン、ポリプロピレン等からなる多孔質フィルムや不織布などのセパレーターを用いることもできる。
【0074】
[6]電解質
本発明において、電解質は、負極と正極の両極間の荷電担体輸送を行うものであり、一般には20℃で10-5〜10-1S/cmのイオン伝導性を有していることが好ましい。電解質としては、例えば電解質塩を溶剤に溶解した電解液を利用することができる。電解質塩として、例えばLiPF6、LiClO4、LiBF4、LiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、Li(C2F5SO2)2N、Li(CF3SO2)3C、Li(C2F5SO2)3C等の従来公知の材料を用いることができる。
【0075】
また,電解液に溶剤を用いる場合、溶剤としては例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、スルホラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の有機溶媒を用いることができる。これらの溶剤を単独もしくは2種類以上混合して用いることもできる。
【0076】
さらに、本発明では電解質として固体電解質を用いることもできる。これら固体電解質に用いられる高分子化合物としては、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン共重合体、フッ化ビニリデン−モノフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン三元共重合体等のフッ化ビニリデン系重合体や、アクリロニトリル−メチルメタクリレート共重合体、アクリロニトリル−メチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル−エチルメタクリレート共重合体、アクリロニトリル−エチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル−メタクリル酸共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸共重合体、アクリロニトリル−ビニルアセテート共重合体等のアクリルニトリル系重合体、さらにポリエチレンオキサイド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体、これらのアクリレート体やメタクリレート体の重合体などが挙げられる。これらの高分子化合物に電解液を含ませてゲル状にしたものを用いても、高分子化合物のみをそのまま用いても良い。
【0077】
[7]電池形状
本発明において、電池の形状は特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。電池形状としては、電極積層体、あるいは巻回体を金属ケース、樹脂ケース、あるいはアルミニウム箔などの金属箔と合成樹脂フィルムからなるラミネートフィルム等によって封止したもの等が挙げられ、円筒型、角型、コイン型、およびシート型等で作製されるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0078】
[8]電池の製造方法
電池の製造方法としては特に限定されず、材料に応じて様々な方法を用いることができる。例えば、活物質に溶剤を加えスラリー状にして電極集電体に塗布し、加熱もしくは常温で溶剤を揮発させたのちに、対極、セパレータを挟んで積層または巻回して外装体で包み、電解液を注入して封止するといった方法である。スラリー化のための溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒、N−メチルピロリドン等のアミン系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素系、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン系炭化水素等が挙げられる。
【0079】
電池を製造する際には、活物質として前記式(1)で表される部分構造を有するニトロキシルラジカル化合物そのものを用いて電池を製造する場合と、電極反応によって前記ニトロキシルラジカル化合物に変化する化合物を用いて電池を製造する場合とがある。このような電極反応によって前記ニトロキシルラジカル化合物に変化する化合物の例としては、前記ニトロキシルラジカル化合物を還元したアニオン体とリチウムイオンやナトリウムイオンといった電解質カチオンとからなるリチウム塩やナトリウム塩、あるいは、前記ニトロキシルラジカル化合物を酸化したカチオン体とPF6 -やBF4 -といった電解質アニオンとからなる塩などが挙げられる。
【0080】
本発明に於いて、電極からのリードの取り出し、外装等のその他の製造条件は二次電池の製造方法として従来公知の方法を用いることができる。
【0081】
【実施例】
以下、本発明の詳細について実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0082】
