JP4316826B2 - 細菌細胞の表面に付着していないエキソポリサッカライドの産生 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エキソポリサッカライドの産生およびエキソポリサッカライドを産生するための細菌に関する。さらに詳細には、本発明の細菌は、細菌細胞の表面に付着していないスライム状のエキソポリサッカライドを産生する。
【0002】
【従来の技術】
安価で且つ環境に許容できる増粘剤、生体乳化剤および生分解性ポリマーの需要がかつてなく高まっている。エキソポリサッカライドは、独特の流動学的特性を有するため、これらの目的に有用な化合物の一例である。たとえば、ジェラン(gellan)、ウェラン(welan)、およびラムザン(rhamsan)等のエキソポリサッカライドが、食品、化粧品、および油田における用途、および他の用途向けに、工業用に製造されている。各エキソポリサッカライドは、剪断抵抗、様々なイオン性化合物との相溶性、および極端な温度、pHおよび塩濃度に対する安定性を含む、異なる特徴的な一連の水性流動学的特性を示す。
【0003】
エキソポリサッカライドは、細菌発酵により産生することができる。幾つかの例を挙げると、ジェラン、ウェラン、ラムザン、S−88、S−7、S−198、NW11、およびS−657を含むエキソポリサッカライドを、スフィンゴモナス(Sphingomonas)属の異なる菌株が産生する(Pollock1993,J.Gen.Microbiol.139:1939−1945)。スフィンゴモナス細菌の他の菌株によって、多くの他のエキソポリサッカライドを作ることができる。スフィンゴモナス細菌により産生されるエキソポリサッカライドは、ソースとしての共通の属に関連して、「スフィンガン(sphingan)」と呼ばれる。大規模液内発酵により、少なくとも3つのスフィンガン(ジェラン、ウェラン、およびラムザン)が工業用に製造される。
【0004】
バイオテクノロジー業界は、工業的使用基準に合った様々な細菌のエキソポリサッカライド生成物の利用性を高めることにより、エキソポリサッカライド化合物の需要に応えてきた。細菌性エキソポリサッカライド生成物の多くは、合成により製造された物質にまさる広範囲の魅力的な改良点を提供するが、製造するのに比較的費用がかかるままである。費用は、一般に所望の生成物の回収費用および精製費用と関連がある。
【0005】
細菌の菌株改良および変更、ならびに細菌の生合成および発酵条件の最適化をよりよく理解した結果として、エキソポリサッカライドのより高い発酵収量が得られる。これにより、十分な量の工業的用途向けのポリマーを回収する場合における重要なステップの1つが満たされる。しかし、発酵工程でエキソポリサッカライド濃度が上昇すると、酸素および栄養分を発酵ブロス中に効果的に分散させるのにより高いエネルギー入力を必要とする粘度の上昇を招く。従って、エキソポリサッカライド収量が高い発酵は、相応して生産コストが高くなる。
【0006】
エキソポリサッカライドの回収は、難しく且つ高価なステップのままである。スフィンゴモナス属由来の細菌株は、細胞表面に付着したままであるエキソポリサッカライドを産生する(Pollock et al.1999,J.Indust.Microciol.Biotechnol.23:436−411)。付着したポリマーは、細菌を囲むようにカップセルを形成する。ポリサッカライドのカプセルは、細菌から容易に分離されない。発酵ブロスを十分な水で希釈して粘度を低下させた後でさえ、このカプセルは細菌細胞に付着したままであり、遠心沈降分離で細胞をカプセルと分離させることはできない。細胞をカプセルと分離させるには、他の物理的方法または化学的方法が必要である。細胞への付着点付近のポリマー鎖をランダムに分断することにより、ポリサッカライドの大部分を細胞から放出させるために、たとえば、酸によるポリサッカライドの部分的加水分解を使用することができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
エキソポリサッカライドの産生に使用される条件と関係なく、エキソポリサッカライドの回収は、一般に、沈澱ステップを含む。次いで、沈澱したエキソポリサッカライドを遠心分離により回収する。ジェランガムおよびウェランガムを回収する一般的な方法は次の方法である。発酵後直ちに、培養ブロスを少なくとも90℃に加熱して、生存細菌を死滅させる。次いで、約2倍量のイソプロピールアルコールで沈澱させることにより、両ガムを培養ブロスから分離させる。沈澱したポリサッカライド繊維を収集し、圧縮し、乾燥して粉砕機にかける。蒸留によりアルコールを回収する。この最も簡単な方法では、ポリサッカライドは細胞に付着したままであるため、乾燥して粉砕機にかけたポリサッカライドを水に再懸濁するとき、その溶液は透明ではない。ジェランガムの場合、さらなるステップを導入して細菌細胞からポリサッカライドを精製することができるため、再懸濁した生成物はより透明である。アルコール沈澱の前に、培養ブロスを遠心分離または濾過またはその両者を実施するが、その間、高粘性状態と、容易に遠心分離または濾過できる液化状態との間の臨界転移温度より高温に温度を維持する。これらの方法は、米国特許第4,326,052号(ジェラン)、第4,326,053号(ジェラン)、第4,342,866号(ウェラン)、第3,960,832号(S−7)、および第4,535,153号(S−88)(これらは、参照することにより本明細書に組み込まれるものとする)に開示されている。
