JP4306115B2 - スパークプラグの製造方法 - Google Patents
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- H01T21/02—Apparatus or processes specially adapted for the manufacture or maintenance of spark gaps or sparking plugs of sparking plugs
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、中心電極及び接地電極のそれぞれに、火花放電部材としての貴金属よりなるチップを接合してなるスパークプラグの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、特開平3−34283号公報に記載されているように、取付金具に支持された中心電極及び接地電極のそれぞれに、Pt(白金)合金やIr(イリジウム)合金等の貴金属よりなるチップを接合し、これら両チップが放電ギャップを介して対向配置するようにしたスパークプラグがある。
【0003】
このようなスパークプラグは、プラグ交換時期の大幅拡大を目的として貴金属チップを火花放電部材として用いることにより、長寿命なものとでき、コージェネレーション、ガス圧送用ポンプ、自動車などの内燃機関に使用される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
この種のスパークプラグの従来の製造方法は、一般的に、中心電極と接地電極の個々についてチップを溶接(レーザ溶接や抵抗溶接等)するようにしており、チップと電極の接合工程を電極の数だけ行わなければならないため、手間がかかっていた。特に、1個の中心電極に対して複数個の接地電極を有するスパークプラグ(多極プラグ)においては、電極数も多くなり、チップの接合の手間がより大きくなる。
【0005】
そこで、本発明は上記問題に鑑み、中心電極及び接地電極のそれぞれに、貴金属よりなるチップを接合し、これら両チップが放電ギャップを介して対向配置するようにしたスパークプラグの製造方法において、チップと電極の接合を効率よく実行可能とすることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明においては、中心電極側のチップ(50)と接地電極側のチップ(60)とが一体化された貴金属部材(80)を中心電極(30)及び接地電極(40)に溶接した後、貴金属部材を放電ギャップ(70)に沿って切断することにより、放電ギャップを形成することを特徴としている。
【0007】
それによれば、中心電極側のチップと接地電極側のチップとが一体化された貴金属部材を両電極に溶接した後、貴金属部材を放電ギャップに沿って切断するため、従来に比べて、接合工程数を減らすことができ、チップと電極の接合を効率よく実行することができる。
【0008】
また、貴金属部材を切断することにより、その切断面が、放電ギャップにおける両チップの放電面となる。そのため、従来のように、対向する両チップの放電面の位置合わせ(平行度の調整等)を行う必要がなく、精度良く放電ギャップを形成することができる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明では、1個の中心電極(30)に対応して複数個の接地電極(40)を設け、これら各電極のそれぞれに貴金属よりなるチップ(50、60)を接合し、中心電極側のチップ(50)と各接地電極側のチップ(60)とを、それぞれ放電ギャップ(70)を介して対向配置するようにしたスパークプラグの製造方法において、各接地電極側のチップが一体化された貴金属部材(90)を各接地電極に溶接し、中心電極にチップを溶接することにより、貴金属部材と中心電極側のチップとの間に放電ギャップを形成した後、貴金属部材を、各接地電極に対応して切断することを特徴としている。
【0010】
それによれば、多極プラグにおいて、複数個の接地電極側のチップが一体化された貴金属部材を全ての接地電極に溶接した後、貴金属部材を各々の接地電極に対応して切断するから、接地電極へのチップの接合工程数を減らすことができ、結果的に、チップと電極の接合を効率よく実行することができる。
【0011】
また、請求項3に記載の発明では、取付金具(10)に中心電極(30)及び接地電極(40)を支持し、これら両電極のそれぞれに、貴金属よりなるチップ(50、60)を接合し、これら両チップを、放電ギャップ(70)を介して対向配置するようにしたスパークプラグの製造方法において、取付金具に中心電極が支持されたものと、中心電極側のチップ(50)及び接地電極側のチップ(60)が一体化され且つ中心電極に嵌合可能な穴部(101)が形成された貴金属部材(100)とを用意し、貴金属部材の穴部を中心電極に嵌合して組み付けた後、接地電極を貴金属部材に接触して支持させつつ取付金具に溶接し、次に、貴金属部材と中心電極との嵌合部、及び、貴金属部材と接地電極との接触部に対して溶接を行い、続いて、貴金属部材を放電ギャップに沿って切断することにより放電ギャップを形成することを特徴としている。
