図1,図2に示すように、ジグザグミシンMにおいては、ベッド部1の右端部に脚柱部2が立設され、この脚柱部2の上端から左方に延びるアーム部3はベッド部1の上方に対向するように水平に配設され、このアーム部3の頭部4には縫針5を着脱可能に装着された針棒6と押え足7を装着した押え棒(図示略)とが上下方向向きに配設されている。針棒6は、上端部がダイキャスト製の機枠に枢支ピン8を介して揺動自在に枢支された針棒支持部材9に、上下動可能に且つ揺動可能に支持されている。
前記アーム部3内には、機枠に回転可能に支持された主軸10が水平に配設され、図示外のミシンモータで所定の回転方向に回転駆動されるようになっている。そして、針棒6は、主軸10に連結された針棒上下動機構(図示略)により針棒抱き11を介して上下駆動されるとともに、後述する針振り機構に連結された揺動用連杆12を介して針棒支持部材9が揺動するのと同時に揺動可能になっている。
次に、前記脚柱部2に設けられた模様選択装置MSについて説明する。この模様選択装置MSは、図示を省略するが、複数枚の針振りカムを一体的に積層した針振りカム群と、1つの針振り接触子を針振りカム群の何れかの針振りカムに対応させるようにその積層方向へ移動させる針振り接触子移動機構(所謂、針振りリリース機構)と、針振り接触子の揺動を針棒6の揺動に変換する針振り機構と、後述する送り接触子55,43の揺動により布送りを発生させる送り発生装置13と、その送り発生装置13により発生した布送り量を送り調節器31で実現させる送り歯駆動機構14等を有している。
先ず、ベッド部1に設けられた送り歯駆動機構14を、先に説明しておく。図3,図4に示すように、縫針5の下側に対応するベッド部1の内部において、幅広の水平送り作動体20がその下端部において左右方向向きの枢支軸21により水平揺動可能に枢支され、その水平送り作動体20の上端部に、送り歯22を固着した送り歯支持体23が枢支ピン24で連結されている。但し、送り歯支持体23の後端部は、図示外の送り歯上下動機構の上下作動部材25に連結され、送り歯支持体23を介して送り歯22が上下動するようになっている。
水平送り作動体20の側壁に、側面視略コ字状の水平送り体26の前端部が枢支ピン27で上下揺動可能に支持されている。水平送り体26の内部に、主軸10と同期して回転駆動される送り軸28に固着された三角状の水平送りカム29が内嵌状に設けられている。一方、送り軸28の直ぐ上側に左右方向向きの回動軸30が配設され、その回動軸30の左端部に送り調節器31が固着され、その送り調節器31の内部に形成された湾曲状の送り調節穴に、水平送り体26に固着された送り調節ピン32の先端部が嵌入している。
回動軸30には、送り伝達レバー33の後端部が連結され、その送り伝達レバー33の前端部に、後述する送り発生装置13から下方に延びる送り発生板47の下端部が連結されている。それ故、送り発生板47の上下位置が上下動範囲の中段位置で、送り調節器31の傾きが図4に実線で示す基準姿勢の場合、送り調節器31の傾きは送り調節ピン32の移動軌跡と合致するため、水平送り体26及び水平送り作動体20を介して送り歯22に水平方向の送りが発生ぜず、布送り量は「零」である。
しかし、送り発生板47が中段位置よりも下方に移動した場合、送り調節器31の傾きが図4に2点鎖線で示す後進送り姿勢(逆送り姿勢)に切換えられるため、送り歯22により加工布が後進方向に移動する。送り発生板47が中段位置よりも上方に移動した場合、送り調節器31の傾きが基準姿勢に対して後進送り姿勢と反対の前進送り姿勢(正送り姿勢)に切換えられるため、送り歯22により加工布が前進方向に移動する。
次に、脚柱部2に配設された送り発生装置13について説明する。図5に示すように、この送り発生装置13は、ベースフレーム40と、このベースフレーム40上に設けられ、実用模様の為の布送りを発生させる実用送り発生機構41と、スーパー模様の布送りを発生させるスーパー送りカム42と、そのスーパー送りカム42に接触する単一のスーパー送り接触子43と、このスーパー送り接触子43の揺動位相が所定量だけずれるようにスーパー送り接触子43の配設位置を切換える配置切換え機構44と、スーパー模様の為の布送りを発生させるスーパー送り発生機構45等を有している。
