JP4092837B2 - 内燃機関用スパークプラグ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コージェネレーション、ガス圧送用ポンプ、自動車等に適用され、Irを主成分とするIr合金を火花放電部電極材として接地電極に溶接してなる内燃機関用スパークプラグに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、この種のスパークプラグは、取付金具内に絶縁体を介して絶縁保持された中心電極と、取付金具に接合された接地電極とを備える。そして、中心電極の絶縁体から露出した部分と接地電極とを対向させ、この対向部(火花放電部)に、火花放電が行われる放電ギャップを形成する。さらに、プラグの長寿命、高性能化のために、接地電極(通常Ni基合金)の放電ギャップ部分に火花放電部電極材としてのPt(白金)合金を溶接することが行われている。
【0003】
しかしながら、Pt合金では、将来のより厳しいエンジン仕様に対し、耐消耗性の不足が予想される。そこで、近年、Pt合金よりも高融点であるIr(イリジウム)を主成分とするIr合金の使用が検討されており、例えば、特開平8−298178号公報には、Ir合金チップを上記火花放電部電極材として用いたものが提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、Irを主成分とするIr合金即ちIr量が50重量%以上のIr合金おいては、Ni(ニッケル)基合金からなる接地電極に接合するには、抵抗溶接では接合力が弱く、レーザ溶接等を用いて確実にNiとIrとの合金を主成分とする溶融部を形成する必要がある。
【0005】
しかし、上記従来の構成では、NiとIrとが溶融しあって形成される溶融部は火花放電部近傍に存在するとともに、当然ながら火花放電部電極材としてのIr合金チップよりもIrの量が少ない。そのため、該溶融部は火花消耗性が悪く、放電によって消耗してしまい、Ir合金チップが接地電極から脱落してしまうという問題が生じる。
【0006】
本発明は上記問題に鑑み、Irを主成分とするIr合金を火花放電部電極材として接地電極に溶接してなる内燃機関用スパークプラグにおいて、該火花放電部電極材の脱落を防止し、プラグの長寿命化を図ることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、Irを主成分とするIr合金と接地電極との溶融部を、火花放電部近傍に存在させない、即ち、火花放電部において接地電極側をIrを主成分とするIr合金のみで構成することに着目し、Ir合金とこれを溶接する接地電極母材との配置関係等について鋭意検討した結果、なされたものである。
【0008】
即ち、請求項1記載のスパークプラグは、中心電極(30)と、該中心電極の先端部(31)を露出させた状態で該中心電極を絶縁保持する取付金具(10)と、Ni基合金からなる母材(41)及び該母材に溶接により固定されたIrを50重量%以上含むIr合金部材(42)を有する接地電極(40)とを備え、該母材を該中心電極の先端部の側方側にて該取付金具に固定し、該Ir合金部材を、その先端部(43)が該中心電極の先端部に対向するように該母材の先端部(41a)から径方向へ延びたものとし、該Ir合金部材の先端部と該中心電極の先端部との対向部に放電ギャップ(50)を形成するようにしたことを特徴としている。
【0009】
本発明によれば、溶接によるIr合金部材と母材との溶融部が、放電ギャップの延長線上およびその近傍に存在することが無いから、火花消耗によって火花放電部電極材としてのIr合金部材が脱落するのを防止し、プラグの長寿命化を図ることができる。
【0010】
また、請求項2記載のスパークプラグは、Ir合金部材(42)を、母材(41)に対して溶接によって互いに溶け込み合った溶融部(45)を形成して固定したものとしたことを特徴とするものである。このような溶融部を形成する方法としては、レーザ溶接、プラズマ溶接及びアルゴン溶接等のいずれか1種を用いることができる。
【0011】
また、請求項2及び請求項3記載の発明について、更に溶融部の形状、寸法等の検討をすすめた結果、請求項4及び請求項5記載の発明を実験的に見出すに至った。即ち、請求項4記載の発明では、Ni基合金からなる母材(41)とIr合金部材(42)との溶融部(45)において、該溶融部の該Ir合金部材の内部への溶け込み深さDを、0.2mm以上としたことを特徴としている。それによって、該母材と該Ir合金部材との固定強度を安定して良好に維持でき、本発明の目的をより高いレベルで実現できる。
【0012】
さらに、請求項5記載の発明のように、溶融部(45)がIr合金部材(42)を貫通していない構成とすることにより、いっそう良好な母材とIr合金部材との固定強度を確保できる。
【0013】
また、請求項6記載の発明では、請求項2〜請求項5のスパークプラグにおける前記溶融部(45)において、該溶融部と中心電極(30)の先端部(31)との最短距離Lを、該放電ギャップの間隔Gよりも大きくしたことを特徴としている。
【0014】
スパークプラグはその機能上、当然放電ギャップのみにおいて放電(飛び火)しなければならず、それ以外の部位で放電が発生することは好ましくない。また、放電は部材間の間隔(距離)が小さいと発生しやすく、大きいと発生しにくい。従って、上記最短距離Lを放電ギャップの間隔Gよりも大きくすれば、溶融部と中心電極の先端部との間の放電を抑制し、溶融部の消耗を抑制できる。
【0015】
また、上記の最短距離Lと間隔Gとを種々変えた場合について実験検討した結果、請求項7の発明のように、上記最短距離Lを放電ギャップの間隔Gよりも0.2mm以上大きくすれば、ほぼ放電ギャップのみで放電が起こり、溶融部と中心電極の先端部との間の余分な放電を確実に防止できることを見出した。
【0016】
また、請求項8記載の発明は母材とIr合金部材との固定構造の具体的手段を提供するものであるが、Ir合金部材(42)の一部を母材(41)に挿入した上、該挿入部分にて溶接するようにしているから、より強固な固定構造とできる。また、Ir合金部材(42)は、請求項9記載の発明のようなIrを50重量%以上(好ましくは70重量%以上)含んだものにできる。
【0017】
また、請求項記載の発明は、筒形状の取付金具(10)における中心電極(30)の露出側の一端面に母材(41)を固定する構造であって、該一端面がIr合金部材(42)が延びる方向と略平行な面となっており、該一端面のうち該中心電極寄りの少なくとも接地電極(40)が取り付けられた端部に逃げ角(13)を施し、該逃げ角の寸法Cを0mmよりも大きく2.0mm以下の範囲としたことを特徴としている。
【0018】
例えば、スパークプラグをコージェネレーション、ガス圧送用ポンプに使用する場合、火花消耗により増加したギャップを定期的に初期ギャップに戻す必要がある。その場合、本発明においては、接地電極の母材が逃げ角部分の傾斜面に沿って曲がりやすくなっているため、母材を固定部分と反対側から押圧することで、簡単にIr合金部材の先端部を中心電極の先端部に近づけることができ、増加した放電ギャップを狭くすることができる。
【0019】
ここで、逃げ角の寸法Cが0mmよりも大きければギャップ調整が比較的容易に達成でき、また、寸法Cが2.0mm以上であると母材(41)を接合する場所が小さくなるため、2.0mm以下が望ましい。
【0020】
また、請求項10記載の発明では、母材(41)と取付金具(10)との間に、中間部材(60)を介在させたことを特徴としており、これにより該取付金具を加工することなくギャップ調整が容易にできる。
【0021】
また、請求項11以下の発明は、上記請求項及び請求項10記載の発明の効果である放電ギャップ調整を容易に行うことを目的としてなされたものである。まず、請求項11記載の発明では、中心電極(30)と、該中心電極の一端を保持する取付金具(10)と、一方が該取付金具の端部に取り付けられ、他方が該中心電極との対向部にて放電ギャップ(50)が形成される略直棒形状の接地電極(40)とを備え、少なくとも該接地電極が取り付けられた該取付金具の端部(12)に、該端部を取付金具の内周面側に逃げ角(13)を形成したことを特徴としている。
【0022】
本発明は、上記請求項の発明と同様に、火花消耗により増加したギャップを定期的に初期ギャップに戻すときにギャップ調整をし易くすることを目的としたもので、取付金具の端部のうち接地電極が取り付けられた部位において、取付金具の内周面側に逃げ角を形成している。そのため、略直棒形状の接地電極を逃げ角の傾斜面に沿って曲がりやすくでき、接地電極を取付金具の固定部分とは反対側から押圧することで、簡単に接地電極の他方側を中心電極との対向部に近づけることができ、増加した放電ギャップを容易に調整できる。
