JP4304013B2 - 耐光堅牢性の良好なスエード調人工皮革およびその製造方法 - Google Patents

耐光堅牢性の良好なスエード調人工皮革およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、良好な発色性と耐光堅牢性を有するスエード調人工皮革の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、極細繊維よりなるスエード調人工皮革はソフトなタッチ、風合い、高級な外観を有することから衣料用素材をはじめとして家具用途や自動車シート材などに高級素材として採用されている。特にポリエステル極細繊維を使用したスエード調人工皮革は、ソフトな風合いや高級な外観を有する上に、耐摩耗性や水洗い洗濯が可能などのイージーケア性を兼ね備えている点から幅広く使用されている。しかし、これらスエード調人工皮革に対する機能面の要求はますます高度になってきており、自動車シート材等の用途では耐光性の向上が重要な要求特性の一つである。
【0003】
従来、スエード調人工皮革の耐光堅牢性を向上させる技術としては染料の改善、紫外線吸収剤、酸化防止剤および光安定剤等の耐光向上剤を用いることが知られている。とりわけ繊維を形成するポリエステルに比較してポリウレタンの耐光堅牢性が著しく低い。ポリウレタンの光照射による変退色は、光照射によるポリウレタン自身の黄変と、ポリウレタンの分解とともに発生したラジカルが近傍の染料分子を攻撃することによる退色の合わさったものと考えられる。これまでに、ポリウレタンの光照射による変退色を抑えるため、耐光向上剤、特に光安定剤を添加する方法が数多く提案されている(例えば、特許文献1〜6を参照。)。しかしながら、ラジカルの連鎖反応は光安定剤の添加によりある程度抑えられるもののポリウレタン中の染料分子が多い場合、ポリウレタンの光分解で生じたラジカルを光安定剤が補足する割合に対し、該ラジカルが染料を攻撃する割合が多くなり、その分退色が大きくなりやすい。また、人工皮革を構成する高分子弾性体中に有機顔料を含み、850nmにおける赤外反射率を60%以上にするスエード調人工皮革が提案されている(例えば、特許文献7を参照。)。しかしながら、該方法は、有機顔料を含むことが必須であるため淡色に適用しにくい。また、これらに提案されている方法は該ポリウレタン中の染料の量に関する記載は見当たらない。一般に還元洗浄後のポリウレタン中の残留染料が多いほどポリウレタンの耐光堅牢性は劣る。いかに耐光向上剤を投与しようと、ポリウレタン中の残留染料が多い場合、実用上自動車シート材に使用でき得るほどの耐光堅牢性を得ることが出来ない場合が多い。このようにこれまでポリエステル極細繊維とポリウレタンからなるスエード調人工皮革の耐光堅牢性においては未だ自動車シート材に対して満足のゆくものは得られていない。
【0004】
【特許文献1】
特公昭57−5903号公報
【特許文献2】
特公昭59−43590号公報
【特許文献3】
特公昭57−58469号公報
【特許文献4】
特公昭59−51632号公報
【特許文献5】
特公昭59−51633号公報
【特許文献6】
特公昭62−49883号公報
【特許文献7】
特開2002−327377号公報
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ポリエステル極細繊維とポリウレタンからなり、少なくとも片面に該ポリエステル極細繊維の立毛が形成された良好な耐光堅牢性を有するスエード調人工皮革およびその製造方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、上記ポリウレタンを染色、還元洗浄処理した後のK/S(A1)が染色前のポリウレタンのK/S(A0)に対し、(A1)≦(A0)+0.5になるような染料組成および染色条件にて染色、還元洗浄した場合に、ヒンダードアミン系光安定剤を添加するとそれらの相乗効果にて耐光堅牢度が1〜2級向上することを見出した。