JP4067872B2 - スエード調皮革様シートおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエステル極細繊維と弾性重合体からなるスエード調皮革様シートの製造方法およびその方法により得られるスエード調皮革様シートに関する。より詳細には、本発明はポリエステル極細繊維と弾性重合体からなる基体の表面にポリエステル極細繊維の立毛を有するスエード調皮革様シートの製造方法において、風合いがソフトで表面の耐磨耗性に優れる実用価値のあるスエード調皮革様シートの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、極細繊維よりなるスエード調皮革様シートはソフトなタッチ、風合い、高級な外観を有することから衣料用素材をはじめとして家具用途や乗り物の座席シートの表皮などに高級素材として採用されている。特にポリエステル極細繊維を使用したものは、ソフトな風合いや高級な外観を有する上に、耐摩耗性や水洗い洗濯が可能などのイージーケア性を兼ね備えている点から幅広く使用されている。
【0003】
一般にポリエステル極細繊維と弾性重合体からなるスエード調皮革様シートは分散染料による染色が行われるが、還元剤処理等の洗浄処理を行っても弾性重合体中にわずかに残存した分散染料が耐光堅牢度、昇華堅牢度等諸堅牢度の低下を招く。また、表面に起毛されているポリエステル極細繊維の密度を上げ、下地の弾性重合体を覆うことで外観品位が高まるため、シート中の弾性重合体の割合をなるべく低くすることが一般的であるが、その分ポリエステル繊維の割合が高くなり、風合いの硬いものとなりがちである。風合いの良好なスエード調人工皮革を得ることを目的として、弾性重合体を含浸する前の不織布を加熱収縮させることが提案されているが、これまでのものはどれも該不織布を構成する繊維の収縮率が10%以上あるいは不織布の加熱処理による面積収縮率が20%以上であった。
【0004】
例えば、特公昭48−20282号公報には、自由収縮が23%以上である高分子相互配列体からなる繊維ウエブに、少なくとも500本/cm2のニードルパンチを施して見掛け密度0.07g/cm3以上の不織布とした後加熱収縮させて該不織布の見かけ密度を0.20以上で対島成分換算見掛け密度を0.07g/cm3以上とし、ついで該不織布を構成する高分子相互配列体の海成分を溶解除去する前か後に高分子重合体を島成分100部に対し10〜20部付与したのちバフまたはスライスする方法が提案されている。上記のごとく繊維の収縮が大きい場合(上記公報では23%以上)、加熱収縮の際、不織布の面積収縮率も大きくなり風合いもソフト化するが、その引き換えに不織布を構成する繊維が素抜け易くなる傾向がある。その原因は明確でないが、収縮率が大きい場合、繊維は熱水中でより大きく形態を変化させるため捲縮があまくなり繊維間の交絡が弛み、ニードルパンチ直後の不織布と比べ絡合程度が低下するためと考えられる。繊維の素抜け防止として極細繊維とした後に、樹脂等をバインダーとして付与する方法も提案されているが、風合いの硬化は避けられない。このように上記のような収縮率の大きい繊維からは、これまで風合いと表面の耐磨耗性を両立したものは得られていなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ポリエステル極細繊維と弾性重合体からなり、少なくとも片面に該ポリエステル極細繊維の立毛が形成されているスエード調皮革様シートの製造方法において、風合いがソフトで表面の耐磨耗性に優れる実用価値のあるスエード調皮革様シートの製造方法およびその製造方法により得られるスエード調皮革様シートを提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成すべく本発明者らは鋭意検討を重ね、以下に記述する方法を見出した。すなわち、本発明は、繊度0.2デシテックス以下の極細繊維絡合不織布およびその内部に含有された弾性重合体からなる基体の少なくとも片面に、立毛を有するスエード調皮革様シートを製造するに際し、下記▲1▼〜▲5▼の工程
