以下、本発明を適用した露光装置、記録及び/又は再生装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。
先ず、本発明を適用した露光装置、記録及び/又は再生装置を構成する光学ヘッド1について説明する。
図1に示すように、本発明を適用した露光装置、記録及び/又は再生装置を構成する光学ヘッド1は、光ビームL1を集光させる集光レンズ2と、この集光レンズ2により集光された光ビームL1の光路中に配置された光学素子3とを備え、これら集光レンズ2及び光学素子3が2群対物レンズを構成すると共に、支持体4に支持された構造を有している。
集光レンズ2は、入射した光ビームL1を集光させるための対物レンズであり、例えば光学プラスチック材料をモールド成形した非球面レンズからなる。
光学素子3は、ソリッド・イマージョン・レンズ(Solid Immersion Lens:以下、SIL3という。)であり、高屈折率の球体の一部を平坦化した半球状又は超半球状のレンズ体5からなる。このレンズ体5は、集光レンズ2の焦点付近に配置されると共に、その球面側を集光レンズ2により集光された光ビームLが入射される入射面5aとし、その平面側を集光された光ビームLを出射する出射面5bとしている。
また、レンズ体5の出射面5b(以下、SIL3の出射面5bという。)には、図1及び図2に示すように、集光された光ビームL1のスポットS1が形成されると共に、このスポットS1が形成される中央部分がパット面6aとして突出された突部6が設けられている。この突部6は、当該光学ヘッド1の傾きによる露光用原盤や光記録媒体との衝突を防止するためのものであり、パッド面6aの周囲を集光される光ビームL1の光路を妨げない範囲でエッチングにより除去することで略円柱状に突出形成されている。
また、パッド面6aの光ビームL1のスポットS1が形成される中央部には、図2に示すように、この集光される光ビームL1のスポットS1よりも大となる金属薄膜7が形成されている。この金属薄膜7は、SIL3の出射面5b(ここでは、パッド面6a)に集光された光ビームL1により表面プラズモンを励起させて、このSIL3の出射面5bから出射される電磁場を増強するためのものである。この金属薄膜7には、光ビームL1の波長に対して表面プラズモンを励起させる金属、例えばスパッタ法により成膜したニッケル膜を用いている。
このニッケル膜は、後述する集光レンズ2からSIL3に入射した光ビームL1の近接場光とならない内側の光成分を遮光すると同時に、SIL3の出射面5bから近接場光として滲み出す外側の光成分により金属薄膜7に表面プラズモンを励起させるため、20nm〜100nmの膜厚で成膜することが望ましい。
なお、金属薄膜7は、このような表面プラズモンを励起する金属を成膜したものに限らず、電磁場を増強する条件を満たせば、金属微粒子或いは金属でコーティングされた微粒子を所定の領域に選択的に付着させたものであってもよい。
支持体4は、厚み方向に貫通する孔部8を有し、この孔部8には、下面から出射面5bが臨むようにSIL3が保持されている。また、孔部8の上部には、SIL3と光軸を一致させた集光レンズ2が保持されている。また、支持体4には、ピエゾ素子や電磁コイル等からなるアクチュエータ9が取り付けられており、このアクチュエータ9は、ヘッド駆動手段として当該光学ヘッド1を光軸方向及びこの光軸方向と直交する方向とに変位駆動する。
以上のように構成される光学ヘッド1において、集光レンズ2及びSIL3で実現される開口数NAと、SIL3の屈折率nと、集光レンズ2により集光された光ビームL1のSIL3への最大入射角θmaxとの関係は、次式のように表される。
NA=n・sinθmax
ここで、最大入射角θmaxよりも小さい一定の入射角θ0と屈折率nとの積n・sinθ0が1となるように、屈折率n及び最大入射角θmaxが設定されている。これにより、集光レンズ2及びSIL3で実現される開口数NAを1よりも大きくすることが可能である。
具体的に、SIL3が露光用原盤や光記録媒体と接触しているときには、θ0よりも大きな入射角、すなわち開口数が1よりも大きくなる入射角で集光レンズ2からSIL3に入射した光ビームL1の外側の光成分(図1中に示す斜線部分のNA>1となる高周波成分)は、SIL3の出射面5bをほとんど透過して露光用原盤や光記録媒体側に近接場光として滲み出すことになる。このとき、SIL3の出射面5bから滲み出す近接場光は、開口数NAが1を超えてスポット径が縮小されたものとなる。