【0023】
ここで、請求項12の発明のように、逃げ角(13)の寸法Cは0mmよりも大きく2mm以下であることが好ましい。これは、逃げ角の形成により請求項11の発明の効果を奏するとともに、該逃げ角寸法が2mmよりも大であると接地電極と取付金具との接合面積が小さくなる等、接合信頼性が確保しにくくなるためである。また、請求項13記載の発明は、請求項11または請求項12に記載の内燃機関用スパークプラグに用いて好適な接地電極(40)の具体的構成を提供するものである。
【0024】
また、請求項14記載の発明は、中心電極(30)と、該中心電極の一端を保持する取付金具(10)と、一方が該取付金具の端部に介在部材(60)を介して取り付けられ、他方が該中心電極との対向部にて放電ギャップ(50)が形成される略直棒形状の接地電極(40)とからなることを特徴とする内燃機関用スパークプラグを提供するものである。
【0025】
本発明によれば、接地電極と取付金具との間に介在する介在部材の材質や形状等を調整することで、接地電極に圧力をかけて介在部材を厚み方向に変形させることができるため、請求項10の発明と同様に、取付金具を加工することなく、簡単に接地電極を中心電極との対向部に近づけることができ、増加した放電ギャップを容易に調整できる。
【0026】
ここで、在部材(60)におけるその厚み方向と直交する断面の面積S2が、3.0mm2以上8.0mm2以下であることが好ましい。これは、該面積S2が3.0mm2未満だと、介在部材自体が細すぎて(接地電極の熱引けが悪くなり)スパークプラグにおける電極温度が高くなり、また、8.0mm2よりも大であると、取付金具との接合面積が大きすぎて接合が困難となるためである。
【0027】
また、請求項15の発明のように、介在部材(60)の厚みL2が、0.5mm以上3.0mm以下であることが好ましい。これは、該厚みL2が0.5mm未満であると、介在部材自身が厚み方向に変形しにくく、また、3.0mmよりも大であると、接地電極の燃焼室側への突き出し長さが大きくなり耐熱性確保の点から好ましくないためである。
【0028】
また、請求項16の発明では、介在部材(60)を、厚み方向と直交する断面が接地電極(40)の長手方向に短辺、該接地電極の長手方向と直交する方向に長辺を有する長方形である四角柱部材としているから、接地電極自体の変形も容易とできる。さらに、本発明では、該短辺の長さa2を2.0mm以下、該長辺の長さb2を4.0mm以下としている。これは、これら長さa2、b2がこの範囲から外れると、介在部材が大きくなり取付金具に搭載しにくくなるためである。
【0029】
また、請求項17の発明のように、介在部材(60)を、引張り強さが350N/mm2以上1300N/mm2以下のNi基合金もしくはFe基合金よりなるものとすることが好ましい。これにより、請求項14〜請求項16の内燃機関用スパークプラグにおける効果を適切に発揮できる。
【0030】
また、請求項18の発明では、中心電極(30)と、該中心電極の一端を保持する取付金具(10)と、一方が該取付金具の端部(12)に取り付けられ、他方が該中心電極との対向部にて放電ギャップ(50)が形成される略直棒形状の接地電極(40)とを備え、少なくとも該接地電極の一部に、溝部(70)を形成したことを特徴とする内燃機関用スパークプラグを提供するものである。
【0031】
本発明によれば、接地電極の長手方向と直交する断面において、溝部形成部は他の部位に比べて断面積を小さくできる。そのため、接地電極は溝部を中心に曲がりやすくなり、接地電極を取付金具の固定部分とは反対側から押圧することで、簡単に接地電極の他方側を中心電極との対向部に近づけることができ、増加した放電ギャップを容易に調整できる。
【0032】
また、請求項19の発明では、溝部(70)を、少なくとも接地電極(40)の厚み方向に溝を掘るように形成したことを特徴としており、接地電極を厚み方向、即ち、中心電極に向かう方向に曲げやすくできる。つまり、接地電極の幅方向に溝を掘るよりも、厚み方向に形成した方が、放電ギャップを調整すべく接地電極を所望の方向に曲げやすくできる。
【0033】
また、請求項20の発明のように、接地電極(40)の長手方向と直交する断面のうち溝部(70)における面積S3は、2.0mm2以上であることが好ましい。これは、該面積S3が2.0mm2未満であると、溝部が細すぎて接地電極の熱引けが悪くなり、電極温度が高くなるためである。
【0034】
また、請求項21の発明のように、溝部(70)の幅Pは、0.5mm以上2.0mm以下であることが好ましい。これは、該幅Pが0.5mm未満であると接地電極が曲げにくくなり、2.0mmよりも大きいと、細い部分である溝部が長すぎて接地電極の熱引けが悪くなり、電極温度が高くなるためである。
【0035】
また、接地電極をより曲げやすいものとするためには、請求項22の発明のように、溝部(70)は、少なくとも接地電極(40)の他方側先端より3.0mm以上離れていることが好ましい。また、請求項18〜請求項22記載の接地電極(40)においては、請求項23の発明のように、引張り強さが350N/mm2以上1400N/mm2以下のNi基合金もしくはFe基合金よりなるものを好適に用いることができる。
【0036】
なお、上記した括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図に示す実施形態について説明する。本実施形態は、例えばコージェネレーションにおける発電機のガスエンジン用のスパークプラグとして用いられる。図1に本実施形態に係るスパークプラグ100の全体構成を示す半断面図を示し、図2に図1中の丸で囲んだA部分の詳細を示す拡大断面図を示す。なお、図2中、(b)は(a)のB−B断面図である。
【0038】
スパークプラグ100は、円筒形状の取付金具(ハウジング)10を有しており、この取付金具10は、図示しないエンジンブロックに固定するための取付ネジ部11を備えている。取付金具10の内部には、アルミナセラミック(Al23)等からなる絶縁体20が固定されており、この絶縁体20の先端部21は、取付金具10の一端面(端部)12から露出するように設けられている。
【0039】
中心電極30は絶縁体20の軸孔22に固定され、絶縁体20を介して取付金具10に絶縁保持されており、中心電極30の先端部31は絶縁体20の先端部21から露出するように設けられている。図2に示す様に、この中心電極30は、内材がCu等の熱伝導性に優れた金属材料、外材がNi基合金等の耐熱性および耐食性に優れた金属材料により構成された円柱体をなす本体32と、この本体32に溶接固定された上記先端部31としての円板状のIr合金チップ31aから構成される。
【0040】
接地電極40は、Ni基合金からなる母材41、及び該母材41に溶接により固定されたIrを50重量%以上含む柱状のIr合金部材42を有し、全体として略直棒形状をなす。母材41は、中心電極30の先端部31の側方側にて取付金具10の一端面12に支持固定され、Ir合金部材42は、その先端部43が中心電極30の先端部31に対向するように母材41の先端部41aからプラグの径方向へ延びており、Ir合金部材42の先端部43と中心電極30の先端部31との対向部に放電ギャップ50が形成されている。
【0041】
ここで、図2に示す例では、母材41は矩形ブロック状をなし、Ir合金部材42は四角柱形状をなしている。また、母材41が固定された取付金具10の一端面12はIr合金部材42が延びる方向と略平行な面となっており、該一端面12のうち中心電極30寄りの端部、即ち取付金具10の内径側端部には、逃げ角(テーパ部)13が施されている。
【0042】
また、Ir合金部材42は、先端部43とは反対側の端部が母材41に形成された挿入穴44に挿入され、この挿入部分にてレーザ溶接されることにより固定されている。そして、母材41とIr合金部材42との溶接部において、これら両材41、42が互いに溶け込み合った溶融部45が、母材41の外表面からIr合金部材42の内部に渡って形成されており、両材41、42の接合を確保している。なお、溶融部45の形状は、切断面を金属顕微鏡等で観察することで知ることができる。
【0043】
