JP3951105B2 - 電極およびそれを用いた電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電極、およびそれを用いた電池に関する。より詳細には、電極活物質として、ジアジンN,N’−ジオキサイド構造を有する化合物を含有し、かつスチレン・ブタジエンラテックスを主成分とする結着剤を用いて形成された、容量密度が高く充放電の安定性に優れた電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
電池は、正極および負極で起きる酸化還元反応により発生する化学エネルギーを電気エネルギーへと変換して取り出したり、または電気エネルギーを化学エネルギーへと変換して貯蔵したりするものであり、各種の装置において電源として利用されている。
【0003】
近年、携帯電子機器の急速な普及に伴い、容量密度が高い電池に対する要求が高まっている。そして、この要求に応えるために、単位電荷当たりの質量が小さいアルカリ金属イオンを用いた電池が開発されている。これらの中でも、特にリチウムイオンを用いる電池が、安定性に優れた大容量電池として種々の携帯機器に利用されている。このようなリチウムイオン電池は、正極および負極の活物質として、それぞれリチウム含有重金属酸化物および炭素材料電極を用いており、これらの活物質に対するリチウムイオンの挿入反応および脱離反応を利用して充放電を行っている。
【0004】
しかしながら、このようなリチウムイオン電池は、特に正極の活物質として比重の高い重金属化合物を利用しているため、単位質量あたりの電池容量が充分ではなく、容量密度が高い電池として機能することができないという問題があった。
【0005】
そこで、より軽量の電極材料を用いて大容量電池を開発しようとする試みが検討されてきた。例えば、米国特許第4,833,048号明細書および日本国特許第2,715,778号公報には、ジスルフィド結合を有する有機化合物を正極の活物質として用いることにより、当該ジスルフィド結合の生成および解離に基づく電気化学的な酸化還元反応を利用する電池が開示されている。
【0006】
しかしながら、この電池は、硫黄や炭素等のような低質量の元素からなる有機化合物を電極材料として用いているので、高容量密度の電池を構成するという点においては一応の効果が得られるものの、解離したジスルフィド結合の再結合効率が小さく、充放電の安定性が不充分であるという問題があった。
【0007】
また、有機化合物を活物質として利用する電池として、導電性高分子を電極材料に用いた電池が提案されている。この電池は、導電性高分子に対する電解質イオンのドープ反応および脱ドープ反応により充放電を行うものである。なお、ここで述べるドープ反応とは、導電性高分子の電気化学的な酸化還元反応によって生じる荷電ソリトンやポーラロン等のエキシトンを対イオンによって安定化させる反応と定義され、一方、脱ドープ反応とは、ドープ反応の逆反応、すなわち、対イオンによって安定化されたエキシトンを電気化学的に酸化または還元する反応と定義される。
【0008】
米国特許第4,442,187号明細書には、このような導電性高分子を正極または負極とする電池が開示されている。この電池は、導電性高分子が炭素や窒素等の低質量の元素から構成されているため、高容量密度の電池として開発が期待された。
【0009】
しかしながら、導電性高分子には、一般的に、電気化学的な酸化還元反応により生じるエキシトンが、π電子共役系の広い範囲にわたって非局在化し、それらが相互作用するという性質があるため、発生するエキシトンの濃度にも限界が生じ、結果、電池の容量が制限されるという問題があった。
【0010】
したがって、このような導電性高分子を電極材料とする電池では、電池の高容量密度量化という点において依然として不充分であった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
以上述べたように、正極の活物質として高質量の重金属酸化物を用いるリチウムイオン電池では、現状を上回る大容量電池の製造が原理的に困難である。また、高質量の重金属酸化物に代えて低質量の化合物を電極の活物質に用いた電池が種々提案されているが、容量密度が高く、安定性に優れた電池は未だ得られていない。
【0012】
また、電極に用いられるバインダーは、活物質と集電体及び導電付与剤とを十分に結着させて、充放電時の電子移動を伴う酸化還元反応を起こす活物質の量、すなわち電極反応に関与する活物質の割合(利用率)を向上させるために用いられる。しかし、このような電極用のバインダーは、活物質に適したものを用いなければ、十分に高い活物質の利用率は得られにくい。
【0013】
そこで本発明の目的は、特定の電極活物質とそれに適したバインダーを用いることにより、容量密度が高く、かつ充放電の安定性に優れた電池、及びこのような電池の形成に好適な電極を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討した結果、低質量の原子のみから構成されているにもかかわらず、今までに電極の活物質として利用されなかった特定の有機化合物、すなわちジアジンN,N’−ジオキサイド構造を有する化合物と、特定の結着剤、すなわちスチレン・ブタジエンラテックスと組み合わせることにより、優れた電極が得られることを見出した。本発明によれば、このような特定のジアジンN,N’−ジオキサイド構造を有する化合物を電極に活物質として用い、さらに前記電極の結着剤としてスチレンとブタジエンの共重合体を主成分としたラテックスを用いることにより、容量密度が高く、かつ充放電の安定性に優れた新規な電池、及びこのような電池を形成可能な電極を提供することができる。
【0015】
すなわち本発明は、ジアジンN,N’−ジオキサイド構造を有する下記一般式(1)で示される化合物を電極活物質として含有し、かつ前記電極活物質がスチレン・ブタジエンラテックスを主成分とする結着剤により結着されていることを特徴とする電極に関する。
【0016】
【化3】
【0017】
[式中、n、m、n’及びm’はそれぞれ独立に0以上の整数を示す。また、ジアジン環とベンゼン環との縮合の順序は交互であってもランダムであってもよい。また、置換基R1、R2、R3、R4、Ra、Rb、Rc及びRdは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、カルボキシル基、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアルケニル基、置換もしくは非置換のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは非置換の芳香族複素環基、置換もしくは非置換のアラルキル基、置換もしくは非置換のアミノ基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のアリールオキシ基、置換もしくは非置換のアルコキシカルボニル基、置換もしくは非置換のアリールオキシカルボニル基、または置換もしくは非置換のアシル基を示す。ただし、nが2以上の場合、Ra及びRbはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、n’が2以上の場合、Rc及びRdはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、これらの置換基は、その一個以上の原子が硫黄原子、ケイ素原子、リン原子、またはホウ素原子で置換されていてもよく、また置換基同士で環構造を形成していてもよい。]