さらに、この光学ヘッド1では、SIL3の出射面5bから近接場光として滲み出す外側の光成分により金属薄膜7に表面プラズモンを励起させて、このSIL3の出射面5bから出射される電磁場を増強している。
これに対し、SIL3が露光用原盤や光記録媒体から離れるに従って、このSIL3の出射面5bで反射される高周波成分の割合が急激に増加していき、SIL3が露光用原盤や光記録媒体から近接場領域を超えて離れると、この高周波成分は、SIL3の出射面5bでほぼ100%の割合で反射(全反射)されることになる。
したがって、SIL3の出射面5bと露光用原盤の露光面又は光記録媒体の信号記録面との間の距離(以下、ギャップという。)を広げると、θ0よりも小さい入射角、すなわち開口数が1よりも小さくなる入射角で集光レンズ2からSIL3に入射した光ビームL1の内側の光成分(近接場光とならないNA<1となる高周波成分以外の成分)の光強度が支配的となり、プラズモン励起により近接場を増強したとしても、露光用原盤や光記録媒体に到達し得る近接場が非常に弱くなってしまう。
そこで、この光学ヘッド1では、SIL3の出射面5bに集光される光ビームL1のスポットS1よりも大となる金属薄膜7が当該SIL3の出射面5bに形成されている。
この場合、集光レンズ2からSIL3に入射した光ビームL1の近接場光とならない内側の光成分を金属薄膜7で遮光すると同時に、SIL3の出射面5bから近接場光として滲み出す外側の光成分により金属薄膜7に表面プラズモンを励起させる。これにより、SIL3の出射面5bから出射される電磁場を増強すると共に、近接場光によりスポットが縮小された電磁場をより離れた位置まで到達させることが可能である。
ここで、本発明のようにSILの出射面に金属薄膜を形成した光学ヘッド(以下、本発明のヘッドという。)と、従来のようにSILの出射面に金属薄膜を形成しない光学ヘッド(以下、従来のヘッドという。)とについて、近接場におけるスポットの強度分布を測定した測定結果を図3に示す。なお、図3中に示す実線は、本発明の光学ヘッドの場合であり、図3中に示す破線は、従来のヘッドの場合である。
図3に示すように、本発明のヘッドの場合、スポット形状が0次ベッセル形状となり、従来のヘッドの場合に比べてサイドローブが大きくなるものの、スポットの半値幅は小さくなることがわかる。そこで、スポット強度の閾値をこのサイドローブのパワーよりも大きくなるように設定しておけば、より微細なスポットを用いて、露光用原盤に対する露光を高分解能で行うことが可能となり、また、光記録媒体に対する信号の記録及び/又は再生を高密度且つ高感度で行うことが可能となる。
また、上記本発明のヘッド及び上記従来のヘッドについて、ギャップと近接場強度との関係を測定した測定結果を図4に示す。なお、図4中に示す実線は、本発明の光学ヘッドの場合であり、図4中に示す破線は、従来のヘッドの場合である。
図4に示すように、本発明のヘッドの場合、従来のヘッドの場合に比べて表面プラズモンにより近接場強度が増幅されている。したがって、本発明のヘッドは、例えばギャップ長をギャップ1からギャップ2まで広げた場合でも、従来のヘッドのギャップ長がギャップ1となる場合の近接場強度よりも大きな近接場強度を得ることが可能である。また、本発明のヘッドは、ギャップ長をギャップ1からギャップ3に広げた場合でも、従来のヘッドのギャップ長がギャップ1となる場合の近接場強度と同じ近接場強度を得ることが可能である。
以上のように、この光学ヘッド1では、SIL3の出射面5bから出射される電磁場を増強すると共に、スポットが縮小された電磁場をより離れた位置まで到達させることが可能である。
次に、図5に示す本発明を適用した露光装置100について説明する。
この露光装置100は、上記光学ヘッド1を用いて、露光用原盤101に対する露光を行うものである。露光用原盤101は、光ディスクを製造する際に使用されるスタンパ(光記録媒体製造用原盤)を作製するものであり、ガラス基板101a上に感光層となるフォトレジスト101bが塗布されてなる。そして、この露光装置100では、図示を省略する回転駆動機構により露光用原盤101が回転駆動されると共に、上記光学ヘッド1のSIL3の出射面5bと露光用原盤101の露光面との間の間隔(ギャップ)を制御しながら、上記光学ヘッド1が露光用原盤101の半径方向に移動することで、ガラス基板101a上に塗布されたフォトレジスト101bに対する露光が行われる。
