〔第1実施形態〕
本発明の第1実施形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。
図1は、本実施形態に係るレーザー走査装置の概略の構成を示す斜視図である。このレーザー走査装置は、レーザー光源1と、集光レンズ2と、共振鏡3と、走査レンズ4と、感光体5とを有している。
レーザー光源1は、ほぼ直線偏光のレーザー光を出射する光源であり、例えば半導体レーザーで構成されている。集光レンズ2は、レーザー光源1が発したレーザー光を収束光にする集光光学系である。本実施形態では、集光レンズ2は、レーザー光源1側に配置されるレンズ2aと、共振鏡3側に配置されるレンズ2bとの2枚のレンズで構成されている。そして、本実施形態では、共振鏡3に入射するレーザー光が、副走査方向において、共振鏡3上またはその近傍で一旦集光するように、集光光学系2が設計されている。
共振鏡3は、集光レンズ2が射出したレーザー光を主走査方向に偏向する偏向器であり、反射面を正弦揺動させることによってレーザー光を偏向する。走査レンズ4は、共振鏡3にて偏向されたレーザー光を被走査面である感光体5上に集光する走査光学系である。本実施形態では、走査レンズ4は、共振鏡3側に配置されるレンズ4aと、感光体5側に配置されるレンズ4bとの2枚のレンズで構成されている。
上記構成において、レーザー光源1の発したレーザー光は、集光レンズ2によって収束され、特に、副走査方向については一旦集光されて、その集光位置近傍に配置された共振鏡3によって主走査方向に偏向され、走査レンズ4を介して感光体5上に集光する。以下、このようなレーザー走査装置の詳細について説明する。
図2ないし図4は、本実施形態に係るレーザー走査装置の光路図である。より詳細には、図2は、上記レーザー走査装置全体の主走査断面での光路図であり、図3は、共振鏡3から感光体5までの副走査断面での光路図であり、図4は、レーザー光源1から共振鏡3までの副走査断面での光路図である。なお、これらの図では、集光レンズ2および走査レンズ4については、各レンズの光入射面および光射出面のみを図示している。これらの図に示すように、共振鏡3に入射するときのレーザー光の光束幅は、主走査方向よりも副走査方向のほうが狭くなっている。
また、表1は、本実施形態の光学系を光学面の座標データで数値的に示したものである。この座標データは、グローバルな直交座標系(X,Y,Z)におけるローカルな直交座標系(x,y,z)の原点およびベクトルで各光学面(面頂点基準)の配置を表しており、その評価面が感光体5の表面に相当している。
なお、表1中の面番号1〜10は、それぞれ、集光レンズ2のレンズ2aの光入射側および光射出側の面、レンズ2bの光入射側および光射出側の面、共振鏡3の光反射面、走査レンズ4のレンズ4aの光入射側および光射出側の面、レンズ4bの光入射側および光射出側の面、感光体5の表面を指している。なお、表1中の「集光レンズ1」、「集光レンズ2」、「走査レンズ1」、「走査レンズ2」は、それぞれレンズ2a、レンズ2b、レンズ4a、レンズ4bを指す。また、Z軸は、副走査方向の軸であり、Y軸は、主走査方向の軸であり、X軸は、YZ平面に垂直な軸である。また、表1中の共振鏡3の座標は、偏向角0度の場合について示している。
また、表2ないし表6は、光学面の面構成(面形状)を示している。ただし、E−n=×10-nとする。
ここで、非軸対称面の面形状は、次の数1式によって表現される。ただし、aijは、非軸対称面の係数とする。
また、軸対称非球面の面形状は、次の数2式によって表現される。ただし、aiは、非球面係数とする。
なお、表に示されていない係数は、全て0である。
本実施形態においては、集光レンズ2のレンズ2aは、ガラスの軸対称非球面レンズであり、その光射出側の面が軸対称非球面となっている。集光レンズ2のレンズ2bは、ガラスシリンダレンズであり、その光入射側の面がシリンダ面となっている。走査レンズ4は、レンズ4aおよびレンズ4bともに樹脂で構成されており、その光入射側の面がそれぞれ非軸対称面となっている。つまり、走査レンズ4は、樹脂の非軸対称レンズ2枚で構成されている。使用波長405nmにおける上記ガラスの屈折率は、1.530であり、上記樹脂の屈折率は、1.547である。
