JP2002176996A - 細菌細胞の表面に付着していないエキソポリサッカライドの産生 - Google Patents

細菌細胞の表面に付着していないエキソポリサッカライドの産生

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JP2002176996A JP2001222518A JP2001222518A JP2002176996A JP 2002176996 A JP2002176996 A JP 2002176996A JP 2001222518 A JP2001222518 A JP 2001222518A JP 2001222518 A JP2001222518 A JP 2001222518A JP 2002176996 A JP2002176996 A JP 2002176996A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 エキソポリサッカライドの産生およびエキソ
ポリサッカライドを産生するための細菌を提供すること
に関し、さらに詳細には、細菌細胞の表面に付着してい
ないスライム状のエキソポリサッカライドを産生する細
菌を提供する。 【解決手段】 本発明は、スライム状のスフィンガンエ
キソポリサッカライドを提供するのに効果的な時間およ
び温度にて、スフィンゴモナス細菌を発酵ブロスで培養
することによりエキソポリサッカライドを製造するスフ
ィンゴモナス細菌および方法に関する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エキソポリサッカ
ライドの産生およびエキソポリサッカライドを産生する
ための細菌に関する。さらに詳細には、本発明の細菌
は、細菌細胞の表面に付着していないスライム状のエキ
ソポリサッカライドを産生する。
【0002】
【従来の技術】安価で且つ環境に許容できる増粘剤、生
体乳化剤および生分解性ポリマーの需要がかつてなく高
まっている。エキソポリサッカライドは、独特の流動学
的特性を有するため、これらの目的に有用な化合物の一
例である。たとえば、ジェラン(gellan)、ウェ
ラン(welan)、およびラムザン(rhamsa
n)等のエキソポリサッカライドが、食品、化粧品、お
よび油田における用途、および他の用途向けに、工業用
に製造されている。各エキソポリサッカライドは、剪断
抵抗、様々なイオン性化合物との相溶性、および極端な
温度、pHおよび塩濃度に対する安定性を含む、異なる
特徴的な一連の水性流動学的特性を示す。
【0003】エキソポリサッカライドは、細菌発酵によ
り産生することができる。幾つかの例を挙げると、ジェ
ラン、ウェラン、ラムザン、S−88、S−7、S−1
98、NW11、およびS−657を含むエキソポリサ
ッカライドを、スフィンゴモナス(Sphingomo
nas)属の異なる菌株が産生する(Pollock1
993,J.Gen.Microbiol.139:1
939−1945)。スフィンゴモナス細菌の他の菌株
によって、多くの他のエキソポリサッカライドを作るこ
とができる。スフィンゴモナス細菌により産生されるエ
キソポリサッカライドは、ソースとしての共通の属に関
連して、「スフィンガン(sphingan)」と呼ば
れる。大規模液内発酵により、少なくとも3つのスフィ
ンガン(ジェラン、ウェラン、およびラムザン)が工業
用に製造される。
【0004】バイオテクノロジー業界は、工業的使用基
準に合った様々な細菌のエキソポリサッカライド生成物
の利用性を高めることにより、エキソポリサッカライド
化合物の需要に応えてきた。細菌性エキソポリサッカラ
イド生成物の多くは、合成により製造された物質にまさ
る広範囲の魅力的な改良点を提供するが、製造するのに
比較的費用がかかるままである。費用は、一般に所望の
生成物の回収費用および精製費用と関連がある。
【0005】細菌の菌株改良および変更、ならびに細菌
の生合成および発酵条件の最適化をよりよく理解した結
果として、エキソポリサッカライドのより高い発酵収量
が得られる。これにより、十分な量の工業的用途向けの
ポリマーを回収する場合における重要なステップの1つ
が満たされる。しかし、発酵工程でエキソポリサッカラ
イド濃度が上昇すると、酸素および栄養分を発酵ブロス
中に効果的に分散させるのにより高いエネルギー入力を
必要とする粘度の上昇を招く。従って、エキソポリサッ
カライド収量が高い発酵は、相応して生産コストが高く
なる。
【0006】エキソポリサッカライドの回収は、難しく
且つ高価なステップのままである。スフィンゴモナス属
由来の細菌株は、細胞表面に付着したままであるエキソ
ポリサッカライドを産生する(Pollock et
al.1999,J.Indust.Microcio
l.Biotechnol.23:436−411)。
付着したポリマーは、細菌を囲むようにカップセルを形
成する。ポリサッカライドのカプセルは、細菌から容易
に分離されない。発酵ブロスを十分な水で希釈して粘度
を低下させた後でさえ、このカプセルは細菌細胞に付着
したままであり、遠心沈降分離で細胞をカプセルと分離
させることはできない。細胞をカプセルと分離させるに
は、他の物理的方法または化学的方法が必要である。細
胞への付着点付近のポリマー鎖をランダムに分断するこ
とにより、ポリサッカライドの大部分を細胞から放出さ
せるために、たとえば、酸によるポリサッカライドの部
分的加水分解を使用することができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】エキソポリサッカライ
ドの産生に使用される条件と関係なく、エキソポリサッ
カライドの回収は、一般に、沈澱ステップを含む。次い
で、沈澱したエキソポリサッカライドを遠心分離により
回収する。ジェランガムおよびウェランガムを回収する
一般的な方法は次の方法である。発酵後直ちに、培養ブ
ロスを少なくとも90℃に加熱して、生存細菌を死滅さ
せる。次いで、約2倍量のイソプロピールアルコールで
沈澱させることにより、両ガムを培養ブロスから分離さ
せる。沈澱したポリサッカライド繊維を収集し、圧縮
し、乾燥して粉砕機にかける。蒸留によりアルコールを
回収する。この最も簡単な方法では、ポリサッカライド
は細胞に付着したままであるため、乾燥して粉砕機にか
けたポリサッカライドを水に再懸濁するとき、その溶液
は透明ではない。ジェランガムの場合、さらなるステッ