すなわち本発明は、0.8デシテックス以下のポリエステル極細繊維絡合不織布とポリウレタンからなる基体の少なくとも片面を起毛し、分散染料で染色、還元洗浄されて得られるスエード調人工皮革において、染色、還元洗浄後の該ポリウレタンのK/S(A1)が、染色前のポリウレタンのK/S(A0)に対し、(A1)≦(A0)+0.5となる染料組成および染色条件で染色、還元洗浄されており、かつヒンダードアミン系光安定剤を含有していることを特徴とするスエード調人工皮革である。そして、染色前のポリエステル極細繊維とポリウレタンの少なくともいずれかが、カーボンブラックもしくは顔料により着色されていることが好ましい。
また、0.8デシテックス以下のポリエステル極細繊維不織布とポリウレタンからなる基体の少なくとも片面を起毛し、分散染料で染色、還元洗浄することにより得られるスエード調人工皮革の製造方法において、染色、還元洗浄後の該ポリウレタンのK/S(A1)が、染色前のポリウレタンのK/S(A0)に対し、(A1)≦(A0)+0.5となるような染料組成および染色条件で染色、還元洗浄を行い、その後ヒンダードアミン系光安定剤を含有せしめることを特徴とするスエード調人工皮革の製造方法である。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられるスエード調人工皮革の基体は0.8デシテックス以下のポリエステル極細繊維からなる不織布にポリウレタンが充填された構成のものである。繊維を構成するポリエステルとしては、公知のポリエステルが使用可能である。そして、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびそれらに5−スルホナトリウム−イソフタレート等の一般的に公知であるカチオン染色性を付与するための改質剤を共重合またはブレンドしたものであり、それら単独または2種以上をブレンドしたものが好ましく用いられる。また、上記ポリエステル極細繊維が極細繊維束となっていることが得られるスエード調人工皮革の外観、表面タッチおよび風合いに優れる点で好ましい。該ポリエステル極細繊維束としては、単繊維繊度0.8デシテックス以下であることが必要であり、好ましくは0.2デシテックス以下、0.0005デシテックス以上の極細繊維の束からなるものである。0.8デシテックスより太いと、高級なスエード調の品位のある外観およびソフトな表面タッチは得られない。
さらに、本発明のポリエステル極細繊維は、得られるスエード調人工皮革の染色時において染料の付着量を減らすことが可能となる点で、カーボンブラック等で代表される顔料で着色することが好ましい。
単繊維繊度0.8デシテックス以下のポリエステル極細繊維束は、従来公知の方法で製造される。例えば、繊維断面において上記ポリエステルが島成分、そして上記ポリエステルに相溶性の小さいまたはない少なくとも1種類以上のポリマーが海成分となっている海島型のポリエステル極細繊維発生型繊維から海成分ポリマーを溶解又は分解除去することにより、または上記ポリエステルと相溶性のない1種以上のポリマーが接合した断面形状を有する貼合わせ型のポリエステル極細繊維発生型繊維を機械的または化学的な処理により2成分の界面で剥離させることにより得ることができる。得られるポリエステル極細繊維の束を構成する極細繊維の単繊維繊度を0.8デシテックス以下、特に0.2デシテックス以下とするためには、貼合わせ型の極細繊維発生型繊維を用いるよりは繊維断面が海島構造となっている海島型の極細繊維発生型繊維を用いる方が工程上有利である。またメルトブローンなどのように直接極細繊維を製造する方法を用いてもよい。
【0007】
ポリエステル極細繊維発生型繊維中で溶解または分解除去される成分としては、ポリエステル極細繊維成分と溶剤または分解剤に対する溶解性または分解性を異にし、ポリエステル極細繊維成分との相溶性の低いポリマーであり、かつ紡糸条件下でポリエステル極細繊維成分より溶融粘度が小さいかあるいは表面張力が小さいポリマーであり、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンプロピレン共重合体などのポリマーから選ばれた少なくとも1種類のポリマーである。