また本発明は、ジアジンN,N’−ジオキサイド構造を有する下記一般式(1)で示される化合物の置換基R1、R2、R3、R4、Ra、Rb、Rc及びRdのうち二つの置換基に代えて二つの結合手を持つ二価基を構造単位として有するオリゴマー又はポリマー化合物を電極活物質として含有し、かつ前記電極活物質がスチレン・ブタジエンラテックスを主成分とする結着剤により結着されていることを特徴とする電極に関する。
【0018】
【化4】
【0019】
[式中、n、m、n’及びm’はそれぞれ独立に0以上の整数を示す。また、ジアジン環とベンゼン環との縮合の順序は交互であってもランダムであってもよい。また、置換基R1、R2、R3、R4、Ra、Rb、Rc及びRdは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、カルボキシル基、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアルケニル基、置換もしくは非置換のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の芳香族炭化水素基、置換もしくは非置換の芳香族複素環基、置換もしくは非置換のアラルキル基、置換もしくは非置換のアミノ基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のアリールオキシ基、置換もしくは非置換のアルコキシカルボニル基、置換もしくは非置換のアリールオキシカルボニル基、または置換もしくは非置換のアシル基を示す。ただし、nが2以上の場合、Ra及びRbはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、n’が2以上の場合、Rc及びRdはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、これらの置換基は、その一個以上の原子が硫黄原子、ケイ素原子、リン原子、またはホウ素原子で置換されていてもよく、また置換基同士で環構造を形成していてもよい。]
また本発明は、上記のジアジンN,N’−ジオキサイド構造を有する化合物又はオリゴマー若しくはポリマー化合物を、電極反応の少なくとも放電反応において反応出発物、生成物または中間生成物として含有することを特徴とする電極に関する。
【0020】
また本発明は、上記の電極を正極および負極の両方またはいずれか一方の電極として有することを特徴とする電池に関する。
【0021】
また本発明は、上記の電極を正極として有することを特徴とする電池に関する。
【0022】
また本発明は、上記の電極を正極および負極の両方またはいずれか一方の電極として有する二次電池であることを特徴とする電池に関する。
【0023】
また本発明は、前記二次電池がリチウム二次電池である上記電池に関する。
【0024】
【発明の実施の形態】
図1に本発明の電池の一実施形態の構成を示す。図1に示された電池は、正極5と負極3とを電解質を含むセパレーター4を介して対向するように重ね合わせた構成を有している。正極5は正極集電体6上に配置され、負極3は負極集電体1上に配置され、負極集電体1と正極集電体6との間には、両者の電気的接触を防ぐ目的で、正極、負極及びセパレータの周囲を囲む枠状の形状を有し、プラスチック樹脂等の絶縁性材料からなる絶縁パッキン2が配置される。なお、固体電解質やゲル電解質を用いる場合は、セパレータに代えてこれら電解質を電極間に介在させることもできる。
【0025】
本実施形態では、このような構成において、負極3もしくは正極5または両電極に用いられる活物質として、前記のジアジンN,N’−ジオキサイド構造を有する一般式(1)で示される化合物、又はその化合物の置換基R1、R2、R3、R4、Ra、Rb、Rc及びRdのうち二つの置換基に代えて二つの結合手を持つ二価基を構造単位として有するオリゴマー又はポリマー化合物(以下、適宜これらの化合物を「ジアジンN,N’−ジオキサイド化合物」という)を用い、さらに結着剤としてスチレン・ブタジエンラテックスを用いている。
【0026】
本発明の電池は、電池容量の点から、正極活物質として前記ジアジンN,N’−ジオキサイド化合物を含有する正極を有し、電解質カチオンとしてリチウムイオンを含有するリチウム二次電池とすることが好ましい。
【0027】
[1]活物質
本発明における電極の活物質とは、充電反応および放電反応等の電極反応に直接寄与する物質のことであり、電池システムの中心的役割を果たすものである。
【0028】
[1-1]ジアジンN,N'−ジオキサイド構造を有する化合物
本発明において活物質として用いられるジアジンN,N’−ジオキサイド化合物には、上記一般式(1)で表されるジアジン化合物(一般式(1)においてn+m+n’+m’=0を満たすもの)やポリアセン型化合物(一般式(1)においてn+m+n’+m’≧1を満たすもの)、これらの化合物の環に二つの結合手を持つ二価基を構造単位として有するオリゴマー又はポリマー化合物を挙げることができる。これらのジアジンN,N’−ジオキサイド化合物は、その一種単独または二種類以上を組み合わせて使用することができる。本発明におけるジアジンN,N'−ジオキサイド化合物は、電極内で電極活物質として機能し、電極反応の放電反応において、又は放電反応および充電反応において、反応出発物、生成物または中間生成物として電極中に含有される。
【0029】
上記一般式(1)において、置換基R1、R2、R3、R4、Ra、Rb、Rc及びRdのハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられ、一種単独または二種以上を組み合わせて有することができる。
【0030】
