JP4302850B2 - 熱可塑性液晶ポリマーフィルムおよびその製造方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、光学的異方性の溶融相を形成し得る熱可塑性ポリマー(以下、これを熱可塑性液晶ポリマーと称することがある)からなるフィルム(以下、これを熱可塑性液晶ポリマーフィルムと称することがある)とその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、(1)金属箔と直接熱接着できること、(2)耐熱性であること、(3)低吸湿性であること、(4)熱寸法安定性に優れていること、(5)湿度寸法安定性に優れていること、(6)高周波数特性に優れていること、(7)有毒なハロゲン、燐、アンチモン等の難燃剤を含有しなくても難燃性であること、(8)耐放射線性に優れていること、(9)熱膨張係数が制御できること、(10)低温でもしなやかであることなどの優れた特長があるため、近年、回路基板における電気絶縁層材料や保護層材料として、理想的な材料の一つとして注目されている。このため、熱可塑性液晶ポリマーフィルムを電気絶縁層や保護層とする回路基板の実現への要求が高く、特に精密回路基板材料としての期待が高い。
【0003】
以上の熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、熱可塑性液晶ポリマーを押出成形して得られる。このとき、Tダイ法やインフレーション法などが用いられる。特にインフレーション法では、フィルムのMD方向(フィルムの機械軸方向)だけでなく、これと直交するTD方向にも応力が加えられるため、MD方向とTD方向との間における機械的性質および熱的性質のバランスのとれた等方性に優れたフィルムが得られる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、熱可塑性液晶ポリマーフィルムをインフレーション法で製造する場合、得られるフィルムが波打ち状となったりして平坦性が悪い。そこで、従来では、加熱ロール上でフィルムにMD方向のテンションをかけ、フィルムをMD方向に延伸させることにより、平坦性の改善を行っている。しかし、熱可塑性液晶ポリマーフィルムのポリマー分子は、棒状の剛直な分子であり、MD方向にテンションをかけると、分子の向きが簡単にMD方向とほぼ一致して配向する傾向が強い。従って、熱可塑性液晶ポリマーフィルムを単に延伸させるだけでは、表面形状は改善されるものの、等方性が損なわれるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、熱可塑性液晶ポリマーフィルムの等方性を損なうことなく、良好な平坦性を得ることができる製造方法と、これにより得られた熱可塑性液晶ポリマーフィルムを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の熱可塑性液晶ポリマーフィルムの製造方法は、
巻き出しロールおよび加熱ロールの間で、巻き出しロールから繰り出された熱収縮前の熱可塑性液晶ポリマーフィルムに対して2.0〜3.0Kg/mm 2 の張力を付与する工程と、
前記張力を付与された熱可塑性液晶ポリマーフィルムを、JIS B0601に準ずる最大粗さ(Rmax)で表される深さが5〜20μmの範囲にある凹部の付いた加熱ロールの外周面に、無応力状態で接触させながら、その融点より75℃低い温度から融点より15℃低い温度までの温度範囲で、熱収縮させることを特徴とする。
【0007】
本発明に使用される熱可塑性液晶ポリマーフィルムの原料は特に限定されるものではないが、その具体例として、以下に例示する(1)から(4)に分類される化合物およびその誘導体から導かれる公知のサーモトロピック液晶ポリエステルおよびサーモトロピック液晶ポリエステルアミドを挙げることができる。但し、光学的に異方性の溶融相を形成し得るポリマーを得るためには、各々の原料化合物の組み合わせには適当な範囲があることは言うまでもない。
【0008】
(1)芳香族または脂肪族ジヒドロキシ化合物(代表例は表1参照)
【0009】
【表1】
【0010】
(2)芳香族または脂肪族ジカルボン酸(代表例は表2参照)
【0011】
【表2】
【0012】
(3)芳香族ヒドロキシカルボン酸(代表例は表3参照)
【0013】
【表3】
【0014】
(4)芳香族ジアミン、芳香族ヒドロキシアミンまたは芳香族アミノカルボン酸(代表例は表4参照)
【0015】
【表4】
【0016】