プを導入して細菌細胞からポリサッカライドを精製する
ことができるため、再懸濁した生成物はより透明であ
る。アルコール沈澱の前に、培養ブロスを遠心分離また
は濾過またはその両者を実施するが、その間、高粘性状
態と、容易に遠心分離または濾過できる液化状態との間
の臨界転移温度より高温に温度を維持する。これらの方
法は、米国特許第4,326,052号(ジェラン)、
第4,326,053号(ジェラン)、第4,342,
866号(ウェラン)、第3,960,832号(S−
7)、および第4,535,153号(S−88)(こ
れらは、参照することにより本明細書に組み込まれるも
のとする)に開示されている。
【0008】一般的な生成物回収プロトコールと関連し
た主要な非能率的な点は、エキソポリサッカライドの回
収が不完全な点である。細菌のエキソポリサッカライド
は、様々な程度の粘り強さで、産生細胞に付着してい
る。エキソポリサッカライドを比較的しっかり結び付け
た細菌は、エキソポリサッカライドを培地中に放出する
公算が低く、従って、沈澱ステップで回収に利用できる
エキソポリサッカライドの量が減少し、エキソポリサッ
カライドを産生細胞から分離するのに必要な工程ステッ
プが増加する。
【0009】本発明の利点、特色および特徴は、以下の
説明および上述の特許請求の範囲について熟考すると、
より明白になるであろう。
【0010】
【課題を解決するための手段】発明の概要 本発明はスフィンガンエキソポリサッカライドの製造方
法およびスフィンガンエキソポリサッカライドを産生す
るスフィンゴモナス細菌に関する。本発明は、スフィン
ガンエキソポリサッカライドがの表面に付着していない
スライム状のスフィンガンエキソポリサッカライドが産
生される方法を提供する。スライム状のスフィンガンエ
キソポリサッカライドが産生されると、カプセル状のエ
キソポリサッカライドが細菌細胞に付着したままである
発酵と比較して少ないエネルギーですむ。さらに、スラ
イム状で産生されるスフィンガンエキソポリサッカライ
ドの分離および回収は、カプセル状で産生されるスフィ
ンガンエキソポリサッカライドの回収と比較して、能率
的である。
【0011】1つの態様において、本発明は、スライム
状のスフィンガンエキソポリサッカライドを提供するの
に効果的な時間および温度で、スフィンゴモナス細菌を
発酵ブロス中で培養することを含む、スフィンガンエキ
ソポリサッカライドを製造する方法を提供する。本発明
の重要な態様において、スライム状のスフィンガンエキ
ソポリサッカライドを産生するように遺伝学的に突然変
異させたスフィンゴモナス細菌を液内発酵で使用する。
遺伝学的に突然変異したスフィンゴモナス細菌の例とし
ては、ATCC PTA−3487(菌株X287)、
ATCC PTA−3486(菌株X530)、ATC
C PTA−3485(菌株Z473)、ATCC P
TA−3488(菌株X031)およびそれらの混合物
が挙げられる。
【0012】本発明の遺伝学的に突然変異したスフィン
ゴモナス細菌を発酵することにより、スライム状のエキ
ソポリサッカライドを含む発酵ブロスが得られる。発酵
ブロスの粘度は、産生されるスフィンガンエキソポリサ
ッカライドの量に左右され、次には発酵中にエキソポリ
サッカライドに転換される糖の量に左右される。発酵開
始時の糖濃度または糖のエキソポリサッカライドへの転
換効率のいずれかが上昇すると、ブロスの粘度は相応じ
て上昇する。たとえば、スフィンゴモナス菌株X287
を、約25〜約35℃にて約48〜96時間発酵する
と、スライム状でジェランガムが産生される。結果とし
て得られる発酵ブロスは約15,000〜約30,00
0cp、好ましくは約15,000〜約20,000c
pの粘度、および総バイオマスとして約20〜約25g
/Lを有する。一般に、このバイオマスの半分から4分
の3は、エキソポリサッカライドそのものである。
【0013】本発明のこの態様において、本発明の遺伝
学的に突然変異したスフィンゴモナス細菌の発酵により
生じる発酵ブロスは、約20,000cps未満の粘度
を有し、対応する親菌株の発酵により生じる発酵ブロス
は、約40,000cpより高い粘度を有する。スライ
ム状のエキソポリサッカライドにより実現される低い粘
度によって、混合および通気がより能率的になり、エネ
ルギー消費が低くなる。
【0014】発酵中の混合、通気およびエネルギー消費
は、発酵容器の大きさおよび形状、発酵容器回転翼のタ
イプ、大きさおよび質、ならびに培養粘度によって左右
される。たとえば、同じ発酵装置および運転条件を用い
て、野生型親菌株を定常期(スフィンゴモナス細菌の場
合、600nmにて約15を超える吸光度を示す)まで
増殖させることができる。容器内の酸素センサーで測定
するとき、定常期には、発酵ブロスには検出可能な酸素
がない。対比すると、本発明の遺伝学的に突然変異させ
て定常期まで増殖させた細菌の発酵ブロスは、水の飽和
状態の少なくとも約5%という溶存酸素レベルを有す
る。さらに、本発明の遺伝学的に突然変異した細菌を用
いた発酵の全期間にわたって、酸素をポジティブなレベ
ルに維持すると、エキソポリサッカライドの産生率が高
くなる。
【0015】低粘性スライム状のエキソポリサッカライ
ドを産生する利点のもう1つの例は、外来性の酸または
塩基を加えることにより、容器内のpHを調節できるこ
とである。親菌株を用いた発酵の場合のように、粘度が
約20,000cpを超えるとき、酸または塩基を急速
に混合して均質な溶液を作ることは不可能である。代わ
りに、酸または塩基の高濃度領域が生じる。濃酸または
濃塩基は、それぞれ、ポリサッカライドを加水分解する
か、ポリサッカライドからアシル基を切断することがで
きる。発酵の全期間にわたってpHを能率的にコントロ
ールすることにより、生産性を高めることもできる。
【0016】重要な態様において、本発明は、スフィン
ガンエキソポリサッカライドがカプセル状で産生される
発酵ブロスと比較して、改良されたスフィンガンエキソ
ポリサッカライドの下流部門回収および処理を招来する
のに有効である。本発明のこの態様において、スフィン
ガンエキソポリサッカライドは一般にアルコール沈澱に
より回収される。アルコール沈澱に必要な量を、発酵ブ
ロスの体積の約2倍量から、約1〜1.5倍量に減少さ
せることが可能である。さらに、有効な沈澱温度を約9
0℃から約25℃〜約50℃に下げることが可能であ
る。
【0017】発酵後且つアルコール沈澱前に、さらなる