(実施例1)
N,N'−ビス(4−メトキシフェニル)−p−キノンジイミン−N,N'−ジオキサイド(式(A)で表される化合物)200mg、グラファイト粉末1.6g、ポリテトラフルオロエチレン樹脂バインダ200mgを測り採り、メノウ乳鉢を用い混練した。10分ほど乾式混合して得られた混合体を、圧力を掛けてローラー延伸することにより、厚さ約200μmの薄膜とした。これを、真空中80℃で一晩乾燥した後、直径12mmの円形に打ち抜き、コイン電池用電極を成型した。なお、この電極の質量は15.2mgだった。
【0083】
次に、得られた電極を電解液に浸して、電極中の空隙に電解液を染み込ませた。電解液としては、1mol/lのLiN(C2F5SO2)2電解質塩を含むエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート混合溶液(混合比3:7)を用いた。電解液を含浸させた電極は、正極集電体上に置き、その上に同じく電解液を含浸させたポリプロピレン多孔質フィルムセパレータを積層した。さらに負極となるリチウム張り合わせ銅箔を積層し、絶縁パッキンで周囲を被覆された負極集電体を重ね合わせた。これを、かしめ機によって圧力を加え、密閉型のコイン型電池とした。
【0084】
以上のように作製した正極活物質としてN,N'−ビス(4−メトキシフェニル)−p−キノンジイミン−N,N'−ジオキサイド、負極活物質として金属リチウムを用いた電池を、0.1mAの定電流で電圧が4.2Vになるまで充電し、その後、0.1mAの定電流で放電を行った。その結果、電圧は3.3V付近で1時間40分間ほぼ一定となり、その後急激に低下した。これにより電池として動作していることを確認した。電圧が2.5Vまで低下したところで再び充電を行い、さらに、4.2〜2.5Vの範囲で充放電を10回繰り返した。その結果、繰り返し充放電を行っても放電時に3.3V付近で電圧が一定になることを確認し、この電池が二次電池として動作していることを確認した。このコイン電池の容量は、正極活物質1gあたり120.4mAhだった。
【0085】
【化26】
【0086】
(実施例2)
実施例1と同様に、但し化合物(A)に代え、式(B)で表される化合物(化合物(B))200mgを用い、正極活物質として化合物(B)、負極活物質として金属リチウムからなるコイン電池を作製した。作製したコイン電池を0.1mAの定電流で電圧が4.0Vになるまで充電した。つづいて、0.1mAの定電流で放電を行った。その結果、電圧は3.2Vで約1時間50分間一定となり、その後急激に低下した。電圧が2.5Vまで低下したところで再び充電を行い、さらに2.5Vまで充放電を行ったところ再び3.2V付近で電圧が一定になることを確認し、この電池が二次電池として動作していることを確認した。正極活物質単位質量あたりの容量を計算したところ133mAh/gだった。さらに同様に充放電を繰り返すことによりサイクル試験を行った。充放電範囲4.0〜2.5V、評価温度は20℃とした。この試験の結果、1回めの放電容量(正極活物質の単位質量あたり)は、133mAh/g、50回目の放電容量は130mAh/gであった。(50回目の放電容量)/(1回目の放電容量)は97.7%だった。
【0087】
【化27】
【0088】
(実施例3)
式(C)で表される化合物(化合物(C))の粉末0.6g、アセチレンブラック粉末0.225g、人造黒鉛粉末0.548g、スチレン・ブタジエンラテックス粉末の40質量%水溶液0.16g、メチルセルロースの2質量%溶液3.19g、水1.5mlを混ぜ合わせ、さらにホモジナイザーを用い均一化することによりスラリーを得た。スラリー15mgをドクターブレード法によりアルミニウム箔表面において薄膜とした。これを直径12mmの円形に打ち抜き電極とした。得られた電極を電解液に浸して、電極中の空隙に電解液を染み込ませた。電解液としては、1mol/lのLiN(C2F5SO2)2を含有するエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート混合溶液(混合比3:7)を用いた。電解液を含浸させた電極上に、その上に同じく電解液を含浸させたポリプロピレン多孔質フィルムセパレータを積層した。さらに負極となるリチウム金属板を積層し、絶縁パッキンで被覆された銅箔(負極集電体)を重ね合わせた。こうして作られた積層体をかしめ機によって圧力を加えることにより、密閉型のコイン型電池とした。
【0089】
以上のように作製した正極活物質として化合物(C)、負極活物質として金属リチウムを用いたコイン電池を0.1mAの定電流で充電し、4.0Vまで電圧が上昇した直後に、0.1mAの定電流で放電を行った。その結果、放電時に3.1V付近で電圧が約2時間、一定となる電圧平坦部が見られ、その後、急激に電圧は低下した。さらに3.5V〜2.5Vの範囲で充放電を10回繰り返した結果、繰り返し充放電を行っても放電時に3.1V付近で電圧が一定になることが確認し、この電池が二次電池として動作していることを確認した。正極活物質単位質量あたりの容量を計算したところ160mAh/gだった。