【0008】
上記ポリエステル極細繊維発生型繊維は、カードで解繊し、ウェッバーを通してウエブを形成し、得られたウエブは、所望の重さ、厚さに積層し、次いで、ニードルパンチ、高速水流などの公知の方法で絡合処理を行ってポリエステル極細繊維絡合不織布とする。ウエブには必要に応じて織編物等を積層することもできる。該絡合不織布は最終的に表面が毛羽立てられ、立毛表面が形成されることとなることから、該不織布表面は極細繊維発生型繊維または極細繊維から構成されていることが必要であるが、得られるシートの風合いの点から不織布全体が極細繊維発生型繊維または極細繊維からなっている場合が好ましい。三次元絡合不織布は、表面を平滑な基体層とするため、公知の方法でポリウレタンの含浸前に加熱プレス処理などにより表面平滑化することが好ましい。得られる三次元絡合不織布の目付としては、150〜1000g/mの範囲が好ましい。150g/m未満の場合、ポリウレタンの含浸以降の工程での伸び等形態変化が大きくなり、得られる製品に歪が残り外観不良を招く場合がある。また、1000g/mを越える場合、ポリウレタンの含浸や凝固および上記極細繊維発生型繊維中の海成分を抽出する際の工程速度が遅くなり実用的でない。また、加熱プレス処理後の好ましい厚みとしては、1.0〜3.0mmの範囲が好ましくい。1.0mm未満の場合、ポリウレタンの含浸以降の工程での伸び等形態変化が大きくなり、得られる製品に歪が残り外観不良を招く場合がある。3.0mmを越える場合、得られる三次元絡合不織布の厚みが厚いため巻き取る際、表面に折れしわを生じ易くなる。
【0009】
上記ポリエステル極細繊維絡合不織布に含浸するポリウレタンは平均分子量700〜3000のポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルエーテルジオール、ポリラクトンジオール、ポリカーボネートジオールなどから選ばれた少なくとも1種のポリマージオール、芳香族ジイソシアネートまたは脂環族ジイソシアネートから選ばれた少なくとも1種の有機ジイソシアネートを主体に、必要に応じて他の有機ジイソシアネートあるいは有機トリイソシアネート、および低分子ジオール、低分子ジアミン、ヒドラジン、ヒドロキシアミンなど活性水素原子2個を有する化合物とを溶液重合法、溶融重合法、塊状重合法などによって重合して得たポリエステルエーテル系ポリウレタン、ポリラクトン系ポリウレタン、ポリカーボネート系ポリウレタンなどが好ましく挙げられる。ポリウレタンの付与方法としては特に制約は無く、ポリエステル極細繊維絡合不織布をポリウレタン溶液または分散液中でディップおよびニップする方法や、該不織布上にポリウレタン溶液または分散液を付与し高速回転するロールで摺り込む方法等が挙げられる。ポリウレタンの凝固方法としては、ポリウレタンの非溶剤を含む液に浸漬して湿式凝固するか、ゲル化させた後加熱乾燥して乾式凝固する方法などが挙げられる。
【0010】
上記ポリウレタン溶液または分散液中には、必要に応じてカーボンブラックや顔料などの着色剤、凝固調節剤、酸化防止剤、分散剤等の添加剤を配合することができる。特に本発明のポリウレタンは、得られるスエード調人工皮革の染色時において染料の付着量を減らすことが可能となる点で、カーボンブラック等で代表される顔料で着色することが好ましい。
繊維質基体に占めるポリウレタンの比率は、基体に柔軟な風合いと弾性回復性を持たせるために、極細繊維化する前で、固形分として質量比で10%以上、好ましくは30〜50%の範囲で含有させるのがよい。ポリウレタン比率が10%未満の場合には、緻密な弾性体スポンジ(多孔構造)が形成されにくく、基体表面を起毛する際に十分に極細繊維を固定しにくい傾向がある。またポリウレタンスポンジ自身が緻密で平滑となりにくいために立毛表面が十分な平滑性を有しにくい傾向がある。