これらの原料化合物から得られる熱可塑性液晶ポリマーの代表例として、表5に示す構造単位を有する共重合体(a)〜(e)を挙げることができる。
【0017】
【表5】
【0018】
また、本発明に使用される熱可塑性液晶ポリマーとしては、フィルムの所望の耐熱性および加工性を得る目的においては、約200〜約400℃の範囲内、とりわけ約250〜約350℃の範囲内に融点を有するものが好ましいが、フィルム製造の点からは、比較的低い融点の熱可塑性液晶ポリマーフィルムの方が容易である。したがって、より高い耐熱性や融点が必要な場合には、一旦得られたフィルムを加熱処理することによって、所望の耐熱性や融点にまで高めることが推奨される。加熱処理の条件の一例を説明すれば、一旦得られたフィルムの融点が283℃の場合でも、260℃で5時間加熱すれば、融点は320℃になる。
【0019】
本発明に使用される熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、熱可塑性液晶ポリマーを押出成形して得られる。任意の押出成形法がこの目的のために使用されるが、周知のTダイ法、インフレーション法等が工業的に有利である。特にインフレーション法では、フィルムのMD方向だけでなく、これと直交するTD方向にも応力が加えられるため、MD方向とTD方向における機械的性質および熱的性質のバランスのとれたフィルムフィルムが得られるので、このインフレーション法により得られる熱可塑性液晶ポリマーフィルムがより好適に用いられる。
【0020】
好ましくは、熱可塑性液晶ポリマーフィルムをそのMD方向に張力(テンション)をかけた状態で加熱ロールに供給し、前述した所定の温度条件下で、かつ特定の凹部を有する加熱ロール上で熱収縮させる。このとき、前記ロールの凹部や温度条件および張力を選択することにより、熱可塑性液晶ポリマーフィルムは本来有している等方性が損なわれることなく、良好な平坦性が付与される。
【0021】
本発明で使用される加熱ロールは、外周面に多数の凹部が形成されていることが必要である。ここで、凹部とは、実質的に連続した平らな表面(substantially continuous surface plane、以後これを基準面と称する)に形成された凹部(concaves)を意味する。この凹部の深さは、JIS B0601に準ずる最大粗さ(Rmax)で表した場合、このRmaxが5〜20μmの範囲となるように設定されていることが必要である。
【0022】
また、使用される加熱ロールの凹部は、いかなる模様を形成していてもよい。加熱ロールに設ける凹部の深さは、熱可塑性液晶ポリマーフィルムの滑りを防止し、平坦性を改善する目的からは、できるだけ大きい方が良い。しかし、凹部の深さが20μmを越えると、熱可塑性液晶ポリマーフィルムが加熱ロールから離れるとき、熱収縮されて凹部に入り込んだ前記フィルムの一部が引っ掛って破断する恐れがある。逆に凹部が5μmより小さくなると、熱可塑性液晶ポリマーフィルムとロールが接着してしまって、剥がれなくなる恐れがある。ロールの凹部の深さは、Rmaxが8〜16μmの範囲であることが好ましい。ここで最大粗さとは、ランクテーラーボブソン社製の触針式表面粗さ測定器を用い、針の先端曲率半径が2μm、荷重が20mgでロール円周方向に20点を測定した平均値である。
【0023】
前記加熱ロールとしては、例えばニッケルメッキもしくはクロムメッキされた金属ロール、または、テフロン、シリコーンもしくはポリアミドのような樹脂の薄い層で被覆された被覆金属ロールが使用される。この加熱ロールに、その表面を化学的または物理的方法により粗化させて多数の凹部を形成する。
【0024】
前記加熱ロールは、その内部に循環している加熱媒体により加熱され、熱可塑性液晶ポリマーフィルムはロール表面から伝わる熱で加熱される。このとき、ロール表面温度を高くして、熱可塑性液晶ポリマーフィルムの温度を高くすると、平坦性が短時間で改善されて生産性が高められるので、工業的には都合がよい。しかし、あまりロール表面温度を高くし過ぎると、フィルムにかかる張力の僅かな変動で熱可塑性液晶ポリマーフィルムの破断を招く。このため、熱可塑性液晶ポリマーフィルムが十分に柔らかくなる熱可塑性液晶ポリマーフィルムの融点より75℃低い温度から融点より15℃低い温度までの温度範囲が採用される。このとき、ロール温度が熱可塑性液晶ポリマーフィルムの融点よリ15℃低い温度よりも高い場合、熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、部分的にロールの表面に付着し、それにより変形を起こして、熱可塑性液晶ポリマーフィルムの機械的性質が著しく低下する。一方、ロール温度が熱可塑性液晶ポリマーフィルムの融点より75℃低い温度より低い温度では、熱可塑性液晶ポリマーフィルムが柔らかくならないので、平坦性の優れた熱可塑性液晶ポリマーフィルムは得られない。