【0008】
一般的な生成物回収プロトコールと関連した主要な非能率的な点は、エキソポリサッカライドの回収が不完全な点である。細菌のエキソポリサッカライドは、様々な程度の粘り強さで、産生細胞に付着している。エキソポリサッカライドを比較的しっかり結び付けた細菌は、エキソポリサッカライドを培地中に放出する公算が低く、従って、沈澱ステップで回収に利用できるエキソポリサッカライドの量が減少し、エキソポリサッカライドを産生細胞から分離するのに必要な工程ステップが増加する。
【0009】
本発明の利点、特色および特徴は、以下の説明および上述の特許請求の範囲について熟考すると、より明白になるであろう。
【0010】
【課題を解決するための手段】
発明の概要
本発明はスフィンガンエキソポリサッカライドの製造方法およびスフィンガンエキソポリサッカライドを産生するスフィンゴモナス細菌に関する。本発明は、スフィンガンエキソポリサッカライドがの表面に付着していないスライム状のスフィンガンエキソポリサッカライドが産生される方法を提供する。スライム状のスフィンガンエキソポリサッカライドが産生されると、カプセル状のエキソポリサッカライドが細菌細胞に付着したままである発酵と比較して少ないエネルギーですむ。さらに、スライム状で産生されるスフィンガンエキソポリサッカライドの分離および回収は、カプセル状で産生されるスフィンガンエキソポリサッカライドの回収と比較して、能率的である。
【0011】
1つの態様において、本発明は、スライム状のスフィンガンエキソポリサッカライドを提供するのに効果的な時間および温度で、スフィンゴモナス細菌を発酵ブロス中で培養することを含む、スフィンガンエキソポリサッカライドを製造する方法を提供する。本発明の重要な態様において、スライム状のスフィンガンエキソポリサッカライドを産生するように遺伝学的に突然変異させたスフィンゴモナス細菌を液内発酵で使用する。遺伝学的に突然変異したスフィンゴモナス細菌の例としては、ATCC PTA−3487(菌株X287)、ATCC PTA−3486(菌株X530)、ATCC PTA−3485(菌株Z473)、ATCC PTA−3488(菌株X031)およびそれらの混合物が挙げられる。
【0012】
本発明の遺伝学的に突然変異したスフィンゴモナス細菌を発酵することにより、スライム状のエキソポリサッカライドを含む発酵ブロスが得られる。発酵ブロスの粘度は、産生されるスフィンガンエキソポリサッカライドの量に左右され、次には発酵中にエキソポリサッカライドに転換される糖の量に左右される。発酵開始時の糖濃度または糖のエキソポリサッカライドへの転換効率のいずれかが上昇すると、ブロスの粘度は相応じて上昇する。たとえば、スフィンゴモナス菌株X287を、約25〜約35℃にて約48〜96時間発酵すると、スライム状でジェランガムが産生される。結果として得られる発酵ブロスは約15,000〜約30,000cp、好ましくは約15,000〜約20,000cpの粘度、および総バイオマスとして約20〜約25g/Lを有する。一般に、このバイオマスの半分から4分の3は、エキソポリサッカライドそのものである。
【0013】
本発明のこの態様において、本発明の遺伝学的に突然変異したスフィンゴモナス細菌の発酵により生じる発酵ブロスは、約20,000cps未満の粘度を有し、対応する親菌株の発酵により生じる発酵ブロスは、約40,000cpより高い粘度を有する。スライム状のエキソポリサッカライドにより実現される低い粘度によって、混合および通気がより能率的になり、エネルギー消費が低くなる。
【0014】
発酵中の混合、通気およびエネルギー消費は、発酵容器の大きさおよび形状、発酵容器回転翼のタイプ、大きさおよび質、ならびに培養粘度によって左右される。たとえば、同じ発酵装置および運転条件を用いて、野生型親菌株を定常期(スフィンゴモナス細菌の場合、600nmにて約15を超える吸光度を示す)まで増殖させることができる。容器内の酸素センサーで測定するとき、定常期には、発酵ブロスには検出可能な酸素がない。対比すると、本発明の遺伝学的に突然変異させて定常期まで増殖させた細菌の発酵ブロスは、水の飽和状態の少なくとも約5%という溶存酸素レベルを有する。さらに、本発明の遺伝学的に突然変異した細菌を用いた発酵の全期間にわたって、酸素をポジティブなレベルに維持すると、エキソポリサッカライドの産生率が高くなる。
【0015】
