JP4314419B2 - 暖房床構造 - Google Patents

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大介 淀野
政広 荒川
修治 向山
義広 永見
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、暖房床構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、床下地上に相互に接する状態に配置せられた複数の床暖房用発熱パネルと、これら発熱パネル上に相互に接する状態に配置せられた複数の木質床材とよりなる暖房床構造は知られている。
【0003】
そして、従来、床下地上に配置せられた発熱パネルに対して木質床材を固定するのには、接着剤または釘類を用いるか、または両者を併用していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記において、接着剤を用いる場合は、木質床材の施工作業中に塗布した接着剤により、手、衣服または接着剤を塗布すべき箇所以外の部分が汚れるおそれがある。また、釘類を用いる場合、固定場所を間違うと発熱部を損傷し、暖房床として使えなくなるという問題があるばかりか、釘類を金槌や電動ドリルで固定するさいに騒音が発生するという問題もある。
【0005】
上記問題を解決するため、両面接着テープを用いる方法が考えられる。ところが、無垢板や合板を基材とする木質床材では、その裏面には細かい凹凸があるため、この面に接着テープを貼っても凹部には接着テープが密着しないので、凹部に空気層が形成せられ、凸部だけで接着した状態となる。したがって、接着面積が見かけの面積よりも小さく、発熱パネルを発熱せしめると、凹部の空気層が膨張して接着テープの接着部分に力が作用し、これを剥離させようとするし、木質床材が乾燥収縮することによりその縁部が浮き上がるおそれもある。また、中比重繊維板やパーティクルボードを基材とする木質床材では、その裏面がきれいであっても、微細な粉体や埃が付着しているので、そこに接着テープを貼っても接着性がよくない。
【0006】
本発明の目的は、接着剤や釘類を使用する場合のような上記問題の生じない両面接着テープを用い、床下地上に配置せられた発熱パネルに対して木質床材を確実に固定しうる暖房床構造を提供するにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、床下地上に相互に接する状態に配置せられた複数の床暖房用発熱パネルと、これら発熱パネル上に相互に接する状態に配置せられた複数の木質床材とよりなる暖房床構造において、各発熱パネルの上面に金属層が設けられるとともに、各木質床材の下面に金属層が設けられ、両者の金属層どうしが各木質床材の全体のうち少なくとも両縁部分において、引剥がし接着力試験における高温(80℃)試験および常温(20℃)試験の接着力がともに10kgf以上の耐熱性を有する両面接着テープを介して接合されており、耐熱性両面接着テープの厚さが0.15〜0.40mmであることを特徴とするものである。
【0008】
上記床下地の具体例としては、コンクリートスラブ、合板、パーティクルボードなどの平面下地、根太組み下地、リフォームにより床暖房を増設する場合には、既に床仕上げ材が敷設された床面をあげることができる。
【0009】
コンクリートスラブの上には、それの不陸を吸収するため、発泡体、不織布、インシュレーションボード・グラスウール・ロックウールなどの有機質あるいは無機質材料などよりなる緩衝材を敷設することもある。
【0010】
リフォームにより暖房床を増設する場合には、既に敷設された床仕上げ材の表面からビス等を打ち込んで床下地材との固定を補強することが望ましい。なぜなら、床下地材が経年変化にて乾燥収縮していると床仕上げ材との間に隙間が生じていることがあり、この上に床暖房を増設すると、その隙間の上方の暖房床部分を歩行すると、暖房床構造材が撓み、不快な踏み鳴り音が発生するからである。
【0011】
仮に、前記隙間が発生していなくても、暖房床を施工することにより、床下地材が乾燥収縮して、前記隙間が発生する恐れがある。したがって、隙間をなくしたり、隙間の発生を予防するために、暖房床を増設する前に、既に敷設された床仕上げ材の表面から、ビス等を打って床下地材に対する固定を確実にしておくことが望ましい。この際、ビス頭は床仕上げ材表面から突出しないようになされる。