【0025】
また、熱可塑性液晶ポリマーフィルムを前記加熱ロールに無応力状態で接触させて加熱して熱収縮させる。これにより、熱可塑性液晶ポリマーフィルムの熱収縮時に歪みや変形などが発生するのが防止される。
【0026】
前記熱可塑性液晶ポリマーフィルムの融点は、示差走査熱量計を用いて、フィルムの熱挙動を観察して得られる。つまり、供試フィルムを20℃/分の速度で昇温して完全に溶融させた後、溶融物を50℃/分の速度で50℃まで急冷し、再び20℃/分の速度で昇温した時に現れる吸熱ピークの位置を、フィルムの融点として記録する。
【0027】
また、前記加熱ロール上で熱可塑性液晶ポリマーフィルムをMD方向に張力をかけて延伸させることにより平坦性は改善されるが、張力をかけるときの条件として、特定の条件を選択することなく、単にMD方向に延伸させるだけでは、熱可塑性液晶ポリマーフィルムの等方性が崩れる。また張力をかけ過ぎると、熱可塑性液晶ポリマーフィルムは簡単に破断するので、安定した製造を長時間行うことは難しい。これらのことから、本発明では、熱可塑性液晶ポリマーフィルムに、2.0〜3.0Kg/mm2 の張力を付与することが好ましい。このとき、張力が2.0Kg/mm2 未満であると、本発明の目的である平坦性の改善効果が十分に得られない傾向にある。逆に、張力が3.0Kg/mm2 を超えると、熱可塑性液晶ポリマーフィルムの等方性を損なう問題が発生し易くなり、さらに、はなはだしい場合には熱可塑性液晶ポリマーフィルムが破断してしまう傾向にある。
【0028】
本発明の方法においては、熱可塑性液晶ボリマーフイルムが以上のような所定の温度条件に保持された加熱ロールを通過するとき、前記フィルムに効果的に平坦性を付与するためには、前記ロールの回転速度は、その外周の線速度に換算して、好ましくは10m/分以下、更に好ましくは5m/分以下とする。回転速度には特定の下限はないが、生産性の上からは回転速度を0.5m/分以上とすることが好ましい。
【0029】
さらに、本発明により得られる熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、その分子配向度SORを0.80〜1.30とすることが好ましい。この熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、MD方向とTD方向との間における電気的特性や機械的性質および熱的性質のバランスが良好であるので、実用性がより高い。
【0030】
ここで分子配向度SOR (Segment Orientation Ratio)とは、分子配向の度合いを与える指標をいい、従来のMOR (Molecular Orientation Ratio)とは異なり、物体の厚さを考慮した値である。この分子配向度SORは、以下のように算出される。
【0031】
まず、周知のマイクロ波分子配向度測定機において、液晶ポリマーフィルムをマイクロ波の進行方向にフィルム面が垂直になるように、マイクロ波共振導波管中に挿入し、フィルムを透過したマイクロ波の電場強度(マイクロ波透過強度)が測定される。
そして、この測定値に基づいて、次式により、m値(屈折率と称する)が算出される。
m=(Zo/△z)×[1−νmax /νo]
ただし、Zoは装置定数、△zは物体の平均厚、νmax はマイクロ波の振動数を変化させたとき、最大のマイクロ波透過強度を与える振動数、νoは平均厚ゼロのとき(すなわち物体がないとき)の最大マイクロ波透過強度を与える振動数である。
次に、マイクロ波の振動方向に対する物体の回転角が0°のとき、つまり、マイクロ波の振動方向と、物体の分子が最もよく配向されている方向であって、最小マイクロ波透過強度を与える方向とが合致しているときのm値をm0 、回転角が90°のときのm値をm90として、分子配向度SORがm0 /m90により算出される。
【0032】
本発明により得られる熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、適用分野によって必要とされる分子配向度SORが当然異なるが、SOR≧1.50の場合は液晶ポリマー分子の配向の偏りが著しいためにフィルムが硬くなり、かつMD方向に裂け易い。逆にSOR≦0.70の場合はTD方向に裂け易い。加熱時の反りがないなどの形態安定性が必要とされるプリント配線板や多層プリント配線板等の場合には、0.80≦SOR≦1.30であることが望ましい。特に加熱時の反りをほとんど無くす必要がある精密プリント配線板や多層プリント配線板等の場合には、0.93≦SOR≦1.07であることが望ましい。