低粘性スライム状のエキソポリサッカライドを産生する利点のもう1つの例は、外来性の酸または塩基を加えることにより、容器内のpHを調節できることである。親菌株を用いた発酵の場合のように、粘度が約20,000cpを超えるとき、酸または塩基を急速に混合して均質な溶液を作ることは不可能である。代わりに、酸または塩基の高濃度領域が生じる。濃酸または濃塩基は、それぞれ、ポリサッカライドを加水分解するか、ポリサッカライドからアシル基を切断することができる。発酵の全期間にわたってpHを能率的にコントロールすることにより、生産性を高めることもできる。
【0016】
重要な態様において、本発明は、スフィンガンエキソポリサッカライドがカプセル状で産生される発酵ブロスと比較して、改良されたスフィンガンエキソポリサッカライドの下流部門回収および処理を招来するのに有効である。本発明のこの態様において、スフィンガンエキソポリサッカライドは一般にアルコール沈澱により回収される。アルコール沈澱に必要な量を、発酵ブロスの体積の約2倍量から、約1〜1.5倍量に減少させることが可能である。さらに、有効な沈澱温度を約90℃から約25℃〜約50℃に下げることが可能である。
【0017】
発酵後且つアルコール沈澱前に、さらなる処理ステップによって、エキソポリサッカライドを含む発酵ブロスを処理することが可能である。たとえば、細菌細胞を死滅させるために、ブロス温度を、80℃より高温に少なくとも15分間、上昇させてもよい。加熱したブロスにアルカリを加えて約9以上のpHを実現することにより、ポリサッカライドからアシル基を除去することが可能である。ジェランガムの特例において、これらの2つのステップは、濾過または遠心沈降分離のいずれか、または2法の併用等の物理的方法によって、細菌細胞をポリサッカライドから分離できるほど十分に、発酵ブロスの粘度を低下させる。しかし、ジェランガムがカプセル状で産生されるとき、発酵ブロスが80℃より高温に維持されている間に分離ステップを遂行しなければならない。80℃より低温では、培養ブロス中のジェランガムは、培地中の二価陽イオンによって架橋されたジェラン鎖を有する堅いゲルに凝固する。ジェランガムがゲルを形成すると、ジェランを沈澱で回収することができなくなり、ゲル化した物質を廃棄しなければならない。対照すると、エキソポリサッカライドがスライム状であるとき、粘度は低下しており、ゲル形成を防止するのに必要な温度は低い。本発明のこの態様において、細胞分離ステップ中の温度を約60℃まで低下させることができる。
【0018】
本発明のこの態様に従えば、本方法は、ブロス1リットル当たり約10〜約20gのエキソポリサッカライドを生成することができる。純度は、一般に少なくとも約80%を超える。
【0019】
詳細な説明
定義
別に規定がなければ、本明細書で使用する全ての専門用語および科学用語は、本発明が属する技術分野における普通の熟練者より一般的に理解されるものと同じ意味を有する。Singleton et al.(1994)Dictionary of Microbiology and Molecular Biology,second edition,John Wiley andSons(New York)は、本発明で使用される用語の多くの汎用辞書を熟練者に提供している。本明細書に関連した全ての特許および出版物は、参照することにより本明細書に組み込まれる。本発明のために、以下に、下記の用語を定義する。
【0020】
本明細書で使用する用語「スフィンガン」および「スフィンガンエキソポリサッカライド」は、スフィンゴモナス属のメンバーにより分泌される、関連があるがそれぞれ異なるエキソポリサッカライド群を指す(Pollock,J.Gen.Microbiology 139:1939−1945,1993)。スフィンガンの構造は、全て多少関連がある。各スフィンガンの主鎖は、D−グルコース、D−グルクロン酸、L−マンノースおよびL−ラムノースの4糖の関連した配列からなる。スフィンガン群のポリサッカライドメンバーは、ポリマー主鎖および側鎖を含む炭水化物によって互いに区別できる。スフィンガンポリサッカライドは、炭水化物側鎖、および炭水化物のポリマー主鎖に結合したアセチル基およびピルビル基を含んでもよい。Mikolajczak,et al.,Appl.and Env.Microbiol.,60:402,(1994)参照。ジェラン、ウェラン、ラムザン、S−88、S−7、NW−11、S−198およびS−657は、スフィンガン群のエキソポリサッカライドの例である。
【0021】
一般に、スフィンガンエキソポリサッカライドファミリーのメンバーは、次の一般的な反復化学構造
【化4】
Figure 0004316826
(式中、Glcはグルコースであり、GlcAはグルクロン酸または2−デオキシ−グルクロン酸であり、Rhaはラムノースであり、Manはマンノースであり、XはRhaであってもManであってもよく、ZはGlc残基2に結合しており、且つα−L−Rha−(1−4)−α−L−Rha、α−L−Manまたはα−L−Rhaであってもよく、WはGlc残基1に結合しており、且つβ−D−Glc−(1−6)−α−D−Glc、β−D−Glc−(1−6)−β−D−Glcまたはα−L−Rhaであってもよく、下付き文字vおよびyは、0、0.33、0.5、0.67または1であってもよく、ポリマーの「還元末端」は、主鎖のX残基の方に向いている)
