JP4300820B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents

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  • Power Steering Mechanism (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車等の車両に搭載される電動パワーステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電動パワーステアリング装置は、操舵部材(ステアリングホイール)に付与された操舵トルクに応じて、操舵軸に電磁クラッチを介して接続されたモータにより操舵補助力を生じさせる装置である。かかる電動パワーステアリング装置では、何らかの理由でモータの回転軸がロックされた状態となった場合に、ステアリングがロックされ操舵不能となることを避ける手段が必要となる。このため、例えば特許文献1又は2に記載された電動パワーステアリング装置では、操舵トルクと舵角との関係が所定の範囲外となったことによりモータのロックを検出して、パワーアシストを停止させるとともに電磁クラッチを切り、マニュアルステアリング装置に切り換えるよう構成している。
【0003】
また、特許文献3に記載された電動パワーステアリング装置では、操舵トルク等が一定以上である場合において、モータの回転角速度が基準値以下であることをもって、ロックされた状態であると判定し、パワーアシストを停止させて電磁クラッチを切り、マニュアルステアリング装置に切り換える。
【0004】
【特許文献1】
特許第2891038号公報(第3〜5頁、図4)
【特許文献2】
特許第2819473号公報(第2〜3頁、第1図)
【特許文献3】
特許第2924516号公報(第3〜4頁、図4)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような従来の電動パワーステアリング装置においてはいずれも、モータのロック判定に操舵トルクを考慮している。ところが、現在開発が進められている自動駐車システムは、運転者が何もせずに、電動パワーステアリング装置の自動操舵により縦列駐車等が行われるものであるため、自動操舵中には操舵トルクの情報は利用できない。このような自動操舵中に、操向車輪が縁石等の障害物に当たった場合には、モータが正常であってもモータのロックとよく似た状態となる。しかし、従来の電動パワーステアリング装置では、操舵トルクの情報がなければ、この状態をロックとして検出することはできない。
従って、縁石等の障害物により操舵不能状態となっても、それを検出できず、モータには最大電流が流れ続ける。その結果、モータが過熱してシステムが異常停止に陥ることがある。この場合、復帰にも時間がかかり、使い勝手が悪くなる。
【0006】
上記のような従来の問題点に鑑み、本発明は、自動操舵中に操舵不能状態が発生したことを検出してモータの過熱を防止することができる電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の電動パワーステアリング装置は、操舵部材に付与される操舵トルクに応じてモータにより操舵補助力を生じさせるとともに、前記モータ単独で操向車輪を転舵させ得る操舵装置と、前記操舵装置による操舵量を検出する操舵量センサと、前記モータの温度を検出する温度センサと、舵角指令値に応じて前記モータを駆動し、前記操舵装置に自動操舵を行わせる自動操舵制御部と、前記操舵量センサによって検出される操舵量に基づいて、前記温度センサの検出する温度に応じて設定した判定時間内に前記操舵装置が前記舵角指令値に対応した自動操舵を行ったか否か、を判定する操舵判定部と、前記操舵判定部により前記判定時間内に前記舵角指令値に対応した自動操舵が行われていないと判定された場合に、前記モータを停止させ、自動操舵を解除する自動操舵解除部とを備え、前記操舵判定部は、前記操舵量センサによって検出される操舵量に相当する舵角検出値が前記舵角指令値に対して所定値以上不足している状態の累積時間が前記判定時間に達したことにより、前記舵角指令値に対応した自動操舵が行われていないと判定するものであり、前記舵角指令値と前記舵角検出値との差が大きいほど前記判定時間が長くなることを特徴とするものである