【0012】
それによれば、両電極のチップが一体化された貴金属部材を、両電極に溶接した後放電ギャップに沿って切断するため、接合工程数を減らすことができ、チップと電極の接合を効率よく実行することができる。また、請求項1の発明と同様に、貴金属部材の切断による精度の良い放電ギャップ形成も可能である。
【0013】
また、本製造方法によれば、予め、貴金属部材を中心電極に嵌合して仮組みし、この貴金属部材をスペーサとして接地電極を取付金具に組み付けた状態にて、溶接することができるため、接地電極の組み付け性が向上する。
【0014】
また、請求項4に記載の発明では、取付金具(10)に中心電極(30)及び複数個の接地電極(40)を支持し、これら各電極のそれぞれに貴金属よりなるチップ(50、60)を接合し、中心電極側のチップ(50)と各接地電極側のチップ(60)とを、それぞれ放電ギャップ(70)を介して対向配置するようにしたスパークプラグの製造方法において、取付金具に中心電極を支持するとともに、中心電極側のチップ及び各接地電極側のチップが一体化された貴金属部材(110)とを中心電極に溶接した後、複数個の接地電極が結合された一体化された一体化部材(45)を、貴金属部材に対して複数個の接地電極を接触させて支持しつつ取付金具に接触させ、次に、貴金属部材と複数個の接地電極との接触部、及び、一体化部材と取付金具との接触部に対して溶接を行い、続いて、貴金属部材を放電ギャップに沿って切断することにより放電ギャップを形成することを特徴としている。
【0015】
それによれば、中心電極側及び複数個の接地電極側のチップ全てが一体化された貴金属部材を、中心電極に溶接した後、複数個の接地電極に対しては一括して溶接するため、多極プラグにおける接地電極へのチップの接合工程数を減らすことができ、結果的に、チップと電極の接合を効率よく実行することができる。また、請求項1の発明と同様に、貴金属部材の切断による精度の良い放電ギャップ形成も可能である。
【0016】
また、本発明の製造方法によれば、複数個の接地電極への貴金属部材の溶接工程において、複数個の接地電極の取付金具への溶接も行うことができるため、効率的である。
【0017】
また、請求項5に記載の発明では、1個の中心電極(30)と、この中心電極を取り囲むように設けられた接地電極(40)とを備え、中心電極に貴金属よりなるチップ(50)を接合し、中心電極側のチップと放電ギャップ(70)を形成するように接地電極に貴金属よりなる円環状のチップ(85)を接合してなるスパークプラグの製造方法において、円板状の貴金属部材(120)を中心電極及び接地電極に溶接した後、貴金属部材を放電ギャップに沿って切断することにより放電ギャップを形成することを特徴としている。
【0018】
それによれば、接地電極側のチップが中心電極側のチップを取り巻くように円環状であるスパークプラグにおいて、円板状の貴金属部材を両電極に溶接した後、貴金属部材を放電ギャップに沿って切断するため、接合工程数を減らすことができ、チップと電極の接合を効率よく実行することができる。また、請求項1の発明と同様に、貴金属部材の切断による精度の良い放電ギャップ形成も可能である。
【0019】
ここで、請求項5の発明における接地電極(40)は、中心電極(30)を取り囲む円環状の1個のものでも、中心電極(30)を取り囲んで配置された複数個のものでもよい。
【0020】
また、上記した請求項1、2、4〜7のいずれか1つに記載のスパークプラグの製造方法においては、請求項8に記載の発明のように、貴金属部材(80、90、110、120)を、中心電極(30)に対応した位置決め用の穴(81、111)が形成されているものとすれば、貴金属部材の組み付け性を向上させることができ、好ましい。
【0021】
さらに、この穴(81、111)を、請求項9に記載の発明のように、中心電極(30)が挿入可能なものとすれば、貴金属部材を中心電極に容易に仮固定できるから、より組み付け性の向上が図れる。
【0022】
また、請求項10に記載の発明では、放電ギャップ(70)の寸法をG、放電ギャップを介して一側のチップにおける放電面から他側のチップにおける溶融部または電極母材までの距離をLとしたとき、この距離Lが寸法Gに0.3mmを加えた大きさ以上となるように、放電ギャップを形成することを特徴としている。
【0023】
本発明の寸法関係L≧(G+0.3)mmは、本発明者等の実験検討により見出したものであり、このような寸法関係となるように放電ギャップを形成すれば、チップにおける溶融部(電極母材とチップとが溶接により溶融した部分)や電極母材に火花放電が発生するのを防止できる。そのため、電極母材や溶融部の消耗が抑制でき、チップの脱落を防止することができる。