【0011】
次に、上記ポリエステル極細繊維発生型繊維を、繊維構成ポリマーのうちの少なくとも1成分(好ましくは海成分構成ポリマー)を溶解剤若しくは分解剤で処理して、または機械的若しくは化学的処理によりポリエステルを含む2成分の界面で剥離して極細繊維束に変性する。極細繊維発生型繊維の変性処理はポリウレタン溶液の付与前であってもよいが、極細繊維束に変性後にポリウレタン溶液を含浸、凝固すると、ポリウレタンが極細繊維に接着し風合いが硬くなりやすいため、ポリウレタン溶液付与後に極細繊維束に変性することが好ましい。ポリウレタン溶液付与前に変性処理を行う場合には、極細繊維とポリウレタンが接着しないようにポリビニルアルコールなどの溶解除去可能な仮充填剤を不織布に付与した後にポリウレタン溶液を付与し、その後に該仮充填剤を除去することが好ましい。
【0012】
上記で得られたポリエステル極細繊維束絡合不織布とポリウレタンからなる基体はスライス、バフィング等により所望の厚みに調整した後、必要により該ポリウレタンを溶解させる溶剤と非溶解性の溶剤を任意の割合で調合した液を表面に塗布し該ポリウレタンを溶解させた後、サンドペーパー等による公知の方法でバフィングすることにより上記基体表面のポリエステル極細繊維束は起毛、整毛され染色前のスエード調人工皮革となる。
【0013】
得られたスエ―ド調人工皮革の染色は、分散染料を用い、必要に応じ分散剤、pH調整剤および金属イオン封鎖剤等を用い、高温高圧染色機により行う。染料としてカチオン染料やその他反応性染料を使用しても染色は可能であるが、本発明の重要な構成要素である人工皮革を構成するポリウレタンを染色、還元洗浄処理した後のK/S(A1)と染色前のポリウレタンのK/S(A0)の差が(A1)≦(A0)+0.5になるような条件での染色、還元洗浄を行う必要がある。染色、還元洗浄後の該ポリウレタンのK/S(A1)が、染色前のポリウレタンのK/S(A0)に対し、(A1)>(A0)+0.5となるような条件で染色、還元洗浄した場合には、ポリウレタン中に残存する染料の量が多くヒンダードアミン系光安定剤との相乗効果が発生しにくく、耐光堅牢度が向上しにくい。そのために使用する染料は、染色、還元洗浄後のポリウレタン中の染料残存量が少ない染料を選択する必要がある。このような染料の選定は、以下のように行う。まず、使用するポリウレタンの25%ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略す。)溶液を作製する。このポリウレタンのDMF溶液をガラス板上に厚さ1〜1.5mmに流延し、該ポリウレタンのDMF溶液をキャストしたガラス板を25℃の温水中に浸漬してポリウレタンの湿式膜を作製する。次に、得られた湿式膜を十分に水洗・乾燥した後に、湿式膜質量に対し、3%の染料を加え、浴比1:30で130℃にて60分間染色する。次いで、二酸化チオ尿素3g/l、水酸化ナトリウム3g/lの液で、70℃で30分間還元処理を2回繰り返す。その後、過酸化水素3g/l、ソーダ灰3g/lの液で、70℃で20分間酸化処理を行った後、ポリウレタンの湿式膜を取り出し、十分水洗した後、乾燥する。分光光度計を用いて、該ポリウレタンの湿式膜の540nmにおけるK/S(A1)と、染色前のポリウレタンの湿式膜の540nmにおけるK/S(A0)を測定して、上記の(A1)≦(A0)+0.5となる染料組成を、本発明では使用する。
【0014】
本発明のスエード調人工皮革を染色する場合、染色の際の浴比はスエード調人工皮革の質量に対し10〜40倍が好ましい。また、染料濃度は、1〜35%owfの範囲が好ましい。1%owf未満では、色目が薄く本発明の効果が現れにくい。35%owfを越えると染色摩擦堅牢度や洗濯堅牢度等の実用物性上において使用が困難となる傾向がある。染色温度は115〜150℃、好ましくは120〜140℃の温度範囲で行う。115℃未満の場合、ポリエステル中に分散染料が充分に拡散しにくい。150℃を越える場合、該スエード調人工皮革を構成しているポリウレタンの加水分解により得られるスエード調人工皮革の強度低下、毛羽脱落およびピリング等が発生しやすくなる。
