JP4300333B2 - リング状アークによる石英ガラスルツボの製造方法と装置およびその石英ガラスルツボ - Google Patents

リング状アークによる石英ガラスルツボの製造方法と装置およびその石英ガラスルツボ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、大口径ルツボの製造に適するリング状アーク溶融による石英ガラスルツボの製造方法とその石英ガラスルツボに関する。
【0002】
【従来の技術】
回転モールド法による石英ガラスルツボの製造方法は、回転モールドの内側に堆積した石英粉をアーク放電によって加熱溶融し、内側が透明層で外側が不透明層の石英ガラスルツボを製造する方法である。このアーク放電を形成する電極の構成は、従来、電極3本を用い、これに3相交流電流を通じて各々の電極間にアーク(放電)プラズマを形成している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
石英ガラスルツボの大型化に伴い、加熱範囲が広いアーク放電を形成できる電極構造が求められている。従来の電極構造は主に3相3本電極であり、加熱範囲を拡大するために電極間距離を広げるとアークが不安定になり、切れてしまう欠点がある。特に大型ルツボはモールドの回転によるルツボ内側の空気流の影響が大きくなり、従来の電極構造ではアークが切れやすい。
【0004】
そこで、電極の本数を増やして加熱範囲を広げることが試みられており、6相交流6電極の構造が提案されている。しかし、6相交流6電極構造では図6に示すように相互に隣り合う電極よりも向かい側の電極に対してもアーク放電が生じ易いために、電極で囲まれた中央部の放電熱量が周辺部の熱量よりも過剰に大きくなり、ルツボ内部を均一に加熱するのが難しくなるなどの問題がある。
【0005】
本発明は、石英ガラスルツボ製造装置の電極構造について、従来の上記問題を解決したものであり、アークが安定であって加熱範囲が広く、大口径ルツボの製造に適するリング状アークを形成する電極構造と、この電極構造に基づいた石英ガラスルツボの製造方法およびその石英ガラスルツボを提供する。
【0006】
【課題を解決する手段】
すなわち、本発明は(1)モールドの回転軸周りに配設した電極のアーク放電によってモールド内周面の石英粉を加熱溶融して石英ガラスルツボを製造する方法において、隣り合う電極を等間隔にしてリング状に配置した電極構造を用い、電極に通じる交流電流について、モールド内周面に沿ったリング状のアークが形成される一方、リングの中央部を隔てた向かい側の電極との間には一時的なアークを発生しても持続せず安定なアークが形成されない位相差に設定することによって、リングの中央部を交差する持続的アークを形成せずに、モールド内周面に沿ったリング状のアークを形成して上記石英粉を加熱溶融することを特徴とする石英ガラスルツボの製造方法に関する。
【0007】
本発明の製造方法は、側方の電極間にはアークを形成するが、リングの中央部を隔てた相対向する電極間では持続的なアークを形成しないので、電極によって囲まれるリングの中央部が過剰に加熱されることがなく、ルツボ内部を均一に加熱することができる。また、加熱範囲を拡大するには隣り合う電極間の距離をアーク放電可能な範囲内で広げればよいので、容易に加熱範囲を拡大することができ、大口径のルツボも均一に加熱することができる。
【0008】
本発明の上記製造方法は、(2)交流電流の位相差θの絶対値が90°≦θ≦180°の範囲になるように隣り合う電極を等間隔にリング状に配置した電極構造を用いてリング状のアークを形成する製造方法を含む。このような電極構造にすればリングの中央部を横切るアークを実質的に形成せずにリング状のアークを形成することができるので、ルツボの中央部を過剰に加熱せずに、均一な加熱を行うことができる。上記位相差の電極構造としては例えば2相交流4本電極、3相交流6本電極、3相交流9本電極、または4相交流8本電極の電極構造を用いることができる。
【0009】
さらに上記製造方法は、(3)隣り合う電極を等間隔にしてリング状に配置した電極構造において、アーク加熱中の少なくとも一定の時間、上記リングのモールド回転軸周りの円周半径rがルツボ開口半径Rに対して1〜1/4になる電極構造を用いてリング状のアークを形成する製造方法を含む。このような電極間距離の範囲であれば、石英ガラスルツボの口径に対して適切な加熱距離が保たれ、また、電極で囲まれたリングの内側を通過させて石英粉をモールドに供給するのに都合が良く、ルツボの側壁部とコーナ部および底部を均一に加熱することができる。