また置換または非置換のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシイソブチル基、1,2−ジヒドロキシエチル基、1,3−ジヒドロキシイソプロピル基、2,3−ジヒドロキシ−t−ブチル基、1,2,3−トリヒドロキシプロピル基、クロロメチル基、1−クロロエチル基、2−クロロエチル基、2−クロロイソブチル基、1,2−ジクロロエチル基、1,3−ジクロロイソプロピル基、2,3−ジクロロ−t−ブチル基、1,2,3−トリクロロプロピル基、ブロモメチル基、1−ブロモエチル基、2−ブロモエチル基、2−ブロモイソブチル基、1,2−ジブロモエチル基、1,3−ジブロモイソプロピル基、2,3−ジブロモ−t−ブチル基、1,2,3−トリブロモプロピル基、ヨードメチル基、1−ヨードエチル基、2−ヨードエチル基、2−ヨードイソブチル基、1,2−ジヨードエチル基、1,3−ジヨードイソプロピル基、2,3−ジヨード−t−ブチル基、1,2,3−トリヨードプロピル基、アミノメチル基、1−アミノエチル基、2−アミノエチル基、2−アミノイソブチル基、1,2−ジアミノエチル基、1,3−ジアミノイソプロピル基、2,3−ジアミノ−t−ブチル基、1,2,3−トリアミノプロピル基、シアノメチル基、1−シアノエチル基、2−シアノエチル基、2−シアノイソブチル基、1,2−ジシアノエチル基、1,3−ジシアノイソプロピル基、2,3−ジシアノ−t−ブチル基、1,2,3−トリシアノプロピル基、ニトロメチル基、1−ニトロエチル基、2−ニトロエチル基、2−ニトロイソブチル基、1,2−ジニトロエチル基、1,3−ジニトロイソプロピル基、2,3−ジニトロ−t−ブチル基、1,2,3−トリニトロプロピル基等が挙げられ、一種単独または二種以上を組み合わせて有することができる。
【0031】
また置換または非置換のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1,3−ブタンジエニル基、1−メチルビニル基、スチリル基、2,2−ジフェニルビニル基、1,2−ジフェニルビニル基、1−メチルアリル基、1,1−ジメチルアリル基、2−メチルアリル基、1−フェニルアリル基、2−フェニルアリル基、3−フェニルアリル基、3,3−ジフェニルアリル基、1,2−ジメチルアリル基、1−フェニル−1−ブテニル基、3−フェニル−1−ブテニル基等が挙げられ、一種単独または二種以上を組み合わせて有することができる。
【0032】
また置換または非置換のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基等が挙げられ、一種単独または二種以上を組み合わせて有することができる。
【0033】
また置換または非置換の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−フルオレニル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基、1−ナフタセニル基、2−ナフタセニル基、9−ナフタセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、2−ビフェニルイル基、3−ビフェニルイル基、4−ビフェニルイル基、p−ターフェニル−4−イル基、p−ターフェニル−3−イル基、p−ターフェニル−2−イル基、m−ターフェニル−4−イル基、m−ターフェニル−3−イル基、m−ターフェニル−2−イル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、p−t−ブチルフェニル基、p−(2−フェニルプロピル)フェニル基、3−メチル−2−ナフチル基、4−メチル−1−ナフチル基、4−メチル−1−アントリル基、4’−メチルビフェニルイル基、4”−t−ブチル−p−ターフェニル−4−イル基、及びこれらの誘導体等が挙げられ、これらの一種単独または二種以上を組み合わせて有することができる。
【0034】
また置換または非置換の芳香族複素環基としては、1−ピロリル基、2−ピロリル基、3−ピロリル基、ピラジニル基、2−ピリジニル基、3−ピリジニル基、4−ピリジニル基、1−インドリル基、2−インドリル基、3−インドリル基、4−インドリル基、5−インドリル基、6−インドリル基、7−インドリル基、1−イソインドリル基、2−イソインドリル基、3−イソインドリル基、4−イソインドリル基、5−イソインドリル基、6−イソインドリル基、7−イソインドリル基、2−フリル基、3−フリル基、2−ベンゾフラニル基、3−ベンゾフラニル基、4−ベンゾフラニル基、5−ベンゾフラニル基、6−ベンゾフラニル基、7−ベンゾフラニル基、1−イソベンゾフラニル基、3−イソベンゾフラニル基、4−イソベンゾフラニル基、5−イソベンゾフラニル基、6−イソベンゾフラニル基、7−イソベンゾフラニル基、2−キノリル基、3−キノリル基、4−キノリル基、5−キノリル基、6−キノリル基、7−キノリル基、8−キノリル基、1−イソキノリル基、3−イソキノリル基、4−イソキノリル基、5−イソキノリル基、6−イソキノリル基、7−イソキノリル基、8−イソキノリル基、2−キノキサリニル基、5−キノキサリニル基、6−キノキサリニル基、1−カルバゾリル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基、4−カルバゾリル基、9−カルバゾリル基、1−フェナンスリジニル基、2−フェナンスリジニル基、3−フェナンスリジニル基、4−フェナンスリジニル基、6−フェナンスリジニル基、7−フェナンスリジニル基、8−フェナンスリジニル基、9−フェナンスリジニル基、10−フェナンスリジニル基、1−アクリジニル基、2−アクリジニル基、3−アクリジニル基、4−アクリジニル基、9−アクリジニル基、1,7−フェナンスロリン−2−イル基、1,7−フェナンスロリン−3−イル基、1,7−フェナンスロリン−4−イル基、1,7−フェナンスロリン−5−イル基、1,7−フェナンスロリン−6−イル基、1,7−フェナンスロリン−8−イル基、1,7−フェナンスロリン−9−イル基、1,7−フェナンスロリン−10−イル基、1,8−フェナンスロリン−2−イル基、1,8−フェナンスロリン−3−イル基、1,8−フェナンスロリン−4−イル基、1,8−フェナンスロリン−5−イル基、1,8−フェナンスロリン−6−イル基、1,8−フェナンスロリン−7−イル基、1,8−フェナンスロリン−9−イル基、1,8−フェナンスロリン−10−イル基、1,9−フェナンスロリン−2−イル基、1,9−フェナンスロリン−3−イル基、1,9−フェナンスロリン−4−イル基、1,9−フェナンスロリン−5−イル基、1,9−フェナンスロリン−6−イル基、1,9−フェナンスロリン−7−イル基、1,9−フェナンスロリン−8−イル基、1,9−フェナンスロリン−10−イル基、1,10−フェナンスロリン−2−イル基、1,10−フェナンスロリン−3−イル基、1,10−フェナンスロリン−4−イル基、1,10−フェナンスロリン−5−イル基、2,9−フェナンスロリン−1−イル基、2,9−フェナンスロリン−3−イル基、2,9−フェナンスロリン−4−イル基、2,9−フェナンスロリン−5−イル基、2,9−フェナンスロリン−6−イル基、2,9−フェナンスロリン−7−イル基、2,9−フェナンスロリン−8−イル基、2,9−フェナンスロリン−10−イル基、2,8−フェナンスロリン−1−イル基、2,8−フェナンスロリン−3−イル基、2,8−フェナンスロリン−4−イル基、2,8−フェナンスロリン−