【0012】
床暖房用発熱パネルの具体例としては、合板、中比重繊維板、高比重繊維板、パーティクルボード、オリエンテッドストランドボード、ウエハーボードなどを単独または複数種類の組み合わせてなる木質基材に温水パイプ、面状発熱体、発熱線などを組み込んだものをあげることができる。
【0013】
金属層は、アルミニウム、亜鉛メッキ処理鋼、ステンレスなどの箔または薄板のいずれかを発熱パネルの上面に接合することにより得られるが、なかでもアルミニウム箔を用いるのが好ましい。
【0014】
隣接する発熱パネルの端面に、本実接合、相じゃくり接合、相じゃくり実はぎ接合、やとい実接合などを行ないうる加工を施しておくことが好ましい。このような接合をすれば、発熱パネルどうしの間に段差が生じない。
【0015】
また、接合すべき部分に線状、点状に接着剤を塗布して、隣接する発熱パネルどうしを接合すれば、床下地上に設置せられた複数の発熱パネルが一体化するので、乾燥収縮により発熱パネルどうし間に隙間が生じない。発熱パネル自体に若干の反りがある場合には、これを矯正するために、また、床暖房時の熱の影響により反りなどの変形が発生するのを抑制するために、発熱部を損傷することのない箇所に釘、スクリューネイル、ビスなどの釘類を打ち込むことによって、床下地に固定するのが好ましい。
【0016】
木質床材の基材である木材の材料としては、床暖房用発熱パネルの基材と同様のものが使用される。
【0017】
木質床材の基材の上面には化粧が施される。その具体例としては、木質単板、柄模様印刷シートの貼着、柄模様の直接印刷、塗装、またはこれらを複数組み合わせたものをあげることができる。
【0018】
木質床材の基材の下面に裏打ち木質単板または軟質シートを接合するか、これら2種類のものを前者を上に、後者を下にして接合してもよい。この軟質シートは、カッターナイフで容易に切断できかつ木材よりも比重の高い軟質シートであればよく、その具体的材料および比重は、後述の発熱パネルに使用される軟質シートと同様のものであり、その厚さは0.5〜3.0mmの範囲のものが使用されるが、0.7〜2.0mmのものが好ましい。
【0019】
木質床材の下面の金属層の具体例は、発熱パネルの金属層と同様である。その厚さは、カッターナイフで切断できる程度であればよく、7〜200μmの範囲で使用されるが、15〜100μmのものが好ましい。7μm未満では、薄くて弱いため、取り扱いにくく、木質床材下面と接合するさいに破損するおそれがあり、200μmを超えると、ナイフで切断しにくくなる。
【0020】
木質床材の厚さは、カッターナイフで切断できる厚さであればよく、その厚さは2〜5mmであるが、2〜4mmが好ましい。2mm未満であると、この縁部に相じゃくり加工や実加工などを施した場合、その部分の強度が弱く、欠けやすいものとなり、5mmを超えるとナイフ切断が行いにくくなる。また、この厚さであると剛性が小さく、収縮応力も小さいので、床暖房時の発熱による乾燥収縮が生じても木質床材の縁部の浮上がりが両面接着テープの接着により防止されるし、薄いので床暖房時の温度上昇が早くなり、熱効率がよくなる。
【0021】
なお、木質床材の剛性をさらに下げるため、木質基材の下面に長辺または短辺方向と略平行またはその両方向と略平行の複数の溝を形成してもよい。この場合、下面の金属層とともに溝付けがなされてもよいし、金属シートには溝付けしないようにしてもよい。
【0022】
床暖房時、木質床材が乾燥収縮すると木質床材どうし間に隙間が生じるが、隣接木質床材の端面に上記発熱パネルと同様の接続用加工を施しておくと、発熱パネル面が外から見えることがないので望ましい。
【0023】