で表すことができる。本明細書で使用する用語「主鎖(backboneまたはmain chain)」は、鎖Wおよび鎖Zを除く構造の部分を指す、すなわち、vおよびyが0に等しいときである。
【0022】
スフィンガンポリサッカライドファミリーの幾つかのメンバーは、様々な位置でアセチル化されている。しかし、ポリサッカライドを従来の方法で化学的脱アシル化してアシル基を除去することが可能である。たとえば、ジェランは、ウェランと同じ炭水化物主鎖を有する(すなわち、X=Rha)が、側鎖糖が欠如しており(すなわち、V=0且つy=0)且つグルコース残基1はグリセレートで完全に置換されている。ジェランサブユニット構造は、やはりグルコース残基1にて部分的にアセチル化されている。本明細書で使用する「脱アシル化」は、グリセリル基およびアセチル基が欠如していることを意味する。
【0023】
上記の通り、スフィンガンエキソポリサッカライドの一例はジェランガムである。「ジェランガム」は、炭水化物反復構造−[(L)ラムノース−(D)グルコース−(D)グルクロン酸−(d)グルコース]−を有し、グリセリル基およびアセチル基が、ラムノースの還元側に隣接したグルコース残基に結合したポリサッカライドを意味する。標準方法では、オリゴサッカライドの還元末端を右に配置する。ジェランガムは、平均して、反復単位当たり約1個のグリセリル基および反復単位2個当たり約1個のアセチル基を有する。
【0024】
本明細書にさらに説明する通り、スフィンゴモナスの親菌株はスフィンガンエキソポリサッカライドをカプセル状で産生する。本明細書で使用する「カプセル」は、産生細菌細胞の表面に付着し、水性希釈後でも付着したままであり、且つ付着した細胞から沈降分離または遠心分離で分離することができない、ポリサッカライドを意味する。
【0025】
本明細書で使用する用語「スフィンゴモナス」は、上述のような、エキソポリサッカライドすなわちスフィンガンを産生するスフィンゴモナス属由来のグラム陰性菌の菌株を指す。1993年、グラム陰性菌のスフィンガン産生ファミリーが、スフィンゴモナス属に属するとして最初に同定された(Pollock,J.Gen.Microb.,139,1939(1993)参照)。
【0026】
本発明で有用なスフィンゴモナス細菌としては、遺伝学的に突然変異するか突然変異誘発を受けた、親菌株由来のスフィンゴモナス細菌などがある。
【0027】
本明細書で使用する「親菌株」は、親菌株の遺伝的内容または表現型を修飾することを意図する、突然変異誘発等の処理前の細菌菌株または個々の細菌を意味する。これは、親菌株と、親菌株または親細菌から得られる突然変異した、または遺伝学的に修飾された誘導菌株とを明らかに区別することを意味する。
【0028】
本明細書で使用する「遺伝学的に突然変異した」は、自然に突然変異し、または突然変異が誘導されたものの何れかであり、突然変異した細菌または細菌菌株と親菌株とを区別する特性を示すという特質を意味する。
【0029】
本明細書で使用する「突然変異誘発」は、化学薬品、電磁放射、生物学的作用物質、たとえばウイルス、プラスミド、挿入エレメントまたはトランスポゾン等を含むが、それらに限定されない、DNAにおける遺伝子の突然変異形成を誘導することがよく知られている作用物質で細菌細胞を処理することを意味する。
【0030】
本発明のスフィンゴモナス細菌は、スライム状のエキソポリサッカライドを産生する。本明細書で使用する「スライム」は、産生細菌細胞に付着しておらず、且つ発酵ブロスの、またはブロスの水性希釈後の、沈降分離または遠心分離によって、且つ熱処理、またはブロスの他の物理的処理または化学的処理なしで、細胞から実質的に分離することができるポリサッカライドを意味する。光学顕微鏡で観察することによって、スライム状のエキソポリサッカライドを産生する細菌と、カプセルのポリサッカライドを産生する細菌とを区別することができる。カプセルで包まれたスフィンゴモナス細菌は、細胞の表面に付着したポリサッカライド鎖によって結合された多細胞凝集体を形成し、細菌細胞を凝集体状に結合させるカプセルを全くもたない一様に分散されたスライムを形成する細菌細胞と対照的である。
【0031】
本明細書で使用する用語「生合成」は、生物学的産生すなわちスフィンゴモナス細菌によるスフィンガンの合成を表す。スフィンガンエキソポリサッカライドは、細菌の多数の酵素によって調節される一連のステップで、個々の炭水化物単位から合成される。
【0032】
用語「バイオマス」は、細菌培養中の、エキソポリサッカライドと細菌細胞を加えたものを指す。
【0033】
菌株開発