処理ステップによって、エキソポリサッカライドを含む
発酵ブロスを処理することが可能である。たとえば、細
菌細胞を死滅させるために、ブロス温度を、80℃より
高温に少なくとも15分間、上昇させてもよい。加熱し
たブロスにアルカリを加えて約9以上のpHを実現する
ことにより、ポリサッカライドからアシル基を除去する
ことが可能である。ジェランガムの特例において、これ
らの2つのステップは、濾過または遠心沈降分離のいず
れか、または2法の併用等の物理的方法によって、細菌
細胞をポリサッカライドから分離できるほど十分に、発
酵ブロスの粘度を低下させる。しかし、ジェランガムが
カプセル状で産生されるとき、発酵ブロスが80℃より
高温に維持されている間に分離ステップを遂行しなけれ
ばならない。80℃より低温では、培養ブロス中のジェ
ランガムは、培地中の二価陽イオンによって架橋された
ジェラン鎖を有する堅いゲルに凝固する。ジェランガム
がゲルを形成すると、ジェランを沈澱で回収することが
できなくなり、ゲル化した物質を廃棄しなければならな
い。対照すると、エキソポリサッカライドがスライム状
であるとき、粘度は低下しており、ゲル形成を防止する
のに必要な温度は低い。本発明のこの態様において、細
胞分離ステップ中の温度を約60℃まで低下させること
ができる。
【0018】本発明のこの態様に従えば、本方法は、ブ
ロス1リットル当たり約10〜約20gのエキソポリサ
ッカライドを生成することができる。純度は、一般に少
なくとも約80%を超える。
【0019】詳細な説明定義 別に規定がなければ、本明細書で使用する全ての専門用
語および科学用語は、本発明が属する技術分野における
普通の熟練者より一般的に理解されるものと同じ意味を
有する。Singleton et al.(199
4)Dictionary of Microbiol
ogy and Molecular Biolog
y,second edition,John Wil
ey andSons(New York)は、本発明
で使用される用語の多くの汎用辞書を熟練者に提供して
いる。本明細書に関連した全ての特許および出版物は、
参照することにより本明細書に組み込まれる。本発明の
ために、以下に、下記の用語を定義する。
【0020】本明細書で使用する用語「スフィンガン」
および「スフィンガンエキソポリサッカライド」は、ス
フィンゴモナス属のメンバーにより分泌される、関連が
あるがそれぞれ異なるエキソポリサッカライド群を指す
(Pollock,J.Gen.Microbiolo
gy 139:1939−1945,1993)。スフ
ィンガンの構造は、全て多少関連がある。各スフィンガ
ンの主鎖は、D−グルコース、D−グルクロン酸、L−
マンノースおよびL−ラムノースの4糖の関連した配列
からなる。スフィンガン群のポリサッカライドメンバー
は、ポリマー主鎖および側鎖を含む炭水化物によって互
いに区別できる。スフィンガンポリサッカライドは、炭
水化物側鎖、および炭水化物のポリマー主鎖に結合した
アセチル基およびピルビル基を含んでもよい。Miko
lajczak,et al.,Appl.and E
nv.Microbiol.,60:402,(199
4)参照。ジェラン、ウェラン、ラムザン、S−88、
S−7、NW−11、S−198およびS−657は、
スフィンガン群のエキソポリサッカライドの例である。
【0021】一般に、スフィンガンエキソポリサッカラ
イドファミリーのメンバーは、次の一般的な反復化学構
【化4】 (式中、Glcはグルコースであり、GlcAはグルク
ロン酸または2−デオキシ−グルクロン酸であり、Rh
aはラムノースであり、Manはマンノースであり、X
はRhaであってもManであってもよく、ZはGlc
残基2に結合しており、且つα−L−Rha−(1−
4)−α−L−Rha、α−L−Manまたはα−L−
Rhaであってもよく、WはGlc残基1に結合してお
り、且つβ−D−Glc−(1−6)−α−D−Gl
c、β−D−Glc−(1−6)−β−D−Glcまた
はα−L−Rhaであってもよく、下付き文字vおよび
yは、0、0.33、0.5、0.67または1であっ
てもよく、ポリマーの「還元末端」は、主鎖のX残基の
方に向いている)で表すことができる。本明細書で使用
する用語「主鎖(backboneまたはmain c
hain)」は、鎖Wおよび鎖Zを除く構造の部分を指
す、すなわち、vおよびyが0に等しいときである。
【0022】スフィンガンポリサッカライドファミリー
の幾つかのメンバーは、様々な位置でアセチル化されて
いる。しかし、ポリサッカライドを従来の方法で化学的
脱アシル化してアシル基を除去することが可能である。
たとえば、ジェランは、ウェランと同じ炭水化物主鎖を
有する(すなわち、X=Rha)が、側鎖糖が欠如して
おり(すなわち、V=0且つy=0)且つグルコース残
基1はグリセレートで完全に置換されている。ジェラン
サブユニット構造は、やはりグルコース残基1にて部分
的にアセチル化されている。本明細書で使用する「脱ア
シル化」は、グリセリル基およびアセチル基が欠如して
いることを意味する。
【0023】上記の通り、スフィンガンエキソポリサッ
カライドの一例はジェランガムである。「ジェランガ
ム」は、炭水化物反復構造−[(L)ラムノース−
(D)グルコース−(D)グルクロン酸−(d)グルコ
ース]−を有し、グリセリル基およびアセチル基が、ラ
ムノースの還元側に隣接したグルコース残基に結合した
ポリサッカライドを意味する。標準方法では、オリゴサ
ッカライドの還元末端を右に配置する。ジェランガム
は、平均して、反復単位当たり約1個のグリセリル基お
よび反復単位2個当たり約1個のアセチル基を有する。
【0024】本明細書にさらに説明する通り、スフィン
ゴモナスの親菌株はスフィンガンエキソポリサッカライ
ドをカプセル状で産生する。本明細書で使用する「カプ
セル」は、産生細菌細胞の表面に付着し、水性希釈後で
も付着したままであり、且つ付着した細胞から沈降分離
または遠心分離で分離することができない、ポリサッカ
ライドを意味する。
【0025】本明細書で使用する用語「スフィンゴモナ
ス」は、上述のような、エキソポリサッカライドすなわ
ちスフィンガンを産生するスフィンゴモナス属由来のグ
ラム陰性菌の菌株を指す。1993年、グラム陰性菌の
スフィンガン産生ファミリーが、スフィンゴモナス属に
属するとして最初に同定された(Pollock,J.