【0008】
のように構成された電動パワーステアリング装置では、自動操舵中に縁石等の障害物により操向車輪がそれ以上転舵できなくなったとき、舵角指令値に対応した自動操舵が判定時間内に行われない状態となるので、判定時間後に制御装置により自動操舵は解除され、モータは停止となる。従って、モータの過熱は防止され、自動駐車システムの異常停止を防止することができる。また、判定時間はモータの温度に応じて設定されるので、温度を考慮してモータの過熱を的確に防止することができる。
【0009】
また、上記電動パワーステアリング装置において、操舵判定部は、操舵量センサによって検出される操舵量に相当する舵角検出値が舵角指令値に対して所定値以上不足している状態の累積時間が判定時間に達したことにより、舵角指令値に対応した自動操舵が行われていないと判定するので、舵角検出値が判定時間内に舵角指令値に達しないことにより、操舵不能となったことを簡易に検出することができる。
また、上記電動パワーステアリング装置において、舵角指令値と舵角検出値との差が大きいほど判定時間が長くなるようにされているので、舵角指令値が比較的大きく、転舵に相応の時間がかかる場合には判定時間も長くなる。従って、正常な自動操舵を誤って途中で解除することを防止することができる。逆に、舵角指令値が比較的小さく、転舵にさほど時間がかからない場合には判定時間も短くなる。従って、操舵不能となった場合には迅速に自動操舵を解除することができる。
【0010】
また、本発明の電動パワーステアリング装置は、操舵部材に付与される操舵トルクに応じてモータにより操舵補助力を生じさせるとともに、前記モータ単独で操向車輪を転舵させ得る操舵装置と、前記操舵装置による操舵量を検出する操舵量センサと、前記モータの温度を検出する温度センサと、舵角指令値に応じて前記モータを駆動し、前記操舵装置に自動操舵を行わせる自動操舵制御部と、前記操舵量センサによって検出される操舵量に基づいて、前記温度センサの検出する温度に応じて設定した判定時間内に前記操舵装置が前記舵角指令値に対応した自動操舵を行ったか否か、を判定する操舵判定部と、前記操舵判定部により前記判定時間内に前記舵角指令値に対応した自動操舵が行われていないと判定された場合に、前記モータを停止させ、自動操舵を解除する自動操舵解除部とを備え、前記操舵判定部は、前記操舵量センサによって検出される操舵量に相当する舵角検出値が前記舵角指令値に対して所定値以上不足し、かつ、前記モータの電流値が所定値を超える状態の累積時間が前記判定時間に達したことにより、前記舵角指令値に対応した自動操舵が行われていないと判定するものであり、前記舵角指令値と前記舵角検出値との差が大きいほど前記判定時間が長くなることを特徴とするものである。
この場合、上記同様、モータの過熱は防止され、自動駐車システムの異常停止を防止することができる。また、判定時間はモータの温度に応じて設定されるので、温度を考慮してモータの過熱を的確に防止することができる。
また、舵角検出値が舵角指令値に到達せず、かつ、モータの負荷が大きい状態の累積時間が判定時間に達したことにより、操舵不能となったことを正確に検出することができる。
【0011】
また、上記電動パワーステアリング装置において、舵角指令値と舵角検出値との差が大きいほど判定時間が長くなるようにされているので、舵角指令値が比較的大きく、転舵に相応の時間がかかる場合には判定時間も長くなる。従って、正常な自動操舵を誤って途中で解除することを防止することができる。逆に、舵角指令値が比較的小さく、転舵にさほど時間がかからない場合には判定時間も短くなる。従って、操舵不能となった場合には迅速に自動操舵を解除することができる。
【0012】