本発明は、スライム状のスフィンガンエキソポリサッカライドを合成して分泌するように遺伝学的に突然変異させたスフィンゴモナス細菌を使用する。本発明のこの態様において、スフィンガンエキソポリサッカライドをカプセル状で産生する親スフィンゴモナス菌株を、遺伝学的に突然変異したスフィンゴモナス細菌を提供するための手順に供した。使用した親菌株の例の中には、S60(ATCC 31461)、S130(ATCC 31555)、S88(ATCC 31554)およびS7(ATCC 53159)が含まれていた。本発明で有用な、遺伝学的に突然変異したスフィンゴモナス細菌の例としては、スライム状のジェランガムを産生するATCC PTA−3487(菌株X287)、スライム状のウェランガムを産生するATCC PTA−3486(菌株X530)、スライム状のエキソポリサッカライドS−88を産生するATCC PTA−3485(菌株Z473)、スライム状のエキソポリサッカライドS−7を産生するATCC PTA−3488(菌株X031)などがある。
【0034】
発酵
本発明のもう1つの態様は、スフィンガンエキソポリサッカライドの増強された産生である。スフィンガンエキソポリサッカライドを産生させるためには、当技術分野で周知であり且つ米国特許第5,854,034号(参照することにより本明細書に組み込まれるものとする)に一般的に記載されている適当な発酵条件で、遺伝学的に突然変異したスフィンゴモナス細菌を培養する。要約すると、遺伝学的に突然変異したスフィンゴモナス細菌を培養するのに適した培地は、たとえば、グルコース、ラクトース、スクロース、マルトースまたはマルトデキストリンを含む炭水化物等の炭素源、たとえば、無機アンモニウム、無機硝酸塩、有機アミノ酸またはタンパク質物質、たとえば、加水分解した酵母、大豆粉またはカゼイン酒造業者の可溶性物質またはコーンスティープリカー等の窒素源、無機塩類およびビタミン類を含む。多種多様な発酵培地が、本発明によるスフィンガンの産生を支える。
【0035】
炭水化物は様々な量で発酵ブロス中に含まれるが、通常は発酵培地の1〜5重量%である。この炭水化物は、発酵前に、あるいは、発酵中に、一度に全部加えてもよい。窒素の量は、水性培地の約0.01〜0.2重量%の範囲であってもよい。1つの炭素源または窒素源を使用してもよく、これらのソースの混合物を使用してもよい。
【0036】
無機塩類の中で、スフィンゴモナス細菌の発酵に使用されるものは、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、硝酸塩、カルシム、リン酸塩、硫酸塩、塩化物、炭酸塩および類似のイオン類を含む塩類である。マグネシウム、マンガン、コバルト、鉄、亜鉛、銅、モリブデン、ヨウ化物およびホウ酸塩等の微量金属も都合よく含まれる。ビオチン、葉酸、リポエート、ニコチンアミド、パントテン酸、ピリドキシン、リボフラビン、チアミンおよびビタミンB12などのビタミン類およびそれらの混合物も都合よく使用することができる。
【0037】
約25℃〜35℃の温度で発酵を実施するが、約28℃〜32度の温度範囲内で最適生産性が得られる。接種材料は、振盪フラスコ培養および小規模液内攪拌培養を含む、標準増量法によって調製する。接種材料調製用の培地は、生産培地と同じであってもよく、LuriaブロスまたはYM培地等の、当技術分野で周知の幾つかの標準培地の1つであってもよい。シード培地中の炭水化物濃度は、約1重量%未満まで下げることができる。2つ以上のシード期を使用して、接種に望ましい量を得ることが可能である。一般的な接種量は、最終的な総発酵体積の約0.5%〜約10%の範囲である。
【0038】
発酵容器は、一般に、内容を攪拌するための攪拌器を含む。この容器は、自動pH制御装置および泡沫制御装置も具有してもよい。生産培地を容器に加え、原位置で加熱滅菌する。あるいは、炭水化物または炭素源を別個に滅菌してから加える。予め成長させたシード培養を、冷却した(一般に、約28℃〜32℃の発酵温度の)培地に加え、攪拌した培地を約48〜約96時間発酵させて、約15,000〜約20,000cpの粘度および約10〜15g/Lのスライム状スフィンガンエキソポリサッカライドを有するブロスを生じさせる。対応する親スフィンゴモナス細菌の発酵によって、一般に、約25,000〜約50,000cpの粘度を有するブロスが生じる。
【0039】
この態様において、本発明は、液内攪拌通気培養で増殖させたスフィンゴモナス細菌から得られるスライム状エキソポリサッカライドを提供する。24時間の培養後、液体培地中の溶存酸素濃度は、水の飽和状態の約5%を超える。親菌株を用いた同様の発酵では、24時間後の溶存酸素は0%であった。スライム状のエキソポリサッカライドにより低粘度が実現し、その結果として通気が改良され、スフィンゴモナス細菌はより長期間にわたって培地中で生産力を有することが可能である。
【0040】
本発明のもう1つの態様において、1つの発酵からの細菌を液内発酵用接種材料として使用する半回分式で発酵を実施することが可能である。この態様において、スフィンゴモナス細菌が産生したエキソポリサッカライドから分離されたスフィンゴモナス細菌を新鮮な発酵ブロスに加えてもよく、新鮮な発酵ブロスを残ったスフィンゴモナス細菌に加えてもよい。従って、本発明のこの態様により、別個のシード培養を提供する必要がなくなる。