【0024】
また、請求項11に記載の発明では、貴金属部材(80、90、100、110、120)の切断を、放電加工、レーザカットおよびワイヤカットのいずれかを用いて行うことを特徴としており、このようなカット方法にて貴金属部材の切断を行うことにより、切断面の面粗度を良好なものとすることができる。
【0025】
また、上記各手段における貴金属としては、PtまたはIrを主成分とし、この主成分にIr、Pt、Rh、Ru、Pd、Ni、及びWの少なくとも1種が添加されたものを用いることができる。
【0026】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図に示す実施形態について説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る多極型のスパークプラグS1の全体構成を示す半断面図である。また、図2は、スパークプラグS1における火花放電部近傍の拡大図であり、(a)は断面図、(b)は(a)のA矢視図である。
【0028】
このスパークプラグS1は、例えば、自動車用エンジンの点火栓等に適用されるものであり、該エンジンの燃焼室を区画形成するエンジンヘッド(図示せず)に設けられたネジ穴に挿入されて固定されるようになっている。
【0029】
スパークプラグS1は、導電性の鉄鋼材料(例えば低炭素鋼等)等よりなる筒形状の取付金具10を有しており、この取付金具10は、図示しないエンジンブロックに固定するための取付ネジ部10aを備えている。取付金具10の内部には、アルミナセラミック(Al2O3)等からなる絶縁体20が固定されている。
【0030】
絶縁体20の軸孔22には中心電極30が固定されており、この中心電極30は取付金具10に対して絶縁保持されている。中心電極30は、例えば、内材がCu等の熱伝導性に優れた金属材料、外材がNi基合金等の耐熱性および耐食性に優れた金属材料により構成された円柱体で、その一端部31が、絶縁体20の一端部21から露出して延びるように設けられている。
【0031】
一方、接地電極40は、中心電極30の一端部31の外周を取り囲むように複数個(本例では4個)設けられている。各々の接地電極40は、一端部41にて取付金具10の一端部11に溶接されて支持され、途中で曲げられて、他端部42側が中心電極30の一端部31に向かって延びる柱状(例えば角柱)をなすものである。接地電極40は、例えば、Niを主成分とするNi基合金より構成されている。
【0032】
また、中心電極30の一端部31には、貴金属よりなる中心電極側チップ50が、レーザ溶接や抵抗溶接等により接合されている。一方、各接地電極40の他端部42には、貴金属よりなる柱状の接地電極側チップ60が接合されており、これら各々の接地電極側チップ60と中心電極側チップ50との間に幅Gの放電ギャップ70が形成されている。
【0033】
また、中心電極側チップ50及び各接地電極側チップ60を構成する貴金属としては、Pt(白金)またはIr(イリジウム)を主成分とし、この主成分にIr、Pt、Rh(ロジウム)、Ru(ルテニウム)、Pd(パラジウム)、Ni(ニッケル)、及びW(タングステン)の少なくとも1種が添加されたものを用いることができる。
【0034】
かかるスパークプラグS1においては、両チップ50、60間に形成された各放電ギャップ70の少なくとも1つにおいて放電し、燃焼室内の混合気に着火させる。着火後、放電ギャップ70に形成された火炎核は、成長していき、燃焼室内にて燃焼が行われるようになっている。
【0035】
次に、本実施形態のスパークプラグの製造方法について述べる。本実施形態では、両電極30、40への各チップ50、60の接合方法(チップ接合工程)を要部とするものであり、他の工程は周知の方法にて行うことができるため、主として、チップ接合工程以降について説明し、他の工程は説明を省略する。
【0036】
図3は、本実施形態に係るスパークプラグの製造方法を示す工程図で、チップ接合方法を縦断面図として表したものである。また、図4は、当該チップ接合方法を平面図として表したものである。取付金具10に絶縁体20及び中心電極30、接地電極40が組み付けられたものを用意する。
【0037】
また、中心電極側チップ50と接地電極側チップ60とが一体化された貴金属部材80を用意する。この貴金属部材80は、最終的に切断されることによってチップ50、60を形成するものであり、図3(a)、図4(a)に示す様に、一面が中心電極30の一端部31に接するとともに外周端面が各接地電極40の他端部42に接することができるような板状をなしている。
【0038】
そして、図3(b)に示す様に、この貴金属部材80を中心電極30及び各接地電極40に接触させた状態でレーザ溶接や抵抗溶接等を用いて、各接触部に溶接を施す(チップ溶接工程)。その後、図3(c)に示す様に、貴金属部材80を放電ギャップ70に沿って切断することにより、放電ギャップ70を形成する(切断工程)。