【0010】
さらに、本発明の製造方法は(4)リング状のアークで囲まれた範囲を通過させて石英粉を加熱溶融する製造方法を含む。本製造方法によれば、回転モールドに予め堆積した石英粉層を減圧しながら上記リング状アークによって加熱溶融し、ルツボ内周層を透明ガラス層にすることができる。また、回転モールドに予め堆積した石英粉をリング状アークプラズマで加熱溶融しながら、さらにこのリング状アークプラズマの内側を通過するように石英粉を落下させて加熱溶融し、この溶融した石英ガラスを石英ガラスルツボの内表面に堆積させて透明層を有する石英ガラスルツボを形成することができる(溶射法)。本発明の製造方法は上記何れの方法も含む。
【0011】
また本発明は、(5)電極に通じる交流電流について、モールド内周面に沿ったリング状のアークが形成される一方、リングの中央部を隔てた向かい側の電極との間には一時的なアークを発生しても持続せず安定なアークが形成されない位相差に設定することによって、リングの中央部を交差する持続的アークを形成せずに、モールド内周面に沿ったリング状のアークを形成して上記石英粉を加熱溶融することを特徴とする石英ガラスルツボの製造装置に関する。
【0012】
本発明の上記製造方法は、(6)交流電流の位相差θの絶対値が90°≦θ≦180°の範囲になるように隣り合う電極を等間隔にリング状に配置した電極構造を有する製造装置、(7)(イ)等間隔に配置された2相交流4本電極、3相交流6本電極、または3相交流9本電極の電極構造について、リングの中央部を隔てた向かい側の電極との間には持続的なアークを発生させずに、隣り合う電極どうしを結ぶリング状のアークを形成し、(ロ)等間隔に配置された4相交流8本電極の電極構造について、リングの中央部を隔てた向かい側の電極との間には持続的なアークを発生させずに、2つ隣りの電極どうしを結ぶリング状のアークを形成する製造装置を含む。
【0013】
上記電極構造を有する本発明の製造装置によれば、電極によって囲まれる中央部が過剰に加熱されず、ルツボ内表面を均一に加熱することができ、また隣り合う電極間距離のみをアーク放電可能な範囲内で広げればよいので大口径のルツボも均一に加熱することができる。
【0014】
上記製造方法ないし製造装置によれば、ルツボ内表面が均一に加熱されるので、底部透明層の気泡含有率が0.03%以下であって、側壁部透明層の気泡含有率が底部透明層の気泡含有率の3倍以下であるシリコン単結晶引き上げ用石英ガラスルツボを製造することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明する。
本発明の製造方法は、モールドの回転軸周りに配設した電極のアーク放電によってモールド内の石英粉を加熱溶融して石英ガラスルツボを製造する方法において、隣り合う電極を等間隔にしてリング状に配置した電極構造を用い、リングの中央部を隔てて相対向する電極間には持続的なアークを発生させずに、隣り合う電極どうしを結ぶリング状の安定なアークを形成して上記石英粉を加熱溶融することを特徴とする石英ガラスルツボの製造方法である。
【0016】
本発明の上記製造方法を実施する製造装置は、隣り合う電極を等間隔にしてモールドの回転軸周りにリング状に配置した電極構造を有し、リングの中央部を隔てて相対向する電極間には持続的なアークを発生させずに、隣り合う電極どうしを結ぶリング状の安定なアークを形成してモールド内の石英粉を加熱溶融して石英ガラスルツボを製造する装置である。
【0017】
本発明は石英ルツボの底部を過剰に加熱せずにモールド内の石英粉を均一に加熱溶融するため、隣り合う電極を等間隔にしてモールドの回転軸周りにリング状に配置した電極構造であって、このリングの中央部を隔てて相対向する電極間には持続的なアークを発生させずに、隣り合う電極どうしを結ぶリング状の安定なアークを形成するように、例えば、隣り合う電極どうしの交流電流の位相差θ(絶対値)が90°≦θ≦180°になる電極構造を用いる。なお、以下の説明において隣り合う電極どうしの位相差θは絶対値である。このような電極構造としては、例えば、2相交流4本電極、3相交流6本電極、3相交流9本電極、または4相交流8本電極の電極構造である。各電極を直流で結ぶ場合には隣り合う電極どうしが互いに異相になるように偶数本の電極をリング状に設ければ良い。