【0041】
発酵ブロスの処理
幾つかのアプローチを使用して、エキソポリサッカライドを回収するために発酵ブロスをさらに処理することが可能である。たとえば、エキソポリサッカライドを発酵ブロスから直接沈澱させてもよく、発酵ブロスを先ず清澄にし、次いで沈澱させてもよく、発酵ブロスを脱アシル化した後沈澱させてもよく、あるいは発酵ブロスを脱アシル化した後清澄にし、沈澱させてもよい。
【0042】
本発明の1つの態様において、少なくとも約1%w/v量のエキソポリサッカライドおよび約25,000cp以下の粘度を有する発酵ブロスを、エキソポリサッカライド回収のためにさらに処理する。本発明のこの態様において、約25℃〜約50℃の温度の発酵ブロスに、約1〜約1.5倍量のアルコールを直接加える。あるいは、米国特許第4,326,052号(参照することにより本明細書に組み込まれるものとする)に記載の通り、発酵ブロスを先ず脱アシル化し、次いで清澄にしてからアルコールを加えてもよい。エキソポリサッカライドの沈澱に有効なアルコールとしては、エタノール、イソプロピルアルコール、プロパノール、ブタノールおよびそれらの混合物などがある。沈澱は、使用する混合装置のタイプに応じて、回分式であってもよく、半回分式または連続式であってもよい。混合が高粘度によって妨害される場合、水で希釈してからアルコールを加える。
【0043】
発酵後、沈降分離または濾過で、エキソポリサッカライドを細胞片から分離する。沈降分離は遠心分離によって行ってもよい。本発明のこの態様において、沈澱後、均質なエキソポリサッカライド粉末を与えるために、回収、圧縮、乾燥および粉砕のための、当技術分野で周知の幾つかの方法のいずれを使用してもよい。
【0044】
本発明のこの態様によれば、この方法で約1〜約2%(w/v、初めのブロス体積を基準にして)のエキソポリサッカライドが生じる。純度は、一般に、少なくとも80%を超える。
【0045】
以下の実施例で本発明を実施するための方法を説明するが、添付のクレームで規定される本発明の範囲を、例を挙げて説明するものであって、制限するものではないと理解すべきである。
【0046】
【発明の実施の形態】
実施例
実施例I
通気攪拌液内発酵により、野生型菌株ATCC31461に由来するスフィンゴモナス突然変異体菌株X287、およびATCC31461親菌株から、ジェランガムが産生された。突然変異誘発および好ましい特性の選択という再現性のある多段方式で、菌株X287を得た。
【0047】
増殖培地は(脱イオン水1リットル当たり)、硝酸アンモニウム1g、可溶性大豆タンパク質水解物(MarcorのSoy Peptone)0.5g、リン酸水素カリウム3.2g、リン酸二水素カリウム1.6g、硫酸マグネシウム(七水化物)0.1g、微量ミネラル類およびグルコースを含んでいた。微量ミネラルは(最終培地1リットル当たり)、FeCl3−6H2O 2.7mg、ZnCl2 1.36mg、MnCl2−4H2O 1.98mg、CoCl2−6H2O 240μg、Na2MoO4−2H2O 240μg、およびCuSO4−5H2O 250μgを含んでいた。最終的な発酵培地は、リットル当たり25gのグルコースを含み、前培養培地はリットル当たり10gのグルコースを含んでいた。
【0048】
1バイアルの凍結細胞を解凍し、バッフル付フラスコ内の前培養500mlに加え、回転シェーカー上で30℃にて約16〜20時間、または600nmにおける吸光度で測定した細胞密度が約3〜5になるまでインキュベートした。凍結細胞は、同じ培地を含む寒天プレート上で増殖させた細菌菌株のコロニー1個を接種しておいた、事前前培養フラスコから採取したサンプルであった。
【0049】
約5〜10容量%の接種を行うために、かなりの量の前培養を発酵槽に加えた。発酵槽は、New BrunswickモデルIIIまたはモデル3000のいずれかであり、培地4リットルが入っていた。この発酵槽に、発酵培地の体積と同量の空気を通気し、30℃に維持した。最小限、飽和状態の30%に設定した溶存酸素の量で、攪拌速度を調節した。発酵中に攪拌速度が最大速度1000rpmに達し、この後、溶存酸素レベルは0〜30%に低下した。
【0050】
下表に、親菌株ATCC31461およびスライム形成性突然変異体菌株X287を用いた液内発酵の結果を示す。ポリサッカライドが細胞に付着していないX287突然変異体培養では、粘度が低下した結果として、混合および通気が十分になり、消費エネルギーが低くなる。
【0051】
【表1】
Figure 0004316826
【0052】
野生型菌株ATCC3146により産生されたジェランガムを沈澱させるためには、アルコール沈澱による生成物回収中に、2倍量のイソプロピルアルコールが必要である。対照的に、菌株X287によりスライム状で産生されるジェランガムは、同体積量のイソプロピルアルコールのみで、ブロスから沈澱する。さらに、スライム状のジェランガムは、25〜30℃にてイソプロピルアルコールで沈澱するが、野生型ジェランは、アルコールを加える前に加熱ステップを必要とする。