【0039】
この切断工程においては、具体的には、図4(a)に示す一点鎖線に沿って、放電加工、レーザカットおよびワイヤカットのいずれかを用いて貴金属部材80の切断を行う。この切断時に、切り幅が放電ギャップ70の幅Gと同じとなるように切断治具やレーザの幅等を調整することで、図4(b)に示す様に、放電ギャップ70を適切に形成することができる。
【0040】
なお、図5は、本実施形態に係るスパークプラグの製造方法の他の例を断面的に示す工程図である。この他の例では、上記図3に示す製造方法と比べて、貴金属部材80に、中心電極30の一端部31に対応した位置決め用の穴81が形成されていることが相違点である。
【0041】
この穴81は、平面的には、図4(a)中の破線で示すように設けられた貫通穴であり、この穴81が目印となって中心電極30への位置決めが容易にできるようになる。なお、この穴81は、中心電極30の一端部31の径よりも小さくても位置決めの機能を発揮するが、中心電極30の一端部31が挿入可能な大きさであれば、この穴81に中心電極30を挿入することで貴金属部材80の中心電極30への仮固定ができる。
【0042】
ところで、本実施形態の製造方法によれば、中心電極側チップ50と接地電極側チップ60とが一体化された貴金属部材80を両電極30、40に溶接した後、貴金属部材80を放電ギャップ70に沿って切断するため、従来に比べて、接合工程数を減らすことができ、チップ50、60と電極30、40の接合を効率よく実行することができる。
【0043】
また、貴金属部材80を切断することにより、その切断面が、放電ギャップに70おける両チップ50、60の放電面となる。そのため、従来のように、対向する両チップの放電面の位置合わせ(平行度の調整等)を行う必要がなく、精度良く放電ギャップ70を形成することができる。なお、本製造方法は多極プラグに限定されず、中心と接地の電極が1個ずつであるようなスパークプラグでもよい。
【0044】
また、上記図5に示す製造方法によれば、貴金属部材80を、中心電極30に対応した位置決め用の穴81が形成されているものとしているため、貴金属部材80の組み付け性を向上させることができ、好ましい。さらに、この穴81を、中心電極30が挿入可能なものとすれば、貴金属部材80を中心電極30に容易に仮固定できるから、より組み付け性の向上が図れる。
【0045】
また、本実施形態では、貴金属部材80の切断を、放電加工、レーザカットおよびワイヤカットのいずれかを用いて行うことが好ましく、このようなカット方法にて貴金属部材の切断を行うことにより、切断面の面粗度を良好なものとすることができる。
【0046】
また、本実施形態においては、放電ギャップ70を介して一側のチップにおける放電面から他側のチップにおける溶融部または電極母材までの距離をLとする。例えば、図2(a)に示す様に、中心電極側チップ50の放電面から接地電極側チップ60における溶融部または接地電極40までの距離がLとなる。
【0047】
そして、本実施形態では、この距離Lが放電ギャップ70の幅(寸法)Gに0.3mmを加えた大きさ以上となるように、放電ギャップ70を形成することが好ましい。この寸法関係、L≧(G+0.3)mmは、実験検討により見出したものである。その検討結果の一例を図6に示す。
【0048】
図6は、上記製造方法により、両電極30、40にそれぞれ、Ir合金としてのIr−10Rh(Ir90重量%、Rh10重量%の合金)よりなるチップ50、60をレーザ溶接したものについて、放電ギャップ幅Gを0.3mm〜0.8mmの範囲にて上記距離Lを変えていき、接地電極側チップ60における溶融部または接地電極40への飛び火頻度(母材飛火頻度)を調べた結果を示す図である。
【0049】
飛び火位置の測定は、チャンバにスパークプラグS1を取り付け、ゲージ圧0.6MPaに加圧して火花放電させることにより行った。
【0050】
図6からわかるように、幅Gが0.3mmでは距離Lが0.5mm以上で全てチップ50、60同士で飛び火する。幅Gが0.5mmでは距離Lが0.8mm以上、幅Gが0.8mmでは距離Lが1.0mm以上となれば、とり、このような寸法関係となるように放電ギャップ70を形成すれば、溶融部または電極母材に飛び火することは無くなる。
【0051】
従って、寸法関係L≧(G+0.3)mmを満足するようにチップ50、60を接合することにより、チップにおける溶融部や電極母材に火花放電が発生するのを防止できるため、電極母材や溶融部の消耗を抑制でき、チップの脱落を防止することができる。
【0052】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態は、上記第1実施形態に示したスパークプラグS1の製造方法を変形したものであり、上記第1実施形態との相違点を中心に説明する。図7は、本実施形態に係るスパークプラグの製造方法を示す工程図であり、(a)、(b)は断面図、(c)は(b)の上視図である。