表7は、走査レンズ4の光軸付近でのパワー(単位;1/mm)を示している。走査レンズ4のレンズ4aおよびレンズ4bともに、主走査断面内と副走査断面内とでパワーは異なっており、主走査断面内ではいずれも負である。このように2枚のレンズ4a・4bで負のパワーを分け合うことで、各々のレンズ4a・4bのパワーを弱めに設定することができる。樹脂レンズの場合、パワーを弱くするほうが肉厚差が小さくなるため、製造しやすくなる。
また、本実施形態では、共振鏡3側のレンズ4aに比べて、感光体5側のレンズ4bのほうが、光軸付近での主走査断面内のパワーの絶対値が小さくなっている。これは、光学設計上、共振鏡3側に配置されるレンズ4aよりも感光体5側に配置されるレンズ4bのほうが主走査方向に長いため、仮に同じパワーを実現しようとすれば、主走査方向により長いレンズ4bのほうが肉厚差が大きくなって製造しにくくなるからである。つまり、本実施形態では、主走査方向に短いレンズ4aに、レンズ4bよりも主走査断面内でより強いパワーを持たせることで、肉厚差の影響を軽減している。
一方、副走査断面内のパワーについては、ほぼ2枚目のレンズ4bだけが持っている。レンズ4bの長さは、主走査方向よりも副走査方向のほうが短いので、副走査方向については、パワーの強弱に伴う肉厚差の変化の影響は、主走査方向の影響ほどは無い。したがって、本実施形態のように、レンズ4bにおいて、光軸付近での主走査断面内のパワーの絶対値よりも、副走査断面内のパワーの絶対値を大きくしても、レンズ4bの製造が困難となることはない。
また、本実施形態では、副走査方向については、共振鏡3に入射するレーザー光が共振鏡3上またはその近傍で一旦集光しているので、走査レンズ4のレンズ4a・4bの副走査断面内でのパワーは、トータルで正であることが必要である。このとき、副走査倍率を極端に高くしないためには、感光体5側のレンズ4bに正のパワーを持たせるのがよく、また、共振鏡3側のレンズ4aには負のパワーを持たせるのがよい。
ただし、レンズ4aに副走査断面内で強い負のパワーを持たせると、レンズ4bの正のパワーも強くせざるを得なくなり、副走査方向について誤差感度が高くなるので、レンズ4aの副走査方向のパワーは弱めにしておくほうがよい。
また、本実施形態では、走査レンズ4を構成する2枚のレンズ4a・4bについて、それぞれ共振鏡3側の面が非軸対称面となっている。この非軸対称面は、レンズ4a・4bのそれぞれについて、感光体5側の面に設けられていてもよく、両面に設けられていてもよい。非軸対称面を用いることにより、軸近傍でのパワーを主走査方向と副走査方向とで個別に設定することができる。また、非軸対称面は、その周辺部において副走査断面内の曲率が変化していることから、副走査像面湾曲補正および溝状収差補正に寄与している。ちなみに、図5は、本実施形態の光学系の副走査断面内および主走査断面内での像面湾曲を示している。
また、図6および図7は、本実施形態において、集光レンズ2および走査レンズ4の球面収差を波面収差(波長に対する相対値)で示したものである。ただし、図6は、主走査断面内における波面収差を示し、図7は、副走査断面内における波面収差を示している。
主走査断面内については、集光レンズ2の球面収差と走査レンズ4の球面収差とは正負が逆であり、トータルで補正されている。これは、走査レンズ4を設計した後に、走査レンズ4にて発生する主走査断面内の球面収差を打ち消すように集光レンズ2を設計したためである。集光レンズ2単独で球面収差が発生しないように設計した場合には、球面収差に付随するデフォーカスが発生する。
なお、集光レンズ2が、軸対称非球面レンズであるレンズ2aと、シリンダレンズであるレンズ2bとで構成されているので、主走査断面内では球面収差が補正されているが、副走査断面内では球面収差は補正されていない。ただし、主走査断面内よりも副走査断面内のほうが光束幅が狭いために、走査レンズ4についても、集光レンズ2についても、球面収差の発生量そのものが主走査断面内に比較すると副走査断面内では小さくなっている。
図8は、本実施形態において、偏向角に対する像高を計算した結果を示している。図8では、グラフは直線から外れており、画像周辺ほど、少ない偏向角変化で像高が大きく変化していることがわかる。これは、偏向器として、光反射面が正弦的に揺動する共振器3を使ったときに、共振器3にて偏向されたレーザー光を感光体5上で等速走査するようにするためである。本実施形態では、そのような等速走査を実現できるように、走査レンズ4が収差補正されている。