ここで、中心電極30の先端部31としてのIr合金チップ31aは、耐消耗性向上のために、接地電極40のIr合金部材42と同様、Irを50重量%以上(好ましくは70重量%以上)含むIr合金よりなる。なお、中心電極30において本体32とIr合金チップ31aとの溶接部分は絶縁体20により被覆されているため、この溶接部分においては、上述の接地電極に起こるような放電による消耗の問題は生じない。
【0044】
また、上記中心電極30における本体32の外材及び接地電極40の母材41に用いられるNi基合金としては、例えば、インコネル(登録商標)を採用できる。また、接地電極40において、Irを主成分とするIr合金よりなるIr合金部材42としては、50重量%以上のIrに対してRh(ロジウム)、Pt、Ru(ルテニウム)、Pd(パラジウム)およびW(タングステン)のうち少なくとも1種が添加されているものを採用できる。例えば、Ir−10Rh合金(Irが90重量%、Rhが10重量%のもの)を採用できる。
【0045】
次に、本実施形態にかかるスパークプラグの製造方法について、接地電極の製造方法を中心に説明するが、他の部分の製造工程については、周知であるため説明を省略する。なお、図3〜図5は、スパークプラグ100の製造方法を示す工程図であり、図5(a)〜(c)では、図2(b)に対応した断面にて、各工程中の状態を模式的に示してある。
【0046】
まず、図3(a)及び(b)に示すカップ作製工程を行う。ここで(b)は(a)中のC−C断面図である。予め冷間鍛造等により加工されたインコネル(商標名)よりなるカップ100を作製する。このカップ100は、最終的に母材41となるもので、一端が開口部101、他端が閉塞した底部102を形成する円筒形のカップ部を有する。カップ100における各部寸法は、例えば、外径d1がφ3.5mm、内径d2がφ2.2mm、カップ部の深さd3が1.5mm、カップ100の全長d4が5.5mmとできる。
【0047】
次に、図3(c)及び(d)に示すプレス工程を行う。ここで(d)は(c)中のD−D断面図である。即ち、上記カップ100をプレス(例えば1.0ton)し、カップ部の深さd3及び全長d4を変えずに、楕円筒形とする。プレス後のカップ100における各部寸法は、例えば、長径方向における外径d5が4.5mm、内径d6が3.0mm、短径方向における外径d7が2.5mm、内径d8が1.2mmとできる。
【0048】
次に、プレス後のカップ100を真空中で焼鈍する(真空焼鈍工程)。例えば1000℃で3時間、焼鈍する。次に、図4(a)に示すIr合金部材挿入工程を行う。焼鈍後のカップ100のカップ部に、開口部101側からIr合金部材42を挿入するのであるが、上記寸法例のカップ100に対しては、例えば、幅2.5mm、厚さ1.0mm、長さ5.0mmの四角柱形状のIr合金部材42を挿入する。
【0049】
そして、図4(b)に示すかしめ工程においては、Ir合金部材42が挿入されたカップ100を、図4(b)中の実線及び破線の白抜き矢印に示す様に、両側又は全周方向からかしめ、Ir合金部材42とカップ100とを固定する。
【0050】
次に、図4(c)及び(d)に示すレーザ溶接工程を行う。ここで(d)は(c)中の下方(矢印E方向)から見た図である。レーザ溶接は、上記かしめ工程と同様、図4(c)中の実線及び破線の白抜き矢印に示す様に、両側又は全周方向から行う。ここで、レーザ溶接条件は、例えば、エネルギーが33J(パルス幅が15msec、充電電圧が360V)、デフォーカスが+2mm(つまりレーザの焦点が照射面よりも2mm奥にある)、レーザのビーム径がφ0.4mmとできる。このような条件にて照射することにより、上記溶融部45が形成され、単体としての接地電極40が形成される。
【0051】
続いて、図5(a)に示す様に、この接地電極40における母材41(つまりカップ100)を、取付金具10の一端面12に抵抗溶接等により溶接し、固定する(接地電極取付工程)。その後、Ir合金部材42先端部43が中心電極30の先端部31に対向するように、取付金具10を、中心電極30が設けられた絶縁体20に組付ける(図5(b)参照、組付工程)。
【0052】
その後、図5(c)に示す様に、接地電極40の母材41を押圧することにより、Ir合金部材42の先端部43と中心電極30の先端部31との間の放電ギャップ50の間隔を調整する(ギャップ調整工程)。こうしてスパークプラグ100が完成する。
【0053】
ところで、本実施形態のスパークプラグ100によれば、Ir合金部材42と母材41との溶融部45が、放電ギャップ50の側方の離れた位置にあり、放電ギャップ50の延長線上およびその近傍に存在することが無いから、火花消耗によって火花放電部電極材としてのIr合金部材42が脱落するのを防止し、プラグの長寿命化を図ることができる。
【0054】
次に、本実施形態の特徴的部分について、より詳細に述べる。本実施形態では、図2に示す溶融部45と中心電極30の先端部31との最短距離Lを、放電ギャップ50の間隔Gよりも大きくしたことを特徴としている。これは、これら寸法L、Gを種々変えた場合について実験検討した結果得られた知見を根拠とするものである。その一検討例を図6に示す。
【0055】
図6(b)及び(c)に示す様に、本実施形態のスパークプラグとして、溶融部45が放電ギャップ50に面している構成のものについて検討した。図6(b)に示すものは、Ir合金部材42を、母材41に形成された挿入穴44に挿入し、母材41の先端部における母材41とIr合金部材42との界面をレーザ溶接することにより、溶融部45を形成したものである。また、図6(c)に示すものは、Ir合金部材42を母材41の先端部に接触させた状態で、両部材41、42の界面をレーザ溶接することにより、溶融部45を形成したものである。
【0056】
ここで、接地電極40のIr合金部材42、及び中心電極30の先端部31としてIr−10Rh合金を採用した。そして、放電ギャップ50の間隔Gが0.3mm〜0.8mmの範囲において、上記最短距離L(寸法L)を変えたものについて、接地電極40の溶融部45への飛火頻度(溶融部飛火頻度)を測定した。該測定は、チャンバにプラグを取付け、ゲージ圧0.6MPaに加圧し、火花放電させることにより行った。寸法L(mm)と溶融部飛火頻度(%)との関係を図6(a)に示す。
【0057】
本発明者等の検討によれば、スパークプラグ100においては、溶融部45への飛火が20%以内となるように、溶融部45と中心電極30の先端部31との間の放電を抑制すれば、溶融部45の消耗を抑制できる。図6(a)から、上記最短距離L(寸法L)が放電ギャップの間隔Gよりも大きければ、溶融部飛火頻度を20%以内に抑制できている。
【0058】
また、図6(a)からわかるように、間隔G=0.3mmのとき寸法Lが0.5mm以上であれば、全て放電ギャップ50で飛火する。また、間隔G=0.5mmのとき寸法Lが0.7mm以上、間隔G=0.8mmのとき寸法Lが1.0mm以上であれば、全て放電ギャップ50で飛火し、溶融部45へ飛火することはない。従って、より好ましくは、L≧G+0.2(mm)であり、それによって、放電ギャップ50のみで良好に放電が起こり、溶融部45と中心電極30の先端部31との間の余分な放電を確実に防止できる。
【0059】
なお、上記したL>G及びL≧G+0.2(mm)の関係は、図2に示す様に、直接溶融部45が放電ギャップ50に面していない場合であっても、確保しておくことが好ましい。これは、図2において、中心電極30の先端部31とこれに近接する母材41との間で放電が発生した場合、母材41が消耗し、やがて溶融部45が放電ギャップ50に面して露出する可能性があるためである。実際に、図2に示す構成に対して、上記最短距離Lと間隔Gとの関係を適用したところ、溶融部45と中心電極30の先端部31との間の余分な放電を防止できることが確認できた。
【0060】
また、本実施形態では、図7に示す溶融部45のIr合金部材42内部への溶け込み深さDを、0.2mm以上とし、且つ溶融部45がIr合金部材42を貫通していない構成としたことを特徴としている。なお、図7は図2(b)に対応した断面図であり、溶融部45が貫通していないとは、図2(b)及び図7に示す様に、対向して位置する溶融部45が互いにつながっていないことである。
【0061】
この特徴点は、Ir合金部材42を母材41との接合性をより高いレベルにて確保するために、レーザ溶接の最適化を進めた結果、見出されたものである。次に、その一検討例を図8に示すが、この検討例に用いたスパークプラグ100の接地電極40(母材:インコネル(登録商標)、Ir合金部材:Ir−10Rh合金)においては、溶接点数は片側3点ずつ計6点とし、溶け込み深さDを変えたものを用意した。また、溶け込み深さD方向におけるIr合金部材42の厚さTは1.0mmとした。