Gen.Microb.,139,1939(199
3)参照)。
【0026】本発明で有用なスフィンゴモナス細菌とし
ては、遺伝学的に突然変異するか突然変異誘発を受け
た、親菌株由来のスフィンゴモナス細菌などがある。
【0027】本明細書で使用する「親菌株」は、親菌株
の遺伝的内容または表現型を修飾することを意図する、
突然変異誘発等の処理前の細菌菌株または個々の細菌を
意味する。これは、親菌株と、親菌株または親細菌から
得られる突然変異した、または遺伝学的に修飾された誘
導菌株とを明らかに区別することを意味する。
【0028】本明細書で使用する「遺伝学的に突然変異
した」は、自然に突然変異し、または突然変異が誘導さ
れたものの何れかであり、突然変異した細菌または細菌
菌株と親菌株とを区別する特性を示すという特質を意味
する。
【0029】本明細書で使用する「突然変異誘発」は、
化学薬品、電磁放射、生物学的作用物質、たとえばウイ
ルス、プラスミド、挿入エレメントまたはトランスポゾ
ン等を含むが、それらに限定されない、DNAにおける
遺伝子の突然変異形成を誘導することがよく知られてい
る作用物質で細菌細胞を処理することを意味する。
【0030】本発明のスフィンゴモナス細菌は、スライ
ム状のエキソポリサッカライドを産生する。本明細書で
使用する「スライム」は、産生細菌細胞に付着しておら
ず、且つ発酵ブロスの、またはブロスの水性希釈後の、
沈降分離または遠心分離によって、且つ熱処理、または
ブロスの他の物理的処理または化学的処理なしで、細胞
から実質的に分離することができるポリサッカライドを
意味する。光学顕微鏡で観察することによって、スライ
ム状のエキソポリサッカライドを産生する細菌と、カプ
セルのポリサッカライドを産生する細菌とを区別するこ
とができる。カプセルで包まれたスフィンゴモナス細菌
は、細胞の表面に付着したポリサッカライド鎖によって
結合された多細胞凝集体を形成し、細菌細胞を凝集体状
に結合させるカプセルを全くもたない一様に分散された
スライムを形成する細菌細胞と対照的である。
【0031】本明細書で使用する用語「生合成」は、生
物学的産生すなわちスフィンゴモナス細菌によるスフィ
ンガンの合成を表す。スフィンガンエキソポリサッカラ
イドは、細菌の多数の酵素によって調節される一連のス
テップで、個々の炭水化物単位から合成される。
【0032】用語「バイオマス」は、細菌培養中の、エ
キソポリサッカライドと細菌細胞を加えたものを指す。
【0033】菌株開発 本発明は、スライム状のスフィンガンエキソポリサッカ
ライドを合成して分泌するように遺伝学的に突然変異さ
せたスフィンゴモナス細菌を使用する。本発明のこの態
様において、スフィンガンエキソポリサッカライドをカ
プセル状で産生する親スフィンゴモナス菌株を、遺伝学
的に突然変異したスフィンゴモナス細菌を提供するため
の手順に供した。使用した親菌株の例の中には、S60
(ATCC 31461)、S130(ATCC 31
555)、S88(ATCC 31554)およびS7
(ATCC 53159)が含まれていた。本発明で有
用な、遺伝学的に突然変異したスフィンゴモナス細菌の
例としては、スライム状のジェランガムを産生するAT
CC PTA−3487(菌株X287)、スライム状
のウェランガムを産生するATCC PTA−3486
(菌株X530)、スライム状のエキソポリサッカライ
ドS−88を産生するATCC PTA−3485(菌
株Z473)、スライム状のエキソポリサッカライドS
−7を産生するATCC PTA−3488(菌株X0
31)などがある。
【0034】発酵 本発明のもう1つの態様は、スフィンガンエキソポリサ
ッカライドの増強された産生である。スフィンガンエキ
ソポリサッカライドを産生させるためには、当技術分野
で周知であり且つ米国特許第5,854,034号(参
照することにより本明細書に組み込まれるものとする)
に一般的に記載されている適当な発酵条件で、遺伝学的
に突然変異したスフィンゴモナス細菌を培養する。要約
すると、遺伝学的に突然変異したスフィンゴモナス細菌
を培養するのに適した培地は、たとえば、グルコース、
ラクトース、スクロース、マルトースまたはマルトデキ
ストリンを含む炭水化物等の炭素源、たとえば、無機ア
ンモニウム、無機硝酸塩、有機アミノ酸またはタンパク
質物質、たとえば、加水分解した酵母、大豆粉またはカ
ゼイン酒造業者の可溶性物質またはコーンスティープリ
カー等の窒素源、無機塩類およびビタミン類を含む。多
種多様な発酵培地が、本発明によるスフィンガンの産生
を支える。
【0035】炭水化物は様々な量で発酵ブロス中に含ま
れるが、通常は発酵培地の1〜5重量%である。この炭
水化物は、発酵前に、あるいは、発酵中に、一度に全部
加えてもよい。窒素の量は、水性培地の約0.01〜
0.2重量%の範囲であってもよい。1つの炭素源また
は窒素源を使用してもよく、これらのソースの混合物を
使用してもよい。
【0036】無機塩類の中で、スフィンゴモナス細菌の
発酵に使用されるものは、ナトリウム、カリウム、アン
モニウム、硝酸塩、カルシム、リン酸塩、硫酸塩、塩化
物、炭酸塩および類似のイオン類を含む塩類である。マ
グネシウム、マンガン、コバルト、鉄、亜鉛、銅、モリ
ブデン、ヨウ化物およびホウ酸塩等の微量金属も都合よ
く含まれる。ビオチン、葉酸、リポエート、ニコチンア
ミド、パントテン酸、ピリドキシン、リボフラビン、チ
アミンおよびビタミンB12などのビタミン類およびそれ
らの混合物も都合よく使用することができる。
【0037】約25℃〜35℃の温度で発酵を実施する
が、約28℃〜32度の温度範囲内で最適生産性が得ら
れる。接種材料は、振盪フラスコ培養および小規模液内
攪拌培養を含む、標準増量法によって調製する。接種材
料調製用の培地は、生産培地と同じであってもよく、L
uriaブロスまたはYM培地等の、当技術分野で周知
の幾つかの標準培地の1つであってもよい。シード培地
中の炭水化物濃度は、約1重量%未満まで下げることが
できる。2つ以上のシード期を使用して、接種に望まし
い量を得ることが可能である。一般的な接種量は、最終