【0053】
実施例II
野生型親菌株ATCC31555に適用した、突然変異の誘発または天然に生じる突然変異および好ましい特性の選択で構成される多段方式によって得られた、菌株X530およびX319を代表とする、幾つかの突然変異体菌株のいずれからも、スライム状ウェランガムが産生された。
【0054】
細菌菌株X530を、振盪フラスコ内の(実施例Iに記載の)液体培地で増殖させた。菌株X530は、細胞に付着していない、スライム状の、ウェランガムを合成した。培養の様相を光学顕微鏡で観察した。親野生型菌株は、各細胞に付着したカプセルのポリサッカライドによって結合された多細胞凝集体を形成したが、菌株X530の細胞は凝集体を形成せず、単細胞として、培地全体に、自由に一様に分布することができた。以下の測定を行い、下表にまとめた。培養粘度(Brookfield LVTDV−II粘度計用スピンドル#4で12rpmにおけるセンチポアズ)、細胞密度(600nmにおける吸光度)、および25℃にて2倍量のイソプロピルアルコールで培養ブロスから直接沈澱させたバイオマスの重量(ポリサッカライドと細胞を加えたもの)(g/l)。
【0055】
【表2】
Figure 0004316826
【0056】
さらに、90℃にて沈澱を実施し、アルコール−ブロス混合物中で沈澱したポリサッカライドの様相を記録した。2倍量のイソプロピルアルコールを菌株X530の培養に加えると、25℃または90℃のいずれでも粘着性の凝塊を形成したが、それにひきかえ、野生型親菌株では、沈澱したポリサッカライドは25℃にて分散した断片化凝塊を形成し、90℃にて粘着性凝塊を形成した。
【0057】
実施例III
野生型親菌株ATCC31554に適用した、突然変異誘発または自然突然変異および好ましい特性の選択で構成される多段方式によって得られた、菌株X099およびZ473を代表とする、幾つかの突然変異体菌株のいずれからも、ポリサッカライドS−88がスライム状で産生された。
【0058】
増殖培地は(水1リットル当たり)、硝酸アンモニウム1g、可溶性大豆タンパク質水解物(MarcorのSoy Peptone)0.5g、リン酸水素カリウム3.2g、リン酸二水素カリウム1.6g、硫酸マグネシウム(七水化物)0.2g、微量ミネラル類およびグルコースを含んでいた。微量ミネラルは(最終培地1リットル当たり)、FeCl3−6H2O 2.7mg、ZnCl21.36mg、MnCl2−4H2O 1.98mg、CoCl2−6H2O 240μg、Na2MoO4−2H2O 240μg、およびCuSO4−5H2O 250μgを含んでいた。最終的な発酵培地は、リットル当たり30gのグルコースを含み、前培養培地はリットル当たり20gのグルコースを含んでいた。
【0059】
1バイアルの凍結細胞を解凍し、バッフル付フラスコ内の前培養500mlに加え、回転シェーカー上で30℃にて約16〜20時間、または600nmにおける吸光度で測定した細胞密度が約3〜5になるまでインキュベートした。凍結細胞は、同じ培地を含む寒天プレート上で増殖させた細菌菌株のコロニー1個を接種しておいた、事前前培養フラスコから採取したサンプルであった。
【0060】
約5〜10容量%の接種を行うために、かなりの量の前培養を発酵槽に加えた。発酵槽は、New BrunswickモデルIIIであり、培地4リットルが入っていた。この発酵槽に、発酵培地の体積と同量の空気を通気し、30℃に維持した。最小限、飽和状態の30%に設定した溶存酸素の量で、攪拌速度を調節した。発酵中に攪拌速度が最大速度1000rpmに達し、この後、溶存酸素レベルは0〜30%に低下した。
【0061】
下表に、親菌株ATCC31554およびスライム形成性突然変異体菌株X099およびZ473を用いた液内発酵の結果を示す。ポリサッカライドが細胞に付着していないX099およびZ473の突然変異体培養では、ブロスの粘度上昇およびIPA沈澱物の重量増加によってわかる通り、生産性が上昇する。培養ブロスの体積と同量(1倍量)のイソプロピルアルコールのみでポリサッカライドが沈澱したのに対して、野生型親菌株ATCC31554では2倍量であった。低速遠心分離(約5000×G)により、菌株X099およびZ473の細胞をポリサッカライドから除去することができるが、ATCC31554野生型親菌株ではできなかった。
【0062】
【表3】
Figure 0004316826
【0063】
実施例IV
発酵により培養したとき、ポリサッカライドS−7は、突然変異体菌株X031からスライム状で産生され、ATCC21423によりカプセル状で産生された。菌株X031は、ATCC21423菌株に由来する自然突然変異体である。増殖培地は(水1リットル当たり)、硝酸アンモニウム1g、可溶性大豆タンパク質水解物(MarcorのSoy Peptone)0.5g、リン酸水素カリウム3.2g、リン酸二水素カリウム1.6g、硫酸マグネシウム(七水化物)0.2g、微量ミネラル類およびグルコースを含んでいた。微量ミネラルは(最終培地1リットル当たり)、FeCl3−6H2O 2.7mg、ZnCl21.36mg、MnCl2−4H2O 1.98mg、CoCl2−6H2O 240μg、Na2MoO4−2H2O 240μg、およびCuSO4−5H2O 250μgを含んでいた。最終的な発酵培地は、リットル当たり30gのグルコースを含み、前培養培地はリットル当たり20gのグルコースを含んでいた。