5−イル基、2,8−フェナンスロリン−6−イル基、2,8−フェナンスロリン−7−イル基、2,8−フェナンスロリン−9−イル基、2,8−フェナンスロリン−10−イル基、2,7−フェナンスロリン−1−イル基、2,7−フェナンスロリン−3−イル基、2,7−フェナンスロリン−4−イル基、2,7−フェナンスロリン−5−イル基、2,7−フェナンスロリン−6−イル基、2,7−フェナンスロリン−8−イル基、2,7−フェナンスロリン−9−イル基、2,7−フェナンスロリン−10−イル基、1−フェナジニル基、2−フェナジニル基、1−フェノチアジニル基、2−フェノチアジニル基、3−フェノチアジニル基、4−フェノチアジニル基、10−フェノチアジニル基、1−フェノキサジニル基、2−フェノキサジニル基、3−フェノキサジニル基、4−フェノキサジニル基、10−フェノキサジニル基、2−オキサゾリル基、4−オキサゾリル基、5−オキサゾリル基、2−オキサジアゾリル基、5−オキサジアゾリル基、3−フラザニル基、2−チエニル基、3−チエニル基、2−メチルピロール−1−イル基、2−メチルピロール−3−イル基、2−メチルピロール−4−イル基、2−メチルピロール−5−イル基、3−メチルピロール−1−イル基、3−メチルピロール−2−イル基、3−メチルピロール−4−イル基、3−メチルピロール−5−イル基、2−t−ブチルピロール−4−イル基、3−(2−フェニルプロピル)ピロール−1−イル基、2−メチル−1−インドリル基、4−メチル−1−インドリル基、2−メチル−3−インドリル基、4−メチル−3−インドリル基、2−t−ブチル−1−インドリル基、4−t−ブチル−1−インドリル基、2−t−ブチル−3−インドリル基、4−t−ブチル−3−インドリル基、及びこれらの誘導体等が挙げられ、これらの一種単独または二種以上を組み合わせて有することができる。
【0035】
また置換または非置換のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニルイソプロピル基、2−フェニルイソプロピル基、フェニル−t−ブチル基、α−ナフチルメチル基、1−α−ナフチルエチル基、2−α−ナフチルエチル基、1−α−ナフチルイソプロピル基、2−α−ナフチルイソプロピル基、β−ナフチルメチル基、1−β−ナフチルエチル基、2−β−ナフチルエチル基、1−β−ナフチルイソプロピル基、2−β−ナフチルイソプロピル基、1−ピロリルメチル基、2−(1−ピロリル)エチル基、p−メチルベンジル基、m−メチルベンジル基、o−メチルベンジル基、p−クロロベンジル基、m−クロロベンジル基、o−クロロベンジル基、p−ブロモベンジル基、m−ブロモベンジル基、o−ブロモベンジル基、p−ヨードベンジル基、m−ヨードベンジル基、o−ヨードベンジル基、p−ヒドロキシベンジル基、m−ヒドロキシベンジル基、o−ヒドロキシベンジル基、p−アミノベンジル基、m−アミノベンジル基、o−アミノベンジル基、p−ニトロベンジル基、m−ニトロベンジル基、o−ニトロベンジル基、p−シアノベンジル基、m−シアノベンジル基、o−シアノベンジル基、1−ヒドロキシ−2−フェニルイソプロピル基、1−クロロ−2−フェニルイソプロピル基等が挙げられ、これらの一種単独または二種以上を組み合わせて有することができる。
【0036】
また置換または非置換のアミノ基は、−NX1X2で表される基であり、置換基X1およびX2は、それぞれ独立に、例えば、水素原子、上述の置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアルケニル基、置換または非置換のシクロアルキル基、置換または非置換の芳香族炭化水素基、置換または非置換の芳香族複素環基、置換または非置換のアラルキル基等が挙げられ、これらの一種単独または二種以上を組み合わせて有することができる。
【0037】
また置換または非置換のアルコキシ基および置換または非置換のアルコキシカルボニル基は、それぞれ−OX3および−COOX4で表される基であり、置換基X3およびX4としてはそれぞれ、例えば、上述の置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のシクロアルキル基、置換または非置換のアラルキル基等が挙げられ、これらの一種単独または二種以上を組み合わせて有することができる。
【0038】
また置換または非置換のアリールオキシ基および置換または非置換のアリールオキシカルボニル基は、それぞれ−OX5および−COOX6で表される基であり、置換基X5およびX6としてはそれぞれ、例えば、上述の置換または非置換の芳香族炭化水素基、置換または非置換の芳香族複素環基等が挙げられ、これらの一種単独または二種以上を組み合わせて有することができる。
【0039】
また置換または非置換のアシル基は、−C(=O)X7で表される基であり、置換基X7としては、例えば、水素原子、上述の置換または非置換のアルキル基、置換または非置換アルケニル基、置換または非置換シクロアルキル基、置換または非置換の芳香族炭化水素基、置換または非置換の芳香族複素環基、置換または非置換アラルキル基等が挙げられ、これらの一種単独または二種以上を組み合わせて有することができる。
【0040】
また環を形成する2価基の例としては、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ジフェニルメタン−2,2'−ジイル基、ジフェニルエタン−3,3'−ジイル基、ジフェニルプロパン−4,4'−ジイル基、1,3−ブタジエン−1,4−ジイル基、及びこれらの誘導体等が挙げられる。
【0041】
また上述の置換基は、その一個以上の原子が硫黄原子、ケイ素原子、リン原子、またはホウ素原子で置換されていてもよい。硫黄原子で置換された基としては、例えば、上述のヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アシル基等の酸素含有基の酸素原子が硫黄原子で置き換えられた置換基を挙げることができる。その置換基の例としては、メルカプト基、ジチオカルボキシル基、ヒドロキシ(チオカルボニル)基、メルカプトカルボニル基、メチルチオ基、メトキシチオカルボニル基、メチルチオカルボニル基、メチルジチオカルボキシル基、フェニルチオ基、フェノキシチオカルボニル基、フェニルチオカルボニル基、フェニルジチオカルボニル基、メチルチオカルボニル基、フェニルチオカルボニル基、等が挙げられる。ケイ素原子で置換された基としては、例えば、上述のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アラルキル基の炭素原子がケイ素原子で置き換えられた置換基を挙げることができる。その置換基の例としては、シリル基、メチルシリル基、シリルメチル基、エチルシリル基、(メチルシリル)メチル基、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、等が挙げられる。リン原子で置換された基としては、例えば、上述のアミノ基の窒素原子がリン原子で置き換えられた置換基が挙げられる。その置換基の例としては、ホスフィノ基、トリメチルホスフィノ基、トリフェニルホスフィノ基、等が挙げられる。ホウ素原子で置換された基としては、例えば、上述のアミノ基の窒素原子がホウ素原子で置き換えられた置換基が挙げられる。その置換基の例としては、ジメチルボリル基、ジフェニルボリル基、等が挙げられる。