ベースフレーム40は、略矩形状の板部材からなり、脚柱部2内において縦向きに配設され、複数箇所にて機枠に固着されている。但し、そのベースフレーム40の高さ方向中段部に、矩形状の形状の開口部40aが形成されている。
ここで、ベースフレーム40に、選択カム軸15により一体的に設けられた模様選択カム16と、模様選択ダイヤル17と、切換え制御カム35と、送りダイヤル36について簡単に説明しておく。模様選択ダイヤル17の円形正面部には、図1,図19に示すように、縫製可能な複数(例えば、13種類)の実用模様が表示され、送りダイヤル36の外周部の環状正面部には、図1,図19に示すように、実用模様の為の布送り量「0、F、1〜4」と、第1スーパー模様と第2スーパー模様を選択する文字「SS」が表示されている。
図10に示すように、ベースフレーム40の上端近傍部の前側に、ベースフレーム40に形成した円筒状の枢支部40bに前後方向向きの選択カム軸15が回転可能に枢支され、選択カム軸15はその前側に固定した第1止め輪37aと、後端部の第1固定ピン18aとで模様選択カム16を挟持するようにベースフレーム40に軸方向移動不能に装着されている。それ故、模様選択カム16は第1固定ピン18aにより選択カム軸15と一体的に回転できるようになっている。
ベースフレーム40の枢支部40bに切換え制御カム35が回転可能に枢支され、送りダイヤル36は選択カム軸15に固着した2つの第1,第2止め輪37a,37bで、選択カム軸15に軸方向移動不能に且つ回転可能に装着されている。即ち、切換え制御カム35はベースフレーム40と第1止め輪37aにより、送りダイヤル36は第1,第2止め輪37a,37bにより、選択カム軸15に軸方向移動不能に且つ回転可能であり、切換え制御カム35は送りダイヤル36に形成された凹凸状の係合部(図示略)を介して送りダイヤル36と一体的に回転可能になっている。
模様選択ダイヤル17は、選択カム軸15の前端部を嵌入させて、選択カム軸15の第2固定ピン18bに係合している。それ故、送りダイヤル36の回転操作により、模様選択ダイヤル17に何ら影響を及ぼすことなく、切換え制御カム35だけを直接に回転させて、アーム部3に記載した三角形の選択マーク3aに合致させた実用模様の布送り量と、スーパー模様(第1スーパー模様(SS1)、第2スーパー模様(SS2))の布送りを任意に選択できるようになっている。
模様選択ダイヤル17の回転操作により、送りダイヤル36に何ら影響を及ぼすことなく、選択カム軸15を介して模様選択カム16だけを回転させて、アーム部3に記載した選択マーク3aに合致させた実用模様を任意に選択できるようになっている。
次に、実用送り発生機構41について説明する。図6,図13−1に示すように、切換え制御カム35の裏面側に、略湾曲状の実用送りカム35aが凹設されている。ここで、その実用送りカム35aには、外周側の前進送りの為の正送りカム面35bと、内周側の後進送りの為の逆送りカム面35cとが夫々形成されている。切換え制御カム35の左側近傍部に正面視三角形状の実用送りレバー53の基端部が枢支ピン54によりベースフレーム40に回動可能に枢支されている。
切換え制御カム35に隠れる実用送りレバー53の右側端部に、実用送りカム35aに臨むように実用送り接触子55が前向きに固着され、実用送りレバー53の左側端部には、縦向きに配設された送り発生板47の上端部が連結ピン56で回動可能に連結されている。ここで、送り発生板47は、引っ張りコイルバネ46(図8参照)により常に上方に弾性付勢されており、実用送り接触子55が常に正送りカム面35bに接触するようになっている。
前述したように、作業者が実用模様の布送り量を変更する為に、送りダイヤル36を回動操作すると切換え制御カム35が一体的に回転駆動され、実用送り接触子55の正送りカム面35bに対する接触位置が変更され、それに伴って実用送りレバー53が時計回り又は反時計回りに回動して送り発生板47の高さ位置が変更され、前述したように、前進送り量が変更される。