また、本発明の電動パワーステアリング装置は、操舵部材に付与される操舵トルクに応じてモータにより操舵補助力を生じさせるとともに、前記モータ単独で操向車輪を転舵させ得る操舵装置と、前記操舵装置による操舵量を検出する操舵量センサと、前記モータの温度を検出する温度センサと、舵角指令値に応じて前記モータを駆動し、前記操舵装置に自動操舵を行わせる自動操舵制御部と、前記操舵量センサによって検出される操舵量に基づいて、前記温度センサの検出する温度に応じて設定した判定時間内に前記操舵装置が前記舵角指令値に対応した自動操舵を行ったか否か、を判定する操舵判定部と、前記操舵判定部により前記判定時間内に前記舵角指令値に対応した自動操舵が行われていないと判定された場合に、前記モータを停止させ、自動操舵を解除する自動操舵解除部とを備え、前記操舵判定部は、前記操舵量センサによって検出される操舵量に相当する舵角検出値が前記舵角指令値に対して所定値以上不足し、かつ、前記モータの電流値が所定値を超える状態の累積時間が前記判定時間に達したことにより、前記舵角指令値に対応した自動操舵が行われていないと判定するものであり、前記モータの電流値が大きいほど前記判定時間が短くなることを特徴とするものである
この場合、上記同様、モータの過熱は防止され、自動駐車システムの異常停止を防止することができる。また、判定時間はモータの温度に応じて設定されるので、温度を考慮してモータの過熱を的確に防止することができる。
また、舵角検出値が舵角指令値に到達せず、かつ、モータの負荷が大きい状態の累積時間が判定時間に達したことにより、操舵不能となったことを正確に検出することができる。
また、モータの電流値が大きいほど判定時間が短くなるようにされているので、モータ電流値が比較的大きく、モータが急激に温度上昇する場合には、判定時間を短くして、より確実にモータの過熱を防止することができる。逆に、モータ電流値が比較的小さく、モータの温度上昇が緩やかな場合には、判定時間を長くして、性急な自動操舵の解除を避けることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は、自動車に搭載される本発明の一実施形態による電動パワーステアリング装置の概略構成を示す図である。図において、電動パワーステアリング装置の本体部分を成す操舵装置1は、操舵部材(ステアリングホイール)2と、操舵部材に接続された入力軸3、トーションバー4及び出力軸5と、トーションバー4の捻れにより操舵トルクを検出するトルク検出器6と、出力軸5と一体回転する減速ギヤ7と、この減速ギヤ7と噛み合う、電磁クラッチ内蔵のモータ8と、出力軸5の下端に形成されたピニオン9と、このピニオン9と噛み合ってラック・ピニオンを構成し、左右に直線運動するラック軸10と、ラック軸10と操向車輪11とを接続するタイロッド12とを備えている。
【0014】
上記トルク検出器6の出力信号は、CPU、ROM、RAM等の他、必要なインターフェースやドライバを内蔵する制御装置としてのECU(Electronic Control Unit)13に入力される。また、ECU13からモータ(電磁クラッチを含む。)8に駆動電流が供給される。なお、実際にはモータ8に駆動電流を供給するためのパワーユニットが併設されるが、このパワーユニットもECU13に含めて説明する。
【0015】
一方、電動パワーステアリング装置を自動駐車システムにおける自動操舵に使用する際の制御系要素として、モータ8の温度を検出する温度センサ14と、出力軸5の回転に基づいて操舵量(舵角)を検出する操舵量センサ15とが設けられている。なお、操舵量センサ15は、ラック軸10の移動量に基づいて操舵量を検出するものであってもよい。温度センサ14及び操舵量センサ15の出力信号は、ECU13に入力される。また、ECU13に対して、自動車の中央制御装置(図示せず。)から舵角指令値の信号が入力される。なお、温度センサ14及び操舵量センサ15の出力信号は、当該中央制御装置にも送られる。
【0016】
ECU13は、ソフトウェア(後述するフローチャートの処理)によって構成される内部機能として、通常操舵制御部131と、自動操舵制御部132と、自動操舵解除部133と、操舵判定部134とを備えている。通常操舵制御部131は、操舵部材2に付与される操舵トルクを検出するトルク検出器6からの出力信号に基づいて、モータ8に操舵補助力を生じさせる。自動操舵制御部132は、舵角指令値に応じてモータ8を駆動し、操舵装置1に自動操舵を行わせる。操舵判定部134は、操舵量センサ15によって検出される操舵量及び必要によりさらにモータ8の電流値に基づいて、温度センサ14の検出する温度に応じて設定した判定時間内に操舵装置1が舵角指令値に対応した自動操舵を行ったか否かを判定する。また、自動操舵解除部133は、操舵判定部134により判定時間内に舵角指令値に対応した自動操舵が行われていないと判定された場合に、モータ8を停止させ、自動操舵を解除する。