【0090】
【化28】
【0091】
(実施例4)
実施例3と同様に、但し化合物(C)に代え、式(D)で表される高分子化合物(高分子化合物(D))0.6gを用い、正極活物質として高分子化合物(D)、負極活物質として金属リチウムからなるコイン電池を作製した。なお、高分子化合物(D)の分子量をGPCにより測定した結果、重量平均分子量は13600(ポリスチレン換算)、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は2.87だった。作製したコイン電池を0.1mAの定電流で電圧が4.0Vになるまで充電した。つづいて、0.1mAの定電流で放電を行った。その結果、電圧は3.2Vで約6時間一定となり、その後急激に低下した。電圧が2.5Vまで低下したところで再び充電を行い、さらに2.5Vまで充放電を行ったところ再び3.3V付近で電圧が一定になることを確認し、この電池が二次電池として動作していることを確認した。正極活物質単位質量あたりの容量を計算したところ175mAh/gだった。さらに同様に充放電を繰り返すことによりサイクル試験を行った。充放電範囲4.0〜2.5V、評価温度は20℃とした。この試験の結果、1回めの放電容量(正極活物質の単位質量あたり)は、182mAh/g、50回目の放電容量は156mAh/gであった。(50回目の放電容量)/(1回目の放電容量)は85.7%だった。
【0092】
【化29】
【0093】
(実施例5)
実施例3と同様に、但し化合物(C)に代え、式(E)で表される高分子化合物(高分子化合物(E))0.6gを用い、正極活物質として高分子化合物(E)、負極活物質として金属リチウムからなるコイン電池を作製した。なお、高分子化合物(E)の分子量をGPCにより測定した結果、重量平均分子量は6500(ポリスチレン換算)、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は3.54だった。作製したコイン電池を0.1mAの定電流で電圧が4.0Vになるまで充電した。つづいて、0.1mAの定電流で放電を行った。その結果、電圧は緩やかに下降し、2.5Vになるまでで約6時間要した。さらに2.5Vまで低下したところで再び充電を行い、さらに2.5Vまで充放電を行ったところ放電時に電圧は緩やかに下降し、2.5Vになるまでで約6時間要した。この電池が二次電池として動作していることを確認した。正極活物質単位質量あたりの容量を計算したところ175mAh/gだった。さらに同様に充放電を繰り返すことによりサイクル試験を行った。充放電範囲4.0〜2.5V、評価温度は20℃とした。この試験の結果、1回めの放電容量(正極活物質の単位質量あたり)は、152mAh/g、50回目の放電容量は143mAh/gであった。(50回目の放電容量)/(1回目の放電容量)は85.7%だった。
【0094】
【化30】
【0095】
(実施例6)
実施例3と同様に、但し化合物(C)に代え、式(F)で表される高分子化合物(高分子化合物(F))0.6gを用い、正極活物質として高分子化合物(F)、負極活物質として金属リチウムからなるコイン電池を作製した。なお、高分子化合物(F)の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、留出溶媒として0.1mol/lの塩化リチウムを含有するジメチルホルムアミド、GPCカラムとして昭和電工(株)製KD−803を用いて測定した結果、重量平均分子量は18100(ポリスチレン換算)、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は2.6だった。作製した正極活物質として化学式(F)で表される高分子化合物、負極活物質として金属リチウムを用いたコイン電池を0.1mAの定電流で電圧が4.0Vになるまで充電した。つづいて、0.1mAの定電流で放電を行った。その結果、電圧は3.2Vで約6時間一定となり、その後急激に低下した。電圧が2.5Vまで低下したところで再び充電を行い、さらに2.5Vまで充放電を行ったところ再び3.2V付近で電圧が一定になることを確認し、この電池が二次電池として動作していることを確認した。正極活物質単位質量あたりの容量を計算したところ182mAh/gだった。さらに同様に充放電を繰り返すことによりサイクル試験を行った。充放電範囲4.0〜2.5V、評価温度は20℃とした。この試験の結果、1回めの放電容量(正極活物質の単位質量あたり)は、182mAh/g、50回目の放電容量は172mAh/gであった。(50回目の放電容量)/(1回目の放電容量)は94.5%だった。
【0096】
【化31】
【0097】
(実施例7)