【0015】
次いで、2〜10g/lの還元剤および還元剤と等量の還元助剤を用いてアルカリ剤存在下で、50〜80℃の温度で該スエード調人工皮革中の過剰染料を還元分解、洗浄除去する。50℃未満の場合、ポリウレタン中の余剰染料の洗浄が不十分となり、染色、還元洗浄処理した後のK/S(A1)と染色前のポリウレタンのK/S(A0)の差が(A1)≦(A0)+0.5となりにくい。また、80℃を越えると繊維中の染料まで還元洗浄してしまうこととなる。そして、還元剤は二酸化チオ尿素やハイドロサルファイト等のポリエステルの還元洗浄に一般的に用いられるものが好ましく使用できる。還元剤量が2g/lより少ない場合、充分に該基体のポリウレタン中の染料を分解、洗浄しにくく、色斑の発生や色目の再現性低下を引き起こしやすい。また、10g/lを越える場合には染料の分解、洗浄効果は変わらずコスト的に不利となる。
次いで、公知の方法によって酸化、中和処理を行い、染色を完了させる。
【0016】
次いで、乾燥、必要に応じて柔軟化処理、帯電防止処理、防燃処理等の機能付与処理を行うが、本発明で使用するヒンダードアミン系光安定剤を付与する工程は、染色前および染色後いずれでも良いが、染色前に付与した場合、前記の染色の際の還元、洗浄処理により、付与したヒンダードアミン系光安定剤の内ポリウレタン中にあるものは大部分脱離してしまう傾向が有り、目的とする耐光堅牢性の向上を果たしにくいため、耐光堅牢度を向上させる面からは染色後が好ましい。
使用するヒンダードアミン系光安定剤は特に構造を制限するものではなく公知のものが用いられるが、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2―〔3−(3,5−ジ-t-ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]−4−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等が挙げられる。
【0017】
そして、各仕上げ工程での加熱処理における昇華をなるべく抑えるため昇華温度が150℃以上のものが好ましい。付与する量としてはスエード調人工皮革中のポリウレタン質量に対し、0.3〜5.0%の範囲が好ましい。0.3%以下では十分な耐光堅牢性向上効果が得られない。5.0%以上付与しても耐光堅牢性向上効果はそれほど変わらず、一方でフォギング性や染色堅牢性への影響が見過ごせないものとなる。ヒンダードアミン系光安定剤付与方法としては、水に分散した状態でのパディングあるいは原反表面へのコーティングなどが行われるが、比較的低分子で、常温で液状のものは適当な熱処理により表面付近へ移行してくるため特に付与方法を問わない。しかしながら、高分子化し常温で固体上のものはあらかじめ原反表面に付与させることが好ましい。また、酸化防止剤、紫外線吸収剤との併用も可能である。また、ヒンダードアミン系化合物はNOxガスや包装材等に老化防止剤として使用されている2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールにより黄変されやすい。黄変防止のため、クエン酸等の有機酸と併用するのが特に好ましい。
【0018】
前述の通り、本発明のスエード調人工皮革は、ヒンダ−ドアミン系光安定剤のみを付与しただけでは充分な耐光堅牢度の向上は得られない。すなわち、スエード調人工皮革を構成するポリウレタンを染色、還元洗浄処理した後のK/S(A1)が染色前のポリウレタンのK/S(A0)に対し、(A1)≦(A0)+0.5になるような条件にて染色、還元洗浄した場合において、さらにヒンダードアミン系光安定剤が存在するとそれらの相乗効果にて耐光堅牢度が1〜2級向上する。