【0033】
本発明により得られる平坦性の優れた熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、熱可塑性液晶ポリマーに由来する優れた耐熱性、耐薬品性および電気的性質を有するのみならず、力学的性質のバランス性があり、耐屈曲性に優れ、また適度な熱膨張係数を有することから、絶縁テープ、フレキシブルプリント配線板、多層薄膜配線板などの積層板用の素材などとして有用なものである。特に、プリント配線回路基板において電機絶縁層や保護層として使用される原料フィルムとして有用である。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかる製造方法の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、平坦性の優れた熱可塑性液晶ポリマーフィルムを製造する装置の一例を模式的に示す図面である。図1において、1は巻き出しロール、2は加熱ロール、3は引き取りロール、4はこれらロールの間に配置した誘導ロールである。巻き出しロール1から繰り出される熱可塑性液晶ポリマーフィルムA(例えば後述する参考例1で得られるもの)を、回転する加熱ロール2の外周面に無応力状態で接触させながら引き取りロール3に巻き取る。このとき、加熱ロール2の回転速度を一定とした状態で、巻き出しロール1の巻き出し量を調整し、これらロール1,2の間で熱可塑性液晶ポリマーフィルムAに2.0〜3.0Kg/mm2 の張力を付与することが好ましい。これにより、熱可塑性液晶ポリマーフィルムAは、ロール1,2間で張力が付与されたのち、ロール2上で無応力状態となる。また、前記加熱ロール2の表面温度は、熱可塑性液晶ポリマーフィルムAの融点より75℃低い温度から融点より15℃低い温度までの温度範囲に保持される。
【0035】
図2は、加熱ロール2の表面の拡大断面図を示している。この加熱ロール2の表面には、多数の凹部21が形成されている。凹部21は、その基準面(実質的に連続した平らな表面)22から最も凹んだ位置23までの深さがDである。この深さDは、JIS B0601に準ずる最大粗さ(Rmax)で表した場合、5〜20μmの範囲であり、好ましくは8〜16μmの範囲とされる。前記凹部21内には、同図の左側に示すように、微細な凹凸25が形成されていてもよい。また、同図の右側に示すように、凹部21の周囲の一部が基準面22から突き出た突部26を有するものであってもよい。
【0036】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら制限されるものではない。なお、下記する熱可塑性液晶ポリマーフィルムの膜厚、平坦性および外観検査は、以下の方法により測定した。
【0037】
(1)膜厚
デジタル厚み計(株式会社ミツトヨ製)を用い、得られたフィルムをTD方向に1cm間隔で測定し、中心部および端部から任意に選んだ10点の平均値を膜厚とした。
【0038】
(2)平坦性、外観検査
それぞれ目視により観察した。そして、平坦性は弛みや皺などが全くないものを平坦性良(○)とし、皺などが若干はあるものの商品化可能なものを平坦性普通(△)とし、皺などが大きく残って商品化できないものを平坦性不良(×)とした。
【0039】
参考例1
p−ヒドロキシ安息香酸と6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸の共重合物で、融点が280℃である熱可塑性液晶ポリマーを吐出量20kg/時で溶融押出し、横延伸倍率4.77倍、縦延伸倍率2.09倍の条件でインフレーション製膜した。平均膜厚が50μm、膜厚分布が±7%、幅40cmで分子配向度SORが1.00のフィルムを得た。この熱可塑性液晶ポリマーフィルムをAとする。
【0040】
実施例1
図1の装置を使用して、参考例lで得られた熱可塑性液晶ポリマーフィルムAを巻き出しロール1から巻き出し、このフィルムAを回転する加熱ロール2の外周面に無応力状態で接触させ、この無応力下でフィルムAを加熱して熱収縮させながら、巻き取りロール3で巻き取った。このとき、加熱ロール2としては、表面に深さ12μmの多数の凹部21が形成されているクロムメッキを施したステンレス製の直径600mmのものを使用した。また、加熱ロール2は、3m/分の回転速度に保持して、このロール2の表面に前記フィルムAを接触させた。この加熱ロール2の内部には加熱ヒーターが組み込まれており、ロール内部で循環している加熱媒体を加熟し、その熱によって加熱ロール2の表面温度を235℃に維持させた。