【0062】
図8は、溶け込み深さDの異なる(Dが0.1〜0.6mm)スパークプラグ100について耐久テストを行い、耐久後の引っ張り強度(kg)と溶け込み深さD(mm)との関係を表すグラフである。耐久テストは、6気筒2000ccエンジンで実施し、アイドル1分保持とスロットル全開(6000rpm)1分保持の繰り返しを100時間行うという運転条件で行った。ここで、耐久後の引っ張り強度が150kg以上であれば、高レベルな接合性を確保したとする。
【0063】
図8からわかるように、溶け込み深さDが小さいと引っ張り強度のレベルは低く、溶け込み深さDが0.2mm以上で高レベルな接合性が確保できる。また、図7に示す様に、両側の溶融部45が対向して位置する場合、溶け込み深さDが0.5mmで溶融部45の先端がつながる、即ち溶融部45がIr合金部材42を貫通するが、その場合強度が大きく低下してしまうこともわかった。
【0064】
また、溶け込み深さDを、0.2mm以上とし、且つ溶融部45が貫通していない構成としては、図9に示す構成であっても適用可能である。図9は、母材41の両側に配置された溶融部45が互い違いになっており、互いに対向していない構成である。この構成としたスパークプラグについて、上記同様に引っ張り強度(kg)と溶け込み深さD(mm)との関係を調べた結果の一例を、図10のグラフに示す。なお、図9においても厚さTは1.0mmとした。
【0065】
図10からわかるように、図9の構成については、溶け込み深さDが0.5mm以上でも、強度の低下が認められない。しかし、図10にて図示しないが、溶け込み深さDが1.0mm以上、即ち溶融部45がIr合金部材42を貫通する場合には、やはり、強度が大きく低下してしまうことを確認している。
【0066】
従って、図7及び図9の両構成において、溶融部45の溶け込み深さDを0.2mm以上とし、且つ溶融部45がIr合金部材42を貫通しないようにレーザ溶接を行えば、高いレベルの接合強度を確保出来、接合信頼性を向上することができる。
【0067】
以上の特徴的部分を踏まえた本実施形態の一寸法例を図11に示す。図11は上記図2(a)に対応するものでハッチングは省略してある。また、各寸法の単位はmmである。図11の例では、放電ギャップ50の間隔Gが0.3mm、溶融部45と中心電極30の先端部31との最短距離Lが1.5mm、接地電極40の母材41の厚さM1が2.5mm、Ir合金部材42の厚さTが1.0mm、母材41からのIr合金部材42の突出長さM2が3.5mm、円板状のIr合金チップ31a(先端部31)の直径M3が2.6mm、溶融部45の全長M4が1.0mm、逃げ角の寸法Cが1.0mmとしている。
【0068】
ところで、図12は従来のスパークプラグの形状を示すものであるが、この構造では、取付金具J1に取り付けられた接地電極J2が折れ曲がり形状となっており、絶縁体J3に保持された中心電極J4の対向部と放電ギャップを形成している。この構造では、接地電極J2の燃焼室内への突出高さhが大きくなる。一般に、スパークプラグでは接地電極の燃焼室への突き出し量が多いと電極温度が高くなる。そのため、特に、熱負荷の厳しいエンジン(コージェネレーション用等)においては、接地電極の耐熱性が不足するという問題が発生する。
【0069】
その点、本実施形態のスパークプラグ100によれば、上記図2(a)に示す様に、中心電極30と、中心電極30の一端を保持する取付金具10と、一方が取付金具10の一端面(端部)12に取り付けられ、他方が中心電極30との対向部にて放電ギャップ50が形成される略直棒形状の接地電極40とを備える構成としているため、接地電極40の燃焼室内への突出高さを低くでき、接地電極40の温度を低減できるため、接地電極の耐熱性を確保できる。
【0070】
なお、この問題を鑑みれば、接地電極40は、図2(a)に示すようなNi基合金からなる母材41とIrを50重量%以上含む柱状のIr合金部材42とよりなる構成に限らない。例えば、図13に示すような、接地電極40全体がNi基合金からなる1本の略直棒のものであってもよい。なお、図13中、上記図2(a)と同一部分には同一符号を付してある。
【0071】
また、図2(a)及び図13に示すように、略直棒形状の接地電極40とを備える内燃機関用スパークプラグにおいては、接地電極40を曲げることは容易では無く、放電ギャップ50のギャップ調整が困難になる。特に、コージェネレーション、ガス圧送用ポンプに使用する場合、火花消耗により増加したギャップ(例えば0.3mm程度増加する)を定期的に初期ギャップに戻すことが行われているが、それ故、ギャップ調整の容易さが求められる。
【0072】
つまり、このギャップ調整の問題は、中心電極と、該中心電極の一端を保持する取付金具と、一方が該取付金具の端部に取り付けられ、他方が該中心電極との対向部にて放電ギャップが形成される略直棒形状の接地電極とを備える内燃機関用スパークプラグにおいて、共通の問題である。
【0073】
このギャップ調整の問題に対して、本実施形態では、耐熱性に優れる略直棒形状の接地電極40とを備える内燃機関用スパークプラグにおいて、放電ギャップのギャップ調整を容易とすることを目的として、上記図2(a)に示す様に、取付金具10の一端面(端部)12のうち接地電極40が取り付けられた部位には、該端部12を取付金具10の内周面側に逃げ角13を形成した構成としている。なお、逃げ角13は、少なくとも接地電極40が取り付け部位にあれば良いが、全周に形成されていても良い。
【0074】
それによって、接地電極40の母材41が逃げ角13部分の傾斜面に沿って曲がりやすくなっているため、母材41を固定部分と反対側から押圧することで、簡単にIr合金部材42の先端部43を中心電極30の先端部31に近づけることができ、増加した放電ギャップ50を狭くし容易に調整できる。
【0075】
また、このギャップ調整の問題は、上述のように、接地電極40全体がNi基合金からなる1本の略直棒のもの(図13参照)であっても起こる。この場合の解決策を示した本実施形態の構成を図14(第1の例)に示す。ここで、図14は、上記図1中のA部を示す上記図2(a)の接地電極に対して、接地電極40を全体がNi基合金からなる1本の略直棒のものに変形したもので、上記図2(a)と同一部分には同一符号を付してある。
【0076】
図14においても、少なくとも接地電極40が取り付けられた取付金具10の一端面(端部)12には、一端面12を取付金具10の内周面側に切削加工等によって逃げ角13を形成した構成としている。そのため、略直棒形状の接地電極40を逃げ角13の傾斜面に沿って曲がりやすくでき、接地電極40を取付金具10の固定部分とは反対側から押圧することで、簡単に接地電極40を中心電極30との対向部(先端部31)に近づけることができ、増加した放電ギャップを容易に調整できる。
【0077】
ここで、上記図2(a)及び図14に示す取付金具10の一端面12に施された逃げ角寸法Cは、0mmよりも大きく2.0mm以下の範囲とすることが好ましい。これは、逃げ角13が少しでも形成されていれば、上記放電ギャップを容易に調整できる効果を奏するとともに、該逃げ角寸法Cが2mmよりも大であると接地電極40と取付金具10との接合面積が小さくなる等、接合信頼性が確保しにくくなるためである。
【0078】
このような逃げ角を形成した構成について、本発明者等が行った、より詳細な検討例につき、図14を参照して説明する。図14中には、各種の寸法C、S1、a1、b1、L1を示してある。ここで、寸法Cは上記逃げ角寸法Cである。また、図14において、接地電極40は、その長手方向と直交する断面(図中のk−k断面)が長方形をなす四角柱形状であって、その長方形の長辺を含む側面にて取付金具10の一端面12に取り付けられたものとする。
【0079】
そして、接地電極40における上記長方形断面の面積(接地電極断面積)をS1、該長方形断面における短辺の長さ(接地電極厚み)をa1、該長方形断面における長辺の長さ(接地電極幅)をb1、接地電極40の取付金具10の一端面(端部)12から延びる長さ(接地電極突出長さ)をL1としている。また、Wは、接地電極40を変形させて放電ギャップ50を0.3mm狭くするのに必要な力(ギャップ調節力)である。
【0080】
まず、接地電極断面積S1(=a1×b1)については、小さすぎると、接地電極40の耐熱性が不足することから、3.0mm2以上としてその耐熱性確保を図ることが好ましく、また、大きすぎると、取付金具との接合面積が大きすぎて接合が困難となるため、8.0mm2以下が好ましい。