▲1▼ポリエステルを極細繊維成分とし、85℃の熱水中で収縮率が3〜10%である極細繊維発生型繊維を製造する工程、
▲2▼該極細繊維発生型繊維を三次元絡合した後、85〜95℃の熱水処理により、面積収縮率で5〜20%となるように収縮させて不織布とする工程、
▲3▼該不織布に高分子弾性体を含浸・凝固する工程、
▲4▼該極細繊維発生型繊維を極細繊維および/または極細繊維束に変換して基体とする工程、
▲5▼該基体表面を起毛する工程、
を▲1▼▲2▼▲3▼▲4▼▲5▼または▲1▼▲2▼▲4▼▲3▼▲5▼の順で行うことを特徴とするスエード調皮革様シートの製造方法である。そして、好ましくは極細繊維発生型繊維が海島構造繊維であり、より好ましくは、該海島構造繊維の海島比率が20:80〜80:20の範囲にあるスエード調皮革様シートの製造方法である。
そして上記いずれかの製造方法によって得られるスエード調皮革様シートに関するものであり、好ましくはマーチンデール法の減量値が30mg以下であるスエード調皮革様シートである。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明に用いられるスエード調皮革様シートの不織布を構成するポリエステル極細繊維の単繊維繊度は0.2デシテックス以下であることが必要であり、0.0001〜0.1デシテックスであることが好ましく、0.001〜0.05デシテックスであることがより好ましい。ポリエステル極細繊維の繊度、特に立毛部を形成するポリエステル極細繊維の繊度が0.2デシテックスを越えると、高級なスエード調の品位ある外観およびソフトな表面タッチが得られにくくなり、一方、ポリエステル極細繊維の繊度が0.0001デシテックス未満であると、染着性が低下して、色調が劣ったものになり易い。しかし場合によっては、基体を構成するポリエステル繊維不織布中に発明の効果を損なわない範囲で他の繊維を一部含んでいても良い。
【0008】
本発明のスエード調皮革様シートの極細繊維を構成するポリエステルは繊維形成性のポリエステルであればいずれでも良く、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートをはじめとする公知のポリエステルおよびそれらに5−スルホナトリウム−イソフタレート等の一般的に公知であるカチオン染色性を付与するための改質剤を共重合またはブレンドした変性ポリマーであっても良く、それらを単独または2種以上をブレンドしたものを用いることもできる。
【0009】
単繊維繊度0.2デシテックス以下のポリエステル極細繊維束は、混合紡糸法や複合紡糸法等で代表される従来公知の方法で紡糸した極細繊維発生型繊維を後工程で極細化処理することによって得ることができる。例えば、繊維断面において上記ポリエステルが島成分、そして上記ポリエステルと相溶性の小さい少なくとも1種類以上のポリマーが海成分となっている海島構造(海島型)繊維から海成分ポリマーを溶解又は分解除去することにより、または上記ポリエステルと相溶性の小さい1種以上のポリマーが接合した断面形状を有する貼合わせ型の極細繊維発生型繊維を機械的または化学的な処理により2成分の界面で剥離させることにより得ることができる。得られる極細繊維の束を構成する極細繊維の単繊維繊度を0.2デシテックス以下、特に0.1デシテックス以下とするためには、貼合わせ型の極細繊維発生型繊維を用いるよりは繊維断面が海島構造となっている極細繊維発生型繊維を用いる方が工程上有利である。そして、海島比率は20:80〜80:20の範囲が好ましい。海成分比率が20未満の場合には、良好な島成分が得られにくくなる。また、80を越える場合には、抽出後の基体において極細繊維と弾性重合体の間の空間が大きくなり弾性重合体による繊維の固定効果が小さくなるため最終的に表面物性が弱くなる傾向がある。また最終的に抽出除去される成分が多くなるためコスト的に不利となる。また、繊維中の島成分が20未満の場合、極細繊維発生型繊維の熱水中での収縮が十分発現しない場合がある。
【0010】