的な総発酵体積の約0.5%〜約10%の範囲である。
【0038】発酵容器は、一般に、内容を攪拌するため
の攪拌器を含む。この容器は、自動pH制御装置および
泡沫制御装置も具有してもよい。生産培地を容器に加
え、原位置で加熱滅菌する。あるいは、炭水化物または
炭素源を別個に滅菌してから加える。予め成長させたシ
ード培養を、冷却した(一般に、約28℃〜32℃の発
酵温度の)培地に加え、攪拌した培地を約48〜約96
時間発酵させて、約15,000〜約20,000cp
の粘度および約10〜15g/Lのスライム状スフィン
ガンエキソポリサッカライドを有するブロスを生じさせ
る。対応する親スフィンゴモナス細菌の発酵によって、
一般に、約25,000〜約50,000cpの粘度を
有するブロスが生じる。
【0039】この態様において、本発明は、液内攪拌通
気培養で増殖させたスフィンゴモナス細菌から得られる
スライム状エキソポリサッカライドを提供する。24時
間の培養後、液体培地中の溶存酸素濃度は、水の飽和状
態の約5%を超える。親菌株を用いた同様の発酵では、
24時間後の溶存酸素は0%であった。スライム状のエ
キソポリサッカライドにより低粘度が実現し、その結果
として通気が改良され、スフィンゴモナス細菌はより長
期間にわたって培地中で生産力を有することが可能であ
る。
【0040】本発明のもう1つの態様において、1つの
発酵からの細菌を液内発酵用接種材料として使用する半
回分式で発酵を実施することが可能である。この態様に
おいて、スフィンゴモナス細菌が産生したエキソポリサ
ッカライドから分離されたスフィンゴモナス細菌を新鮮
な発酵ブロスに加えてもよく、新鮮な発酵ブロスを残っ
たスフィンゴモナス細菌に加えてもよい。従って、本発
明のこの態様により、別個のシード培養を提供する必要
がなくなる。
【0041】発酵ブロスの処理 幾つかのアプローチを使用して、エキソポリサッカライ
ドを回収するために発酵ブロスをさらに処理することが
可能である。たとえば、エキソポリサッカライドを発酵
ブロスから直接沈澱させてもよく、発酵ブロスを先ず清
澄にし、次いで沈澱させてもよく、発酵ブロスを脱アシ
ル化した後沈澱させてもよく、あるいは発酵ブロスを脱
アシル化した後清澄にし、沈澱させてもよい。
【0042】本発明の1つの態様において、少なくとも
約1%w/v量のエキソポリサッカライドおよび約2
5,000cp以下の粘度を有する発酵ブロスを、エキ
ソポリサッカライド回収のためにさらに処理する。本発
明のこの態様において、約25℃〜約50℃の温度の発
酵ブロスに、約1〜約1.5倍量のアルコールを直接加
える。あるいは、米国特許第4,326,052号(参
照することにより本明細書に組み込まれるものとする)
に記載の通り、発酵ブロスを先ず脱アシル化し、次いで
清澄にしてからアルコールを加えてもよい。エキソポリ
サッカライドの沈澱に有効なアルコールとしては、エタ
ノール、イソプロピルアルコール、プロパノール、ブタ
ノールおよびそれらの混合物などがある。沈澱は、使用
する混合装置のタイプに応じて、回分式であってもよ
く、半回分式または連続式であってもよい。混合が高粘
度によって妨害される場合、水で希釈してからアルコー
ルを加える。
【0043】発酵後、沈降分離または濾過で、エキソポ
リサッカライドを細胞片から分離する。沈降分離は遠心
分離によって行ってもよい。本発明のこの態様におい
て、沈澱後、均質なエキソポリサッカライド粉末を与え
るために、回収、圧縮、乾燥および粉砕のための、当技
術分野で周知の幾つかの方法のいずれを使用してもよ
い。
【0044】本発明のこの態様によれば、この方法で約
1〜約2%(w/v、初めのブロス体積を基準にして)
のエキソポリサッカライドが生じる。純度は、一般に、
少なくとも80%を超える。
【0045】以下の実施例で本発明を実施するための方
法を説明するが、添付のクレームで規定される本発明の
範囲を、例を挙げて説明するものであって、制限するも
のではないと理解すべきである。
【0046】
【発明の実施の形態】実施例実施例I 通気攪拌液内発酵により、野生型菌株ATCC3146
1に由来するスフィンゴモナス突然変異体菌株X28
7、およびATCC31461親菌株から、ジェランガ
ムが産生された。突然変異誘発および好ましい特性の選
択という再現性のある多段方式で、菌株X287を得
た。
【0047】増殖培地は(脱イオン水1リットル当た
り)、硝酸アンモニウム1g、可溶性大豆タンパク質水
解物(MarcorのSoy Peptone)0.5
g、リン酸水素カリウム3.2g、リン酸二水素カリウ
ム1.6g、硫酸マグネシウム(七水化物)0.1g、
微量ミネラル類およびグルコースを含んでいた。微量ミ
ネラルは(最終培地1リットル当たり)、FeCl3
6H2O 2.7mg、ZnCl2 1.36mg、Mn
Cl2−4H2O 1.98mg、CoCl2−6H 2
240μg、Na2MoO4−2H2O 240μg、お
よびCuSO4−5H2O 250μgを含んでいた。最
終的な発酵培地は、リットル当たり25gのグルコース
を含み、前培養培地はリットル当たり10gのグルコー
スを含んでいた。
【0048】1バイアルの凍結細胞を解凍し、バッフル
付フラスコ内の前培養500mlに加え、回転シェーカ
ー上で30℃にて約16〜20時間、または600nm
における吸光度で測定した細胞密度が約3〜5になるま
でインキュベートした。凍結細胞は、同じ培地を含む寒
天プレート上で増殖させた細菌菌株のコロニー1個を接
種しておいた、事前前培養フラスコから採取したサンプ
ルであった。
【0049】約5〜10容量%の接種を行うために、か
なりの量の前培養を発酵槽に加えた。発酵槽は、New
BrunswickモデルIIIまたはモデル300
0のいずれかであり、培地4リットルが入っていた。こ
の発酵槽に、発酵培地の体積と同量の空気を通気し、3
0℃に維持した。最小限、飽和状態の30%に設定した
溶存酸素の量で、攪拌速度を調節した。発酵中に攪拌速
度が最大速度1000rpmに達し、この後、溶存酸素
レベルは0〜30%に低下した。