【0017】
上記のように構成された電動パワーステアリング装置において、通常走行時には、舵角指令値は例えば0であり、通常操舵制御部131により通常の制御が行われる。具体的には、操舵部材2に付与される操舵トルクがトルク検出器6によって検出され、その出力信号を受けたECU13(通常操舵制御部131)によりモータ8が駆動され、操舵補助力が発生する。
一方、運転者がボタン操作等をすることにより車両に搭載された自動駐車システムが起動し、自動駐車システムの制御下でモータ8が駆動されるときは、運転者はステアリング操作を全く行わず、モータ8単独で操向車輪11を転舵させる。
【0018】
以下、自動駐車システム動作時にECU13において実行される処理動作の第1実施例〜第3実施例について、図2〜図5を参照して説明する。
≪第1実施例≫
図2は、処理動作の第1実施例を示すフローチャートである。自動駐車システムが起動すると、そのときの車両の停止位置や車庫入れ目標位置等から演算された舵角指令値がECU13に入力される。これにより、自動操舵が開始され、舵角指令値に応じてモータ8が駆動される。また、ステップS21においてECU13のCPU(以下、単にCPUという。)は、舵角指令値の存否に基づいて自動操作モードか否かを判断する。ここでは舵角指令値が来ているので自動操作モードであり、CPUはステップS22に進み、(舵角指令値−舵角検出値)が所定の値X(例えば10度とする。)以上であるか否かを判断する。ここで、舵角検出値とは、操舵量センサ15の出力信号に相当する操向車輪11の舵角を意味する。
【0019】
ステップS22における判断は、舵角指令値によっても異なるが、例えば舵角指令値が30度、起動直後の舵角検出値はほぼ0であるとすれば、その差は30度であり、判断結果はイエスであるので、CPUはステップS23に進む。ここで、CPUはECU13自身から供給しているモータ電流値が、所定の値Aより大きいか否かを判断する。操向車輪11が円滑に転舵されているときは、モータ電流値はA未満であるようにAの値が設定されており、従ってその場合は、CPUはステップS21に戻り、ステップS21〜S23を繰り返す。
【0020】
自動操舵が順調に進めば、舵角指令値と舵角検出値との差は所定値Xより小さくなり、ステップS22からS21へ戻る処理が繰り返される。舵角検出値が舵角指令値に達すると、舵角指令値が0になり(すなわち指令が来なくなり)、ステップS21のノーからステップS26へジャンプする。ステップS26では、モータ8は停止となり、通常操舵モードへの移行が行われる。なお、舵角指令値が最初からX未満の場合にはステップS21からステップS22の処理が繰り返され、舵角指令値が0になるとステップS26にジャンプしてモータ8は停止となり、通常操舵モードへの移行が行われる。
このようにして、舵角指令値と舵角検出値との差が所定値X以上であり、かつ、モータ電流値がAを超える、という状態が自動操舵中に一度も発生しなければ、ステップS24,S25は実行されることなく、舵角検出値が舵角指令値に達することにより、自動操舵完了となり、通常操舵に戻る。
【0021】
次に、自動操舵中に、舵角指令値と舵角検出値との差が所定値X以上であり、かつ、モータ電流値がAを超える状態が発生すると、CPUはステップS23からS24に進み、フェイルカウンタ(FC:初期値0)をカウントする(FC=FC+1の処理)。続いてステップS25において、フェイルカウンタのカウント値が設定値B以上になるか否かを監視する(ステップS25→S21〜S25の繰り返し)。設定値Bは、モータ8の過熱防止の観点から設定される値であり、また、温度センサ14によって検出されるモータ8の温度により設定され、温度が高いほど小さい値とする。
【0022】
ここで、上記の、舵角指令値と舵角検出値との差が所定値X以上であり、かつ、モータ電流値がAを超える状態が発生した原因が、例えば、路面の摩擦抵抗が大きい等の一過性の理由であれば、遅滞なく、モータ電流値がA以下となるか又は、舵角指令値と舵角検出値との差がX未満となる。従って、フェイルカウンタのカウント値がBに達する前に、舵角検出値が舵角指令値に到達して自動操舵完了となる。
【0023】