極細繊維発生型繊維中で溶解または分解除去される成分としては、ポリエステル成分と溶剤または分解剤に対する溶解性または分解性を異にし、ポリエステル成分との相溶性の小さいポリマーであり、かつ紡糸条件下でポリエステル成分より溶融粘度が小さいかあるいは表面張力が小さいポリマーであり、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンプロピレン共重合体などのポリマーから選ばれた少なくとも1種類のポリマーが用いられる。
【0011】
本発明では、上記ポリエステルを極細繊維成分とする極細繊維発生型繊維から構成された三次元絡合不織布を85〜95℃以上の熱水処理により面積収縮率で5〜20%の範囲で収縮させることにより風合いが良好で表面の耐磨耗性に優れたスエード調皮革様シートを得るものである。面積収縮率が20%を越える場合、後述のように該不織布を形成するポリエステルを極細繊維成分とする極細繊維発生型繊維は実質的に収縮率が10%以上となっていることになり、その場合、繊維自体が収縮しているため、繊維間の交絡数が少なくなりせっかくのニードルパンチによる絡合程度が低下し、繊維が素抜け易くなるため、最終的にスエード調皮革様シートとした際もピリングを起こし易く、耐磨耗性も劣るものとなり実用上満足できるものではない。そして、面積収縮率が5%未満の場合はリラックス効果が少なく風合いのソフト化に寄与できない。
【0012】
上記ポリエステル三次元絡合不織布が85〜95℃以上の熱水処理により面積収縮率で5〜20%の範囲で収縮させるためには、ポリエステルを極細繊維成分とする極細繊維発生型繊維の85℃の熱水における収縮率を3〜10%の範囲にする必要がある。そして上記極細繊維発生型繊維の収縮率を満足するために、種々の方法があるが、例えば未延伸繊維を温度65〜75℃の第1温水浴と温度80〜90℃の第2温水浴中にそれぞれ浸漬し延伸することによって総延伸倍率を2.5〜4倍とすることで、85℃の熱水中で繊維の長さ方向の収縮率が3〜10%のものを得ることができる。なお、上記温水浴中の温度を上記範囲よりも低くして上記の総延伸倍率の範囲内になるように延伸する場合には、極細繊維発生型繊維の85℃の熱水による収縮率が10%を越える傾向があり、従ってポリエステル三次元絡合不織布が85〜95℃以上の熱水処理により面積収縮率で20%を越える傾向がある。また、上記温水浴中の温度を上記範囲よりも高くして上記の総延伸倍率の範囲内になるように延伸する場合には、極細繊維発生型繊維の85℃の熱水による収縮率が3%を未満となる傾向があり、従ってポリエステル三次元絡合不織布が85〜95℃以上の熱水処理により面積収縮率で5%に達しない傾向がある。そして、延伸後に、不織布化の際の工程性を考慮して帯電防止や、繊維間、繊維−金属間の摩擦係数をコントロールする目的で油剤処理を施すことが出来る。得られた延伸繊維を公知の方法で、捲縮、カットを行い、カードで解繊し、ウェッバーを通してウェッブを形成する。得られた繊維ウェッブは、所望の重さ、厚さに積層する。次いで、ニードルパンチ、高速水流などの公知の方法で絡合処理を行って三次元絡合不織布とする。ニードルパンチの場合には、ニードルパンチ条件を200〜4000パンチ/cm2の範囲になるように、絡合処理を行う。200パンチ/cm2未満の場合には、絡合不足となり後加工中での層間剥離および最終製品での表面物性不良の傾向があり、4000パンチ/cm2を越える場合には、ニードルによる極細繊維発生型繊維の損傷が顕在化し不織布の機械的物性が低下する傾向がある。
【0013】
上記より得られた不織布は、絡合処理後、表面平滑な基体層とするため、弾性重合体の含浸前に加熱プレス処理などにより表面平滑化することが好ましい。得られる三次元絡合不織布の目付としては、150〜1000g/m2の範囲が好ましい。150g/m2未満の場合、弾性重合体の含浸以降の工程での伸び等の形態変化が大きくなり、得られる製品に歪が残ったり面感不良を招く。また、1000g/m2を越える場合、弾性重合体の含浸や凝固および上記不織布を構成する極細繊維発生型繊維中の海成分を抽出除去する際の処理速度が遅くなり実用的でない。また、加熱プレス処理後の好ましい厚みとしては、1.0〜3.0mmの範囲が好ましく、1.0mm未満であればやはり弾性重合体の含浸以降の工程での伸び等の形態変化が大きくなり、得られる製品に歪が残ったり面感不良を招く。3.0mmを越える場合では、厚みが厚いため巻き取る際に表面に皺が発生し易くなる。