【0081】
また、上記接地電極幅b1については、小さすぎると、接地電極40と取付金具10との接合信頼性が不足することから1.2mm以上であることが好ましく、大きすぎると、取付金具10との接合範囲を逸脱するため4.0mm以下であることが好ましい。また、接地電極突出長さL1については、スパークプラグの実用的な構成を考慮した場合、経験的に6.0mm以下であることが好ましい。
【0082】
そして、逃げ角寸法Cについては、上述のように、0mmよりも大きく2.0mm以下の範囲とすることが好ましい。また、上記ギャップ調節力Wについては、エンジン運転中に振動や燃焼圧等で接地電極40を変形させないため、200N以上であることが好ましく、また、ハンマー等で接地電極40を叩いて変形させる等、作業者が容易にギャップ成形できる限界荷重を考慮した場合、800N以下であることが好ましい。
【0083】
ここで、上記各寸法S1、C、a1、b1を上記の好ましい範囲において、接地電極40が最もギャップ成形し易い(最も曲げやすい)場合を考えると、接地電極断面積S1を下限の3.0mm2(ここで、接地電極厚みa1が0.75mm、接地電極幅b1が4.0mm)、逃げ角寸法Cを上限の2.0mmとできる。この寸法において、接地電極40の構成材料の引張り強さ(単位:N/mm2)と上記ギャップ調節力W(単位:N)との関係を、種々の接地電極突出長さL1について検討した結果を図15に示す。
【0084】
この図15に示すグラフから、接地電極突出長さL1が短いほど、また、上記引張り強さが大きいほど、接地電極40が変形しにくくギャップ成形しにくいことがわかる。Ni基合金における最小の引張り強さは、350N/mm2である。このことから、接地電極40全体をNi基合金とした場合、ギャップ調節力Wを800N以下とするためには、接地電極突出長さL1は2mm以上であることが好ましい。
【0085】
また、接地電極40を変形しやすくすべく、接地電極突出長さL1を2mmよりも長くすれば、上記引張り強さがより大きいNi基合金を使用できる。しかし、その場合でも、図15のグラフからわかるように、接地電極突出長さL1を上限の6.0mmとしたときには、ギャップ調節力Wを800N以下とするためには、該引張り強さは1200N/mm2以下であることが好ましい。
【0086】
また、上記各寸法L1、C、b1が上記の好ましい範囲において、接地電極40が最もギャップ成形し易い場合を考えると、接地電極突出長さL1を上限の6.0mm、逃げ角寸法Cを上限の2.0mm、接地電極幅b1を下限の1.2mmとできる。この寸法において、接地電極40の構成材料の引張り強さ(単位:N/mm2)と上記ギャップ調節力W(単位:N)との関係を、種々の接地電極厚みa1について検討した結果を図16に示す。
【0087】
この図16に示すグラフから、接地電極厚みa1が厚いほど、また、上記引張り強さが大きいほど、接地電極40が変形しにくくギャップ成形しにくいことがわかる。Ni基合金における最小の引張り強さは、350N/mm2であることから、接地電極40全体をNi基合金とした場合、ギャップ調節力Wを800N以下とするためには、接地電極厚みa1は2.0mm以下であることが好ましい。
【0088】
これら図15及び図16に示すグラフを含む検討結果をまとめると、接地電極40は、その長手方向と直交する断面が長方形をなす四角柱形状であって、その長方形の一辺を含む側面にて取付金具10に取り付けられたものである場合、逃げ角13によって放電ギャップを容易に調整できる効果を好適に発揮するためには、以下のような構成であることが好ましい。
【0089】
即ち、接地電極40は、引張り強さが350N/mm2以上1200N/mm2以下のNi基合金よりなること。接地電極断面積S1は、3.0≦S1≦8.0(mm2)であること。接地電極厚みa1は、a1≦2.0(mm)であること。接地電極幅b1は、1.2≦b1≦4.0(mm)であること。接地電極突出長さL1は、2.0≦L1≦6.0(mm)であること。
【0090】
このように、逃げ角13によって放電ギャップを容易に調整できる効果(第1の例)について述べてきたが、耐熱性に優れる略直棒形状の接地電極40を備える内燃機関用スパークプラグにおいて、放電ギャップのギャップ調整を容易とすることを目的とする本実施形態の他の例(第2の例)について、次に述べる。
【0091】
この本実施形態の第2の例は、中心電極と、該中心電極の一端を保持する取付金具と、一方が該取付金具の端部に介在部材を介して取り付けられ、他方が該中心電極との対向部にて放電ギャップが形成される略直棒形状の接地電極とからなる内燃機関用スパークプラグを提供するものである。
【0092】
まず、図17は、上記図2(a)に示す構成に本第2の例を適用したものである。即ち、接地電極40の母材41と取付金具10の間にNi基合金(インコネル(登録商標)等)からなる中間部材(介在部材)60を介在させたものである。なお、図17中、上記図2(a)と同一部分には同一符号を付してある。
【0093】
それによって、接地電極40と取付金具10との間に介在する中間部材(介在部材)60の材質や形状等を調整することで、接地電極40をハンマー等で叩いて圧力をかけて中間部材(介在部材)60を厚み方向に変形させることができる。そのため、取付金具10に上記逃げ角(テーパ部)等の加工を施すことなく、簡単に接地電極40(Ir合金部材42の先端部43)を中心電極30との対向部に近づける
ことができ、増加した放電ギャップ50を容易に調整できる。
【0094】
また、図18は、接地電極40全体がNi基合金からなる1本の略直棒のものに、本第2の例を適用したもので、接地電極40は、一方が取付金具10の一端面(端部)12に中間部材(介在部材)60を介して取り付けられ、他方が中心電極30との対向部にて放電ギャップ50が形成されている。ここで、図18中、上記図17と同一部分には同一符号を付してある。
【0095】
図18においても、接地電極40と取付金具10との間に介在する中間部材(介在部材)60の材質や形状等を調整することで、接地電極40に圧力をかけて中間部材(介在部材)60を厚み方向に変形させることができる。そのため、取付金具10に上記逃げ角等の加工を施すことなく、簡単に接地電極40を中心電極30との対向部に近づけることができ、増加した放電ギャップ50を容易に調整できる。
【0096】
この第2の例の製造方法は、例えば図17を例にとると、図19に示す様に、取付金具10の一端面12に中間部材60を溶接し(図19(a))、その上に接地電極40の母材41を溶接し(図19(b))、その後、組付工程及びギャップ調整工程(図19(c))を行い、図17に示す構成を得る。
【0097】
ここで、図18に示した全体がNi基合金からなる1本の略直棒の接地電極40について、中間部材(以下、介在部材という)60の寸法等の特徴を述べる。図18中、介在部材60におけるその厚み方向(図中の上下方向)と直交する断面の面積(介在部材断面積)をS2、介在部材60の厚み(介在部材厚み)をL2としている。
【0098】
また、介在部材60を、その厚み方向と直交する断面(図18中のm−m断面)が接地電極40の長手方向に短辺、接地電極40の長手方向と直交する方向に長辺を有する長方形である四角柱部材とした場合は、長辺と短辺とを逆にした場合よりも、介在部材60を支点として接地電極40自体の変形も容易とできる。勿論、長辺と短辺を逆にした場合でも効果はある。図18中には、接地電極40をこのような四角柱部材とした場合において、該短辺の長さ(介在部材の断面短辺長さ)をa2、該長辺の長さ(介在部材の断面長辺長さ)をb2として示してある。この場合、介在部材断面積S2は、a2×b2である。
【0099】
このような介在部材60の各寸法S2、L2、a2、b2において、まず、介在部材断面積S2は、3.0mm2以上8.0mm2以下であることが好ましい。これは、該面積S2が3.0mm2未満だと、介在部材60自体が細いものとなって接地電極40の熱引けが悪くなり、また、8.0mm2よりも大であると、取付金具10の一端面12から介在部材60がはみ出したり、取付金具10との接合面積が大きすぎて溶接等による接合が困難となるためである。
【0100】
また、上記介在部材厚みL2は、0.5mm以上3.0mm以下であることが好ましい。これは、該介在部材厚みL2が0.5mm未満であると、介在部材自身が厚み方向に変形しにくく、また、3.0mmよりも大であると、接地電極40の燃焼室側への突き出し量が大きくなり耐熱性確保の点から好ましくないためである。
【0101】