具体的に、この露光装置100は、露光用の光ビームL1を出射する露光用光源102と、ギャップ制御用の光ビームL2を出射するギャップ制御用光源103と、ギャップ制御用光源103から出射された光ビームL2の光路中に配置されたエキスパンダーレンズ群104、偏光ビームスプリッタ105及び1/4波長板106と、露光用光源102から出射された光ビームL1及びギャップ制御用光源103から出射された光ビームL2の間の光路中に配置されたダイクロイックミラー107と、偏光ビームスプリッタ105で反射された露光用原盤101からの戻りの光ビームL2の光路中に配置された集光レンズ108及び受光素子109とを備えている。
露光用光源102は、フォトレジスト101bを露光するための光ビームL1として、例えば波長が266nmのレーザ光を出射する。
ギャップ制御用光源103は、上記光学ヘッド1のギャップ制御を行うための光ビームL2として、露光用光源102から出射される光ビームL1と波長の異なる、例えば波長が532nmのレーザ光を出射する。なお、このギャップ制御用光源103から出射される光ビームL2の波長は、露光用光源102から出射される光ビームL1の波長に比べて長波長とされており、且つフォトレジスト101bの感光帯域以外の波長とされている。
エキスパンダーレンズ群104は、ギャップ制御用光源103から出射された光ビームL2のビーム径を拡大するためのものであり、集光レンズ104aとコリメータレンズ104bとから構成されている。すなわち、エキスパンダーレンズ群104は、これら集光レンズ104aとコリメータレンズ104bとの間の間隔を制御することで、ギャップ制御用光源103から出射された光ビームL2のビーム径を変化させることができる。
偏光ビームスプリッタ105は、ギャップ制御用光源103からの光ビームL2を透過させて1/4波長板106に導くと共に、露光用原盤101の露光面で反射された戻りのビームL2を反射させて受光素子109へと導く。
1/4波長板106は、通過する光ビームL2にπ/2の位相差を与えるものであり、偏光ビームスプリッタ105を透過した光ビームL2は、この1/4波長板106を通過する際に円偏光となり、露光用原盤101で反射された戻りの光ビームL2は、この1/4波長板106を通過する際に直線偏光となる。
ダイクロイックミラー107は、露光用光源102からの光ビームL1を透過させると共に、ギャップ制御用光源103からの光ビームL2を反射させることによって、これら光ビームL1,L2を上記光学ヘッド1の集光レンズ2へと導く。そして、上記光学ヘッド1は、露光用原盤101の露光面に近接した状態で対向配置されており、露光用光源102から出射された光ビームL1及びギャップ制御用光源103から出射された光ビームL2を集光させて露光用原盤101の露光面に照射することになる。
集光レンズ108は、偏光ビームスプリッタ105で反射された戻りの光ビームL2を受光素子109の受光面に集光させる。
受光素子109は、集光レンズ108により集光された光ビームL2を受光することによって、SIL3の出射面5bで反射された戻りの光ビームの光強度を検出する光強度検出手段である。そして、この受光素子109は、上記光学ヘッド1のギャップ制御を行うギャップ制御部110と接続されている。
ギャップ制御部110は、受光素子109が受光した光ビームL2の光強度の変化に応じて、ヘッドアクチュエータ9を駆動制御し、アクチュエータ9は、このギャップ制御部110からの制御信号に基づいて、上記光学ヘッド1のSIL3の出射面5bと露光用原盤101の露光面との間の間隔が一定となるように、上記光学ヘッド1を光軸方向に変位駆動する。
以上のように構成される露光装置100では、露光用光源102から出射された光ビームL1が、ダイクロイックミラー107を透過して、上記光学ヘッド1の集光レンズ2に入射される。そして、集光レンズ2に入射した光ビームL1は、集光レンズ2によりSIL3の出射面5bに集光される。
一方、ギャップ制御用光源103から出射された光ビームL2は、エキスパンダーレンズ群104によりビーム径が拡大された後、偏光ビームスプリッタ105及び1/4波長板106を透過し、ダイクロイックミラー107で反射されて、上記光学ヘッド1の集光レンズ2に入射される。そして、集光レンズ2に入射した光ビームL2は、集光レンズ2によりSIL3の出射面5bに集光される。