【0014】
三次元絡合された不織布に含浸する弾性重合体は、ポリウレタン、合成ゴム、アクリル酸エステル系重合体またはそれらの共重合体等から選ばれた少なくとも1種類の重合体を主体とした弾性重合体が選択できるが、弾性回復性、スポンジ形成性等が良好なことよりポリウレタンがもっとも好ましく用いられる。ポリウレタンとしては、例えば、平均分子量500〜3000のポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオールあるいはポリエステルポリエーテルジオール等のポリマージオール等から選ばれた少なくとも1種類のポリマージオールと、4、4’ージフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの芳香族系、脂環族系、脂肪族系のジイソシアネート等から選ばれた少なくとも1種類のジイソシアネートと、エチレングリコール、ブタンジオール、エチレンジアミン、4、4’ージアミノジフェニルメタン等の2個以上の活性水素原子を有する少なくとも1種類の低分子化合物とを所定のモル比で反応させて得たポリウレタンおよびその変性物が挙げられる。
【0015】
上記弾性重合体液には、必要に応じて着色剤、凝固調節剤、酸化防止剤、分散剤等の添加剤を添加しても良い。繊維質基体に占める弾性重合体の比率は、基体に柔軟な風合いと弾性回復性を持たせるために、極細繊維化する前で、固形分として重量比で10%以上、好ましくは30〜50%の範囲で含有させるのがよい。弾性体比率が10%未満の場合には、緻密な弾性体スポンジ(多孔構造)が形成されにくく、従って基体表面を起毛する際に十分に極細繊維を固定しにくい。また弾性体スポンジ自身が緻密で平滑でないために立毛面が十分な平滑面となりにくい傾向がある。弾性重合体の付与方法としては、特に制約は無く弾性重合体溶液中での浸漬しニップする方法や、不織布上に弾性重合体溶液を付与し高速回転するロールで摺り込む方法等が挙げられる。ポリウレタンの凝固方法としては、ポリウレタンの非溶剤を含む液に浸漬して湿式凝固するか、ゲル化させた後加熱乾燥するいわゆる乾式凝固方法などが挙げられる。
【0016】
次に、極細繊維発生型繊維を、繊維構成ポリマーのうちの少なくとも1成分(好ましくは海成分構成ポリマー)を溶解剤若しくは分解剤で処理して、または機械的若しくは化学的処理によりポリエステルを含む2成分の界面で剥離してポリエステル極細繊維および/またはポリエステル極細繊維束に変性する。極細繊維発生型繊維の変性処理は弾性重合体の付与前であってもよいが、極細繊維束に変性後に弾性重合体を含浸、凝固すると、弾性重合体が極細繊維に接着しやすく風合いが硬くなる傾向があるため、弾性重合体付与後に極細繊維束に変性することが好ましい。弾性重合体付与前に変性処理を行う場合には、極細繊維と弾性重合体が接着しないようにポリビニルアルコールなどの溶解除去可能な仮充填剤を不織布に付与した後に弾性重合体を付与し、その後に該仮充填剤を除去することが好ましい。
【0017】
上記で得られたポリエステル極細繊維絡合不織布と弾性重合体からなる基体の繊維の見掛け密度は0.25〜0.40g/cm3の範囲であるのが好ましく、0.26〜0.35g/cm3の範囲がより好ましい。0.25g/cm3未満の場合、表面のポリエステル極細繊維の立毛がまばらになり、下地の弾性重合体が見える品位の劣ったものとなり易い。また、0.40g/cm3より大きい場合は風合いが硬くごわごわしたものとなる傾向がある。基体中の繊維の見掛け密度は、弾性重合体を付与する前の不織布の目付、ポリエステル以外の成分を抽出除去するタイプの場合にはその繊維構成比率およびその後の工程中の形態変化を考慮して所望の見掛け密度とすることが可能である。
【0018】