縫製終了時の返し縫いに際しては、引っ張りコイルバネ46のバネ力に抗して送り発生板47が強制的に下げられるため、実用送り接触子55が逆送りカム面35cに強制的に接触するようになり、後進送りに切換えられて返し縫いが可能になる。但し、実用送りカム35aの上端部に、後述するスーパー模様の為の布送りを発生させる際に、実用送り接触子55を正送りカム面35bや逆送りカム面35cに接触させないで退避させる退避領域35dが形成されている。
次に、スーパー送りカム42について説明する。図5,図9,図11に示すように、スーパー送りカム42は、ベースフレーム40の直ぐ後側において枢支軸58によりベースフレーム40と平行に回転可能に枢支され、後側にウォームホイール59が一体的に設けられている。
スーパー送りカム42と一体的に設けられたウォームホイール59は、タイミングベルト60(図2参照)により主軸10の回転が伝達されるウォームギヤ軸61に設けられたウォームギヤ62に噛合されており、主軸10が回転するのと同時に、そのウォームギヤ62によりウォームホイール59、つまりスーパー送りカム42が針棒6の上下動と調時して時計回りに回転駆動されるようになっている。
スーパー送りカム42は、図12に示すように、90°おきに4つの後進用カム面42aが形成され、これら後進用カム面42aの間に前進用カム面42bが夫々形成されている。スーパー送りカム42が主軸10の回転に同期して回転するので、後述するスーパー送り接触子43が前進用カム面42bに接触すると2針分の前進送りが実行され、スーパー送り接触子43が後進用カム面42aに乗り上げると、1針分の後進送りが実行されるようになる。
次に、スーパー送り接触子43を、スーパー送りカム42に接触させる2つの配設位置の何れかに切換える配置切換え機構44について説明する。
図5,図11に示すように、ベースフレーム40の高さ方向中段部に、ベースフレームの開口部40aを介して前後方向向きの連結軸65が配設され、ベースフレーム40の前側において、左右方向向きのカム検出レバー66の右端近傍部が連結軸65の前方部分に回動可能に枢支されている。
カム検出レバー66の右端部に、ベースフレームの開口部40aを介して配設された前後方向向きのスーパー送り接触子43の前端部が固着され、カム検出レバー66の左端部に固着した連結ピン67を介して、送り発生板47の係合穴52aに係合している。
連結軸65の前端に正面視略長円形のカム当接レバー68の下端部が固着され、連結軸65の後方部分にレバー支持体69の右端部が、カム当接レバー68と所定角度(例えば、約90°)をなすように固着されている。実用送りレバー53の下側において、上下向きの切換え操作レバー70(これが切換え操作手段に相当する)の上端部が枢支ピン71でベースフレーム40に回動可能に枢支されている。
その切換え操作レバー70の下端部には、前方に曲げた操作部70aが形成され、その操作部70aが、図1に示すように、脚柱部2の前側に形成した湾曲状の切欠き3bを経て前方に突出している。それ故、作業者が必要に応じてその操作部70aを左側の第1スーパー模様(SS1)用の操作位置SP1、又は右側の第2スーパー模様(SS2)用の操作位置SP2に切換え操作する。
レバー支持体69の左端部が、切換え操作レバー70の高さ方向中段部に連結ピン72で連結されている。ところで、ベースフレーム40に立設されたバネ受けピン73に巻きバネ74が巻装され、巻きバネ74の一端部がスーパー送り接触子43に下側から係止され、巻きバネ74の他端部がベースフレーム40の係止穴40cに係止されている。
それ故、カム検出レバー66は、巻きバネ74のバネ力により左端部の連結ピン67を介して係合穴52aに支持されて、その全体が上側に持ち上げられるように、つまりスーパー送り接触子43が下側のスーパー送りカム42に接触しないようになっている。