【0042】
本発明における上記ジアジンN,N’−ジオキサイド化合物は、この化合物の電解液への溶解による容量の低下を防ぐため、電解液に対する溶解性ができるだけ低いことが好ましく、すなわち難溶性あるいは不溶性であることが好ましい。ジアジンN,N’−ジオキサイド化合物の電解液への溶解度としては、例えばプロピレンカーボネートなどの電解液用溶媒100グラムに対して1グラム以下、より好ましくは0.5グラム以下であり、更に好ましくは0.1グラム以下である。
【0043】
電解液への溶解性の点から、ポリアセン型のジアジンN,N’−ジオキサイド化合物であって末端の環としてジアジン環を有する化合物、オリゴマー又はポリマー型の化合物であってその構造単位の末端の環としてジアジン環を有する化合物は、その末端のジアジン環の2位、3位に水素原子以外の置換基を有することが好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、イソブチル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等のアルキル基などの極性の低い置換基を有することがより好ましい。
【0044】
また、電解液への溶解性や容量密度等の点から、ジアジンN,N'−ジオキサイド化合物は、3つ以上の環から構成される縮合環を有する(すなわち一般式(1)においてn+m+n'+m'≧2を満たす)ことが好ましく、主に電解液への溶解性の点から縮合環内にベンゼン環を一つ以上もつ縮合環を有する(すなわち一般式(1)においてn+n'≧1を満たす)ことが好ましく、主に容量密度の点からは、縮合環内にジアジンN,N'−ジオキサイド環を二つ以上もつ縮合環を有する(すなわち一般式(1)中においてm+m'≧1を満たす)ことが好ましい。
【0045】
また、本発明におけるジアジンN,N'−ジオキサイド化合物は、電解液への溶解性や容量密度などの点から、一般式(1)で表されるポリアセン型化合物(但し式中、n+m+n'+m'≧2)の縮合環に二つの結合手をもつ二価基を構造単位として有するオリゴマー又はポリマー化合物であることが好ましい。
【0046】
ジアジンN,N'−ジオキサイド化合物の分子量については、電解液への溶解性等の点からは高分子量であることが好ましいが、製造時の反応溶媒への溶解性の点から、ポリアセン型化合物についてはn+m+n'+m'が20以下であることが好ましく、n+m+n'+m'が10以下であることがより好ましく、オリゴマー又はポリマー化合物についてはGPCによる重量平均分子量(標準試料:ポリスチレン)として20万以下が好ましく、10万以下がより好ましい。
【0047】
本発明における前記ジアジンN,N’−ジオキサイド化合物は、対応するジアジン化合物を過酸化物あるいは過酸を用いて酸化するなどの既知の合成法により製造することができる。例えば過酸化尿素を用いた合成法については、シンレット、1990年9月、533〜535頁(Synlett, P533-535, September 1990)に記載されている。また下記式(2)で表される化合物ならば、フェナジンのジクロロメタン溶液に、メタクロロ過安息香酸のジクロロメタン溶液を添加し室温で攪拌し、その後、炭酸ナトリウムの飽和水溶液を加えて中和し、常法に従って精製することによって得ることができる。
【0048】
オリゴマー又はポリマー型のジアジンN,N'−ジオキサイド化合物は、例えば次のようにして製造することができる。縮合環内にジアジン環(ピラジン環)をもつ縮合環化合物の縮合環内に二つの結合手をもつ二価の基を構造単位として含有するオリゴマー又はポリマー化合物を、過酸化物と反応させ、縮合環内の窒素原子をN−オキシド化することによって得ることができる。他の方法として、ポリアセン型のジアジンN,N'−ジオキサイド化合物の縮合環の置換基の二つがハロゲンであるジハライド化合物を、有機溶媒中において、ゼロ価ニッケル化合物を加えて脱ハロゲン化して得ることできる。
【0049】
本発明における上記ジアジンN,N'−ジオキサイド化合物は、前述のように電解液への溶解性が低い方が好ましいが、上記の方法のうち、ポリアセン型ジアジン化合物を酸化してN−オキシド化する方法においては、縮合度が高すぎると、電解液用溶媒以外の溶媒(調製反応時に用いる溶媒)への溶解性も低下するため、ジアジン環が酸化されにくくなったり精製が困難になったりするなどの問題が生じる虞がある。酸化されないジアジン環が残存したり不純物が残存すると容量の低下を招いてしまうため、前記縮合度の範囲にあることが望ましい。同様に、構造単位中にジアジン環をもつ縮合環を有するポリマー化合物を酸化してN−オキシド化する方法においては、分子量が高すぎると、ジアジン環が酸化されにくくなったり精製が困難になり容量の低下を招く虞があるため、前記分子量の範囲にあることが望ましい。
【0050】
本発明におけるジアジンN,N’−ジオキサイド構造を有する化合物の具体例として、以下の式(2)〜(11)で表される化合物や、式(12)〜(26)で表される構造単位を有するオリゴマー又はポリマー化合物が挙げられる。
【0051】
【化5】
【0052】
【化6】
【0053】
【化7】
【0054】
【化8】
【0055】
【化9】
【0056】
【化10】
【0057】
【化11】
【0058】
【化12】
【0059】
【化13】
【0060】
【化14】
【0061】
【化15】
【0062】
【化16】
【0063】
【化17】
【0064】
【化18】
【0065】
【化19】
【0066】
【化20】
【0067】
【化21】
【0068】
【化22】
【0069】
【化23】
【0070】
【化24】
【0071】
【化25】
【0072】
【化26】
【0073】
【化27】
【0074】
【化28】
【0075】
【化29】
【0076】
[1-2]その他の活物質材料
本発明における電極は、上述のとおり、前記ジアジンN,N’−ジオキサイド化合物が活物質として用いられ、電池の正極および負極の両方あるいはいずれか一方の電極として用いられる。前記ジアジンN,N’−ジオキサイド化合物は、金属酸化物系の活物質に比べて、質量密度が小さいため、容量密度に優れているという特徴があり、特に正極の活物質として用いることが好ましい。
【0077】
本発明の電池において、前記ジアジンN,N’−ジオキサイド化合物を、正極および負極のどちらか一方の電極の活物質として用いる場合、他方の電極の活物質としては、以下に挙げる従来公知の材料を用いることができる。また、従来公知の活物質材料は、ジアジンN,N'−ジオキサイド化合物と混合し複合活物質として、両極またはいずれか一方の電極に用いてもよい。