一方、自動操舵中に、操向車輪11が縁石等の障害物に当たって止まった場合、その時点から舵角検出値が増加しないため、舵角指令値との差がX以上である状態が継続する場合がある。また、この場合、モータ8の回転が強制的に止められるためモータ電流値はAを上回る。従って、CPUはステップS23からS24に進み、フェイルカウンタ(FC)をカウントし、続いてステップS25において、フェイルカウンタのカウント値が設定値B以上になるか否かを監視する(ステップS25→S21〜S25の繰り返し)。そして、フェイルカウンタがBに達した時点、すなわち、カウント回数にカウント周期(ルーチン処理時間)を乗じた累積時間の経過後に、モータ8を停止させ、通常操舵モードに移行する(ステップS26)。
【0024】
このようにして、舵角検出値が舵角指令値に対して所定値X以上不足し、かつ、モータ電流値がA以上である状態の累積時間が、設定値Bに相当する判定時間に達したことにより、CPUは、舵角指令値に対応した自動操舵が行われていないと判定して、自動操舵を途中で解除する。従って、縁石等の障害物により操向車輪11がそれ以上転舵できなくなったとき、判定時間後に自動操舵は解除され、モータ8は停止となるので、モータ8の過熱は防止される。これにより、自動駐車システムの異常停止を防止することができ、システム停止によって復帰に時間がかかる、という好ましくない事態も回避することができる。また、上記判定は、舵角と、モータ電流値と、判定時間との3つの要素の論理積に基づいて行われる。従って、正確な判定を行うことができる。
【0025】
さらに、Bの値はモータ8の温度(自動操舵開始前の温度)によって設定され、温度が高いほど小さい値となるので、判定時間は温度が高いほど短くなる。これにより、元々温度が高く、モータ8の温度上昇が速い場合には短い判定時間で迅速に自動操舵を解除可能とし、モータ8の過熱を防止することができる。逆に、元々温度が低く、モータ8の温度上昇が緩やかな場合には長い判定時間により、性急な自動操舵解除を避けることができる。すなわち、温度を考慮して、モータ8の過熱を的確に防止することができる。
【0026】
なお、舵角指令値がX未満の小さい値である場合にはフェイルカウンタがカウントされないので、操向車輪11が縁石等の障害物に当たってもECU13側で自動操舵を途中解除することはないが、小幅な転舵は、タイヤの弾性変形により可能である。
【0027】
≪第2実施例≫
図3は、処理動作の第2実施例を示すフローチャートである。自動駐車システムが起動すると、第1実施例の場合と同様に、自動操舵が開始され、舵角指令値に応じてモータ8が駆動される。また、ステップS31においてCPUは、舵角指令値の存否に基づいて自動操作モードか否かを判断する。ここでは舵角指令値が来ているので自動操作モードであり、CPUはステップS32に進み、(舵角指令値−舵角検出値)が所定の値X(例えば10度)以上であるか否かを判断する。
【0028】
ステップS32における判断は、例えば舵角指令値が30度、起動直後の舵角検出値はほぼ0であるとすれば、その差は30度であり、判断結果はイエスであるので、CPUはステップS33に進む。ステップS33においてCPUは、フェイルカウンタ(FC1:初期値0)をカウントする(FC1=FC1+1の処理)。続いてステップS34において、フェイルカウンタのカウント値が設定値B以上であるか否かを判断する。このBは、モータ8の過熱防止の観点から設定される値である。
【0029】
また、上記Bの値は、図4の(a)に示すように、(舵角指令値−舵角検出値)=XのときBであり、(舵角指令値−舵角検出値)に比例して増大する。また、Bの値はモータ8の温度(自動操舵開始前の温度)によっても点線で示すように縦軸方向にシフトして設定され、温度が高いほど全体に小さい値となる。従って、舵角指令値と舵角検出値との差が大きいほど、Bの値すなわち判定時間は長くなり、また、差が同じであれば、モータ8の温度が高いほど判定時間は短くなる。
【0030】
初期の時点ではフェイルカウンタのカウント値はB未満であるので、CPUはステップS35に進み、ここで、CPUはECU13自身から供給しているモータ電流値が、所定の値Aより大きいか否かを判断する。操向車輪11が円滑に転舵されているときは、モータ電流値はA未満であるようにAの値が設定されており、従ってその場合は、CPUはステップS31に戻り、ステップS31〜S35を繰り返す。