上記で得られたポリエステル極細繊維絡合不織布と弾性重合体からなるスエード調皮革様シート基体はスライス、バフィング等により所望の厚みに調整した後、必要により該弾性重合体を溶解させる溶剤と非溶解性の溶剤の任意の割合の混合溶液を表面に塗布することにより該弾性重合体を溶解させた後、サンドペーパー等による公知の方法でバフィングすることにより上記基体表面のポリエステル極細繊維は起毛、整毛されスエード調皮革様シートの染色前生地となる。
【0019】
得られたスエード調皮革様シート生地は、分散染料あるいはカチオン染料等公知のポリエステル染色用の染料を用い、必要に応じ分散剤、pH調整剤および金属イオン封鎖剤等を用い、高温高圧染色機により染色された後、必要に応じ、撥水、帯電防止、抗菌処理などの機能性付与および柔軟化処理、整毛処理および幅出し処理を行い、目的とするスエード調皮革様シートを得ることができる。
【0020】
【実施例】
以下本発明の実施態様を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部および%はすべて重量に関するものである。
【0021】
また、本発明における収縮率の測定方法は以下の方法による。
(1)繊維の収縮率
15cm長さの繊維試料に0.002g/デシテックスの荷重下で10cmのマーキングをして、温水中で3分間に浸漬した後、試料の寸法変化を測定し、次式により元の長さに対する収縮率を求める。測定数はn=10とする。試料が短い場合にはマーキング長を短くし、誤差が小さくなるように測定数を適宜増加させても良い。
(1−収縮後繊維長/未処理繊維長)×100 (%)
(2)不織布の面積収縮率
タテ×ヨコ方向に20cm×20cmの不織布の中央部に15cm×15cmのマーキングをして、この不織布を縦×横×高さ=30cm×30cm×5cmの金属バスケットに入れ、その後目的の温度の温水中に3分間浸漬した後、試料の寸法変化を測定し、次式により元の面積に対する面積収縮率を求める。測定はn=10としその平均値で表す。試料面積が小さい場合にはマーキング面積を小さくし、誤差が小さくなるように測定数を増加させても良い。
(1−収縮後不織布面積/未処理不織布面積)×100 (%)
また、マーチンデール法の減量値は、JIS L 1096に記載の装置および処理方法に従い、荷重12kPaで2万回表面磨耗処理した後で試料重量を測定し、表面磨耗処理前の試料重量に対して減っていればその値を減量値として計算し、もし増えていれば減量値はマイナスの値とする。
【0022】
実施例1ポリエチレンテレフタレート(相対粘度=0.65)を島成分とし、直鎖状低密度ポリエチレン(温度190℃で測定したMFR=40g/10分)を海成分とする海島型複合繊維[島成分:海成分=60:40(質量比)、島数=50]を紡糸温度315℃、引き取り速度1100m/分で紡糸した。この未延伸糸を75℃の温水中で2.0倍延伸し引き続き85℃の熱水中で延伸し総延伸倍率を3.5倍とした。得られた海島型複合繊維の85℃熱水における長さ方向の収縮率は6%であった。その後捲縮、乾燥(80℃)し、切断して繊度4.5デシテックス、長さ51mmのステープルを得た。このステープルを通常のカード、クロスラッパー装置を用いウェッブとした後、ニードルパンチを施し、目付320g/m2の不織布を得た。この不織布を90℃の熱水で処理し面積収縮率で13%収縮させた後、120℃の熱風処理により乾燥、加熱し、カレンダーロールでプレスすることで表面の平滑な絡合不織布を作成した。この絡合不織布の目付は360g/m2、厚み0.9mm、見掛け密度は0.4g/cm3であった。
【0023】
この絡合不織布にエーテル系ポリウレタンを主体とするポリウレタン13%のジメチルホルムアミド(以下DMFと略す)溶液を含浸し、DMF/水混液中に浸漬し湿式凝固した後、熱トルエン中で複合繊維中の海成分のポリエチレンを抽出除去してポリエステル極細繊維とポリウレタンからなる厚み0.7mm、目付290g/m2、基体中のポリエステル極細繊維の見掛け密度が0.31g/cm3の基体を得た。得られた基体の片面を180番のサンドペーパーによりバフィングし厚みを0.55mmにした後、反対面をDMF/アセトン=30/70(重量比)混合溶液を200メッシュのグラビアロールを用いて8g/m2の割合で塗布し乾燥した後、混合溶液塗布面を400番および600番のサンドペーパーで起毛し、スエード調皮革様シートの染色前生地を得た。