ここで、図2に示すように、露光用光源102から出射された光ビームL1のSIL3の出射面5bに形成されるスポットS1は、直径200nm程度であり、一方、ギャップ制御用光源103から出射された光ビームL2のSIL3の出射面5bに形成されるスポットS2は、光ビームL1の波長266nmで最適化された集光レンズ2の影響により色収差が発生するため径が拡大し、直径10μm程度となっている。また、このSIL3の出射面5bに形成された金属薄膜7は、その直径が1μm程度とされ、その厚みが30nm程度とされている。
この場合、ギャップ制御用光源103からの光ビームL2のスポットS2は、金属薄膜7に比べて十分大きいことから、この金属薄膜7による反射等の影響をほとんど受けることない。したがって、この露光装置100では、後述する上記光学ヘッドのギャップ制御を適切に行うことが可能である。
一方、露光用光源102からの光ビームL1のスポットS1は、金属薄膜7に比べて径が小さく、この金属薄膜7に完全に覆われた状態となる。上述したように、この光学ヘッド1では、集光レンズ2からSIL3に入射した光ビームL1の近接場光とならない内側の光成分を金属薄膜7で遮光すると同時に、SIL3の出射面5bから近接場光として滲み出す外側の光成分により金属薄膜7に表面プラズモンを励起させる。
これにより、SIL3の出射面5bから出射される電磁場を増強すると共に、近接場光によりスポットが縮小された電磁場をより離れた位置まで到達させることが可能である。
すなわち、この露光装置100では、SIL3の出射面5bから滲み出す近接場が露光用原盤101の露光面とカップリングし、ガラス基板101a上に塗布されたフォトレジスト101bの内部へと伝播することになる。これにより、ガラス基板101a上に塗布されたフォトレジスト101bを露光した際に微細な潜像を形成することが可能である。
また、この露光装置100では、近接場が到達し得る距離(ギャップ長)を広げることが可能であり、具体的には、このギャップ長を露光用光源102から出射された光ビームL1の波長の1/2から同程度にまで広げることが可能である。
したがって、この露光装置100では、光学ヘッド1と露光用原盤101との衝突を回避しながら、露光用原盤101に対する露光を高分解能で行うことが可能である。
この露光装置100において、上記光学ヘッド1のギャップ制御は、SIL3の出射面5bで反射される戻りの光ビームL2を用いて行われる。具体的に、このSIL3の出射面5bで反射された戻りの光ビームL2は、ダイクロイックミラー107で反射され後、1/4波長板106を透過し、偏光ビームスプリッタ105で反射されて、集光レンズ108に入射される。そして、集光レンズ108に入射した戻りの光ビームL2は、この集光レンズ108により受光素子109の受光面に集光される。
ここで、受光素子109で受光される戻りの光ビームL2の光強度は、SIL3の出射面5bが露光用原盤101の露光面から近接場領域を超えて離れている場合には、ギャップ制御用光源103からの光ビームL2のうち、SIL3の出射面5bに臨界角以上で入射した光成分は、SIL3の出射面5bで全反射するので、ある一定の値を示すことになる。
これ対し、SIL3の出射面5bと露光用原盤101の露光面との間の距離が近接場領域内まで近づく場合には、ギャップ制御用光源103からの光ビームL2のうち、SIL3の出射面5bで全反射していた光成分が、SIL3の出射面5bを透過して露光用原盤101側に近接場光として滲み出すことになる。この場合、受光素子109で受光される戻りの光ビームL2の光強度は、上記一定の値よりも低下することになる。
さらに、SIL3の出射面5bと露光用原盤101の露光面とが接触している場合には、SIL3の出射面5bで全反射していた光成分がほぼ全て露光用原盤101側に滲み出すことになる。この場合、受光素子109で受光される戻りの光ビームL2の光強度は、ほぼ0となる。
したがって、この露光装置100では、受光素子109で受光される戻りの光ビームL2の光強度が、SIL3の出射面5bが露光用原盤101の露光面から近接場領域を超えて離れている場合の光強度レベルに対して、例えば60%程度となるように、ギャップ制御部110におけるリファレンスレベルを設定する。そして、ギャップ制御部110は、この受光素子109で受光される戻りの光ビームL2の光強度がリファレンスレベルとなるように、アクチュエータ9の駆動制御を行い、このアクチュエータ9により上記光学ヘッド1を光軸方向に変位駆動しながら、上記光学ヘッド1のSIL3の出射面5bと露光用原盤101の露光面との間の間隔が一定となるギャップ制御を行う。