実施例3と同様に、但し化合物(C)に代え、式(G)で表される高分子化合物(高分子化合物(G))0.6gを用い、正極活物質として高分子化合物(G)、負極活物質として金属リチウムからなるコイン電池を作製した。なお、高分子化合物(G)の分子量をGPCにより測定した結果、重量平均分子量は10200(ポリスチレン換算)、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は3.05だった。作製したコイン電池を0.1mAの定電流で電圧が4.0Vになるまで充電した。つづいて、0.1mAの定電流で放電を行った。その結果、電圧は3.2Vで約6時間一定となり、その後急激に低下した。電圧が2.5Vまで低下したところで再び充電を行い、さらに2.5Vまで充放電を行ったところ再び3.2V付近で電圧が一定になることを確認し、この電池が二次電池として動作していることを確認した。正極活物質単位質量あたりの容量を計算したところ175mAh/gだった。さらに同様に充放電を繰り返すことによりサイクル試験を行った。充放電範囲4.0〜2.5V、評価温度は20℃とした。この試験の結果、1回めの放電容量(正極活物質の単位質量あたり)は、175mAh/g、50回目の放電容量は170mAh/gであった。(50回目の放電容量)/(1回目の放電容量)は97.1%だった。
【0098】
【化32】
【0099】
(実施例8)
実施例3と同様に、但し化合物(C)に代え、式(H)で表される高分子化合物(高分子化合物(H))0.6gを用い、正極活物質として高分子化合物(H)、負極活物質として金属リチウムからなるコイン電池を作製した。なお、高分子化合物(H)の分子量をGPCにより測定した結果、重量平均分子量は7200(ポリスチレン換算)、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は3.8だった。作製したコイン電池を0.1mAの定電流で電圧が4.0Vになるまで充電した。つづいて、0.1mAの定電流で放電を行った。その結果、電圧は3.3Vで約6時間30分、一定となり、その後急激に低下した。電圧が2.5Vまで低下したところで再び充電を行い、さらに2.5Vまで充放電を行ったところ再び3.3V付近で電圧が一定になることを確認し、この電池が二次電池として動作していることを確認した。正極活物質単位質量あたりの容量を計算したところ175mAh/gだった。さらに同様に充放電を繰り返すことによりサイクル試験を行った。充放電範囲4.0〜2.5V、評価温度は20℃とした。この試験の結果、1回めの放電容量(正極活物質の単位質量あたり)は、142mAh/g、50回目の放電容量は137mAh/gであった。(50回目の放電容量)/(1回目の放電容量)は96.5%だった。
【0100】
【化33】
【0101】
(比較例1)
実施例1と同様な方法で、N,N'−ビス(4−メトキシフェニル)−p−キノンジイミン−N,N'−ジオキサイドを用いず、代わりにグラファイト粉末を1.8gに増やして、コイン電池を作成した。さらに、作製した電池に対して、実施例1と同様にして充放電を行った。その結果、放電時に電圧平坦部はみられず電圧は急速に低下し、電池として十分に動作しなかった。
【0102】
また、この電池に対して、0.1mAの定電流を流して充電を試みたところ、電圧は瞬間的に上昇して4.5Vを超えたが、これをさらに放電したところ、電圧曲線に平坦部は認められず、この電池は二次電池として動作しないことが確認された。
【0103】
(比較例2)
実施例3と同様な方法で、但し化合物(C)を用いず、代わりにグラファイト粉末を0.6gを用いて、コイン電池を作成した。さらに、作製した電池に対して、実施例3と同様にして充放電を行った。その結果、放電時に電圧平坦部はみられず電圧は急速に低下し、電池として十分に動作しなかった。
【0104】
また、この電池に対して、0.1mAの定電流を流して充電を試みたところ、電圧は瞬間的に上昇して4.5Vを超えたが、これをさらに放電したところ、電圧曲線に平坦部は認められず、この電池は二次電池として動作しないことが確認された。
【0105】
(比較例3)
実施例3と同様な方法で、但し化合物(C)を用いず、代わりにLiCoO2を0.6gを用いて、コイン電池の作成をした。さらに、作製した電池に対して、実施例3と同様にして充放電を行った。以上のように作製した電池に対して実施例1と同様の方法で充放電を行い、活物質あたりの容量を計算したところ、96mAh/gであった。
【0106】
【発明の効果】
本発明は、活物質としてその構造中に式(1)で表される部分構造を有する化合物を用いた新規な電池を提案したものである。これにより、電極活物質として重金属を含まない軽くて安全な元素から構成される電池を作製することを可能とするものであり、また、高容量(質量当たり)で充放電サイクルの安定性に優れた二次電池を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電池の構成の一例を示す概念図である。
【符号の説明】
1 負極集電体
2 絶縁パッキン
3 負極
4 セパレータ
5 正極
6 正極集電体
Claims (4)
- 前記活物質が、正極活物質である請求項1に記載の二次電池。
- リチウム二次電池である請求項1〜3のいずれか一項に記載の二次電池。
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