【0041】
そして、前記巻き出しロール1から加熱ロール2への巻き出し量を変更しながら、前記フィルムAに掛かる張力を種々調整して、このときの平坦性と分子配向度SORを調べた。ここでの張力は、巻き出しロール1から加熱ロール2に至るまでの間に熱可塑性液晶ポリマーフィルムAに付与される張力である。この張力を種々調整したときの平坦性とSORの値を表6に示す。同表において、No1〜No5は、加熱ロール2の表面温度が235℃で、張力(Kg/mm2 )が、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0に調整されたときの平坦性とSORの値である。
【0042】
【表6】
【0043】
実施例2
加圧ロールの表面温度を240℃に変え、これ以外は実施例1と同様にして平坦性と分子配向度SORを調べた。このときの平坦性とSORの値は、表7に示す通りである。同表において、No1〜No4は、加熱ロール2の表面温度が240℃で、張力(Kg/mm2 )が、1.0、1.5、2.0、2.5に調整されたときの平坦性とSORの値である。
【0044】
【表7】
【0045】
実施例3〜5および比較例1〜2
凹部の深さが異なる種々の加圧ロールを用い、これ以外は実施例1と同様にして得られるフィルムの外観検査を行った。このときの結果を表8に示す。同表において、実施例3〜5および比較例1〜2は、加熱ロールの表面温度が235℃で、張力(Kg/mm2 )が、1.0〜3.0Kg/mm2 の範囲に調整されたときの外観である。
【0046】
【表8】
【0047】
以上の実施例1および2(加熱ロール温度が235℃、240℃の場合)の結果を示す表6および表7から明らかなように、熱可塑性液晶ポリマーフィルムに付与する張力が2.0Kg/mm2 未満の場合(表6,7のそれぞれNo1)は、良好な平坦性が得られない。なお、同実施例では示していないが、張力が3.0Kg/mm2 を超えると、熱可塑性液晶ポリマーフィルムが本来有する等方性が損なわれてしまう。このことから、熱可塑性液晶ポリマーフィルムに付与する張力は、2.0Kg/mm2 〜3.0Kg/mm2 の範囲が最適である。これにより、熱可塑性液晶ポリマーフィルムの等方性を損なうことなく、平坦性を改善できる。
【0048】
また、実施例3〜5および比較例1〜2による表8から明らかなように、凹部の深さが4μmと35μmの場合(実施例3および7)には、良好な平坦性が得られず、しかも熱可塑性液晶ポリマーフィルムの破損を招くことがある。このことから、加熱ロールに設ける凹部の深さは、5〜20μmの範囲とされる。
【0049】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、押出成形法で得られた熱可塑性液晶ポリマーフィルムの等方性を損なうことなく、平坦性を良好にできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明にかかる平坦性の優れた熱可塑性液晶ポリマーフィルムを製造する装置の一実施形態を模式的に示す側面図である。
【図2】図2は本発明に用いる加熱ロール表面の拡大断面図である。
【符号の説明】
2…加熱ロール、21…凹部、A…熱可塑性液晶ポリマーフィルム。
Claims (2)
- 光学的異方性を形成し得る熱可塑性ポリマーからなるフィルム(以下、これを熱可塑性液晶ポリマーフィルムと称する)を製造する方法であって、
巻き出しロールおよび加熱ロールの間で、巻き出しロールから繰り出された熱収縮前の熱可塑性液晶ポリマーフィルムに対して2.0〜3.0Kg/mm2の張力を付与する工程と、
前記張力を付与された熱可塑性液晶ポリマーフィルムを、JIS B0601に準ずる最大粗さ(Rmax)で表される深さが5〜20μmの範囲にある凹部の付いた加熱ロールの外周面に、無応力状態で接触させながら、その融点より75℃低い温度から融点より15℃低い温度までの温度範囲で、熱収縮させることを特徴とする熱可塑性液晶ポリマーフィルムの製造方法。 - 請求項1において、前記加熱ロールの回転速度が、3〜10m/分であることを特徴とする熱可塑性液晶ポリマーフィルムの製造方法。
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