ここで、切換え操作レバー70を、図5に示す第1スーパー模様位置SP1から図7に示す第2スーパー模様位置SP2に切換えると、切換え操作レバー70に連結されたレバー支持体69を介してカム検出レバー66が右方に移動するので、スーパー送り接触子43は、第1スーパー模様用の布送りを発生させる左側の第1スーパー模様発生位置43Lから、第2スーパー模様用の布送りを発生させる右側の第2スーパー模様発生位置43Rに切換えられる。
一方、切換え操作レバー70を、第2スーパー模様位置SP2(図7参照)から第1スーパー模様位置SP1(図5参照)に切換えると、スーパー送り接触子43は、右側の第2スーパー模様発生位置43Rから左側の第1スーパー模様発生位置43Lに切換えられる。
ところで、前述した切換え制御カム35には、突起状の切換えカム部35eが形成されている。送りダイヤル36により、通常の布送り(送り量:1、2、3、4)が選択されている場合には、図5,図13−2,図14−2に示すように、カム当接レバー68が切換えカム部35eに接触することはない。
しかし、送りダイヤル36によりスーパー模様用の布送りが選択された場合、図15−2,図17−2に示すように、カム当接レバー68が切換えカム部35eに接触して下側に押し下げられるため、カム検出レバー66は巻きバネ74のバネ力に抗して下側に移動し、スーパー送り接触子43がスーパー送りカム42に上側から接触するようになる。
このとき、カム検出レバー66の回動中心はレバー支持体69とカム当接レバー68とで位置決めされるので、この接触状態でスーパー送りカム42が回転駆動されると、スーパー送り接触子43がスーパー送りカム42の後進用カム面42aと前進用カム面42bにより上下動するため、カム検出レバー66は連結軸65を回動中心として時計回り又は反時計回りに揺動し、その連動に応じて送り発生板47が上下に移動され、前進送りと後進送りが発生する。このとき、実用送り接触子55は退避領域35dに退避しているので、スーパー模様のための布送りに、実用模様用の布送りが影響することはない。
次に、スーパー模様の為の布送りを発生させるスーパー送り発生機構45について説明する。前述したように、カム検出レバー66の左端部の連結ピン67が送り発生板47の係合穴52aに係合している。切換え操作レバー70が第1スーパー模様位置SP1に切換えられている場合には、スーパー送り接触子43は左側の第1スーパー模様発生位置43Lに切換えられている。
この状態で、送りダイヤル36によりスーパー模様が選択された場合、カム当接レバー68が切換えカム部35eに接触し、カム検出レバー66が押し下げられてスーパー送り接触子43が第1スーパー模様発生位置43Lにおいてスーパー送りカム42に接触する。スーパー送りカム42が回転駆動されると、カム検出レバー66が連結軸65を回動中心として揺動し、その揺動に応じて送り発生板47が上下に移動され、前進送りと後進送りがサイクリックに発生し、選択した実用模様の組合せで、複数の第1スーパー模様を縫製できる。
一方、切換え操作レバー70が第2スーパー模様位置SP2に切換えられて、スーパー送り接触子43が右側の第2スーパー模様発生位置43Rに切換えられた状態で、送りダイヤル36によりスーパー模様が選択された場合、スーパー送り接触子43が第2スーパー模様発生位置43Rにおいてスーパー送りカム42に接触する。スーパー送りカム42が回転駆動されると、カム検出レバー66が連結軸65を回動中心として揺動し、前進送りと後進送りがサイクリックに発生し、選択した実用模様の組合せで、複数の第2スーパー模様を縫製できる。
ここで、これらスーパー送り接触子43の第1,第2スーパー模様位置SP1,SP2における揺動位相について説明する。図12に示すように、スーパー送り接触子43の左側の第1スーパー模様発生位置43Lと、右側の第2スーパー模様発生位置43Rの揺動位相には、約30°の位相差がある。即ち、第2スーパー模様発生位置43Rの方が第1スーパー模様発生位置43Lよりも1針分だけ進んでいる(ずれている)。