【0050】下表に、親菌株ATCC31461および
スライム形成性突然変異体菌株X287を用いた液内発
酵の結果を示す。ポリサッカライドが細胞に付着してい
ないX287突然変異体培養では、粘度が低下した結果
として、混合および通気が十分になり、消費エネルギー
が低くなる。
【0051】
【表1】
【0052】野生型菌株ATCC3146により産生さ
れたジェランガムを沈澱させるためには、アルコール沈
澱による生成物回収中に、2倍量のイソプロピルアルコ
ールが必要である。対照的に、菌株X287によりスラ
イム状で産生されるジェランガムは、同体積量のイソプ
ロピルアルコールのみで、ブロスから沈澱する。さら
に、スライム状のジェランガムは、25〜30℃にてイ
ソプロピルアルコールで沈澱するが、野生型ジェラン
は、アルコールを加える前に加熱ステップを必要とす
る。
【0053】実施例II 野生型親菌株ATCC31555に適用した、突然変異
の誘発または天然に生じる突然変異および好ましい特性
の選択で構成される多段方式によって得られた、菌株X
530およびX319を代表とする、幾つかの突然変異
体菌株のいずれからも、スライム状ウェランガムが産生
された。
【0054】細菌菌株X530を、振盪フラスコ内の
(実施例Iに記載の)液体培地で増殖させた。菌株X5
30は、細胞に付着していない、スライム状の、ウェラ
ンガムを合成した。培養の様相を光学顕微鏡で観察し
た。親野生型菌株は、各細胞に付着したカプセルのポリ
サッカライドによって結合された多細胞凝集体を形成し
たが、菌株X530の細胞は凝集体を形成せず、単細胞
として、培地全体に、自由に一様に分布することができ
た。以下の測定を行い、下表にまとめた。培養粘度(B
rookfield LVTDV−II粘度計用スピン
ドル#4で12rpmにおけるセンチポアズ)、細胞密
度(600nmにおける吸光度)、および25℃にて2
倍量のイソプロピルアルコールで培養ブロスから直接沈
澱させたバイオマスの重量(ポリサッカライドと細胞を
加えたもの)(g/l)。
【0055】
【表2】
【0056】さらに、90℃にて沈澱を実施し、アルコ
ール−ブロス混合物中で沈澱したポリサッカライドの様
相を記録した。2倍量のイソプロピルアルコールを菌株
X530の培養に加えると、25℃または90℃のいず
れでも粘着性の凝塊を形成したが、それにひきかえ、野
生型親菌株では、沈澱したポリサッカライドは25℃に
て分散した断片化凝塊を形成し、90℃にて粘着性凝塊
を形成した。
【0057】実施例III 野生型親菌株ATCC31554に適用した、突然変異
誘発または自然突然変異および好ましい特性の選択で構
成される多段方式によって得られた、菌株X099およ
びZ473を代表とする、幾つかの突然変異体菌株のい
ずれからも、ポリサッカライドS−88がスライム状で
産生された。
【0058】増殖培地は(水1リットル当たり)、硝酸
アンモニウム1g、可溶性大豆タンパク質水解物(Ma
rcorのSoy Peptone)0.5g、リン酸
水素カリウム3.2g、リン酸二水素カリウム1.6
g、硫酸マグネシウム(七水化物)0.2g、微量ミネ
ラル類およびグルコースを含んでいた。微量ミネラルは
(最終培地1リットル当たり)、FeCl3−6H2
2.7mg、ZnCl21.36mg、MnCl2−4H
2O 1.98mg、CoCl2−6H2O 240μ
g、Na2MoO4−2H2O 240μg、およびCu
SO4−5H2O250μgを含んでいた。最終的な発酵
培地は、リットル当たり30gのグルコースを含み、前
培養培地はリットル当たり20gのグルコースを含んで
いた。
【0059】1バイアルの凍結細胞を解凍し、バッフル
付フラスコ内の前培養500mlに加え、回転シェーカ
ー上で30℃にて約16〜20時間、または600nm
における吸光度で測定した細胞密度が約3〜5になるま
でインキュベートした。凍結細胞は、同じ培地を含む寒
天プレート上で増殖させた細菌菌株のコロニー1個を接
種しておいた、事前前培養フラスコから採取したサンプ
ルであった。
【0060】約5〜10容量%の接種を行うために、か
なりの量の前培養を発酵槽に加えた。発酵槽は、New
BrunswickモデルIIIであり、培地4リッ
トルが入っていた。この発酵槽に、発酵培地の体積と同
量の空気を通気し、30℃に維持した。最小限、飽和状
態の30%に設定した溶存酸素の量で、攪拌速度を調節
した。発酵中に攪拌速度が最大速度1000rpmに達
し、この後、溶存酸素レベルは0〜30%に低下した。
【0061】下表に、親菌株ATCC31554および
スライム形成性突然変異体菌株X099およびZ473
を用いた液内発酵の結果を示す。ポリサッカライドが細
胞に付着していないX099およびZ473の突然変異
体培養では、ブロスの粘度上昇およびIPA沈澱物の重
量増加によってわかる通り、生産性が上昇する。培養ブ
ロスの体積と同量(1倍量)のイソプロピルアルコール
のみでポリサッカライドが沈澱したのに対して、野生型
親菌株ATCC31554では2倍量であった。低速遠
心分離(約5000×G)により、菌株X099および
Z473の細胞をポリサッカライドから除去することが
できるが、ATCC31554野生型親菌株ではできな
かった。
【0062】
【表3】
【0063】実施例IV 発酵により培養したとき、ポリサッカライドS−7は、
突然変異体菌株X031からスライム状で産生され、A
TCC21423によりカプセル状で産生された。菌株
X031は、ATCC21423菌株に由来する自然突
然変異体である。増殖培地は(水1リットル当たり)、
硝酸アンモニウム1g、可溶性大豆タンパク質水解物
(MarcorのSoy Peptone)0.5g、
リン酸水素カリウム3.2g、リン酸二水素カリウム
1.6g、硫酸マグネシウム(七水化物)0.2g、微
量ミネラル類およびグルコースを含んでいた。微量ミネ
ラルは(最終培地1リットル当たり)、FeCl3−6
2O 2.7mg、ZnCl21.36mg、MnCl
2−4H2O 1.98mg、CoCl2−6H2O 24