次に、図6に示す本発明を適用した光ディスク装置200について説明する。
なお、以下の説明では、上記露光装置100と同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
この光ディスク装置200は、上記光学ヘッド1を用いて、光記録媒体である光ディスク201に対して情報信号の記録及び/又は再生を行う記録及び/又は再生装置である。また、上記光学ヘッド1は、電磁アクチュエータ等のアクティブ駆動制御により光ディスク201の信号記録面201a上を走査することになる。そして、この光ディスク装置200では、上記光学ヘッド1のSIL3の出射面5bと光ディスク201の信号記録面201aとの間の間隔(ギャップ)を制御しながら、上記光学ヘッド1が光ディスク201の半径方向に移動することで、光ディスク201に対する情報信号の記録及び/又は再生が行われる。
具体的に、この光ディスク装置200は、記録再生用光学系として、記録及び/又は再生用の光ビームを出射する記録再生用光源202と、この記録再生用光源202とダイクロイックミラー107との間の光路中に配置された偏光ビームスプリッタ204と、この偏光ビームスプリッタ204で反射された光ディスク201からの戻りの光ビームL1の光路中に配置された集光レンズ205及び受光素子206とを備えている。
記録再生用光源202は、光ディスク201の信号記録面に照射される光ビームL1として、所定の波長のレーザ光を出射する。また、記録再生用光源202は、レーザドライバ部203と接続されており、このレーザドライバ部203により記録や再生に応じた出力の制御が行われる。
偏光ビームスプリッタ204は、記録再生用光源202からの光ビームL1を透過させてダイクロイックミラー107に導くと共に、光ディスク201の信号記録面201aで反射された戻りのビームL1を反射させて集光レンズ205へと導く。
集光レンズ205は、偏光ビームスプリッタ204で反射された戻りの光ビームL1を受光素子206の受光面に集光させる。
受光素子206は、集光レンズ205により集光された戻りの光ビームL1を受光することによって、光ディスク201の信号記録面201aで反射された戻りの光ビームL1の光強度を検出する光強度検出手段である。
さらに、この光ディスク装置200は、光ディスク2を回転駆動する回転駆動手段であるスピンドルモータ207と、このスピンドルモータ207の回転駆動を制御する回転サーボ部208と、受光素子206から出力された電気信号を増幅するRFアンプ209と、RFアンプ209から出力された信号の各種デジタル信号処理を行うデジタル信号処理部210と、レーザドライバ部203、回転サーボ部208、デジタル信号処理部210等と接続されてシステム全体を制御するシステムコントローラ211とを備えている。
以上のように構成される光ディスク装置200では、記録再生用光源202から出射された光ビームL1が、偏光ビームスプリッタ204及びダイクロイックミラー107を透過して、上記光学ヘッド1の集光レンズ2に入射される。そして、集光レンズ2に入射した光ビームL1は、集光レンズ2によりSIL3の出射面5bに集光される。
一方、ギャップ制御用光源103から出射された光ビームL2は、エキスパンダーレンズ群104によりビーム径が拡大された後、偏光ビームスプリッタ105及び1/4波長板106を透過し、ダイクロイックミラー107で反射されて、上記光学ヘッド1の集光レンズ2に入射される。そして、集光レンズ2に入射した光ビームL2は、集光レンズ2によりSIL3の出射面5bに集光される。
ここで、図2に示すように、ギャップ制御用光源103からの光ビームL2のスポットS2は、金属薄膜7に比べて十分大きいことから、この金属薄膜7による反射等の影響をほとんど受けることない。したがって、この光ディスク装置200では、後述する上記光学ヘッド1のギャップ制御を適切に行うことが可能である。
一方、記録再生用光源202からの光ビームL1のスポットS1は、金属薄膜7に比べて径が小さく、この金属薄膜7に完全に覆われた状態となる。上述したように、この光学ヘッド1では、集光レンズ2からSIL3に入射した光ビームL1の近接場光とならない内側の光成分を金属薄膜7で遮光すると同時に、SIL3の出射面5bから近接場光として滲み出す外側の光成分により金属薄膜7に表面プラズモンを励起させる。