【0053】
本実施形態の製造方法は、多極プラグに限定して適用されるものである。即ち、上記図1に示す様に、1個の中心電極30に対応して複数個(図示例では4個)の接地電極40が設けられており、これら各電極30、40のそれぞれに貴金属よりなるチップ50、60が接合されており、中心電極側チップ50と各々の接地電極側チップ60とがそれぞれ放電ギャップ70を介して対向して配置されているスパークプラグの製造方法に関する。
【0054】
まず、図7(a)に示す様に、中心電極30の一端部31に中心電極側チップ50を溶接する。次に、図7(b)及び(c)に示す様に、各々の接地電極側チップ60が一体化された貴金属部材90を用意し、この貴金属部材90を各々の接地電極40に溶接する。こうして、貴金属部材90と中心電極側チップ50との間に放電ギャップ70が形成される。
【0055】
なお、図示例とは逆に、先に貴金属部材90の各接地電極40への溶接を行った後、中心電極側チップ50の中心電極30への溶接を行って、放電ギャップ70を形成してもよい。そして、これら貴金属部材90及びチップ50の溶接を行った後、図7(c)中の一点鎖線に示す様に、貴金属部材90を、各々の接地電極40に対応して切断し、各接地電極側チップ60を区画化する。こうして、上記図1に示すスパークプラグS1ができあがる。
【0056】
本実施形態によれば、多極プラグにおいて、複数個の接地電極側チップ60が一体化された貴金属部材90を全ての接地電極40に溶接した後、貴金属部材90を各々の接地電極40に対応して切断するから、各接地電極40へのチップ60の接合工程数を減らすことができ、結果的に、チップと電極の接合を効率よく実行することができる。
【0057】
また、本実施形態においても、上記第1実施形態同様に、貴金属部材90に対して、中心電極30に対応した位置決め用の穴を形成してもよく、また、寸法関係L≧(G+0.3)mmを満足するようにチップ50、60を接合することが好ましい。
【0058】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態は、上記第1実施形態に示したスパークプラグS1の製造方法を変形したものであり、上記第1実施形態との相違点を中心に説明する。図8は、本実施形態に係るスパークプラグの製造方法を断面的に示す工程図である。
【0059】
まず、図8(a)に示す様に、中心電極が絶縁支持された取付金具10と、中心電極側チップ50及び接地電極側チップ60が一体化され且つ中心電極に嵌合可能な穴部101が形成された貴金属部材100とを用意し、貴金属部材100の穴部101を中心電極30の一端部31に嵌合して組み付ける。この貴金属部材100は、上記第1実施形態における貴金属部材80に位置決め用の穴(中心電極が貫通可能)81が形成されたものと同様の構成である。
【0060】
その後、図8(b)に示す様に、各接地電極40の他端部42を貴金属部材100に接触して支持させつつ一端部41を取付金具10の一端部11に溶接する。次に、図8(c)に示す様に、貴金属部材100と中心電極30の一端部31との嵌合部、及び、貴金属部材100と接地電極40の他端部42との接触部に対して溶接を行う。
【0061】
続いて、貴金属部材100を放電ギャップ70に沿って切断することにより、放電ギャップ70を形成する。こうして、上記図1に示すスパークプラグS1ができあがる。
【0062】
ところで、本実施形態の製造方法によれば、上記第1実施形態と同様、両電極30、40のチップ50、60が一体化された貴金属部材100を、両電極に溶接した後放電ギャップに沿って切断するため、接合工程数を減らすことができ、チップと電極の接合を効率よく実行することができる。
【0063】
また、上記第1実施形態と同様、貴金属部材100の切断による精度の良い放電ギャップ70の形成も可能であり、さらには、寸法関係L≧(G+0.3)mmを満足するようにチップ50、60を接合することが好ましい。なお、本製造方法も、多極プラグに限定されず、中心と接地の電極が1個ずつであるようなスパークプラグでもよい。
【0064】
また、本製造方法によれば、予め、貴金属部材100を中心電極30に嵌合して仮組みし、この貴金属部材100をスペーサとして各接地電極40を取付金具10に組み付けた状態にて、溶接することができるため、溶接時における接地出0の支持性が良くなり、接地電極40の組み付け性が向上する。
【0065】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態は、上記第1実施形態に示したスパークプラグS1の製造方法を変形したものであり、上記第1実施形態との相違点を中心に説明する。図9は、本実施形態に係るスパークプラグの製造方法を断面的に示す工程図である。
【0066】