【0018】
本発明で用いる電極構造の一例を図1に示す。図示する例は3相交流電流に対して6本の電極(E1〜E6)を用いたものである。この電極構造では隣り合う電極が互いに等間隔になるようにモールドの回転軸回りに配設され、各電極を結ぶ6角形のリングが形成される。3相交流電流に対して隣り合う電極は120°の位相差を有し、リングの中央部を隔てて向かい合う電極は互いに同相になる。具体的には、3相交流電流に対して電極E1がR相であるとき、リングの中央部を隔てた相対向する電極E4は同じR相になり、電極E1の両側の電極E2がT相、電極E6がS相になり、さらにその外側の電極E3がS相、電極E5がT相になるように各電極が結線されている。従って、電極E1と電極E4、電極E2と電極E5、電極E3と電極E6がそれぞれ同相になり、互いに他の電極に対しては異相になる。
【0019】
図示する電極構造では、電極E1に対してその両側の電極E2と電極E6は異相であるのでこの両側の電極間に安定なアークが形成され、従って、ルツボの内表面に沿った互いに隣り合う電極どうしを結ぶリング状のアークが形成される。一方、リングの中央部を隔てて向き合った電極E1と電極E4は同相であるので、リングの中央部を横切るアークは形成されず、ルツボ中央部の過剰な加熱を避けることができる。また、上記電極構造は加熱範囲を広げるために隣り合う電極相互の距離を拡げても、アークは互いに最も近い隣り合う電極どうしを結んで形成されるのでアーク切れを生じ難く、安定なアークを維持することができる。なお、本発明においてルツボ内表面に沿ったリング状のアークとは、ルツボの内側に突き出た電極によって形成されるアークに限らず、ルツボ開口部の上方に位置する電極によってルツボ内周面に対して同心状に形成されるアークを含む。
【0020】
3相交流電流に対して9本の電極(E1〜E9)を用いた例を図2に示す。この電極構造では隣り合う電極が互いに等間隔になるようにモールドの回転軸回りに配設され、各電極を結ぶ9角形のリングが形成される。3相交流電流に対して隣り合う電極は120°の位相差を有する。具体的には、図示するように、電極E1がR相のとき、両側の電極E2はT相および電極E9はS相、電極E4の両側の電極E3はS相および電極E5はT相、電極E7の両側の電極E6はS相および電極E8はT相である。ここで、電極E1に隣り合う電極E2と電極E9は電極E1に対して位相差を有するので電極E1との間に安定なアークを形成するが、リングの中央部を隔てた向かい側の電極E4と電極E7は電極E1と同相であるので、これらの電極間にはアークが形成されない。なお、電極E1に対して2つ隣りの電極E3と電極E8、電極E1に対してリング中央部を越えた向かい側の電極E5と電極E6は何れも電極E1に対して位相差を有するが、電極E1との電極間距離が電極E2、電極E9よりも離れているので、電極E1との間に一時的なアークを発生しても持続せず、安定なアークは形成されない。従って、電極で囲まれた中央部を交差するアークは実質的に形成されずに互いに隣り合う電極を結ぶリング状のアークが形成される。一般に3相交流3n本電極(n≧4)の電極構造では上記と同様に隣合う電極どうしを結ぶリング状のアークが形成され、リングの中央部を交差する安定なアークは実質的に形成されない。
【0021】
2相交流電流に対して4本の電極(E1〜E4)を用いた電極構造を図3に示す。この電極構造では、モールドの回転軸を囲んで隣り合う電極が互いに等間隔に配置され、各電極を結ぶ四角いリングが形成される。3相交流電流に対して隣り合う電極どうしは180°の位相差を有するので、この隣り合う電極間にアークが発生するが、リング中央部を隔てて向かい合う電極どうしは互いに同相になるので、これらの電極間にはアークが発生せず、リング中央部を交差するアークは形成されない。一般に2相交流2n本電極(n≧3)の電極構造では上記と同様に隣合う電極どうしを結ぶリング状のアークが形成され、リングの中央部を交差する安定なアークは実質的に形成されない。
【0022】