図9は、本実施形態において、時間に対する偏向角変化を示している。共振器3での最大の偏向角は30度であるが、描画に使用しているのは±21.2度の範囲である。図10は、本実施形態において、時間に対する像高変化を示している。図10では、グラフは直線になっており、前述のように感光体5上ではほぼ等速走査していることがわかる。
図11は、本実施形態での歪曲を示している。このときの理想像高は、以下の数3式によって表現される。
ただし、
k :理想像高算出係数
θ :偏向角(度)
ωmax:描画に使用しない範囲まで含めた最大の偏向角(度)
である。
本実施形態においては、ωmaxは上述のように30度で、kは、偏向角0度近傍で偏向角を微少量変化させたときの像高変化から算出した結果、約189である。
なお、偏向器への入射光が平行光のとき、kは走査光学系の主走査断面内の焦点距離とωmaxをラジアンで表わした数値とを掛け合わせた値となる。また、偏向器への入射光が平行光で本実施形態と同じkの値となるような走査光学系の主走査断面焦点距離は約360mmとなる。このとき、単レンズで走査光学系を構成すれば、主点の位置を走査レンズの位置から大きくずらすことは困難なので、偏向器から感光体までの距離は360mmよりも大きな値となる。
これに対して、本実施形態では、偏向器としての共振鏡3に入射させる光を平行光でなく、収束光としているために、偏向角0度において、共振鏡3から感光体5までの距離bは254mm程度まで短縮できており、共振鏡3への入射位置から、共振鏡3での偏向後走査レンズ4が無い場合に光が収束する位置までの距離aは、約60mmとなっている。(b/a)の値が大きいほど、すなわち、aが小さいほど、角度拡大比が大きく、全長短縮につながる。
図12ないし図15は、本実施形態でのビーム形状を示している。これらの図では、それぞれのピーク強度に対して、10%刻みで等高線を描画している。図12および図13は、ある瞬間のビーム形状であり、図14および図15は、1ドットに相当する時間だけ走査したときのビーム形状(光エネルギーの積算結果)である。また、図12および図14は、画像中央でのビーム形状であり、図13および図15は、画像端部でのビーム形状である。
このように、ある瞬間のビーム形状で見ると、ビームは縦長であり、また、画像上の位置によってビーム径の差が大きいが、1ドット分走査したときのビーム形状は、ほぼ円形であり、画像上の位置によるビーム径の差も瞬間で見たときよりは小さくなっている。図16は、ピークレベルの13.5%の光強度で見たビームの径を示している。
ある瞬間のビーム径の差が画像上の位置によって大きい理由は、画像上の位置によって有効Fナンバーが変化しているためであり、特に、主走査断面内の有効Fナンバーが大きく変化しているためである。主走査断面内の有効Fナンバーは、走査光学系の射影特性と感光体5への入射角とに依存する。
ここで、走査光学系の射影特性が、偏向角変化に対して像高変化が比例するような関係であるとき、感光体5の面内で見た主走査方向のビーム径は、画像上の位置に関わらず一定となる。偏向角変化に対して像高変化が比例するような関係は、ポリゴンミラーを用いた走査光学系で使われているもので、ポリゴンミラーへの入射光が主走査断面内で平行光のとき、比例定数が走査光学系の主走査断面内の焦点距離と等しくなることから、fθ特性と呼ばれる。
これに対して、本実施形態においては、比例関係から外れて、上述の理想像高式(数3式)で表現されるような射影特性になっているので、主走査断面内のビーム径も一定にはならず、収差が全く無ければ次の数4式で表わされるような値となる。
ただし、
d
0 :偏向角0度での主走査断面ビーム径(μm)
θ :偏向角(度)
ωmax :描画に使用しない範囲まで含めた最大の偏向角(度)
ここで、θ=0のとき、分母は1であり、θの絶対値が大きくなると、分母は小さくなるので、無収差時の主走査断面ビーム径は、偏向角0度で最小であり、端部に向かって単調に増大する。なお、θの絶対値がωmaxよりも大きくなることはないので、分母が0になることはない。
図17は、本実施形態において、上記の無収差時のビーム径の式(数4式)に、d0として、図12に示したビームの光強度13.5%でのビーム径を代入したものである。比較のために、図16に示した主走査方向のビーム径を併せて図17に載せているが、これら両者は、ほぼ一致している。また、端部では、無収差時よりも本実施形態のほうが、ビーム径が細くなっているが、これは、図11に示した歪曲が、画像周辺部に向かうにつれて理想値から少しずつ外れていき、最終端で戻っていることの影響によるものである。