本実施形態の製造方法は、多極プラグに限定して適用されるものである。即ち、上記図1に示す様に、取付金具10に中心電極30及び複数個(図示例では4個)の接地電極40が支持され、これら各電極30、40のそれぞれに、貴金属よりなるチップ50、60が接合され、中心電極側チップ50と各々の接地電極側チップ60とがそれぞれ放電ギャップ70を介して対向して配置されているスパークプラグの製造方法に関する。
【0067】
まず、図9(a)に示す様に、絶縁体20に支持された中心電極30と、中心電極側チップ50及び各々の接地電極側チップ60が一体化された貴金属部材110とを用意し、この貴金属部材110を中心電極30の一端部31に溶接する。なお、本例では、貴金属部材110には、中心電極30に対応した位置決め用の穴111が形成されている。
【0068】
また、図9(b)に示す様に、複数個(本例では4個)の接地電極40が結合された一体化された一体化部材45を用意する。この一体化部材45は、複数個の接地電極40の一端部41が、取付金具10の一端部11に対応した形状を有する環状の連結部46により接続されているものである。また、貴金属部材110が溶接された中心電極30を絶縁体20とともに取付金具10へ組み付ける。
【0069】
そして、この一体化部材45を取付金具10の一端部11上に設置し、に中心電極30に溶接された貴金属部材110に対して、各接地電極40の他端部42を接触させて支持しつつ、各接地電極40の一端部41を取付金具10に接触させる。
【0070】
次に、図9(c)に示す様に、貴金属部材110と複数個の接地電極40の他端部42との接触部、及び、一体化部材45における各接地電極40の一端部41と取付金具10の一端部11との接触部に対して溶接を行う。
【0071】
続いて、図9(d)に示す様に、貴金属部材110を放電ギャップ70に沿って切断することにより、放電ギャップ70を形成する。こうして、上記図1に示すスパークプラグS1ができあがる。
【0072】
ところで、本実施形態の製造方法によれば、中心電極側及び複数個の接地電極側のチップ50、60全てが一体化された貴金属部材110を、中心電極30に溶接した後、複数個の接地電極40に対しては一括して溶接するため、多極プラグにおける各接地電極40へのチップの接合工程数を減らすことができ、結果的に、チップと電極の接合を効率よく実行することができる。
【0073】
また、本実施形態の製造方法によれば、多極プラグにおける複数個の接地電極40への貴金属部材110の溶接工程において、複数個の接地電極40の取付金具10への溶接も行うことができるため、効率的である。
【0074】
また、本実施形態においても、上記第1実施形態と同様に、貴金属部材110の切断による精度の良い放電ギャップ70の形成が可能であり、また、寸法関係L≧(G+0.3)mmを満足するようにチップ50、60を接合することが好ましい。
【0075】
(第5実施形態)
図10は、本発明の第5実施形態に係るスパークプラグS2の要部である火花放電部近傍の拡大図であり、(a)は概略断面図、(b)は(a)のA矢視図である。なお、本スパークプラグS2は、上記図1に示すものと比べて、火花放電部の構成が変形されたものであり、同一部分には同一符号を付してある。
【0076】
図10に示すスパークプラグS2は、1個の中心電極30と、この中心電極30を取り囲むように設けられた接地電極(本例では4個)40とを備え、中心電極30には、中心電極側チップ50が接合され、各接地電極40には、貴金属よりなる円環状のチップ(円環状チップ)85が共通に接合されており、該円環状チップ85の内周面が中心電極側チップ30の外周の略全面と放電ギャップ70を形成するように配置されている。
【0077】
本実施形態は、このようなスパークプラグS2の製造方法に関する。その製造方法は、まず、円板状の貴金属部材120を用意する。この貴金属部材120は、図10(a)において、両チップ50、85間の放電ギャップ70が貴金属で埋まって一体化された円板形状に相当する。
【0078】
この貴金属部材120を中心電極30の一端部31及び各接地電極40の他端部42に溶接した後、貴金属部材85を放電ギャップ70に沿って切断することにより、放電ギャップ70を形成する。こうして、図10に示すスパークプラグS2ができあがる。
【0079】
ところで、本実施形態の製造方法によれば、接地電極側のチップ85が中心電極側チップ50を取り巻くような円環状をなすスパークプラグS2において、円板状の貴金属部材120を両電極30、40に溶接した後、貴金属部材120を放電ギャップ70に沿って切断するため、接合工程数を減らすことができ、チップと電極の接合を効率よく実行することができる。
【0080】
また、上記第1実施形態と同様に、貴金属部材120の切断による精度の良い放電ギャップ70の形成も可能であり、また、貴金属部材120に対して、中心電極30に対応した位置決め用の穴を形成してもよく、また、寸法関係L≧(G+0.3)mmを満足するようにチップ50、60を接合することが好ましい。