0μg、Na2MoO4−2H2O 240μg、および
CuSO4−5H2O250μgを含んでいた。最終的な
発酵培地は、リットル当たり30gのグルコースを含
み、前培養培地はリットル当たり20gのグルコースを
含んでいた。
【0064】1バイアルの凍結細胞を解凍し、バッフル
付フラスコ内の前培養500mlに加え、回転シェーカ
ー上で30℃にて約16〜20時間、または600nm
における吸光度で測定した細胞密度が約3〜5になるま
でインキュベートした。凍結細胞は、同じ培地を含む寒
天プレート上で増殖させた細菌菌株のコロニー1個を接
種しておいた、事前前培養フラスコから採取したサンプ
ルであった。
【0065】約5〜10容量%の接種を行うために、か
なりの量の前培養を発酵槽に加えた。発酵槽は、New
BrunswickモデルIIIであり、培地4リッ
トルが入っていた。この発酵槽に、発酵培地の体積と同
量の空気を通気し、30℃に維持した。最小限、飽和状
態の30%に設定した溶存酸素の量で、攪拌速度を調節
した。発酵中に攪拌速度が最大速度1000rpmに達
し、この後、溶存酸素レベルは0〜30%に低下した。
【0066】下表に、親菌株ATCC21423および
スライム形成性突然変異体菌株X031を用いた液内発
酵の結果を示す。ポリサッカライドが細胞に付着してい
ないX031の場合、粘度が低下した結果として、混合
および通気が十分になり、消費エネルギーが低くなる。
低速遠心分離(約5000×G)により、菌株X031
の細胞をポリサッカライドから除去することができた
が、ATCC21423野生型親菌株ではできなかっ
た。野生型菌株ATCC21423の細胞は、高温(約
90〜121℃)および5〜7の酸性範囲のpHで、ポ
リサッカライドを部分的に加水分解した後、低速遠心分
離によってようやく除去された。ポリマー内の位置にて
ポリサッカライド鎖を分断することにより、細胞とポリ
サッカライド部分は非連続となる。
【0067】
【表4】
【0068】実施例V 実施例Iの場合と同様に、液内通気液体発酵によってス
フィンゴモナス突然変異体菌株X287およびその親菌
株ATCC31461を培養した。下表に、発酵持続期
間中の粘度および溶存酸素のの変化の時間経過を示す。
【0069】
【表5】
【0070】前述の本発明の詳細な説明を熟考すると、
本発明を実行する際の多数の修飾および変更が、当業者
の心に浮かぶことが予期される。従って、このような修
飾および変更は、上述の特許請求の範囲内に含まれるも
のとする。
【0071】
【表6】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) (C12P 19/04 C12R 1:01) C12R 1:01) C12N 15/00 X (72)発明者 山崎 元秀 アメリカ合衆国カリフォルニア州92122, サン・ディエゴ,ポルテ・デ・メラノ 4165,#152 (72)発明者 マーシャ・ミコライジャック アメリカ合衆国カリフォルニア州92024, サン・ディエゴ,エンシニタス,サンリッ チ 852 (72)発明者 トーマス・ジェイ・ポロック アメリカ合衆国カリフォルニア州92103, サン・ディエゴ,トーランス・ストリート 1614 (72)発明者 リチャード・ダブリュー・アーメントロー ト アメリカ合衆国カリフォルニア州92037, ラ・ホーヤ,ローズモント 542 Fターム(参考) 4B064 AF11 CA02 CC06 CE03 DA10 4B065 AA01X AC14 BA16 CA22 CA41

Claims (22)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 スライム状のスフィンガンエキソポリサ
    ッカライドを提供するのに効果的な時間および温度で、
    スフィンゴモナス細菌を発酵ブロスで培養するステップ
    と、 スフィンガンエキソポリサッカライドを発酵ブロスから
    回収するステップとを含む、エキソポリサッカライドを
    製造する方法。
  2. 【請求項2】 前記スフィンゴモナス細菌が、ATCC
    PTA−3487、ATCC PTA−3486、A
    TCC PTA−3485、ATCC PTA−348
    8およびそれらの混合物からなる群から選択される、請
    求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 発酵が、約25℃〜約35℃の温度で、
    約48〜約96時間実施される、請求項1に記載の方
    法。
  4. 【請求項4】 前記スフィンガンエキソポリサッカライ
    ドがアルコール沈澱によって回収される、請求項1に記
    載の方法。
  5. 【請求項5】 約1〜約1.5倍量のアルコールが発酵
    ブロスに加えられる、請求項1に記載の方法。
  6. 【請求項6】 ATCC PTA−3487、ATCC
    PTA−3486、ATCC PTA−3485、A
    TCC PTA−3488およびそれらの混合物からな
    る群から選択されたスフィンゴモナス細菌を、スライム
    状のスフィンガンエキソポリサッカライドを提供するの
    に効果的な時間および温度で、発酵ブロスで培養するス
    テップと、 アルコール沈澱によってスフィンガンエキソポリサッカ
    ライドを発酵ブロスから回収するステップとを含む、ス
    フィンガンエキソポリサッカライドを製造する方法であ
    って、 発酵ブロス1リットル当たり少なくとも約10gのスフ
    ィンガンエキソポリサッカライドを提供するのに有効で
    あることを特徴とする方法。
  7. 【請求項7】 発酵が、約25℃〜約35℃の温度で約
    48〜約96時間実施される、請求項6に記載の方法。
  8. 【請求項8】 約1〜約1.5倍量のアルコールが発酵
    ブロスに加えられる、請求項6に記載の方法。
  9. 【請求項9】 発酵ブロス1リットル当たり約10〜約
    20gのスフィンガンエキソポリサッカライドを含み、