両面接着テープは、基布の両面に粘着剤が塗布・含浸・付着されているものであり、木質床材の下面全体が発熱パネルに接着されるようにしてもよいが、床暖房時の乾燥収縮によって縁部が浮上がるのを防止するためには、少なくとも木質床材の両縁部分が発熱パネルに接着されるように配置すべきである。さらに、木質床材の両縁部だけが両面接着テープで接着されている場合、床暖房不使用時、木質床材が吸湿により伸びると、接着されていない木質床材の幅の中間部が伸びの影響により浮上がるおそれがあるので、両縁部の中間部も両縁部の両面接着テープと略平行に配した両面接着テープで接着するのがよい。以上のためには、施工前、両面接着テープを予め木質床材の下面に剥離紙付きの状態で貼付けしておくのが有利である。なお、両面接着テープの貼付率は、木質床材の20%以上、好ましくは25%以上、より好ましくは33%以上である。両面接着テープは、木質床材側でなく、施工時に発熱パネルの所要箇所に貼付けてもよいし、予め両面接着テープが所定箇所に貼付けられている発熱パネルを使用してもよい。
【0024】
両面接着テープの厚さは、0.15〜0.40mmのものが用いられ、なかでも0.20〜0.35mmが好ましい。0.15mm未満では、粘着剤の量が少なくて接着性がよくないため、発熱時木質床材の縁部が浮上がるおそれがあり、0.40mmを超えると、両面接着テープの基布が厚くて伸びやすくなるので、発熱時木質床材の縁部が浮上がるおそれがある。
【0025】
両面接着テープは、暖房床構造の一部となるものであるから、耐熱性が必要である。すなわち、高温になっても接着力が低下しない接着テープ、むしろ熱が作用すると、加熱前よりも接着力が高くなるテープが望ましい。そして、後述の引剥がし接着力試験において、高温(80℃)試験の接着力が、常温(20℃)試験の接着力と同等ないしは前者が後者よりも強いことがより望ましいが、ともに10kgf以上を必要とする。10kgf未満であると、床暖房時に木質床材の縁部から剥がれて浮上がるおそれがある。なお、以下の方法で評価してもよい。
【0026】
すなわち、9mm厚さの合板の表面にアルミニウム箔をプレスで接着したものを供試体とし、以下のJISに基づきアルミニウム箔と両面接着テープとの接着性を温度20℃と60℃で評価する。ただし、合板自体の接着および合板のアルミニウム箔との接着は、JAS煮沸繰り返し試験に合格したものである。
【0027】
イ.JIS A5905繊維板の「はく離強さ試験方法」に準じた方法
所定寸法の上記供試体2枚の間に両面接着テープを入れて貼り合わせてから、5kgロールを約300mm/分の速度で一往復させて圧着し、所定のアルミニウムブロックに接着して測定片を作成した。ついで、温度20℃と60℃の各温度で24時間養生し、その直後にはく離強さ試験を行い、温度60℃での試験のはく離強さが、常温(20℃)試験のはく離強さと同等ないしは前者が後者よりも強いことが望ましいが、ともに1.6kgf/cm 以上、好ましくは1.8kgf/cm 以上であること。
【0028】
ロ.JIS Z0237粘着テープ、粘着シート試験方法の参考欄記載の「せん断粘着力試験」に準じた方法
測定片の形状となるように上記供試体2枚の間に両面テープを入れて貼り合わせてから、上記イと同様にして圧着して測定片を作成した。ついで、上記イと同様にしてから、せん断粘着力試験を行い、60℃での試験で最大荷重から算出したせん断粘着力と常温(20℃)での試験で最大荷重から算出した剪断粘着力との関係が、上記イと同様であり、ともに3.4kgf/cm以上、好ましくは3.8kgf/cm以上(ただし、引張速度2.0mm/分)であること。
【0029】
請求項2の発明は、請求項1記載の暖房床構造において、発熱パネルの下面に、発熱パネルに置敷き可能な重量を付与しうる比重を有する軟質シート層が設けられていることを特徴とするものである。
【0030】
上記比重を有する軟質シートは、ウレタン樹脂、合成ゴム系樹脂、ポリエチレン樹脂、アスファルト、ゴムアスファルトなどに鉛粉末、鉄粉末、銅粉末などの金属粉末や金属酸化物粉末、製鉄過程でできる風砕スラグ、硫酸バリウム、炭酸カルシウムなどの無機粉末などを適宜混入して高比重としたものであり、その比重は1.5以上が望ましく、通常は2.0〜4.0の比重のものが使用される。また、その厚さは0.8〜8.0mmの範囲のものが使用されるが、1.0〜5.0mmのものが好ましい。なお、接着性をよくするため、このシートの片面ないし両面に不織布、ネット状物を配しておいてもよい。
【0031】
請求項3の発明は、請求項1または2記載の暖房床構造において、複数の床暖房用発熱パネルのうち、暖房不要箇所に位置する発熱パネルが、これとほぼ同じ厚さでかつ上面に金属層が設けられた非発熱パネルに代えられていることを特徴とするものである。