【0081】
なお、図示例では、接地電極40は、中心電極30を取り囲んで配置された複数個のものよりなり、貴金属部材120を全ての接地電極40に溶接するようにしているが、本実施形態の接地電極40は、中心電極30を取り囲む円環状の1個のものであってもよい。
【0082】
なお、図10に示すスパークプラグS2を形成した後、さらに、円環状の貴金属部材85を各接地電極40に対応して切断することにより、各接地電極側チップ60を区画化してもよい。このように処理を施したものを、本実施形態の変形例として図11に示す。図11においても、(a)は概略断面図、(b)は(a)のA矢視図である。つまり、本実施形態はプラグの極数に限定されない。
【0083】
(他の実施形態)
上記実施形態のうち、プラグの極数に限定されない場合には、極数に応じて図12に示す様な製造方法が可能である。図12において、(a)は一極プラグ、(b)及び(c)は2極プラグ、(d)は3極プラグを示す。なお、(b)は(c)の上視平面図である。
【0084】
各場合において、中心電極30と接地電極40の各チップ50、60が一体化された貴金属部材を両電極30、40に溶接した後、図中の一点鎖線で切断し、放電ギャップ70を形成するようにすれば良い。なお、5極以上のスパークプラグであってもよいことは勿論である。
【0085】
また、貴金属部材80を切断して両電極30、40の各チップ50、60を形成した後の切断面が、両チップの対向面即ち放電面となるが、この放電面全域に渡って対向間隔が一定(つまり、局所的に見て両対向面が平行)であれば、両チップの対向面は、図13に示す様な(a)斜め形状でも、(b)凹凸形状でも良い。
【0086】
また、例えば、上記図4に示す貴金属部材80においては、切断後、四隅の端材(破線にて図示)80aが無駄になるが、予め、この端材80aが無く略十字形状の貴金属部材を用いれば、高価な貴金属を無駄なく利用することができ経済的である。さらに、図14に示す様に、十字形状の貴金属部材80において予め切断領域にスリット80bを形成しておけば、切断の効率化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係るスパークプラグを示す半断面図である。
【図2】図1に示すスパークプラグにおける火花放電部近傍の拡大図である。
【図3】上記第1実施形態に係るスパークプラグの製造方法を断面的に示す工程図である。
【図4】上記第1実施形態に係るスパークプラグの製造方法を平面的に示す工程図である。
【図5】上記第一実施形態に係るスパークプラグの製造方法の他の例を断面的に示す工程図である。
【図6】放電ギャップ幅Gを変えたときの距離Lと母材飛火頻度との関係を示す図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係るスパークプラグの製造方法を示す工程図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係るスパークプラグの製造方法を示す工程図である。
【図9】本発明の第4実施形態に係るスパークプラグの製造方法を示す工程図である。
【図10】本発明の第5実施形態に係るスパークプラグにおける火花放電部近傍の拡大図である。
【図11】上記第5実施形態の変形例を示す図である。
【図12】種々の極数を有するスパークプラグの構成図である。
【図13】貴金属部材の切断面形状の変形例を示す図である。
【図14】貴金属部材の平面形状の変形例を示す図である。
【符号の説明】
10…取付金具、30…中心電極、40…接地電極、45…一体化部材、
50…中心電極側チップ、60…接地電極側チップ、70…放電ギャップ、
80、90、100、110、120…貴金属部材、81、111…穴、
85…円環状チップ。
Claims (12)
- 中心電極(30)及び接地電極(40)のそれぞれに、貴金属よりなるチップ(50、60)が接合され、これら両チップが放電ギャップ(70)を介して対向して配置されているスパークプラグの製造方法において、
前記中心電極側のチップ(50)と前記接地電極側のチップ(60)とが一体化された貴金属部材(80)を用意し、
この貴金属部材を前記中心電極及び前記接地電極に溶接した後、前記貴金属部材を前記放電ギャップに沿って切断することにより、前記放電ギャップを形成することを特徴とするスパークプラグの製造方法。 - 1個の中心電極(30)に対応して複数個の接地電極(40)が設けられており、これら各電極のそれぞれに貴金属よりなるチップ(50、60)が接合されており、前記中心電極側のチップ(50)と各々の前記接地電極側のチップ(60)とがそれぞれ放電ギャップ(70)を介して対向して配置されているスパークプラグの製造方法において、