【0078】
負極の活物質としてジアジンN,N’−ジオキサイド化合物を用いる場合には、正極の活物質として、金属酸化物粒子、ジスルフィド化合物、導電性高分子等を用いることができる。金属酸化物としては、LiMnO2、LixMn2O4(0<x<2)等のマンガン酸リチウムもしくはスピネル構造を有するマンガン酸リチウム、MnO2、LiCoO2、LiNiO2、LixV2O5(0<x<2)等が挙げられ、ジスルフィド化合物としては、ジチオグリコール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、S−トリアジン−2,4,6−トリチオール等が挙げられ、導電性高分子としては、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリアニリン、ポリピロール等が挙げられる。これらの正極活物質は一種単独または二種以上を組み合わせて使用することもできる。さらに、このような従来公知の活物質と前記ジアジンN,N'−ジオキサイド化合物とを混合して複合活物質として用いてもよい。
【0079】
一方、正極活物質として前記ジアジンN,N’−ジオキサイド化合物を用いる場合は、負極の活物質として、グラファイト、非晶質カーボン、リチウム金属、リチウム合金、リチウムイオン吸蔵炭素、導電性高分子等が挙げられ、これらの一種単独または二種以上を組み合わせて用いることができる。さらに、このような従来公知の活物質と前記ジアジンN,N’−ジオキサイド化合物とを混合して複合活物質として用いてもよい。
【0080】
なお、活物質の形状は特に限定されるものではなく、例えば、リチウム金属やリチウム合金では薄膜状のもの以外に、バルク状のもの、粉末を固めたもの、繊維状のもの、フレーク状のもの等を使用することができる。
【0081】
[2]結着剤
本発明では、活物質とその他の電極構成材料間の結びつきを強めるために、スチレン・ブタジエンラテックスを結着剤として混合する。スチレン・ブタジエンラテックスについては所望の特性に応じて適宜、市販品等の任意のスチレン・ブタジエンラテックスを用いることができる。本発明に用いられるスチレン・ブタジエンラテックスは、スチレンとブタジエンの共重合体を主成分としたラテックスであり、スチレンとブタジエンの組成比、重合条件、分子量、分子量分布については所望の特性に応じて適宜設定されたものを用いることができる。
【0082】
また、本発明に用いられるスチレン・ブタジエンラテックスは、スチレン・ブタジエン共重合体として、スチレン及びブタジエンと共重合可能なモノマーの単位を有するスチレン・ブタジエン共重合体を含有するものを使用することができる。共重合可能なモノマーの例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、などの(メタ)アクリル酸系モノマー、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸系モノマー、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、等が挙げられる。さらに、スチレン以外のスチレン系モノマー、上記以外の(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、ブタジエン以外の共役ジエン系モノマー等も挙げられる。
【0083】
市販のスチレン・ブタジエンラテックスは、通常、乳化重合法によりつくられた乳化重合SBRの固形製品やラテックス製品として市販されており、例えばスチレン含有率が23.5質量%のものがある。
【0084】
また、本発明に用いられるスチレン・ブタジエンラテックスには、ゴム用配合剤として、硫黄、有機含硫黄化合物などの加硫剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、加硫遅延剤、老化防止剤、カーボンブラックなどの補強剤、軟化剤(可塑剤)、粘着付与剤、着色剤、硬化剤、分散剤などを含有するものでもよい。
【0085】
また、所望の特性が得られる範囲内で他の結着剤を併用してもよい。その場合、結着剤に占めるスチレン・ブタジエンラテックス量は、60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。他の結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド等の樹脂バインダーが挙げられる。
【0086】
[3]導電補助材およびイオン伝導補助材
本発明では、前記ジアジンN,N’−ジオキサイド化合物を含む電極を形成する際に、インピーダンスを低下させる目的で、導電補助材やイオン伝導補助材を混合させてもよい。導電補助材としては、グラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック等の炭素質微粒子、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリアセン等の導電性高分子が挙げられる。また、イオン伝導補助材としては、ゲル電解質、固体電解質が挙げられる。
【0087】
[4]触媒
本発明では、電極反応をより円滑に行うために酸化還元反応を促進させる触媒を電極材料に混合してもよい。このような触媒としては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリアセン等の導電性高分子、ピリジン誘導体、ピロリドン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、アクリジン誘導体等の塩基性化合物、ならびに金属イオン錯体等が挙げられる。
【0088】
[5]集電体およびセパレータ
本発明では、負極集電体1および正極集電体6として、ニッケル、アルミニウム、銅、金、銀、アルミニウム合金、ステンレス等の金属箔や金属平板、メッシュ状電極、炭素電極等を用いることができる。また、このような集電体に触媒効果を持たせたり、活物質と集電体とを化学結合させてもよい。また、負極集電体1と正極集電体6との電気的接触を防ぐ目的で、両者の間にプラスチック樹脂等からなる絶縁パッキン2を配置してもよい。
【0089】
正極5と負極3との接触を防ぐために用いられるセパレータとしては、多孔質フィルムや不織布を用いることができる。
【0090】
[6]電解質
本発明において電解質は、電極間の荷電担体輸送を担うものであり、一般的に室温で10-5〜10-1S/cmのイオン伝導性を有していることが望ましい。本発明における電解質は、例えば、電解質塩を溶媒に溶解した電解液を利用することができる。
【0091】