【0064】
1バイアルの凍結細胞を解凍し、バッフル付フラスコ内の前培養500mlに加え、回転シェーカー上で30℃にて約16〜20時間、または600nmにおける吸光度で測定した細胞密度が約3〜5になるまでインキュベートした。凍結細胞は、同じ培地を含む寒天プレート上で増殖させた細菌菌株のコロニー1個を接種しておいた、事前前培養フラスコから採取したサンプルであった。
【0065】
約5〜10容量%の接種を行うために、かなりの量の前培養を発酵槽に加えた。発酵槽は、New BrunswickモデルIIIであり、培地4リットルが入っていた。この発酵槽に、発酵培地の体積と同量の空気を通気し、30℃に維持した。最小限、飽和状態の30%に設定した溶存酸素の量で、攪拌速度を調節した。発酵中に攪拌速度が最大速度1000rpmに達し、この後、溶存酸素レベルは0〜30%に低下した。
【0066】
下表に、親菌株ATCC21423およびスライム形成性突然変異体菌株X031を用いた液内発酵の結果を示す。ポリサッカライドが細胞に付着していないX031の場合、粘度が低下した結果として、混合および通気が十分になり、消費エネルギーが低くなる。低速遠心分離(約5000×G)により、菌株X031の細胞をポリサッカライドから除去することができたが、ATCC21423野生型親菌株ではできなかった。野生型菌株ATCC21423の細胞は、高温(約90〜121℃)および5〜7の酸性範囲のpHで、ポリサッカライドを部分的に加水分解した後、低速遠心分離によってようやく除去された。ポリマー内の位置にてポリサッカライド鎖を分断することにより、細胞とポリサッカライド部分は非連続となる。
【0067】
【表4】
Figure 0004316826
【0068】
実施例V
実施例Iの場合と同様に、液内通気液体発酵によってスフィンゴモナス突然変異体菌株X287およびその親菌株ATCC31461を培養した。下表に、発酵持続期間中の粘度および溶存酸素のの変化の時間経過を示す。
【0069】
【表5】
Figure 0004316826
【0070】
前述の本発明の詳細な説明を熟考すると、本発明を実行する際の多数の修飾および変更が、当業者の心に浮かぶことが予期される。従って、このような修飾および変更は、上述の特許請求の範囲内に含まれるものとする。
【0071】
【表6】
Figure 0004316826

Claims (10)

  1. スフィンガンエキソポリサッカライドを提供するのに効果的な時間および温度で、ATCC PTA−3487、ATCC PTA−3486、ATCC PTA−3485、ATCC PTA−3488およびそれらの混合物からなる群から選択されたスフィンゴモナス細菌を発酵ブロスで培養するステップと、
    スフィンガンエキソポリサッカライドを発酵ブロスから回収するステップと
    を含む、スフィンガンエキソポリサッカライドを製造する方法。
  2. 前記スフィンガンエキソポリサッカライドがスライム状である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記スフィンガンエキソポリサッカライドがアルコール沈澱によって回収される、請求項1に記載の方法。
  4. 前記アルコール沈殿が、エタノール、イソプロピルアルコール、プロパノール、ブタノールおよびそれらの混合物を用いて行われる、請求項3に記載の方法。
  5. 発酵ブロス1リットル当たり少なくとも10gのスフィンガンエキソポリサッカライドを提供するのに有効である、請求項1に記載の方法。
  6. ATCC PTA−3487、ATCC PTA−3486、ATC PTA−3485、ATCC PTA−3488およびそれらの混合物からなる群から選択されたスフィンゴモナス細菌を培養して得られるスフィンガンエキソポリサッカライドを含む発酵ブロス。
  7. 前記スフィンガンエキソポリサッカライドがスライム状である、請求項6に記載の発酵ブロス。
  8. 発酵ブロス1リットル当たり10〜20gのスフィンガンエキソポリサッカライドを含み、前記スフィンガンエキソポリサッカライドがスライム状である、請求項6に記載の発酵ブロス。
  9. 15,000〜30,000cpの粘度を有する、請求項6に記載の発酵ブロス。
  10. ATCC PTA−3487、ATCC PTA−3486、ATCC PTA−3485、ATCC PTA−3488およびそれらの混合物からなる群から選択されたスフィンゴモナス細菌。
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