これにより、SIL3の出射面5bから出射される電磁場を増強すると共に、近接場光によりスポットが縮小された電磁場をより離れた位置まで到達させることが可能である。
すなわち、この光ディスク装置200では、SIL3の出射面5bから滲み出す近接場が光ディスク201の信号記録面201aとカップリングし、光ディスク201の内部へと伝播することになる。これにより、再生時において、光ディスク201からより微細なマークを検出したり、また、記録時において、光ディスクに対してより微細なマークを書き込むことが可能となる。
また、この光ディスク装置200では、近接場が到達し得る距離(ギャップ長)を広げることが可能であり、具体的には、このギャップ長を記録再生用光源202から出射された光ビームL1の波長の1/2から同程度にまで広げることが可能である。
したがって、この光ディスク装置200では、光学ヘッド1と光ディスク201との衝突を回避しながら、光ディスク201に対する信号の記録及び/又は再生を高密度且つ高感度で行うことが可能である。
この光ディスク装置200において、上記光学ヘッド1のギャップ制御は、SIL3の出射面5bで反射される戻りの光ビームL2を用いて行われる。具体的に、このSIL3の出射面5bで反射された戻りの光ビームL2は、ダイクロイックミラー107で反射され後、1/4波長板106を透過し、偏光ビームスプリッタ105で反射されて、集光レンズ108に入射される。そして、集光レンズ108に入射した戻りの光ビームL2は、この集光レンズ108により受光素子109の受光面に集光される。
ここで、受光素子109で受光される戻りの光ビームL2の光強度は、SIL3の出射面5bが光ディスク201の信号記録面201aから近接場領域を超えて離れている場合には、ギャップ制御用光源103からの光ビームL2のうち、SIL3の出射面5bに臨界角以上で入射した光成分は、SIL3の出射面5bで全反射するので、ある一定の値を示すことになる。
これ対し、SIL3の出射面5bと光ディスク201の信号記録面201aとの間の距離が近接場領域内まで近づく場合には、ギャップ制御用光源103からの光ビームL2のうち、SIL3の出射面5bで全反射していた光成分が、SIL3の出射面5bを透過して光ディスク201側に近接場光として滲み出すことになる。この場合、受光素子109で受光される戻りの光ビームL2の光強度は、上記一定の値よりも低下することになる。
さらに、SIL3の出射面5bと光ディスク201の信号記録面201aとが接触している場合には、SIL3の出射面5bで全反射していた光成分がほぼ全て光ディスク201側に滲み出すことになる。この場合、受光素子109で受光される戻りの光ビームL2の光強度は、ほぼ0となる。
したがって、この光ディスク201では、受光素子109で受光される戻りの光ビームL2の光強度が、SIL3の出射面5bが光ディスク201の信号記録面201aから近接場領域を超えて離れている場合の光強度レベルに対して、例えば60%程度となるように、ギャップ制御部110におけるリファレンスレベルを設定する。そして、ギャップ制御部110は、この受光素子109で受光される戻りの光ビームL2の光強度がリファレンスレベルとなるように、アクチュエータ9の駆動制御を行い、このアクチュエータ9により上記光学ヘッド1を光軸方向に変位駆動しながら、上記光学ヘッド1のSIL3の出射面5bと光ディスク201の信号記録面201aとの間の間隔が一定となるギャップ制御を行う。
また、上記光学ヘッド1は、例えば図7に示すヘッドアクチュエータ50によって露光用原盤101の露光面又は光ディスク201の信号記録面201aに対して接離可能な方向に変位駆動される構成であってもよい。
このヘッドアクチュエータ50は、ヘッド駆動手段として上記光学ヘッド1を光軸方向に変位駆動するものであり、上記光学ヘッド1が搭載されたエアスライダ51と、このエアスライダ51を支持する支持アーム52とを備え、この支持アーム52の先端部にジンバルバネ53を介してエアスライダ51取り付けられた構造を有している。
エアスライダ51は、略平板状に形成されており、支持アーム52の露光用原盤101又は光ディスク201と対向する主面にジンバルバネ53を介して取り付けられている。また、エアスライダ51の略中央部には、略円形状の貫通孔51aが形成されると共に、上記露光用原盤101又は上記光ディスク201と対向する主面とは反対側の主面に、この貫通孔51aに臨む略円筒状のハウジング部51bが設けられている。そして、上記光学ヘッド1は、このハウジング部51bの内側にアクチュエータ9を介して光軸方向に移動可能に支持されている。