4相交流電流に対して8本の電極(E1〜E8)を用いた電極構造を図4に示す。この電極構造では、モールドの回転軸を囲んで隣り合う電極が互いに等間隔に配置され、各電極を結ぶ8角形のリングが形成される。3相交流電流に対して隣り合う電極どうしは90°の位相差を有し、2つ隣りの電極どうしは180°の位相差を有する。アークは位相差の大きい電極間で主に発生するので、この電極構造では2つ隣りの電極間でアークが発生し、2つ隣りの電極どうしを結ぶリング状のアークが形成される。本発明において、隣り合う電極どうしを結ぶリング状のアークとはこのような2つ隣りの電極どうしを結ぶアークを含む。一方、リングの中央部を隔てた真向かいの電極どうしは同相になるのでこれらの電極間にアークは形成されない。また、リングの中央部を隔てた位相差を有する電極どうしは一時的なアークが発生しても、電極間距離が長いのでアークが持続せず、安定なアークは実質的に形成されない。
【0023】
因みに、図6に示す従来の6相交流6本電極構造においては、電極E1に対して、電極E2〜電極E6は電流の位相が60°づつずれており、電極E1の向い側に位置する電極E4の位相差が最も大きく(180°)なる。アークは電流の位相差が最も大きい電極間で発生しやすいので、この電極構造では互いに向い合った位置(対角線位置)の電極E1と電極E4、電極E2と電極E5、電極E3と電極E6との間でアークが発生し、電極E2〜電極E6によって囲まれた中央部分にアークが交差する状態になる。さらにこの電極構造では、隣り合う電極相互の距離を拡げると対角線位置の電極間距離が大幅に長くなるためアークが不安定になり、アーク切れを生じやすくなる。一方、本発明の電極構造では隣り合う電極を相互に結ぶリング状のアークが形成されるので、電極間の距離を拡げてもアークが切れ難く安定なアークを維持することができる。
【0024】
次に、図5に示すように、電極(E1〜E6)を結んで形成されるリングの大きさは、回転軸周りのリングの円周をSとするとき、円周Sの半径rがルツボの開口半径Rに対して、アーク加熱中の少なくとも一定の時間、1〜1/4の大きさに開くことができるものが好ましい。この範囲の大きさであれば、ルツボの側壁部からコーナ部および底部の加熱がほぼ均一になる。また、溶射法において、電極で囲まれた内側を通じて石英粉をモールドに供給するうえで都合が良い。一方、電極が配設される円周Sの半径rが上記開口半径Rよりも大きいとルツボの内側に電極を挿入できず、ルツボ底部の加熱が不十分になる。また、円周半径rが開口半径Rの1/4より小さいとルツボ側壁部分の加熱が不十分になり、かつ電極で囲まれた内側の範囲を通じて石英粉を供給するときに、この範囲が狭いので石英粉を供給し難い。
【0025】
本発明の製造方法は、モールドの内周面に堆積した石英粉を上記リング状アークによって加熱溶融することにより、ルツボ内周が透明ガラス層であって、外周が不透明層の石英ガラスルツボを製造することができる。内周の透明ガラス層が形成される際に、モールド側から吸引して石英層を減圧し、石英層に含まれる気泡を外部に吸引して除去することにより内部気泡の少ないルツボを得ることができる。
【0026】
また、回転モールド法において、リング状のアークプラズマで囲まれた範囲を通過させて石英粉を供給することにより、アークによって加熱溶融したガラス粒子とし、これをモールド内表面に堆積させて透明ガラス層を形成した石英ガラスルツボを製造する方法(溶射法)を実施することができる。この透明ガラス層はルツボ底部あるいはルツボ内周の全面に形成することができる。
【0027】
本発明のリング状アークを形成する方法においては、主に隣り合う電極間でアークが形成されるのでアークが安定であり、ルツボ内部の空気の対流も少ない。従って、リング状アークで囲まれた範囲を通過させて石英粉を供給した場合、この石英粉が対流によって外部に飛散されず、実質的に全ての石英粉がモールドに供給され、モールドの外側に飛散するものや電極に付着するものが殆どない。従って、ルツボ底部あるいはルツボ全面に良好な透明ガラス層を形成することができる。一方、従来の3相交流3本電極や6相交流6本電極のように、相対向する側の電極に対してもアークが形成されるものは、電極で囲まれた中央付近は空気の対流が大きく、この部分を通じて石英粉を供給しても、ルツボの外側に飛散したり、あるいは電極に付着し、または偏って落下する割合が多く、ルツボ内周に均一な透明ガラス層を形成するのが難しい。
【0028】