また、介在部材の断面短辺長さa2は2.0mm以下、介在部材の断面長辺長さb2は4.0mm以下であることが好ましい。これは、これら長さa2、b2がこの範囲から外れると、介在部材60が大きくなり取付金具10に搭載しにくくなるためである。さらに、介在部材断面積S2の下限が3.0mm2であることから、介在部材の断面短辺長さa2は0.75mm以上、介在部材の断面長辺長さb2は1.5mm以上であることが好ましい。また、介在部材60は、引張り強さが350N/mm2以上1300N/mm2以下のNi基合金よりなるものとすることが好ましい。
【0102】
次に、介在部材60の介在部材厚みL2について、本発明者等が行った検討例を参照して、より具体的に説明する。上記介在部材断面積S2が上記の好ましい範囲(3.0mm2以上8.0mm2以下)において、接地電極40が最もギャップ成形し易い場合を考えると、介在部材断面積S2を下限の3.0mm2(ここで、接地電極厚みa2が0.75mm、接地電極幅b2が4.0mm)とできる。
【0103】
この寸法において、介在部材(中間部材)60の構成材料の引張り強さ(単位:N/mm2)と上記ギャップ調節力W(単位:N)との関係を、種々の介在部材厚みL2について検討した結果を図20に示す。また、図20においても、上記ギャップ調節力Wの好ましい範囲は、200N以上800N以下である。
【0104】
この図20に示すグラフから、介在部材厚みL2が薄いほど、また、上記引張り強さが大きいほど、介在部材60が変形しにくくギャップ成形しにくいことがわかる。Ni基合金における最小の引張り強さは、350N/mm2であることから、介在部材60全体をNi基合金とした場合、ギャップ調節力Wを800N以下とするためには、介在部材厚みL2は0.5mm以上であることが好ましい。
【0105】
また、介在部材60をその厚み方向に変形しやすくすべく、介在部材厚みL2を0.5mmよりも厚くすれば、上記引張り強さがより大きいNi基合金を使用できる。しかし、その場合でも、図20のグラフからわかるように、介在部材厚みL2を上限の3.0mmとしたときには、ギャップ調節力Wを800N以下とするためには、該引張り強さは1300N/mm2以下であることが好ましい。
【0106】
ここで、本第2の例における介在部材の好ましい構成についてまとめておく。即ち、介在部材60は、引張り強さが350N/mm2以上1300N/mm2以下のNi基合金よりなること。介在部材断面積S2は、3.0≦S2≦8.0(mm2)であること。介在部材厚みL2は、0.5≦L2≦3.0(mm)であること。介在部材の断面短辺長さa2は、a2≦2.0(mm)であること。介在部材の断面長辺長さb2は、b2≦4.0(mm)であること。
【0107】
このように、本実施形態の第1及び第2の例を述べてきたが、次に、耐熱性に優れる略直棒形状の接地電極40を備える内燃機関用スパークプラグにおいて、放電ギャップのギャップ調整を容易とすることを目的とするもう一つの他の例(第3の例)を述べる。
【0108】
この本実施形態の第3の例は、中心電極と、該中心電極の一端を保持する取付金具と、一方が該取付金具の端部に取り付けられ、他方が該中心電極との対向部にて放電ギャップが形成される略直棒形状の接地電極とを備え、少なくとも該接地電極の一部に、溝部を形成したことを特徴とする内燃機関用スパークプラグを提供するものである。
【0109】
図21は、本第3の例を、接地電極40全体がNi基合金からなる1本の略直棒のものに適用した例を示す概略断面図である。図21は上記図2(a)と対応する断面を示し、図中、上記図2(a)と同一部分には同一符号を付してある。図21に示す様に、接地電極40には、その表面から内部に渡って切削加工等により溝を掘ることにより溝部70が形成されている。なお、本第3の例は、上記図2(a)に示す接地電極40においても適用可能であり、この場合、接地電極40の母材41に、溝部を形成すればよい。
【0110】
本第3の例によれば、接地電極40の長手方向と直交する断面において、溝部形成部は他の部位に比べて断面積が小さくなる。そのため、接地電極40は溝部70を中心に曲がりやすくなり、接地電極40を取付金具10の固定部分とは反対側から押圧することで、簡単に接地電極40の他方側を中心電極30との対向部(先端部31)に近づけることができ、増加した放電ギャップ50を容易に調整できる。
【0111】
また、この溝部70は、少なくとも接地電極40の厚み方向(図21中の上下方向)に溝を掘るように形成することが好ましい。それによって、接地電極40を厚み方向、即ち、中心電極30に向かう方向に曲げやすくできる。つまり、接地電極40の幅方向(図21中の紙面垂直方向)に溝を掘るよりも、厚み方向に形成した方が、放電ギャップ50を調整すべく接地電極40を所望の方向に曲げやすくできる。勿論、接地電極40の幅方向に溝を掘っても良い。
【0112】
また、図21には、接地電極40の長手方向と直交する断面において、溝部70における断面(図中、n−n断面に平行に沿った断面)、及び、溝部70が形成されていない断面(図中、n−n断面)が示してあり、前者断面の面積(溝部断面積)をS3、後者断面の面積(非形成部断面積)をS4としている。ここで、上記の通り、溝部断面積S3は非形成部断面積S4よりも小なることは勿論である。
【0113】
ここで、溝部断面積S3は、2.0mm2以上であることが好ましい。これは、該面積S3が2.0mm2未満であると、溝部70が細すぎて接地電極40の熱引けが悪くなり、電極温度が高くなるためである。また、図21に示す溝部70の幅(溝幅)Pは、0.5mm以上2.0mm以下であることが好ましい。これは、該溝幅Pが0.5mm未満であると接地電極40が曲げにくくなり、2.0mmよりも大きいと、細い部分である溝部70が長すぎて接地電極40の熱引けが悪くなり、電極温度が高くなるためである。
【0114】
また、接地電極40をより曲げやすいものとするためには、溝部70は、少なくとも接地電極40の他方側先端より3.0mm以上離れていることが好ましい。つまり、図21において、接地電極40の他方側先端から溝部形成位置までの長さ(溝部位置長さ)L3が、3.0mm以上であることが好ましい。
【0115】
なお、図21に示す例では、接地電極40は、その長手方向と直交する断面が長方形をなす四角柱形状であって、その長方形の長辺を含む側面にて取付金具10の一端面(端部)12に取り付けられたものである。このような四角柱形状の場合、溝部断面積S3、非形成部断面積S4は、それぞれ、短辺a3、a4と長辺b3、b4との積となる。
【0116】
そして、該四角柱形状の場合、接地電極40の厚み方向に溝を掘るように溝部70を形成すると、図21中の短辺(溝部の短辺)a3が短辺(上述の接地電極厚みa1に相当)a4よりも短くなる。なお、長辺(溝部の長辺)b3は長辺(上述の接地電極幅b1に相当)b4よりも短くても同じであっても良い。さらに、溝部70の長辺b4は、上述の接地電極幅b1と同様の理由から4.0mm以下が好ましい(即ち、b3≦4.0mm)。また、該長辺b4が4.0mm以下及び溝部断面積S3が2.0mm2以上が好ましいことから、溝部70の厚み即ち短辺a3は0.5mm以上であることが好ましい。
【0117】
また、本第3の例においては、接地電極40として、引張り強さが350N/mm2以上1400N/mm2以下のNi基合金よりなるものを好適に用いることができる。
【0118】
次に、溝部70における寸法(溝幅P、溝部位置長さL3)について、本発明者等が行った検討例を参照して、より具体的に説明する。接地電極40を最も曲げやすくギャップ成形し易い寸法として、上記溝部断面積S3を下限の2.0mm2(ここで、短辺a3が0.5mm、長辺b3が4.0mm)とし、上溝部位置長さL3を実用上の上限の6.0mmとした。
【0119】
この寸法において、接地電極40の構成材料の引張り強さ(単位:N/mm2)と上記ギャップ調節力W(単位:N)との関係を、種々の溝幅Pについて検討した結果を図22に示す。また、図22においても、ギャップ調節力Wの好ましい範囲は200N以上800N以下である。
【0120】
この図22に示すグラフから、溝幅Pが狭いほど、また、上記引張り強さが大きいほど、接地電極40が変形しにくくギャップ成形しにくいことがわかる。Ni基合金における最小の引張り強さは、350N/mm2であることから、接地電極40全体をNi基合金とした場合、ギャップ調節力Wを800N以下とするためには、溝幅Pは0.5mm以上であることが好ましい。
【0121】