このエアスライダ51は、上記露光用原盤101の露光面又は上記光ディスク201の信号記録面201a上を僅かに浮上する。このため、エアスライダ51の露光用原盤101又は光ディスク201と対向する主面には、空気を噴出させるノズル54が設けられている。このノズル54は、基端側が空気供給源55と接続されており、この空気供給源55から供給される空気をノズル54の先端から噴出することで、エアスライダ51に浮上力を発生させる。また、空気供給源55は、制御回路56によりノズル54に供給する空気の圧力等が制御されている。
支持アーム52は、図示を省略するボイスコイルモータ等の駆動により露光用原盤101又は光ディスク201の半径方向に移動操作される。また、支持アーム52には、上述した各光源102,103,202からの光ビームL1,L2を入射させるための開口部52aと、ノズル54を貫通させる貫通孔52bとが設けられている。
ジンバルバネ53は、エアスライダ51を上記露光用原盤101や上記光ディスク201の面振れ等に対して高さ方向に追従させるためのものであり、所定の角度で折り曲げられた板状の弾性体等からなる。
以上のように構成されるヘッドアクチュエータ50では、制御回路56により空気供給源55からノズル54に供給される空気の圧力を調整することで、エアスライダ51を浮上させながら、上記光学ヘッド1と上記露光用原盤101の露光面又は上記光ディスク201の信号記録面201aとの間の距離を調整することができる。
したがって、このようなヘッドアクチュエータ50を備える露光装置100や光ディスク装置200では、例えばヘッドアクチュエータ50により上記光学ヘッド1と上記露光用原盤101の露光面又は上記光ディスク201の信号記録面201aとの間の距離を粗調整した後に、上述したアクチュエータ9による上記光学ヘッド1のギャップ制御を安定的且つ高精度に行うことが可能である。
なお、上記光学ヘッド1は、上述した集光レンズ2及びSIL3が2群対物レンズを構成する構成に限らず、3群以上とすることも可能である。
また、上記光学素子3は、上述したSILに限らず、例えば図8に示すソリッド・イマージョン・ミラー(Solid Immersion Mirror:以下、SIMという。)30であってもよい。
このSIM30は、高屈折率の球体の一部を平坦化した半球状又は超半球状のレンズ体31を有し、このレンズ体31の球面31a側の中央部には、球面状の凹部32が形成されている。また、レンズ体31の平面31b側の中央部には、上述した光学ヘッド1の傾きによる露光用原盤や光記録媒体との衝突を防止するための略円柱状の突部33が突部形成されている。そして、このレンズ体31の凹部32を除く球面31a及び突部33を除く平面32bには、反射膜34a,34bが形成されている。
以上のように構成されるSIM30では、レンズ体31の凹部32から光ビームLが入射されると、屈折しながら平面31b側の反射膜34bで反射された後、球面31a側の反射膜34aで反射されることによって、突部33のパッド面33aに集光された光ビームLのスポットが形成される。
この突部33のパッド面33aの中央部には、上述した図2に示すSIL3の突部6と同様に、集光される光ビームLのスポットSよりも大となる金属薄膜7が形成されている。
したがって、このようなSIM30の場合も同様に、SIM30に入射した光ビームLの近接場光とならない内側の光成分を金属薄膜7で遮光すると同時に、SIM30の出射面(パッド面33a)から近接場光として滲み出す外側の光成分により金属薄膜7に表面プラズモンを励起させる。これにより、SIM30の出射面33aから出射される電磁場を増強すると共に、近接場光によりスポットが縮小された電磁場をより離れた位置まで到達させることが可能である。
1 光学ヘッド、 2 集光レンズ(対物レンズ)、 3 光学素子(SIL)、 4 支持体、 5 レンズ体、 6 突部、 7 金属薄膜、 9 アクチュエータ、 30 光学素子(SIM)、 50 ヘッドアクチュエータ、 100 露光装置、 101 露光用原盤、 102 露光用光源、 103 ギャップ制御用光源、 200 光ディスク装置、 201 光ディスク、 202 記録再生用光源