このような電解質塩としては、例えば、LiPF6、LiClO4、LiBF4、LiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、Li(C2F5SO2)2N、Li(CF3SO2)3C、Li(C2F5SO2)3C等の従来公知の材料を用いることができる。
【0092】
電解質塩の溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、スルホラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の有機溶媒を用いることができる。なお、本発明では、これらの溶媒を一種単独または二種以上の混合溶剤として用いることもできる。
【0093】
また、本発明では、高分子電解質を用いることもできる。高分子化合物に電解液を含ませたゲル状の状態で使用してもよく、また、高分子化合物自体を固体電界質としてそのまま用いてもよい。
【0094】
このような高分子化合物としては、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−エチレン共重合体、フッ化ビニリデン−モノフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン三元共重合体等のフッ化ビニリデン系高分子化合物;アクリロニトリル−メチルメタクリレート共重合体、アクリロニトリル−エチルメタクリレート共重合体、アクリロニトリル−メチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル−エチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル−メタクリル酸共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸共重合体、アクリロニトリル−ビニルアセテート共重合体等のアクリルニトリル系高分子化合物;ポリエチレンオキサイド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体、ならびにこれらのアクリレートエステルおよびメタクリレートエステル等が挙げられ、一種単独または二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0095】
また、本発明では、無機固体電解質を用いることもできる。無機固体電解質としては、CaF2、AgI、LiF、βアルミナ、ガラス素材等が挙げられる。
【0096】
本発明の電池の電解質として、イオン導伝性の高さを考慮した場合には電解液およびゲル電解質が好ましく、特に電解液が好ましい。電解液への溶解性の低いジアジンN,N'−ジオキサイド化合物を活物質として用いる場合には電解質として電解液を用いることが好ましい。一方、電解液への溶解性が比較的高いジアジンN,N'−ジオキサイド化合物を活物質として用いる場合には、ジアジンN,N'−ジオキサイド化合物の電解質への溶解を起こしにくい固体電解質を用いてもよい。
【0097】
[7]電池の形状
本発明の電池の形状および外観については特に限定されるものではなく、従来公知のものを採用することができる。すなわち、このような本発明の電池の形状としては、例えば、電極積層体または巻回体を、金属ケース、樹脂ケース、もしくはアルミニウム箔などの金属箔と合成樹脂フィルムとからなるラミネートフィルム等によって封止したものが挙げられる。また、電池の外観としては、円筒型、角型、コイン型、シート型等が挙げられる。
【0098】
[8]電極の積層形態
本発明では、正極および負極の積層形態についても特に限定されるものではなく、任意の積層方法により形成することができ、また積層形態としては、例えば、多層積層体、集電体の両面に積層したものを組み合わせた形態、さらにこれらを巻回した形態とすることができる。
【0099】
[9]増粘剤
本発明では、電極作製時にスラリーの均一性を高める目的で、増粘剤を用いてもよい。増粘剤の例としては、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロースなどの多糖類、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸またはその塩、リン酸スターチ、カゼイン等が挙げられる。
【0100】
[10]電極および電池の製造方法
本発明では、電極および電池の製造方法について特に限定されず、従来公知の方法を採用することがきる。
【0101】
電極の製造方法としては、電極の構成材料に溶剤を加えスラリー状にして電極集電体に塗布する方法が挙げられる。
【0102】
電池の製造方法としては、作製した電極をセパレータを介して対極と積層し、あるいはさらにこれを巻回し、得られたものを外装体で包み、電解液を注入して封止する方法等が挙げられる。
【0103】
なお、本発明の電池の製造時において、前記ジアジンN,N’−ジオキサイド化合物をそのまま用いてもよいし、電極反応によってジアジンN,N’−ジオキサイド化合物に変換され得る化合物を用いてもよい。
【0104】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により制限されるものではない。
【0105】
(実施例1)
式(5)で示されるジアジンN,N’−ジオキサイド化合物の粉末1.7g、アセチレンブラック粉末0.3g、人造黒鉛粉末0.3g、スチレン・ブタジエンラテックス粉末の40wt%溶液0.156g、メチルセルロースの2wt%溶液1.9g、水0.5mlを混ぜ合わせ、ホモジナイザーを用い均一化し、スラリーを得た。得られたスラリー15mgをアルミニウム箔(正極集電体)の表面にドクターブレード法を用い薄膜を作製し、これを直径12mmの円形に打ち抜き正極となる電極とした。
【0106】
次に、得られた電極を電解液に浸して、電極中の空隙に電解液を染み込ませた。電解液としては、1mol/lのLiPF6電解質塩を含むエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート混合溶液(混合比3:7(体積比))を用いた。電解液を含浸させた電極上に、その上に同じく電解液を含浸させた多孔質フィルムセパレータを積層した。さらに負極となるリチウム金属板を積層し、枠状の絶縁パッキンが設けられた銅箔(負極集電体)を重ね合わせた。こうして作製れた積層体に、かしめ機によって圧力を加え、密閉型のコイン型電池を得た。
【0107】
以上のように作製したコイン電池を0.1mAの定電流で充電し、4.3Vまで電圧が上昇した直後に、0.1mAの定電流で放電を行った。その結果、放電時に電圧が4.0Vで一定となる電圧平坦部が見られ、電池として動作していることを確認した。さらに4.3〜1.5Vの範囲で充放電を10回繰り返した。その結果、繰り返し充放電を行っても放電時に4.0V付近で電圧が一定になることが確認し、この電池が二次電池として動作していることを確認した。活物質あたりの容量を計算したところ150mAh/gであり、また電極あたり(集電体を除く)の容量は105mA/gであった。