また、接地電極40を変形しやすくすべく、溝幅Pを0.5mmよりも大きくすれば、上記引張り強さがより大きいNi基合金を使用できる。しかし、その場合でも、図22のグラフからわかるように、溝幅Pを上限の2.0mmとしたときには、ギャップ調節力Wを800N以下とするためには、該引張り強さは1400N/mm2以下であることが好ましい。
【0122】
また、接地電極40の構成材料の引張り強さ(単位:N/mm2)と上記ギャップ調節力W(単位:N)との関係を、種々の溝部位置長さL3について検討した結果を図23に示す。図23の検討例では、接地電極40を最も曲げやすくギャップ成形し易い寸法として、上記溝部断面積S3を下限の2.0mm2(ここで、短辺a3が0.5mm、長辺b3が4.0mm)とし、上溝幅Pを上限の2.0mmとした。また、図23においても、ギャップ調節力Wの好ましい範囲は200N以上800N以下である。
【0123】
この図23に示すグラフから、溝部位置長さL3が短いほど、また、上記引張り強さが大きいほど、接地電極40が変形しにくくギャップ成形しにくいことがわかる。Ni基合金における最小の引張り強さは、350N/mm2であることから、接地電極40全体をNi基合金とした場合、ギャップ調節力Wを800N以下とするためには、溝部位置長さL3は3.0mm以上であることが好ましい。
【0124】
ここで、本第3の例における接地電極40及び溝部70の好ましい構成についてまとめておく。即ち、接地電極40は、引張り強さが350N/mm2以上1400N/mm2以下のNi基合金よりなること。溝部断面積S3と非形成部断面積S4は、2.0≦S3<S4(mm2)であること。溝幅Pは、0.5≦P≦2.0(mm)であること。溝部位置長さL3は、3.0≦L3であること。溝部の短辺a3と溝部以外の接地電極の短辺a4とは、0.5≦a3<a4であること。溝部の長辺b3と溝部以外の接地電極の長辺b4とは、b3≦b4≦4.0であること。
【0125】
(他の実施形態)
なお、Ir合金部材42は四角柱だけでなく柱状であればよく、柱の軸と直交する方向の断面形状は限定されない。例えば、該断面形状は、図24(a)及び(b)に示す様に、台形、長円形状等であってもよい。また、図24(c)に示す様に、接地電極40は、母材41における固定部との反対側の部分にてIr合金部材42を溶接固定した構造(溶接構造の第1変形例)であってもよい。
【0126】
また、図25(a)及び(b)の各断面図に示す様に、溶融部45を母材41における放電ギャップ50とは反対側の部位から形成した構成(第2変形例)であっても良い。これらの構成は、図25(a)のように、母材41の放電ギャップ50に面した部位に、Ir合金部材42を接触させるか、または、図25(b)のように、母材41の放電ギャップ50に面した部位に段差部46を形成し、この段差部46にIr合金部材42を接触させ、放電ギャップ50とは反対側から母材41に対してレーザ溶接を施すことにより、形成することができる。
【0127】
また、溶融部45の位置は、図26(第3変形例)及び図27(第4変形例)に示す様なものであっても良い。図26において、(a)は図2に対応した概略断面図であり、(b)は(a)中のP−P断面図であり、(a)において接地電極40は外観を示している。図26に示す構成では、まず、母材41の先端部41aから径方向に凹み且つプラグの軸方向に母材41を貫通する切欠き部47を形成し、この切欠き部47内にIr合金部材42の一部をはめ込む。
【0128】
そして、放電ギャップ50に面した母材41の面と直交する面からレーザ溶接を行い、溶融部45を形成している。形成された溶融部45は、放電ギャップ50に面した母材41の面と略平行な方向にて、母材41からIr合金部材42内へ溶け込んだ形となっている。
【0129】
また、図27において、(a)は図2に対応した概略断面図であり、(b)は(a)中のQ矢視図であり、(c)は(b)中のR−R断面図である。なお、(a)において接地電極40は外観を示している。図27に示す構成では、まず、図26と同様に母材41に形成された切欠き部47内に、Ir合金部材42の一部をはめ込む。そして、切欠き部47において両部材41、42の界面に対して、プラグの軸方向に複数箇所レーザ溶接を施したものである。この場合、上記溶け込み深さDは図27(c)に示す寸法となる。
【0130】
ここで、上記図25及び図26に示すような、接地電極40の溶接構造の変形例においては、溶融部45が放電ギャップ50に面していないため、溶融部45への飛火を効果的に抑制できる。なお、母材41とIr合金部材42とが溶け合った溶融部45を形成する溶接方法としては、上記したレーザ溶接だけでなく、プラズマ溶接またはアルゴン溶接等でも良い。
【0131】
また、逃げ角を形成する場合、上記図14に示す接地電極突出長さ(接地電極40の取付金具10の端部12から延びる長さ)L1が、通常の寸法に対して長くなるように、逃げ角が形成されれば、上記例の如くテーパ部でなくともよい。例えば、図28に示す様に、取付金具10の一端面(端部)12のうち接地電極40が取り付けられた部位において、該端部12を取付金具10の内周面側に切欠きした形状であっても良い。この場合でも、上記の逃げ角の効果はある。
【0132】
また、接地電極40全体が例えばNi基合金よりなる1本の略直棒のものよりなる場合、図29に示す様に、接地電極において放電ギャップ50における中心電極30の先端部31と対向する部位に、Ir合金チップ等の貴金属チップ51を溶接固定しても良い。図では逃げ角を形成した例を挙げているが、これに限らず、上述の如く、介在部材や接地電極に溝を形成しても良い。また、上記スパークプラグ100は、コージェネレーション、ガス圧送用ポンプだけでなく、自動車のエンジンに用いてもよい。
【0133】
また、中心電極との間に放電ギャップを形成する接地電極が、Ni基合金からなる母材及び該母材に溶接により固定されたIrを50重量%以上含むIr合金部材を有する構成であって、母材とIr合金部材とが溶融部により接合したスパークプラグであれば、プラズマ溶接等を用いたものであっても良い。また、上記実施形態では、Ni基合金を用いた接地電極を使用したが、例えばFe−Cr−Al等のFe基合金よりなる接地電極であっても、同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るスパークプラグの全体構成を示す半断面図である。
【図2】図1中のA部分の詳細を示す拡大断面図である。
【図3】図1に示すスパークプラグの製造方法を示す工程図である。
【図4】図3に続く製造方法を示す工程図である。
【図5】図4に続く製造方法を示す工程図である。
【図6】(a)は、(b)及び(c)に示すスパークプラグを用いて、最短距離L及び間隔Gと溶融部飛火頻度との関係を検証した結果を示すグラフである。
【図7】溶融部の溶け込み深さ寸法を示す図である。
【図8】溶融部の溶け込み深さと引っ張り強度との関係を示すグラフである。
【図9】溶融部の他の配置構成を示す図である。
【図10】図9の構成における溶融部の溶け込み深さと引っ張り強度との関係を示すグラフである。
【図11】上記実施形態の一寸法例を示す図である。
【図12】従来の一般的なスパークプラグの形状を示す図である。
【図13】全体がNi基合金からなる1本の略直棒形状の接地電極を有するスパークプラグの要部を示す概略断面図である。
【図14】逃げ角の形成によってギャップ調整の解決を図ったスパークプラグの要部を示す概略断面図である。
【図15】接地電極材料の引張り強さとギャップ調節力Wとの関係から接地電極突出長さL1について検討した結果を示すグラフである。
【図16】接地電極材料の引張り強さとギャップ調節力Wとの関係から接地電極厚みa1について検討した結果を示すグラフである。
【図17】介在部材によってギャップ調整の解決を図ったスパークプラグの要部を示す概略断面図である。
【図18】介在部材によってギャップ調整の解決を図った他のスパークプラグの要部を示す概略断面図である。
【図19】図17に示すスパークプラグの製造方法を示す工程図である。
【図20】介在部材構成材料の引張り強さとギャップ調節力Wとの関係から介在部材厚みL2について検討した結果を示すグラフである。
【図21】溝部によってギャップ調整の解決を図ったスパークプラグの要部を示す概略断面図である。
【図22】接地電極成材料の引張り強さとギャップ調節力Wとの関係から溝幅Pについて検討した結果を示すグラフである。
【図23】接地電極成材料の引張り強さとギャップ調節力Wとの関係から溝部位置長さL3について検討した結果を示すグラフである。
【図24】Ir合金部材の種々の形状及び接地電極の溶接構造の第1変形例を示す図である。