次に、比較例について説明する。表8は、比較例の光学系を光学面の座標データで数値的に示したものであり、表9ないし表13は、本比較例における光学面の面構成(面形状)を示している。なお、これらの表の表し方については、本実施形態の場合と全く同様である。
本比較例の光学系は、本実施形態の光学系と比較して、主走査断面内での光学面形状は同じであるが、走査レンズ4の共振鏡3側のレンズ4aの両面を軸対称非球面としている点で異なっている。また、それに伴い、感光体5側のレンズ4bの非軸対称面について、副走査断面内の曲率を設計し直して、副走査の像面湾曲を補正している。
図18は、本比較例の光学系の副走査断面内および主走査断面内での像面湾曲を示している。主走査断面内の像面湾曲は、図5で示した本実施形態の光学系と変わっていない。一方、副走査断面内の像面湾曲は、本実施形態の光学系に比べてわずかに変化しているが、ほぼ良好に補正できている。
図19ないし図22は、本比較例でのビーム形状を示している。これらの図では、それぞれのピーク強度に対して、10%刻みで等高線を描画している。図19および図20は、ある瞬間のビーム形状であり、図21および図22は、1ドットに相当する時間だけ走査したときのビーム形状(光エネルギーの積算結果)である。また、図19および図21は、画像中央でのビーム形状であり、図20および図22は、画像端部でのビーム形状である。
本比較例においては、画像端部でビームが崩れている。これは溝状収差が残存している影響である。本比較例のように、走査レンズ4において非軸対称面が1面だけの場合、副走査像面湾曲は補正できるとしても、溝状収差を補正することができない。したがって、溝状収差を補正するためには、非軸対称面を2面持たせることが有効であると言える。しかも、2面の非軸対称面が近接していると、面の作用が似通ったものになり、収差補正上独立な自由度として機能しなくなるので、2面の非軸対称面は、本実施形態のように2枚のレンズ4a・4bのそれぞれに持たせることが有効であると言える。
以上、本実施形態のレーザー走査装置では、走査レンズ4において、主走査断面内では、レンズ4a・4bの光軸付近でのパワーが2枚とも負であるので、共振鏡3での偏向角が小さくても、主走査方向に所望の走査幅を得るのに必要な、共振鏡3から感光体5までの距離を短くすることができる。この結果、装置を小型化することができる。
また、共振鏡3に入射するレーザー光は、副走査方向において、共振鏡3上またはその近傍で一旦集光しており、走査レンズ4において、副走査断面内では、レンズ4a・4bの光軸付近でのパワーがトータルで正であるので、共振鏡3上での副走査方向の光束幅が主走査方向の光束幅よりも狭くなるように光学系を設計することができる。これにより、共振鏡3の副走査方向の幅を主走査方向の幅よりも狭くすることができるので、共振鏡3の小型化、低コスト化を図ることができる。また、共振鏡3が小型になることによって、共振鏡3で振動する部分も小さくなるので、高速走査も容易に実現することができる。
ところで、本実施形態では、共振鏡3に入射するレーザー光が、副走査方向において、共振鏡3上またはその近傍で一旦集光している場合について説明したが、一旦集光させることは必ずしも必要ではなく、また、一旦集光させないのであれば、走査レンズ4の副走査断面内のパワーは、トータルで正である必要はない。
つまり、共振鏡3に入射するレーザー光(収束光)が、副走査方向において共振鏡3上で一旦集光しない場合でも、主走査方向のパワーが負である走査レンズ4を軸対称に構成したときと比べると、感光体5側のレンズ4bの副走査方向だけに正のパワーを持たせたときのほうが、共振鏡3上での副走査方向の光束幅を狭くすることができる。
したがって、共振鏡3の副走査方向の幅を主走査方向の幅よりも狭くして、共振鏡3の小型化、低コスト化を図るためには、最低限、走査レンズ4における感光体5側のレンズ4bの光軸付近での副走査断面内のパワーが正であることが必要であると言える。ただし、共振鏡3に入射するレーザー光が、副走査方向において、共振鏡3上またはその近傍で一旦集光するときのほうが、共振鏡3上での副走査方向の光束幅を容易に狭くすることができるので、より効果的である。
〔第2実施形態〕
本発明の第2実施形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、第1実施形態と同一の構成には同一の部材番号を付記し、その説明を省略する。