【0108】
(実施例2)
実施例1において用いた式(5)で示されるジアジンN,N’−ジオキサイド化合物の代わりに、式(9)で表されるジアジンN,N’−ジオキサイド化合物を用いた以外は、実施例1と同様にして正極となる電極を作製し、この電極を正極として用いた以外は実施例1と同様にして電池を作製した。
【0109】
得られた電池に対して、実施例1と同様にして充放電を行った。その結果、3.9V付近に電圧平坦部が認められ、電池として動作していることが確認された。さらに、実施例1と同様の方法で10サイクルの繰り返し充放電に伴う電圧の変化を測定したところ、電圧平坦部が認められ、この電池が二次電池として動作していることが確認された。
【0110】
(実施例3、4)
実施例1において用いた式(5)で示されるジアジンN,N’−ジオキサイド化合物の代わりに、実施例3では式(11)で表される化合物、実施例4では式(24)で表される化合物を用いた以外は、それぞれ、実施例1と同様にして正極となる電極を作製し、この電極を正極として用いた以外は実施例1と同様にして電池を作製した。
【0111】
得られた電池に対して、実施例1と同様にして充放電を行った。その結果、放電時に式(11)で表される化合物を用いた電池は3.9V付近、式(24)で表される化合物を用いた電池は4.0V付近に電圧平坦部が認められた。得られた電池は、電池として動作していることが確認された。
【0112】
さらに、実施例1と同様の方法で10サイクルの繰り返し充放電に伴う電圧の変化を測定したところ、電圧平坦部が認められ、これらの電池が二次電池としても動作することが確認された。
【0113】
(比較例1)
実施例1において用いた式(5)で示されるジアジンN,N’−ジオキサイド化合物の代わりにグラファイト粉末1.7gを用いた以外は、実施例1と同様にして正極となる電極を作製し、この電極を正極として用いた以外は実施例1と同様にして電池を作製した。
【0114】
以上のように作製した電池に対して、実施例1と同様にして充放電を行った。その結果、放電時に電圧平坦部はみられず電圧は急速に低下し、電池として十分に動作しなかった。
【0115】
また、この電池に対して、0.1mAの定電流を流して充電を試みたところ、電圧は瞬間的に上昇して4.5Vを超えたが、これをさらに放電したところ、電圧曲線に平坦部は認められず、この電池は二次電池として動作しないことが確認された。
【0116】
(比較例2)
式(5)で示されるジアジンN,N’−ジオキサイド化合物25mgと、グラファイト粉末200mg、結着剤としてポリテトラフルオロエチレン樹脂バインダ25mgを測り採り、メノウ乳鉢で混合した。10分ほど乾式混合して得られた混合体を、圧力を掛けてローラー延伸して、厚さ215μmの薄型電極板を得た。この薄型電極板を、真空中80℃で一晩乾燥した後、直径12mmの円形に打ち抜いて成形し電極を得た。
【0117】
次に、得られた電極を電解液に浸して、電極中の空隙に電解液を染み込ませた。電解液としては、1mol/lのLiPF6電解質塩を含むエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート混合溶液(混合比3:7(体積比))を用いた。
【0118】
電解液を含浸させた電極は、正極集電体(アルミニウム箔)上に配置し、その上に同じく電解液を含浸させた多孔質フィルムセパレータを積層した。さらに負極となるリチウム金属板を積層し、枠状の絶縁パッキンが設けられた負極集電体を重ね合わせた。得られた積層体に、かしめ機によって圧力を加え、密閉型のコイン型電池を得た。
【0119】
以上のように作製した電池に対して、アルミニウム箔上に形成された式(5)で示されるジアジンN,N’−ジオキサイド化合物を含む電極層を正極、銅箔に張り合わされたリチウム金属板を負極として、0.1mAの定電流で充電を行い、電圧が4.5Vまで上昇した直後に放電を行った。放電電流は、充電時と同じく0.1mAとした。その結果、4.0V付近に電圧平坦部が認められ、電池として動作していることが確認された。活物質あたりの容量を計算したところ140mAh/gであり、また正極の電極あたり(集電体を除く)の容量は14mAh/gであった。
【0120】
(比較例3)
比較例2において用いた式(5)で示されるジアジンN,N’−ジオキサイド化合物の代わりにLiCoO2を25mg用いた以外は、実施例1と同様にして正極となる電極を作製し、この電極を正極として用いた以外は、実施例1と同様にして電池を作製した。
【0121】
以上のように作製した電池に対して実施例1と同様の方法で充放電を行い、活物質あたりの容量を計算したところ、96mAh/gであった。
【0122】
【発明の効果】
本発明によれば、電極の活物質としてジアジンN,N’−ジオキサイド化合物を用い、かつ結着剤の主成分としてスチレン・ブタジエンラテックスを用いることにより容量密度が高く、かつ充放電の安定性に優れた電池を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電池の構成の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
1 負極集電体
2 絶縁パッキン
3 負極
4 セパレータ
5 正極
6 正極集電体
Claims (7)
- ジアジンN,N’−ジオキサイド構造を有する下記一般式(1)で示される化合物を電極活物質として含有し、かつ前記電極活物質がスチレン・ブタジエンラテックスを主成分とする結着剤により結着されていることを特徴とする電極。
- ジアジンN,N’−ジオキサイド構造を有する下記一般式(1)で示される化合物の置換基R1、R2、R3、R4、Ra、Rb、Rc及びRdのうち二つの置換基に代えて二つの結合手を持つ二価基を構造単位として有するオリゴマー又はポリマー化合物を電極活物質として含有し、かつ前記電極活物質がスチレン・ブタジエンラテックスを主成分とする結着剤により結着されていることを特徴とする電極。
- 請求項1に記載のジアジンN,N’−ジオキサイド構造を有する化合物又は請求項2に記載のオリゴマー若しくはポリマー化合物を、電極反応の少なくとも放電反応において反応出発物、生成物または中間生成物として含有することを特徴とする電極。
- 請求項1、2又は3に記載の電極を正極および負極の両方またはいずれか一方の電極として有することを特徴とする電池。
- 請求項1、2又は3に記載の電極を正極として有することを特徴とする電池。
- 請求項1、2又は3に記載の電極を正極および負極の両方またはいずれか一方の電極として有する二次電池であることを特徴とする電池。
- 前記二次電池がリチウム二次電池であることを特徴とする請求項6に記載の電池。
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