【0032】
床暖房は、必ずしも床面の全面に採用されず、壁面近辺や床暖房部の周辺部の箇所には床暖房をしないことがあり、この箇所が暖房不要箇所となる。
【0033】
非発熱パネルの基材としては、本暖房用発熱パネルと同様の木材、硬質発泡体またはこれら2種類の組合わせが使用せられる。木質基材の場合、その下面に木質床材と同様の溝加工を施してもよい。また、基材が硬質発泡体の場合、その上面に木質単板を接合してもよいし、また同下面に木質単板を接合してもよい。更には、両面のバランスを図って反りを防止するためには、木質単板を硬質発泡体(基材)の両面に接合することが好ましい。
【0034】
基材が木材と硬質発泡体との組合わせの場合、カッターナイフで切断できるように、木材の厚さは1〜5mmが好ましい。この薄い木材が中質繊維板(MDF)、高比重繊維板(HDF)等の繊維板であれば、これらには方向性がないので、カッターナイフでの切断が容易であるし、また、木質単板とは異なりそれ自体が板材であるので、保形性がよいばかりか裏面に硬質発泡体を接着しても反りが生じにくく、反り防止のために硬質発泡体の他面に裏打ち材を貼着しなくてもよい。
【0035】
薄い繊維板は、通常2.5〜3mm厚程度のものが入手可能であるが、これよりも薄いものを採用する場合には、入手可能な繊維板を分割刃物により薄く分割し、複数の分割繊維板として用いればよい。たとえば、厚さ2.7mmの繊維板の場合、1.35mm厚さのもの2枚に分割される。その分割面には若干の凹凸があるので、この面を硬質発泡体との接着面とし、他方の面は分割前の繊維板の平滑な外面であるので、この面を箔または薄板からなる金属層との接着面にすればよい。なお、上記繊維板の分割面に生じている若干の凹凸は必要に応じて研削・研磨が施される。繊維板は合板、木材単板よりも吸水が速いため、硬質発泡体、箔などと接着する際、水性接着剤を用いても容易に接着可能である。硬質発泡体、薄い繊維板および金属層よりなる非発熱パネル中、薄い繊維板は、それ自体板材であるので剛性があり、非発熱パネルに局部的に荷重が加わってもその荷重が分散し、耐圧縮性がよい。具体的には、発熱パネルおよび非発熱パネル施工後、その上に木質床材を施工する際、非発熱パネルの上に乗ったり、ひざをついたりして作業を行っても、局部的荷重の作用する部分がくぼみにくい。
【0036】
金属層としては、非発熱パネルにも発熱パネルと同様のものが使用される。金属層は非発熱パネルの基材上面に予め一体化していてもよいし、施工時に配設してもよいが、施工上は前者が望ましい。金属層を基材に予め一体化する場合、金属層を基材の両面に接合しておけばどちらの面を上面としてもよい。なお、基材である硬質発泡体の両面に木質単板を接合した場合、さらにその両面に金属層を設けると、吸放湿のバランスがとれる。
【0037】
非発熱パネルの上面には木質床材が施工されるが、施工時非発熱パネル上にひざをついて作業を行うので、非発熱パネルに作用する局部荷重を分散してくぼみにくくするためには、基材である硬質発泡体の上面に接合される木質単板の厚さを0.4mm以上、より好ましくは0.6mm以上であるが、カッターナイフで切断可能とするためには5mm以下がよい。
【0038】
非発熱パネルの端面にも隣接するパネルとともに、発熱パネルと同様の接合用加工を施しておくことが望ましい。
【0039】
請求項4の発明は、請求項3記載の暖房床構造において、非発熱パネルの基材が硬質発泡体であることを特徴とするものである。
【0040】
硬質発泡体の具体例としては、密度50.0kg/m 以上のスチレン樹脂をあげることができる。好ましい密度は、55.0〜275.0kg/mである。
【0041】
請求項5の発明は、請求項3記載の暖房床構造において、非発熱パネルの下面に、非発熱パネルに置敷き可能な重量を付与しうる比重を有する軟質シート層が設けられていることを特徴とするものである。
【0042】
上記比重を有する軟質シートとしては、請求項2の発明に関連して述べたものと同様のものが使用される。
【0043】
木質床材を複数の暖房用発熱パネルまたは(および)非発熱パネルの上面に施工するさいは、隣接する木質床材どうしの合わせ目は、発熱パネルまたは(および)非発熱パネルどうしの合わせ目と重ならないようにすることが好ましい。