図23ないし図25は、本実施形態に係るレーザー走査装置の光路図である。より詳細には、図23は、上記レーザー走査装置全体の主走査断面での光路図であり、図24は、共振鏡3から感光体5までの副走査断面での光路図であり、図25は、レーザー光源1から共振鏡3までの副走査断面での光路図である。なお、これらの図では、集光レンズ2および走査レンズ4については、各レンズの光入射面および光射出面のみを図示している。本実施形態では、集光レンズ2は、ガラスレンズと樹脂レンズとの2枚からなっているが、その詳細については後述する。
また、表14は、本実施形態の光学系を光学面の座標データで数値的に示したものであり、表15ないし表19は、本実施形態での光学面の面構成(面形状)を示している。なお、これらの表の表し方については、第1実施形態の場合と全く同様である。
本実施形態では、集光レンズ2を構成する2枚のレンズ2a・2bのうち、レーザー光源1側のレンズ2aは、ガラスレンズであり、共振鏡3側のレンズ2bは、樹脂レンズである。そして、2枚のレンズ2a・2bのそれぞれが、非軸対称面を少なくとも1面有している。レンズ2a・2bは、いずれもアナモフィックであり、主走査断面内と副走査断面内でパワーが異なっているが、ガラスレンズであるレンズ2aは、どちらの断面内でも正のパワーを持ち、樹脂レンズであるレンズ2bは、どちらの断面内でも負のパワーを持つ。なお、走査レンズ4については、第1実施形態と同様である。
図26および図27は、本実施形態において、集光レンズ2および走査レンズ4の球面収差を波面収差で示したものである。ただし、図26は、主走査断面内における波面収差を示し、図27は、副走査断面内における波面収差を示している。
本実施形態では、主走査断面内および副走査断面内の両方において、集光レンズ2の球面収差と走査レンズ4の球面収差とは正負が逆であり、トータルでほぼ補正されていると言える。これは、第1実施形態と同様に、走査レンズ4を設計した後に、走査レンズ4にて発生する球面収差を打ち消すように集光レンズ2を設計したためである。特に、集光レンズ2を非軸対称とした効果で、副走査断面についても球面収差がトータルで補正されていることがわかる。
図28は、本実施形態の光学系の副走査断面内および主走査断面内での像面湾曲を示しており、図29は、温度を10度上昇させたときの副走査断面内および主走査断面内での像面湾曲を示している。本実施形態では、集光レンズ2を、ガラス正レンズ(レンズ2a)と、樹脂負レンズ(レンズ2b)とで構成したことで、温度変化時のデフォーカスが抑えられている。走査レンズ4は、主走査断面内では負のパワーを、副走査断面内では正のパワーを持っており、温度変化時の挙動も主走査方向と副走査方向とでは異なっているが、集光レンズ2のガラス正レンズと樹脂負レンズとをいずれもアナモフィックにしたことによって、トータルでは主走査、副走査の両方で、偏向角0度付近におけるデフォーカスをほぼ0にできている。
なお、画像周辺部では1mm程度のデフォーカスが発生している。上述のように、射影特性の影響によって、画像周辺部ではビーム径が太くなっており、それに伴って焦点深度も画像周辺部のほうが深くなっているので、デフォーカスに関する許容量も画像周辺部のほうが大きくなっている。
〔第3実施形態〕
本発明の第3実施形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、第1および第2実施形態と同一の構成には同一の部材番号を付記し、その説明を省略する。
図30ないし図32は、本実施形態に係るレーザー走査装置の光路図である。より詳細には、図30は、上記レーザー走査装置全体の主走査断面での光路図であり、図31は、共振鏡3から感光体5までの副走査断面での光路図であり、図32は、レーザー光源1から共振鏡3までの副走査断面での光路図である。なお、これらの図では、集光レンズ2および走査レンズ4については、各レンズの光入射面および光射出面のみを図示している。本実施形態では、第1および第2実施形態とは異なり、集光レンズ2は3枚のレンズ2a・2b・2cによって構成されているが、その詳細については後述する。
表20は、本実施形態の光学系を光学面の座標データで数値的に示したものである。なお、表20中の面番号1〜12は、それぞれ、集光レンズ2のレンズ2aの光入射側および光射出側の面、レンズ2bの光入射側および光射出側の面、レンズ2cの光入射側および光射出側の面、共振鏡3の光反射面、走査レンズ4のレンズ4aの光入射側および光射出側の面、レンズ4bの光入射側および光射出側の面、感光体5の表面を指している。なお、表20中の「集光レンズ3」は、レンズ2cを指す。