【0024】
次にこのスエード調皮革様シートの染色前生地を高圧液流染色機を使用し、浴比1:15で、分散染料としてSumikaron Blue S-BBL 0.5%owf、KayalonPolyester Red TL-SF 15.0%owf、Kiwalon Polyester Yellow BRF 1.2%owf、均染剤、pH調整剤および金属イオン封鎖剤の存在下で染色した。次いで乾燥、幅セット、整毛処理を行いスエード調皮革様シートを得た。得られたスエード調人工皮革は、風合いのソフトなものであり、マーチンデール法による12kPa、2万回摩耗後の減量が12mgであった。また表面磨耗測定後の試料表面もピリングが無く下地のポリウレタンも見えにくい良好なものであった。
【0025】
比較例1
海島型複合繊維を延伸時に80℃の温水中で1.5倍延伸し、引き続き65℃の温水中で延伸し、総延伸倍率を3.0倍とすることによって、85℃熱水における長さ方向の収縮率を30%としたことと、不織布の90℃における面積収縮率を50%としたこと以外は実施例1と同様の方法でスエード調皮革様シートを得た。得られたスエード調皮革様シートは、風合いはソフトなものであったが、実施例1と同様のマーチンデール法による表面磨耗後の減量が50mgであり、表面磨耗測定後の試料表面は下地のポリウレタンが見え一部表面のポリエステル極細繊維がピリングしており、実用性に劣るものであった。
【0026】
比較例2
海島型複合繊維を延伸時に65℃の温水中で2.0倍延伸し引き続き95℃の熱水中で延伸し総延伸倍率を3.5倍とし、乾燥温度を95℃とすることによって85℃熱水における長さ方向の収縮率を2.0%としたことと不織布の90℃における面積収縮率を3.5%としたこと以外は実施例1と同様の方法でスエード調皮革様シートを得た。得られたスエード調皮革様シートはマーチンデール法による表面磨耗後の減量は3mg(12kPa、2万回)と良好なものであったが、風合いがゴアゴアしたペーパーライクなものであり、衣料用およびソフトファニチャーに使用困難なものであった。
【0027】
【発明の効果】
ポリエステル極細繊維と弾性重合体からなり、少なくとも片面に立毛が形成されているスエード調皮革様シートにおいて、風合いがソフトでかつ表面の耐磨耗性に優れる実用価値のあるスエード調皮革様シートの製造方法およびその製造方法により得られるスエード調皮革様シートを提供することができる。
Claims (5)
- 繊度0.2デシテックス以下の極細繊維絡合不織布およびその内部に含有された弾性重合体からなる基体の少なくとも片面に、立毛を有するスエード調皮革様シートを製造するに際し、下記▲1▼〜▲5▼の工程
▲1▼ポリエステルを極細繊維成分とし、85℃の熱水中で収縮率が3〜10%である極細繊維発生型繊維を製造する工程、
▲2▼該極細繊維発生型繊維を三次元絡合した後、85〜95℃の熱水処理により、面積収縮率で5〜20%となるように収縮させて不織布とする工程、
▲3▼該不織布に高分子弾性体を含浸・凝固する工程、
▲4▼該極細繊維発生型繊維を極細繊維および/または極細繊維束に変換して基体とする工程、
▲5▼該基体表面を起毛する工程、
を▲1▼▲2▼▲3▼▲4▼▲5▼または▲1▼▲2▼▲4▼▲3▼▲5▼の順で行うことを特徴とするスエード調皮革様シートの製造方法。 - 極細繊維発生型繊維が海島構造繊維である請求項1に記載のスエード調皮革様シートの製造方法。
- 海島構造繊維の海島比率が20:80〜80:20の範囲にある請求項2に記載のスエード調皮革様シートの製造方法。
- 請求項1〜3いずれか1項に記載の製造方法によって得られるスエード調皮革様シート。
- マーチンデール法の減量値が30mg以下であることを満足する請求項4に記載のスエード調皮革様シート。
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