【0019】
最後に通常、整毛工程および幅セット工程等公知の後仕上げ処理を経て目的とする耐光性に優れたスエード調人工皮革を得る。
【0020】
【実施例 】
以下本発明の実施態様を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部、%はすべて質量に関するものである。
また、以下の例に記載のK/Sは日立製作所製分光光度計U−3010にて測定を行った。また、耐光堅牢度は、JASO M346−93に規定される方法に準じて測定し、JIS L0804に規定する変退色用グレースケールを用いて判定した。
耐光試験機:キセノンウエザーメーター(スガ社製)
放射強度:46W/m(300〜400nm)
ブラックパネル温度:83±3℃
照射時間:200時間
水スプレー:無し
【0021】
実施例1
島成分が極限粘度0.65のポリエチレンテレフタレート60部、海成分がMFR=40の直鎖状低密度ポリエチレン40部の海島型複合繊維(島数20、繊度4.0デシテックス、繊維長51mm、捲縮数12山/inch)を使用して厚み1.3mm、目付530g/mのニードルパンチ処理をおこない三次元絡合不織布を作成した。この不織布にポリエーテル系ポリウレタンの15%DMF溶液を含浸し、DMF水溶液により湿式凝固し、水洗した後85℃トルエンにより海成分のポリエチレンを抽出除去し、目付480g/m、厚み1.0mm、ポリエステル極細繊維の繊度が0.024デシテックスの人工皮革基体を得た。得られた基体の片面を180番のサンドペーパーによりバフィングし、厚みを0.8mmとした後、反対側の面にDMF30部とアセトン70部の割合で混合した溶剤を200メッシュのグラビアロールを用いて8g/m塗布した後乾燥し、グラビア面を240番のサンドペーパーで2回および400番のサンドペーパーで2回順次バフィングし、染色前のスエード調人工皮革を得た。
【0022】
次にこのスエード調人工皮革を80℃、20分間湯通しし熱水になじませると同時に生地をリラックスした後、高圧液流染色機を使用し、浴比1:15で、下記分散染料の組成および助剤組成にて135℃、60分間染色を行った。
染料:Palanil ECO Turquoise CC 1.3%owf
Dianix Red HL-FS 0.6%owf
Teratop Pink 3G 0.3%owf
Sumikaron UL Yellow GF 4.0%owf
均染剤:KP レベラー AUL(芳香族スルホン酸塩誘導体、日本化薬株式会社製)1.0g/l
pH調整剤:ニューバッファーK(ミテジマ化学株式会社製)1.8g/l
金属イオン封鎖剤:スカルナーNT(高松油脂株式会社製)1.0g/l
尚、上記染料組成を用い前記条件にて基体を構成するポリエーテル系ポリウレタンを用いてポリウレタンシートのみを染色、還元洗浄したものは、染色前のポリウレタンシートとのK/Sの差が0.3((A1)=(A0)+0.3)であった。
次いで、二酸化チオ尿素7g/l、水酸化ナトリウム3g/lを加え65℃、30分間還元処理を行った。次いで、過酸化水素3g/l、ソーダ灰3g/lを加え70℃、20分間酸化処理を行った後、酢酸1g/lを加え70℃で10分間中和処理を行い、最後に常温の水で洗浄し染色を終了した。乾燥後、得られたスエード調人工皮革はベージュ色に染色されており、耐光堅牢度は3級であった。
【0023】
次いで、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート及びメチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケートの混合物(混合比で1:1)を主剤としそれを質量比で50%含有しているヒンダードアミン系光安定剤乳化液をさらに水で50倍に希釈した液に上記染色後のスエード調人工皮革を浸漬し、マングル絞りし、絞り率60%とした後乾燥した。上記ヒンダードアミン系光安定剤の主剤の付着量は該スエード調人工皮革中のポリウレタン固形分に対し質量比で計算上2.3%であった。最後に撥水処理および整毛処理を行い、目的のスエード調人工皮革を得た。