【0031】
自動操舵が順調に進めば、舵角指令値と舵角検出値との差は所定値Xより小さくなり、ステップS32からS31へ戻る処理が繰り返される。舵角検出値が舵角指令値に達すると、舵角指令値が0になり(すなわち指令が来なくなり)、ステップS31のノーからステップS38へジャンプする。ステップS38では、モータ8は停止となり、通常操舵モードへの移行が行われる。なお、舵角指令値が最初からX未満の場合にはステップS31からステップS32の処理が繰り返され、舵角指令値が0になるとステップS38にジャンプしてモータ8は停止となり、通常操舵モードへの移行が行われる。
【0032】
次に、自動操舵中に、舵角指令値と舵角検出値との差が所定値X以上であり、かつ、モータ電流値がAを超える状態が発生すると、CPUはステップS35からS36に進み、フェイルカウンタ(FC2:初期値0)をカウントする(FC2=FC2+1の処理)。続いてステップS37において、フェイルカウンタ(FC2)のカウント値が設定値C以上か否かを判断し、C未満であればステップS31〜S37を繰り返す。この繰り返しの処理中に、2つのフェイルカウンタ(FC1及びFC2)は、それぞれカウント値を累積させる。
【0033】
上記Cの値は、モータ8の過熱防止の観点から設定される値であり、図4の(b)に示すように、モータ電流値がAのときCであり、Aから最大値までのモータ電流値に比例して減少する。また、Cの値はモータ8の温度(自動操舵開始前の温度)によっても点線で示すように縦軸方向にシフトして設定され、温度が高いほど全体に小さい値となる。従って、モータ電流値が大きいほどCの値すなわち、判定時間が短くなり、また、モータ電流値が同じであれば、モータ8の温度が高いほど判定時間は短くなる。
【0034】
ここで、舵角指令値と舵角検出値との差が所定値X以上であり、かつ、モータ電流値がAを超える状態が発生した原因が、例えば、路面の摩擦抵抗が大きい等の一過性の理由であれば、遅滞なく、モータ電流値がA以下となるか又は、舵角指令値と舵角検出値との差がX未満となる。従って、フェイルカウンタFC1及びフェイルカウンタFC2のカウント値がそれぞれB及びCに達する前に、舵角検出値が舵角指令値に到達して自動操舵完了となる。
【0035】
一方、自動操舵中に、操向車輪11が縁石等の障害物に当たって止まった場合、その時点から舵角検出値が増加しないため、舵角指令値との差がX以上である状態が継続する場合がある。また、この場合、モータ8の回転が強制的に止められるためモータ電流値はAを上回る。従って、CPUはステップS33及びS36を実行し、ステップS34においてフェイルカウンタFC1がBに達した時点か、又は、ステップS37においてフェイルカウンタFC2がCに達した時点で、モータ8は停止となり、通常操舵モードに移行する(ステップS38)。
【0036】
このようにして、舵角検出値が舵角指令値に対して所定値X以上不足する状態の累積時間が所定の判定時間に達したか、又は、舵角検出値が舵角指令値に対して所定値X以上不足し、かつ、モータ電流値がA以上である状態の累積時間が所定の判定時間に達したことにより、CPUは、舵角指令値に対応した自動操舵が行われていないと判定して、自動操舵を途中で解除する。従って、縁石等の障害物により操向車輪11がそれ以上転舵できなくなったとき、自動操舵は解除され、モータ8は停止となるので、モータ8の過熱は防止される。これにより、自動駐車システムの異常停止を防止することができる。また、B及びCの値はモータ8の温度(自動操舵開始前の温度)によって設定され、温度が高いほど小さい値となるので、判定時間は温度が高いほど短くなる。これにより、第1実施例の場合と同様に、温度を考慮して、モータ8の過熱を的確に防止することができる。
【0037】
上記第2実施例では、(1)舵角検出値が舵角指令値に対して所定値X以上不足する状態の累積時間が所定の判定時間に達したこと、及び、(2)舵角検出値が舵角指令値に対して所定値X以上不足し、かつ、モータ電流値がA以上である状態の累積時間が所定の判定時間に達したこと、の2つの条件のいずれでも自動操舵を解除することとしたので、舵角検出値が舵角指令値に対して所定値X以上不足し、かつ、モータ電流値がA以上である状態の累積時間が所定の判定時間に達したことのみを解除の条件とする第1実施例と比較すると、(1)の条件のみでも自動操舵の解除を行うことができる点で、より確実に自動操舵の解除を行うことができる。