    前記スフィンガンエキソポリサッカライドがスライム状
    であることを特徴とする発酵ブロス。
  10. 【請求項10】 約15,000〜約30,000cp
    の粘度を有する、請求項9に記載の発酵ブロス。
  11. 【請求項11】 ATCC PTA−3487、ATC
    C PTA−3486、ATCC PTA−3485、
    ATCC PTA−3488およびそれらの混合物から
    なる群から選択されたスフィンゴモナス細菌を、スライ
    ム状のスフィンガンエキソポリサッカライドを提供する
    のに効果的な時間および温度にて、発酵ブロス中で培養
    するステップと、 アルコール沈澱によってスフィンガンエキソポリサッカ
    ライドを発酵ブロスから回収するステップとを含む方法
    によって製造されるエキソポリサッカライドであって、 前記方法が発酵ブロス1リットル当たり少なくとも約1
    0gのスフィンガンエキソポリサッカライドを提供する
    のに効果的な方法であることを特徴とするエキソポリサ
    ッカライド。
  12. 【請求項12】 発酵が、約25℃〜約35℃の温度で
    約48〜約96時間実施される、請求項11に記載のエ
    キソポリサッカライド。
  13. 【請求項13】 約1〜約1.5倍量のアルコールが発
    酵ブロスに加えられる、請求項11に記載のエキソポリ
    サッカライド。
  14. 【請求項14】 ATCC PTA−3487、ATC
    C PTA−3486、ATCC PTA−3485、
    ATCC PTA−3488およびそれらの混合物から
    なる群から選択されたスフィンゴモナスの菌株に由来す
    る細菌。
  15. 【請求項15】 スフィンゴモナス細菌により産生され
    るスライム状のエキソポリサッカライド。
  16. 【請求項16】 ATCC PTA−3487、ATC
    C PTA−3486、ATCC PTA−3485、
    ATCC PTA−3488およびそれらの混合物から
    なる群から選択されたスフィンゴモナスにより産生され
    る、請求項15に記載のスライム状のエキソポリサッカ
    ライド。
  17. 【請求項17】 一般式 【化1】 (式中、Glcはグルコースであり、GlcAはグルク
    ロン酸または2−デオキシグルクロン酸であり、Rha
    はラムノースであり、Manはマンノースであり、Xは
    RhaまたはManであり、ZはGlc残基2に結合し
    ており、且つα−L−Rha−(1−4)−α−L−R
    ha、α−L−Manまたはα−L−Rhaであり、W
    はGlc残基1に結合しており、且つβ−D−Glc−
    (1−6)−α−D−Glc、β−D−Glc−(1−
    6)−β−D−Glcまたはα−L−Rhaであり、下
    付き文字vおよびyは、0、0.33、0.5、0.6
    7または1である)を有するスフィンガンエキソポリサ
    ッカライドである、請求項15に記載のスライム状のエ
    キソポリサッカライド。
  18. 【請求項18】 一般式 【化2】 (式中、Glcはグルコースであり、GlcAはグルク
    ロン酸または2−デオキシグルクロン酸であり、Rha
    はラムノースであり、Manはマンノースであり、Xは
    RhaまたはManであり、ZはGlc残基2に結合し
    ており、且つα−L−Rha−(1−4)−α−L−R
    ha、α−L−Manまたはα−L−Rhaであり、W
    はGlc残基1に結合しており、且つβ−D−Glc−
    (1−6)−α−D−Glc、β−D−Glc−(1−
    6)−β−D−Glcまたはα−L−Rhaであり、下
    付き文字vおよびyは、0、0.33、0.5、0.6
    7または1である)を有する、スライム状のエキソポリ
    サッカライド。
  19. 【請求項19】 ATCC PTA−3487、ATC
    C PTA−3486、ATCC PTA−3485、
    ATCC PTA−3488およびそれらの混合物から
    なる群から選択されたスフィンゴモナスにより産生され
    る、請求項18に記載のスライム状のエキソポリサッカ
    ライド。
  20. 【請求項20】 スフィンゴモナス細菌により産生され
    たスライム状のエキソポリサッカライドであって、前記
    スフィンゴモナス細菌が液内通気液体培養で増殖され、
    24時間の培養後、溶存酸素濃度が水の飽和状態の約5
    %を超えることを特徴とするエキソポリサッカライド。
  21. 【請求項21】 ATCC PTA−3487、ATC
    C PTA−3486、ATCC PTA−3485、
    ATCC PTA−3488およびそれらの混合物から
    なる群から選択されたスフィンゴモナスにより産生され
    る、請求項20に記載のスライム状のエキソポリサッカ
    ライド。
  22. 【請求項22】 一般式 【化3】 (式中、Glcはグルコースであり、GlcAはグルク
    ロン酸または2−デオキシグルクロン酸であり、Rha
    はラムノースであり、Manはマンノースであり、Xは
    RhaまたはManであり、ZはGlc残基2に結合し
    ており、且つα−L−Rha−(1−4)−α−L−R
    ha、α−L−Manまたはα−L−Rhaであり、W
    はGlc残基1に結合しており、且つβ−D−Glc−
    (1−6)−α−D−Glc、β−D−Glc−(1−
    6)−β−D−Glcまたはα−L−Rhaであり、下
    付き文字vおよびyは、0、0.33、0.5、0.6
    7または1である)を有するスフィンガンエキソポリサ
    ッカライドである、請求項21に記載のスライム状のエ
    キソポリサッカライド。
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