【0044】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を、以下図面を参照して説明する。
【0045】
実施の形態1
この実施の形態は、請求項1および2の発明による暖房床構造を図1により示すものである。
【0046】
図示の暖房床構造は、合板床下地(1) 上に相互に接する状態に配置せられた複数の床暖房用発熱パネル(2) と、これら発熱パネル(2) 上に相互に接する状態に配置せられた複数の木質床材(3) とよりなり、各発熱パネル(2) の上面に金属層(4) が設けられるとともに、各木質床材(3) の下面に金属層(5) が設けられ、両者の金属層(4)(5)どうしが各木質床材(3) の全体において、引剥がし接着力試験における高温(80℃)試験および常温(20℃)試験の接着力がともに10kgf以上の耐熱性を有する両面接着テープ(6)を介して接合されており、耐熱性両面接着テープの厚さが0.15〜0.40mmである
【0047】
発熱パネル(2) の基材(7) は木材であって、その下面に、木質基材(7) の反りを矯正しうる比重を有する軟質シート層(8) が設けられている。
【0048】
発熱パネル(2) の木質基材(7) には、下面から所定の溝(9) が形成せられて温水パイプ(10)が収められ、軟質シート層(8) により下側から塞がれている。木質床材(3) の基材(11)は木材であり、木質基材(11)の上面には化粧単板(12)が、同下面には裏打ち木質単板(13)がそれぞれ接合されている。発熱パネル(2) の上面の金属層(4) および木質床材(3) の下面の金属層(5) は、ともにアルミニウム箔であり、前者は発熱パネル(2) の木質基材(7) に、後者は木質床材(3) の裏打ち木質単板(13)にそれぞれ接合されている。軟質シート(8) としては、ゴムアスファルトに鉄粉末を混入したものが用いられており、発熱パネル(2) に置敷き可能な重量を付与しうる比重を有するものであり、この比重は木質基材(7) の反りがある場合、これをも矯正しうるものである。隣接する発熱パネル(2) の端面どうは本実接合(15)され、隣接する木質床材(3) どうしは相じゃくり接合(14)されている。
【0049】
図1には、両面接着テープ(6) は木質床材(3) の全体下面に貼付けられている状態が示されているが、図2および図3に示すように、木質床材(3) の両縁部および幅の中央に、長さ方向にのびる所定幅の両面接着テープ(16)を貼付けてもよい。
【0050】
なお、上記発熱パネル(2) において、軟質シート(8) に代え、紙、不織布、ポリエチレンのような熱可塑性樹脂シートの片面若しくは両面に紙、不織布などを接合した複層シート、紙の片面にポリエチレン等の熱可塑性合成樹脂をコーティングした樹脂被覆紙または木質単板とする場合があり、この場合には、床下地にビスなどの釘類で固定される。熱可塑性樹脂シートの片面に紙、不織布等を接合した複層シートや樹脂被覆紙では、紙、不織布が接着性のよいため、紙、不織布の面を木質基材との接着側とすることが望ましい。また、既に敷設されている床仕上げ材の美観を保護するためにその表面にワックスが塗られている場合、その上に暖房床を増設する際合成樹脂面を下にした複層シート、不織布、木質単板などの紙以外のものを使用するのが望ましい。
【0051】
実施の形態2
この実施の形態は、請求項3,4および5の発明による暖房床構造を図4により示すものである。
【0052】
同図の暖房床構造は、コンクリート床下地(1) 上に相互に接する状態に配置せられた複数の床暖房用発熱パネル(2) と、暖房不要箇所に発熱パネル(2) と接する状態に配置された複数の非発熱パネル(17)と、これら発熱パネル(2) および非発熱パネル(17)上に相互に接する状態に配置せられた複数の木質床材(3) とよりなり、各発熱パネル(2) および各非発熱パネル(17)の上面に金属層(4)(18) が設けられるとともに、各木質床材(3) の下面に金属層(5) が設けられ、前二者の金属層(4)(18) と後者の金属層(5) どうしが各木質床材(3) の全体において、引剥がし接着力試験における高温(80℃)試験および常温(20℃)試験の接着力がともに10kgf以上の耐熱性を有する両面接着テープ(6)を介して接合されており、耐熱性両面接着テープの厚さが0.15〜0.40mmである