また、表21ないし表26は、本実施形態での光学面の面構成(面形状)を示している。なお、これらの表の表し方については、第1および第2実施形態の場合と全く同様である。
本実施形態では、集光レンズ2は、ガラスレンズ2枚と樹脂レンズ1枚との3枚からなっている。より詳細には、集光レンズ2を構成する3枚のレンズ2a・2b・2cのうち、最もレーザー光源1側のレンズ2aはガラス軸対称非球面レンズであり、中央のレンズ2bはガラスシリンダレンズであり、共振鏡3側のレンズ2cは樹脂レンズである。レンズ2aは正のパワーを持つ。また、レンズ2bは副走査断面内だけ正のパワーを持つアナモフィックレンズである。レンズ2cは非軸対称面を有するアナモフィックレンズであり、主走査断面内と副走査断面内とでパワーが異なっているが、どちらの断面内でも負のパワーを持つ。なお、走査レンズ4については、第1実施形態と同様である。
図33および図34は、本実施形態において、集光レンズ2および走査レンズ4の球面収差を波面収差で示したものである。ただし、図33は、主走査断面内における波面収差を示し、図34は、副走査断面内における波面収差を示している。
本実施形態では、主走査断面内および副走査断面内の両方において、集光レンズ2の球面収差と走査レンズ4の球面収差とは正負が逆であり、トータルでほぼ補正されている。これは、第1実施形態と同様に、走査レンズ4を設計した後に、走査レンズ4にて発生する球面収差を打ち消すように集光レンズ2を設計したためである。特に、集光レンズ2を非軸対称とした効果で、副走査断面についても球面収差がトータルで補正されている。
図35は、本実施形態の光学系の副走査断面内および主走査断面内での像面湾曲を示しており、図36は、温度を10度上昇させたときの副走査断面内および主走査断面内での像面湾曲を示している。本実施形態では、集光レンズ2を、ガラスレンズ2枚(レンズ2a・2b)と、樹脂レンズ1枚(レンズ2c)とで構成したことで、温度変化時のデフォーカスが抑えられており、第2実施形態と同様の効果が実現できている。
特に、集光レンズ2のガラスレンズ2枚を、軸対称非球面レンズ(レンズ2a)とシリンダレンズ(レンズ2b)とで構成したことで、レンズの枚数は増えるものの、製造上困難なガラスの非軸対称レンズを使用せずに上述した効果を得ることができる。
〔第4実施形態〕
本発明の第4実施形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、第1ないし第3実施形態と同一の構成には同一の部材番号を付記し、その説明を省略する。
図37ないし図39は、本実施形態に係るレーザー走査装置の光路図である。より詳細には、図37は、上記レーザー走査装置全体の主走査断面での光路図であり、図38は、共振鏡3から感光体5までの副走査断面での光路図であり、図39は、レーザー光源1から共振鏡3までの副走査断面での光路図である。なお、これらの図では、集光レンズ2および走査レンズ4については、各レンズの光入射面および光射出面のみを図示している。本実施形態では、集光レンズ2は、ガラスレンズ2枚と樹脂レンズ1枚との3枚からなっているが、その詳細な構成が第3実施形態とは異なっている。なお、この点については後述する。
表27は、本実施形態の光学系を光学面の座標データで数値的に示したものであり、表28ないし表33は、本実施形態での光学面の面構成(面形状)を示している。なお、これらの表の表し方については、第1ないし第3実施形態の場合と全く同様である。
本実施形態では、集光レンズ2は3枚のレンズ2a・2b・2cによって構成されている。最もレーザー光源1側のレンズ2aは非軸対称面を有する樹脂レンズであり、中央のレンズ2bはガラス球面レンズであり、共振鏡3側のレンズ2cはガラスシリンダレンズである。レンズ2aはアナモフィックであり、主走査断面内と副走査断面内とでパワーが異なっているが、どちらの断面内でも負のパワーを持つ。レンズ2bは平凸レンズで、正のパワーを持つ。なお、レンズ2bは、球面または平面によって構成されればよい。レンズ2cは副走査断面内だけ正のパワーを持つアナモフィックレンズである。なお、走査レンズ4については、第1実施形態と同様である。