本発明の製造方法および装置において、例えば3相6本電極構造を用いたものは、特にモールドの上方からアーク加熱する場合にその効果が顕著である。アーク溶融では炉の排気やルツボ内側の対流などによってルツボの周囲に大きな空気流が生じる。モールドの上方からアーク加熱する場合にこの空気流の影響を大きく受け、実施例に示したように、3本電極では電極間距離を広げると直ぐにアークが切れる。一方、本発明の3相6本電極によればモールドの上方からアーク加熱する場合でも安定したアークが得られる。
【0029】
本発明の製造方法ないし製造装置によれば、ルツボ底部に溶融ガラスを堆積して良好な透明ガラス層を形成することができる。具体的には、例えば気泡含有率0.03%以下、好ましくは0.01%以下の透明ガラス層を得ることができる。また、大型ルツボであっても、ルツボの底部、コーナ部および側壁部について良好な加熱溶融が行われるので、コーナ部や側壁部透明層についても気泡含有率の少ないものが得られる。
【0030】
【実施例】
以下、本発明の実施例を示す。
〔実施例1〕
回転モールド法に従い、ルツボの外周層から内周層を形成する石英粉を回転モールドに予め堆積し、本発明の3相交流6本電極、従来の3相交流3本電極(比較例1)、6相交流6本電極(比較例2)の各電極構造を用い、電極間距離を変え、石英粉を加熱溶融して口径32インチの石英ガラスルツボを製造した。この結果を表1に示した。比較例1の電極構造では電極の拡がり、すなわち電極が配設されている円周の直径が81mmでアーク切れが多発し、電極の拡がりがこれより大きいとアークが発生できなかった。また、比較例2の電極構造では電極の拡がりが122mmまでは良好なアークが発生するが、この距離を405mmまで広げるとアークが不安定になり、これより広いとアーク切れが多発した。電極の一部にアーク切れが生じるとアークが不安定になり、石英粉の加熱溶融に悪影響を生じる。
【0031】
【表1】
Figure 0004300333
【0032】
〔実施例2〕
回転モールド法に基づいた石英ガラスルツボの製造において、口径32インチの石英ガラスルツボについて、本発明の3相交流6本電極(実施例)と従来の6相交流6本電極(比較例2)の電極構造(電極を配置した円周の直径243mm)を用い、1000kWの電力を20分間通電して5回づつアークを発生させて、アークの安定性を調べた。この結果を表2に示した。本実施例の電極構造はアークが安定であるので何れの回においても使用電力量がほぼ一定であるが、比較例2はアークが不安定であるために各回において使用電力量が大きく変動する。
【0033】
【表2】
Figure 0004300333
【0034】
〔実施例3〕
回転モールド法に基づいた石英ガラスルツボの製造において、口径22インチ〜40インチのルツボについて、本発明の3相交流6本電極、従来の3相交流3本電極(比較例1)、6相交流6本電極(比較例2)の各電極構造を用い、電極間距離を変えて、1000kWの電力を通電してアークを発生させ、その安定性を調べた。この結果を表3に示した。
【0035】
【表3】
Figure 0004300333
【0036】
〔実施例4〕
回転モールド法に基づいた石英ガラスルツボの製造において、本発明の3相交流6本電極の電極構造を用い、電極間距離を変えて口径32インチのルツボを製造し、その気泡含有率、シリコン単結晶を引き上げたときの単結晶収率を調べた。この結果を表4に示した。電極を配置する円周の径がルツボ径に対して小さすぎるもの(試料No.B1、B2)はルツボ側壁の加熱が不十分であるためにこの部分の気泡含有率が大きい。また、この円周がルツボ径より大きいもの(試料No.B3)は、アークの熱がルツボの外側に逃げるので、ルツボ側壁および底部の加熱が不良になり、この部分の気泡含有率が大きく、従って何れの試料No.B1〜B3も単結晶収率が低い。一方、本実施例の試料No.A1〜A3はルツボの側壁および底部の気泡含有率が小さく、単結晶収率が高い。
【0037】
【表4】
Figure 0004300333
【0038】
〔実施例5〕
回転モールド法に基づいた石英ガラスルツボの製造において、本発明の3相交流6本電極、従来の3相交流3本電極の電極構造を用い、モールド内周面に外周層および中央層を形成する石英粉を堆積し、アーク溶融すると共に、透明層の層厚が1mmになるように電極を配置した円周の内側を通じて石英粉4kgを20分間かけて供給し、口径32インチのルツボを溶射法によって製造した。このルツボの透明層厚、気泡含有率、単結晶収率を調べた。この結果を表5に示した。