【0053】
非発熱パネル(17)の基材(19)は、スチレン樹脂よりなる硬質発泡体であり、その上面に木質単板(20)が接合され、さらにその上に金属層(18)となるアルミニウム箔が接合されている。
【0054】
基材(19)の下面には、非発熱パネル(17)に置敷き可能な重量を付与しうる比重を有する軟質シート層(21)が設けられており、これは発熱パネル(2) の下面の軟質シート層(8) と同様のものである。
【0055】
その他図1と同一符号で示されているものは、実施の形態1と同じ部材である。
【0056】
なお、この非発熱パネル(17)の軟質シート(21)に代え、紙、不織布、ポリエチレンのような熱可塑性樹脂シートの片面若しくは両面に紙、不織布などを接合した複層シート、紙の片面にポリエチレン等の熱可塑性合成樹脂を被覆した樹脂被覆紙または木質単板とする場合があり、この場合には、接着剤や両面接着テープで床下地に固定される。ただし、既に敷設されている床仕上げ材の美観を保護するためにその表面にワックスが塗られている場合は、ワックスが接着剤や両面接着テープの接着作用を阻害するため、非発熱パネルはビス等で床下地に固定される。
【0057】
実施の形態3
この実施の形態は、請求項3および4の発明による暖房床構造を図5により示すものである。
【0058】
同図の暖房床構造は、既に敷設された床仕上げ材よりなる床下地(22)上に相互に接する状態に配置せられた複数の床暖房用発熱パネル(23)と、暖房不要箇所に発熱パネル(23)と接する状態に配置された複数の非発熱パネル(24)と、これら発熱パネル(23)および非発熱パネル(24)上に相互に接する状態に配置せられた複数の木質床材(25)とよりなり、各発熱パネル(23)および各非発熱パネル(24)の上面に金属層(4)(18) が設けられるとともに、各木質床材(25)の下面に金属層(26)が設けられ、前二者の金属層(4)(18) と後者の金属層(26)どうしが各木質床材(25)の全体において、引剥がし接着力試験における高温(80℃)試験および常温(20℃)試験の接着力がともに10kgf以上の耐熱性を有する両面接着テープ(6)(27)を介して接合されており、耐熱性両面接着テープ(6)(27)の厚さが0.15〜0.40mmである
【0059】
木質床材(25)の基材(28)は表裏の単板の繊維方向が木質床材(25)の長さ方向と略平行な3プライ合板であり、木質基材(25)の上面には化粧単板(29)が、同下面には裏打ち木質単板(30)がそれぞれ接合されている。なお、化粧単板(29)の繊維方向と裏打ち木質単板(30)の繊維方向はともに木質床材(25)の長さ方向とほぼ同じ方向である。
【0060】
既に敷設された床仕上げ材とこれの床下地材との固定を補強するため、床仕上げ材の表面からコーススレッドビスをねじ込んでいる(図示略)。
【0061】
非発熱パネル(24)の基材(38)は、スチレン樹脂よりなる硬質発泡体であり、その上面に繊維板(39) が接合されている。
【0062】
発熱パネル(23)の基材(7) の下面には、ポリエチレンコーティングクラフト紙(41)が紙側を上面にして接着されている。そして、各床暖房用発熱パネル(23)および各非発熱パネル(24)は、既設床仕上げ材である床下地(22)にコーススレッドビス(31)により固定されている。
【0063】
図5には、両面接着テープ(27)は木質床材(25)の全体下面に貼付けられている状態が示されているが、図6に示すように、木質床材(25)の両縁部および幅の中央に、長さ方向にのびる所定幅の両面接着テープ(32)を貼付けてもよい。この場合、両面接着テープ(32)の接着性をよくし、床暖房中における木質床材(25)の縁部の浮き上がりを防止するため、両面接着テープ(32)の存在する部分を避け、金属層(26)から木質床材(25)の基材(28)の下部に至る6つの縦溝(33)が設けられる。また、木質床材(25)の表面の幅中央に横断面V状の縦溝(36)が、同両縁に隣り合う木質床材同士で縦溝(36)と同形状の縦溝が得られるように面取り部(37)が設けられている。
【0064】
その他図1と同一符号で示されているものは、実施の形態1と同じ部材である。
【0065】
【実施例】