図40および図41は、本実施形態において、集光レンズ2および走査レンズ4の球面収差を波面収差で示したものである。ただし、図40は、主走査断面内における波面収差を示し、図41は、副走査断面内における波面収差を示している。
本実施形態では、主走査断面内および副走査断面内の両方において、集光レンズ2の球面収差と走査レンズ4の球面収差とは正負が逆であり、トータルでほぼ補正されている。これは、第1実施形態と同様に、走査レンズ4を設計した後に、走査レンズ4にて発生する球面収差を打ち消すように集光レンズ2を設計したためである。特に、集光レンズ2を非軸対称とした効果で、副走査断面についても球面収差がトータルで補正されている。
図42は、本実施形態の光学系の副走査断面内および主走査断面内での像面湾曲を示しており、図43は、温度を10度上昇させたときの副走査断面内および主走査断面内での像面湾曲を示している。本実施形態では、ガラス球面レンズ(レンズ2b)によって発生する球面収差を樹脂レンズ(レンズ2a)によって打ち消すように設計しているが、その都合上、樹脂レンズを配置する位置に制約が生じるために、第2および第3実施形態に比べると、温度変化時のデフォーカスが大きくなっている。ただ、ガラスレンズが研磨で作成できる球面レンズ(レンズ2b)とシリンダレンズ(レンズ2c)とで構成されているので、レンズは作りやすくなっている。
〔第5実施形態〕
本発明の第5実施形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、第1ないし第4実施形態と同一の構成には同一の部材番号を付記し、その説明を省略する。
図44ないし図46は、本実施形態に係るレーザー走査装置の光路図である。より詳細には、図44は、上記レーザー走査装置全体の主走査断面での光路図であり、図45は、共振鏡3から感光体5までの副走査断面での光路図であり、図46は、レーザー光源1から共振鏡3までの副走査断面での光路図である。なお、これらの図では、集光レンズ2および走査レンズ4については、各レンズの光入射面および光射出面のみを図示している。本実施形態では、第2実施形態と同様に、集光レンズ2は、非軸対称面をそれぞれ有する2枚のレンズによって構成されているが、走査レンズ4が第2実施形態とは異なっている。なお、この点については後述する。
表34は、本実施形態の光学系を光学面の座標データで数値的に示したものであり、表35ないし表39は、本実施形態での光学面の面構成(面形状)を示している。なお、これらの表の表し方については、第1および第2実施形態の場合と全く同様である。
本実施形態では、走査レンズ4が入射光の収束度合いが緩くなるように構成されている点で、第2実施形態とは異なっている。走査レンズ4への入射光の収束度合いを緩くしたことで、走査レンズ4は共振鏡3から遠ざかり、それとともに主走査方向の長さが長くなり、共振鏡3から感光体5までの距離も長くなっている。なお、偏向角は、第2実施形態と同じである。表40は、本実施形態の走査レンズ4のレンズ4a・4bにおける光軸近傍でのパワーについて示したものである。
図47は、本実施形態の光学系の副走査断面内および主走査断面内での像面湾曲を示しており、図48は、本実施形態での歪曲を示している。また、図49および図50は、本実施形態において、集光レンズ2および走査レンズ4の球面収差を波面収差で示したものである。ただし、図49は、主走査断面内における波面収差を示し、図50は、副走査断面内における波面収差を示している。本実施形態では、走査レンズ4への入射光の収束度合いを緩くしたことにより、走査レンズ4で発生する球面収差が第1実施形態よりも小さくなっており、集光レンズ2はそれに合わせて設計されている。
図51ないし図54は、本実施形態でのビーム形状を示している。これらの図では、それぞれのピーク強度に対して、10%刻みで等高線を描画している。図51および図52は、ある瞬間のビーム形状であり、図53および図54は、1ドットに相当する時間だけ走査したときのビーム形状(光エネルギーの積算結果)である。また、図51および図53は、画像中央でのビーム形状であり、図52および図54は、画像端部でのビーム形状である。また、図55は、ピークレベルの13.5%の光強度で見たビームの径を示している。