比較試料No.B11〜B13は電極を配置する円周の径が小さいので、電極の間を通じて原料の石英粉を供給する際に石英粉が電極に付着するため1mm層厚の透明層を形成するのが難しく、特に側壁部分の層厚が大幅に少ない。また、比較試料No.B11〜B13は固化した石英塊が電極から剥離してルツボに落下するためルツボ内周面に凹凸が生じた。さらに、比較試料No.B11〜B13は気泡含有率が大きく、従って単結晶収率が低い。一方、本実施例の試料No.A11〜A13はルツボの側壁および底部の気泡含有率が小さく、単結晶収率が高い。
【0039】
【表5】
Figure 0004300333
【0040】
【発明の効果】
本発明の製造方法および装置は、各種の電極構造を利用することによって、モールド内周面に沿ったリング状の安定なアークを形成してモールド内周面の石英粉を加熱溶融すると共に、リング中央部を交差するアークを実質的に形成せず、従って、ルツボ底部の過剰な加熱を防止して、ルツボ側壁から底部まで均一に加熱することができるので、良好な透明ガラス層を有する石英ガラスルツボを製造することができる。また、アークが安定であって加熱範囲が広く、従って、大型ルツボについても良質な石英ガラスルツボを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明において用いる3相6本電極構造を示す概念図
【図2】 本発明において用いる3相9本電極構造を示す概念図
【図3】 本発明において用いる2相4本電極構造を示す概念図
【図4】 本発明において用いる4相8本電極構造を示す概念図
【図5】 電極を配置する円周の大きさとルツボ口径との関係を示す図
【図6】 従来の電極構造を示す概念図
【符号の説明】
E1〜E9−電極、r−電極を配置する円周の半径、R−ルツボ開口の半径、S−リングの円周

Claims (7)

  1. モールドの回転軸周りに配設した電極のアーク放電によってモールド内周面の石英粉を加熱溶融して石英ガラスルツボを製造する方法において、隣り合う電極を等間隔にしてリング状に配置した電極構造を用い、電極に通じる交流電流について、モールド内周面に沿ったリング状のアークが形成される一方、リングの中央部を隔てた向かい側の電極との間には一時的なアークを発生しても持続せず安定なアークが形成されない位相差に設定することによって、リングの中央部を交差する持続的アークを形成せずに、モールド内周面に沿ったリング状のアークを形成して上記石英粉を加熱溶融することを特徴とする石英ガラスルツボの製造方法。
  2. 交流電流の位相差θの絶対値が90°≦θ≦180°の範囲になるように隣り合う電極を等間隔にリング状に配置した電極構造を用いてリング状のアークを形成する請求項1の製造方法。
  3. 隣り合う電極を等間隔にしてリング状に配置した電極構造において、アーク加熱中の少なくとも一定の時間、上記リングのモールト゛回転軸周りの円周半径rがルツボ開口半径Rに対して1〜1/4になる電極構造を用いてリング状のアークを形成する請求項1または2の製造方法。
  4. リング状のアークで囲まれた範囲を通過させて石英粉を加熱溶融する請求項1、2または3に記載する製造方法。
  5. 電極に通じる交流電流について、モールド内周面に沿ったリング状のアークが形成される一方、リングの中央部を隔てた向かい側の電極との間には一時的なアークを発生しても持続せず安定なアークが形成されない位相差に設定することによって、リングの中央部を交差する持続的アークを形成せずに、モールド内周面に沿ったリング状のアークを形成して上記石英粉を加熱溶融することを特徴とする石英ガラスルツボの製造装置。
  6. 交流電流の位相差θの絶対値が90°≦θ≦180°の範囲になるように隣り合う電極を等間隔にリング状に配置した電極構造を有する請求項5の製造装置。
  7. (イ)等間隔に配置された2相交流4本電極、3相交流6本電極、または3相交流9本電極の電極構造について、リングの中央部を隔てた向かい側の電極との間には持続的なアークを発生させずに、隣り合う電極どうしを結ぶリング状のアークを形成し、(ロ)等間隔に配置された4相交流8本電極の電極構造について、リングの中央部を隔てた向かい側の電極との間には持続的なアークを発生させずに、2つ隣りの電極どうしを結ぶリング状のアークを形成する請求項5または請求項6の製造装置。
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