【0038】
また、上記第2実施例では、舵角指令値と舵角検出値との差が大きいほどBの値を増大させるので、舵角指令値が比較的大きい場合、すなわち、転舵に相応の時間がかかる場合には判定時間も増大させて、正常な自動操舵を誤って途中で解除することを防止することができる。逆に、舵角指令値が比較的小さく、転舵にさほど時間がかからない場合には判定時間も短くなる。従って、操舵不能となった場合には迅速に自動操舵を解除することができる。
さらに、上記第2実施例では、モータ電流値が大きいほどCの値を減少させるので、モータ8が急激に温度上昇する場合には判定時間を短くして、より確実にモータ8の過熱を防止することができる。逆に、モータ電流値が比較的小さく、モータ8の温度上昇が緩やかな場合には、判定時間を長くして、性急な自動操舵の解除を避けることができる。
【0039】
なお、第1実施例と同様に、舵角指令値がX未満の小さい値である場合にはフェイルカウンタがカウントされないので、操向車輪11が縁石等の障害物に当たってもECU13側で自動操舵を途中解除することはないが、小幅な転舵は、タイヤの弾性変形により可能である。
【0040】
≪第3実施例≫
図5は、処理動作の第3実施例を示すフローチャートである。このフローチャートのステップS51〜S56は、第1実施例のステップS21〜S26とそれぞれ同じであるので、説明は省略する。但し、ステップS55における設定値Cは、第2実施例における図4の(b)と同様に、モータ電流値に応じて変化する特性を付与する。この場合、第1実施例の作用効果に加えて、モータ電流値が大きいほどCの値を減少させるので、モータ8が急激に温度上昇する場合には判定時間を短くして、より確実にモータ8の過熱を防止することができる。逆に、モータ電流値が比較的小さく、モータ8の温度上昇が緩やかな場合には、判定時間を長くして、性急な自動操舵の解除を避けることができる。
【0041】
なお、上記第1実施例〜第3実施例において、フェイルカウンタの設定値B又はCを最小値(例えば1)に設定すれば、判定時間は実質的に0となり、直ちに自動操舵を解除することができる。
また、図4に示したフェイルカウンタの設定値B及びCの変化特性は直線的であるが、必要により、曲線、折れ線、若しくは段階的な特性を付与してもよい。また、上記第1実施例〜第3実施例はいずれも、モータ電流値に基づくフェイルカウンタのカウントステップを含んでいるが、これを省略して、舵角指令値と舵角検出値との差に基づくフェイルカウンタによる判定時間経過のみで、簡易に、自動操舵を解除するようにしてもよい。
【0042】
【発明の効果】
以上のように構成された本発明の電動パワーステアリング装置によれば、自動操舵中に縁石等の障害物により操向車輪がそれ以上転舵できなくなったとき、判定時間後に制御装置により自動操舵は解除され、モータは停止となる。従って、モータの過熱は防止され、自動駐車システムの異常停止を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】自動車に搭載される本発明の一実施形態による電動パワーステアリング装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1の電動パワーステアリング装置におけるECUにより、自動駐車システム動作時に実行される処理動作の第1実施例を示すフローチャートである。
【図3】図1の電動パワーステアリング装置におけるECUにより、自動駐車システム動作時に実行される処理動作の第2実施例を示すフローチャートである。
【図4】図3のフローチャートにおけるフェイルカウンタの設定値の変化特性を示すグラフである。
【図5】図1の電動パワーステアリング装置におけるECUにより、自動駐車システム動作時に実行される処理動作の第3実施例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 操舵装置
2 操舵部材
8 モータ
11 操向車輪
13 ECU(制御装置)
14 温度センサ
15 操舵量センサ
132 自動操舵制御部