以上、本実施形態では、第2実施形態よりも入射光の収束度合いを緩くした走査レンズ4を用いた結果、偏向角0度において、レーザー光が共振鏡3に入射する位置から、走査レンズ4が無い場合に収束する位置までの距離aは、約80mm程度となっており、共振鏡3から感光体5までの距離bは、約264mm程度となっている。このように、走査レンズ4への入射光の収束度合いを緩くしたことにより、距離aおよび距離bともに第1実施形態よりも長くなっているが、装置の小型化が大きく阻まれるほどではない。また、走査レンズ4への入射光の収束度合いを緩くしたことで、走査レンズ4の球面収差を抑えることができるので、その球面収差を打ち消すような集光レンズ2の設計が容易となる。
〔第6実施形態〕
本発明の第6実施形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、第1ないし第5実施形態と同一の構成には同一の部材番号を付記し、その説明を省略する。
図56ないし図58は、本実施形態に係るレーザー走査装置の光路図である。より詳細には、図56は、上記レーザー走査装置全体の主走査断面での光路図であり、図57は、共振鏡3から感光体5までの副走査断面での光路図であり、図58は、レーザー光源1から共振鏡3までの副走査断面での光路図である。なお、これらの図では、集光レンズ2および走査レンズ4については、各レンズの光入射面および光射出面のみを図示している。本実施形態では、第2実施形態と同様に、集光レンズ2は、非軸対称面をそれぞれ有する2枚のレンズによって構成されているが、走査レンズ4が第2実施形態とは異なっている。なお、この点については後述する。
表41は、本実施形態の光学系を光学面の座標データで数値的に示したものであり、表42ないし表46は、本実施形態での光学面の面構成(面形状)を示している。なお、これらの表の表し方については、第1および第2実施形態の場合と全く同様である。
本実施形態では、走査レンズ4が、入射光の収束度合いが第5実施形態よりもさらに緩くなるように構成されている。走査レンズ4への入射光の収束度合いをさらに緩くしたことで、走査レンズ4は共振鏡3からさらに遠ざかり、それとともに主走査方向の長さがさらに長くなり、共振鏡3から感光体5までの距離もさらに長くなっている。なお、偏向角は、第2実施形態と同じである。表47は、本実施形態の走査レンズ4のレンズ4a・4bにおける光軸近傍でのパワーについて示したものである。
図59は、本実施形態の光学系の副走査断面内および主走査断面内での像面湾曲を示しており、図60は、本実施形態での歪曲を示している。また、図61および図62は、本実施形態において、集光レンズ2および走査レンズ4の球面収差を波面収差で示したものである。ただし、図61は、主走査断面内における波面収差を示し、図62は、副走査断面内における波面収差を示している。本実施形態では、走査レンズ4への入射光の収束度合いを第5実施形態よりもさらに緩くしたことにより、走査レンズ4で発生する球面収差が第5実施形態よりもさらに小さくなっており、集光レンズ2はそれに合わせて設計されている。
図63ないし図66は、本実施形態でのビーム形状を示している。これらの図では、それぞれのピーク強度に対して、10%刻みで等高線を描画している。図63および図64は、ある瞬間のビーム形状であり、図65および図66は、1ドットに相当する時間だけ走査したときのビーム形状(光エネルギーの積算結果)である。また、図63および図65は、画像中央でのビーム形状であり、図64および図66は、画像端部でのビーム形状である。また、図67は、ピークレベルの13.5%の光強度で見たビームの径を示している。
以上、本実施形態では、第5実施形態よりも入射光の収束度合いを緩くした走査レンズ4を用いた結果、偏向角0度において、レーザー光が共振鏡3に入射する位置から、走査レンズ4が無い場合に収束する位置までの距離aは、約150mm程度となっており、共振鏡3から感光体5までの距離bは、約300mm程度となっている。このように、走査レンズ4への入射光の収束度合いをさらに緩くしたことにより、距離aおよび距離bともに第5実施形態よりも長いが、装置の小型化が大きく阻まれるほどではない。また、走査レンズ4への入射光の収束度合いをさらに緩くしたことで、走査レンズ4の球面収差をさらに抑えることができるので、その球面収差を打ち消すような集光レンズ2の設計がさらに容易となる。
本実施形態では、距離aと距離bとの関係は、2a=bとなっているが、走査レンズ4への入射光の収束度合いをさらに緩めると、第5および第6実施形態の経緯から、2a>bとなって装置が大型化することが容易に予測される。したがって、装置の小型化の効果を損なわないためには、2a≦bを満足することが必要であると言える。