実施例1
図1において、発熱パネル(2) の基材(7) の厚さは9mm、同金属層(4) の厚さは0.08mm、同軟質シート層(8) の厚さは0.8mm、その比重は3.0、木質床材(3) の基材(11)の厚さは2.5mm、同化粧単板(12)の厚さは0.3mm、同裏打ち単板(13)の厚さは0.3mm、同金属層(5) の厚さは0.05mmである。
【0066】
図2および図3において、木質床材(3) の幅は150mm、両面接着テープ(16)の幅は20mm、両面接着テープ(16)どうしの間隔は45mmである。
【0067】
図4において、非発熱パネル(17)の基材(19)の厚さは8.2mm、その密度は55.0kg/m、単板(20)の厚さは0.8mm、同金属層(18)の厚さは0.08mm、同軟質シート層(21)の厚さは0.8mm、その比重は3.0である。
【0068】
実施例2
図6において、木質床材(25)の基材(28)の厚さは2.5mm、同化粧単板(29)の厚さは0.3mm、同裏打ち単板(30)の厚さは0.25mm、同金属層(26)の厚さは0.05mm、木質床材(25)の幅は145mm、同長さは909mm、両面接着テープ(32)の幅は15mm、両面接着テープ(32)における木質床材(25)の縁からの間隔は0.5mmであり、両面接着テープ(32)の貼着率は、木質床材(25)の31.1%である。
【0069】
つぎに、床暖房したさいの本発明の暖房床構造に用いる両面接着テープの接着性を比較例とともに示す。
【0070】
本発明および比較例に用いる両面接着テープの試験片を20℃の環境および80℃の環境でそれぞれ養生し、その直後に引剥がし接着力試験を行い、接着力を測定した結果は、表1のとおりである。
【0071】
【表1】
Figure 0004314419
【0072】
引剥がし接着力試験方法は、つぎのとおりである。すなわち、厚さ9.0mm、長さ100mm、幅100mmの5プライ合板の上面全体に厚さ50μmのアルミニウム箔を接合した板(A)と、厚さ9.0mm、長さ150mm、幅25mmの5プライ合板の下面全体に厚さ50μmのアルミニウム箔を接合した板(B)とを被着体とし、両板(A)(B)のアルミニウム箔面をイソプロピルアルコールを含んだ布で拭いた後、長さ50mm、幅25mmの両面接着テープを板(B)の長さの中央に位置するように、また板(B)の両端部が同じ長さだけ板(A)の外に突き出しかつ板(B)の幅が板(A)の幅の真中にくるように配置し、両面接着テープを介して両板(A)(B)を重ね、ついで、8kgのローラーを上から往復させて圧着し、試験片を作成した。その後、所定の養生を行ない、その養生直後に試験片のうち板(A)を試験機に固定し、板(B)の一端部にワイヤを掛けてこれを引張り速度3.0mm/分で引張り、その時の最大強さを測定したものである。
【0073】
なお、前述の「はく離強さ試験」および「せん断粘着力試験」の結果は、表2および表3のとおりである。
【0074】
【表2】
Figure 0004314419
【0075】
【表3】
Figure 0004314419
【0076】
長さ900mmの木質床材の下面に本発明および比較例の両面接着テープを図2および図3に示す状態に貼付けた後、図1の発熱パネル上に固定し、ついで床暖房時と同様に温水パイプに80℃の温水を連続通湯し、木質床材の両縁部の浮上がり状態を観察した結果を表4に示す。
【0077】
【表4】
Figure 0004314419
【0078】
なお、図6に示す状態に本発明および比較例の両面テープを貼付けた後、図5の発熱パネル上に固定して、上記と同様に連続通湯しても、表4と同じ結果であった。
【0079】
【発明の効果】
請求項1の発明の暖房床構造によれば、各発熱パネルの上面に金属層が設けられるとともに、各木質床材の下面に金属層が設けられ、両者の金属層どうしが各木質床材の全体のうち少なくとも両縁部分において、引剥がし接着力試験における高温(80℃)試験および常温(20℃)試験の接着力がともに10kgf以上の耐熱性を有する両面接着テープを介して接合されており、耐熱性両面接着テープの厚さが0.15〜0.40mmであるので、床下地上に配置せられた発熱パネルに対して木質床材を確実に固定しうるし、両者の金属層は均熱効果を有するので、床暖房にも優れている。また、木質床材の両縁部分が浮上がるおそれもない。