133 自動操舵解除部
134 操舵判定部

Claims (3)

  1. 操舵部材に付与される操舵トルクに応じてモータにより操舵補助力を生じさせるとともに、前記モータ単独で操向車輪を転舵させ得る操舵装置と、
    前記操舵装置による操舵量を検出する操舵量センサと、
    前記モータの温度を検出する温度センサと、
    舵角指令値に応じて前記モータを駆動し、前記操舵装置に自動操舵を行わせる自動操舵制御部と、
    前記操舵量センサによって検出される操舵量に基づいて、前記温度センサの検出する温度に応じて設定した判定時間内に前記操舵装置が前記舵角指令値に対応した自動操舵を行ったか否か、を判定する操舵判定部と、
    前記操舵判定部により前記判定時間内に前記舵角指令値に対応した自動操舵が行われていないと判定された場合に、前記モータを停止させ、自動操舵を解除する自動操舵解除部とを備え、
    前記操舵判定部は、前記操舵量センサによって検出される操舵量に相当する舵角検出値が前記舵角指令値に対して所定値以上不足している状態の累積時間が前記判定時間に達したことにより、前記舵角指令値に対応した自動操舵が行われていないと判定するものであり、
    前記舵角指令値と前記舵角検出値との差が大きいほど前記判定時間が長くなることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
  2. 操舵部材に付与される操舵トルクに応じてモータにより操舵補助力を生じさせるとともに、前記モータ単独で操向車輪を転舵させ得る操舵装置と、
    前記操舵装置による操舵量を検出する操舵量センサと、
    前記モータの温度を検出する温度センサと、
    舵角指令値に応じて前記モータを駆動し、前記操舵装置に自動操舵を行わせる自動操舵制御部と、
    前記操舵量センサによって検出される操舵量に基づいて、前記温度センサの検出する温度に応じて設定した判定時間内に前記操舵装置が前記舵角指令値に対応した自動操舵を行ったか否か、を判定する操舵判定部と、
    前記操舵判定部により前記判定時間内に前記舵角指令値に対応した自動操舵が行われていないと判定された場合に、前記モータを停止させ、自動操舵を解除する自動操舵解除部とを備え
    前記操舵判定部は、前記操舵量センサによって検出される操舵量に相当する舵角検出値が前記舵角指令値に対して所定値以上不足し、かつ、前記モータの電流値が所定値を超える状態の累積時間が前記判定時間に達したことにより、前記舵角指令値に対応した自動操舵が行われていないと判定するものであり、
    前記舵角指令値と前記舵角検出値との差が大きいほど前記判定時間が長くなることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
  3. 操舵部材に付与される操舵トルクに応じてモータにより操舵補助力を生じさせるとともに、前記モータ単独で操向車輪を転舵させ得る操舵装置と、
    前記操舵装置による操舵量を検出する操舵量センサと、
    前記モータの温度を検出する温度センサと、
    舵角指令値に応じて前記モータを駆動し、前記操舵装置に自動操舵を行わせる自動操舵制御部と、
    前記操舵量センサによって検出される操舵量に基づいて、前記温度センサの検出する温度に応じて設定した判定時間内に前記操舵装置が前記舵角指令値に対応した自動操舵を行ったか否か、を判定する操舵判定部と、
    前記操舵判定部により前記判定時間内に前記舵角指令値に対応した自動操舵が行われていないと判定された場合に、前記モータを停止させ、自動操舵を解除する自動操舵解除部とを備え、
    前記操舵判定部は、前記操舵量センサによって検出される操舵量に相当する舵角検出値が前記舵角指令値に対して所定値以上不足し、かつ、前記モータの電流値が所定値を超える状態の累積時間が前記判定時間に達したことにより、前記舵角指令値に対応した自動操舵が行われていないと判定するものであり、
    前記モータの電流値が大きいほど前記判定時間が短くなることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
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