それ故、スーパー送り接触子43の第1スーパー模様発生位置43Lにおける揺動により、前進→後進→前進→前進→後進→前進・・の布送り発生に対して、第2スーパー模様発生位置43Rにおける揺動により、前進→前進→後進→前進→前進→後進→・・・の布送りが発生する。即ち、第2スーパー模様発生位置43Rによる後進送りの発生時期が、第1スーパー模様発生位置43Lによる後進送りの発生時期よりも1針分だけ遅れるようになっている。
次に、このように構成された送り発生装置13の作用及び効果について説明する。
模様選択ダイヤル17により所望の実用模様が選択されると、針振り接触子移動機構により針振り接触子が対応する針振りカムに対応するように移動され、針振り機構により針振りが可能になる。一方、送りダイヤル36により所望の実用模様の為の送り量が選択されると、図13−1に示すように、切換え制御カム35が送りダイヤル36と一体的に回動され、実用送り接触子55が接触する正送りカム面35bに応じて実用送りレバー53が揺動し、送り発生板47の高さ位置が変更されて前進送り量が変更される。
返し縫いに際しては、図14−1に示すように、実用送り接触子55が逆送りカム面35cに接触し、後進送りに切換えられて返し縫いが可能になる。このように、実用模様の布送りが選択されている場合には、図13−2,図14−2に示すように、カム当接レバー68が切換えカム部35eに当接しないため、実用模様の布送りにスーパー模様の布送りが影響することはない。
次に、第1スーパー模様を選択する為に、切換え操作レバー70を第1スーパー模様位置SP1に切換えた場合、配置切換え機構44によりスーパー送り接触子43は左側の第1スーパー模様発生位置43Lに切換えられている。この状態で、送りダイヤル36を実用模様の布送り量の設定範囲以上に反時計回りに回動させて、送りダイヤル36の「SS」を選択マーク3aに合致させる。
この場合、図15−2,図16−2に示すように、前述したように、スーパー送り接触子43が左側の第1スーパー模様発生位置43Lにおいてスーパー送りカム42に上側から接触し、カム検出レバー66が連結軸65を回動中心とする揺動により送り発生板47が上下に移動される。
即ち、図15−2に示すように、スーパー送り接触子43がスーパー送りカム42の前進用カム面42bに接触する場合、前進送りが発生し、図16−2に示すように、スーパー送り接触子43がスーパー送りカム42の後進用カム面42aに接触する場合、後進送りが発生する。
この場合、図15−1,図16−1に示すように、実用送り接触子55は実用送りカム35aの退避領域35dに退避しているため、第1スーパー模様の布送りに、実用模様の布送りが影響することはない。
次に、第2スーパー模様を選択する為に、切換え操作レバー70を第2スーパー模様位置SP2に切換えた場合、配置切換え機構44によりスーパー送り接触子43は右側の第2スーパー模様発生位置43Rに切換えられている。この場合、図17−2,図18−2に示すように、スーパー送り接触子43が右側の第2スーパー模様発生位置43Rにおいてスーパー送りカム42に上側から接触し、カム検出レバー66が連結軸65を回動中心とする揺動により送り発生板47が上下に移動される。
即ち、図17−2に示すように、スーパー送り接触子43がスーパー送りカム42の前進用カム面42bに接触する場合、前進送りが発生し、図18−2に示すように、スーパー送り接触子43がスーパー送りカム42の後進用カム面42aに接触する場合、後進送りが発生する。
この場合にも、図17−1,図18−1に示すように、実用送り接触子55は実用送りカム35aの退避領域35dに退避しているため、第2スーパー模様の布送りに、実用模様の布送りが影響することはない。
ところで、前述したように、スーパー送り接触子43は、第1スーパー模様発生位置43Lと第2スーパー模様発生位置43Rとで、スーパー送り接触子43の揺動位相が所定量(約30°)だけずれている。つまり、右側の第2スーパー模様発生位置43Rにおけるスーパー送り接触子43による後進送りの発生時期が、左側の第1スーパー模様発生位置43Lにおけるスーパー送り接触子43による後進送りの発生時期よりも1針分だけ遅れるようになっている。