各々の前記接地電極側のチップが一体化された貴金属部材(90)を用意し、この貴金属部材を各々の前記接地電極に溶接し、前記中心電極に前記チップを溶接することにより、前記貴金属部材と前記中心電極側の前記チップとの間に前記放電ギャップを形成した後、
前記貴金属部材を、各々の前記接地電極に対応して切断することを特徴とするスパークプラグの製造方法。 - 取付金具(10)に中心電極(30)及び接地電極(40)が支持され、これら中心電極及び接地電極のそれぞれに、貴金属よりなるチップ(50、60)が接合され、これら両チップが放電ギャップ(70)を介して対向して配置されているスパークプラグの製造方法において、
前記取付金具に前記中心電極が支持されたものと、中心電極側のチップ(50)及び前記接地電極側のチップ(60)が一体化され且つ前記中心電極に嵌合可能な穴部(101)が形成された貴金属部材(100)とを用意し、
前記貴金属部材の前記穴部を前記中心電極に嵌合して組み付けた後、
前記接地電極を前記貴金属部材に接触して支持させつつ前記取付金具に溶接し、
次に、前記貴金属部材と前記中心電極との嵌合部、及び、前記貴金属部材と前記接地電極との接触部に対して溶接を行い、
続いて、前記貴金属部材を前記放電ギャップに沿って切断することにより、前記放電ギャップを形成することを特徴とするスパークプラグの製造方法。 - 取付金具(10)に中心電極(30)及び複数個の接地電極(40)が支持され、これら各電極のそれぞれに、貴金属よりなるチップ(50、60)が接合され、前記中心電極側のチップ(50)と各々の前記接地電極側のチップ(60)とがそれぞれ放電ギャップ(70)を介して対向して配置されているスパークプラグの製造方法において、
前記取付金具に前記中心電極を支持するとともに、中心電極側のチップ及び各々の前記接地電極側のチップが一体化された貴金属部材(110)を前記中心電極に溶接した後、
前記複数個の接地電極が結合された一体化された一体化部材(45)を、前記貴金属部材に対して前記複数個の接地電極を接触させて支持しつつ前記取付金具に接触させ、
次に、前記貴金属部材と前記複数個の接地電極との接触部、及び、前記一体化部材と前記取付金具との接触部に対して溶接を行い、
続いて、前記貴金属部材を前記放電ギャップに沿って切断することにより、前記放電ギャップを形成することを特徴とするスパークプラグの製造方法。 - 1個の中心電極(30)と、この中心電極を取り囲むように設けられた接地電極(40)とを備え、前記中心電極には、貴金属よりなるチップ(50)が接合され、前記接地電極には、前記中心電極側のチップと放電ギャップ(70)を形成するように貴金属よりなる円環状のチップ(85)が接合されているスパークプラグの製造方法において、
円板状の貴金属部材(120)を前記中心電極及び前記接地電極に溶接した後、前記貴金属部材を前記放電ギャップに沿って切断することにより、前記放電ギャップを形成することを特徴とするスパークプラグの製造方法。 - 前記接地電極(40)は、前記中心電極(30)を取り囲む円環状の1個のものであることを特徴とする請求項5に記載のスパークプラグの製造方法。
- 前記接地電極(40)は、前記中心電極(30)を取り囲んで配置された複数個のものよりなり、
前記貴金属部材(120)を全ての前記接地電極に溶接することを特徴とする請求項5に記載のスパークプラグの製造方法。 - 前記貴金属部材(80、90、110、120)は前記中心電極(30)に対応した位置決め用の穴(81、111)が形成されていることを特徴とする請求項1、2及び4ないし7のいずれか1つに記載のスパークプラグの製造方法。
- 前記穴(81、111)は、前記中心電極(30)が挿入可能なものであることを特徴とする請求項8に記載のスパークプラグの製造方法。
- 前記放電ギャップ(70)の寸法をG、前記放電ギャップを介して一側の前記チップにおける放電面から他側の前記チップにおける溶融部または電極母材までの距離をLとしたとき、この距離Lが前記寸法Gに0.3mmを加えた大きさ以上となるように、前記放電ギャップを形成することを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1つに記載のスパークプラグの製造方法。
- 前記貴金属部材(80、90、100、110、120)の切断を、放電加工、レーザカットおよびワイヤカットのいずれかを用いて行うことを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1つに記載のスパークプラグの製造方法。
- 前記貴金属としては、PtまたはIrを主成分とし、この主成分にIr、Pt、Rh、Ru、Pd、Ni、及びWの少なくとも1種が添加されたものを用いることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1つに記載のスパークプラグの製造方法。
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