得られたスエード調人工皮革の耐光堅牢度は4.5級であり、充分な耐光堅牢度の向上効果が認められた。
【0024】
実施例2
染料組成を下記に変更する以外は、実施例1と同様の方法で得た染色前のスエード調人工皮革に対し、実施例1と同様の方法で染色、還元洗浄を行った。下記染料組成を用い前記条件にてポリウレタンシートのみを染色、還元洗浄したものは、染色前のポリウレタンシートとK/Sの差は0.34((A1)=(A0)+0.34)であった。得られたスエード調人工皮革はベージュ色に染色されており、耐光堅牢度は2.5級であった。
染料:Palanil ECO Turquoise CC 1.3%owf
Teratop Red HL-R 0.6%owf
Teratop Pink 3G 0.3%owf
Sumikaron UL Yellow GF 4.0%owf
次いで、実施例1と同様の方法にてヒンダードアミン系光安定剤を付与し、スエード調人工皮革を得た。得られたスエード調人工皮革の耐光堅牢度は4級であり、充分な耐光堅牢度の向上効果が認められた。
【0025】
比較例1
染料組成を下記に変更する以外は、実施例1と同様の方法で得たスエード調人工皮革生地に対し、実施例1と同様の方法で染色、還元洗浄を行った。下記染料組成を用い前記条件にてポリウレタンシートのみを染色、還元洗浄したものは、染色前のポリウレタンシートのK/Sの差が2.4((A1)=(A0)+2.4))であった。得られたスエード調人工皮革は濃いベージュ色に染色されており、耐光堅牢度は2.5級であった。
染料:Sumikaron UL Blue GF 200% 1.0%owf
Disperse Navy Blue LL 0.3%owf
Teratop Red HL-R 0.6%owf
Dianix Red HL-FS 0.3%owf
Sumikaron UL Yellow GF 4.0%owf
次いで、実施例1と同様の方法にてヒンダードアミン系光安定剤を付与し、スエード調人工皮革を得た。得られたスエード調人工皮革の耐光堅牢度は3.0級であり充分な耐光堅牢度の向上効果は認められなかった。
【0026】
【発明の効果】
ポリエステル極細繊維とポリウレタンからなり、少なくとも片面に該ポリエステル極細繊維の立毛が形成されているスエード調人工皮革において、耐光堅牢性に優れるスエード調人工皮革およその製造方法より得られるスエード調人工皮革を得ることができる。

Claims (3)

  1. 0.8デシテックス以下のポリエステル極細繊維絡合不織布とポリウレタンからなる基体の少なくとも片面を起毛し、分散染料で染色、還元洗浄されて得られるスエード調人工皮革において、染色、還元洗浄後の該ポリウレタンのK/S(A1)が、染色前のポリウレタンのK/S(A0)に対し、(A1)≦(A0)+0.5となる染料組成および染色条件で染色、還元洗浄されており、かつヒンダードアミン系光安定剤を含有していることを特徴とするスエード調人工皮革。
  2. 染色前のポリエステル極細繊維とポリウレタンの少なくともいずれかが、カーボンブラックもしくは顔料により着色されている請求項1に記載のスエード調人工皮革。
  3. 0.8デシテックス以下のポリエステル極細繊維不織布とポリウレタンからなる基体の少なくとも片面を起毛し、分散染料で染色、還元洗浄することにより得られるスエード調人工皮革の製造方法において、染色、還元洗浄後の該ポリウレタンのK/S(A1)が、染色前のポリウレタンのK/S(A0)に対し、(A1)≦(A0)+0.5となるような染料組成および染色条件で染色、還元洗浄を行い、その後ヒンダードアミン系光安定剤を含有せしめることを特徴とするスエード調人工皮革の製造方法。
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