それ故、例えば、図19に示す実用模様として「6」を選択し、切換え操作レバー70を左側の第1スーパー模様位置SP1に切換えた場合には、前進→後進→前進→前進→後進→前進・・の布送り発生により、図19に「18」で示す第1スーパー模様を縫製できるのに対して、切換え操作レバー70を右側の第2スーパー模様位置SP2に切換えた場合には、前進→前進→後進→前進→前進→後進→・・・の布送り発生により、図19に「28」で示す第2スーパー模様を縫製できる。
このように、単一のスーパー送りカム42と、単一のスーパー送り接触子43と、スーパー送り接触子43の配設位置を切換える配置切換え機構44とを設けたので、スーパー送り接触子43の配設位置を切換えるだけで、前進送りにサイクリックに含まれる後進送りのタイミングを適宜ずらせることができ、単一のスーパー送りカム42及び単一のスーパー送り接触子43を用いて、布送りの前進と後進の組合せのパターンが異なる複数のスーパー模様を縫製することができる。
また、布送り発生の為に、単一のスーパー送りカム42と単一のスーパー送り接触子43を設けるだけであって、スーパー送り接触子43の為の送りリリース機構を不要にできるため、スペース的に且つコスト的に有利になり、送り発生装置の小型化、軽量化を実現することができる。
また、配置切換え機構44を操作するための切換え操作レバー70を有するので、切換え操作レバー70の切換え操作により、スーパー送り接触子43の配設位置を容易に切換えることができ、しかも縫製可能な複数のスーパー模様のうちの1つを選択する操作性を高めることができる。
また、配置切換え機構44は、切換え操作レバー70の切換え操作に応じて、スーパー送り接触子43の配設位置をスーパー送りカム43の外周カム面に接触する複数の配設位置の何れかに切換え、切換え操作レバー70の切換え操作に、余分な送りリリース機構の作動を伴わないので、切換え操作レバー70の操作荷重を小さくでき、その操作性を格段に向上させることができる。
また、配置切換え機構44は切換え操作レバー70に連結されたカム検出レバー66を有し、スーパー送り接触子43がカム検出レバー66に設けられ、カム検出レバー66の操作でスーパー送り接触子43の配設位置を直接に切換える切換え方式であるため、配置切換え機構44の簡単化及び低コスト化を図ることができる。
また、複数の実用模様の布送り量を設定する送りダイヤル36を布送り量の設定範囲以上に回動させたときに、スーパー送り接触子43がスーパー送りカム43と接触して揺動可能になるので、実用模様の布送りとスーパー模様の布送りを1つの送りダイヤル36で選択でき、布送り選択の操作性を高めることができる。
更に、送りダイヤルを36布送り量の設定範囲以上に回動させることでスーパー模様の布送りを選択できるため、実用模様の布送り量設定とスーパー模様の布送り選択を混同することがなく、送りダイヤル36の操作量による布送りを識別する識別効果を高めることができる。
次に、前記実施の形態の変更形態について説明する。
1〕単一のスーパー送り接触子43のための3つ以上の配置位置をスーパー送りカム43の外周部に設け、配置切換え機構により、スーパー送り接触子43をこれら複数の配置位置のうちの1つに配置するように構成してもよい。この場合には、配置位置が多いほど、多数のスーパー模様を縫製することができる。
2〕アーム部3に設けた切換えボタンが操作された場合に、ソレノイド等の電動アクチュエータにより、切換え操作レバー70を、第1スーパー模様位置SP1と第2スーパー模様位置SP2の何れかに切換えるようにしてもよい。
3〕本発明は以上説明した実施例に限定されるものではなく、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記実施例に種々の変更を付加して実施することができ、本発明はそれらの変更形態をも包含するものである。