【0080】
請求項2の発明の暖房床構造によれば、発熱パネルの下面に、発熱パネルに置敷き可能な重量を付与しうる比重を有する軟質シート層が設けられているので、下地に不陸があってもそれを吸収しかつ横ずれしにくく、床下地上への施工を容易かつ能率的に行ないうるばかりか、発熱パネルの基材が木材であってこれに反りがあっても、この反りが自然に矯正される利点もある。
【0081】
請求項3の発明の暖房床構造によれば、複数の床暖房用発熱パネルのうち、暖房不要箇所に位置する発熱パネルが、これとほぼ同じ厚さでかつ上面に金属層が設けられた非発熱パネルに代えられているので、床全体として違和感はないし、非発熱パネルにも金属層があるため、床下地上に配置せられた発熱パネルおよび非発熱パネルに対して木質床材を確実に固定しうる。
【0082】
請求項4の発明の暖房床構造によれば、非発熱パネルの基材が硬質発泡体であるから、上面の金属層がアルミニウム箔のように薄いものであり、下面に軟質シート層が設けられた場合、これがカッターナイフで切れるような薄さであれば、簡単に非発熱パネルを切断することができる。非発熱パネルの設置箇所は壁面付近が多いので、所定形状に切断しなければならないことがあるが、前記のような切断が可能であれば、切断作業に手間がかからず、しかも騒音や鋸屑が発生するという問題がなくなる。特に、騒音、鋸屑は既設床仕上がり面に床暖房を増設する、いわゆるリフォームでは嫌われるが、この問題がなくなる。
【0083】
請求項5の発明の暖房床構造によれば、非発熱パネルの下面に、非発熱パネルに置敷き可能な重量を付与しうる比重を有する軟質シート層が設けられているので、床下地上への施工を容易かつ能率的に行ないうる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態1の暖房床構造の部分垂直断面図である。
【図2】木質床材の両縁部およびその幅中央に長さ方向にのびる所定幅の両面接着テープを予め貼付けた状態の1例を示す部分底面図である。
【図3】図2の両面接着テープ貼付け木質合板の正面図である。
【図4】実施形態2の暖房床構造の部分垂直断面図である。
【図5】実施形態3の暖房床構造の部分垂直断面図である。
【図6】 木質床材の両縁部およびその幅中央に長さ方向にのびる所定幅の両面接着テープを予め貼付けた状態の他の例を示す正面図である。
【符号の説明】
(1)(22):床下地
(2)(23):発熱パネル
(3)(25):木質床材
(4)(5)(18)(26):金属層
(6)(27):両面接着テープ
(7):発熱パネルの基材
(8)(21):軟質シート層
(11)(28):木質床材の基材
(19) (28):非発熱パネルの基材
(17)(24):非発熱パネル

Claims (5)

  1. 床下地上に相互に接する状態に配置せられた複数の床暖房用発熱パネルと、これら発熱パネル上に相互に接する状態に配置せられた複数の木質床材とよりなる暖房床構造において、各発熱パネルの上面に金属層が設けられるとともに、各木質床材の下面に金属層が設けられ、両者の金属層どうしが各木質床材の全体のうち少なくとも両縁部分において、引剥がし接着力試験における高温(80℃)試験および常温(20℃)試験の接着力がともに10kgf以上の耐熱性を有する両面接着テープを介して接合されており、耐熱性両面接着テープの厚さが0.15〜0.40mmであることを特徴とする暖房床構造。
  2. 発熱パネルの下面に、発熱パネルに置敷き可能な重量を付与しうる比重を有する軟質シート層が設けられていることを特徴とする請求項1記載の暖房床構造。
  3. 複数の床暖房用発熱パネルのうち、暖房不要箇所に位置する発熱パネルが、これとほぼ同じ厚さでかつ上面に金属層が設けられた非発熱パネルに代えられていることを特徴とする請求項1または2記載の暖房床構造。
  4. 非発熱パネルの基材が硬質発泡体であることを特徴とする請求項3記載の暖房床構造。
  5. 非発熱パネルの下面に、非発熱パネルに置敷き可能な重量を付与しうる比重を有する軟質シート層が設けられていることを特徴とする請求項3記載の暖房床構造。
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