【図25】接地電極の溶接構造の第2変形例を示す図である。
【図26】接地電極の溶接構造の第3変形例を示す図である。
【図27】接地電極の溶接構造の第4変形例を示す図である。
【図28】逃げ角の効果を有する切欠き形状の一例を示す概略断面図である。
【図29】貴金属チップを接合した接地電極に対して本発明の逃げ角の形成を適用した一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
10…取付金具、12…取付金具の一端面、13…逃げ角、30…中心電極、31…中心電極の先端部、40…接地電極、41…接地電極の母材、
42…Ir合金部材、43…Ir合金部材の先端部、44…挿入穴、
45…溶融部、50…放電ギャップ、60…中間部材(介在部材)、
70…溝部。

Claims (23)

  1. 中心電極(30)と、
    前記中心電極の先端部(31)を露出させた状態で前記中心電極を絶縁保持する取付金具(10)と、
    Ni基合金もしくはFe基合金からなる母材(41)及び該母材に溶接により固定されたIrを50重量%以上含むIr合金部材(42)を有する接地電極(40)とを備え、
    前記母材は、前記中心電極の先端部の側方側にて前記取付金具に固定され、
    前記Ir合金部材は、その先端部(43)が前記中心電極の先端部に対向するように前記母材の先端部(41a)から径方向へ延びており、
    前記Ir合金部材の先端部と前記中心電極の先端部との対向部に放電ギャップ(50)が形成されており、
    前記取付金具(10)は、その一端面(12)より前記中心電極(30)の先端部(31)を露出させた状態で前記中心電極を取り囲む筒形状をなしており、
    前記取付金具の一端面は、前記母材(41)が固定されるとともに、前記Ir合金部材(42)が延びる方向と略平行な面となっており、
    前記取付金具の一端面のうち前記中心電極寄りの少なくとも前記接地電極(40)が取り付けられた端部には逃げ角(13)が施され、該逃げ角の寸法Cは、0mmよりも大きく2.0mm以下の範囲にあることを特徴とする内燃機関用スパークプラグ。
  2. 前記Ir合金部材(42)は、前記母材(41)に対して溶接によって互いに溶け込み合った溶融部(45)を形成して固定されていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用スパークプラグ。
  3. 前記溶融部(45)は、レーザ溶接、プラズマ溶接及びアルゴン溶接のいずれか1種により形成されていることを特徴とする請求項2に記載の内燃機関用スパークプラグ。
  4. 前記溶融部(45)の前記Ir合金部材の内部への溶け込み深さDが0.2mm以上であることを特徴とする請求項2または3に記載の内燃機関用スパークプラグ。
  5. 前記溶融部(45)は前記Ir合金部材(42)を貫通していないことを特徴とする請求項4に記載の内燃機関用スパークプラグ。
  6. 前記溶融部(45)と前記中心電極(30)の前記先端部(31)との最短距離Lが、前記放電ギャップの間隔Gよりも大きいことを特徴とする請求項2ないし5のいずれか1つに記載の内燃機関用スパークプラグ。
  7. 前記溶融部(45)と前記中心電極(30)の前記先端部(31)との最短距離Lが、前記放電ギャップ(50)の間隔Gよりも0.2mm以上大きいことを特徴とする請求項6に記載の内燃機関用スパークプラグ。
  8. 前記Ir合金部材(42)は、その一部が前記母材(41)に形成された挿入穴(44)に挿入され、この挿入部分にて溶接されることにより固定されたものであることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載の内燃機関用スパークプラグ。
  9. Ir合金部材(42)は、50重量%以上のIrに対してRh、Pt、Ru、PdおよびWのうち少なくとも1種が添加されているものであることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1つに記載の内燃機関用スパークプラグ。
  10. 前記母材(41)と前記取付金具(10)との間に、中間部材(60)を介在させることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1つに記載の内燃機関用スパークプラグ。
  11. 中心電極(30)と、
    該中心電極の一端を保持する取付金具(10)と、
    一方が該取付金具の端部に取り付けられ、他方が前記中心電極との対向部にて放電ギャップ(50)が形成される略直棒形状の接地電極(40)とを備え、
    少なくとも該接地電極が取り付けられた前記取付金具の端部(12)には、該端部を前記取付金具の内周面側に逃げ角(13)が形成されていることを特徴とする内燃機関用スパークプラグ。
  12. 前記逃げ角(13)は、その寸法Cが0mmよりも大きく2mm以下であることを特徴とする請求項11に記載の内燃機関用スパークプラグ。
  13. 前記接地電極(40)は引張り強さが350N/mm2以上1200N/mm2以下のNi基合金もしくはFe基合金よりなり、その長手方向と直交する断面が長方形をなす四角柱形状であって、その長方形の長辺を含む側面にて前記取付金具(10)の端部(12)に取り付けられたものであり、
    且つ、前記接地電極における前記長方形の面積S1が3.0mm2以上8.0mm2以下、該長方形の短辺の長さa1が2.0mm以下、該長方形の長辺の長さb1が1.2mm以上4.0mm以下、前記接地電極の前記取付金具の端部から延びる長さL1が2.0mm以上6.0mm以下であることを特徴とする請求項11または12に記載の内燃機関用スパークプラグ。
  14. 中心電極(30)と、
    該中心電極の一端を保持する取付金具(10)と、
    一方が該取付金具の端部に介在部材(60)を介して取り付けられ、他方が前記中心電極との対向部にて放電ギャップ(50)が形成される略直棒形状の接地電極(40)とからなり、
    前記介在部材(60)は、その厚み方向と直交する断面の面積S2が、3.0mm2以上8.0mm2以下であることを特徴とする内燃機関用スパークプラグ。
  15. 前記介在部材(60)の厚みL2が、0.5mm以上3.0mm以下であることを特徴とする請求項14に記載の内燃機関用スパークプラグ。
  16. 前記介在部材(60)は、前記厚み方向と直交する断面が前記接地電極(40)の長手方向に短辺、前記接地電極の長手方向と直交する方向に長辺を有する長方形である四角柱部材であり、
    前記短辺の長さa2が2.0mm以下、前記長辺の長さb2が4.0mm以下であることを特徴とする請求項14または15に記載の内燃機関用スパークプラグ。
  17. 前記介在部材(60)は、引張り強さが350N/mm2以上1300N/mm2以下のNi基合金もしくはFe基合金よりなることを特徴とする請求項14ないし16のいずれか1つに記載の内燃機関用スパークプラグ。
  18. 中心電極(30)と、
    該中心電極の一端を保持する取付金具(10)と、
    一方が該取付金具の端部(12)に取り付けられ、他方が前記中心電極との対向部にて放電ギャップ(50)が形成される略直棒形状の接地電極(40)とを備え、
    少なくとも該接地電極の一部には、溝部(70)が形成されていることを特徴とする内燃機関用スパークプラグ。
  19. 前記溝部(70)は、少なくとも前記接地電極(40)の厚み方向に溝が掘られるように形成されていることを特徴とする請求項18に記載の内燃機関用スパークプラグ。
  20. 前記接地電極(40)の長手方向と直交する断面のうち前記溝部(70)における面積S3は、2.0mm2以上であることを特徴とする請求項18または19に記載の内燃機関用スパークプラグ。
  21. 前記溝部(70)の幅Pは、0.5mm以上2.0mm以下であることを特徴とする請求項18ないし20のいずれか1つに記載の内燃機関用スパークプラグ。
  22. 前記溝部(70)は、少なくとも前記接地電極(40)の他方側先端より3.0mm以上離れていることを特徴とする請求項18ないし21のいずれか1つに記載の内燃機関用スパークプラグ。
  23. 前記接地電極(40)は、引張り強さが350N/mm2以上1400N/mm2以下のNi基合金もしくはFe基合金よりなることを特徴とする請求項18ないし22のいずれか1つに記載の内燃機関用スパークプラグ。
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